(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】宇宙輸送船の乗員脱出システムにおいて使用するための座席システムおよび船室区域
(51)【国際特許分類】
B64G 1/52 20060101AFI20241022BHJP
【FI】
B64G1/52
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023114309
(22)【出願日】2023-07-12
【審査請求日】2023-08-28
(32)【優先日】2022-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】516077644
【氏名又は名称】アリアーネグループ ゲーエムベーハー
(73)【特許権者】
【識別番号】516257464
【氏名又は名称】アリアーヌグループ ソシエテ パ アクシオンス シンプリフィエ
【氏名又は名称原語表記】ArianeGroup SAS
【住所又は居所原語表記】51-61 Route de Verneuil, 78130 Les Mureaux, France
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アレックス プレブーフ
(72)【発明者】
【氏名】マルコ プランポリーニ
(72)【発明者】
【氏名】マルコ ヴォルフ
【審査官】志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05297761(US,A)
【文献】特表2010-526719(JP,A)
【文献】米国特許第05707103(US,A)
【文献】国際公開第2006/124674(WO,A2)
【文献】国際公開第2005/108150(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64G 1/00
B60N 2/00
B64D 11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
宇宙輸送船(1000)の乗員脱出システム(500)において使用するための座席システム(10)であって、前記座席システム(10)は、
支持面(16)を備えたバックレスト(14)を有する座席(12)であって、前記支持面(16)は、前記座席(12)が乗員(106)によって使用されている際に、前記乗員(106)の上半身を支持するために適しており、前記座席(12)は、第1の軸線(R1)を中心として少なくとも第1の位置と第2の位置との間で回転可能となるように、前記乗員脱出システム(500)の船室区域(100)内に設置されるように構成されており、前記第1の位置では、前記バックレスト(14)の前記支持面(16)が、第1の方向(D1)に面しており、前記第2の位置では、前記バックレスト(14)の前記支持面(16)が、前記第1の方向(D1)とは逆向きである第2の方向(D2)に面している、座席(12)と、
少なくとも前記第1の位置と前記第2の位置との間での前記座席(12)の回転を、前記乗員脱出システム(500)の軌道を示す少なくとも1つの信号に依存して制御するように構成されている制御ユニット(25)と、
を備える座席システム(10)。
【請求項2】
前記第1の方向は、前記宇宙輸送船(1000)の打ち上げ中に前記座席(12)を使用している乗員に対して作用する主荷重の方向に相当し、
前記第2の方向は、前記座席システム(10)が装備された前記乗員脱出システム(500)が着陸する前の、前記乗員脱出システム(500)が依然として前記宇宙輸送船(1000)に接続されている下降フェーズ中、または前記乗員脱出システム(500)が前記宇宙輸送船(1000)から一旦分離されると、または打ち上げ中止後もしくは通常の着陸中に前記乗員脱出システム(500)が着地する際に、前記座席(12)を使用している乗員に対して作用する主荷重の方向に相当し、
前記制御ユニット(25)は、前記乗員脱出システム(500)の着陸前に、前記第1の位置から前記第2の位置への前記座席(12)の前記回転を制御するように構成されている、
請求項1記載の座席システム(10)。
【請求項3】
前記座席システム(10)は、
少なくとも前記第1の位置から前記第2の位置へと前記座席(12)を回転させるように構成されている駆動システム(26)と、
前記座席(12)を少なくとも前記第1の位置および前記第2の位置にロックするように構成されているロックシステム(27)と
のうちの少なくとも1つをさらに含む、
請求項1記載の座席システム(10)。
【請求項4】
前記座席(12)は、座席要素(20)をさらに含み、前記座席要素(20)は、展開された使用位置と、折り畳まれた収納位置との間で、第2の軸線(R2)を中心として前記バックレスト(14)に対して回転可能であり、前記展開された使用位置では、前記座席要素(20)の着座面(22)と、前記バックレスト(14)の前記支持面(16)とが第1の角度(γ1)を規定し、前記折り畳まれた収納位置では、前記座席要素(20)の前記着座面(22)と、前記バックレスト(14)の前記支持面(16)とが、前記第1の角度(γ1)よりも小さい第2の角度(γ2)を規定し、かつ/または
前記座席(12)は
、前記第1の軸線(R1)を中心として第3の位置へと回転可能であり、前記第3の位置では、前記バックレスト(14)の前記支持面(16)が、前記第1の方向(D1)および前記第2の方向(D2)に対して実質的に垂直な第3の方向(D3)に面している、
請求項1記載の座席システム(10)。
【請求項5】
前記座席(12)は、
前記船室区域(100)に接続されるように構成されている支持構造体(28)であって、前記支持構造体(28)は
、前記バックレスト(14)に接続された第1の部分(28a)と、前記座席要素(20)に接続された第2の部分(28b)とを含み、前記第2の部分(28b)は
、前記第2の軸線(R2)を中心として前記第1の部分(28a)に対して回転可能である、支持構造体(28)と、
オプションとして前記バックレスト(14)に対して、前記第1の軸線に対して実質的に平行な方向に移動可能であるレッグレスト(30)と、
オプションとして前記バックレスト(14)に対して、前記第1の軸線に対して実質的に平行な方向に移動可能であるヘッドレスト(32)と
のうちの少なくとも1つをさらに含む、
請求項
4記載の座席システム(10)。
【請求項6】
前記座席システム(10)は、
固定システム(44)であって、前記船室区域(100)内の設置位置に前記座席(12)を取り離し可能に固定するために、前記乗員脱出システム(500)の前記船室区域(100)内に設けられた相補的な固定システム(134)と相互作用するように構成されている、固定システム(44)と、
前記座席(12)の前記バックレスト(14)のうちの、前記支持面(16)とは反対側を向いている背面(18)に取り離し可能に取り付けられているタブレットコンピュータ(38)と、
前記座席(12)の前記バックレスト(14)の前記背面(18)に設けられている少なくとも1つの制御要素(40)と、
前記バックレスト(14)の側縁部に形成された少なくとも1つの第1のグリップハンドル(34)と、
前記座席要素(20)の側縁部に形成された少なくとも1つの第2のグリップハンドル(36)と
のうちの少なくとも1つをさらに含む、
請求項
4記載の座席システム(10)。
【請求項7】
宇宙輸送船(1000)の乗員脱出システム(500)において使用するための船室区域
(100)であって、前記船室区域(100)は、請求項1記載の少なくとも1つの座席システム(10)を含む、船室区域
(100)。
【請求項8】
前記船室区域(100)は、請求項
1記載の複数の座席システム(10)を含み、前記座席システム(10)または前記複数の座席システム(10)のうちのいくつかは、前記船室区域(100)の中心長手軸線(L)に対して実質的に平行な方向に相前後して配置されており、かつ/または
少なくとも1つの前記座席システム(10)または複数の座席システム(10)のうちのいくつかまたは全ては、前記船室区域(100)の前記中心長手軸線(L)に対してずらされて配置されており、かつ/または
複数の座席システム(10)のうちの少なくとも1つの座席システム(10)が、前記船室区域(100)の前記中心長手軸線(L)に対して中央に配置されているのに対し、前記複数の座席システム(10)のうちの少なくとも1つの他の座席システム(10)は、前記船室区域(100)の前記中心長手軸線(L)に対してずらされて配置されている、
請求項7記載の船室区域(100)。
【請求項9】
前記船室区域(100)は、固定システム(134)をさらに含み、前記固定システム(134)は、前記船室区域(100)内の設置位置に前記座席(12)を取り離し可能に固定するために、前記座席システム(10)の相補的な固定システム(44)と相互作用するように構成されており、
前記固定システム(134)は
、
前記船室区域(100)の天井領域に設けられており、前記座席システム(10)の前記固定システム(44)の相補的な第1の取り付け装置(44a)と相互作用するように構成されている第1の緊締装置(134a)と、
