(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】動的環境のための支援システム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20241022BHJP
【FI】
G08G1/16 A
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023055825
(22)【出願日】2023-03-30
【審査請求日】2023-06-27
(32)【優先日】2022-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503113186
【氏名又は名称】ホンダ リサーチ インスティテュート ヨーロッパ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Honda Research Institute Europe GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】プファル,ティム
(72)【発明者】
【氏名】エッゲルト,ユリアン
【審査官】秋山 誠
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0159215(US,A1)
【文献】特開2011-180873(JP,A)
【文献】特開2008-090663(JP,A)
【文献】国際公開第2012/032624(WO,A1)
【文献】特開2015-228204(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エージェントの動的環境内の少なくとも1つの他のエージェントが関与する前記環境内で動作する前記エージェントの動作を支援するためのコンピュータ支援方法であって、前記方法は、
前記環境を物理的に検知する少なくとも1つのセンサから、前記環境内の前記少なくとも1つの他のエージェントに関する情報、および物理的構造に関する情報を含む、センサデータを取得することと、
前記エージェントの位置および動きに関する情報を含むデータを取得することと、
前記取得されたセンサデータ、ならびに前記位置および動きに関する取得された情報に基づいて、前記少なくとも1つの他のエージェントの各エージェントの重要度スコアを計算することであって、前記重要度スコアは、前記エージェントの動力学に基づいて、前記動作するエージェントに対する特定のエージェントの関連度を記述する量的物理値であることと、
前記少なくとも1つの他のエージェントの前記計算された重要度スコアに基づいて、前記少なくとも1つの他のエージェントを含むリストを生成することと、
前記少なくとも1つの他のエージェントの前記重要度スコアに基づいて、前記生成されたリストを前記少なくとも1つの区分に分割することであって、各区分は少なくとも1つの他のエージェントを含むことと、
選択された挙動予測モデルを用いて、前記センサデータならびに前記位置および動きの情報に基づいて前記少なくとも1つの区分に含まれる前記少なくとも1つのエージェントの挙動を予測することによって予測結果を生成することであって、前記選択された挙動予測モデルは、前記少なくとも1つの区分に含まれる前記少なくとも1つのエージェントの前記重要度スコアに基づいて複数の挙動予測モデルから選択されることと、
前記予測結果を、前記エージェントを動作させるために、計画および/または制御システムに出力することと、を含
み、
前記重要度スコアの前記計算は、前記環境内の前記少なくとも1つの他のエージェントおよび物理的構造に関するデータに対し、リスクシャドーイングプロセスを適用することを含み、
前記リスクシャドーイングプロセスは、経時的に前記環境内の前記エージェントおよび前記少なくとも1つの他のエージェントの占有エリアを決定するために、センサデータならびに位置および動きの情報に基づいて到達可能性分析を行うことと、前記エージェントおよび前記少なくとも1つの他のエージェントの前記占有エリアから重複エリアを決定することと、前記決定された重複エリアに基づいて、前記少なくとも1つの他のエージェントの各々の関連度を決定することとを含む、方法。
【請求項2】
エージェントの動的環境内の少なくとも1つの他のエージェントが関与する前記環境内で動作する前記エージェントの動作を支援するためのコンピュータ支援方法であって、前記方法は、
前記環境を物理的に検知する少なくとも1つのセンサから、前記環境内の前記少なくとも1つの他のエージェントに関する情報、および物理的構造に関する情報を含む、センサデータを取得することと、
前記エージェントの位置および動きに関する情報を含むデータを取得することと、
前記取得されたセンサデータ、ならびに前記位置および動きに関する取得された情報に基づいて、前記少なくとも1つの他のエージェントの各エージェントの重要度スコアを計算することであって、前記重要度スコアは、前記エージェントの動力学に基づいて、前記動作するエージェントに対する特定のエージェントの関連度を記述する量的物理値であることと、
前記少なくとも1つの他のエージェントの前記計算された重要度スコアに基づいて、前記少なくとも1つの他のエージェントを含むリストを生成することと、
前記少なくとも1つの他のエージェントの前記重要度スコアに基づいて、前記生成されたリストを前記少なくとも1つの区分に分割することであって、各区分は少なくとも1つの他のエージェントを含むことと、
選択された挙動予測モデルを用いて、前記センサデータならびに前記位置および動きの情報に基づいて前記少なくとも1つの区分に含まれる前記少なくとも1つのエージェントの挙動を予測することによって予測結果を生成することであって、前記選択された挙動予測モデルは、前記少なくとも1つの区分に含まれる前記少なくとも1つのエージェントの前記重要度スコアに基づいて複数の挙動予測モデルから選択されることと、
前記予測結果を、前記エージェントを動作させるために、計画および/または制御システムに出力することと、を含み、
前記重要度スコアを計算することは、前記少なくとも1つの他のエージェントに含まれる第1のエージェントの影響を、前記少なくとも1つの他のエージェントのうちの少なくとも1つの第2のエージェントの影響に基づいて減少させることを含む、方法。
【請求項3】
エージェントの動的環境内の少なくとも1つの他のエージェントが関与する前記環境内で動作する前記エージェントの動作を支援するためのコンピュータ支援方法であって、前記方法は、
前記環境を物理的に検知する少なくとも1つのセンサから、前記環境内の前記少なくとも1つの他のエージェントに関する情報、および物理的構造に関する情報を含む、センサデータを取得することと、
前記エージェントの位置および動きに関する情報を含むデータを取得することと、
前記取得されたセンサデータ、ならびに前記位置および動きに関する取得された情報に基づいて、前記少なくとも1つの他のエージェントの各エージェントの重要度スコアを計算することであって、前記重要度スコアは、前記エージェントの動力学に基づいて、前記動作するエージェントに対する特定のエージェントの関連度を記述する量的物理値であることと、
前記少なくとも1つの他のエージェントの前記計算された重要度スコアに基づいて、前記少なくとも1つの他のエージェントを含むリストを生成することと、
前記少なくとも1つの他のエージェントの前記重要度スコアに基づいて、前記生成されたリストを前記少なくとも1つの区分に分割することであって、各区分は少なくとも1つの他のエージェントを含むことと、
選択された挙動予測モデルを用いて、前記センサデータならびに前記位置および動きの情報に基づいて前記少なくとも1つの区分に含まれる前記少なくとも1つのエージェントの挙動を予測することによって予測結果を生成することであって、前記選択された挙動予測モデルは、前記少なくとも1つの区分に含まれる前記少なくとも1つのエージェントの前記重要度スコアに基づいて複数の挙動予測モデルから選択されることと、
前記予測結果を、前記エージェントを動作させるために、計画および/または制御システムに出力することと、
第1の方法を適用することによって複数の他のエージェントの各々について第1の重要度スコアとしての前記重要度スコアを計算し、前記他のエージェントの第1のフィルタリングされたリストを生成するために、前記計算された第1の重要度スコアの第1のフィルタ判断基準に基づいて前記複数の他のエージェントのサブセットを破棄することと、
前記複数の他のエージェントについて、第2の方法を適用することによって第2の重要度スコアとしての前記重要度スコアを計算し、前記複数の他のエージェントの第2のフィルタリングされたリストを生成するために、前記計算された第2の重要度スコアの第2のフィルタ判断基準に基づいて、前記生成されたリストに含まれる前記複数の他のエージェントの第2のサブセットを破棄することと、を含む、方法。
【請求項4】
前記複数の挙動予測モデルは、予測精度および計算複雑度のうちの少なくとも1つに関して異なる個々の挙動予測モデルを含む、請求項1
から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つの区分は、少なくとも、第1の範囲の重要度スコアを有する前記他のエージェントを含む第1の区分と、第2の範囲の重要度スコアを有する前記他のエージェントを含む第2の区分とを含み、
前記第1の範囲は、前記第2の範囲に含まれる重要度スコアよりも低い重要度スコアを含み、
前記方法は、前記第2の区分の前記挙動予測モデルよりも低い計算複雑度を有する前記第1の区分の前記挙動予測モデルを選択することを含む、請求項1
から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記方法は、前記リストを生成するとき、閾値未満の計算された重要度スコアを有する他のエージェントを破棄することを含む、請求項1
から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つの他のエージェントの各々の前記関連度を決定することは、
前記エージェントおよび前記少なくとも1つの他のエージェントの占有エリアが存在しない場合、前記少なくとも1つの他のエージェントを無視することと、
前記重複エリアのサイズまたは前記占有エリアの距離を計算することによって、前記少なくとも1つの他のエージェントの連続関連度スコアを計算することと、を含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項8】
前記重要度スコアを計算することは、前記少なくとも1つの他のエージェントの前記重要度スコアを計算するために、前記エージェントに対する前記少なくとも1つの他のエージェントの影響に関するリスクモデルを適用することを含む、請求項1から
3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の重要度スコアを計算するための前記第1の方法は、前記第2の重要度スコアを計算するための前記第2の方法よりも低い計算複雑度を有する、請求項
3に記載の方法。
【請求項10】
前記重要度スコアを計算することは、経路距離モデル、軌道距離モデル、ガウスモデルまたは生存分析モデルを用いる、請求項1から
3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記エージェントは、モバイルロボットデバイスであり、前記少なくとも1つの他のエージェントは、他のモバイルデバイス、特に、他のモバイルロボットデバイスを含み、および/または、
前記エージェントはエゴ車両であり、前記少なくとも1つの他のエージェントは、道路交通シナリオにおける少なくとも1つの他の交通参加者、特に、他の車両、サイクリストおよび歩行者のうちの少なくとも1つであり、または、
前記動作するエージェントおよび前記少なくとも1つの他のエージェントは、海上交通シナリオにおける船舶であり、または、
前記動作するエージェントおよび前記少なくとも1つの他のエージェントは、航空交通シナリオにおける航空機であり、または、
前記動作するエージェントおよび前記少なくとも1つの他のエージェントは、宇宙環境における宇宙船である、請求項1から
3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
命令を含むプログラムであって、コンピュータが前記プログラムを実行すると、前記コンピュータに、請求項1から
3のいずれか一項に記載の方法を実行させる、プログラム。
【請求項13】
エージェントの環境内の少なくとも1つの他のエージェントが関与する動的シナリオにおいて動作する前記エージェントの動作を支援するためのシステムであって、前記システムは、
前記環境から、前記環境内の前記少なくとも1つの他のエージェントに関する情報、および/または物理的構造に関する情報を含む、センサデータを取得するように構成された少なくとも1つのセンサと、
前記エージェントの位置および動きに関する情報を含むデータを取得するように構成された少なくとも1つのエゴセンサと、
少なくとも1つのプロセッサであって、
前記取得されたセンサデータ、ならびに前記取得された位置および動きのデータに基づいて、前記少なくとも1つの他のエージェントの各エージェントの重要度スコアを計算することであって、前記重要度スコアは、エージェントの動力学に基づいて、前記動作するエージェントに対する特定のエージェントの関連度を記述する量的物理値であることと、
前記少なくとも1つの他のエージェントの前記計算された重要度スコアに基づいて、前記少なくとも1つの他のエージェントを含むリストを生成することと、
前記少なくとも1つの他のエージェントの前記重要度スコアに基づいて、前記生成されたリストを前記少なくとも1つの区分に分割することであって、各区分は少なくとも1つの他のエージェントを含むことと、
選択された挙動予測モデルを用いて、前記センサデータならびに前記位置および動きのデータに基づいて前記少なくとも1つの区分に含まれる前記少なくとも1つの他のエージェントの挙動を予測することによって予測結果を生成することであって、前記選択された挙動予測モデルは、前記少なくとも1つの区分に含まれる前記少なくとも1つの他のエージェントの前記重要度スコアに基づいて複数の挙動予測モデルから選択されることと、
前記エージェントを動作させるために前記予測結果を計画および制御システムに出力することと、を行うように構成された、少なくとも1つのプロセッサと、を備え
