(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】炉熱予測装置および該方法ならびに炉熱制御案内装置および該方法
(51)【国際特許分類】
C21B 7/24 20060101AFI20241022BHJP
C21B 5/00 20060101ALI20241022BHJP
F27D 19/00 20060101ALI20241022BHJP
F27B 1/28 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
C21B7/24
C21B5/00 323
F27D19/00 A
F27B1/28
(21)【出願番号】P 2023172936
(22)【出願日】2023-10-04
(62)【分割の表示】P 2020027933の分割
【原出願日】2020-02-21
【審査請求日】2023-10-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100111453
【氏名又は名称】櫻井 智
(72)【発明者】
【氏名】加茂 和史
(72)【発明者】
【氏名】楢崎 博司
(72)【発明者】
【氏名】大谷 拓也
(72)【発明者】
【氏名】笠井 昭人
(72)【発明者】
【氏名】燒谷 将大
(72)【発明者】
【氏名】野澤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】光岡 那由多
(72)【発明者】
【氏名】前田 知幸
【審査官】池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-145520(JP,A)
【文献】特開昭60-248804(JP,A)
【文献】特開2015-117431(JP,A)
【文献】特開2019-019385(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0093186(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21B 5/00-7/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉熱を予測する炉熱予測装置であって、
所定時点から所定過去時間までにおける過去実績データに基づいて、炉熱の変化量を求める炉熱モデルを逐次生成する炉熱モデル生成部と、
前記炉熱モデル生成部で生成した炉熱モデルを用いて前記所定時点から所定時間経過後における炉熱の変化量を求める炉熱変化量処理部とを備え、
前記炉熱モデルは、次式1および次式2によって表され、
前記炉熱モデル生成部は、前記過去実績データによる炉熱の変化量と、前記過去実績データに基づき前記炉熱モデルで求めた炉熱の変化量との差分を用いて表される目的関数が最小となるように、パラメータθ
i,1
、θ
i,2
、θ
i,3
を求めることによって、前記炉熱モデルを生成する、
炉熱予測装置。
【数1】
【数2】
ここで、式では文字の上に付された符号を上付きで表記するとして、△Q
~
i(θ
i、t)は、炉熱の変化量であり、iは、炉熱に影響を与える、予め設定された複数の所定の設定原因因子を表し、
i=1が送風温度熱量を表し、i=2が送風湿度熱量を表し、i=3が投入還元剤燃焼熱量を表し、i=4が下部投入還元剤燃焼熱量を表し、i=5が炉壁抜熱量を表し、i=6がソリューションロス熱量を表し、前記式1および式2には、1、2、3、4、5、6のうちの少なくともいずれかがiとして用いられ、θ
i、jは、炉熱モデルのパラメータを表し、θ
i、1が定数倍ゲインのパラメータを表し、θ
i、2が時間遅れのパラメータのうち、遅延オフセットのサブパラメータを表し、θ
i、3が時間遅れのパラメータのうち、1次遅れの過渡時間のサブパラメータを表す。
【請求項2】
前記炉熱モデル生成部は、前記所定時点に時間的に近いほど大きな値の重みを付けて前記過去実績データを用いる、
請求項1に記載の炉熱予測装置。
【請求項3】
炉熱を予測する炉熱予測装置であって、
所定時点から所定過去時間までにおける過去実績データに基づいて、炉熱の変化量を求める炉熱モデルを逐次生成する炉熱モデル生成部と、
前記炉熱モデル生成部で生成した炉熱モデルを用いて前記所定時点から所定時間経過後における炉熱の変化量を求める炉熱変化量処理部とを備え、
前記炉熱モデルは、次式1および次式2によって表され、
前記炉熱モデル生成部は、
次式3を解いてパラメータ
θ
i,1
、θ
i,2
、θ
i,3
を求めることによって、前記炉熱モデルを生成する、
炉熱予測装置。
【数3】
【数4】
【数5】
ここで、θについてのargmin(A)は、Aを最小化する最適なθを求める演算子であり、式では文字の上に付された符号を上付きで表記するとして、△Q
~
i
(θ
i
、t)は、炉熱の変化量であり、iは、炉熱に影響を与える、予め設定された複数の所定の設定原因因子を表し、i=1が送風温度熱量を表し、i=2が送風湿度熱量を表し、i=3が投入還元剤燃焼熱量を表し、i=4が下部投入還元剤燃焼熱量を表し、i=5が炉壁抜熱量を表し、i=6がソリューションロス熱量を表し、前記式1ないし式3には、1、2、3、4、5、6のうちの少なくともいずれかがiとして用いられ、θ
i、j
は、炉熱モデルのパラメータを表し、θ
i、1
が定数倍ゲインのパラメータを表し、θ
i、2
が時間遅れのパラメータのうち、遅延オフセットのサブパラメータを表し、θ
i、3
が時間遅れのパラメータのうち、1次遅れの過渡時間のサブパラメータを表し、ω(t)は、時点tの重みであり、θ
,k
=[θ
1,k
、θ
2,k
、θ
3,k
、θ
4,k
、θ
5,k
、θ
6,k
]であり、変数αは、過去に求めた定数倍ゲインのパラメータにおける過去時点、および、過去に求めた時間遅れのパラメータにおける過去時点を設定する値であり、θ
,k
-α
は、αによって定まる前記過去時点で求めたθ
,k
を指し。λ
k
は、所定の係数である。
【請求項4】
前記所定時点から第2所定過去時間までにおける過去実績データに基づいて、
炉壁抜熱量を求める抜熱量因子モデルおよびソリューションロス熱量を求めるソルロス因子モデルのうちの少なくとも一方の因子モデルを生成する因子モデル生成部をさらに備え、
前記炉熱変化量処理部は、前記因子モデル生成部で生成した因子モデル
を用いて
炉壁抜熱量およびソューションロス熱量のうちの少なくとも一方を前記所定時点で予測して求めてから、前記炉熱モデル生成部で生成した炉熱モデルを用いて前記所定時点から所定時間経過後における炉熱の変化量を求める、
請求項1ないし請求項
3の何れか1項に記載の炉熱予測装置。
【請求項5】
炉熱を予測する炉熱予測方法であって、
所定時点から所定過去時間までにおける過去実績データに基づいて、炉熱の変化量を求める炉熱モデルを逐次生成する炉熱モデル生成工程と、
前記炉熱モデル生成工程で生成した炉熱モデルを用いて前記所定時点から所定時間経過後における炉熱の変化量を求める炉熱変化量処理工程とを備え、
前記炉熱モデルは、次式1および次式2によって表され、
