(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 29/786 20060101AFI20241022BHJP
H01L 21/8234 20060101ALI20241022BHJP
H01L 27/088 20060101ALI20241022BHJP
H10B 10/00 20230101ALI20241022BHJP
H10B 12/00 20230101ALI20241022BHJP
H10B 41/70 20230101ALI20241022BHJP
H10B 99/00 20230101ALI20241022BHJP
【FI】
H01L29/78 617N
H01L27/088 H
H01L29/78 613B
H01L29/78 618B
H10B10/00
H10B12/00 621Z
H10B12/00 671C
H10B12/00 671Z
H10B12/00 801
H10B41/70
H10B99/00 441
(21)【出願番号】P 2023206602
(22)【出願日】2023-12-07
(62)【分割の表示】P 2023092931の分割
【原出願日】2011-12-22
【審査請求日】2023-12-22
(31)【優先権主張番号】P 2010293246
(32)【優先日】2010-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】山崎 舜平
【審査官】田付 徳雄
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-274773(JP,A)
【文献】特開2010-141230(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0148171(US,A1)
【文献】特開2007-012040(JP,A)
【文献】特開2004-265944(JP,A)
【文献】特表2007-529117(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0199879(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/786
H01L 21/8234
H01L 27/088
H10B 10/00
H10B 12/00
H10B 41/70
H10B 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のトランジスタ、第2のトランジスタおよび第3のトランジスタを有し、
前記第1のトランジスタは、第1のシリコン半導体を有し、
前記第1のシリコン半導体は、第1のチャネル形成領域を有し、
前記第2のトランジスタは、第2のシリコン半導体を有し、
前記第2のシリコン半導体は、第2のチャネル形成領域を有し、
前記第3のトランジスタは、第1のゲート電極と、第1のゲート絶縁層と、酸化物半導体層と、第2のゲート絶縁層と、第2のゲート電極と、ソース電極と、ドレイン電極と、を有し、
前記第1のゲート電極は、第1の絶縁層の上に設けられ、
前記第1のゲート絶縁層は、前記第1のゲート電極の上に設けられ、
前記酸化物半導体層は、第3のチャネル形成領域を有し、
前記酸化物半導体層は、前記第1のゲート絶縁層の上に設けられ、
前記第2のゲート絶縁層は、前記酸化物半導体層の上に設けられ、
前記第2のゲート電極は、前記第2のゲート絶縁層の上に設けられ、
前記第2のゲート電極の上に、第2の絶縁層が設けられ、
前記第2の絶縁層の上に第3の絶縁層が設けられ、
前記第3の絶縁層の上に前記ソース電極および前記ドレイン電極が設けられ、
前記ソース電極は、前記第2の絶縁層および前記第3の絶縁層に設けられた第1の開口を介して前記酸化物半導体層と接する領域を有し、
前記ドレイン電極は、前記第2の絶縁層および前記第3の絶縁層に設けられた第2の開口を介して前記酸化物半導体層と接する領域を有し、
前記第3のトランジスタのソース電極またはドレイン電極の一方は、前記第1のトランジスタのゲートと電気的に接続され、
