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特許7575534潤滑剤における酸化抵抗性のための清浄剤系
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】潤滑剤における酸化抵抗性のための清浄剤系
(51)【国際特許分類】
   C10M 141/12 20060101AFI20241022BHJP
   C10M 135/00 20060101ALI20241022BHJP
   C10M 139/00 20060101ALN20241022BHJP
   C10M 135/04 20060101ALN20241022BHJP
   C10M 159/24 20060101ALN20241022BHJP
   C10M 135/10 20060101ALN20241022BHJP
   C10M 137/00 20060101ALN20241022BHJP
   C10N 10/02 20060101ALN20241022BHJP
   C10N 10/04 20060101ALN20241022BHJP
   C10N 10/12 20060101ALN20241022BHJP
   C10N 40/25 20060101ALN20241022BHJP
   C10N 30/10 20060101ALN20241022BHJP
   C10N 30/04 20060101ALN20241022BHJP
【FI】
C10M141/12
C10M135/00
C10M139/00 A
C10M135/04
C10M159/24
C10M135/10
C10M137/00
C10M139/00 Z
C10N10:02
C10N10:04
C10N10:12
C10N40:25
C10N30:10
C10N30:04
【請求項の数】 15
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023115607
(22)【出願日】2023-07-14
(65)【公開番号】P2024012180
(43)【公開日】2024-01-25
【審査請求日】2023-08-10
(31)【優先権主張番号】17/865,897
(32)【優先日】2022-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391007091
【氏名又は名称】アフトン・ケミカル・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】Afton Chemical Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】ランサム、ポール
(72)【発明者】
【氏名】ハムダニ、ラティファ
【審査官】松原 宜史
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/158757(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/050984(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0237722(US,A1)
【文献】特表2019-532156(JP,A)
【文献】特開2019-210466(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0367835(US,A1)
【文献】特表2022-520492(JP,A)
【文献】特表2018-512485(JP,A)
【文献】国際公開第2016/148708(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M
C10N
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑組成物であって、
潤滑粘度の1つ以上の基油と、
前記潤滑組成物に少なくとも1500ppmの硫黄を提供する硫化添加剤と、
前記潤滑組成物に40ppm以上のホウ素を提供する1つ以上のホウ素化分散剤と、
前記潤滑組成物に0.2~1.0重量パーセントの石鹸含有量を提供し、マグネシウム、ナトリウム、及びカルシウムを提供する清浄剤系であって、前記清浄剤系が、前記潤滑組成物に90ppm超のナトリウム及び2500ppm以下のマグネシウムを提供し、かつ前記清浄剤系が、少なくとも0.1のナトリウム対マグネシウムの重量比、及び15以下の硫黄対ナトリウムの重量比を有する、清浄剤系と、
前記潤滑組成物が、最大30重量パーセントのバイオディーゼル燃料で汚染されている、
潤滑組成物。
【請求項2】
前記潤滑組成物が、90ppm~1,000ppmのナトリウム、500ppm~2,000ppmのカルシウム、100~1,000ppmのマグネシウム、及び/又は1,500~4,000ppmの硫黄を含み、かつカルシウム対マグネシウムの重量比が少なくとも0.5である、請求項1に記載の潤滑組成物。
【請求項3】
前記硫黄の15~25重量パーセントが、硫化オレフィン酸化防止剤によって提供される、請求項2に記載の潤滑組成物。
【請求項4】
前記潤滑組成物が、144時間後にGFC Lu-43-A-11試験に準拠して試験した場合、酸化の際に150パーセント以下の粘度増加を呈し、好ましくは、144時間後の前記潤滑組成物の粘度増加が、144時間後に前記バイオディーゼル汚染のない前記潤滑組成物の粘度増加よりも最大50パーセント大きい、請求項1に記載の潤滑組成物。
【請求項5】
前記石鹸含有量が、スルホネート石鹸であり、及び/又は前記潤滑組成物が、少なくとも0.1重量パーセント~5.0重量パーセントの直鎖又は分岐スルホン酸ナトリウムを含む、請求項1に記載の潤滑組成物。
【請求項6】
前記潤滑組成物が、中性又は過塩基性スルホン酸マグネシウム、スルホン酸ナトリウム、及びスルホン酸カルシウムを含み、各々の全アルカリ価(TBN)が最大500であり、及び/又は前記潤滑組成物が、全アルカリ価(TBN)が最大500である中性又は過塩基性金属フェネートを含む、請求項1に記載の潤滑組成物。
【請求項7】
前記潤滑組成物が、500ppm以下のホウ素を有する、請求項1に記載の潤滑組成物。
【請求項8】
前記ナトリウム対マグネシウムの比が、0.1~2.0である、請求項1に記載の潤滑組成物。
【請求項9】
前記潤滑粘度の基油が、APIグループI基油、APIグループII基油、APIグループIII基油、APIグループIV基油、APIグループV基油、又はこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の潤滑組成物。
【請求項10】
前記潤滑組成物が、フェノール性酸化防止剤を実質的に含まず;及び/又は前記潤滑組成物が、アミン性酸化防止剤を更に含み;及び/又は前記アミン性酸化防止剤が、芳香族アミン、アルキル化ジフェニルアミン、ノニルジフェニルアミン、ジノニルジフェニルアミン、オクチルジフェニルアミン、ジオクチルジフェニルアミン、フェニル-アルファ-ナフチルアミン、アルキル化フェニル-アルファ-ナフチルアミン、ヒンダード非芳香族アミン、又はこれらの組み合わせを含む群から選択される、請求項1に記載の潤滑組成物。
【請求項11】
00ppm以下のモリブデンを更に含む、請求項1に記載の潤滑組成物。
【請求項12】
,200ppm以下のリンを更に含む、請求項1に記載の潤滑組成物。
【請求項13】
イミダゾリン、アミド、アミン、スクシンイミド、アルコキシル化アミン、アルコキシル化エーテルアミン、アミンオキシド、アミドアミン、ニトリル、ベタイン、第四級アミン、イミン、アミン塩、アミノグアナジン、アルカノールアミド、ホスホネート、金属含有化合物、グリセロールエステル、硫化脂肪化合物及びオレフィン、脂肪酸、ジカルボン酸エステル、ポリオール及び1つ以上の脂肪族若しくは芳香族カルボン酸のエステル若しくは部分エステル、又はそれらの組み合わせによって提供される摩擦調整剤を更に含む、請求項1に記載の潤滑組成物。
【請求項14】
酸化の際に潤滑組成物において安定した粘度を維持する方法であって、
潤滑組成物に対してGFC Lu-43-A-11に準拠した酸化試験を実施することであって、
前記潤滑組成物が、潤滑粘度の1つ以上の基油と、少なくとも1,500ppmの硫黄を提供する硫化添加剤と、40ppm以上のホウ素を提供する1つ以上のホウ素化分散剤と、前記潤滑組成物に0.2~1.0重量パーセントの石鹸を提供し、かつマグネシウム、ナトリウム、及びカルシウムを提供する清浄剤系と、を含み、前記清浄剤系が、前記潤滑組成物に90ppm超のナトリウム及び2500ppm以下のマグネシウムを提供し、かつ前記清浄剤系が、少なくとも0.1のナトリウム対マグネシウムの重量比、及び15以下の硫黄対ナトリウムの重量比を有する、実施することを含み、
前記潤滑組成物が、144時間後の酸化の際に150パーセント以下の粘度増加を呈する、
方法。
【請求項15】
前記潤滑組成物が、90ppm~1,000ppmのナトリウム、500ppm~2,000ppmのカルシウム、100~1,000ppmのマグネシウム、及び/又は1,500~4,000ppmの硫黄を含み、かつカルシウム対マグネシウムの重量比が少なくとも0.5である、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、潤滑組成物、特に、バイオディーゼル汚染の存在下において酸化粘度安定性を呈する潤滑組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車製造業者は、効率、流体寿命、及び燃費の向上を求め続けており、そのため、エンジン、潤滑油、及びそれらの構成成分に対する需要は増加し続けている。今日のエンジンは、多くの場合、燃費、性能、及び出力を向上させるように設計された技術によって、より小型化、より軽量化、及びより効率化されている。これらの要件はまた、エンジンオイルの性能が、そのような現代のエンジンのより高い要求と、それらのユニークな使用及び用途に関連付けられたそれらの対応する性能基準と、を満たすように進化しなければならないことも意味している。エンジンオイルに対するこのような厳しい要求により、潤滑剤製造業者は、産業及び/又は製造業者の用途のための特定の性能要件を満たすように、潤滑剤及びそれらの添加剤を調整することが多い。典型的には、業界標準及び/又は自動車製造業者は、1つの用途又は用途のために設計された潤滑剤が、異なる用途又は用途の全ての性能仕様を満たさない可能性があるような、特定の性能標準を必要とする。
【0003】
例えば、数多くの自動車製造業者は、例としてはバイオディーゼルで汚染された場合の酸化安定性に関する潤滑剤の性能基準を導入している。最大7重量パーセントのB100バイオディーゼル汚染、又は最大30重量パーセントのB10バイオディーゼルを含むGFC Lu-43-A-11を用いるCEC L-109-14などの試験は、鉄触媒でドープされた油の試料に酸素をバブリングすることを含む。これらの試験の合格基準には、他の要件の中でもとりわけ、経時的に安定した粘度を維持するために潤滑剤の粘度増加を最小限に抑えることが含まれる。
【0004】
しかしながら、多くの状況では、より新しい性能特性を満たすために潤滑組成物内の様々な成分は、1つ以上の他の性能特性に悪影響を及ぼす傾向がある。したがって、潤滑剤製造業者が、従来の流体性能をまた同時に維持しながらより新しい業界の性能要求を満たすことが困難になる。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1図1及び図2は、GFCLu-43-A-11に準拠した144時間の酸化後の粘度増加パーセント(KV100)のグラフである。
図2図1及び図2は、GFCLu-43-A-11に準拠した144時間の酸化後の粘度増加パーセント(KV100)のグラフである。
図3図3は、GFC Lu-43-A-11に準拠した経時的な粘度増加(KV100)のプロットである。
【発明の概要】
【0006】
本開示は、安定した粘度を維持し、バイオディーゼル燃料で汚染された潤滑粘度の油を含有する潤滑剤の酸化劣化を最小限に抑えるための潤滑組成物に関する。一態様では、潤滑組成物は、潤滑粘度の1つ以上の基油と、当該潤滑組成物に少なくとも約1500ppmの硫黄を提供する硫化添加剤と、当該潤滑組成物に約40ppm以上のホウ素を提供する1つ以上のホウ素化分散剤と、当該潤滑組成物に約0.2~約1.0重量パーセント(他のアプローチでは、約0.2~約0.8重量パーセント)の石鹸含有量を提供し、かつマグネシウム、ナトリウム、及びカルシウムを提供する、清浄剤系と、を含む。いくつかのアプローチ又は実施形態では、清浄剤系は、潤滑組成物に約90ppm超のナトリウム及び約2500ppm以下のマグネシウムを提供し、ここで、清浄剤系は、少なくとも約0.1のナトリウム対マグネシウムの重量比、及び約15以下の硫黄対ナトリウムの重量比を有し、潤滑組成物は、最大約30重量パーセントのバイオディーゼル燃料で汚染されている。
【0007】
前段落の潤滑組成物はまた、任意の組み合わせで、1つ以上の任意選択的な特徴又は実施形態と組み合わされ得る。そのような任意選択の特徴又は実施形態は、以下のうちの1つ以上を含んでもよい:潤滑組成物は、約90ppm~約1,000ppmのナトリウム、約500ppm~約2,000ppmのカルシウム、約100~約1,000ppmのマグネシウム、及び/若しくは約1,500~約4,000ppmの硫黄を含む;並びに/又は潤滑組成物は少なくとも約0.5のカルシウム対マグネシウムの重量比を有し、及び/若しくは約15~約25重量パーセントの硫黄は硫化オレフィン酸化防止剤によって提供される;並びに/又は潤滑組成物は、144時間後にGFC Lu-43-A-11試験に準拠して試験した際に、酸化時に約150%以下の粘度増加を呈する;並びに/又は144時間後の潤滑組成物の粘度増加が、144時間後のバイオディーゼル汚染のない潤滑組成物の粘度増加よりも最大約50%大きい;並びに/又は石鹸含有量が、スルホネート石鹸、フェネート石鹸、若しくはそれらの組み合わせであり、好ましくはスルホネート石鹸である;並びに/又は潤滑組成物は、少なくとも約0.1重量パーセント~約5.0重量パーセントの直鎖若しくは分岐スルホン酸ナトリウム(他のアプローチでは、約0.25~約5.0重量パーセント)を含む;並びに/又は潤滑組成物は、約500ppm以下のホウ素を有する;並びに/又はナトリウム対マグネシウムの比は、約0.1~約2.0である;並びに/又は潤滑粘度の基油は、APIグループI基油、APIグループII基油、APIグループIII基油、APIグループIV基油、APIグループV基油、又はそれらの組み合わせを含む;並びに/又は潤滑粘度の基油がAPIグループIIIの基油である;並びに/又は潤滑組成物は、フェノール性酸化防止剤を実質的に含まない;並びに/又はアミン性酸化防止剤を更に含む;並びに/又はアミン性酸化防止剤は、芳香族アミン、アルキル化ジフェニルアミン、ノニルジフェニルアミン、ジノニルジフェニルアミン、オクチルジフェニルアミン、ジオクチルジフェニルアミン、フェニル-アルファ-ナフチルアミン、アルキル化フェニル-アルファ-ナフチルアミン、ヒンダード非芳香族アミン、又はそれらの組み合わせを含む群から選択される;並びに/又はモリブデン及び約400ppm以下のモリブデンを更に含む;並びに/又はリン及び約1,200ppm以下のリンを更に含む;並びに/又はイミダゾリン、アミド、アミン、スクシンイミド、アルコキシル化アミン、アルコキシル化エーテルアミン、アミンオキシド、アミドアミン、ニトリル、ベタイン、第四級アミン、イミン、アミン塩、アミノグアナジン、アルカノールアミド、ホスホネート、金属含有化合物、グリセロールエステル、硫化脂肪化合物及びオレフィン、脂肪酸、ジカルボン酸エステル、ポリオール及び1つ以上の脂肪族若しくは芳香族カルボン酸のエステル若しくは部分エステル、若しくはそれらの組み合わせによって提供される、摩擦調整剤を更に含む;並びに/又は潤滑組成物は、各々の全アルカリ価(TBN)が最大約500である中性又は過塩基性スルホン酸マグネシウム、スルホン酸ナトリウム、及びスルホン酸カルシウムを含む;並びに/又は潤滑組成物は、最大約500の全アルカリ価(TBN)を有する中性又は過塩基性金属フェネートを含む。
【0008】
更に他のアプローチでは、144時間後にGFC Lu-43-A-11試験に準拠して試験した場合に酸化の際に粘度増加を約150パーセント以下に維持するための、前段落に記載した潤滑組成物及び/又はその清浄剤系の任意の実施形態の使用を本明細書に記載する。
【0009】