、
前記重要度スコアの前記計算は、前記環境内の前記少なくとも1つの他のエージェントおよび物理的構造に関するデータに対し、リスクシャドーイングプロセスを適用することを含み、
前記リスクシャドーイングプロセスは、経時的に前記環境内の前記エージェントおよび前記少なくとも1つの他のエージェントの占有エリアを決定するために、センサデータならびに位置および動きの情報に基づいて到達可能性分析を行うことと、前記エージェントおよび前記少なくとも1つの他のエージェントの前記占有エリアから重複エリアを決定することと、前記決定された重複エリアに基づいて、前記少なくとも1つの他のエージェントの各々の関連度を決定することとを含む、システム。
【請求項14】
エージェントの環境内の少なくとも1つの他のエージェントが関与する動的シナリオにおいて動作する前記エージェントの動作を支援するためのシステムであって、前記システムは、
前記環境から、前記環境内の前記少なくとも1つの他のエージェントに関する情報、および/または物理的構造に関する情報を含む、センサデータを取得するように構成された少なくとも1つのセンサと、
前記エージェントの位置および動きに関する情報を含むデータを取得するように構成された少なくとも1つのエゴセンサと、
少なくとも1つのプロセッサであって、
前記取得されたセンサデータ、ならびに前記取得された位置および動きのデータに基づいて、前記少なくとも1つの他のエージェントの各エージェントの重要度スコアを計算することであって、前記重要度スコアは、エージェントの動力学に基づいて、前記動作するエージェントに対する特定のエージェントの関連度を記述する量的物理値であることと、
前記少なくとも1つの他のエージェントの前記計算された重要度スコアに基づいて、前記少なくとも1つの他のエージェントを含むリストを生成することと、
前記少なくとも1つの他のエージェントの前記重要度スコアに基づいて、前記生成されたリストを前記少なくとも1つの区分に分割することであって、各区分は少なくとも1つの他のエージェントを含むことと、
選択された挙動予測モデルを用いて、前記センサデータならびに前記位置および動きのデータに基づいて前記少なくとも1つの区分に含まれる前記少なくとも1つの他のエージェントの挙動を予測することによって予測結果を生成することであって、前記選択された挙動予測モデルは、前記少なくとも1つの区分に含まれる前記少なくとも1つの他のエージェントの前記重要度スコアに基づいて複数の挙動予測モデルから選択されることと、
前記エージェントを動作させるために前記予測結果を計画および制御システムに出力することと、を行うように構成された、少なくとも1つのプロセッサと、を備え、
前記重要度スコアを計算することは、前記少なくとも1つの他のエージェントに含まれる第1のエージェントの影響を、前記少なくとも1つの他のエージェントのうちの少なくとも1つの第2のエージェントの影響に基づいて減少させることを含む、システム。
【請求項15】
エージェントの環境内の少なくとも1つの他のエージェントが関与する動的シナリオにおいて動作する前記エージェントの動作を支援するためのシステムであって、前記システムは、
前記環境から、前記環境内の前記少なくとも1つの他のエージェントに関する情報、および/または物理的構造に関する情報を含む、センサデータを取得するように構成された少なくとも1つのセンサと、
前記エージェントの位置および動きに関する情報を含むデータを取得するように構成された少なくとも1つのエゴセンサと、
少なくとも1つのプロセッサであって、
前記取得されたセンサデータ、ならびに前記取得された位置および動きのデータに基づいて、前記少なくとも1つの他のエージェントの各エージェントの重要度スコアを計算することであって、前記重要度スコアは、エージェントの動力学に基づいて、前記動作するエージェントに対する特定のエージェントの関連度を記述する量的物理値であることと、
前記少なくとも1つの他のエージェントの前記計算された重要度スコアに基づいて、前記少なくとも1つの他のエージェントを含むリストを生成することと、
前記少なくとも1つの他のエージェントの前記重要度スコアに基づいて、前記生成されたリストを前記少なくとも1つの区分に分割することであって、各区分は少なくとも1つの他のエージェントを含むことと、
選択された挙動予測モデルを用いて、前記センサデータならびに前記位置および動きのデータに基づいて前記少なくとも1つの区分に含まれる前記少なくとも1つの他のエージェントの挙動を予測することによって予測結果を生成することであって、前記選択された挙動予測モデルは、前記少なくとも1つの区分に含まれる前記少なくとも1つの他のエージェントの前記重要度スコアに基づいて複数の挙動予測モデルから選択されることと、
前記エージェントを動作させるために前記予測結果を計画および制御システムに出力することと、
第1の方法を適用することによって複数の他のエージェントの各々について第1の重要度スコアとしての前記重要度スコアを計算し、前記他のエージェントの第1のフィルタリングされたリストを生成するために、前記計算された第1の重要度スコアの第1のフィルタ判断基準に基づいて前記複数の他のエージェントのサブセットを破棄することと、
前記複数の他のエージェントについて、第2の方法を適用することによって第2の重要度スコアとしての前記重要度スコアを計算し、前記複数の他のエージェントの第2のフィルタリングされたリストを生成するために、前記計算された第2の重要度スコアの第2のフィルタ判断基準に基づいて、前記生成されたリストに含まれる前記複数の他のエージェントの第2のサブセットを破棄することと、を行うように構成された、少なくとも1つのプロセッサと、を備えたシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動的で密な環境においてエージェントを動作させるための支援方法およびシステムに関する。特に、この方法は、運転リスクモデルを用いた重要度フィルタリングを用いて、エージェントを動作させるための挙動計画を支援する。
【背景技術】
【0002】
車両自動化は、環境内で車両を動作させる際に車両のオペレータを支援するためのメカトロニクスまたはマルチエージェントシステム等の技術を用いる技術分野である。車両(ビークル(vehicle))という用語は、ますます多くの進化した運転支援システムを備えることができる道路車両、進化型自動操縦装置を有する航空機または無人航空車両(UAV、ドローン)、自律的に動作する惑星探査車、または水上で移動する水上バイクおよび潜水艇を包含する。
【0003】
困難なタスク、例えばナビゲーションに対処するための自動化を用いて、オペレータによる人間の入力に完全には置き換わらないがこれを容易にする車両は、半自動車両と呼ばれる場合があるのに対し、自動化のみに依拠する車両はロボットまたは自動車両と呼ばれる。自動化からの類似の技法は、ロボットデバイスが一連の行動を自動的に実行するロボット工学の分野に存在する。続いて、タスクを実行するために、環境を知覚し、行動を自動的に決定および実行することが可能である、移動デバイス、例えば車両およびロボットを含む、エージェントという一般的な用語が用いられる。
【0004】
陸上車両のための支援システムによって対処されるタスクの特徴的な例は、車両の周りの死角の監視、または道路交通環境における車線変更の支援を含む。リアルタイムで車両を動作させる支援システムの能力は、車両の環境を知覚するための手頃な価格のセンサ、および処理に要する計算能力の利用可能性に依拠する。これらはいずれも、近年大幅に改善した。道路交通環境は、現在の支援システムの能力の増大により、都市間の道路上のより複雑でない交通シナリオの支援から、輻輳した高度に動的な都市交通シナリオへの対処に移ることが可能になる特定の応用分野である。
【0005】
支援システムの設計は、安全性の課題の対応、および共通環境における他のエージェントとの潜在的な衝突の回避に対処しなくてはならない。支援システムにおける未来の動作の計画の態様は、エージェントの行動に関連付けられたリスクの管理、および安全域の遵守の確保である。現行の支援システムは、リスクモデルを適用するリスクマップを用いてエゴエージェントの未来の行動の計画を実行することができる。分析リスクモデルを、環境内の知覚されたシナリオの未来の展開の予測、エゴエージェントによって実行される潜在的行動の計画、および支援されるオペレータもしくはエゴエージェントへの警告、またはエゴエージェントによる決定された行動の自動実行の領域に適用することができる。運転リスクモデルは、経路に沿った軌道上の車両の移動を予測し、複数のリスクタイプ、例えば、環境内の他のエージェントとの衝突、静的物体との衝突、急カーブの結果として生じるリスク、または規制リスクを含む場合がある。リスクは、イベントが生じる確率、およびイベントの結果、例えばイベントの重大性を含む。エゴエージェントの行動計画中のリスクを考慮することにより、エゴエージェントの挙動選択が改善する。
【0006】
道路交通シナリオにおける運転リスクモデルの特定の例は、エージェント間衝突のための統計的リスクモデルを用いることができる。運転リスクモデルは、環境内の経路上の予測軌道上を移動するエージェントを想定することができる。エージェントの予測軌道は、一般的なガウスおよびポアソン分布不確実性を含むことができる。一般的なリスクモデルは、更なるリスク、例えば、カーブリスクまたは規則リスクを統合して衝突リスクのモデリングを超えて拡張することができる。行動計画の目的で、エゴエージェントは、リスクモデルに基づいてコスト評価を実行することができる。
図31は、衝突リスク、ならびに、衝突リスクを軽減するために、環境内の1つの他のエージェントとのインタラクションにおいて、エゴエージェントのいずれの速度でエゴ車両の経路上を進行するかを決定するエゴエージェントのタスクに対処する例を示す。
【0007】
エゴエージェントは、複数の軌道を用いた協調計画を行い、複数の他のエージェントの経路を考慮に入れるためのリスクモデルを用いることができる。リスクモデルを用いる現行の計画アルゴリズムは、いくつかのエージェント、例えば、最大5つのエージェントをリアルタイムで扱うことが可能である。これは、現行のトラフィック環境において遭遇する多くのシナリオにとって十分であり得るが、エゴエージェントに加えて複数の他のエージェントを含む都市交通シナリオのためのタスクは完全に異なる場合がある。更に、都市交通環境において、他のエージェントは、比較的高い機敏性を有するが低速度の歩行者も含む場合がある。密集した都市環境は、エゴエージェントに、エゴエージェントの環境内に15、30または更には50個の他のエージェントを含む交通シナリオを突きつける場合があり、これをエゴエージェントセンサが知覚する場合があり、支援システムが、エゴエージェントの挙動計画のために処理しなくてはならない場合がある。他のエージェントの未来の挙動の予測は、
図31において、1つの示される他のエージェントの異なる速度プロファイルによって示される、他のエージェントの各々の異なる潜在的な未来の挙動を、エゴエージェントの時間的に未来の行動を決定し、交通シナリオの安全な展開の遵守を確保するための考慮に入れなくてはならない場合がある。
【0008】
DE 10 2015 200 215 A1は、エゴ車両に先行する車両のうちの少なくとも1つ、またはエゴ車両の環境の一部分を、他の車両または環境の他の部分よりも詳細に知覚または予測するための計算リソースの動的配分を用いる運転支援システムを提案する。運転支援システムは、知覚された物体の挙動予測と、いずれの物体および環境のいずれの部分が実際にシナリオに関与しているかという問いに対処するための物体の予測挙動の関連度評価とを用いることによって、環境内の物体を知覚および予測する際の早期の結果を達成しようとする。DE 10 2015 200 215 A1が特に論じている、車線変更支援を用いた運転支援システムは、知覚された物体またはエリアの評価された関連度に基づいて動的に計算および知覚リソースを配分および再配分する。リソース配分のために予測および予測評価を用いることにより、交通シーンのリアルタイム評価を確保するための利用可能なリソースの効率的な使用が提供されるが、シナリオ内の多数の個々のエージェント間の複雑なインタラクションを伴う密集した交通環境は、記載した車線変更支援の能力を超えることになる。DE 10 2015 200 215 A1は、車線変更支援における適用を超えた知覚物体またはエリアの関連度の評価に対する効率的で一般的に適用可能な手法を欠いている。
【0009】
このため、エゴエージェントの環境におけるより動的でより密集したシナリオに対し行動計画アルゴリズムの実施をスケーリングする態様は、ますます重要なタスクとなる。
【発明の概要】
【0010】
本発明の第1の態様による支援方法、第2の態様によるプログラム、および第3の態様による支援システムは、タスクに対する解決策を提供する。
【0011】
第1の態様による支援方法は、エージェントの環境内の少なくとも1つの他のエージェントが関与する動的シナリオにおいて動作するエージェントの動作を支援する。コンピュータ実施方法は、環境から、環境内の少なくとも1つの他のエージェントおよび物理的構造に関するデータを含む、センサデータを取得することを含む。データは、環境に関する情報を伝達する。方法は、エージェントの位置および動きに関する情報を含むデータを更に取得する。「データ」という用語は、以後、データを用いて伝達される情報の同義語として用いられ、逆もまた同様であることに留意されたい。方法は、取得したセンサデータならびに取得した位置および動きのデータに基づいて、少なくとも1つの他のエージェントの各エージェントの重要度スコアを計算する。重要度スコアは、エージェントの動力学に基づいて、動作するエージェントに対する特定のエージェントの関連度を記述する量的物理値である。次に、方法は、少なくとも1つの他のエージェントの計算された重要度スコアに基づいて、少なくとも1つの他のエージェントを含むリストを生成し、少なくとも1つの他のエージェントの重要度スコアに基づいて、生成されたリストを少なくとも1つの区分に分割する。各区分は少なくとも1つの他のエージェントを含む。方法は、選択された挙動予測モデルを用いて、センサデータならびに位置および動きのデータに基づいて、少なくとも1つの区分に含まれる少なくとも1つの他のエージェントの挙動を予測することによって、予測結果を生成する。選択された挙動予測モデルは、少なくとも1つの区分に含まれる少なくとも1つのエージェントの重要度スコアに基づいて、複数の挙動予測モデルから選択される。方法は、エージェントを動作させるために、計画および制御システムに予測結果を出力する。
