(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】複合不織布、及びそれを含む物品
(51)【国際特許分類】
D04H 3/033 20120101AFI20241022BHJP
B01D 39/14 20060101ALI20241022BHJP
B01D 39/16 20060101ALI20241022BHJP
B03C 3/28 20060101ALI20241022BHJP
B32B 5/26 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
D04H3/033
B01D39/14 E
B01D39/16 A
B01D39/16 E
B03C3/28
B32B5/26
(21)【出願番号】P 2022558253
(86)(22)【出願日】2021-03-24
(86)【国際出願番号】 KR2021003639
(87)【国際公開番号】W WO2021194248
(87)【国際公開日】2021-09-30
【審査請求日】2022-11-25
(31)【優先権主張番号】10-2020-0037061
(32)【優先日】2020-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】504092127
【氏名又は名称】トーレ・アドバンスド・マテリアルズ・コリア・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】TORAY ADVANCED MATERIALS KOREA INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】300,3gongdan 2-ro,Gumi-si,Gyeongsangbuk-do 39389 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ド・キュン・ユン
(72)【発明者】
【氏名】ジン・イル・ジョン
(72)【発明者】
【氏名】グン・シク・ジョン
【審査官】斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-124777(JP,A)
【文献】特開2002-161467(JP,A)
【文献】特許第4133830(JP,B2)
【文献】米国特許出願公開第2011/0168024(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0079137(KR,A)
【文献】特表2011-506783(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2003-0032574(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0055551(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 39/00 - 39/20
B03C 3/00 - 3/88
D01D 1/00 - 13/02
D04H 1/00 - 18/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メルトブロウン不織布層、及びその両面に、スパンボンド不織布層を含む複合不織布であって、
前記メルトブロウン不織布層は、複合不織布の製造装置において、二流体ノズルを介し、空気と共に水と接触することにより、連続して帯電処理されることによって帯電処理され、
前記複合不織布は、2種以上の不織布が1つの連続工程によって作製されて一体的に形成される方法にしたがって製造されたモノリシック不織布を表し、2種以上の不織布が個別的に作製された後、別途のラミネーティング後工程を経て製造された不織布積層体ではな
い、複合不織
布。
【請求項2】
前記帯電処理されたメルトブロウン不織布層、及び前記スパンボンド不織布層は、それぞれ互いに独立して、非伝導性重合体を含み、前記非伝導性重合体は、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド、それらの共重合体、またはそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の複合不織布。
【請求項3】
前記帯電処理されたメルトブロウン不織布層の含量は、前記複合不織布の総重量100重量部に対し、3~50重量部である、請求項1に記載の複合不織布。
