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特許7575465組成物、樹脂組成物、正極用組成物、正極用スラリー、正極、および二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】組成物、樹脂組成物、正極用組成物、正極用スラリー、正極、および二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/62 20060101AFI20241022BHJP
   C08L 51/06 20060101ALI20241022BHJP
   C08L 29/04 20060101ALI20241022BHJP
   C08F 261/04 20060101ALI20241022BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20241022BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20241022BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20241022BHJP
   H01M 4/131 20100101ALI20241022BHJP
   H01M 4/1391 20100101ALI20241022BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20241022BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20241022BHJP
   H01M 4/64 20060101ALI20241022BHJP
   H01M 4/66 20060101ALI20241022BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20241022BHJP
   H01M 10/054 20100101ALI20241022BHJP
【FI】
H01M4/62 Z
C08L51/06
C08L29/04 C
C08F261/04
C08K3/04
H01M4/139
H01M4/13
H01M4/131
H01M4/1391
H01M4/505
H01M4/525
H01M4/64 A
H01M4/66 A
H01M10/052
H01M10/054
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2022542867
(86)(22)【出願日】2021-08-11
(86)【国際出願番号】 JP2021029651
(87)【国際公開番号】W WO2022034901
(87)【国際公開日】2022-02-17
【審査請求日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】P 2020136307
(32)【優先日】2020-08-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】石垣 雄平
(72)【発明者】
【氏名】菅藤 諒介
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 淳
【審査官】横山 法緒
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-095823(JP,A)
【文献】特表平06-506252(JP,A)
【文献】国際公開第2016/024525(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/154949(WO,A1)
【文献】特表2010-521798(JP,A)
【文献】国際公開第2018/230599(WO,A1)
【文献】特開2001-256980(JP,A)
【文献】特開2013-048043(JP,A)
【文献】特開2004-227974(JP,A)
【文献】国際公開第2020/162503(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/162505(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/209260(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08F 261/00-261/12
C08K 3/00-13/08
H01M 4/00-4/98
H01M 10/05-10/0587
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極用組成物であって、
パルスNMRを用いて、Solid Echo法で、180℃で測定した前記正極用組成物の自由誘導減衰曲線を、成分S180、成分M180、成分H180の3成分に分離したとき、
前記成分S180の成分比が、10%以上80%以下であり、
前記成分S180の緩和時間が500μ秒以上である、
正極用組成物。
【請求項2】
前記成分H180の成分比が、20%以上80%以下であり、
前記成分H180の緩和時間が100μ秒以下である、
請求項1に記載の正極用組成物。
【請求項3】
パルスNMRを用いて、Solid Echo法で、27℃で測定した前記正極用組成物の自由誘導減衰曲線を、成分S27、成分M27、成分H27の3成分に分離したとき、
前記成分H27の成分比が、60%以上100%未満であり、
前記成分H27の緩和時間が、50μ秒以下である、
請求項1又は2に記載の正極用組成物。
【請求項4】
前記成分M180の成分比が、30%以上であり、
前記成分M180の緩和時間が100μ秒超、500μ秒未満であり、
前記成分S180の成分比が、50%以下であり、
前記成分H180の成分比が、60%以下である、
請求項1~3のいずれかに記載の正極用組成物。
【請求項5】
前記成分S180の成分比と前記成分M180の成分比の和が、前記成分H180の成分比より大きい、
請求項1~4のいずれかに記載の正極用組成物。
【請求項6】
前記正極用組成物は、グラフト共重合体を含有し、
前記グラフト共重合体は、幹ポリマー及び枝ポリマーを有し、
前記幹ポリマーは、ポリビニルアルコール構造を含み、
前記枝ポリマーは、(メタ)アクリロニトリル単量体単位及び/又は(メタ)アクリル酸単量体を含む第一単量体単位を含む、請求項1~5のいずれかに記載の正極用組成物。
【請求項7】
前記第一単量体単位は、(メタ)アクリロニトリル単量体単位を含む、請求項6に記載の正極用組成物。
【請求項8】
前記正極用組成物は、遊離ポリマーを更に含み、
前記遊離ポリマーは、前記グラフト共重合体と共有結合を有さず、
前記遊離ポリマーは、前記第一単量体単位を含むポリマーを少なくとも含む、
請求項6または7に記載の正極用組成物。
【請求項9】
前記グラフト共重合体は、架橋剤に由来する架橋部を更に含む、請求項6~8のいずれかに記載の正極用組成物。
【請求項10】
前記正極用組成物は、前記正極用組成物を100質量部としたとき、前記架橋剤に由来する構造を0.2~10質量部含む、請求項9に記載の正極用組成物。
【請求項11】
前記グラフト共重合体のグラフト率は、40~3000%である、請求項6~10のいずれかに記載の正極用組成物。
【請求項12】
前記正極用組成物中のポリビニルアルコール構造の鹸化度は、60~100mol%である、請求項6~11のいずれかに記載の正極用組成物。
【請求項13】
前記正極用組成物中のポリビニルアルコール構造の平均重合度は、300~4000である、請求項6~12のいずれかに記載の正極用組成物。
【請求項14】
請求項1~請求項13のいずれかに記載の正極用組成物を含有する、正極用樹脂組成物。
【請求項15】
請求項1~13のいずれかに記載の正極用組成物、正極活物質及び導電助剤を含有する、正極用スラリー。
【請求項16】
前記正極用スラリー中の固形分総量を100質量%としたとき、前記正極用組成物の固形分含有量が1~20質量%である、請求項15に記載の正極用スラリー。
【請求項17】
前記導電助剤が、繊維状炭素、カーボンブラック、繊維状炭素とカーボンブラックとが相互に連結した炭素複合体からなる群から選択される1種以上である、請求項15又は16に記載の正極用スラリー。
【請求項18】
金属箔及び、前記金属箔上に形成された請求項1517の何れか一項に記載の正極用スラリーの塗膜を備える正極。
【請求項19】
請求項18に記載の正極を備える二次電池であって、前記二次電池は、リチウムイオン二次電池、ナトリウムイオン二次電池、マグネシウムイオン二次電池、又はカリウムイオン二次電池からなる群から選択される1種以上である、二次電池。
【請求項20】
前記正極活物質が、LiNiMn(2-X)(但し、0<X<2)、Li(CoNiMn)O(但し、0<X<1、0<Y<1、0<Z<1、且つX+Y+Z=1)、及びLi(NiCoAl)O(但し、0<X<1、0<Y<1、0<Z<1、且つX+Y+Z=1)から選択される少なくとも1種以上を含み、かつ、二次電池がリチウムイオン二次電池である請求項19に記載の二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組成物、樹脂組成物、正極用組成物、正極用スラリー、正極、および二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ノート型パソコン、携帯電話といった電子機器の電源として二次電池が利用されており、環境負荷の低減を目的に二次電池を電源として用いるハイブリット自動車や電気自動車の開発が進められている。それらの電源に高エネルギー密度、高電圧、高耐久性の二次電池が求められている。リチウムイオン二次電池は高電圧、高エネルギー密度を達成できる二次電池として注目を集めている。
