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特許7575497リチウムイオン電池用電解液及びリチウムイオン電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】リチウムイオン電池用電解液及びリチウムイオン電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0567 20100101AFI20241022BHJP
   H01M 10/0569 20100101ALI20241022BHJP
   H01M 10/0568 20100101ALI20241022BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20241022BHJP
【FI】
H01M10/0567
H01M10/0569
H01M10/0568
H01M10/052
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022579962
(86)(22)【出願日】2021-06-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-21
(86)【国際出願番号】 CN2021101245
(87)【国際公開番号】W WO2021259202
(87)【国際公開日】2021-12-30
【審査請求日】2023-02-21
(31)【優先権主張番号】202010584645.X
(32)【優先日】2020-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】510177809
【氏名又は名称】ビーワイディー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】BYD Company Limited
【住所又は居所原語表記】No. 3009, BYD Road, Pingshan, Shenzhen, Guangdong 518118, P. R. China
(74)【代理人】
【識別番号】100169904
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100132698
【弁理士】
【氏名又は名称】川分 康博
(72)【発明者】
【氏名】▲喬▼▲飛▼燕
(72)【発明者】
【氏名】▲魯▼平
(72)【発明者】
【氏名】王海▲軍▼
(72)【発明者】
【氏名】▲ハオ▼▲ロン▼
(72)【発明者】
【氏名】潘▲儀▼
【審査官】山下 裕久
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-047525(JP,A)
【文献】特開2005-347222(JP,A)
【文献】特表2017-505521(JP,A)
【文献】国際公開第2012/147761(WO,A1)
【文献】特開2001-307770(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/052-0587
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機溶剤と、リチウム塩と、添加剤とを含有するリチウムイオン電池用電解液であって、前記添加剤は、式(1)に示す第1の添加剤を含有し、
【化1】
(式(1)中、X、X、X及びXは、それぞれCR又はNから独立して選択され、かつX、X、X及びXのうちの少なくとも1つは、Nであり、X、X、X及びXのRは、H、ハロゲン、C~Cアルキル基、C~Cの置換アルキル基、C~Cのシクロアルキル基、C~Cのアルコキシ基から、それぞれ独立して選択される。)
前記第1の添加剤は、3,4-ピリジンジカルボン酸無水物、又は4,5-ピリダジンジカルボン酸無水物である、電解液。
【請求項2】
、X、X及びXのRは、Hである、請求項1に記載の電解液。
【請求項3】
、X、X及びXのうちのいずれか1つ又は2つは、Nである、請求項1に記載の電解液。
【請求項4】
電解液の総重量を基準として、前記有機溶剤の含有量は、50~90重量%であり、前記リチウム塩の含有量は、1~20重量%であり、前記添加剤の含有量は、0.1~10重量%である、請求項1に記載の電解液。
【請求項5】