【請求項4】
請求項1ないし
3のうちいずれか1項に記載の複合不織布を含む、物品。
【請求項5】
前記物品は、微細ほこり除去用マスク、空気清浄起用フィルタまたはエアコン用フィルタである、請求項
4に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合不織布、及びそれを含む物品に係り、さらに詳細には、機械的物性及び微細ほこり除去機能にすぐれる複合不織布、及びそれを含む物品に関する。
【背景技術】
【0002】
微細ほこり除去用マスクの場合、内外覆素材と、中央部の微細ほこりをフィルタリングするフィルタ素材とが多層に複合化されて構成されている。
【0003】
フィルタ層としては、主に、帯電処理されたメルトブロウン(meltblown)不織布が使用されている。該メルトブロウン不織布は、低い機械的強度と、高い柔軟性とにより、形態安定性が低く、外部衝撃や摩擦により、容易に構造変形が生じる。従って、メルトブロウン不織布層を保護し、形態安定性を付与するために、メルトブロウン不織布層の両面または一面に、形態安定性や引っ張り強度のような機械的物性が高い不織布を積層し、マスクを構成することになり、主に、スパンボンド不織布が、別途のラミネーティング工程を経て積層される。
【0004】
また、一般的に、帯電処理されたメルトブロウン素材の一面や両面に、内外覆用素材として適用されているスパンボンド不織布は、フィラメントが太く、気孔が大きいために、微細ほこり除去効率がほとんどなく、形態安定性を付与する機能しかを有さない。従って、多層のマスク不織布構成において、中央部に位置したフィルタ層でのみ微細ほこりをフィルタリングするために、微細ほこりがフィルタ層に集中的に積層され、フィルタリング効率が使用時間によって低下する問題点があり、特に、長期間マスクを着用しなければならない産業現場においては、そのような問題が、ユーザの呼吸器安全にも影響を及ぼしてしまう。
【0005】
また、内外覆層として使用される不織布は、主に、マスクの外形に沿い、超音波融着によって合紙されるために、融着工程時、内層の帯電処理されたメルトブロウン不織布の構造が変更され、フィルタリング性能が低下されてしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一具現例は、機械的物性及び微細ほこり除去機能にすぐれる複合不織布を提供するものである。
【0007】
本発明の他の具現例は、前記不織布を含む物品を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面は、
帯電処理されたメルトブロウン不織布層、及びその一面または両面に、スパンボンド不織布層を含み、
下記数式1で表される微細ほこり除去性能維持率が80%以上である複合不織布を提供する:
[数式1]
微細ほこり除去性能維持率(%)=(加速老化処理後の微細ほこり除去効率)/(加速老化処理前の微細ほこり除去効率)×100
前記数式1で、前記微細ほこりは、空気中に分散された塩化ナトリウムを含むエアロゾルであり、前記加速老化処理は、前記複合不織布を70℃の温度条件で3日間保管したところを意味する。
【0009】
前記複合不織布は、下記数式2で表される圧力損失維持率が90%以上でもある:
[数式2]
圧力損失維持率(%)=(加速老化処理後の圧力損失)/(加速老化処理前の圧力損失)×100
前記数式2で、前記圧力損失は、空気中に分散された塩化ナトリウムを含むエアロゾルを利用して測定したものであり、前記加速老化処理は、前記複合不織布を70℃の温度条件で3日間保管したところを意味する。
【0010】
前記複合不織布は、前記加速老化処理後の微細ほこり除去率が18~99%でもある。
【0011】
前記帯電処理されたメルトブロウン不織布層、及び前記スパンボンド不織布層は、それぞれ互いに独立して、非伝導性重合体を含み、前記非伝導性重合体は、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド、それらの共重合体、またはそれらの組み合わせを含むものでもある。
【0012】
前記帯電処理されたメルトブロウン不織布層の含量は、前記複合不織布の総重量100重量部に対し、3~50重量部でもある。
【0013】
本発明の他の側面は、
前記複合不織布を含む物品を提供する。
前記物品は、微細ほこり除去用マスク、空気清浄起用フィルタまたはエアコン用フィルタでもある。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一具現例による複合不織布は、空気中の微細粒子をフィルタリングするための素材として適用が可能である。
