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特許7575526IL-4R阻害剤の投与によるアレルギー処置方法およびアレルゲン特異的免疫療法の向上方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】IL-4R阻害剤の投与によるアレルギー処置方法およびアレルゲン特異的免疫療法の向上方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20241022BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20241022BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241022BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
A61K39/395 N ZNA
A61P37/08
A61P43/00 111
A61K45/00
A61P43/00 121
【請求項の数】 15
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023081214
(22)【出願日】2023-05-17
(62)【分割の表示】P 2022066688の分割
【原出願日】2014-06-03
(65)【公開番号】P2023103389
(43)【公開日】2023-07-26
【審査請求日】2023-06-14
(31)【優先権主張番号】61/830,919
(32)【優先日】2013-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】597160510
【氏名又は名称】リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】REGENERON PHARMACEUTICALS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ニール・スタール
(72)【発明者】
【氏名】ジェイミー・エム・オレンゴ
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー・ジェイ・マーフィー
(72)【発明者】
【氏名】ナミータ・ガンディー
(72)【発明者】
【氏名】ニール・グレアム
【審査官】柴原 直司
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-507294(JP,A)
【文献】N. Eng. J. Med., (2013.05.21), [online],doi:10.1056/NEJMoa1304048, R etrieved from the internet, <URL:https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/N EJMoa1304048>(Vol.368, No.26, p.2455-2466)
【文献】喘息におけるdupilumabの肯定的な第IIa相試験結果がニューイングランド・ ジャーナル・オブ・メディシン誌に掲載, プレスリリース, 2013年5月28日, [on line], [2020年1月24日検索],Retrieved from the internet:<URL:https://www .sanofi.co.jp/-/media/Project/One-Sanofi-Web/Websites/Asia-Pacific/Sanof i-jp/Home/press-releases/PDF/2013/201305281.pdf?la=jp>
【文献】Sanofi and Regeneron Report Positive Proof-of-Concept Data for Dupilu mab, an IL-4R alpha Antibody, in Atopic Dermatitis., INVESTORS & MEDIA, 2013.03.02, [online],[Retrieved on 2020-JAN-24], Retrieved from the int ernet:<URL:https://investor.regeneron.com/node/11521/pdf>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/00-45/08
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食物アレルゲンに曝露される対象における全血清IgEレベルを低減させる方法において使用するための、インターロイキン-4受容体(IL-4R)アンタゴニストを含む医薬組成物であって、ここで前記方法は、前記IL-4Rアンタゴニストを前記対象に前記食物アレルゲンへの曝露前に投与することを含み、前記IL-4Rアンタゴニストは、IL-4Rを結合する抗体またはその抗原結合断片であり、前記抗体またはその抗原結合断片は3つのHCDRs(HCDR1、HCDR2およびHCDR3)および3つのLCDRs(LCDR1、LCDR2およびLCDR3)を含み、ここでHCDR1は、配列番号3のアミノ酸配列を含み;HCDR2は、配列番号4のアミノ酸配列を含み;HCDR3は、配列番号5のアミノ酸配列を含み;LCDR1は、配列番号6のアミノ酸配列を含み;LCDR2は、配列番号7のアミノ酸配列を含み;そして、LCDR3は、配列番号8のアミノ酸配列を含む、
前記医薬組成物。
【請求項2】
前記方法は、前記アレルゲンへの曝露の1日~2週前に、前記IL-4Rアンタゴニストを対象に投与することを含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記方法は、前記アレルゲンへの曝露の2週前に、前記IL-4Rアンタゴニストを対象に投与することを含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記食物アレルゲンは、乳製品、卵、セロリ、ゴマ、小麦、大豆、魚、甲殻類、糖、落花生または木の実である食品に由来し、または、含まれる、請求項1~3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記食物アレルゲンは牛乳である、請求項1~4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記食物アレルゲンは落花生である、請求項1~4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記IL-4Rアンタゴニストは、配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)および配列番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)を含む、抗体またはその抗原結合断片である、請求項1~6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記IL-4Rアンタゴニストは、デュピルマブである、請求項1~7のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記方法は、前記IL-4Rアンタゴニストの対象への複数回の投与を含み、ここで、前記IL-4Rアンタゴニストは週1回、2週間に1回、3週間に1回、4週間に1回、投与される、請求項1~8のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記IL-4Rアンタゴニストは、0.05mg~600mgの量で投与される、請求項1~9のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記IL-4Rアンタゴニストは、皮下投与される、請求項1~10のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記方法は、第2の治療薬を対象に投与することをさらに含み、ここで第2の治療薬は、ステロイド、抗ヒスタミン薬、うっ血除去薬、および抗IgE剤から成る群より選択される、請求項1~11のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記IL-4Rアンタゴニストは、注射器に入っている、請求項1~12のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記IL-4Rアンタゴニストは、ペン型送達デバイスに入っている、請求項1~12のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記ペン型送達デバイスは、予め充填されている、請求項14に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アレルギー反応を処置または予防するための、およびアレルゲン特異的免疫療法レジメンの有効性および/または安全性を改善するための、インターロイキン-4受容体阻害剤の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