前記炉熱モデル生成工程は、前記過去実績データによる炉熱の変化量と、前記過去実績データに基づき前記炉熱モデルで求めた炉熱の変化量との差分を用いて表される目的関数が最小となるように、パラメータθ
i,1
、θ
i,2
、θ
i,3
を求めることによって、前記炉熱モデルを生成する、
炉熱予測方法。
【数6】
【数7】
ここで、式では文字の上に付された符号を上付きで表記するとして、△Q
~
i(θ
i、t)は、炉熱の変化量であり、iは、炉熱に影響を与える、予め設定された複数の所定の設定原因因子を表し、
i=1が送風温度熱量を表し、i=2が送風湿度熱量を表し、i=3が投入還元剤燃焼熱量を表し、i=4が下部投入還元剤燃焼熱量を表し、i=5が炉壁抜熱量を表し、i=6がソリューションロス熱量を表し、前記式1および式2には、1、2、3、4、5、6のうちの少なくともいずれかがiとして用いられ、θ
i、jは、炉熱モデルのパラメータを表し、θ
i、1が定数倍ゲインのパラメータを表し、θ
i、2が時間遅れのパラメータのうち、遅延オフセットのサブパラメータを表し、θ
i、3が時間遅れのパラメータのうち、1次遅れの過渡時間のサブパラメータを表す。
【請求項6】
請求項1ないし請求項
4の何れか1項に記載の炉熱予測装置と、
前記炉熱モデル生成部で生成した炉熱モデルを用いて予測時点での炉熱の変化量を求め、前記求めた予測時点での炉熱の変化量および現時点での炉熱に基づいて、炉熱を変更するための操業条件を案内する案内部とを備える、
炉熱制御案内装置。
【請求項7】
請求項
5に記載の炉熱予測方法と、
前記炉熱モデル生成工程で生成した炉熱モデルを用いて予測時点での炉熱の変化量を求め、前記求めた予測時点での炉熱の変化量および現時点での炉熱に基づいて、炉熱を変更するための操業条件を案内する案内工程とを備える、
炉熱制御案内方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高炉の炉熱を予測する炉熱予測装置および炉熱予測方法、ならびに、炉熱制御のための操業条件を案内する炉熱制御案内装置および炉熱制御案内方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高炉の炉熱として代表される高炉の溶銑温度は、溶銑の品質を維持する上で重要であり、一般に、送風温度、送風湿度、送風量、微粉炭吹込み量およびコークス比等の操業条件を操作(変更、調整、制御)することで、予め設定された所定の規定範囲内になるように制御される。しかしながら、大きなプラントの高炉では、操業条件を操作しても、直ちに溶銑温度が変更されるわけではなく、溶銑温度の変化は、数時間(例えば2時間)以上経過した後に現れる。このため、いわゆるフィードバック制御が難しく、溶銑温度を安定化させるために、数時間先の溶銑温度の予測が要望されており、例えば、特許文献1に提案されている。
【0003】
この特許文献1に開示された高炉炉熱予測装置は、高炉の炉熱を溶銑温度として予測する装置であり、高炉の操業条件の実績値及び該操業条件で高炉の操業を行った際の溶銑温度の実績値に関する情報を含む実績プロセスデータの各実績値について、第1の所定時間前までのデータを抽出して実績データセットを作成するデータ展開部と、前記実績データセットを用いて各実績値の時間変化量を算出するデータ差分値算出部と、第2の所定時間分の各実績値の時間変化量のデータを抽出して時間変化量データセットを作成するデータ差分値展開部と、前記時間変化量データセット内の複数の操業条件の実績値の時間変化量について、溶銑温度の予測時点における高炉の操業条件の時間変化量に対する類似度を算出する類似度算出部と、前記時間変化量データセット内の操業条件の実績値の時間変化量と前記類似度算出部によって算出された類似度とを用いて、高炉の操業条件の時間変化量と溶銑温度の時間変化量との関係を表す溶銑温度の時間変化量の予測式を作成する炉熱予測式作成部と、前記炉熱予測式作成部によって作成された予測式に予測時点における高炉の操業条件の時間変化量を代入することによって、予測時点における溶銑温度の時間変化量を予測する炉熱予測部と、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1に開示された高炉炉熱予測装置は、時間変化量で類似する時間変化量データセットに基づいて予測式を求め、予測時点における溶銑温度の時間変化量を予測している。ところで、物理的な関係に基づいて予測式を求める場合、予測式は、いずれの時間変化量データセットを用いても同一となるはずである。実際には、前記物理的な関係に含まれない未観測因子が存在し、前記特許文献1に開示された高炉炉熱予測装置は、前記未観測因子を、時間変化量で類似する時間変化量データセットに基づいて予測式を求めことで、予測式に吸収している。しかしながら、高炉は、複雑で非常に大きな系であるため、時間変化量で類似するからと言って高炉の炉況(高炉の状態)も類似するとは限らず、すなわち未観測因子が一致しているとは限らない。特に、炉熱が低下するような異常状態では、その傾向が顕著であると考えられる。そのため、予測時点とは未観測因子が異なる期間のデータに基づいて予測式を求めて予測時点における溶銑温度の変化量を予測してしまう虞がある。
【0006】
本発明は、上述の事情に鑑みて為された発明であり、その目的は、より精度良く高炉の炉熱を予測できる炉熱予測装置および炉熱予測方法、ならびに、前記炉熱予測装置および前記炉熱予測方法それぞれを用いた、炉熱制御のための操業操作を案内する炉熱制御案内装置および炉熱制御案内方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、種々検討した結果、上記目的は、以下の本発明により達成されることを見出した。すなわち、本発明の一態様にかかる炉熱予測装置は、炉熱を予測する装置であって、所定時点から所定過去時間までにおける過去実績データに基づいて、炉熱の変化量を求める炉熱モデルを逐次生成する炉熱モデル生成部と、前記炉熱モデル生成部で生成した炉熱モデルを用いて前記所定時点から所定時間経過後における炉熱の変化量を求める炉熱変化量処理部とを備え、前記炉熱モデルは、後述の式2および式3によって表される。好ましくは、上述の炉熱予測装置において、前記所定過去時間は、炉熱に影響を与える、予め設定された所定の未観測因子が略一定と想定される時間である。好ましくは、前記所定過去時間は、24時間、48時間および72時間のうちの何れかである。好ましくは、上述の炉熱予測装置において、前記所定時間は、前記所定時点から前記所定過去時間までにおける前記過去実績データに基づいて求められた前記2個のパラメータが略有効(略無変化)と想定される時間である。好ましくは、前記所定時間は、3時間、5時間および6時間のうちの何れかである。好ましくは、上述の炉熱予測装置において、前記炉熱変化量処理部で求めた炉熱の変化量および前記所定時点の炉熱に基づいて、前記所定時点から所定時間経過後における炉熱を求める炉熱予測処理部をさらに備える。
【0008】