【0015】
また、前記複合不織布は、既存マスクフィルタ層として使用されている帯電処理されたメルトブロウンフィルタ層と複合化される場合、フィルタ層汚染を防止し、寿命を延長させることができ、形態安定性にすぐれ、フィルタ層の多層化により、マスク全体の性能向上及び除去効率安定性を向上させることができる。
【0016】
また、前記複合不織布は、各種ほこり、微細ほこり、細菌などの除去目的に活用され、保健用マスクだけではなく、空気浄化が必要な各種の家庭、車両、産業用エアコン及びエアクリーナなどにも適用される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一具現例による複合不織布を連続して製造するために使用される複合不織布の製造装置を概略的に示した図面である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一具現例による複合不織布について詳細に説明する。
【0019】
本明細書において、「複合不織布(non-woven fabric composite)」は、2種以上の不織布が個別的に製造された後、別途のラミネーティング(合紙)後工程を経て製造された不織布積層体ではなく、2種以上の不織布が1つの連続工程によって製造されて一体化された不織布を意味する。また、該「複合不織布」は、「モノリシック不織布(monolithic non-woven fabric)」とも称される。前記複合不織布は、前記不織布積層体に比べ、層間結合が強く、形態安定性及び濾過性能にすぐれるという特徴を有する。
【0020】
また、本明細書において、「帯電処理されたメルトブロウン不織布層」は、複合不織布の製造時、連続工程によって製造されたものでもある。具体的には、「帯電処理されたメルトブロウン不織布層」は、連続工程により、「メルトブロウン不織布の製造」と」帯電処理」とを、順次にまたは同時に実施することによっても製造された。
【0021】
本発明の一具現例による複合不織布は、帯電処理されたメルトブロウン不織布層、及びその一面または両面に、スパンボンド不織布層を含む。
【0022】
前記複合不織布に含まれた複数の不織布は、超音波融着ではない熱融着によって互いに結合されたものでもある。
【0023】
前記複合不織布は、帯電処理されたメルトブロウン不織布層を含むことにより、微細粒子捕集機能を有することを特徴とする。しかしながら、従来のスパンボンド・メルトブロウン多層不織布は、平均気孔が数なく、数十μmレベルであるために、0.1~0.6μmレベルの微細粒子を除去する機能がほとんどない。
【0024】
また、前記複合不織布は、下記数式1で表される微細ほこり除去性能維持率が80%以上である:
[数式1]
微細ほこり除去性能維持率(%)=(加速老化処理後の微細ほこり除去効率)/(加速老化処理前の微細ほこり除去効率)×100
前記数式1で、前記微細ほこりは、空気中に分散された塩化ナトリウムを含むエアロゾルであり、前記加速老化処理は、前記複合不織布を70℃の温度条件で3日間保管したところを意味する。
【0025】
前記微細ほこり除去性能維持率が80%以上であるというのは、前記複合不織布の濾過性能が長期間高く維持されるということを意味する。
【0026】
また、前記複合不織布は、下記数式2で表される圧力損失維持率が90%以上である
[数式2]
圧力損失維持率(%)=(加速老化処理後の圧力損失)/(加速老化処理前の圧力損失)×100
前記数式2で、前記圧力損失は、空気中に分散された塩化ナトリウムを含むエアロゾルを利用して測定したものであり、前記加速老化処理は、前記複合不織布を70℃の温度条件で3日間保管したところを意味する。
【0027】
前記圧力損失維持率が90%以上であるというのは、前記複合不織布の形態安定性(すなわち、構造的安定性)が長期間高く維持されるということを意味する。
【0028】
また、前記複合不織布は、前記加速老化処理後の微細ほこり除去率が18~99%でもある。前記加速老化処理後の微細ほこり除去率が前記範囲以内であるならば、前記複合不織布の濾過性能、形態安定性及び生産性がいずれも高く維持されうる。
【0029】
前記帯電処理されたメルトブロウン不織布層、及び前記スパンボンド不織布層は、それぞれ互いに独立して、非伝導性重合体を含むものでもある。
【0030】