前記電解液の総重量を基準として、前記有機溶剤の含有量は、60~85重量%であり、前記リチウム塩の含有量は、5~15重量%であり、前記添加剤の含有量は、0.5~8重量%である、請求項4に記載の電解液。
【請求項6】
前記添加剤において、前記添加剤の総重量を基準として、前記第1の添加剤の含有量は、30~100重量%である、請求項1に記載の電解液。
【請求項7】
前記添加剤において、前記添加剤の総重量を基準として、前記第1の添加剤の含有量は、50~100重量%である、請求項6に記載の電解液。
【請求項8】
前記有機溶剤は、炭酸エチルメチル、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ブチレン、亜硫酸エチレン、亜硫酸プロピレン、亜硫酸ジエチル、γ-ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド、酢酸エチル及び酢酸メチルから選択された1種以上である、請求項1に記載の電解液。
【請求項9】
前記リチウム塩は、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiCFSO、LiN(CFSO、LiN(CSO、LiC(CFSO及びLiB(Cのうちの1種以上である、請求項1に記載の電解液。
【請求項10】
前記添加剤の総重量を基準として、前記添加剤は、残部の第2の添加剤をさらに含有し、前記第2の添加剤は、炭酸ビニレン、リチウムビスオキサレートボレート及びリチウムビスフルオロスルホニルイミドのうちの1種以上を含有する、請求項6又は7に記載の電解液。
【請求項11】
請求項1に記載の電解液を含有する、ことを特徴とするリチウムイオン電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、出願番号が202010584645.X(出願日2020年6月23日)である中国特許出願に基づいて提出され、上記中国特許出願の優先権を主張するものであり、上記中国特許出願の全ての内容は参照により本願に組み込まれるものとする。
【0002】
本開示は、リチウム電池の分野に関し、具体的には、リチウムイオン電池用電解液及びリチウムイオン電池に関する。
【背景技術】
【0003】
リチウムイオン電池は、エネルギー密度が大きく、常に電池市場に不可欠な電池系であるが、電池システムの使用過程において常に界面と電解液との間の寄生反応によりガスを発生し、界面抵抗が増加するため、電池が膨張し、電池の耐用年数が低下する等の問題を引き起こす。特に、近年電池エネルギー密度が求められ、高電圧に適合する正極材料が継続的に開発されることに伴い、高電圧材料に適合する電解液の研究も最も重要になっており、現在の電解液系に適用される限界電圧は、4.2Vであり、4.2Vを超えると電解液が正極で酸化され、ガス発生を引き起こし、電解液の消耗が速すぎ、電池の安全上のリスクを引き起こし、電池の耐用年数を短かくするため、高電圧系に適する電解液の研究は、現在の急務である。従来の技術の解決手段は、フッ素含有電解液溶剤を用いて電解液の酸化分解電位を高めることであり、フッ素含有溶剤の酸化分解電位が高いが、電解液が後期にHFを放出し、正負極材料粒子を破壊し、電池の耐用年数に影響を与える。
【発明の概要】
【0004】
電解液の酸化分解電位をさらに高め、現在の高電圧で電解液が分解するという問題を解決し、リチウム電池の高電圧安定性及び高温安定性を向上させるために、本開示は、リチウムイオン電池用電解液及びリチウムイオン電池を提供する。
【0005】
上記目的を達成するために、本開示の第1の態様に係るリチウムイオン電池用電解液は、有機溶剤と、リチウム塩と、式(1)に示す第1の添加剤を含有する添加剤とを含有する。
【化1】
(式(1)中、X、X、X及びXは、それぞれCR又はNから独立して選択され、かつX、X、X及びXのうちの少なくとも1つは、Nであり、X、X、X及びXのRは、それぞれH、ハロゲン、C~Cアルキル基、C~Cの置換アルキル基、C~Cのシクロアルキル基、C~Cのアルコキシ基から独立して選択される。)
【0006】
本開示の発明者らは、驚くべきことに、式(1)に示す添加剤が、高ニッケル正極界面で酸化反応を優先的に発生させて成膜することができ、形成された正極膜層が、優れたイオン伝導性能を有し、かつ触媒酸化反応が発生した正極と電解液とのサイクル及び貯蔵過程における界面劣化反応をよく遮断するため、界面膜層の継続的な増加による分極増大、及び界面反応によるガス膨張を阻止するか又は低減することを見出し、本願を得る。
