(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】NKG2D、CD16およびEGFRに結合するタンパク質
(51)【国際特許分類】
C07K 16/46 20060101AFI20241022BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20241022BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241022BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20241022BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20241022BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20241022BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20241022BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20241022BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20241022BHJP
【FI】
C07K16/46 ZNA
C07K16/28
A61P35/00
A61K39/395 N
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N15/13
(21)【出願番号】P 2022581464
(86)(22)【出願日】2021-08-05
(86)【国際出願番号】 US2021044737
(87)【国際公開番号】W WO2022031965
(87)【国際公開日】2022-02-10
【審査請求日】2023-04-03
(32)【優先日】2020-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519288755
【氏名又は名称】ドラゴンフライ セラピューティクス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】チュン, アン エフ.
(72)【発明者】
【氏名】ドラビック, ステイシー ブイ.
(72)【発明者】
【氏名】グリンバーグ, アシャ
(72)【発明者】
【氏名】ジュオ, ゾン ショーン
(72)【発明者】
【氏名】リハースカ, カティア
(72)【発明者】
【氏名】モーガン, クリストファー ライアン
(72)【発明者】
【氏名】ワグトマン, ニコライ
【審査官】井関 めぐみ
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/035939(WO,A1)
【文献】特表2018-532397(JP,A)
【文献】国際公開第2019/157366(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 16/46
C07K 16/28
A61P 35/00
A61K 39/395
C12N 1/15
C12N 1/19
C12N 1/21
C12N 5/10
C12N 15/13
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)NKG2Dに結合する第1の抗原結合部位;
(b)EGFRに結合する第2の抗原結合部位;および
(c)CD16に結合するのに十分な抗体Fcドメインもしくはその部分、またはCD16に結合する第3の抗原結合部位
を含むタンパク質であって、
前記第2の抗原結合部位が、
配列番号135と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH)、および配列番号139と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、
(i)
前記VHは、それぞれ、配列番号136、146および138の相補性決定領域1(CDR1)、相補性決定領域2(CDR2)および相補性決定領域3(CDR3)配列を含
み;
前記VLは、それぞれ、配列番号140、141および151のCDR1、CDR2およびCDR3配列
、ならびにChothiaナンバリングスキーム下で番号付けされる1位のAsp(D)を含む;
(ii)
前記VHは、それぞれ、配列番号136、137および138のCDR1、CDR2およびCDR3配列を含
み;
前記VLは、それぞれ、配列番号140、141および151のCDR1、CDR2およびCDR3配列を含
む;または
(iii)
前記VHは、それぞれ、配列番号136、146および138のCDR1、CDR2およびCDR3配列を含
み;
前記VLは、それぞれ、配列番号140、141および142のCDR1、CDR2およびCDR3配列
、ならびにChothiaナンバリングスキーム下で番号付けされる1位のAsp(D)を
含み、
Chothiaナンバリングスキーム下で番号付け
して、前記第2の抗原結合部位の前記VHが39位のGln(Q)を含み、前記第2の抗原結合部位の前記VLが87
位のTyr(Y)を含む、タンパク質。
【請求項2】
(i)前記VHが配列番号145と少なくとも
95%同一のアミノ酸配列を含み、前記VLが配列番号150と少なくとも
95%同一のアミノ酸配列を含み、必要に応じて、(a)前記VHが配列番号145のアミノ酸配列を含み、前記VLが配列番号150のアミノ酸配列を含むか、または(b)前記VHが配列番号170のアミノ酸配列を含み、前記VLが配列番号171のアミノ酸配列を含む、
(ii)前記VHが配列番号135と少なくとも
95%同一のアミノ酸配列を含み、前記VLが配列番号150と少なくとも
95%同一のアミノ酸配列を含み、必要に応じて、前記VHが配列番号135のアミノ酸配列を含み、前記VLが配列番号150のアミノ酸配列を含む、あるいは
(iii)前記VHが配列番号145と少なくとも
95%同一のアミノ酸配列を含み、前記VLが配列番号147と少なくとも
95%同一のアミノ酸配列を含み、必要に応じて
、前記VHが配列番号145のアミノ酸配列を含み、前記VLが配列番号147のアミノ酸配列を含む、
請求項1に記載のタンパク質。
【請求項3】
前記第2の抗原結合部位が一本鎖可変領域断片(scFv)を含み、前記scFvが配列番号152、154、および148からなる群から選択される配列と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含み、必要に応じて、前記scFVが、配列番号152、154または148のアミノ酸配列を含む、請求項1または2に記載のタンパク質。
【請求項4】
前記タンパク質が配列番号167、168および166からなる群から選択される配列と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含むポリペプチドを含み、必要に応じて、前記ポリペプチドが、配列番号167、168または166のアミノ酸配列を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項5】
前記第2の抗原結合部位が、表面プラズモン共鳴(SPR)によって測定される5nMよりも小さいまたはそれに等しい解離定数(K
D)で、ヒトEGFRに結合する、および/または前記第2の抗原結合部位が、表面プラズモン共鳴(SPR)によって測定される6nMよりも小さいまたはそれに等しい解離定数(K
D)で、アカゲザルEGFRに結合する、請求項1から4のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項6】
NKG2Dに結合する前記第1の抗原結合部位がFab断片であり、EGFRに結合する前記第2の抗原結合部位がscFvである、請求項1から3および5のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項7】
前記scFvの前記重鎖可変ドメインが、前記scFvの前記軽鎖可変ドメインとジスルフィド架橋を形成
する、請求項6に記載のタンパク質。
【請求項8】
前記ジスルフィド架橋が、Kabatナンバリングスキーム下で番号付けされる前記重鎖可変ドメインのC44と前記軽鎖可変ドメインのC100との間に形成される、請求項7に記載のタンパク質。
【請求項9】
(i)前記重鎖可変ドメインが、フレキシブルリンカーを介して前記軽鎖可変ドメインに連結しており、必要に応じて、前記フレキシブルリンカーが配列番号119に示される(G
4
S)
4
アミノ酸配列を含む、および/または
(ii)前記重鎖可変ドメインが前記軽鎖可変ドメインのC末端に位置する、
請求項6から8のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項10】
NKG2Dに結合する前記第1の抗原結合部位が、それぞれ、配列番号81、82および112のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2およびCDR3を含むVH;ならびにそれぞれ、配列番号86、77および87のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2およびCDR3を含むVLを含む、請求項1から7のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項11】
NKG2Dに結合する前記第1の抗原結合部位が、それぞれ、配列番号81、82および97のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2およびCDR3を含むVH;ならびにそれぞれ、配列番号86、77および87のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2およびCDR3を含むVLを含む、請求項1から7のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項12】
前記第1の抗原結合部位の前記VHが配列番号95と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含み、前記第1の抗原結合部位の前記VLが配列番号85と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含み、必要に応じて、前記第1の抗原結合部位の前記VHが配列番号95のアミノ酸配列を含み、前記第1の抗原結合部位の前記VLが配列番号85のアミノ酸配列を含む、請求項8または9に記載のタンパク質。
【請求項13】
前記抗体FcドメインがヒトIgG1抗体FcドメインのヒンジおよびCH2ドメインを含み、必要に応じて、前記抗体Fcドメインまたはその部分が、ヒトIgG1抗体のアミノ酸234~332または配列番号118と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む、請求項1から10のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項14】
前記抗体Fcドメインが2つのポリペプチド鎖を含むヒトIgG1抗体Fcドメインを含み、
(i)前記ポリペプチド鎖の1つが、配列番号118と比較して、EUナンバリングシステムに従って番号付けされるK360EおよびK409W置換を含み;他のポリペプチド鎖が、配列番号118と比較して、EUナンバリングシステムに従って番号付けされるQ347R、D399VおよびF405T置換を含む、および/または
(ii)前記ポリペプチド鎖の1つが、配列番号118と比較して、EUナンバリングシステムに従って番号付けされるY349C置換を含み;他のポリペプチド鎖が、配列番号118と比較して、EUナンバリングシステムに従って番号付けされるS354C置換を含む、
請求項11に記載のタンパク質。
【請求項15】
(i)(a)配列番号167のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド;
(b)配列番号164のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド;および
(c)配列番号165のアミノ酸配列を含む第3のポリペプチド;
(ii)(a)配列番号168のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド;
(b)配列番号164のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド;および
(c)配列番号165のアミノ酸配列を含む第3のポリペプチド;あるいは
(iii)(a)配列番号166のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド;
(b)配列番号164のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド;および
(c)配列番号165のアミノ酸配列を含む第3のポリペプチド
を含む請求項1に記載のタンパク質。
【請求項16】
請求項1から13のいずれか一項に記載のタンパク質と、薬学的に許容される担体とを含む製剤。
【請求項17】
請求項1から13のいずれか一項に記載のタンパク質をコードする1つまたは複数の核酸を含む細胞。
【請求項18】
請求項1から13のいずれか一項に記載のタンパク質を含む、がんを処置する方法における使用のための組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その開示全体があらゆる目的のためにこれにより参照により本明細書に組み込まれる2020年8月5日に出願された米国仮特許出願第63/061,510号に基づく利益および優先権を主張する。
配列表
【0002】
本出願は、ASCII形式で電子的に提出され、全体がこれにより参照により本明細書に組み込まれる配列表を含む。2021年8月4日に作成された前記ASCIIコピーは、DFY-084WO_SL.txt命名され、サイズが169,786バイトである。
【0003】
発明の分野
本出願は、NKG2D、CD16および上皮増殖因子受容体(EGFR)に結合する多重特異性結合タンパク質に関する。
【背景技術】
【0004】
背景
相当な研究努力にもかかわらず、がんは、世界中の国々で重大な臨床のおよび経済的な負担であり続けている。世界保健機関(WHO)によれば、がんは2番目の死因である。既存の処置モダリティの中には、外科手術、放射線療法、化学療法、生物学的療法、免疫療法、ホルモン療法、幹細胞移植および精密医療がある。これらの領域における広範な研究にもかかわらず、特に最も高悪性度のがんに対して、非常に有効で治癒的な解決手段はまだ特定されていない。さらに、既存の抗がん処置モダリティの多くは、相当な有害副作用を有する。
【0005】
がん免疫療法は、高度に特異的であり、患者自身の免疫系を使用してがん細胞の破壊を促進することができるので、望ましい。二重特異性T細胞エンゲージャーなどの融合タンパク質は、腫瘍細胞およびT細胞に結合して、腫瘍細胞の破壊を促進する、文献に記載されているがん免疫療法である。ある特定の腫瘍関連抗原およびある特定の免疫細胞に結合する抗体が文献に記載されている。例えば、WO2016/134371およびWO2015/095412を参照されたい。
【0006】
ナチュラルキラー(NK)細胞は、自然免疫系の成分であり、循環リンパ球のおよそ15%を構成する。NK細胞は、事実上全ての組織に浸潤し、元々、事前の感作の必要性なしに腫瘍細胞を有効に死滅させる能力によって特徴付けられた。活性化NK細胞は、細胞傷害性T細胞と類似の手段によって-すなわち、パーフォリンおよびグランザイムを含有する細胞溶解性顆粒(cytolytic granule)を介して、ならびにデスレセプター経路を介して、標的細胞を死滅させる。活性化NK細胞はまた、IFN-γなどの炎症性サイトカインおよび他の白血球の標的組織への動員を促進するケモカインを分泌する。
【0007】
NK細胞は、その表面上のさまざまな活性化受容体および抑制性受容体を介してシグナルに応答する。例えば、NK細胞が健康な自己細胞に遭遇した場合、キラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)の活性化を介してその活性が阻害される。あるいは、NK細胞が外来細胞またはがん細胞に遭遇した場合、その活性化受容体(例えば、NKG2D、NCR、DNAM1)を介して活性化される。NK細胞はまた、その表面上のCD16受容体を介して一部の免疫グロブリンの定常領域によっても活性化される。活性化に対するNK細胞の全体的な感度は、刺激シグナルと抑制シグナルの合計に依存する。NKG2Dは、本質的に全てのナチュラルキラー細胞によって発現されるII型膜貫通タンパク質であり、NKG2Dは、活性化受容体として働く。NKG2Dは、T細胞上でも見出され、これは、共刺激性受容体として作用する。NKG2Dを介してNK細胞機能をモジュレートする能力は、悪性腫瘍を含むさまざまな治療状況において有用である。
【0008】
上皮増殖因子受容体(EGFR)過剰発現または活動過剰をもたらす変異は、非小細胞肺がん、肛門がん、神経膠芽腫および頭頸頚部の上皮性腫瘍を含む多くのがんに関連している。これらのEGFRが関与する体細胞変異は、その定常的な活性化をもたらし、これは、未制御の細胞分裂を生じる。神経膠芽腫では、EGFRvIIIと呼ばれるEGFRのより特異的な変異またはあまり特異的ではない変異が、多くの場合に観察される。EGFRまたはファミリーメンバーの変異、増幅または誤調節は、結腸直腸がん、腎細胞癌、膀胱がん、子宮頸がん、卵巣がん、膵臓がんおよび肝臓がんを含む他の固形腫瘍と関係する。
抗EGFRモノクローナル抗体、例えば、セツキシマブ、パニツムマブ、ネシツムマブおよびザルツムマブが開発されている。しかしながら、より高い有効性を有し、有害効果が低減されたがんの処置における使用のための新しい有用な抗体および関連する療法についての必要性が残されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】国際公開第2016/134371号
【文献】国際公開第2015/095412号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
要旨
本出願は、ナチュラルキラー細胞上のNKG2D受容体、CD16受容体、およびEGFRに結合する多重特異性結合タンパク質を提供する。このようなタンパク質は、1種より多くのNK活性化受容体と結合することができ、NKG2Dへの天然リガンドの結合を遮断し得る。ある特定の実施形態では、タンパク質はヒトのNK細胞を刺激することができる。一部の実施形態では、タンパク質は、ヒトならびにげっ歯類およびカニクイザルなどの他の種のNK細胞を刺激することができる。本明細書に開示されるタンパク質のいずれか1つを含有する製剤;タンパク質を発現している1つまたは複数の核酸を含有する細胞;およびタンパク質を使用して腫瘍細胞死を増強する方法も提供される。
【0011】
したがって、本出願の一態様は、(a)NKG2Dに結合する第1の抗原結合部位;(b)EGFRに結合する第2の抗原結合部位;および(c)CD16に結合するのに十分な抗体Fcドメインもしくはその部分、またはCD16に結合する第3の抗原結合部位を含むタンパク質であって、第2の抗原結合部位は、(i)それぞれ、配列番号136、157および138の相補性決定領域1(CDR1)、相補性決定領域2(CDR2)および相補性決定領域3(CDR3)配列を含む重鎖可変ドメイン(VH);ならびにそれぞれ、配列番号140、141および151のCDR1、CDR2およびCDR3配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL);または(ii)それぞれ、配列番号136、146および138のCDR1、CDR2およびCDR3配列を含むVH;ならびにそれぞれ、配列番号140、141および142のCDR1、CDR2およびCDR3配列を含むVLを含む、タンパク質を提供する。
【0012】
一部の実施形態では、VHは、それぞれ、配列番号136、157および138のCDR1、CDR2およびCDR3配列を含み、VLは、それぞれ、配列番号140、141および151のCDR1、CDR2およびCDR3配列を含む。
【0013】
一部の実施形態では、VHは、それぞれ、配列番号136、146および138のCDR1、CDR2およびCDR3配列を含み、VLは、それぞれ、配列番号140、141および151のCDR1、CDR2およびCDR3配列を含む。
【0014】
一部の実施形態では、VHは、それぞれ、配列番号136、137および138のCDR1、CDR2およびCDR3配列を含み、VLは、それぞれ、配列番号140、141および151のCDR1、CDR2およびCDR3配列を含む。
【0015】
一部の実施形態では、VHは、それぞれ、配列番号136、146および138のCDR1、CDR2およびCDR3配列を含み、VLは、それぞれ、配列番号140、141および142のCDR1、CDR2およびCDR3配列を含む。
【0016】
一部の実施形態では、VHは配列番号145と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含み、VLは配列番号150と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、VHは配列番号145のアミノ酸配列を含み、VLは配列番号150のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、VHは配列番号170のアミノ酸配列を含み、VLは配列番号171のアミノ酸配列を含む。
【0017】
一部の実施形態では、VHは配列番号135と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含み、VLは配列番号150と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、VHは配列番号135のアミノ酸配列を含み、VLは配列番号150のアミノ酸配列を含む。
【0018】
一部の実施形態では、VHは配列番号145と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含み、VLは配列番号147と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、VHは配列番号145のアミノ酸配列を含み、VLは配列番号147のアミノ酸配列を含む。
【0019】
本出願の別の態様は、(a)NKG2Dに結合する第1の抗原結合部位;(b)EGFRに結合する第2の抗原結合部位;および(c)CD16に結合するのに十分な抗体Fcドメインもしくはその部分、またはCD16に結合する第3の抗原結合部位を含むタンパク質であって、第2の抗原結合部位は、配列番号135と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含むVH、および配列番号139と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含むVLを含み、VHは、配列番号135と比較して、Chothiaナンバリングスキーム下で番号付けされるS62R置換を含み、ならびに/またはVLは、配列番号139と比較して、Chothiaナンバリングスキーム下で番号付けされるD92R置換および/もしくはF87Y置換を含む、タンパク質を提供する。
【0020】
一部の実施形態では、VHは、配列番号135と比較して、Chothiaナンバリングスキーム下で番号付けされるS62R置換を含む。一部の実施形態では、VLは、配列番号139と比較して、Chothiaナンバリングスキーム下で番号付けされるD92R置換を含む。一部の実施形態では、VHは、配列番号135と比較して、Chothiaナンバリングスキーム下で番号付けされるS62R置換を含み、VLは、配列番号139と比較して、Chothiaナンバリングスキーム下で番号付けされるD92R置換を含む、請求項6に記載のタンパク質。
【0021】
上記の態様のいずれか1つの一部の実施形態では、VLは、配列番号139と比較して、Chothiaナンバリングスキーム下で番号付けされるF87Y置換を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載のタンパク質。
【0022】
一部の実施形態では、第2の抗原結合部位が一本鎖可変領域断片(scFv)を含み、scFvが配列番号152、154、148および158からなる群から選択される配列と少なくとも90%同一のまたはそれを含むアミノ酸配列を含む、請求項1から16のいずれか一項に記載のタンパク質。
【0023】
一部の実施形態では、本開示のタンパク質は、配列番号167、168および166からなる群から選択される配列と少なくとも90%同一のまたはそれを含むアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む。
【0024】
一部の実施形態では、第2の抗原結合部位は、表面プラズモン共鳴(SPR)によって測定される5nMよりも小さいまたはそれに等しい解離定数(KD)で、ヒトEGFRに結合する。一部の実施形態では、第2の抗原結合部位は、表面プラズモン共鳴(SPR)によって測定される6nMよりも小さいまたはそれに等しい解離定数(KD)で、アカゲザルEGFRに結合する。
【0025】
一部の実施形態では、NKG2Dに結合する第1の抗原結合部位がFab断片であり、EGFRに結合する第2の抗原結合部位がscFvである。一部の実施形態では、NKG2Dに結合する第1の抗原結合部位がscFvであり、EGFRに結合する第2の抗原結合部位がFab断片である。一部の実施形態では、タンパク質は、EGFRに結合する追加の抗原結合部位をさらに含む。一部の実施形態では、NKG2Dに結合する第1の抗原結合部位がscFvであり、EGFRに結合する第2のおよび追加の抗原結合部位がそれぞれFab断片である。一部の実施形態では、NKG2Dに結合する第1の抗原結合部位がscFvであり、EGFRに結合する第2のおよび追加の抗原結合部位がそれぞれscFvである。一部の実施形態では、第2のおよび追加の抗原結合部位のアミノ酸配列が同一である。
【0026】
一部の実施形態では、NKG2Dに結合するscFvは、Ala-SerまたはGly-Serを含むヒンジを介して、CD16に結合するのに十分な抗体定常ドメインまたはその部分に連結しており、scFvが重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインを含む。一部の実施形態では、EGFRに結合するそれぞれのscFvは、Ala-SerまたはGly-Serを含むヒンジを介して、CD16に結合するのに十分な抗体定常ドメインまたはその部分に連結しており、scFvが重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインを含む。一部の実施形態では、ヒンジは、アミノ酸配列Thr-Lys-Glyをさらに含む。
【0027】
一部の実施形態では、NKG2Dに結合するscFv内で、scFvの重鎖可変ドメインは、scFvの軽鎖可変ドメインとジスルフィド架橋を形成する。一部の実施形態では、EGFRに結合するそれぞれのscFv内で、scFvの重鎖可変ドメインは、scFvの軽鎖可変ドメインとジスルフィド架橋を形成する。一部の実施形態では、ジスルフィド架橋は、Kabatナンバリングスキーム下で番号付けされる重鎖可変ドメインのC44と軽鎖可変ドメインのC100との間に形成される。一部の実施形態では、NKG2Dに結合するscFv内で、重鎖可変ドメインは、フレキシブルリンカーを介して、軽鎖可変ドメインに連結している。一部の実施形態では、EGFRに結合するそれぞれのscFv内で、重鎖可変ドメインは、フレキシブルリンカーを介して、軽鎖可変ドメインに連結している。一部の実施形態では、フレキシブルリンカーは(G4S)4(配列番号119)を含む。
【0028】
一部の実施形態では、NKG2Dに結合するscFv内で、重鎖可変ドメインが軽鎖可変ドメインのC末端に位置する。一部の実施形態では、EGFRに結合するそれぞれのscFv内で、重鎖可変ドメインが軽鎖可変ドメインのC末端に位置する。一部の実施形態では、NKG2Dに結合するscFv内で、重鎖可変ドメインが軽鎖可変ドメインのN末端に位置する。
【0029】
一部の実施形態では、EGFRに結合するそれぞれのscFv内で、重鎖可変ドメインは、軽鎖可変ドメインのN末端に位置する。一部の実施形態では、NKG2Dに結合するFab断片は、抗原結合部位とFcまたはその部分との間に位置しない。一部の実施形態では、EGFRに結合するFab断片は抗原結合部位とFcまたはその部分との間に位置しない。
【0030】
一部の実施形態では、NKG2Dに結合する第1の抗原結合部位は、それぞれ、配列番号81、82および112のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2およびCDR3を含むVH;ならびにそれぞれ、配列番号86、77および87のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2およびCDR3を含むVLを含む。一部の実施形態では、NKG2Dに結合する第1の抗原結合部位は、それぞれ、配列番号81、82および97のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2およびCDR3を含むVH;ならびにそれぞれ、配列番号86、77および87のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2およびCDR3を含むVLを含む。一部の実施形態では、第1の抗原結合部位のVHが配列番号95と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含み、第1の抗原結合部位のVLが配列番号85と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、第1の抗原結合部位のVHが配列番号95のアミノ酸配列を含み、第1の抗原結合部位のVLは配列番号85のアミノ酸配列を含む。
【0031】
一部の実施形態では、抗体FcドメインはヒンジおよびCH2ドメインを含む。一部の実施形態では、抗体FcドメインはヒトIgG1抗体Fcドメインである。一部の実施形態では、抗体Fcドメインまたはその部分は、ヒトIgG1抗体のアミノ酸234~332または配列番号118と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む。
【0032】
