(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】配線状態検出部を有するコンバータ及びモータ駆動装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/12 20060101AFI20241022BHJP
H02M 7/219 20060101ALI20241022BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20241022BHJP
H02M 7/797 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
H02M7/12 H
H02M7/12 601A
H02M7/219
H02M7/48 M
H02M7/797
(21)【出願番号】P 2022559044
(86)(22)【出願日】2021-10-19
(86)【国際出願番号】 JP2021038652
(87)【国際公開番号】W WO2022091884
(87)【国際公開日】2022-05-05
【審査請求日】2023-05-12
(31)【優先権主張番号】P 2020178705
(32)【優先日】2020-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100112357
【氏名又は名称】廣瀬 繁樹
(72)【発明者】
【氏名】田川 貴聡
【審査官】今井 貞雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-058184(JP,A)
【文献】特開2014-195375(JP,A)
【文献】特開2006-340466(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/12
H02M 7/219
H02M 7/48
H02M 7/797
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源回生機能を有するコンバータであって、
三相交流電源側から入力された交流電力を直流電力に変換して直流側へ出力する整流動作と、前記直流側の直流電力を交流電力に変換して前記三相交流電源側へ出力する回生動作と、を選択的に実行する電力変換部と、
前記三相交流電源側から前記電力変換部に入力される各相電圧についての電圧検出値を検出する入力電圧検出部と、
前記電圧検出値を用いた演算処理に基づいて、前記電力変換部の整流動作及び回生動作を制御する制御部と、
前記電力変換部の回生動作時に前記電力変換部から前記三相交流電源側へ流れる回生電流の値を検出する回生電流検出部と、
前記回生電流の値と所定の閾値との比較に基づき、前記入力電圧検出部と前記三相交流電源との間の配線状態を検出する配線状態検出部と、
を備え
、
前記配線状態検出部は、
前記制御部による前記演算処理に用いる前記電圧検出値の各相に対して正規の相情報を割り当てる割当て部と、
前記制御部が前記電圧検出値及び前記正規の相情報を用いて前記演算処理を実行して前記電力変換部の回生動作を制御したときにおいて、前記回生電流の値が前記閾値以下の場合は、前記入力電圧検出部と前記三相交流電源との間の配線は正しいと判定し、前記回生電流の値が前記閾値より大きい場合は、前記入力電圧検出部と前記三相交流電源との間の配線に誤りがあると判定する判定部と、
を有する、コンバータ。
【請求項2】
電源回生機能を有するコンバータであって、
三相交流電源側から入力された交流電力を直流電力に変換して直流側へ出力する整流動作と、前記直流側の直流電力を交流電力に変換して前記三相交流電源側へ出力する回生動作と、を選択的に実行する電力変換部と、
前記三相交流電源側から前記電力変換部に入力される各相電圧についての電圧検出値を検出する入力電圧検出部と、
前記電圧検出値を用いた演算処理に基づいて、前記電力変換部の整流動作及び回生動作を制御する制御部と、
前記電力変換部の回生動作時に前記電力変換部から前記三相交流電源側へ流れる回生電流の値を検出する回生電流検出部と、
前記回生電流の値と所定の閾値との比較に基づき、前記入力電圧検出部と前記三相交流電源との間の配線状態を検出する配線状態検出部と、
を備え、
前記配線状態検出部は、
前記制御部による前記演算処理に用いる前記電圧検出値の各相に対して暫定相情報を割り当てる割当て部と、
前記制御部が前記電圧検出値及び前記暫定相情報を用いて前記演算処理を実行して前記電力変換部の回生動作を制御したときにおいて、前記回生電流の値が前記閾値以下の場合は、前記入力電圧検出部と前記三相交流電源との間の配線は正しいと判定し、前記回生電流の値が前記閾値より大きい場合は、前記入力電圧検出部と前記三相交流電源との間の配線に誤りがあると判定する判定部と、
を有する、コンバータ。
【請求項3】
前記判定部により前記入力電圧検出部と前記三相交流電源との間の配線は正しいと判定されたときに前記割当て部により割り当てられていた前記暫定相情報を、前記制御部による前記演算処理に用いる正規の相情報として設定する相情報設定部をさらに備える、請求項
2に記載のコンバータ。
【請求項4】
電源回生機能を有するコンバータであって、
三相交流電源側から入力された交流電力を直流電力に変換して直流側へ出力する整流動作と、前記直流側の直流電力を交流電力に変換して前記三相交流電源側へ出力する回生動作と、を選択的に実行する電力変換部と、
前記三相交流電源側から前記電力変換部に入力される各相電圧についての電圧検出値を検出する入力電圧検出部と、
前記電圧検出値を用いた演算処理に基づいて、前記電力変換部の整流動作及び回生動作を制御する制御部と、
前記電力変換部の回生動作時に前記電力変換部から前記三相交流電源側へ流れる回生電流の値を検出する回生電流検出部と、
前記制御部による前記演算処理に用いる前記電圧検出値の各相に対して暫定相情報を割り当てる割当て部と、
前記制御部が前記電圧検出値及び前記暫定相情報を用いて前記演算処理を実行して前記電力変換部の回生動作を制御したときにおいて、前記回生電流検出部により最小の回生電流の値が検出されたときに前記割当て部により割り当てられていた前記暫定相情報を、前記制御部による前記演算処理に用いる正規の相情報として設定する相情報設定部と、
を備える、コンバータ。
【請求項5】
前記相情報設定部は、設定した前記正規の相情報を記憶する記憶部を有する、請求項
3または
4に記載のコンバータ。
【請求項6】
前記電力変換部は、ダイオードと前記ダイオードに逆並列に接続されたスイッチング素子とからなるパワー素子が各相の上アーム及び下アームの各々に設けられた三相ブリッジ回路を有し、
前記制御部は、前記電圧検出値が最大となる相の上アームに設けられた前記スイッチング素子をオンするとともに前記電圧検出値が最小となる相の下アームに設けられた前記スイッチング素子をオンするよう前記電力変換部を制御することで、前記電力変換部を回生動作させる請求項1~
5のいずれか一項に記載のコンバータ。
【請求項7】
請求項1~
6のいずれか一項に記載のコンバータと、
前記コンバータの前記直流側に接続され、前記直流側の直流電力をモータ駆動のための交流電力に変換して出力するインバータと、
を備える、モータ駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線状態検出部を有するコンバータ及びモータ駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械、鍛圧機械、射出成形機、産業機械、あるいは各種ロボット内のモータの駆動を制御するモータ駆動装置においては、三相交流電源から供給された交流電力をコンバータ(整流器)にて直流電力に変換してDCリンクへ出力し、さらにインバータにてDCリンクにおける直流電力を交流電力に変換して、この交流電力をモータ駆動電力としてモータに供給している。