【0003】
リチウムイオン二次電池は正極、負極、電解質、セパレータの部材からなり、正極は正極活物質、導電助剤、金属箔、バインダーから構成されている(特許文献1~3)。
【0004】
リチウムイオン二次電池用正極バインダーとして、ポリビニルアルコールおよびポリアクリロニトリルを主成分とするバインダー(グラフト共重合体)が開示されている(特許文献4)。
【0005】
また、リチウムイオン二次電池用正極バインダーとして、ポリビニルアルコールを有する幹ポリマーに、(メタ)アクリロニトリルおよび(メタ)アクリル酸エステルを主成分とする単量体がグラフト共重合したグラフト共重合体を含有する組成物が開示されている(特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2013-98123号公報
【文献】特開2013-84351号公報
【文献】特開平6-172452号公報
【文献】国際公開第2015/053224号公報
【文献】国際公開第2018/230599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、高容量電極での電池性能低下の抑制、高温保管特性、直流抵抗のバランスに優れた電池を得ることができる組成物、該組成物を用いた正極用スラリー、正極、および二次電池の開発が求められていた。
【0008】
本発明はこのような問題を鑑みてなされたものであり、高容量電極での電池性能の低下の抑制、高温保管特性、直流抵抗のバランスに優れたバインダーとなる組成物、該組成物を用いた正極用スラリー、正極、および二次電池を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、パルスNMRを用いて、Solid Echo法で、180℃で測定した前記組成物の自由誘導減衰曲線を、成分S180、成分M180、成分H180の3成分に分離したとき、前記成分S180の成分比が、10%以上80%以下であり、前記成分S180の緩和時間が500μ秒以上である、
組成物が提供される。
【0010】
本発明者らは、鋭意検討を行ったところ、パルスNMRを用いた、Solid Echo法で、180℃で測定した前記組成物の自由誘導減衰曲線を、成分S180、成分M180、成分H180の3成分に分離したとき、緩和時間が500μ秒以上である成分S180の成分比を所定の範囲内とすることで、該組成物を正極用バインダーとした際、高容量電極での電池性能の低下の抑制、高温保管特性、直流抵抗のバランスに優れたバインダーとなることを見出し本発明の完成に至った。
【0011】
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は互いに組み合わせ可能である。
好ましくは、前記成分H180の成分比が、20%以上80%以下であり、前記成分H180の緩和時間が100μ秒以下である。
好ましくは、パルスNMRを用いて、Solid Echo法で、27℃で測定した前記組成物の自由誘導減衰曲線を、成分S27、成分M27、成分H27の3成分に分離したとき、前記成分H27の成分比が、60%以上100%未満であり、前記成分H27の緩和時間が、50μ秒以下である。
好ましくは、前記成分M180の成分比が、30%以上であり、前記成分M180の緩和時間が100μ秒超、500μ秒未満であり、前記成分S180の成分比が、50%以下であり、前記成分H180の成分比が、60%以下である。
好ましくは、前記成分S180の成分比と前記成分M180の成分比の和が、前記成分H180の成分比より大きい。
好ましくは、前記組成物は、グラフト共重合体を含有し、前記グラフト共重合体は、幹ポリマー及び枝ポリマーを有し、前記幹ポリマーは、ポリビニルアルコール構造を含み、前記枝ポリマーは、(メタ)アクリロニトリル単量体単位及び/又は(メタ)アクリル酸単量体を含む第一単量体単位を含む。
好ましくは、前記組成物は、遊離ポリマーを更に含み、前記遊離ポリマーは、前記グラフト共重合体と共有結合を有さず、前記遊離ポリマーは、前記第一単量体単位を含むポリマーを少なくとも含む。
好ましくは、前記グラフト共重合体は、架橋剤に由来する架橋部を更に含む。
好ましくは、前記組成物は、前記組成物を100質量部としたとき、前記架橋剤に由来する構造を0.2~10質量部含む。
好ましくは、前記グラフト共重合体のグラフト率は、40~3000%である。
好ましくは、前記組成物中のポリビニルアルコール構造の鹸化度は、60~100mol%である。
好ましくは、前記組成物中のポリビニルアルコール構造の平均重合度は、300~4000である。
好ましくは、前記組成物を含有する樹脂組成物である。
好ましくは、前記組成物を含有する正極用組成物である。
【0012】
本発明の別の観点によれば、前記組成物、正極活物質および導電助剤を含有する、正極用スラリーが提供される。
好ましくは、正極用スラリーは、前記正極用スラリー中の固形分総量を100質量%としたとき、前記組成物の固形分含有量が1~20質量%である。
好ましくは、前記導電助剤が、繊維状炭素、カーボンブラック、繊維状炭化水素とカーボンブラックとが相互に連結した炭素複合体からなる群から選択される1種以上である。
本発明の別の観点によれば、金属箔及び、前記金属箔上に形成された前記の何れかに記載の正極用スラリーの塗膜を備える正極が提供される。
本発明の別の観点によれば、前記に記載の正極を備える二次電池であって、前記二次電池は、リチウムイオン二次電池、ナトリウムイオン二次電池、マグネシウムイオン二次電池、又はカリウムイオン二次電池からなる群から選択される1種以上である、二次電池が提供される。
好ましくは、前記正極活物質が、LiNiMn(2-X)(但し、0<X<2)、Li(CoNiMn)O(但し、0<X<1、0<Y<1、0<Z<1、且つX+Y+Z=1)、及びLi(NiCoAl)O(但し、0<X<1、0<Y<1、0<Z<1、且つX+Y+Z=1)から選択される少なくとも1種以上を含み、かつ、二次電池がリチウムイオン二次電池である二次電池が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、正極用バインダーとした際、高容量電極での電池性能の低下の抑制、高温保管特性、直流抵抗のバランスに優れたバインダーとなる組成物、該組成物を用いた正極用スラリー、正極、および二次電池を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各種特徴事項について独立して発明が成立する。
【0015】
1.組成物
本発明の一実施形態に係る組成物は、樹脂組成物とできる。
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物は、本発明の一実施形態に係る組成物を含み、好ましくは、本発明の一実施形態に係る組成物から成る。
また、本発明の一実施形態に係る組成物は、正極用組成物して使用できる。
本発明の一実施形態に係る正極用組成物は、本発明の一実施形態に係る組成物を含み、好ましくは、本発明の一実施形態に係る組成物から成る。
本発明の一実施形態に係る組成物は、パルスNMRを用いて、Solid Echo法で、180℃で測定した前記組成物の自由誘導減衰曲線を、成分S180、成分M180、成分H180の3成分に分離したとき、成分S180の成分比が、10%以上80%以下であり、成分S180の緩和時間が500μ秒以上である。
【0016】
一般に、NMR法は分子の構造解析を行う手法として知られている。特にパルスNMR法は、緩和時間から、分子の運動性を評価することが可能である。樹脂組成物等の試料に、磁場をパルスとして与えると,サンプル中のプロトンの核スピンは,向きの揃った励起状態となる。ここで、これが元のランダムな基底状態に戻るまでの過程を緩和と呼び、この過程に要する時間を緩和時間と呼ぶ。緩和時間は、試料の分子運動性に依存し、分子運動性が高いサンプルの緩和時間は長く、分子運動性が低いサンプルの緩和時間は短い。樹脂組成物等の試料をパルスNMRにより測定することよって得られる自由誘導減衰曲線は、緩和時間が長い成分S(分子運動性が高い成分)、緩和時間が中程度である成分M(分子運動性が中程度である成分)、緩和時間が短い成分H(分子運動性が低い成分)の3成分に波形分離することができる。すなわち、実測された成分は、これらの複数の成分に由来する自由誘導減衰曲線の積算値である。また、高温下で樹脂組成物等のパルスNMR測定を行うことによって、組成物中の結晶成分が緩和され、室温では見えにくい構造の内部の分子運動性に関する情報、特に、分子運動性が高いソフト成分に関する情報を得ることができるものと考えられる。
【0017】
本発明の一実施形態に係る組成物は、180℃で測定した自由誘導減衰曲線の、成分S180の成分比および緩和時間が所定の範囲内である。上記したように、成分S180の成分比は、運動性が高い分子の量の指標となる。本発明の一実施形態に係る組成物は、組成物中に運動性が高い分子構造を所定の量有するため、組成物の内部に入り込む電解液を適度に制御しつつ、空孔体積を維持することができ、高い電池特性を有し、かつ、高温保管時の放電容量の低下を抑制することができると推測される。
【0018】
本発明の一実施形態に係る組成物は、パルスNMRを用いて、Solid Echo法で、180℃で測定した前記組成物の自由誘導減衰曲線を、成分S180、成分M180、成分H180の3成分に分離したとき、成分S180の成分比が、10%以上80%以下であり、成分S180の緩和時間が500μ秒以上である。成分S180の成分比は、15%以上70%以下であることが好ましく、20%以上60%以下であることが更により好ましい。成分S180の成分比は、例えば、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80%のいずれかであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。成分S180の緩和時間は、500~1500μ秒であることが好ましく、550~1400μ秒であることがより好ましい。