前記非伝導性重合体は、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド、それらの共重合体、またはそれらの組み合わせを含むものでもある。
【0031】
前記ポリオレフィンは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ-4-メチル-1-ペンテン、ポリ塩化ビニル、またはそれらの組み合わせを含むものでもある。
【0032】
前記ポリエステルは、ポリエチレンテレフタレート、ポリ乳酸、またはそれらの組み合わせを含むものでもある。
【0033】
前記帯電処理されたメルトブロウン不織布層、及び前記スパンボンド不織布層は、それぞれ互いに独立して、添加剤をさらに含むものでもある。
【0034】
前記添加剤は、顔料、光安定剤、一次酸化防止剤、二次酸化防止剤、金属不活性化剤、束縛アミン(hindered amine)、束縛フェノール、脂肪酸金属塩、トリエステルホスファイト、リン酸塩、フッ素含有化合物、核化剤、またはそれらの組み合わせを含むものでもある。
【0035】
また、一具現例において、酸化防止剤が電荷エンハンサとして機能することができる。可能な電荷エンハンサは、熱安定性有機トリアジン化合物、オリゴマー、またはそれらの組み合わせを含み、それら化合物またはオリゴマーは、トリアジン環内の窒素以外に、少なくとも1つの窒素原子をして含む。
【0036】
例えば、帯電特性向上目的の電荷エンハンサは、米国登録特許第6,268,495号、同第5,976,208号、同第5,968,635号、同第5,919,847号及び同第5,908,598号に開示されている。例えば、前記電荷エンハンサは、束縛アミン系添加剤(hindered amine-based additive)、トリアジン系添加剤(triazine additive)、またはそれらの組み合わせを含むものでもある。
【0037】
他の例として、前記電荷エンハンサは、ポリ[((6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)イミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル)((2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ)ヘキサメチレン((2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ)](CHIMASSORB 944(BASF製))、(2,4,6-卜リクロロ-1,3,5-トリアジンとの1,6-ヘキサンジアミン・N,N’-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)重合体、N-ブチル-1-ブタンアミンとN-ブチル-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジンアミンとの反応生成物)(CHIMASSORB 2020(BASF製))、またはそれらの組み合わせを含むものでもある。
【0038】
前記電荷エンハンサは、N-置換されたアミノ芳香族化合物、特、にトリ-アミノ置換された化合物、例えば、2,4,6-トリアニルリノ-p-(カルボ-2’-エチルヘキシル-1’-オキシ)-1,3,5-トリアジン(UVINULT-150(BASF製))でもある。他の電荷エンハンサとしては、トリステアリルメラミン(「TSM」)としても知られた2,4,6-トリス-(オクタデシルアミノ)-トリアジンがある。
【0039】
前記電荷エンハンサの含量は、前記メルトブロウン不織布層の総重量100重量部に対し、0.25~5重量部でもある。前記電荷エンハンサの含量が前記範囲以内であるならば、本発明が目標とする高レベルの帯電性能を得ることができるだけでなく、紡糸性が良好であり、不織布の強度が高く維持され、コスト側面でも有利である。
【0040】
前記複合不織布は、前記添加剤以外に、熱安定剤、耐候剤(weathering agent)のような一般的に知られた公知の添加剤をさらに含むものでもある。
【0041】
前記帯電処理されたメルトブロウン不織布層の含量は、前記複合不織布の総重量100重量部に対し、3~50重量部でもある。前記帯電処理されたメルトブロウン不織布層の含量が前記範囲以内であるならば、濾過性能、形態安定性及び耐久性にすぐれる複合不織布を得ることができる。
【0042】
前記複合不織布は、坪量(単位面積当たり質量)が10~500g/m2、例えば、20~100g/m2の範囲でもある。
【0043】