一部の実施形態では、抗体Fcドメインの少なくとも1つのポリペプチド鎖は、配列番号118と比較して、EUナンバリングシステムに従って番号付けされるQ347、Y349、L351、S354、E356、E357、K360、Q362、S364、T366、L368、K370、N390、K392、T394、D399、S400、D401、F405、Y407、K409、T411およびK439から選択される1つまたは複数の位置に1つまたは複数の変異を含む。一部の実施形態では、抗体Fcドメインの少なくとも1つのポリペプチド鎖は、配列番号118と比較して、EUナンバリングシステムに従って番号付けされるQ347E、Q347R、Y349S、Y349K、Y349T、Y349D、Y349E、Y349C、L351K、L351D、L351Y、S354C、E356K、E357Q、E357L、E357W、K360E、K360W、Q362E、S364K、S364E、S364H、S364D、T366V、T366I、T366L、T366M、T366K、T366W、T366S、L368E、L368A、L368D、K370S、N390D、N390E、K392L、K392M、K392V、K392F、K392D、K392E、T394F、D399R、D399K、D399V、S400K、S400R、D401K、F405A、F405T、Y407A、Y407I、Y407V、K409F、K409W、K409D、T411D、T411E、K439DおよびK439Eから選択される1つまたは複数の変異を含む。
【0033】
一部の実施形態では、抗体重鎖定常領域の1つのポリペプチド鎖は、配列番号118と比較して、EUナンバリングシステムに従って番号付けされるQ347、Y349、L351、S354、E356、E357、K360、Q362、S364、T366、L368、K370、K392、T394、D399、S400、D401、F405、Y407、K409、T411およびK439から選択される1つまたは複数の位置に1つまたは複数の変異を含み;抗体重鎖定常領域の他のポリペプチド鎖は、配列番号118と比較して、EUナンバリングシステムに従って番号付けされるQ347、Y349、L351、S354、E356、E357、S364、T366、L368、K370、N390、K392、T394、D399、D401、F405、Y407、K409、T411およびK439から選択される1つまたは複数の位置に1つまたは複数の変異を含む。一部の実施形態では、抗体重鎖定常領域の1つのポリペプチド鎖は、配列番号118と比較して、EUナンバリングシステムに従って番号付けされるK360EおよびK409W置換を含み;抗体重鎖定常領域の他のポリペプチド鎖は、配列番号118と比較して、EUナンバリングシステムに従って番号付けされるQ347R、D399VおよびF405T置換を含む。
【0034】
一部の実施形態では、抗体重鎖定常領域の1つのポリペプチド鎖は、配列番号118と比較して、EUナンバリングシステムに従って番号付けされるY349C置換を含み;抗体重鎖定常領域の他のポリペプチド鎖は、配列番号118と比較して、EUナンバリングシステムに従って番号付けされるS354C置換を含む。
【0035】
本出願の別の態様は、(a)配列番号167のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド;(b)配列番号164のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド;および(c)配列番号165のアミノ酸配列を含む第3のポリペプチドを含むタンパク質を提供する。
【0036】
本出願の別の態様は、(a)配列番号168のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド;(b)配列番号164のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド;および(c)配列番号165のアミノ酸配列を含む第3のポリペプチドを含むタンパク質を提供する。
【0037】
本出願の別の態様は、(a)配列番号166のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド;(b)配列番号164のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド;および(c)配列番号165のアミノ酸配列を含む第3のポリペプチドを含むタンパク質を提供する。
【0038】
本出願の別の態様は、本明細書に開示されるタンパク質と、薬学的に許容される担体とを含む製剤を提供する。
【0039】
本出願の別の態様は、本明細書に開示されるタンパク質をコードする1つまたは複数の核酸を含む細胞を提供する。一部の実施形態では、配列番号167または配列番号169のアミノ酸配列を含むタンパク質をコードする1つまたは複数の核酸を含む細胞である。
【0040】
本出願の別の態様は、本明細書に開示される精製タンパク質を提供する。一部の実施形態では、タンパク質は、遠心分離、深層濾過、細胞溶解、ホモジナイゼーション、凍結-解凍、アフィニティ精製、ゲル濾過、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用交換クロマトグラフィーおよび混合モードクロマトグラフィーからなる群から選択される方法を使用して精製される。
【0041】
本出願の別の態様は、腫瘍細胞死を増強する方法であって、腫瘍細胞およびナチュラルキラー細胞を、有効量の本明細書に開示されるタンパク質または本明細書に開示される製剤に曝露するステップを含み、腫瘍細胞がEGFRを発現する、方法を提供する。
【0042】
本出願の別の態様は、がんを処置する方法であって、有効量の本明細書に開示されるタンパク質または製剤をそれを必要とする患者に投与するステップを含む方法を提供する。一部の実施形態では、がんは固形腫瘍である。一部の実施形態では、がんは、肺がん、乳がん、腎臓がん、結腸直腸がん、胃がん、脳がん、神経膠腫、膀胱がん、頭頸部がん、膀胱がん、膵臓がんおよび肝臓がん、子宮頸がん、卵巣がんまたは前立腺がんである。一部の実施形態では、がんはEGFRを発現する。
【0043】
本出願に記載されるTriNKETのこれらのおよび他の態様ならびに利点は、以下の図面、詳細な説明および特許請求の範囲によって説明される。
本発明の実施形態において、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
(a)NKG2Dに結合する第1の抗原結合部位;
(b)EGFRに結合する第2の抗原結合部位;および
(c)CD16に結合するのに十分な抗体Fcドメインもしくはその部分、またはCD16に結合する第3の抗原結合部位
を含むタンパク質であって、
前記第2の抗原結合部位が、
(i)それぞれ、配列番号136、157および138の相補性決定領域1(CDR1)、相補性決定領域2(CDR2)および相補性決定領域3(CDR3)配列を含む重鎖可変ドメイン(VH);ならびにそれぞれ、配列番号140、141および151のCDR1、CDR2およびCDR3配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL);または
(ii)それぞれ、配列番号136、146および138のCDR1、CDR2およびCDR3配列を含むVH;ならびにそれぞれ、配列番号140、141および142のCDR1、CDR2およびCDR3配列を含むVL
を含む、タンパク質。
(項目2)
前記VHが、それぞれ、配列番号136、157および138のCDR1、CDR2およびCDR3配列を含み、前記VLが、それぞれ、配列番号140、141および151のCDR1、CDR2およびCDR3配列を含む、項目1に記載のタンパク質。
(項目3)
前記VHが、それぞれ、配列番号136、146および138のCDR1、CDR2およびCDR3配列を含み、前記VLが、それぞれ、配列番号140、141および151のCDR1、CDR2およびCDR3配列を含む、項目2に記載のタンパク質。
(項目4)
前記VHが、それぞれ、配列番号136、137および138のCDR1、CDR2およびCDR3配列を含み、前記VLが、それぞれ、配列番号140、141および151のCDR1、CDR2およびCDR3配列を含む、項目2に記載のタンパク質。
(項目5)
前記VHが、それぞれ、配列番号136、146および138のCDR1、CDR2およびCDR3配列を含み、前記VLが、それぞれ、配列番号140、141および142のCDR1、CDR2およびCDR3配列を含む、項目1に記載のタンパク質。
(項目6)
(a)NKG2Dに結合する第1の抗原結合部位;
(b)EGFRに結合する第2の抗原結合部位;および
(c)CD16に結合するのに十分な抗体Fcドメインもしくはその部分、またはCD16に結合する第3の抗原結合部位
を含むタンパク質であって、
前記第2の抗原結合部位が、配列番号135と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含むVH、および配列番号139と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含むVLを含み、
前記VHが、配列番号135と比較して、Chothiaナンバリングスキーム下で番号付けされるS62R置換を含み、ならびに/または前記VLが、配列番号139と比較して、Chothiaナンバリングスキーム下で番号付けされるD92R置換および/もしくはF87Y置換を含む、タンパク質。
(項目7)
前記VHが、配列番号135と比較して、Chothiaナンバリングスキーム下で番号付けされるS62R置換を含む、項目6に記載のタンパク質。
(項目8)
前記VLが、配列番号139と比較して、Chothiaナンバリングスキーム下で番号付けされるD92R置換を含む、項目6に記載のタンパク質。
(項目9)
前記VHが、配列番号135と比較して、Chothiaナンバリングスキーム下で番号付けされるS62R置換を含み、前記VLが、配列番号139と比較して、Chothiaナンバリングスキーム下で番号付けされるD92R置換を含む、項目6に記載のタンパク質。
(項目10)
前記VLが、配列番号139と比較して、Chothiaナンバリングスキーム下で番号付けされるF87Y置換を含む、項目1から9のいずれか一項に記載のタンパク質。
(項目11)
前記VHが配列番号145と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含み、前記VLが配列番号150と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む、項目1から3および6から10のいずれか一項に記載のタンパク質。
(項目12)
前記VHが配列番号145のアミノ酸配列を含み、前記VLが配列番号150のアミノ酸配列を含むか、または前記VHが配列番号170のアミノ酸配列を含み、前記VLが配列番号171のアミノ酸配列を含む、項目1から3および6から11のいずれか一項に記載のタンパク質。
(項目13)
前記VHが配列番号135と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含み、前記VLが配列番号150と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む、項目1、2、4、6、8および10のいずれか一項に記載のタンパク質。
(項目14)
前記VHが配列番号135のアミノ酸配列を含み、前記VLが配列番号150のアミノ酸配列を含む、項目1、2、4、6、8、10および13のいずれか一項に記載のタンパク質。
(項目15)
前記VHが配列番号145と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含み、前記VLが配列番号147と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む、項目1、5から7および10のいずれか一項に記載のタンパク質。
(項目16)
前記VHが配列番号145のアミノ酸配列を含み、前記VLが配列番号147のアミノ酸配列を含む、項目1、5から7、10および15のいずれか一項に記載のタンパク質。
(項目17)
前記第2の抗原結合部位が一本鎖可変領域断片(scFv)を含み、前記scFvが配列番号152、154、148および158からなる群から選択される配列と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む、項目1から16のいずれか一項に記載のタンパク質。
(項目18)
前記scFvが配列番号152と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む、項目1から3、6から12および17のいずれか一項に記載のタンパク質。
(項目19)
前記scFVが配列番号152のアミノ酸配列を含む、項目1から3、6から12、17および18のいずれか一項に記載のタンパク質。
(項目20)
前記scFVが配列番号154と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む、項目1、2、4、6、8、10、13、14および17のいずれか一項に記載のタンパク質。
(項目21)
前記scFVが配列番号154のアミノ酸配列を含む、項目1、2、4、6、8、10、13、14、17および20のいずれか一項に記載のタンパク質。
(項目22)
前記scFVが配列番号148のアミノ酸配列と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む、項目1、5から7、10および15から17のいずれか一項に記載のタンパク質。
(項目23)
前記scFVが配列番号148のアミノ酸配列を含む、項目1、5から7、10、15から17および22のいずれか一項に記載のタンパク質。
(項目24)
前記タンパク質が配列番号167、168および166からなる群から選択される配列と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む、項目1から23のいずれか一項に記載のタンパク質。
(項目25)
前記ポリペプチドが配列番号167と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む、項目1から3、6から12、17から19および24のいずれか一項に記載のタンパク質。
(項目26)
前記ポリペプチドが配列番号167のアミノ酸配列を含む、項目1から3、6から12、17から19、24および25のいずれか一項に記載のタンパク質。
(項目27)
前記ポリペプチドが配列番号168と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む、項目1、2、4、6、8、10、13、14、17、20、21および24のいずれか一項に記載のタンパク質。
(項目28)
前記ポリペプチドが配列番号168のアミノ酸配列を含む、項目1、2、4、6、8、10、13、14、17、20、21、24および27のいずれか一項に記載のタンパク質。
(項目29)
前記ポリペプチドが配列番号166のアミノ酸配列と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む、項目1、5から7、10、15から17および22から24のいずれか一項に記載のタンパク質。
(項目30)
前記scFvが配列番号166のアミノ酸配列を含む、項目1、5から7、10、15から17、22から24および29のいずれか一項に記載のタンパク質。
(項目31)
前記第2の抗原結合部位が、表面プラズモン共鳴(SPR)によって測定される5nMよりも小さいまたはそれに等しい解離定数(K
D
)で、ヒトEGFRに結合する、項目1から30のいずれか一項に記載のタンパク質。
(項目32)
前記第2の抗原結合部位が、表面プラズモン共鳴(SPR)によって測定される6nMよりも小さいまたはそれに等しい解離定数(K
D
)で、アカゲザルEGFRに結合する、項目1から31のいずれか一項に記載のタンパク質。
(項目33)
NKG2Dに結合する前記第1の抗原結合部位がFab断片であり、EGFRに結合する前記第2の抗原結合部位がscFvである、項目1から16、31および32のいずれか一項に記載のタンパク質。
(項目34)
NKG2Dに結合する前記第1の抗原結合部位がscFvであり、EGFRに結合する前記第2の抗原結合部位がFab断片である、項目1から16、31および32のいずれか一項に記載のタンパク質。
(項目35)
EGFRに結合する追加の抗原結合部位をさらに含む、項目1から16、31および32のいずれか一項に記載のタンパク質。
(項目36)
NKG2Dに結合する前記第1の抗原結合部位がscFvであり、EGFRに結合する前記第2のおよび前記追加の抗原結合部位がそれぞれFab断片である、項目35に記載のタンパク質。
(項目37)
NKG2Dに結合する前記第1の抗原結合部位がscFvであり、EGFRに結合する前記第2のおよび前記追加の抗原結合部位がそれぞれscFvである、項目35に記載のタンパク質。
(項目38)
前記第2のおよび前記追加の抗原結合部位のアミノ酸配列が同一である、項目35から37のいずれか一項に記載のタンパク質。
(項目39)
NKG2Dに結合する前記scFvが、Ala-SerまたはGly-Serを含むヒンジを介して、CD16に結合するのに十分な抗体定常ドメインまたはその部分に連結しており、前記scFvが重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインを含む、項目34および36から38のいずれか一項に記載のタンパク質。
(項目40)
EGFRに結合するそれぞれのscFvが、Ala-SerまたはGly-Serを含むヒンジを介して、CD16に結合するのに十分な抗体定常ドメインまたはその部分に連結しており、前記scFvが重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインを含む、項目33および37から39のいずれか一項に記載のタンパク質。
(項目41)
前記ヒンジが、アミノ酸配列Thr-Lys-Glyをさらに含む、項目39または40に記載のタンパク質。
(項目42)
NKG2Dに結合する前記scFv内で、前記scFvの前記重鎖可変ドメインが、前記scFvの前記軽鎖可変ドメインとジスルフィド架橋を形成する、項目34および36から41のいずれか一項に記載のタンパク質。
(項目43)
EGFRに結合するそれぞれのscFv内で、前記scFvの前記重鎖可変ドメインが、前記scFvの前記軽鎖可変ドメインとジスルフィド架橋を形成する、項目33および37から42のいずれか一項に記載のタンパク質。
(項目44)
前記ジスルフィド架橋が、Kabatナンバリングスキーム下で番号付けされる前記重鎖可変ドメインのC44と前記軽鎖可変ドメインのC100との間に形成される、項目42または43に記載のタンパク質。
(項目45)
NKG2Dに結合する前記scFv内で、前記重鎖可変ドメインが、フレキシブルリンカーを介して、前記軽鎖可変ドメインに連結している、項目34および36から44のいずれか一項に記載のタンパク質。
(項目46)
EGFRに結合するそれぞれのscFv内で、前記重鎖可変ドメインが、フレキシブルリンカーを介して、前記軽鎖可変ドメインに連結している、項目33および37から45のいずれか一項に記載のタンパク質。
(項目47)
前記フレキシブルリンカーが(G
4
S)
4
(配列番号119)を含む、項目45または46に記載のタンパク質。
(項目48)
NKG2Dに結合する前記scFv内で、前記重鎖可変ドメインが前記軽鎖可変ドメインのC末端に位置する、項目34および36から47のいずれか一項に記載のタンパク質。
(項目49)
EGFRに結合するそれぞれのscFv内で、前記重鎖可変ドメインが前記軽鎖可変ドメインのC末端に位置する、項目33および37から48のいずれか一項に記載のタンパク質。
(項目50)
NKG2Dに結合する前記scFv内で、前記重鎖可変ドメインが前記軽鎖可変ドメインのN末端に位置する、項目34および36から47のいずれか一項に記載のタンパク質。
(項目51)
EGFRに結合するそれぞれのscFv内で、前記重鎖可変ドメインが前記軽鎖可変ドメインのN末端に位置する、項目33、37から48および50のいずれか一項に記載のタンパク質。
(項目52)
NKG2Dに結合する前記Fab断片が抗原結合部位と前記Fcまたはその部分との間に位置しない、項目33、40から41、43から44、46から47、49および51のいずれか一項に記載のタンパク質。
(項目53)
EGFRに結合するFab断片が抗原結合部位と前記Fcまたはその部分との間に位置しない、項目34、36、38から39、41から42、44から45、47から48および50のいずれか一項に記載のタンパク質。
(項目54)
NKG2Dに結合する前記第1の抗原結合部位が、それぞれ、配列番号81、82および112のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2およびCDR3を含むVH;ならびにそれぞれ、配列番号86、77および87のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2およびCDR3を含むVLを含む、項目1から53のいずれか一項に記載のタンパク質。
(項目55)
NKG2Dに結合する前記第1の抗原結合部位が、それぞれ、配列番号81、82および97のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2およびCDR3を含むVH;ならびにそれぞれ、配列番号86、77および87のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2およびCDR3を含むVLを含む、項目54に記載のタンパク質。
(項目56)
前記第1の抗原結合部位の前記VHが配列番号95と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含み、前記第1の抗原結合部位の前記VLが配列番号85と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む、項目54または55に記載のタンパク質。
(項目57)
前記第1の抗原結合部位の前記VHが配列番号95のアミノ酸配列を含み、前記第1の抗原結合部位の前記VLが配列番号85のアミノ酸配列を含む、項目54から56のいずれか一項に記載のタンパク質。
(項目58)
前記抗体FcドメインがヒンジおよびCH2ドメインを含む、項目1から57のいずれか一項に記載のタンパク質。
(項目59)
前記抗体FcドメインがヒトIgG1抗体Fcドメインである、項目1から58のいずれか一項に記載のタンパク質。
(項目60)
前記抗体Fcドメインまたはその部分が、ヒトIgG1抗体のアミノ酸234~332または配列番号118と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む、項目59に記載のタンパク質。
(項目61)
前記抗体Fcドメインの少なくとも1つのポリペプチド鎖が、配列番号118と比較して、EUナンバリングシステムに従って番号付けされるQ347、Y349、L351、S354、E356、E357、K360、Q362、S364、T366、L368、K370、N390、K392、T394、D399、S400、D401、F405、Y407、K409、T411およびK439から選択される1つまたは複数の位置に1つまたは複数の変異を含む、項目59または60に記載のタンパク質。
(項目62)
前記抗体Fcドメインの少なくとも1つのポリペプチド鎖が、配列番号118と比較して、EUナンバリングシステムに従って番号付けされるQ347E、Q347R、Y349S、Y349K、Y349T、Y349D、Y349E、Y349C、L351K、L351D、L351Y、S354C、E356K、E357Q、E357L、E357W、K360E、K360W、Q362E、S364K、S364E、S364H、S364D、T366V、T366I、T366L、T366M、T366K、T366W、T366S、L368E、L368A、L368D、K370S、N390D、N390E、K392L、K392M、K392V、K392F、K392D、K392E、T394F、D399R、D399K、D399V、S400K、S400R、D401K、F405A、F405T、Y407A、Y407I、Y407V、K409F、K409W、K409D、T411D、T411E、K439DおよびK439Eから選択される1つまたは複数の変異を含む、項目59から61のいずれか一項に記載のタンパク質。
(項目63)
前記抗体重鎖定常領域の1つのポリペプチド鎖が、配列番号118と比較して、EUナンバリングシステムに従って番号付けされるQ347、Y349、L351、S354、E356、E357、K360、Q362、S364、T366、L368、K370、K392、T394、D399、S400、D401、F405、Y407、K409、T411およびK439から選択される1つまたは複数の位置に1つまたは複数の変異を含み;前記抗体重鎖定常領域の他のポリペプチド鎖が、配列番号118と比較して、EUナンバリングシステムに従って番号付けされるQ347、Y349、L351、S354、E356、E357、S364、T366、L368、K370、N390、K392、T394、D399、D401、F405、Y407、K409、T411およびK439から選択される1つまたは複数の位置に1つまたは複数の変異を含む、項目59から62のいずれか一項に記載のタンパク質。
(項目64)
前記抗体重鎖定常領域の1つのポリペプチド鎖が、配列番号118と比較して、EUナンバリングシステムに従って番号付けされるK360EおよびK409W置換を含み;前記抗体重鎖定常領域の他のポリペプチド鎖が、配列番号118と比較して、EUナンバリングシステムに従って番号付けされるQ347R、D399VおよびF405T置換を含む、項目63に記載のタンパク質。
(項目65)
前記抗体重鎖定常領域の1つのポリペプチド鎖が、配列番号118と比較して、EUナンバリングシステムに従って番号付けされるY349C置換を含み;前記抗体重鎖定常領域の他のポリペプチド鎖が、配列番号118と比較して、EUナンバリングシステムに従って番号付けされるS354C置換を含む、項目63または64に記載のタンパク質。
(項目66)
(a)配列番号167のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド;
(b)配列番号164のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド;および
(c)配列番号165のアミノ酸配列を含む第3のポリペプチド
を含むタンパク質。
(項目67)
(a)配列番号168のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド;
(b)配列番号164のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド;および
(c)配列番号165のアミノ酸配列を含む第3のポリペプチド
を含むタンパク質。
(項目68)
(a)配列番号166のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド;
(b)配列番号164のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド;および
(c)配列番号165のアミノ酸配列を含む第3のポリペプチド
を含むタンパク質。
(項目69)
前記項目のいずれか一項に記載のタンパク質と、薬学的に許容される担体とを含む製剤。
(項目70)
項目1から68のいずれか一項に記載のタンパク質をコードする1つまたは複数の核酸を含む細胞。
(項目71)
腫瘍細胞死を増強する方法であって、腫瘍細胞およびナチュラルキラー細胞を、有効量の項目1から68のいずれか一項に記載のタンパク質または項目69に記載の製剤に曝露するステップを含み、前記腫瘍細胞がEGFRを発現する、方法。
(項目72)
がんを処置する方法であって、有効量の項目1から68のいずれか一項に記載のタンパク質または項目69に記載の製剤をそれを必要とする患者に投与するステップを含む方法。
(項目73)
前記がんが固形腫瘍である、項目72に記載の方法。
(項目74)
前記がんが、肺がん、乳がん、腎臓がん、結腸直腸がん、胃がん、脳がん、神経膠腫、膀胱がん、頭頸部がん、膀胱がん、膵臓がんおよび肝臓がん、子宮頸がん、卵巣がんまたは前立腺がんである、項目72または73に記載の方法。
(項目75)
前記がんがEGFRを発現する、項目72から74のいずれか一項に記載の方法。
(項目76)
配列番号167のアミノ酸配列を含むタンパク質をコードする1つまたは複数の核酸を含む細胞。
(項目77)
配列番号169のアミノ酸配列を含むタンパク質をコードする1つまたは複数の核酸を含む細胞。
(項目78)
精製タンパク質である、項目1から68のいずれか一項に記載のタンパク質。
(項目79)
遠心分離、深層濾過、細胞溶解、ホモジナイゼーション、凍結-解凍、アフィニティ精製、ゲル濾過、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用交換クロマトグラフィーおよび混合モードクロマトグラフィーからなる群から選択される方法を使用して精製されている、項目78に記載のタンパク質。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】
図1は、ヘテロ二量体多重特異性結合抗体、例えば、三重特異性結合タンパク質(TriNKET)を表す。各アームは、NKG2D結合ドメインまたは腫瘍関連抗原に対応する結合ドメインのいずれかを表すことができる。一部の実施形態では、NKG2D結合ドメインおよび腫瘍関連抗原結合ドメインは共通の軽鎖を共有することができる。
【0045】
【
図2-1】
図2A~2Eは、多重特異性結合タンパク質、例えば、三重特異性結合タンパク質(TriNKET)の5つの例示的なフォーマットを示す。
図2Aに示されるように、NKG2D結合ドメインまたは腫瘍関連抗原結合ドメインのいずれかがscFvフォーマットをとることができる(左アーム)。NKG2D標的化scFv、腫瘍関連抗原標的化Fab断片、およびヘテロ二量体化抗体定常領域を含有する抗体は、本明細書ではF3-TriNKETと呼ばれる。腫瘍関連抗原標的化scFv、NKG2D標的化Fab断片、およびCD16に結合するヘテロ二量体化抗体定常領域/ドメインを含有する抗体は、本明細書ではF3’-TriNKETと呼ばれる(
図2E)。
図2Bに示されるように、NKG2D結合ドメインおよび腫瘍関連抗原結合ドメインの両方がscFvフォーマットをとることができる。
図2C~2Dは、腫瘍関連抗原に結合する2つの抗原結合部位およびヘテロ二量体化抗体定常領域に融合したNKG2D結合部位を含む3つの抗原結合部位を有する抗体を示す。これらの抗体フォーマットは、本明細書ではF4-TriNKETと呼ばれる。
