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特許7575459材料表面の微生物制御のための組成物及び方法
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  • 特許-材料表面の微生物制御のための組成物及び方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】材料表面の微生物制御のための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/02 20060101AFI20241022BHJP
   C08L 25/08 20060101ALI20241022BHJP
   C08L 33/10 20060101ALI20241022BHJP
   C08K 5/09 20060101ALI20241022BHJP
   C08K 3/18 20060101ALI20241022BHJP
   C08K 3/015 20180101ALI20241022BHJP
   C08J 3/22 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
C08L23/02
C08L25/08
C08L33/10
C08K5/09
C08K3/18
C08K3/015
C08J3/22 CER
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022538971
(86)(22)【出願日】2020-12-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-06
(86)【国際出願番号】 US2020066571
(87)【国際公開番号】W WO2021138144
(87)【国際公開日】2021-07-08
【審査請求日】2023-03-20
(31)【優先権主張番号】62/955,161
(32)【優先日】2019-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/955,155
(32)【優先日】2019-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/128,894
(32)【優先日】2020-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500233555
【氏名又は名称】マイクロバン プロダクツ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ネルソン, バーク, アーヴィング
(72)【発明者】
【氏名】スローン, ジナ, パリズ
(72)【発明者】
【氏名】ラプリー, ジェームズ, マリオン
(72)【発明者】
【氏名】ハー, マイ
【審査官】常見 優
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-103473(JP,A)
【文献】特開2019-155812(JP,A)
【文献】特表平06-508612(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0123558(US,A1)
【文献】特表2008-533010(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0199567(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/16
C08K 3/00- 13/08
C08J 5/00- 5/24
C09D 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料表面の微生物制御のためのマスターバッチ組成物であって、
マスターバッチ組成物が、
エチレンメタクリレート(EMA)、プロピレン-エチレンコポリマー、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン(SEBS)、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるポリマーキャリアと
ポリマーキャリアに混合された一般に安全として認識される添加剤(GRAS添加剤)であって、安息香酸、プロピオン酸、ソルビン酸、クエン酸、乳酸、アスコルビン酸、酢酸、エリトルビン酸、フマル酸、リンゴ酸、グリコール酸、それらの誘導体、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるとともに、マスターバッチ組成物の1~60重量%の濃度である、GRAS添加剤と、