【0019】
本発明の一実施形態に係る組成物は、成分H180の成分比が、20%以上80%以下であり、
成分H180の緩和時間が100μ秒以下であることが好ましい。成分H180の成分比は、20%以上70%以下であることが好ましく、20%以上60%以下であることがより好ましい。成分H180の成分比は、例えば、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80%のいずれかであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。成分H180の緩和時間は、10~100μ秒であることが好ましく、20~90μ秒であることがより好ましい。
本発明の一実施形態に係る組成物は、180℃で測定した自由誘導減衰曲線の、成分H180の成分比および緩和時間が所定の範囲内であり、組成物中に運動性が低い分子構造を適度に有することで、組成物の内部に入り込む電解液をより適度に制御しつつ、空孔体積を維持することができ、高い電池特性を有し、かつ、高温保管時の放電容量の低下を抑制することができると推測される。
【0020】
本発明の一実施形態に係る組成物は、成分M180の成分比が、30%以上であり、成分M180の緩和時間が100μ秒超、500μ秒未満であることが好ましい。成分M180の成分比は、30%以上70%以下であることが好ましく、30%以上60%以下であることがより好ましい。成分M180の緩和時間は、110~400μ秒であることが好ましく、120~300μ秒であることがより好ましい。
また、成分M180の成分比が、上記範囲内である時、成分S180の成分比を50%以下、成分H180の成分比を60%以下とできる。
【0021】
本発明の一実施形態に係る組成物は、成分S180の成分比と成分M180の成分比の和が、成分H180の成分比より大きいことが好ましい。これにより、組成物の運動性が高い分子と運動性が低い成分のバランスに優れる組成物となり、より高い電池特性を有し、かつ、高温保管時の放電容量の低下を抑制することができると考えられる。
【0022】
本発明の一実施形態に係る組成物は、パルスNMRを用いて、Solid Echo法で、27℃で測定した前記組成物の自由誘導減衰曲線を、成分S27、成分M27、成分H27の3成分に分離したとき、成分H27の成分比が、60%以上100%未満であり、成分H27の緩和時間が50μ秒以下であることが好ましい。成分H27の成分比は、70%以上100%未満であることが好ましく、80%以上100%未満であることが更により好ましい。成分H27の緩和時間は、1~50μ秒であることが好ましく、3~30μ秒であることがより好ましい。
【0023】
本発明の一実施形態に係る組成物は、成分M27の成分比が、0%超40%未満であり、成分M27の緩和時間が100μ秒以上であることが好ましい。成分M27の成分比は、0%超30%以下であることが好ましく、0%超20%以下であることが更により好ましい。成分M27の緩和時間は、100~500μ秒であることが好ましく、150~400μ秒であることがより好ましい。
本発明の一実施形態に係る組成物は、成分S27に相当する成分を有しないものとできる。ここで、成分S27に相当する成分とは、好ましくは緩和時間が500μ秒以上である成分である。
【0024】
本発明の一実施形態に係る組成物は、パルスNMRを用いて、Solid Echo法で、150℃で測定した前記組成物の自由誘導減衰曲線を、成分S150、成分M150、成分H150の3成分に分離したとき、成分S150に相当する成分を有することが好ましい。ここで、成分S150に相当する成分とは、好ましくは緩和時間が500μ秒以上である成分である。本発明の一実施形態に係る組成物は、成分S150の成分比が、3%以上40%以下、成分S150の緩和時間が500~1500μ秒、成分M150の成分比が20%以上60%以下、成分M150の緩和時間が100超500μ秒未満、成分H150の成分比が、20%以上60%以下、成分H150の緩和時間が10~100μ秒であることが好ましく、成分S150の成分比が5%以上35%以下、成分S150の緩和時間が500~1000μ秒、成分M150の成分比が、25%以上55%以下、成分M150の緩和時間が110~400μ秒、成分H150の成分比が、25%以上55%以下、成分H150の緩和時間が20~90μ秒であることがより好ましい。
【0025】
本発明の一実施形態に係る組成物は、パルスNMRを用いて、Solid Echo法で、120℃で測定した前記組成物の自由誘導減衰曲線を、成分S120、成分M120、成分H120の3成分に分離したとき、成分S120に相当する成分を有することが好ましい。ここで、成分S120に相当する成分とは、好ましくは緩和時間が500μ秒以上である成分である。本発明の一実施形態に係る組成物は、成分S120の成分比が、1%以上40%以下、成分S120の緩和時間が500~1500μ秒、成分M120の成分比が20%以上60%以下、成分M120の緩和時間が50超500μ秒未満、成分H120の成分比が、20%以上60%以下、成分H120の緩和時間が10~50μ秒であることが好ましく、成分S120の成分比が5%以上35%以下、成分S120の緩和時間が500~1000μ秒、成分M120の成分比が、25%以上55%以下、成分M120の緩和時間が55~400μ秒、成分H120の成分比が、25%以上55%以下、成分H120の緩和時間が10~50μ秒であることがより好ましい。
【0026】
本発明の一実施形態に係る組成物は、好ましくはグラフト共重合体を含有する組成物であり、樹脂組成物である。グラフト共重合体は、幹ポリマーおよび枝ポリマーを有し、好ましくは、幹ポリマーおよび複数の枝ポリマーを有する。以下、重合体を、共重合体ということもある。
【0027】
1-1.グラフト共重合体
本発明の一実施形態に係るグラフト共重合体は、幹ポリマーに対し、少なくとも第1単量体をグラフト共重合させることにより合成できる。重合により生成した枝ポリマーは、幹ポリマーにグラフト、すなわち共有結合している。この際、グラフトされていない幹ポリマーや、幹ポリマーにグラフトしていない、すなわちグラフト共重合体に共有結合していない第1単量体を含む重合体が、遊離ポリマーとして同時に生成することがある。従って、本発明の一実施形態に係る樹脂組成物は、グラフト共重合体および遊離ポリマーを含むことができる。
【0028】
本発明の一実施形態に係るグラフト共重合体は、架橋剤に由来する架橋部を更に含むことができる。架橋部は、枝ポリマー同士を架橋するか、幹ポリマーと枝ポリマーとを架橋するか、または幹ポリマー同士を架橋する、架橋剤に由来する構造を意味する。本発明の一実施形態に係るグラフト共重合体は、幹ポリマーに対し、少なくとも第1単量体をグラフト共重合させ、幹ポリマーまたは枝ポリマーのいずれかと、幹ポリマーまたは枝ポリマーのいずれかとを架橋することによって、得ることができる。本発明の一実施形態に係る組成物は、第1単量体を含む重合体に加え、架橋剤に由来する構造を含む重合体を、遊離ポリマーとして含むこともできる。
【0029】
本発明の一実施形態に係るグラフト共重合体は、本発明の効果を損なわない範囲で、エーテル構造を含む第2単量体単位、並びに、第1単量体単位および第2単量体単位以外の単量体単位を含んでいてもよい。本発明の一実施形態に係る組成物は、遊離ポリマーとして、第2単量体単位を含む重合体、並びに、第1単量体単位および第2単量体単位以外の単量体単位を含む重合体をこともできる。
【0030】
グラフト共重合体のグラフト率は、好ましくは40~3000%であり、より好ましくは150~900%である。溶解性の観点からグラフト率は上記範囲であることが好ましい。グラフト率が上記下限以上であると、スラリーにする際に溶媒(例えば、NMP(N-メチル-2-ピロリドン))に対する溶解性が向上し、上記上限以下であるとスラリーの粘度が低下し、スラリーの流動性が向上する。
【0031】
1-2.幹ポリマー
幹ポリマーは、ポリビニルアルコール構造を有する。ここで、ポリビニルアルコール構造は、例えば、酢酸ビニルモノマーを重合したポリ酢酸ビニルを鹸化して合成されるポリビニルアルコールに由来する構造である。好ましくは、幹ポリマーは、大部分がポリビニルアルコール構造によって構成されている。より好ましくは、幹ポリマーは、ポリビニルアルコールである。
【0032】
樹脂組成物中のポリビニルアルコール構造の平均重合度は、好ましくは300~4000であり、より好ましくは500~2000である。当該平均重合度が、このような範囲にあると、スラリーの安定性が特に高い。また、溶解性、結着性、およびバインダーの粘度の観点からも上記範囲であることが好ましい。平均重合度が300以上だとバインダーと活物質および導電助剤との間の結着性が向上し、耐久性が向上する。また、平均重合度が4000以下だと溶解性が向上し、粘度が低下するため、正極用スラリーの製造が容易になる。ここでいう平均重合度は、JIS K 6726に準ずる方法で測定される値である。
組成物中のポリビニルアルコール構造の鹸化度は、好ましくは60~100mol%であり、より好ましくは80~100mol%である。当該鹸化度が、このような範囲にある場合にスラリーの安定性が特に高い。ここでいう鹸化度は、JIS K 6726に準ずる方法で測定される値である。
【0033】
1-3.枝ポリマー
枝ポリマーは、少なくとも第1単量体単位を含む。また、枝ポリマーは、本発明の効果を損なわない範囲で、第2単量体単位、並びに、第1単量体単位および第2単量体単位以外の単量体単位を含んでも良い。ここで、第1単量体単位、第2単量体単位とは、それぞれグラフト共重合体の合成に用いた第1単量体、第2単量体に由来する単量体単位である。