前記船室区域(100)の床領域に設けられており、前記座席(12)
の座席要素(20)が、前記座席要素(20)の展開された使用位置に配置されている際に、前記座席システム(10)の前記固定システム(44)の相補的な第2の取り付け装置(44b)と相互作用するように構成されている第2の緊締装置(134b)と、
前記船室区域(100)内に設けられており、前記座席(12)の前記座席要素(20)が、前記座席要素(20)の折り畳まれた収納位置に配置されている際、かつ前記座席(12)
が第3の位置に配置されている際に、前記座席システム(10)の前記固定システム(44)の前記相補的な第2の取り付け装置(44b)と相互作用するように構成されている第3の緊締装置(134c)と
のうちの少なくとも1つを含む、
請求項7記載の船室区域(100)。
【請求項10】
前記船室区域(100)は、
前記船室区域(100)の前記中心長手軸線(L)に関して前記少なくとも1つの座席システム(10)の横方向に配置されている収納モジュール(102)と、
前記船室区域(100)の前記中心長手軸線(L)に関して前記少なくとも1つの座席システム(10)の横方向に配置されている収納スペース(104)であって、前記収納スペース(104)には
、標準化された手荷物(116)または別の身の回り品の相補的な取り付けシステム(114)と相互作用するように構成されている少なくとも1つの取り付けシステム(112)が設けられている、収納スペース(104)と、
前記船室区域(100)の船首領域に配置されており、前記船室区域(100)の室内に面している制御パネル(118)であって、前記制御パネル(118)には
、前記制御パネル(118)の少なくとも1つの制御要素(122,124)の上方に配置されており、これによって前記制御要素(122,124)を操作する際のユーザの手を支持するためのグリップレール(120)が設けられている、制御パネル(118)と、
前記制御パネル(118)に取り離し可能に取り付けられているさらなるタブレットコンピュータ(42)と、
前記船室区域(100)の船尾領域に配置されている観察窓(119)と、
乗員(106)を前記船室区域(100)の内部の所望の位置まで上昇させるために前記船室区域(100)の前記中心長手軸線(L)に沿って移動可能である昇降台(128)であって、前記昇降台(128)は
、搭乗フェーズが終了するまでだけ前記船室区域(100)内に取り外し可能に設置されるように構成されている、昇降台(128)と、
乗員(106)が前記船室区域(100)の内部の所望の位置まで登ることを可能にするために前記船室区域(100)の前記中心長手軸線(L)に沿って延在するはしご(132)であって、前記はしご(132)は
、搭乗フェーズが終了するまでだけ前記船室区域(100)内に取り外し可能に設置されるように構成されている、はしご(132)と
のうちの少なくとも1つをさらに含む、
請求項
8記載の船室区域(100)。
【請求項11】
前記船室区域(100)の輪郭は、実質的に弾丸形状であり、かつ/または前記船室区域(100)の中心長手軸線(L)に沿った前記船室区域(100)の長さの少なくとも80%に沿って実質的に一定の横断面を有する、
請求項7記載の船室区域(100)。
【請求項12】
宇宙輸送船(1000)の乗員脱出システム(500)において使用するための座席システム(10)を動作させる方法であって、
前記方法は、
支持面(16)を備えたバックレスト(14)を有する座席(12)を提供することであって、前記支持面(16)は、前記座席(12)が乗員(106)によって使用されている際に、前記乗員(106)の上半身を支持するために適しており、前記座席(12)は、第1の軸線(R1)を中心として少なくとも第1の位置と第2の位置との間で回転可能となるように、前記乗員脱出システム(500)の船室区域(100)内に設置されるように構成されており、前記第1の位置では、前記バックレスト(14)の前記支持面(16)が、第1の方向(D1)に面しており、前記第2の位置では、前記バックレスト(14)の前記支持面(16)が、前記第1の方向(D1)とは逆向きである第2の方向(D2)に面している、座席(12)を提供することと、
制御ユニット(25)によって、少なくとも前記第1の位置と前記第2の位置との間での前記座席(12)の回転を、前記乗員脱出システム(500)の軌道を示す少なくとも1つの信号に依存して制御することと
を含む、方法。
【請求項13】
前記第1の方向は、前記宇宙輸送船(1000)の打ち上げ中に前記座席(12)を使用している乗員に対して作用する主荷重の方向に相当し、
前記第2の方向は、前記座席システム(10)が装備された前記乗員脱出システム(500)が着陸する前の、前記乗員脱出システム(500)が依然として前記宇宙輸送船(1000)に接続されている下降フェーズ中、または前記乗員脱出システム(500)が前記宇宙輸送船(1000)から一旦分離されると、または打ち上げ中止後もしくは通常の着陸中に前記乗員脱出システム(500)が着地する際に、前記座席(12)を使用している乗員に対して作用する主荷重の方向に相当し、
前記制御ユニット(25)は、前記乗員脱出システム(500)の着陸前に、前記第1の位置から前記第2の位置への前記座席(12)の前記回転を制御する、
請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記座席(12)は
、駆動システム(26)によって、前記制御ユニット(25)の制御下で少なくとも前記第1の位置から前記第2の位置へと回転させられ、かつ/または
前記座席(12)は、前記第1の位置、前記第2の位置、または前記第1の位置および前記第2の位置とは異なる他の位置へと手動で回転させられ、かつ/または
前記座席(12)は、少なくとも前記第1の位置および前記第2の位置
にロックされ、かつ/または
前記座席(12)の座席要素(20)は
、展開された使用位置と、折り畳まれた収納位置との間で、第2の軸線(R2)を中心として前記バックレスト(14)に対して回転させられ、前記展開された使用位置では、前記座席要素(20)の着座面(22)と、前記バックレスト(14)の前記支持面(16)とが第1の角度(γ1)を規定し、前記折り畳まれた収納位置では、前記座席要素(20)の前記着座面(22)と、前記バックレスト(14)の前記支持面(16)とが、前記第1の角度(γ1)よりも小さい第2の角度(γ2)を規定し、かつ/または
前記座席(12)は
、前記第1の軸線(R1)を中心として第3の位置へと回転可能であり、前記第3の位置では、前記バックレスト(14)の前記支持面(16)が、前記第1の方向(D1)および前記第2の方向(D2)に対して実質的に垂直な第3の方向(D3)に面しており、かつ/または
前記船室区域(100)内に設けられている前記船室区域(100)の固定システム(134)の第3の緊締装置(134c)は、前記座席(12)の前記座席要素(20)が、前記座席要素(20)の折り畳まれた収納位置に配置されている際、かつ前記座席(12)が前記第3の位置に配置されている際に、前記座席システム(10)の固定システム(44)の相補的な第2の取り付け装置(44b)と係合させられる、
請求項13記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、宇宙輸送船の乗員脱出システムにおいて使用するための座席システムおよび船室区域に関する。さらに、本発明は、このような座席システムを動作させるための方法に関する。
【0002】
現代の宇宙輸送船には、打ち上げ中止シナリオにおいて、発射装置の故障から結果的に生じるファイアーボール爆発から乗員を避難させるために機能する乗員脱出システムが装備されている。乗員脱出システムは、打ち上げ中止を必要とする非常時には打ち上げ機から分離可能であり、典型的には、乗員のための船室を収容するカプセル形状の乗員モジュールと、乗員モジュールを駆動するためのエンジンとを含む。人体は、主荷重が胸部から背中に向けられる荷重シナリオに対して最も耐性がある。したがって、乗員脱出システムの乗員モジュール内の乗員のための所望の荷重シナリオは、主荷重ベクトルに面している着座位置を必然的に要する。さらに、打ち上げ中止後の乗員モジュールの下降中だけでなく、乗員モジュールの通常の着地動作中においても、カプセル形状の乗員モジュールの後方の熱シールドを、乗員モジュールの軌道に関して正面に位置決めする必要がある。したがって、公知の乗員脱出システムには、打ち上げ機から分離された後に、ただし下降フェーズに突入する前に、乗員脱出システムの軌道に沿って乗員脱出システムの向きを制御するために適当なシステム、特に、乗員モジュールの正しい飛行方向を提供するための宙返り(フリップ)操縦または代替操縦を実施するために適当なシステムが装備されている。
【0003】
本発明は、打ち上げ中止シナリオにおいて乗員脱出システムの安全かつ確実な動作を支援する、宇宙輸送船の乗員脱出システムにおいて使用するための座席システムおよび船室区域を提供することを目的とする。さらに、本発明は、このような座席システムを動作させる方法を提供することを目的とする。