前記第1のトランジスタのソースまたはドレインの一方は、前記第2のトランジスタのソースまたはドレインの一方と電気的に接続される半導体装置。
【請求項2】
第1のトランジスタ、第2のトランジスタおよび第3のトランジスタを有し、
前記第1のトランジスタは、第1のシリコン半導体を有し、
前記第1のシリコン半導体は、第1のチャネル形成領域を有し、
前記第2のトランジスタは、第2のシリコン半導体を有し、
前記第2のシリコン半導体は、第2のチャネル形成領域を有し、
前記第3のトランジスタは、第1のゲート電極と、第1のゲート絶縁層と、酸化物半導体層と、第2のゲート絶縁層と、第2のゲート電極と、ソース電極と、ドレイン電極と、を有し、
前記第1のゲート電極は、第1の絶縁層の上に設けられ、
前記第1のゲート絶縁層は、前記第1のゲート電極の上に設けられ、
前記酸化物半導体層は、第3のチャネル形成領域を有し、
前記酸化物半導体層は、前記第1のゲート絶縁層の上に設けられ、
前記第2のゲート絶縁層は、前記酸化物半導体層の上に設けられ、
前記第2のゲート電極は、前記第2のゲート絶縁層の上に設けられ、
前記第2のゲート電極の上に、第2の絶縁層が設けられ、
前記第2の絶縁層の上に第3の絶縁層が設けられ、
前記第3の絶縁層の上に前記ソース電極および前記ドレイン電極が設けられ、
前記ソース電極は、前記第2の絶縁層および前記第3の絶縁層に設けられた第1の開口を介して前記酸化物半導体層と接する領域を有し、
前記ドレイン電極は、前記第2の絶縁層および前記第3の絶縁層に設けられた第2の開口を介して前記酸化物半導体層と接する領域を有し、
前記第3のトランジスタのソース電極またはドレイン電極の一方は、前記第1のトランジスタのゲートと電気的に接続され、
前記第1のトランジスタのソースまたはドレインの一方は、前記第2のトランジスタのソースまたはドレインの一方と電気的に接続され、
前記第2のトランジスタのゲートは、第1の配線に電気的に接続され、
前記第3のトランジスタのゲートは、前記第1の配線と異なる第2の配線に電気的に接続される半導体装置。
【請求項3】
第1のトランジスタ、第2のトランジスタおよび第3のトランジスタを有し、
前記第1のトランジスタは、第1のシリコン半導体を有し、
前記第1のシリコン半導体は、第1のチャネル形成領域を有し、
前記第2のトランジスタは、第2のシリコン半導体を有し、
前記第2のシリコン半導体は、第2のチャネル形成領域を有し、
前記第3のトランジスタは、第1のゲート電極と、第1のゲート絶縁層と、酸化物半導体層と、第2のゲート絶縁層と、第2のゲート電極と、ソース電極と、ドレイン電極と、を有し、
前記第1のゲート電極は、第1の絶縁層の上に設けられ、
前記第1のゲート絶縁層は、前記第1のゲート電極の上に設けられ、
前記酸化物半導体層は、第3のチャネル形成領域を有し、
前記酸化物半導体層は、前記第1のゲート絶縁層の上に設けられ、
前記第2のゲート絶縁層は、前記酸化物半導体層の上に設けられ、
前記第2のゲート電極は、前記第2のゲート絶縁層の上に設けられ、
前記第2のゲート電極の上に、第2の絶縁層が設けられ、
前記第2の絶縁層の上に第3の絶縁層が設けられ、
前記第3の絶縁層の上に前記ソース電極および前記ドレイン電極が設けられ、
前記ソース電極は、前記第2の絶縁層および前記第3の絶縁層に設けられた第1の開口を介して前記酸化物半導体層と接する領域を有し、
前記ドレイン電極は、前記第2の絶縁層および前記第3の絶縁層に設けられた第2の開口を介して前記酸化物半導体層と接する領域を有し、
前記第3のトランジスタのソース電極またはドレイン電極の一方は、前記第1のトランジスタのゲートと電気的に接続され、
前記第1のトランジスタのソースまたはドレインの一方は、前記第2のトランジスタのソースまたはドレインの一方と電気的に接続され、
前記第3のトランジスタのソース電極またはドレイン電極の他方は、前記第2のトランジスタのソースまたはドレインの他方と電気的に直接接続されていない半導体装置。
【請求項4】
第1のトランジスタ、第2のトランジスタおよび第3のトランジスタを有し、
前記第1のトランジスタは、第1のシリコン半導体を有し、
前記第1のシリコン半導体は、第1のチャネル形成領域を有し、