以下、本発明の一具現例による複合不織布の製造方法について詳細に説明する。
【0044】
本発明の一具現例による複合不織布の製造方法は、スパンボンド不織布層を連続して形成する段階(S10)、及び前記スパンボンド不織布層上に、メルトブロウン不織布層を連続して形成する段階(S20)を含む。
【0045】
前記スパンボンド不織布層連続形成段階(S10)は、熱可塑性である非伝導性重合体を、溶融押出、冷却及び延伸して纎維原糸を形成した後、前記纎維原糸をスクリーンベルト上に積層させ、ウェブ化(web forming)するものでもある。
【0046】
前記メルトブロウン不織布層連続形成段階(S20)は、熱可塑性である非伝導性重合体と、帯電性能向上剤とを、溶融押出、熱風延伸及び冷却し、纎維原糸を形成した後、前記纎維原糸を、前記スパンボンド不織布層連続形成段階(S10)でウェブ化されたスパンボンド上に積層させ、ウェブ化するものでもある。
【0047】
具体的には、前記メルトブロウン不織布層連続形成段階(S20)は、非伝導性重合体でもってフリーファイバを連続して形成する段階(S20-1)、前記フリーファイバを連続して紡糸する段階(S20-2)、前記フリーファイバに、極性溶媒(例えば、水)を連続して噴射し、前記フリーファイバを連続して帯電させる段階(S20-3)、及び前記フリーファイバを連続して集積させ、メルトブロウン不織布を連続して形成する段階(S20-4)を含むものでもある。
【0048】
前記フリーファイバ連続帯電段階(S20-3)は、前記極性溶媒を、気体(例えば、空気)と共に連続して噴射することによっても遂行される。
【0049】
以下、前記フリーファイバ連続帯電段階(S20-3)が、従来技術に比べ、異質的であったり、顕著な効果を有したりすることについて詳細に説明する。
【0050】
(1)一般的に、メルトブロウン工程中、帯電処理することができる方法としては、米国登録特許第6,375,886号のように、極性溶媒と、溶融紡糸中であるフィラメントとの摩擦を介して帯電処理する方法と、米国登録特許第6,969,484号のように、メルトブロウン不織布を極性溶媒に浸漬させ、吸引(suction)装置でもって、不織布間において水が透過されながら、水と不織布との摩擦を介して帯電処理する方法とが産業界において主に適用され、帯電処理されたメルトブロウン不織布を製造した。そのように、極性溶媒を利用した帯電処理方法は、帯電処理後、極性溶媒を乾燥させる後工程が別途に必要であり、従って、連続工程でもって、不織布を積層したり複合化させたりすることが基本的に不可能である。米国登録特許第6,375,886号及び米国登録特許第6,969,484号は、その全体が引用によって本明細書に統合される。
【0051】
(2)米国登録特許第5,227,172号は、メルトブロウン口金(die)と捕集体(collector)との間に高い電位差を印加し、溶融紡糸される樹脂がフィラメント化されながら、周囲電場によって誘導帯電処理されるようにする方法を開示しているが、該方法は、別途の後加工処理なしに、帯電処理されたメルトブロウン不織布を得ることができる。しかしながら、そのように、電位差によって誘導帯電処理された不織布は、熱や周囲環境により、帯電処理効率が急激に低下する現象が示されるために、微細ほこり除去用マスクのように、販売過程において、長期保管が必要であったり、空気清浄起用フィルタのように、長期間使用寿命が保証されなければならなかったりする用途には、適用し難いという短所がある。米国登録特許第5,227,172号は、その全体が引用により、本明細書に統合される。
【0052】
本発明者らは、メルトブロウン不織布層に、極性溶媒を空気と共に、二流体形態でもって噴射し、少ない噴射量で十分な運動エネルギーを有する極性溶媒粒子を、溶融紡糸中のフィラメントに摩擦させ、高効率の摩擦帯電効果を有するように帯電処理装置を開発し、少ない噴射量により、DCD(die to collector distance)区間内において、加熱された空気により、十分に加熱蒸発されるために、別途の乾燥設備が必要ないということがその特徴である。そのような特徴により、不織布製造工程と結合し、連続積層による不織布を複合化させることができるという特徴がある。
【0053】
前記メルトブロウン不織布を帯電処理して得られた不織布は、負電荷と正電荷とが半永久的に存在するように、持続的に分極された状態になり、そのような不織布を電石(electret)不織布と言う。
【0054】
前述のように、前記複合不織布の製造方法は、前記フリーファイバ連続帯電段階(S20-3)で噴射された前記極性溶媒を除去するための別途の乾燥段階を含まないのである。