ポリマーキャリアに混合された臭気緩和化合物であって、金属酸化物、活性炭素、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、リシノレイン酸亜鉛、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される臭気緩和化合物と、
を含み、
マスターバッチ組成物が、抗菌特性を示す、マスターバッチ組成物。
【請求項2】
ポリマーキャリアに混合された精油をさらに含む、請求項1に記載のマスターバッチ組成物。
【請求項3】
精油が、セダー油、ティーツリー油(Melaleuca alternifolia)、ユーカリ油(Eucalyptus globulus又はE.radiata)、クローブ油(Eugenia caryophyllata)、オレガノ油(Origanum vulgare)、タイム油(Thymus vulgaris)、ゼラニウム油(Pelargonium graveolens)、桂皮油(Cinnamomum zeylanicum)、ペパーミント油(Mentha piperita)、レモングラス油(Cymbopogon flexuosus)、バジル油(Ocimum basilicum)、ラベンダー油(Lavandula angustifolia)、レモン油(Citrus limon)、ローズマリー油(Salvia rosmarinus)、ベルガモット油(Citrus bergamia)、シソ油(Perilla frutescens)、コリアンダー油(Coriandrum sativum)、シトロン油(Citrus medica)、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項に記載のマスターバッチ組成物。
【請求項4】
精油が、マスターバッチ組成物の1~50重量%の濃度である、請求項に記載のマスターバッチ組成物。
【請求項5】
臭気緩和化合物が、マスターバッチ組成物の1~60重量%の濃度である、請求項に記載のマスターバッチ組成物。
【請求項6】
材料表面の微生物制御のための方法であって、
安息香酸、プロピオン酸、ソルビン酸、クエン酸、乳酸、アスコルビン酸、酢酸、エリトルビン酸、フマル酸、リンゴ酸、グリコール酸、それらの誘導体、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される一般に安全として認識される添加剤(GRAS添加剤)を、エチレンメタクリレート(EMA)、プロピレン-エチレンコポリマー、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン(SEBS)、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるポリマーキャリア中に入れることと、
金属酸化物、活性炭素、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、リシノレイン酸亜鉛、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される臭気緩和化合物をポリマーキャリア中に入れることと、
を含む方法。
【請求項7】
油をポリマーキャリア中に入れることをさらに含む、請求項に記載の方法。
【請求項8】
精油が、セダー油、ティーツリー油(Melaleuca alternifolia)、ユーカリ油(Eucalyptus globulus又はE.radiata)、クローブ油(Eugenia caryophyllata)、オレガノ油(Origanum vulgare)、タイム油(Thymus vulgaris)、ゼラニウム油(Pelargonium graveolens)、桂皮油(Cinnamomum zeylanicum)、ペパーミント油(Mentha piperita)、レモングラス油(Cymbopogon flexuosus)、バジル油(Ocimum basilicum)、ラベンダー油(Lavandula angustifolia)、レモン油(Citrus limon)、ローズマリー油(Salvia rosmarinus)、ベルガモット油(Citrus bergamia)、シソ油(Perilla frutescens)、コリアンダー油(Coriandrum sativum)、シトロン油(Citrus medica)、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項に記載の方法。
【請求項9】
GRAS添加剤及び臭気緩和化合物を内部に入れたポリマーキャリアで物品を形成することをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
RAS添加剤が、物品の0.05~10重量%の濃度の範囲で存在する、請求項に記載の方法。
【請求項11】
精油が、物品の0.05~5.0重量%の濃度の範囲で存在する、請求項に記載の方法。
【請求項12】