また更なるアプローチでは、酸化の際に潤滑組成物において安定した粘度を維持する方法が、本明細書では提供される。態様では、本方法は、潤滑組成物に対してGFC Lu-43-A-11に準拠した酸化試験を実施することを含み、ここで、潤滑組成物は、潤滑粘度の1つ以上の基油と、少なくとも約1,500ppmの硫黄を提供する硫化添加剤と、約40ppm以上のホウ素を提供する1つ以上のホウ素化分散剤と、潤滑組成物に約0.2~約1.0重量パーセントの石鹸(他のアプローチでは、約0.2~約0.8重量パーセントの石鹸含有量)を提供し、かつマグネシウム、ナトリウム、及びカルシウムを提供する清浄剤系と、を含み、ここで、清浄剤系は、潤滑組成物に約90ppm超のナトリウム及び約2500ppm以下のマグネシウムを提供し、かつ清浄剤系は、少なくとも約0.1のナトリウム対マグネシウムの重量比、及び約15以下の硫黄対ナトリウムの重量比を有する、実施することを含み、ここで、潤滑組成物は、144時間後の酸化の際に約150パーセント以下の粘度増加を呈する。
【0010】
更に他のアプローチ又は実施形態では、前段落の方法はまた、任意の組み合わせで、1つ以上の任意選択的な特徴、方法ステップ、又は実施形態と組み合わされ得る。そのような任意選択の特徴、方法ステップ、又は実施形態は、以下のうちの1つ以上を含んでもよい:潤滑組成物は、約90ppm~約1,000ppmのナトリウム、約500ppm~約2,000ppmのカルシウム、約100~約1,000ppmのマグネシウム、及び/若しくは約1,500~約4,000ppmの硫黄を含む;並びに/又は潤滑組成物は少なくとも約0.5のカルシウム対マグネシウムの重量比を有し、及び/若しくは約15~約25重量パーセントの硫黄は硫化オレフィン酸化防止剤によって提供される;並びに/又は潤滑組成物は、144時間後にGFC Lu-43-A-11試験に準拠して試験した場合に、酸化時に約150%以下の粘度増加を呈する;並びに/又は144時間後の潤滑組成物の粘度増加が、144時間後のバイオディーゼル汚染のない潤滑組成物の粘度増加よりも最大約50%大きい;並びに/又は石鹸含有量が、スルホネート石鹸、フェネート石鹸、若しくはそれらの組み合わせであり、好ましくはスルホネート石鹸である;並びに/又は潤滑組成物は、少なくとも約0.1重量パーセント~約5.0重量パーセントの直鎖若しくは分岐スルホン酸ナトリウム(他のアプローチでは、約0.25~約5.0重量パーセント)を含む;並びに/又は潤滑組成物は、約500ppm以下のホウ素を有する;並びに/又はナトリウム対マグネシウムの比は、約0.1~約2.0である;並びに/又は潤滑粘度の基油は、APIグループI基油、APIグループII基油、APIグループIII基油、APIグループIV基油、APIグループV基油、又はそれらの組み合わせを含む;並びに/又は潤滑粘度の基油がAPIグループIIIの基油である;並びに/又は潤滑組成物は、フェノール性酸化防止剤を実質的に含まない;並びに/又はアミン性酸化防止剤を更に含む;並びに/又はアミン性酸化防止剤は、芳香族アミン、アルキル化ジフェニルアミン、ノニルジフェニルアミン、ジノニルジフェニルアミン、オクチルジフェニルアミン、ジオクチルジフェニルアミン、フェニル-アルファ-ナフチルアミン、アルキル化フェニル-アルファ-ナフチルアミン、ヒンダード非芳香族アミン、又はそれらの組み合わせを含む群から選択される;並びに/又はモリブデン及び約400ppm以下のモリブデンを更に含む;並びに/又はリン及び約1,200ppm以下のリンを更に含む;並びに/又はイミダゾリン、アミド、アミン、スクシンイミド、アルコキシル化アミン、アルコキシル化エーテルアミン、アミンオキシド、アミドアミン、ニトリル、ベタイン、第四級アミン、イミン、アミン塩、アミノグアナジン、アルカノールアミド、ホスホネート、金属含有化合物、グリセロールエステル、硫化脂肪化合物及びオレフィン、脂肪酸、ジカルボン酸エステル、ポリオール及び1つ以上の脂肪族若しくは芳香族カルボン酸のエステル若しくは部分エステル、若しくはそれらの組み合わせによって提供される、摩擦調整剤を更に含む;並びに/又は潤滑組成物は、各々の全アルカリ価(TBN)が最大約500である中性又は過塩基性スルホン酸マグネシウム、スルホン酸ナトリウム、及びスルホン酸カルシウムを含む;並びに/又は潤滑組成物は、最大約500の全アルカリ価(TBN)を有する中性又は過塩基性金属フェネートを含む。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示は、潤滑剤が(1)バイオディーゼル燃料で汚染された潤滑粘度の油を含み、かつ(2)酸化粘度増加に悪影響を及ぼすことが知られている1つ以上の添加剤を含む場合、潤滑剤の粘度増加に関連して安定した粘度を維持し、及び/又は酸化的分解を最小限に抑えるのに有効な内燃機関を潤滑する潤滑組成物及び方法に関する。一アプローチ又は実施形態では、潤滑組成物は、潤滑粘度の1つ以上の基油、潤滑組成物に少なくとも約1,500ppmの硫黄を提供する硫化添加剤、潤滑組成物に約40ppm以上のホウ素を提供する1つ以上のホウ素化分散剤と共に本明細書に記載され、ここで、潤滑組成物は、最大約30重量パーセントのバイオディーゼル燃料で汚染されている。このような潤滑の組み合わせは、酸化粘度安定性に関する業界の性能基準を満たさない傾向がある。
【0012】
本明細書のアプローチ及び実施形態では、潤滑組成物はまた、他の特徴の中でもとりわけ、約0.2重量パーセント~約1.0重量パーセントの石鹸含有量、又は約0.2重量パーセント~約0.8重量パーセント、約0.25重量パーセント~約0.7重量パーセント、約0.28重量パーセント~約0.6重量パーセント、又は約0.4重量パーセント~約0.6重量パーセントの石鹸含有量、好ましくはスルホネート石鹸含有量を提供し、酸化粘度増加を最小限に抑えるのに役立つことが見出された特定の量及び関係でマグネシウム、ナトリウム、及びカルシウムを潤滑組成物に提供する、特定の清浄剤系を含む。いくつかの実施形態では、清浄剤系は、他の特徴の中でもとりわけ、約90ppmを超えるナトリウム(又は約180ppmを超えるナトリウム若しくは約200ppmを超えるナトリウム)、及び潤滑組成物に対して約2,500ppm以下のマグネシウム(他のアプローチでは、最大2,000ppmのマグネシウム、又は最大1,000ppmのマグネシウム)を提供し、かつ少なくとも約0.1(他のアプローチでは、少なくとも約0.3、少なくとも約0.4、又は少なくとも約0.5)のナトリウム対マグネシウムの重量比、及び約15以下(他のアプローチでは、約12以下、又は約6以下)の硫黄対ナトリウムの重量比を有する。他の実施形態では、清浄剤系はまた、少なくとも約500ppmのカルシウムを提供し、全硫黄の約15~約25重量パーセントを提供する硫化オレフィン酸化防止剤を含んでもよい。いくつかのアプローチでは、本明細書の潤滑剤はまた、少なくとも約0.5のカルシウム対マグネシウムの重量比を有し得る。
【0013】
驚くべきことに、このような特徴及び関係を有する清浄剤系は、潤滑剤が最大30重量パーセントのバイオディーゼルで汚染されている場合、酸化の際及びGFC Lu-43-A-11試験に準拠して評価した場合、144時間後に、安定した粘度(以下に定義する)を維持する。ナトリウム、マグネシウム、及びカルシウム、並びに清浄剤由来の石鹸は、主に、酸中和、洗浄力、分散性、腐食抑制、及び/又は耐摩耗性のために提供されるので、流体中の清浄剤の寄与の特定の量及び関係の選択が、潤滑剤がバイオ燃料で汚染されている場合、また酸化安定性に有害な添加剤を含む場合に、酸化的粘度安定性(例えば、図1図3に示すようなものなど)に劇的な影響を与えることは予想外であった。
【0014】
本明細書で定義されるように、潤滑組成物は、144時間後のGFC Lu-43-A-11試験に準拠した酸化の際に、約150パーセント以下、約100パーセント以下、約80パーセント以下、約50パーセント以下、又は約35パーセント以下の限定されたKV100粘度増加で粘度安定性を呈する。換言すれば、この試験プロトコルに準拠した144時間後のKV 100粘度は、出発粘度と比較して、このように記載されたパーセンテージを超えて増加しない。他のアプローチでは、本明細書の潤滑剤の粘度増加は、最大30重量パーセントのバイオディーゼル燃料で汚染された場合、驚くべきことに、バイオディーゼル汚染なしで実行した場合のGFC試験における酸化の際の粘度増加に匹敵し、いくつかの状況では、潤滑組成物の粘度増加は、バイオディーゼルで汚染されている場合、144時間後、バイオディーゼル汚染なしの潤滑組成物の粘度増加よりも最大約50パーセントしか大きくない。いくつかのアプローチでは、本明細書の潤滑剤の初期KV100は、約5cSt~約25cSt、約7cSt~約15cSt、又は約10.5cSt~約11.5cStであり得る。酸化試験の後、本明細書の潤滑剤のKV100は、約6~約65cSt、約9~約50cSt、約10~約40cSt、約12~約20cSt、又は約15cSt~約17cStの範囲であり得る。本明細書の任意の実施形態におけるKV100は、ASTM D445に準拠して測定される。
【0015】
清浄剤系
本明細書の潤滑組成物は、バイオディーゼル燃料で汚染された場合、並びに硫黄添加剤及びホウ素化添加剤及び/又は高レベルのマグネシウムを含む場合に、潤滑剤の酸化粘度安定性を達成するのに役立つ、石鹸(好ましくは、スルホネート石鹸)由来のカルシウム、マグネシウム、及びナトリウム金属の選択された量及び関係を提供する独自の清浄剤系を含む。
【0016】
実施形態では、清浄剤系は、一般に、本明細書に記載の金属量及び関係、並びに石鹸含有量が満たされる限り、フェネート、スルホネート、カリキサレート、サリキサレート、サリシレート、カルボン酸、それらの硫化誘導体、又はそれらの組み合わせのうち、1つ以上のアルカリ又はアルカリ金属塩などの清浄剤添加剤を含む。好ましくは、清浄剤は、フェネート又はスルホネートであり、最も好ましくは、本明細書で発見された石鹸と金属の関係を有するスルホネートである。
【0017】
好適な清浄剤及びその調製方法は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,732,390号及びその中に引用されている参考文献など、多数の特許公報に、より詳細に記載されている。本明細書の潤滑組成物は、清浄剤添加剤が本明細書に記載の金属量及び関係を満たす限り、約0.1~約5重量パーセントの個々の及び/又は全清浄剤添加剤、他のアプローチでは約0.15~約3重量パーセント、更に他のアプローチでは約0.15~2.6重量パーセントの個々の及び/又は総清浄剤添加剤を含んでもよい。
【0018】
上記のように、いくつかのアプローチでは、清浄剤系は、選択された量の石鹸並びに石鹸由来の選択された量及び/又は関係を提供し、他のアプローチでは、スルホネート石鹸によって得られるカルシウム、ナトリウム、及び/若しくはマグネシウムの選択量及び関係、並びに/又は潤滑剤中の硫黄に対する金属の量を提供する。例としては、清浄剤系は、全潤滑組成物に基づいて約1000ppm超の金属、他のアプローチでは、約1000ppm~約5000ppmの全金属、約1200ppm~約3500ppmの全金属、約1400~約3000ppmの全金属、又は約1500ppm~約2500ppmの全金属である量の全清浄剤金属を提供する。他のアプローチでは、清浄剤金属は、カルシウム、ナトリウム及び/又はマグネシウム、好ましくはスルホネートによって得られるカルシウム、ナトリウム及びマグネシウム、より好ましくは過塩基性スルホン酸カルシウム、スルホン酸ナトリウム、及びスルホン酸マグネシウムである。清浄剤はまた、記載された量の石鹸及び金属が満たされる限り、特定の用途に対し必要に応じて、カルシウムフェネート及び/又は他の清浄剤を任意選択的に含んでもよい。
【0019】
一般的には、系中の好適な清浄剤は、石油スルホン酸、及びアリール基がベンジル、トリル、並びにキシリルである長鎖モノ若しくはジアルキルアリールスルホン酸、及び/又は様々なフェネート若しくはフェネートの誘導体の、直鎖又は分岐のアルカリ又はアルカリ土類金属塩、例えばカルシウム、ナトリウム、又はマグネシウムなどを含み得る。好適な清浄剤の例としては、以下の清浄剤、石炭酸カルシウム、カルシウム硫黄含有フェネート、スルホン酸カルシウム、カルシウムカリキサレート、カルシウムサリキサレート、カルシウムサリチレート、カルシウムカルボン酸、カルシウムリン酸、カルシウムモノ-及び/若しくはジ-チオリン酸、カルシウムアルキルフェノール、カルシウム硫黄結合アルキルフェノール化合物、カルシウムメチレン架橋フェノール、マグネシウムフェネート、マグネシウム硫黄含有フェネート、スルホン酸マグネシウム、マグネシウムカリキサレート、マグネシウムサリキサレート、サリチル酸マグネシウム、マグネシウムカルボン酸、マグネシウムリン酸、マグネシウムモノ-及び/若しくはジ-チオリン酸、マグネシウムアルキルフェノール、マグネシウム硫黄結合アルキルフェノール化合物、マグネシウムメチレン架橋フェノール、ナトリウムフェネート、ナトリウム硫黄含有フェネート、スルホン酸ナトリウム、ナトリウムカリキサレート、ナトリウムサリキサレート、サリチル酸ナトリウム、ナトリウムカルボン酸、ナトリウムリン酸、ナトリウムモノ-及び/若しくはジ-チオリン酸、ナトリウムアルキルフェノール、ナトリウム硫黄結合アルキルフェノール化合物、又はナトリウムメチレン架橋フェノールの低塩基性/中性及び過塩基性のバリエーションが挙げられるが、これらに限定されない。
【0020】
清浄剤添加剤は、中性、低塩基性、又は過塩基性、好ましくは上記のような過塩基性であってもよい。理解されるように、過塩基性清浄剤添加剤は、当該技術分野において周知であり、アルカリ又はアルカリ土類金属過塩基性清浄剤添加剤であり得る。そのような清浄剤添加剤は、金属酸化物又は金属水酸化物を基材及び二酸化炭素ガスと反応させることによって、調製することができる。基材は、典型的には、酸、例えば、脂肪族置換スルホン酸、脂肪族置換カルボン酸、又は脂肪族置換フェノールのような酸である。
【0021】
「過塩基性」という用語は、存在する金属の量が化学量論量を超えている、金属塩、例えば、スルホネート、カルボキシレート、サリシレート、及び/又はフェネートなどの金属塩に関する。そのような塩は、100%を超える変換レベルを有し得る(すなわち、そのような塩は、酸をその「正塩」、「中性塩」に変換するのに必要とされる金属の理論量の100%より多くを含み得る)。多くの場合、MRと略される表現「金属比」は、既知の化学反応性及び化学量論に従って、過塩基性塩中の金属の総化学当量と中性塩中の金属の化学当量との比率を示すために使用される。標準塩又は中性塩では、MRは1であり、過塩基性塩では、MRは1より大きい。それらは、一般に、過塩基性、高塩基性、又は超塩基性塩と称され、有機硫黄酸、カルボン酸、又はフェノールの塩であり得る。
【0022】
本明細書で使用されるとき、「TBN」という用語は、ASTM D2896の方法によって測定される単位mg KOH/gの全アルカリ価を表すために使用される。本明細書の潤滑油組成物の過塩基性清浄剤は、約200mg KOH/グラム以上、又は約250mg KOH/グラム以上、又は約350mg KOH/グラム以上、又は約375mg KOH/グラム以上、又は約400mg KOH/グラム以上の全アルカリ価(total base number:TBN)を有し得る。過塩基性清浄剤は、1.1:1以下、又は2:1以下、又は4:1以下、又は5:1以下、又は7:1以下、又は10:1以下、又は12:1以下、又は15:1以下、又は20:1以下の金属対基材比を有し得る。
【0023】
好適な過塩基性清浄剤の例としては、過塩基性石炭酸カルシウム、過塩基性カルシウム硫黄含有フェネート、過塩基性スルホン酸カルシウム、過塩基性カルシウムカリキサラート、過塩基性カルシウムサリキサレート、過塩基性カルシウムサリチレート、過塩基性カルシウムカルボン酸、過塩基性カルシウムリン酸、過塩基性カルシウムモノ及び/又はジチオリン酸、過塩基性カルシウムアルキルフェノール、過塩基性カルシウム硫黄結合アルキルフェノール化合物、過塩基性カルシウムメチレン架橋フェノール、過塩基性マグネシウムフェネート、過塩基性マグネシウム硫黄含有フェネート、過塩基性スルホン酸マグネシウム、過塩基性マグネシウムカリキサラート、過塩基性マグネシウムサリキサレート、過塩基性サリチル酸マグネシウム、過塩基性マグネシウムカルボン酸、過塩基性マグネシウムリン酸、過塩基性マグネシウム及び/又はジチオリン酸、過塩基性マグネシウムアルキルフェノール、過塩基性マグネシウム硫黄結合アルキルフェノール化合物、又は過塩基性マグネシウムメチレン架橋フェノールが挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0024】