前記第2のトランジスタは、第2のシリコン半導体を有し、
前記第2のシリコン半導体は、第2のチャネル形成領域を有し、
前記第3のトランジスタは、第1のゲート電極と、第1のゲート絶縁層と、酸化物半導体層と、第2のゲート絶縁層と、第2のゲート電極と、ソース電極と、ドレイン電極と、を有し、
前記第1のゲート電極は、第1の絶縁層の上に設けられ、
前記第1のゲート絶縁層は、前記第1のゲート電極の上に設けられ、
前記酸化物半導体層は、第3のチャネル形成領域を有し、
前記酸化物半導体層は、前記第1のゲート絶縁層の上に設けられ、
前記第2のゲート絶縁層は、前記酸化物半導体層の上に設けられ、
前記第2のゲート電極は、前記第2のゲート絶縁層の上に設けられ、
前記第2のゲート電極の上に、第2の絶縁層が設けられ、
前記第2の絶縁層の上に第3の絶縁層が設けられ、
前記第3の絶縁層の上に前記ソース電極および前記ドレイン電極が設けられ、
前記ソース電極は、前記第2の絶縁層および前記第3の絶縁層に設けられた第1の開口を介して前記酸化物半導体層と接する領域を有し、
前記ドレイン電極は、前記第2の絶縁層および前記第3の絶縁層に設けられた第2の開口を介して前記酸化物半導体層と接する領域を有し、
前記第3のトランジスタのソース電極またはドレイン電極の一方は、前記第1のトランジスタのゲートと電気的に接続され、
前記第1のトランジスタのソースまたはドレインの一方は、前記第2のトランジスタのソースまたはドレインの一方と電気的に接続され、
前記第2のゲート絶縁層は、前記酸化物半導体層の上面および側面と接する領域を有し、
前記第2のゲート絶縁層は、前記第1のゲート絶縁層の上面と接する領域を有する半導体装置。
【請求項5】
第1のトランジスタ、第2のトランジスタおよび第3のトランジスタを有し、
前記第1のトランジスタは、第1のシリコン半導体を有し、
前記第1のシリコン半導体は、第1のチャネル形成領域を有し、
前記第2のトランジスタは、第2のシリコン半導体を有し、
前記第2のシリコン半導体は、第2のチャネル形成領域を有し、
前記第3のトランジスタは、第1のゲート電極と、第1のゲート絶縁層と、酸化物半導体層と、第2のゲート絶縁層と、第2のゲート電極と、ソース電極と、ドレイン電極と、を有し、
前記第1のゲート電極は、第1の絶縁層の上に設けられ、
前記第1のゲート絶縁層は、前記第1のゲート電極の上に設けられ、
前記酸化物半導体層は、第3のチャネル形成領域を有し、
前記酸化物半導体層は、前記第1のゲート絶縁層の上に設けられ、
前記第2のゲート絶縁層は、前記酸化物半導体層の上に設けられ、
前記第2のゲート電極は、前記第2のゲート絶縁層の上に設けられ、
前記第2のゲート電極の上に、第2の絶縁層が設けられ、
前記第2の絶縁層の上に第3の絶縁層が設けられ、
前記第3の絶縁層の上に前記ソース電極および前記ドレイン電極が設けられ、
前記ソース電極は、前記第2の絶縁層および前記第3の絶縁層に設けられた第1の開口を介して前記酸化物半導体層と接する領域を有し、
前記ドレイン電極は、前記第2の絶縁層および前記第3の絶縁層に設けられた第2の開口を介して前記酸化物半導体層と接する領域を有し、
前記第3のトランジスタのソース電極またはドレイン電極の一方は、前記第1のトランジスタのゲートと電気的に接続され、
前記第1のトランジスタのソースまたはドレインの一方は、前記第2のトランジスタのソースまたはドレインの一方と電気的に接続され、
前記第2のトランジスタがオンして、前記第2のトランジスタのソースまたはドレインの他方と、前記第1のトランジスタのソースまたはドレインの他方とは導通する期間を有する半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
トランジスタなどの半導体素子を含む回路を有する半導体装置及びその作製方法に関する
。例えば、電源回路に搭載されるパワーデバイス、メモリ、サイリスタ、コンバータ、イ
メージセンサなどを含む半導体集積回路、液晶表示パネルに代表される電気光学装置、発
光素子を有する発光表示装置等を部品として搭載した電子機器に関する。
【0002】
なお、本明細書中において半導体装置とは、半導体特性を利用することで機能しうる装置