【0034】
1-4.架橋部
本発明の一実施形態に係るグラフト共重合体は、架橋部を更に含んでいてもよい。架橋部は、架橋剤に由来する構造であって、グラフト共重合体の、枝ポリマー同士、幹ポリマーと枝ポリマー、または幹ポリマー同士を連結する。架橋部は、好ましくは、グラフト共重合体の、枝ポリマー同士を架橋する。架橋部は、エーテル構造を含むことが好ましく、アルキレングリコール繰り返し単位を含むことがより好ましくは、エチレングリコール繰り返し単位を含むことが最も好ましい。
【0035】
本発明の一実施形態に係る架橋剤は、二官能性または多官能性の化合物であり、極性溶媒に可溶な化合物であることが好ましく、第一単量体に可溶であることが好ましい。
架橋剤としては、上記要件を満たせば特に制限はないが、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、オリゴエチレングリコールジ(メタ)アクリレート(ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート)、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートのようなアルカンポリオール-ポリ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼンを挙げることができる。この中でも、オリゴエチレングリコールジ(メタ)アクリレートが好ましい。
オリゴエチレングリコールジ(メタ)アクリレートの中では、下記の一般式(B)で表されるジ(メタ)アクリレートが好ましい。
C=CR21-COO-(-CHCHO-)-CO-CR22=CH (B)
一般式(B)において、R21、R22は、水素(H)またはメチル基である。R21、R22は、同一でも異なっても良い。nは0以上の数である。nは1以上が好ましい。nは30以下が好ましく、10以下がより好ましい。
架橋剤は、エーテル構造を含むことが好ましく、エチレングリコール繰り返し単位を有することがより好ましい。エチレングリコール繰り返し単位は、好ましくは2以上20以下であり、より好ましくは、5以上、15以下であり、例えば、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
本発明の一実施形態に係るグラフト共重合体は、例えば、架橋部の種類および配合量を調整することによって、樹脂組成物における運動性の高い成分および運動性の低い成分の比を制御することができる。
【0036】
1-4.遊離ポリマー
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物は、遊離ポリマーを更に含んでいてもよい。遊離ポリマーは、前記グラフト共重合体と共有結合を有しないポリマーであり、ポリビニルアルコール構造を含むポリマー、および/または、前記第1単量体単位を含むポリマーを少なくとも含む。ポリビニルアルコール構造を有するポリマーとは、主にグラフト共重合に関与しなかった幹ポリマーを意味する。また、第1単量体単位を含むポリマーとは、第1単量体の単独重合体、第1単量体単位および第2単量体単位を含む共重合体、第1単量体並びに第1単量体単位および第2単量体単位以外の単量体単位を含む共重合体、または、第1単量体および架橋剤由来の構造を含む共重合体を含むポリマーであって、グラフト共重合体(すなわち、幹ポリマー)に共重合していないものを意味する。また、本発明の効果を損なわない範囲で、遊離ポリマーには、ポリビニルアルコール構造を有するポリマーおよび第1単量体単位を含むポリマー以外のポリマー、例えば、第2単量体の単独重合体、第1単量体および第2単量体以外の単量体の単独重合体、架橋剤由来の構造を含むポリマーであって、グラフト共重合体(すなわち、幹ポリマー)に共重合していないものが含まれていてもよい。遊離ポリマーは、好ましくは実質的に第1単量体単位を含むポリマーである。
【0037】
また、遊離ポリマーのうち幹ポリマー以外の遊離ポリマー、例えば第1単量体の単独重合体、を含む共重合体等の重量平均分子量は、30000~250000が好ましく、40000~200000がより好ましく、50000~150000が更に好ましい。粘度上昇を抑えて、正極用スラリーを容易に製造し得る観点から、幹ポリマー以外の遊離ポリマーの重量平均分子量は300000以下が好ましく、200000以下がより好ましく、150000以下が更に好ましい。幹ポリマー以外の遊離ポリマーの重量平均分子量は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)により求めることができ、具体的には後述の方法で測定することができる。
【0038】
1-6.第1単量体単位
第1単量体単位は、(メタ)アクリロニトリル単量体単位および/または(メタ)アクリル酸単量体単位である。第1単量体単位は、より好ましくは(メタ)アクリロニトリル単量体単位であり、更に好ましくはアクリロニトリル単量体単位である。
すなわち、グラフト共重合体を合成する際に用いる第1単量体は、好ましくは、(メタ)アクリロニトリルおよび/または(メタ)アクリル酸であり、より好ましくは(メタ)アクリロニトリルであり、更に好ましくはアクリロニトリルである。よって、第1単量体単位はこれらに由来する構造を有する。
【0039】
1-7.第2単量体単位
第2単量体単位は、エーテル構造を含む構造体単位であり、単官能である第2単量体由来の構造である。
第2単量体単位は、エーテル構造を有する単官能の化合物である。エーテル構造は、好ましくは、直鎖状ポリエーテル構造、分岐状ポリエーテル構造、および環状エーテル構造から選ばれる少なくとも1つを有する。より好ましくは、エーテル構造が、ポリエチレンオキサイド構造を有する。
また、第2単量体単位は、好ましくは、(メタ)アクリル酸エステル誘導体、スチレン誘導体、多置換エチレン、またはビニルエーテル誘導体である単量体由来の構造を有する。
【0040】
すなわち、グラフト重合体を合成する際に用いる第2単量体は、エーテル構造を有する単量体であり、好ましくは、エーテル構造を有する(メタ)アクリル酸エステル誘導体、エーテル構造を有するスチレン誘導体、多置換エチレン誘導体、または、ビニルエーテル誘導体等の単量体である。
これらの中では、エーテル構造を有する(メタ)アクリル酸エステル誘導体が好ましい。エーテル構造を有する(メタ)アクリル酸エステル誘導体の中では、下記の一般式(A)で表される(メタ)アクリル酸エステル誘導体が好ましい。
【0041】
【化1】
一般式(A)においては、Yは、-(AO)n-Rが好ましい。AOはオキシアルキレン基である。オキシアルキレン基の炭素原子数は1~18が好ましく、2~10がより好ましい。オキシアルキレン基としては、エチレンオキシド基、プロピレンオキシド基のうちの1種以上が最も好ましく、エチレンオキシド基が更に好ましい。nは0以上の数である。nは1以上が好ましい。nは30以下が好ましく、10以下がより好ましい。
また、R、R、R、Rは、水素(H)、置換されていてもよい炭化水素基またはエーテル基等である。好ましくは、置換されていてもよい炭化水素基またはエーテル基が、炭素数1~20の炭化水素基またはエーテル基である。ここで、エーテル基とは、エーテル結合を有する官能基であり、例えば、アルキルエーテル基をいう。R、R、R、Rとしては、非置換が好ましい。R、R、R、Rは、同一でも異なっても良い。Rとしては、炭化水素基が好ましい。炭化水素基としては、メチル基、エチル基のうちの1種以上が好ましい。
(メタ)アクリル酸エステル誘導体としては、アルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートが好ましい。アルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートの中では、アルコキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、アルコキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレートのうちの1種以上が好ましい。より具体的には、(2-(2-エトキシ)エトキシ)エチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート(poly:n=23)、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレートのうちの1種以上が好ましい。第2単量体は、より好ましくは、(2-(2-エトキシ)エトキシ)エチル(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレートのうちの1種以上であり、最も好ましくは(2-(2-エトキシ)エトキシ)エチル(メタ)アクリレートである。よって、第2単量体単位はこれらに由来する構造を有する。
【0042】
1-8.樹脂組成物中の各成分の含有量
また、各成分の含有量および特性について以下の要件を満たすことが好ましい。各成分の含有量および特性が以下のような範囲にある場合に、樹脂組成物における運動性の高い成分および運動性の低い成分の比のバランスに優れ、高容量電極での電池性能の低下の抑制、高温保管特性(高温保存特性)、直流抵抗のバランスに優れたバインダーとなる樹脂組成物を提供し得る。
【0043】
