(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】スクリュ圧縮機および圧縮機ユニット
(51)【国際特許分類】
F04C 29/04 20060101AFI20241022BHJP
F04C 28/12 20060101ALI20241022BHJP
F04C 18/16 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
F04C29/04 H
F04C28/12
F04C18/16 L
(21)【出願番号】P 2023016052
(22)【出願日】2023-02-06
【審査請求日】2023-08-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100137143
【氏名又は名称】玉串 幸久
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 浩史
(72)【発明者】
【氏名】阿部 幸治
【審査官】岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-218931(JP,A)
【文献】特開2002-061769(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 29/04
F04C 28/12
F04C 18/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
0℃未満のガスである対象ガスを圧縮するスクリュ圧縮機であって、
スクリュロータを有するロータ部と、
前記ロータ部を収容するケーシングと、
圧縮室内における対象ガスの処理量を調整する処理量調整機構と、
を備え、
前記処理量調整機構が、
スライド弁と、
前記スライド弁を駆動する流体圧式の駆動機構と、
を備え、
前記駆動機構が、
シリンダ部と、
前記シリンダ部内の流体圧により前記スライド弁を押し引きする操作部と、
を備え、
前記ケーシングが、
前記スライド弁を収容するスライド弁収容部と、
圧縮前の対象ガスが存在し得る非圧縮空間に接する部位であって、内側に前記シリンダ部を収容するシリンダ収容部と、
を備え、
前記スクリュ圧縮機が、
前記圧縮前の対象ガスの冷熱による前記シリンダ部内の流体への影響を軽減するための加温流体が流通する加温流体流通路を有する、スクリュ圧縮機。
【請求項2】
前記加温流体流通路が、前記シリンダ収容部と前記シリンダ部との間、または、前記シリンダ収容部の内部に位置する第1加温流体流通路を有する、請求項1に記載のスクリュ圧縮機。
【請求項3】
前記シリンダ部に面する前記シリンダ収容部の内側面には、当該内側面を拡径する拡径部が形成され、
前記第1加温流体流通路は、前記拡径部と前記シリンダ部の外周面とによって形成される、請求項2に記載のスクリュ圧縮機。
【請求項4】
前記第1加温流体流通路は軸方向に沿って延びる、請求項2または3に記載のスクリュ圧縮機。
【請求項5】
前記ケーシングが前記シリンダ部と前記スライド弁との間を仕切る仕切り壁をさらに備え、
前記加温流体流通路が前記仕切り壁と前記シリンダ部との間に、加温流体が流通する第2加温流体流通路を有する、請求項1または2に記載のスクリュ圧縮機。
【請求項6】
請求項1または2に記載のスクリュ圧縮機と、
前記スクリュ圧縮機により圧縮された対象ガスから油を回収する油回収器と、
前記油回収器の油を前記ケーシングに導く油配管と、
を備え、
前記スクリュ圧縮機は、前記ケーシング内に設けられ、前記油配管からの油を前記加温流体として前記加温流体流通路へと導く内部導入路をさらに備える、圧縮機ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリュ圧縮機および圧縮機ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示されるように、スクリュ圧縮機にはガスの処理量を調整するためにスライド弁機構が設けられることがある。なお、他にも特許文献2、3にスライド弁機構が開示されている。