【0004】
宇宙輸送船の乗員脱出システムにおいて使用するための座席システムは、支持面を備えたバックレストを有する座席を含み、支持面は、座席が乗員によって使用されている際に、乗員の上半身を支持するために適している。したがって、本開示の文脈における「支持面」という用語は、バックレストのうちの、乗員が使用時に、すなわち座席に着座している際に自身の背中をもたれさせることができる面を意味する。その結果、少なくとも座席の正規の使用中には、バックレストの支持面の向きが、乗員の上半身の向きを実質的に規定する。バックレストは、背面も含むことができ、この背面は、支持面とは反対側を向いており、かつバックレストの裏側を規定する。
【0005】
座席は、第1の軸線を中心として少なくとも第1の位置と第2の位置との間で回転可能となるように、乗員脱出システムの船室区域内に設置されるように構成されている。座席が、座席の第1の位置に配置されている際には、バックレストの支持面が、第1の方向に面している。しかしながら、座席が、座席の第2の位置に配置されている際には、バックレストの支持面が、第2の方向に面している。第2の方向は、第1の方向とは逆向きである。換言すれば、座席は、第1の軸線を中心として第1の位置と第2の位置との間で少なくとも180°回転可能である。しかしながら、座席の回転を、第1の軸線を中心とした180°の回転に限定しなくてもよい。これに代えて、座席が、第1の軸線を中心として最大360°または180°~360°の間の任意の所望の角度だけ回転可能であることも考えられる。
【0006】
第1の軸線とは、従来のパイロットの位置における座席に着座している人の臀部および頭部を通って延在する軸線であってもよい。換言すれば、第1の軸線は、座席のバックレストに対して実質的に平行に、かつ座席の座席要素に対して実質的に垂直に延在することができ、座席は、「通常の」使用位置に配置されている際には、好ましくは座席のバックレストに対して実質的に垂直に延在する。
【0007】
支持面の少なくとも一部は、第1の方向および第2の方向に対して実質的に垂直に延在することができる。しかしながら、支持面またはその少なくとも一部を、第1の方向および第2の方向に対して垂直に延在する平面に対して最大20°、最大15°、または最大10°だけ傾斜させることも考えられる。さらに、座席を使用している乗員の安全性および快適性の向上を提供するために、支持面を平坦にするのではなく、支持面の少なくとも一部においてわずかに湾曲させることが考えられる。
【0008】
座席システムは、制御ユニットをさらに含み、乗員脱出システムの動作中、特に、乗員脱出システムが宇宙輸送船から分離された後に、制御ユニットは、少なくとも第1の位置と第2の位置との間での座席の回転を、乗員脱出システムの軌道を示す少なくとも1つの信号に依存して制御するように構成されている。制御ユニットは、もっぱら座席の回転を制御するように設計された制御ユニットであってもよい。しかしながら、制御ユニットが、乗員脱出システムの上位の制御システムであるか、または上位の制御システムの一部を構成することも考えられる。さらに、制御ユニットは、乗員脱出システムの軌道と、その他の機能および状態とを示す複数の(それぞれ異なる)信号を受信および処理するように構成可能である。例えば、制御ユニットは、乗員脱出システムの高度および/または加速度を示す信号を受信するように構成可能である。これらの信号は、例えば高度センサまたは慣性測定ユニット(IMU)によって提供可能である。
【0009】
本明細書で説明される座席システムでは、制御ユニットは、乗員脱出システムの軌道と、ひいては乗員脱出システムの内側で知覚される見かけ上のG荷重倍数とに依存して、座席の位置を調節するように座席の回転を自動的に開始する。このことは、例えば軌道に沿った特定の位置において、座席を使用している乗員に対して作用する主荷重の方向に対する座席位置の自動的な調節を可能にする。特に、制御ユニットは、主荷重が、座席を使用している乗員に対して真正面に、ひいては人体にとって最も許容可能である方向に作用することを保証するために、座席の自動的な回転を開始することができる。しかしながら、制御ユニットの制御機能を、座席の手動操作によって無効にすることが考えられる。特に、例えば、制御ユニットの機能不全の場合、または座席を使用している乗員が、制御ユニットによって開始された自動的な回転を解除することを希望した場合に、座席を、手動でも回転させられるように構成することができる。
【0010】
したがって、本明細書で説明される座席システムが装備された乗員脱出システムは、例えば、着陸前に乗員脱出システムの向きを変えるための宙返り操縦を実施する必要がもはやない。その代わりに、乗員脱出システムは、乗員脱出システムの軌道に沿って、乗員脱出システムの空気力学的な構成によって与えられる自然な向きに追従することができる。例えば、乗員脱出システムは、乗員脱出システムの船首が必然的に移動方向に関して移動方向に従って自動的に正面に向けられるという、シャトルコックの飛行挙動に匹敵する飛行挙動を有することができる。これにより、宙返り操縦を実施するためのエンジンシステム、例えば、宙返り操縦後に乗員脱出システムから分離されなければならない姿勢制御モータを不要にすることができる。しかしながら、乗員脱出システムには、移動方向に関して乗員脱出システムの後方の部分に配置することができる、乗員脱出システムの軌道を安定化させるための安定化装置を装備してもよい。
【0011】
第1の方向は、座席が装備された乗員脱出システムが含まれている宇宙輸送船の打ち上げ中に、一般的な方式で座席を使用している乗員に対して作用する主荷重の方向に実質的に相当することができる。打ち上げ中、主荷重の方向は、典型的には宇宙輸送船の、ひいては乗員脱出システムの移動方向とは逆向きである。したがって、座席が、座席の第1の位置に配置されている際には、支持面の向きは、宇宙輸送船の打ち上げ中に発生する主荷重が乗員に対して真正面に、ひいては人体にとって最も許容可能である方向に作用することを保証することができる。
【0012】
第2の方向は、座席システムが装備された乗員脱出システムが着陸する前の、乗員脱出システムが依然として宇宙輸送船に接続されている下降フェーズ中、または乗員脱出システムが宇宙輸送船から一旦分離されると、または打ち上げ中止後もしくは通常の着陸中に乗員脱出システムが着地する際に、一般的な方式で座席を使用している乗員に対して作用する主荷重の方向に実質的に相当することができる。着陸中、主荷重の方向は、典型的には着陸直前の乗員脱出システムの移動方向に相当する。
【0013】
制御ユニットは、乗員脱出システムの着陸前に、第1の位置から第2の位置への座席の回転を制御するように構成可能である。座席が、座席の第2の位置に配置されている際には、支持面の向きは、乗員脱出システムの着陸中に発生する主荷重が再び乗員に対して真正面に、ひいては人体にとって最も許容可能である方向に作用することを保証する。
【0014】
座席システムは、少なくとも第1の位置から第2の位置へと座席を回転させるように構成されている駆動システムをさらに含むことができる。しかしながら、駆動システムが設けられていないか、または駆動システムが故障している場合には、座席が荷重によって駆動されて、または手動で第1の位置から第2の位置へと回転させられるようにすることも考えられる。弾道フェーズ(ゼロG荷重)が典型的には数分間続くので、手動操作が可能である。荷重によって駆動される座席の回転、または手動での座席の回転を簡単にするために、駆動システムを、座席から係合解除することができる。駆動システムは、第1の位置から第2の位置へのみ、または第1の位置と第2の位置との間でのみ座席を回転させるように構成可能である。しかしながら、駆動システムが、第1の軸線を中心とした任意の所望の回転位置へと座席を移動させるように構成されていることも考えられ、すなわち、駆動システムは、第1の軸線を中心として0°~360°の間の任意の所望の角度だけ座席を回転させるように構成可能である。駆動システムは、例えば電気的なモータを含むことができる。冗長性の理由から、互いに独立して動作可能である2つ以上の、好ましくは同一の駆動システムを、それぞれの座席システムに装備することができる。駆動システムは、少なくとも第1の位置から第2の位置へと座席を回転させるための、乗員による如何なる手動での行動も必要なしに、座席の適切な回転、ひいては適切な向きを保証する。
【0015】
制御ユニットは、駆動システムの動作をトリガすることによって、第1の位置から第2の位置へのみ、または第1の位置と第2の位置との間でのみ座席の回転を開始するように構成可能である。その場合、制御ユニットおよび駆動システムの動作は、特に単純になり、ひいては故障しにくくなる。さらに、第1の位置から第2の位置へのみ、または第1の位置と第2の位置との間でのみ座席を移動させるために機能する駆動システムは、省スペースかつ軽量の設計を有することができる。しかしながら、制御ユニットおよび駆動システムは、第1の軸線を中心とした任意の所望の回転位置へと座席を移動させるために、例えば乗員が特定の行動を実施することを可能にする特定の位置へと座席を移動させるために、協働するように構成可能である。このような場合、制御ユニットは、座席を自動的に回転させるように駆動システムを制御するためのトリガ信号として、乗員脱出システムの軌道を示す信号とは異なる他の信号を使用することもできる。さらに、少なくとも特定の動作状況において、例えば所望の位置へと座席を回転させるために適切な作動ボタンを押すことによって駆動ユニットを手動で作動させることができるようにすることが考えられる。