図2Cは、2つの腫瘍関連抗原結合部位がFab断片フォーマットであり、NKG2D結合部位がscFvフォーマットであることを示している。
図2Dは、腫瘍関連抗原結合部位がscFvフォーマットであり、NKG2D結合部位がscFvフォーマットであることを示している。
図2Eは、腫瘍標的化scFv、NKG2D標的化Fab断片、およびCD16に結合するヘテロ二量体化抗体定常領域/ドメイン(「CDドメイン」)を含有する三重特異性抗体(TriNKET)を表す。抗体フォーマットは、本明細書ではF3’-TriNKETと呼ばれる。ある特定の例示的な多重特異性結合タンパク質では、抗体定常領域上のヘテロ二量体化変異が、一方の定常ドメイン上のK360EおよびK409W;ならびに反対の位置の定常ドメイン上のQ347R、D399VおよびF405Tを含む(CDドメイン中に三角形の鍵と鍵穴の形状として示される)。Fab断片の重鎖可変ドメインと軽鎖可変ドメインとの間の太い棒はジスルフィド結合を表す。
【0046】
【
図3】
図3は、IgG様形状を維持する三機能性二重特異性抗体であるTriomab形態のTriNKETを表す図である。このキメラは、2つの親抗体に由来する、それぞれ1つの軽鎖および1つの重鎖を有する2つの半抗体からなる。Triomab形態は、ラット抗体の1/2およびマウス抗体の1/2を含有するヘテロ二量体構築物であり得る。
【0047】
【
図4】
図4は、ノブイントゥホール(knobs-into-holes)(KIH)技術を伴う、KiH Common Light Chain形態のTriNKETを表す図である。KiHは、標的1および2に結合する2つのFab断片、ならびにヘテロ二量体化変異によって安定化されたFcを含有するヘテロ二量体である。KiHフォーマットのTriNKETは、2つの異なる重鎖および両重鎖と対形成する共通の軽鎖を含有する、標的1および標的2に結合する2つのFab断片を有するヘテロ二量体構築物であり得る。
【0048】
【
図5】
図5は、天然に存在するフレキシブルリンカーを介して2つのモノクローナル抗体の標的結合ドメインを組み合わせて、四価IgG様分子をもたらす、二重可変ドメイン免疫グロブリン(DVD-Ig(商標))形態のTriNKETを表す図である。DVD-Ig(商標)は、抗原2を標的化する可変ドメインが抗原1を標的化するFab断片の可変ドメインのN末端に融合しているホモ二量体構築物である。DVD-Ig(商標)形態は通常のFcを含有する。
【0049】
【
図6】
図6は、Fcに融合した、標的1および標的2に結合する2つのFab断片を含有するヘテロ二量体構築物である、直交Fab断片界面(Ortho-Fab)形態のTriNKETを表す図である。軽鎖(LC)-重鎖(HC)対形成は直交界面によって確保される。ヘテロ二量体化はFc中の変異によって確保される。
【0050】
【
図7】
図7は、2-in-1 IgフォーマットのTriNKETを表す図である。
【0051】
【
図8】
図8は、Fcに融合した、標的1および標的2に結合する2つの異なるFab断片を含有するヘテロ二量体構築物である、ES形態のTriNKETを表す図である。ヘテロ二量体化はFc中の静電ステアリング変異によって確保される。
【0052】
【
図9】
図9は、Fabアーム交換形態におけるTriNKETを表す図である:重鎖および結合した軽鎖(半分子)を別の分子からの重鎖-軽鎖ペアと交換することによりFab断片アームを交換する抗体は、二重特異性抗体をもたらす。Fabアーム交換形態(cFae)は、標的1および2に結合する2つのFab断片、ならびにヘテロ二量体化変異によって安定化されたFcを含有するヘテロ二量体である。
【0053】
【
図10】
図10は、標的1および2に結合する2つのFab断片、ならびにヘテロ二量体化変異によって安定化されたFcを含有するヘテロ二量体である、SEEDボディ形態(SEED Body form)のTriNKETを表す図である。
【0054】
【
図11】
図11は、2つの異なるHCのヘテロ二量体化を誘導するためにロイシンジッパーが使用される、LuZ-Y形態のTriNKETを表す図である。LuZ-Y形態は、Fcに融合した、標的1および2に結合する2つの異なるscFabを含有するヘテロ二量体である。ヘテロ二量体化は、FcのC末端に融合したロイシンジッパーモチーフによって確保される。
【0055】
【
図12】
図12は、Cov-Xボディ形態のTriNKETを表す図である。
【0056】
【
図13】
図13A~13Bは、抗原1を標的化する1つのFab断片がカッパLCを含有し、抗原2を標的化する第2のFab断片がラムダLCを含有する、ヘテロ二量体化変異によって安定化されたFcに融合した2つの異なるFab断片を有するヘテロ二量体構築物である、κλボディ形態のTriNKETを表す図である。
図13Aはκλボディの一形態の例示的な図であり;
図13Bは別のκλボディの例示的な図である。
【0057】
【
図14】
図14は、共にFcドメインに融合している、標的1に結合するFab断片および標的2に結合するscFabを含む、Oasc-Fabヘテロ二量体構築物を表す図である。ヘテロ二量体化は、Fcドメイン中の変異によって確保される。
【0058】
【
図15】
図15は、抗原1および2に結合する2つの異なるFab断片、ならびにヘテロ二量体化変異によって安定化されているFcを含有するヘテロ二量体構築物である、DuetMabを表す図である。Fab断片1および2は、正しい軽鎖および重鎖の対形成を確保する示差的S-S架橋を含有する。
【0059】
【
図16】
図16は、標的1および2に結合する2つの異なるFab断片、ならびにヘテロ二量体化変異によって安定化されたFcを有するヘテロ二量体構築物である、Cross mAbを表す図である。CLおよびCH1ドメイン、ならびにVHおよびVLドメインが切り替えられ、例えば、CH1がVLとインラインで融合しており、CLがVHとインラインで融合している。
【0060】
【
図17】
図17は、抗原2に結合するFab断片が、抗原1に結合するFab断片のHCのN末端に融合しているホモ二量体構築物である、Fit-Igを表す図である。構築物は野生型Fcを含有する。
【0061】
【
図18】
図18は、VHにS62R置換(Chothiaナンバリングスキーム下)を有するパニツムマブの構造モデリングを示す図であり、ここで、このArgとVLの1位のAspとの間の水素結合は、VH-VL界面の安定化に寄与し得る。
【0062】
【
図19】
図19は、VLにF87Y置換(Chothiaナンバリングスキーム下)を有するパニツムマブの構造モデリングを示す図であり、ここで、このTyrとVHの39位のGlnとの間の水素結合は、VH-VL界面の安定化に寄与し得る。
【0063】
【
図20】
図20は、VLにD92R置換(Chothiaナンバリングスキーム下)を有するパニツムマブの構造モデリングを示す図であり、ここで、このArg(CDRL3中)とVLの32位のTyr(CDRL1中)との間のファンデルワールス接触は、パラトープの安定化に寄与し得る。
【0064】
【
図21】
図21は、ヒトEGFRへのEGFR-TriNKET-1結合の滴定についてのSPRセンサーグラムである。
【0065】
【
図22】
図22は、ヒトEGFRへのEGFR-TriNKET-2結合の滴定についてのSPRセンサーグラムである。
【0066】
【
図23】
図23は、ヒトEGFRへのEGFR-TriNKET-3結合の滴定についてのSPRセンサーグラムである。
【0067】
【
図24】
図24は、ヒトEGFRへのEGFR-TriNKET-4結合の滴定についてのSPRセンサーグラムである。
【0068】
【
図25】
図25A、25B、25Cおよび25Dは、示差走査熱量測定(DSC)分析によって決定される、それぞれ、PBS中、pH7.4のEGFR-TriNKET-1(
図25A)、EGFR-TriNKET-2(
図25B)およびEGFR-TriNKET-3(
図25C)についてのサーモグラムを示すプロットである。
【0069】
【
図26】
図26Aおよび26Bは、DSC分析によって決定される、それぞれ、20mMのヒスチジン、250mMのトレハロース、0.01%のPS80、pH6.0のEGFR-TriNKET-3(
図26A)およびEGFR-TriNKET-4(
図26B)についてのサーモグラムを示すプロットである。
【0070】
【
図27】
図27は、EGFR陽性H2172がん細胞に対する、一連の濃度のEGFR-TriNKET-1(「EGFR1」)、EGFR-TriNKET-2(「EGFR2」)、EGFR-TriNKET-3(「EGFR3」)およびパニツムマブの結合親和性を示すプロットである。
【0071】
【
図28】
図28は、一連の濃度のEGFR-TriNKET-1(「EGFR1」)、EGFR-TriNKET-3(「EGFR3」)、EGFR-TriNKET-4(「EGFR4」)およびセツキシマブの存在下でのEGFR発現H2172がん細胞のNK細胞媒介溶解を示すプロットである。
【0072】
【
図29】
図29は、一連の濃度のEGFR-TriNKET-3(「EGFR3」)、EGFR-TriNKET-4(「EGFR4」)およびセツキシマブの存在下でのEGFR陽性786-0がん細胞のCD8
+T細胞媒介溶解を示すプロットである。
【0073】
【
図30】
図30は、一連の濃度のEGFR-TriNKET-1(「EGFR1」)、EGFR-TriNKET-2(「EGFR2」)、EGFR-TriNKET-3(「EGFR3」)およびセツキシマブの存在下でEGFR陽性BT-474がん細胞とインキュベートした場合のNK細胞からのIFN-γ産生を示すプロットである。
【0074】
【
図31】
図31は、一連の濃度のEGFR-TriNKET-1(「EGFR1」)、EGFR-TriNKET-3(「EGFR3」)およびセツキシマブの存在下でEGFR陽性BT-474がん細胞とインキュベートした場合のIL-2活性化NK細胞からのIFN-γ産生を示すプロットである。
【0075】
【
図32】
図32は、一連の濃度のEGFR-TriNKET-1(「EGFR1」)、EGFR-TriNKET-2(「EGFR2」)、EGFR-TriNKET-3(「EGFR3」)、パニツムマブおよびセツキシマブの存在下での72時間のEGFR陽性細胞系の増殖を示すプロットである。
【0076】
【
図33】
図33は、フローサイトメトリーによって測定される、一連の濃度のEGFR-TriNKET-1(「EGFR1」)、FcドメインにL234A、L235AおよびP329G(LALAPG)変異を有するEGFR-TriNKET-1のバリアント(「EGFR1-CD16si」)、EGFR-TriNKET-3(「EGFR3」)、EGFR-TriNKET-4(「EGFR4」)およびセツキシマブの存在下での2時間のインキュベーション後の抗体依存性細胞ファゴサイトーシス(ADCP)の結果として、マクロファージによって貪食されたEGFR発現標的細胞のパーセンテージを示すプロットである。
【0077】
【
図34-1】
図34A~34Dは、示されるアイソタイプ対照またはEGFR-TriNKETで処置されたEGFR陽性NCI-H292細胞を異種移植されたヌードマウスにおける経時的な腫瘍体積を示すプロットである。
図34Aは、示される時点で300μg、100μgまたは30μgのEGFR-TriNKETで処置されたマウスにおける腫瘍体積を示す。
図34Bは、示される時点で300μgのアイソタイプ対照またはEGFR-TriNKETで処置されたマウスにおける腫瘍体積を示す。
図34Cは、示される時点で100μgのアイソタイプ対照またはEGFR-TriNKETで処置されたマウスにおける腫瘍体積を示す。
図34Dは、示される時点で30μgのアイソタイプ対照またはEGFR-TriNKETで処置されたマウスにおける腫瘍体積を示す。
【0078】
【
図35】
図35A~35Bは、示されるアイソタイプ対照、EGFR-TriNKETまたはセツキシマブで処置されたEGFR陽性NCI-H292細胞を異種移植されたヌードマウスにおける経時的な腫瘍体積または体重を示すプロットである。
図35Aは、示される時点で100μgのアイソタイプ対照、EGFR-TriNKETまたはセツキシマブで処置されたマウスにおける腫瘍体積を示す。
図35Bは、示される時点で100μgのアイソタイプ対照、EGFR-TriNKETまたはセツキシマブで処置されたマウスにおける体重を示す。
【発明を実施するための形態】
【0079】
本願は、ナチュラルキラー細胞上のNKG2D受容体およびCD16受容体、ならびにEGFRに結合する多重特異性結合タンパク質を提供する。一部の実施形態では、多重特異性結合タンパク質は、EGFRに結合する追加の抗原結合部位をさらに含む。本願はまた、このような多重特異性結合タンパク質を含む医薬組成物、ならびにがんを処置するなどの目的のために、このような多重特異性結合タンパク質および医薬組成物を使用する治療方法を提供する。本願に記載される多重特異性結合タンパク質のさまざまな態様を以下の節で示すが、ある特定の節に記載される多重特異性結合タンパク質の態様は、いずれの特定の節にも限定されるべきではない。
【0080】
本願の理解を促進するために、いくつかの用語および句を以下で定義する。
【0081】
本明細書で使用される「a」および「an」という用語は「1つまたは複数」を意味し、文脈が不適切でない限り、複数形を含む。
【0082】
本明細書で使用される場合、「抗原結合部位」という用語は、抗原結合に参加する免疫グロブリン分子の部分を指す。ヒト抗体では、抗原結合部位は、重(「H」)鎖および軽(「L」)鎖のN末端可変(「V」)領域のアミノ酸残基によって形成される。重鎖および軽鎖のV領域内の3つの高度に多様な範囲は「超可変領域」と呼ばれ、これらは「フレームワーク領域」または「FR」として公知のより保存された隣接範囲の間に挿入されている。よって、「FR」という用語は、免疫グロブリンの超可変領域の間におよびこれに隣接して天然に見出されるアミノ酸配列を指す。ヒト抗体分子では、軽鎖の3つの超可変領域および重鎖の3つの超可変領域が、抗原結合表面を形成するように三次元空間で互いに対して配置されている。抗原結合表面は、結合抗原の三次元表面と相補的であり、重鎖および軽鎖の各々の3つの超可変領域は「相補性決定領域」または「CDR」と呼ばれる。ラクダおよび軟骨魚類などのある特定の動物では、抗原結合部位が単一抗体鎖によって形成されて、「単一ドメイン抗体」をもたらす。抗原結合部位は、インタクト抗体、抗原結合表面を保持する抗体の抗原結合断片、または単一ポリペプチドで重鎖可変ドメインを軽鎖可変ドメインに接続するためのペプチドリンカーを使用したscFvなどの組換えポリペプチドに存在することができる。
【0083】
本明細書で使用される「腫瘍関連抗原」という用語は、それだけに限らないが、がんに関連するタンパク質、糖タンパク質、ガングリオシド、炭水化物、脂質を含む任意の抗原を意味する。このような抗原は、悪性細胞上、または腫瘍関連血管、細胞外基質、間葉系間質もしくは免疫浸潤物などの腫瘍微小環境中で発現され得る。本開示のある特定の実施形態では、「腫瘍関連抗原」という用語はEGFRを指す。
【0084】
本明細書で使用される場合、「対象」および「患者」という用語は、本明細書に記載される方法および組成物によって処置される生物を指す。このような生物には、好ましくは、それだけに限らないが、哺乳動物(例えば、マウス、類人猿、ウマ、ウシ、ブタ、イヌ、ネコなど)が含まれ、より好ましくは、ヒトが含まれる。
【0085】
本明細書で使用される場合、「有効量」という用語は、有益なまたは所望の結果をもたらすのに十分な化合物(例えば、本願に記載される化合物)の量を指す。有効量は、1回または複数回の投与、塗布または投与量で投与することができ、特定の製剤に限定されることも、投与経路に限定されることも意図していない。本明細書で使用される場合、「処置する」という用語は、状態、疾患、障害などの改善をもたらす、任意の効果、例えば軽減すること、減少させること、モジュレートすること、改善することもしくは排除すること、またはその症状を改善することを含む。
【0086】
本明細書で使用される場合、「医薬組成物」という用語は、活性剤と、組成物をin vivoまたはex vivoでの診断的または治療的使用に特に適したものにする、不活性または活性の担体の組合せを指す。
【0087】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」という用語は、リン酸緩衝食塩溶液、水、エマルジョン(例えば、油/水型もしくは水/油型エマルジョンなど)、およびさまざまな種類の湿潤剤などの標準的な医薬担体のいずれかを指す。組成物はまた、安定剤および保存剤を含むことができる。担体、安定剤およびアジュバントの例については、例えば、Martin、Remington’s Pharmaceutical Sciences、15th Ed.、Mack Publ. Co.、Easton、PA [1975]を参照されたい。
【0088】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される塩」という用語は、対象に投与すると、本願に記載される化合物またはその活性代謝産物もしくは残基を提供することができる、本願に記載される化合物の任意の薬学的に許容される塩(例えば、酸または塩基)を指す。当業者に公知のように、本願の化合物の「塩」は、無機酸または有機酸および無機塩基または有機塩基から得られ得る。例示的な酸としては、それだけに限らないが、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、過塩素酸、フマル酸、マレイン酸、リン酸、グリコール酸、乳酸、サリチル酸、コハク酸、p-トルエンスルホン酸、酒石酸、酢酸、クエン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ギ酸、安息香酸、マロン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、ベンゼンスルホン酸などが挙げられる。シュウ酸などの他の酸も、それ自体は薬学的に許容されないが、本願の化合物およびその薬学的に許容される酸付加塩を得る際の中間体として有用な塩の調製に使用され得る。
【0089】
例示的な塩基としては、それだけに限らないが、アルカリ金属(例えば、ナトリウム)水酸化物、アルカリ土類金属(例えば、マグネシウム)水酸化物、アンモニア、および式NW4
+(式中、WはC1~4アルキルである)の化合物などが挙げられる。
【0090】
例示的な塩としては、それだけに限らないが、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、樟脳酸塩、カンファースルホン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、フルコヘプタン酸塩(flucoheptanoate)、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩(palmoate)、ペクチン酸塩、過硫酸塩、フェニルプロピオン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トシル酸塩、ウンデカン酸塩などが挙げられる。塩の他の例としては、Na+、NH4
+およびNW4
+(式中、WはC1~4アルキル基である)等などの適切なカチオンと複合した本願の化合物のアニオンが挙げられる。
【0091】
治療的使用については、本願の化合物の塩が、薬学的に許容されるとして企図される。しかしながら、薬学的に許容されない酸および塩基の塩も、例えば、薬学的に許容される化合物の調製または精製において用途を見出し得る。
【0092】
本明細書で使用される場合、EGFR(上皮増殖因子受容体、ErbB-1、またはヒトにおけるHER1としても公知)は、Uniprot受入番号P00533(ヒト)のタンパク質、ならびに関連するアイソフォームおよびオルソログを指す。
【0093】
本明細書を通して、組成物が特定の成分を有する、含む(including)もしくは含む(comprising)と記載されている場合、またはプロセスおよび方法が特定のステップを有する、含む(including)もしくは含む(comprising)と記載されている場合、さらに、列挙される成分から本質的になるまたはそれからなる組成物が存在すること、ならびに列挙される処理ステップから本質的になるまたはそれからなる本願によるプロセスおよび方法が存在することが企図される。
【0094】
一般に、パーセンテージを指定する組成物は、特に指定しない限り、重量による。さらに、変数が定義を伴わない場合、変数の前の定義が支配する。
I.タンパク質
【0095】
本願は、ナチュラルキラー細胞上のNKG2D受容体およびCD16受容体、ならびにEGFRに結合する多重特異性結合タンパク質を提供する。多重特異性結合タンパク質は、本明細書に記載される医薬組成物および治療方法に有用である。ナチュラルキラー細胞上のNKG2D受容体およびCD16受容体への多重特異性結合タンパク質の結合によって、腫瘍抗原を発現する腫瘍細胞の破壊に向けたナチュラルキラー細胞の活性が増強される。腫瘍抗原発現腫瘍細胞への多重特異性結合タンパク質の結合によって、これらの細胞をナチュラルキラー細胞に近づけ、ナチュラルキラー細胞による腫瘍細胞の直接的および間接的破壊が促進される。NKG2D、CD16および別の標的に結合する多重特異性結合タンパク質は、国際出願公開第WO2018148445号およびWO2019157366号に開示されており、これらは、参照により本明細書に組み込まれない。一部の例示的な多重特異性結合タンパク質のさらなる説明を以下に提供する。
【0096】
多重特異性結合タンパク質の第1の成分はNKG2D受容体発現細胞に結合する抗原結合部位であり、該細胞は、それだけに限らないが、NK細胞、γδT細胞およびCD8+αβT細胞を含み得る。NKG2Dに結合すると、多重特異性結合タンパク質は、ULBP6およびMICAなどの天然リガンドがNKG2Dに結合してNK細胞を活性化するのを遮断し得る。
【0097】
多重特異性結合タンパク質の第2の成分はEGFRに結合する抗原結合部位である。EGFR発現細胞は、例えば、固形腫瘍、例えば、肺がん、乳がん、腎臓がん、結腸直腸がん、胃がん、脳がん、神経膠腫、膀胱がん、頭頸部がん、膀胱がん、膵臓がんおよび肝臓がん、子宮頸がん、卵巣がんまたは前立腺がんなどの適応症で見出され得る。EGFRに結合する抗原結合部位は、パニツムマブに由来する重鎖可変ドメイン(VH)および軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、EGFRに対する熱安定性を増加させ、それに対する親和性を保持するVHおよびVLにおける変異を有する。
【0098】
多重特異性結合タンパク質の第3の成分は、ナチュラルキラー細胞、マクロファージ、好中球、好酸球、肥満細胞および濾胞樹状細胞を含む白血球の表面上のFc受容体であるCD16を発現する細胞に結合する抗体Fcドメインもしくはその部分または抗原結合部位である。
【0099】
多重特異性結合タンパク質の追加の抗原結合部位は、同じ腫瘍関連抗原(EGFR)に結合してもよい。ある特定の実施形態では、NKG2Dに結合する第1の抗原結合部位はscFvであり、EGFRに結合する第2のおよび追加の抗原結合部位はそれぞれFab断片である。ある特定の実施形態では、NKG2Dに結合する第1の抗原結合部位はscFvであり、EGFRに結合する第2のおよび追加の抗原結合部位はそれぞれscFvである。ある特定の実施形態では、NKG2Dに結合する第1の抗原結合部位はFab断片であり、EGFRに結合する第2のおよび追加の抗原結合部位はそれぞれscFvである。ある特定の実施形態では、NKG2Dに結合する第1の抗原結合部位はFabであり、EGFRに結合する第2のおよび追加の抗原結合部位はそれぞれFab断片である。
【0100】
抗原結合部位はそれぞれ、抗体重鎖可変ドメインおよび抗体軽鎖可変ドメインが組み込まれていてもよく(例えば、抗体のように配置される、または一緒に融合してscFvを形成する)、または抗原結合部位の1つもしくは複数が、単一ドメイン抗体、例えばラクダ抗体のようなVHH抗体もしくは軟骨魚類で見られる抗体のようなVNAR抗体であってもよい。
【0101】
一部の実施形態では、第2の抗原結合部位は、第1の抗原結合部位に存在する軽鎖可変ドメインのアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメインが組み込まれる。
【0102】
本明細書に記載される多重特異性結合タンパク質はさまざまなフォーマットをとることができる。例えば、1つのフォーマットは、第1の免疫グロブリン重鎖、第1の免疫グロブリン軽鎖、第2の免疫グロブリン重鎖および第2の免疫グロブリン軽鎖を含むヘテロ二量体多重特異性抗体である(
図1)。第1の免疫グロブリン重鎖は、第1のFc(ヒンジ-CH2-CH3)ドメインポリペプチド、第1の重鎖可変ドメインおよび必要に応じて、第1のCH1重鎖ドメインを含む。第1の免疫グロブリン軽鎖は、第1の軽鎖可変ドメインおよび必要に応じて、第1の軽鎖定常ドメインを含む。第1の免疫グロブリン軽鎖は、第1の免疫グロブリン重鎖と一緒になって、NKG2Dに結合する抗原結合部位を形成する。第2の免疫グロブリン重鎖は、第2のFc(ヒンジ-CH2-CH3)ドメインポリペプチド、第2の重鎖可変ドメインおよび必要に応じて、第2のCH1重鎖ドメインを含む。第2の免疫グロブリン軽鎖は、第2の軽鎖可変ドメインおよび必要に応じて、第2の軽鎖定常ドメインを含む。第2の免疫グロブリン軽鎖は、第2の免疫グロブリン重鎖と一緒になって、EGFRに結合する抗原結合部位を形成する。一部の実施形態では、第1のFcドメインポリペプチドおよび第2のFcドメインポリペプチドは一緒になって、CD16に結合することができる(
図1)。一部の実施形態では、第1の免疫グロブリン軽鎖は第2の免疫グロブリン軽鎖と同一である。
【0103】
別の例示的なフォーマットは、第1の免疫グロブリン重鎖、第2の免疫グロブリン重鎖および免疫グロブリン軽鎖を含むヘテロ二量体多重特異性抗体を伴う(例えば、
図2A)。一部の実施形態では、第1の免疫グロブリン重鎖は、リンカーまたは抗体ヒンジのいずれかを介して、対形成し、NKG2Dに結合する、またはEGFRに結合する重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインで構成された一本鎖可変領域断片(scFv)に融合した第1のFc(ヒンジ-CH2-CH3)ドメインポリペプチドを含む。第2の免疫グロブリン重鎖は、第2のFc(ヒンジ-CH2-CH3)ドメインポリペプチド、第2の重鎖可変ドメインおよびCH1重鎖ドメインを含む。免疫グロブリン軽鎖は、軽鎖可変ドメインおよび軽鎖定常ドメインを含む。一部の実施形態では、第2の免疫グロブリン重鎖は免疫グロブリン軽鎖と対形成し、NKG2Dに結合する、またはEGFRに結合し、ただし、第1のFcドメインポリペプチドがNKG2Dに結合するscFvに融合する場合、第2の免疫グロブリン重鎖は、EGFRに結合するがNKG2Dに結合しない、およびその逆の免疫グロブリン軽鎖と対形成する。一部の実施形態では、第1の免疫グロブリン重鎖中のscFvはEGFRに結合し、第2の免疫グロブリン重鎖中の重鎖可変ドメインおよび免疫グロブリン軽鎖中の軽鎖可変ドメインは、対形成する場合、NKG2Dに結合する(例えば、
図2E)。一部の実施形態では、第1の免疫グロブリン重鎖中のscFvはNKG2Dに結合し、第2の免疫グロブリン重鎖中の重鎖可変ドメインおよび免疫グロブリン軽鎖中の軽鎖可変ドメインは、対形成する場合、EGFRに結合する。一部の実施形態では、第1のFcドメインポリペプチドおよび第2のFcドメインポリペプチドは一緒になって、CD16に結合することができる(例えば、
図2A)。
【0104】
別の例示的なフォーマットは、第1の免疫グロブリン重鎖および第2の免疫グロブリン重鎖を含むヘテロ二量体多重特異性抗体を伴う(例えば、
図2B)。一部の実施形態では、第1の免疫グロブリン重鎖は、リンカーまたは抗体ヒンジのいずれかを介して、対形成し、NKG2Dに結合する、またはEGFRに結合する重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインで構成された一本鎖可変領域断片(scFv)に融合した第1のFc(ヒンジ-CH2-CH3)ドメインポリペプチドを含む。一部の実施形態では、第2の免疫グロブリン重鎖は、リンカーまたは抗体ヒンジのいずれかを介して、対形成し、NKG2DまたはEGFRに結合する重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインで構成された一本鎖可変領域断片(scFv)に融合した第2のFc(ヒンジ-CH2-CH3)ドメインポリペプチドを含み、ただし、第1のFcドメインポリペプチドがNKG2Dに結合するscFvに融合する場合、第2のFcドメインポリペプチドは、EGFRに結合するがNKG2Dに結合しない、およびその逆のscFvに融合する。一部の実施形態では、第1のFcドメインポリペプチドおよび第2のFcドメインポリペプチドは一緒になって、CD16に結合することができる(例えば、
図2B)。
【0105】
一部の実施形態では、上記の一本鎖可変領域断片(scFv)はヒンジ配列を介して抗体定常ドメインに連結している。一部の実施形態では、ヒンジはアミノ酸Ala-SerまたはGly-Serを含む。一部の実施形態では、scFv(例えば、EGFRに結合するscFvまたはNKG2Dに結合するscFv)および抗体重鎖定常ドメインを接続するヒンジは、アミノ酸Ala-Serを含む。一部の実施形態では、scFv(例えば、EGFRに結合するscFvまたはNKG2Dに結合するscFv)および抗体重鎖定常ドメインを接続するヒンジは、アミノ酸Gly-Serを含む。一部の他の実施形態では、ヒンジはアミノ酸Ala-SerおよびThr-Lys-Glyを含む。ヒンジ配列は、標的抗原への結合の柔軟性を提供し、柔軟性と最適な形状寸法との間のバランスをとることができる。
【0106】
一部の実施形態では、上記の一本鎖可変領域断片(scFv)は重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインを含む。一部の実施形態では、重鎖可変ドメインは軽鎖可変ドメインとジスルフィド架橋を形成して、scFvの安定性を増強する。例えば、ジスルフィド架橋は、重鎖可変ドメインのC44残基と軽鎖可変ドメインのC100残基との間に形成され得、アミノ酸位置はKabatで番号付けされる。一部の実施形態では、重鎖可変ドメインはフレキシブルリンカーを介して軽鎖可変ドメインに連結している。任意の適切なリンカー、例えば、(G4S)4リンカー((GlyGlyGlyGlySer)4(配列番号119))を使用することができる。scFvの一部の実施形態では、重鎖可変ドメインは軽鎖可変ドメインのN末端に位置する。scFvの一部の実施形態では、重鎖可変ドメインは軽鎖可変ドメインのC末端に位置する。