【0012】
第1の態様による方法は、エージェント(エゴエージェント、動作するエージェント)の環境内の各他のエージェントの重要度スコアを計算し、それぞれの重要度スコアに従って順序付けされたランク付けされたリストに、環境内で知覚された他のエージェントを配置する。方法は、他のエージェントの重要度スコアに依拠して、他のエージェントの生成されたリストを区分に分割する。方法は、順序付けされたリストのそれぞれの区分における他のエージェントメンバーシップに基づいて、他のエージェントの未来の挙動を予測する。それによって、方法は、例えば、予測正確性およびその計算複雑度に関して別の区分について選択された挙動予測モデルと異なる場合がある、区分ごとに特に選択された挙動予測モデルを適用することを可能にする。方法は、例えば、その区分に含まれる他のエージェントの重要度スコアに従って、挙動予測モデルの正確性および計算複雑度を選択することができる。これは、他のエージェントのうちの特定の低重要度スコアを有するものをフィルタリング除去し、それによって無視することさえ含むことができる。他のエージェントをそれらの重要度スコアに従って分割およびランク付けすることによって、乏しいリソースを、交通シナリオの未来の展開においてエージェントにとって高い重要度を有する他のエージェントに集中することで、処理リソースの使用を最適化することが可能になる。それによって、第1の態様による方法は、環境内に存在する多数の他のモバイルエージェントを含む、エージェントの環境内の高度に動的なシナリオを扱うための処理環境を生成する。
【0013】
方法は、少なくとも1つの他のエージェントが関与する動的シナリオにおいて動作するエージェント(エゴエージェント)の環境内の少なくとも2つのエージェントが関与するように拡張することができる。
【0014】
更に、方法は、他のエージェントの生成されたリストを、他のエージェントの重要度スコアに依拠して区分に分割することができる。1つの他のエージェントは、第1の区分(例えば、「少なくとも僅かに重要な他のエージェント」)および第2の区分(例えば、「非常に重要な他のエージェント」)に同時に存在することができる。この結果として、各区分につき1つの計画ステップの、3つの異なる並列の計画ステップにおいて他のエージェントが検討されることになり得る。このため、冗長計画の有利な効果が達成される。
【0015】
各区分が複数の他のエージェントのサブセットを含む少なくとも2つの区分を生成し、各区分に含まれる他のエージェントのための予測を別個に実行することにより、エージェントにおける動作を支援するための方法に対し、冗長性、それによって安全性およびロバスト性も導入される。これは、双方の区分に含まれる他のエージェントにおける各区分を通知するために、個々の区分間の通信能力を加えることによって更に改善することができる。
【0016】
更に、方法は、より高い区分が既に予測問題の解決策の発見に成功している場合、より低い区分からより高い区分への予測結果の生成の処理を行うことを可能にするスイッチオーバー確率を実施することができる。
【0017】
特に低い重要度スコアを有するエージェントをフィルタリングすることによって、検討に入れなくてはならない他のエージェントの数を低減することに起因して評価の計算速度を更に低減することができる。
【0018】
従属請求項は、更に有利な実施形態を定義する。
【0019】
一実施形態によれば、複数の挙動予測モデルは、予測精度および計算複雑度のうちの少なくとも1つに関して異なる個々の挙動予測モデルを含む。
【0020】
少なくとも1つの区分は、少なくとも、第1の範囲の重要度スコアを有する他のエージェントを含む第1の区分と、第2の範囲の重要度スコアを有する他のエージェントを含む第2の区分とを含むことができる。第1の範囲は、第2の範囲に含まれる重要度スコアよりも低い重要度スコアを含み、方法は、第2の区分の挙動予測モデルよりも低い計算複雑度を有する第1の区分の挙動予測モデルを選択することを含む。
【0021】
一実施形態による方法は、リストを生成するとき、閾値未満の計算された重要度スコアを有する他のエージェントを破棄することを含む。
【0022】
1つの実施形態によれば、方法は、環境内の少なくとも1つの他のエージェントおよび物理的構造に関するデータに対し、リスクシャドーイングプロセスを適用することによって重要度スコアを計算することを含む。
【0023】
この方法は、経時的に環境内のエージェントおよび少なくとも1つの他のエージェントの占有エリアを決定するために、センサデータならびに位置および動きのデータに基づいて到達可能性分析を行うステップを含むリスクシャドーイングプロセスを適用することができる。リスクシャドーイングプロセスは、エージェントおよび少なくとも1つの他のエージェントの占有エリアから重複エリアを決定し、決定された重複エリアに基づいて、少なくとも1つの他のエージェントの各々の関連度を決定する。
【0024】
一実施形態によれば、各少なくとも1つの他のエージェントの関連度を決定することは、エージェントおよび少なくとも1つの他のエージェントの占有エリアが存在しない場合、他のエージェントを無視することを含む。加えてまたは代替的に、少なくとも1つの他のエージェントの各々の関連度を決定することは、重複エリアのサイズまたは占有エリアの距離を計算することによって他のエージェントの連続関連度スコアを計算することを含む。
【0025】
1つの実施形態による、重要度スコアを計算することは、少なくとも1つの他のエージェントのうちの第1の他のエージェントの影響を、少なくとも1つの他のエージェントのうちの少なくとも1つの第2の他のエージェントの影響に基づいて減少させることを含む。
【0026】
1つの実施形態によれば、重要度スコアを計算することは、少なくとも1つの他のエージェントの重要度スコアを計算するために、エージェントに対する少なくとも1つの他のエージェントの影響に関するリスクモデルを適用することを含む。
【0027】
方法は、1つの特定の実施形態において、第1の方法を適用することによって複数の他のエージェントの各々について第1の重要度スコアとしての重要度スコアを計算することを含むことができる。次に、方法は、複数の他のエージェントの第1のフィルタリングされたリストを生成するために、計算された第1の重要度スコアの第1のフィルタ判断基準に基づいて複数の他のエージェントのサブセットを破棄することに進む。方法は、次に、複数の他のエージェントについて、第2の方法を適用することによって第2の重要度スコアとしての重要度スコアを計算し、複数の他のエージェントの第2のフィルタリングされたリストを生成するために、計算された第2の重要度スコアの第2のフィルタ判断基準に基づいて、生成されたリストに含まれる複数の他のエージェントの第2のサブセットを破棄することができる。
【0028】
有利には、第1の重要度スコアを計算するための第1の方法は、第2の重要度スコアを計算するための第2の方法よりも低い計算複雑度を有することができる。
【0029】
一実施形態による方法は、経路距離モデル、軌道距離モデル、ガウスモデルまたは生存分析モデルを用いて重要度スコアを計算することができる。
【0030】
エージェントは、モバイルロボットデバイスとすることができ、少なくとも1つの他のエージェントは、他のモバイルデバイス、特に、他のモバイルロボットデバイスを含むことができる。
【0031】
加えてまたは代替的に、エージェントはエゴ車両であり、少なくとも1つの他のエージェントは、道路交通シナリオにおける別の交通参加者、特に、他の車両、サイクリストおよび歩行者のうちの少なくとも1つである。
【0032】
動作するエージェントおよび少なくとも1つの他のエージェントは、海上交通シナリオにおける船舶とすることができる。
【0033】
動作するエージェントおよび少なくとも1つの他のエージェントは、航空交通シナリオにおける航空機とすることができる。
【0034】
動作するエージェントおよび少なくとも1つの他のエージェントは、宇宙環境における宇宙船とすることができる。
【0035】
第2の態様によるプログラムは命令を含み、命令は、コンピュータがプログラムを実行すると、コンピュータに、第1の態様による方法を実行させる。
【0036】
第3の態様による支援システムは、エージェントの環境内の少なくとも1つの他のエージェントが関与する動的シナリオにおいて動作するエージェントの動作を支援する。システムは、環境から、環境内の少なくとも1つの他のエージェントおよび/または物理的構造に関するデータを含む、センサデータを取得するように構成された少なくとも1つのセンサを備える。システムは、エージェントに関するエゴ動きデータを取得するように構成された少なくとも1つのエゴセンサと、少なくとも1つのプロセッサとを更に備える。少なくとも1つのプロセッサは、環境に関するセンサデータおよび取得したエゴ動きデータに基づいて、少なくとも1つの他のエージェントの各々について重要度スコアを計算するように構成される。重要度スコアは、エージェントの動力学に基づいて、エージェントに対する他のエージェントの関連度を記述する量的物理値である。少なくとも1つのプロセッサは、少なくとも1つの他のエージェントの計算された重要度スコアに基づいて、少なくとも1つの他のエージェントを含むリストを生成し、少なくとも1つの他のエージェントの重要度スコアに基づいて、生成されたリストを少なくとも1つの区分に分割する。各区分は少なくとも1つの他のエージェントを含む。少なくとも1つのプロセッサは、選択された挙動予測モデルを用いて、センサデータに基づいて、少なくとも1つの区分の少なくとも1つの他のエージェントの挙動を予測することによって、予測結果を生成するように構成される。少なくとも1つの区分に含まれる少なくとも1つの他のエージェントの挙動を予測するための挙動予測モデルは、他のエージェントが属する少なくとも1つの区分に基づいて、複数の挙動予測モデルから選択される。少なくとも1つのプロセッサは、エージェントを動作させるために、計画および制御システムに予測結果を提供するように更に構成される。
【0037】
第3の態様による支援システムは、第1の態様によるコンピュータ支援方法として対応する利点を達成する。
【0038】
計画および制御システムは、少なくとも1つの他のエージェントが関与する動的シナリオにおいて動作するエージェントのための制御信号を生成および出力することによって、エージェントを直接動作させることができる。加えてまたは代替的に、計画および制御システムは、オペレータに通信するために、更なる制御信号を生成し、出力デバイスに出力する。この信号は、オペレータが、少なくとも1つの他のエージェントが関与する動的シナリオにおいてエージェントを動作させるのを支援する。
【0039】
実施形態の態様および特徴は、添付の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】一実施形態による、環境内の知覚されたエージェントのフィルタリングおよびソートのシーケンスを示す図である。
【
図2】一実施形態におけるフィルタリングステップの態様を示す図である。
【
図3】フィルタリングの推測を示す、複数の他のエージェントおよびエゴエージェントが関与する道路空間における交通シナリオを示す図である。
【
図4】リスクモデルの3つの別個のタイプ内のリスクモデルの複数の例にわたる概観を提供する表である。
【
図5】距離モデルの第1の例として現行の距離モデルを示す図である。
【
図6】距離モデルの第2の例として経路距離モデルを示す図である。
【
図7】時間モデルの第1の例として最接近(closest encounter)モデルを示す図である。
【
図8】時間モデルの第2の例として、車間距離(headway)を用いた最接近モデルを示す図である。
【
図9】時間モデルの第3の例として、2D車間距離を用いた最接近モデルを示す図である。
【
図10】統計モデルの第1の例として円近似モデルを示す図である。
【
図11】統計モデルの第2の例として2Dガウスモデルを示す図である。
【
図12】統計モデルの第3の例として生存分析モデルを示す図である。
【
図13】複数の他のエージェントおよびエゴエージェントが関与する道路交差点における交通シナリオを示す図である。
【
図14】重要度フィルタリングプロセスの例示的な実施形態の処理シーケンスを示す図である。
【
図15】重要度フィルタリングプロセスの性能分析の例示的な実施形態の処理シーケンスを示す図である。
【
図16】第1のリスク閾値を用いた重要度フィルタリングの適用を示す図である。
【
図17】第2のリスク閾値を用いた重要度フィルタリングの適用を示す図である。
【
図18】第3のリスク閾値を用いた重要度フィルタリングの適用を示す図である。
【
図19】現行の距離リスクモデルを用いた重要度フィルタリングの適用を示す図である。
【
図20】生存分析リスクモデルを用いた重要度フィルタリングの適用を示す図である。
【
図21】交通シナリオにおけるエージェントのフィルタリングのための異なるリスクモデルの性能分析を示す図である。
【
図22】交通シナリオにおけるエージェントのフィルタリングのための異なるリスクモデルの性能を比較するグラフを示す図である。
【
図23】リスクシャドーイングの概念を示す第1の例示的な道路交通シナリオを示す図である。
【
図24】リスクシャドーイングの概念を示す第2の例示的な道路交通シナリオを示す図である。
【
図25】リスクシャドーイングの概念を示す第3の例示的な道路交通シナリオを示す図である。
【
図26】リスクシャドーイングプロセスの例示的な実施形態の処理シーケンスを示す図である。
【
図27】リスクシャドーイングプロセスの例示的な実施形態の処理シーケンスにおける第1のステップを示す図である。
【
図28】リスクシャドーイングプロセスの例示的な実施形態の処理シーケンスにおける第2のステップを示す図である。
【
図29】リスクシャドーイングプロセスの例示的な実施形態の処理シーケンスにおける第3のステップを示す図である。
【
図30】リスクシャドーイングプロセスの適用例を示す図である。
【
図31】交通環境内の交差路におけるエゴ車両および1つの他の車両が関与する単純な交通シナリオを示す図である。
【