【0007】
本開示の第2の態様に係るリチウムイオン電池は、本開示の第1の態様に係るリチウムイオン電池用電解液を含有する。
【0008】
上記技術的解決手段により、本開示は、リチウムイオン電池用電解液及びリチウムイオン電池を提供し、本開示に係る電解液を含有するリチウムイオン電池は、高電圧で優れた高温安定性能及び電池のサイクル性能を有する。
【0009】
本開示の他の特徴及び利点は、以下の具体的な実施形態において詳細に説明される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の具体的な実施形態を詳細に説明する。ここで説明される具体的な実施形態は、本開示を説明し解釈するためのものに過ぎず、本開示を限定するものではないことを理解されたい。
【0011】
本開示の第1の態様に係るリチウムイオン電池用電解液は、有機溶剤と、リチウム塩と、式(1)に示す第1の添加剤を含有する添加剤とを含有する。
【化2】
(式中、X、X、X及びXは、それぞれCR又はNから独立して選択され、かつX、X、X及びXのうちの少なくとも1つは、Nであり、X、X、X及びXのRは、それぞれH、ハロゲン、C~Cアルキル基、C~Cの置換アルキル基、C~Cのシクロアルキル基、C~Cのアルコキシ基から独立して選択される。)
【0012】
本開示のリチウムイオン電池用電解液は、6員複素環基カルボン酸無水物系添加剤を含有し、正極表面に成膜することができ、つまり、優れたリチウムイオン伝導性能を有する正極界面膜を形成することができ、高電圧の条件下で電解液の正極表面の劣化反応を阻止し、サイクル過程において電池がガスを継続的に発生させることを抑制し、電池の膨張を低減し、電解液の分解を抑制し、電池の耐用年数を延長することができる。
【0013】
6員複素環は、一実施形態において、1つのN原子又は2つのN原子を含有する6員環基であり、一実施形態において、1つのN原子を含有する6員環基であり、これは、このような分子の反応電位がより低く、正極表面に酸化反応を発生させて成膜することにより役立ち、かつ成膜成分が優れたイオン伝導性能を有するからである。
【0014】
本開示において、リチウムイオン電池用電解液において、有機溶剤の含有量、リチウム塩の含有量及び添加剤の含有量は、大きな範囲内で変化してもよく、一実施形態において、有機溶剤の含有量は、50~90重量%であってもよく、リチウム塩の含有量は、1~20重量%であってもよく、添加剤の含有量は、0.1~10重量%であってもよく、一実施形態においては、有機溶剤の含有量は、60~85重量%であってもよく、リチウム塩の含有量は、5~15重量%であってもよく、添加剤の含有量は、0.5~8重量%であってもよい。上記好ましい場合には、電池の正負極界面に優れた膜層を形成することができ、電解液の正負極界面の活性部位における副反応を抑制し、電池のガス発生及び界面抵抗の増加を抑制し、電池の高温性能を向上させることにより、電池の耐用年数を延長する。
【0015】
本開示において、上記添加剤において、上記添加剤の総重量を基準として、第1の添加剤の含有量は、30~100重量%であってもよく、一実施形態としては、50~100重量%である
【0016】
本開示において、式(1)中、一実施形態としては、X、X、X及びXのR1は、Hである。この場合には、分子量が小さく、酸化分解電位がより低く、正極表面の酸化反応がより優先的に発生しやすい。
【0017】
一実施形態としては、式(1)に示す第1の添加剤は、2,3-ピリジンジカルボン酸無水物、3,4-ピリジンジカルボン酸無水物、2,3-ピラジンジカルボン酸無水物及び4,5-ピリダジンジカルボン酸無水物である。該好ましい場合には、酸化分解成膜電位が低く、正極表面に優先的に成膜することができる。
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【0018】
本開示において、上記リチウム塩は、例えばLiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiCFSO、LiN(CFSO、LiN(CSO、LiC(CFSO及びLiB(Cのうちの1種以上であってもよい。
【0019】