【0107】
本明細書に記載される多重特異性結合タンパク質は、1つまたは複数の追加の抗原結合部位をさらに含むことができる。追加の抗原結合部位(複数可)は、必要に応じてリンカー配列を介して、定常領域CH2ドメインのN末端または定常領域CH3ドメインのC末端に融合し得る。ある特定の実施形態では、追加の抗原結合部位(複数可)は、必要に応じてジスルフィド安定化されている一本鎖可変領域断片(scFv)の形態をとって、四価または三価多重特異性結合タンパク質をもたらす。例えば、多重特異性結合タンパク質は、NKG2Dに結合する第1の抗原結合部位、EGFRに結合する第2の抗原結合部位、EGFRに結合する追加の抗原結合部位、およびCD16に結合するのに十分な抗体定常領域もしくはその部分、またはCD16に結合する第4の抗原結合部位を含む。これらの抗原結合部位のいずれか1つは、Fab断片またはscFv、例えば上記のscFvの形態をとることができる。
【0108】
一部の実施形態では、追加の抗原結合部位は、第2の抗原結合部位とは異なるEGFRのエピトープに結合する。一部の実施形態では、追加の抗原結合部位は、第2の抗原結合部位と同じエピトープに結合する。一部の実施形態では、追加の抗原結合部位は、第2の抗原結合部位と同じ重鎖および軽鎖CDR配列を含む。一部の実施形態では、追加の抗原結合部位は、第2の抗原結合部位と同じ重鎖および軽鎖可変ドメイン配列を含む。一部の実施形態では、追加の抗原結合部位は、第2の抗原結合部位と同じアミノ酸配列を有する。一部の実施形態では、追加の抗原結合部位は、第2の抗原結合部位の重鎖および軽鎖可変ドメイン配列とは異なる重鎖および軽鎖可変ドメイン配列を含む。一部の実施形態では、追加の抗原結合部位は、第2の抗原結合部位の配列と異なるアミノ酸配列を有する。一部の実施形態では、第2の抗原結合部位および追加の抗原結合部位は、異なる腫瘍関連抗原に結合する。一部の実施形態では、第2の抗原結合部位および追加の抗原結合部位は、異なる抗原に結合する。例示的なフォーマットを
図2Cおよび
図2Dに示す。したがって、多重特異性結合タンパク質は、EGFRの二価の結合(bivalent engagement)を提供することができる。多重特異性結合タンパク質によるEGFRの二価の結合は、腫瘍細胞表面上のEGFRを安定化し、腫瘍細胞に対するNK細胞の細胞傷害性を増強することができる。多重特異性結合タンパク質によるEGFRの二価の結合は、腫瘍細胞への多重特異性結合タンパク質のより強力な結合を付与し、それによって、腫瘍細胞に対する、特に低レベルのEGFRを発現している腫瘍細胞に対するNK細胞のより強力な細胞傷害性応答を促進することができる。
【0109】
多重特異性結合タンパク質は、追加のフォーマットをとることができる。一部の実施形態では、多重特異性結合タンパク質は、IgG様形状を維持する三機能性二重特異性抗体である、Triomab形態である。このキメラは、2つの親抗体に由来する、それぞれ1つの軽鎖および1つの重鎖を有する2つの半抗体からなる。
【0110】
一部の実施形態では、多重特異性結合タンパク質はKiH形態であり、ノブイントゥホール(KiH)技術が関与する。KiHは、CH3ドメインを操作して、各重鎖に「ノブ」または「ホール」のいずれかを作製して、ヘテロ二量体化を促進することを伴う。「ノブイントゥホール(KiH)」Fc技術の裏にある概念は、小さな残基を嵩高い残基で置換することにより(例えば、EUナンバリングのT366WCH3A)、「ノブ」を一方のCH3ドメイン(CH3A)に導入することであった。「ノブ」を収容するために、ノブに最も近い隣接残基を小さな残基で置き換えることにより(例えば、T366S/L368A/Y407VCH3B)、相補的な「ホール」面が他方のCH3ドメイン(CH3B)上に作製された。「ホール」変異は、構造に指南されたファージライブラリークリーニングによって最適化された(Atwell S、Ridgway JB、Wells JA、Carter P.、Stable heterodimers from remodeling the domain interface of a homodimer using a phage display library、J. Mol. Biol. (1997) 270(1):26-35)。KiH FcバリアントのX線結晶構造(Elliott JM、Ultsch M、Lee J、Tong R、Takeda K、Spiess C、et al.、Antiparallel conformation of knob and hole aglycosylated half-antibody homodimers is mediated by a CH2-CH3 hydrophobic interaction. J. Mol. Biol. (2014) 426(9):1947-57;Mimoto F、Kadono S、Katada H、Igawa T、Kamikawa T、Hattori K. Crystal structure of a novel asymmetrically engineered Fc variant with improved affinity for FcγRs. Mol. Immunol. (2014) 58(1):132-8)によって、ヘテロ二量体化が、CH3ドメイン間コア界面で立体相補性によって駆動される疎水性相互作用によって熱力学的に好まれる一方で、ノブ-ノブおよびホール-ホール界面は、それぞれ、立体障害および好ましい相互作用の破壊のためにホモ二量体化を好まないことが実証された。
【0111】
一部の実施形態では、多重特異性結合タンパク質は、天然に存在するフレキシブルリンカーを介して2つのモノクローナル抗体の標的結合ドメインを組み合わせて、四価IgG様分子をもたらす、二重可変ドメイン免疫グロブリン(DVD-Ig(商標))形態である。
【0112】
一部の実施形態では、多重特異性結合タンパク質は、直交Fab界面(Ortho-Fab)形態である。ortho-Fab IgG手法(Lewis SM、Wu X、Pustilnik A、Sereno A、Huang F、Rick HL、et al.、Generation of bispecific IgG antibodies by structure-based design of an orthogonal Fab interface. Nat. Biotechnol. (2014) 32(2):191-8)では、構造に基づく領域設計が、他方のFab断片にいかなる変化も与えることなく、一方のFab断片のみにLCおよびHCVH-CH1界面での相補的変異を導入する。
【0113】
一部の実施形態では、多重特異性結合タンパク質は、2-in-1 Igフォーマットである。一部の実施形態では、多重特異性結合タンパク質は、Fcに融合した、標的1および標的2に結合する2つの異なるFab断片を含有するヘテロ二量体構築物である、ES形態である。ヘテロ二量体化はFc中の静電ステアリング変異によって確保される。
【0114】
一部の実施形態では、多重特異性結合タンパク質は、抗原1を標的化するFab断片1がカッパLCを含有し、抗原2を標的化するFab断片2がラムダLCを含有する、ヘテロ二量体化変異によって安定化されたFcに融合した2つの異なるFab断片を有するヘテロ二量体構築物である、κλボディ形態である。
図13Aはκλボディの一形態の例示的な図であり;
図13Bは別のκλボディの例示的な図である。
【0115】
一部の実施形態では、多重特異性結合タンパク質はFab断片アーム交換形態である(重鎖および結合した軽鎖(半分子)を別の分子からの重鎖-軽鎖ペアと交換することによりFabアームを交換する抗体は、二重特異性抗体をもたらす)。
【0116】
一部の実施形態では、多重特異性結合タンパク質はSEEDボディ形態である。鎖交換操作ドメイン(SEED)プラットフォームは、天然抗体の治療用途を拡大する機能であり、非対称および二重特異性抗体様分子を生成するために設計された。このタンパク質操作プラットフォームは、保存されたCH3ドメイン内の免疫グロブリンの構造的に関連する配列の交換に基づく。SEED設計は、AGおよびGA SEED CH3ドメインのホモ二量体化を退ける一方で、AG/GAヘテロ二量体の効率的な生成を可能にする(Muda M. et al.、Protein Eng. Des. Sel. (2011、24(5):447-54))。
【0117】
一部の実施形態では、多重特異性結合タンパク質はLuZ-Y形態である、そこでは、2つの異なるHCのヘテロ二量体化を誘導するためにロイシンジッパーが使用される(Wranik、BJ. et al.、J. Biol. Chem. (2012)、287:43331-9)。
【0118】
一部の実施形態では、多重特異性結合タンパク質はCov-Xボディ形態である。二重特異性CovXボディでは、2つの異なるペプチドが分岐アゼチジノンリンカーを使用して結合されて、部位特異的に温和な条件下で足場抗体に融合されている。ファーマコフォアは機能的活性を担う一方、抗体足場は長い半減期およびIg様分布を与える。ファーマコフォアは、化学的に最適化することができる、または他のファーマコフォアで置き換えて、最適化されたもしくは特有の二重特異的抗体を生成することができる(Doppalapudi VR et al.、PNAS (2010)、107(52);22611-22616)。
【0119】
一部の実施形態では、多重特異性結合タンパク質は、Fcに融合している、標的1に結合するFab断片および標的2に結合するscFabを含む、Oasc-Fabヘテロ二量体形態である。ヘテロ二量体化は、Fc中の変異によって確保される。
【0120】
一部の実施形態では、多重特異性結合タンパク質は、抗原1および2に結合する2つの異なるFab断片、ならびにヘテロ二量体化変異によって安定化されたFcを含有するヘテロ二量体構築物である、DuetMab形態である。Fab断片1および2は、正しいLCおよびHCの対形成を確保する示差的S-S架橋を含有する。
【0121】
一部の実施形態では、多重特異性結合タンパク質は、ヘテロ二量体化によって安定化されたFcに融合した、標的1および2に結合する2つの異なるFab断片を有するヘテロ二量体構築物である、CrossmAb形態である。CLおよびCH1ドメイン、ならびにVHおよびVLドメインが切り替えられ、例えば、CH1がVLとインフレームで融合しており、CLがVHとインフレームで融合している。
【0122】
一部の実施形態では、多重特異性結合タンパク質は、抗原2に結合するFab断片が、抗原1に結合するFab断片のHCのN末端に融合しているホモ二量体構築物である、Fit-Ig形態である。構築物は野生型Fcを含有する。
【0123】
多重特異性結合タンパク質の個々の成分を下記により詳細に記載する。
NKG2D結合部位
【0124】
ナチュラルキラー細胞上のNKG2D受容体およびCD16受容体ならびにEGFRへの結合の際に、多重特異性結合タンパク質は、1種より多くのNK活性化受容体と結合することができ、NKG2Dへの天然リガンドの結合を遮断し得る。一部の実施形態では、タンパク質は、ヒトならびにげっ歯類およびカニクイザルなどの他の種のNK細胞を刺激することができる。一部の実施形態では、タンパク質は、ヒトならびにカニクイザルなどの他の種のNK細胞を刺激することができる。
【0125】
表1は、組み合わせて、NKG2Dに結合することができる、重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインのペプチド配列を列挙している。一部の実施形態では、重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインはFabフォーマットに配置される。一部の実施形態では、重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインは一緒に融合して、scFvを形成する。
【0126】
表1に列挙されるNKG2D結合部位は、NKG2Dに対する結合親和性が異なり得るにもかかわらず、全てヒトNK細胞を活性化する。
【0127】
特に指示しない限り、表1に提供されるCDR配列はKabatナンバリングで決定される。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【表1-6】
【表1-7】
【表1-8】
【表1-9】
【0128】
ある特定の実施形態では、NKG2D(例えば、ヒトNKG2D)に結合する第1の抗原結合部位は、表1に開示される抗体のVHと少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一のアミノ酸配列を含む抗体重鎖可変ドメイン(VH)および表1に開示される同じ抗体のVLと少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一のアミノ酸配列を含む抗体軽鎖可変ドメイン(VL)を含む。ある特定の実施形態では、第1の抗原結合部位は、表1に開示される抗体のVHおよびVL配列の、Kabat(Kabat et al.、(1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest、NIH Publication No. 91-3242、Bethesda参照)、Chothia(例えば、Chothia C & Lesk A M、(1987)、J. Mol. Biol. 196: 901-917参照)、MacCallum(MacCallum R M et al.、(1996) J. Mol. Biol. 262: 732-745参照)または当技術分野において公知の任意の他のCDR決定方法で決定される、重鎖CDR1、CDR2およびCDR3ならびに軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3を含む。ある特定の実施形態では、第1の抗原結合部位は、表1に開示される抗体の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3ならびに軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3を含む。
【0129】
ある特定の実施形態では、NKG2Dに結合する第1の抗原結合部位は、例えば、配列番号1と少なくとも90%(例えば、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一のアミノ酸配列を有する、ならびに/または配列番号1のCDR1(配列番号2)、CDR2(配列番号3)およびCDR3(配列番号4)配列と同一のアミノ酸配列を組み込むことによって、配列番号1に由来する重鎖可変ドメインを含む。配列番号1に関連する重鎖可変ドメインをさまざまな軽鎖可変ドメインと連結して、NKG2D結合部位を形成することができる。例えば、配列番号1に関連する重鎖可変ドメインが組み込まれる第1の抗原結合部位は、配列番号5、6、7、8、9、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25および46に由来する配列から選択される軽鎖可変ドメインがさらに組み込まれていてもよい。例えば、第1の抗原結合部位は、配列番号1と少なくとも90%(例えば、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一のアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメインならびに配列番号5、6、7、8、9、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25および46から選択される配列のいずれか1つと少なくとも90%(例えば、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一のアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメインが組み込まれる。
【0130】
ある特定の実施形態では、NKG2Dに結合する第1の抗原結合部位は、配列番号26のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一のアミノ酸配列を含むVHおよび配列番号32と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一のアミノ酸配列を含むVLを含む。ある特定の実施形態では、VHは、それぞれ、配列番号27または28、29および30または31(例えば、それぞれ、配列番号27、29および30、またはそれぞれ、配列番号28、29および31)のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2およびCDR3を含む。ある特定の実施形態では、VLは、それぞれ、配列番号33、34および35のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2およびCDR3を含む。ある特定の実施形態では、第1の抗原結合部位は、(a)それぞれ、配列番号27または28、29および30または31(例えば、それぞれ、配列番号27、29および30、またはそれぞれ、配列番号28、29および31)のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2およびCDR3を含むVH;ならびに(b)それぞれ、配列番号33、34および35のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2およびCDR3を含むVLを含む。
【0131】
ある特定の実施形態では、NKG2Dに結合する第1の抗原結合部位は、配列番号36のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一のアミノ酸配列を含むVHおよび配列番号42と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一のアミノ酸配列を含むVLを含む。ある特定の実施形態では、VHは、それぞれ、配列番号37または38、39および40または41(例えば、それぞれ、配列番号37、39および40、またはそれぞれ、配列番号38、39および41)のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2およびCDR3を含む。ある特定の実施形態では、VLは、それぞれ、配列番号43、44および45のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2およびCDR3を含む。ある特定の実施形態では、第1の抗原結合部位は、(a)それぞれ、配列番号37または38、39および40または41(例えば、それぞれ、配列番号37、39および40、またはそれぞれ、配列番号38、39および41)のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2およびCDR3を含むVH;ならびに(b)それぞれ、配列番号43、44および45のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2およびCDR3を含むVLを含む。
【0132】
ある特定の実施形態では、NKG2Dに結合する第1の抗原結合部位は、配列番号47のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一のアミノ酸配列を含むVHおよび配列番号49と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一のアミノ酸配列を含むVLを含む。ある特定の実施形態では、VHは、それぞれ、配列番号27、29および48のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2およびCDR3を含む。ある特定の実施形態では、VLは、それぞれ、配列番号50、34および51のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2およびCDR3を含む。ある特定の実施形態では、第1の抗原結合部位は、(a)それぞれ、配列番号27、29および48のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2およびCDR3を含むVH;ならびに(b)それぞれ、配列番号50、34および51のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2およびCDR3を含むVLを含む。
【0133】
ある特定の実施形態では、NKG2Dに結合する第1の抗原結合部位は、配列番号52のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一のアミノ酸配列を含むVHおよび配列番号58と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一のアミノ酸配列を含むVLを含む。ある特定の実施形態では、VHは、それぞれ、配列番号53または54、55および56または57(例えば、それぞれ、配列番号53、55および56、またはそれぞれ、配列番号54、55および57)のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2およびCDR3を含む。ある特定の実施形態では、VLは、それぞれ、配列番号59、60および61のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2およびCDR3を含む。ある特定の実施形態では、第1の抗原結合部位は、(a)それぞれ、配列番号53または54、55および56または57(例えば、それぞれ、配列番号53、55および56、またはそれぞれ、配列番号54、55および57)のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2およびCDR3を含むVH;ならびに(b)それぞれ、配列番号59、60および61のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2およびCDR3を含むVLを含む。
【0134】
ある特定の実施形態では、NKG2Dに結合する第1の抗原結合部位は、配列番号62のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一のアミノ酸配列を含むVHおよび配列番号68と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一のアミノ酸配列を含むVLを含む。ある特定の実施形態では、VHは、それぞれ、配列番号63または64、65および66または67(例えば、それぞれ、配列番号63、65および66、またはそれぞれ、配列番号64、65および67)のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2およびCDR3を含む。ある特定の実施形態では、VLは、それぞれ、配列番号59、60および69のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2およびCDR3を含む。ある特定の実施形態では、第1の抗原結合部位は、(a)それぞれ、配列番号63または64、65および66または67(例えば、それぞれ、配列番号63、65および66、またはそれぞれ、配列番号64、65および67)のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2およびCDR3を含むVH;ならびに(b)それぞれ、配列番号59、60および69のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2およびCDR3を含むVLを含む。
【0135】
ある特定の実施形態では、NKG2Dに結合する第1の抗原結合部位は、配列番号89のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一のアミノ酸配列を含むVHおよび配列番号92と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一のアミノ酸配列を含むVLを含む。ある特定の実施形態では、VHは、それぞれ、配列番号53または54、55および90または91(例えば、それぞれ、配列番号53、55および90、またはそれぞれ、配列番号54、55および91)のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2およびCDR3を含む。ある特定の実施形態では、VLは、それぞれ、配列番号93、44および94のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2およびCDR3を含む。ある特定の実施形態では、第1の抗原結合部位は、(a)それぞれ、配列番号53または54、55および90または91(例えば、それぞれ、配列番号53、55および90、またはそれぞれ、配列番号54、55および91)のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2およびCDR3を含むVH;ならびに(b)それぞれ、配列番号93、44および94のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2およびCDR3を含むVLを含む。
【0136】
ある特定の実施形態では、NKG2Dに結合する第1の抗原結合部位は、配列番号70のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一のアミノ酸配列を含むVHおよび配列番号75と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一のアミノ酸配列を含むVLを含む。ある特定の実施形態では、VHは、それぞれ、配列番号71または115、72および73または74(例えば、それぞれ、配列番号71、72および73、またはそれぞれ、配列番号115、72および74)のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2およびCDR3を含む。ある特定の実施形態では、VLは、それぞれ、配列番号76、77および78のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2およびCDR3を含む。ある特定の実施形態では、第1の抗原結合部位は、(a)それぞれ、配列番号71または115、72および73または74(例えば、それぞれ、配列番号71、72および73、またはそれぞれ、配列番号115、72および74)のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2およびCDR3を含むVH;ならびに(b)それぞれ、配列番号76、77および78のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2およびCDR3を含むVLを含む。
【0137】
ある特定の実施形態では、NKG2Dに結合する第1の抗原結合部位は、配列番号79のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一のアミノ酸配列を含むVHおよび配列番号85と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一のアミノ酸配列を含むVLを含む。ある特定の実施形態では、VHは、それぞれ、配列番号80または81、82および83または84(例えば、それぞれ、配列番号80、82および83、またはそれぞれ、配列番号81、82および84)のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2およびCDR3を含む。ある特定の実施形態では、VLは、それぞれ、配列番号86、77および87のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2およびCDR3を含む。ある特定の実施形態では、第1の抗原結合部位は、(a)それぞれ、配列番号80または81、82および83または84(例えば、それぞれ、配列番号80、82および83、またはそれぞれ、配列番号81、82および84)のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2およびCDR3を含むVH;ならびに(b)それぞれ、配列番号86、77および87のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2およびCDR3を含むVLを含む。
【0138】
ある特定の実施形態では、NKG2Dに結合する第1の抗原結合部位は、配列番号95のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一のアミノ酸配列を含むVHおよび配列番号85と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一のアミノ酸配列を含むVLを含む。ある特定の実施形態では、VHは、それぞれ、配列番号80または81、82および96または97(例えば、それぞれ、配列番号80、82および96、またはそれぞれ、配列番号81、82および97)のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2およびCDR3を含む。ある特定の実施形態では、VLは、それぞれ、配列番号86、77および87のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2およびCDR3を含む。ある特定の実施形態では、第1の抗原結合部位は、(a)それぞれ、配列番号80または81、82および96または97(例えば、それぞれ、配列番号80、82および96、またはそれぞれ、配列番号81、82および97)のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2およびCDR3を含むVH;ならびに(b)それぞれ、配列番号86、77および87のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2およびCDR3を含むVLを含む。
【0139】
