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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】接続構造
(51)【国際特許分類】
   H01R 4/70 20060101AFI20241022BHJP
   H01R 4/20 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
H01R4/70 F
H01R4/20
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023200502
(22)【出願日】2023-11-28
【審査請求日】2024-01-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000215785
【氏名又は名称】TPR株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大浦 信輔
(72)【発明者】
【氏名】河野 健太朗
(72)【発明者】
【氏名】高坂 研一郎
(72)【発明者】
【氏名】大鋸 哲平
【審査官】▲高▼橋 杏子
(56)【参考文献】
【文献】実開平03-024266(JP,U)
【文献】特開2017-022025(JP,A)
【文献】特開2009-104875(JP,A)
【文献】国際公開第2013/088987(WO,A1)
【文献】特開2002-349709(JP,A)
【文献】実開昭54-015779(JP,U)
【文献】特開2023-043777(JP,A)
【文献】特開2000-294344(JP,A)
【文献】特開2004-172009(JP,A)
【文献】特開平10-064616(JP,A)
【文献】特開平09-115571(JP,A)
【文献】特開2015-201259(JP,A)
【文献】特開2005-251400(JP,A)
【文献】実開昭51-141378(JP,U)
【文献】特開昭54-139088(JP,A)
【文献】特表2005-526364(JP,A)
【文献】特開2009-272182(JP,A)
【文献】中国実用新案第208461017(CN,U)
【文献】米国特許第06395985(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 3/00-4/22
H01R 4/58- 4/72
H01R 9/00
H01R 9/15- 9/28
H01R 13/40-13/533
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電部材同士を電気的に接続するための接続構造であって、
導電性を有すると共に少なくとも一部に筒状の形状を有し、軸方向両端部のうち少なくとも一方がスリーブ状の接続部材と、
前記接続部材の内部に配置されるシール構造と、
前記接続部材の外周に配置される外周シール部材と、を備え、
前記接続部材は、一端側に形成されると共に第1の導電部材を接続可能な第1接続部と、他端側に形成されると共に第2の導電部材を接続可能な第2接続部と、前記第1接続部と前記第2接続部との間に形成されると共に前記接続部材の内部において前記第1の導電部材と前記第2の導電部材とを離間させる離間部と、を有し、
前記シール構造は、前記離間部に配置されることで、前記接続部材の内部をシールし、
前記外周シール部材は、前記離間部の外周に配置されることで、前記接続部材を保持するホルダーと前記接続部材の前記離間部の外周との間をシールし、
前記第1接続部と前記第2接続部とのうち少なくとも一方は、圧着により前記導電部材と接続される圧着部として前記接続部材の軸方向端部に形成されており、
前記圧着部の先端と前記シール構造との軸方向における距離をL1とし、
前記圧着部の圧着前の圧着方向における外周面間の距離である前記圧着部の圧着前の高さをH1としたとき、
L1≧H1×0.88である、
接続構造。
【請求項2】
導電部材同士を電気的に接続するための接続構造であって、
導電性を有すると共に少なくとも一部に筒状の形状を有し、軸方向両端部のうち少なくとも一方がスリーブ状の接続部材と、
前記接続部材の内部に配置されるシール構造と、
前記接続部材の外周に配置される外周シール部材と、を備え、
前記接続部材は、一端側に形成されると共に第1の導電部材を接続可能な第1接続部と、他端側に形成されると共に第2の導電部材を接続可能な第2接続部と、前記第1接続部と前記第2接続部との間に形成されると共に前記接続部材の内部において前記第1の導電部材と前記第2の導電部材とを離間させる離間部と、を有し、
前記シール構造は、前記離間部に配置されることで、前記接続部材の内部をシールし、
前記外周シール部材は、前記離間部の外周に配置されることで、前記接続部材を保持するホルダーと前記接続部材の前記離間部の外周との間をシールし、
前記第1接続部と前記第2接続部とのうち少なくとも一方は、圧着により前記導電部材と接続される圧着部として前記接続部材の軸方向端部に形成されており、
前記圧着部と前記シール構造との間には、圧着方向視において、前記接続部材の中心軸を跨ぐように延在しており前記中心軸を基準として軸対象にスリットが形成されており、
前記圧着部の先端と前記シール構造との軸方向における距離をL2とし、
前記圧着部の圧着前の圧着方向における外周面間の距離である前記圧着部の圧着前の高さをH2とし、
前記接続部材を圧着方向及び軸方向に対して直交する方向に沿って視認したときの前記スリットの開口部から末端までの距離である前記スリットの深さをS1としたとき、
L2≧H2×0.68、且つ、0.25≦S1/H2≦0.67である、
接続構造。
【請求項3】
前記シール構造は、前記離間部に嵌入された弾性体により形成されている、
請求項1又は2に記載の接続構造。
【請求項4】
前記シール構造は、前記離間部を閉塞する隔壁として前記接続部材と一体に形成されている、
請求項1又は2に記載の接続構造。
【請求項5】
前記シール構造は、前記離間部に充填された樹脂成形体により形成されている、
請求項1又は2に記載の接続構造。
【請求項6】
前記接続部材は、軸方向の少なくとも一端側において流体の圧力作用を受けるように配置される、
請求項1又は2に記載の接続構造。
【請求項7】
前記接続部材において、前記圧着部の厚みよりも前記離間部の厚みの方が大きい、
請求項1又は2に記載の接続構造。
【請求項8】
前記ホルダーは凹部を有し、前記凹部の底壁部に前記接続部材が挿通される取付孔が複数形成されており、