図32】支援システムの構造構成要素にわたる概観を提供する図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図の論考は、異なる図面において同じ参照符号を用いて、同じまたは対応する要素を表す。この論考は、理解に悪影響を及ぼすことなく、可能であるとみなされる場合はいつでも、異なる図面について同じ参照符号を論じることを省略する。
【0042】
実施形態の以下の論考は、主に、エゴエージェントの特殊な例としてのエゴ車両の環境における他のエージェントの特殊な例として、複数の車両、自転車および歩行者を含む道路交通シナリオを参照する。道路交通シナリオは、特定の商業的関心対象であり、本発明の実施形態を説明するのに特に有用な1つの適用例にすぎないことを述べれば十分である。添付の特許請求の範囲において定義される方法およびシステムの用途は、論じられる道路交通シナリオに一切制限されない。
【0043】
図1は、一実施形態による、環境内の知覚されたエージェントのフィルタリングおよびソートのシーケンスを示す。
【0044】
図1に示す処理は、複数の他のエージェントから開始し、エージェント(エゴエージェント)のセンサ一式は、これらの他のエージェントを、エゴエージェントの環境において入力として知覚する。センサ一式は少なくとも1つのセンサを含むことができる。
図1に示すように、エゴエージェントのセンサ一式は、エゴエージェントの環境内の50個の他のエージェントを知覚し、このため、複数の他のエージェントを含む過密なシナリオがセンサ一式によってカバーされる範囲内に存在することを知覚する。
【0045】
少なくとも1つのセンサは、エゴエージェントの環境内の他のエージェントならびにオブジェクトおよび構造に関するデータを含むセンサデータを更に取得する。方法は、エゴエージェントの位置および動きデータを取得する。特に、エゴエージェントに関する位置および動きデータは、エゴエージェントの現在の状態に関するデータを含む。エゴエージェントの現在の状態は、エゴエージェントの現在の位置、エゴエージェントの進行方向、エゴエージェントの速度、およびエゴエージェントの加速または減速を含むことができる。方法は、環境のマップに対するエゴエージェントの現在の状態に関するデータを取得する。
【0046】
方法は、環境のマップに対するセンサデータを取得する。このため、少なくとも1つのプロセッサによるセンサデータならびに位置および動きデータの共通処理が可能になる。
【0047】
図1に示す処理は、フィルタ1~6による6つのフィルタリングステップのシーケンスを含む。フィルタの数は、示される数と異なる場合がある。
【0048】
フィルタ1、フィルタ2およびフィルタ3は、特定のフィルタ1、フィルタ2およびフィルタ3のために選択されたリスクモデルに基づいて、センサによって知覚される他のエージェントをフィルタリングするための、第1の処理シーケンスの一部を形成する。
【0049】
方法は、
図1の右下部分に示されるような複数のリスクモデルを用いることができる。各フィルタ1、2、3は、複数のリスクモデルから選択された特殊なリスクモデルを用いることができる。
【0050】
代替的に、少なくとも1つのフィルタ1、2および3は、特定のリスクシャドーイング処理を用いてリスクシャドーイングを行ってもよい。
図1は、
図1の左下部分におけるフィルタリングのための特定の手法としてリスクシャドーイングの手法を示す。
【0051】
例えば、フィルタ2は、フィルタリングのためにリスクシャドーイングを適用することができる。
【0052】
第1のフィルタリングステップとしてのフィルタ1への入力は、知覚された他のエージェントである。示す例において、フィルタ1は、50個の知覚されたエージェントに関するデータを入力として含むフィルタ入力データを受信する。フィルタ1は、フィルタ入力データに対し、複数のリスクモデルのうちの第1の選択されたリスクモデルを用いてフィルタリングを行う。第1のリスクモデルを用いてフィルタ入力データをフィルタリングすることにより、フィルタ1のフィルタ出力において、31個の他のエージェントに関するデータを含むフィルタ出力データが提供される。
【0053】
フィルタ1は、50個の知覚された他のエージェントのフィルタリングを行い、第1のフィルタ出力データとして、31個のフィルタリングされた他のエージェントを提供する。その後、第1のフィルタ出力データは、第2のフィルタ入力データとしてフィルタ2に供給される。
図1によれば、フィルタ2は、第2のフィルタ入力データにリスクシャドーイング処理を適用する。フィルタ2は、31個のフィルタリングされたエージェントに関するデータを含む第2のフィルタ入力データに対しリスクシャドーイングを実行し、21個のフィルタリングされた他のエージェントに関するデータを含む第2のフィルタ出力データを生成する。
【0054】
フィルタ2によって提供される第2のフィルタ出力データは、その後、他のエージェントをフィルタリングする第3の最終ステップを表すフィルタ3に提供される。
【0055】
第3のフィルタリングステップとしてのフィルタ3への入力は、フィルタ2によって出力された21個のフィルタリングされた他のエージェントである。例において、フィルタ3は、21個の他のエージェントに関するデータを入力として含むフィルタ入力データを受信する。フィルタ3は、フィルタ3に提供されたフィルタ入力データに対し、複数のリスクモデルのうちの第3の選択されたリスクモデルを用いてフィルタリングを行う。第3のリスクモデルを用いて第3のフィルタ入力データをフィルタリングすることにより、フィルタ3のフィルタ出力において、15個の他のエージェントに関するデータを含むフィルタ出力データが提供される。
【0056】
他のエージェントをフィルタリングするプロセスは、更なる処理のために他のエージェントの数を50個の知覚された他のエージェントから15個のフィルタリングされた他のエージェントに低減する。元の50個の知覚された他のエージェントから35個の他のエージェントをフィルタリング除去または破棄する結果として、これに応じて計算速度が上昇し、実際の計画モジュールにおける挙動予測処理における後続の処理の処理複雑度が低減する。
【0057】
他のエージェントの数を、元の数の知覚されたエージェントから、低減された数のフィルタリングされたエージェントまで低減することにより、環境内の混雑した高度に動的なシナリオにおいてフィルタリングを行った後でも、エゴエージェントおよび残りの他のエージェントを含む異なるエージェント間のインタラクションを考慮に入れた計画アルゴリズムを用いることが可能になる。フィルタリング手法は、リスクモデルを適用することに基づき、したがって、他のエージェントをフィルタリングするプロセスによって達成される複雑度の達成される低減の場合によっては致命的な影響を抑制する。
【0058】
図1において、フィルタ1、フィルタ2およびフィルタ3を含む3つの後続のフィルタステージを含むフィルタカスケードを用いることにより、複数のリスクモデルの中から特定のリスクモデルを選択し、それぞれ、フィルタステージのために用いられるリスクモデルのパラメータを設計することによって、フィルタカスケードの各フィルタステージを個々に最適化することが可能になる。
【0059】
フィルタ4、フィルタ5およびフィルタ6は、フィルタリングのための第1の処理シーケンスによって得られた、フィルタリングされた他のエージェントを分割するための第2の処理シーケンスの一部を形成する。フィルタ4、5、6は直列に配置される。
【0060】
分割処理のために用いられる各フィルタ4、5、6は、それぞれの選択されたリスクモデルに基づいて、フィルタ入力データのセットから、フィルタ出力データのセットを生成するための選択されたリスクモデルを用いる。
【0061】
フィルタ4、5、6の各々のための選択されたリスクモデルは、利用可能な複数のリスクモデルから選択される。
【0062】
フィルタ4は、第4のフィルタ入力データとして、第3のフィルタによって提供された第3のフィルタ出力データを得る。このため、第4のフィルタ入力データは、15個の他のエージェントのフィルタリングされたセットに関するデータを含む。フィルタ4は、第4のフィルタ入力データに第4の選択されたリスクモデルを適用し、計算された重要度スコアに基づいて、他のエージェントの第1のランク付けされたリストを生成する。計算された重要度スコアは、第4のリスクモデルを適用することによって計算される第1の重要度スコアである。
【0063】
フィルタ4は、第4のフィルタ入力データに含まれる他のエージェントの第1の区分を生成し、第1の区分に含まれるソートされたエージェントを出力する。他のエージェントの第1のランク付けされたリストの第1の区分は、最も低い重要度スコアを有する第1のランク付けされたリストに含まれる他のエージェントに対応する。第1の区分は、他のエージェントの第1のランク付けされたリストから他のエージェントの第1のサブセットを破棄することによって生成され、それぞれの計算された重要度スコアは、第4の閾値よりも小さい。
【0064】
図1において、第1の区分は、第4のフィルタに入力された15個のフィルタリングおよびソートされた他のエージェントの第1の分割の後に重要であるとみなされる、例えば9~15個のエージェントを出力する、フィルタリングおよびソートされた他のエージェントを含む。
【0065】
フィルタ5は、第3のフィルタ出力データに対応する第5のフィルタ入力データを得て、複数のリスクモデルのうちの第5の選択されたリスクモデルを用いて、計算された重要度スコアに基づいて他のエージェントの第2のランク付けされたリストを生成する。計算された重要度スコアは、第5のリスクモデルを適用することによって計算される第2の重要度スコアである。
【0066】
フィルタ5は、第5のフィルタ入力データに含まれる他のエージェントの第2の区分を生成し、第2の区分に含まれるソートされたエージェントを出力する。他のエージェントの第2のランク付けされたリストの第2の区分は、最も低い第2の重要度スコアを有する第2のランク付けされたリストに含まれる他のエージェントに対応する。第2の区分は、他のエージェントの第2のランク付けされたリストから他のエージェントの第2のサブセットを破棄することによって生成され、それぞれの計算された重要度スコアは、第5の閾値よりも小さい。
【0067】
図1において、第2の区分は、第1の区分に含まれるフィルタリングおよびソートされた他のエージェントよりも高い1つの重要度レベルであるフィルタリングおよびソートされた他のエージェントを含み、例えば、3~8個の他のエージェントが、第5のフィルタに入力されたフィルタリングおよびソートされた他のエージェントの第2の区分にあるとみなされる。
【0068】
フィルタ6は、第3のフィルタ出力データに対応する第6のフィルタ入力データを得て、複数のリスクモデルのうちの第6の選択されたリスクモデルを用いて、計算された重要度スコアに基づいて他のエージェントの第3のランク付けされたリストを生成する。計算された重要度スコアは、第6のリスクモデルを適用することによって計算される第3の重要度スコアである。
【0069】
フィルタ6は、第6のフィルタ入力データに含まれる他のエージェントの第3の区分を生成し、第3の区分に含まれるソートされたエージェントを出力する。他のエージェントの第3のランク付けされたリストの第3の区分は、最も低い第3の重要度スコアを有する第3のランク付けされたリストに含まれる他のエージェントに対応する。第3の区分は、他のエージェントの第3のランク付けされたリストから他のエージェントの第3のサブセットを破棄することによって生成され、それぞれの計算された重要度スコアは、第6の閾値よりも小さい。
【0070】
図1において、第3の区分は、まだ第1の区分および第2の区分に含まれるフィルタリングおよびソートされた他のエージェントよりも高い重要度レベルを有するフィルタリングおよびソートされた他のエージェントを含み、例えば、1または2個の他のエージェントが、第6のフィルタに入力されたフィルタリングおよびソートされた他のエージェントの第3の区分にあるとみなされる。
【0071】
フィルタ4、フィルタ5およびフィルタ6は、フィルタリングのための第1の処理シーケンスによって得られた、フィルタリングされた他のエージェントを分割するための第2の処理シーケンスを実行する。フィルタ4、5、6は、計算された重要度スコアに基づいて他のエージェントの3つの区分を提供する。重要度スコアは、少なくとも1つの選択されたリスクモデルを用いて計算される。
【0072】
他のエージェントの生成された第1の区分は、第4の閾値を超える計算された重要度スコア値を有する、フィルタリング後の他のエージェントを含む。
【0073】
後続の挙動計画アルゴリズムは、より低い計算コストを有する通常のリスクベースの計画方法を適用することができる。第1の区分に含まれる他のエージェントは、関連付けられた不確実性を有する1つの予測軌道と共に用いることができる。
【0074】
他のエージェントの生成された第2の区分は、第5の閾値を超える計算された重要度スコア値を有する、フィルタリング後の他のエージェントを含む。
【0075】
後続のインタラクティブ計画アルゴリズムは、より高度な運転状況を解決するために、中間の複雑度のインタラクティブモデルを適用することができる。第2の区分に含まれる他のエージェントは、関連付けられたフォールバック意図軌道を有する1つの単一予測軌道と共に用いることができる。
【0076】
他のエージェントの生成された第3の区分は、第6の閾値を超える計算された重要度スコア値を有する、フィルタリング後の他のエージェントを含む。
【0077】
協調計画アルゴリズムは、複雑な協働挙動モデルを適用することができ、第3の区分に含まれる他のエージェントは、複数の予測軌道および経路と共に用いることができる。
【0078】
協調計画アルゴリズムは、中間複雑度のモデルを適用するインタラクティブ計画器よりも大幅に高い計算複雑度を有する場合があり、したがって、第1の区分および第2の区分の重要度レベルを超える重要度レベルを有する第3の区分に含まれる少数の他のエージェントのためにのみ用いられる。
【0079】
フィルタ4、5、6における分割処理は、特に、方法に安全性およびロバスト性を加える冗長性を含み、これは、交通シナリオの状況分析にとって有利であり重要である。計画プロセスは、次のステップにおいて状況分析の結果を用いて、分析されたシナリオにおいてエゴエージェントによって実行するのに適したアクションを決定する。