臭気緩和化合物が、物品の0.05~10重量%の濃度の範囲で存在する、請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、米国特許商標庁に2019年12月30日に出願された米国仮特許出願No.62/955161、2019年12月30日に出願された米国仮特許出願No.62/955155、及び2020年12月21日に出願された米国特許出願No.17/128894からの優先権を主張する。この開示は、その全体を参照としてここに組み入れる。
【0002】
発明の分野
本発明は、材料表面の微生物制御のための組成物及び方法、特に最小危険殺菌剤を使用する、材料表面の微生物制御のための組成物及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
材料表面の微生物制御は、ベース材料中に抗菌剤を入れることによって達成されることができる。現在の慣習は、銀、亜鉛及び/又は銅のような活性物を含む金属の使用に強く依存する。処理された製品の使用中又は廃棄後に究極的に環境に浸出する製品中の「重金属」の存在は、環境政策、及び消費者市場に影響する規則などの関心事になっている。
【0004】
あるいは、フェノール及びアゾールのような有機分子を混入させることにより、材料表面を処理することができる。これらの化学物質は、制限された温度範囲でしか使用できず、UV劣化に敏感であり、しかも物体の全体をこれらの化学物質で処理する場合には費用が高くつく。さらに、これらの化学物質のうちの多くは、危険な毒性プロファイルを有し、処理された物品の美観に影響しうる望まない副作用を起こしうる。
【0005】
従って、費用効果に優れ、良好な効果を有し、しかも安全である、材料表面の微生物制御のための代替的な化学的手段の必要性がある。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、最小危険殺菌剤を使用する、材料表面の微生物制御のための組成物及び方法に関する。
【0007】
本発明の実施形態では、材料表面の微生物制御のための組成物が提供される。組成物は、抗菌特性を示す。組成物は、ポリマー材料、及び抗菌又は保存特性を有する一般に安全として認識される(Generally-Recognized-as-Safe(GRAS))添加剤又は成分を含む。GRAS添加剤の例は、特に最小危険殺菌剤、食品保存剤であるが、これらに限定されない。
【0008】
本発明の実施形態では、GRAS抗菌/保存成分は、有機酸である。
【0009】
本発明の実施形態では、有機酸は、安息香酸、ソルビン酸、クエン酸、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0010】
本発明の実施形態では、GRAS抗菌/保存成分は、食品添加剤である。
【0011】
本発明の実施形態では、材料表面の微生物制御のための方法が提供される。この方法は、GRAS抗菌/保存成分をポリマー材料中に入れることを含む。
【0012】
直接入れることの利点としては、被覆技術と比較して増大された耐久性、並びに製品製造中の被覆プロセス工程の削除が挙げられる。
【0013】
本発明の適用可能性のさらなる領域は、以下に与えられる詳細な記載から明らかになるだろう。詳細な記載及び特定の実施例は、本発明の好ましい実施形態を示すが、説明のみの目的にために意図され、本発明の範囲を限定することを意図されないことが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本発明は、詳細な記載及び添付図面(それは、必ずしも縮尺通りでない)から十分に理解されるようになるだろう。
【0015】
図1図1は、275℃までのGRAS塩の重量損失を示す10℃/分での熱重量分析(TGA)プロットを示す。揮発はほとんど見られなかった。
【0016】
図2図2は、275℃までのGRAS酸の重量損失を示す10℃/分でのTGAプロットを示す。かなりの揮発が起こった。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態の以下の記載は、本質的には例示にすぎず、いかなる方法においても本発明、その適用、又は使用を制限することを意図されない。以下の記載は、本発明の実現可能な開示を与える目的のために例示としてのみ本明細書に与えられるが、本発明の範囲又は実体を制限しない。
【0018】
本発明は、材料表面の微生物制御のための組成物及び方法に関する。
【0019】
本発明の実施形態では、材料表面に微生物制御を付与するための「一般に安全と認識される(GRAS)」組成物が提供される。頭字語「GRAS」は、良好な製造慣習に従って使用されるときに「一般に安全と認識される」と考えられる物質を示すために連邦取締機関によって使用されている。それらは、食品添加剤として使用されることが多い。例えば、かかる規則は、21 CFR 182,21 CFR 184、及び21 CFR 186を含む。
【0020】