前記外周シール部材は、前記接続部材が挿通される貫通孔が、前記ホルダーの前記凹部の前記底壁部に形成された前記取付孔と同数形成された多連グロメットであって、
前記ホルダーの各取付孔及び前記多連グロメットの各貫通孔に前記接続部材が挿通された状態で、前記多連グロメットが前記ホルダーの前記凹部に嵌め込まれることで、前記ホルダーの前記凹部の内面と複数の前記接続部材の前記離間部の外周との間が前記多連グロメットによってシールされる、
請求項1又は2に記載の接続構造。
【請求項9】
前記多連グロメットにおける前記ホルダーの前記凹部の側壁部との接触部、及び、前記多連グロメットの各貫通孔の内壁には突起が形成されている、
請求項8に記載の接続構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電部材の接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の電子制御式自動変速機とコントロールユニット等とを電気的に接続する手段として、バスバーを用いた電気接続方式が一般的であった。例えば特許文献1には、バスバーの基端側延伸部と先端側延伸部との間にバネ機能構成部を設けた電気接続部の構造が開示されている。一方、特許文献2には、コネクタを用いた電気的接続構造の防水性を高めるために、防水すべき隙間部分に光硬化樹脂を注入することで該隙間部分を密封する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3488998号公報
【文献】特許第2650547号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、油圧機器や水圧機器等の流体の圧力が作用する機器と他の機器とを電気的に接続するための接続構造には、機器の内外への流体の漏出を防止することが求められる。特に、運転時に振動が生じる機器に適用するためには、よりシール性能の高い接続構造が望まれている。
【0005】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、導電部材同士を電気的に接続するための接続構造において、シール性能を向上可能な技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る接続構造は、以下の構成を採用した。即ち、本発明の要旨は、以下の通りである。
〔1〕
導電部材同士を電気的に接続するための接続構造であって、
導電性を有し、軸方向両端部のうち少なくとも一方がスリーブ状の接続部材と、
前記接続部材の内部に配置されるシール構造と、を備え、
前記接続部材は、一端側に形成されると共に第1の前記導電部材を接続可能な第1接続部と、他端側に形成されると共に第2の前記導電部材を接続可能な第2接続部と、前記第1接続部と前記第2接続部との間に形成されると共に前記接続部材の内部において前記第1の導電部材と前記第2の導電部材とを離間させる離間部と、を有し、
前記シール構造は、前記離間部に配置されることで、前記接続部材の内部をシールする、
接続構造。
〔2〕
前記第1接続部と前記第2接続部とのうち少なくとも一方は、圧着により前記導電部材と接続される圧着部として前記接続部材の軸方向端部に形成されている、
〔1〕に記載の接続構造。
〔3〕
前記圧着部の先端と前記シール構造との軸方向における距離をL1とし、
圧着方向における前記圧着部の圧着前の高さをH1としたとき、
L1≧H1×0.88である、
〔2〕に記載の接続構造。
〔4〕
前記圧着部と前記シール構造との間には、前記接続部材にスリットが形成されている、
〔2〕に記載の接続構造。
〔5〕
前記圧着部の先端と前記シール構造との軸方向における距離をL2とし、
圧着方向における前記圧着部の圧着前の高さをH2とし、
前記圧着方向における前記スリットの深さをS1としたとき、
L2≧H2×0.68、且つ、0.25≦S1/H2≦0.67である、
〔4〕に記載の接続構造。
〔6〕
前記シール構造は、前記離間部に嵌入された弾性体により形成されている、
〔1〕から〔5〕の何れかに記載の接続構造。
〔7〕
前記シール構造は、前記離間部を閉塞する隔壁として前記接続部材と一体に形成されている、
〔1〕から〔5〕の何れかに記載の接続構造。
〔8〕
前記シール構造は、前記離間部に充填された樹脂成形体により形成されている、
〔1〕から〔5〕の何れかに記載の接続構造。
〔9〕
前記接続部材の外周に配置される外周シール部材を更に備え、
前記外周シール部材は、前記接続部材の軸方向における少なくとも一部の外周を周方向に連続して覆うことで、前記接続部材の外周をシールする、
〔1〕から〔8〕の何れかに記載の接続構造。
〔10〕
前記接続部材は、軸方向の少なくとも一端側において流体の圧力作用を受けるように配置される、
〔1〕から〔9〕の何れかに記載の接続構造。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、導電部材同士を電気的に接続するための接続構造において、シール性能を向上することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係る接続構造の全体斜視図である。
図2図2は、実施形態に係る接続構造の断面図である。
図3図3は、実施形態に係る接続部材の圧着加工前の状態を示す側面図である。
図4図4は、実施形態に係る接続部材にリード線が圧着された状態を模式的に示す側面図である。
図5図5は、実施形態に係る接続部材の圧着加工の前後における離間部の断面図である。
図6図6は、実施形態の変形例1に係る接続部材の圧着加工前の状態を示す側面図である。
図7図7は、実施形態の変形例1に係る接続部材の圧着加工前の状態を示す上面図である。
図8図8は、実施形態の変形例2に係る接続部材の圧着加工前の状態を示す斜視図である。
図9図9は、実施形態の変形例3に係る接続構造の断面図である。
図10図10は、実施形態の変形例4に係る接続構造の断面図である。
図11図11は、実施例のシミュレーション結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の具体的な実施形態について図面に基づいて説明する。以下の実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、及び、その相対配置等は、特に記載がない限りは本発明の技術的範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0010】