全般を指し、電気光学装置、発光表示装置、半導体回路及び電子機器は全て半導体装置で
ある。
【背景技術】
【0003】
液晶表示装置に代表されるように、ガラス基板等に形成されるトランジスタはアモルファ
スシリコン、多結晶シリコンなどによって構成されている。アモルファスシリコンを用い
たトランジスタは電界効果移動度が低いもののガラス基板の大面積化に対応することがで
きる。また、多結晶シリコンを用いたトランジスタの電界効果移動度は高いがガラス基板
の大面積化には適していないという欠点を有している。
【0004】
シリコンを用いたトランジスタに対して、酸化物半導体を用いてトランジスタを作製し、
電子デバイスや光デバイスに応用する技術が注目されている。例えば、酸化物半導体とし
て、酸化亜鉛、In-Ga-Zn系酸化物を用いてトランジスタを作製し、表示装置の画
素のスイッチング素子などに用いる技術が特許文献1及び特許文献2で開示されている。
【0005】
特許文献3では、酸化物半導体を用いたスタガ型のトランジスタにおいて、ソース領域及
びドレイン領域と、ソース電極及びドレイン電極との間に、緩衝層として導電性の高い窒
素を含む酸化物半導体を設け、酸化物半導体と、ソース電極及びドレイン電極とのコンタ
クト抵抗を低減する技術が開示されている。
【0006】
また、非特許文献1では、露出した酸化物半導体にアルゴンプラズマ処理をおこなう自己
整合プロセスにより、その部分の酸化物半導体の抵抗率を低下させてソース領域及びドレ
イン領域とした酸化物半導体トランジスタが開示されている。
【0007】
しかしながら、この方法では、酸化物半導体表面を露出させて、アルゴンプラズマ処理を
行うことにより、ソース領域及びドレイン領域となるべき部分の酸化物半導体も同時にエ
ッチングされ、ソース領域及びドレイン領域が薄層化する(非特許文献1の
図8参照)。
その結果、ソース領域及びドレイン領域の抵抗が増加し、また、薄層化に伴うオーバーエ
ッチングによる不良品発生の確率も増加する。
【0008】
この現象は、酸化物半導体へのプラズマ処理に用いるイオン種の、原子半径が大きい場合
に顕著になる。
【0009】
もちろん、酸化物半導体層が十分な厚さであれば問題とはならないのであるが、チャネル
長を200nm以下とする場合には、短チャネル効果を防止する上で、チャネルとなる部
分の酸化物半導体層の厚さは20nm以下、好ましくは10nm以下であることが求めら
れる。そのような薄い酸化物半導体層を扱う場合には、上記のようなプラズマ処理は好ま
しくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2007-123861号公報
【文献】特開2007-96055号公報
【文献】特開2010-135774号公報
【非特許文献】
【0011】
【文献】S. Jeon et al. ”180nm Gate Length Amorphous InGaZnO Thin Film Transistor for High Density Image Sensor Application”, IEDM Tech. Dig., p.504, 2010.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
高速動作可能な半導体装置を提供することを課題の一とする。
【0013】
短チャネル効果による電気特性の変動が生じにくいトランジスタを用いた半導体装置を提
供することを課題の一とする。
【0014】
また、自己整合プロセスによりソース領域及びドレイン領域を形成し、微細化しやすい半
導体装置を提供することを課題の一とする。
【0015】
また、チャネル部分よりも低抵抗なソース領域及びドレイン領域を形成することにより、
ソース電極及びドレイン電極との接触抵抗を低減させることができ、オン電流を向上させ
た半導体装置を提供することを課題の一とする。
【0016】
信頼性の高い半導体装置を提供することを課題の一とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の一態様は、ゲート電極と、ゲート絶縁層と、結晶性を有する酸化物半導体層と、