【0003】
モータ駆動装置におけるコンバータとして、モータ減速時に生じる回生電力を三相交流電源側に戻す電源回生機能を有するコンバータが広く用いられている。電源回生機能を有するコンバータは、ダイオード及びこれに逆並列に接続されたスイッチング素子からなるパワー素子のブリッジ回路を有する電力変換部を備える。電源回生機能を有するコンバータの制御方式としては、PWM制御方式や120度通電方式などがある。
【0004】
コンバータには、三相交流電源の各相の電圧検出値を検出するための入力電圧検出部が設けられている。入力電圧検出部によって検出された電圧検出値は、電力変換部の電力変換処理や三相交流電源の停電検出処理などのコンバータ内の各処理に用いられる。例えば、コンバータの回生動作は、入力電圧検出部によって三相交流電源の各相の電圧検出値を検出し、電圧検出値が最大となる相の上アームに設けられたスイッチング素子をオンするとともに三相交流電源の電圧が最小となる相に設けられた下アームのスイッチング素子をオンするよう電力変換部を制御することで実現される。入力電圧検出部の接続部には三相交流電源の各相に対応した入力端子が設けられている。コンバータにおける各処理を正しく実行するためには、三相交流電源の各相と入力電圧検出部における対応する相の入力端子との間を正しく配線することが重要である。
【0005】
例えば、交流電圧を直流電圧に変換するコンバータ部と、前記コンバータ部に流れる電流を検出するコンバータ電流検出回路と、直流電圧を三相交流電圧に変換するインバータ部と、前記コンバータ部の出力に接続された抵抗とスイッチング素子からなる回生電力放電回路と、前記回生電力放電回路の駆動を行う回生放電駆動回路と、前記インバータ部の制御を行うCPUを備えたインバータ装置において、インバータの電源が投入された時に、前記回生放電駆動回路を動作させ前記回生電力放電回路に電流を流し、その電流が前記コンバータ電流検出回路にて検出されるか否かを前記CPUにて判定し、電流が流れなかった場合にインバータの運転動作を禁止することを特徴とするインバータの保護方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
例えば、交流電源を接続する入力端子を有し、該入力端子から供給される交流出力を直流出力に変換する整流回路と、スイッチング素子と整流素子とを逆並列接続した回路部を直列に接続した一対のスイッチ部にシャント抵抗を接続した直列接続回路部を複数個並列に接続したブリッジ回路を構成するとともに、該ブリッジ回路の両端が前記整流回路からの直流出力を蓄積するコンデンサの両端間に接続され、前記一対のスイッチ部の接続部から引き出された負荷接続端子を介して所定の負荷装置に交流電力を供給するインバータ回路と、前記回路部のスイッチング素子の導通を制御するためのスイッチング素子制御信号を前記インバータ回路に出力するとともに、前記シャント抵抗に流れた電流を検出する制御部と、を備え、前記制御部は、前記一対のスイッチ部の前記シャント抵抗に接続されている回路部のスイッチング素子の全てがオンとなるようなスイッチング素子制御信号を生成して前記インバータ回路に出力するとともに、該スイッチング素子制御信号の入力によって検出された電流検出信号に基づいて、電流が0か否かにより前記負荷接続端子における電源装置の誤接続の有無を判定することを特徴とする電力変換装置が知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【0007】
例えば、主回路端子のスイッチング時における三相電源から回生コンバータに入る状態データを検出する状態データ検出部と、前記状態データ検出部にて検出した状態データと予め定めた閾値とを比較する比較部と、前記比較部により比較された結果に基づき、主回路に入る三相電源と位相検出回路へ入る三相電源との配線状態を判断する判断部と、を備える電力変換装置が知られている(例えば、特許文献3参照。)。
【0008】
例えば、半導体スイッチング素子のオンオフにより交流電源電圧を任意の大きさ及び周波数の交流電圧に変換して出力する交流交流変換器において、前記変換器の正規の入力端子に印加されている交流電圧情報と、前記変換器の正規の出力端子に印加されている交流電圧の整流電圧情報とを用いて、前記変換器の正規の出力端子が交流電源側に接続され、かつ、正規の入力端子が負荷側に接続されている逆接続状態を検出することを特徴とする交流交流変換器の異常検出方法が知られている(例えば、特許文献4参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2000-139082号公報
【文献】特開2008-253008号公報
【文献】特開2014-195375号公報
【文献】特開2006-352960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
三相交流電源とコンバータ内の入力電圧検出部との配線作業は、コンバータを利用する作業者が行うことが多い。作業者が配線作業に不慣れだったり作業者の不注意などにより、三相交流電源の各相の電力線が、入力電圧検出部における対応する相とは異なる相の入力端子に誤配線される可能性がある。三相交流電源と入力電圧検出部との間に誤配線があると、コンバータ及びこれを備えるモータ駆動装置は正しく動作できず、アラーム停止したり故障する問題がある。また、当該誤配線に起因するアラーム停止が発生してしまうと、三相交流電源と入力電圧検出部との間を正しく配線し直さない限りはモータ駆動装置を動作させることができず、作業効率が悪い。したがって、電源回生機能を有するコンバータ及びこれを備えるモータ駆動装置においては、三相交流電源とコンバータ内の入力電圧検出部との間の誤配線に起因するアラーム停止や故障を防止する技術が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示の一態様によれば、電源回生機能を有するコンバータは、三相交流電源側から入力された交流電力を直流電力に変換して直流側へ出力する整流動作と、直流側の直流電力を交流電力に変換して三相交流電源側へ出力する回生動作と、を選択的に実行する電力変換部と、三相交流電源側から電力変換部に入力される各相電圧についての電圧検出値を検出する入力電圧検出部と、電圧検出値を用いた演算処理に基づいて、電力変換部の整流動作及び回生動作を制御する制御部と、電力変換部の回生動作時に電力変換部から三相交流電源側へ流れる回生電流の値を検出する回生電流検出部と、回生電流と所定の閾値との比較に基づき、入力電圧検出部と三相交流電源との間の配線状態を検出する配線状態検出部と、を備え、配線状態検出部は、制御部による演算処理に用いる電圧検出値の各相に対して正規の相情報を割り当てる割当て部と、制御部が電圧検出値及び正規の相情報を用いて演算処理を実行して電力変換部の回生動作を制御したときにおいて、回生電流の値が閾値以下の場合は、入力電圧検出部と三相交流電源との間の配線は正しいと判定し、回生電流の値が閾値より大きい場合は、入力電圧検出部と三相交流電源との間の配線に誤りがあると判定する判定部と、を有する。
【0012】
また、本開示の一態様によれば、電源回生機能を有するコンバータは、三相交流電源側から入力された交流電力を直流電力に変換して直流側へ出力する整流動作と、直流側の直流電力を交流電力に変換して三相交流電源側へ出力する回生動作と、を選択的に実行する電力変換部と、三相交流電源側から電力変換部に入力される各相電圧についての電圧検出値を検出する入力電圧検出部と、電圧検出値を用いた演算処理に基づいて、電力変換部の整流動作及び回生動作を制御する制御部と、電力変換部の回生動作時に電力変換部から三相交流電源側へ流れる回生電流の値を検出する回生電流検出部と、制御部による演算処理に用いる電圧検出値の各相に対して暫定相情報を割り当てる割当て部と、制御部が電圧検出値及び暫定相情報を用いて演算処理を実行して電力変換部の回生動作を制御したときにおいて、回生電流検出部により最小の回生電流が検出されたときに割当て部により割り当てられていた暫定相情報を、制御部による演算処理に用いる正規の相情報として設定する相情報設定部と、を備える。