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物は、樹脂組成物を100質量部としたとき、樹脂組成物中のポリビニルアルコール構造の含有量が、5~70質量部であることが好ましく、10~60質量部であることがより好ましく、15~55質量部であることが更により好ましく、例えば、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70質量部であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。上記下限以上とすることにより、結着性を有するバインダーとでき、上記上限以下とすることにより、耐酸化性および柔軟性を保つことができる。なお、本実施形態において、樹脂組成物中のポリビニルアルコール構造の含有量とは、樹脂組成物に含まれる、グラフト共重合体中のポリビニルアルコール構造、およびポリビニルアルコールを含む遊離ポリマー中のポリビニルアルコール構造の総量を示す。
【0044】
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物は、樹脂組成物を100質量部としたとき、第1単量体に由来する第1単量体単位の含有量が3~80質量部であることが好ましく、5~70質量部であることがより好ましく、例えば、3、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80質量部であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。上記下限以上とすることにより、結着性を有するバインダーとでき、上記上限以下とすることにより、耐酸化性を保つことができる。なお、本実施形態において、樹脂組成物中の第1単量体単位の含有量とは、樹脂組成物に含まれる、グラフト共重合体中の第1単量体単位、および第1単量体単位を含む遊離ポリマー中の第1単量体単位の総量を示す。
【0045】
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物は、樹脂組成物を100質量部としたとき、架橋剤に由来する構造を、0.2~10質量部含むことが好ましく、0.5~8質量部含むことがより好ましく、1~5質量部含むことが特により好ましい。架橋剤に由来する構造の含有量は、例えば、0.2、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10質量部のいずれかであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。上記下限以上とすることにより、樹脂組成物における運動性の高い成分を適度に有し、上記上限以下とすることにより、NMP等の溶媒に対する溶解性を十分に保つことができる。なお、本実施形態において、樹脂組成物中の架橋剤に由来する構造の含有量とは、樹脂組成物に含まれる、グラフト共重合体に結合している架橋剤由来の構造、および遊離ポリマー中の架橋剤由来の構造の総量を示す。
【0046】
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物は、樹脂組成物を100質量部としたとき、第2単量体に由来する第2単量体単位を0~20質量部含むことができる。本発明の一実施形態に係る樹脂組成物は、第2単量体単位を含まないものとすることもできる。なお、本実施形態において、樹脂組成物中の第2単量体単位の含有量とは、樹脂組成物に含まれる、グラフト共重合体中の第2単量体単位、および第2単量体単位を含む遊離ポリマー中の第2単量体単位の総量を示す。
【0047】
1-9.組成物の特性
(膨潤率)
本発明の一実施形態に係る組成物は、電解液に対する25℃、15日間の膨潤率が、好ましくは、90~230%であり、より好ましくは、100~220%であり、より好ましくは105~210%である。ここで、電解液に対する25℃、15日間の膨潤率とは、組成物を、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとを体積比で1対2の比率で混合した電解液に、25℃で15日間浸漬させた後の膨潤率を意味する。組成物を、電解液に25℃で15日間浸漬した際の膨潤率は、例えば、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230%のいずれかであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
本発明の一実施形態に係る組成物によれば、膨潤率を上記範囲内に制御することによって、適度に柔軟性を有しつつ、特に高レート領域において、空孔体積を維持することができるため、より高い電池特性を有し、かつ、高温保管時の放電容量の低下を抑制することができる。
【0048】
(DMSO可溶分(ゲル分率))
本発明の一実施形態に係る組成物は、ゲル分率が30%以上であることが好ましい。一態様においては、50%以上であることがより好ましく、60%以上であることが最も好ましく、65%以上であることが尚更好ましい。ゲル分率の上限は、例えば、95%とすることができる。ゲル分率は、例えば30、40、50、60、65、70、80、90、95%のいずれかであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
本発明の一実施形態に係る組成物によれば、ゲル分率を上記範囲内に制御することによって、組成物の内部に入り込む電解液を適度に制御しつつ、空孔体積を維持することができるため、より高い電池特性を有し、かつ、高温保管時の放電容量の低下を抑制することができる。
【0049】
1-10.各種測定/算出方法
(パルスNMR)
組成物の自由誘導減衰曲線、および、自由誘導減衰曲線に含まれる成分は以下の方法で評価することができる。まず、パルスNMRを用いて、Solid Echo法で、各温度条件における組成物の自由誘導減衰曲線を得る。分析条件の一例を以下に示す。
測定装置:JEOL製JNM-MU25(25MHz)
観測核:1H
測定:T2
測定法:ソリッドエコー法
パルス幅:90°パルス、25μs
パルス間隔:10μs
積算回数:8回
測定温度:27℃、120℃、150℃、180℃(測定温度はサンプル内部の温度であり、装置温度が設定温度に達してから5分後にサンプル内部温度が測定温度になるように装置温度を調整し、測定を開始する)
繰り返し時間:4s
【0050】
上記の方法で得られた自由誘導減衰曲線を以下の方法で解析することによって、各成分の成分比および緩和時間を求める。
解析方法:式(1)を用いて、解析ソフト(NM-MU25内臓)によりフィッティングを行い、得られた自由誘導減衰曲線を3成分に近似する。式(1)の^はべき乗をいう。
M(t)= Σ(M(0)× exp((-t/T2i)^w))・・・式(1)
M(t):ある時間tにおける信号強度
t:時間
2i:各成分の緩和時間
M(0)i:各成分のt=0の時の信号強度
wi:ワイブル係数
【0051】
(組成物の膨潤率(25℃、15日))
組成物の電解液に対する膨潤率は、組成物からなるフィルムを、所定の時間かつ所定の温度で電解液に浸漬した前後の質量変化を示す。膨潤率は、例えば、以下の方法で求めることができる。
得られた組成物をNMPに溶解し、4質量%NMP溶液を作成する。得られた溶液5.6gを、PTFE(テトラフルオロエチレン)のシャーレに加え、送風乾燥機で105℃、8h乾燥して厚み250μmのフィルムを得る。得られた試験用フィルムの中央部分を5mm×5mmにカットし、試験用フィルムとする。得られた試験用フィルムは、質量を測定してから、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)とを体積比で1対2の比率で混合した電解液に浸漬させる。25℃、15日間静置した後、フィルム表面の液をふき取り、浸漬後の質量を測定する。浸漬前後の質量の変化から、以下の式を用いて膨潤率を算出する。膨潤率は、浸漬前の質量をWA(g)、浸漬後の質量をWB(g)とし、以下の式から算出する。
膨潤率(25℃、15日)(%) = WB×100/WA・・・式(2)
WA:浸漬前の質量(g)
WB:浸漬後の質量(g)
【0052】
電解液への浸漬条件を変更することで、異なる条件の膨潤率を求めることができる。例えば、電解液への浸漬条件を、60℃、48時間とすることで、60℃、48時間電解液に浸漬した場合の膨潤率を求め、短時間で膨潤率の評価を行うこともできる。
【0053】
(DMSO不溶分(ゲル分率))
組成物のゲル分率は、組成物をDMSOに溶解し、所定の温度および時間で撹拌した混合物中の不溶分で評価する。組成物のゲル分率は、具体的には以下の方法で評価できる。
500mlビーカーに、得られた組成物1gと、DMSO300mlを加え、60℃で15時間撹拌する。その後、得られた混合物を、JIS P 3801に規定されるNo.5Cのろ紙を用いて、桐山ロートで濾過し、ろ紙上に残った残渣を不溶部(ゲル分)、ろ液を可溶部とする。不溶部(ゲル分)を、100℃で、24時間真空乾燥し、秤量する。不溶分をAgとし、ゲル分率(%)=A×100/1を算出する。
【0054】
(第1単量体単位、第2単量体単位、架橋部の含有量)
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物は、PVAに由来する成分と第1単量体に由来する成分を含み、任意選択で、第2単量体に由来する成分、および/または、架橋剤に由来する成分を含む。樹脂組成物中の各成分の含有量は、グラフト重合の仕込み量から概算することができる。各成分の含有量は、より正確には、以下の方法によってNMRで各成分の反応率を求めることによって算出することができる。また、各成分の含有量は、得られた組成物のNMRによる積分比から算出することもできる。
【0055】
ポリビニルアルコールの反応率は以下の方法で求めることができる。まず、原料溶液中のPVAの濃度を、吸光度により求める。次に、重合反応を行い、重合反応液を得、得られた重合反応液50gを3000Gで30分間遠心分離して上澄みを得る。上澄み中の吸光度を測定し、PVA濃度を測定する。PVAの反応率(%)は、{1-(上澄み中のPVA濃度)/(仕込み時のPVAの濃度)}×100で求める。