高炉の炉熱に影響する未観測因子は、高炉が非常に大きな系であるため、例えば十数時間または数十時間等の、連続操業に対する比較的短い期間、急激に変化せずに略一定であると考えられる。上記炉熱予測装置は、未観測因子が炉熱に与える影響を、時間遅れθi、2、θi、3および定数倍ゲインθi、1の2個のパラメータで吸収し、所定時点から所定過去時間までにおける過去実績データに基づいて炉熱モデルを生成して前記所定時点から所定時間経過後における炉熱の変化量を求めるので、前記炉熱モデルおよび前記所定時間経過後における炉熱の変化量を、未観測因子が略一定であると考えられる期間内で求められるから、より精度良く高炉の炉熱を予測できる。
【0009】
他の一態様では、上述の炉熱予測装置において、前記炉熱モデル生成部は、前記所定時点に時間的に近いほど大きな値の重みを付けて前記過去実績データを用いる。
【0010】
上述のように、所定期間では未観測因子が略一定であると考えられるが、一方、前記未観測因子が微小変化もせずに全く変化しないとも考え難い。上記炉熱予測装置は、所定時点に時間的に近いほど大きな値の重みを付けて過去実績データを用いるので、前記所定時点に近い未観測因子の影響を炉熱モデルに大きく反映できるから、より精度良く高炉の炉熱を予測できる。
【0011】
他の一態様では、これら上述の炉熱予測装置において、前記炉熱モデル生成部は、前記過去実績データによる炉熱の変化量と、前記過去実績データに基づき前記炉熱モデルで求めた炉熱の変化量との差分を用いて表される目的関数が最小となるように、前記パラメータを求めることによって、前記炉熱モデルを生成する。
【0012】
このような炉熱予測装置は、パラメータを適切に求めることができる。
【0013】
他の一態様では、上述の炉熱予測装置において、前記炉熱モデル生成部は、時間遅れのパラメータを所定時間間隔で求め、過去に求めた定数倍ゲインのパラメータと現時点で予測した定数倍ゲインのパラメータとの第2差分を前記目的関数に加算する。
【0014】
このような炉熱予測装置は、過去に求めた定数倍ゲインのパラメータと現時点で予測した定数倍ゲインのパラメータとの第2差分を考慮するので、パラメータが偶発的に大きく(あるいは小さく)求められてしまうケースを回避でき、より適切な炉熱モデルを生成できる。
【0015】
他の一態様では、上述の炉熱予測装置において、前記炉熱モデル生成部は、時間遅れのパラメータを所定時間間隔で求め、過去に求めた時間遅れのパラメータと現時点で予測した時間遅れのパラメータとの第3差分を小さくなるようにして前記時間遅れのパラメータを求める。
【0016】
このような炉熱予測装置は、過去に求めた時間遅れのパラメータと現時点で予測した時間遅れのパラメータとの第3差分を小さくなるようにして前記時間遅れのパラメータを求めるので、パラメータが偶発的に大きく(あるいは小さく)求められてしまうケースを回避でき、より適切な炉熱モデルを生成できる。
【0017】
他の一態様では、これら上述の炉熱予測装置において、前記炉熱モデルは、炉熱に影響を与える、予め設定された複数の所定の設定原因因子に関する関数でさらに表され、前記所定時点から第2所定過去時間までにおける過去実績データに基づいて、前記複数の設定原因因子のうちの少なくとも1つの設定原因因子を求める因子モデルを生成する因子モデル生成部をさらに備え、前記炉熱変化量処理部は、前記因子モデル生成部で生成した因子モデルをさらに用いて前記所定時点から所定時間経過後における炉熱の変化量を求める。好ましくは、上述の炉熱予測装置において、前記設定原因因子は、炉壁から放射される熱の熱量である炉壁抜熱量およびソリューションロス反応による熱量であるソリューションロス熱量を含み、前記因子モデル生成部は、前記炉壁抜熱量を求める抜熱量因子モデルおよび前記ソリューションロス熱量を求めるソルロス因子モデルそれぞれを生成する。好ましくは、上述の炉熱予測装置において、前記因子モデルは、自己相関を用いた時系列モデルである。
【0018】
このような炉熱予測装置は、炉熱モデル生成部で生成した炉熱モデルおよび因子モデル生成部で生成した因子モデルを用いて前記所定時点から所定時間経過後における炉熱の変化量を求めるので、設定原因因子の変化を考慮でき、より精度良く高炉の炉熱を予測できる。
【0019】
本発明の他の一態様にかかる炉熱予測方法は、炉熱を予測する方法であって、所定時点から所定過去時間までにおける過去実績データに基づいて、炉熱の変化量を求める炉熱モデルを逐次生成する炉熱モデル生成工程と、前記炉熱モデル生成工程で生成した炉熱モデルを用いて前記所定時点から所定時間経過後における炉熱の変化量を求める炉熱変化量処理工程とを備え、前記炉熱モデルは、後述の式2および式3によって表される。
【0020】
このような炉熱予測方法は、未観測因子が炉熱に与える影響を、時間遅れθi、2、θi、3および定数倍ゲインθi、1の2個のパラメータで吸収し、所定時点から所定過去時間までにおける過去実績データに基づいて炉熱モデルを生成して前記所定時点から所定時間経過後における炉熱の変化量を求めるので、前記炉熱モデルおよび前記所定時間経過後における炉熱の変化量を、未観測因子が略一定であると考えられる期間内で求められるから、より精度良く高炉の炉熱を予測できる。
【0021】
本発明の他の一態様にかかる炉熱制御案内装置は、これら上述の何れかの炉熱予測装置と、前記炉熱モデル生成部で生成した炉熱モデルを用いて予測時点での炉熱の変化量を求め、前記求めた予測時点での炉熱の変化量および現時点での炉熱に基づいて、炉熱を変更するための操業条件を案内する案内部とを備える。本発明の他の一態様にかかる炉熱制御案内方法は、上述の炉熱予測方法と、前記炉熱モデル生成工程で生成した炉熱モデルを用いて予測時点での炉熱の変化量を求め、前記求めた予測時点での炉熱の変化量および現時点での炉熱に基づいて、炉熱を変更するための操業条件を案内する案内工程とを備える。
【0022】
これらによれば、上述の炉熱予測装置および炉熱予測方法それぞれを用いた炉熱制御案内装置および炉熱制御案内方法それぞれが提供できる。このように炉熱制御案内装置および炉熱制御案内方法は、それぞれ、上述の炉熱予測装置および炉熱予測方法を備えるので、予測時点での炉熱の変化量および現時点での炉熱に基づいて前記予測時点での炉熱を、より精度良く予測できる。このため、上記炉熱制御案内装置および炉熱制御案内方法は、操業条件を適切に案内できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明にかかる炉熱予測装置および炉熱予測方法は、より精度良く高炉の炉熱を予測できる。本発明によれば、前記炉熱予測装置および前記炉熱予測方法それぞれを用いた、炉熱制御のための操業操作を案内する炉熱制御案内装置および炉熱制御案内方法が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】実施形態における、炉熱予測装置を備えた炉熱制御案内装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】高炉に配設される複数のセンサお様子を説明するための概念図である。
【
図3】前記炉熱予測装置を備えた炉熱制御案内装置における、データ収集の動作を示すフローチャートである。
【
図4】前記炉熱予測装置を備えた炉熱制御案内装置における、炉熱予測および炉熱制御案内の動作を示すフローチャートである。
【