本発明の一実施形態は、導電部材同士を電気的に接続する接続構造である。具体的には、接続構造は、流体の圧力が作用する機器に取り付けられ、機器の内部に設けられた第1のケーブル(導電部材)と機器の外部に設けられた第2のケーブル(導電部材)とを電気的に接続する。接続構造は、導電性を有し、軸方向両端部のうち少なくとも一方がスリーブ状の接続部材と、接続部材内に配置されるシール構造と、外周シール部材と、を備える。すなわち、接続部材は、軸方向両端部にスリーブ状の接続部を有してもよいし、片方の端部のみにスリーブ状の接続部を有してもよい。接続部材は、筒状に形成されており、第1のケーブルを接続可能な第1接続部を長手方向一端側に有し、第2のケーブルを接続可能な第2接続部を長手方向他端側に有し、第1のケーブルと第2のケーブルとを離間する離間部を第1接続部と第2接続部との間に有する。接続部材は、機器の内外を貫通する取付孔に挿入される。シール構造は、接続部材の離間部に配置されることで、接続部材の内部をシールする。外周シール部材は、接続部材の外周を覆うように配置されることで、接続部材の外周をシールする。
【0011】
ここで、「流体」は、液体に限らず、気体であってもよい。また、「流体の圧力」とは、機器の内部から作用する圧力(内圧)や機器の外部から作用する圧力(外圧)が含まれ得る。本発明に係る接続構造は流体の圧力が作用する機器に対して適用され得るが、接続構造の取付対象となる機器は特に限定されない。接続構造の対象機器としては、例えば、油圧を利用して動作する油圧機器や水圧を利用して動作する水圧機器等が例示される。また、対象機器は、例えば、モーターケース内に冷却用の水又はオイルが供給される、液冷式の電気モータ(回転電機)であってもよい。また、「第2の導電部材」は、接続構造の対象機器とは別の機器(他の機器)が備えるケーブルであってもよいし、対象機器が備えるケーブルであってもよい。
【0012】
[全体構成]
以下、実施形態として、本発明に係る接続構造を電気モータに適用した態様について説明する。図1は、実施形態に係る接続構造100の全体斜視図である。図2は、実施形態に係る接続構造100の断面図である。図1及び図2では、接続部材1にリード線10,20が圧着され、これらが電気的に接続されている状態が図示されている。
【0013】
図2に示すように、接続構造100は、モータ200に取り付けられる。より詳細には、接続構造100は、モータ200の筐体であるケース200aに取り付けられる。
【0014】
モータ200は、例えば、ハイブリッド自動車や電気自動車等の駆動力源として用いられる、三相モータである。図2において、符号ISはケース200aの内部空間(即ち、モータ200の内部)を示し、符号ESはケース200aの外部空間(即ち、モータ200の外部)を示す。ケース200aの内部空間ISには、ステータ(固定子)、コイル、ロータ(回転子)、シャフト等が収容される。また、モータ200は液冷式であり、ケース200aの内部空間ISには、冷却用のオイル(冷却油)が供給される。そのため、モータ200には、内部空間IS側から冷却油の圧力が作用している。また、図2に示すように、ケース200aには、接続構造100を取り付けるための取付開口200bが形成
されている。取付開口200bは、ケース200aの内外を貫通している。
【0015】
また、モータ200は、コイルに三相交流を入力するためのケーブルである3本のリード線10(本発明に係る「第1の導電部材」の一例)を有する。3本のリード線10は、ケース200aの内部空間IS(即ち、モータ200の内部)に配置されており、夫々が各相のコイルに対応している。また、リード線10は、導電材料により形成された導電線101と、電気絶縁材料により形成され、導電線101を被覆する絶縁チューブ102と、を有する。導電線101の先端部は、絶縁チューブ102から露出することで、リード線10の先端部を構成している。
【0016】
また、ケース200aの外部空間ES(即ち、モータ200の外部)には、モータ200の外部機器(他の機器)であるインバータに接続された3本のリード線20(本発明に係る「第2の導電部材」の一例)が配置されている。リード線20は、モータ200のリード線10と電気的に接続されることで、インバータにより生成された交流電流をモータ200のリード線10に供給するケーブルである。3本のリード線20の夫々は、各リード線10に対応している。リード線20は、導電材料により形成された導電線201と、電気絶縁材料により形成され、導電線201を被覆する絶縁チューブ202と、を有する。導電線201の先端部は、絶縁チューブ202から露出することで、リード線20の先端部を構成している。
【0017】
本実施形態では、リード線10の導電線101及びリード線20の導電線201は、複数本の金属製(例えば銅製)の線状導電体が束ねられて撚り合わされた、撚り線として形成されている。但し、本発明はこれに限定されない。本発明に係る第1の導電部材及び第2の導電部材は、撚り線により形成されてもよいし、1本の線状導電体からなる単線(単芯)により形成されてもよい。また、第1の導電部材及び第2の導電部材は、電気を伝送可能なものであればよく、電線(リード線)には限定されない。第1の導電部材及び第2の導電部材は、例えば、バスバーであってもよいし、電線の先端に端子状の導電体が設けられたものであってもよい。また、第1の導電部材及び第2の導電部材の数量は、複数であってもよいし、複数でなくともよい。
【0018】
本実施形態に係る接続構造100は、モータ200の内部に設けられたリード線10とモータ200の外部に設けられたリード線20とを電気的に接続すると共にモータ200の内外をシール可能に構成されている。図2に示すように、接続構造100は、接続部材1、シール構造2、ホルダー3、多連グロメット4(本発明に係る「外周シール部材」の一例)、ガスケット5、及びボルト6を備える。以下、接続構造100の各構成について説明する。
【0019】
[ホルダー・ガスケット・ボルト]
ホルダー3は、接続部材1を保持すると共にモータ200の取付開口200bに取り付けられる部材である。ホルダー3は、電気絶縁材料により形成されており、電気絶縁性を有する。ホルダー3の材料は、特に限定されないが、例えば、PPS(ポリフェニレンサルファイド)等の樹脂材料が挙げられる。ホルダー3は、嵌合部31とプレート部32とを有する。嵌合部31は、筒状に形成されており、取付開口200bに嵌合する。プレート部32は、嵌合部31の軸方向に対して直交するプレート状に形成されており、嵌合部31の外部空間ES側の端部に設けられる。プレート部32は、嵌合部31の該端部を閉塞する閉塞部32aと、嵌合部31よりも外側へ張り出した固定部32bと、を有する。固定部32bは、ケース200aの外部空間ES側の面に当接し、ボルト6によってケース200aに固定される。ホルダー3には、嵌合部31と閉塞部32aとによって囲まれた空間である凹部3aが形成されている。凹部3aは、ケース200aの内部空間ISに対して凹んでいる。凹部3aには、多連グロメット4が装着される。また、閉塞部32a