【0013】
また、本開示の一態様によれば、モータ駆動装置は、上記コンバータと、コンバータの直流側に接続され、直流側の直流電力をモータ駆動のための交流電力に変換して出力するインバータと、を備える。
【発明の効果】
【0014】
本開示の一態様によれば、電源回生機能を有するコンバータ及びこれを備えるモータ駆動装置においては、三相交流電源とコンバータ内の入力電圧検出部との間の誤配線に起因するアラーム停止や故障を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本開示の第1の実施形態によるコンバータ及びモータ駆動装置を示す図である。
【
図2A】コンバータ内の電力変換部の回生動作を説明する図であって、三相ブリッジ回路からなる電力変換部を示す回路図である。
【
図2B】コンバータ内の電力変換部の回生動作を説明する図であって、電源回生時における三相交流電源電圧の波形とパワー素子内のスイッチング素子のスイッチングパターンとの関係を示す図である。
【
図3A】三相交流電源と入力電圧検出部との間の配線状態と回生電流との関係を説明する回路図であって、三相交流電源の各相と入力電圧検出部の入力端子との間が正しく配線されている場合を示す。
【
図3B】三相交流電源と入力電圧検出部との間の配線状態と回生電流との関係を説明する回路図であって、三相交流電源の各相と入力電圧検出部の入力端子との間に誤配線がある場合を示す。
【
図4A】コンバータの回生動作時におけるDCリンク電圧の正電位及び負電位並びに入力電圧検出部により検出される電圧検出値を示す波形図であって、
図3Aに示すように三相交流電源の各相と入力電圧検出部の入力端子との間が正しく配線されている場合を示す。
【
図4B】コンバータの回生動作時におけるDCリンク電圧の正電位及び負電位並びに入力電圧検出部により検出される電圧検出値を示す波形図であって、
図3Bに示すように三相交流電源の各相と入力電圧検出部の入力端子との間に誤配線がある場合を示す。
【
図5】本開示の第1の実施形態によるコンバータ及びモータ駆動装置における配線状態検出処理の動作フローを示すフローチャートである。
【
図6】三相交流電源の相と暫定相情報で規定される相との関係を例示する図である。
【
図7】本開示の第1の実施形態によるコンバータ及びモータ駆動装置における相情報設定処理の動作フローを示すフローチャートである。
【
図8】本開示の第2の実施形態によるコンバータ及びモータ駆動装置を示す図である。
【
図9】本開示の第2の実施形態によるコンバータ及びモータ駆動装置における相情報設定処理の動作フローを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下図面を参照して、配線状態検出部を有するコンバータ及びモータ駆動装置について説明する。理解を容易にするために、図面は縮尺を適宜変更している。また、図面に示される形態は実施するための一つの例であり、図示された形態に限定されるものではない。
【0017】
図1は、本開示の第1の実施形態によるコンバータ及びモータ駆動装置を示す図である。
【0018】
一例として、三相交流電源4に接続されたモータ駆動装置100により、モータ5を制御する場合について示す。三相交流電源4の一例を挙げると、三相交流400V電源、三相交流200V電源、三相交流600V電源などがある。また、本実施形態においては、モータ5の種類は特に限定されず、例えば誘導モータであっても同期モータであってもよい。モータ5の相数は本実施形態を特に限定するものではなく、例えば三相であっても単相であってもよい。図示の例では、モータ5を三相交流モータとしている。モータ5が設けられる機械には、例えば工作機械、ロボット、鍛圧機械、射出成形機、産業機械などが含まれる。
【0019】
図1に示すように、本開示の第1の実施形態によるモータ駆動装置100は、コンバータ1と、インバータ3と、DCリンクコンデンサ6と、交流リアクトル7とを備える。
【0020】
コンバータ1は、ダイオードの整流動作及びスイッチング素子のオンオフ動作により、三相交流電源4側の交流電力とDCリンクの直流電力との間で双方向に電力変換を行うことができる電源回生可能な整流器として構成される。
【0021】
コンバータ1の直流出力側には、インバータ3が接続される。コンバータ1の直流出力側とインバータ3の直流入力側とを電気的に接続する回路部分は「DCリンク」と称される。なお、DCリンクは、「DCリンク部」、「直流リンク」、「直流リンク部」、「直流母線」あるいは「直流中間回路」などとも別称されることもある。
【0022】
インバータ3は、スイッチング素子及びこれに逆並列に接続されたダイオードのフルブリッジ回路からなる。スイッチング素子の例としては、IGBT、FET、サイリスタ、GTO(Gate Turn-OFF thyristor:ゲートターンオフサイリスタ)、トランジスタなどがある。
図1に示す例では、モータ5を三相交流モータとしたので、インバータ3は三相フルブリッジ回路で構成される。モータ5が単相交流モータである場合は、インバータ3は単相ブリッジ回路で構成される。
【0023】
インバータ3は、上位制御装置(図示せず)の指令に基づき内部のスイッチング素子のオンオフ動作がPWM制御されることで、DCリンクにおける直流電力を交流電力に変換して交流側のモータ5へ供給するとともに、モータ5の減速により回生された交流電力を直流電力に変換してDCリンクへ戻す。モータ5は、インバータ3から供給される交流電力に基づいて、速度、トルクまたは回転子の位置が制御される。インバータ3を制御する上位制御装置は、アナログ回路と演算処理装置との組み合わせで構成されてもよく、あるいは演算処理装置のみで構成されてもよい。インバータ3を制御する上位制御装置を構成し得る演算処理装置には、例えばIC、LSI、CPU、MPU、DSPなどがある。
【0024】
DCリンクには、DCリンクコンデンサ6が設けられる。DCリンクコンデンサ6は、インバータ3が交流電力を生成するために用いられる直流電力を蓄積する機能及びコンバータ1の直流出力の脈動分を抑える機能を有する。DCリンクコンデンサ6の例としては、例えば電解コンデンサやフィルムコンデンサなどがある。
【0025】
コンバータ1の交流入力側と三相交流電源4との間には、交流リアクトル7が設けられる。
【0026】
続いて、本開示の第1の実施形態によるモータ駆動装置100内のコンバータ1についてより詳細に説明する。
【0027】
本開示の第1の実施形態によれば、コンバータ1は、電力変換部11と、入力電圧検出部12と、制御部13と、回生電流検出部14と、配線状態検出部15と、相情報設定部16とを備える。
【0028】
例えばモータ駆動装置100の設置時やメンテナンス時に、作業者によって入力電圧検出部12の入力端子32と三相交流電源4の各相の電力線との配線作業が行われる。入力電圧検出部12は、三相交流電源4側からコンバータ1の主電力変換回路である電力変換部11に入力される各相電圧についての電圧検出値を検出する。入力電圧検出部12により検出された各相電圧についての電圧検出値は、電力変換部11を制御するための制御部13に送られる。なお、「入力電圧検出部12の入力端子32と三相交流電源4の各相の電力線との配線」については、単に「入力電圧検出部12と三相交流電源4との間の配線」及びこれに類する表現にて記載することがある。
【0029】