【0055】
また前述のように、前記フリーファイバ連続帯電段階(S20-3)で連続して噴射された前記極性溶媒は、複合不織布製造装置のDCD区間内で加熱された空気により、連続して加熱されて蒸発されうる。
【0056】
前記複合不織布の製造方法は、前記メルトブロウン不織布層上に、他のスパンボンド不織布層を連続して形成する段階(S30)をさらに含むものでもある。
【0057】
前記複合不織布の製造方法は、前記メルトブロウン不織布層連続形成段階(S20)後、または前述の他のスパンボンド不織布層連続形成段階(S30)後、前記メルトブロウン不織布層の一面または両面に、前記各スパンボンド不織布層を連続して熱圧着する段階(S40)をさらに含むものでもある。
【0058】
以下、本発明の一具現例による物品について詳細に説明する。
【0059】
本発明の一具現例による物品は、前述した不織布積層体を含む。
【0060】
前記物品は、微細ほこり除去用マスク、空気清浄起用フィルタまたはエアコン用フィルタでもある。
【実施例】
【0061】
以下、実施例を介し、本発明についてさらに詳細に説明する。本実施例は、本発明についてさらに具体的に説明するためのものであり、本発明の範囲は、それら実施例に限定されるものではない。
【0062】
実施例1:複合不織布の製造
スパンボンド不織布層(SB)形成用重合体としては、溶融指数(MI)が34g/10分であるプロピレン単独重合体(H7900(LG化学製))を使用し、メルトブロウン不織布層(MB)形成用重合体としては、溶融フロー指数(MFR)が1,000g/10分である樹脂(H7910(LG化学製))を使用した。また、メルトブロウン不織布層(MB)形成用重合体には、束縛アミン光安定剤であるChimasorb 944を0.5wt%の含量で添加した。その後、
図1に図示されているような複合不織布の製造装置を利用し、スパンボンド・メルトブロウン・スパンボンド(SMS)形態の複合不織布を連続して製造した。具体的には、メルトブロウン不織布層(MB)は、前記複合不織布の製造装置において、二流体ノズルを介し、空気と共に水と接触することにより、連続して帯電処理された後、スパンボンド不織布層(SB)上部に積層され、前記メルトブロウン不織布層(MB)上部に、他のスパンボンド不織布層(SB)が積層される。結果として、SMS不織布積層体を得た。その後、前記SMS不織布積層体は、エンボスパターンが形成されているロールと、凹凸がないロールとの間において、熱圧着工程を経て、1つの複合不織布形態に製造された。ここで、SMS複合不織布の全体坪量は、100gsm(g/m
2)で調節し、二重メルトブロウン不織布層(MB)の坪量は、22gsmに調節した。
【0063】
実施例2:複合不織布の製造
SMS複合不織布の全体坪量を80gsmに調節し、メルトブロウン不織布層(MB)の坪量を30gsmに調節したことを除いては、前記実施例1と同一方法でもって、SMS複合不織布を製造した。
【0064】
実施例3:複合不織布の製造
SMS複合不織布の全体坪量を61gsmに調節し、メルトブロウン不織布層(MB)の坪量を15gsmに調節したことを除いては、前記実施例1と同一方法でもって、SMS複合不織布を製造した。
【0065】
実施例4:複合不織布の製造
SMS複合不織布の全体坪量を55gsmに調節し、メルトブロウン不織布層(MB)の坪量を13gsmに調節したことを除いては、前記実施例1と同一方法でもって、SMS複合不織布を製造した。
【0066】
実施例5:複合不織布の製造
SMS複合不織布の全体坪量を50gsmに調節し、メルトブロウン不織布層(MB)の坪量を25gsmに調節したことを除いては、前記実施例1と同一方法でもって、SMS複合不織布を製造した。
【0067】
実施例6:複合不織布の製造
SMS複合不織布の全体坪量を35gsmに調節し、メルトブロウン不織布層(MB)の坪量を12gsmに調節したことを除いては、前記実施例1と同一方法でもって、SMS複合不織布を製造した。
【0068】
実施例7:複合不織布の製造
SMS複合不織布の全体坪量を35gsmに調節し、メルトブロウン不織布層(MB)の坪量を8gsmに調節したことを除いては、前記実施例1と同一方法でもって、SMS複合不織布を製造した。
【0069】
実施例8:複合不織布の製造
SMS複合不織布の全体坪量を20gsmに調節し、メルトブロウン不織布層(MB)の坪量を3gsmに調節したことを除いては、前記実施例1と同一方法でもって、SMS複合不織布を製造した。