【0003】
ここで、近年、環境を考慮して、水素を発電や自動車等の燃料として用いることが考えられており、水素の需要が増大している。また、0℃未満の低温ガス、例えば液化天然ガス(LNG)、液体水素(LH2)などの低温のボイルオフガス(BOG)をスクリュ圧縮機によって回収してエンジン等の需要先に供給することが行われている。このため、スクリュ圧縮機がそのまま低温ガスを吸入する構成を採用すると、極低温に適した材料を選択する必要があったり、熱変形量を考慮した設計条件を採用したり、厳重な断熱処理を実施したりする必要がある等の制約がかかる。
【0004】
例えば、スライド弁機構の駆動部がスクリュ圧縮機の吸込側に設けられるような構造の場合には、低温ガスからの冷熱の影響を低減するための対策が必要となることが想定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-218931号公報
【文献】特開2019-218930号公報
【文献】特開2016-130483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、ケーシングの吸込側空間に滞留した油を加温するために、吸込側空間に加温流体を導入できるよう加温流体用通路が設けられている。一方で、特許文献1では、スライド弁機構の駆動部に対して低温ガスによる冷熱の影響を低減するための対策については考慮されていない。
【0007】
本願発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、低温環境下においてスライド弁の駆動機構を適切に保護することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明の一態様に係るスクリュ圧縮機は、0℃未満のガスである対象ガスを圧縮するスクリュ圧縮機であって、ロータ部と、ケーシングと、処理量調整機構と、を備える。前記ロータ部は、スクリュロータを有する。前記ケーシングは、前記ロータ部を収容する。前記処理量調整機構は、圧縮室内における対象ガスの処理量を調整する。
【0009】
本態様に係るスクリュ圧縮機において、前記処理量調整機構が、スライド弁と、前記スライド弁を駆動する流体圧式の駆動機構と、を備える。また、前記駆動機構が、シリンダ部と、前記シリンダ部内の流体圧により前記スライド弁を押し引きする操作部と、を備える。さらに、前記ケーシングが、前記スライド弁を収容するスライド弁収容部と、圧縮前の対象ガスが存在し得る非圧縮空間に接する部位であって、内側に前記シリンダ部を収容するシリンダ収容部と、を備える。
【0010】
本態様に係るスクリュ圧縮機では、前記スクリュ圧縮機が、前記圧縮前の対象ガスの冷熱による前記シリンダ部内の流体への影響を軽減するための加温流体が流通する加温流体流通路を有する。
【0011】
上記態様に係るスクリュ圧縮機は、加温流体が流通する加温流体流通路を備えるので、低温環境下でも駆動機構への冷熱の影響を抑制することができる。このため、上記態様に係るスクリュ圧縮機では、低温環境下であっても処理量調整機構の駆動機構を適切に保護することができる。具体的には、シリンダ部内の流体の温度低下による駆動性能の低下を防止できる。
【0012】
上記態様に係るスクリュ圧縮機において、前記加温流体流通路が、前記シリンダ収容部と前記シリンダ部との間、または、前記シリンダ収容部の内部に位置する第1加温流体流通路を有してもよい。
【0013】
上記態様に係るスクリュ圧縮機では、加温流体流通路が有する第1加温流体流通路がシリンダ収容部とシリンダ部との間、またはシリンダ収容部の内部に配置されているので、シリンダ収容部を介した対象ガスからの冷熱の影響を抑制できる。
【0014】
上記態様に係るスクリュ圧縮機において、前記シリンダ部に面する前記シリンダ収容部の内側面には、当該内側面を拡径する拡径部が形成されてもよく、前記第1加温流体流通路は、前記拡径部と前記シリンダ部の外周面とによって形成されてもよい。
【0015】