【0016】
座席システムは、座席を少なくとも第1の位置および第2の位置にロックするように構成されているロックシステムをさらに含むことができる。しかしながら、ロックシステムは、追加的に座席を第1の位置および第2の位置とは異なる他の位置にロックすることを可能にするように設計されてもよい。特に、ロックシステムは、座席を、第1の軸線を中心とした任意の所望の回転位置にロックするように構成可能である。ロックシステムには、適切なラッチ機構を設けることができ、このラッチ機構は、座席が第1の位置に、第2の位置に、かつ/または第1の軸線を中心とした任意の他の所望の回転位置に到達すると座席の自動的なロックを提供する。
【0017】
制御ユニットは、乗員脱出システムの軌道を示す少なくとも1つの信号に依存して座席をロック解除するために、ロックシステムを制御するように構成可能である。制御ユニットの制御下でのロックシステムの自動的なロック解除は、駆動システムによって、かつ/または駆動システムから独立して形成されたロック解除機構によって実施可能である。追加的または代替的に、ロックシステムは、手動でロック解除されるように構成可能である。
【0018】
座席は、着座面を備えた座席要素をさらに含むことができる。本開示の文脈における「着座面」という用語は、座席要素のうちの、使用時に、すなわち一般的な方式で座席に着座している際に、乗員の臀部を支持する面を意味する。座席要素も、背面を含むことができ、この背面は、着座面とは反対側を向いており、かつ座席要素の下面を規定する。座席要素は、展開された使用位置と、折り畳まれた収納位置との間で、第2の軸線を中心としてバックレストに対して回転可能である。
【0019】
展開された使用位置では、座席要素の着座面と、バックレストの支持面とが第1の角度を規定することができるのに対し、折り畳まれた収納位置では、座席要素の着座面と、バックレストの支持面とが第2の角度を規定することができる。第2の角度は、第1の角度よりも小さくてもよい。第1の角度は、約80°~100°の範囲内、好ましくは約85°~95°の範囲内、特に約90°であってもよい。第2の角度は、約5°~45°の範囲内、好ましくは約5°~30°の範囲内であってもよい。座席要素を、座席要素の展開された使用位置および/または折り畳まれた収納位置にロックするために、好ましくは手動で動作可能な、さらなるロックシステムを設けることができる。座席要素を、座席要素の展開された使用位置から折り畳まれた収納位置へと移動させることにより、座席によって要求される設置スペースを大幅に削減することができる。こうして獲得された空きスペースを、その他の用途で使用することができ、例えば、乗員のための追加的な移動スペースとして使用することができる。
【0020】
乗員脱出システムの船室区域の内部に空きスペースを獲得するためのさらなるオプションは、座席を、座席の第1の軸線を中心として、例えば第3の位置へと、好ましくは手動で回転させることであってもよく、この第3の位置では、バックレストの支持面が、第1の方向および第2の方向に対して実質的に垂直であってもよい第3の方向に面している。座席が船室区域内に設置されていて、かつ第3の位置に配置されている際には、バックレストの背面が、好ましくは船室区域の第1の側壁領域に隣接して配置されており、これにより、座席と、第1の側壁領域に対向して配置された第2の側壁領域との間に空きスペースが生成される。
【0021】
座席は、支持構造体をさらに含むことができ、この支持構造体は、座席が装備された乗員脱出システムの動作中に座席に対して作用することが予想される荷重を考慮して所望の構造健全性を座席に提供するように構成されている。支持構造体は、バックレストおよび座席要素のうちの少なくとも一方に接続可能である。好ましくは、バックレストおよび座席要素が支持構造体に取り付けられている。特定の好ましい実施形態では、支持構造体は、バックレストに接続された第1の部分と、座席要素に接続された第2の部分とを含む。支持構造体の第2の部分は、支持構造体の第1の部分に対して回転可能であり、これにより、支持構造体の第2の部分を、座席要素と一緒に第2の軸線を中心として回転させることができる。
【0022】
座席は、レッグレストをさらに含むことができる。レッグレストは、バックレストおよび座席要素と同様に、支持構造体に接続可能である。さらに、レッグレストは、座席要素とレッグレストとの間の距離を、座席を使用している乗員の背格好に合わせて調節するために、第1の軸線に沿ってバックレストおよび/または座席要素に対して移動可能であってもよい。
【0023】
座席は、ヘッドレストも含むことができる。ヘッドレストも、支持構造体に接続可能である。さらに、ヘッドレストは、バックレストとヘッドレストとの間の距離を、座席を使用している乗員の背格好に合わせて調節するために、第1の軸線に沿ってバックレストおよび/または座席要素に対して移動可能であってもよい。
【0024】
座席システムは、固定システムをさらに含むことができる。固定システムは、船室区域内の設置位置に座席を回転可能かつ取り離し可能に固定するために、乗員脱出システムの船室区域内に設けられた相補的な固定システムと相互作用するように構成可能である。座席システムの固定システムと、船室区域の相補的な固定システムとは、座席を船室区域内に取り離し可能に固定するように構成されているので、空きスペースを獲得するため、または座席の代わりに貨物を配置するために座席が必要でない場合には、その座席を船室区域から簡単に取り外すことができる。貨物には、固定システムを設けることができ、この固定システムは、座席システムの固定システムと同一であり、かつ貨物を船室区域内に取り離し可能に固定するために、座席システムの固定システムの代わりに船室区域の相補的な固定システムと相互作用するように構成されている。
【0025】
座席システムの固定システムは、少なくとも1つの取り付け装置を含むことができ、この少なくとも1つの取り付け装置は、船室区域の固定システムの相補的な緊締装置と相互作用するように構成されている。少なくとも1つの取り付け装置は、好ましくは座席の支持構造体に接続されている。好ましい実施形態では、固定システムは、支持構造体の第1の部分に接続可能である第1の取り付け装置を含み、支持構造体のこの第1の部分は、バックレストの上縁部、すなわちバックレストのうちの、座席要素とは反対側を向いている縁部を超えて延在することができる。前述した第1の取り付け装置は、船室区域の固定システムの相補的な第1の緊締装置と相互作用するように構成可能であり、この相補的な第1の緊締装置は、船室区域の天井領域に、すなわち船室区域のうちの、バックレストの上縁部に面している領域に設けられていてもよい。第1の取り付け装置は、座席の特に柔軟な位置決め/回転を可能にする球状のヒンジの形態で設計可能である。
【0026】
好ましくは、固定システムは、支持構造体の第2の部分に接続可能である第2の取り付け装置をさらに含み、支持構造体のこの第2の部分は、座席要素の下面を超えて延在することができる。座席要素が、座席要素の展開された使用位置に配置されている際には、第2の取り付け装置は、第1の軸線を中心とした座席の回転位置から独立して、乗員脱出システムの船室区域の相補的な第2の緊締装置と相互作用するように構成可能であり、第2の緊締装置は、船室区域の床領域に、すなわち船室区域のうちの、座席要素の下面に面している領域に設けられていてもよい。しかしながら、座席要素が、座席要素の折り畳まれた収納位置に配置されている際には、支持構造体の第2の部分は、座席要素と一緒にバックレストと支持構造体の第1の部分とに対して回転させられており、座席は、座席の第3の回転位置に配置されており、したがって、バックレストの背面は、船室区域の第1の側壁領域に隣接して配置されており、第2の取り付け装置は、船室区域の固定システムの相補的な第3の緊締装置と相互作用するように構成可能である。
【0027】
第3の緊締装置は、第1の側壁領域に設けられていてもよい。しかしながら、船室の内部での座席の特に柔軟な配置を可能にするために、第3の緊締装置を、任意の所望の側壁領域に設けることも考えられる。さらに、2つ以上の第3の緊締装置を設けることができ、これにより、座席を、希望に応じて種々異なる位置に収納することができる。
【0028】
座席システムは、タブレットコンピュータをさらに含むことができ、このタブレットコンピュータは、座席のバックレストのうちの、支持面とは反対側を向いている背面に取り離し可能に取り付けられている。タブレットコンピュータが取り離し可能に取り付けられていることにより、乗員のための最大の柔軟性が保証される。さらに、座席のバックレストの背面に、少なくとも1つの制御要素、例えば制御ボタン、ジョイスティック、またはディスプレイ画面を設けることができる。