制御部13は、入力電圧検出部12により検出された電圧検出値を用いた演算処理に基づいて、電力変換部11の整流動作及び回生動作を制御する。制御部13による演算処理の際には、入力電圧検出部12により検出された三相分の電圧検出値に対して相情報が割り当てられる。相情報は、三相分の電圧検出値の各々が、R相、S相及びT相のうちのどの相に対応するかを示すものである。制御部13は、入力電圧検出部12により検出された各相の電圧検出値と相情報とを用いて演算処理を実行し、電力変換部11の電力変換動作を制御する。以下、制御部13の演算処理で用いられる相情報で規定される相を、R’相、S’相及びT’相で表すことで、三相交流電源4の実際の相であるR相、S相、及びT相と区別する。
【0030】
電力変換部11は、ダイオードとこのダイオードに逆並列に接続されたスイッチング素子とからなるパワー素子が各相の上アーム及び下アームの各々に設けられた三相ブリッジ回路を有する。スイッチング素子の例としては、IGBT、FET、サイリスタ、GTO、トランジスタなどがある。電力変換部11内のスイッチング素子のオンオフ動作は、制御部13によりPWMスイッチング制御方式または120度通電方式に従って制御される。電力変換部11は、制御部13によるスイッチング素子の制御により、三相交流電源4側から入力された交流電力を直流電力に変換して直流側へ出力する整流動作と、直流側の直流電力を交流電力に変換して三相交流電源4側へ出力する回生動作と、を選択的に実行する。
【0031】
コンバータ1内の電力変換部11の整流動作は、制御部13が電力変換部11内の全てのスイッチング素子をオフに制御することで実現される。
【0032】
コンバータ1内の電力変換部11の回生動作については、
図2A及び
図2Bを参照してより詳細に説明する。
図2Aは、コンバータ内の電力変換部の回生動作を説明する図であって、三相ブリッジ回路からなる電力変換部を示す回路図である。
図2Bは、コンバータ内の電力変換部の回生動作を説明する図であって、電源回生時における三相交流電源電圧の波形とパワー素子内のスイッチング素子のスイッチングパターンとの関係を示す図である。
図2A及び
図2Bでは、三相交流電源4の各相と入力電圧検出部12における対応する相の入力端子32との間が正しく配線されている場合を例にとり説明する。
【0033】
図2Aに示すように、コンバータ1の電力変換部11は、R相、S相、及びT相の3つのレグを有する。各相のレグは、上アーム及び下アームを有する。ここでは、各アームを、R相上アーム、R相下アーム、S相上アーム、S相下アーム、T相上アーム、及びT相下アームと称する。R相上アームにはスイッチング素子S
RUが設けられ、R相下アームにはスイッチング素子S
RLが設けられる。S相上アームにはスイッチング素子S
SUが設けられ、S相下アームにはスイッチング素子S
SLが設けられる。T相上アームにはスイッチング素子S
TUが設けられ、T相下アームにはスイッチング素子S
TLが設けられる。
【0034】
コンバータ1内の電力変換部11を回生動作させる場合、制御部13は、入力電圧検出部12によって検出された電圧検出値が最大となる相の上アームに設けられたスイッチング素子をオンするとともに入力電圧検出部12によって検出された電圧検出値が最小となる相の下アームに設けられたスイッチング素子をオンするよう、各相各アームに設けられたスイッチング素子を制御する。上述のように、入力電圧検出部12により検出された三相分の電圧検出値に、制御部13が電力変換部11の電力変換動作を制御するための相情報であるR’相、S’相及びT’相が割り当てられる。
【0035】
例えば、
図2Bに示すように、R’相として割り当てられた電圧検出値が最大となりT’相 として割り当てられた電圧検出値が最小となる位相区間では、制御部13は、電力変換部11のR相上アームのスイッチング素子S
RU及びT相下アームのスイッチング素子S
TLがそれぞれオンとなるように制御し、それ以外のアームのスイッチング素子はオフとなるように制御する。S’相として割り当てられた電圧検出値が最大となりT’相 として割り当てられた電圧検出値が最小となる位相区間では、制御部13は、電力変換部11のS相上アームのスイッチング素子S
SU及びT相下アームのスイッチング素子S
TLがそれぞれオンとなるように制御し、それ以外のアームのスイッチング素子はオフとなるように制御する。S’相として割り当てられた電圧検出値が最大となりR’相として割り当てられた電圧検出値が最小となる位相区間では、制御部13は、電力変換部11のS相上アームのスイッチング素子S
SU及びR相下アームのスイッチング素子S
RLがそれぞれオンとなるように制御し、それ以外のアームのスイッチング素子はオフとなるように制御する。T’相として割り当てられた電圧検出値が最大となりR’相 として割り当てられた電圧検出値が最小となる位相区間では、制御部13は、電力変換部11のT相上アームのスイッチング素子S
TU及びR相下アームのスイッチング素子S
RLがそれぞれオンとなるように制御し、それ以外のアームのスイッチング素子はオフとなるように制御する。T’相として割り当てられた電圧検出値が最大となりS’相として割り当てられた電圧検出値が最小となる位相区間では、制御部13は、電力変換部11のT相上アームのスイッチング素子S
TU及びS相下アームのスイッチング素子S
SLがそれぞれオンとなるように制御し、それ以外のアームのスイッチング素子はオフとなるように制御する。R’相として割り当てられた電圧検出値が最大となりS’相として割り当てられた電圧検出値が最小となる位相区間では、制御部13は、電力変換部11のR相上アームのスイッチング素子S
RU及びS相下アームのスイッチング素子S
SLがそれぞれオンとなるように制御し、それ以外のアームのスイッチング素子はオフとなるように制御する。
【0036】
このように、コンバータ1内の電力変換部11の回生動作時においては、各スイッチング素子それぞれについて、オンとなる状態が三相交流電源4の1周期あたり120度の位相区間にわたって存在し、入力電圧検出部12によって検出される最大及び最小となる電圧検出値が入れ替わる度に、オンするスイッチング素子が切り替わる。
【0037】
図1に説明を戻すと、回生電流検出部14は、制御部13が正規の相情報と入力電圧検出部12により検出された電圧検出値とを用いて演算処理を実行して電力変換部11の回生動作を制御したときにおいて、電力変換部11から三相交流電源4側へ流れる回生電流の値を検出する。なお、回生電流検出部14として、コンバータ1内に一般的に設けられる入力電流検出部31を流用してもよい。すなわち、一般的に設けられる入力電流検出部31は、整流動作時には三相交流電源4側から電力変換部11へ流れ込む電流(例えば力行電流)の値を検出し、回生動作時には電力変換部11から三相交流電源4へ流れ出す回生電流の値を検出する。このような入力電流検出部31の機能の1つとして、回生電流検出部14を実現してもよい。
【0038】
配線状態検出部15は、回生電流検出部14により検出された回生電流の値と所定の閾値との比較に基づき、入力電圧検出部12と三相交流電源4との間の配線状態を検出する。すなわち、配線状態検出部15は、回生電流の値が閾値以下の場合は、入力電圧検出部と前記三相交流電源との間の配線は正しいと判定し、回生電流の値が閾値より大きい場合は、入力電圧検出部と前記三相交流電源との間の配線に誤りがあると判定する。
【0039】
電力変換部11から三相交流電源4へ流れ出す回生電流は、入力電圧検出部12の入力端子32と三相交流電源4との間に誤配線がある場合の方が、入力電圧検出部12の入力端子32と三相交流電源4との間が正しく配線されている場合に比べて、より大きくなる。この理由について、
図3A、
図3B、
図4A及び
図4Bを参照して説明する。
【0040】
図3Aは、三相交流電源と入力電圧検出部との間の配線状態と回生電流との関係を説明する回路図であって、三相交流電源の各相と入力電圧検出部の入力端子との間が正しく配線されている場合を示す。