上記態様に係るスクリュ圧縮機では、第1加温流体流通路が上記拡径部の内周面とシリンダ部の外周面とで形成されているので、シリンダ部の外側面に溝を付けるような加工をしなくても第1加温流体流通路が形成できる。このため、上記態様に係るスクリュ圧縮機では、シリンダ部が過度に薄肉になってしまうことを防止できる。
【0016】
上記態様に係るスクリュ圧縮機において、前記第1加温流体流通路は軸方向に沿って延びてもよい。
【0017】
上記態様に係るスクリュ圧縮機では、第1加温流体流通路が軸方向に沿って延びるように形成されているので、前記軸方向における第1加温流体流通路が形成された全域に亘って駆動機構への冷熱の影響を抑制することができる。
【0018】
上記態様に係るスクリュ圧縮機において、前記ケーシングが前記シリンダ部と前記スライド弁との間を仕切る仕切り壁をさらに備えてもよく、前記加温流体流通路が前記仕切り壁と前記シリンダ部との間に、加温流体が流通する第2加温流体流通路を有してもよい。
【0019】
上記態様に係るスクリュ圧縮機では、上記仕切り壁とシリンダ部との間に第2加温流体流通路が形成されているので、スライド弁側の対象ガスからの駆動機構への冷熱の影響を抑制できる。具体的には、シリンダ部内の流体の温度低下による駆動性能低下の防止等が可能である。
【0020】
本願発明の一態様に係る圧縮機ユニットは、上記の何れかの態様に係るスクリュ圧縮機と、前記スクリュ圧縮機により圧縮された対象ガスから油を回収する油回収器と、前記油回収器の油を前記ケーシングに導く油配管と、を備える。
【0021】
本態様に係る圧縮機ユニットにおいて、前記スクリュ圧縮機は、前記ケーシング内に設けられ、前記油配管からの油を前記加温流体として前記加温流体流通路へと導く内部導入路をさらに備える。
【0022】
上記態様に係る圧縮機ユニットは、加温流体が流通する加温流体流通路を有するスクリュ圧縮機を備えるので、上述のように、低温環境下であっても処理量調整機構の駆動機構を適切に保護することができる。
【0023】
また、上記態様に係る圧縮機ユニットでは、スクリュ圧縮機から吐出の対象ガスから回収された油を加温流体として用いる。このため、上記態様に係る圧縮機ユニットでは、回収した油を加温流体として熱源として再利用するので、別途の熱源を用意する場合に比べて駆動機構を冷熱の影響から保護するためのコスト(装置コスト)、ランニングコストを低減可能である。
【発明の効果】
【0024】
上記の各態様では、低温環境下においてスライド弁の駆動機構を適切に保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】実施形態に係るスクリュ圧縮機が設けられた圧縮機ユニットを概略的に示す図である。
【
図2】実施形態に係るスクリュ圧縮機の主要部を示す断面図である。
【
図3】
図2のIII-III線断面およびのIV-IV線断面を示す断面図である。
【
図6】変形例に係る加温流体流通路の構成を示す断面図である。
【
図7】変形例に係る加温流体流通路の構成を示す断面図である。
【
図8】変形例に係る圧縮機ユニットを概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下では、本願発明の実施形態について、図面を参酌しながら説明する。なお、以下で説明の形態は、本願発明を例示的に示すものであって、本願発明は、その本質的な構成を除き何ら以下の形態に限定を受けるものではない。
【0027】
1.スクリュ圧縮機12および圧縮機ユニット10
実施形態に係るスクリュ圧縮機は、0℃未満の温度を有するガス(対象ガス)を圧縮するために用いられる圧縮機である。対象ガスとしては、液化天然ガス(LNG)のボイルオフガス、液化水素(LH2)のボイルオフガス、液化アンモニアのボイルオフガス等が挙げられる。スクリュ圧縮機は、
図1に示す圧縮機ユニット10に設けられる。すなわち、圧縮機ユニット10は、給油式のスクリュ圧縮機12と、スクリュ圧縮機12から吐出された対象ガスから油OILを回収する油回収器14と、油回収器14に回収された油OILをスクリュ圧縮機12に導く油配管15と、を備えている。油回収器14は、スクリュ圧縮機12のガス出口12aに繋がる吐出管16に設けられている。
【0028】