ある特定の実施形態では、NKG2Dに結合する第1の抗原結合部位は、配列番号98のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一のアミノ酸配列を含むVHおよび配列番号85と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一のアミノ酸配列を含むVLを含む。ある特定の実施形態では、VHは、それぞれ、配列番号80または81、82および99または100(例えば、それぞれ、配列番号80、82および99、またはそれぞれ、配列番号81、82および100)のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2およびCDR3を含む。ある特定の実施形態では、VLは、それぞれ、配列番号86、77および87のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2およびCDR3を含む。ある特定の実施形態では、第1の抗原結合部位は、(a)それぞれ、配列番号80または81、82および99または100(例えば、それぞれ、配列番号80、82および99、またはそれぞれ、配列番号81、82および100)のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2およびCDR3を含むVH;ならびに(b)それぞれ、配列番号86、77および87のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2およびCDR3を含むVLを含む。
【0140】
ある特定の実施形態では、NKG2Dに結合する第1の抗原結合部位は、配列番号101のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一のアミノ酸配列を含むVHおよび配列番号85と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一のアミノ酸配列を含むVLを含む。ある特定の実施形態では、VHは、それぞれ、配列番号80または81、82および102または103(例えば、それぞれ、配列番号80、82および102、またはそれぞれ、配列番号81、82および103)のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2およびCDR3を含む。ある特定の実施形態では、VLは、それぞれ、配列番号86、77および87のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2およびCDR3を含む。ある特定の実施形態では、第1の抗原結合部位は、(a)それぞれ、配列番号80または81、82および102または103(例えば、それぞれ、配列番号80、82および102、またはそれぞれ、配列番号81、82および103)のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2およびCDR3を含むVH;ならびに(b)それぞれ、配列番号86、77および87のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2およびCDR3を含むVLを含む。
【0141】
ある特定の実施形態では、NKG2Dに結合する第1の抗原結合部位は、配列番号104のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一のアミノ酸配列を含むVHおよび配列番号85と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一のアミノ酸配列を含むVLを含む。ある特定の実施形態では、VHは、それぞれ、配列番号80または81、82および105または106(例えば、それぞれ、配列番号80、82および105、またはそれぞれ、配列番号81、82および106)のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2およびCDR3を含む。ある特定の実施形態では、VLは、それぞれ、配列番号86、77および87のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2およびCDR3を含む。ある特定の実施形態では、第1の抗原結合部位は、(a)それぞれ、配列番号80または81、82および105または106(例えば、それぞれ、配列番号80、82および105、またはそれぞれ、配列番号81、82および106)のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2およびCDR3を含むVH;ならびに(b)それぞれ、配列番号86、77および87のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2およびCDR3を含むVLを含む。
【0142】
ある特定の実施形態では、NKG2Dに結合する第1の抗原結合部位は、配列番号107のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一のアミノ酸配列を含むVHおよび配列番号85と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一のアミノ酸配列を含むVLを含む。ある特定の実施形態では、VHは、それぞれ、配列番号80または81、82および108または109(例えば、それぞれ、配列番号80、82および108、またはそれぞれ、配列番号81、82および109)のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2およびCDR3を含む。ある特定の実施形態では、VLは、それぞれ、配列番号86、77および87のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2およびCDR3を含む。ある特定の実施形態では、第1の抗原結合部位は、(a)それぞれ、配列番号80または81、82および108または109(例えば、それぞれ、配列番号80、82および108、またはそれぞれ、配列番号81、82および109)のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2およびCDR3を含むVH;ならびに(b)それぞれ、配列番号86、77および87のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2およびCDR3を含むVLを含む。
【0143】
ある特定の実施形態では、NKG2Dに結合する第1の抗原結合部位は、配列番号110のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一のアミノ酸配列を含むVHおよび配列番号85と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一のアミノ酸配列を含むVLを含む。ある特定の実施形態では、VHは、それぞれ、配列番号80または81、82および111または112(例えば、それぞれ、配列番号80、82および111、またはそれぞれ、配列番号81、82および112)のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2およびCDR3を含む。ある特定の実施形態では、VLは、それぞれ、配列番号86、77および87のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2およびCDR3を含む。ある特定の実施形態では、第1の抗原結合部位は、(a)それぞれ、配列番号80または81、82および111または112(例えば、それぞれ、配列番号80、82および111、またはそれぞれ、配列番号81、82および112)のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2およびCDR3を含むVH;ならびに(b)それぞれ、配列番号86、77および87のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2およびCDR3を含むVLを含む。
【0144】
ある特定の実施形態では、NKG2Dに結合する第1の抗原結合部位は、配列番号113のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一のアミノ酸配列を含むVHおよび配列番号114と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一のアミノ酸配列を含むVLを含む。
【0145】
ある特定の実施形態では、NKG2Dに結合する第1の抗原結合部位は、配列番号116のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一のアミノ酸配列を含むVHおよび配列番号117と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一のアミノ酸配列を含むVLを含む。
【0146】
多重特異性結合タンパク質はNKG2D発現細胞に結合することができ、これらの細胞は、それだけに限らないが、NK細胞、γδT細胞およびCD8+αβT細胞を含む。NKG2Dに結合すると、多重特異性結合タンパク質は、ULBP6およびMICAなどの天然リガンドがNKG2Dに結合してNK細胞を活性化するのを遮断し得る。
【0147】
多重特異性結合タンパク質は、ナチュラルキラー細胞、マクロファージ、好中球、好酸球、肥満細胞および濾胞樹状細胞を含む白血球の表面上のFc受容体であるCD16を発現している細胞に結合する。本開示に記載されるタンパク質は、2nM~120nM、例えば、2nM~110nM、2nM~100nM、2nM~90nM、2nM~80nM、2nM~70nM、2nM~60nM、2nM~50nM、2nM~40nM、2nM~30nM、2nM~20nM、2nM~10nM、約15nM、約14nM、約13nM、約12nM、約11nM、約10nM、約9nM、約8nM、約7nM、約6nM、約5nM、約4.5nM、約4nM、約3.5nM、約3nM、約2.5nM、約2nM、約1.5nM、約1nM、約0.5nM~約1nM、約1nM~約2nM、約2nM~3nM、約3nM~4nM、約4nM~約5nM、約5nM~約6nM、約6nM~約7nM、約7nM~約8nM、約8nM~約9nM、約9nM~約10nM、約1nM~約10nM、約2nM~約10nM、約3nM~約10nM、約4nM~約10nM、約5nM~約10nM、約6nM~約10nM、約7nM~約10nMまたは約8nM~約10nMの間のKDの親和性でNKG2Dに結合する。一部の実施形態では、NKG2D結合部位は、10~62nMのKDでNKG2Dに結合する。
EGFR結合部位
【0148】
一態様では、本開示は、ナチュラルキラー細胞上のNKG2D受容体およびCD16受容体、ならびにEGFRに結合する多重特異性結合タンパク質であって、EGFR結合部位が、パニツムマブに由来する重鎖可変ドメイン(VH)および軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、VHおよびVLに変異を有する、多重特異性結合タンパク質を提供する。本開示に記載されるVHおよびVL配列において個々にまたは組み合わせて企図される変異は、Chothiaナンバリングスキーム下で、VHにおけるS62R、VLにおけるD92R、および/またはVLにおけるF87Yを含む。これらの変異が、抗原結合部位の熱安定性を増加させ、EGFRに対するその親和性を保持することを発見した。表2は、EGFRに結合することができる、重鎖可変ドメイン、軽鎖可変ドメインおよびscFv配列の一部の例示的な配列を列挙している。CDR配列は、示される通りChothiaナンバリング下で同一である。太字の残基は変異した残基を示し、イタリック体の配列はポリペプチドリンカーを示す。
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【表2-4】
【表2-5】
【0149】
ある特定の実施形態では、第2の抗原結合部位のアミノ酸配列は、VL(例えば、配列番号139、147または150)のC末端に追加のアルギニン(R)残基を含む。ある特定の実施形態では、第2の抗原結合部位は、VLアミノ酸配列のC末端に追加のアルギニン(R)残基を含有するVLアミノ酸配列を含むscFvを含む。
【0150】
ある特定の実施形態では、第2の抗原結合部位のアミノ酸配列は、パニツムマブの配列と比較して、Chothiaナンバリングスキーム下で、VHにおけるS62R、VLにおけるD92R、およびVLにおけるF87Yから選択される1つまたは複数の変異を含む。ある特定の実施形態では、EGFR(例えば、ヒトEGFR)に結合する第2の抗原結合部位は、表1に開示されるEGFR-バインダー1のVHと少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%)同一のアミノ酸配列を含む抗体重鎖可変ドメイン(VH)および表1に開示されるEGFR-バインダー1のVLと少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%)同一のアミノ酸配列を含む抗体軽鎖可変ドメイン(VL)を含む。ある特定の実施形態では、EGFR(例えば、ヒトEGFR)に結合する第2の抗原結合部位は、表2に開示されるEGFR-バインダー2、EGFR-バインダー3またはEGFR-バインダー4のVHと少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一のアミノ酸配列を含む抗体重鎖可変ドメイン(VH)および表2に開示されるEGFR-バインダー2、EGFR-バインダー3またはEGFR-バインダー4のVLと少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一のアミノ酸配列を含む抗体軽鎖可変ドメイン(VL)を含む。ある特定の実施形態では、第2の抗原結合部位は、表2に開示されるEGFR-バインダー2、EGFR-バインダー3またはEGFR-バインダー4のVHおよびVL配列の、Kabat(Kabat et al.、(1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest、NIH Publication No. 91-3242、Bethesda参照)、Chothia(例えば、Chothia C & Lesk A M、(1987)、J. Mol. Biol. 196: 901-917参照)、MacCallum(MacCallum R M et al.、(1996) J. Mol. Biol. 262: 732-745参照)または当技術分野において公知の任意の他のCDR決定方法で決定される、重鎖CDR1、CDR2およびCDR3ならびに軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3を含む。ある特定の実施形態では、第2の抗原結合部位は、表2に開示されるEGFR-バインダー2、EGFR-バインダー3またはEGFR-バインダー4の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3ならびに軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3を含む。
【0151】
ある特定の実施形態では、第2の抗原結合部位のアミノ酸配列は、パニツムマブの配列と比較して、Chothiaナンバリングスキーム下で、VHにおけるS62RおよびVLにおけるF87Yの変異を含む。ある特定の実施形態では、EGFRに結合する第2の抗原結合部位は、配列番号135と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%)同一のアミノ酸配列を含むVHおよび配列番号139と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%)同一のアミノ酸配列を含むVLを含む。ある特定の実施形態では、EGFRに結合する第2の抗原結合部位は、配列番号145と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH)および配列番号147と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL)を含む。ある特定の実施形態では、第2の抗原結合部位は、表2に開示されるEGFR-バインダー2のVHおよびVL配列の、Kabat(Kabat et al.、(1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest、NIH Publication No. 91-3242、Bethesda参照)、Chothia(例えば、Chothia C & Lesk A M、(1987)、J. Mol. Biol. 196: 901-917参照)、MacCallum(MacCallum R M et al.、(1996) J. Mol. Biol. 262: 732-745参照)または当技術分野において公知の任意の他のCDR決定方法で決定される、重鎖CDR1、CDR2およびCDR3ならびに軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3を含む。ある特定の実施形態では、VHは、それぞれ、配列番号136、146および138のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2およびCDR3を含む。ある特定の実施形態では、VLは、それぞれ、配列番号140、141および142のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2およびCDR3を含む。ある特定の実施形態では、第2の抗原結合部位は、(a)それぞれ、配列番号136、146および138のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2およびCDR3を含むVH;ならびに(b)それぞれ、配列番号140、141および142のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2およびCDR3を含むVLを含む。ある特定の実施形態では、第2の抗原結合部位は、scFvとして存在し、scFvは、配列番号148または149と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一のアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態では、第2の抗原結合部位は、scFvとして存在し、scFvは、配列番号148または149と同一のアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態では、第2の抗原結合部位は、scFvとして存在し、scFvは、配列番号148と同一のアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態では、第2の抗原結合部位は、scFvとして存在し、scFvは、配列番号149と同一のアミノ酸配列を含む。
【0152】
ある特定の実施形態では、第2の抗原結合部位のアミノ酸配列は、パニツムマブの配列と比較して、Chothiaナンバリングスキーム下で、VHにおけるS62R、VLにおけるF87Y、およびVLにおけるD92Rの変異を含む。ある特定の実施形態では、EGFRに結合する第2の抗原結合部位は、配列番号135と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%)同一のアミノ酸配列を含むVHおよび配列番号139と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%)同一のアミノ酸配列を含むVLを含む。ある特定の実施形態では、EGFRに結合する第2の抗原結合部位は、配列番号145と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH)および配列番号150と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL)を含む。ある特定の実施形態では、EGFRに結合する第2の抗原結合部位は、配列番号170を含む重鎖可変ドメイン(VH)および配列番号171を含む軽鎖可変ドメイン(VL)を含む。ある特定の実施形態では、第2の抗原結合部位は、表2に開示されるEGFR-バインダー3のVHおよびVL配列の、Kabat(Kabat et al.、(1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest、NIH Publication No. 91-3242、Bethesda参照)、Chothia(例えば、Chothia C & Lesk A M、(1987)、J. Mol. Biol. 196: 901-917参照)、MacCallum(MacCallum R M et al.、(1996) J. Mol. Biol. 262: 732-745参照)または当技術分野において公知の任意の他のCDR決定方法で決定される、重鎖CDR1、CDR2およびCDR3ならびに軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3を含む。ある特定の実施形態では、VHは、それぞれ、配列番号136、146および138のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2およびCDR3を含む。ある特定の実施形態では、VLは、それぞれ、配列番号140、141および151のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2およびCDR3を含む。ある特定の実施形態では、第2の抗原結合部位は、(a)それぞれ、配列番号136、146および138のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2およびCDR3を含むVH;ならびに(b)それぞれ、配列番号140、141および151のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2およびCDR3を含むVLを含む。ある特定の実施形態では、第2の抗原結合部位は、scFvとして存在し、scFvは、配列番号152または153と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一のアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態では、第2の抗原結合部位は、scFvとして存在し、scFvは、配列番号152または153と同一のアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態では、第2の抗原結合部位は、scFvとして存在し、scFvは、配列番号152と同一のアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態では、第2の抗原結合部位は、scFvとして存在し、scFvは、配列番号153と同一のアミノ酸配列を含む。
【0153】
ある特定の実施形態では、第2の抗原結合部位のアミノ酸配列は、パニツムマブの配列と比較して、Chothiaナンバリングスキーム下で、VLにおけるF87Y、およびVLにおけるD92Rの変異を含む。ある特定の実施形態では、EGFRに結合する第2の抗原結合部位は、配列番号135と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%)同一のアミノ酸配列を含むVHおよび配列番号139と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%)同一のアミノ酸配列を含むVLを含む。ある特定の実施形態では、EGFRに結合する第2の抗原結合部位は、配列番号135と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH)および配列番号150と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL)を含む。ある特定の実施形態では、第2の抗原結合部位は、表2に開示されるEGFR-バインダー4のVHおよびVL配列の、Kabat(Kabat et al.、(1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest、NIH Publication No. 91-3242、Bethesda参照)、Chothia(例えば、Chothia C & Lesk A M、(1987)、J. Mol. Biol. 196: 901-917参照)、MacCallum(MacCallum R M et al.、(1996) J. Mol. Biol. 262: 732-745参照)または当技術分野において公知の任意の他のCDR決定方法で決定される、重鎖CDR1、CDR2およびCDR3ならびに軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3を含む。ある特定の実施形態では、VHは、それぞれ、配列番号136、137および138のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2およびCDR3を含む。ある特定の実施形態では、VLは、それぞれ、配列番号140、141および151のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2およびCDR3を含む。ある特定の実施形態では、第2の抗原結合部位は、(a)それぞれ、配列番号136、137および138のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2およびCDR3を含むVH;ならびに(b)それぞれ、配列番号140、141および151のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2およびCDR3を含むVLを含む。ある特定の実施形態では、第2の抗原結合部位は、scFvとして存在し、scFvは、配列番号154または155と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一のアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態では、第2の抗原結合部位は、scFvとして存在し、scFvは、配列番号154と同一のアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態では、第2の抗原結合部位は、scFvとして存在し、scFvは、配列番号155と同一のアミノ酸配列を含む。
【0154】
ある特定の実施形態では、第2の抗原結合部位のアミノ酸配列は、パニツムマブの配列と比較して、Chothiaナンバリングスキーム下で、VLにおけるF87Y、およびVLにおけるD92R、および必要に応じてVHにおけるS62Rの変異を含む。ある特定の実施形態では、EGFRに結合する第2の抗原結合部位は、配列番号135と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%)同一のアミノ酸配列を含むVHおよび配列番号139と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%)同一のアミノ酸配列を含むVLを含む。ある特定の実施形態では、EGFRに結合する第2の抗原結合部位は、配列番号156と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH)および配列番号150と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL)を含む。ある特定の実施形態では、第2の抗原結合部位は、表2に開示されるコンセンサスVHおよびVL配列の、Kabat(Kabat et al.、(1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest、NIH Publication No. 91-3242、Bethesda参照)、Chothia(例えば、Chothia C & Lesk A M、(1987)、J. Mol. Biol. 196: 901-917参照)、MacCallum(MacCallum R M et al.、(1996) J. Mol. Biol. 262: 732-745参照)または当技術分野において公知の任意の他のCDR決定方法で決定される、重鎖CDR1、CDR2およびCDR3ならびに軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3を含む。ある特定の実施形態では、VHは、それぞれ、配列番号136、157および138のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2およびCDR3を含む。ある特定の実施形態では、VLは、それぞれ、配列番号140、141および151のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2およびCDR3を含む。ある特定の実施形態では、第2の抗原結合部位は、(a)それぞれ、配列番号136、157および138のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2およびCDR3を含むVH;ならびに(b)それぞれ、配列番号140、141および151のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2およびCDR3を含むVLを含む。ある特定の実施形態では、第2の抗原結合部位は、scFvとして存在し、scFvは、配列番号158または159と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一のアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態では、第2の抗原結合部位は、scFvとして存在し、scFvは、配列番号158と同一のアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態では、第2の抗原結合部位は、scFvとして存在し、scFvは、配列番号159と同一のアミノ酸配列を含む。
【0155】
あるいは、EGFR、そのアイソフォーム、そのバリアント、その成熟細胞外断片、またはEGFRのドメインを含有する断片のアミノ酸配列への結合についてスクリーニングすることにより、EGFRに結合することができる新規な抗原結合部位を同定することができる。
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【0156】
一部の実施形態では、配列番号160~163によって定義されるアミノ酸配列、そのバリアント、その成熟細胞外断片、またはEGFRのドメインを含有する断片への結合についてスクリーニングすることにより、EGFRに結合することができる新規な抗原結合部位を同定することができる。