図1の処理構造、特に、フィルタリングされた他のエージェントを分割する第2の処理シーケンスにおける冗長性およびロバスト性は、例えば、第1の区分、第2の区分および第3の区分のうちの2つまたは更には3つにおける、異なるフィルタレベルに存在する個々の他のエージェントに関する情報を通信する可能性によって向上する。分割処理において、フィルタステージのフィルタは、より高いフィルタが解をもたらさないとき、特殊な他のエージェントのための処理を停止することができ、特殊な他のエージェントを含む処理は、より低いフィルタを有するより低いレベルにおいて進行することができる。
【0080】
図2は、一実施形態における、フィルタにおけるフィルタリングステージの態様を示す。
【0081】
特に、
図2は、フィルタ出力データを生成するために、リスクモデルを用いてフィルタ入力データをフィルタリングするときのフィルタ設計および検討事項の態様を示す。フィルタステージにおけるフィルタリングは、各他のエージェントの選択されたリスクモデル、特に、フィルタ入力データに含まれる他のエージェントのデータを用いて重要度スコアを計算することに基づく。その後、フィルタは、各計算された重要度スコアをフィルタ閾値(閾値)と比較する。計算された重要度スコア値が閾値を超える場合、それぞれの他のエージェントが、フィルタリングされた他のエージェントとしてフィルタ出力データに含まれる。
【0082】
示される例において、フィルタ入力データは32個の知覚された他のエージェントを含む。フィルタ出力データは、14個の他のエージェントを含む他のエージェントのフィルタリングされたセットを含む。
【0083】
フィルタのフィルタ性能は、重要度スコアおよびフィルタ閾値を計算するために適用されるリスクモデルに依拠する。
【0084】
複数のリスクモデルからリスクモデルを選択することは、異なるリスクモデルが異なる特性を示すことを考慮に入れる。
【0085】
例えば、正確度が増大したリスクモデルは、計算時間の増大を被る。
【0086】
他方で、正確度が低減したリスクモデルは、高い重要度スコアを有する少数の他のエージェントを含む区分をフィルタリング除去する能力を有しない。
【0087】
特定のフィルタステージの設計は、フィルタ閾値を或る値に設定し、それによって、フィルタステージは、フィルタリング中、全くまたはほとんど偽陰性エラーをもたらさず、いくつかの偽陽性エラーのみをもたらす。
【0088】
図2に示す例示的な事例では、閾値は30mの距離閾値に設定され、これにより偽陰性なしを達成するのに対し、30mの距離閾値は、受容可能ではあるが複数の偽陽性をもたらし、これは、距離閾値を30mを超えて増大させると増大する。
【0089】
偽陰性は、フィルタの出力に含まれないが実際には重要であるエージェントである。このため、偽陰性エージェントがフィルタリング除去され、したがって、計画器が偽陰性エージェントを検討しないため、安全性の問題が生じる場合があり、結果として事故が発生する場合がある。
【0090】
偽陽性は、実際には重要でなく、有害な結果を引き起こすことなく安全に無視することができるにもかかわらず、フィルタの出力に依然として含まれるエージェントである。安全性を確保するために、偽陽性を引き起こすことよりも、偽陰性を回避することが重要である。この態様は、それぞれの閾値を適宜設定するときに検討される。
【0091】
選択されたリスクモデルを用いたフィルタの設計は、一方で、リアルタイム用途、およびエゴエージェントの環境内の高度に動的なシナリオを扱うために特に重要な、フィルタリングプロセスの計算速度を考慮に入れる。他方で、選択されたリスクモデルを用いたフィルタの設計は、エゴエージェントの環境内の多数の他のエージェントが関与する高度に動的なシナリオを扱うために特に重要な、フィルタリングプロセスのフィルタリングされる他のエージェントの数を考慮に入れる。
【0092】
実施形態は、後続のフィルタステージにおける複数のリスクモデルから選択された異なるリスクモデルを用いることによって、フィルタリング手法のこれらの設計ターゲットを扱う。
【0093】
図3は、フィルタリングの推測を示す、複数の他のエージェントおよびエゴエージェントが関与する道路区間における交通シナリオを示す。
【0094】
通常、リスクモデルを用いて他のエージェントのセットのフィルタリングを行い、他のエージェントのフィルタリングされたセットを生成することは、2つの特定の態様を有する。リスクモデルを用いたフィルタリング手法の第1の態様は、エゴエージェントの環境内の知覚された動的シナリオにおける完全なリスクに対する単一のエージェントの寄与が考慮されることである。フィルタリング手法の第2の態様は、重要度スコアがリスク閾値を超えない更なる処理から他のエージェントをフィルタリング除去または無視することに関する。この手法の効果は、他のエージェントが、エゴエージェントの未来の挙動に本質的に影響を及ぼさないため、フィルタリング除去され、更なる処理について考慮されないことである。
【0095】
図3は、左への第1の運転方向2、および第1の運転方向2と反対方向への第2の運転方向3の、運転方向ごとに2つの車線を有する直線道路区間1上に32個のエージェントを含む交通シナリオにおいてこれを示す。道路区間1は4つの経路4、5、6、7を提供する。
【0096】
32個のエージェントは、エゴエージェントと、31個の他のエージェントとを含む。
図3は、それぞれの第1または第2の運転方向2、3への経路4、5、6、7に沿った31個の他のエージェントおよびエゴエージェントの軌道を示す。
【0097】
図3は、計算された重要度スコアが、知覚された環境における示された道路交通シナリオ内のエゴエージェントに対する重要度が低いことを示す他のエージェントを、破線の楕円8で囲むことによって示す。これらの楕円8内の他のエージェントは、後続の行動計画の結果、および行動計画の結果に基づいてエゴエージェントによって行われる行動に悪影響を及ぼすことなく、更なる検討について無視することができる。
【0098】
図4は、リスクモデルの3つの別個のタイプ内のリスクモデルの複数の例にわたる概観を提供する表を示す。
【0099】
フィルタ1、3、4、5、6を用いて実施されるフィルタリングステージは、それぞれ、複数のリスクモデルから選択された、選択されたリスクモデルを用いる。
図4は、フィルタ1、3、4、5、6において用いることができる3つの異なるタイプのリスクモデルにおける複数のリスクモデルについての例を表形式で表示する。
【0100】
表は、リスクモデルの各示されたタイプを1つの列に配置する。1つのタイプの中で、リスクモデルは、それぞれのリスクモデルが提供する結果としての重要度スコアの正確性の増大に従って、表の上部から底部に配置される。リスクモデルの正確性の増大は、計算コストの増大に対応し、したがって、表の右側に示されるように、リスクモデルによる処理リソースのそれぞれの使用に対応する。
【0101】
図5~
図12は、知覚されたシナリオにおける2つのエージェント間のインタラクションを記述する連続値を提供するメトリックを決定するための特定の例を示す。決定されたメトリックは、リスクモデルによって決定される重要度スコアの実例を表す。
【0102】
図5~
図12は、
図4の各リスクモデルについて、リスクモデルが他のエージェントとエゴエージェントとの間のインタラクションの重要度スコアをどのように計算するかを示す。
図5~
図12は、エゴエージェントの環境内の交差路におけるそれぞれの軌道上を移動するエゴエージェントおよび他のエージェントの基本道路交通シナリオを用いる。インタラクションは、他のエージェントとエゴエージェントとの間の予測される衝突に対応する。
【0103】
通常、リスクモデルは、0~1の範囲内にあるリスク値を提供し、エージェント間の衝突の確率を記述する。リスクの重大性の結果は、本例において無視される。重要度スコアは、リスクモデルによって提供されたリスク値として定義される。高いリスク値は、高いリスクを意味し、他のエージェントが、動作するエージェントのエゴ挙動に影響を及ぼすため、高い重要度を示す。距離モデルおよび時間モデルは、特に、距離または時間の逆数を考慮することによって、リスク値に変換することができる。リスクモデルの第1のタイプは、左列における距離モデルである。
【0104】
リスクモデルの第2のタイプは、
図4の中央列における時間モデルである。
【0105】
リスクモデルの第3のタイプは、
図4の右列における統計モデルである。
【0106】
図4のリスクモデルのタイプ数も、リスクモデルの数も包括的ではない。示されるリスクモデルは、フィルタ1、3、4、5、6を実施するために有用であることがわかったリスクモデルの例を表す。実施態様における他のリスクモデルの使用が等しく可能であり、異なるかまたは更に良好な結果をもたらし得る。
【0107】
図5は、距離モデルの第1の例として現行の距離モデルを示す。
【0108】
距離モデルは、エゴエージェントの決定された現在の位置(エゴ位置)と、他のエージェントの位置(他の位置)との間の現在の距離を計算することによって、エゴエージェントと他のエージェントとの間のインタラクションの重要度スコアを決定する。重要度スコアは、エゴエージェントと他のエージェントとの間の衝突確率を表す。
【0109】
図6は、距離モデルの第2の例として経路距離モデルを示す。
【0110】
経路距離モデルは、エゴエージェントの経路(エゴ経路)と、他のエージェントの経路(他の経路)との間の経路距離を計算することによって、エゴエージェントと他のエージェントとの間のインタラクションの重要度スコアを決定する。特に、経路距離は、環境のマップにおいて決定されたエゴエージェントの経路と、他のエージェントの経路との間の距離の最小値に対応する。
【0111】
交差路の特定の例において、距離は0であり、リスクは最大であり、これは、重要度が最大であることも意味する。
【0112】
図7は、時間モデルの第1の例として最接近モデルを示す。
【0113】
最接近モデルは、エゴ経路に沿って或る速度(エゴ速度)で移動しているエゴエージェントの軌道と、他の経路に沿って自身の速度(他の速度)で移動している他のエージェントの軌道との間の最接近点の距離を計算することによって、エゴエージェントと他のエージェントとの間のインタラクションの重要度スコアを決定する。最接近距離は、未来の時間ステップについて予測される、エゴエージェントと他のエージェントとの間の距離の最小値である。
【0114】
図8は、時間モデルの第2の例として車間距離を用いた最接近モデルを示す。
【0115】
車間距離を用いた最接近モデルは、
図7による最接近距離を、計算された車頭時間と組み合わせることによって、エゴエージェントと他のエージェントとの間のインタラクションの重要度スコアを決定する。車頭時間は、他のエージェントが急停止すると仮定して、エゴエージェントが同じ経路上の他のエージェントの位置に達するまでに経過する時間として計算される。最接近距離は、未来の時点について、エゴ経路に沿って或る速度(エゴ速度)で移動しているエゴエージェントの軌道と、他の経路に沿って自身の速度(他の速度)で移動している他のエージェントの軌道との間の距離を予測することによって決定される。最接近距離は、未来の時間ステップについて予測される、エゴエージェントと他のエージェントとの間の距離の最小値である。車間距離は、自身の経路上の予測軌道上の他のエージェントがエゴエージェントの経路と交差するとき、エゴエージェントの現在の位置から、その時点のエゴエージェントの予測される未来の位置への距離を決定することによって計算される。
【0116】
図9は、時間モデルの第3の例として、2D車間距離を用いた最接近モデルを示す。
【0117】
2D車間距離を用いた最接近モデルは、
図7による最接近距離を、計算された2D車間距離と組み合わせることによって、エゴエージェントと他のエージェントとの間のインタラクションの重要度スコアを決定する。最接近距離は、未来の時点について、エゴ経路に沿って或る速度(エゴ速度)で移動しているエゴエージェントの軌道と、他の経路に沿って自身の速度(他の速度)で移動している他のエージェントの軌道との間の距離を予測することによって決定される。最接近距離は、未来の時間ステップについて予測される、エゴエージェントと他のエージェントとの間の距離の最小値である。2D車間距離は、エゴエージェントの経路と他のエージェントの経路との間に交差ポイントが存在するか否かを判断することによって計算される。交差ポイントが存在する場合、他の車両はエゴ車両の経路上に投影される。交差点への距離が、同じ距離を有する他のエージェントの位置をエゴ経路に投影するための基準とみなされる。その後、2D車間距離は、エゴエージェントの現在の位置と、エゴエージェントの経路上の他のエージェントの投影された位置との間の距離として計算される。再び長手方向に車間距離を計算することによって、車間距離の2次元形式が達成され、これは、時間ベースのリスクモデルR2D-THを定式化することができる。
【0118】
図10は、統計モデルの第1の例として円近似モデルを示す。
【0119】
円近似モデルは、エゴエージェントの予測経路上のエゴエージェントの予測位置の不確実性、および他のエージェントの予測経路上の他のエージェントの予測位置の不確実性を考慮に入れる。円は、それぞれのエージェントの位置の不確実性を近似する。円近似モデルは、エゴエージェントの位置の不確実性の円近似と、予測軌道に沿った他のエージェントの対応する位置の不確実性の円近似との間の距離の最小値(円距離)を決定することによって、エゴエージェントと他のエージェントとの間のインタラクションの重要度スコアを決定する。
図10における円は、ガウス分布の99%の確率を近似することができる。距離は、同時点におけるエゴエージェントおよび他のエージェントの円間の距離に対応する。
図10の例示に関して、エゴエージェントおよび他のエージェントの経路は、それらのエージェントが同時に交差点にあり、円近似が0である場合にのみ交差する。経路距離モデルと対照的に、円近似モデルは、エゴエージェントおよび他のエージェントの位置の予測を含む。
【0120】
図11は、統計モデルの第2の例として2Dガウスモデルを示す。
【0121】