図5】溶銑温度の時間変化の実績値および予測値を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して、本発明の1または複数の実施形態が説明される。しかしながら、発明の範囲は、開示された実施形態に限定されない。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、適宜、その説明を省略する。本明細書において、総称する場合には添え字を省略した参照符号で示し、個別の構成を指す場合には添え字を付した参照符号で示す。
【0026】
実施形態における炉熱予測装置は、炉熱を予測する装置であって、所定時点から所定過去時間までにおける過去実績データに基づいて、炉熱の変化量を求める炉熱モデルを生成する炉熱モデル生成部と、前記炉熱モデル生成部で生成した炉熱モデルを用いて前記所定時点から所定時間経過後における炉熱の変化量を求める炉熱変化量処理部とを備え、前記炉熱モデルは、時間遅れおよび定数倍ゲインの2個のパラメータを用いて表される。そして、実施形態における炉熱制御案内装置は、上述の炉熱予測装置と、前記炉熱モデル生成部で生成した炉熱モデルを用いて予測時点での炉熱の変化量を求め、前記求めた予測時点での炉熱の変化量および現時点での炉熱に基づいて、炉熱を変更するための操業条件を案内する案内部とを備える。以下、炉熱予測装置を備えた炉熱制御案内装置を説明することで、実施形態における炉熱予測装置および炉熱制御案内装置、ならびに、これら炉熱予測装置および炉熱制御案内装置それぞれによって実行される炉熱予測方法および炉熱制御案内方法について、より具体的に説明する。
【0027】
図1は、実施形態における、炉熱予測装置を備えた炉熱制御案内装置の構成を示すブロック図である。
図2は、高炉に配設される複数のセンサお様子を説明するための概念図である。
【0028】
実施形態における、炉熱予測装置を備えた炉熱制御案内装置Dは、例えば、
図1および
図2に示すように、複数のセンサ1-1、1-2、・・・から成るセンサ群1と、制御処理部2と、入力部3と、表示部4と、インターフェース部(IF部)5と、記憶部6とを備える。
【0029】
センサ群1は、炉熱、および、炉熱に影響を与える、予め設定された所定の設定原因因子を測定するための装置である。炉熱を測定するためのセンサは、本実施形態では、溶銑温度を測定する温度センサである。設定原因因子を測定するためのセンサは、その種類、個数および高炉BFに対する配設場所等が前記設定原因因子に応じて適宜に決定される。前記設定原因因子は、本実施形態では、例えば、高炉BFに送られる送風の送風温度熱量、高炉BFに送られる送風の送風湿度熱量、高炉BFに投入される投入還元剤(コークス)の投入還元剤燃焼熱量、高炉BFの下部から高炉に投入される下部投入還元剤(微粉炭)の下部投入還元剤燃焼熱量、高炉BFの炉壁から抜ける熱の炉壁抜熱量、および、ソリューションロス反応によるソリューションロス熱量の6個である。なお、設定原因因子は、6個に限らず、これら6個から選択された複数であってもよい。これら送風温度熱量、送風湿度熱量、投入還元剤燃焼熱量、下部投入還元剤燃焼熱量、炉壁抜熱量およびソリューションロス熱量は、それぞれ、公知の常套手段のセンサによって直接的にあるいは間接的に測定される。例えば、送風温度熱量を測定するためのセンサは、送風の風量を測定する風量センサ、および、前記送風の温度を測定する温度センサ等である。また例えば、送風湿度熱量を測定するためのセンサは、例えば、送風の風量を測定する風量センサ、および、前記送風の湿度を測定する湿度センサ等である。なお、同種のセンサは、兼用されても良く、個別であってもよい。また例えば、炉壁抜熱量を測定するためのセンサは、炉壁に配設された冷却管内を流れる冷却水の温度を測定する温度センサ、および、前記冷却水の流量を測定する流量センサ等である。
【0030】
センサ群1における複数のセンサ1-1、1-2、・・・は、それぞれ、制御処理部2に接続され、制御処理部2の制御に従って測定し、その測定結果を制御処理部2へ出力する。
【0031】
入力部3は、制御処理部2に接続され、例えば、所定時間経過後の炉熱の予測を指示するコマンド等の各種コマンド、および、例えば所定時点、所定過去時点、所定時間等の、炉熱予測装置を備えた炉熱制御案内装置Dを動作させる上で必要な各種データを炉熱制御案内装置Dに入力する機器であり、例えば、所定の機能を割り付けられた複数の入力スイッチやキーボードやマウス等である。表示部4は、制御処理部2に接続され、制御処理部2の制御に従って、入力部3から入力されたコマンドやデータ、センサ群1の各測定結果、炉熱(溶銑温度)、設定原因因子、炉熱制御案内等を表示する機器であり、例えばCRTディスプレイ、液晶ディスプレイおよび有機ELディスプレイ等の表示装置等である。
【0032】
前記所定時点は、炉熱モデルの生成に使用される過去実績データの起点となる時点であって、炉熱を予測する予測時点の起点となる時点である。前記所定時点は、例えば現時点(t=0)であることが好ましいが、データの欠損等の理由で1時間前の時点(t=-60[分])等で適宜に設定される。
【0033】
前記所定過去時間は、炉熱モデルの生成に使用される過去実績データの量を設定(決定)するための時間であり、前記所定時点から前記所定過去時間までにおける過去実績データが炉熱モデルの生成に用いられる。前記所定時点および前記所定過去時間によって、炉熱モデルの生成に使用される過去実績データにおける過去に遡った終点が決まる。前記所定過去時間は、好ましく、未観測因子が略一定と想定される時間であり、例えば、24時間、48時間および72時間のうちの何れかである。
【0034】
前記所定時間は、炉熱を予測する予測時点を設定(決定)するための時間であり、前記所定時点から所定時間経過後の時点が予測時点となる。前記所定時間は、好ましくは、前記所定時点から前記所定過去時間までにおける前記過去実績データに基づいて後述のように求められた、時間遅れおよび定数倍ゲインの2個のパラメータが略有効(略無変化)と想定される時間であり、例えば、3時間、5時間および6時間のうちの何れかである。
【0035】
一例では、所定時点は、現時点であり、所定過去時間は、24時間であり、所定時間は、2時間である。これにより現時点から24時間過去に遡った過去実績データに基づいて後述のように炉熱モデルが生成され、2時間後の炉熱が予測される。他の一例では、所定時点は、1時間前の時点であり、所定過去時間は、24時間であり、所定時間は、2時間である。これにより現時点の1時間前から24時間過去に遡った過去実績データに基づいて後述のように炉熱モデルが生成され、現時点から1時間後の炉熱が予測される。
【0036】
なお、入力部3および表示部4からいわゆるタッチパネルが構成されてもよい。このタッチパネルを構成する場合において、入力部3は、例えば抵抗膜方式や静電容量方式等の操作位置を検出して入力する位置入力装置である。このタッチパネルでは、前記表示装置の表示面上に前記位置入力装置が設けられ、前記表示装置に入力可能な1または複数の入力内容の候補が表示され、ユーザが、入力したい入力内容を表示した表示位置を触れると、前記位置入力装置によってその位置が検出され、検出された位置に表示された表示内容がユーザの操作入力内容として炉熱制御案内装置Dに入力される。このようなタッチパネルでは、ユーザは、入力操作を直感的に理解し易いので、ユーザにとって取り扱い易い炉熱制御案内装置Dが提供される。