GRAS成分又は化合物の例は、食品保存剤を含むが、それに限定されない。食品保存剤は、本発明の組成物に使用するために好適である。なぜならそれらは、最小危険殺菌剤として分類されるが、抗菌能力を与えるからである。さらに、本発明に使用するために好適な食品保存剤は、低い皮膚毒性プロファイルしか持たない抗菌効果を有し、一般に約200℃を超える温度での工業的なポリマー加工条件に耐え、及び溶融ポリマーとの混和性を持つ。200℃未満の温度で揮発又は分解する食品保存剤も、好適であるかもしれないが、加工時のそれらの熱暴露を減少させるような独自の工学条件を要求する。
【0021】
本発明の実施形態では、食品保存剤は、有機酸である。有機酸の例は、安息香酸、プロピオン酸、ソルビン酸、クエン酸、乳酸、アスコルビン酸、酢酸、エリトルビン酸、フマル酸、リンゴ酸、グリコール酸、それらの誘導体、及びそれらの組み合わせを含むが、それらに限定されない。好ましいい有機酸は、安息香酸、ソルビン酸、クエン酸、及びそれらの組み合わせを含むが、それらに限定されない。好ましい有機酸は、安息香酸、ソルビン酸、クエン酸、及びそれらの組み合わせを含むが、それらに限定されない。
【0022】
本発明の組成物は、一種以上の添加剤を含むことができる。例えば、真菌種に対して強い活性を持つために、精油を、安息香酸、ソルビン酸、又はそれらの組み合わせと共に添加することができる。シナモン油のような一部の精油は、抗菌活性をほとんど示さないか又は全く示さないが、真菌種に対しては独自の影響を持つ。
【0023】
精油の例は、セダー油、ティーツリー油(Melaleuca alternifolia)、ユーカリ油(Eucalyptus globulus又はE.radiata)、クローブ油(Eugenia caryophyllata)、オレガノ油(Origanum vulgare)、タイム油(Thymus vulgaris)、ゼラニウム油(Pelargonium graveolens)、桂皮油(Cinnamomum zeylanicum)、ペパーミント油(Mentha piperita)、レモングラス油(Cymbopogon flexuosus)、バジル油(Ocimum basilicum)、ラベンダー油(Lavandula angustifolia)、レモン油(Citrus limon)、ローズマリー油(Salvia rosmarinus)、ベルガモット油(Citrus bergamia)、シソ油(Perilla frutescens)、コリアンダー油(Coriandrum sativum)、シトロン油(Citrus medica)、及びそれらの組み合わせを含むが、それらに限定されない。好ましい精油は、桂皮油(Cinnamomum zeylanicum)、レモングラス油(Cymbopogon flexuosus)、タイム油(Thymus vulgaris)、セダー油、シトロン油、ペパーミント油、ローズマリー油、クローブ油、及びそれらの組み合わせを含むが、それらに限定されない。
【0024】
さらに、微生物と関係しない臭気を制御することが望ましい。有機酸(又はそれらの組わせ)は、それらの酸性の性質によってアンモニアのようなアルカリ性ベースの臭気を中和する能力を与えることができる。安息香酸のようなアリール基を有する酸は、ピリジンのような環ベースの臭気物質を抑制する能力を有する。これらの効果を補うために、追加の臭気緩和化合物を有機酸の組み合わせ、及び/又は精油に添加して、実存する臭気を除去することができる。臭気緩和化合物の添加は、抗菌及び臭気制御効果を与えることができる独自のブレンドをもたらす。臭気緩和化合物の例は、金属酸化物、活性炭素、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、リシノレイン酸亜鉛を含むが、それらに限定されない。
【0025】
化学物質のいずれかへの金属酸化物(例えばZnO)の添加は、抗菌及び臭気制御の効果を与えうる独自のブレンドをもたらす。
【0026】
本発明の実施形態では、本発明の組成物(好ましくはマスターバッチのようなポリマー濃縮物又は被覆のためのポリマー結合剤の形態のもの)は、安息香酸、ソルビン酸、又はそれらの組み合わせを含む。ポリマー濃縮物では、組成物の1~60重量%、より好ましくは5~40重量%の活性濃度が必要とされる。耐久性のある被覆に使用するためのポリマー結合剤では、溶液%固形分に基づいて0.1~40%の範囲の固体の濃度が必要とされる。もし一種より多い酸が組み合わせて使用されるなら、活性酸の全重量は、最終組成物の5~40重量%である。
【0027】
本発明の組成物は、任意選択的に全組成物の1~50重量%、より好ましくは5~20重量%の濃度で精油を含むことができ、任意選択的に全組成物の1~60重量%、より好ましくは5~40重量%の濃度で臭気緩和化合物を含むことができる。
【0028】