アレルギーおよびアレルギー性疾患は、時間と共に解消する非致命的応答からアナフィラキシーなどの致命的作用まで多岐にわたる結果を伴う深刻な医学的状態である。アレルギー反応は、様々な製品、例えば、ある一定の食品、昆虫毒、植物由来物質(例えば花粉)、化学薬品、薬物/医薬品および動物の鱗屑への接触または曝露の結果として生じることがある。アレルギーに対する現行の処置選択肢としては、回避、薬理学的症状処置、およびアレルゲン特異的免疫療法(SIT)を用いる予防が挙げられる。残念なことに、これらの現行の処置戦略は、多くの場合、不十分であるか、高価であるか、実行困難であるか、または有意なリスクを伴う。例えば、アレルゲンの回避は、必ずしも可能であるとは限らず、患者および介護者の生活の質に悪影響を及ぼすことがある。その一方で、免疫療法アプローチは、感受性のある個体へのアレルゲンの計画的投与を含み、そのため本質的にリスクが高く、望ましくない重度アレルギー反応またはアナフィラキシーが起こる可能性がある。したがって、アレルギー応答を予防または処置するならびに免疫療法処置戦略の安全性および/または有効性を改善する新規治療アプローチへの未だ対処されていない要求が当該技術分野には存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明の1つの態様に従って、対象のアレルギー反応を処置する、予防する、またはアレルギー反応の重症度を低減させる方法を提供する。本発明のこの態様による方法は、インターロイキン-4受容体(IL-4R)アンタゴニストを含む医薬組成物の治療有効量を、それを必要とする対象に投与することを含む。IL-4Rアンタゴニストを含む医薬組成物をアレルゲン曝露またはアレルギー症状発現前、中または後に対象に投与することができる。
【0004】
本発明のもう1つの態様に従って、アレルゲン特異的免疫療法(SIT)レジメンの有効性および/または安全性を向上させる方法を提供する。本発明のこの態様による方法は、IL-4Rアンタゴニストを含む医薬組成物の治療有効量をSITレジメンと併用で対象に投与することを含む。本発明のこの態様のある一定の実施形態によると、IL-4Rアンタゴニストを含む医薬組成物をSITレジメンの開始前にするか、またはSITレジメンの過程で投与する。例えば、IL-4Rアンタゴニストを含む医薬組成物をSITレジメンの増量投与期に、および/またはSITレジメンの維持期に投与することができる。
【0005】
本発明のもう1つの態様に従って、アレルゲンに曝露された対象の全血清IgEレベルを低減させる方法を提供する。本発明のこの態様による方法は、IL-4Rアンタゴニストを含む医薬組成物を、対象のIgE産生を低減もしくは抑止するまたは血清IgEレベルを低減もしくは除去するのに十分な量で、対象に投与することを含む。
【0006】
様々な実施形態において、IL-4Rアンタゴニストを含む医薬組成物を、それを必要とする対象に経口、皮下、皮膚上または静脈内投与する。
【0007】
本発明の方法に関連して使用することができる例示的IL-4Rアンタゴニストとしては、例えば、IL-4Rもしくはそのリガンド(IL-4および/もしくはIL-13)の小分子化学的阻害剤、またはIL-4Rもしくはそのリガンドを標的にする生物学的薬剤が挙げられる。ある一定の実施形態によると、IL-4Rアンタゴニストは、IL-4Rα鎖を結合してIL-4、IL-13、またはIL-4とIL-13両方によるシグナル伝達を遮断する、抗原結合タンパク質である。本発明の方法に関連して使用することができる1つのかかるタイプの抗原結合タンパク質は、デュピルマブなどの抗IL-4Rα抗体である。
【0008】
本発明の他の実施形態は、後続の詳細な説明の再考から明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】パネルAは、抗IL-4Rα抗体の2用量をマウスに投与した、落花生アレルギーマウスモデルの時間経過を描写する図である。パネルBは、IV落花生抽出物の攻撃投与後の経時的な中央部体温の低下によって評価した、3群の実験マウスのアナフィラキシーの程度を示す図である。抗体を受けていないマウスを灰色丸で示し;抗IL-4Rα抗体を受けたマウスを黒四角で示し;アイソタイプ対照抗体を受けたマウスを白四角で示す。
図2】落花生抽出物の攻撃投与後の図1で言及した3群のマウスのIgEレベルを示す図である。
図3】パネルAは、抗IL-4Rα抗体の単一用量を第13日にマウスに投与した、落花生アレルギーマウスモデルの時間経過を描写する図である。パネルBは、IV落花生抽出物の攻撃投与後の経時的な中央部体温低下によって評価した、3群の実験マウスのアナフィラキシーの程度を示す図である。抗体を受けていないマウスを灰色丸で示し;抗IL-4Rα抗体を受けたマウスを黒四角で示し;アイソタイプ対照抗体を受けたマウスを白四角で示す。
図4】パネルAは、抗IL-4Rα抗体の単一用量を第27日にマウスに投与した、落花生アレルギーマウスモデルの時間経過を描写する図である。パネルBは、IV落花生抽出物の攻撃投与後の経時的な中央部体温の低下によって評価した、3群の実験マウスのアナフィラキシーの程度を示す図である。抗体を受けていないマウスを灰色丸で示し;抗IL-4Rα抗体を受けたマウスを黒四角で示し;アイソタイプ対照抗体を受けたマウスを白四角で示す。
図5図3および4の3つの処置群(mAb処置なし、抗IL-4Rα処置、およびアイソタイプ対照処置マウス)におけるそれぞれの実験時間経過の第12、26および28日での全IgEレベルを示す図である。パネルAは、抗体の単一用量を第13日に投与した実験の結果を示し;パネルBは、抗体の単一用量を第27日に投与した実験の結果を示す。
図6】感作期、SIT増量期および落花生抽出物の攻撃投与を含む、落花生特異的免疫療法マウスモデルの時間経過を描写する図である。5回の抗体注射を示されている日にマウスに投与した。
図7図6で説明した落花生特異的免疫療法レジメンに付した実験マウスの3群、および免疫療法なしの対照群におけるアナフィラキシーの程度を示す図である。結果を落花生抽出物の攻撃投与後の経時的な中央部体温の低下によって評価する。攻撃投与に付されたが免疫療法を受けていないマウス(「ITなし」)を白丸および断続線で示し;免疫療法を受けたが抗体を受けていないマウス(「IT」)を黒四角および断続線で示し;免疫療法およびアイソタイプ対照抗体を受けたマウス(「IT+アイソタイプ対照」)を白四角および断続線で示し;免疫療法および抗IL-4Rα抗体を受けたマウス(「IT+抗IL-4Rα」)を黒四角および実線で示す。
図8図6で説明した落花生特異的免疫療法レジメンに付した実験マウスの3群、および免疫療法なしの対照群における、全IgEレベル(図8)を示す図である。第77日および第96日の様々な免疫グロブリンレベルを示す。攻撃投与に付されたが免疫療法を受けていないマウス(「ITなし」)を黒丸で示し;免疫療法を受けたが抗体を受けていないマウス(「IT」)を白丸で示し;免疫療法およびアイソタイプ対照抗体を受けたマウス(「IT+アイソタイプ対照」)を黒四角で示し;免疫療法および抗IL-4Rα抗体を受けたマウス(「IT+抗IL-4Rα」)を白四角で示す。各記号は、個々のマウスでの測定レベルを表す。
図9図6で説明した落花生特異的免疫療法レジメンに付した実験マウスの3群、および免疫療法なしの対照群における、落花生特異的IgG1レベル(図9)を示す図である。第77日および第96日の様々な免疫グロブリンレベルを示す。攻撃投与に付されたが免疫療法を受けていないマウス(「ITなし」)を黒丸で示し;免疫療法を受けたが抗体を受けていないマウス(「IT」)を白丸で示し;免疫療法およびアイソタイプ対照抗体を受けたマウス(「IT+アイソタイプ対照」)を黒四角で示し;免疫療法および抗IL-4Rα抗体を受けたマウス(「IT+抗IL-4Rα」)を白四角で示す。各記号は、個々のマウスでの測定レベルを表す。
図10図6で説明した落花生特異的免疫療法レジメンに付した実験マウスの3群、および免疫療法なしの対照群における、落花生特異的IgG2aレベル(図10)を示す図である。第77日および第96日の様々な免疫グロブリンレベルを示す。攻撃投与に付されたが免疫療法を受けていないマウス(「ITなし」)を黒丸で示し;免疫療法を受けたが抗体を受けていないマウス(「IT」)を白丸で示し;免疫療法およびアイソタイプ対照抗体を受けたマウス(「IT+アイソタイプ対照」)を黒四角で示し;免疫療法および抗IL-4Rα抗体を受けたマウス(「IT+抗IL-4Rα」)を白四角で示す。各記号は、個々のマウスでの測定レベルを表す。