【0037】
IF部5は、制御処理部2に接続され、制御処理部2の制御に従って、外部機器との間でデータの入出力を行う回路であり、例えば、シリアル通信方式であるRS-232Cのインターフェース回路、Bluetooth(登録商標)規格を用いたインターフェース回路、IrDA(Infrared Data Asscoiation)規格等の赤外線通信を行うインターフェース回路、および、USB(Universal Serial Bus)規格を用いたインターフェース回路等である。また、IF部5は、外部機器との間で通信を行う回路であり、例えば、データ通信カードや、IEEE802.11規格等に従った通信インターフェース回路等であってもよい。
【0038】
記憶部6は、制御処理部2に接続され、制御処理部2の制御に従って、各種の所定のプログラムおよび各種の所定のデータを記憶する回路である。前記各種の所定のプログラムには、例えば、制御処理プログラムが含まれ、前記制御処理プログラムには、炉熱予測装置を備えた炉熱制御案内装置Dの各部1、3~6を当該各部の機能に応じてそれぞれ制御する制御プログラムや、センサ群1から測定結果を取得して所定の処理を行うデータ取得処理プログラムや、所定時点から所定過去時間までにおける過去実績データに基づいて、炉熱の変化量を求める炉熱モデルを逐次生成する炉熱モデル生成プログラムや、前記炉熱モデル生成プログラムで生成した炉熱モデルを用いて前記所定時点から所定時間経過後における炉熱の変化量を求める炉熱変化量処理プログラムや、前記炉熱変化量処理プログラムで求めた炉熱の変化量および前記所定時点の炉熱に基づいて、前記所定時点から所定時間経過後における炉熱を求める炉熱予測処理プログラムや、前記炉熱モデル生成プログラムで生成した炉熱モデルを用いて予測時点での炉熱の変化量を求め、前記求めた予測時点での炉熱の変化量および現時点での炉熱に基づいて、炉熱を変更するための操業条件を表示部4に表示して案内する案内処理プログラム等が含まれる。前記各種の所定のデータには、過去実績データや、過去実績における炉熱および設定原因因子や、前記操業条件を案内するか否かを判定するための閾値(案内判定閾値)や、操業条件の案内等の、これら各プログラムを実行する上で必要なデータが含まれる。このような記憶部6は、例えば不揮発性の記憶素子であるROM(Read Only Memory)や書き換え可能な不揮発性の記憶素子であるEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)等を備える。そして、記憶部6は、前記所定のプログラムの実行中に生じるデータ等を記憶するいわゆる制御処理部2のワーキングメモリとなるRAM(Random Access Memory)等を含む。なお、記憶部6は、比較的大容量となる学習データを記憶するために、大容量を記憶可能なハードディスク装置を備えても良い。
【0039】
記憶部6は、過去実績データならびに過去実績における炉熱および設定原因因子を記憶する過去実績情報記憶部61を機能的に備える。過去実績データは、当該過去実績データをセンサ群1から取得した日付および時刻(例えば年月日時分秒で表した日時)と対応付けて過去実績情報記憶部61に記憶される。過去実績における炉熱および設定原因因子は、当該炉熱および設定原因因子を求めるために用いた複数の過去実績データについて、これら複数の過去実績データをセンサ群1から取得した各日付および各時刻を代表する日付および時刻(例えば年月日時分で表した日時)と対応付けて過去実績情報記憶部61に記憶される。
【0040】
制御処理部2は、炉熱予測装置を備えた炉熱制御案内装置Dの各部1、3~6を当該各部の機能に応じてそれぞれ制御し、炉熱モデルを生成して予測時点での炉熱を予測し、炉熱制御の案内を実施するための回路である。制御処理部2は、例えば、CPU(Central Processing Unit)およびその周辺回路を備えて構成される。制御処理部2には、前記制御処理プログラムが実行されることによって、制御部21、データ取得処理部22、炉熱モデル生成部23、炉熱変化量処理部24、炉熱予測処理部25および案内処理部26が機能的に構成される。
【0041】
制御部21は、炉熱予測装置を備えた炉熱制御案内装置Dの各部1、3~6を当該各部の機能に応じてそれぞれ制御し、炉熱制御案内装置D全体の制御を司るものである。
【0042】
データ取得処理部22は、所定のサンプリング間隔(第1時間間隔)でセンサ群1から各測定結果を取得して所定の処理を行い、処理後の測定結果を、過去実績データとして、その取得した日付および時刻と対応付けて、過去実績情報記憶部61に記憶するものである。前記所定の処理は、例えば、測定結果からノイズを除去したり、欠損した測定結果を補間したり等の、いわゆる前処理である。そして、データ取得処理部22は、所定の第2時間間隔で、前記第1時間間隔の複数の過去実績データから移動平均を求め、この求めた移動平均に基づいて公知の常套手段により炉熱および設定原因因子を求め、これら求めた炉熱および設定原因因子を、過去実績の炉熱および設定原因因子として、前記複数の過去実績データをセンサ群1から取得した各日付および各時刻を代表する日付および時刻と対応付けて過去実績情報記憶部61に記憶する。前記第2時間間隔は、前記第1時間間隔以上の長さに設定される(第1時間間隔≦第2時間間隔)。
【0043】
炉熱モデル生成部23は、過去実績情報記憶部61に記憶されている所定時点から所定過去時間までにおける過去実績データに基づいて、炉熱の変化量を求める炉熱モデルを生成するものである。炉熱モデル生成部23は、本実施形態では、逐次、炉熱モデルを生成する。すなわち、炉熱モデル生成部23は、所定の時間間隔(モデル生成時間間隔)で、繰り返し、過去実績情報記憶部61に記憶されている所定時点から所定過去時間までにおける過去実績データに基づいて、炉熱モデルを生成する。
【0044】
前記炉熱モデルは、時間遅れおよび定数倍ゲインの2個のパラメータを用いて表される。前記時間遅れのパラメータは、設定原因因子等の各熱量の変化が炉熱の変化として現れるまでの時間的な遅れを表し、本実施形態では、遅延オフセットおよび1次遅れの過渡時間の2個のサブパラメータである。前記時間遅れとは、操業操作を実施した第1時点(操業条件を変更した第1時点)から溶銑温度が定常状態となる第2時点までの時間を言い、本実施形態では、遅延オフセットと過渡時間とから成る。前記遅延オフセット(無駄時間)とは、操業条件を変更した前記第1時点から溶銑温度に変化が現れた第3時点までの時間を言い、前記過渡時間とは、溶銑温度に変化が現れた前記第3時点から、溶銑温度が定常状態となる前記第2時点までの時間を言う。一例として、シグモイド関数の場合、前記無駄時間は、定常状態での値の半分になる中間時刻までの時間であり、前記過渡時間は、前記中間時刻でのシグモイド関数の傾きを支配するパラメータである。前記定数倍ゲインのパラメータは、設定原因因子等の各熱量の変化量が炉熱の変化量に与える影響の度合いを表す。