油配管15には、油回収機構18が設けられている。油回収機構18は、油回収器14内の油OILをスクリュ圧縮機12に向けて送り出すための油ポンプ18aと、油回収器14からの油OILを冷却する冷却器18bと、を備えている。油配管15を通りスクリュ圧縮機12に戻される油OILは冷却器18bで冷却されるが、冷却器18bを通過した油OILは、スクリュ圧縮機12に吸入される対象ガスの温度よりは高い温度を有する。なお、油回収機構18が省略され、油回収器14からの油OILが油ポンプ18aおよび冷却器18bを経由せずにスクリュ圧縮機12に戻されてもよい。
【0029】
2.スクリュ圧縮機12の詳細構成
図2に示すように、スクリュ圧縮機12は、ロータ部(第1のロータ部21、第2のロータ部22)を備えている。第1のロータ部21は、第1スクリュロータ(スクリュロータ)21aと、第1スクリュロータ21aの一端部(吸込側端部)から延びる吸込側の軸部である第1吸込側軸部21bと、第1スクリュロータ21aの他端部(吐出側端部)から延びる軸部である第1吐出側軸部21cと、を備えている。
【0030】
第2のロータ部22は、第1スクリュロータ21aに噛み合う第2スクリュロータ(スクリュロータ)22aと、第2スクリュロータ22aの一端部(吸込側端部)から延びる吸込側の軸部である第2吸込側軸部22bと、第2スクリュロータ22aの他端部(吐出側端部)から延びる吐出側の軸部である第2吐出側軸部22cと、を備えている。
【0031】
なお、本明細書において「軸方向」とは、ロータ部21,22の各軸部21b,21c,22b,22cが延びる方向を指す。
【0032】
第1スクリュロータ21aにおける歯部の外面と第2スクリュロータ22aにおける歯部の外面とにより、対象ガスを圧縮するための圧縮室43が区画されている。圧縮室43は、第1スクリュロータ21aおよび第2スクリュロータ22aの回転に伴って第1スクリュロータ21aの歯部と第2スクリュロータ22aの歯部との間の空間が閉じられることによって生ずる圧縮用空間である。圧縮室43は、スクリュロータ21a,22aの回転位置に応じて、吸込み空間42に連通した状態と、吸込み空間42および吐出空間44から遮断された状態と、吐出空間44に連通した状態と、を有する。
【0033】
第2吸込側軸部22bは、第2スクリュロータ22aに対して軸方向の一端部側に位置しており、第1吸込側軸部21bに対して平行になるように第1吸込側軸部21bに隣接して配置されている。また、第2吐出側軸部22cは、第2スクリュロータ22aに対して軸方向の他端部側に位置しており、第1吐出側軸部21cに対して平行になるように第1吐出側軸部21cに隣接して配置されている。
【0034】
スクリュ圧縮機12は、第1の吸込側軸受部25と、第2の吸込側軸受部26と、第1の吐出側軸受部27と、第2の吐出側軸受部28と、を備えている。第1の吸込側軸受部25は、円環状に形成されるとともに第1吸込側軸部21bを囲むように配置されている。第2の吸込側軸受部26は、円環状に形成されるとともに第2吸込側軸部22bを囲むように配置されている。第1の吐出側軸受部27は、円環状に形成されるとともに第1吐出側軸部21cを囲むように配置されている。第2の吐出側軸受部28は、円環状に形成されるとともに第2吐出側軸部22cを囲むように配置されている。
【0035】
スクリュ圧縮機12は、ロータ部21,22および軸受部25~28を収容するケーシング30を備えている。ケーシング30は、第1構成部31と、第1構成部31とは別体に形成された第2構成部32と、第1構成部31および第2構成部32とは別体に形成された第3構成部33と、を有する。
【0036】
第2構成部32は、スクリュロータ21a,22aが収容されるロータ収容部32aを有するとともに、後述する処理量調整機構60の一部を収容する部位である。第1構成部31は、軸方向において第2構成部32に隣接しており、第1吸込側軸部21b、第2吸込側軸部22b、第1の吸込側軸受部25、および第2の吸込側軸受部26を収容している。また、第2構成部31は、後述する処理量調整機構60の他部を収容する。第3構成部33は、軸方向において第1構成部31とは反対側において第2構成部32に隣接しており、第1吐出側軸部21c、第2吐出側軸部22c、第1の吐出側軸受部27、および第2の吐出側軸受部28を収容している。第2構成部32および第3構成部33の内、少なくとも第3構成部33には、圧縮室43から吐出された対象ガスを、ケーシング30に開口したガス出口12a(