には、接続部材1が挿入される取付孔3bが形成されている。取付孔3bは、凹部3aと繋がっており、ケース200aの内外(つまり、モータ200の内外)を貫通している。
【0020】
ガスケット5は、弾性材料により形成されており、ホルダー3の嵌合部31の外周に取り付けられ、嵌合部31の外周面と取付開口200bの内壁面との間をシールする。ガスケット5の材料は、特に限定されないが、例えば、ACM(アクリルゴム)等のゴム、樹脂材料等が挙げられる。また、ガスケット5は、金属製であってもよい。
【0021】
ボルト6は、締結部材であり、ホルダー3の固定部32bをケース200aに固定する。これにより、接続構造100がモータ200に固定されている。
【0022】
[接続部材]
接続部材1は、筒状に形成されており、その両端部に電線を圧着可能な圧着端子として構成されている。つまり、接続部材1は、圧着スリーブとして構成されている。接続部材1は、モータ200の内外を貫通する取付孔3bに挿入される。ここで、接続部材1について、接続部材1の中心軸A1が延びる方向(即ち、接続部材1の延在方向)を「軸方向」とし、接続部材1の半径の方向を「径方向」とし、接続部材1の軸回りの方向を「周方向」とする。接続部材1の両端部は、径方向外側からの加圧により圧し潰されるように塑性変形することで、加締められる。なお、本実施形態に係る接続部材1は、円筒状に形成されているが、角筒状であってもよい。接続部材1は、軸方向の少なくとも一端側において流体の圧力作用を受けるように配置される。
【0023】
接続部材1は、各端部にリード線10,20の導電線101,201が挿入された状態で加締められることで、各端部にリード線10,20を圧着可能である。接続部材1は、金属製であり、導電性を有する。そのため、接続部材1を介して導電線101と導電線201とが導通し、リード線10とリード線20とが電気的に接続される。接続部材1の材料としては、例えば、銅、アルミニウム、銀等の金属材料が挙げられる。なお、本発明に係る接続部材の材料は、特に限定されず、導電性を有し且つ加締め可能な材料であればよい。なお、本発明に係る接続部材は、その全体が導電性を有する必要はなく、少なくとも一部が導電性を有するものであればよく、例えば、金属製の筒状部材の外周を樹脂材料で被覆したものであってもよい。
【0024】
本実施形態に係る接続構造100は、互いに接続されるリード線10とリード線20との組み合わせの数に対応して、3つの接続部材1を備える。但し、本発明に係る接続部材の数量は、複数には限定されない。接続部材の数量は、接続対象となる第1の導電部材及び第2の導電部材の対の数に応じて、適宜変更することができる。
【0025】
図2に示すように、接続部材1は、軸方向における一端部側にスリーブ状の第1接続部11を有し、軸方向における他端部側にスリーブ状の第2接続部12を有し、第1接続部11と第2接続部12との間に中空状の離間部13を有する。接続部材1は、第1接続部11がケース200aの内部空間ISに位置し、第2接続部12がケース200aの外部空間ESに位置し、且つ、離間部13がホルダー3の取付孔3bに位置するように、ホルダー3の取付孔3bに挿入される。
【0026】
本実施形態に係る第1接続部11及び第2接続部12は、何れも中空構造を有するスリーブ状に形成されており、圧着により導電部材と接続される部位である圧着部として、接続部材1の軸方向端部に形成されている。但し、本発明はこれに限定されず、第1接続部と第2接続部とのうち少なくとも一方がスリーブ状であればよい。つまり、接続部材は、軸方向両端部のうち少なくとも一方がスリーブ状であればよい。また、本発明は、第1接続部と第2接続部とのうち少なくとも一方が圧着部として形成されてもよく、第1接続部
と第2接続部の両方が圧着部である必要はない。例えば、第1接続部と第2接続部とのうち一方はスリーブ状の圧着部として構成され、他方はスリーブ状に形成されずにスリーブとは反対側の端部にバスバーのような導電部材を螺合等により接続可能に構成されてもよい。以下、第1接続部11と第2接続部12とを区別しないで説明する場合には、単に「圧着部」と称するものとする。
【0027】
第1接続部11は、接続部材1の一端部により形成されており、リード線10を接続可能である。リード線10の先端部である導電線101が第1接続部11に挿入された状態で第1接続部11が加締められることで、リード線10が第1接続部11に圧着される。
【0028】
第2接続部12は、接続部材1の他端部により形成されており、リード線20を接続可能である。リード線20の先端部である導電線201が第2接続部12に挿入された状態で第2接続部12が加締められることで、リード線20が第2接続部12に圧着される。
【0029】
図2に示すように、リード線10とリード線20とは、接続部材1の内部において互いに離間した状態で、接続部材1に圧着される。
【0030】
離間部13は、接続部材1の両端部間の部位により中空状に形成されている。第1接続部11と第2接続部12との間に離間部13が介在することによって、リード線10とリード線20とが互いに離間し、非接触状態が形成されている。離間部13は、シール構造2が配置されることで内部がシールされる。また、離間部13は、多連グロメット4によって覆われることで外周がシールされる。なお、本実施形態では、軸方向における接続部材1の中央位置に離間部13が形成されているが、本発明はこれに限定されない。離間部13の位置は、接続部材1の軸方向における中央位置でなくてもよい。
【0031】
ここで、接続部材1の径方向であって圧着のために圧着部(第1接続部11及び第2接続部12)が加圧される方向を「圧着方向」と称する。また、第1接続部11の圧着方向を「第1圧着方向」と称し、第2接続部12の圧着方向を「第2圧着方向」と称する。本実施形態に係る接続部材1では、第1圧着方向と第2圧着方向とが一致している。但し、後述の変形例2のように、第1圧着方向と第2圧着方向とが異なっていてもよい。
【0032】
図3は、実施形態に係る接続部材1の圧着加工前の状態を示す側面図である。図3では、圧着加工により塑性変形する前の接続部材1を第1圧着方向(第2圧着方向)及び軸方向に対して直交する方向に沿って視認した状態が図示されている。図4は、実施形態に係る接続部材1にリード線10,20が圧着された状態を模式的に示す側面図である。図3及び図4では、離間部13にシール構造2が配置された状態が図示されている。図4に示すように、圧着加工によって圧着部(第1接続部11及び第2接続部12)が圧着方向へ圧し潰されて塑性変形することで、リード線10の導電線101が第1接続部11に圧着され、リード線20の導電線201が第2接続部12に圧着される。