第1単量体、第2単量体、架橋剤の反応率は以下の方法で求めることができる。重合終了後、メタノール析出し、乾燥した生成物を重DMSOに溶解させ、H―NMRを測定する。得られたスペクトルの、PVA、第一単量体、第二単量体、架橋剤に対応するシグナルの強度から、PVAを基準として、各成分の組成を算出する。NMRから算出された組成と、仕込み時の各成分の組成とを比較して、仕込んだ第一単量体、第二単量体、架橋剤のうち、どの程度第一単量体、第二単量体、架橋剤が組成物に含まれるかを示す反応率を算出する。
【0056】
(グラフト率)
グラフト共重合体を生成する際(グラフト共重合時)には、第1単量体、第2単量体、架橋剤からなる群の少なくともいずれかを含む遊離ポリマーが生成することがある。グラフト率の計算には、グラフト共重合体から遊離ポリマーを分離する工程が必要となる。遊離ポリマーはジメチルホルムアミド(以下、DMFと略すことがある。)には溶解するが、PVAおよびグラフト共重合体はDMFに溶解しない。この溶解性の差を利用し、遊離ポリマーを遠心分離等の操作により分離できる。
ここで、
F:DMFに溶解した成分の質量(g)
G:試験に使用した組成物の質量(g)
H:組成物中の第1単量体単位および第2単量体単位の合計含有量(質量%)
とすると、グラフト率は以下の式(3)で求められる。
[(G-F)/(G×(100-H)/100)]×100 ・・・式(3)
【0057】
(幹ポリマー以外の遊離ポリマーの分子量)
樹脂組成物を1.00g正秤し、これを特級DMF(国産化学株式会社製)50ccに添加し、80℃にて24時間1000rpmで撹拌する。次に、これを株式会社コクサン製の遠心分離機(型式:H2000B、ローター:H)にて回転数10000rpmで30分間遠心分離する。ろ液(DMF可溶分)を注意深く分離後、メタノール1000mlに投入し、析出物を得る。析出物を80℃にて24時間真空乾燥し、GPCにて標準ポリスチレン換算の重量平均分子量を測定する。GPCの測定は例えば以下の条件とできる。
カラム:GPC LF-804、φ8.0×300mm(昭和電工株式会社製)を2本直列に繋いで用いた。
カラム温度:40℃
溶媒:20mM-LiBr/DMF
【0058】
1-11.組成物の製造方法
本発明の一実施形態に係る組成物の製造方法については特に制限されないが、本発明の一実施形態に係る樹脂組成物の一例では、本発明の一実施形態に係るグラフト共重合体を含む樹脂組成物の製造方法は、少なくともポリビニルアルコールと第1単量体とを含む原料とをグラフト共重合させるグラフト共重合工程を含むことが好ましい。すなわち、本発明の一実施形態に係る樹脂組成物は、少なくともポリビニルアルコールと第1単量体とを含む原料をグラフト共重合させるグラフト共重合工程を含む製造方法によって得られるものとできる。また、本発明の一実施形態に係る製造方法は、酢酸ビニルを重合してポリ酢酸ビニルを得る酢酸ビニル重合工程、および、得られたポリ酢酸ビニルを鹸化してポリビニルアルコールを得る鹸化工程を更に含むことが好ましい。
【0059】
[ポリビニルアルコール(PVA)の製造方法]
ポリ酢酸ビニルを重合する方法については、塊状重合、溶液重合等公知の任意の方法を用いることができる。
【0060】
ポリ酢酸ビニルの重合に使用される開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系開始剤や、過酸化ベンゾイル、ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート等の有機過酸化物等が挙げられる。
【0061】
ポリ酢酸ビニルの鹸化反応は、例えば、有機溶媒中、鹸化触媒存在下で鹸化する方法により行うことができる。
【0062】
有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトン、メチルエチルケトン、ベンゼン、トルエン等が挙げられる。これらは1種以上を用いてもよい。これらの中では、メタノールが好ましい。
【0063】
鹸化触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムアルコキシド等の塩基性触媒や、硫酸、塩酸等の酸性触媒が挙げられる。これらの中では、鹸化速度の観点から、水酸化ナトリウムが好ましい。
開始剤の種類および量、並びに重合時の温度および時間を調整することよって、ポリビニルアルコールの重合度を制御することができ、鹸化触媒の種類および量、並びに鹸化時の温度および時間を調整することによって、ポリビニルアルコールの鹸化度を制御することができる。ポリビニルアルコールの重合度および鹸化度は上記した範囲内に調整することが好ましい。
【0064】
[樹脂組成物の製造方法]
本発明の一実施形態に係る製造方法は、少なくともポリビニルアルコールと第1単量体とを含む原料をグラフト共重合させる工程を含むことが好ましく、少なくともポリビニルアルコールと第一単量体とを含む原料は、さらに、架橋剤を含むことができる。また、少なくともポリビニルアルコールと第一単量体とを含む原料は、さらに、第2単量体を含むことができる。
本発明の一実施形態に係る製造方法においては、グラフト共重合時に供する原料の種類および量並びに重合条件等を調整することによって、パルスNMRにより測定することよって得られる自由誘導減衰曲線に含まれる各成分の成分比を上記した範囲内に調整することができる。
グラフト共重合時に供するポリビニルアルコールは、上記した重合度および鹸化度を有することが好ましく、グラフト共重合時に供する第1単量体、第2単量体、架橋剤は、上記した種類の第1単量体、第2単量体、架橋剤であることが好ましい。
グラフト共重合時の配合量は、樹脂組成物中の各成分の含有量が、上記した樹脂組成物中の各成分の含有量の要件を満たすように調整されることが好ましい。例えば、グラフト共重合に供する原料を100質量部としたとき、グラフト共重合に供する原料は、架橋剤を0.2~10質量部含むことが好ましく、0.5~8質量部含むことがより好ましく、1~5質量部含むことが特により好ましい。グラフト共重合に供する原料中の架橋剤の含有量は、例えば、0.2、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10質量部のいずれかであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0065】
ポリビニルアルコールに単量体をグラフト共重合させる方法としては、例えば、溶液重合法が挙げられる。用いる溶媒としては、水、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン等が挙げられる。
【0066】
グラフト共重合に使用する開始剤としては、過酸化物が好ましい。過酸化物としては、過酸化ベンゾイル等の有機過酸化物や無機過酸化物等が挙げられる。過酸化物の中では、無機過酸化物が好ましい。無機過酸化物としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等を用いることができる。無機過酸化物の中で、好ましくは過硫酸アンモニウムである。
【0067】
本発明の一実施形態に係るグラフト共重合体は溶媒に溶解させて用いることができる。溶媒としてはジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン等が挙げられる。組成物、および後述の正極用スラリーには、これらの溶媒が含まれていてもよい。
【0068】
1-12.その他
本発明の一実施形態に係る組成物は、本発明の効果を損なわない範囲であれば、その他の成分、例えば、樹脂等を含んでいてもよい。そのような樹脂としては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂、スチレン-ブタジエン系共重合体(スチレンブタジエンゴム等)およびアクリル系共重合体等が挙げられる。中でも、安定性の観点からフッ素系樹脂、特にポリフッ化ビニリデンが好ましい。
【0069】
2.正極用スラリー
本発明の一実施形態に係る組成物は、樹脂組成物とすることができ、また、二次電池の正極形成用のバインダーとして用いることができる。すなわち、本発明の一実施形態に係る樹脂組成物は、正極用樹脂組成物とできる。本発明の一実施形態に係る正極用スラリーは、上記組成物を含み、安定性に優れる。また、本発明の一実施形態に係る正極用スラリーは、上記組成物を含み、レート特性に優れた正極を作製できる。正極用スラリーは、組成物および導電助剤を含有してもよく、また成物、正極活物質および導電助剤を含有してもよい。
【0070】
本発明の一実施形態に係る正極用スラリーは、好ましくは、正極用スラリー中の固形分総量に対し、正極用(バインダー)組成物の固形分含有量が0.1~20質量%であることが好ましく、1~10質量%であることがより好ましい。
【0071】
3.リチウムイオン二次電池
本発明の一実施形態に係る正極を備える電池として、二次電池が好ましい。二次電池としては、リチウムイオン二次電池、ナトリウムイオン二次電池、マグネシウムイオン二次電池、カリウムイオン二次電池から選択される1種以上が好ましく、リチウムイオン二次電池がより好ましい。
本発明の一実施形態に係る正極、および当該正極を備えるリチウムイオン二次電池は、上記組成物を含む正極用スラリーを用いて作製できる。好適には、上記の正極、負極、セパレータ、並びに、電解質溶液(以下、電解質、電解液と称することもある。)を含んで構成される。
【0072】
[正極]
本発明の一実施形態に係る正極は、組成物と、導電助剤と、必要に応じて使用する正極活物質とを含む正極用スラリーを、アルミニウム箔等の集電体上に塗布した後、加熱によりスラリーに含まれる溶剤を除去し、更に集電体と電極合剤層をロールプレス等により加圧して密着させることにより、作製できる。すなわち、金属箔と、当該金属箔上に形成された正極用スラリーの塗膜を備える正極が得られる。
【0073】