本開示において、上記有機溶剤は、炭酸エチルメチル、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ブチレン、亜硫酸エチレン、亜硫酸プロピレン、亜硫酸ジエチル、γ-ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド、酢酸エチルまたは酢酸メチルのうちの1種以上であってもよい。
【0020】
本開示において、上記添加剤の総重量を基準として、上記添加剤は、残部の第2の添加剤をさらに含有し、上記第2の添加剤は、炭酸ビニレン、リチウムビスオキサレートボレート及びリチウムビスフルオロスルホニルイミドのうちの1種以上を含有する。
【0021】
本願の第2の態様に係るリチウムイオン電池は、ケースと、ケース内に収容されたセルと、本開示の第1の態様に係るリチウムイオン電池用電解液とを含む。
【0022】
本開示において、セルは、正極と、負極と、正極と負極との間に介在されたセパレータとを含んでもよい。
【0023】
本開示において、上記正極は、正極集電体及び正極材料を含んでもよく、正極材料は、正極活物質、導電剤、正極結着剤を含んでもよい。正極活物質、導電剤、正極結着剤は、本分野で一般に用いられた正極活物質、導電剤、正極結着剤であってもよい。正極活物質は、スピネル又は層状構造のニッケルマンガン正極材料及びリン酸鉄リチウム系正極材料であってもよく、一実施形態としては、スピネルLiNi0.5Mn1.5である。
【0024】
本開示において、負極は、負極集電体及び負極材料を含み、負極材料は、負極活物質、負極結着剤を含む。負極材料は、さらに導電剤を選択的に含んでもよく、該導電剤は、一般的な導電剤であり、正極材料層内の導電剤と同じであっても、異なってもよい。負極活物質、負極結着剤は、本分野で一般に用いられた負極活物質、負極結着剤であってもよい。負極活物質は、リチウム又は黒鉛負極又はシリコン炭素負極材料であり、一実施形態としては、金属リチウムである。
【0025】
以下、実施例により本開示をさらに詳細に説明する。実施例に用いられた原材料は、いずれも市販で入手可能である。
【0026】
実施例1
(1)非水電解液の調製:
アルゴングローブボックスで26重量部の炭酸エチレン(EC)、61重量部の炭酸ジエチル(DEC)、12重量部の六フッ化リン酸リチウム(LiPF)、0.5重量部の2,3-ピリジンジカルボン酸無水物を均一に混合して、本実施例のリチウムイオン電池用電解液を得て、C1と記す。
【0027】
(2)リチウムイオン電池の製造:
正極活物質(LiNi0.5Mn1.5)、アセチレンブラック、ポリフッ化ビニリデンを90:5:5の配合比率で均一に混合してからアルミニウム箔にプレスして、正極板を得て、金属リチウム板を負極板とし、PE/PP複合セパレータをイオン交換膜とし、本実施例の電解液C1を用いて、本分野の一般的な方法でコイン型電池S1を製造する。
【0028】
実施例2
実施例1と同じステップで電解液を調製し、コイン型電池を製造し、実施例1と対比すると、ステップ(1)において0.5重量部の2,3-ピリジンジカルボン酸無水物を1重量部の3,4-ピリジンジカルボン酸無水物に置き換えて、リチウムイオン電池用非水電解液C2及びコイン型電池S2を得るという点で相違する。
【0029】
実施例3
実施例1と同じステップで非水電解液を調製し、コイン型電池を製造し、実施例1と対比すると、ステップ(1)において0.5重量部の2,3-ピリジンジカルボン酸無水物を3重量部の2,3-ピラジンジカルボン酸無水物に置き換えて、リチウムイオン電池用非水電解液C3及びコイン型電池S3を得るという点で相違する。
【0030】
実施例4
実施例1と同じステップで非水電解液を調製し、コイン型電池を製造し、実施例1と対比すると、ステップ(1)において0.5重量部の2,3-ピリジンジカルボン酸無水物を5重量部の4,5-ピリダジンジカルボン酸無水物に置き換えて、リチウムイオン電池用非水電解液C4及びコイン型電池S4を得るという点で相違する。
【0031】
実施例5
実施例1と同じステップで非水電解液を調製し、コイン型電池を製造し、実施例1と対比すると、ステップ(1)において0.5重量部の2,3-ピリジンジカルボン酸無水物を0.05重量部の2,3-ピリジンジカルボン酸無水物に置き換えて、リチウムイオン電池用非水電解液C5及びコイン型電池S5を得るという点で相違する。
【0032】
実施例6