図11図6で説明した落花生特異的免疫療法レジメンに付した実験マウスの3群、および免疫療法なしの対照群における、hIgGレベル(図11)を示す図である。第77日および第96日の様々な免疫グロブリンレベルを示す。攻撃投与に付されたが免疫療法を受けていないマウス(「ITなし」)を黒丸で示し;免疫療法を受けたが抗体を受けていないマウス(「IT」)を白丸で示し;免疫療法およびアイソタイプ対照抗体を受けたマウス(「IT+アイソタイプ対照」)を黒四角で示し;免疫療法および抗IL-4Rα抗体を受けたマウス(「IT+抗IL-4Rα」)を白四角で示す。各記号は、個々のマウスでの測定レベルを表す。
図12】示されているように増量期に落花生抽出物のより少ない用量数(8対12)を投与した、図6の落花生特異的免疫療法マウスモデルの変型の時間経過を描写する図である。5回の抗体注射を示されている日にマウスに投与した。
図13図12で説明した落花生特異的免疫療法レジメンに付した実験マウスの3群、および免疫療法なしの対照群におけるアナフィラキシーの程度を示す図である。結果を落花生抽出物の攻撃投与後の経時的な中央部体温の低下によって評価する。処置群は、図6の場合と同じものである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明を説明する前に、本発明が、記載する特定の方法および実験条件に限定されないことを理解されたい。かかる方法および条件は変わることがあるからである。本発明の範囲は、添付のクレームによってしか限定されないので、本明細書において用いる専門用語が特定の実施形態をもっぱら説明することを目的としたものであり、限定することを意図したものでないことも理解されたい。
【0011】
別段の定義がない限り、本明細書において用いるすべての技術および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されているのと同じ意味を有する。本明細書において用いる場合、特定の記載数値に関して用いるときの用語「約」は、値が記載値から1%以下異なってもよいことを意味する。例えば、本明細書において用いる場合の
表現「約100」は、99および101ならびに間のすべての値(例えば99.1、99.2、99.3、99.4など)を含む。
【0012】
本明細書に記載するものと同様または等価の任意の方法および材料を本発明の実施の際に使用することができるが、好ましい方法および材料を今般記載する。本明細書において言及するすべての出版物をその全体を記載するように参照によって本明細書に組み入れる。
【0013】
アレルギー反応を処置する、予防する、またはアレルギー反応の重症度を低減させる方法
本発明は、対象のアレルギー反応を処置する、予防する、またはアレルギー反応の重症度を低減させる方法を含む。本発明のこの態様による方法は、インターロイキン-4受容体(IL-4R)アンタゴニストを含む医薬組成物の治療有効量を、それを必要とする対象に投与することを含む。本明細書において用いる場合、用語「処置する」、「処置すること」などは、症状を軽減すること、症状の原因を一時的にもしくは永続的になくすこと、またはアレルギー反応の症状の出現を予防するもしくは遅らせることを意味する。本明細書において用いる場合の用語「それを必要とする対象」は、(a)1つもしくはそれ以上のアレルゲンに曝露されたときにアレルギー反応もしくは応答を起こしやすい;(b)1つもしくはそれ以上のアレルゲンに対するアレルギー応答もしくは反応を以前に示したことがある;(c)既知のアレルギー歴がある;および/または(d)アレルギー応答もしくはアナフィラキシーの徴候もしくは症状を示す、任意のヒトまたは非ヒト動物を意味する。
【0014】
本発明は、アレルゲンに曝露された対象の全血清IgEレベルを低減させる方法も含む。本発明のこの態様による方法は、インターロイキン-4受容体(IL-4R)アンタゴニストを含む医薬組成物を、対象に、IgE産生を低減もしくは抑止するまたは血清IgEレベルを低減もしくは除去するのに十分な量で投与することを含む。本明細書において用いる場合、血清IgEレベルの低減は、アレルゲンに曝露され、IL-4Rアンタゴニストで処置された対照の血清で測定されるIgEの量が、IL-4アンタゴニストで処置されていない同じまたは同等の対象において測定される血清IgEレベルより少なくとも5%、10%、20%、50%、80%または90%低いことを意味する。ある一定実施形態では、血清IgEレベルの低減は、対象の血清で検出されるアレルゲン特異的IgEの量がないまたは無視できるほどの量であることを意味する。
【0015】
本明細書において用いる場合の句「アレルギー応答」、「アレルギー反応」、「アレルギー症状」などは、じんま疹(例えば発疹)、血管浮腫、鼻炎、喘息、嘔吐、くしゃみ、鼻水、副鼻腔炎、涙目、喘鳴、気管支痙攣、最大呼気流量(PEF)減少、胃腸障害、潮紅、口唇腫脹、舌腫脹、血圧低下、アナフィラキシーおよび臓器機能障害/不全から成る群より選択される1つまたはそれ以上の徴候または症状を含む。「アレルギー応答」、「アレルギー反応」、「アレルギー症状」などは、例えばIgE産生増加および/またはアレルゲン特異的免疫グロブリン産生増加などの、免疫応答および反応も含む。
【0016】
用語「アレルゲン」は、本明細書において用いる場合、感受性のある個体のアレルギー応答を刺激することができる任意の物質、化学薬品、粒子または組成物を含む。アレルゲンは、例えば乳製品(例えば牛乳)、卵、セロリ、ゴマ、小麦、大豆、魚、甲殻類、糖(例えばα-ガラクトースなどの食肉上に存在する糖)、落花生、他のマメ科植物(例えばインゲン、エンドウ、大豆など)および木の実などの、食品に含有されるまたは由来することがある。あるいは、アレルゲンは、例えば塵(例えば塵性ダニを含有するもの)、花粉、昆虫毒(例えばミツバチ、スズメバチ、カ、アカヒアリなどの毒)、カビ、動物の毛皮、動物の鱗屑、羊毛、ラテックス、金属(例えばニッケル)、家庭用クリーナー、洗剤、医薬品、化粧品(例えば香水など)、薬物(例えばペニシリン、スルホンアミド、サリ
チラートなど)、治療用モノクローナル抗体(例えばセツキシマブ)、ブタクサ、草およびカバノキなどの、非食品に含有されるまたは由来することもある。例示的花粉アレルゲンとしては、例えば、木の花粉、例えばカバノキ花粉、スギ花粉、オーク花粉、ハンノキ花粉、シデ花粉、トチノキ属花粉、ヤナギ花粉、ポプラ花粉、プラタナス花粉、シナノキ属花粉、オリーブ属花粉、マウンテンシダー花粉およびアルストニア・スコラリス花粉が挙げられる。
【0017】
本発明の方法は、IL-4Rアンタゴニストを含む医薬組成物を対象にアレルゲン曝露前、後および/または中に投与することを含む。例えば、本発明は、IL-4Rアンタゴニストを含む医薬組成物を対象にアレルゲン曝露前12時間未満、10時間未満、8時間未満、6時間未満、4時間未満、2時間未満、1時間未満または30分未満に投与することを含む方法を含む。ある一定の実施形態では、IL-4Rアンタゴニストを含む医薬組成物を対象にアレルゲン曝露の数日~数週間前に(例えばアレルゲン曝露の約1日~約2週間前に)投与する。本発明は、IL-4Rアンタゴニストを含む医薬組成物を対象にアレルゲン曝露後12時間未満、10時間未満、8時間未満、6時間未満、4時間未満、2時間未満、1時間未満または30分未満に投与することを含む方法も含む。本明細書において用いる場合の表現「アレルゲン曝露」は、対象がアレルゲンを摂取する、吸入する、アレルゲンに触れる、または別様にアレルゲンと直接もしくは間接的に接触している、任意の事態、エピソードまたは出来事を意味する。
【0018】
本発明は、IL-4Rアンタゴニストを含む医薬組成物を対象の1つまたはそれ以上のアレルギー症状の発現後に対象に投与することを含む方法も含む。例えば、本発明は、IL-4Rアンタゴニストを含む医薬組成物を対象の1つまたはそれ以上のアレルギー症状の最初の発現の直後、30分後、1時間後、2時間後、4時間後、6時間後、8時間後、10時間後、または12時間後に対象に投与することを含む方法を含む。
【0019】
本発明は、任意の上述のアレルゲンもしくはアレルゲンのクラスによって誘発されるアレルギー反応を処置する、予防する、または前記アレルギー反応の重症度を低減させる方法を含む。例えば、本発明は、食品(例えば、乳、卵、小麦、大豆、魚、甲殻類、落花生または木の実)の摂取または前記食品への曝露によって誘発されるアレルギー反応を処置する、予防する、または前記アレルギー反応の重症度を低減させる方法を含む。本発明は、非食物アレルゲン(例えば、昆虫毒、塵、カビ、動物の鱗屑、花粉、ラテックス、医薬品、ブタクサ、草またはカバノキ)によって誘発されるアレルギー反応を処置する、予防する、または前記アレルギー反応の重症度を低減させる方法も含む。