【0033】
ここで、離間部13は、後述のように多連グロメット4により外周がシールされる部位であるため、離間部13と多連グロメット4との密着性を向上させ、外周のシール性能を向上させる観点では、接続部材1の圧着加工の際に可能な限り離間部13の塑性変形を抑制することが好ましい。圧着部の塑性変形の影響による離間部13の変形量が大きい場合には、外周のシール性能を確保するために、離間部13の軸方向長さを大きくし、圧着部から十分に離れた位置(つまり、離間部13の変形量が小さくなる位置)で外周をシールする必要がある。
【0034】
図5は、実施形態に係る接続部材1の圧着加工の前後における離間部13の断面図である。図5では、接続部材1にリード線10,20を圧着する前の離間部13の断面と接続
部材1にリード線10,20を圧着した後の離間部13の断面とが図示されている。図5で示される断面は、軸方向に対して直交する断面である。図5に示す例では、離間部13は、圧着加工における圧着部の塑性変形の影響によって圧着方向へ潰れ、楕円状に変形する。ここで、圧着加工前の離間部13の外径をDBとし、圧着加工後の楕円状に変形した離間部13の短径(短手方向の外径)をDAとする。そして、DBとDAとの差である変形量をDXとする。つまり、DX=DB-DAである。このとき、外周のシール性能を向上させる観点では、DXは、0.085[mm]以下であることが好ましい。つまり、DX≦0.085[mm]となるように、接続部材1が構成されていることが好ましい。離間部13のDXを0.085[mm]以下に抑えることで、離間部13における外周のシール性能を向上させることができる。更に、離間部13の軸方向長さは、シール構造2を配置可能なスペースを確保できる分であれば足り、離間部13の塑性変形を考慮して大きくする必要がない。これにより、離間部13の長さを短く設定することができ、接続部材1の省スペース化や低コスト化を実現することができる。
【0035】
図3に示すように、接続部材1における圧着部と離間部13との間(つまり、圧着部とシール構造2との間)には、後述の変形例1のようにスリット14(図6参照)が形成されておらず、接続部材1が軸方向及び周方向に連続している。このとき、圧着部の先端とシール構造2との軸方向における距離をL1とする。L1は、詳細には、圧着部における軸方向の最先端の点(つまり、シール構造2から最も遠い点)からシール構造2における当該圧着部に最も近い点までの軸方向における距離である。また、圧着方向における圧着部の圧着前(塑性変形前)の高さをH1とする。このとき、L1≧H1×0.88とすることが好ましい。そうすることで、圧着部の塑性変形による離間部13への影響を低下させることができ、離間部13の塑性変形を抑制することができる。これにより、離間部13の変形量であるDXを0.085[mm]以下に抑えることができる。その結果、離間部13における外周のシール性能をより向上させることができる。更に、省スペース化の観点では、L1≦H1×6とすることが好ましく、L1≦H1×4とすることがより好ましい。そうすることで、接続部材1の大型化を抑制し、省スペース化を実現できる。
【0036】
また、第1接続部11における接続部材1の厚み(径方向の肉厚)をT1とし、第2接続部12における接続部材1の厚みをT2とし、離間部13における接続部材1の厚みをT3とする。このとき、T1<T3且つT2<T3のように設定してもよい。つまり、圧着部の厚みよりも離間部13の厚みの方が大きく設定されてもよい。離間部13を圧着部よりも厚く形成することで、圧着部を離間部13よりも変形し易くすることができる。その結果、接続部材1の圧着加工においては、第1接続部11及び第2接続部12が離間部13よりも優先的に塑性変形するため、離間部13の塑性変形を抑制することができる。
【0037】
[シール構造]
図2に示すように、本実施形態に係るシール構造2は、弾性材料により形成された球状の栓体であり、離間部13に配置されることで、接続部材1の内部をシールする。シール構造2は、例えばACM(アクリルゴム)等のゴム製であり、弾性変形可能である。シール構造2は、接続部材1の径方向に圧縮された状態で離間部13の内部に嵌入されている。シール構造2の復元力によりシール構造2の表面と離間部13の内周面とが隙間なく接触することで、離間部13が閉塞された状態となり、接続部材1の内部がシールされる。これにより、流体が接続部材1の内部を通り抜けて漏出することが防止される。
【0038】
なお、本発明に係るシール構造の形状は、球体には限定されない。シール構造は、円柱体であってもよいし、外周にテーパが形成された円錐台であってもよく、弾性変形可能な突起や凹凸が外周に形成されてもよい。また、その周縁が面取りされていてもよい。また、シール構造の材料は、ゴムには限定されない。シール構造の材料としては、ゴムなどの弾性体の他に、樹脂材料や接着剤などの硬化物、金属材料等を例示することができるが、
これらに限らない。シール構造は、例えば、後述の変形例4のように樹脂インサート成形により接続部材と一体成形された、樹脂成形体であってもよい。また、本発明に係るシール構造は、接続部材の内部をシール可能である限りにおいては、電気絶縁性を有する必要はなく、導電性を有してもよい。シール構造を導電性材料により形成することで、電流は接続部材のみでなくシール構造も流れることができるため、接続構造全体としての導電性能を高めることができる。また、シール構造を導電性材料により形成する場合には、シール構造が第1の導電部材及び第2の導電部材の両方と接触するように配置されることが好ましい。これにより、電流がシール構造を介して第1の導電部材と第2の導電部材との間で流れ易くなり、導電性能がより向上する。シール構造を金属製とする場合、シール構造は、軸方向に対して直交して配置されると共に接続部材の内部空間を軸方向に仕切る金属製の仕切板を例えばロウ付けにより接続部材に固定したものであってもよい。また、本実施形態では、シール構造を接続部材1とは別体の部品であるシール構造2として構成しているが、シール構造は接続部材と一体の部品として構成されてもよい。つまり、シール構造が接続部材の一部であってもよい。その場合、シール構造は、例えば、後述の変形例3のように軸方向に対して略直交して配置されると共に接続部材1の内部空間を軸方向に仕切る金属製の隔壁として形成されてもよい。
【0039】
[多連グロメット]