図3Bは、三相交流電源と入力電圧検出部との間の配線状態と回生電流との関係を説明する回路図であって、三相交流電源の各相と入力電圧検出部の入力端子との間に誤配線がある場合を示す。
図3A及び
図3Bでは、電力変換部11、入力電圧検出部12及び入力端子32以外のコンバータ1の構成要素については、図示を省略している。また、
図3A及び
図3Bでは、インバータ3及びモータ5についても、図示を省略している。
【0041】
図4Aは、コンバータの回生動作時におけるDCリンク電圧の正電位及び負電位並びに入力電圧検出部により検出される電圧検出値を示す波形図であって、
図3Aに示すように三相交流電源の各相と入力電圧検出部の入力端子との間が正しく配線されている場合を示す。
図4Bは、コンバータの回生動作時におけるDCリンク電圧の正電位及び負電位並びに入力電圧検出部により検出される電圧検出値を示す波形図であって、
図3Bに示すように三相交流電源の各相と入力電圧検出部の入力端子との間に誤配線がある場合を示す。
【0042】
図3Aに示すように、三相交流電源4の各相と入力電圧検出部12における対応する相の入力端子32との間が正しく配線されている場合、三相交流電源4のR相の電圧は入力電圧検出部12によってR’相の電圧検出値として検出され、三相交流電源4のS相の電圧は入力電圧検出部12によってS’相の電圧検出値として検出され、三相交流電源4のT相の電圧は入力電圧検出部12によってT’相の電圧検出値として検出され、それぞれ制御部13に送られる。よって、制御部13によるコンバータ1の電力変換動作の制御用に設定されているR’相、S’相及びT’相の順番と三相交流電源4のR相、S相及びT相の順番とは一致している。
図4Aに示すように、制御部13は、電力変換部11に入力される三相交流電源4のR相、T相及びS相の電圧検出値をR’相、T’相及びS’相の電圧検出値と認識して電力変換部11のスイッチング素子をオンオフ制御することで、電力変換部11の回生動作を制御する。したがって、
図4Aに示すように、電圧検出値が最大となる相に対応するスイッチング素子がオンされるので、DCリンク電圧の正電位V
dcPと入力電圧検出部12により検出される最大となる相の電圧検出値との電位差(白抜きの矢印)は小さい。同様に、電圧検出値が最小となる相に対応するスイッチング素子がオンされるので、DCリンク電圧の負電位V
dcNと入力電圧検出部12により検出される最小となる相の電圧検出値との電位差(白抜きの矢印)は小さい。したがって、電力変換部11から三相交流電源4へ流れ出る回生電流は小さい。
【0043】
図3Bに示すように、三相交流電源4のR相とS相とが入れ替わって入力電圧検出部12の入力端子32に接続されるような誤配線がある場合、三相交流電源4の「S相」の電圧は入力電圧検出部12によってR’相の電圧検出値として検出され、三相交流電源4の「R相」の電圧は入力電圧検出部12によってS’相の電圧検出値として検出され、三相交流電源4のT相の電圧は入力電圧検出部12によってT’相の電圧検出値として検出され、それぞれ制御部13に送られる。よって、制御部13によるコンバータ1の電力変換動作の制御用に設定されているR’相、S’相及びT’相の順番は三相交流電源4のS相、R相及びT相の順番と一致しない。
図4Bに示すように、制御部13は、T相の電圧検出値についてはT’相の電圧検出値として認識するものの、S相の電圧検出値はR’相の電圧検出値として認識し、R相の電圧検出値はS’相の電圧検出値として認識してしまう。つまり、制御部13は、電力変換部11に入力される三相交流電源4の本来のR相、T相及びS相の電圧検出値をR’相、S’相及びT’相の電圧検出値と認識して電力変換部11のスイッチング素子をオン制御することで、電力変換部11の回生動作を制御することになる。したがって、
図4Bに示すように、電圧検出値が最大ではない相に対応するスイッチング素子がオンされてしまうので、DCリンク電圧の正電位V
dcPとオンされた相のスイッチング素子に対応する電圧検出値(すなわち最大ではない相の電圧検出値)との電位差(白抜きの矢印)は大きくなる。同様に、DCリンク電圧の負電位V
dcNとオンされた相のスイッチング素子に対応する電圧検出値(すなわち最小ではない相の電圧検出値)との電位差(白抜きの矢印)は大きくなる。このため、電力変換部11から三相交流電源4へ流れ出る回生電流は大きくなる。
【0044】
このように、入力電圧検出部12の入力端子32と三相交流電源4との間に誤配線がある場合は、入力電圧検出部12の入力端子32と三相交流電源4との間が正しく配線されている場合に比べて、スイッチング素子のオン時(導通時)におけるDCリンク電圧の正電位VdcPと最大となる相の電圧検出値との電位差、及びスイッチング素子のオン時(導通時)におけるDCリンク電圧の負電位VdcNと最小となる相の電圧検出値との電位差が大きくなるので、電力変換部11から三相交流電源4へ流れ出す回生電流は、より大きくなる。
【0045】
そこで、本開示の第1の実施形態によるコンバータ1内の配線状態検出部15は、制御部13が電圧検出値及び正規の相情報を用いて演算処理を実行して電力変換部11の回生動作を制御したときにおいて、回生電流の値が予め規定された閾値以下の場合は、入力電圧検出部12と三相交流電源4との間の配線は正しいと判定し、回生電流の値が閾値より大きい場合は、入力電圧検出部12と三相交流電源4との間の配線に誤りがあると判定する。このため、配線状態検出部15は、割当て部21及び判定部22を有する。
【0046】
割当て部21は、制御部13による電力変換部11の回生動作の制御のための演算処理に用いる電圧検出値の各相に対して、正規の相情報を割り当てる。「正規」の相情報とは、入力電圧検出部12の入力端子32と三相交流電源4との間が正しく配線された状態において制御部13の制御により電力変換部11が回生動作を正常に実行することができるよう、入力電圧検出部12により検出された電圧検出値に割り当てられた相情報である。割り当てられた正規の相情報は、制御部13へ送られる。
【0047】
判定部22は、制御部13が電圧検出値及び正規の相情報を用いて演算処理を実行して電力変換部11の回生動作を制御したときにおいて、回生電流の値が閾値以下の場合は、入力電圧検出部12と三相交流電源4との間の配線は正しいと判定し、回生電流の値が閾値より大きい場合は、入力電圧検出部12と三相交流電源4との間の配線に誤りがあると判定する。なお、入力電流検出部31内に設けられる回生電流検出部14は、二相分または三相分の回生電流を検出するので、判定部22は、各相についての回生電流の値と閾値とを比較し、少なくとも一相分の回生電流の波高値が閾値より大きい場合は、入力電圧検出部12と三相交流電源4との間の配線に誤りがあると判定してもよい。またあるいは、判定部22は、回生電流検出部14が検出した二相分の入力電流を二相座標上のベクトルノルムに変換し、当該ベクトルノルムが閾値より大きい場合に、入力電圧検出部12と三相交流電源4との間の配線に誤りがあると判定してもよい。
【0048】
配線状態検出処理に用いられる閾値は、次のように設定すればよい。例えば、モータ駆動装置100においてはコンバータ1の電力変換部11の交流入力側の過電流発生を検知するための閾値が設定されることがあるが、この閾値を、配線状態検出処理に用いられる閾値と兼用にしてもよい。また例えば、モータ駆動装置100の工場出荷前までに、入力電圧検出部12の入力端子32と三相交流電源4との間を正しく配線したうえで制御部13が電圧検出値及び正規の相情報を用いて演算処理を実行して電力変換部11を回生動作させ、このとき回生電流検出部14により検出される回生電流の値よりも例えば数十パーセント程度高い値を、閾値に設定してもよい。なおここで示した数値例はあくまでも一例であって、これ以外の値であってもよい。また例えば、コンピュータによるシミュレーションにより、入力電圧検出部12の入力端子32と三相交流電源4との間を正しく配線した状態の下での電力変換部11の回生動作を再現し、コンバータ1の電力変換部11の交流入力側の電流値(回生電流の値)とモータ駆動装置100におけるアラーム信号の出力の有無との関係性などを事前に求めたうえで、閾値を設定してもよい。なお、閾値については、書き換え可能な記憶部(図示せず)に記憶されて外部機器によって書き換え可能であってもよく、これによれば閾値を一旦設定した後であっても必要に応じて適切な値に変更することができる。