マスターバッチのためのキャリアは、マスターバッチが入れられるベース材料と相溶性の低融点ポリマー又はコポリマーであることが好ましい。熱的に感受性の酸活性物のいかなる高い熱履歴も最小にすることが望ましい。キャリアは、ポリプロピレン(PP)のような高融点ポリマー中への混入を可能にするように高温加工中の保護を与えるだろう。ベースポリマー材料の例は、PP,EMA、ポリオレフィン、SAN,TPU,ABS,PS及びPC及びPVCを含むが、それらに限定されない。例えば、ポリプロピレン(PP)は、多くの消費者アイテムを作るために一般に使用されるポリオレフィンポリマーである。ポリマー濃縮物は、次いで(PPのような)ベース原材料とペレット同士でブレンドされ、射出成形されて、(最終物品の重量の)0.05~10%の活性濃度を有する部品を形成する。精油は、0.05~5.0%の最終濃度であることが好ましく、臭気緩和化合物は、0.05~10%のような酸と同様の濃度範囲であることが好ましい。エチレンメタクリレート(EMA)、プロピレン-エチレンコポリマー(例えばVistamaxx)、SEBS,PE、及びPPのマスターバッチキャリアとしての使用は、これらのGRAS酸のような熱的に感受性のある添加剤の原料を損傷又は揮発させずに封入するために低融点ポリマーを使用し、次いで可能な温度より高い温度で加工されなければならないポリマーを処理するために濃縮物を使用する概念の例である。
【0029】
典型的な被覆プロセスを使用するよりむしろ抗菌保護のためのこれらの酸の直接混入の使用は、重要な改良である。なぜならそれは、コストのかかる被覆工程を削除し、さらに製品品質を改良し、混入された抗菌剤は、耐久性があり、消えたり又はすり減ることもできないからである。ポリマーの場合、有機酸がベース樹脂と混和性でないとき、製品の貯蔵寿命の安定性を高めるためにマスターバッチに安定剤又は相溶化剤を添加することができる。
【0030】
被覆が望ましい実施形態では、ポリマー結合剤は、アクリル、アクリレート、ウレタン、イソシアネート、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ヘキサフルオロプロピレン、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ポリアミド、ポリイミドからなるか、又は本質的になることができる。これらは、いずれかの好適なオリゴマー、ホモポリマー、コポリマー又はエラストマーとのいずれかの組み合わせで添加されることができる。一部の実施形態では、結合剤は、水性もしくは非水性であるか、又は微量の共溶媒を含むことができる。ポリマー結合剤の種類は、特に限定されず、被覆のために好適でありうる組成を持ついかなるポリマーも含むことができる。GRASは、最終被覆の0.05~10重量%の濃度の被覆を形成するように添加される。限定されない例は、0.5%の活性濃度の安息香酸を有するPVDCポリマー結合剤水性被覆であることができる。いったん入れられると、GRAS酸は、支持体に結合されるようになる。
【0031】
被覆の適用は、ポリマー材料の表面の抗菌及び/又は臭気抑制効果を発生させるためのポリマー材料の処理を含むが、それに限定されない。
【0032】
毒物として分類されうる従来技術の組成物とは違って、本発明の組成物は、危険性がなく、ポリマー製造のほとんどの形態に適用可能であり、ポリマーを加工する際の剪断及び熱に対して安定であり、最終製品特性に有意な影響を与えない。以下の表Aは、安息香酸が様々なポリマー濃縮物キャリアと共に様々なレベルでPPに入れられるときにPPについての引張、曲げ及び衝撃測定値がほとんど変化しないことを示す。
【0033】
表A-マスターバッチ濃縮物について二つの異なるポリマーキャリアを使用して0.2%~0.35%のGBAで処理された射出成形PP部品の物理試験結果
【実施例
【0034】
実施例1
【0035】
最初の研究は、三つのGRAS化学物質(安息香酸の塩、ソルビン酸の塩、及びクエン酸の塩)に焦点を当てた。図1は、これらの塩のTGAプロットを示すが、それは、これらの塩の全てが300℃より高い温度まで熱的に安定していることを示す。
【0036】
図1では、10℃/分でのTGAプロットは、275℃までのGRAS塩の揮発を示す。安息香酸塩及びソルビン酸塩は、275℃を超える温度に対して安定であった(質量を損失せず)。クエン酸塩は、約10%の水を含有しているので、約10重量%損失し、次いで重量変化は横ばいとなった-塩自体は揮発しなかった。この熱安定性及び報告された抗菌効果は、これらの化合物を見たところではこの用途のために理想的にした。
【0037】
各塩化学物質は、10%濃度レベルでポリオレフィンキャリア中に配合され、次いでそのポリマー濃縮物をマスターバッチとして使用して、試験のために様々なエンドユースレベルでPPプラークを射出成形することによって評価された。配合のための二軸押出機及び35トン射出成型機においてPP及びEMA商品が試験プラークを作るために使用された。
【0038】
これは、加工適合性を試験すること、並びに活性効果レベルを試験するために試料を準備することの二つの目的のために役立った。
【0039】