【0029】
バックレストの側縁部には、少なくとも1つの第1のグリップハンドルを形成することができる。好ましくは、2つの第1のグリップハンドルが、バックレストのそれぞれの側縁部に1つずつ設けられている。同様に、座席要素の側縁部には、少なくとも1つの第2のグリップハンドルを形成することができる。好ましくは、2つの第2のグリップハンドルが、座席要素のそれぞれの側縁部に1つずつ設けられている。
【0030】
宇宙輸送船の乗員脱出システムにおいて使用するための船室区域は、少なくとも1つの上述した座席システムを含む。
【0031】
好ましくは、船室区域は、複数の上述した座席システムを含む。座席システムまたは複数の座席システムのうちのいくつかだけを、船室区域の中心長手軸線に沿って相前後して配置することができる。このことは、船室の正面区分を最小化し、かつ乗員脱出システムの弾丸形状を容易にする一方で、座席の所望の回転を可能にするスペース要求と両立可能である。相前後して配置された複数の座席システムを、船室区域の中心長手軸線に沿った方向に互いに整列させることができる。しかしながら、相前後して配置された複数の座席システムを、船室区域の中心長手軸線に沿った方向に互いにずらして配置することも可能である。
【0032】
好ましくは、少なくとも1つの座席システムまたは複数の座席システムのうちのいくつかまたは全ては、船室区域の中心長手軸線に対してずらされて配置されている。座席システムのこのような配置は、船室区域の中心長手軸線に関して座席の横方向の空きスペースを増大させるが、それと同時に、座席システムの座席を使用している乗員の快適性を過度に制限しない。追加的に、必要性および収納要求に応じて座席を収納することができる。
【0033】
さらなる構成では、複数の座席システムのうちの少なくとも1つの座席システム、例えばパイロットの座席システムを、船室区域の中心長手軸線に対して中央に配置することができるのに対し、複数の座席システムのうちの少なくとも1つの他の座席システムを、船室区域の中心長手軸線に対してずらして配置することができる。
【0034】
船室区域は、好ましくは、固定システムをさらに含み、固定システムは、座席システムの固定システムに関して上述したように、船室区域内の設置位置に座席を取り離し可能に固定するために、座席システムの相補的な固定システムと相互作用するように構成されている。固定システムは、好ましくは、第1の緊締装置を含み、この第1の緊締装置は、船室区域の天井領域に設けられており、座席システムの固定システムの相補的な第1の取り付け装置と相互作用するように構成されている。船室区域の固定システムは、第2の緊締装置をさらに含むことができ、この第2の緊締装置は、船室区域の床領域に設けられており、座席の座席要素が、座席要素の展開された使用位置に配置されている際に、座席システムの固定システムの相補的な第2の取り付け装置と相互作用するように構成されている。船室区域の固定システムは、第3の緊締装置をさらに含むことができ、この第3の緊締装置は、船室区域内に設けられており、座席の座席要素が、座席要素の折り畳まれた収納位置に配置されている際、かつ座席が第3の位置に配置されている際に、座席システムの固定システムの相補的な第2の取り付け装置と相互作用するように構成されている。
【0035】
第3の緊締装置は、第1の側壁領域に設けられていてもよい。しかしながら、船室の内部での座席の特に柔軟な配置を可能にするために、第3の緊締装置を、任意の所望の側壁領域に設けることも考えられる。さらに、2つ以上の第3の緊締装置を設けることができ、これにより、座席を、希望に応じて種々異なる位置に収納することができる。
【0036】
船室区域は、船室区域の中心長手軸線に関して少なくとも1つの座席システムの横方向に、すなわち側方に配置されている収納モジュールをさらに含むことができる。収納モジュールは、例えば、乗員脱出システムの貨物および/または備品、例えば、乗員脱出システムの電子コンポーネントまたは他のシステムのコンポーネントなどを収容することができる。少なくとも1つの座席システムが、船室区域の中心長手軸線に対してずらされて配置されている場合には、収納モジュールは、特に大きな収納スペースおよび/または設置スペースを提供することができる。
【0037】
船室区域は、船室区域の中心長手軸線に関して少なくとも1つの座席システムの横方向に配置されている収納スペースも含むことができる。収納スペースは、例えば、乗員の身の回り品を収納するために使用可能である。船室区域に収納モジュールおよび収納スペースが装備されている場合には、収納モジュールおよび収納スペースは、好ましくは座席システムの相対する両側に配置されている。特に、収納スペースを、船室区域のうちの、座席システムに隣接して配置された側壁領域に設けることができる。具体的には、船室区域内に設けられたそれぞれの座席システムごとに1つの収納スペースを設けることができる。収納スペースには、標準化された手荷物または別の身の回り品の相補的な取り付けシステムと相互作用するように構成されている少なくとも1つの取り付けシステムを設けることができる。例えば、収納スペースの取り付けシステムと、標準化された手荷物または身の回り品の相補的な取り付けシステムとは、標準化された手荷物を収納スペース内に自動的にラッチ係止させることを可能にするように構成可能である。標準化された手荷物は、例えば、バックパックまたはトロリーであってもよい。
【0038】
船室区域は、制御パネルをさらに含むことができる。制御パネルは、好ましくは、船室区域の船首領域に配置されており、この船首領域は、乗員脱出システムの軌道に沿っている乗員脱出システムが、乗員脱出システムの空気力学的な構成によって与えられる自然な向きに追従している場合には、移動方向に関して正面に向けられている。制御パネルは、船長によって使用されることが意図された座席システムに直接的に隣接して配置可能であるのに対し、さらなる乗員によって使用されることが意図された座席システムは、制御パネルからより遠く離れて、すなわち、船室区域の中心長手軸線に沿って見たときに、船長によって使用されることが意図された座席システムの後ろに配置可能である。船長によって使用されることが意図されている座席システムが、座席システムの第1の位置に配置されている際には、座席システムのバックレストの支持面がコントロールパネルに面しており、これにより、船長は、コントロールパネルを簡単に操作することが可能である。しかしながら、船長によって使用されることが意図されている座席システムが、座席システムの第2の位置に配置されている際には、座席システムのバックレストの支持面は、コントロールパネルとは反対側を向いている。
【0039】
制御パネルには、グリップレールを設けることができ、このグリップレールは、制御パネルの少なくとも1つの制御要素の上方に配置されており、これによって制御要素を操作する際のユーザの手を支持する。少なくとも1つの制御要素は、制御ボタンまたはジョイスティックであってもよい。好ましくは、制御パネルは、複数の制御要素を含み、好ましくは、グリップレールは、上述したような全ての制御要素の操作を支持するように設計および寸法設定されている。
【0040】
船室区域は、制御パネルに取り離し可能に取り付けられているさらなるタブレットコンピュータも含むことができる。例えば、船長によって使用されることが意図された座席システムが、座席システムの第2の位置に配置されていて、かつ船長が制御パネルとは反対側を向いている際には、このさらなるタブレットコンピュータを、制御パネルから取り離して、制御操作を実施するために使用することができる。
【0041】
船室区域の船尾領域には、観察窓を設けることができる。
【0042】
さらに、船室区域には、乗員を船室区域の内部の所望の位置まで上昇させるため、例えば、打ち上げ準備の搭乗フェーズ中に乗員が自分の座席まで侵入することを可能にするために、船室区域の中心長手軸線に沿って移動可能である昇降台を装備することができる。しかしながら、好ましくは、昇降台は、搭乗フェーズが終了するまでだけ船室区域内に取り外し可能に設置されるように構成されている。換言すれば、昇降台は、スペースを占有しないために、かつ船室区域の、ひいては乗員脱出システムの重量を低減するために、乗員が船室区域への進入を完了した搭乗フェーズの終了時に船室区域から取り外されるように構成されている。
【0043】
船室区域は、乗員が船室区域の内部の所望の位置まで登ることを可能にするために、ここでも例えば、乗員が自分の座席まで進入することを可能にするために、船室区域の中心長手軸線に沿って延在するはしごも含むことができる。しかしながら、好ましくは、はしごも、搭乗フェーズが終了するまでだけ船室区域内に取り外し可能に設置されるように構成されている。したがって、はしごも、スペースを占有しないために、かつ船室区域の重量を低減するために、乗員が船室区域への進入を完了した搭乗フェーズの終了時に船室区域から取り外されるように構成可能である。しかしながら、はしごを乗員脱出システム内に保持し、さほど突出しない形式で収納することも考えられる。