【0049】
配線状態検出部15による配線状態の検出結果(判定結果)は、例えば表示部(図示せず)に表示される。表示部の例としては、単体のディスプレイ装置、コンバータ1に付属のディスプレイ装置、モータ駆動装置100に付属のディスプレイ装置、並びに、パソコン及び携帯端末に付属のディスプレイ装置などがある。またあるいは、配線状態検出部15による配線状態の検出結果(判定結果)を、例えば音声、スピーカ、ブザー、チャイムなどのような音を発する音響機器にて出力させてもよい。本開示の第1の実施形態によれば、作業者は、三相交流電源4とコンバータ1内の入力電圧検出部12との間に誤配線があることを容易に把握することができる。よって、作業者は、三相交流電源からの各相の電力線を、入力電圧検出部における対応する相の入力端子に正しく接続し直すといった対応をとることも容易となる。
【0050】
図5は、本開示の第1の実施形態によるコンバータ及びモータ駆動装置における配線状態検出処理の動作フローを示すフローチャートである。
【0051】
配線状態検出部15による配線状態検出処理は、モータ駆動装置100の設置時やメンテナンス時に作業者によって入力電圧検出部12の入力端子32と三相交流電源4の各相の電力線との配線作業が行われた際に、実行される。ステップS101において、配線状態検出部15内の割当て部21は、制御部13による電力変換部11の回生動作の制御のための演算処理に用いる電圧検出値の各相に対して、正規の相情報を割り当てる。割り当てられた正規の相情報は、制御部13へ送られる。
【0052】
ステップS102において、制御部13は、入力電圧検出部12により検出された電圧検出値及び割当て部21により割り当てられた正規の相情報を用いて演算処理を実行して電力変換部11の回生動作を制御する。
【0053】
ステップS103において、回生電流検出部14は、電力変換部11から三相交流電源4側へ流れる回生電流の値を検出する。
【0054】
ステップS104において、回生電流検出部14により検出された回生電流の値と閾値とを比較し、回生電流の値が閾値以下であるか否かを判定する。回生電流の値が閾値以下であると判定された場合はステップS105へ進み、回生電流の値が閾値より大きいと判定された場合はステップS106へ進む。
【0055】
ステップS105において、配線状態検出部15内の判定部22は、入力電圧検出部12と三相交流電源4との間の配線は正しいと判定する。
【0056】
ステップS106において、配線状態検出部15内の判定部22は、入力電圧検出部12と三相交流電源4との間の配線に誤りがあると判定する。なお、入力電圧検出部12と三相交流電源4との間の配線に誤りがあると判定された場合は、制御部13は全てのスイッチング素子をオフに制御することで回生電流の発生を抑制するようにしてよい。これにより、コンバータ1及びモータ駆動装置100の故障をより確実に防ぐことができる。
【0057】
ステップS105及びS106における配線状態検出部15内の判定部22による配線状態の検出結果(判定結果)は、例えば、表示部(図示せず)に表示されるか、音響機器にて出力させる。これにより、作業者は、三相交流電源4とコンバータ1内の入力電圧検出部12との間に誤配線があるか正常な配線であるかを容易に把握することができる。よって、作業者は、入力電圧検出部12と三相交流電源4との間の誤配線があったと確認した場合は、正しく配線し直すといった対応をとることができる。作業者は、入力電圧検出部12と三相交流電源4との間の配線が正常である確認した場合は、モータ駆動装置100を通常通りに動作させるための準備に取りかかることができる。
【0058】
第1の実施形態をさらに拡張して、上述の配線状態検出部15による配線状態の検出結果に基づいて、相情報設定部16により、制御部13による演算処理に用いる正規の相情報を自動的に設定するようにしてもよい。以下、正規の相情報の設定処理について説明する。
【0059】
図1に示す割当て部21において、制御部13による電力変換部11の回生動作の制御のための演算処理に用いる電圧検出値の各相に対して、暫定的な相情報である「暫定相情報」を割り当てる。配線状態検出部15による配線状態検出処理の実行中は、制御部13は、入力電圧検出部12により検出された各相の電圧検出値と暫定相情報を用いて演算処理を実行し、電力変換部11の電力変換動作を制御する。
【0060】
判定部22は、制御部13が電圧検出値及び暫定相情報を用いて演算処理を実行して電力変換部11の回生動作を制御したときにおいて、回生電流の値が閾値以下の場合は、入力電圧検出部12と三相交流電源4との間の配線は正しいと判定し、回生電流の値が閾値より大きい場合は、入力電圧検出部12と三相交流電源4との間の配線に誤りがあると判定する。
【0061】
図6は、三相交流電源の相と暫定相情報で規定される相との関係を例示する図である。三相交流電源4の相数「3」に対応して、制御部13によるコンバータ1の電力変換動作の制御用に3つの相すなわち第1相、第2相及び第3相を設定する必要がある。よって、各相の電圧検出値に対して割当て部21により割り当てられる暫定相情報は、合計6パターンある。すなわち、第1相がR’相であり第2相がS’相であり第3相がT’相である第1番目の暫定相情報と、第1相がR’相であり第2相がT’相であり第3相がS’相である第2番目の暫定相情報と、第1相がS’相であり第2相がR’相であり第3相がT’相である第3番目の暫定相情報と、第1相がT’相であり第2相がR’相であり第3相がS’相である第4番目の暫定相情報と、第1相がS’相であり第2相がT’相であり第3相がR’相である第5番目の暫定相情報と、第1相がT’相であり第2相がS’相であり第3相がR’相である第6番目の暫定相情報である。
【0062】
一例として、
図6の「実際の相」として示すように、入力電圧検出部12の入力端子32のうちの第1の相に対応する端子に三相交流電源4のS相の電力線が接続され、入力電圧検出部12の入力端子32のうちの第2の相に対応する端子に三相交流電源4のR相の電力線が接続され、入力電圧検出部12の入力端子32のうちの第3の相に対応する端子に三相交流電源4のT相の電力線が接続されている例について説明する。この例の場合、第1番目、第2番目、及び第4番目~第6番目の暫定相情報で規定される相順は入力電圧検出部12の入力端子32に接続された三相交流電源4の相順と一致していないので、これら暫定相情報と電圧検出値とを用いて制御部13による電力変換部11の回生動作の制御を実行すると、回生電流検出部14により検出される回生電流の値は大きくなり閾値を超える。したがって、判定部22は、入力電圧検出部12と三相交流電源4との間の配線に誤りがあると判定する。一方、第3番目の暫定相情報で規定される相順は入力電圧検出部12の入力端子32に接続された三相交流電源4の相順と一致しているので、これら暫定相情報と電圧検出値とを用いて制御部13による電力変換部11の回生動作の制御を実行すると、回生電流検出部14により検出される回生電流の値は小さくなり閾値以下となる。したがって、判定部22は、入力電圧検出部12と三相交流電源4との間の配線は正しいと判定する。
【0063】