任意選択的には、低塩基性又は中性清浄剤が清浄剤系に組み込まれる場合、低塩基性又は中性清浄剤は、一般に、最大175mg KOH/g、最大150mg KOH/g、最大100mg KOH/g、又は最大50mg KOH/gのTBNを有する。低塩基性/中性清浄剤は、カルシウム又はマグネシウム含有清浄剤を含み得る。好適な低塩基性/中性清浄剤の例としては、以下に限定されないが、スルホン酸カルシウム、石炭酸カルシウム、カルシウムサリチレート、スルホン酸マグネシウム、マグネシウムフェネート、及び/又はサリチル酸マグネシウムが挙げられる。
【0025】
いくつかの実施形態では、本明細書の潤滑剤に使用される清浄剤は、過塩基性スルホン酸カルシウム、過塩基性スルホン酸ナトリウム、及び過塩基性スルホン酸マグネシウム(任意選択てきに、過塩基性金属フェネートもまた任意に含む)であり、各々の全アルカリ価は、150~400、他のアプローチでは約200~約350である。上記のTBN値は、基油中に希釈された仕上がり清浄剤成分の値を反映する。
【0026】
他の実施形態では、本明細書の清浄剤のTBNは、清浄剤成分のニート又は非希釈バージョンを反映することがある。例えば、本明細書の流体は、約300~約450のTBN、他のアプローチでは約380~約420のTBNを有するニートな添加剤として過塩基性スルホン酸カルシウム若しくはスルホン酸ナトリウムを、及び/又は約500~約700のTBN、他のアプローチでは約600~約700のTBNを有するニートな添加剤として過塩基性スルホン酸マグネシウムを含み得る。
【0027】
より具体的には、本明細書の清浄剤系は、少なくとも約90ppmのナトリウム、少なくとも約180ppmのナトリウム、少なくとも約200ppmのナトリウム、少なくとも300ppmのナトリウム、又は少なくとも約400ppmのナトリウム(好ましくは、約90~約1,000ppmのナトリウム、約180ppm~約1,000ppm、約200ppm~約1,000ppmのナトリウム、300ppm~約1,000ppmのナトリウム、又は400ppm~約1,000ppmのナトリウム)を提供する、中性から過塩基性の清浄剤(好ましくは、中性から過塩基性スルホン酸カルシウム、中性から過塩基性スルホン酸ナトリウム、及び中性から過塩基性スルホン酸マグネシウム)と;約2,500ppm以下のマグネシウム、約2,000ppm以下のマグネシウム、約1,500ppm以下のマグネシウム、又は好ましくは約1,000ppm以下のマグネシウム(他のアプローチでは、約100ppm~約2500ppm、約500ppm~約2000ppm、約600ppm~約1500ppm、又は約800ppm若しくは約1000ppmのマグネシウム)と;いくつかの実施形態では、少なくとも約500ppmのカルシウム(好ましくは、約500ppm~約2,000ppmのカルシウム)と、を含む。アプローチ又は実施形態では、本明細書の清浄剤系はまた、少なくとも約0.1、少なくとも約0.3、少なくとも約0.4、又は少なくとも約0.5(他のアプローチでは、約0.1~約2.0、約0.3~約2.0、約0.4~約2.0、又は約0.5~約2.0)のナトリウム対マグネシウムの比重量の関係、及び約15以下、約12以下、約10以下、約8以下、又は約6以下(他のアプローチでは、約2~約12、約2~約10、又は約2~約6)の硫黄対ナトリウムの重量関係を含んでもよい。いくつかのアプローチでは、潤滑剤はまた、少なくとも約0.5(他のアプローチでは、約0.5~約2.5)のカルシウム対マグネシウムの重量比を有し得る。以下の実施例に示すように、このような清浄剤系の寄与を満たす潤滑剤は、驚くべきことに、バイオディーゼルで汚染された場合、並びに従来の潤滑剤の硫化添加剤及びホウ素化添加剤を含む場合に、酸化粘度安定性を達成する。
【0028】
更に他の実施形態では、本明細書の潤滑組成物は、上記の金属量及び関係を達成するために、一定量のスルホン酸ナトリウム、スルホン酸マグネシウム、及びスルホン酸カルシウムを含む。潤滑組成物はまた、個々に、又は組み合わせて、約0~約5重量パーセントの任意の清浄剤を含んでもよい。マグネシウム、ナトリウム、及びカルシウムの量及び関係が満たされる限り、特定の用途に対し必要に応じて、他の清浄剤もまた含まれ得る。
【0029】
本明細書の清浄剤系はまた、選択されたレベルの石鹸含有量、特にスルホネート石鹸含有量を潤滑組成物に提供し、この提供された石鹸量は、最大約30重量パーセントのバイオディーゼルで汚染された場合に酸化粘度安定性を達成するために金属のレベルとバランスがとれている。一アプローチにより、清浄剤は、最終潤滑組成物に約0.2重量パーセント~約1.0重量パーセントの石鹸含有量を提供し、他のアプローチでは、清浄剤系は、約0.2重量パーセント~約0.8重量パーセントの石鹸含有量、約0.25重量パーセント~約0.7重量パーセントの石鹸含有量又は約0.28重量パーセント~約0.6重量パーセントの石鹸含有量を提供し、更に他のアプローチでは、約0.4~約0.6重量パーセントの石鹸含有量でカルシウム、ナトリウム、及びマグネシウム金属(好ましくは、石鹸含有量はスルホネート石鹸である)を提供する。いくつかのアプローチでは、清浄剤系はまた、任意選択的なフェネート石鹸含有量を含んでもよく、含まれる場合、最大約0.7重量パーセントまで、又は最大約0.1重量パーセントまでの量(又は、その中の任意の範囲)で提供されてもよい。
【0030】
石鹸含有量は、一般に、中性の有機酸塩の量を指し、清浄剤の浄化能力、又は清浄力、及び汚れを浮かせる能力を反映している。潤滑剤の石鹸含有量は、それぞれスルホネート基の数、カルシウム原子の数、炭酸基の数、及びヒドロキシル基の数を示すv、w、x、及びyを含む例示的なスルホン酸カルシウム清浄剤(RSOで表される)Ca(CO(OH)を使用して、ASTM D3712及び/又は次の式で決定することができる。
【0031】
【数1】
式中、有効式量は、式(RSOCa(CO(OH)を構成する全ての原子の合計重量に他の任意の潤滑剤成分の重量を加えたものである。更に、石鹸含有量を決定することに関する議論は、「FUELS AND LUBRICANTS HANDBOOK,TECHNOLOGY,PROPERTIES,PERFORMANCE,AND TESTING、George Totten編、ASTM International(2003年)において見出すことができ、その関連部分は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0032】
硫化添加剤
本明細書の潤滑組成物はまた、少なくとも1つ以上の極圧添加剤、耐摩耗添加剤及び/又は酸化防止剤を含む硫黄を提供する、いくつかの添加剤を含む。アプローチでは、本明細書の潤滑組成物は、1,500ppm超の硫黄又は2,000ppm超の硫黄を含み、他のアプローチでは、約1,500ppm~約4,000ppmの硫黄、約2,000ppm~約4,000ppm(又はその中の任意の他の範囲)の硫黄を含む。硫化添加剤は、本明細書に記載のGFC試験における酸化粘度安定性に有害であり得る。いくつかの実施形態では、本明細書の潤滑剤は、約0.1~約0.6重量パーセント、他のアプローチでは約0.1~約0.5重量パーセント、また更なるアプローチでは約0.1~約0.4重量パーセントの量の硫化オレフィン添加剤を含み、ここで、硫化オレフィン添加剤は、潤滑組成物中の全硫黄の約15~約25重量パーセントに寄与する。
【0033】
本明細書の潤滑剤は、極圧、酸化防止剤、及び/又は耐摩耗目的のための多種多様な硫黄含有添加剤又は硫化添加剤を含んでもよく、硫黄化された動物性若しくは植物性の脂肪若しくは油、硫黄化された動物性若しくは植物性の脂肪酸エステル、又は好ましくは硫黄化されたオレフィンなどを含んでもよい。(例えば、米国特許第2,995,569号;米国特許第3,673,090号;米国特許第3,703,504号;米国特許第3,703,505号;米国特許第3,796,661号;米国特許第3,873,454号;米国特許第4,119,549号;米国特許第4,119,550号;米国特許第4,147,640号;米国特許第4,191,659号;米国特許第4,240,958号;米国特許第4,344,854号;米国特許第4,472,306号;及び/又は米国特許第4,711,736号を参照されたく、これらの各々は参照により本明細書に組み込まれる。)
【0034】
硫化されて本明細書の潤滑剤に好適な硫化オレフィンを形成し得る好適なオレフィンの例としては、プロピレン、ブチレン、イソブチレン、ポリイソブチレン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、ノネン、デセン、ウンデセン、ドデセン、トリデセン、テトラデセン、ペンタデセン、ヘキサデセン、ヘプタデセン、オクタデセン、ノナデセン、エイコセン、又はそれらの混合物が挙げられる。一実施形態では、ヘキサデセン、ヘプタデセン、オクタデセン、ノナデセン、エイコセン、又はそれらの混合物、並びにそれらの二量体、三量体、及び四量体は、特に有用なオレフィンである。代替的に、オレフィンは、1,3-ブタジエンなどのジエンのディールス・アルダー付加物及びブチルアクリレートなどの不飽和エステルであり得る。別の分類の硫化オレフィンには、硫化脂肪酸及びそのエステルが含まれ得る。脂肪酸は、多くの場合、植物油又は動物油から得られ、典型的には約4~約22個の炭素原子を含有する。好適な脂肪酸及びそのエステルの例としては、トリグリセリド、オレイン酸、リノール酸、パルミトレイン酸、又はそれらの混合物が挙げられる。多くの場合、脂肪酸は、ラード油、トール油、ピーナツ油、大豆油、綿実油、ヒマワリ種子油、又はそれらの混合物から得られる。脂肪酸及び/又はエステルは、α-オレフィンなどのオレフィンと混合され得る。
【0035】
本明細書の潤滑剤の別の好適な硫化剤は、イソブテンなどのオレフィンを硫黄と反応させることによって作製された硫化イソブテンであり得る。硫化イソブテン(SIB)、特に硫化ポリイソブチレンは、約10~約55重量パーセント、又はより好ましくは約30~約50重量パーセントの硫黄含有量を有し得る。多種多様な他のオレフィン又は不飽和炭化水素、例えばイソブテンダイマー又はトライマーなどを使用して、硫化オレフィン添加剤を形成してもよい。(例えば、米国特許第3,471,404号;米国特許第4,204,969号;米国特許第4,954,274号;米国特許第4,966,720号;及び/又は米国特許第3,703,504号を参照されたく、これらの各々は参照により本明細書に組み込まれる。)前述の特許に開示されている方法を含む硫化オレフィンの調製するための方法は、「付加物」と典型的には称される材料の形成を含み、オレフィンをハロゲン化硫黄と、例えば一塩化硫黄と、反応させる。次いで、その付加物を硫黄源と反応させて、硫化オレフィンを提供する。
【0036】
以下の実施例に示すように、潤滑剤がそのような硫化オレフィン添加剤を含み、かつ本明細書の選択された清浄剤系を含まない場合、この潤滑剤は、バイオディーゼル汚染の存在下において望ましくない粘度増加を有する。
【0037】
ホウ素化分散剤
本明細書の潤滑組成物はまた、分散剤の少なくとも一部がホウ素化されている、1つ以上の分散剤を含む。アプローチでは、1つ以上の分散剤は、潤滑組成物に少なくとも約40ppmのホウ素、少なくとも約80ppmのホウ素、少なくとも約100ppmのホウ素、少なくとも約200ppmのホウ素、又は少なくとも約300ppmのホウ素を提供し、他のアプローチでは、約40ppm~約700ppm、約80ppm~約700ppm、約100ppm~約700ppm、約40ppm~約500ppm、約80ppm~約500ppm、約100ppm~約500ppm、約150ppm~約700ppm、又は約150ppm~約500ppmのホウ素を提供する。
【0038】
分散剤は、潤滑組成物への混合前にそれらが灰形成金属を含有せず、潤滑剤への添加時にそれらが通常いかなる灰にも寄与しないため、多くの場合、無灰型分散剤として知られている。無灰型の分散剤は、極性基が比較的高分子量の炭化水素鎖に結合することを特徴とする。典型的な無灰分散剤には、N-置換長鎖アルケニルスクシンイミドが含まれる。N置換長鎖アルケニルスクシンイミドの例としては、ポリイソブチレン置換基の数平均分子量が、GPCにより測定した場合に、約350~約50,000、又は~約5,000、又は~約3,000、又は~約2,000、又は~約1,500の範囲にある、ポリイソブチレンスクシンイミドが挙げられる。スクシンイミド分散剤及びそれらの調製方法は、例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,897,696号及び米国特許第4,234,435号に開示されている。アルケニル置換基は、約2~約16個、又は約2~約8個、又は約2~約6個の炭素原子を含有する重合性モノマーから調製されてもよい。スクシンイミド分散剤は、典型的には、ポリアミン(典型的にはポリ(エチレンアミン))から形成されたイミドである。
【0039】
アプローチでは、分散剤に好ましいアミンは、ポリアミン及びヒドロキシアミンから選択され得る。使用され得るポリアミンの例としては、限定されないが、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、テトラエチレンペンタミン(TEPA)、及びペンタエチルアミンヘキサミン(PEHA)などのより高級の同族体が挙げられる。いくつかのアプローチでは、いわゆる重質ポリアミンが使用されてもよく、これは、TEPA及びPEHA(ペンタエチレンヘキサミン)などの少量の低級ポリアミンオリゴマーを含むが、主に6個以上の窒素原子、分子当たり2個以上の一級アミン、及び従来のポリアミン混合物より広範な分岐を有するオリゴマーを含むポリアルキレン-ポリアミンの混合物である。重質ポリアミンは、好ましくは、分子当たり7個以上の窒素を含有し、分子当たり2個以上の一級アミンを有するポリアミンオリゴマーを含む。
【0040】
いくつかの実施形態では、ポリイソブチレン(polyisobutylene:PIB)は、含まれる場合、分散剤を形成するための好ましい反応物質であり、かつ50モル%超、60モル%超、70モル%超、80モル%超、又は90モル%超の末端二重結合含有量を有してもよい。そのようなPIBはまた、高反応性PIB(「HR-PIB」)とも呼ばれる。GPCにより決定される場合に約800~約5000の範囲の数平均分子量を有するHR-PIBが、本開示の実施形態における使用に好適である。従来のPIBは、典型的には、50モル%未満、40モル%未満、30モル%未満、20モル%未満、又は10モル%未満の末端二重結合の含有量を有する。
【0041】
GPCにより決定される場合に、約900~約3000の範囲の数平均分子量を有するHR-PIBが、好適であってもよい。そのようなHR-PIBは、市販されているか、又は米国特許第4,152,499号及び/又は米国特許第5,739,355号に記載されているような、三フッ化ホウ素などの非塩素化触媒の存在下でのイソブテンの重合によって合成され得る。前述の熱エン反応に使用される場合、HR-PIBは、増加した反応性のために、反応におけるより高い変換率、及びより少ない量の沈殿物形成をもたらし得る。好適な方法は米国特許第7897696号に記載されている。一実施形態では、本開示は、ポリイソブチレン無水コハク酸(「PIBSA」)から誘導される少なくとも1つの分散剤を更に含む。PIBSAは、ポリマー当たり平均約1.0~約2.0のコハク酸部分を有していてもよい。
【0042】
いくつかのアプローチでは、本明細書の潤滑剤中の分散剤の少なくとも一部はまた、様々な薬剤のいずれかとの反応による従来の方法によって後処理することもできる。好適な後処理剤のとしては、ホウ素、尿素、チオ尿素、ジメルカプトチアジアゾール、二硫化炭素、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、炭化水素置換無水コハク酸、無水マレイン酸、ニトリル、エポキシド、カーボネート、環状カーボネート、ヒンダードフェノールエステル、及びリン化合物が挙げられる。(例えば、米国特許第7,645,726号;米国特許第7,214,649号;米国特許第8,048,831号、及び米国特許第5,241,003号を参照されたく、これらは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。)上述のように、本明細書の潤滑剤中の分散剤の少なくとも一部は、潤滑組成物に上記のレベルのホウ素を提供するのに有効な1つ以上のホウ素化合物で後処理される。
【0043】