図2に示すように、多連グロメット4は、弾性及び電気絶縁性を有する材料によりプレート状に形成されており、接続部材1の外周を覆うようにホルダー3の凹部3aに配置されることで、接続部材1の外周をシールする。より詳細には、多連グロメット4は、接続部材1のうち、離間部13を含む軸方向における一部位の外周を連続して覆っている。但し、本発明において、外周シール部材が覆う接続部材1の部位は特に限定されない。本発明に係る外周シール部材は、接続部材の軸方向における少なくとも一部の外周を周方向に連続して覆うものであればよいが、これに限らない。
【0040】
多連グロメット4には、接続部材1の軸方向に沿って延在する貫通孔4aが形成されている。貫通孔4aには、接続部材1が挿通される。本実施形態では、接続部材1の数に対応して、3つの貫通孔4aが形成されている。これにより、多連グロメット4は、複数(本例では3つ)のグロメットが一体化された構造を有する。多連グロメット4の材料は、特に限定されないが、例えば、ACM(アクリルゴム)等のゴムや樹脂材料等が挙げられる。
【0041】
多連グロメット4の外周部には、突起41が形成されており、貫通孔4aの内壁には、突起42が形成されている。突起41,42は、周方向に連続する環状の突起として形成されており、弾性変形可能である。多連グロメット4は、突起41が圧し潰されて圧縮された状態でホルダー3の凹部3aに嵌め込まれる。突起41の復元力により多連グロメット4の外周面と凹部3aの内周面とが隙間なく接触することで、多連グロメット4とホルダー3との間がシールされる。また、貫通孔4aには、突起42を圧し潰して圧縮するように接続部材1が挿通される。突起42の復元力により接続部材1の外周面と貫通孔4aの内壁面とが隙間なく接触することで、接続部材1と多連グロメット4との間がシールされる。以上のようにして、接続部材1とホルダー3との間が、多連グロメット4によってシールされる。その結果、接続部材1の外周がシールされる。これにより、流体が接続部材1の外周を通り抜けて漏出することが防止される。
【0042】
なお、本実施形態では、複数のグロメットが一体化した多連グロメット4を外周シール部材として採用したが、本発明に係る外周シール部材は、これに限定されない。外周シール部材は、接続部材毎に外周をシールする単一のグロメットや単一のOリングであってもよい。また、複数の接続部材同士の電気絶縁性が確保される限りにおいては、本発明に係る外周シール部材は、電気絶縁性を有する必要はなく、導電性を有してもよい。また、外
周シール部材は、樹脂インサート成形により接続部材やホルダーと一体成形された、樹脂成形体であってもよい。
【0043】
[作用・効果]
以上のように、本実施形態に係る接続構造100は、流体の圧力が作用するモータ200に取り付けられ、モータ200の内部に設けられたリード線10とモータ200の外部に設けられたリード線20とを電気的に接続する。接続構造100は、導電性を有し、軸方向両端部のうち少なくとも一方がスリーブ状の接続部材1と、接続部材1内に配置されるシール構造2と、を備える。接続部材1は、一端側に形成されると共にリード線10を接続可能な第1接続部11と、他端側に形成されると共にリード線20を接続可能な第2接続部12と、第1接続部11と第2接続部12との間に形成されると共に接続部材1の内部においてリード線10とリード線20とを離間させる離間部13と、を有する。そして、シール構造2は、離間部13に配置されることで接続部材1の内部をシールする。
【0044】
以上のように構成された接続構造100は、リード線10を第1接続部11に接続し、リード線20を第2接続部12に接続することで、リード線10とリード線20とを電気的に接続できる。また、シール構造2を離間部13に配置し、接続部材1の内部をシールすることで、流体が接続部材1の内部を通り抜けて漏出することを防止できる。ここで、本実施形態では、リード線10の導電線101及びリード線20の導電線201が撚り線として形成されているため、毛細管現象によりオイルがリード線10,20の内部に浸透する可能性があるが、リード線10,20同士が接続部材1の内部においてシール構造2により隔離されているため、オイルがリード線10,20の内部を通って漏出することも防止されている。以上のように、本実施形態によれば、モータ200の内部空間ISのオイルが接続部材1の内部を通ってモータ200の外部空間ESに漏出することを抑制できる。その結果、本実施形態によれば、接続構造100のシール性能を向上させることができる。
【0045】
また、本実施形態に係る接続構造100は、接続部材1の内部にシール部材を配置するという簡素な構造を採用しているため、比較的安価であり、モータ200のように運転時に振動が生じる機器に適用した場合でも確実にシールすることができる。その結果、本実施形態に係る接続構造100によれば、比較的安価な構造で確実にシール性能の向上を実現できる。
【0046】
なお、本実施形態では、モータ200のケース200aに取り付けられるホルダー3に取付孔3bが形成されているが、本発明はこれに限定されない。ホルダー3は、本発明において必須の構成ではなく、本発明に係る取付孔は、例えば、機器の筐体に形成されていてもよい。
【0047】
また、本実施形態において、第1接続部11と第2接続部12とのうち少なくとも一方は、圧着により導電部材と接続される圧着部として接続部材1の軸方向端部に形成されている。これによると、第1接続部11と第2接続部12とのうち少なくとも一方を比較的簡素な構造の圧着部として形成することで、比較的安価な構造で導電部材同士を電気的に接続することができる。但し、本発明において、第1接続部及び第2接続部の接続形式は、圧着には限定されない。
【0048】
また、本実施形態に係るシール構造2は、離間部13に嵌入された弾性体により形成されている。これによると、接続部材1の内部を確実にシールすることができる。
【0049】
また、本実施形態に係る接続構造100は、接続部材1の外周に配置される多連グロメット4を更に備える。多連グロメット4は、接続部材1の軸方向における少なくとも一部
の外周を周方向に連続して覆うことで、接続部材1の外周をシールする。これによると、多連グロメット4によって接続部材1の外周をシールすることで、流体が接続部材1の外周を通り抜けて漏出することを防止できる。つまり、モータ200の内部空間ISのオイルが接続部材1の外周を通り抜けてモータ200の外部空間ESに漏出することを抑制できる。このように、本実施形態に係る接続構造100は、シール構造2によって接続部材1の内部をシールすると共に多連グロメット4によって接続部材1の外周をシールすることができる。その結果、モータ200の内外を電気的に接続しながらもモータ200の内部空間ISのオイルがモータ200の外部空間ESに漏出することを抑制できる。なお、本発明において、外周シール部材は必須の構成ではない。