【0020】
本発明は、アレルギー反応を処置する、予防する、またはアレルギー反応の重症度を低減させる方法であって、IL-4Rアンタゴニストを含む医薬組成物の治療有効量を、その必要がある対象に投与することを含み、前記医薬組成物が対象に複数用量で、例えば特定の治療投与レジメンの一部として、投与される前記方法を含む。例えば、治療投与レジメンは、医薬組成物の複数用量を対象に約1日1回、2日に1回、3日に1回、4日に1回、5日に1回、6日に1回、週1回、2週間に1回、3週間に1回、4週間に1回、月1回、2カ月に1回、3カ月に1回、4カ月に1回、またはそれ以下の頻度で投与することを含む。
【0021】
ある一定の実施形態による本発明の方法は、IL-4Rアンタゴニストを含む医薬組成物の治療有効量を第2の治療薬と併用で対象に投与することを含む。第2の治療薬は、例えばステロイド、抗ヒスタミン薬、うっ血除去薬および抗IgE剤から成る群より選択される薬剤であってもよい。本明細書において用いる場合の句「と併用で」は、IL-4Rアンタゴニストを含む医薬組成物を第2の治療薬の投与と同時に、投与直前に、または投与直後に対象に投与することを意味する。ある一定の実施形態では、第2の治療薬をIL
-4Rアンタゴニストとの同一製剤(co-formulation)として投与する。関連実施形態では、本発明は、IL-4Rアンタゴニストを含む医薬組成物の治療有効量を、バックグラウンド抗アレルギー療法レジメンを受けている対象に投与することを含む方法を含む。バックグラウンド抗アレルギー療法レジメンは、例えばステロイド、抗ヒスタミン薬、うっ血除去薬、抗IgE剤などの、一連の投与を含むこともある。バックグラウンド抗アレルギー療法レジメンの上にIL-4Rアンタゴニストを加えることもある。一部の実施形態では、IL-4Rを一定用量でまたは漸増用量でまたは漸減用量で徐々に対象に投与しながら対象をバックグラウンド抗アレルギー療法から徐々に(例えば、段階的に)離脱させる「バックグラウンド・ステップ・ダウン」スキームの一部として、IL-4Rアンタゴニストを加える。
【0022】
アレルゲン特異的免疫療法(SIT)の有効性および/または安全性を向上させる方法
本発明は、アレルゲン特異的免疫療法(SIT)の有効性および/または安全性を向上させる方法も含む。本発明のこの態様による方法は、IL-4Rアンタゴニストを含む医薬組成物の治療有効量をSITレジメンの直前にまたはSITレジメンと同時に対象に投与することを含む。
【0023】
本明細書において用いる場合の表現「アレルゲン特異的免疫療法」、「特異的免疫療法」、「SIT」、「SITレジメン」などは、アレルギーおよびアレルギー反応の処置もしくは予防またはアレルギー応答の低減もしくは除去の手段として対象にアレルゲンを時間をかけて反復投与することを指す。典型的なSITレジメンでは、最初は少量のアレルゲンをアレルギー体質の対象に投与し、その後、増加させた量のアレルゲンを投与する。場合によっては、SITレジメンは、少なくとも2つの連続した期:(1)増量投与期および(2)維持期を含む。増量投与期には、有効で安全な用量に達するまでアレルゲンの漸増用量を投与する。増量投与期の最後に確立される用量を、その後、維持期の過程を通して対象に投与する。増量投与期の継続期間は、数週間であることもあり、または数カ月であることもある。しかし、ある一定の実施形態では、増量投与期は、実質的により短い継続期間(例えば、1週間未満、6日未満、5日未満、4日未満、3日未満、または2日未満)のものである。5日未満の増量投与期を含むSITレジメンは、「急速」免疫療法または「急速SIT」と呼ばれることもある。SITレジメンの維持期は、数週間、数カ月、数年、または無期限に続くこともある。
【0024】
本発明のこの態様によると、SITレジメンは、乳製品、卵、小麦、大豆、魚、甲殻類、落花生および木の実から成る群より選択される食品に由来する食物アレルゲンの投与を含むことがある。あるいは、SITレジメンは、昆虫毒、塵、カビ、動物の鱗屑、花粉、ラテックス、医薬品、ブタクサ、草およびカバノキから成る群より選択される非食物アレルゲンの投与を含むことがある。
【0025】
本発明の方法に従って、IL-4Rアンタゴニストを対象にSITレジメンの全過程にわたってまたはSITレジメンの一部分のみのために投与することができる。例えば、本発明の方法は、IL-4Rアンタゴニストを含む医薬組成物の治療有効量の、増量投与期前または中、約週1回、2週間に1回、3週間に1回、月1回、2カ月に1回、4カ月に1回、6カ月に1回、またはそれ以下の頻度での、対象への投与を含む。ある一定の実施形態では、IL-4Rアンタゴニストを含む医薬組成物を対象に維持期中または後、約週1回、2週間に1回、3週間に1回、月1回、2カ月に1回、4カ月に1回、6カ月に1回、またはそれ以下の頻度で投与する。
【0026】
本発明によると、SITレジメンの有効性および/または安全性は、次の転帰または現象の1つまたはそれ以上が対象において観察または達成された場合、「向上される」:(1)有効性もしくは安全性を損なうことなく、増量投与期の継続期間が減少される;(2
)有効性もしくは安全性を損なうことなく、維持期の継続期間が減少される;(3)有効性もしくは安全性を損なうことなく、増量投与期もしくは維持期に投与されるアレルゲン用量数が低減される;(4)有効性もしくは安全性を損なうことなく、増量投与期もしくは維持期のアレルゲン投与頻度が低減される;(5)有効性もしくは安全性を損なうことなく、増量投与期もしくは維持期に投与されるアレルゲンの用量が増加される;(6)SITレジメンによって誘発されるアレルギー応答もしくは有害副作用の頻度が低減される、または前記アレルギー応答もしくは有害副作用がなくなる;(7)増量投与期および/または維持期の従来のアレルギー用医薬品(例えば、ステロイド、抗ヒスタミン薬、うっ血除去薬、抗IgE剤など)の使用もしくは必要が低減されるもしくはなくなる;(8)アレルゲン誘導IgE発現のレベルが低減される;および/または(9)アナフィラキシー反応の頻度が低減されるもしくはアナフィラキシー反応がなくなる。SITレジメンの有効性は、本発明によると、対象が、SIT療法単独でよりIL-4R遮断薬と併用でのSIT療法後のほうが少ないおよび/または重症度の低いアレルギー反応を経験する場合も「向上される」と考えられる。
【0027】
本発明は、対象をSITレジメンから離脱させる方法も含む。本発明のこの態様による方法は、IL-4Rアンタゴニストを含む医薬組成物の1またはそれ以上の用量を対象に投与すること、ならびにSITレジメンの過程で対象に投与するアレルゲンの頻度および/または量を徐々に低減させることを含む。ある一定の実施形態では、IL-4Rアンタゴニストの量を増加させ、その一方でSITレジメンの一部として投与するアレルゲンの量を減少させる。好ましくは、望ましくないアレルギー反応からの適切な保護を依然としてもたらしながら、IL-4Rアンタゴニストの投与は、SITレジメンを終わらせることになる。
【0028】
インターロイキン-4受容体アンタゴニスト
本発明の方法は、インターロイキン-4受容体(IL-4R)アンタゴニストを含む治療用組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む。本明細書において用いる場合、「IL-4Rアンタゴニスト」(本明細書では「IL-4Rαアンタゴニスト」、「IL-4Rブロッカー」、「IL-4Rαブロッカー」などとも呼ぶ)は、IL-4RαもしくはIL-4Rリガンドに結合し、またはIL-4RαもしくはIL-4Rリガンドと相互作用し、1型および/または2型IL-4受容体の正常な生物学的シグナル伝達機能を阻害または減弱させる、任意の薬剤である。ヒトIL-4Rαは、配列番号11のアミノ酸配列を有する。1型IL-4受容体は、IL-4Rα鎖およびγc鎖を含む、二量体受容体である。2型IL-4受容体は、IL-4Rα鎖およびIL-13Rα1鎖を含む、二量体受容体である。1型IL-4受容体は、IL-4と相互作用し、IL-4によって刺激されるが、2型IL-4受容体は、IL-4とIL-13両方と相互作用し、IL-4とIL-13両方によって刺激される。したがって、本発明の方法において用いることができるIL-4Rアンタゴニストは、IL-4媒介シグナル伝達、IL-13媒介シグナル伝達、またはIL-4媒介シグナル伝達とIL-13媒介シグナル伝達の両方を遮断することによって機能することができる。したがって、本発明のIL-4Rアンタゴニストは、IL-4および/またはIL-13と1型または2型受容体との相互作用を防止することができる。