チャネル保護層を有し、ゲート電極上にゲート絶縁層が形成され、ゲート絶縁層上に酸化
物半導体層が形成され、酸化物半導体層上にチャネル保護層が形成され、酸化物半導体層
は、第1の酸化物半導体領域と、一対の第2の酸化物半導体領域を有し、一対の第2の酸
化物半導体領域は、第1の酸化物半導体領域を挟んで形成され、第1の酸化物半導体領域
は、ゲート絶縁層を介してゲート電極と重畳し、チャネル保護層と接していることを特徴
とする半導体装置である。
【0018】
また、本発明の一態様は、結晶性を有する酸化物半導体層と、ゲート絶縁層と、ゲート電
極を有し、酸化物半導体層は、第1の酸化物半導体領域と、一対の第2の酸化物半導体領
域を有し、一対の第2の酸化物半導体領域は、第1の酸化物半導体領域を挟んで形成され
、第1の酸化物半導体領域は、ゲート絶縁層を介してゲート電極と重畳していることを特
徴とする半導体装置である。
【0019】
酸化物半導体層に非単結晶半導体を用いる。
【0020】
第1の酸化物半導体領域は、CAAC-OS(C Axis Aligned Crys
talline Oxide Semiconductor)を有する。CAAC-OS
は、c軸がCAAC-OSの被形成面の法線ベクトルまたは表面の法線ベクトルに平行な
方向に揃い、かつab面に垂直な方向から見て三角形状または六角形状の原子配列を有し
、c軸に垂直な方向から見て金属原子が層状または金属原子と酸素原子とが層状に配列し
ている結晶部を有する。
【0021】
第2の酸化物半導体領域は、希ガスまたは水素(H)のうち、少なくとも一種類の元素を
5×1019atoms/cm3以上、1×1022atoms/cm3以下の濃度で含
む。
【0022】
酸化物半導体は、In、Ga、Sn及びZnから選ばれた二種以上の元素を含むことがで
きる。
【0023】
第1の酸化物半導体領域はトランジスタのチャネル形成領域となり、一対の第2の酸化物
半導体領域はトランジスタのソース領域及びドレイン領域となる。
【0024】
ボトムゲート構造のトランジスタにおいて、ソース領域及びドレイン領域は、チャネル保
護層をマスクにして、酸化物半導体層にドーパントを添加することで形成できる。該チャ
ネル保護層は、活性層のバックチャネル部分を保護するために形成され、酸化シリコン、
窒化シリコン、酸化アルミニウム、窒化アルミニウムなどから選ばれる材料を、単層もし
くは積層させて用いることが好ましい。
【0025】
トップゲート構造のトランジスタにおいて、ソース領域及びドレイン領域は、ゲート電極
をマスクにして、酸化物半導体層にドーパントを添加することで形成できる。
【0026】
トランジスタのソース領域、ドレイン領域を形成するためのドーパントの添加は、イオン
ドーピング法またはイオンインプランテーション法などを用いることができる。ドーパン
トとしては、希ガスまたは水素(H)のうち、一種類または複数種類の元素を用いること
ができる。また、イオンドーピング法またはイオンインプランテーション法により酸化物
半導体層へドーパントを添加する際に、ドーパントを、絶縁層を通過して酸化物半導体層
へ添加することで、ドーパント添加における酸化物半導体層への過剰なダメージを軽減す
ることができる。また、酸化物半導体層と絶縁層の界面も清浄に保たれるので、トランジ
スタの特性や信頼性が高まる。また、ドーパントの添加深さ(添加領域)が制御し易くな
り、酸化物半導体層へドーパントを精度よく添加することができる。
【0027】
添加するドーパントの濃度が増加すると酸化物半導体領域のキャリア密度を増加させるこ
とができるが、添加するドーパントの濃度が高すぎると、キャリアの移動を阻害し、導電
性を低下させることになる。
【0028】
ドーパントが添加された酸化物半導体をソース領域及びドレイン領域に用いることによっ
て、ドーパントが添加されていないチャネル形成領域のバンド端の曲がりを小さくする効
果を奏する。一方、ソース領域及びドレイン領域を金属材料で設けた場合、酸化物半導体
領域であるチャネルのバンド端の曲がりが無視できなくなり、実効上のチャネル長が短く
なってしまうことがある。この傾向はトランジスタのチャネル長が短いときほど顕著であ