後処理試薬として使用されるホウ素化合物は、窒素組成物1モル当たり約0.1の原子割合のホウ素から使用される窒素の各原子割合当たり約20の原子割合のホウ素を提供する量の、酸化ホウ素、ハロゲン化ホウ素、ホウ酸、及びホウ酸のエステルから選択することができる。ホウ素で後処理された分散剤は、ホウ酸化分散剤の総重量に基づいて、約0.05重量パーセント~約2.0重量パーセント、又は他のアプローチでは、約0.05重量パーセント~約0.7重量パーセントのホウ素を含有し得る。
【0044】
他のアプローチでは、カルボン酸はまた、後処理試薬として使用されてもよく、かつ飽和又は不飽和のモノカルボン酸、ジカルボン酸、又はポリカルボン酸であり得る。カルボン酸の例としては、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、及びナフタル二酸(例えば、1,8-ナフタル二酸)が挙げられるが、これらに限定されない。無水物はまた、後処理試薬として使用されてもよく、モノ-不飽和無水物(例えば、無水マレイン酸)、アルキル又はアルキレン置換環状無水物(例えば、無水コハク酸又は無水グルタミン酸)、及び芳香族無水カルボン酸(無水ナフタル酸、例えば1,8-無水ナフタル酸を含む)からなる群から選択することができる。
【0045】
一実施形態では、分散剤を後処理するプロセスは、上記のようにスクシンイミド生成物を最初に形成し、次いで、スクシンイミド生成物をホウ酸などのホウ素化合物などと後処理により更に反応させることを含む。場合によっては、本明細書の分散剤は、1つを超える後処理剤で後処理され得る。例えば、分散剤は、ホウ酸などのホウ素化合物、及び無水マレイン酸及び/又は1,8-ナフタル酸無水物などの無水物で後処理され得る。
【0046】
分散剤は、潤滑組成物の最大約20重量パーセントを提供するのに十分な量で使用することができ、ここで、分散剤のうち1つ以上は、潤滑組成物に少なくとも約40ppmのホウ素及び最大500ppmのホウ素を提供するように後処理される。他のアプローチでは、分散剤は、潤滑油組成物の最終重量に基づいて、約0.1重量パーセント~約15重量パーセント、又は約0.1重量パーセント~約10重量パーセント、約0.1重量パーセント~8重量パーセント、又は約1重量パーセント~約10重量パーセント、又は約1重量パーセント~約8重量パーセント、又は約1重量パーセント~約6重量パーセントの量で潤滑組成物に使用されてもよい。
【0047】
基油又は基油ブレンド:
本明細書の潤滑組成物において使用される基油は、潤滑粘度の油であってもよく、米国石油協会(American Petroleum Institute:API)基油互換性ガイドライン(Base Oil Interchangeability Guidelines)に規定されているAPIグループI~APIグループVの基油のいずれかから選択することができる。5つの基油グループは以下の表1に一般的に示されている:
【0048】
【表1】
【0049】
グループI、グループII、及びグループIIIは、鉱物油プロセス原料である。グループIVの基油は、オレフィン性不飽和炭化水素の重合によって生成される真の合成分子種を含有している。多くのグループVの基油もまた真の合成生成物であり、ジエステル、ポリオールエステル、ポリアルキレングリコール、アルキル化芳香族、ポリリン酸エステル、ポリビニルエーテル、及び/又はポリフェニルエーテルなどを含み得るが、植物油などの天然油であってもよい。グループIIIの基油は、鉱油から誘導されたものであるが、これらの流体が受ける厳密な処理により、それらの物理的特性は、PAOなどのいくつかの真の合成油に非常に類似するものとなることに留意すべきである。したがって、グループIIIの基油から誘導された油は、当該産業において合成流体と称され得る。グループII+は、高粘度指数グループIIを含み得る。
【0050】
開示される潤滑油組成物中に使用される基油ブレンドは、鉱物油、動物油、植物油、合成油、合成油ブレンド、又はそれらの混合物であってもよい。好適な油は、水素化分解、水素化、水素化仕上げ、未精製油、精製油、及び再精製油、並びにそれらの混合物から誘導され得る。
【0051】
未精製油は、更なる精製処理を伴わない又はほとんど伴わない、天然、鉱物、又は合成の供給源に由来するものである。精製油は、1つ以上の特性の改善をもたらし得る1つ以上の精製ステップで処理されていることを除いて未精製油と同様である。好適な精製技術の例は、溶媒抽出、二次蒸留、酸又は塩基抽出、濾過、浸透などである。食用に適する品質まで精製された油は、有用であり得る、又は有用であり得ない。食用油は、ホワイト油とも呼ばれる場合がある。いくつかの実施形態では、潤滑油組成物は、食用油又はホワイト油を含まない。
【0052】
再精製油はまた、再生油又は再処理油としても知られている。これらの油は、同じ又は類似のプロセスを使用して精製油と同様に得られる。多くの場合、これらの油は、使用済み添加剤及び油分解生成物の除去を対象とする技術によって更に処理される。
【0053】
鉱油は、掘削によって、又は植物及び動物から、又はそれらの任意の混合物から得られる油を含み得る。例えば、そのような油としては、ヒマシ油、ラード油、オリーブ油、ピーナツ油、トウモロコシ油、ダイズ油、及び亜麻仁油、並びに鉱物潤滑油、例えば、液体石油、及びパラフィン系、ナフテン系、若しくは混合されたパラフィン系-ナフテン系タイプの溶媒処理又は酸処理された鉱物系潤滑油が挙げられ得るが、それらに限定されない。そのような油は、所望であれば、部分的又は完全に水素化され得る。石炭又は頁岩から誘導される油もまた、有用であり得る。
【0054】
有用な合成潤滑油としては、炭化水素油、例えば、重合化、オリゴマー化、又はインターポリマー化オレフィン(例えば、ポリブチレン、ポリプロピレン、プロピレンイソブチレンコポリマー);ポリ(1-ヘキセン)、ポリ(1-オクテン)、1-デセンのトリマー若しくはオリゴマー、例えば、ポリ(1-デセン)(そのような材料はしばしばα-オレフィンと呼ばれる)、及びそれらの混合物;アルキル-ベンゼン(例えば、ドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、ジノニルベンゼン、ジ-(2-エチルヘキシル)-ベンゼン);ポリフェニル(例えば、ビフェニル、ターフェニル、アルキル化ポリフェニル);ジフェニルアルカン、アルキル化ジフェニルアルカン、アルキル化ジフェニルエーテル及びアルキル化ジフェニルスルフィド、並びにそれらの誘導体、類似体、及び同族体、又はそれらの混合物が挙げられ得る。ポリアルファオレフィンは、典型的には水素化された材料である。
【0055】
他の合成潤滑油としては、ポリオールエステル、ジエステル、リン含有酸の液体エステル(例えば、リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル、及びデカンホスホン酸のジエチルエステル)、又はポリマーテトラヒドロフランが挙げられる。合成油は、フィッシャー・トロプシュ反応によって生成され得、典型的には、水素化異性化フィッシャー・トロプシュ炭化水素又はワックスであり得る。一実施形態では、油は、フィッシャー・トロプシュ気液合成手順、並びに他の気液油によって調製することができる。
【0056】
潤滑組成物中に含まれる主要量の基油は、グループI、グループII、グループIII、グループIV、グループV、及び前述のものの2つ以上の組み合わせからなる群から選択され得、主要量の基油は、組成物中の添加剤成分又は粘度指数向上剤の提供から生じる基油以外のものである。別の実施形態では、潤滑組成物中に含まれる主要量の基油は、グループII、グループIII、グループIV、グループV、及び前述のものの2つ以上の組み合わせからなる群から選択され得、主要量の基油は、組成物中の添加剤成分又は粘度指数向上剤の提供から生じる基油以外のものである。
【0057】
存在する潤滑粘度の油の量は、100重量%から、粘度指数向上剤(複数可)及び/又は流動点降下剤(複数可)及び/又は他のトップ処理添加剤を含む性能添加剤の量の合計を減算した後に残る残部であり得る。例えば、最終流体中に存在し得る潤滑粘度の油は、「主要量」、例えば、約50重量%超、約60重量%超、約70重量%超、約80重量%超、約85重量%超、又は約90重量%超であり得る。
【0058】
いくつかのアプローチ又は実施形態では、本明細書の基油系は、グループI~グループVの基油の1つ以上を含み、かつ、約2~約20cStのKV100を有してもよく、他のアプローチでは約2~約10cStのKV100、約2.5~約6cStのKV100、更に他のアプローチでは約2.5~約3.5cStのKV100、他のアプローチでは約2.5~約4.5cStのKV100を有し得る。
【0059】
本明細書で使用される場合、「油組成物」、「潤滑組成物」、「潤滑油組成物」、「潤滑油」、「潤滑組成物」、「完全配合潤滑組成物」、「潤滑剤」、並びに「潤滑及び冷却流体」という用語は、過半量の基油成分と少量の清浄剤及び他の任意選択的な成分とを含む仕上がり潤滑生成物を指す同義の完全に互換的な用語とみなされる。
【0060】
任意選択的な添加剤:
本明細書の潤滑油組成物はまた、性能基準を満たすため必要に応じて、清浄剤系、硫化添加剤、及びホウ素化清浄剤と組み合わせた、いくつかの任意選択の添加剤を含んでもよい。それらの任意選択の添加剤は、以下の段落で説明する。
【0061】
他の分散剤:潤滑油組成物は、任意選択的に1つ以上の他の分散剤又はそれらの混合物を含んでもよい。分散剤は、潤滑油組成物に混合する前に灰分を形成する金属を含まず、潤滑剤に添加する場合は通常灰分に寄与しないので、しばしば無灰タイプの分散剤として知られている。無灰型の分散剤は、極性基が比較的高分子量の炭化水素鎖に結合することを特徴とする。典型的な無灰分散剤には、N-置換長鎖アルケニルスクシンイミドが含まれる。N置換長鎖アルケニルスクシンイミドの例としては、ポリイソブチレン置換基の数平均分子量が、GPCにより測定した場合に、約350~約50,000、又は~約5,000、又は~約3,000の範囲にある、ポリイソブチレンスクシンイミドが挙げられる。スクシンイミド分散剤及びその調製は、例えば、米国特許第7,897,696号又は米国特許第4,234,435号に開示されている。アルケニル置換基は、約2~約16個、又は約2~約8個、又は約2~約6個の炭素原子を含有する重合性モノマーから調製されてもよい。スクシンイミド分散剤は、典型的には、ポリアミン(典型的にはポリ(エチレンアミン))から形成されたイミドである。
【0062】
好ましいアミンは、ポリアミン及びヒドロキシアミンから選択される。使用され得るポリアミンの例としては、限定されないが、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、テトラエチレンペンタミン(TEPA)、及びペンタエチルアミンヘキサミン(PEHA)などのより高級の同族体が挙げられる。
【0063】
好適な重質ポリアミンは、TEPA及びPEHA(ペンタエチレンヘキサミン)などの少量の低級ポリアミンオリゴマーを含むが、主に6個以上の窒素原子、分子当たり2個以上の一級アミン、及び従来のポリアミン混合物より広範な分岐を有するオリゴマーを含むポリアルキレン-ポリアミンの混合物である。重質ポリアミンは、好ましくは、分子当たり7個以上の窒素を含有し、分子当たり2個以上の一級アミンを有するポリアミンオリゴマーを含む。重質ポリアミンは、28重量%超(例えば、>32重量%)の総窒素と、当量当たり120~160グラムの当量の一級アミン基と、を含む。
【0064】
いくつかのアプローチでは、好適なポリアミンは、一般的にPAMとして知られており、TEPA及びペンタエチレンヘキサミン(PEHA)が、ポリアミンの主要部分であり、通常約80%未満である、エチレンアミンの混合物を含有する。
【0065】
典型的には、PAMは、1グラム当たり8.7~8.9ミリ当量の一級アミン(一級アミンの当量当たり115~112グラムの当量)及び約33~34重量%の総窒素含有量を有する。実質的にTEPAを含まず、ごく少量のPEHAを含むが、主に6個より多い窒素及びより広範な分岐を有するオリゴマーを含有するPAMオリゴマーのより重質なカットは、分散性が改善された分散剤を生成してもよい。
【0066】
一実施形態では、本開示は、GPCにより決定される場合に、約350~約50,000、又は~約5000、又は~約3000の範囲の数平均分子量を有するポリイソブチレンから誘導される少なくとも1つのポリイソブチレンスクシンイミド分散剤を更に含む。ポリイソブチレンスクシンイミドは、単独で、又は他の分散剤と組み合わせて使用され得る。
【0067】
いくつかの実施形態では、ポリイソブチレンは、含まれる場合、50モル%を超える、60モル%を超える、70モル%を超える、80モル%を超える、又は90モル%を超える末端二重結合の含有量を有していてもよい。そのようなPIBは、高反応性PIB(「HR-PIB」)とも呼ばれる。GPCにより決定される場合に約800~約5000の範囲の数平均分子量を有するHR-PIBが、本開示の実施形態における使用に好適である。従来のPIBは、典型的には、50モル%未満、40モル%未満、30モル%未満、20モル%未満、又は10モル%未満の末端二重結合の含有量を有する。
【0068】
GPCにより決定される場合に、約900~約3000の範囲の数平均分子量を有するHR-PIBが、好適であってもよい。このようなHR-PIBは、市販されているか、又はBoerzel,et al.の米国特許第4,152,499号及びGateau,et al.の米国特許第5,739,355号に記載されているように、三フッ化ホウ素などの非塩素化触媒の存在下でのイソブテンの重合によって合成することができる。上記熱エン反応で使用されるとき、HR-PIBは、反応性の向上により反応中のより高い転化率、及びより少ない沈殿物形成量をもたらし得る。好適な方法は米国特許第7897696号に記載されている。
【0069】
一実施形態では、本開示は、ポリイソブチレン無水コハク酸(「PIBSA」)から誘導される少なくとも1つの分散剤を更に含む。PIBSAは、ポリマー当たり平均約1.0~約2.0のコハク酸部分を有していてもよい。
【0070】
アルケニル又はアルキル無水コハク酸の有効成分%は、クロマトグラフィー技術を使用して決定することができる。この方法は、米国特許第5,334,321号の第5欄及び第6欄に記載されている。
【0071】
ポリオレフィンの転化率は米国特許第5,334,321号の第5欄及び第6欄の式を用いて、有効成分%から算出される。
【0072】
別途明記しない限り、全てのパーセンテージは、重量パーセントであり、全ての分子量は、市販のポリスチレン標準(較正基準として180~約18,000の数平均分子量を有する)を使用するゲル浸透クロマトグラフィー(gel permeation chromatography、GPC)により決定される数平均分子量である。
【0073】
一実施形態では、分散剤は、ポリアルファオレフィン(PAO)無水コハク酸から誘導されてもよい。一実施形態では、分散剤は、オレフィン無水マレイン酸コポリマーから誘導されてもよい。一例として、分散剤は、ポリ-PIBSAとして記載されてもよい。一実施形態では、分散剤は、エチレン-プロピレンコポリマーにグラフト化される無水物から誘導されてもよい。
【0074】
好適な種類の窒素含有分散剤は、オレフィンコポリマー(olefin copolymer、OCP)、より具体的には、無水マレイン酸でグラフト化され得るエチレン-プロピレン分散剤から誘導され得る。官能化OCPと反応させることができる窒素含有化合物のより完全なリストは、米国特許第7,485,603号、同第7,786,057号、同第7,253,231号、同第6,107,257号、及び同第5,075,383号に記載されており、かつ/又は市販されている。
【0075】
好適な分散剤の1つのクラスはまた、マンニッヒ塩基であってもよい。マンニッヒ塩基は、より高分子量のアルキル置換フェノール、ポリアルキレンポリアミン、及びホルムアルデヒドなどのアルデヒドの縮合によって形成される材料である。マンニッヒ塩基は、米国特許第3,634,515号により詳細に記載されている。
【0076】
好適なクラスの分散剤はまた、高分子量エステル又は半エステルアミドであってもよい。好適な分散剤はまた、従来の方法によって様々な薬剤のいずれかと反応させて後処理されてもよい。これらの中には、ホウ素、尿素、チオ尿素、ジメルカプトチアジアゾール、二硫化炭素、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、炭化水素置換無水コハク酸、無水マレイン酸、ニトリル、エポキシド、カーボネート、環状カーボネート、ヒンダードフェノールエステル、及びリン化合物がある。米国特許第7,645,726号、米国特許第7,214,649号、及び米国特許第8,048,831号は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0077】