【0029】
IL-4Rアンタゴニストのカテゴリーの非限定的な例としては、小分子IL-4Rアンタゴニスト、抗IL-4Rアプタマー、ペプチド系IL-4Rアンタゴニスト(例えば「ペプチボディ」分子)、「受容体ボディ(receptor-bodies)」(例えば、IL-4R成分のリガンド結合ドメインを含む改変分子)、およびヒトIL-4Rαを特異的に結合する抗体または抗体の抗原結合断片が挙げられる。本明細書において用いる場合、IL-4Rアンタゴニストは、IL-4および/またはIL-13を特異的に結合する抗原結合タンパク質も含む。
【0030】
抗IL-4Rα抗体およびその抗原結合断片
本発明のある一定の例示的実施形態によると、IL-4Rアンタゴニストは、抗IL-4Rα抗体またはその抗原結合断片である。用語「抗体」は、本明細書において用いる場合、4本のポリペプチド鎖、ジスルフィド結合によって相互接続されている2本の重(H)鎖と2本の軽(L)鎖、を含む免疫グロブリン分子、およびそれらの多量体(例えばIgM)を含む。典型的な抗体では、各重鎖が重鎖可変領域(本明細書ではHCVRまたはVと略記する)および重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域は、3つのドメイン、C1、C2およびC3、を含む。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではLCVRまたはVと略記する)および軽鎖定常領域を含む。軽鎖定常領域は、1つのドメイン(C1)を含む。VおよびV領域は、フレームワーク領域(FR)と称する、より保存性の高い領域が散在している、相補性決定領域(CDR)と称する、超可変性の領域に、さらに細分することができる。各VおよびVは、3つのCDRと4つのFRで構成されており、これらはアミノ末端からカルボキシ末端へ次の順序で配置されている:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。本発明の様々な実施形態では、抗IL-4R抗体(またはその抗原結合部分)のFRがヒト生殖細胞系配列と同一であることもあり、または天然にもしくは人工的に修飾されていることもある。2つまたはそれ以上のCDRのサイドバイサイド分析に基づいてアミノ酸コンセンサス配列を定義することができる。
【0031】
用語「抗体」は、本明細書において用いる場合、完全抗体分子の抗原結合断片も含む。抗体の「抗原結合部分」、抗体の「抗原結合断片」などの用語は、本明細書において用いる場合、抗原に特異的に結合して複合体を形成する、任意の天然に存在する、酵素的に得ることができる、合成の、または遺伝子操作されたポリペプチドまたは糖タンパク質を含む。抗体の抗原結合断片は、例えば、抗体可変および場合により定常ドメインをコードするDNAの操作および発現を含む任意の好適な標準的技術、例えばタンパク質消化または組換え遺伝子工学技術を用いて完全抗体分子から、得ることができる。かかるDNAは、公知であり、および/または、例えば商業的供給源、DNAライブラリー(例えばファージ抗体ライブラリーを含む)から、容易に入手可能であり、または合成することができる。化学的にまたは分子生物学技術を用いることによりDNAを配列決定し、操作して、例えば、1つもしくはそれ以上の可変および/もしくは定常ドメインを好適な配置にすること、またはコドンを導入すること、システイン残基を生成すること、アミノ酸を修飾、付加もしくは欠失させることなどができる。
【0032】
抗原結合断片の非限定的な例としては、(i)Fab断片;(ii)F(ab’)2断片;(iii)Fd断片;(iv)Fv断片;(v)一本鎖Fv(scFv)分子;(vi)dAb断片;および(vii)抗体の超可変領域(例えば、単離された相補性決定領域(CDR)、例えばCDR3ペプチド)または拘束FR3-CDR3-FR4ペプチドを模倣するアミノ酸残基から成る最小認識単位が挙げられる。他の改変分子、例えば、ドメイン特異的抗体、シングルドメイン抗体、ドメイン欠失抗体、キメラ抗体、CDRグラフト抗体、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、ナノボディ(例えば、一価ナノボディ、二価ナノボディなど)、小モジュラー免疫薬(small modular immunopharmaceuticals)(SMIP)およびサメ可変IgNARドメインも、本明細書において用いる場合の表現「抗原結合断片」に包含される。
【0033】
抗体の抗原結合断片は、少なくとも1つの可変ドメインを典型的に含むだろう。可変ドメインは、いずれのサイズまたはアミノ酸組成のものであってもよく、および1つまたはそれ以上のフレームワーク配列と隣接しているまたはインフレームである少なくとも1つのCDRを一般に含むだろう。Vドメインと会合しているVドメインを有する抗原結
合断片の場合、VおよびVドメインは、任意の好適な配置で互いに位置することができる。例えば、可変領域は、二量体であることがあり、V-V、V-VまたはV-V二量体を含有することがある。あるいは、抗体の抗原結合断片は、単量体VまたはVドメインを含有することもある。
【0034】
ある一定の実施形態では、抗体の抗原結合断片は、少なくとも1つの定常ドメインに共有結合で連結された少なくとも1つの可変ドメインを含有することがある。本発明の抗体の抗原結合断片内で見つけられる可変および定常ドメインの非限定的な例示的配置としては、次のものが挙げられる:(i)V-C1;(ii)V-C2;(iii)V-C3;(iv)V-C1-C2;(v)V-C1-C2-C3;(vi)V-C2-C3;(vii)V-C;(viii)V-C1;(ix)V-C2;(x)V-C3;(xi)V-C1-C2;(xii)V-C1-C2-C3;(xiii)V-C2-C3;および(xiv)V-C。上に列挙した任意の例示的配置を含めて、可変および定常ドメインのいずれの配置に関しても、可変および定常ドメインは、互いに直接連結されていることもあり、または完全もしくは部分ヒンジもしくはリンカー領域によって連結されていることもある。ヒンジ領域は、単一ポリペプチド分子内の隣接する可変および/または定常ドメイン間の柔軟またはやや柔軟な連結をもたらす、少なくとも2つ(例えば、5、10、15、20、40、60またはそれ以上)のアミノ酸から成ることができる。さらに、本発明の抗体の抗原結合断片は、互いにおよび/または1つもしくはそれ以上の単量体VもしくはVドメインと(例えばジスルフィド結合によって)非共有結合的に会合している、上に列挙した任意の可変および定常ドメイン配置のホモ二量体またはヘテロ二量体(または他の多量体)を含むことがある。
【0035】
用語「抗体」は、本明細書において用いる場合、多重特異性(例えば、二重特異性)抗体も含む。多重特異性抗体、または抗体の多重特異性抗原結合断片は、各々の可変ドメインが別個の抗原にまたは同じ抗原上の異なるエピトープに特異的に結合することができる、少なくとも2つの異なる可変ドメインを典型的に含むだろう。いずれの多重特異性抗体フォーマットも、当該技術分野において利用可能な日常的技術を用いて本発明の抗体または抗体の抗原結合断片との関連での使用に適応させることができる。例えば、本発明は、二重特異的抗体の使用を含む方法であって、免疫グロブリンの一方のアームがIL-4Rαまたはその断片に特異的であり、およびその免疫グロブリンの他方のアームが第2の治療標的に特異的であるか、または治療部分にコンジュゲートされる前記方法を含む。本発明に関連して使用することができる例示的二重特異性フォーマットとしては、限定ではないが、例えば、scFv系またはダイアボディ二重特異性フォーマット、IgG-scFv融合体、二重可変ドメイン(DVD)-Ig、クアドローマ、ノブ・イントゥ・ホール(knobs-into-holes)、共通軽鎖(例えば、ノブ・イントゥ・ホールを有する共通軽鎖、など)、CrossMab、CrossFab、(SEED)ボディ、ロイシンジッパー、デュオボディ、IgG1/IgG2、二重作用Fab(DAF)-IgG、およびMab二重特異性フォーマットが挙げられる(前述のフォーマットの総説については、例えば、Kleinら、2012、mAbs 4:6、1~11頁、およびそこに引用されている参考文献を参照されたい)。ペプチド/核酸コンジュゲーションを用いて二重特異性抗体を構築することもでき、例えば、直交化学反応性を有する非天然アミノ酸を使用して部位特異的抗体-オリゴヌクレオチドコンジュゲートを生成し、次いで、被定義組成、価および幾何形状を有する多量体の複合体に前記コンジュゲートが自己組織化する。(例えば、Kazaneら、J.Am.Chem.Soc.[Epub:2012年12月4日]を参照されたい)。
【0036】