る。
【0029】
電子供与体(ドナー)となる水分または水素などの不純物が低減されて高純度化された酸
化物半導体(purified OS)は、その後、酸化物半導体に酸素を供給して、酸
化物半導体内の酸素欠損を低減することによりi型(真性半導体)又はi型に限りなく近
い(実質的にi型化した)酸化物半導体とすることができる。そのため、チャネルが形成
される半導体層にi型または実質的にi型化された酸化物半導体を用いたトランジスタは
、オフ電流が著しく低いという特性を有する。具体的に、高純度化された酸化物半導体は
、二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spec
trometry)による水素濃度の測定値が、5×1018/cm3未満、好ましくは
1×1018/cm3以下、より好ましくは5×1017/cm3以下、さらに好ましく
は1×1016/cm3以下とする。また、ホール効果測定により測定できるi型または
実質的にi型化された酸化物半導体層のキャリア密度は、1×1014/cm3未満、好
ましくは1×1012/cm3未満、さらに好ましくは1×1011/cm3未満である
。また、酸化物半導体のバンドギャップは、2eV以上、好ましくは2.5eV以上、よ
り好ましくは3eV以上である。チャネルが形成される半導体層に、i型または実質的に
i型化された酸化物半導体を用いることにより、トランジスタのオフ電流を下げることが
できる。
【0030】
ここで、酸化物半導体中の、水素濃度のSIMS分析について触れておく。SIMS分析
は、その原理上、試料表面近傍や、材質が異なる膜との積層界面近傍のデータを正確に得
ることが困難であることが知られている。そこで、膜中における水素濃度の厚さ方向の分
布をSIMSで分析する場合、対象となる膜が存在する範囲において、値に極端な変動が
無く、ほぼ一定の値が得られる領域における平均値を、水素濃度として採用する。また、
測定の対象となる膜の厚さが小さい場合、隣接する膜内の水素濃度の影響を受けて、ほぼ
一定の値が得られる領域を見いだせない場合がある。この場合、当該膜が存在する領域に
おける、水素濃度の最大値または最小値を、当該膜中の水素濃度として採用する。さらに
、当該膜が存在する領域において、最大値を有する山型のピーク、最小値を有する谷型の
ピークが存在しない場合、変曲点の値を水素濃度として採用する。
【発明の効果】
【0031】
本発明の一態様によって、電気特性が良好で、かつ微細化を行いやすい酸化物半導体を用
いた半導体装置を提供することができる。
【0032】
また、短チャネル効果による電気特性の変動が生じにくい半導体装置を提供する。
【0033】
また、絶縁層を通過して酸化物半導体中にドーパントを添加することにより、酸化物半導
体の薄層化を防ぎ、酸化物半導体と絶縁層の界面も清浄に保たれるので、半導体装置の特
性や信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本発明の一態様を説明する上面図及び断面図。
【
図2】本発明の一態様を説明する上面図及び断面図。
【
図5】本発明の一態様を説明する上面図及び断面図。
【
図6】本発明の一態様を説明する上面図及び断面図。
【
図9】酸化物半導体及び金属材料のバンド構造を説明する図。
【
図14】CPUの具体例を示すブロック図及びその一部の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の説
明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様
々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実
施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、以下に説明する本発明の
構成において、同一部分または同様な機能を有する部分には、同一の符号を異なる図面間
で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する。
【0036】