カーボネート及びホウ酸の後処理に加えて、化合物はいずれも、異なる特性を改善又は付与するように設計された様々な後処理により後処理、又は更に後処理されてもよい。このような後処理は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,241,003号の欄27~29に要約されたものを含む。そのような治療には、以下による治療が含まれる。無機リン酸又は無水物(例えば、米国特許第3,403,102号及び同第4,648,980号)、有機リン化合物(例えば、米国特許第3,502,677号)、五硫化リン、既に上記したようなホウ素化合物(例えば、米国特許第3,178,663及び同第4,652,387号)、カルボン酸、ポリカルボン酸、無水物、及び/又は酸ハロゲン化物(例えば、米国特許第3,708,522号及び同第4,948,386号)、エポキシドポリエポキシエート又はチオエポキシド(例えば、米国特許第3,859,318号及び同第5,026,495号)、アルデヒド又はケトン(例えば、米国特許第3,458,530号)、二硫化炭素(例えば、米国特許第3,256,185号)、グリシドール(例えば、米国特許第4,617,137号)、尿素、チオ尿素又はグアニジン(例えば、米国特許第3,312,619号、同第3,865,813号、及び英国特許第1,065,595号)、有機スルホン酸(例えば、米国特許第3,189,544号及び英国特許第2,140,811号)、シアン化アルケニル(例えば、米国特許第3,278,550号及び同第3,366,569号)、ジケテン(例えば、米国特許第3,546,243号)、ジイソシアネート(例えば、米国特許第3,573,205号)、アルカンスルトン(例えば、米国特許第3,749,695号)、1,3-ジカルボニル化合物(例えば、米国特許第4,579,675号)、アルコキシル化アルコール又はフェノールのスルフェート(例えば、米国特許第3,954,639号)、環状ラクトン(例えば、米国特許第4,617,138号、同第4,645,515号、同第4,668,246号、同第4,963,275号、及び同第4,971,711号)、環状カーボネート又はチオカーボネート、直鎖状モノカーボネート若しくはポリカーボネート、又はクロロホルメート(例えば、米国特許第4,612,132号、同第4,647,390号、同第4,648,886号、同第4,670,170号)、窒素含有カルボン酸(例えば、米国特許第4,971,598号及び英国特許第2,140,811号)、ヒドロキシ保護クロロジカルボニルオキシ化合物(例えば、米国特許第4,614,522号)、ラクタム、チオラクタム、チオラクトン、又はジチオラクトン(例えば、米国特許第4,614,603及び同第4,666,460号)、環状カーボネート又はチオカーボネート、直鎖状モノカーボネート若しくはポリカーボネート、又はクロロホルメート(例えば、米国特許第4,612,132号、同第4,647,390号、同第4,646,860号、及び同第4,670,170号)、窒素含有カルボン酸(例えば、米国特許第4,971,598号及び英国特許第2,440,811号)、ヒドロキシ保護クロロジカルボニルオキシ化合物(例えば、米国特許第4,614,522号)、ラクタム、チオラクタム、チオラクトン、又はジチオラクトン(例えば、米国特許第4,614,603及び同第4,666,460号)、環状カルバメート、環状チオカルバメート、又は環状ジチオカルバメート(例えば、米国特許第4,663,062号及び同第4,666,459号)、ヒドロキシ脂肪族カルボン酸(例えば、米国特許第4,482,464号、同第4,521,318号、同第4,713,189号)、酸化剤(例えば、米国特許第4,379,064号)、五硫化リン及びポリアルキレンポリアミンの組み合わせ(例えば、米国特許第3,185,647号)、カルボン酸又はアルデヒド又はケトン及び硫黄又は塩化硫黄の組み合わせ(例えば、米国特許第3,390,086号、同第3,470,098号)、ヒドラジン及び二硫化炭素の組み合わせ(例えば、米国特許第3,519,564号)、アルデヒド及びフェノールの組み合わせ(例えば、米国特許第3,649,229号、同第5,030,249号、同第5,039,307号)、アルデヒド及びジチオリン酸のO-ジエステルの組み合わせ(例えば、米国特許第3,865,740号)、ヒドロキシ脂肪族カルボン酸及びホウ酸の組み合わせ(例えば、米国特許第4,554,086号)、ヒドロキシ脂肪族カルボン酸、それに次ぐホルムアルデヒド及びフェノールの組み合わせ(例えば、米国特許第4,636,322号)、ヒドロキシ脂肪族カルボン酸、及びそれに次ぐ脂肪族ジカルボン酸の組み合わせ(例えば、米国特許第4,663,064号)、ホルムアルデヒド及びフェノール、並びにそれに次ぐグリコール酸の組み合わせ(例えば、米国特許第4,699,724号)、ヒドロキシ脂肪族カルボン酸又はシュウ酸と、それに次ぐジイソシアネートとの組み合わせ(例えば、米国特許第4,713,191号)、リンの無機酸若しくは無水物又はその部分的若しくは全体的硫黄類似体及びホウ素化合物の組み合わせ(例えば、米国特許第4,857,214号)、有機二酸、それに次ぐ不飽和脂肪酸、及びそれに次ぐニトロソ芳香族アミン、任意選択でそれに続くホウ素化合物、並びにそれに次ぐグルコール化剤の組み合わせ(例えば、米国特許第4,973,412号)、アルデヒド及びトリアゾールの組み合わせ(例えば、米国特許第4,963,278号)、アルデヒド及びトリアゾール、それに次ぐホウ素化合物の組み合わせ(例えば、米国特許第4,981,492号)、環状ラクトン及びホウ素化合物の組み合わせ(例えば、米国特許第4,963,275号及び同第4,971,711号)。ここで、先に言及した特許は、それらの全体が組み込まれる。
【0078】
好適な分散剤のTBNは、約50%の希釈油を含有する分散剤試料で測定した場合、約5~約30TBNに匹敵する、油を含まない基準で約10~約65mg KOH/gであり得る。TBNは、ASTM D2896の方法によって測定される。
【0079】
更に他の実施形態では、任意選択の分散剤添加剤は、ヒドロカルビルで置換されたスクシンアミド分散剤又はスクシンイミド分散剤であってもよい。アプローチでは、ヒドロカルビルで置換されたスクシンアミド分散剤又はスクシンイミド分散剤は、ポリアルキレンポリアミンと反応させたヒドロカルビル置換アシル化剤から誘導されてもよく、スクシンアミド分散剤又はスクシンイミド分散剤のヒドロカルビル置換基は、ポリスチレンを較正基準として使用するGPCにより測定される場合に約250~約5,000の数平均分子量を有する直鎖又は分岐鎖ヒドロカルビル基である。
【0080】
いくつかのアプローチでは、分散剤を形成するために使用されるポリアルキレンポリアミンは、以下の式を有し、
【0081】
【化1】
式中、各R及びR’は、独立して、二価C1~C6アルキレンリンカーであり、各R及びRは、独立して、水素、C1~C6アルキル基であるか、又はそれらが結合する窒素原子と一緒に、1つ以上の芳香環若しくは非芳香環と任意選択で融合した5員環若しくは6員環を形成し、nは、0~8の整数である。他のアプローチでは、ポリアルキレンポリアミンは、平均5~7個の窒素原子を有するポリエチレンポリアミンの混合物、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタアミン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0082】
分散剤は、存在する場合、潤滑油組成物の最終重量に基づいて、最大約20重量%を提供するのに十分な量で使用され得る。使用され得る分散剤の別の量は、潤滑油組成物の最終重量に基づいて、約0.1重量%~約15重量%、又は約0.1重量%~約10重量%、約0.1~8重量%、又は約1重量%~約10重量%、又は約1重量%~約8重量%、又は約1重量%~約6重量%であってもよい。いくつかの実施形態では、潤滑油組成物は、混合分散剤系を利用する。単一の種類又は任意の所望の比率の2つ以上の種類の分散剤の混合物を使用することができる。
【0083】
酸化防止剤:本明細書の潤滑油組成物はまた、任意選択的に、1つ以上の酸化防止剤を含有してもよい。酸化防止剤化合物は既知のものであり、例えば、フェネート、フェネートスルフィド、硫化オレフィン、ホスホ硫化テルペン、硫化エステル、芳香族アミン、アルキル化ジフェニルアミン(例えば、ノニルジフェニルアミン、ジノニルジフェニルアミン、オクチルジフェニルアミン、ジオクチルジフェニルアミン)、フェニル-アルファ-ナフチルアミン、アルキル化フェニル-アルファ-ナフチルアミン、ヒンダード非芳香族アミン、フェノール、ヒンダードフェノール、油溶性モリブデン化合物、高分子酸化防止剤、又はそれらの混合物が挙げられる。酸化防止剤化合物は、単独で、又は組み合わせて使用され得る。
【0084】
ヒンダードフェノール酸化防止剤は、立体障害基として、二級ブチル基及び/又は三級ブチル基を含有し得る。フェノール基は、ヒドロカルビル基及び/又は第2の芳香族基に結合する架橋基で更に置換され得る。好適なヒンダードフェノール酸化防止剤の例としては、2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、4-メチル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、4-エチル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、4-プロピル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール又は4-ブチル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、又は4-ドデシル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノールが挙げられる。一実施形態では、ヒンダードフェノール酸化防止剤は、エステルであってもよく、例えばBASFから入手可能なIrganox(商標)L-135又は2,6-ジ-tert-ブチルフェノール及びアルキルアクリレートから誘導される付加生成物を含んでもよく、アルキル基は、約1~約18個、又は約2~約12個、又は約2~約8個、又は約2~約6個、又は約4個の炭素原子を含有してもよい。別の市販のヒンダードフェノール酸化防止剤は、エステルであってもよく、Albemarle Corporationから入手可能なEthanox(商標)4716を含み得る。
【0085】
有用な酸化防止剤は、ジアリールアミン及び高分子量フェノールを含み得る。一実施形態では、潤滑油組成物は、ジアリールアミンと高分子量フェノールとの混合物を含有していてもよいため、各酸化防止剤は、潤滑油組成物の最終重量に基づいて、最大約5重量%を提供するのに十分な量で存在していてもよい。一実施形態では、酸化防止剤は、本潤滑油組成物の最終重量に基づいて、約0.3~約1.5重量%のジアリールアミンと約0.4~約2.5重量%の高分子量フェノールとの混合物であり得る。
【0086】
硫化されて硫化オレフィンを形成し得る好適なオレフィンの例としては、プロピレン、ブチレン、イソブチレン、ポリイソブチレン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、ノネン、デセン、ウンデセン、ドデセン、トリデセン、テトラデセン、ペンタデセン、ヘキサデセン、ヘプタデセン、オクタデセン、ノナデセン、エイコセン、又はそれらの混合物が挙げられる。一実施形態では、ヘキサデセン、ヘプタデセン、オクタデセン、ノナデセン、エイコセン、又はそれらの混合物、並びにそれらの二量体、三量体、及び四量体は、特に有用なオレフィンである。代替的に、オレフィンは、1,3-ブタジエンなどのジエンのディールス・アルダー付加物及びブチルアクリレートなどの不飽和エステルであり得る。
【0087】
別の分類の硫化オレフィンには、硫化脂肪酸及びそのエステルが含まれる。脂肪酸は、多くの場合、植物油又は動物油から得られ、典型的には約4~約22個の炭素原子を含有する。好適な脂肪酸及びそのエステルの例としては、トリグリセリド、オレイン酸、リノール酸、パルミトレイン酸、又はそれらの混合物が挙げられる。多くの場合、脂肪酸は、ラード油、トール油、ピーナツ油、大豆油、綿実油、ヒマワリ種子油、又はそれらの混合物から得られる。脂肪酸及び/又はエステルは、α-オレフィンなどのオレフィンと混合され得る。
【0088】
別の代替の実施形態では、酸化防止剤組成物は、上述のフェノール性及び/又はアミン性酸化防止剤に加えて、モリブデン含有酸化防止剤も含有する。これらの3つの酸化防止剤の組み合わせが使用される場合、好ましくは、フェノール対アミン対モリブデン含有成分処理速度の比率は、(0~3):(0~3):(0~3)である。
【0089】
1つ以上の酸化防止剤は、潤滑油組成物の約0重量%~約20重量%、又は約0.1重量%~約10重量%、又は約1重量%~約5重量%の範囲で存在し得る。
【0090】
耐摩耗剤:本明細書の潤滑油組成物はまた、任意選択的に、1つ以上の耐摩耗剤を含有してもよい。好適な耐摩耗剤の例としては、以下に限定されないが、チオリン酸金属、ジアルキルジチオリン酸金属;リン酸エステル若しくはその塩;リン酸エステル;亜リン酸塩;リン含有カルボン酸エステル、エーテル、又はアミド;硫化オレフィン;チオカルバメートエステル、アルキレン結合チオカルバメート、並びにビス(S-アルキルジチオカルバミル)ジスルフィドなど、チオカルバメート含有化合物;及びそれらの混合物、が挙げられる。好適な耐摩耗剤は、モリブデンジチオカルバメートであってもよい。リン含有耐摩耗剤は、欧州特許第612839号により詳細に記載されている。ジアルキルジチオホスフェート塩中の金属は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルミニウム、鉛、スズ、モリブデン、マンガン、ニッケル、銅、チタン、又は亜鉛であってもよい。有用な耐摩耗剤は、亜鉛ジアルキルジチオホスフェートであってもよい。
【0091】
好適な耐摩耗剤の更なる例としては、チタン化合物、タータラート、タルトリミド、リン化合物の油溶性アミン塩、硫化オレフィン、ホスファイト(例えば、ジブチルホスファイト)、ホスホネート、チオカルバメート含有化合物、例えば、チオカルバメートエステル、チオカルバメートアミド、チオカルバミン酸エーテル、アルキレン結合チオカルバメート、及びビス(S-アルキルジチオカルバミル)ジスルフィドが挙げられる。タータラート又はタルトリミドは、アルキル-エステル基を含有していてもよく、アルキル基上の炭素原子の合計は、少なくとも8であってもよい。耐摩耗剤は、一実施形態では、シトレートを含み得る。
【0092】
耐摩耗剤は、潤滑油組成物の約0重量%~約15重量%、又は約0.01重量%~約10重量%、又は約0.05重量%~約5重量%、又は約0.1重量%~約3重量%を含む範囲で存在してもよい。
【0093】
ホウ素含有化合物:本明細書の潤滑油組成物は、任意選択的に、1つ以上のホウ素含有化合物を含有してもよい。ホウ素含有化合物の例は、米国特許第5,883,057号に開示されているように、ホウ酸エステル、ホウ酸脂肪アミン、ホウ酸ポキシド、ホウ酸化洗剤、及びホウ酸化スクシンイミド分散剤などのホウ酸化分散剤を含む。ホウ素含有化合物は、存在する場合、潤滑油組成物の最大約8重量%、約0.01重量%~約7重量%、約0.05重量%~約5重量%、又は約0.1重量%~約3重量%を提供するのに十分な量で使用され得る。
【0094】
追加の洗浄剤:潤滑油組成物は、任意選択的に、1つ以上の中性洗浄剤、低塩基性洗浄剤、又は過塩基性清浄剤、及びこれらの混合物を更に含んでもよい。好適な清浄剤基材には、フェネート、硫黄含有フェネート、スルホネート、カリキサラート、サリキサレート、サリチレート、カルボン酸、リン酸、モノ及び/若しくはジチオリン酸、アルキルフェノール、硫黄結合アルキルフェノール化合物、又はメチレン架橋フェノールが含まれる。好適な清浄剤及びその調製方法は、米国特許第7,732,390号及びその中に引用されている参考文献を含む多数の特許公報により詳細に記載されている。
【0095】