表1-PPにおけるGRAS塩の試験によるTR19031210の結果を示す。対数減少値>1が、ISO 22196を合格するために要求される。NR=減少値なし、NZ=領域なしであり、NRとNZの両方とも不合格を示す。GNC=クエン酸ナトリウム、GKS=ソルビン酸カリウム、GNB=安息香酸ナトリウム
【0040】
予期せぬことに、上記の各酸の塩(安息香酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、及びクエン酸三ナトリウム)は単独では、図1に示されるような熱安定性にかかわらず表1に示されるように1%までのいずれの活性濃度でもISO 22196試験によって有意な抗菌効果をもたらさなかった。それだけでなく、いずれの試料も、抑制試験(AATCC TM90)の領域を使用したいかなる効果も示さなかった。さらに、プラークを処理するための塩の使用は、使用中の高いレベルのためにプラークが不透明になることをもたらした。
【0041】
次の研究として、酸成分(安息香酸、ソルビン酸、及びクエン酸)は、それらが図2で調査したようにPP加工を受けるために十分な熱安定性を持つように見えなかったにもかかわらず、調査された。クエン酸は、200℃で揮発を開始した。安息香酸及びソルビン酸は、約100℃で揮発を開始し、TGA試験試料が200℃に達するまでに本質的に全部揮発してなくなった。これらの結果は、これらの酸がPP中に直接配合されることは好ましくないことを示唆する。PPマスターバッチ濃縮物を作るためにPP中に直接配合するよりむしろ、低い加工温度範囲を有するポリマーと組み合わせることが選択された。EMAは、PPと適合し、極めて幅広い加工温度範囲を有する。それは、120℃ほどの低い温度で配合されることができ、250℃を越える加工温度に耐えることができる。上記の三つの酸は、10%濃度でEMA中にうまく配合され、揮発による無視できる損失を伴なってマスターバッチ濃縮物を作った。
【0042】
TGA熱特性にもかかわらず、三つのEMA/酸マスターバッチが200℃より高い温度でPP中に配合され、驚くべきことに、加工中に酸活性体の損失が極めて少ないことが分析により示された。EMA中の酸の先行する封入は、加工温度にかかわらず揮発による活性成分の損失を防止し、PP部品の製造を可能にした。このように、加工中のGRAS酸の揮発損失を最小にするために相溶性の低融点キャリア中に酸を配合することは、混入プロセスの重要部分であることが見出された。
【0043】
試験プラークは、0.5%及び1%活性レベル濃度でPP中に射出成形することによって作られ、全ての試料は、酸添加物からの美観的影響をほとんど示さなかった。生成した全ての試料は、クエン酸(GCA)を除いて良好な抗菌効果を示した。クエン酸は、高い濃度レベルでは良好な抗菌効果を示したが、低い濃度レベルでは抗菌効果は低下した(表2)。さらなる実験によれば、ソルビン酸(GSA)については、1000ppmの低い濃度で抗菌効果を示し、安息香酸(GBA)については、2000ppm~3500ppmの低い濃度で抗菌効果を示し、これらの濃度はPP中での強い抗菌効果を示すと考えられた。
【0044】
【0045】
表2は、PPプラーク中のGRAS酸の試験によるTR19031105の対数減少結果を示す。対数減少値>1は、細菌母集団の有意な差を示すために要求された。NZ=領域なしは、TM90について不合格を示す。GCA=クエン酸、GBA=安息香酸、GSA=ソルビン酸。酸は、浸出せず、従ってTM90は、効果を決定するには適切でなかったが、最も低い濃度のGCA試料以外の全ては、ISO 22196に合格した。プラークは、良好なUV安定性を確保するためにキセノンアーク及びQUV装置で試験された-試料は極くわずかに色が変化した。これは、ジンクピリチオン処理試料によって発生する深い黄色の着色、又は銀処理試料によって発生する茶色の着色よりずっと良好な反応であったことがわかった。
【0046】
200℃での加工に加えて、試料は、ポリプロピレンより高い温度で加工されるポリマー中のこれらのGRAS酸の使用をシミュレートするために250℃のPPで実行された。試料はまた、長時間にわたってポリマー材料の温度を保持する長いサイクル時間でのプロセスをシミュレートするために射出成形機における長い滞留時間(標準の30秒滞留時間から120秒滞留時間まで)を使用して実施された。長いサイクルは、200℃と240℃の両方で実施された。これらの実施から生成された試料はまた、優れた抗菌効果及び極めて少ない美観的変化(高温でのわずかの黒化)を示した。
【0047】
表3は、製造関係環境において熱安定性を示す、射出成形機において240℃で2分の長い滞留時間で保持された試料によって生成された対数減少値を示す。
表4 0.1%GBAを有するPE及びEVA試料の対数減少値
表5 ASTM E2180プロトコルを使用する酵母状真菌Candida albicans(Ca)及び真菌Aspergillus niger(An)に対するGBA処理されたPE及びEVAの効果
【0048】