【0070】
比較例1:メルトブロウン単一不織布の製造
スパンボンド不織布層(SB)を省略したことを除いては、前記実施例2と同一方法でもって、メルトブロウン単一不織布を製造した。
【0071】
比較例2:複合不織布の製造
メルトブロウン不織布層(MB)に帯電処理を施さないことを除いては、前記実施例3と同一方法でもって、SMS複合不織布を製造した。
【0072】
比較例3:メルトブロウン単一不織布の製造
スパンボンド不織布層(SB)を省略したことを除いては、前記実施例3と同一方法でもって、メルトブロウン単一不織布を製造した。
【0073】
比較例4:複合不織布の製造
メルトブロウン不織布層(MB)に帯電処理を施さないことを除いては、前記実施例7と同一方法でもって、SMS複合不織布を製造した。
【0074】
比較例5:複合不織布の製造
メルトブロウン不織布層(MB)に帯電処理を施さないことを除いては、前記実施例8と同一方法でもって、SMS複合不織布を製造した。
【0075】
比較例6:不織布積層体の製造
2枚のスパンボンド不織布層(SB)、及び1枚のメルトブロウン不織布層(MB)をそれぞれ別途に製造した後、それらを互いに合紙し、SMS不織布積層体を製造した。ここで、該メルトブロウン不織布層(MB)は、米国登録特許第6,375,886号に開示されている帯電処理方法によって帯電処理された。また、実施例1と同一に、SMS不織布積層体の全体坪量を100gsm(g/m2)に調節し、二重メルトブロウン不織布層(MB)の坪量を22gsmに調節した。
【0076】
参考例1:不織布積層体の製造
メルトブロウン不織布層(MB)を、米国登録特許第5,227,172号に開示されている帯電処理方法でもって帯電させたことを除いては、前記実施例1と同一方法でもって、SMS複合不織布を製造した。
【0077】
評価例:不織布の物性評価
前述の実施例1~8、比較例1~6及び参考例1で製造されたそれぞれの不織布の微細ほこり除去性能維持率と、圧力損失維持率とを、下記のような方法で評価し、その結果を下記表1に示した。
(1)測定装置:TSI社のTSI-8130モデルを使用した。
(2)エアロゾル形成:前記測定装置は、塩化ナトリウム水溶液と空気とを接触させた後、水を蒸発させ、空気中に分散された塩化ナトリウムを含む平均粒径が0.3μmであり、塩化ナトリウム粒子濃度が18.5mg/m3であるエアロゾルを形成した。
(3)エアロゾル除去効率評価:エアロゾル透過流量は、95L/分であり、不織布の評価面積は、100cm2であった。
(4)圧力損失評価:エアロゾル透過流量は、30L/分であり、不織布の評価面積は、100cm2であった。
(5)加速老化処理:不織布を乾燥オーブン(dry oven)で、70℃の温度で3日間保管した。
(6)加速老化処理の前後、エアロゾル除去効率と圧力損失とを評価した。
(7)前記数式1または前記数式2により、微細ほこり除去性能維持率及び圧力損失維持率を計算した。
【0078】
【0079】
前記表1を参照すれば、実施例1~8で製造された複合不織布は、微細ほこり除去性能維持率及び圧力損失維持率が、それぞれ80%以上であり、加速老化処理後の微細ほこり除去率(すなわち、エアロゾル除去率)も18%以上であると示された。
【0080】
しかしながら、比較例1及び3で製造された不織布は、圧力損失維持率が90%以上であり、加速老化処理後の微細ほこり除去率も18%以上であるが、微細ほこり除去性能維持率は、80%未満であると示された。
【0081】
また、比較例2,4及び5で製造された不織布は、微細ほこり除去性能維持率が80%以上であり、圧力損失維持率も90%以上であるが、加速老化処理後の微細ほこり除去率が18%未満であると示された。
【0082】
また、比較例6で製造された不織布は、圧力損失維持率が90%以上であり、加速老化処理後の微細ほこり除去率も18%以上であるが、微細ほこり除去性能維持率は、80%未満であると示された。
【0083】
また、参考例1で製造された不織布は、圧力損失維持率が90%以上であり、加速老化処理後の微細ほこり除去率も18%以上であるが、微細ほこり除去性能維持率は、80%未満であると示された。
【0084】
本発明は、図面及び実施例を参照に説明されたが、それらは、例示的なものに過ぎす、本技術分野の当業者であるならば、それらから、多様な変形、及び均等な他の具現例が可能であるという点を理解するであろう。従って、本発明の真の技術的保護範囲は、特許請求の範囲の技術的思想によって定められるものである。