2Dガウスモデルは、エゴエージェントの予測経路上のエゴエージェントの予測位置の不確実性、および他のエージェントの予測経路上の他のエージェントの予測位置の不確実性を考慮に入れる。2Dガウス分布は、エゴエージェントの位置および他のエージェントの位置の不確実性をモデル化する。2Dガウスモデルは、エゴエージェントの位置の不確実性の2Dガウス分布と、それぞれの予測軌道上の他のエージェントの対応する位置の不確実性の2Dガウス分布との間の重複エリアの最小値を決定することによって、エゴエージェントと他のエージェントとの間のインタラクションの重要度スコアを決定する。
図11における2Dガウスモデルは、それぞれ、エゴエージェントおよび他のエージェントの周りの楕円を用いて99%まで確率を示す。
【0122】
図12は、確率論的モデルの第3の例として生存分析モデルを示す。
【0123】
2Dガウスモデルは、エゴエージェントの予測経路上のエゴエージェントの予測位置の不確実性、および他のエージェントの予測経路上の他のエージェントの予測位置の不確実性を考慮に入れる。2Dガウス分布は、エゴエージェントの位置および他のエージェントの位置の不確実性を近似する。生存分析モデルは、ポアソン依存の生存関数を用いて全てのガウス重複を統合することによって、エゴエージェントと他のエージェントとの間のインタラクションの重要度スコアを決定する。
【0124】
図13は、複数の他のエージェントおよびエゴエージェントが関与する2つのルート12、13の交差点11における交通シナリオを示す。
【0125】
シナリオは、エゴエージェント(エゴ車両)および47個の他のエージェント(他の車両)を含む道路交通シナリオを表すことができる。したがって、エゴエージェントは、47個の他のエージェント(知覚される他のエージェント)を知覚する。
【0126】
第1のルート(道路)12は、運転方向2、3あたり2つの車線を示す。第2のルート(道路)13は、運転方向14、15あたり2つの車線を有する。
【0127】
図13に示す道路交通シナリオは、重要度スコアに基づくフィルタリングプロセスの基礎を形成する。
【0128】
図14は、重要度フィルタリングプロセスの例示的な実施形態の処理シーケンスを示す。
【0129】
知覚された他のエージェントのセットは、フィルタ入力データを表す。第1のステップS11において、各単一の他のエージェントのリスクが決定される。特に、ステップS11において、方法は、選択されたリスクモデルを適用することによって、他のエージェントおよびエゴエージェントの重要度スコアを計算する。
【0130】
ステップS12において、単一のエージェントについて決定されたリスクが、所定のリスク閾値と比較される。決定されたリスクがリスク閾値を超えていない場合、方法は、他のエージェントを無視することができると判断する。この事例を所与として、ステップS13において、他のエージェントは、フィルタリングされたエージェントのセットを生成するために、知覚された他のエージェントのセットから除去される。
【0131】
ステップS11において重要度スコアを計算することによって、他のエージェントによって表されるリスクを決定するために、ステップS12において、決定された重要度スコアが、それぞれの重要度閾値と比較される。計算された重要度スコアが重要度閾値以上である場合、他のエージェントは、他のエージェントのフィルタリングされたセット内に維持される。ステップS12において、計算された重要度スコアが重要度閾値未満である場合、ステップS13において、他のエージェントは、他のエージェントのフィルタリングされたセットを生成するためにエージェントのセットから除去される。
【0132】
方法は、フィルタ入力データに含まれるエージェントのセット内に含まれる各エージェントについてステップS11~S13を実行する。生成された、エージェントのフィルタリングされたセットは、フィルタによってフィルタ出力データ内に出力される。
【0133】
図15は、重要度フィルタリングプロセスの性能を評価するための例示的な実施形態の処理シーケンスを示す。
【0134】
選択されたリスクモデルを用いた重要度フィルタリングプロセスの性能分析は、フィルタ入力データ内の他のエージェントのセットを取得し、複数のリスクモデルのうちの特定のリスクモデルを選択し、ステップS11~S13によるフィルタリングプロセスを実行することによってエージェントのフィルタリングされたセットを生成するステップS21を含む。ステップS21において、フィルタの性能分析のための基準を得るために、エージェントの固定されたセットが、例えば、ベースラインリスクモデルとして生存分析を用いることによって得られる。
【0135】
ステップS23において、フィルタの性能分析は、ステップ21からのエージェントのフィルタリングされたセットを、ステップS23における生存分析から得られたエージェントの固定のセットと比較することによって実行される。
【0136】
図16~
図17は、特定の他のエージェントが、フィルタリング中に維持されるか、または他のエージェントのフィルタリングされたセットを生成するために除去されるかを判断するために、重要度スコアの閾値を設定する効果を示す。
図16~
図18は、
図13を参照して示し、論じた複数の他のエージェントおよびエゴエージェントが関与する2つのルート12、13の交差点11における交通シナリオに基づく。
【0137】
図16は、第1のリスク閾値を用いた重要度フィルタリングの適用を示す。
【0138】
図16において、他のエージェントのセットをフィルタリングするための第1のリスク閾値が、高い閾値に設定される。フィルタリング処理のステップS12の比較において、高い閾値は、他のエージェントのうちの僅かについてのみ、計算された重要度スコアが高いリスク閾値を超えるという効果を有する。このため、フィルタ出力データに含まれる他のエージェントのフィルタリングされたセットは、最も関連度の高い他のエージェントのみを含む。
【0139】
図16は、実線による重要度スコアの閾値を超える、一方でエゴエージェント、他方で他のエージェントのインタラクションを示す。
【0140】
図17および
図18は、計算された重要度スコアの閾値を個々に超える、一方でエゴエージェント、他方で他のエージェントの個々のインタラクションを示すのではなく、エゴエージェントのインタラクションについて計算された重要度スコアがそれぞれの閾値を超える他のエージェントのみを斜線エリアによって示す。
【0141】
図17は、第2のリスク閾値を用いた重要度フィルタリングの適用を示す。第2のリスク閾値は中間閾値を有する。第2のリスク閾値は第1の閾値よりも大きい。フィルタリング処理のステップS12の比較において、この中間閾値は、他のエージェントのうちのいくつかについて、計算された重要度スコアが中間閾値未満であるという効果を有する。このため、フィルタ出力データに含まれる他のエージェントのフィルタリングされたセットは、他のエージェントの大部分を含む。限られた数のみの知覚された他のエージェントが、フィルタ出力データの他のエージェントのフィルタリングされたセットを生成するために、フィルタ入力データの他のエージェントのセットから除去される。
【0142】
図18は、第3のリスク閾値を用いた重要度フィルタリングの適用を示す。第3のリスク閾値は低閾値を有する。第3のリスク閾値は第1の閾値よりも小さい。フィルタリング処理のステップS12の比較において、この低い閾値は、他のエージェントのうちのいずれについても、計算された重要度スコアが中間閾値未満でないという効果を有する。このため、フィルタ出力データに含まれる他のエージェントのフィルタリングされたセットは、全ての他のエージェントを含む。
図18における斜線エリアが示すように、知覚された他のエージェントのいずれも、フィルタ出力データの他のエージェントのフィルタリングされたセットを生成するために、フィルタ入力データの他のエージェントのセットから除去されない。
【0143】
図19および
図20は、
図13の2次元ベースシナリオを第3の次元に拡張する、1つのエゴエージェントおよび複数の他のエージェントを含む複数の無人航空機(ドローン)が関与する例示的な動的交通シナリオに基づく。
【0144】
図19および
図20に示す交通シナリオは、それぞれ8個の経路上に配置された56個のエージェントを含む。知覚された他のエージェントの数は55であり、それによって、複雑な動的シナリオを生成する。
【0145】
エゴエージェントは、斜線内部エリアを有する円で示される。単色エリアの円は、
図19および
図20における他のエージェントを表す。
【0146】
図19および
図20における他のエージェントを表す着色エリアの影は、エゴエージェントとそれぞれの他のエージェントとの間のインタラクションの重要度スコアについて計算された実際の値に対応する。
【0147】
図19は、現行の距離リスクモデルを用いた重要度フィルタリングの適用を示す。
【0148】
エゴエージェントに近い他のエージェントのより暗い影は、現在の距離リスクモデルを用いることによって計算された重要度スコアの結果として、それぞれ高い計算された重要度スコア値が得られることを示す。それとは対照的に、エゴエージェントから離れた他のエージェントの薄い影は、現在の距離リスクモデルを用いることによって計算された重要度スコアの結果として、
図19の例において、それぞれ低い計算された重要度スコア値が得られることを示す。
【0149】
このため、現在の距離リスクモデルは、これらの他のエージェントを、エゴエージェントに対しより離れた位置に現在ある他のエージェントの重要度よりも高い重要度で重み付けする。
【0150】
図20は、
図19に示すのと同じ知覚されたシナリオにおける生存分析リスクモデルを用いた重要度フィルタリングの適用を示す。
【0151】
エゴエージェントと同じ経路上、および交差点におけるエゴエージェントの経路に交差する経路上の他のエージェントのより暗い影は、生存分析リスクモデルを用いることによって計算された重要度スコアの結果として、エゴエージェントとこれらの他のエージェントとの交差について、それぞれ高い計算された重要度スコア値が得られることを示す。それとは対照的に、エゴエージェント、およびエゴエージェントが接近している交差点を既に通過した他のエージェントの経路から離れた経路上の他のエージェントの薄い影は、生存分析リスクモデルを用いることによって計算された重要度スコアの結果として、これらの他のエージェントについての
図20の例においてそれぞれ低い計算された重要度スコア値が得られることを示す。
【0152】
図21は、交通シナリオにおける他のエージェントのフィルタリングのための異なるリスクモデルの性能分析のための基本パラメータを示す。
【0153】
図21は、概略図において、個々の要素16を配置し、各要素は、知覚された他のエージェントに対応する。用語TRUEおよびFALSEは、他のエージェントの正しいまたは誤った破棄を表す。平面17内に配置されたフィルタ入力データ内の他のエージェントのセットは、複数の真陽性要素TPおよび複数の偽陽性要素FP、複数の真陰性要素TN、および複数の偽陰性要素FNを含む。円19は、フィルタ出力データ内の他のエージェントのセットを定義し、これは、複数の真陽性要素TPおよび複数の偽陽性要素FPを含む。
【0154】
平面17のエリア18内の関連要素は、偽陰性要素および真陽性要素である。フィルタ性能を分析するために、式(1)は真陽性率を定義し:
【0155】
【0156】
【0157】
式(1)による真陽性率および式(2)による偽陽性率は、1つの特定の選択されたリスクモデルを用いた、他のエージェントのセットをフィルタリングするための単一のステージフィルタについて決定される。これは、複数のリスクモデルのうちの異なるリスクモデルの特徴性能を互いに比較することを可能にする。
【0158】
図22は、交通シナリオにおける他のエージェントのフィルタリングのための異なるリスクモデルの性能の比較を可能にするグラフを示す。
図22は、生存分析に関して、異なるリスクモデルからの重要度フィルタリング結果を量的に比較する。生存分析は、最も正確なモデルとみなされ、所定の固定リスク閾値を用いて、いずれの他のエージェントがフィルタリング除去されるか、およびいずれが残るかをチェックし、フィルタリングされたエージェントの双方のセットを、各リスクモデルからのものと比較する。それによって、偽陰性および偽陽性誤りの数を計算することができる。リスクモデルごとに、リスク閾値は変動することができ、その性能は、生存分析により得られた結果と比較することができる。
図22のプロットは、リスクモデルの異なるリスク閾値について、偽陽性率を上回る真陽性率を示す。真陽性率は、これらの2つの率のより重大な方のパラメータである。なぜなら、これは生存分析によって判定するとき、フィルタリング除去されるが重要であるとみなされるエージェントに対応する、偽陰性誤りを含むためである。偽陰性エラーを含むフィルタリングに基づいて後続の計画を行うことによって、計画の結果が安全でないものとなり得る。
図22において、理想的なプロットは、真陽性率=1および偽陽性率=0の理想点に可能な限り近づく。
図22における個々の曲線を分析することによって、それらのフィルタリング性能に対するリスクモデルのレーティングが可能になる。
【0159】
図22の横軸において、式(2)に従って計算された偽陽性率が示される。縦軸の方向において、
図22は、式(1)による真陽性率を示す。真陽性率は閾値に依拠する。特定のリスクモデルの曲線上の特定の点は、特定の設定閾値に対応する。異なる閾値を設定することは、特定のリスクモデルの曲線の異なる点への移動に対応する。同じ交通シナリオのためのフィルタ性能は、複数のリスクモデルから選択された異なるリスクモデルを用いて計算される。
【0160】
それぞれの曲線によって示される複数のリスクモデルは、現在の距離モデル、経路距離モデル、軌道距離モデル、最接近モデル、接近および車間距離モデル、接近および第2の車間距離モデル、円近似モデル、ガウスモデル、および生存分析モデルを含む。
【0161】
参照の目的で、
図22は、破線を用いて、排他的ランダムフィルタリングのための真陽性率と偽陽性率との間の対応関係を表すそれぞれの曲線も示す。
【0162】
特定のリスクモデルを用いるフィルタに対応する
図22に示す曲線を比較すると、いくつかのフィルタは、比較的弱い性能を示す。
【0163】
例えば、現在の距離モデルは、ランダムフィルタリング手法と類似の性能を示す。現在の距離モデルは、理想的な点(真陽性率=1および偽陽性率=0)から遠く離れている。
【0164】
経路距離モデルは、高い偽陽性率で際立っている。経路距離モデルは、低い真陽性率値または高い偽陽性率値のいずれかを有し、結果として理想的な点に対し大きな距離となる。