定性的な方法を使用して菌に対して安息香酸及びソルビン酸で処理された材料を試験することは、未処理と処理の間にいかなる差も示さなかった。ほとんどのプラスチックは、真菌生長を支持せず、AATCC TM30(part3)又はASTM G21のような一般の工業的な定性的標準規格は、効果を示すのに十分な感受性がなかった。未処理のPP又はPE材料ですら、試験後に観察可能な真菌生長を示さないことが多い。しかしながら、ASTM E2180プロトコルの定性的な菌法は、より感受性があり、材料中への安息香酸のようなGRAS有機酸の混入がPEについては真菌生長の99%(2 log)以上の減少を与え、EVAに混入されるときに90%以上の減少を与えることを示す。安息香酸又はソルビン酸への精油の添加は、処理された材料の抗真菌効果をさらに高めるだろう。
【0049】
それゆえ、本発明が広い有用性及び用途を受け入れる余地があることは、当業者によって容易に理解されるだろう。ここで記載したもの以外の多くの実施形態及び適応例、並びに多くの変形例、修正例、及び均等構成は、本発明の実体又は範囲から逸脱せずに、本発明及びその前述の記載から明らかであるか、又はそれによって当業者に合理的に示唆されるだろう。従って、本発明は、その好ましい実施形態に関してここで詳細に記載されたが、この開示が本発明の実例及び例示にすぎず、本発明の完全でかつ実現可能な開示を与える目的のためにのみなされていることが理解されるべきである。前述の開示は、かかる他の実施形態、適応例、変形例、修正例、及び均等構成を制限したり、又はそうでなければ除外することも意図されていないし、そのように解釈されるべきでない。
以下の項目は、国際出願時の特許請求の範囲に記載の内容である。
(項目1)
材料表面の微生物制御のための組成物であって、組成物が、ポリマー材料、及び抗菌又は保存特性を有するGRAS添加剤又は成分を含み、組成物が、抗菌特性を示す、組成物。
(項目2)
GRAS添加剤が、最小危険殺菌剤である、項目1に記載の組成物。
(項目3)
GRAS添加剤が、安息香酸、プロピオン酸、ソルビン酸、クエン酸、乳酸、アスコルビン酸、酢酸、エリトルビン酸、フマル酸、リンゴ酸、グリコール酸、それらの誘導体、及びそれらの組み合わせから選択される、項目1に記載の組成物。
(項目4)
GRAS添加剤が、食品保存剤である、項目1に記載の組成物。
(項目5)
GRAS添加剤が、有機酸である、項目1に記載の組成物。
(項目6)
有機酸が、安息香酸、プロピオン酸、ソルビン酸、クエン酸、乳酸、アスコルビン酸、酢酸、エリトルビン酸、フマル酸、リンゴ酸、グリコール酸、それらの誘導体、及びそれらの組み合わせから選択される、項目5に記載の組成物。
(項目7)
有機酸が、安息香酸、ソルビン酸、クエン酸、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、項目6に記載の組成物。
(項目8)
精油をさらに含む、項目1に記載の組成物。
(項目9)
精油が、セダー油、ティーツリー油(Melaleuca alternifolia)、ユーカリ油(Eucalyptus globulus又はE.radiata)、クローブ油(Eugenia caryophyllata)、オレガノ油(Origanum vulgare)、タイム油(Thymus vulgaris)、ゼラニウム油(Pelargonium graveolens)、桂皮油(Cinnamomum zeylanicum)、ペパーミント油(Mentha piperita)、レモングラス油(Cymbopogon flexuosus)、バジル油(Ocimum basilicum)、ラベンダー油(Lavandula angustifolia)、レモン油(Citrus limon)、ローズマリー油(Salvia rosmarinus)、ベルガモット油(Citrus bergamia)、シソ油(Perilla frutescens)、コリアンダー油(Coriandrum sativum)、シトロン油(Citrus medica)、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、項目8に記載の組成物。
(項目10)
臭気緩和化合物をさらに含む、項目1に記載の組成物。
(項目11)
臭気緩和化合物が、金属酸化物、活性炭素、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、リシノレイン酸亜鉛、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、項目10に記載の組成物。
(項目12)
組成物が、ポリマー濃縮物の形態である、項目1に記載の組成物。
(項目13)
ポリマー濃縮物が、組成物の1~60重量%の活性濃度を有する、項目12に記載の組成物。
(項目14)
活性濃度が、組成物の5~40重量%である、項目13に記載の組成物。
(項目15)
ポリマー濃縮物が、被覆のためのポリマー結合剤である、項目12に記載の組成物。