【0045】
より具体的には、炉熱モデル生成部23は、式1を演算することによって求められる。
【0046】
【0047】
【0048】
【0049】
ここで、θについてのargmin(A)は、Aを最小化する最適なθを求める演算子である。T(t)は、時刻tでの炉熱である。式1では、前記所定時間は、現時点(t=0)であり、したがって、T(0)は、現時点での炉熱である。C(t)は、炉内銑鉄の熱容量である。高炉では、炉内銑鉄量が時間変化するため、熱容量も時間の関数となる。△Q~
l(θi、t)は、炉熱の変化量であり、式2によって表され、この式2の遅れ関数fθi(t)は、式3によって表される。なお、式では、”~”は、Qの上に付されているが、表記の都合上、明細書中の文章では、上記の通り、上付きとしている。以下も同様である。
【0050】
iは、設定原因因子を表し、本実施形態では、1(i=1)が送風温度熱量を表し、2(i=2)が送風湿度熱量を表し、3(i=3)が投入還元剤燃焼熱量を表し、4(i=4)が下部投入還元剤燃焼熱量を表し、5(i=5)が炉壁抜熱量を表し、そして、6(i=6)がソリューションロス熱量を表す(i=1~6)。θi、jは、炉熱モデルのパラメータを表し、本実施形態では、θi、1が定数倍ゲインのパラメータを表し、θi、2が時間遅れのパラメータのうち、遅延オフセットのサブパラメータを表し、θi、3が時間遅れのパラメータのうち、1次遅れの過渡時間のサブパラメータを表す。これら時間遅れのパラメータ(遅延オフセットのサブパラメータおよび1次遅れの過渡時間のサブパラメータ)および定数倍ゲインのパラメータは、それぞれ、設定原因因子ごとに設けられている。例えば、θ1、1は、送風温度熱量に関する定数倍ゲインのパラメータを表し、また例えば、θ4、1は、下部投入還元剤燃焼熱量に関する定数倍ゲインのパラメータを表し、また例えば、θ1、3は、送風温度熱量に関する1次遅れの過渡時間のサブパラメータを表す。したがって、本実施形態では、θi、jは18(=3×6)個である(j=1~3、i=1~6)。単純にθiと表記する場合は、θi、1、θi、2、θi、3の3つの変数を合わせた3次元の変数とする。さらに、単にθと表記する場合は、θi、j(j=1~3、i=1~6)の18次元の変数とする。τは、所定過去時間を表す(τ<0)。したがって、式2は、各設定原因因子iそれぞれについて、所定過去時間τから時刻tまで設定原因因子の変化△Qiを遅れ関数fθi(t)で畳み込み積分することによって、炉熱の変化量△Q~
i(θi、t)を求めることを表している。そして、式1は、過去実績データによる炉熱の変化量(T(t)-T(0))と、前記過去実績データに基づき炉熱モデルで求めた炉熱の変化量((Σi△Q~
i(θi、t))/C(t))との差分を用いて表される目的関数が最小となるように、パラメータ(ここではサブパラメータを含む)θi、1を求めることを表している。したがって、本実施形態では、炉熱モデル生成部23は、過去実績データによる炉熱の変化量と、前記過去実績データに基づき炉熱モデルで求めた炉熱の変化量との差分を用いて表される目的関数が最小となるように、前記パラメータ(ここではサブパラメータを含む)を求めることによって、前記炉熱モデルを生成している。ここで、式1の解法には、例えば、非線形最小二乗法等が用いられる。なお、本実施形態では、遅れ関数fθi(t)は、θiをパラメータとするシグモイド関数であるが、これに限定されるものではなく、高炉のプラントに応じて別の関数であってもよい。また、事前の調査によってθi、jの正負や変動範囲(取り得る数値範囲)等が判明している場合には、これら正負や変動範囲等をθi、jの制約条件として式1が演算されてもよい。
【0051】
炉熱変化量処理部24は、炉熱モデル生成部23で生成した炉熱モデルを用いて前記所定時点から所定時間経過後における炉熱の変化量を求めるものである。より具体的には、炉熱変化量処理部24は、炉熱モデル生成部23で求めたθiを用いて△Q~
i(θi、t)を求める。
【0052】
炉熱予測処理部25は、炉熱変化量処理部24で求めた炉熱の変化量および前記所定時点の炉熱に基づいて、前記所定時点から所定時間経過後における炉熱を求めるものである。より具体的には、炉熱予測処理部25は、式4を用いて前記所定時点から所定時間経過後における炉熱T^(t)を求める。なお、式では、”^”は、Tやθの上に付されているが、表記の都合上、明細書中の文章では、上記の通り、上付きとしている。以下も同様である。θ^
iは、炉熱モデル生成部23で求めたθiを表す。
【0053】
【0054】
案内処理部26は、炉熱モデル生成部23で生成した炉熱モデルを用いて予測時点での炉熱の変化量を求め、この求めた予測時点での炉熱の変化量および現時点での炉熱に基づいて、炉熱を変更するための操業条件を表示部4に表示して案内するものである。より具体的には、案内処理部26は、所定時点から予測時点までの時間を所定時間として求め、炉熱予測処理部25と同様に式4を用いて予測時点での炉熱を求め、この求めた予測時点での炉熱と案内判定閾値とを比較する。この比較の結果、予測時点での炉熱が案内判定閾値を下回っている場合には、案内処理部26は、炉熱を変更するための操業条件を表示部4に表示して案内する。例えば、案内処理部26は、「送風温度を上げる」というメッセージを表示部4に表示する。また例えば、案内処理部26は、「送風湿度を下げる」というメッセージを表示部4に表示する。また例えば、案内処理部26は、「コークス比を増やす」というメッセージを表示部4に表示する。また例えば、案内処理部26は、「微粉炭量を増やす」というメッセージを表示部4に表示する。あるいは、前記比較の結果、予測時点での炉熱が案内判定閾値を上回っている場合に、案内処理部26は、炉熱を変更するための操業条件を表示部4に表示して案内しても良い。この場合では、例えば、案内処理部26は、「送風温度を下げる」というメッセージのように、上述とは逆の意味のメッセージを表示部4に表示する。
【0055】
ここで、炉熱予測装置は、本実施形態では、その一例として、制御処理部2における炉熱モデル生成部23、炉熱変化量処理部24および炉熱予測処理部25、ならびに、記憶部6の過去実績情報記憶部61を備えて構成される。案内部は、本実施形態では、その一例として、案内処理部26および表示部4を備えて構成される。
【0056】
これら制御処理部2、入力部3、表示部4、IF部5および記憶部6は、例えば、デスクトップ型やノート型等のコンピュータによって構成可能である。これら各部2~6を構成するコンピュータは、例えば、高炉BFのオペレーションルームに配置され、高炉BFのコンソールに組み込まれてよく(コンソールと兼用されてよく)、あるいは、コンソールと別体であってもよい。
【0057】
次に、本実施形態の動作について説明する。
図3は、前記炉熱予測装置を備えた炉熱制御案内装置における、データ収集の動作を示すフローチャートである。
図3Aは、過去実績データを収集する動作を示し、
図3Bは、過去実績における炉熱および設定原因因子を収集する動作を示す。
図4は、前記炉熱予測装置を備えた炉熱制御案内装置における、炉熱予測および炉熱制御案内の動作を示すフローチャートである。