【0044】
船室区域は、実質的に弾丸形状であってもよい。さらに、船室区域は、船室区域の中心長手軸線に沿った船室区域の長さの少なくとも80%に沿って実質的に一定の横断面、特に円形の横断面を有することができる。
【0045】
宇宙輸送船の乗員脱出システムにおいて使用するための座席システムを動作させる方法は、支持面を備えたバックレストを有する座席を提供するステップであって、支持面は、座席が乗員によって使用されている際に、乗員の上半身を支持するために適しており、座席は、第1の軸線を中心として少なくとも第1の位置と第2の位置との間で回転可能となるように、乗員脱出システムの船室区域内に設置されるように構成されており、第1の位置では、バックレストの支持面が、第1の方向に面しており、第2の位置では、バックレストの支持面が、第1の方向とは逆向きである第2の方向に面している、座席を提供するステップを含むことができる。少なくとも第1の位置と第2の位置との間での座席の回転が、制御ユニットによって、乗員脱出システムの軌道を示す少なくとも1つの信号に依存して制御される。
【0046】
第1の方向は、宇宙輸送船の打ち上げ中に座席を使用している乗員に対して作用する主荷重の方向に相当することができる。第2の方向は、座席システムが装備された乗員脱出システムが着陸する前の、乗員脱出システムが依然として宇宙輸送船に接続されている下降フェーズ中、または乗員脱出システムが宇宙輸送船から一旦分離されると、または打ち上げ中止後もしくは通常の着陸中に乗員脱出システムが着地する際に、座席を使用している乗員に対して作用する主荷重の方向に相当することができる。制御ユニットは、乗員脱出システムの着陸前に、第1の位置から第2の位置への座席の回転を制御することができる。
【0047】
座席は、特に駆動システムによって、制御ユニットの制御下で少なくとも第1の位置から第2の位置へと回転可能である。代替的または追加的に、座席は、第1の位置、第2の位置、または第1の位置および第2の位置とは異なる他の位置へと手動で回転可能である。代替的または追加的に、座席は、少なくとも第1の位置および第2の位置に、好ましくは第1の位置および第2の位置とは異なる他の位置にもロック可能である。
【0048】
座席の座席要素は、特に手動で、展開された使用位置と、折り畳まれた収納位置との間で、第2の軸線を中心としてバックレストに対して回転可能であり、展開された使用位置では、座席要素の着座面と、バックレストの支持面とが第1の角度を規定し、折り畳まれた収納位置では、座席要素の着座面と、バックレストの支持面とが、第1の角度よりも小さい第2の角度を規定する。座席は、好ましくは手動で、第1の軸線を中心として第3の位置へと回転可能であり、第3の位置では、バックレストの支持面が、第1の方向および第2の方向に対して実質的に垂直な第3の方向に面している。船室区域内に設けられている船室区域の固定システムの第3の緊締装置は、座席の座席要素が、座席要素の折り畳まれた収納位置に配置されている際、かつ座席が第3の位置に配置されている際に、座席システムの固定システムの相補的な第2の取り付け装置と係合可能である。
【0049】
以下では、本発明の好ましい実施形態について添付の概略図を参照しながらより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図1】打ち上げ中止シナリオにおける宇宙輸送船および乗員脱出システムの飛行フェーズをそれぞれ示す図である。
【
図2a】座席が第1の位置に配置されている状態の、乗員脱出システムの船室区域を示す図である。
【
図2b】座席が第1の位置に配置されている状態の、乗員脱出システムの船室区域を示す図である。
【
図2c】座席が第1の位置に配置されている状態の、乗員脱出システムの船室区域を示す図である。
【
図2d】座席が第1の位置に配置されている状態の、乗員脱出システムの船室区域を示す図である。
【
図3】座席が第2の位置に配置されている状態の、
図2a~
図2dによる船室区域を示す図である。
【
図4a】座席が第3の位置に配置されている状態の、
図2a~
図2dによる船室区域を示す図である。
【
図4b】座席が第3の位置に配置されている状態の、
図2a~
図2dによる船室区域を示す図である。
【
図5】座席が第4の位置に配置されている状態の、
図2a~
図2dによる船室区域を示す図である。
【
図6a】座席が第3の位置に配置されていて、かつ座席要素が折り畳まれた収納位置へと回転されている状態の、
図2a~
図2dによる船室区域を示す図である。
【
図6b】座席が第3の位置に配置されていて、かつ座席要素が折り畳まれた収納位置へと回転されている状態の、
図2a~
図2dによる船室区域を示す図である。
【
図7a】
図2a~
図2dによる船室区域内に設けられた収納スペースを示す図である。
【
図7b】
図2a~
図2dによる船室区域内に設けられた収納スペースを示す図である。
【
図7c】
図2a~
図2dによる船室区域内に設けられた収納スペースを示す図である。
【
図8】
図2a~
図2dによる船室区域内に設けられた制御パネルを示す図である。
【0051】
図1は、打ち上げ中止シナリオにおける宇宙輸送船1000および乗員脱出システム500の飛行フェーズをそれぞれ示す。宇宙輸送船1000の打ち上げ中、すなわち打ち上げ中止前には、(
図1に拡大された形態で示されている)乗員脱出システム500は、宇宙輸送船1000の船首領域に配置されている。打ち上げ中止を必要とする非常時には、乗員脱出システム500は、宇宙輸送船1000から分離され、着地前に進行速度を減速させるためのパラシュートシステム1002を使用して地球に帰還する。
図1に示されているように、乗員脱出システム500は、宇宙輸送船1000から分離された後、乗員脱出システム500の軌道全体に沿って、乗員脱出システム500の空気力学的な構成によって与えられる自然な向きに追従する。特に、乗員脱出システム500は、乗員脱出システム500の船首が必然的に移動方向に関して常に正面に向けられるという、シャトルコックの飛行挙動に匹敵する飛行挙動を示す。したがって、公知の乗員脱出システムとは異なり、本開示の乗員脱出システム500は、着陸前に乗員脱出システム500の向きを変えるための宙返り操縦を実施しない。
【0052】
乗員脱出システム500には、
図2~
図9により詳細に示された船室区域100が装備されている。船室区域100は、実質的に弾丸形状である。さらに、船室区域100は、船室区域100の中心長手軸線Lに沿った船室区域100の長さの少なくとも80%に沿って実質的に一定の横断面、特に円形の横断面を有する。
【0053】
船室区域100内には、少なくとも1つの座席システム10が設けられている。図面に示されている船室区域100の例示的な実施形態では、船室区域100は、複数の座席システム10、特に5つの座席システム10を含み、これら複数の座席システム10は、船室区域100の中心長手軸線Lに沿って相前後して配置されている。具体的には、座席システム10は、船室区域100の中心長手軸線Lに対してずらされて配置されており、これにより、船室区域100は、船室区域100の中心長手軸線Lに関して1つの座席システム10の横方向に、すなわち側方に配置されている収納モジュール102のための十分な設置スペースを提供する(特に、
図2cおよび
図2d参照)。収納モジュール102は、例えば、乗員脱出システム500の貨物および/または備品、例えば、乗員脱出システム500の電子コンポーネントまたは他のシステムのコンポーネントなどを収容することができる。
【0054】
船室区域100内には、座席システム10の各々ごとに1つの対応する収納スペース104が設けられている(特に、
図7a~
図7c参照)。収納スペース104は、例えば、乗員脱出システム500に搭乗している乗員106の身の回り品を収納するために使用可能である。収納スペース104は、船室区域100の中心長手軸線Lに関して座席システムの横方向に配置されている。特に、収納モジュール102および収納スペース104は、座席システム10の相対する両側に配置されており、すなわち、収納スペース104は、船室区域100の第1の側壁領域108に設けられており、第1の側壁領域108は、座席システム10に隣接して配置されており、収納モジュール102に隣接して配置された第2の側壁領域110に対向している。
【0055】
それぞれの収納スペース104には、少なくとも1つの取り付けシステム112が設けられており、この取り付けシステム112は、標準化された手荷物116または別の身の回り品、例えばボトルまたはそれに類するものを収納スペース104内に自動的にラッチ係止させることを可能にするために、標準化された手荷物116の相補的な取り付けシステム114と相互作用するように構成されている。標準化された手荷物116は、例えば、バックパックまたはトロリーであってもよい(
図7bおよび
図7cならびに
図9aおよび
図9b参照)。図面に示されている船室区域100の例示的な実施形態では、収納スペース104の各々は、2つの区画を有し、これら2つの区画の各々は、標準化された手荷物116を受け入れるように構成されている。