清浄剤基材は、限定されないが、カルシウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、リチウム、バリウム、又はそれらの混合物などのアルカリ金属又はアルカリ土類金属で塩化され得る。いくつかの実施形態では、清浄剤は、バリウムを含まない。いくつかの実施形態では、清浄剤は、マグネシウム又はカルシウムなどの微量の他の金属を、50ppm以下、40ppm以下、30ppm以下、20ppm以下、又は10ppm以下などの量で含有してもよい。好適な清浄剤には、石油スルホン酸及びアリール基がベンジル、トリル、及びキシリルである長鎖モノ又はジアルキルアリールスルホン酸のアルカリ金属又はアルカリ土類金属塩が含まれてもよい。好適な清浄剤の例としては、石炭酸カルシウム、カルシウム硫黄含有フェネート、スルホン酸カルシウム、カルシウムカリキサラート、カルシウムサリキサレート、カルシウムサリチレート、カルシウムカルボン酸、カルシウムリン酸、カルシウムモノ及び/若しくはジチオリン酸、カルシウムアルキルフェノール、カルシウム硫黄結合アルキルフェノール化合物、カルシウムメチレン架橋フェノール、石炭酸マグネシウム、マグネシウム硫黄含有フェネート、スルホン酸マグネシウム、マグネシウムカリキサラート、マグネシウムサリキサレート、サリチル酸マグネシウム、マグネシウムカルボン酸、マグネシウムリン酸、マグネシウムモノ及び/若しくはジチオリン酸、マグネシウムアルキルフェノール、マグネシウム硫黄結合アルキルフェノール化合物、マグネシウムメチレン架橋フェノール、石炭酸ナトリウム、ナトリウム硫黄含有フェネート、スルホン酸ナトリウム、ナトリウムカリキサラート、ナトリウムサリキサレート、サリチル酸ナトリウム、ナトリウムカルボン酸、ナトリウムリン酸、ナトリウムモノ及び/若しくはジチオリン酸、ナトリウムアルキルフェノール、ナトリウム硫黄結合アルキルフェノール化合物、又はナトリウムメチレン架橋フェノールが挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0096】
過塩基性清浄剤添加剤は、当該技術分野において周知であり、アルカリ又はアルカリ土類金属過塩基性清浄剤添加剤であり得る。そのような清浄剤添加剤は、金属酸化物又は金属水酸化物を基材及び二酸化炭素ガスと反応させることによって、調製することができる。基材は、典型的には、酸、例えば、脂肪族置換スルホン酸、脂肪族置換カルボン酸、又は脂肪族置換フェノールのような酸である。
【0097】
「過塩基性」という用語は、存在する金属の量が化学量論的量を超える、スルホネート、カルボキシレート、及びフェネートの金属塩などの金属塩に関する。そのような塩は、100%を超える変換レベルを有し得る(すなわち、そのような塩は、酸をその「正塩」、「中性塩」に変換するのに必要とされる金属の理論量の100%より多くを含み得る)。多くの場合、MRと略される表現「金属比」は、既知の化学反応性及び化学量論に従って、過塩基性塩中の金属の総化学当量と中性塩中の金属の化学当量との比率を示すために使用される。正塩又は中性塩では、金属比は1であるが、過塩基性塩ではMRは1より大きい。それらは、一般に、過塩基性、高塩基性、又は超塩基性塩と称され、有機硫黄酸、カルボン酸、又はフェノールの塩であり得る。
【0098】
潤滑油組成物の過塩基性清浄剤は、約200mgKOH/g以上、又は更なる例として、約250mgKOH/g以上、若しくは約350mgKOH/g以上、若しくは約375mgKOH/g以上、若しくは約400mgKOH/g以上の全アルカリ価(TBN)を有してもよい。TBNはASTM D2896の方法によって測定される。
【0099】
好適な過塩基性清浄剤の例としては、過塩基性石炭酸カルシウム、過塩基性カルシウム硫黄含有フェネート、過塩基性スルホン酸カルシウム、過塩基性カルシウムカリキサラート、過塩基性カルシウムサリキサレート、過塩基性カルシウムサリチレート、過塩基性カルシウムカルボン酸、過塩基性カルシウムリン酸、過塩基性カルシウムモノ及び/又はジチオリン酸、過塩基性カルシウムアルキルフェノール、過塩基性カルシウム硫黄結合アルキルフェノール化合物、過塩基性カルシウムメチレン架橋フェノール、過塩基性マグネシウムフェネート、過塩基性マグネシウム硫黄含有フェネート、過塩基性スルホン酸マグネシウム、過塩基性マグネシウムカリキサラート、過塩基性マグネシウムサリキサレート、過塩基性サリチル酸マグネシウム、過塩基性マグネシウムカルボン酸、過塩基性マグネシウムリン酸、過塩基性マグネシウム及び/又はジチオリン酸、過塩基性マグネシウムアルキルフェノール、過塩基性マグネシウム硫黄結合アルキルフェノール化合物、又は過塩基性マグネシウムメチレン架橋フェノールが挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0100】
過塩基性フェネートカルシウム清浄剤は、全てASTM D-2896の方法により測定される場合に、少なくとも約150mgKOH/g、少なくとも約225mgKOH/g、少なくとも約225mgKOH/g~約400mgKOH/g、少なくとも約225mgKOH/g~約350mgKOH/g、又は約230mgKOH/g~約350mgKOH/gの全アルカリ価を有する。そのような清浄剤組成物が、不活性希釈剤、例えばプロセス油、通常は鉱油中で形成される場合、全アルカリ価は、希釈剤、及び清浄剤組成物に含有し得る任意の他の材料(例えば、促進剤など)を含む全体組成物の塩基性を反映する。
【0101】
過塩基性清浄剤は、1.1:1から、又は2:1から、又は4:1から、又は5:1から、又は7:1から、又は10:1からの金属対基材比を有していてもよい。いくつかの実施形態では、洗浄剤は、エンジン、又はトランスミッション若しくはギアなどの他の自動車部品内の錆を低減又は防止するのに有効である。洗浄剤は、潤滑組成物中に、約0重量%~約10重量%、又は約0.1重量%~約8重量%、又は約1重量%~約4重量%、又は約4重量%超~約8重量%で存在してもよい。
【0102】
極圧剤:本明細書の潤滑油組成物はまた、任意選択的に、1つ以上の極圧剤を含有してもよい。油に可溶性である極圧(EP)剤は、硫黄及びクロロ硫黄含有EP剤、塩素化炭化水素EP剤、並びにリンEP剤を含む。このようなEP剤の例としては、塩素化ワックス、ジベンジルジスルフィド、ビス(クロロベンジル)ジスルフィド、ジブチルテトラスルフィド、オレイン酸の硫化メチルエステル、硫化アルキルフェノール、硫化ジペンテン、硫化テルペン、及び硫化ディールス・アルダー付加物などの有機スルフィド及びポリスルフィド、硫化リンとテルペンチン又はオレイン酸メチルとの反応生成物などのリン硫化炭化水素;ジヒドロカルビル及びトリヒドロカルビルホスファイト、例えば、ジブチルホスファイト、ジヘプチルホスファイト、ジシクロヘキシルホスファイト、ペンチルフェニルホスファイトなどのリン酸エステル;ジペンチルフェニルホスファイト、トリデシルホスファイト、ジステアリルホスファイト、及びポリプロピレン置換フェニルホスファイト;亜鉛ジオクチルジチオカルバメート及びバリウムヘプチルフェノール二酸などの金属チオカルバメート;例えば、ジアルキルジチオリン酸とプロピレンオキシドとの反応生成物のアミン塩を含む、アルキル及びジアルキルリン酸のアミン塩、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0103】
摩擦調整剤:本明細書の潤滑油組成物はまた、任意選択的に、1つ以上の摩擦調整剤を含有してもよい。好適な摩擦調整剤には、金属を含有する及び金属を含まない摩擦調整剤が含まれてもよく、イミダゾリン、アミド、アミン、スクシンイミド、アルコキシル化アミン、アルコキシル化エーテルアミン、アミンオキシド、アミドアミン、ニトリル、ベタイン、第四級アミン、イミン、アミン塩、アミノグアナジン、アルカノールアミド、ホスホネート、金属含有化合物、グリセロールエステル、硫化脂肪化合物及びオレフィン、ヒマワリ油、他の天然に生成する植物油又は動物油、ジカルボン酸エステル、ポリオールと1つ以上の脂肪族又は芳香族カルボン酸とのエステル又は部分エステルなどが含まれてもよいが、これらに限定されない。
【0104】
好適な摩擦調整剤は、直鎖状、分岐鎖状、若しくは芳香族ヒドロカルビル基、又はそれらの混合物から選択されるヒドロカルビル基を含有していてもよく、かつ飽和であっても不飽和であってもよい。ヒドロカルビル基は、炭素及び水素又は硫黄若しくは酸素などのヘテロ原子で構成されてもよい。ヒドロカルビル基は、約12~約25個の炭素原子の範囲であってもよい。いくつかの実施形態では、摩擦調整剤は、長鎖脂肪酸エステルであってもよい。別の実施形態では、長鎖脂肪酸エステルは、モノエステル、又はジエステル、又は(トリ)グリセリドであってもよい。摩擦調整剤は、長鎖脂肪アミド、長鎖脂肪エステル、長鎖脂肪エポキシド誘導体、又は長鎖イミダゾリンであってもよい。
【0105】
他の好適な摩擦調整剤には、有機、無灰(金属不含)、窒素不含有機摩擦調整剤が含まれてもよい。このような摩擦調整剤は、カルボン酸と無水物とをアルカノールと反応させることによって形成されるエステルを含み、一般に親油性炭化水素鎖に共有結合した極性末端基(例えばカルボキシル又はヒドロキシル)を含んでもよい。有機無灰窒素不含摩擦調整剤の例は、一般に、オレイン酸のモノ-、ジ-、及びトリ-エステルを含有し得るモノオレイン酸グリセロール(glycerol monooleate、GMO)として知られている。他の好適な摩擦調整剤は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6723685号に記載されている。
【0106】
アミン性摩擦調整剤は、アミン又はポリアミンを含んでいてもよい。そのような化合物は、直鎖、飽和若しくは不飽和のいずれか、又はそれらの混合物であるヒドロカルビル基を有することができ、約12~約25個の炭素原子を含有していてもよい。好適な摩擦調整剤の更なる例としては、アルコキシル化アミン及びアルコキシル化エーテルアミンが挙げられる。そのような化合物は、直鎖、飽和、不飽和のいずれか、又はそれらの混合物であるヒドロカルビル基を有していてもよい。これらは、約12~約25個の炭素原子を含有していてもよい。例としては、エトキシル化アミン及びエトキシル化エーテルアミンが挙げられる。
【0107】
アミン及びアミドは、それ自体として、又は酸化ホウ素、ハロゲン化ホウ素、メタボレート、ホウ酸又はモノ-、ジ-、若しくはトリ-アルキルボレートなどのホウ素化合物との付加物若しくは反応生成物の形態で使用してもよい。他の好適な摩擦調整剤はその全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6300291号に記載される。
【0108】
摩擦調整剤は、任意選択的に、約0重量%~約10重量%、又は約0.01重量%~約8重量%、又は約0.1重量%~約4重量%などの範囲で存在してもよい。
【0109】
モリブデン含有成分:本明細書の潤滑油組成物はまた、任意選択的に、1つ以上のモリブデン含有化合物を含有してもよい。油溶性モリブデン化合物は、耐摩耗剤、酸化防止剤、摩擦調整剤、又はそれらの混合物の機能的性能を有し得る。油溶性モリブデン化合物には、モリブデンジチオカルバメート、モリブデンジアルキルジチオホスフェート、モリブデンジチオホスフィナート、モリブデン化合物のアミン塩、モリブデンキサンタート、モリブデンチオキサンタート、モリブデンスルフィド、モリブデンカルボキシレート、モリブデンアルコキシド、三核有機モリブデン化合物、及び/又はそれらの混合物が含まれてもよい。硫化モリブデンとしては、二硫化モリブデンが挙げられる。二硫化モリブデンは、安定な分散液の形態であり得る。一実施形態では、油溶性モリブデン化合物は、ジチオカルバミン酸モリブデン、ジアルキルジチオリン酸モリブデン、モリブデン化合物のアミン塩、及びそれらの混合物からなる群から選択され得る。一実施形態では、油溶性モリブデン化合物は、ジチオカルバミン酸モリブデンであり得る。
【0110】
使用され得るモリブデン化合物の好適な例としては、R.T.Vanderbilt Co.,Ltd.からのMolyvan(登録商標)822、Molyvan(登録商標)A、Molyvan(登録商標)2000、及びMolyvan(登録商標)855など、並びにAdeka Corporationから入手可能なAdeka Sakura-Lube(登録商標)S-165、S-200、S-300、S-310G、S-525、S-600、S-700、及びS-710などの商標名で販売されている市販の材料、及びそれらの混合物が挙げられる。好適なモリブデン成分は、US 5,650,381、US RE 37,363 E1、US RE 38,929 E1、及びUS RE 40,595 E1に記載されており、それらの全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0111】
追加的に、モリブデン化合物は、酸性モリブデン化合物であり得る。含まれるものは、モリブデン酸、アンモニウムモリブレート、ナトリウムモリブレート、カリウムモリブレート、並びに他のアルカリ金属モリブレート及び他のモリブデン塩、例えば、水素ナトリウムモリブレート、MoOCl、MoOBr、MoCl、三酸化モリブデン又は類似の酸性モリブデン化合物である。代替的に、組成物は、例えば、米国特許第4,263,152号、同第4,285,822号、同第4,283,295号、同第4,272,387号、同第4,265,773号、同第4,261,843号、同第4,259,195号及び同第4,259,194号、並びに国際公開第94/06897号に記載されているように、塩基性窒素化合物のモリブデン/硫黄錯体によってモリブデンを提供することができ、前述の特許文献は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0112】
別のクラスの好適な有機モリブデン化合物は、三核モリブデン化合物、例えば、式Moの化合物及びそれらの混合物であり、式中、Sは、硫黄を表し、Lは、化合物を油に可溶性又は分散性にするのに十分な数の炭素原子を有する有機基を有する独立して選択された配位子を表し、nは、1~4であり、kは、4~7で変化し、Qは、中性電子供与性化合物、例えば、水、アミン、アルコール、ホスフィン、及びエーテルの群から選択され、zは、0~5の範囲であり、非化学量論値を含む。全ての配位子の有機基の中に、少なくとも25個、少なくとも30個、又は少なくとも35個の炭素原子など、少なくとも21個の総炭素原子が存在していてもよい。追加の好適なモリブデン化合物は、参照により全体が本明細書に組み込まれる米国特許第6,723,685号に記載されている。
【0113】
油溶性モリブデン化合物は、約0.5ppm~約2000ppm、約1ppm~約700ppm、約1ppm~約550ppm、約5ppm~約300ppm、又は約20ppm~約250ppmのモリブデンを提供するのに十分な量で存在し得る。
【0114】
遷移金属含有化合物:別の実施形態では、油溶性化合物は、遷移金属含有化合物又は半金属であってもよい。遷移金属には、チタン、バナジウム、銅、亜鉛、ジルコニウム、モリブデン、タンタル、タングステンなどが含まれ得るが、これらに限定されることはない。好適な半金属には、ホウ素、ケイ素、アンチモン、テルルなどが含まれるが、これらに限定されることはない。
【0115】
一実施形態では、油溶性遷移金属含有化合物は、耐摩耗剤、摩擦調整剤、酸化防止剤、付着制御添加剤、又はこれらの機能のうちの2つ以上として機能してもよい。一実施形態では、油溶性遷移金属含有化合物は、チタン(IV)アルコキシドなどの油溶性チタン化合物であってもよい。本開示の技術の油溶性材料の調製において使用され得るか、又はそのために使用され得るチタン含有化合物の中には、酸化チタン(IV)などの様々なTi(IV)化合物、硫化チタン(IV)、硝酸チタン(IV)、チタン(IV)アルコキシド、例えば、チタンメトキシド、チタンエトキシド、チタンプロポキシド、チタンイソプロポキシド、チタンブトキシド、チタン2-エチルヘキソキシド、及び他のチタン化合物又は錯体、例えば、限定されないが、チタンフェネート、チタンカルボキシレート、例えばチタン(IV)2-エチル-1,3-ヘキサンジオエート又はチタンシトレート又はチタンオレエート;及びチタン(IV)(トリエタノールアミナト)イソプロポキシドがある。開示された技術に包含される他の形態のチタンには、チタンジチオホスフェート(例えば、ジアルキルジチオホスフェート)及びチタンスルホネート(例えば、アルキルベンゼンスルホネート)などのチタンホスフェート、又は一般に、油溶性塩などの塩を形成するチタン化合物と様々な酸物質との反応生成物が含まれる。したがって、チタン化合物は、とりわけ、有機酸、アルコール、及びグリコールから誘導され得る。Ti化合物はまた、Ti-O-Ti構造を含有する二量体又はオリゴマー形態でも存在していてもよい。そのようなチタン材料は、市販されているか、又は当業者に明白である適切な合成技術によって容易に調製することができる。これらは、特定の化合物に依存して、固体又は液体として室温で存在していてもよい。これらは、適切な不活性溶媒中の溶液形態でも提供されてもよい。