相情報設定部16は、判定部22により入力電圧検出部12と三相交流電源4との間の配線は正しいと判定されたときに割当て部21により割り当てられていた暫定相情報を、制御部13による演算処理に用いる正規の相情報として設定する。設定した正規の相情報は記憶部23に記憶され、相情報設定処理を完了する。その後、制御部13は、入力電圧検出部12により検出された各相の電圧検出値と記憶部23に記憶された正規の相情報とを用いて演算処理を実行し、電力変換部11の電力変換動作を制御する。なお、相情報設定部16により設定された正規の相情報は記憶部23に記憶されるので、コンバータ1及びモータ駆動装置100の電源が遮断された後に再度電源投入があったときも、記憶部23に記憶された正規の相情報を利用することができる。
【0064】
一方、判定部22により入力電圧検出部12と三相交流電源4との間の配線に誤りがあると判定された場合は、割当て部21は、当該判定の際に割り当てられていた暫定相情報に代えて、新たなる暫定相情報を設定する。制御部13は、入力電圧検出部12により検出された各相の電圧検出値と暫定相情報を用いて演算処理を実行し、電力変換部11の電力変換動作を制御し、判定部22はこの状態の下で判定処理を実行する。判定部22により入力電圧検出部12と三相交流電源4との間の配線は正しいと判定されるまで、割当て部21は暫定相情報を変更して割り当てていき、制御部13は割り当てられた暫定相情報にて電力変換部11の回生動作の制御を実行する。上述のように暫定相情報は合計6パターンあるので、判定部22により入力電圧検出部12と三相交流電源4との間の配線は正しいと判定されるまで、暫定相情報の割当て処理及び回生電流の判定処理は最大6回行われる。
【0065】
図7は、本開示の第1の実施形態によるコンバータ及びモータ駆動装置における相情報設定処理の動作フローを示すフローチャートである。
【0066】
相情報設定部16による相情報設定処理は、モータ駆動装置100の設置時やメンテナンス時に作業者によって入力電圧検出部12の入力端子32と三相交流電源4の各相の電力線との配線作業が行われた際に、実行される。ステップS201において、配線状態検出部15内の割当て部21は、制御部13による電力変換部11の回生動作の制御のための演算処理に用いる電圧検出値の各相に対して、暫定相情報を割り当てる。割り当てられた暫定相情報は、制御部13へ送られる。
【0067】
ステップS202において、制御部13は、入力電圧検出部12により検出された電圧検出値及び割当て部21により割り当てられた暫定相情報を用いて演算処理を実行して電力変換部11の回生動作を制御する。
【0068】
ステップS203において、回生電流検出部14は、電力変換部11から三相交流電源4側へ流れる回生電流の値を検出する。
【0069】
ステップS204において、回生電流検出部14により検出された回生電流の値と閾値とを比較し、回生電流の値が閾値以下であるか否かを判定する。回生電流の値が閾値以下であると判定された場合はステップS205へ進み、回生電流の値が閾値より大きいと判定された場合はステップS206へ進む。
【0070】
ステップS204において回生電流の値が閾値より大きいと判定された場合は、ステップS206において、割当て部21は、当該判定の際に割り当てられていた暫定相情報に代えて、新たなる暫定相情報を設定する。その後、ステップS202へ戻る。ステップS204において回生電流の値が閾値以下と判定されるまで(すなわち入力電圧検出部12と三相交流電源4との間の配線は正しいと判定されるまで)、ステップS202~S204及びS206の処理が繰り返し実行される(最大6回)。
【0071】
ステップS204において回生電流の値が閾値以下であると判定された場合は、ステップS205において、判定部22は入力電圧検出部12と三相交流電源4との間の配線は正しいと判定し、このときに割当て部21により割り当てられていた暫定相情報を、制御部13による演算処理に用いる正規の相情報として設定する。設定した正規の相情報は記憶部23に記憶され、配線状態検出部15による配線状態検出処理を完了する。配線状態検出部15による配線状態検出処理の完了後は、制御部13は、入力電圧検出部12により検出された各相の電圧検出値と記憶部23に記憶された正規の相情報とを用いて演算処理を実行し、電力変換部11の電力変換動作を制御する。
【0072】
このように、第1の実施形態によれば、仮に三相交流電源4と入力電圧検出部12との間に誤配線があったとしても、配線状態検出部15の配線状態検出処理及び相情報設定部16の相情報設定処理により、入力電圧検出部12により検出された電圧検出値に対して、電力変換部11を正常に回生動作させることができる相情報を自動的に割り当てることができる。したがって、誤配線に起因するコンバータ1及びモータ駆動装置100のアラーム停止や故障を防止することができる。また、電圧検出値に対して適切な相情報が自動的に割り当てられるので、入力電圧検出部12と三相交流電源4との間を配線し直す必要はなくモータ駆動装置100を動作させるので、作業効率が向上する。例えば作業者が配線作業に不慣れで誤配線してしまったとしても、電力変換部11を正常に回生動作させることができる相情報を自動的に設定するので、コンバータ1及びモータ駆動装置100のアラーム停止や故障を防止することができる。
【0073】
続いて、本開示の第2の実施形態によるコンバータ及びモータ駆動装置について説明する。第2の実施形態は、第1の実施形態と同様、「電力変換部11から三相交流電源4へ流れ出す回生電流は、入力電圧検出部12の入力端子32と三相交流電源4との間に誤配線がある場合の方が正しく配線されている場合に比べて、より大きくなる」という特性を利用するものである。ただし、第2の実施形態は、制御部が電圧検出値及び暫定相情報を用いて演算処理を実行して電力変換部の回生動作を制御したときにおいて、回生電流検出部により最小の回生電流の値が検出されたときに割当て部により割り当てられていた暫定相情報を、制御部による演算処理に用いる正規の相情報として設定する点で、第1の実施形態とは異なる。
【0074】
図8は、本開示の第2の実施形態によるコンバータ及びモータ駆動装置を示す図である。
【0075】
一例として、三相交流電源4に接続されたモータ駆動装置100により、モータ5を制御する場合について示す。三相交流電源4の一例を挙げると、三相交流400V電源、三相交流200V電源、三相交流600V電源などがある。また、本実施形態においては、モータ5の種類は特に限定されず、例えば誘導モータであっても同期モータであってもよい。モータ5の相数は本実施形態を特に限定するものではなく、例えば三相であっても単相であってもよい。図示の例では、モータ5を三相交流モータとしている。モータ5が設けられる機械には、例えば工作機械、ロボット、鍛圧機械、射出成形機、産業機械などが含まれる。
【0076】
図8に示すように、本開示の第2の実施形態によるモータ駆動装置100は、コンバータ1と、インバータ3と、DCリンクコンデンサ6と、交流リアクトル7とを備える。また、本開示の第2の実施形態によるコンバータ1は、電力変換部11と、入力電圧検出部12と、制御部13と、回生電流検出部14と、割当て部17と、相情報設定部18とを備える。
【0077】
インバータ3、DCリンクコンデンサ6、交流リアクトル7、電力変換部11、入力電圧検出部12、及び制御部13、及び回生電流検出部14については、第1の実施形態と同様である。
【0078】
割当て部17は、制御部13による電力変換部11の回生動作の制御のための演算処理に用いる電圧検出値の各相に対して、暫定相情報を割り当てる。暫定相情報については第1の実施形態に関して説明した通りである。相情報設定部18による相情報設定処理の実行中は、制御部13は、入力電圧検出部12により検出された各相の電圧検出値と暫定相情報を用いて演算処理を実行し、電力変換部11の電力変換動作を制御する。上述のように各相の電圧検出値に対して割当て部17により割り当てられる暫定相情報は合計6パターンあるが、これら6パターン全ての暫定相情報について、制御部13による電力変換部11の回生動作の制御を実行して回生電流検出部14により回生電流の値を検出する。すなわち、回生電流検出部14は、6パターンの暫定相情報に対応して6種類の回生電流の値を検出することになる。検出された回生電流の値は、対応する暫定相情報と紐付けされて記憶部23に記憶される。