【0165】
最接近車間距離および最接近モデルは、結果として、ほとんどの他のリスクモデルを用いて設計されたフィルタと比較して、高い偽陽性率を有するフィルタの設計となる。
【0166】
それとは対照的に、最接近2D車間距離および円近似モデルは共に、大幅に良好なフィルタ性能を示す。これについても、これらの2つのリスクモデルは類似している。
【0167】
最接近モデル、車間距離を用いた最接近モデル、および2D車間距離を用いた最接近モデルは、
図22の左上エリアにおける理想的な点に近いことに起因して、良好な性能を有するリスクモデルである。しかしながら、それらのロバスト性は低い。それらの標準偏差は、真陽性率について高い。経路距離モデルは、最接近モデル、車間距離を用いた最接近モデルおよび2D車間距離を用いた最接近モデルよりも良好なロバスト性を示す。
【0168】
円近似モデルは、最接近モデルよりも高いロバスト性および良好な性能を示す。
【0169】
軌道距離モデルに基づいたフィルタ設計は、幾分低い偽陽性率について有利に高い真陽性率を示す。軌道距離モデルの良好なフィルタリング特性が、重要度スコアを計算するための非常に短い計算時間に追従し、それによって、良好な計算時間および計算複雑度を有する。
【0170】
生存分析モデルは、真陽性率に関する理想的なフィルタリング性能を示すベースラインモデルを表す。
【0171】
図22におけるフィルタリング性能に対する生存分析モデルに最も近いリスクモデルは、いくつかの場合、ガウス重複モデルとも呼ばれる、2Dガウスモデルである。
【0172】
図19、
図20および
図22に基づいて、個々のリスクモデルの正確性が異なることを見てとることができる。
【0173】
複数のリスクモデルの個々のリスクモデルについて上述した例を考慮に入れると、支援システムの有利な実施は、フィルタ1~6のシーケンス(カスケード)を含む
図1の実施形態の複数のフィルタステージを用いることができる。フィルタ1、フィルタ2およびフィルタ3は、センサによって提供される知覚された他のエージェントの数が、フィルタリングされたエージェントの数まで低減されるフィルタリングステップの一部を形成する。連続して配置されたフィルタ1、2、3は、選択されたリスクモデルにそれぞれ基づいてフィルタリングを実行し、フィルタ1、2、3の各フィルタは、異なる選択されたリスクモデルを用いる。
【0174】
連続フィルタが、3つ全てのフィルタステージにわたるフィルタリングに要する時間を低減するために、まず、選択されるモデルとして計算が高速なモデルを用いるとき、特に有利である。
【0175】
例えば、フィルタ1は、第1の選択されたリスクモデルとしての経路距離モデルに基づいて第1のフィルタ入力データをフィルタリングすることができる。
【0176】
例えば、その後、フィルタ2は、第2の選択されたリスクモデルとしての軌道距離モデルに基づいて第2のフィルタ入力データをフィルタリングすることができる。
【0177】
例えば、フィルタ3は、第1の選択されたリスクモデルとしての2Dガウスモデルに基づいて第3のフィルタ入力データのフィルタリングに進むことができる。
【0178】
フィルタリングステップの次に、分割ステップ(ソートステップ)が続く。これは、3つのフィルタ、フィルタ4、フィルタ5およびフィルタ6を用いる。
【0179】
例えば、フィルタ4、フィルタ5およびフィルタ6は、他のエージェントを異なる複数のグループに分割するために、それぞれ異なる閾値を用いて生存分析モデルに基づいて第1のフィルタ入力データをフィルタリングすることができる。これらは次に、後続の計画ステップにおいてそれぞれ異なる形で扱われる。次に、後続の計画は、インタラクションを認識した計画アルゴリズムを用いた行動の計画および決定を可能にし、このアルゴリズムは、連続フィルタリングステージにおける以前のフィルタリングステップ、および分割ステップに基づいて、エゴエージェントの環境内の混雑した高度に動的なシナリオについて適切な単数または複数の行動を決定することを可能にする。
【0180】
フィルタリングステップのフィルタステージの各々、例えば
図1に示すフィルタ2がリスクシャドーイングを更に実行することができる。「リスクシャドーイング」という用語は、他のエージェントのうちの少なくとも1つがエゴエージェントとインタラクトしない場合がある動的シナリオにおける事例を考慮する、経験則を用いるフィルタステージにおけるフィルタリングを包含する。例えば、他のエージェントのうちの少なくとも1つの特定のエージェントは、この特定の他のエージェントが、まず他のエージェントのうちの別のエージェントと衝突するため、エゴエージェントと衝突し得ない。エゴエージェントおよび少なくとも1つの他のエージェントを含む、3つ以上のエージェントが関与するグループインタラクションを検討するのに要する複雑性、およびこのため計算労力は、過度に増大する。したがって、混雑した環境についてこれらの動的シナリオ特性を解消する計算効率の良い経験則が特に有利である。
【0181】
リスクシャドーイングプロセスは、支援方法の実施形態のためにそのような経験則を提供する。
【0182】
リスクモデルは、単一のエージェント間インタラクションのリスクのみを考慮する。複数の移動エージェントが関与する環境内のシナリオが存在する。以下の例は、エゴエージェントおよび2つの他のエージェントが関与する単純なシナリオを用いる。動的シナリオの以下の例は、各々が説明の目的である、1つのエゴエージェントおよび2つの他のエージェントを有する道路交通シナリオを用いる。複数の他のエージェントを含む動的交通シナリオを有する道路交通環境が、特定の程度までリスクシャドーイング手法から利益を受けることが明らかである。
【0183】
図23は、リスクシャドーイングの概念を示す第1の例示的な道路交通シナリオを示す。
【0184】
第1の例は、2つの道路が交差する道路交通シナリオにおける交差点を示す。エゴエージェントは、交差点に接近し、交差点を交差する運転経路21.1を辿ることを意図するエゴ車両21である。
【0185】
エゴ車両21と同じ道路上であるが反対の運転方向で、1つの第1の他のエージェントが交差点に接近する。第1の他のエージェントは、
図23に示す運転経路22.2が示すように、交差点において左折することを意図したトラック22である。運転経路21.1および22.1が示すように、運転経路22.2上のトラック22の予測運転挙動は、エゴ車両21に対する大きなリスクを有するリスクを確実に課す。
【0186】
エゴ車両21およびトラック22が走行している道路に交差する更なる道路上で、第2の他のエージェントがそれぞれの運転経路23.1上で交差点に接近する。運転経路23.1が示すように、第2の他のエージェントは、交差点にわたって現在の道路を直線状に走行し続けることを意図する他の車両23である。他の車両23の予測運転挙動は、運転経路22.1上のトラック22との衝突の衝突リスク、およびその後、運転経路21.1上のエゴ車両21が関与する衝突の衝突リスクを課す場合がある。
【0187】
図23の交通シナリオにおいてリスクシャドーイングを適用することによって、エゴ車両21の観点から、他の車両23を、知覚された交通シナリオにおける更なる検討について無視することができることが決定される。他の車両23が、意図した運転経路23.1上で交差点に入るとき、その前に不可避的にトラック22と衝突することに起因して、エゴ車両21と他の車両23との衝突の衝突リスクは存在しない。トラック22が低速で運転していると仮定すると、他の車両23は、エゴ車両21に衝突リスクを課さない。
【0188】
図24は、リスクシャドーイングの概念を示す第2の例示的な道路交通シナリオを示す。
【0189】
第2の例示的な道路交通シナリオは、2つの道路が交差する
図23の交差点を示す。エゴエージェントは、交差点に接近し、交差点を交差することを要する、直線状に前方に運転経路21.1を辿ることを意図するエゴ車両21である。
【0190】
エゴ車両21が走行している道路に交差する更なる道路上で、第1および第2の他のエージェントがそれぞれの運転経路23.1、24.1上で交差点に接近する。運転経路23.1が示すように、第1の他のエージェントは、交差点にわたって現在の道路を直線状に走行し続けることを意図する他の車両23である。他の車両23の予測運転挙動は、運転経路21.1上のエゴ車両21との衝突の衝突リスクを課す場合がある。第2の他のエージェントは、車両23に続く第2の車両24であり、車両24は、交差点において右折することを意図する。車両24は、運転経路24.1を有し、これは、まず車両23と衝突するときのみ、エゴ車両21に対する衝突リスクを表す場合がある。
【0191】
図24の交通シナリオにおいてリスクシャドーイングを適用することによって、エゴ車両21の観点から、他の車両24を、知覚された交通シナリオにおける更なる検討について無視することができることが決定される。意図した運転経路24.1上の交差点に入るとき、その前に、他の車両24が不可避的に車両23と衝突することに起因して、エゴ車両21と他の車両24との衝突の衝突リスクは存在しない。それにもかかわらず、運転経路21.1および23.1の交差が明らかとなるため、車両23およびその運転経路23.1は、エゴ車両21との或る特定の衝突リスクを課す。
【0192】
図25は、リスクシャドーイングの概念を示す第3の例示的な道路交通シナリオを示す。
【0193】
リスクシャドーイングの利点を示す第3の例は、例えば交通障壁27とすることができる環境内の知覚した道路構造を含む。
図25に示す交通障壁27は、エゴ車両21と対向交通との間の衝突を防ぐ。
図25において、エゴ車両21と第1の他の車両25との間の衝突のリスク、およびエゴ車両21と第2の他の車両26との間の衝突のリスクを、計画ステップにおいて完全に無視することができる。計画ステップは、エゴ車両21が決定された行動を実際に実行しているとき、未来の交通シナリオの安全性に悪影響を及ぼすことなくエゴ車両21の行動を決定する。
【0194】
図1の支援方法またはシステムの構造は、フィルタ1、2、3のうちの1つとしてリスクシャドーイングステップをシームレスに統合することを可能にする。リスクシャドーイングステップは、重要度スコアベースのフィルタリングステップを用いたフィルタリングの前、それらの間、またはそれらの後に実施することができる。
【0195】
図26は、リスクシャドーイングプロセスの例示的な実施形態の処理シーケンスを示す。次に、
図26に示される個々の処理ステップS41、S42、S43およびS44が、上記で
図23を参照して論じられた第1の例示的な道路交通シナリオを用いて
図27、
図28および
図29において更に詳細に論じられる。
【0196】
リスクシャドーイングプロセスへの入力データは、知覚された他のエージェントに関するデータ、ならびにエゴエージェントの位置および動きデータとすることができる。入力データは、エゴエージェントのセンサ一式から取得することができ、前処理することができる。代替的にまたは加えて、リスクシャドーイングプロセスへの入力データは、入力データに対するリスクシャドーイングプロセスを実行する前に、フィルタリングプロセスにかけられている。
【0197】
入力データは、特に、エゴエージェントの環境内の現在の動的シナリオに関するデータを含む。入力データは、交通シナリオの予測される未来の展開に関するデータも含む。シナリオの予測される未来の展開は、環境内に存在する他のエージェントの動き経路、および他のエージェントの予測軌道に関するデータを含むことができる。データは、道路形状または交通障壁27等の環境内の定常構造に関するデータも含むことができる。データは、適用可能な交通ルールに関する規則データを含むことができる。
【0198】
リスクシャドーイングプロセスは、入力データから臨界点28を決定する第1のステップS41を含む。これは、エゴエージェントの環境における交通シナリオを定義する。システムは、リスクモデルを用いて、特に最接近モデルを用いて、臨界点28を決定することができる。
【0199】
図27は、リスクシャドーイングプロセスの例示的な実施形態の処理シーケンスにおける第1のステップS41を示す。
【0200】
臨界点29を決定することは、交通シナリオ内に存在するエージェントの各々の観点から未来の衝突ポイントを計算することを含む。エージェントの各々は、エゴエージェントの環境内のエゴエージェントおよび知覚された他のエージェントを含む。
【0201】
未来の衝突ポイントの計算は、最接近の時間、距離およびポイントを用い、エゴエージェントおよび他のエージェントの経路および予測軌道に基づく。
【0202】
図26に関して、他の車両23(他のエージェント)の観点からの臨界点28が決定される。知覚されたシナリオに基づいて、車両23の観点からの第1の臨界点28.1は、トラック22との衝突リスクである。エゴ車両21との車両23の衝突点は、車両23の観点から、第2の臨界点28.2を決定する。
【0203】
ステップS41は、トラック22(他のエージェント)の観点から臨界点28を決定することに進む。知覚されたシナリオに基づいて、トラック22の観点からの臨界点28.3は、エゴ車両21との衝突リスクである。トラック22の観点からの第1の臨界点は、交差軌道22.1および23.1から結果として得られる衝突ポイントであり得る。しかしながら、他のエージェントの現在の位置を越えて位置する臨界点のみが検討されるため、この潜在的な臨界点は省略される。
【0204】
知覚されるシナリオに基づくエゴ車両21の観点からの臨界点28は、トラック22と衝突するエゴ車両21から結果として得られる第1の臨界点28.4を含む。他の車両23とのエゴ車両21の第2の衝突点は、エゴ車両21の観点から、第2の臨界点28.5を決定する。
【0205】
ステップS41において臨界点28、28.1、28.2、28.3、28.4、28.5を決定すると、方法はステップS42に進む。臨界点28、28.1、28.2、28.3、28.4、28.5は、後続のステップS42における処理のための基礎を形成する。
【0206】
図28は、リスクシャドーイングプロセスの第1の例示的な実施形態の処理シーケンスにおける第2のステップS42を示す。
【0207】
ステップS42において、リスクシャドーイングのプロセスは、ステップS41からの決定された臨界点28および入力データに基づいて到達可能性エリアを生成することに進む。エージェントの到達可能性エリアは、環境内のエージェントの現在の位置から開始し、エージェントと任意の更なるエージェントとの最近接ポイントで終了する。最近接ポイントは、エージェントと更なるエージェントとの衝突ポイントでもある。