本発明の方法で使用する抗体は、ヒト抗体であってもよい。用語「ヒト抗体」は、本明細書において用いる場合、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列に由来する可変および定常
領域を有する抗体を含むことを意図したものである。それにもかかわらず、本発明のヒト抗体は、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列によって、例えばCDRにおよび特にCDR3に、コードされていないアミノ酸残基(例えば、インビトロでのランダムもしくは部位特異的突然変異誘発によってまたはインビボでの体性突然変異によって導入された突然変異)を含む。しかし、本明細書において用いる場合の用語「ヒト抗体」は、ヒトフレームワーク配列にグラフトされた、CDR配列がマウスなどの別の哺乳動物種の生殖細胞系に由来する抗体を含むことを意図したものではない。
【0037】
本発明の方法で使用する抗体は、組換えヒト抗体であってもよい。本明細書において用いる場合の用語「組換えヒト抗体」は、組換え手段によって調製、発現、生成または単離されるすべてのヒト抗体、例えば、宿主細胞にトランスフェクトされた組換え発現ベクターを使用して発現される抗体(下でさらに説明する)、組換え体から単離される抗体、コンビナトリアルヒト抗体ライブラリー(下でさらに説明する)、ヒト免疫グロブリン遺伝子にトランスジェニックである動物(例えばマウス)から単離された抗体(例えば、Taylorら(1992)Nucl.Acids Res.20:2687~6295頁を参照されたい)、またはヒト免疫グロブリン遺伝子配列の他のDNA配列へのスプライシングを含む任意の他の手段によって調製、発現、生成もしくは単離される抗体を含むことを意図したものである。かかる組換えヒト抗体は、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列に由来する可変および定常領域を有する。しかし、ある一定の実施形態では、かかる組換えヒト抗体は、インビトロ突然変異誘発(または、ヒトIg配列にトランスジェニックである動物を使用する場合には、インビボ体性突然変異誘発)を受け、したがって、組換え抗体のVおよびV領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖細胞系VおよびV配列に由来し、関係付けられるがインビボでヒト抗体生殖細胞系レパートリーに天然に存在することがない配列である。
【0038】
ある一定の実施形態によると、本発明の方法で使用する抗体は、IL-4Rαを特異的に結合する。用語「特異的に結合する」などは、抗体またはその抗原結合断片が、生理条件下で比較的安定している抗原との複合体を形成することを意味する。抗体が抗原に特異的に結合するかどうかを判定する方法は、当該技術分野において周知であり、例えば平衡透析、表面プラズモン共鳴などを含む。例えば、IL-4Rαを「特異的に結合する」抗体は、本発明に関連して用いる場合、表面プラズモン共鳴アッセイで測定して約1000nM未満、約500nM未満、約300nM未満、約200nM未満、約100nM未満、約90nM未満、約80nM未満、約70nM未満、約60nM未満、約50nM未満、約40nM未満、約30nM未満、約20nM未満、約10nM未満、約5nM未満、約4nM未満、約3nM未満、約2nM未満、約1nM未満または約0.5nM未満のKでIL-4Rαまたはその一部分を結合する抗体を含む。しかし、ヒトIL-4Rαを特異的に結合する単離された抗体は、他の(非ヒト)種からのIL-4Rα分子などの他の抗原への交差反応性を有することがある。
【0039】
本発明のある一定の例示的実施形態によると、IL-4Rアンタゴニストは、米国特許第7,608,693号に記載の抗IL-4R抗体の任意のアミノ酸配列を含む、重鎖可変領域(HCVR)、軽鎖可変領域(LCVR)および/または相補性決定領域(CDR)を含む、抗IL-4Rα抗体またはその抗原結合断片である。ある一定の例示的実施形態では、本発明の方法に関連して使用することができる抗IL-4Rα抗体またはその抗原結合断片は、配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)の重鎖相補性決定領域(HCDR)と配列番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)の軽鎖相補性決定領域(LCDR)とを含む。ある一定の実施形態によると、抗IL-4Rα抗体またはその抗原結合断片は、3つのHCDR(HCDR1、HCDR2およびHCDR3)および3つのLCDR(LCDR1、LCDR2およびLCDR3)を含み、HCDR1は、配列番号3のアミノ酸配列を含み;HCDR2は、配列番号4のアミノ酸配列
を含み;HCDR3は、配列番号5のアミノ酸配列を含み;LCDR1は、配列番号6のアミノ酸配列を含み;LCDR2は、配列番号7のアミノ酸配列を含み;LCDR3は、配列番号8のアミノ酸配列を含む。さらに他の実施形態において、抗IL-4R抗体またはその抗原結合断片は、配列番号1を含むHCVRと配列番号2を含むLCVRとを含む。ある一定の例示的実施形態によると、本発明の方法は、デュピルマブと呼ばれる、デュピルマブとして当該技術分野において公知の抗IL-4Rα抗体、またはその生物学的等価物の使用を含む。
【0040】
本発明の方法に関連して使用することができる他の抗IL-4Rα抗体としては、例えば、AMG317と呼ばれ、AMG317として当該技術分野において公知の抗体(Correnら、2010、Am J Respir Crit Care Med.、181(8):788~796頁)、または米国特許第7,186,809号、同第7,605,237号、同第7,608,693号もしくは米国特許第8,092,804号に記載の任意の抗IL-4Rα抗体が挙げられる。
【0041】
本発明の方法に関連して使用する抗IL-4Rα抗体は、pH依存性結合特性を有することがある。例えば、本発明の方法で使用するための抗IL-4Rα抗体は、中性pHと比較して酸性pHでのIL-4Rαへの結合低減を示すことがある。あるいは、本発明の抗IL-4Rα抗体は、中性pHと比較して酸性pHでのその抗原への結合増進を示すことがある。表現「酸性pH」は、約6.2未満のpH値、例えば、約6.0、5.95、5.9、5.85、5.8、5.75、5.7、5.65、5.6、5.55、5.5、5.45、5.4、5.35、5.3、5.25、5.2、5.15、5.1、5.05、5.0、またはそれ以下のpH値を含む。本明細書において用いる場合の表現「中性pH」は、約7.0~約7.4のpHを意味する。表現「中性pH」は、約7.0、7.05、7.1、7.15、7.2、7.25、7.3、7.35、および7.4のpH値を含む。
【0042】
場合によっては、「中性pHと比較して酸性pHでのIL-4Rαへの結合低減」を、酸性pHでのIL-4Rαへの抗体結合のK値の、中性pHでのIL-4Rαへの抗体結合のK値に対する(またはその逆の)比によって表す。例えば、抗体またはその抗原結合断片は、抗体またはその抗原結合断片が約3.0またはそれ以上の酸性/中性K比を示す場合、本発明の目的では「中性pHと比較して酸性pHでのIL-4Rαへの結合低減」を示すと考えられる。ある一定の例示的実施形態では、本発明の抗体または抗原結合断片についての酸性/中性K比は、約3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、10.0、10.5、11.0、11.5、12.0、12.5、13.0、13.5、14.0、14.5、15.0、20.0、25.0、30.0、40.0、50.0、60.0、70.0、100.0またはそれ以上であることができる。
【0043】
pH依存性結合特性を有する抗体は、例えば、中性pHと比較して酸性pHでの特定の抗原への結合低減(または増進)について抗体集団をスクリーニングすることにより得ることができる。加えて、アミノ酸レベルでの抗原結合ドメインの修飾によってpH依存性特性を有する抗体を得ることができる。例えば、抗原結合ドメイン(例えばCDR内)の1つまたはそれ以上のアミノ酸をヒスチジン残基で置換することにより、中性pHに比べて酸性pHでの抗原結合低減を有する抗体を得ることができる。本明細書において用いる場合の表現「酸性pH」は、6.0またはそれ以下のpHを意味する。
【0044】
医薬組成物
本発明は、医薬組成物に含有されているIL-4Rアンタゴニストを対象に投与することを含む方法を含む。好適な担体、好適な賦形剤、および好適な転移、送達、寛容性など