【0079】
相情報設定部18は、制御部13が電圧検出値及び暫定相情報を用いて演算処理を実行して電力変換部11の回生動作を制御したときにおいて、回生電流検出部14により最小の回生電流の値が検出されたときに割当て部17により割り当てられていた暫定相情報を記憶部23から読み出し、制御部13による演算処理に用いる正規の相情報として設定する。設定した正規の相情報は記憶部23に記憶され、相情報設定処理を完了する。その後、制御部13は、入力電圧検出部12により検出された各相の電圧検出値と記憶部23に記憶された正規の相情報とを用いて演算処理を実行し、電力変換部11の電力変換動作を制御する。なお、相情報設定部18により設定された正規の相情報は記憶部23に記憶されるので、コンバータ1及びモータ駆動装置100の電源が遮断された後に再度電源投入があったときも、記憶部23に記憶された正規の相情報を利用することができる。
【0080】
図9は、本開示の第1の実施形態によるコンバータ及びモータ駆動装置における相情報設定処理の動作フローを示すフローチャートである。
【0081】
相情報設定部18による相情報設定処理は、モータ駆動装置100の設置時やメンテナンス時に作業者によって入力電圧検出部12の入力端子32と三相交流電源4の各相の電力線との配線作業が行われた際に、実行される。
図6を参照して説明したように各相の電圧検出値に対して割当て部17により割り当てられる暫定相情報は合計6パターンあるが、これら6パターンの暫定相情報を識別番号N(ただし、1≦N≦6)を用いて識別する。
【0082】
ステップS301において、割当て部17は、初期設定として、暫定相情報の識別番号Nを1に設定する。ステップS301における暫定相情報の識別番号Nの1の設定は、例えば、作業者のコンバータ1への入力装置を用いた入力操作によって行われてもよく、あるいは相情報設定部18による相情報設定処理の開始時に自動的に行われてもよく、あるいはモータ駆動装置100もしくはコンバータ1の電源投入時に自動的に行われてもよい。
【0083】
ステップS302において、割当て部17は、制御部13による電力変換部11の回生動作の制御のための演算処理に用いる電圧検出値の各相に対して、第N番目の暫定相情報を割り当てる。割り当てられた第N番目の暫定相情報は、制御部13へ送られる。
【0084】
ステップS303において、制御部13は、入力電圧検出部12により検出された電圧検出値及び割当て部21により割り当てられた第N番目の暫定相情報を用いて演算処理を実行して電力変換部11の回生動作を制御する。
【0085】
ステップS304において、回生電流検出部14は、電力変換部11から三相交流電源4側へ流れる回生電流の値を検出し、その値を記憶部23に記憶する。
【0086】
ステップS305において、割当て部17は、暫定相情報の識別番号Nが6であるか否かを判定する。暫定相情報の識別番号Nが6であると判定された場合はステップS306へ進み、暫定相情報の識別番号Nが6であると判定されなかった場合はステップS307へ進む。
【0087】
ステップS307において、割当て部17は、暫定相情報の識別番号Nを1つインクリメントする。その後、ステップS302へ戻る。
【0088】
相情報設定部18は、記憶部23に記憶されていた6パターンの暫定相情報に対応した6種類の回生電流の値の中から、最小の回生電流の値が検出されたときに割当て部17により割り当てられていた暫定相情報を読み出し、制御部13による演算処理に用いる正規の相情報として設定する。設定した正規の相情報は記憶部23に記憶され、相情報設定処理を完了する。その後、制御部13は、入力電圧検出部12により検出された各相の電圧検出値と記憶部23に記憶された正規の相情報とを用いて演算処理を実行し、電力変換部11の電力変換動作を制御する。
【0089】
このように、第2の実施形態によれば、仮に三相交流電源4と入力電圧検出部12との間に誤配線があったとしても、相情報設定部18による相情報設定処理により、入力電圧検出部12により検出された電圧検出値に対して、電力変換部11を正常に回生動作させることができる相情報を自動的に割り当てることができる。したがって、誤配線に起因するコンバータ1及びモータ駆動装置100のアラーム停止や故障を防止することができる。また、電圧検出値に対して適切な相情報が自動的に割り当てられるので、入力電圧検出部12と三相交流電源4との間を配線し直す必要はなくモータ駆動装置100を動作させるので、作業効率が向上する。例えば作業者が配線作業に不慣れで誤配線してしまったとしても、コンバータ1及びモータ駆動装置100のアラーム停止や故障を防止することができる。
【0090】
制御部13、配線状態検出部15、相情報設定部16及び18、並びに割当て部17は、演算処理装置のみで構成されてもよく、あるいはアナログ回路と演算処理装置との組み合わせで構成されてもよく、あるいはアナログ回路のみで構成されてもよい。制御部13、配線状態検出部15、相情報設定部16及び18、並びに割当て部17を構成し得る演算処理装置には、例えばIC、LSI、CPU、MPU、DSPなどがある。例えば、制御部13、配線状態検出部15、相情報設定部16及び18、並びに割当て部17をソフトウェアプログラム形式で構築する場合は、演算処理装置をこのソフトウェアプログラムに従って動作させることで、制御部13、配線状態検出部15、相情報設定部16及び18、並びに割当て部17の各機能を実現することができる。またあるいは、制御部13、配線状態検出部15、相情報設定部16及び18、並びに割当て部17を、各部の機能を実現するソフトウェアプログラムを書き込んだ半導体集積回路として実現してもよい。またあるいは、制御部13、配線状態検出部15、相情報設定部16及び18、並びに割当て部17を、各部の機能を実現するソフトウェアプログラムを書き込んだ記録媒体として実現してもよい。またあるいは、制御部13、配線状態検出部15、相情報設定部16及び18、並びに割当て部17は、例えば工作機械の数値制御装置内に設けられてもよく、ロボットを制御するロボットコントローラ内に設けられてもよい。
【0091】
記憶部23は、例えばEEPROM(登録商標)などのような電気的に消去・記録可能な不揮発性メモリ、または、例えばDRAM、SRAMなどのような高速で読み書きのできるランダムアクセスメモリなどで構成される。
【0092】
入力電圧検出部12、及び回生電流検出部14は、アナログ回路と演算処理装置との組み合わせで構成されてもよく、あるいは演算処理装置のみで構成されてもよく、あるいはアナログ回路のみで構成されてもよい。入力電圧検出部12、及び回生電流検出部14については、コンバータ1またはモータ駆動装置100に一般的に設けられるものを流用してもよい。
【符号の説明】
【0093】
1 コンバータ
3 インバータ
4 三相交流電源
5 モータ
6 DCリンクコンデンサ
7 交流リアクトル
11 電力変換部
12 入力電圧検出部
13 制御部
14 回生電流検出部
15 配線状態検出部
16 相情報設定部
21 割当て部
22 判定部
23 記憶部
31 入力電流検出部
32 入力端子
100 モータ駆動装置
SRU R相上アームのスイッチング素子
SRL R相下アームのスイッチング素子
SSU S相上アームのスイッチング素子
SSL S相下アームのスイッチング素子
STU T相上アームのスイッチング素子
STL T相下アームのスイッチング素子