[導電助剤]
導電助剤は、(i)繊維状炭素、(ii)カーボンブラックおよび(iii)繊維状炭素とカーボンブラックとが相互に連結した炭素複合体からなる群から選択される少なくとも1種以上が好ましい。繊維状炭素としては、気相成長炭素繊維、カーボンナノチューブおよびカーボンナノファイバー等が挙げられる。カーボンブラックとしては、アセチレンブラック、ファーネスブラックおよびケッチェンブラック(登録商標)等が挙げられる。これらの導電助剤は単体で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中では、導電助剤の分散性を向上させる効果が高い観点から、アセチレンブラック、カーボンナノチューブおよびカーボンナノファイバーから選択される1種以上が好ましい。
本発明の一実施形態に係る正極用スラリーは、好ましくは、正極用スラリー中の固形分総量に対し、導電助剤の固形分含有量が0.01~20質量%であることが好ましく、0.1~10質量%であることがより好ましい。
【0074】
[正極活物質]
必要に応じて正極活物質を使用してもよい。正極活物質は、カチオンを可逆的に吸蔵放出可能な正極活物質が好ましい。正極活物質は、体積抵抗率1×10Ω・cm以上のMnを含むリチウム含有複合酸化物またはリチウム含有ポリアニオン化合物が好ましい。例えば、LiCoO、LiMn、LiNiO、LiMPO、LiMSiO、LiNiMn(2-X)、Li(CoNiMn)O、Li(NiCoAl)OまたはxLiMnO-(1-X)LiMO等が挙げられる。但し、LiNiMn(2-X)中のXは0<X<2という関係を満たし、Li(CoNiMn)O中またはLi(NiCoAl)O中のX、YおよびZは、X+Y+Z=1という関係を満たし、かつ0<X<1、0<Y<1、0<Z<1という関係を満たし、XLiMnO-(1-X)LiMO中のXは0<X<1という関係を満たし、更にLiMPO中、LiMSiO中またはXLiMnO-(1-X)LiMO中のMはFe、Co、Ni、Mnから選ばれる元素の1種以上であることが好ましい。
正極活物質の中では、LiNiMn(2-X)(但し、0<X<2)、Li(CoNiMn)O(但し、0<X<1、0<Y<1、0<Z<1、且つX+Y+Z=1)およびLi(NiCoAl)O(但し、0<X<1、0<Y<1、0<Z<1、且つX+Y+Z=1)から選択される1種以上が好ましく、LiNiMn(2-X)(但し、0<X<2)およびLi(CoNiMn)O(但し、0<X<1、0<Y<1、0<Z<1、且つX+Y+Z=1)から選択される1種以上がより好ましい。
本発明の一実施形態に係る正極用スラリーは、好ましくは、正極用スラリー中の固形分総量に対し、正極活物質の固形分含有量が50~99.8質量%であることが好ましく、80~99.5質量%であることがより好ましく、95~99.0質量%であることが最も好ましい。
【0075】
[負極]
本発明の一実施形態に係るリチウムイオン二次電池に用いられる負極は、特に限定されないが、負極活物質を含む負極用スラリーを用いて製造できる。この負極は、例えば、負極用金属箔と、その金属箔上に設けられる負極用スラリーとを用いて製造できる。負極用スラリーは、負極用バインダー(負極用組成物)と、負極活物質と、前述の導電助剤とを含むことが好ましい。負極用バインダーとしては、特に限定されないが、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、スチレン-ブタジエン系共重合体(スチレンブタジエンゴム等)およびアクリル系共重合体等を用いることができる。負極用バインダーとしては、フッ素系樹脂が好ましい。フッ素系樹脂としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレンからなる群の1種以上がより好ましく、ポリフッ化ビニリデンが最も好ましい。
【0076】
負極に用いられる負極活物質としては、黒鉛、ポリアセン、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー等の炭素材料、スズおよびケイ素等の合金系材料、或いは、スズ酸化物、ケイ素酸化物、チタン酸リチウム等の酸化物材料等が挙げられる。これらは1種以上を用いてもよい。
負極用の金属箔としては、箔状の銅を用いることが好ましく、厚さは、加工性の観点から、5~30μmが好ましい。負極は、前述の正極の製造方法に準じた方法にて、負極用スラリーおよび負極用金属箔を用いて製造できる。
【0077】
[セパレータ]
セパレータには、電気絶縁性の多孔質膜、網、不織布、繊維等、充分な強度を有するものであれば使用できる。特に、電解液のイオン移動に対して低抵抗であり、かつ、溶液保持に優れたものを使用するとよい。材質は特に限定しないが、ガラス繊維等の無機物繊維または有機物繊維、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン、ポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフロン等の合成樹脂またはこれらの層状複合体等を挙げることができる。結着性および安定性の観点から、オレフィンまたはこれらの層状複合体が好ましい。オレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレンからなる群の1種以上が好ましい。
【0078】
[電解質]
電解質としては、公知のリチウム塩が何れも使用でき、例えば、LiClO、LiBF、LiBF、LiPF、LiCFSO、LiCFCO、LiAsF、LiSbF、LiB10Cl10、LiAlCl、LiCl、LiBr、LiI、LiB(C、LiCFSO、LiCHSO、LiCFSO、LiCSO、LiN(CFSO、LiN(CSO、LiC(CFSO、低級脂肪酸カルボン酸リチウム等が挙げられる。
【0079】
[電解液]
上記電解質を溶解させる電解液は、特に限定されない。電解液としては、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートおよびメチルエチルカーボネート等のカーボネート類、γ-ブチロラクトン等のラクトン類、トリメトキシメタン、1,2-ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、2-エトキシエタン、テトラヒドロフランおよび2-メチルテトラヒドロフラン等のエーテル類、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類、1,3-ジオキソランおよび4-メチル-1,3-ジオキソラン等のオキソラン類、アセトニトリル、ニトロメタンおよびN-メチル-2-ピロリドン等の含窒素化合物類、ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチルおよびリン酸トリエステル等のエステル類、硫酸エステル、硝酸エステルおよび塩酸エステル等の無機酸エステル類、ジメチルホルムアミドおよびジメチルアセトアミド等のアミド類、ジグライム、トリグライムおよびテトラグライム等のグライム類、アセトン、ジエチルケトン、メチルエチルケトンおよびメチルイソブチルケトン等のケトン類、スルホラン等のスルホラン類、3-メチル-2-オキサゾリジノン等のオキサゾリジノン類、並びに、1,3-プロパンサルトン、4-ブタンスルトンおよびナフタスルトン等のスルトン類等が挙げられる。これらの電解液の中から選択される1種以上を使用できる。電解液は、好ましくは、カーボネート類を含み、さらに好ましくはエチレンカーボネート、ジエチルカーボネートを含む。
【0080】
上記の電解質および電解液の中では、LiPFをカーボネート類に溶解した電解質溶液が好ましく、LiPFをエチレンカーボネートとジエチルカーボネートを含む混合液に溶解した電解質溶液がより好ましく、LiPFをエチレンカーボネートとジエチルカーボネートを体積比で1対2の比率で混合した混合液に溶解した電解質溶液がさらにより好ましい。当該溶液中の電解質の濃度は、使用する電極および電解液によって異なるが、0.5~3モル/Lが好ましい。
【0081】
本発明の実施形態のリチウムイオン二次電池の用途としては、特に限定されないが、例えば、デジタルカメラ、ビデオカメラ、ポータブルオーディオプレイヤー、携帯液晶テレビ等の携帯AV機器、ノート型パソコン、スマートフォン、モバイルPC等の携帯情報端末、その他、携帯ゲーム機器、電動工具、電動式自転車、ハイブリット自動車、電気自動車、電力貯蔵システム等の幅広い分野が挙げられる。
【実施例
【0082】
以下に実施例をあげて本発明を更に詳細に説明する。また、これらは何れも例示的なものであって、本発明の内容を限定するものではない。データを表1に示す。
【0083】
[実施例1]
<ポリビニルアルコール(PVA)の調製>
PVAとして、デンカ株式会社製、PVA(B-24)を用いた。PVAの平均重合度、鹸化度を表1に示す。
【0084】
<組成物の調製>
反応容器に純水1804質量部を仕込み、窒素ガスをバブリングして脱酸素した後、部分けん化PVA(けん化度85.6%、重合度2400)100質量部を室温下で仕込み、90℃まで昇温することで溶解した。反応容器を60℃に調整し、別途窒素ガスをバブリングして脱酸素した10%過硫酸アンモニウム水溶液170質量部を一括添加し、アクリロニトリル96質量部と架橋剤オリゴエチレングリコールジアクリレート(一般式(B)のエチレングリコール繰り返し数n=9、R21、R22は、水素である。)(新中村化学工業製、商品名:A-400)8質量部の混合液を5時間かけて添加し、重合した。得られた重合液100質量部を300質量部のメタノール中に添加し、析出物を減圧ろ過して40℃で12時間乾燥させて樹脂組成物を得た。
得られたグラフト共重合体を含む組成物の組成等については表1に示す。
【0085】
<反応率及び組成比>
得られた組成物について、各原料の反応率と各成分の組成比を算出した。