図7aは、空の収納スペース104を示し、
図7bは、1つの区画に標準化された1つの手荷物116を収容しており、ひいては依然として1つの空の区画を有している収納スペース104を示し、
図7cは、2つの標準化された手荷物116が装填されている収納スペース104を示す。
【0056】
船室区域100は、制御パネル118をさらに含む。制御パネル118は、船室区域100の船首領域に配置されており、この船首領域は、乗員脱出システム500の軌道に沿っている乗員脱出システム500が、上述したように乗員脱出システム500の空気力学的な構成によって与えられる自然な向きに追従している場合には、移動方向に関して正面に向けられている。船室区域100の船尾領域には、観察窓119が設けられている。制御パネル118は、船長106cによって使用されることが意図された座席システム10に直接的に隣接して配置可能であるのに対し、さらなる乗員106によって使用されることが意図された座席システム10は、制御パネル118からより遠く離れて、すなわち、船室区域100の中心長手軸線Lに沿って見たときに、船長106cによって使用されることが意図された座席システム10の後ろに配置されている。
【0057】
制御パネル118には、グリップレール120が設けられており、このグリップレール120は、制御パネル118の複数の制御要素122,124の上方に配置されており、これによって制御要素122,124を操作する際のユーザの手を支持する(
図8参照)。図面に示されている制御パネル118の例示的な実施形態では、制御要素122,124は、制御ボタン122およびジョイスティック124を含む。グリップレール120は、制御パネル118の全幅にわたって延在し、したがって、全ての制御要素122,124の操作を支持するように設計および寸法設定されている。制御パネル118は、ディスプレイ画面126をさらに含む。
【0058】
宇宙輸送船1000の打ち上げ前に乗員脱出システム500の船室区域100に搭乗する例示的なプロセスを描いた
図9a~
図9bに示されているように、船室区域100には、少なくとも一時的に昇降台128が装備されており、この昇降台128は、進入口130を介して船室区域100に進入する乗員106を船室区域100の内部の所望の位置まで上昇させるために、船室区域100の中心長手軸線Lに沿って移動可能である。船室区域100は、船室区域100の中心長手軸線Lに沿って延在するはしご132も少なくとも一時的に含む。はしご132は、乗員106が船室区域100の内部の所望の位置まで登ることを可能にする。しかしながら、昇降台128およびはしご130は、両方とも船室区域100内に取り外し可能に設置されており、搭乗フェーズが終了するまでだけ船室区域100内に設けられている。換言すれば、昇降台128およびはしご132は、スペースを占有しないために、かつ船室区域100の、ひいては乗員脱出システム500の重量を低減するために、乗員106が船室区域100への進入を完了した搭乗フェーズの終了時に船室区域100から取り外される。
【0059】
座席システム10の各々は、支持面16を備えたバックレスト14を有する座席12を含み、この支持面16は、座席12が乗員106によって使用されている際に、乗員106の上半身を支持するために適している。その結果、少なくとも座席12の正規の使用中には、バックレスト14の支持面16の向きが、乗員106の上半身の向きを実質的に規定する。バックレスト14は、背面18も含み、この背面18は、支持面16とは反対側を向いており、かつバックレスト14の裏側を規定する。座席12は、着座面22を備えた座席要素20をさらに含み、この着座面22は、使用時に、すなわち一般的な方式で座席12に着座している際に、乗員106の臀部を支持する。座席要素20も、背面24を含み、この背面24は、着座面22とは反対側を向いており、かつ座席要素20の下面を規定する。
【0060】
座席12は、第1の軸線R1を中心として少なくとも
図2a~
図2d、
図7、
図8、および
図9a~
図9bに示された第1の位置と、
図3に示された第2の位置との間で回転可能となるように、乗員脱出システム500の船室区域100内に設置されている。座席12が、座席12の第1の位置に配置されている際には、バックレスト14の支持面16が、第1の方向D1に面しており、座席12に着座している乗員106の上半身が、第1の方向D1に対して正面に向けられている。
【0061】
第1の方向D1は、座席12が装備された乗員脱出システム500が含まれている宇宙輸送船1000の打ち上げ中に、一般的な方式で座席12を使用している乗員106に対して作用する主荷重Mの方向に実質的に相当する。
図1の左側に示されているように、打ち上げ中、主荷重の方向は、典型的には宇宙輸送船1000の、ひいては乗員脱出システム500の移動方向とは逆向きである。
【0062】
しかしながら、座席12が、座席12の第2の位置に配置されている際には、バックレスト14の支持面16が、第2の方向D2に面しており、座席12に着座している乗員106の上半身が、第2の方向D2に対して正面に向けられている。第2の方向D2は、第1の方向D1とは逆向きであり、したがって、座席12は、第1の軸線R1を中心として第1の位置と第2の位置との間で180°回転可能である。
図1の右側に示されているように、第2の方向D2は、座席システム10が装備された乗員脱出システム500が着陸する前の、乗員脱出システム500が依然として宇宙輸送船1000に接続されている下降フェーズ中、または乗員脱出システム500が宇宙輸送船1000から一旦分離されると、または打ち上げ中止後もしくは通常の着陸中に乗員脱出システム500が着地する際に、一般的な方式で座席12を使用している乗員106に対して作用する主荷重Mの方向に相当する。着陸中、主荷重の方向は、典型的には着陸直前の乗員脱出システム500の移動方向に相当する。
【0063】
少なくとも第1の位置と第2の位置との間での座席12の回転は、制御ユニット25によって制御される。特に、制御ユニット25は、少なくとも第1の位置と第2の位置との間での座席12の回転を、乗員脱出システム500の軌道を示す少なくとも1つの信号に依存して制御する。制御ユニット25は、もっぱら座席12の回転を制御するように設計された制御ユニットであってもよい。さらに、それぞれの座席システム10に個別の制御ユニット25を対応させてもよいし、または図面に示されているように、全ての座席システム10の座席12の回転を制御するために1つの共通の制御ユニット25を使用してもよい。制御ユニット25が、乗員脱出システム500の上位の制御システムであるか、または上位の制御システムの一部を構成することも考えられる。
【0064】
座席システム10において、制御ユニット25は、乗員脱出システム500の軌道に依存して座席12の位置を調節するように座席12の回転を自動的に開始する。このことは、例えば軌道に沿った特定の位置において、座席12を使用している乗員106に対して作用する主荷重Mの方向に対する座席位置の自動的な調節を可能にする。
【0065】
特に、制御ユニット25は、乗員脱出システム500の着陸前に、第1の位置から第2の位置への座席12の回転を制御する。したがって、座席12が、座席12の第1の位置に配置されている際には、支持面16の向きは、宇宙輸送船1000の打ち上げ中に発生する主荷重が乗員106に対して真正面に、ひいては人体にとって最も許容可能である方向に作用することを保証する。座席12が、座席12の第2の位置に配置されている際には、支持面16の向きは、乗員脱出システム500の着陸中に発生する主荷重Mが再び乗員106に対して真正面に、ひいては人体にとって最も許容可能である方向に作用することを保証する。したがって、乗員脱出システム500は、着陸前に乗員脱出システムの向きを変えるための宙返り操縦を実施する必要がない。
【0066】
図面に示されている座席システム10は、(図面では概略的にのみ示されている)駆動システム26をそれぞれ含み、この駆動システム26は、制御ユニット25の制御下で少なくとも第1の位置から第2の位置へと座席12を回転させるために機能する。しかしながら、駆動システムが設けられていないか、または駆動システム26が故障している場合には、座席12が荷重によって駆動されて第1の位置から第2の位置へと回転させられるようにすることも考えられる。図面に示されている例示的な座席システム10では、駆動システム26は、第1の位置から第2の位置へと座席12を回転させるように構成されている。しかしながら、第1の軸線R1を中心とした任意の所望の回転位置へと座席12を移動させるように構成されている駆動システム26を、座席システム10に装備することも考えられる。駆動システム26は、例えば電気的なアクチュエータを含むことができる。さらに、冗長性の理由から、互いに独立して動作可能である2つ以上の、好ましくは同一の駆動システム26を、それぞれの座席システム10に装備することができる。
【0067】