図1を参照。)に導く吐出空間44が設けられている。
【0037】
3.処理量調整機構60と周辺部の構成
本実施形態に係るスクリュ圧縮機12は、当該スクリュ圧縮機12で処理(圧縮)する対象ガスの量を調整する処理量調整機構60がケーシング30内に収容されている。処理量調整機構60の構成およびその周辺部の構成について、
図3および
図4を用いて説明する。
図3では、上半分に
図2のIII-III線断面を示し、下半分に図のIV-IV線断面を示している。
【0038】
図3に示すように、処理量調整機構60は、スライド弁60aと、スライド弁60aを軸方向に駆動する油圧式の駆動装置60bと、を備える。スライド弁60aは、第2構成部32におけるロータ収容部32aに隣接して配置されている。スライド弁60aは、軸方向に押し引きされることにより、吐出空間44に吐出される対象ガスの量(スクリュ圧縮機12での処理量)が調整される。
【0039】
なお、処理量調整機構60のスライド弁60aは、ケーシング30におけるスライド弁収容部30bに収容されている。なお、本実施形態では、一例として、スライド弁収容室30bがケーシング30における第2構成部32に形成されている。ただし、スライド弁収容室30bの形成領域については、ケーシング30内であれば、これに限定されない。
【0040】
処理量調整機構60の駆動機構60bは、第1構成部31内に収容される筒形状のシリンダ部60dと、シリンダ部60d内の油圧によりスライド弁60aを軸方向に押し引きする操作部(ピストン)60cと、を備える。シリンダ部60dは、2つの油圧室(ヘッド側油圧室60e、ボトム側油圧室60f)を有する。各油圧室60e,60fに対しては、流出入調整機構19を介して油回収機構18が接続されている。なお、流出入調整機構19は、第1構成部31に形成された内部流出入路20を介して各油圧室60e,60fに接続されている。
【0041】
操作部60cは、各油圧室60e,60fへの油の供給/排出によって軸方向に移動する。そして、操作部60cは、吐出側の端部がスライド弁60aに接合されている。このため、スライド弁60aは、操作部60cの移動に伴って軸方向に押し引きされる。
【0042】
なお、
図3に示すように、本実施形態では2つの流出入調整機構19を配設した構成を採用するが、2つの流出入調整機構19の役割を1つの流出入調整機構で果たすようにしてもよい。
【0043】
スクリュ圧縮機12において、処理量調整機構60のシリンダ部60dは、ケーシング30におけるシリンダ収容部30aに収容されている。なお、本実施形態では、一例として、シリンダ収容室30aがケーシング30における第1構成部31に形成されている。ただし、シリンダ収容室30aの形成領域については、ケーシング30内であれば、これに限定されない。
【0044】
ケーシング30には、吸込み空間42の一方開口であるガス入口12bが設けられている。本実施形態では、一例として、ガス入口12bは第1構成部31に設けられている。吸込み空間42は、第2構成部32のロータ収容部32aに連通している。ガス入口12bから導入された0℃未満の対象ガスは、吸込み空間42を通してスクリュロータ21a,22a同士の間の圧縮室43(
図2を参照。)へと送られる。
【0045】
なお、
図3ではガス入口12bが第1構成部31に設けられた構成を一例として示しているが、ガス入口12bの形成箇所はこれに限定されない。例えば、第2構成部32や第3構成部33にガス入口12bを形成し、第1構成部31の吸込み空間42に連通する接続通路を第1構成部31や第2構成部32等に設けてもよい。
【0046】