【0157】
前記実施形態のそれぞれでは、EGFRに結合するscFv、VHおよび/またはVL配列が、EGFRに結合するそれらの能力に影響を及ぼすことなく、VHおよび/またはVLのフレームワーク領域にアミノ酸の変更(例えば、少なくとも1、2、3、4、5または10のアミノ酸置換、欠失または付加)を含有し得ることが本明細書で企図される。例えば、EGFRに結合するscFv、VHおよび/またはVL配列が、システインヘテロ二量体化変異を含有して、scFvのVHとVLとの間のジスルフィド架橋の形成を促進し得ることが本明細書で企図される。
【0158】
ある特定の実施形態では、本明細書に開示される多重特異性結合タンパク質の第2の抗原結合部位は、10nM、9nM、8nM、7nM、6nM、5nMもしくは4nM未満またはそれに等しいKD値(それよりも大きいまたはそれに等しい親和性)でヒトEGFRまたはその細胞外領域に結合する。ある特定の実施形態では、本出願の抗原結合部位は、4nM未満またはそれに等しいKD値(それよりも大きいまたはそれに等しい親和性)でヒトEGFRまたはその細胞外領域に結合する。ある特定の実施形態では、本出願の抗原結合部位は、約2.0nM、2.1nM、2.2nM、2.3nM、2.4nM、2.5nM、2.6nM、2.7nM、2.8nM、2.9nM、3.0nM、3.1nM、3.2nM、3.3nM、3.4nM、3.5nM、3.6nM、3.7nM、3.8nM、3.9nM、4.0nM、4.1nM、4.2nM、4.3nM、4.4nM、4.5nM、4.6nM、4.7nM、4.8nM、4.9nMもしくは5.0nM未満またはそれに等しいKD値(それよりも大きいまたはそれに等しい親和性)でヒトEGFRまたはその細胞外領域に結合する。ある特定の実施形態では、本出願の抗原結合部位は、約1.0~3.5nM、1.0~4.0nM、1.0~4.5nM、1.0~5.0nM、1.5~3.5nM、1.5~4.0nM、1.5~4.5nM、1.5~5.0nM、2.0~3.5nM、2.0~4.0nM、2.0~4.5nM、2.0~5.0nM、2.5~3.5nM、2.5~4.0nM、2.5~4.5nM、2.5~5.0nM、3.0~3.5nM、3.0~4.0nM、3.0~4.5nMまたは3.0~5.0nMの範囲のKD値でヒトEGFRまたはその細胞外領域に結合する。
【0159】
ある特定の実施形態では、本明細書に開示される多重特異性結合タンパク質の第2の抗原結合部位は、10nM、9nM、8nM、7nM、6nM、5nMもしくは4nM未満またはそれに等しいKD値(それよりも大きいまたはそれに等しい親和性)でアカゲザルEGFRまたはその細胞外領域に結合する。ある特定の実施形態では、本出願の抗原結合部位は、約1~10nM、1~6nM、2~10nM、2~6nM、3~10nM、3~6nM、4~10nM、4~6nM、5~10nMまたは5~6nMの範囲のKD値でアカゲザルEGFRまたはその細胞外領域に結合する。
【0160】
ある特定の実施形態では、本明細書に開示される多重特異性結合タンパク質の第2の抗原結合部位は、配列番号135および139のVHおよびVL配列を有する対応する抗原結合部位よりも高い熱安定性を有し、ここで、第2の抗原結合部位は、VHにおけるG44C変異およびVLにおけるG100C変異を含まない。ある特定の実施形態では、本明細書に開示される多重特異性結合タンパク質の第2の抗原結合部位は、配列番号143および144のアミノ酸配列を有する対応する抗原結合部位よりも高い熱安定性を有し、ここで、第2の抗原結合部位は、それぞれ、VL-VHまたはVH-VLの方向のscFvフォーマットをとる。熱安定性を測定する方法としては、それだけに限らないが、例えば下記の実施例3に開示される、示差走査熱量測定(DSC)が挙げられる。ある特定の実施形態では、第2の抗原結合部位が、VL-VHの方向のscFvフォーマットをとる場合、第2の抗原結合部位の融解温度(例えば、DSCによって測定されるF3’フォーマットのTriNKETのTonsetまたはTm1)は、配列番号143のアミノ酸配列を有するscFvの対応する融解温度よりも少なくとも1℃、2℃、3℃、4℃、5℃または6℃高い。ある特定の実施形態では、第2の抗原結合部位が、VH-VLの方向のscFvフォーマットをとる場合、第2の抗原結合部位の融解温度(例えば、DSCによって測定されるF3’フォーマットのTriNKETのTonsetまたはTm1)は、配列番号144のアミノ酸配列を有するscFvの対応する融解温度よりも少なくとも1℃、2℃、3℃、4℃、5℃または6℃高い。
Fcドメイン
【0161】
Fcドメイン内では、CD16結合が、ヒンジ領域およびCH2ドメインによって媒介される。例えば、ヒトIgG1内では、CD16との相互作用が、アミノ酸残基Asp265-Glu269、Asn297-Thr299、Ala327-Ile332、Leu234-Ser239、およびCH2ドメイン中の炭水化物残基N-アセチル-D-グルコサミンに主に集中している(Sondermann et al.、Nature、406 (6793):267-273参照)。公知のドメインに基づいて、例えば、ファージディスプレイライブラリーもしくは酵母表面ディスプレイcDNAライブラリーを使用することにより、CD16に対する結合親和性を増強もしくは減少させるように変異を選択することができる、または相互作用の公知の三次元構造に基づいて変異を設計することができる。したがって、ある特定の実施形態では、抗体Fcドメインまたはその部分は、ヒンジおよびCH2ドメインを含む。
【0162】
ヘテロ二量体抗体重鎖の組立は、同じ細胞中で2つの異なる抗体重鎖配列を発現させることにより達成することができるが、これは各抗体重鎖のホモ二量体の組立ならびにヘテロ二量体の組立をもたらし得る。ヘテロ二量体の優先的な組立の促進は、US13/494870、US16/028850、US11/533709、US12/875015、US13/289934、US14/773418、US12/811207、US13/866756、US14/647480およびUS14/830336に示されるように、各抗体重鎖定常領域のCH3ドメイン中に異なる変異を組み込むことにより達成することができる。例えば、ヒトIgG1に基づくCH3ドメインで、第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチドが互いに選択的にヘテロ二量体化することを可能にするアミノ酸置換の異なるペアをこれらの2つの鎖内に組み込んで、変異を導入することができる。以下に例示されるアミノ酸置換の位置は全てKabatのようにEUインデックスに従って番号付けされている。
【0163】
1つのシナリオでは、第1のポリペプチド中のアミノ酸置換が元のアミノ酸をアルギニン(R)、フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)またはトリプトファン(W)から選択されるより大きなアミノ酸で置き換え、第2のポリペプチド中の少なくとも1つのアミノ酸置換が元のアミノ酸(複数可)をアラニン(A)、セリン(S)、スレオニン(T)またはバリン(V)から選択されるより小さなアミノ酸(複数可)で置き換えて、結果としてより大きなアミノ酸置換(突出部)がより小さなアミノ酸置換(窪み)の表面にはまる。例えば、一方のポリペプチドがT366W置換を組み込むことができ、他方がT366S、L368AおよびY407Vを含む3つの置換を組み込むことができる。
【0164】
本願の抗体重鎖可変ドメインを、必要に応じて、CH1ドメインを含むまたは含まない、ヒンジ、CH2およびCH3ドメインを含むIgG定常領域などの抗体定常領域と少なくとも90%同一のアミノ酸配列に連結することができる。一部の実施形態では、定常領域のアミノ酸配列は、ヒトIgG1定常領域、IgG2定常領域、IgG3定常領域またはIgG4定常領域などのヒト抗体定常領域と少なくとも90%同一である。一実施形態では、CD16に結合するのに十分な抗体Fcドメインもしくはその部分は、野生型ヒトIgG1 Fc配列:
DKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG(配列番号118)と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一のアミノ酸配列を含む。一部の他の実施形態では、定常領域のアミノ酸配列は、ウサギ、イヌ、ネコ、マウスまたはウマなどの別の哺乳動物の抗体定常領域と少なくとも90%同一である。
【0165】
一部の実施形態では、scFvまたはFab断片に連結した抗体定常ドメインは、CD16に結合することができる。一部の実施形態では、タンパク質は、抗体Fcドメインの部分(例えば、CD16に結合するのに十分な抗体Fcドメインの部分)が組み込まれ、ここで、抗体Fcドメインは、ヒンジおよびCH2ドメイン(例えば、ヒトIgG1抗体のヒンジおよびCH2ドメイン)、ならびに/またはヒトIgG抗体のアミノ酸配列234~332と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む。
【0166】
ヒトIgG1定常領域と比較して、例えば、Q347、Y349、L351、S354、E356、E357、K360、Q362、S364、T366、L368、K370、N390、K392、T394、D399、S400、D401、F405、Y407、K409、T411および/またはK439で、1つまたは複数の変異を定常領域に組み込むことができる。例示的な置換としては、例えば、Q347E、Y349S、Y349K、Y349T、Y349D、Y349E、Y349C、T350V、L351K、L351D、L351Y、Q347R、S354C、E356K、E357Q、E357L、E357W、K360E、K360W、Q362E、S364K、S364E、S364H、S364D、T366V、T366I、T366L、T366M、T366K、T366W、T366S、L368E、L368A、L368D、K370S、N390D、N390E、K392L、K392M、K392V、K392F、K392D、K392E、T394F、T394W、D399R、D399K、D399V、S400K、S400R、D401K、F405A、F405T、Y407A、Y407I、Y407V、K409F、K409W、K409D、K409R、T411D、T411E、K439DおよびK439Eが挙げられる。
【0167】
ある特定の実施形態では、ヒトIgG1定常領域のCH1に組み込むことができる変異は、アミノ酸V125、F126、P127、T135、T139、A140、F170、P171および/またはV173にあり得る。ある特定の実施形態では、ヒトIgG1定常領域のCκに組み込むことができる変異は、アミノ酸E123、F116、S176、V163、S174および/またはT164にあり得る。
【0168】
あるいは、アミノ酸置換を、表4に示される以下の置換のセットから選択することができる。
【表4】
【0169】
あるいは、アミノ酸置換を、表5に示される以下の置換のセットから選択することができる。
【表5】
【0170】
あるいは、アミノ酸置換を、表6に示される以下の置換のセットから選択することができる。
【表6】
【0171】
あるいは、各ポリペプチド鎖中の少なくとも1つのアミノ酸置換を表7から選択することができる。
【表7】
【0172】
あるいは、少なくとも1つのアミノ酸置換を、第1のポリペプチドの列に示される位置(複数可)が任意の公知の負に帯電したアミノ酸によって置き換えられ、第2のポリペプチドの列に示される位置(複数可)が任意の公知の正に帯電したアミノ酸によって置き換えられている、表8の以下の置換のセットから選択することができる。
【表8】
【0173】
あるいは、少なくとも1つのアミノ酸置換を、第1のポリペプチドの例に示される位置(複数可)が任意の公知の正に帯電したアミノ酸によって置き換えられ、第2のポリペプチドの列に示される位置(複数可)が任意の公知の負に帯電したアミノ酸によって置き換えられている、表9の以下のセットから選択することができる。
【表9】
【0174】
あるいは、アミノ酸置換を表10の以下のセットから選択することができる。
【表10】
【0175】
あるいは、またはさらに、第1または第2のポリペプチド鎖のいずれかにS354C、および反対側のポリペプチド鎖にY349Cを導入して、2つのポリペプチドの界面内に人工的なジスルフィド架橋を形成することにより、ヘテロ多量体タンパク質の構造的安定性を増加させることができる。
【0176】
一部の実施形態では、抗体定常領域の一方のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、位置T366でIgG1定常領域のアミノ酸配列と異なり、抗体定常領域の他方のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、T366、L368およびY407からなる群から選択される1つまたは複数の位置でIgG1定常領域のアミノ酸配列と異なる。
【0177】
一部の実施形態では、抗体定常領域の一方のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、T366、L368およびY407からなる群から選択される1つまたは複数の位置でIgG1定常領域のアミノ酸配列と異なり、抗体定常領域の他方のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、位置T366でIgG1定常領域のアミノ酸配列と異なる。
【0178】
一部の実施形態では、抗体定常領域の一方のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、E357、K360、Q362、S364、L368、K370、T394、D401、F405およびT411からなる群から選択される1つまたは複数の位置でIgG1定常領域のアミノ酸配列と異なり、抗体定常領域の他方のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、Y349、E357、S364、L368、K370、T394、D401、F405およびT411からなる群から選択される1つまたは複数の位置でIgG1定常領域のアミノ酸配列と異なる。
【0179】
一部の実施形態では、抗体定常領域の一方のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、Y349、E357、S364、L368、K370、T394、D401、F405およびT411からなる群から選択される1つまたは複数の位置でIgG1定常領域のアミノ酸配列と異なり、抗体定常領域の他方のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、E357、K360、Q362、S364、L368、K370、T394、D401、F405およびT411からなる群から選択される1つまたは複数の位置でIgG1定常領域のアミノ酸配列と異なる。
【0180】
一部の実施形態では、抗体定常領域の一方のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、L351、D399、S400およびY407からなる群から選択される1つまたは複数の位置でIgG1定常領域のアミノ酸配列と異なり、抗体定常領域の他方のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、T366、N390、K392、K409およびT411からなる群から選択される1つまたは複数の位置でIgG1定常領域のアミノ酸配列と異なる。
【0181】
一部の実施形態では、抗体定常領域の一方のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、T366、N390、K392、K409およびT411からなる群から選択される1つまたは複数の位置でIgG1定常領域のアミノ酸配列と異なり、抗体定常領域の他方のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、L351、D399、S400およびY407からなる群から選択される1つまたは複数の位置でIgG1定常領域のアミノ酸配列と異なる。
【0182】
一部の実施形態では、抗体定常領域の一方のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、Q347、Y349、K360およびK409からなる群から選択される1つまたは複数の位置でIgG1定常領域のアミノ酸配列と異なり、抗体定常領域の他方のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、Q347、E357、D399およびF405からなる群から選択される1つまたは複数の位置でIgG1定常領域のアミノ酸配列と異なる。
【0183】
一部の実施形態では、抗体定常領域の一方のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、Q347、E357、D399およびF405からなる群から選択される1つまたは複数の位置でIgG1定常領域のアミノ酸配列と異なり、抗体定常領域の他方のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、Y349、K360、Q347およびK409からなる群から選択される1つまたは複数の位置でIgG1定常領域のアミノ酸配列と異なる。
【0184】
一部の実施形態では、抗体定常領域の一方のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、K370、K392、K409およびK439からなる群から選択される1つまたは複数の位置でIgG1定常領域のアミノ酸配列と異なり、抗体定常領域の他方のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、D356、E357およびD399からなる群から選択される1つまたは複数の位置でIgG1定常領域のアミノ酸配列と異なる。
【0185】
一部の実施形態では、抗体定常領域の一方のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、D356、E357およびD399からなる群から選択される1つまたは複数の位置でIgG1定常領域のアミノ酸配列と異なり、抗体定常領域の他方のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、K370、K392、K409およびK439からなる群から選択される1つまたは複数の位置でIgG1定常領域のアミノ酸配列と異なる。
【0186】
一部の実施形態では、抗体定常領域の一方のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、L351、E356、T366およびD399からなる群から選択される1つまたは複数の位置でIgG1定常領域のアミノ酸配列と異なり、抗体定常領域の他方のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、Y349、L351、L368、K392およびK409からなる群から選択される1つまたは複数の位置でIgG1定常領域のアミノ酸配列と異なる。
【0187】
一部の実施形態では、抗体定常領域の一方のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、Y349、L351、L368、K392およびK409からなる群から選択される1つまたは複数の位置でIgG1定常領域のアミノ酸配列と異なり、抗体定常領域の他方のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、L351、E356、T366およびD399からなる群から選択される1つまたは複数の位置でIgG1定常領域のアミノ酸配列と異なる。
【0188】
一部の実施形態では、抗体定常領域の一方のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、S354C置換によってIgG1定常領域のアミノ酸配列と異なり、抗体定常領域の他方のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、Y349C置換によってIgG1定常領域のアミノ酸配列と異なる。
【0189】
一部の実施形態では、抗体定常領域の一方のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、Y349C置換によってIgG1定常領域のアミノ酸配列と異なり、抗体定常領域の他方のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、S354C置換によってIgG1定常領域のアミノ酸配列と異なる。
【0190】
一部の実施形態では、抗体定常領域の一方のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、K360EおよびK409W置換によってIgG1定常領域のアミノ酸配列と異なり、抗体定常領域の他方のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、Q347R、D399VおよびF405T置換によってIgG1定常領域のアミノ酸配列と異なる。
【0191】
一部の実施形態では、抗体定常領域の一方のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、Q347R、D399VおよびF405T置換によってIgG1定常領域のアミノ酸配列と異なり、抗体定常領域の他方のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、K360EおよびK409W置換によってIgG1定常領域のアミノ酸配列と異なる。
【0192】
一部の実施形態では、抗体定常領域の一方のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、T366W置換によってIgG1定常領域のアミノ酸配列と異なり、抗体定常領域の他方のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、T366S、T368AおよびY407V置換によってIgG1定常領域のアミノ酸配列と異なる。
【0193】
一部の実施形態では、抗体定常領域の一方のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、T366S、T368AおよびY407V置換によってIgG1定常領域のアミノ酸配列と異なり、抗体定常領域の他方のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、T366W置換によってIgG1定常領域のアミノ酸配列と異なる。
【0194】
一部の実施形態では、抗体定常領域の一方のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、T350V、L351Y、F405AおよびY407V置換によってIgG1定常領域のアミノ酸配列と異なり、抗体定常領域の他方のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、T350V、T366L、K392LおよびT394W置換によってIgG1定常領域のアミノ酸配列と異なる。
【0195】
一部の実施形態では、抗体定常領域の一方のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、T350V、T366L、K392LおよびT394W置換によってIgG1定常領域のアミノ酸配列と異なり、抗体定常領域の他方のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、T350V、L351Y、F405AおよびY407V置換によってIgG1定常領域のアミノ酸配列と異なる。
例示的な多重特異性結合タンパク質
【0196】
抗体定常領域にそれぞれ連結したEGFRに結合する抗原結合部位およびNKG2Dに結合する抗原結合部位を含むTriNKETの例を下記に列挙し、ここで、抗体定常領域は、2つのFc鎖のヘテロ二量体化を可能にする変異を含む。
【0197】
TriNKETは、F3フォーマットで企図される、すなわち、EGFRに結合する抗原結合部位はFabであり、NKG2Dに結合する抗原結合部位はscFvである。下に示される全てのTriNKETは、F3’フォーマットである、すなわち、EGFRに結合する抗原結合部位はscFvであり、NKG2Dに結合する抗原結合部位はFabである。それぞれのTriNKETでは、scFvは、VHおよびVL領域にCysの置換を含んで、scFvのVHとVLとの間のジスルフィド架橋の形成を促進し得る。
【0198】
scFvのVHおよびVLは、リンカー、例えばペプチドリンカーを介して接続され得る。ある特定の実施形態では、ペプチドリンカーはフレキシブルリンカーである。リンカーのアミノ酸組成に関して、ペプチドは、柔軟性を付与する特性、本出願のタンパク質の他のドメインの構造および機能を妨げない特性、ならびにプロテアーゼからの切断に耐える特性により選択される。例えば、グリシンおよびセリン残基は、一般に、プロテアーゼ耐性を提供する。ある特定の実施形態では、VLは、N末端またはC末端で、(GlyGlyGlyGlySer)4((G4S)4)リンカー(配列番号119)を介してVHに連結される。
【0199】
リンカー(例えば、フレキシブルリンカー)の長さは、「短い」、例えば0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11もしくは12アミノ酸残基、または「長い」、例えば少なくとも13アミノ酸残基であり得る。ある特定の実施形態では、リンカーは、10~50、10~40、10~30、10~25、10~20、15~50、15~40、15~30、15~25、15~20、20~50、20~40、20~30または20~25アミノ酸残基長である。
【0200】
ある特定の実施形態では、リンカーは、(GS)
n(配列番号120)、(GGS)
n(配列番号121)、(GGGS)
n(配列番号122)、(GGSG)
n(配列番号123)、(GGSGG)
n(配列番号124)および(GGGGS)
n(配列番号125)配列を含むか、またはそれからなり、ここで、nは1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20である。ある特定の実施形態では、リンカーは、表11に列挙される配列番号119および126~134から選択されるアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる。
【表11】
【0201】
F3’-TriNKETでは、EGFR結合scFvは、Gly-Serリンカーを介してFcのN末端に連結される。Ala-SerまたはGly-Serリンカーは、柔軟性と最適な形状寸法との間のバランスをとるために、エルボーヒンジ領域配列に含まれる。ある特定の実施形態では、追加配列Thr-Lys-Glyを、N末端またはC末端で、ヒンジのAla-SerまたはGly-Serに付加することができる。
【0202】
これらの例示的なTriNKETを記載するために本明細書で使用される場合、Fcは、抗体のヒンジ、CH2およびCH3を含む。それぞれの例示的なTriNKETでは、scFvに連結したFcドメインポリペプチドは、Q347R、D399VおよびF405Tの変異を含み、Fabに連結したFcドメインポリペプチドは、ヘテロ二量体を形成するために、マッチング変異K360EおよびK409Wを含む。scFvに連結したFcドメインポリペプチドは、Fabに連結したFc上のY349C置換とジスルフィド結合を形成する、CH3ドメインにおけるS354C置換をさらに含む。これらの置換は、このサブセクションに記載される配列において太字である。
【0203】
例えば、本開示に記載されるTriNKETはEGFR-TriNKET-2である。EGFR-TriNKET-2は、(a)Fcドメインポリペプチドに連結した、VLに対してC末端に位置するVHの方向の、表2に提供されるEGFR-scFv-2(VL-VH)配列、ならびに(b)重鎖可変ドメインおよびCH1ドメインを含む重鎖部分、ならびに軽鎖可変ドメインおよび軽鎖定常ドメインを含む軽鎖部分を含むA49MIに由来するNKG2D結合Fab断片を含み、ここで、CH1ドメインはFcドメインポリペプチドに接続されている。EGFR-TriNKET-2は、3つのポリペプチド:EGFR-scFv-2(VL-VH)-Fc(配列番号166)、A49MI-VH-CH1-Fc(配列番号164)およびA49MI-VL-CL(配列番号165)を含む。
EGFR-scFv-2(VL-VH)-Fc(配列番号166)。太字の残基はFcドメイン中の変異した残基を示す。
【化1】
A49MI-VH-CH1-Fc(配列番号164)。太字の残基はFcドメイン中の変異した残基を示し、下線を引いた配列はCDR配列を示す。
【化2】
A49MI-VL-CL(配列番号165)。下線を引いた配列はCDR配列を示す。
【化3】
【0204】
EGFR-scFv-2(VL-VH)-Fc(配列番号166)は、Gly-Serを含むヒンジを介してFcドメインポリペプチドに連結したEGFR結合scFvの完全配列を表す。scFvに連結したFcドメインポリペプチドは、下記に記載されるように、A49MI-VH-CH1-Fc中に、ヘテロ二量体化のためにQ347R、D399VおよびF405T置換、ならびにY349C置換とのジスルフィド結合を形成するためにS354C置換を含む。scFvは、(G4S)4リンカー(配列番号119)を介して表2のEGFR-バインダー2の軽鎖可変ドメインのC末端に接続された表2のEGFR-バインダー2の重鎖可変ドメインを含み、ここで、scFvは、それぞれ、G44およびS100にVHおよびVL領域のCysの置換をさらに含み、それによって、scFvのVHとVLとの間のジスルフィド架橋の形成を容易にする。
【0205】
A49MI-VH-CH1-Fc(配列番号164)は、Fcドメインに接続された、NKG2D結合A49MIの重鎖可変ドメイン(配列番号95)およびCH1ドメインを含む、Fab断片の重鎖部分を表す。A49MI-VH-CH1-Fc中のFcドメインポリペプチドは、EGFR-scFv-2(VL-VH)-Fc中のFcポリペプチドにおけるS354C置換とジスルフィド結合を形成するCH3ドメインにおけるY349C置換を含む。A49MI-VH-CH1-Fcにおいて、Fcドメインは、EGFR-scFv-2(VL-VH)-Fc中のFcとのヘテロ二量体化のためにK360EおよびK409W置換も含む。
【0206】
A49MI-VL-CL(配列番号165)は、NKG2D結合A49MIの軽鎖可変ドメイン(配列番号85)および軽鎖定常ドメインを含む、Fab断片の軽鎖部分を表す。