【0208】
到達可能性エリアは、到達可能性エリアが決定されるエージェントの軌道に沿って延びる。到達可能性エリアは、その到達可能性エリアを有するエージェントの幅に対応する幅を有することができる。到達可能性エリアは、現在の位置からその軌道上の第1の臨界点まで軌道に沿って移動するエージェントの地上投影に対応することができる。
【0209】
ステップS42は、リスクシャドーイングプロセスへの入力データ内に存在するエゴエージェントおよび知覚された他のエージェントの各々のエージェントの到達可能性エリアを決定する。
【0210】
図28に関して、ステップS42は、車両23のための第1の到達可能性エリア29.1を決定する。第1の到達可能性エリア29.1は、車両23の現在の位置において開始し、第1の臨界点28.1まで延びる。第2の臨界点28.2は、車両23の軌道23.1上の第1の臨界点28.1の後に到来し、無視されたままである。
【0211】
トラック22の観点に移ると、ステップS42は、トラック22のための第2の到達可能性エリア29.2を決定する。第2の到達可能性エリア29.2は、トラック22の現在の位置から開始し、トラック22の軌道上の唯一の臨界点28である、トラック22の予測軌道22.1上の第1の臨界点28.3まで延びる。
【0212】
エゴ車両21の観点に関して、ステップS42は、エゴ車両21のための第3の到達可能性エリア29.3を決定する。第3の到達可能性エリア29.3は、エゴ車両21の現在の位置において開始し、エゴ車両21の軌道21.1上の第1の臨界点28.4まで延びる。第2の臨界点28.5は、エゴ車両21の軌道21.1上の第1の臨界点28.4の後に到来し、したがって無視されたままである。
【0213】
このため、ステップS42は、エゴ車両21、トラック22および車両23の各々について1つの到達可能性エリアを生成する。ここで、リスクシャドーイングの方法はステップS43に進む。
【0214】
図29は、リスクシャドーイングプロセスの例示的な実施形態の処理シーケンスにおける第3のステップS43を示す。
【0215】
ステップS43は、リスクシャドーイングプロセスへの入力データ内に存在する、エゴエージェントの到達可能性エリア29と、知覚された他のエージェントの各他のエージェントのそれぞれの到達可能性エリア29との重複エリア30を探索する。
【0216】
代替的にまたは加えて、ステップS43は、エゴエージェントと1つの他のエージェントとの各インタラクションの、連続値を有する重要度スコアを生成するために、エゴエージェントの各決定された到達可能性エリア29と、知覚された他のエージェントの各他のエージェントのそれぞれの到達可能性エリア29との表面積値を計算することを含むことができる。
【0217】
加えてまたは代替的に、ステップS43は、エゴエージェントと1つの他のエージェントとの各インタラクションの、連続値を有する重要度スコアを生成するために、エゴエージェントの到達可能性エリア29と、知覚された他のエージェントの各他のエージェントのそれぞれの到達可能性エリア29との間のそれぞれの距離を計算することを含むことができる。
【0218】
図29の特定の例において、ステップS43は、車両23の第1の到達可能性エリア29.1と、エゴエージェント21の第3の到達可能性エリア29.3との間の重複エリア30を探索する。到達可能性エリア29.1および29.3は重複しないため、ステップS42は、エゴエージェント21と車両23との間のインタラクションについて重複エリア30が存在しないと結論付ける。
【0219】
エゴエージェントおよびトラック22に関して、ステップS43は、トラック22の第2の到達可能性エリア29.2と、エゴエージェント21の第3の到達可能性エリア29.3との間の重複エリア30を探索する。到達可能性エリア29.2および29.3は実際に重複するため、ステップS42は、エゴエージェント21とトラック22との間のインタラクションについて重複エリア30を決定する。
【0220】
このため、ステップS42は、トラック22が重複エリア30の存在によって示されるようなエゴ車両21に対する影響を有するのに対し、車両23はエゴ車両21に影響しないと判断する。
【0221】
図26に示す後続のステップS44において、リスクシャドーイング方法は、重複エリア30の決定に基づいて、第1の例示的な交通シナリオにおいてトラック23によって表される他のエージェントが、動的シナリオの更なる評価について検討されるのに対し、第1の例示的な交通シナリオにおいて車両23によって表される他のエージェントは、重大な結果を被ることなく無視することができると結論付ける。
【0222】
ステップS44は、ステップS43において決定された連続値の重要度スコアを、更なる処理について別のエージェントを無視するか否かを判断するための所定の閾値と比較することを含むことができる。このため、リスクシャドーイングプロセスは、フィルタリングのための他のエージェント間の二次インタラクションを考慮に入れてエゴエージェントの環境内の動的シナリオにおいて知覚される他のエージェントの数を低減することを可能にする。それによって、リスクシャドーイング処理は、更なる処理についての動的シナリオの複雑性を低減し、リスクシャドーイングの結果に基づいて更なる計画および動作実行ステップを実施するときにエゴエージェントを支援する可能性を改善することが可能である。
【0223】
図30は、リスクシャドーイングプロセスの更なる適用例を示す。
【0224】
リスクシャドーイングプロセスS4は、エゴエージェントの環境内の知覚されたシナリオに基づく。リスクシャドーイングは、他のエージェントおよびそれらの移動特性を検出することが可能な知覚スタックを用いる。したがって、リスクシャドーイングは、環境から取得したセンサデータに基づいて環境内の動的シナリオを知覚するステップS0の後に行われる。
【0225】
リスクシャドーイングのプロセスS4は、フィルタリングされたシナリオを生成し、後続の計画プロセスに提供する。フィルタリングされたシナリオは、現在の交通シナリオの予測される更なる展開のために高い重要度を有する他のエージェントを含む。未来の幾何学的運転制約に基づいて、ステップS4のリスクシャドーイングを実行することにより生成されるフィルタリングされた交通シナリオにおいて更に考慮されない他のエージェントは無視される。
【0226】
リスクシャドーイングプロセスS4は、ステップS42において、到達可能性エリア29の境界を計算する単純で効率的な方式を提案する。リスクシャドーイングプロセスS4は、シナリオの未来の時間ステップ、特に、予測タイムホライズンまでの全ての未来の時間ステップについて到達可能性エリア29を決定する。リスクシャドーイングプロセスS4は、シナリオ内の他のエージェントのフィルタリングのための重要度スコアを決定するために、計算された到達可能性エリア29を用いる。
【0227】
ステップS4のリスクシャドーイングプロセスは、任意の動的シナリオ、例えば、交通環境における任意の運転状況に適用することができる。リスクシャドーイングプロセスは、計算効率の良い方式で、シナリオの動力学を検討する。
【0228】
リスクシャドーイングプロセスは、フィルタリングされたシナリオに基づいて動作および/または警告を決定する後続の計画ステップS5において要する、必要な計算時間を低減する。計画ステップS5は動作を決定することを含むことができ、この動作はその後、制御信号を生成し、これを自律的にまたは部分的に自律的に動作するエゴエージェントのアクチュエータに出力するための基礎を形成する。
【0229】
加えてまたは代替的に、計画ステップS5は情報を決定することを含むことができ、この情報はその後、情報信号または警告信号を生成し、これを自律的にまたは部分的に自律的に動作するエゴエージェントのオペレータにヒューマンマシンインタフェースを介して出力するための基礎を形成する。
【0230】
図30の下側部分に示される例示的な交通シナリオにおいて、エゴ車両21(エゴエージェント)は、運転車線上を進み、同じ車線上を同じ方向に第1の速度32で移動する第1の車両31に接近する。第1の車両31の前で、第2の車両33がエゴ車両21および第1の車両31と同じ方向に第2の速度34で運転している。第2の速度34は、第1の車両31の第1の速度よりも高い。例えば、第1の車両31は制動する場合がある。
【0231】
この動的シナリオにおいて、第1の車両31は、エゴ車両21の観点から現在の動的シナリオの更なる展開に対し強力な影響37を及ぼす。他方で、第2の車両33は、エゴ車両21の観点から現在の動的シナリオの更なる展開に対し弱い影響しか有しない。
【0232】
リスクシャドーイングプロセスS4および
図30のシナリオのフィルタリングを実行することにより、エゴ車両21の観点から緊急の運転タスクに対処する更なる処理から車両33を無視することが可能になる。
【0233】
図31は、交通環境内の交差路におけるエゴ車両および1つの他の車両が関与する単純な交通シナリオを示す。
【0234】
フィルタリングプロセスは、動的シナリオの表現の複雑度を低減するために、知覚された動的シナリオおよび知覚された他のエージェントをフィルタリングするために用いられる重要度値を決定するために、選択されたリスクモデルを用いる。
【0235】
選択されたリスクモデルは、複数の運転リスクモデルのうちの1つである。運転リスクモデルは、環境内のエージェント間衝突のための統計モデルである。2つのエージェント間のインタラクションの例としてのエージェント間の衝突の決定は、衝突に関与する双方のエージェントについて予測軌道を用いて決定することができる。
図31は、エゴエージェントの経路(エゴ経路)に沿って第1の速度で移動するエゴエージェントを示す。エゴエージェントの経路は、他のエージェントが第2の速度でこれに沿って移動する経路と未来に交差する。
【0236】
エゴエージェントおよび他のエージェントの各々の未来の位置は、不確実性を有して予測することができる。エゴエージェントおよび他のエージェントの軌道の予測は、各々、ガウスおよびポアソン分布不確実性とみなすことができる不確実性を含む。
【0237】
不確実性は、未来に向けて長期にわたって他のエージェントの速度を予測する不確実性から結果として生じ得る。現在の時点における速度は、例えば検知または測定によって知ることができる。未来の時点について、他のエージェントによって実行される制動または加速等によって行われる動作は、各々、速度に影響を与える場合があり、したがって他のエージェントの未来の位置に影響を与える場合がある。
【0238】
リスクモデルは、エゴエージェントおよび他のエージェントのそれぞれの軌道に基づいて、エゴエージェントと他のエージェントとの間の確率P(衝突)を予測することを可能にする。
【0239】
図32は、支援システム40の構造構成要素にわたる概観を提供する。システムは、エゴエージェントの例としてのエゴ車両21の支援システムとすることができる。
【0240】
エゴ車両21の例において、エゴ車両21は、エゴ車両21の環境を感知するための少なくとも1つのセンサ41を装着する。そのようなセンサ41は、例えば、カメラセンサ、LIDARセンサ、RADARセンサ、car-to-x通信、超音波センサのうちの1つもしくは複数、またはこれらのセンサ41の任意の組み合わせを含む大規模センサ一式の一部を形成し得る。センサ41によって提供されるセンサ信号に基づいて、好ましくはエゴ車両21の環境全体が観測される。センサ41は、エゴ車両21の検知された環境の情報を含むセンサデータを、エゴ車両21の電子制御ユニット(ECU)の一部を形成するプロセッサ42に転送する。プロセッサ42、あるいは、メモリと組み合わせて配置されたプロセッサ42のアレイは、方法ステップまたは支援方法を実行する。
【0241】
エゴ車両21は、エゴ車両21の位置データおよびエゴ車両21の動きデータを生成する少なくとも1つの更なるセンサ43を更に含む。センサ43は、全地球的航法衛星システム(GNSS)センサを含むことができる。加えてまたは代替的に、センサ43は、車両オドメータモジュールを含む。動きデータは、エゴ車両21の現在の速度、エゴ車両21の現在の加速または減速(制動)、およびエゴ車両21の旋回速度に関するデータを含むことができる。
【0242】
プロセッサ42は、センサ41からのセンサデータ、エゴ車両21の位置データおよびエゴ車両21の動きデータに基づいて、検知された環境内の現在の状況の表現を生成する。
【0243】
現在の状況の表現から開始して、潜在的なエゴ車両挙動が決定される。
【0244】
現在の状況に基づいて、潜在的なエゴ車両挙動を考慮に入れて、プロセッサ42は、環境内の他の車両22、23のための予測された未来の挙動を含む予測データを生成するための予測を行う。
【0245】
選択された軌道および挙動に基づいて、プロセッサ42は、制御信号を生成し、制御信号をヒューマンマシンインタフェース44(HMI)に出力する。制御信号は、HMI44を介してオペレータへの情報の出力を制御して、決定された軌道、およびエゴ車両21を安全に動作させるために現在の交通シナリオにおいて実行される必要がある挙動をオペレータに通知する。
【0246】
加えてまたは代替的に、プロセッサ42は、エゴ車両21の少なくとも1つのアクチュエータ46を制御するために制御信号をコントローラ45に提供する。エゴ車両21を完全にまたは部分的に自律的に運転するために、コントローラ45は、制御信号を受信し、制御信号に基づいて、エゴ車両21のアクチュエータ46を、決定された軌道、およびエゴ車両21を安全に動作させるために現在の交通シナリオにおいて実行される必要がある挙動を実施するようにエゴ車両21のアクチュエータ46を制御する。
【0247】
そのようなアクチュエータ46は、エゴ車両21の制動システム、アクセルペダル、ステアリングシステム、インジケータ灯、および車両-to-x通信システムのうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0248】
エゴ車両21を自律的に動作させるための制御信号を出力するためのプロセッサ42の応用は、対応する構造要素が環境内の動的シナリオにおけるエゴエージェントとしてロボットデバイスを自律的に制御するために方法を実施する、方法の別の有利な応用を示す。