スクリュ圧縮機12は、圧縮前の対象ガスの冷熱によるシリンダ部60d内の油への影響を軽減するための加温流体流通路50をさらに備える。加温流体流通路50は、シリンダ部60dにおける外周壁の周囲を全周にわたって覆うとともに軸方向に延びる第1加温流体流通路50aと、シリンダ部60dにおける底壁外面に面するように設けられた第2加温流体流通路50bと、を備える。第1加温流体流通路50aの構成については、後述する。
【0047】
第2加温流体流通路50bは、シリンダ部60dの底壁と仕切り壁34との間に形成された流通路である。仕切り壁34は、ケーシング30の構成要素として設けられており、シリンダ部60dの底壁に対して軸方向に間隔をあけて配置されている。仕切り壁34は、操作部60cのロッドの挿通を許す貫通孔を有する。
【0048】
加温流体流通路50には、加温された油の導入路である内部導入路52と、加温流体流通路50からの油の排出路である排出路51と、が接続されている。内部導入路52は、第1加温流体流通路50aの軸方向の吸込側端部に接続された第1内部導入路52aと、第2流体流通路50bに接続された第2内部導入路52bと、を有する。内部導入路52a,52bに対しては、油配管15(
図1を参照。)が接続される。なお、第1内部導入路52aと第2内部導入路52bとは、第1構成部31の内部で分岐されていてもよいし、外部で分岐されていてもよい。また、内部導入路52aと内部導入路52bとのそれぞれに対して、油回収器14との間に別々の油配管15が接続されてもよい。さらに、内部導入路52が第1加温流体流通路50aまたは第2加温流体流通路50bの一方に接続されるとともに、排出路51が他方に接続されてもよい。この場合、第1加温流体流通路50aを流通した後の油OILが第2加温流体流通路50bに導入される、または第2加温流体流通路50bを流通した後の油OILが第1加温流体流通路50aに導入される構成となる。
【0049】
排出路51は、一端部が加温流体流通路50に接続されるとともに、他端部がロータ収容部32aに対して開放されている。これより、加温流体流通路50から排出された油OILは、排出路51を通りロータ収容部32aへと排出される。
【0050】
なお、
図3では、第1加温流体流通路50aに一端部が接続された排出路51と第2加温流体流通路50bに一端部が接続された排出路51とが、流路の途中で集合されているが、それぞれが別々にロータ収容部32aに対して開放されてもよい。
【0051】
また、排出路51は、必ずしもロータ収容部32aに開放されていなくてもよい。加温流体の排出先は、加温流体流通路50(第1加温流体流通路50a、第2加温流体流通路50b)よりも低圧のところであれば、どこでもよい。例えば、圧縮室43(
図2を参照。)や、ケーシング30に接続された外部配管(図示を省略。)等を加温流体の排出先としてもよい。
【0052】
4.第1加温流体流通路50aの構成
第1加温流体流通路50aの構成について、
図4および
図5を用いて説明する。
【0053】
図4に示すように、第1構成部31は、軸方向に貫通する貫通孔を有する。そして、
図4および
図5に示すように、第1加温流体流通路50aは、第1構成部31における貫通孔の内周面31cとシリンダ部60dの外周面60gとの間に位置している。具体的に、第1構成部31は、貫通孔におけるシリンダ部60dの外周面60gの周囲を囲む内周面31cにおいて、軸方向の一部が拡径された拡径部31aを有する。拡径部31aに対して軸方向の両側では、内周面31cとシリンダ部60dの外周面60gとが接触している。拡径部31aの内径D1は、シリンダ部60dの外周面60gの外径D2よりも大径であり、シリンダ収容部31における拡径部31aの内周面31cとシリンダ部60dの外周面60gとの間の間隙をもって第1加温流体流通路50aが構成されている。
【0054】
また、
図5に示すように、第1加温流体流通路50aは、シリンダ部60dの周囲の周方向の全域に亘って形成されている。
【0055】
第1加温流体流通路50aに接続される内部導入路52aと排出路51とは、シリンダ部60dの周方向において互いに離間した位置に配設されている。
【0056】
5.効果