【0207】
別の例では、本開示に記載されるTriNKETはEGFR-TriNKET-3である。EGFR-TriNKET-3は、(a)Fcドメインポリペプチドに連結した、VLに対してC末端に位置するVHの方向の、表2に提供されるEGFR-scFv-3(VL-VH)配列、ならびに(b)重鎖可変ドメインおよびCH1ドメインを含む重鎖部分、ならびに軽鎖可変ドメインおよび軽鎖定常ドメインを含む軽鎖部分を含むA49MIに由来するNKG2D結合Fab断片を含み、ここで、CH1ドメインはFcドメインポリペプチドに接続されている。EGFR-TriNKET-3は、3つのポリペプチド:EGFR-scFv-3(VL-VH)-Fc(配列番号167)、A49MI-VH-CH1-Fc(配列番号164)およびA49MI-VL-CL(配列番号165)を含む。
EGFR-scFv-3(VL-VH)-Fc(配列番号167)。太字の残基はFcドメイン中の変異した残基を示す。
【化4】
【0208】
EGFR-scFv-3(VL-VH)-Fc(配列番号167)は、Gly-Serを含むヒンジを介してFcドメインに連結したEGFR結合scFvの完全配列を表す。scFvに連結したFcドメインポリペプチドは、下記に記載されるように、A49MI-VH-CH1-Fc中に、ヘテロ二量体化のためにQ347R、D399VおよびF405T置換、ならびにY349C置換とのジスルフィド結合を形成するためにS354C置換を含む。scFvは、(G4S)4リンカー(配列番号119)を介して表2のEGFR-バインダー3クローンの軽鎖可変ドメインのC末端に接続された表2のEGFR-バインダー3の重鎖可変ドメインを含み、ここで、scFvは、それぞれ、G44およびS100にVHおよびVL領域のCysの置換をさらに含み、それによって、scFvのVHとVLとの間のジスルフィド架橋の形成を容易にする。
【0209】
別の例では、本開示に記載されるTriNKETはEGFR-TriNKET-4である。EGFR-TriNKET-4は、(a)Fcドメインポリペプチドに連結した、VLに対してC末端に位置するVHの方向の、表2に提供されるEGFR-scFv-4(VL-VH)配列、ならびに(b)重鎖可変ドメインおよびCH1ドメインを含む重鎖部分、ならびに軽鎖可変ドメインおよび軽鎖定常ドメインを含む軽鎖部分を含むA49MIに由来するNKG2D結合Fab断片を含み、ここで、CH1ドメインはFcドメインポリペプチドに接続されている。EGFR-TriNKET-4は、3つのポリペプチド:EGFR-scFv-4(VL-VH)-Fc(配列番号168)、A49MI-VH-CH1-Fc(配列番号164)およびA49MI-VL-CL(配列番号165)を含む。
EGFR-scFv-4(VL-VH)-Fc(配列番号168)。太字の残基はFcドメイン中の変異した残基を示す。
【化5】
【0210】
EGFR-scFv-4(VL-VH)-Fc(配列番号168)は、Gly-Serを含むヒンジを介してFcドメインポリペプチドに連結したEGFR結合scFvの完全配列を表す。scFvに連結したFcドメインポリペプチドは、下記に記載されるように、A49MI-VH-CH1-Fc中に、ヘテロ二量体化のためにQ347R、D399VおよびF405T置換、ならびにY349C置換とのジスルフィド結合を形成するためにS354C置換を含む。scFvは、(G4S)4リンカー(配列番号119)を介して表2のEGFR-バインダー4クローンの軽鎖可変ドメインのC末端に接続された表2のEGFR-バインダー4クローンの重鎖可変ドメインを含み、ここで、scFvは、それぞれ、G44およびS100にVHおよびVL領域のCysの置換をさらに含み、それによって、scFvのVHとVLとの間のジスルフィド架橋の形成を容易にする。
【0211】
ある特定の実施形態では、本開示に記載されるTriNKETは、NKG2D結合Fab断片に連結したFcドメインポリペプチドがQ347R、D399VおよびF405Tの置換を含み、EGFR結合scFvに連結したFcドメインポリペプチドがヘテロ二量体を形成するためにマッチング置換K360EおよびK409Wを含むことを除いて、EW-RVT Fc変異を含む上記に記載される例示的なTriNKETの1つと同一である。ある特定の実施形態では、本開示に記載されるTriNKETは、NKG2D結合Fab断片に連結したFcドメインポリペプチドがT366S、L368AおよびY407Vの「ホール」置換を含み、EGFR結合scFvに連結したFcドメインポリペプチドがヘテロ二量体を形成するためにT366Wの「ノブ」置換を含むことを除いて、KiH Fc変異を含む上記に記載される例示的なTriNKETの1つと同一である。
【0212】
当業者であれば、タンパク質の産生および/または貯蔵の間に、N末端グルタミン酸(E)またはグルタミン(Q)が環化してラクタムを形成し得る(例えば、自発的に、または産生および/もしくは貯蔵の間に存在する酵素によって触媒されて)ことを認識するであろう。したがって、ポリペプチドのアミノ酸配列のN末端残基がEまたはQである一部の実施形態では、EまたはQがピログルタミン酸で置き換えられた対応するアミノ酸配列も本明細書で企図される。
【0213】
当業者であれば、タンパク質の産生および/または貯蔵の間に、タンパク質のC末端リシン(K)が除去され得る(例えば、自発的に、または産生および/もしくは貯蔵の間に存在する酵素によって触媒されて)ことも認識するであろう。そのようなKの除去は、多くの場合、そのC末端にFcドメインを含むタンパク質で観察される。したがって、ポリペプチドのアミノ酸配列(例えば、Fcドメイン配列)のC末端残基がKである一部の実施形態では、Kが除去された対応するアミノ酸配列も本明細書で企図される。
【0214】
上記の多重特異性結合タンパク質は、当業者に周知の組換えDNA技術を使用して作製することができる。例えば、第1の免疫グロブリン重鎖をコードする第1の核酸配列を第1の発現ベクターにクローニングすることができ;第2の免疫グロブリン重鎖をコードする第2の核酸配列を第2の発現ベクターにクローニングすることができ;免疫グロブリン軽鎖をコードする第3の核酸配列を第3の発現ベクターにクローニングすることができ;第1、第2および第3の発現ベクターを一緒に宿主細胞に安定的にトランスフェクトして、多量体タンパク質を生成することができる。
【0215】
多重特異性結合タンパク質の最高収量を達成するために、異なる比の第1、第2および第3の発現ベクターを調査して、宿主細胞へのトランスフェクションのための最適な比を決定することができる。トランスフェクション後、限界希釈、ELISA、FACS、顕微鏡法またはClonepixなどの当技術分野で公知の方法を使用して、単一クローンを細胞バンク生成のために単離することができる。
【0216】
クローンを、バイオリアクタースケールアップおよび多重特異性結合タンパク質の維持された発現に適した条件下で培養することができる。遠心分離、深層濾過、細胞溶解、ホモジナイゼーション、凍結-解凍、アフィニティ精製、ゲル濾過、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用交換クロマトグラフィーおよび混合モードクロマトグラフィーを含む当技術分野で公知の方法を使用して、多重特異性結合タンパク質を単離および精製することができる。
II.多重特異性結合タンパク質の特徴
【0217】
本明細書に記載される多重特異性結合タンパク質は、NKG2D結合部位と、EGFRに結合する腫瘍関連抗原結合部位と、CD16に結合するのに十分な抗体Fcドメインもしくはその部分、またはCD16に結合する抗原結合部位とを含む。一部の実施形態では、多重特異性結合タンパク質は、F4-TriNKETフォーマットで例示されるように、同じ腫瘍関連抗原(EGFR)に結合する追加の抗原結合部位を含有する(例えば、
図2Cおよび2D)。
【0218】
一部の実施形態では、多重特異性結合タンパク質は、対応するモノクローナル抗体、すなわち、多重特異性結合タンパク質に組み込まれるものと同じEGFR抗原結合部位を含有するモノクローナル抗体と類似の熱安定性を示す。
【0219】
一部の実施形態では、多重特異性結合タンパク質は、NK細胞などのNKG2Dおよび/またはCD16を発現している細胞と、ある特定の腫瘍細胞などのEGFRを発現している細胞に同時に結合する。NK細胞への多重特異性結合タンパク質の結合によって、EGFRを発現している腫瘍細胞の破壊に向けたNK細胞の活性が増強され得る。NK細胞が、ストレスが与えられた標的細胞に対してより強力な細胞傷害性を示すことが報告されている(Chan et al.、(2014) Cell Death Differ. 21(1):5-14参照)。理論によって拘束されることを望まないが、NK細胞がTriNKETによって細胞の集団に結合する場合、NK細胞は、ストレスが与えられた標的細胞(例えば、悪性細胞および腫瘍微小環境中の細胞)を選択的に殺滅し得ることが強調される。この機構は、TriNKETの特異性の増加および毒性の低減に寄与し得、EGFRの発現が所望の標的細胞に限定されない場合でさえストレスが与えられた細胞の選択的な排除を可能にする。
【0220】
一部の実施形態では、多重特異性結合タンパク質は、対応する抗EGFRモノクローナル抗体(すなわち、多重特異性結合タンパク質に組み込まれるものと同じEGFR結合部位を含有するモノクローナル抗体)と類似の親和性でEGFRに結合する。一部の実施形態では、多重特異性結合タンパク質は、対応するモノクローナル抗体よりも、免疫エフェクター細胞(例えば、NK細胞またはCD8+T細胞)によってEGFRを発現している腫瘍細胞の殺滅を媒介するのにより有効である。
【0221】
ある特定の実施形態では、EGFRに対する結合部位を含む本明細書に記載される多重特異性結合タンパク質は、EGFRを発現している細胞と共培養すると、初代ヒトNK細胞を活性化する。NK細胞活性化は、CD107a脱顆粒およびIFN-γサイトカイン産生の増加によって示される。さらに、対応する抗EGFRモノクローナル抗体と比較して、多重特異性結合タンパク質は、EGFRを発現している細胞の存在下で、ヒトNK細胞の優れた活性化を示す。
【0222】
一部の実施形態では、EGFRに対する結合部位を含む本明細書に記載される多重特異性結合タンパク質は、EGFRを発現している細胞と共培養すると、静止および/またはIL-2活性化ヒトNK細胞の活性を増強する。
【0223】
一部の実施形態では、EGFRに結合する対応するモノクローナル抗体と比較して、 多重特異性結合タンパク質は、中レベルおよび低レベルのEGFRを発現する腫瘍細胞の標的化において利点を提供する。
【0224】
一部の実施形態では、EGFRに対して一価の本明細書に開示される多重特異性結合タンパク質、例えば、F3またはF3’フォーマットのものは、二価である対応する抗EGFR mAbと比較して、皮膚に関する毒性を低減または遅延させる。
【0225】
一部の実施形態では、TriNKETの二価F4フォーマット(すなわち、TriNKETがEGFRに結合する追加の抗原結合部位を含む)は、TriNKETがEGFRに結合する活性を改善し、事実上、腫瘍細胞の表面上の高レベルのTriNKETの発現および維持を安定化する。一部の実施形態では、F4-TriNKETは、対応するF3-TriNKETまたはF3’-TriNKETよりも強力な腫瘍細胞の殺滅を媒介する。
III.治療用途
【0226】
本出願は、本明細書に記載される多重特異性結合タンパク質および/または本明細書に記載される医薬組成物を使用して、がんを処置するための方法を提供する。本方法を使用して、EGFRを発現しているさまざまながんを処置することができる。
【0227】
治療方法は、処置されるがんに従って特徴付けることができる。処置されるがんは、がん細胞の表面上で発現する特定の抗原の存在に従って特徴付けることができる。
【0228】
EGFRの発現によって特徴付けられるがんとしては、限定されないが、固形腫瘍がんが挙げられる。例えば、ある特定の実施形態では、がんは、頭頸部がん、結腸直腸がん、非小細胞肺がん、神経膠腫、腎細胞癌、膀胱がん、子宮頸がん、卵巣がん、膵臓がんまたは肝臓がんである。ある特定の実施形態では、がんは、肺がん(それだけに限らないが、小細胞肺癌または肺腺癌を含む)、乳がん、乳房の浸潤性腺管癌、腎臓がん、従来の多形神経膠芽腫、結腸がん、結腸腺癌、胃がん、脳がん、神経膠芽腫、膀胱、頭頸部がん、卵巣がんまたは前立腺がんである。
【0229】
本明細書に記載されるタンパク質、コンジュゲート、細胞および/または医薬組成物を使用して、がん細胞またはがん微小環境中の細胞がEGFRを発現するがんに限定されないさまざまながんを処置することができることが企図される。
【0230】
一部の実施形態では、がんは固形腫瘍である。ある特定の実施形態では、がんは、乳がん、卵巣がん、食道がん、膀胱がんまたは胃がん、唾液腺導管癌、肺腺癌または子宮がんの攻撃的形態、例えば子宮漿液性子宮内膜癌である。一部の他の実施形態では、がんは、脳がん、膀胱がん、乳がん、子宮頸がん、結腸がん、結腸直腸がん、子宮内膜がん、食道がん、白血病、肺がん、肝臓がん、黒色腫、卵巣がん、膵臓がん、前立腺がん、直腸がん、腎がん、胃がん、精巣がんまたは子宮がんである。さらに他の実施形態では、がんは、血管形成腫瘍、扁平上皮癌、腺癌、小細胞癌、黒色腫、神経膠腫、神経芽細胞腫、肉腫(例えば、血管肉腫または軟骨肉腫)、喉頭がん、耳下腺がん、胆道がん(biliary tract cancer)、甲状腺がん、末端黒子型黒色腫、日光角化症、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、腺様嚢胞癌、腺腫、腺肉腫、腺扁平上皮癌、肛門管がん、肛門がん、肛門直腸がん、星細胞系腫瘍、バルトリン腺癌、基底細胞癌、胆道がん(biliary cancer)、骨がん、骨髄がん、気管支がん、気管支腺癌、カルチノイド、胆管癌、軟骨肉腫、脈絡叢乳頭腫/癌、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、明細胞癌、結合組織がん、嚢胞腺腫、消化器系がん、十二指腸がん、内分泌系がん、卵黄嚢腫瘍、子宮内膜過形成、子宮内膜間質肉腫、類内膜腺癌、内皮細胞がん、上衣がん、上皮細胞がん、ユーイング肉腫、眼と眼窩のがん、女性性器がん、限局性結節性過形成、胆嚢がん、胃幽門部がん、胃底部がん、ガストリノーマ、神経膠芽腫、グルカゴノーマ、心臓がん、血管芽細胞腫、血管内皮腫、血管腫、肝腺腫、肝腺腫症、肝胆道がん、肝細胞癌、ホジキン病、回腸がん、インスリノーマ、上皮内腫瘍、上皮間扁平上皮腫瘍、肝内胆管がん、浸潤性扁平上皮癌、空腸がん、関節がん、カポジ肉腫、骨盤がん、大細胞癌、大腸がん、平滑筋肉腫、悪性黒子型黒色腫、リンパ腫、男性性器がん、悪性黒色腫、悪性中皮腫瘍、髄芽腫、髄上皮腫、髄膜がん、中皮がん、転移性癌、口腔がん、粘液性類表皮癌、多発性骨髄腫、筋がん、鼻道がん、神経系がん、神経上皮腺癌、結節型黒色腫、非上皮性皮膚がん、非ホジキンリンパ腫、燕麦細胞癌、乏突起神経膠がん(oligodendroglial cancer)、口腔がん、骨肉腫、乳頭状漿液性腺癌、陰茎がん、咽頭がん、下垂体腫瘍、形質細胞腫、偽肉腫、肺芽腫、直腸がん、腎細胞癌、呼吸器系がん、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、肉腫、漿液性癌、副鼻腔がん、皮膚がん、小細胞癌、小腸がん、平滑筋がん、軟部組織がん、ソマトスタチン分泌腫瘍、脊椎がん、扁平上皮癌、横紋筋がん、中皮下がん、表在拡大型黒色腫、T細胞白血病、舌がん、未分化癌、尿管がん、尿道がん(urethra cancer)、膀胱がん、泌尿器系がん、子宮頸がん、子宮体がん、ブドウ膜黒色腫、膣がん、疣状癌、ビポーマ、外陰がん、高分化癌またはウィルムス腫瘍である。
【0231】
ある特定の他の実施形態では、がんは、B細胞リンパ腫またはT細胞リンパ腫などの非ホジキンリンパ腫である。ある特定の実施形態では、非ホジキンリンパ腫は、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、原発性縦隔B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、小リンパ球性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、辺縁帯B細胞リンパ腫、節外性辺縁帯B細胞リンパ腫、節性辺縁帯B細胞リンパ腫、脾辺縁帯B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、リンパ形質細胞性リンパ腫、有毛細胞白血病または中枢神経系(CNS)原発リンパ腫などのB細胞リンパ腫である。ある特定の他の実施形態では、非ホジキンリンパ腫は、前駆Tリンパ芽球性リンパ腫、末梢性T細胞リンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、血管免疫芽球性T細胞リンパ腫、節外性ナチュラルキラー/T細胞リンパ腫、腸管症型T細胞性リンパ腫、皮下脂肪織炎様T細胞リンパ腫、未分化大細胞リンパ腫または末梢性T細胞リンパ腫などのT細胞リンパ腫である。
【0232】
処置されるがんは、がん細胞の表面上で発現する特定の抗原の存在に従って特徴付けることができる。ある特定の実施形態では、がん細胞は、EGFRに加えて、以下の1つまたは複数を発現することができる:CD2、CD19、CD38、CD40、CD52、CD30、CD70、IGF1R、HER3/ERBB3、HER4/ERBB4、MUC1、TROP2、cMET、SLAMF7、PSCA、MICA、MICB、TRAILR1、TRAILR2、MAGE-A3、B7.1、B7.2、CTLA4およびPD1。
IV.併用療法
【0233】
本願の別の態様は併用療法を提供する。本明細書に記載される多重特異性結合タンパク質は、がんを処置するための追加の治療剤と組み合わせて使用することができる。
【0234】
がんの処置で併用療法の一部として使用され得る例示的な治療剤としては、例えば、放射線、マイトマイシン、トレチノイン、リボムスチン、ゲムシタビン、ビンクリスチン、エトポシド、クラドリビン、ミトブロニトール、メトトレキサート、ドキソルビシン、カルボコン、ペントスタチン、ニトラクリン、ジノスタチン、セトロレリクス、レトロゾール、ラルチトレキセド、ダウノルビシン、ファドロゾール、フォテムスチン、サイマルファシン、ソブゾキサン、ネダプラチン、シタラビン、ビカルタミド、ビノレルビン、ベスナリノン、アミノグルテチミド、アムサクリン、プログルミド、酢酸エリプチニウム、ケタンセリン、ドキシフルリジン、エトレチナート、イソトレチノイン、ストレプトゾシン、ニムスチン、ビンデシン、フルタミド、ドロゲニル、ブトシン、カルモフール、ラゾキサン、シゾフィラン、カルボプラチン、ミトラクトール、テガフール、イホスファミド、プレドニムスチン、ピシバニール、レバミゾール、テニポシド、インプロスルファン、エノシタビン、リスリド、オキシメトロン、タモキシフェン、プロゲステロン、メピチオスタン、エピチオスタノール、ホルメスタン、インターフェロン-アルファ、インターフェロン-2アルファ、インターフェロン-ベータ、インターフェロン-ガンマ(IFN-γ)、コロニー刺激因子-1、コロニー刺激因子-2、デニロイキン・ジフチトクス、インターロイキン-2、黄体ホルモン放出因子、およびその同族受容体に対する示差的結合、または増加もしくは減少した血清半減期を示し得る上記薬剤のバリエーションが挙げられる。
【0235】
がんの処置で併用療法の一部として使用され得る薬剤の追加のクラスは免疫チェックポイント阻害剤である。例示的な免疫チェックポイント阻害剤としては、(i)細胞傷害性Tリンパ球関連抗原4(CTLA4)、(ii)プログラム細胞死タンパク質1(PD1)、(iii)PDL1、(iv)LAG3、(v)B7-H3、(vi)B7-H4および(vii)TIM3の1つまたは複数を阻害する薬剤が挙げられる。CTLA4阻害剤であるイピリムマブは、黒色腫の処置について米国食品医薬品局によって承認されている。
【0236】
がんの処置で併用療法の一部として使用され得るさらに他の薬剤は、非チェックポイント標的を標的化するモノクローナル抗体剤(例えば、ハーセプチン)および非細胞傷害剤(例えば、チロシンキナーゼ阻害剤)である。
【0237】
抗がん剤のさらに他のカテゴリーには、例えば、(i)ALK阻害剤、ATR阻害剤、A2Aアンタゴニスト、塩基除去修復阻害剤、Bcr-Ablチロシンキナーゼ阻害剤、ブルトンチロシンキナーゼ阻害剤、CDC7阻害剤、CHK1阻害剤、サイクリン依存性キナーゼ阻害剤、DNA-PK阻害剤、DNA-PKとmTORの両方の阻害剤、DNMT1阻害剤、DNMT1阻害剤+2-クロロ-デオキシアデノシン、HDAC阻害剤、ヘッジホッグシグナル伝達経路阻害剤、IDO阻害剤、JAK阻害剤、mTOR阻害剤、MEK阻害剤、MELK阻害剤、MTH1阻害剤、PARP阻害剤、ホスホイノシチド3-キナーゼ阻害剤、PARP1とDHODHの両方の阻害剤、プロテアソーム阻害剤、トポイソメラーゼ-II阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、VEGFR阻害剤およびWEE1阻害剤から選択される阻害剤;(ii)OX40、CD137、CD40、GITR、CD27、HVEM、TNFRSF25またはICOSのアゴニスト;ならびに(iii)IL-12、IL-15、GM-CSFおよびG-CSFから選択されるサイトカインが含まれる。
【0238】
本願のタンパク質を、原発巣の外科的除去の補助として使用することもできる。
【0239】
多重特異性結合タンパク質および追加の治療剤の量ならびに相対的な投与のタイミングは、所望の組合せ治療効果を達成するために選択され得る。例えば、併用療法を、このような投与を必要とする患者に投与する場合、組合せの治療剤、または治療剤を含む1つまたは複数の医薬組成物は、例えば、逐次的に、併せて、一緒に、同時になどの任意の順序で投与され得る。さらに、例えば、多重特異性結合タンパク質は、追加の治療剤(複数可)がその予防的もしくは治療的効果を発揮する時間の間に投与され得る、または逆もまた同様である。
V.医薬組成物
【0240】
本開示はまた、治療有効量の本明細書に記載されるタンパク質を含有する医薬組成物を特徴とする。組成物は、さまざまな薬物送達システムに使用するために製剤化することができる。1つまたは複数の生理学的に許容される賦形剤または担体を適切な製剤化のために組成物に含めることもできる。本明細書で開示される組成物において使用するための適切な製剤は、Remington’s Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Company、Philadelphia、Pa.、17th ed.、1985に見出される。薬物送達のための方法の簡潔な概要については、例えば、Langer (Science 249:1527-1533、1990)を参照されたい。
【0241】
ある特定の実施形態では、組成物は、薬物送達製剤であり得る。本明細書に記載の静脈内薬物送達製剤は、バッグ、ペンまたはシリンジに含有され得る。ある特定の実施形態では、バッグはチューブおよび/または針を含むチャネルに接続され得る。ある特定の実施形態では、製剤は凍結乾燥製剤または液体製剤であり得る。ある特定の実施形態では、製剤はフリーズドライ(凍結乾燥)され得、約12~60個のバイアルに含有され得る。ある特定の実施形態では、製剤はフリーズドライされ得、45mgのフリーズドライ製剤は1個のバイアルに含有され得る。ある特定の実施形態では、約40mg~約100mgのフリーズドライ製剤は1個のバイアルに含有され得る。ある特定の実施形態では、12、27または45個のバイアルのフリーズドライ製剤を合わせて、静脈内薬物製剤中の治療用量のタンパク質を得る。ある特定の実施形態では、製剤は液体製剤であり得、約250mg/バイアル~約1000mg/バイアルとして保管され得る。ある特定の実施形態では、製剤は液体製剤であり得、約600mg/バイアルとして保管され得る。ある特定の実施形態では、製剤は液体製剤であり得、約250mg/バイアルとして保管され得る。
【0242】
これらの組成物は、従来の滅菌技術によって滅菌され得る、または滅菌濾過され得る。得られた水溶液は、そのまま使用するために包装され得る、または凍結乾燥され得、凍結乾燥調製物は投与前に無菌水性担体と合わせられる。調製物のpHは、典型的には3~11の間、例えば、5~9の間または6~8の間、ある特定の実施形態では、7~8の間、例えば7~7.5となる。固体形態の得られた組成物は、各々が一定量の上記の1種または複数種の薬剤を含有する、複数の単回投与単位に包装され得る。固体形態の組成物はまた、柔軟な量で容器に包装することもできる。
【0243】
ある特定の実施形態では、本開示は、本開示に記載されるタンパク質を、マンニトール、クエン酸一水和物、クエン酸ナトリウム、リン酸二ナトリウム二水和物、リン酸二水素ナトリウム二水和物、塩化ナトリウム、ポリソルベート80、水および水酸化ナトリウムと組み合わせて含む、貯蔵寿命が延長された製剤を提供する。
【0244】
ある特定の実施形態では、pH緩衝溶液中に本開示に記載されるタンパク質を含む水性製剤が調製される。本願のバッファーは、約4~約8、例えば約4.5~約6.0、もしくは約4.8~約5.5の範囲のpHを有し得る、または約5.0~約5.2のpHを有し得る。上に列挙されるpHまでの中間の範囲も本開示の一部であることが意図される。例えば、上限および/または下限として上に列挙される値のいずれかの組合せを使用した値の範囲が含まれることが意図される。pHをこの範囲内に制御するバッファーの例としては、酢酸バッファー(例えば、酢酸ナトリウム)、コハク酸バッファー(コハク酸ナトリウムなど)、グルコン酸バッファー、ヒスチジンバッファー、クエン酸バッファーおよび他の有機酸バッファーが挙げられる。
【0245】
ある特定の実施形態では、製剤は、pHを約4~約8の範囲に維持するためにクエン酸塩およびリン酸塩を含有する緩衝液系を含む。ある特定の実施形態では、pH範囲は、約4.5~約6.0、または約pH4.8~約5.5、または約5.0~約5.2のpH範囲であり得る。ある特定の実施形態では、緩衝液系は、クエン酸一水和物、クエン酸ナトリウム、リン酸二ナトリウム二水和物および/またはリン酸二水素ナトリウム二水和物を含む。ある特定の実施形態では、緩衝液系は、約1.3mg/mLのクエン酸(例えば、1.305mg/mL)、約0.3mg/mLのクエン酸ナトリウム(例えば、0.305mg/mL)、約1.5mg/mLのリン酸二ナトリウム二水和物(例えば、1.53mg/mL)、約0.9mg/mLのリン酸二水素ナトリウム二水和物(例えば、0.86mg/mL)および約6.2mg/mLの塩化ナトリウム(例えば、6.165mg/mL)を含む。ある特定の実施形態では、緩衝液系は、約1~約1.5mg/mLのクエン酸、約0.25~約0.5mg/mLのクエン酸ナトリウム、約1.25~約1.75mg/mLのリン酸二ナトリウム二水和物、約0.7~約1.1mg/mLのリン酸二水素ナトリウム二水和物および約6.0~約6.4mg/mLの塩化ナトリウムを含む。ある特定の実施形態では、製剤のpHは水酸化ナトリウムで調整される。
【0246】
等張化剤(tonicifier)として作用し、抗体を安定化し得るポリオールを製剤に含めてもよい。ポリオールは、製剤の所望の等張性に関して変えることができる量で製剤に添加される。ある特定の実施形態では、水性製剤は等張性であり得る。添加されるポリオールの量をポリオールの分子量に関して変化させてもよい。例えば、二糖(トレハロースなど)と比較して、少量の単糖(例えば、マンニトール)が添加され得る。ある特定の実施形態では、等張化剤として製剤に使用され得るポリオールはマンニトールである。ある特定の実施形態では、マンニトール濃度は約5~約20mg/mLであり得る。ある特定の実施形態では、マンニトールの濃度は約7.5~約15mg/mLであり得る。ある特定の実施形態では、マンニトールの濃度は約10~約14mg/mLであり得る。ある特定の実施形態では、マンニトールの濃度は約12mg/mLであり得る。ある特定の実施形態では、ポリオールであるソルビトールが製剤に含まれ得る。
【0247】
界面活性剤(detergent)または界面活性剤(surfactant)を製剤に添加してもよい。例示的な界面活性剤としては、ポリソルベート(例えば、ポリソルベート20、80等)またはポロキサマー(例えば、ポロキサマー188)などの非イオン性界面活性剤が挙げられる。添加される界面活性剤の量は、製剤化抗体の凝集を減少させる、および/または製剤中の微粒子の形成を最小化する、および/または吸着を減少させるようなものとする。ある特定の実施形態では、製剤はポリソルベートである界面活性剤を含み得る。ある特定の実施形態では、製剤は界面活性剤ポリソルベート80またはTween(登録商標) 80を含有し得る。Tween(登録商標) 80は、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエートを記載するために使用される用語である(Fiedler、Lexikon der Hifsstoffe、Editio Cantor Verlag Aulendorf、4th edi.、1996参照)。ある特定の実施形態では、製剤は、約0.1mg/mL~約10mg/mLの間、または約0.5mg/mL~約5mg/mLの間のポリソルベート80を含有し得る。ある特定の実施形態では、約0.1%のポリソルベート80が製剤に添加され得る。
【0248】
実施形態では、本明細書に記載のタンパク質産物は液体製剤として製剤化される。液体製剤は、ゴム栓で閉じられ、アルミニウム圧着シールクロージャーで密封されたUSP/Ph Eur I型50Rバイアル中10mg/mL濃度で提供され得る。栓は、USPおよびPh Eurを遵守したエラストマー製であり得る。ある特定の実施形態では、バイアルに、60mLの抽出可能な体積を可能にするために、61.2mLのタンパク質産物溶液が充填され得る。ある特定の実施形態では、液体製剤は0.9%食塩溶液で希釈され得る。
【0249】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載の液体製剤は、安定化レベルの糖と組み合わせた10mg/mL濃度溶液として調製され得る。ある特定の実施形態では、液体製剤は水性担体中で調製され得る。ある特定の実施形態では、安定剤は、静脈内投与に望ましくないまたは不適切な粘度をもたらし得る量以下の量で添加され得る。ある特定の実施形態では、糖は二糖、例えばスクロースであり得る。ある特定の実施形態では、液体製剤は、緩衝剤、界面活性剤および保存剤の1つまたは複数も含み得る。
【0250】
ある特定の実施形態では、液体製剤のpHは、薬学的に許容される酸および/または塩基の添加によって調節され得る。ある特定の実施形態では、薬学的に許容される酸は塩酸であり得る。ある特定の実施形態では、塩基は水酸化ナトリウムであり得る。
【0251】