図5は、溶銑温度の時間変化の実績値および予測値を示す図である。
図5の横軸は、現在(現時点)からの経過時間であり、その縦軸は、溶銑温度である。
【0058】
このような構成の、炉熱予測装置を備えた炉熱制御案内装置Dは、その電源が投入されると、必要な各部の初期化を実行し、その稼働を始める。制御処理部2には、その制御処理プログラムの実行によって、制御部21、データ取得処理部22、炉熱モデル生成部23、炉熱変化量処理部24、炉熱予測処理部25および案内処理部26が機能的に構成される。
【0059】
過去実績データの収集では、炉熱制御案内装置Dは、制御処理部2のデータ取得処理部22によって、次の各処理を、所定のサンプリング間隔(第1時間間隔)で繰り返し実行することで、過去実績データを蓄積している。
【0060】
図3Aにおいて、まず、データ取得処理部22は、センサ群1の各センサ1-1、1-2、・・・から各測定結果を取得する(S1)。
【0061】
次に、データ取得処理部22は、これら取得した各測定結果に対し前処理を実行する(S2)。
【0062】
そして、データ取得処理部22は、前処理後の各測定結果を、過去実績データとして、その取得した日付および時刻と対応付けて、過去実績情報記憶部61に記憶し(S3)、今回のサンプリングタイミングでの本処理を終了する。
【0063】
過去実績における炉熱および設定原因因子の収集では、炉熱制御案内装置Dは、制御処理部2のデータ取得処理部22によって、次の各処理を、所定の第2時間間隔で繰り返し実行することで、過去実績における炉熱および設定原因因子を蓄積している。
【0064】
図3Bにおいて、まず、データ取得処理部22は、前記第1時間間隔の複数の過去実績データから移動平均を求め、この求めた移動平均に基づいて公知の常套手段により炉熱および設定原因因子を求める(S11)。本実施形態では、上述のように、送風温度熱量、送風湿度熱量、投入還元剤燃焼熱量、下部投入還元剤燃焼熱量、炉壁抜熱量およびソリューションロス熱量が設定原因因子として求められる。
【0065】
そして、データ取得処理部22は、処理S11で求めた炉熱および設定原因因子を、過去実績における炉熱および設定原因因子として、前記複数の過去実績データをセンサ群1から取得した各日付および各時刻を代表する日付および時刻と対応付けて過去実績情報記憶部61に記憶し(S12)、今回のタイミングでの本処理を終了する。
【0066】
炉熱の予測および炉熱制御の案内では、
図4において、炉熱制御案内装置Dは、制御処理部2によって、入力部3で所定時点、所定過去時間および予測時点を設定する所定時間の入力を受け付けると(S21)、炉熱制御案内装置Dは、制御処理部2の炉熱モデル生成部23によって、この受け付けた所定時点から所定過去時間までにおける過去実績データに基づく過去実績における炉熱および設定原因因子を記憶部6の過去実績情報記憶部61から読み込んで取得する(S22)。
【0067】
次に、炉熱モデル生成部23は、これら取得した過去実績における炉熱および設定原因因子を用いて式1を演算することによって、パラメータ(本実施形態サブパラメータを含む)θi、1を求め、炉熱モデルを生成し、記憶部6に記憶する(S23)。
【0068】
次に、炉熱制御案内装置Dは、制御処理部2の炉熱変化量処理部24によって、炉熱モデル生成部23で生成した炉熱モデルを用いて、前記処理S21で受け付けた、所定時点から所定時間経過後における炉熱の変化量を求め、制御処理部2の炉熱予測処理部25によって、炉熱変化量処理部24で求めた炉熱の変化量および前記所定時点の炉熱に基づいて、式4を用いて前記所定時点から所定時間経過後における炉熱を求め、この求めた炉熱を予測時点での炉熱として表示部4に表示する(S24)。
【0069】
次に、炉熱制御案内装置Dは、制御処理部2の案内処理部26によって、この求めた予測時点での炉熱と案内判定閾値とを比較することによって、案内が必要か否かを判定する(S25)。この判定の結果、案内が必要である場合(Yes)、案内処理部26は、炉熱を変更するための操業条件を表示部4に表示して案内し(S26)、本処理を終了する。一方、前記判定の結果、案内が必要ではない場合(No)、案内処理部26は、本処理を終了する。
【0070】
炉熱制御案内装置Dは、このような処理S21ないし処理S26の各処理を、モデル生成時間間隔で繰り返し実行することで、炉熱モデルを逐次生成し、炉熱を逐次予測し、必要に応じて操業条件を逐次案内する。
【0071】
このような炉熱予測装置を備えた炉熱制御案内装置Dによって予測した炉熱と実績とを溶銑温度で表した結果が
図5に示されている。実線LAが実績の溶銑温度であり、破線LCが予測の溶銑温度である。
図5では、現時点から25時間だけ遡った過去実績データを用いて炉熱モデルが生成され、現時点から5時間後までの各時間の炉熱(溶銑温度)が予測された。実績の溶銑温度を測定した高炉は、2つの出銑口から交互に出銑するタイプであったため、実績の溶銑温度は、各出銑口の各出銑の測定温度を線形補完した2つの温度について、低温側に寄るように7:3に内分することによって求められた。
図5に示すように、予測の出銑温度LCは、実績の出銑温度LAと略同様な傾向を示している。
【0072】
高炉の炉熱に影響する未観測因子は、高炉が非常に大きな系であるため、例えば十数時間または数十時間等の、連続操業に対する比較的短い期間、急激に変化せずに略一定であると考えられる。以上説明したように、本実施形態における、炉熱予測装置を備えた炉熱制御案内装置D、ならびに、これら炉熱予測装置および炉熱制御案内装置それぞれによって実行される炉熱予測方法および炉熱制御案内方法は、未観測因子が炉熱に与える影響を、時間遅れおよび定数倍ゲインの2個のパラメータで吸収し、所定時点から所定過去時間までにおける過去実績データに基づいて炉熱モデルを生成して前記所定時点から所定時間経過後における炉熱の変化量を求めるので、前記炉熱モデルおよび前記所定時間経過後における炉熱の変化量を、未観測因子が略一定であると考えられる期間内で求められるから、より精度良く高炉の炉熱を予測できる。
【0073】
上述のように、高炉の溶銑温度は、操業条件を変更した第1時点から数時間以上遅れて変化する。前記炉熱予測装置および炉熱予測方法は、時間遅れのパラメータが遅延オフセットおよび過渡時間の2個のサブパラメータから成るので、このような高炉の特徴を炉熱モデルに取り入れることができ、より適切な炉熱モデルを生成できる。
【0074】
前記炉熱予測装置および炉熱予測方法は、過去実績データによる炉熱の変化量と、前記過去実績データに基づき炉熱モデルで求めた炉熱の変化量との差分が最小となるように、前記パラメータを求めることによって、前記炉熱モデルを生成するので、前記パラメータを適切に求めることができる。
【0075】
上記炉熱制御案内装置Dおよび炉熱制御案内方法は、前記炉熱予測装置および炉熱予測方法を備えるので、予測時点での炉熱の変化量および現時点での炉熱に基づいて前記予測時点での炉熱を、より精度良く予測できる。このため、上記炉熱制御案内装置および炉熱制御案内方法は、操業条件を適切に案内できる。
【0076】