ポリビニルアルコールの反応率は以下の方法で求めた。まず、原料溶液中のPVAの濃度を、吸光度により求めた。次に、重合反応で得た重合反応液50gを3000Gで30分間遠心分離して上澄みを得た。上澄み中の吸光度を測定し、PVA濃度を測定した。PVAの反応率(%)を、{1-(上澄み中のPVA濃度)/(仕込み時のPVAの濃度)}×100で求めた。PVAの反応率は、93%であった。
【0086】
第1単量体、架橋剤の反応率を以下の方法で求めた。重合終了後、メタノール析出し、乾燥した生成物を重DMSOに溶解させ、H―NMRを測定した。得られたスペクトルの、PVA、第一単量体、架橋剤に対応するシグナルの強度から、PVAを基準として、各成分の組成を算出した。なお、1~1.7ppmにPVA、1.7~2.3ppmにPANと酢酸ビニル、3~3.2ppmにPAN、3.5~3.7ppmに架橋剤に由来するシグナルが観察される。NMRから算出された組成と、仕込み時の各成分の組成とを比較して反応率を算出した。反応率は、仕込んだ第一単量体、架橋剤のうち、どの程度第一単量体、架橋剤が組成物に含まれるかを示す。第一単量体の反応率は、98%、架橋剤の反応率は100%であった。
【0087】
また、反応率から、実施例1に係る組成物の各成分の組成比を算出した。組成物を100質量部としたとき、ポリビニルアルコール構造の含有量は47.7質量部、第一単量体単位の含有量は48.2質量部、架橋剤に由来する構造の含有量は4.2質量部であった。なお、この組成比には、第一単量体のホモポリマーである遊離ポリマーが含まれる。
【0088】
<評価方法>
(パルスNMR)
パルスNMRを用いて、Solid Echo法で、各温度条件における樹脂組成物の自由誘導減衰曲線を得た。
測定装置:JEOL製JNM-MU25(25MHz)
観測核:1H
測定:T2
測定法:ソリッドエコー法
パルス幅:90°パルス、25μs
パルス間隔:10μs
積算回数:8回
測定温度:27℃、120℃、150℃、180℃(測定温度はサンプル内部の温度であり、装置温度が設定温度に達してから5分後にサンプル内部温度が測定温度になるように装置温度を調整し、測定を開始した)
繰り返し時間:4s
【0089】
解析方法:式(4)を用いて、解析ソフト(NM-MU25内臓)によりフィッティングを行い、得られた自由誘導減衰曲線を3成分に近似した。得られた自由誘導減衰曲線は、緩和時間の短い順に、H成分、M成分、S成分の3成分に由来する3つの曲線に波形分離した。すなわち、実測された自由誘導減衰曲線は、H成分、M成分、S成分の3成分に由来する自由誘導減衰曲線を重畳したものである。ワイブル係数は、H成分wの場合が2、M成分wおよびS成分wの場合は1である。
M(t)= Σ(M(0)× exp((-t/T2i)^w))・・・式(4)
M(t):ある時間tにおける信号強度
t:時間
2i:各成分の緩和時間
M(0)i:各成分のt=0の時の信号強度
wi:ワイブル係数
【0090】
<評価方法>
(DMSO不溶分(ゲル分率))
500mlビーカーに、得られた組成物1gと、DMSO300mlを加え、60℃で15時間撹拌した。その後、得られた混合物を、JIS P 3801に規定されるNo.5Cのろ紙を用いて、桐山ロートで濾過し、ろ紙上に残った残渣を不溶部(ゲル分)、ろ液を可溶部とした。不溶部(ゲル分)を、100℃で、24時間真空乾燥し、秤量した。不溶分をAgとし、ゲル分率(%)=A×100/1を算出した。
【0091】
(グラフト率)
得られたグラフト共重合体を含む組成物を1.00g正秤し、これを特級DMF(国産化学株式会社製)50ccに添加し、80℃にて24時間1000rpmで撹拌した。次に、これを株式会社コクサン製の遠心分離機(型式:H2000B、ローター:H)にて回転数10000rpmで30分間遠心分離した。ろ液(DMF可溶分)を注意深く分離後、DMF不溶分を100℃にて24時間真空乾燥し、以下の式を用いグラフト率を計算した。
[(G-F)/(G×(100-H)/100)]×100・・・式(3)
F:DMFに溶解した成分の質量(g)
G:試験に使用した組成物の質量(g)
H:組成物中の第1単量体単位および第2単量体単位の合計含有量(質量%)
【0092】
(組成物の膨潤率(25℃、15日))
得られた組成物をNMPに溶解し、4質量%NMPを作成した。得られた溶液5.6gを、PTFE(テトラフルオロエチレン)のシャーレに加え、送風乾燥機で105℃、8h乾燥して厚み250μmのフィルムを得た。得られたフィルムの中央部分を5mm×5mmにカットし、試験用フィルムとした。得られた試験用フィルムは、質量を測定してから、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)とを体積比で1対2の比率で混合した電解液に浸漬させた。25℃で、15日間静置した後、フィルム表面の液をふき取り、浸漬後の質量を測定した。浸漬前後の質量の変化から、以下の式を用いて膨潤率を算出した。膨潤率は、浸漬前の質量をWA(g)、浸漬後の質量をWB(g)とし、以下の式から算出した。
膨潤率(25℃、15日)(%) = WB×100/WA・・・式(4)
WA:浸漬前の質量(g)
WB:浸漬後の質量(g)
【0093】
(組成物の膨潤率(60℃、48時間))
電解液への浸漬条件を、60℃、48時間とした以外は、(組成物の膨潤率(25℃、15日))と同様に、60℃、48時間電解液に浸漬した場合の膨潤率を求めた。
【0094】
<スラリーの調製>
得られたバインダー1質量部、アセチレンブラック(デンカ株式会社製、デンカブラック(登録商標)「Li435」)2質量部、NMC532(LiNi0.5Mn0.3Co0.2、ユミコア社、TX-10)97質量部を、N-メチル-2-ピロリドン(以下、NMPと略す)66質量部に溶解させて、正極形成用スラリーとした。
【0095】
<正極の作製>
厚み20μmのアルミニウム箔に、調製した正極用スラリーを、自動塗工機で140g/mとなるように塗布し、105℃で30分間予備乾燥した。次に、ロールプレス機にて0.1~3.0ton/cmの線圧でプレスし、正極板の厚さが75μmになるように調製した。更に正極板を13Φmmの円形に打ち抜いた。残留溶媒や吸着水分といった揮発成分を完全に除去するため、170℃で6時間乾燥して正極を得た。電極面積密度は、29.0mg/cm、体積密度は、3.4g/cmであった。
【0096】
<リチウムイオン二次電池の作製>
得られた正極と、対極として金属リチウムとを用い、2032型コインセルを作製した。電解質としてLiPFを1mol/Lの濃度で溶解した電解液(エチレンカーボネート/ジエチルカーボネート=1/2(体積比)混合液)を用いた。これらを電気的に隔離するセパレータとして15Φmmのオレフィン繊維製不織布を用いた。作製したリチウムイオン二次電池について、以下の方法により電池性能を評価した。
【0097】
<電池特性>
得られた電池の電池特性を下記の測定条件で評価した。
充電条件:CC-CV方式、CC電流=0.2C、CV電圧=4.2V、カットオフ電流=1/20C
放電条件:CC方式、CC電流=0.2,0.5,1.0,2.0,2.8C、カットオフ電圧=3.0V
温度条件:25℃
電池を初充電後、充放電効率が100%近傍になることを確認後、0.20mA/cmの電流密度にて定電流放電を3.0Vまで行った際の放電容量を測定し、正極活物質量で除した容量密度(mAh/g)を算出した。この容量(mAh)を1時間で充放電可能な電流値を「1C」とした。
【0098】
<直流抵抗>
上記の正極と同様に作製したφ13mm×75μmの電極に対して、0.2,0.4,0.6,0.8,1.0mmAの電流を印加し、10秒後の電圧を読み取り、オームの法則より抵抗値を求めた。
体積抵抗率(Ω・cm)は二端子法により測定した。電位差をV、断面積をS、電流値をI(A)、電極厚みをL(cm)とすると、以下の式で表すことができる。
体積抵抗率(Ω・cm) = (V×S)/(I×L)・・・式(3)
【0099】
<高温保存特性>
得られたリチウム二次電池を、0.2Cの定電流で4.3Vまで充電した(満充電)。これを60℃の環境試験器に入れ、30日間保存した。30日経過後25℃において0.2Cの定電流で3.0Vまで放電させ、以下の式を用いて、高温保存特性を求めた。
(高温保存特性(%))=[(保存後放電容量)÷(保存前充電容量)]×100を求めた。
また、得られた高温保存特性を、後述の参考例2に係る、正極用バインダーとしてPVDFを用いたリチウム二次電池の高温保存特性と比較して、以下の基準で評価した。結果を表1に示す。
A:正極用バインダーとしてPVDFを用いたリチウム二次電池と同等
B:正極用バインダーとしてPVDFを用いたリチウム二次電池に比べ、高温保存特性が低く、その差は5%以内である。
C:正極用バインダーとしてPVDFを用いたリチウム二次電池に比べ、高温保存特性が低く、その差は5%超、15%以内である。
【0100】
[実施例2~4]
<組成物の調製>
配合量を表1に示す通りとした以外は、実施例1と同様の方法で組成物を得た。結果を表1に示す。
【0101】
[比較例1]
<組成物の調製>
PVAを変更し、配合量を表1に記載の通りとした以外は実施例1と同様に、組成物を得た。
【0102】
[比較例2]
<組成物の調製>
表1に記載のPVAを用い、樹脂組成物とした。
【0103】
[参考例1]
表1に記載のPVAを用い、樹脂組成物とした。
【0104】
[参考例2]
樹脂組成物としてポリフッ化ビニリデン樹脂(HSV900:アルケマ社製)を用いた。結果を表1に示す。
【0105】
尚、以下の表等で用いられる略号は次の化合物を表す。単量体単位については、単量体単位が由来する単量体を表すものである。
AN:アクリロニトリル
OEG:オリゴエチレングリコールジアクリレート
【0106】
【表1】
*解析の結果、該当する緩和時間の成分がなかったことを示す。