本実施形態に係るスクリュ圧縮機12は、加温流体(油OIL)が流通する加温流体流通路50を備えるので、低温環境下でも処理量調整機構60の駆動機構60bへの冷熱の影響を抑制することができる。このため、スクリュ圧縮機12では、低温環境下であっても処理量調整機構60の駆動機構60bを適切に保護することができる。具体的には、シリンダ部60d内の油の温度低下による駆動性能の低下を防止できる。
【0057】
また、スクリュ圧縮機12では、加温流体流通路50が有する第1加温流体流通路50aが第1構成部31の内周面31cとシリンダ部60dの外周面60gとの間に配置されているので、第1構成部31を介した対象ガスから駆動機構60bへの冷熱の影響を抑制できる。
【0058】
また、スクリュ圧縮機12では、第1加温流体流通路50aが拡径部31aの内周面31cとシリンダ部60dの外周面60gとの間に形成されているので、シリンダ部60dの外側面60gに溝を付けるような加工をしなくても第1加温流体流通路50aが形成できる。このため、スクリュ圧縮機12では、シリンダ部60dの周壁が過度に薄肉になってしまうことを防止できる。
【0059】
また、スクリュ圧縮機12では、第1加温流体流通路50aが軸方向に沿って延びるように形成されているので、前記軸方向における第1加温流体流通路50aが形成された全域に亘って処理量調整機構60の駆動機構60bへの冷熱の影響を抑制することができる。
【0060】
また、スクリュ圧縮機12では、仕切り壁34とシリンダ部60dの底壁との間に第2加温流体流通路50bが形成されているので、スライド弁60a側の対象ガスからの駆動機構60bへの冷熱の影響を抑制できる。具体的には、シリンダ部60d内の油の温度低下による駆動性能低下の防止等が可能である。
【0061】
また、本実施形態に係る圧縮機ユニット10は、加温流体が流通する加温流体流通路50(第1加温流体流通路50a、第2加温流体流通路50b)を有するスクリュ圧縮機12を備えるので、上述のように、低温環境下であっても処理量調整機構60の駆動機構60bを冷熱の影響から適切に保護することができる。
【0062】
また、圧縮機ユニット10では、スクリュ圧縮機12から吐出の対象ガスから回収された油OILを加温流体として用いる。このため、圧縮機ユニット10では、加温流体として別途の熱源を用意する場合に比べて駆動機構60bを冷熱の影響から保護するためのコスト(装置コスト)、ランニングコストを低減可能である。
【0063】
[変形例]
上記実施形態に係るスクリュ圧縮機12では、第1構成部31に、貫通孔の内周面31cが拡径された拡径部31aを設け、当該拡径部31aの内周面31cとシリンダ部60dの外周面60gとによって第1加温流体流通路50aを形成することとしたが、第1加温流体流通路50aの形成形態はこれに限定されない。例えば、
図6に示すように、シリンダ部60dにおける外周部の一部(軸方向の一部)に縮径部60hを設け、当該縮径部60hの外周面60gと第1構成部31の内周面31cとによって第1加温流体流通路50aを形成してもよい。この場合に、シリンダ部60dにおける縮径部60hの外径D3は、当該縮径部60hに対して軸方向の第2構成部32側に隣接するスライド弁側隣接部60iの外径D4よりも小径であればよい。ただし、外径D3を小径にし過ぎると油圧室60e,60fの油圧によって周壁が変形することが懸念されるので、外径D3と外径D4との差については、第1加温流体流通路50aにおける油圧に対して周壁の変形を抑制できるように設定することが望ましい。
【0064】
また、第1構成部31に、貫通孔の内周面31cが拡径された拡径部31aを設けるとともに、シリンダ部60dに縮径部60hを設け、第1構成部31の拡径部31aの内周面31cとシリンダ部60dの縮径部60hの外周面60gとによって第1加温流体流通路50aを形成してもよい。
【0065】
また、第1加温流体流通路50aの形成形態に関する他の変形例として、
図7に示すような形態を採用することもできる。具体的には、
図7に示すスクリュ圧縮機12では、第1構成部31における内部であって、シリンダ部60dの外周面60dから径方向外側に離間した位置に形成された第1加温流体流通路50aを備える。
図7に示す変形例の第1加温流体流通路50aについても、軸方向に沿って延びるように円環形状に形成されている。