なお、上述の実施形態では、過去実績データは、所定時点から所定過去時間まで炉熱に等価的に影響を与えるものとして取り扱ったが、過去実績データは、所定時点に近いほど炉熱により大きく影響を与えるものとして取り扱ってもよい。すなわち、炉熱モデル生成部23は、所定時点に時間的に近いほど大きな値の重みω(t)を付けて過去実績データを用いてもよい。より具体的には、炉熱モデル生成部23は、上述の式1に代え、式5を演算することよって、パラメータθi、1を求めて炉熱モデルを生成する。
【0077】
【0078】
上述のように、所定期間では未観測因子が略一定であると考えられるが、一方、前記未観測因子が微小変化もせずに全く変化しないとも考え難い。このような式5を用いた炉熱予測装置および炉熱予測方法は、所定時点に時間的に近いほど大きな値の重みω(t)を付けて過去実績データを用いるので、前記所定時点に近い未観測因子の影響を炉熱モデルに大きく反映できるから、より精度良く高炉の炉熱を予測できる。
【0079】
なお、上述の実施形態では、設定原因因子は、予測の際に一定値(時間変化しない)として扱ったが、時間変化させてもよい。例えば、炉壁抜熱量やソリューションロス熱量は、操業条件を変更しなくても時間変化する虞がある。このため、前記炉熱モデルは、炉熱に影響を与える、予め設定された複数の所定の設定原因因子に関する関数でさらに表され、炉熱予測装置を備えた炉熱制御案内装置Dは、
図1に破線で示すように、前記所定時点から第2所定過去時間までにおける過去実績データに基づいて、前記複数の設定原因因子のうちの少なくとも1つの設定原因因子を求める因子モデルを生成する因子モデル生成部27を制御処理部2に機能的にさらに備え、前記炉熱変化量処理部24は、前記因子モデル生成部27で生成した因子モデルをさらに用いて前記所定時点から所定時間経過後における炉熱の変化量を求める。すなわち、前記炉熱変化量処理部24は、前記炉熱モデル生成部23で生成した炉熱モデルおよび前記因子モデル生成部27で生成した因子モデルを用いて前記所定時点から所定時間経過後における炉熱の変化量を求める。この因子モデルの生成の際における第2所定過去時間は、炉熱モデルの生成の際における所定過去時間と同一であってよく、異なってもよい。因子モデル生成部27は、例えば、炉壁抜熱量を求める抜熱量因子モデルおよびソリューションロス熱量を求めるソルロス因子モデルのうちの少なくとも一方の因子モデルを生成する。これら炉壁抜熱量およびソリューションロス熱量は、それぞれ、他の因子よりも、過去における自信の状態から強く影響を受けるため、抜熱量因子モデルおよびソルロス因子モデルは、それぞれ、自己相関を用いた時系列モデルであることが好ましい。因子モデル生成部27は、例えば、ARIMA(Auto Regresive Integrated Moving Average)およびRNN(Recurrent Neural Network)等により、自己相関を用いた時系列モデルである抜熱量因子モデルおよびソルロス因子モデルを生成する。
【0080】
このような因子モデルを生成して用いる炉熱予測装置および炉熱予測方法は、炉熱モデルおよび因子モデルを用いて前記所定時点から所定時間経過後における炉熱の変化量を求めるので、設定原因因子の変化を考慮でき、より精度良く高炉の炉熱を予測できる。
【0081】
また、上述の実施形態において、前記炉熱モデル生成部23は、前記時間遅れのパラメータを所定時間間隔で求め、過去に求めた定数倍ゲインのパラメータと現時点で予測した定数倍ゲインのパラメータとの第2差分を前記目的関数に加算してもよい。あるいは、前記炉熱モデル生成部23は、前記時間遅れのパラメータを所定時間間隔で求め、過去に求めた時間遅れのパラメータと現時点で予測した時間遅れのパラメータとの第3差分を小さくなるようにして前記時間遅れのパラメータを求めてもよい。
【0082】
前記所定過去時間が比較的短期間である場合、過去実績データが少ないため、炉熱モデルが一時的な変動に過剰適合したり、時間変化の少ない設定原因因子が過小評価されてしまったり等が生じる虞があり、この結果、炉熱モデルが適切に生成できない虞がある。このため、前記所定過去時間が長期間に設定されれば、この点が解消できるが、炉熱モデルの生成に時間がかかってしまう。特に、高炉を操業しつつ、炉熱モデルを生成して炉熱を予測する場合、炉熱モデルの生成に時間がかかると、適切な操業条件の変更タイミングが失われる虞があり、前記所定過去時間の長期間化には、限界がある。
【0083】
一方、高炉が非常に大きな系であり、銑鉄の生成は、時間をかけて反応するプロセスであるため、パラメータθi、jは、短時間では大きく変化しない。そこで、上述のように、過去に求めた定数倍ゲインのパラメータと現時点で予測した定数倍ゲインのパラメータとの第2差分を前記目的関数に加算することで、あるいは、過去に求めた時間遅れのパラメータと現時点で予測した時間遅れのパラメータとの第3差分を小さくなるようにして前記時間遅れのパラメータを求めることで、パラメータθi、jを求める繰り返し計算でパラメータθi、jの変化が小さくできる。
【0084】
より具体的には、炉熱モデル生成部23は、上述の式1に代え、式6を演算することよって、パラメータθi、1を求めて炉熱モデルを生成する。
【0085】
【0086】
ここで、θ,k=[θ1,k、θ2,k、θ3,k、θ4,k、θ5,k、θ6,k]。変数αは、前記過去に求めた定数倍ゲインのパラメータにおける過去時点や、前記過去に求めた時間遅れのパラメータにおける過去時点を設定する値であり、パラメータθi、jを求める繰り返し計算での時間間隔と同等レベルの時間であって、前記所定過去時間τより小さい時間である。θ,k
-αは、αによって定まる前記過去時点で求めたθ,kを指す。係数λkは、過去実績データに基づいて、予測した溶銑温度と実績の溶銑温度の一致が良くなるように、例えば総当たり等で適宜に設定される。
【0087】
このような式6を用いた炉熱予測装置および炉熱予測方法は、前記第2差分を考慮するので、パラメータが偶発的に大きく(あるいは小さく)求められてしまうケースを回避でき、より適切な炉熱モデルを生成でき、前記第3差分を小さくなるようにして前記時間遅れのパラメータを求めるので、パラメータが偶発的に大きく(あるいは小さく)求められてしまうケースを回避でき、より適切な炉熱モデルを生成できる。
【0088】
本発明を表現するために、上述において図面を参照しながら実施形態を通して本発明を適切且つ十分に説明したが、当業者であれば上述の実施形態を変更および/または改良することは容易に為し得ることであると認識すべきである。したがって、当業者が実施する変更形態または改良形態が、請求の範囲に記載された請求項の権利範囲を離脱するレベルのものでない限り、当該変更形態または当該改良形態は、当該請求項の権利範囲に包括されると解釈される。
【符号の説明】
【0089】
D 炉熱予測装置を備えた炉熱制御案内装置
1 センサ群
1-1、1-2、・・・ 各センサ
2 制御処理部
3 入力部
4 表示部
5 インタフェース部(IF部)
6 記憶部
21 制御部
22 データ取得処理部
23 炉熱モデル生成部
24 炉熱変化量処理部
25 炉熱予測処理部
26 案内処理部
27 因子モデル生成部
61 過去実績情報記憶部