凝集に加えて、脱アミドが、発酵、収集/細胞清澄化、精製、原体/医薬品貯蔵中、および試料分析中に起こり得る、ペプチドおよびタンパク質の一般的な産物バリアントである。脱アミドは、タンパク質からNH3が失われて、加水分解を受け得るスクシンイミド中間体を形成することである。スクシンイミド中間体は、親ペプチドの17ダルトンの質量減少をもたらす。その後の加水分解によって、18ダルトンの質量増加がもたらされる。スクシンイミド中間体の単離は、水性条件下での不安定性のために困難である。よって、脱アミドは、典型的には1ダルトンの質量増加として検出可能である。アスパラギンの脱アミドは、アスパラギン酸またはイソアスパラギン酸をもたらす。脱アミドの速度に影響を及ぼすパラメーターには、pH、温度、溶媒の誘電率、イオン強度、一次配列、局所的ポリペプチドコンフォメーションおよび三次構造が含まれる。ペプチド鎖中のAsnに隣接するアミノ酸残基は脱アミド速度に影響を及ぼす。タンパク質配列中のAsnに続くGlyおよびSerは脱アミドに対するより高い感受性をもたらす。
【0252】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載の液体製剤は、タンパク質産物の脱アミドを防ぐためのpHおよび湿度の条件下で保存され得る。
【0253】
本明細書の目的の水性担体は、薬学的に許容され(ヒトへの投与にとって安全で非毒性であり)、液体製剤の調製に有用であるものである。例示的な担体には、注射用滅菌水(SWFI)、注射用静菌水(BWFI)、pH緩衝溶液(例えば、リン酸緩衝食塩水)、滅菌食塩溶液、リンゲル液またはデキストロース溶液が含まれる。
【0254】
保存剤を必要に応じて本明細書の製剤に添加して細菌作用を減少させてもよい。保存剤の添加は、例えば、マルチユース(複数回投与)製剤の製造を容易にし得る。
【0255】
静脈内(IV)送達は、特定の例で、例えば、患者がIV経路を介して全ての薬物を受けて移植後に入院している場合の投与経路であり得る。ある特定の実施形態では、液体製剤は、投与前に0.9%塩化ナトリウム溶液で希釈される。ある特定の実施形態では、注射用希釈医薬品は等張性であり、静脈内注入による投与に適している。
【0256】
ある特定の実施形態では、塩またはバッファー成分は10mM~200mMの量で添加され得る。塩および/またはバッファーは、薬学的に許容され、「塩基形成」金属またはアミンを用いてさまざまな公知の酸(無機および有機)から得られる。ある特定の実施形態では、バッファーはリン酸バッファーであり得る。ある特定の実施形態では、バッファーは、グリシン酸バッファー、炭酸バッファー、クエン酸バッファーであり得、この場合、ナトリウム、カリウムまたはアンモニウムイオンが対イオンとして働き得る。
【0257】
保存剤を必要に応じて本明細書の製剤に添加して、細菌作用を減少させてもよい。保存剤の添加は、例えば、マルチユース(複数回投与)製剤の製造を容易にし得る。
【0258】
本明細書の目的の水性担体は、薬学的に許容され(ヒトへの投与にとって安全で非毒性であり)、液体製剤の調製に有用であるものである。例示的な担体には、注射用滅菌水(SWFI)、注射用静菌水(BWFI)、pH緩衝溶液(例えば、リン酸緩衝食塩水)、滅菌食塩溶液、リンゲル液またはデキストロース溶液が含まれる。
【0259】
本明細書に記載のタンパク質は、タンパク質およびリオプロテクタント(lyoprotectant)を含む凍結乾燥製剤で存在し得る。リオプロテクタントは糖、例えば二糖であり得る。ある特定の実施形態では、リオプロテクタントはスクロースまたはマルトースであり得る。凍結乾燥製剤はまた、緩衝剤、界面活性剤、増量剤および/または保存剤の1つまたは複数を含み得る。
【0260】
凍結乾燥医薬品の安定化に有用なスクロースまたはマルトースの量は、少なくとも1:2のタンパク質のスクロースまたはマルトースに対する重量比であり得る。ある特定の実施形態では、タンパク質のスクロースまたはマルトースに対する重量比は1:2~1:5であり得る。
【0261】
ある特定の実施形態では、製剤のpHは、凍結乾燥前に、薬学的に許容される酸および/または塩基の添加によって調節され得る。ある特定の実施形態では、薬学的に許容される酸は塩酸であり得る。ある特定の実施形態では、薬学的に許容される塩基は水酸化ナトリウムであり得る。
【0262】
凍結乾燥前に、本明細書に記載のタンパク質を含有する溶液のpHは6~8の間に調整され得る。ある特定の実施形態では、凍結乾燥医薬品のためのpH範囲は7~8であり得る。
【0263】
ある特定の実施形態では、塩またはバッファー成分は10mM~200mMの量で添加され得る。塩および/またはバッファーは、薬学的に許容され、「塩基形成」金属またはアミンを用いてさまざまな公知の酸(無機および有機)から得られる。ある特定の実施形態では、バッファーはリン酸バッファーであり得る。ある特定の実施形態では、バッファーは、グリシン酸バッファー、炭酸バッファー、クエン酸バッファーであり得、この場合、ナトリウム、カリウムまたはアンモニウムイオンが対イオンとして働き得る。
【0264】
ある特定の実施形態では、「増量剤」が添加され得る。「増量剤」は、凍結乾燥混合物に嵩(mass)を加え、凍結乾燥ケークの物理構造に寄与する(例えば、開孔構造を維持する本質的に均一な凍結乾燥ケークの製造を容易にする)化合物である。例示的な増量剤には、マンニトール、グリシン、ポリエチレングリコールおよびソルビトールが含まれる。本願の凍結乾燥製剤はこのような増量剤を含有し得る。
【0265】
保存剤を必要に応じて本明細書の製剤に添加して、細菌作用を減少させてもよい。保存剤の添加は、例えば、マルチユース(複数回投与)製剤の製造を容易にし得る。
【0266】
ある特定の実施形態では、凍結乾燥医薬品は、水性担体で再構成され得る。本明細書の目的の水性担体は、薬学的に許容され(例えば、ヒトへの投与にとって安全で非毒性であり)、凍結乾燥後の、液体製剤の調製に有用であるものである。例示的な水性担体には、注射用滅菌水(SWFI)、注射用静菌水(BWFI)、pH緩衝溶液(例えば、リン酸緩衝食塩水)、滅菌食塩溶液、リンゲル液またはデキストロース溶液が含まれる。
【0267】
ある特定の実施形態では、本明細書に開示の凍結乾燥医薬品は、注射用滅菌水、USP(SWFI)または0.9%塩化ナトリウム注射液、USPのいずれかで復元される。復元中、凍結乾燥粉末が溶液に溶解する。
【0268】
ある特定の実施形態では、本明細書に開示の凍結乾燥タンパク質産物は、約4.5mLの注射用水に再構成され、0.9%食塩溶液(塩化ナトリウム溶液)で希釈される。
【0269】
本明細書に記載の医薬組成物中の有効成分の実際の投与量レベルは、患者にとって毒性となることなく、特定の患者、組成物および投与様式にとって所望の治療反応を達成するのに有効な有効成分の量を得るように変化させることができる。
【0270】
具体的な用量は、各患者に均一な用量、例えば、50~5000mgのタンパク質であり得る。あるいは、患者の用量を、患者のおおよその体重または表面積に適合させることができる。適切な投与量の決定における他の因子には、処置または予防される疾患または状態、疾患の重症度、投与経路、ならびに患者の年齢、性別および健康状態が含まれ得る。処置のための適切な投与量を決定するのに必要な計算のさらなる改良は、特に投与量情報および本明細書に開示されるアッセイに照らして、当業者によって日常的に行われる。投与量はまた、適切な用量-反応データと合わせて使用される投与量を決定するための公知のアッセイの使用を通して決定することもできる。個々の患者の投与量は、疾患の進行を監視しながら調整することができる。患者における標的化可能な構築物または複合体の血中レベルを測定して、有効濃度に達するまたはこれを維持するために投与量を調整する必要があるかどうかを確かめることができる。薬理ゲノミクスを使用して、どの標的化可能な構築物および/または複合体、ならびにその投与量が所与の個体にとって十中八九有効であるかを決定することができる(Schmitz et al.、Clinica Chimica Acta 308: 43-53、2001; Steimer et al.、Clinica Chimica Acta 308: 33-41、2001)。
【0271】
一般に、体重に基づく投与量は、体重1kg当たり約0.01μg~約100mg、例えば約0.01μg~約100mg/kg体重、約0.01μg~約50mg/kg体重、約0.01μg~約10mg/kg体重、約0.01μg~約1mg/kg体重、約0.01μg~約100μg/kg体重、約0.01μg~約50μg/kg体重、約0.01μg~約10μg/kg体重、約0.01μg~約1μg/kg体重、約0.01μg~約0.1μg/kg体重、約0.1μg~約100mg/kg体重、約0.1μg~約50mg/kg体重、約0.1μg~約10mg/kg体重、約0.1μg~約1mg/kg体重、約0.1μg~約100μg/kg体重、約0.1μg~約10μg/kg体重、約0.1μg~約1μg/kg体重、約1μg~約100mg/kg体重、約1μg~約50mg/kg体重、約1μg~約10mg/kg体重、約1μg~約1mg/kg体重、約1μg~約100μg/kg体重、約1μg~約50μg/kg体重、約1μg~約10μg/kg体重、約10μg~約100mg/kg体重、約10μg~約50mg/kg体重、約10μg~約10mg/kg体重、約10μg~約1mg/kg体重、約10μg~約100μg/kg体重、約10μg~約50μg/kg体重、約50μg~約100mg/kg体重、約50μg~約50mg/kg体重、約50μg~約10mg/kg体重、約50μg~約1mg/kg体重、約50μg~約100μg/kg体重、約100μg~約100mg/kg体重、約100μg~約50mg/kg体重、約100μg~約10mg/kg体重、約100μg~約1mg/kg体重、約1mg~約100mg/kg体重、約1mg~約50mg/kg体重、約1mg~約10mg/kg体重、約10mg~約100mg/kg体重、約10mg~約50mg/kg体重、約50mg~約100mg/kg体重である。
【0272】
用量は、毎日、毎週、毎月もしくは毎年1回もしくは複数回、またはさらには2~20年毎に1回で与えられ得る。当業者であれば、測定された滞留時間および体液または組織中の標的化可能な構築物または複合体の濃度に基づいて、投与の反復率を容易に推定することができる。本明細書に記載の組成物の投与は、静脈内、動脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、胸膜内、髄腔内、腔内、カテーテルを通した灌流によるまたは直接病巣内注射によることができる。投与は、毎日1回または複数回、毎週1回または複数回、毎月1回または複数回、あるいは毎年1回または複数回であり得る。
【0273】
上記の説明は、本願の複数の態様および実施形態を説明している。本出願は、態様および実施形態の全ての組合せおよび並べ替えを具体的に企図する。
【実施例】
【0274】
以下の実施例は、単なる例示であり、本出願に記載される多重特異性結合タンパク質の範囲または内容を決して限定することを意図するものではない。
(実施例1)
SPRおよびDCS分析を使用するEGFR結合界面の選択
【0275】
この実施例は、パニツムマブよりも熱安定性が改善されたパニツムマブに由来するEGFR結合部位を開発するために設計した。簡潔には、EGFR(PDB ID:5SX4)のD3ドメインとの複合体におけるパニツムマブFabの結晶構造に基づいて選択した単一の点変異をそれぞれ含有する25の構築物を設計した。十分に発現しなかった3つの構築物以外は、EGFR結合部位を生成して、結合親和性および熱安定性に対する変異の影響を評価した。それぞれのscFv構築物はまた、VHにおけるG44C置換およびVLにおけるG100C置換を含有していた。ヒトおよびアカゲザルEGFRについての動態および親和性を、表面プラズモン共鳴(SPR)を使用して評価した。結果を表12に示す。それぞれの変異に対する影響が微小であったことを考えて、親和性の著しい低減を引き起こしたものを考慮から除外した。8つの構築物の熱安定性を、実施例3に記載される方法を使用して、示差走査蛍光定量(DSF)によってさらに評価した。結果を表13に示す。
【表12-1】
【表12-2】
【表13】
【0276】
これらの結果に基づいて、以下の変異が、親和性および熱安定性を最も有効に改善/保持すると決定した:
・重鎖:S62R(Chothiaナンバリングスキーム下)
・軽鎖:F87Y、D92R(Chothiaナンバリングスキーム下)
【0277】
これらの変異の構造モデリングを
図18~20に示す。
図18に示されるように、パニツムマブのVH鎖のS62R変異は、モデリングによれば、VLのD1と追加の水素結合を導き、VH/VL界面の安定性に寄与することが分かった。
図19に示されるように、パニツムマブのVL鎖のF87Y変異は、モデリングによれば、VHのQ39と追加の水素結合を導き、VH/VL界面の安定性に寄与することが分かった。
図20に示されるように、元は親和性を改善するため(EGFRのN449への結合のため)に設計されたパニツムマブのVL鎖のCDR3のD92R変異は、予想外にも、モデリングによれば、CDRL1のY32と追加のファンデルワールス接触を形成し、パラトープを安定化することが分かった。
【0278】
その後、親和性および熱安定性に対する変異の組合せの影響を、それぞれ、SPRおよび示差走査熱量測定(DSC)を使用して評価した。SPR分析からの結果を表14に示し、DSC分析からの結果を表15に示す。
【表14-1】
【表14-2】
【表15】
*-Hは重鎖における変異を表し; -Lは軽鎖における変異を表し; PANIはパニツムマブフレームワークを表す。
**追加ピークがピーク1とピーク2との間で観察された。
【0279】
表14および15におけるPANI-H_S62R-L_F87Y-L_D92R(本明細書の以下で「EGFR-scFv-3」)およびPANI-H_S62R-L_F87Y(本明細書の以下で「EGFR-scFv-2」)は、最良の親和性および熱安定性を実証した。L:G100CおよびH:G44Cの変異は、ジスルフィド結合を促進して、VLおよびVH鎖の対形成を増強する。
(実施例2)
TriNKETの表面プラズモン共鳴分析
【0280】
この実施例は、EGFRに対するある特定のパニツムマブ由来EGFR結合部位の結合親和性を評価するために設計した。パニツムマブおよびそのバリアントに由来するscFvを含有する4つのTriNKET、すなわち、EGFR-TriNKET-1、EGFR-TriNKET-2、EGFR-TriNKET-3およびEGFR-TriNKET-4(上記の「例示的な多重特異性結合タンパク質」サブセクション参照)を構築した。組換えヒトおよびアカゲザルEGFRについてのEGFR結合構築物の動態および親和性を、Biacore 8K機器を使用して、SPRによって測定した。試料を抗hFc IgGチップ上に捕捉し、ある範囲の濃度のヒトまたはアカゲザル組換えEGFR-Hisを、捕捉された試験物上に注入した。実験を37℃の生理的温度で行った。データを、Biacore 8K Insight評価ソフトウェア(GE Healthcare)を使用して分析した。
【0281】
SPR分析からの結合センサーグラムを
図21~24に示す。
図21は、EGFR-TriNKET-1の滴定についてのSPR分析を示し、
図22は、EGFR-TriNKET-2の滴定についてのSPR分析を示し、
図23は、EGFR-TriNKET-3の滴定についてのSPR分析を示し、
図24は、EGFR-TriNKET-1の滴定についてのSPR分析を示す。これらの分析から計算されたパラメーターを表16に示す。結果は、目的の変異が、EGFRに対する多重特異性結合タンパク質の親和性に対する実質的な影響を有していなかったことを実証した。
【表16】
(実施例3)
TriNKETの示差走査熱量測定(DSC)分析
【0282】
この実施例は、DSC分析を使用して、TriNKET構築物の熱安定性を評価するために設計した。簡潔には、試験物を、Thermo Scientific Zeba Spin脱塩カラムを使用して、選択した緩衝液に緩衝液交換した。次いで、溶出液を同じ緩衝液で0.5mg/mLに希釈した。325μLの試料を、対応する緩衝液ブランクを用いて96ウェルのディープウェルプレートにロードし、Microcal PEAQ-DSC装置(Malvern Panalytical)を使用して分析した。温度を、60℃/時間の速度で20~25℃から100℃まで上昇させた。緩衝液バックグラウンドを、分析物の前に3連で実行した。最も代表的な緩衝液ブランクを、分析前のそれぞれの分析物の走査から減算した。データを、非2状態モデルを用いて、DSC分析ソフトウェアを使用してフィットさせ、TonsetおよびTmsを報告した。
【0283】
EGFR-TriNKET-1を使用して、ベースラインとしての融解曲線を得、変曲点、特にT-onset(分子が融解を開始する温度)およびscFvの安定性に関連するTm1を特定した。その後、EGFR-TriNKET-2、EGFR-TriNKET-3およびEGFR-TriNKET-4を同じ方法を使用して分析した。
【0284】
表17および
図25A~25Dは、PBS、pH7.4緩衝液における試験からのDSC分析結果を示す。
図25Aは、PBS、pH7.4緩衝液におけるEGFR-TriNKET-1についてのDSC分析を示す。
図25Bは、PBS、pH7.4緩衝液におけるEGFR-TriNKET-2についてのDSC分析を示す。
図25Cは、PBS、pH7.4緩衝液におけるEGFR-TriNKET-3についてのDSC分析を示す。
図25Dは、PBS、pH7.4緩衝液におけるEGFR-TriNKET-4についてのDSC分析を示す。表18ならびに
図26Aおよび26Bは、20mMのヒスチジン、250mMのトレハロース、0.01%のPS80、pH6.0における試験からのDSC分析結果を示す。
図26Aは、20mMのヒスチジン、250mMのトレハロース、0.01%のPS80、pH6.0緩衝液におけるEGFR-TriNKET-3についてのDSC分析を示す。
図26Bは、20mMのヒスチジン、250mMのトレハロース、0.01%のPS80、pH6.0緩衝液におけるEGFR-TriNKET-3についてのDSC分析を示す。DSC分析は、EGFR-TriNKET-3(
図25C)がEGFR-TriNKET-2(
図25B)と比較して熱安定性が改善され、順にEGFR-TriNKET-1(
図25A)と比較して熱安定性が改善されたことを明らかにした。結果は、EGFR-TriNKET-3(
図26A)およびEGFR-TriNKET-4(
図26B)の類似の熱安定性も示した。しかしながら、EGFR-TriNKET-4は、加速熱安定性研究(40℃で4週間、データは示さない)下で分解がより生じやすく、これは、安定性に対するS62R重鎖変異の利益を強調する。
【表17】
【表18】
(実施例4)
EGFR陽性細胞へのTriNKET結合の評価
【0285】
この実施例は、細胞表面上で発現したEGFRに対するEGFR標的化TriNKETの結合親和性を評価するために設計した。非小細胞肺癌に由来するH2172ヒトがん細胞系を使用した。簡潔には、H2172細胞を、EGFR-TriNKET-1、EGFR-TriNKET-2、EGFR-TriNKET-3またはパニツムマブとともに4℃で0.5時間インキュベートした。インキュベーション後、TriNKETおよびパニツムマブのEGFR+細胞への結合パターンを、フルオロフォアコンジュゲート抗ヒトIgG二次抗体を使用して検出した。細胞をフローサイトメトリーによって分析し、二次のみの対照に対するMFI倍率を報告した。
【0286】
図27は、EGFR-TriNKET-1、EGFR-TriNKET-2、EGFR-TriNKET-3またはパニツムマブとのインキュベーション後のEGFR陽性細胞への結合を示す。これらのEGFR標的化TriNKETは、nM以下の濃度、およびパニツムマブと類似またはより高い最大結合で細胞に結合した。
(実施例5)
初代ヒトNK細胞またはCD8+細胞の細胞傷害性アッセイ
【0287】
この実施例は、EGFRを発現がん細胞に対する免疫エフェクター細胞の細胞傷害性を媒介するEGFR標的化TriNKETの能力を評価するために設計した。簡潔には、末梢血単核細胞(PBMC)を、密度勾配遠心法を使用してヒト末梢血バフィーコートから単離した。単離PBMCを洗浄し、NK細胞またはCD8+細胞単離のために調製した。NK細胞を、磁気ビーズによる負の選択技術を使用して単離し、単離NK細胞の純度は典型的には>90%CD3-CD56+であった。単離NK細胞を、補充サイトカインなしの培養培地中で一晩静置し、翌日、細胞傷害性アッセイに使用した。CD8+を、磁気ビーズによる負の選択技術を使用して単離し、CD8+細胞の純度は典型的には>90%CD3+CD8+であった。単離CD8+T細胞を、拡大のために、IL-15を有する培地中で6~13日間インキュベートした。
【0288】
細胞傷害性アッセイのために、EGFRを発現しているヒトがん細胞系を培養物から収集し、細胞をHBSで洗浄し、BATDA試薬(Perkin Elmer AD0116)で標識するために成長培地に106/mLで再懸濁した。標的細胞の標識については製造業者の使用説明書に従った。標識後、細胞をHBSで3回洗浄し、培養培地に0.5~1.0×105/mLで再懸濁した。バックグラウンドウェルを調製するために、標識細胞のアリコートを取っておき、遠心して細胞から培地を除いた。100μLの培地を3連でウェルに慎重に添加して、ペレット化細胞を乱さないようにした。100μLのBATDA標識細胞を96ウェルプレートの各ウェルに添加した。複数のウェルを、標的細胞からの自発的放出のために保全し、複数のウェルを、標的細胞の最大溶解のために1%Triton-Xの添加によって調製した。モノクローナル抗体(例えば、セツキシマブ)またはEGFRに対するTriNKET(例えば、EGFR-TriNKET-1、EGFR-TriNKET-3およびEGFR-TriNKET-4)を培養培地に希釈し、50μLの希釈mAbまたはTriNKETを各ウェルに添加した。静止NK細胞を培養物から収集し、細胞を洗浄し、所望のエフェクター対標的(E:T)比に応じて、培養培地に105~2.0×106個細胞/mLで再懸濁した。50μlのNK細胞懸濁液を合計200μlの培養体積になるようプレートの各ウェルに添加した。プレートを5%CO2で、37℃で2~3時間インキュベートした後、アッセイを行った。
【0289】
2~3時間培養した後、プレートをインキュベーターから取り出し、200gで5分間遠心分離することにより、細胞をペレット化した。20μLの培養物上清を製造業者から提供された新しいマイクロプレートに移し、200μLの室温ユーロピウム溶液を各ウェルに添加した。プレートを光から保護し、250rpmで15分間、プレートシェーカー上でインキュベートし、次いで、Victor 3またはSpectraMax i3X機器のいずれかを使用して読み取った。特異的溶解%を以下の通り計算した:
特異的溶解%=((実験放出-自発的放出)/(最大放出-自発的放出))×100%。
【0290】
図28および29に示されるように、EGFR TriNKETまたは抗EGFR mAbのセツキシマブの存在下のそれぞれH2172細胞(
図28)および786-0細胞(
図29)のヒトNK細胞およびCD8+T細胞の溶解物を、2時間のインキュベーション内に観察した。両方の系において、複数のドナーにわたって(データは示さない)、EGFR-TriNKETはnM以下のEC50値を有していた。低い活性から活性が存在しないセツキシマブと比較して、TriNKETは、より大きい最大特異的溶解および効力を提供した。
(実施例6)
TriNKETによって媒介されるNK IFN-ガンマ産生の評価
【0291】
この実施例は、EGFR発現がん細胞の存在下でNK細胞を活性化するEGFR標的化TriNKETの能力を評価するために設計した。簡潔には、BT-474 EGFR発現がん細胞は標的細胞として働いた。単離NK細胞(複数のヒトドナーに由来する)を、補充サイトカインなしの培養培地中または組換えヒトIL-2を有する培養培地中のいずれかで一晩静置した。静止NK細胞を、エフェクター細胞(NK細胞)の標的細胞に対する比(E:T比)が2:1で標的細胞とともに24時間インキュベートした一方、IL-2活性化NK細胞を、E:T比が1:1で標的細胞とともに24時間インキュベートした。インキュベーション後、NK細胞からのIFN-γの分泌を、製造業者Mesoscaleの使用説明書に従って、IFN-γ ELISAキットを使用して分析した。プレートをVictor 3またはSpectraMax i3X機器のいずれかを使用して読み取った。
【0292】
図30および
図31は、EGFR-TriNKETまたは抗EGFR mAbのセツキシマブの存在下でのBT-474細胞とのインキュベーション後、それぞれ、静止NK細胞(
図30)およびIL-2活性化NK細胞(
図31)からの生じたIFN-ガンマ産生を示す。両方の場合において、EGFR-TriNKETは、セツキシマブで処理された細胞と比較して、NK細胞によるIFN-ガンマのより高い産生を媒介した。
(実施例7)
EGFR細胞増殖アッセイ
【0293】
この実施例は、エフェクター細胞の非存在下でEGFR発現ヒトがん細胞系H292の増殖に対するEGFR TriNKETの影響を評価するために設計した。簡潔には、EGFR-TriNKETおよび抗EGFR-mAbのセツキシマブおよびパニツムマブを希釈し、H292細胞とともに72時間インキュベートした。インキュベーション後、細胞増殖を、製造業者の使用説明書に従って、Cell-titer Gloを使用して測定した。
【0294】
図32は、EGFR-TriNKETまたは抗EGFR mAbの存在下でのH292細胞増殖を示す。抗EGFR mAbで処理された細胞は、EGFR-TriNKETで処理されたものよりも低い増殖を示した。これは、TriNKETおよびmAbの価数の相違-TriNKETは一価であるが、mAbは二価である-に原因があり、mAbにおいて観察された皮膚関連毒性とのEGFR標的化の関連を考えると、より低い価数のTriNKETを使用する利益を実証した。
(実施例8)
ADCP活性アッセイ
【0295】
この実施例は、EGFR-TriNKETの存在下でEGFR発現標的細胞とインキュベートした場合のマクロファージの抗体依存性細胞ファゴサイトーシス(ADCP)活性を評価するために設計した。簡潔には、PBMCを、密度勾配遠心法を使用してヒト末梢血バフィーコートから単離した。単離PBMCを洗浄し、単球単離のために調製した。単球細胞を、磁気ビーズによる負の選択技術を使用して単離し、単離単球細胞の純度は典型的には>90%CD14であった。単球は、GM-CSFおよびIL-4中で6日間インキュベートすることによってマクロファージに分化した。
【0296】
マクロファージを収集し、CellTrace Violetで標識し、CFSE標識標的細胞(8:1)および分子とともに2時間インキュベートした。細胞を染色し、FACS解析のために調製した。ファゴサイトーシスを以下:
ファゴサイトーシス%=親ゲート「標的+」のうちの標的+およびエフェクター+%
の通り計算した。
【0297】
図33に示されるように、EGFR-TriNKET-1、EGFR-TriNKET-3およびEGFR-TriNKET-4の存在下でEGFR発現H292細胞とインキュベートされたマクロファージは、抗EGFR mAbのセツキシマブの存在下でインキュベートされたものよりも高いADCP活性を示した。結果は、CD16に結合するTriNKETの能力がFcドメインにおけるL234A、L235AおよびP329G(LALAPG)変異によって抑止された場合に、EGFR-TriNKET-1のADCP活性が失われたことも示した。
(実施例9)
in vivoでのEGFR-TriNKETの抗腫瘍有効性
【0298】
この実施例は、EGFR-TriNKETがin vivoで抗腫瘍機能を誘発するかを試験するために設計した。簡潔には、ヌードマウスに、4×106個のNCI-H292腫瘍細胞を皮下注射した。腫瘍サイズが平均して約90mm3体積になったときに(接種後7日目)、マウスを異なる処置群に無作為化した。マウスを、hIgG1アイソタイプ、EGFR-TriNKETまたはセツキシマブで週に2回腹腔内(IP)処置した。
【0299】
EGFR-TriNKETは、アイソタイプ処置動物と比較して、300μg/用量または100μg/用量で投与されたマウスにおいてNCI-H292腫瘍成長を有意に低減した(p<0.01;
図34A~C)。
図34Aは、300μg、100μg、30μgのEGFR-TriNKET、またはhIgG1アイソタイプ対照で処置された個々のマウスの平均腫瘍体積を示す。
図34Bは、300μgのEGFR-TriNKET、またはhIgG1アイソタイプ対照で処置された個々のマウスの腫瘍体積を示す。
図34Cは、100μgのEGFR-TriNKET、またはhIgG1アイソタイプ対照で処置された個々のマウスの腫瘍体積を示す。
図34Dは、30μgのEGFR-TriNKET、またはhIgG1アイソタイプ対照で処置された個々のマウスの腫瘍体積を示す。
図34A、
図34Bおよび
図34Cに示されるように、300μgおよび100μgのEGFR-TriNKETによるマウスの処置は、hIgG1アイソタイプ対照と比較して、腫瘍体積を有意に低減した。
図34Dに示されるように、30μg/用量のEGFR-TriNKETによるマウスの処置は、hIgG1処置対照群と比較して、腫瘍進行を有意に遅延させた。
【0300】
in vivoでのEGFR-TriNKET用量滴定に加えて、EGFR-TriNKETによって媒介される抗腫瘍有効性を、等モル用量の100μgセツキシマブでのセツキシマブと比較した。
図35Aに示されるように、EGFR-TriNKETによる個々のマウスの処置は、in vivoでの抗腫瘍応答の誘導においてセツキシマブと同じくらい強力であった。
【0301】
特に、EGFR-TriNKETおよびセツキシマブのレジメンは、NCI-H292腫瘍保持マウスによって十分な耐容性を示すと思われた。体重に対する臨床観察も効果もなかった(
図35B)。
参照による組み込み
【0302】
そうでないと述べられない限り、本明細書で参照される特許文献および科学論文の各々の開示全体は、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
均等物
【0303】
本願は、その精神からも本質的な特徴からも逸脱することなく、他の具体的な形態で具体化され得る。そのため、前記実施形態は、あらゆる点で、本明細書に記載される本願を限定するのではなく、例示的なものとみなされるべきである。よって、本願の範囲は、前記説明ではなく添付の特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の等価性の意味および範囲に入る全ての変更がそこに包含されることが意図される。
【配列表】