【0116】
一実施形態では、チタンは、スクシンイミド分散剤などのTi変性分散剤として供給され得る。そのような材料は、チタンアルコキシドとアルケニル-(又はアルキル)無水コハク酸などのヒドロカルビル置換無水コハク酸との間にチタン混合無水物を形成することによって調製されてもよい。得られたチタネート-スクシネート中間体は、直接使用してもよいし、又は(a)遊離の縮合可能な-NH官能基を有するポリアミンベースのスクシンイミド/アミド分散剤、(b)ポリアミンベースのスクシンイミド/アミド分散剤の成分、すなわち、アルケニル(又はアルキル)無水コハク酸及びポリアミン、(c)置換無水コハク酸とポリオール、アミノアルコール、ポリアミン、又はそれらの混合物との反応によって調製されるヒドロキシ含有ポリエステル分散剤などのいくつかの物質のいずれかと反応させてもよい。代替的に、チタン酸コハク酸塩中間体をアルコール、アミノアルコール、エーテルアルコール、ポリエーテルアルコール若しくはポリオール、又は脂肪酸などの他の薬剤と反応させてもよく、その生成物は、潤滑剤にTiを付与するために直接使用してもよいか、又は上述のようにコハク酸分散剤と更に反応させてもよい。例として、チタン変性分散剤又は中間体を提供するために、テトライソプロピルチタネート1部(モル)をポリイソブテン置換無水コハク酸約2部(モル)と140~150℃で5~6時間反応させてもよい。得られた材料(30g)を、150℃で1.5時間、ポリイソブテン置換無水コハク酸及びポリエチレンポリアミン混合物(127グラム+希釈油)からのスクシンイミド分散剤と更に反応させて、チタン変性スクシンイミド分散剤を生成させてもよい。
【0117】
別のチタン含有化合物は、チタンアルコキシドとC~C25カルボン酸との反応生成物であってもよい。反応生成物は、以下の式によって表されてもよく、
【0118】
【化2】
式中、nは、2、3、及び4から選択される整数であり、Rは、約5~約24個の炭素原子を含有するヒドロカルビル基であり、又は以下の式によって表されてもよく、
【0119】
【化3】
式中、m+n=4であり、nは、1~3の範囲であり、Rは、1~8の範囲の炭素原子を有するアルキル部分であり、Rは、約6~25個の炭素原子を含有するヒドロカルビル基から選択され、R及びRは、同一若しくは異なり、1~6個の炭素原子を含有するヒドロカルビル基から選択され、又はチタン化合物は、以下の式によって表されてもよく、
【0120】
【化4】
式中、xは、0~3の範囲であり、Rは、約6~25個の炭素原子を含有するヒドロカルビル基から選択され、R、及びRは、同一若しくは異なり、約1~6個の炭素原子を含有するヒドロカルビル基から選択され、Rは、H、C~C25のカルボン酸部分のいずれかからなる群から選択される。
【0121】
好適なカルボン酸には、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、オレイン酸、エルカ酸、リノール酸、リノレン酸、シクロヘキサンカルボン酸、フェニル酢酸、安息香酸、ネオデカン酸などが含まれ得るが、これらに限定されることはない。
【0122】
一実施形態において、油溶性チタン化合物は、約0~約3000重量ppmのチタン、又は25~約1500重量ppmのチタン、又は約35~約500重量ppmのチタン、又は約50~約300重量ppmを提供するための量で潤滑油組成物中に存在し得る。
【0123】
粘度指数向上剤:本明細書の潤滑油組成物はまた、任意選択的に、1つ以上の粘度指数向上剤を含有してもよい。好適な粘度指数改善剤には、ポリオレフィン、オレフィンコポリマー、エチレン/プロピレンコポリマー、ポリイソブテン、水素化スチレン-イソプレンポリマー、スチレン/マレイン酸エステルコポリマー、水素化スチレン/ブタジエンコポリマー、水素化イソプレンポリマー、アルファ-オレフィン無水マレイン酸コポリマー、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリアルキルスチレン、水素化アルケニルアリール共役ジエンコポリマー、又はそれらの混合物が含まれ得る。粘度指数向上剤は星型ポリマーを含み得、好適な例は米国公開第2012/0101017 A1号に記載されている。
【0124】
本明細書の潤滑油組成物はまた、任意選択的に、粘度指数改善剤に加えて、又は粘度指数改善剤の代わりに、1つ以上の分散剤粘度指数改善剤も含有し得る。好適な粘度指数改善剤としては、官能化ポリオレフィン、例えば、アシル化剤(無水マレイン酸など)とアミンとの反応生成物で官能化されたエチレン-プロピレンコポリマー、アミンで官能化されたポリメタクリレート、又はアミンと反応させたエステル化無水マレイン酸-スチレンコポリマーが挙げられ得る。
【0125】
粘度指数改善剤及び/又は分散剤粘度指数改善剤の総量は、潤滑油組成物の約0重量%~約20重量%、約0.1重量%~約15重量%、約0.1重量%~約12重量%、又は約0.5重量%~約10重量%であってもよい。
【0126】
他の任意選択の添加剤:他の添加剤は、潤滑流体に必要とされる1つ以上の機能を実行するように選択されてもよい。更に、前述の添加剤のうちの1つ以上が、多官能性であり得、本明細書で記述される機能に追加して機能を提供し得るか、又はそれ以外の機能を提供し得る。
【0127】
本開示に従う潤滑油組成物は、任意選択で他の性能添加剤を含んでもよい。他の性能添加剤は、本開示の特定の添加剤に対する追加であってもよく、並びに/又は金属不活性化剤、粘度指数向上剤、洗浄剤、無灰TBNブースタ、摩擦調整剤、耐摩耗剤、腐食防止剤、防錆剤、分散剤、分散剤粘度指数向上剤、極圧剤、酸化防止剤、泡抑制剤、解乳化剤、乳化剤、流動点降下剤、シール膨潤剤、及びそれらの混合物のうちの1つ以上を含んでいてもよい。典型的には、完全配合潤滑油は、これらの性能添加剤のうちの1つ以上を含有する。
【0128】
好適な金属不活性化剤としては、ベンゾトリアゾールの誘導体(典型的にはトリルトリアゾール)、ジメルカプトチアジアゾール誘導体、1,2,4-トリアゾール、ベンゾイミダゾール、2-アルキルジチオベンゾイミダゾール、又は2-アルキルジチオベンゾチアゾール;アクリル酸エチルとアクリル酸2-エチルヘキシルと任意選択的に酢酸ビニルとのコポリマーを含む泡抑制剤;トリアルキルホスフェート、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド及び(エチレンオキシド-プロピレンオキシド)ポリマーを含む解乳化剤;無水マレイン酸-スチレン、ポリメタクリレート、ポリアクリレート又はポリアクリルアミドのエステルを含む流動点降下剤が挙げられ得る。
【0129】
好適な泡抑制剤としては、シロキサンなどのケイ素ベースの化合物が挙げられる。
【0130】
好適な流動点降下剤は、ポリメチルメタクリレート又はそれらの混合物を含み得る。流動点降下剤は、潤滑油組成物の最終重量に基づいて、約0重量%~約1重量%、約0.01重量%~約0.5重量%、又は約0.02重量%~約0.04重量%を提供するのに十分な量で存在し得る。
【0131】
好適な錆抑制剤は、フェラスメタル表面の腐食を抑制する特性を有する単一の化合物、又は化合物の混合物であり得る。本明細書で有用な錆抑制剤の非限定的な例としては、2-エチルヘキサン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ベヘン酸、及びセロチン酸などの油溶性高分子量有機酸、並びにトール油脂肪酸、オレイン酸、及びリノール酸から生成されたものなどの二量体及び三量体酸を含む油溶性ポリカルボン酸が挙げられる。他の好適な腐食抑制剤には、約600~約3000の分子量範囲の長鎖アルファ、オメガ-ジカルボン酸、及びテトラプロペニルコハク酸、テトラデセニルコハク酸、及びヘキサデセニルコハク酸などの、アルケニル基が約10個以上の炭素原子を含有するアルケニルコハク酸が含まれる。別の有用な種類の酸性腐食抑制剤は、アルケニル基中に約8~約24個の炭素原子を有するアルケニルコハク酸と、ポリグリコールなどのアルコールとの半エステルである。そのようなアルケニルコハク酸の対応する半アミドもまた、有用である。有用な錆抑制剤は、高分子量の有機酸である。
【0132】
防錆剤は、存在する場合、潤滑油組成物の最終重量に基づいて、約0重量%~約5重量%、約0.01重量%~約3重量%、約0.1重量%~約2重量%を提供するのに十分な量で使用され得る。
【0133】
一般的に言えば、本明細書の清浄剤金属を含む好適な潤滑剤は、以下の表に列挙する範囲の添加剤成分を含み得る。
【0134】
【表2】
【0135】
上記各成分のパーセンテージは、最終潤滑油組成物の重量に基づく各成分の重量パーセントを表す。潤滑油組成物の残りは、1つ以上の基油からなる。本明細書に記載の組成物を配合する際に使用される添加剤は、個々に又は様々な部分的な組み合わせで基油にブレンドすることができる。しかしながら、添加剤濃縮物(すなわち、添加剤プラス炭化水素溶媒などの希釈剤)を使用して、成分の全てを同時にブレンドすることが好適であり得る。完全に配合された潤滑剤は、その配合物において必要とされる特徴を供給する分散剤/抑制剤パッケージ又はDIパッケージと本明細書で称される添加剤パッケージを慣用的に含有する。
【0136】
定義
本開示の目的のために、化学元素は、Periodic Table of the Elements,CAS version,Handbook of Chemistry and Physics,75th Edに従って識別される。更に、有機化学の一般原理は、「Organic Chemistry」,Thomas Sorrell,University Science Books,Sausolito:1999、及び「March’s Advanced Organic Chemistry」,5th Ed.,Ed.:Smith,M.B.and March,J.,John Wiley & Sons,New York:2001に記載されており、これらの全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0137】
本明細書に記載されるように、化合物は、上で一般的に例示されるように、又は特定のクラス、サブクラス、及び本開示の種によって例示されるように、1つ以上の置換基で任意選択で置換されてもよい。
【0138】
その内容から特に明らかでない限り、「多量」という用語は、組成物の総重量に対して、50重量パーセント以上、例えば、約80~約98重量パーセントの量を意味すると理解される。また、本明細書で使用されるとき、「少量」という用語は、組成物の総重量に対して50重量パーセント未満の量を意味すると理解される。
【0139】
本明細書で使用されるとき、「ヒドロカルビル基」又は「ヒドロカルビル」という用語は、当業者に周知のその通常の意味で使用される。具体的には、それは、分子の残りに直接結合した炭素原子を有し、主として炭化水素の特性を有する基を指す。ヒドロカルビル基の例としては、(1)炭化水素置換基、すなわち、脂肪族(例えば、アルキル又はアルケニル)置換基、脂環族(例えば、シクロアルキル、シクロアルケニル)置換基、及び芳香族置換、脂肪族置換、並びに脂環族置換された芳香族置換基、並びに環が、分子の別の部分を介して完成する(例えば、2つの置換基が一緒になって脂環族ラジカルを形成する)環状置換基;(2)置換された炭化水素置換基、すなわち、本開示の文脈において、主に炭化水素置換基を変化させない非炭化水素基(例えば、ハロ(特に、クロロ及びフルオロ)、ヒドロキシ、アルコキシ、メルカプト、アルキルメルカプト、ニトロ、ニトロソ、アミノ、アルキルアミノ、及びスルホキシ)を含有する置換基;(3)ヘテロ置換基、すなわち、本開示の文脈において、主に炭化水素の特性を有する一方で、環又は鎖中に炭素以外のものを含有するか、さもなければ炭素原子から構成される置換基、が挙げられる。ヘテロ原子は、硫黄、酸素、及び窒素を含み、ピリジル、フリル、チエニル、及びイミダゾリルなどの置換基を包含する。一般に、ヒドロカルビル基中の炭素原子10個毎に2個以下、又は更なる例として、ただ1個の非炭化水素置換基が存在し、いくつかの実施形態では、ヒドロカルビル基中に非炭化水素置換基は、存在しないであろう。
【0140】
本明細書で使用されるとき、「脂肪族」という用語は、アルキル、アルケニル、アルキニルという用語を包含し、それらの各々は、以下に記載されるように任意選択で置換されている。
【0141】
本明細書で使用されるとき、「アルキル」基は、1~12個(例えば、1~8個、1~6個、又は1~4個)の炭素原子を含有する飽和脂肪族炭化水素基を指す。アルキル基は、直鎖又は分岐鎖であり得る。アルキル基の例には、これらに限定されないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、n-ヘプチル、又は2-エチルヘキシルが挙げられる。アルキル基は、1つ以上の置換基、例えば、ハロ、ホスホ、脂環族[例えば、シクロアルキル又はシクロアルケニル]、ヘテロ脂環族[例えば、ヘテロシクロアルキル又はヘテロシクロアルケニル]、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、アロイル、ヘテロアロイル、アシル[例えば、(脂肪族)カルボニル、(脂環式)カルボニル、又は(ヘテロ脂環式)カルボニル]、ニトロ、シアノ、アミド[例えば、(シクロアルキルアルキル)カルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、アラルキルカルボニルアミノ、(ヘテロシクロアルキル)カルボニルアミノ、(ヘテロシクロアルキルアルキル)カルボニルアミノ、ヘテロアリールカルボニルアミノ、ヘテロアラルキルカルボニルアミノアルキルアミノカルボニル、シクロアルキルアミノカルボニル、ヘテロシクロアルキルアミノカルボニル、アリールアミノカルボニル、又はヘテロアリールアミノカルボニル]、アミノ、[例えば、脂肪族アミノ、脂環式アミノ、又はヘテロ脂環式アミノ]、スルホニル[例えば、脂肪族-SO-]、スルフィニル、スルファニル、スルホキシ、尿素、チオ尿素、スルファモイル、スルファミド、オキソ、カルボキシ、カルバモイル、脂環式オキシ、ヘテロシクロ脂肪族オキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アラルキルオキシ、ヘテロアリールアルコキシ、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、又はヒドロキシで、置換され(すなわち、任意選択で置換され)得る。限定するものではないが、置換アルキルのいくつかの例としては、カルボキシアルキル(例えば、HOOC-アルキル、アルコキシカルボニルアルキル、及びアルキルカルボニルオキシアルキル)、シアノアルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、アシルアルキル、アラルキル、(アルコキシアリール)アルキル、(スルホニルアミノ)アルキル(例えば、(アルキル-SO-アミノ)アルキル)、アミノアルキル、アミドアルキル、(脂環式)アルキル、又はハロアルキルが挙げられる。
【0142】
本明細書中で使用される場合、「アルケニル」基とは、2~8個(例えば、2~12、2~6、又は2~4個)の炭素原子及び少なくとも1つの二重結合を含有する脂肪族炭素基を指す。アルキル基のように、アルケニル基は、直鎖又は分岐鎖であり得る。アルケニル基の例には、これらに限定されないが、アリル、イソプレニル、2-ブテニル、及び2-ヘキセニルが挙げられる。アルケニル基は、1つ以上の置換基、例えば、ハロ、ホスホ、脂環族[例えば、シクロアルキル又はシクロアルケニル]、ヘテロ脂環族[例えば、ヘテロシクロアルキル又はヘテロシクロアルケニル]、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、アロイル、ヘテロアロイル、アシル[例えば、(脂肪族)カルボニル、(脂環式)カルボニル、又は(ヘテロ脂環式)カルボニル]、ニトロ、シアノ、アミド[例えば、(シクロアルキルアルキル)カルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、アラルキルカルボニルアミノ、(ヘテロシクロアルキル)カルボニルアミノ、(ヘテロシクロアルキルアルキル)カルボニルアミノ、ヘテロアリールカルボニルアミノ、ヘテロアラルキルカルボニルアミノアルキルアミノカルボニル、シクロアルキルアミノカルボニル、ヘテロシクロアルキルアミノカルボニル、アリールアミノカルボニル、又はヘテロアリールアミノカルボニル]、アミノ、[例えば、脂肪族アミノ、脂環式アミノ、ヘテロ脂環式アミノ、又は脂肪族スルホニルアミノ]、スルホニル[例えば、アルキル-SO-、脂環式-SO-、又はアリール-SO-]、スルフィニル、スルファニル、スルホキシ、尿素、チオ尿素、スルファモイル、スルファミド、オキソ、カルボキシ、カルバモイル、脂環式オキシ、ヘテロ脂環式オキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アラルキルオキシ、ヘテロアラルコキシ、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、又はヒドロキシで、任意選択で置換され得る。限定するものではないが、置換アルケニルのいくつかの例としては、シアノアルケニル、アルコキシアルケニル、アシルアルケニル、ヒドロキシアルケニル、アラルケニル、(アルコキシアリール)アルケニル、(スルホニルアミノ)アルケニル(例えば、(アルキル-SO-アミノ)アルケニル)、アミノアルケニル、アミドアルケニル、(脂環式)アルケニル、又はハロアルケニルが挙げられる。