座席システム10は、(図面では概略的にのみ示されている)ロックシステム27をさらに含み、このロックシステム27は、座席12を少なくとも第1の位置および第2の位置にロックするように構成されている。図面に示されている例示的な座席システム10では、ロックシステム27は、追加的に座席12を第1の位置および第2の位置とは異なる他の位置にロックすることを可能にするように設計されている。特に、ロックシステム27は、座席12を、第1の軸線R1を中心とした任意の所望の回転位置にロックするように構成されている。
【0068】
制御ユニット25は、第1の位置から第2の位置への座席12の回転を可能にする目的で、乗員脱出システム500の軌道を示す少なくとも1つの信号に依存して座席12をロック解除するために、ロックシステム27を制御するように構成されている。しかしながら、追加的に、ロックシステム27を手動でロック解除およびロックすることもできる。特に、例えば、座席12を手動で回転させるために、ロックシステム27を手動でロック解除することができる。
【0069】
さらに、ロックシステム27は、座席12が、例えば
図4a~
図4bに示されているような第3の位置に、または
図5に示されているような第4の位置にロックされ得ることを可能にする。座席システム10の座席12が第3の位置に配置されている際には、バックレスト14の支持面16が、第1の方向D1および第2の方向D2に対して実質的に垂直な第3の方向D3に面しており、バックレスト14の背面18が、船室区域100の第1の側壁領域108に隣接して配置されている。図面は、全ての座席12が同じ第3の位置および第4の位置に配置されていることを示しているが、複数の座席12をそれぞれ異なる位置に配置するために、これらの座席12を互いに独立して回転させてロックすることも考えられる。
【0070】
座席12の座席要素20は、展開された使用位置と、
図6a~
図6bに示されている折り畳まれた収納位置との間で、第2の軸線R2を中心としてバックレスト14に対して回転可能である。展開された使用位置では、座席要素20の着座面22と、バックレスト14の支持面16とが、例えば約80°~100°の範囲内の、好ましくは約85°~95°の範囲内の、特に約90°の第1の角度γ1を規定する。
図6a~
図6bに示された折り畳まれた収納位置では、座席要素20の着座面22と、バックレスト14の支持面16とが、例えば約5°~45°の範囲内、好ましくは約5°~30°の範囲内の第2の角度γ2を規定する。したがって、第2の角度γ2は、第1の角度γ1よりも小さい。座席要素22を、座席要素22の展開された使用位置から折り畳まれた収納位置へと移動させることにより、座席12によって要求される設置スペースを大幅に削減することができる。こうして獲得された空きスペースを、その他の用途で使用することができ、例えば、特に座席12が、座席12の第3の位置に配置されている際の、乗員106のための追加的な移動スペースとして使用することができる。
【0071】
座席12の各々は、支持構造体28をさらに含み、この支持構造体28は、乗員脱出システム500の動作中に座席12に対して作用することが予想される荷重を考慮して所望の構造健全性を座席12に提供する。支持構造体28は、バックレスト14および座席要素20のうちの少なくとも一方に接続されている。図面に示されている例示的な座席システム10では、バックレスト14および座席要素20の両方が支持構造体28に取り付けられており、すなわち、支持構造体28は、バックレスト14に接続された第1の部分28aと、座席要素20に接続された第2の部分28bとを含む。支持構造体28の第2の部分28bは、支持構造体の第1の部分28aに対して回転可能であり、これにより、支持構造体の第2の部分28bを、座席要素20と一緒に第2の軸線R2を中心として回転させることができる。
【0072】
それぞれの座席12は、レッグレスト30をさらに含み、レッグレスト30は、バックレスト14および座席要素20と同様に、支持構造体28に、特に支持構造体28の第2の部分28bに接続されている。レッグレスト30は、座席要素20とレッグレスト30との間の距離を、座席12を使用している乗員106の背格好に合わせて調節するために、第1の軸線R1に沿ってバックレスト14および座席要素20に対して移動可能である。座席12は、支持構造体28に、すなわち支持構造体28の第1の部分28aに接続されたヘッドレスト32も含む。ヘッドレスト32は、バックレスト14とヘッドレスト32との間の距離を、座席12を使用している乗員106の背格好に合わせて調節するために、第1の軸線R1に沿ってバックレスト14および座席要素20に対して移動可能である。
【0073】
座席12は、2つの第1のグリップハンドル34と、2つの第2のグリップハンドル36とをさらに含み、2つの第1のグリップハンドル34が、バックレスト14のそれぞれの側縁部に1つずつ設けられており、2つの第2のグリップハンドル36が、座席要素20のそれぞれの側縁部に1つずつ設けられている。座席システム10は、タブレットコンピュータ38をさらに含むことができ、このタブレットコンピュータ38は、座席12のバックレスト14のうちの、支持面16とは反対側を向いている背面18に取り離し可能に取り付けられている。さらに、座席12のバックレスト14の背面18に、少なくとも1つの制御要素40、例えば制御ボタン、ジョイスティック、またはディスプレイ画面を設けることができる。制御パネル118に、さらなるタブレットコンピュータ42を取り離し可能に取り付けてもよい。
【0074】
座席12が、座席12の第1の位置に配置されている際には、座席12のバックレストの支持面16が、取り付けられたタブレットコンピュータ38,42、制御要素40、および制御パネル118に面しており、したがって、船長およびさらなる乗員106は、取り付けられたタブレットコンピュータ38,42、制御要素40、および制御パネル118を簡単に操作することができる。しかしながら、座席12が、座席12の第2の位置に配置されている際には、制御またはその他の操作を実施するために使用される各自の取り付け位置からタブレットコンピュータ38,42を取り離すことができる。
【0075】
それぞれの座席システム10は、固定システム44をさらに含み、この固定システム44は、船室区域100内の設置位置に座席12を回転可能かつ取り離し可能に固定するために、船室区域100の相補的な固定システム134と相互作用するように構成されている。座席システム10の固定システム44と、船室区域100の相補的な固定システム134とは、座席12を船室区域100内に取り離し可能に固定するように構成されているので、空きスペースを獲得するため、または座席12の代わりに貨物を配置するために座席12が必要でない場合には、その座席12を船室区域100から簡単に取り外すことができる。貨物には、固定システムを設けることができ、この固定システムは、座席システム10の固定システム44と同一であり、かつ貨物を船室区域100内に取り離し可能に固定するために、座席システム10の固定システム44の代わりに船室区域100の相補的な固定システム134と相互作用するように構成されている。
【0076】
座席システム10の固定システム44は、支持構造体28の第1の部分28aに接続された第1の取り付け装置44aを含む。第1の取り付け装置44aは、船室区域100の固定システム134の相補的な第1の緊締装置134aと相互作用し、この相補的な第1の緊締装置134aは、船室区域100の天井領域に、すなわち船室区域100のうちの、バックレスト14の上縁部に面している領域に設けられている。
【0077】
固定システム44は、支持構造体28の第2の部分28bに接続された第2の取り付け装置44bをさらに含む。座席要素20が、座席要素20の展開された使用位置に配置されている際には、第2の取り付け装置44bは、第1の軸線R1を中心とした座席12の回転位置から独立して、船室区域100の固定システム134の相補的な第2の緊締装置134bと相互作用する。第2の緊締装置134bは、船室区域100の床領域に、すなわち船室区域100のうちの、座席要素20の背面24、すなわち下面に面している領域に設けられている。
【0078】
しかしながら、座席要素20が、座席要素20の折り畳まれた収納位置に配置されている際には、支持構造体28の第2の部分28bは、座席要素20と一緒にバックレスト14と支持構造体28の第1の部分28aとに対して回転させられており、座席12は、座席12の第3の回転位置に配置されており、したがって、バックレスト14の背面18は、
図4a~
図4bに示されているように船室区域100の第1の側壁領域108に隣接して配置されており、第2の取り付け装置44bは、船室区域100の固定システム134の相補的な第3の緊締装置134cと相互作用する。図面に示されている配置では、第3の緊締装置134cは、第1の側壁領域108に設けられている。しかしながら、第3の緊締装置134cを、任意の所望の側壁領域に設けることも可能である。さらに、2つ以上の第3の緊締装置134cを設けることができ、これにより、座席12を、希望に応じて種々異なる位置に収納することができる。