【0066】
図6および
図7に示す各スクリュ圧縮機12においても、第1加温流体流通路50aを備えることによって当該第1加温流体流通路50aを流通する加温流体で対象ガスから駆動機構60bへの冷熱の影響を抑制することができる。
【0067】
さらに、上記実施形態では、スクリュ圧縮機12から吐出された対象ガスから分離された油OILを加温流体として用いる構成を採用したが、加温流体は油OILに限定されない。例えば、
図8に示すようにスクリュ圧縮機12から吐出された対象ガス自体が加温流体として用いられてもよい。具体的に、
図8に示す圧縮機ユニット10は、吐出管16から分岐したガス案内流路55を備えている。ガス案内流路55は、スクリュ圧縮機12により圧縮された吐出ガスの一部をスクリュ圧縮機12のケーシング30へと導く。
【0068】
内部導入路52(
図3を参照。)は、ガス案内流路55に接続されており、ガス案内流路55の吐出ガスを加温流体流通路50(第1加温流体流通路50a、第2加温流体流通路50b)へと導く。加温流体流通路50へと導かれた加温流体は、排出路51からロータ収容部32a(
図3を参照。)へと流れる。
【0069】
図8に示す圧縮機ユニット10でも、上記実施形態に係る圧縮機ユニット10と同様に、加温流体が加温流体流通路50を流通することによって、駆動機構60bへの冷熱の影響を抑制することができる。
【0070】
なお、
図8に示す圧縮機ユニット10においても、排出路51は、必ずしもロータ収容部32aに開放されていなくてもよい。加熱流体の排出先は、加温流体流通路50よりも低圧のところであれば、どこでもよい。例えば、圧縮室43で圧縮される前の対象ガスが存在する吸込み空間(非圧縮空間)42や、圧縮室43や、ケーシング30に接続された外部配管(図示を省略。)等を加温流体の排出先としてもよい。
【0071】
また、
図8に示す圧縮機ユニット10において、スクリュ圧縮機12は、上記実施形態と同様に給油式であってもよいが、給油式ではなく、給油を受けない無給油式であってもよい。
【0072】
[その他の変形例]
上記実施形態および上記変形例では、加温流体流通路50が第1加温流体流通路50aと第2加温流体流通路50bとを有する形態を一例としたが、加温流体流通路50の形成形態はこれに限定されない。例えば、加温流体流通路50が第1加温流体流通路50aだけを有する形態や、第2加温流体流通路50bだけを有する形態などを採用することもできるし、第1加温流体流通路50aと第2加温流体流通路50bに加えてこれらとは別の加温流体流通路を有する形態を採用することもできる。
【0073】
また、上記実施形態に係るスクリュ圧縮機12では第1構成部31に拡径部31aを設けて第1加温流体流通路50aが形成され、
図6に示すスクリュ圧縮機12ではシリンダ部60dに縮径部60hを設けて第1加温流体流通路50aが形成された形態を採用したが、第1加温流体流通路50aの形成形態はこれに限定を受けない。例えば、内部に第1加温流体流通路50aが形成されたスリーブを第1構成部31とシリンダ部60dとの間に填め込んでもよい。
【0074】
また、上記実施形態に係るスクリュ圧縮機12では仕切り壁34とシリンダ部60dの底壁との間の隙間を第2加温流体流通路50bとする形態を採用したが、第2加温流体流通路50bの形成形態はこれに限定を受けない。例えば、第1構成部31と一体に形成された仕切り壁とシリンダ部60dの底壁との間に隙間を形成し、当該隙間を第2加温流体流通路50bとしてもよい。スライド弁60aの駆動装置60では、油以外の流体が用いられてもよい。
【符号の説明】
【0075】
10 圧縮機ユニット
12 スクリュ圧縮機
14 油回収器
15 油配管
21 第1のロータ部
22 第2のロータ部
30 ケーシング
30a シリンダ収容部
30b スライド弁収容部
31 第1構成部
31a 拡径部
32 第2構成部
34 仕切壁
50 加温流体流通路
50a 第1加温流体流通路
50b 第2加温流体流通路
52 内部導入路
60 処理量調整機構
60a スライド弁
60b 駆動機構
60c 操作部
60d シリンダ部