【0050】
[変形例]
以下、本実施形態に係る接続部材の変形例について説明する。以下の変形例の説明では、図1~5を用いて説明した接続部材1との相違点を中心に説明し、接続部材1と同様の構成については同一の符号を付すことにより詳細な説明は割愛する。
[変形例1]
【0051】
図6は、実施形態の変形例1に係る接続部材1Aの圧着加工前の状態を示す側面図である。図6では、圧着加工により塑性変形する前の接続部材1Aを第1圧着方向及び軸方向に対して直交する方向に沿って視認した状態が図示されている。なお、変形例1では、第1圧着方向と第2圧着方向とが一致している。また、図7は、実施形態の変形例1に係る接続部材1Aの圧着加工前の状態を示す上面図である。図7では、圧着加工により塑性変形する前の接続部材1Aを第1圧着方向(第2圧着方向)に沿って視認した状態が図示されている。図6及び図7では、離間部13にシール構造2が配置された状態が図示されている。図6及び図7に示すように、接続部材1Aにおける、第1接続部11と離間部13との間と、第2接続部12と離間部13との間には、接続部材1Aを貫通する切り欠きであるスリット14が形成されている。つまり、圧着部とシール構造2との間において、接続部材1Aにスリット14が形成されている。図7に示すように、スリット14は、直線状に形成されており、圧着方向及び軸方向に対して略直交する方向に沿って延在している。圧着方向視において、スリット14は、接続部材1Aの中心軸A1を跨ぐように延在しており、中心軸A1を基準として軸対象に形成されている。スリット14によって、接続部材1Aが第1接続部11と離間部13と第2接続部12とに区切られている。以下、第1接続部11と離間部13との間に形成されたスリット14には符号141を付し、第2接続部12と離間部13との間のスリット14には符号142を付して説明する場合がある。
【0052】
なお、本発明に係るスリットの形状は、直線状には限定されない。本発明に係るスリットは、長軸方向が接続部材1Aの軸方向に対して略直交する楕円形状であってもよいし、長手方向が接続部材1Aの軸方向に対して略直交する多角形状であってもよい。多角形状としては、三角形状、矩形状、菱形形状等が例示される。また、軸方向に対するスリットの傾斜角度は略90°には限定されない。スリットは、軸方向及び径方向に対して傾斜してもよい。但し、本発明に係る接続部材において、スリットは必須ではない。また、本発明において接続部材にスリットを形成する場合には、第1接続部と第2接続部とのうち少なくとも一方の圧着部とシール構造との間に形成されていればよく、両方に形成されていなくともよい。
【0053】
ここで、圧着部における、軸方向においてスリット14に隣接する領域を、「スリット隣接領域」と称し、図6及び図7においてドットパターンで表す。以下、第1接続部11のスリット隣接領域には符号11aを付し、第2接続部12のスリット隣接領域には符号12aを付して説明する場合がある。スリット隣接領域11a,12aは、スリット14に隣接することで、接続部材1Aにおける他の部位よりも変形し易くなっている。そのた
め、接続部材1Aの圧着加工において、第1接続部11及び第2接続部12が圧着方向に加圧されるときは、スリット隣接領域11a,12aが離間部13よりも優先的に塑性変形する。これにより、離間部13の塑性変形をより抑制することができる。
【0054】
圧着加工によってスリット隣接領域11a,12aが圧着方向へ圧し潰されて塑性変形することで、リード線10の導電線101が第1接続部11に圧着され、リード線20の導電線201が第2接続部12に圧着される。
【0055】
以上のように、変形例1によると、接続部材1Aにおける圧着部とシール構造2との間にスリット14が形成されることで、接続部材1Aの圧着加工において離間部13の塑性変形を抑制することができる。その結果、離間部13における外周のシール性能を向上させることができる。
【0056】
ここで、図6に示すように、圧着部の先端とシール構造2との軸方向における距離をL2とする。L2は、詳細には、シール構造2との間にスリット14が形成されている圧着部における軸方向の最先端の点(つまり、シール構造2から最も遠い点)からシール構造2における当該圧着部に最も近い点までの軸方向における距離である。また、圧着方向における圧着部の圧着前(塑性変形前)の高さをH2とする。また、圧着方向におけるスリット14の深さをS1とする。深さS1は、接続部材1Aを圧着方向及び軸方向に対して直交する方向に沿って視認したときのスリット14の開口部から末端までの距離である。
【0057】
このとき、L2≧H2×0.68、且つ、0.25≦S1/H2≦0.67であることが好ましい。0.25≦S1/H2且つL2≧H2×0.68とすることで、圧着部の塑性変形による離間部13への影響を低下させることができ、離間部13の塑性変形を抑制することができる。これにより、離間部13の変形量であるDXを0.085[mm]以下に抑えることができる。その結果、離間部13における外周のシール性能をより向上させることができる。また、S1/H2≦0.67とすることで、スリット14が形成されている部位における接続部材1Aの断面積を確保することができ、接続部材1Aの導電性能を確保することができる。更に、省スペース化の観点では、L2≦H2×6とすることが好ましく、L2≦H2×4とすることがより好ましい。そうすることで、接続部材1Aの大型化を抑制し、省スペース化を実現できる。
【0058】
[変形例2]
図8は、実施形態の変形例2に係る接続部材1Bの圧着加工前の状態を示す斜視図である。図8に示すように、変形例2に係る接続部材1Bは、第1接続部11側に形成されたスリット141と第2接続部12側に形成されたスリット142とが周方向において異なる位置に形成されている点で、上述の接続部材1Aと相違する。換言すると、スリット141とスリット142は、接続部材1Bの中心軸A1回りにずれて配置されている。つまり、第1接続部11のスリット隣接領域11aと第2接続部12のスリット隣接領域12aとが中心軸A1回りに互いに傾いて配置されている。そのため、第1接続部11の第1圧着方向と第2接続部12の第2圧着方向とが異なっている。これによると、第1接続部11の第1圧着方向と第2接続部12の第2圧着方向とを異ならせることで、圧着加工において第1接続部11が圧し潰される向きと第2接続部12が圧し潰される向きとを異ならせることができる。これにより、圧着加工における第1接続部11及び第2接続部12の塑性変形による離間部13への影響を低減することができる。その結果、離間部13の塑性変形を抑制することができる。