をもたらす好適な他の薬剤を用いて、本発明の医薬組成物を製剤化することができる。多数の適切な製剤を、すべての薬剤師に公知の処方集:Remington’s Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Company、Easton、PAで見つけることができる。これらの製剤としては、例えば、粉末、ペースト、軟膏、ゼリー、ワックス、油、脂質、脂質(カチオン性またはアニオン性)含有ベシクル(例えば、LIPOFECTIN(商標))、DNAコンジュゲート、無水吸収ペースト、水中油型および油中水型エマルション、エマルションカーボワックス(様々な分子量のポリエチレングリコール)、半固体ゲル、ならびにカーボワックスを含有する半固体混合物が挙げられる。Powellら「Compendium of excipients for parenteral formulations」PDA(1998)J Pharm Sci Technol 52:238~311頁も参照されたい。
【0045】
様々な送達システム、例えば、リポソーム、微粒子、マイクロカプセルへの封入、突然変異型ウイルスを発現することができる組換え細胞、受容体媒介エンドサイトーシス(例えば、Wuら、1987、J.Biol.Chem.262:4429~4432頁を参照されたい)が公知であり、本発明の医薬組成物を投与するために用いることができる。投与方法としては、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外および経口経路が挙げられるが、これらに限定されない。組成物を任意の適便な経路によって、例えば、注入またはボーラス注射によって、上皮または皮膚粘膜内層(例えば、口腔粘膜、直腸および腸粘膜など)を通した吸収によって投与することができ、および他の生物活性薬剤と共に投与することができる。
【0046】
本発明の医薬組成物を標準的な針および注射器で皮下または静脈内送達することができる。加えて、皮下送達に関しては、ペン型送達デバイスを本発明の医薬組成物の送達に容易に利用できる。かかるペン型送達デバイスは、再使用可能であることもあり、または使い捨てであることもある。再使用可能なペン型送達デバイスは、医薬組成物が入っている交換可能なカートリッジを一般に利用する。カートリッジ内のすべての医薬組成物を投与してしまい、カートリッジが空になったら、空のカートリッジを容易に廃棄して、医薬組成物が入っている新たなカートリッジと容易に交換することができる。その後、そのペン型送達デバイスを再使用することができる。使い捨てペン型送達デバイスには、交換可能なカートリッジがない。もっと正確に言えば、使い捨てペン型送達デバイスは、医薬組成物はデバイス内の溜め部に保持されて予め充填されて来るものである。溜め部の医薬組成物が空になったら、デバイス全体を廃棄する。
【0047】
ある一定の状況では、医薬組成物を制御放出システムで送達することができる。1つの実施形態では、ポンプを使用することがある。もう1つの実施形態では、高分子材料を使用することができる;Medical Applications of Controlled Release、LangerおよびWise(編集)、1974、CRC Pres.、Boca Raton、Floridaを参照されたい。さらにもう1つの実施形態では、制御放出システムを組成物の標的に近接して配置することができ、したがって全身用量の何分の1かしか必要としない(例えば、Goodson、1984、Medical Applications of Controlled Release、上掲、第2巻の115~138頁を参照されたい)。他の制御放出システムは、Langer、1990、Science 249:1527~1533頁による総説の中で論じられている。
【0048】
注射用製剤は、静脈内、皮下、皮内および筋肉内注射、点滴注入などのための剤形を含むことができる。これらの注射用製剤を公知の方法によって調製することができる。例えば、注射用製剤を、例えば上記の抗体またはその塩を注射に従来使用されている滅菌水性
媒体または油性媒体に溶解、懸濁または乳化させることによって、調製することができる。注射用の水性媒体としては、例えば、生理食塩水、グルコースおよび他の補助剤を含有する等張溶液などがあり、これらを適切な可溶化剤、例えば、アルコール(例えば、エタノール)、多価アルコール(例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン性界面活性剤[例えば、ポリソルベート80、HCO-50(硬化ヒマシ油のポリオキシエチレン(50mol)付加体)]などと併用することができる。油性媒体としては、例えばゴマ油、大豆油などが利用され、これらを可溶化剤、例えば、安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどと併用することができる。かくして調製された注射剤を適切なアンプルに充填することが好ましい。
【0049】
上記の経口または非経口用の医薬組成物を、活性成分の用量を合わせるのに適している単位用量の剤形に調製すると有利である。単位用量のかかる剤形としては、例えば、錠剤、ピル、カプセル、注射剤(アンプル)、坐剤などが挙げられる。
【0050】
本発明に関連して使用することができる抗IL-4R抗体を含む例示的医薬組成物は、例えば、米国特許出願公開第2012/0097565号に開示されている。
【0051】
投与量
本発明の方法に従って対象に投与するIL-4Rアンタゴニスト(例えば、抗IL-4Rα抗体)の量は、一般に治療有効量である。本明細書において用いる場合の句「治療有効量」は、次のうちの1つまたはそれ以上をもたらす結果となるIL-4Rアンタゴニストの量を意味する:(a)アレルギー反応の重症度または継続期間の低減;(b)アレルギー反応の1つまたはそれ以上の症状または徴候の軽減;(c)アナフィラキシーの予防または軽減;(d)血清IgEレベルの低減;(e)従来のアレルギー療法の使用または必要の低減(例えば、抗ヒスタミン薬、うっ血除去薬、鼻用または吸入ステロイド、抗IgE処置、エピネフリンなどの使用低減または排除);および(f)アレルゲン特異的免疫療法(SIT)に対するアレルギー応答の頻度低減。
【0052】
抗IL-4Rα抗体の場合、治療有効量は、抗IL-4R抗体約0.05mg~約600mg、例えば、約0.05mg、約0.1mg、約1.0mg、約1.5mg、約2.0mg、約10mg、約20mg、約30mg、約40mg、約50mg、約60mg、約70mg、約80mg、約90mg、約100mg、約110mg、約120mg、約130mg、約140mg、約150mg、約160mg、約170mg、約180mg、約190mg、約200mg、約210mg、約220mg、約230mg、約240mg、約250mg、約260mg、約270mg、約280mg、約290mg、約300mg、約310mg、約320mg、約330mg、約340mg、約350mg、約360mg、約370mg、約380mg、約390mg、約400mg、約410mg、約420mg、約430mg、約440mg、約450mg、約460mg、約470mg、約480mg、約490mg、約500mg、約510mg、約520mg、約530mg、約540mg、約550mg、約560mg、約570mg、約580mg、約590mg、または約600mgであることができる。ある一定の実施形態では、抗IL-4R抗体300mgを投与する。
【0053】
個々の用量に含有されるIL-4Rアンタゴニストの量は、患者体重のkgあたりの抗体のミリグラム(すなわち、mg/kg)によって表現することができる。例えば、IL-4Rアンタゴニストを患者に約0.0001~約10mg/患者体重kgの用量で投与することができる。
【0054】
実施例
以下の実施例は、本発明の方法および組成物を製造および使用する方法の完全な開示お
よび説明を当業者に与えるために提示するものであり、本発明者らが本発明者らの発明と考えるものの範囲を限定することを意図したものではない。用いる数字(例えば、量、温度など)に関して正確を期すように努力したが、多少の実験誤差および偏差を考慮すべきである。別段の指示がない限り、部は、重量部であり、分子量は、平均分子量であり、温度は、摂氏度でのものあり、および圧力は、大気圧またはほぼ大気圧でのものである。
【実施例1】
【0055】
IL-4R遮断薬は落花生アレルギーのマウスモデルにおける全身性アナフィラキシーを予防する
この実施例では、マウスモデルにおける落花生誘導アナフィラキシーに対するIL-4Rα遮断薬の効果を評価した。実験プロトコルの概略を図1Aに示す。簡単に言うと、5匹のC57BL/6マウスの3群を、第0日に皮下注射によって投与した粗製落花生抽出物100μgおよびミョウバン(2mg/ml)で各々感作し、その後、第14日に追加免疫注射を行った。第28日に落花生抽出物50μgの攻撃投与注射を静脈内投与した。マウスの第1の群は、処置を受けなかった。マウスの第2の群には、第13日および第27日に25mg/kgの用量で抗マウスIL-4Rα抗体(「抗mIL-4Rα」)を皮下投与した。マウスの第3の群は、第13日および第27日にアイソタイプ対照抗体を受けた。このおよび後続の実施例で使用した抗mIL-4Rα抗体は、配列番号9のアミノ酸配列を有するHCVRと配列番号10のアミノ酸配列を有するLCVRとを含む抗体であった。