実施例1と同じステップで非水電解液を調製し、コイン型電池を製造し、実施例1と対比すると、ステップ(1)において0.5重量部の2,3-ピリジンジカルボン酸無水物を0.1重量部の2,3-ピリジンジカルボン酸無水物に置き換えて、リチウムイオン電池用非水電解液C6及びコイン型電池S6を得るという点で相違する。
【0033】
実施例7
実施例1と同じステップで非水電解液を調製し、コイン型電池を製造し、実施例1と対比すると、ステップ(1)において12重量部の2,3-ピリジンジカルボン酸無水物を添加して、リチウムイオン電池用電解液C7を得るという点で相違する。
【0034】
比較例1
実施例1と同じステップで電解液を調製し、コイン型電池を製造し、実施例1と対比すると、ステップ(1)において2,3-ピリジンジカルボン酸無水物を用いずに、リチウムイオン電池用非水電解液DC1及びコイン型電池DS1を得るという点でのみ相違する。
【0035】
比較例2
実施例1と同じステップで非水電解液を調製し、コイン型電池を製造し、実施例1と対比すると、
ステップ(1)において2,3-ピリジンジカルボン酸無水物を無水マレイン酸に置き換えて、リチウムイオン電池用電解液DC2及びコイン型電池DS2を得るという点で相違する。
【0036】
比較例3
実施例1と同じステップで電解液を調製し、コイン型電池を製造し、実施例1と対比すると、ステップ(1)において2,3-ピリジンジカルボン酸無水物をピリジンに置き換えて、リチウムイオン電池用電解液DC3及びコイン型電池DS3を得るという点で相違する。
【0037】
比較例4
実施例1と同じステップで電解液を調製し、コイン型電池を製造し、実施例1と対比すると、ステップ(1)において2,3-ピリジンジカルボン酸無水物をピラジンに置き換えて、リチウムイオン電池用電解液DC4及びコイン型電池DS4を得るという点で相違する。
【0038】
比較例5
実施例1と同じステップで電解液を調製し、コイン型電池を製造し、実施例1と対比すると、ステップ(1)において2,3-ピリジンジカルボン酸無水物をピリダジンに置き換えて、リチウムイオン電池用電解液DC5及びコイン型電池DS5を得るという点で相違する。
【0039】
試験例
(1)酸化分解電位測定
三電極測定法を用いて、白金板を作用電極とし、リチウム板を参照電極とし、実施例で調製されたC1~C7と比較例で調製されたDC1~DC5を電解液として電池を組み立てて、添加剤の重合電位及び電解液の酸化分解電位を特徴付ける。測定結果を表1に示す。
【0040】
(2)電池の充放電性能試験
実験対象のコイン型電池S1~S7、DS1~DS5をそれぞれ常温で0.1mAの電流で4.95Vまで定電流充電してから、0.1mAで2.8Vまで定電流放電し、電池の放電容量及び充電容量を記録し、充放電効率(%)=充電容量/放電容量×100%という式に従って充放電率を計算する。試験結果を表2に示す。
【0041】
(3)電池のサイクル試験
上記電池を常温で1Cレート(約0.5mA)で4.95Vまで定電流定電圧充電し、充電カットオフ電流を0.05mAとし、その後に0.5mAで2.8Vまで定電流放電すれば、1回のサイクルを完了する。初回充電容量及び初回放電容量を記録し、充放電効率(%)を計算し、このように充放電サイクルを100回繰り返した後、100回目のサイクルの放電容量を記録し、サイクル後の容量保持率(%)=サイクル100回後の放電容量/初回放電容量×100%という式に従ってサイクル後の容量保持率を計算し、カットオフ電圧を4.95Vとする。試験結果を表3に示す。
【表1】
【表2】
【表3】
【0042】
表1~表3のデータから分かるように、本開示は、リチウムイオン電池用電解液にピリジンジカルボン酸無水物添加剤を添加することにより、電解液の分解を効果的に抑制し、リチウムイオン電池の高温安定性を向上させることにより、電池の耐用年数を延長する。
【0043】
以上、本開示の実施形態を詳細に説明したが、本開示は、上記実施形態の具体的な内容に限定されるものではなく、本開示の技術的思想範囲内に、本開示の技術的解決手段に対して複数の簡単な変更を行うことができ、これらの簡単な変更は、いずれも本開示の保護範囲に属する。
【0044】
なお、上記具体的な実施形態に説明された各具体的な技術的特徴は、矛盾しない場合に、任意の適切な方式で組み合わせることができ、不要な重複を回避するために、本開示は、可能な様々な組み合わせ方式を別途に説明しない。
【0045】
また、本開示の様々な実施形態は、任意に組み合わせることができ、本開示の構想から逸脱しない限り、本開示に開示されている内容に属すべきである。