【0059】
ここで、スリット141とスリット142との中心軸A1回りのずれ角、つまり、第1圧着方向と第2圧着方向とがなす劣角の角度をθ1とする。このとき、離間部13の塑性変形を抑制する観点では、30[°]≦θ1≦180[°]とすることが好ましいが、こ
れに限らない。
【0060】
[変形例3]
図9は、実施形態の変形例3に係る接続構造100Cの断面図である。図9に示すように、変形例3に係る接続構造100Cは、シール構造2Cが接続部材1Cの一部により形成されている点で、上述の接続構造100と相違する。変形例3に係るシール構造2Cは、離間部13を閉塞する金属製の隔壁として、接続部材1Cと一体に形成されている。シール構造2Cは、軸方向に対して略直交して配置されており、接続部材1Cの内部空間は、シール構造2Cによって軸方向に仕切られている。変形例3によると、接続部材1Cの内部を確実にシールすることができる。
【0061】
[変形例4]
図10は、実施形態の変形例4に係る接続構造100Dの断面図である。図10に示すように、変形例4に係る接続構造100Dは、シール構造2Dが離間部13に充填された樹脂成形体により形成されている点で、上述の接続構造100と相違する。変形例4に係るシール構造2Dは、例えば、樹脂インサート成形により接続部材1と一体に成形されている。シール構造2Dを形成する樹脂成形体は、熱可塑性樹脂の成形体であってもよいし、接着剤などの熱硬化性樹脂の硬化物であってもよい。図10に示すように、シール構造2Dは、第1接続部11及び第2接続部12の内部まで充填されてリード線10,20の導電線101,201を固定してもよい。変形例4によると、接続部材1の内部を確実にシールすることができる。
【0062】
[シミュレーション・試験]
本実施形態に係る接続部材に圧着加工を行った場合の接続部材の変形量をCAE解析によってシミュレーションした。また、接続構造における漏出試験を実施した。なお、本発明は、以下に説明する実施例に限定されるものではない。
【0063】
実施例1~8,13,14,16,17,19,20および比較例1として、変形例1に係る接続部材1Aに相当するスリットを有する解析用モデルを作成した。実施例9~12,15,18,21,22および比較例2,3として、接続部材1に相当するスリットを有さない解析用モデルを作成した。表1に、実施例1~22および比較例1~3の条件、シミュレーション結果、及び漏出試験の結果を示す。なお、h1は、シール長さであり、シール構造の軸方向長さの半分の値を表す(図3及び図6参照)。
【表1】
【0064】
シミュレーションでは、解析用モデルに対してリード線を圧着するための圧着加工を想定した圧力を圧着方向から付加し、解析用モデルの各部における変形量DXを解析した。解析用モデルの材料は銅とした。圧着部に付加する圧力は、接続部材の寸法に適合した適切な圧着工具により圧着加工する場合に想定される圧力を設定した。
【0065】
図11は、実施例1のシミュレーション結果を示す図である。図11(A)は、解析用モデルの斜視図である。図11(B)は、解析モデルの離間部13における、軸方向に対して直交する断面図である。図11(A),(B)に示すグラデーションスケールは、変形量を表している。
【0066】
表1に示すように、スリットがない場合(実施例9~12,15,18,21,22)には、実施例9~12,15のようにL1≧H1×0.88とすることで変形量DXが0.085以下となることが分かった。また、スリットがある場合(実施例1~8,13,14,16,17,19,20)には、実施例1~8,13,14,16,17のように0.25≦S1/H2且つL2≧H2×0.68とすることで変形量DXが0.085以下となることが分かった。
【0067】
漏出試験では、実施例1,2,3,19,20,21および比較例1~3について、図1図2に示す接続構造を実際に製作し、所定の条件にて流体の漏出試験を行った。なお、比較例1~3では、接続部材の内部にシール構造を配置しなかった。漏出試験では、接続部材の内部及び外周の夫々について、流体漏出の有無を確認した。流体流出が発生しなかった場合には判定を「〇」とし、比較的少量の流体漏出が認められた場合には判定を「△」とし、比較的多量の流体漏出が認められた場合には判定を「×」とした。表1に示すように、シール構造を有する実施例1,2,3,19,20,21については、内部からの液体漏出は発生しなかった。シール構造を有さない比較例1~3については、内部からの流体漏出が発生した。実施例1,2,3および比較例1については外周側からの流体の漏出は発生せず、実施例19,20,21および比較例2については外周側からのごく少量の漏出の発生が認められた。比較例3については外周側からの漏出の発生が認められた。これにより、変形量DXを0.085[mm]以下に抑えることで外周側のシール性能を更に向上できることが分かった。
【0068】
<その他>
以上、本発明に係る接続構造の実施形態について説明したが、本明細書に開示された各々の態様は、本明細書に開示された他のいかなる特徴とも組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0069】
1・・・・・・接続部材
2・・・・・・シール構造
3・・・・・・ホルダー
4・・・・・・多連グロメット(外周シール部材の一例)
5・・・・・・ガスケット
6・・・・・・ボルト
10,20・・リード線(第1の導電部材及び第2の導電部材の一例)
11・・・・・第1接続部
12・・・・・第2接続部
13・・・・・離間部
100・・・・接続構造
【要約】
【課題】導電部材同士を電気的に接続するための接続構造において、シール性能を向上可能な技術を提供する。
【解決手段】接続構造は、導電性を有し、軸方向両端部のうち少なくとも一方がスリーブ状の接続部材と、接続部材内に配置されるシール構造と、を備え、接続部材は、一端側に形成されると共に第1の導電部材を接続可能な第1接続部と、他端側に形成されると共に第2の導電部材を接続可能な第2接続部と、第1接続部と第2接続部との間に形成されると共に接続部材の内部において第1の導電部材と第2の導電部材とを離間させる離間部と、を有し、シール構造は、離間部に配置されることで、接続部材の内部をシールする。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
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図9
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図11