【0056】
このモデルにおける全身性アナフィラキシーは、中央部体温の降下として発現された。それ故、この実験系におけるアナフィラキシーの程度を評価するために、攻撃投与注射後180分にわたってマウス中央部体温を測定した。結果を図1Bに示す。未処置マウスおよびアイソタイプ対照抗体を受けたマウスは、アナフィラキシー反応を示す中央部体温の急速な低下を攻撃投与の30分後に示した。対照マウスにおける中央部体温は、攻撃投与の180分後までにベースラインに徐々に上昇した。対照的に、抗mIL-4Rα処置を受けたマウスは、攻撃投与の30分後に中央部体温のわずかな低下しか示さず、60分時点までに平温に戻った。30分時点での抗mIL-4Rα処置マウスと対照間の中央部体温変化の差は、統計的に有意であった(P<0.0001)。
【0057】
最終IgEレベルも各実験群について測定した(図2)。示されているように、IL-4Rα遮断薬は、未処置およびアイソタイプ対照処置動物と比較して全IgEレベルを検出限界より下に有意に減少させた。
【0058】
前述の実験は、(D13およびD27に投与した)抗mIL-4Rα抗体の独立した2用量を伴った。次に、第2の実験セットを行って、同じ落花生アレルギーモデルで第13日または第27日いずれかにおける単回投与の効果を評価した。実験プロトコルの概略を図3A(D13投与)および図4A(D27投与)に示す。結果を図3Bおよび4Bにそれぞれ示す。第13日に抗mIL-4Rα抗体の単回投与を受けたマウスは、未処置および対照処置動物と比較して有意に少ないアナフィラキシーを示した(図3Bを参照されたい)が、この保護効果は2回投与実験(図1B)の場合ほど顕著ではなかった。抗IL-4Rα処置の保護効果は、第27日に抗体の単一用量を受けたマウスにおいて実質的に減弱された(図4Bを参照されたい)。
【0059】
単回投与実験では、第12日、第26日および第28日に動物から採取した試料のIgEレベルを測定した。結果を図5A(第13日投与)および図5B(第27日投与)に示す。重要なこととして、全身性アナフィラキシーに対する抗mIL-4Rα抗体の効果は、IgE阻害度と相関した。IgEレベルの低減は、抗mIL-4Rα処置直後ではなく、抗体投与時からIgEレベルが完全に抑制されるときまで約13日を必要とするようで
あった。したがって、この実施例は、アレルギー反応の予防におけるIL-4R拮抗作用の役割を支持する。
【実施例2】
【0060】
落花生特異的免疫療法モデルにおけるIL-4R遮断薬の使用
この実施例の目的は、アレルゲン特異的免疫療法(SIT)レジメンに加えたときのIL-4Rα遮断薬の効果を判定することであった。これらの実験のために、マウス落花生特異的免疫療法モデルを、Kulisら、J.Allergy Clin.Immunol.127(1):81~88頁(2011)のモデルに一部基づいて開発した。下で説明するような2セットの実験を行った。
【0061】
第1の実験セットで用いた実験プロトコルの概略を図6に示す。4群のマウスをこれらの実験で使用した。4群のうち3群のマウスを、感作期と増量期と攻撃投与とを含む落花生特異的免疫療法レジメンに付した。感作期は、第0、7および28日に腹腔内投与する0.5mg落花生抽出物+2mgミョウバンの投与から成った。増量期は、ミョウバンなしでの落花生抽出物の様々な用量の第49、51、53、56、58、60、63、65、67、70、72および74日における12回の独立した投与から成った。攻撃投与は、第98日における落花生抽出物1mgの投与から成った。
【0062】
これらの実験のための様々な処置群は、次のとおりであった:免疫療法も抗体も受けなかった群A(「ITなし」);抗体なしで免疫療法のみを受けた群B(「IT」);免疫療法と第36、50、57、64および71日にアイソタイプ対照抗体を受けた群C(「IT+アイソタイプ対照」);および免疫療法と第36、50、57、64および71日に抗mIL-4Rα抗体(25mg/kg、皮下)を受けた群D(「IT+抗IL-4Rα」)。これらの実験で使用した抗mIL-4Rα抗体は、本明細書の実施例1で使用したのと同じ抗体であった。
【0063】
この系でのアナフィラキシーの程度を評価するために、攻撃投与注射後180分にわたってマウス中央部体温を測定した。加えて、免疫グロブリン測定のために実験を通して(第35、46、77および98日に)血清試料を採集した。アナフィラキシー結果を図7に示す。第77および96日における全IgE、IgG1、IgG2aおよびIgGレベルを図8、9、10および11にそれぞれ示す。
【0064】
これらの実験の結果は、このモデルではアレルゲン特異的免疫療法単独で落花生誘導全身性アナフィラキシーから保護することを示す(図7を参照されたい)。重要なこととして、抗IL-4Rα抗体の投与は、SITの観察される保護効果に干渉しなかった。加えて、SITによって誘導されるIgE増加傾向が、ITのみおよびIT+アイソタイプ対照処置動物で観察された。対照的に、抗IL-4Rα処置動物ではIgE産生が阻止された(図8を参照されたい)。落花生特異的IgG1力価増加傾向が(抗体処置を伴うまたは伴わない)免疫療法で処置した動物で観察されたが、統計的有意性は、第77日にIT動物で観察されただけであった(図9を参照されたい)。IL-4Rα遮断薬が落花生特異的IgG2aの増加を生じさせることも観察された(図10を参照されたい)。この第1の実験セットからの結果は、アレルゲン特異的免疫療法の有効性および安全性を改善する可能性のある手段としてのIL-4R遮断薬の使用を実験的に裏付ける。
【0065】
次に、第2の実験セットを行って、より少ないアレルゲン用量数を増量期に用いるSITレジメンでIL-4R遮断薬の効果を判定した。この第2の実験セットで用いた実験プロトコルの概略を図12に示す。前と同様に、4群のマウスをこれらの実験で使用した。4群のうち3群のマウスを、アレルゲンのより少ない用量数を増量期に投与したことを除いて第1の実験セットで用いたレジメンと同一の落花生特異的免疫療法レジメンに付した
。詳細には、これらの実験の増量期は、第51および53日(0.1mg)、第58および60日(0.25mg)、第65および67日(0.5mg)ならびに第72および74日(0.5mg)における、ミョウバンなしでの落花生抽出物の様々な用量の(12回とは異なり)8回だけの独立した投与から成った。
【0066】
この場合もやはり4つの処置群(「ITなし」、「ITのみ」、「IT+アイソタイプ対照」;および「IT+抗IL-4Rα」)を使用した。抗体を前と同じ用量(25mg/kg、SQ)で投与したが、(第1の実験セットでの第36、50、57、64および71日とは異なり)第36、49、56、63および70日に注射を投与した。攻撃投与注射後240分にわたってマウス中央部体温を測定することによりアナフィラキシーの程度を判定した。結果を図13に示す。
【0067】
これらの実験では、増量期中の低頻度のアレルゲン投与のほうが、第1の実験セットで用いた高頻度の投与レジメンと比較して(12に対して8用量)、アナフィラキシー対する保護性が低かった。詳細には、ITおよびIT+アイソタイプ対照マウスではアレルゲンの攻撃投与後の最初の60分の間に、「ITなし」マウスで観察されたものよりほんのわずかに重症度が低い、中央部体温の相当な降下が観察された。対照的に、抗IL-4Rα処置マウスでは、軽度のアナフィラキシー応答(すなわち、中央部体温のわずかな低下)しか観察されなかった。このモデルでの増量期は、ヒトでの従来のSITレジメンにおける維持期に類似していると考えることができる。したがって、この実施例からの結果は、IL-4R遮断薬が、維持期投与低減を可能にすることによりアレルゲン特異的免疫療法レジメンの安全性を実質的に改善することができることを示す。アレルゲン投与頻度が低いほど、適便でもあり、および結果としてSITレジメンにおける患者コンプライアンスも大きくなる。
【0068】
本発明は、本明細書に記載する特定の実施形態によって範囲が限定される予定のものではない。実際、本明細書に記載するものに加えて本発明の様々な修飾形態が、上述の説明および添付の図面から当業者に明らかになるであろう。かかる修飾形態は、添付の特許請求の範囲に入ることが意図される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【配列表】
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