(項目16)
ポリマー結合剤が、溶液に基づいて0.1~40%の固形分の活性濃度を有する、項目15に記載の組成物。
(項目17)
ポリマー結合剤が、アクリル、アクリレート、ウレタン、イソシアネート、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ヘキサフルオロプロピレン、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ポリアミド、ポリイミド、又はそれらの組み合わせである、項目15に記載の組成物。
(項目18)
ポリマー結合剤が、オリゴマー、ホモポリマー、コポリマー又はエラストマーとのいずれかの組み合わせで添加される、項目15に記載の組成物。
(項目19)
ポリマー結合剤が、水性もしくは非水性であるか、又は微量の共溶媒を含む、項目15に記載の組成物。
(項目20)
一種より多い有機酸が、組み合わせて使用され、活性酸の全重量が、最終組成物の5~40重量%である、項目5に記載の組成物。
(項目21)
精油が、組成物の1~50重量%の濃度である、項目8に記載の組成物。
(項目22)
臭気緩和化合物が、組成物の1~60重量%の濃度である、項目10に記載の組成物。
(項目23)
材料表面の微生物制御のための方法であって、抗菌又は保存特性を有するGRAS添加剤又は成分をポリマー材料中に入れることを含む方法。
(項目24)
GRAS抗菌/保存成分が、有機酸である、項目21に記載の方法。
(項目25)
有機酸が、安息香酸、プロピオン酸、ソルビン酸、クエン酸、乳酸、アスコルビン酸、酢酸、エリトルビン酸、フマル酸、リンゴ酸、グリコール酸、それらの誘導体、及びそれらの組み合わせから選択される、項目24に記載の方法。
(項目26)
有機酸が、安息香酸、ソルビン酸、クエン酸、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、項目25に記載の方法。
(項目27)
抗菌又は保存特性を有するGRAS添加剤又は成分と共に精油を入れることをさらに含む、項目23に記載の方法。
(項目28)
精油が、セダー油、ティーツリー油(Melaleuca alternifolia)、ユーカリ油(Eucalyptus globulus又はE.radiata)、クローブ油(Eugenia caryophyllata)、オレガノ油(Origanum vulgare)、タイム油(Thymus vulgaris)、ゼラニウム油(Pelargonium graveolens)、桂皮油(Cinnamomum zeylanicum)、ペパーミント油(Mentha piperita)、レモングラス油(Cymbopogon flexuosus)、バジル油(Ocimum basilicum)、ラベンダー油(Lavandula angustifolia)、レモン油(Citrus limon)、ローズマリー油(Salvia rosmarinus)、ベルガモット油(Citrus bergamia)、シソ油(Perilla frutescens)、コリアンダー油(Coriandrum sativum)、シトロン油(Citrus medica)、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、項目27に記載の方法。
(項目29)
GRAS添加剤又は成分が、マスターバッチの形態で添加される、項目23に記載の方法。
(項目30)
マスターバッチが、キャリアとして低融点ポリマー又はコポリマーを有する、項目29に記載の方法。
(項目31)
キャリアが、ポリマー材料と相溶性である、項目30に記載の方法。
(項目32)
ポリマー材料が、PP,EMA、ポリオレフィン、SAN,TPU,ABS,PS及びPC及びPVC、並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される、項目23に記載の方法。
(項目33)
GRAS添加剤又は成分を内部に入れたポリマー材料で物品を形成することをさらに含む、項目23に記載の方法。
(項目34)
抗菌又は保存特性を有するGRAS添加剤又は成分が、物品の0.05~10重量%の活性濃度の範囲で存在する、項目33に記載の方法。
(項目35)
精油が、物品の0.05~5.0重量%の活性濃度の範囲で存在する、項目30に記載の方法。
(項目36)
臭気緩和化合物をさらに含む、項目23に記載の方法。
(項目37)
臭気緩和化合物が、物品の0.05~10重量%の活性濃度の範囲で存在する、項目36に記載の方法。
(項目38)
GRAS添加剤又は成分を内部に入れたポリマー材料で被覆を形成することをさらに含む、項目23に記載の方法。
(項目39)
抗菌又は保存特性を有するGRAS添加剤又は成分が、被覆の0.05~10重量%の濃度の範囲で存在する、項目38に記載の方法。
(項目40)
被覆が、0.5%活性濃度の安息香酸を有するPVDCポリマー結合剤水性被覆である、項目38に記載の方法。
図1
図2