【0143】
本明細書で使用されるとき、「アルキニル」基は、2~8個(例えば、2~12、2~6、又は2~4)の炭素原子を含有し、少なくとも1つの三重結合を有する脂肪族炭素基をいう。アルキニル基は、直鎖又は分岐鎖であり得る。アルキニル基の例としては、これらに限定されないプロパルギル及びブチニルが挙げられる。アルキニル基は、1つ以上の置換基で、例えば、アロイル、ヘテロアロイル、アルコキシ、シクロアルキルオキシ、ヘテロシクロアルキルオキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アラルキルオキシ、ニトロ、カルボキシ、シアノ、ハロ、ヒドロキシ、スルホ、メルカプト、スルファニル[例えば、脂肪族スルファニル又は脂環式スルファニル]、スルフィニル[例えば、脂肪族スルフィニル又は脂環式フィニル]、スルホニル[例えば、脂肪族-SO-、脂肪族アミノ-SO-、又は脂環式-SO-]、アミド[例えば、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、アルキルカルボニルアミノ、シクロアルキルアミノカルボニル、ヘテロシクロアルキルアミノカルボニル、シクロアルキルカルボニルアミノ、アリールアミノカルボニル、アリールカルボニルアミノ、アラルキルカルボニルアミノ、(ヘテロシクロアルキル)カルボニルアミノ、(シクロアルキルアルキル)カルボニルアミノ、ヘテロアラルキルカルボニルアミノ、ヘテロアリールカルボニルアミノ、又はヘテロアリールアミノカルボニル]、尿素、チオ尿素、スルファモイル、スルファミド、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、脂環式、ヘテロ脂環式、アリール、ヘテロアリール、アシル[例えば、(脂環式)カルボニル又は(ヘテロ脂環式)カルボニル]、アミノ[例えば、脂肪族アミノ]、スルホキシ、オキソ、カルボキシ、カルバモイル、(脂環式)オキシ、(ヘテロ脂環式)オキシ、又は(ヘテロアリール)アルコキシで、任意選択で置換されることができる。
【0144】
本明細書で使用されるとき、「アミノ」基とは、-NRを指し、式中、R及びRの各々は独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、(シクロアルキル)アルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクロアルキル、(ヘテロシクロアルキル)アルキル、ヘテロアリール、カルボキシ、スルファニル、スルフィニル、スルホニル、(アルキル)カルボニル、(シクロアルキル)カルボニル、((シクロアルキル)アルキル)カルボニル、アリールカルボニル、(アラルキル)カルボニル、(ヘテロシクロアルキル)カルボニル、((ヘテロシクロアルキル)アルキル)カルボニル、(ヘテロアリール)カルボニル、又は(ヘテロアラルキル)カルボニルであり、それらの各々は、本明細書に定義されており、任意選択で置換されている。アミノ基の例には、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、又はアリールアミノが挙げられる。「アミノ」という用語が末端基(例えば、アルキルカルボニルアミノ)ではない場合、それは-NR-によって表される。Rは、上記で定義されたものと同義である。
【0145】
本明細書で使用されるとき、「シクロアルキル」基は、3~10個(例えば、5~10個)の炭素原子の飽和炭素環式単環式又は二環式(融合又は架橋)環を指す。シクロアルキル基の例には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、アダマンチル、ノルボルニル、キュービル、オクタヒドロインデニル、デカヒドロナフチル、ビシクロ[3.2.1]オクチル、ビシクロ[2.2.2]オクチル、ビシクロ[3.3.1]ノニル、ビシクロ[3.3.2.]デシル、ビシクロ[2.2.2]オクチル、アダマンチル、又は((アミノカルボニル)シクロアルキル)シクロアルキルが挙げられる。
【0146】
本明細書で使用されるとき、「ヘテロシクロアルキル」基は、3~10員の単環式又は二環式(融合又は架橋)(例えば、5~10員の単環式又は二環式)飽和環構造を指し、環原子の1つ以上は、ヘテロ原子(例えば、N、O、S、又はそれらの組み合わせ)である。ヘテロシクロアルキル基の例としては、ピペリジル、ピペラジル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロフリル、1,4-ジオキソラニル、1,4-ジチアニル、1,3-ジオキソラニル、オキサゾリジル、イソオキサゾリジル、モルホリニル、チオモルホリル、オクタヒドロベンゾフリル、オクタヒドロクロメニル、オクタヒドロチオクロメニル、オクタヒドロインドリル、オクタヒドロピリンジニル、デカヒドロキノリニル、オクタヒドロベンゾ[b]チオフェニル、2-オキサ-ビシクロ[2.2.2]オクチル、1-アザ-ビシクロ[2.2.2]オクチル、3-アザ-ビシクロ[3.2.1]オクチル、及び2,6-ジオキサ-トリシクロ[3.3.1.0]ノニルが、挙げられる。単環式ヘテロシクロアルキル基は、ヘテロアリール類として分類されるであろうテトラヒドロイソキノリンのような構造を形成するためにフェニル部分と融合させることができる。
【0147】
本明細書で使用される「ヘテロアリール」基は、単環式、二環式又は4~15個の環原子を有する三環式環系を指し、1個以上の環原子がヘテロ原子であり(例えば、N、O、S、又はそれらの組み合わせ)、単環式環系は、香族であるか、又は二環式又は三環式環系中の環の少なくとも1つは芳香族である。ヘテロアリール基は、2~3の環を有するベンゾ融合環系を含む。例えば、ベンゾ縮合基は、1又は2個の4~8員複素環式脂肪族部分(例えば、インドリジル、インドリル、イソインドリル、3H-インドリル、インドリニル、ベンゾ[b]フリル、ベンゾ[b]チオフェニル、キノリニル又はイソキノリニル)と縮合したベンゾを含む。ヘテロアリールのいくつかの例は、ピリジル、1H-インダゾリル、フリル、ピロリル、チエニル、チアゾリル、オキサゾリル、イミダゾリル、テトラゾリル、ベンゾフリル、イソキノリニル、ベンズチアゾリル、キサンテン、チオキサンテン、フェノチアジン、ジヒドロインドール、ベンゾ[1,3]ジオキソール、ベンゾ[b]フリル、ベンゾ[b]チオフェニル、インダゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリル、プリル、シンノリル、キノリル、キナゾリル、シンノリル、フタラジル、キナゾリル、キノキサリル、イソキノリル、4H-キノリジル、ベンゾ-1,2,5-チアジアゾール、又は1,8-ナフチリジルである。
【0148】
限定するものではないが、単環式ヘテロアリールには、フリル、チオフェニル、2H-ピロリル、ピロリル、オキサゾリル、タゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、1,3,4-チアジアゾリル、2H-ピラニル、4-H-プラニル、ピリジル、ピリダジル、ピリミジル、ピラゾリル、ピラジル、又は1,3,5-トリアジル。単環式ヘテロアリール類は、標準的な化学命名法に従って番号付けされている。
【0149】
二環式ヘテロアリールとしては、インドリジル、インドリル、イソインドリル、3H-インドリル、インドリニル、ベンゾ[b]フリル、ベンゾ[b]チオフェニル、キノリニル、イソキノリニル、インドリジニル、イソインドリル、インドリル、ベンゾ[b]フリル、ベキソ[b]が挙げられる。チオフェニル、インダゾリル、ベンズイミダジル、ベンズチアゾリル、プリニル、4H-キノリジル、キノリル、イソキノリル、シンノリル、フタラジル、キナゾリル、キノキサリル、1,8-ナフチリジル、又はプテリジル。二環式ヘテロアリールは、標準的な化学命名法に従って番号付けされている。
【0150】
本明細書で使用される場合、「処理率」という用語は、潤滑及び冷却流体中の成分の重量パーセントを指す。
【0151】
重量平均分子量(molecular weight、Mw)及び数平均分子量(Mn)は、Watersから得られるゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)機器又は同様の機器と、Waters Empower Software又は同様のソフトウェアとを用いて決定され得る。GPC機器には、Waters分離モジュール及びWaters屈折率検出器(又は同様の任意選択的な機器)を設けることができる。GPCの作動条件は、ガードカラム、4つのAgilent PLgelカラム(長さ300×7.5mm、粒子サイズ5μ、及び細孔サイズの範囲100~10000Å)、約40℃のカラム温度を含み得る。非安定化HPLCグレードのテトラヒドロフラン(tetrahydrofuran、THF)は、1.0mL/分の流量で溶媒として使用され得る。GPC機器は、960~1,568,000g/モルの範囲にわたる狭い分子量分布を有する市販のポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)標準で較正され得る。較正曲線は、500g/モル未満の質量を有する試料について外挿することができる。試料及びPMMA標準を、THFに溶解し、0.1~0.5重量%の濃度で調製し、濾過せずに使用することができる。GPC測定は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,266,223号にも記載されている。GPC法は、更に分子量分布情報を提供する。例えば、参照により本明細書に組み込まれるW.W.Yau,J.J.Kirkland and D.D.Bly,「Modern Size Exclusion Liquid Chromatography」,John Wiley and Sons,New York,1979も参照されたい。
【0152】
実施例
本開示及びその多くの利点のより良い理解は、以下の実施例を用いて明らかにされ得る。以下の実施例は例示的なものであり、範囲又は趣旨のいずれにおいてもそれを限定するものではない。当業者であれば、これらの実施例に記載されている構成要素、方法、ステップ、及びデバイスの変形形態を使用できることを容易に理解するであろう。特に明記しない限り、又は以下の実施例及び本開示を通して考察の文脈から明らかでない限り、本開示に記載する全ての百分率、比、及び部は、重量基準である。
【0153】
実施例1
潤滑組成物を、GFC Lu-43-A-11に準拠して144時間酸化した後、粘度安定性について評価した。この実施例について評価した潤滑組成物は、約10.8cStの出発KV100を達成するために、以下の表3の流体関係を提供する量のスルホネート清浄剤及びフェネート清浄剤並びにホウ素化分散剤と、分散剤、耐摩耗性添加剤、アミン性酸化防止剤、フェノール性酸化防止剤、モリブデン性酸化防止剤、摩擦調整剤、消泡剤、流動点降下剤、粘度調整剤、及び残部グループIII基油を含む同じの添加剤パッケージと、を含んでいた。(KV100はASTM D445に準拠して測定した。)表4に酸化結果を提示する。
【0154】
【表3】
【0155】
【表4】
バイオ燃料はGOPSA10LUB(B10)であった。
【0156】
実施例2
実施例1の清浄剤及びホウ素化分散剤、並びに約0.4重量パーセントの硫化オレフィンを含む更なる潤滑組成物を、144時間後のGFC Lu-43-A-11に準拠して酸化粘度安定性について評価した。この実施例の潤滑剤は、約10.5cStのKV100を達成するために、酸化防止剤、耐摩耗添加剤、フェノール性酸化防止剤、モリブデン性酸化防止剤、摩擦調整剤、消泡剤、流動点降下剤、粘度調整剤、及びグループIII基油の残部の同じ添加剤パッケージに加えて、表5の流体関係を含む。(ASTM D445に準拠して測定したKV100。)表6に酸化結果を提示する。
【0157】
【表5】
【0158】
【表6】
バイオ燃料はGOPSA10LUB(B10)であった。
**1000%の粘度増加は、測定するには粘度が高すぎる試料を反映する。
【0159】
図1図3は、記載された清浄剤金属量及び様々な関係が満たされる場合、144時間にわたる酸化後の本明細書の流体の劇的な粘度安定性を示す。
【0160】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用されているように、単数形「a」、「an」、及び「the」は、明示的かつ明確に1つの指示対象に限定されない限り、複数の指示対象を含むことに留意されたい。したがって、例えば、「酸化防止剤」への言及は、2つ以上の異なる酸化防止剤を含む。本明細書で使用される場合、「含む」という用語及びその文法的変形は、リスト内の項目の列挙がリストの項目に置換又は追加され得る他の類似の項目を除外しないように非限定的であることを意図する。
【0161】
本明細書及び添付の特許請求の範囲の目的のために、別段の指示がない限り、本明細書及び特許請求の範囲において使用される量、パーセンテージ、又は割合、及び他の数値を表す全ての数は、全ての場合において、「約」という用語によって修飾されるものとして理解されるべきである。したがって、反対の指示がない限り、以下の明細書及び添付の特許請求の範囲に記載される数値パラメータは、本開示によって得ようとする所望の特性に応じて変化し得る近似値である。最低限、特許請求の範囲の範囲に対する均等論の適用を制限する試みとしてではなく、各々の数値パラメータは少なくとも、報告された有効数字の数の観点から及び通常の丸め技術を適用することによって解釈されるべきである。
【0162】
本明細書に開示される各成分、化合物、置換基、又はパラメータは、単独で、又は本明細書に開示されるありとあらゆる他の成分、化合物、置換基、若しくはパラメータのうちの1つ以上との組み合わせでの使用について開示されていると解釈されるべきであることを理解されたい。
【0163】
本明細書に開示される各範囲は、同じ有効数字の数を有する開示範囲内の各特定値の開示として解釈されるべきであることを更に理解されたい。したがって、例えば、1~4の範囲は、1、2、3、及び4の値だけでなく、そのような値の任意の範囲の明確な開示として解釈されるべきである。
【0164】
本明細書に開示される各範囲の各下限が、同じ成分、化合物、置換基、又はパラメータについて本明細書に開示される各範囲の各上限及び各範囲内の各特定値と組み合わせて開示されると解釈されるべきであることを更に理解されたい。したがって、本開示は、各範囲の各下限を各範囲の各上限と、若しくは各範囲内の各特定値と組み合わせることによって、又は各範囲の各上限を各範囲内の各特定値と組み合わせることによって導出される全ての範囲の開示として解釈されるべきである。すなわち、広い範囲内の終点値の間の任意の範囲も本明細書において考察されることもまた更に理解される。したがって、1~4の範囲は、1~3、1~2、2~4、2~3などの範囲をも意味する。
【0165】
更に、説明又は実施例において開示される成分、化合物、置換基、又はパラメータの特定量/値は、範囲の下限又は上限のいずれかの開示として解釈されるべきであり、したがって、本出願の他の個所で開示される同じ成分、化合物、置換基、又はパラメータについての範囲の任意の他の下限若しくは上限又は特定量/値と組み合わせて、その成分、化合物、置換基、又はパラメータについての範囲を形成することができる。
【0166】
特定の実施形態について説明してきたが、出願人ら若しくは他の当業者にとって現在予想されていない、又は現在予想することができない代替、修正、変形、改善、及び実質的な同等物が現れ得る。したがって、出願された添付の特許請求の範囲、及び修正され得る添付の特許請求の範囲は、そのような全ての代替、修正、変形、改善、及び実質的な同等物を包含することを意図している。
図1
図2
図3