また、図面等において示す各構成の、位置、大きさ、範囲などは、理解の簡単のため、実
際の位置、大きさ、範囲などを表していない場合がある。このため、開示する発明は、必
ずしも、図面等に開示された位置、大きさ、範囲などに限定されない。
【0037】
また、本明細書にて用いる第1、第2、第3などの用語は、構成要素の混同を避けるため
に付したものであり、数的に限定するものではない。そのため、例えば、「第1の」を「
第2の」または「第3の」などと適宜置き換えて説明することができる。
【0038】
トランジスタは半導体装置の一形態であり、電流や電圧の増幅や、導通または非導通を制
御するスイッチング動作などを実現することができる。本明細書におけるトランジスタは
、IGFET(Insulated Gate Field Effect Trans
istor)や薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor
)を含む。
【0039】
また、トランジスタの「ソース」や「ドレイン」の機能は、異なる極性のトランジスタを
採用する場合や、回路動作において電流の方向が変化する場合などには入れ替わることが
ある。このため、本明細書においては、「ソース」や「ドレイン」の用語は、入れ替えて
用いることができるものとする。
【0040】
また、本明細書等において「電極」や「配線」の用語は、これらの構成要素を機能的に限
定するものではない。例えば、「電極」は「配線」の一部として用いられることがあり、
その逆もまた同様である。さらに、「電極」や「配線」の用語は、複数の「電極」や「配
線」が一体となって形成されている場合なども含む。
【0041】
(実施の形態1)
本実施の形態では、酸化物半導体をチャネルに用いたトランジスタ及びその作製方法につ
いて、
図1乃至
図4を用いて説明する。
【0042】
図1(A)は、半導体装置の構成の一形態であるトランジスタ100の構造を説明する上
面図であり、
図1(B)は、
図1(A)にA1-A2の鎖線で示した部位の積層構造を説
明する断面図である。なお、
図1(A)において、基板及び絶縁層の記載は省略している
。
【0043】
図1に示すトランジスタ100は、基板101上に下地層102が形成され、下地層10
2上に酸化物半導体層103が形成されている。また、酸化物半導体層103上にゲート
絶縁層104が形成され、ゲート絶縁層104上にゲート電極105が形成されている。
また、ゲート電極105上に絶縁層107と絶縁層108が形成され、絶縁層108上に
、ソース電極110a及びドレイン電極110bが形成されている。ソース電極110a
及びドレイン電極110bは、ゲート絶縁層104、絶縁層107及び絶縁層108に設
けられたコンタクトホール109を介して、酸化物半導体層103に電気的に接続されて
いる。
【0044】
酸化物半導体層103は、ゲート絶縁層104を介してゲート電極105と重畳するチャ
ネル形成領域103cと、ソース電極110aと電気的に接続するソース領域103aと
、ドレイン電極110bと電気的に接続するドレイン領域103bを有している。
【0045】
また、ゲート電極105は、ゲート絶縁層104に接するゲート電極105aと、ゲート
電極105aに積層されたゲート電極105bを有している。
【0046】
なお、
図1(A)では、コンタクトホール109を、ソース領域103a及びドレイン領
域103b上にそれぞれ複数設ける例を示しているが、ソース領域103a及びドレイン
領域103b上にそれぞれ1つ設ける構成としてもよい。また、ソース電極110aとソ
ース領域103aの接触抵抗、及びドレイン電極110bとドレイン領域103bの接触
抵抗を低減するため、コンタクトホール109は極力大きく、また、コンタクトホール1
09の数を多くすることが好ましい。
【0047】
図2に示すトランジスタ140は、トランジスタ100の構成に加えて、ゲート電極10
5の側面にサイドウォール111を有し、酸化物半導体層103のサイドウォール111
と重畳する領域に、低濃度領域103d及び低濃度領域103eを有している。低濃度領
域103dはチャネル形成領域103cとソース領域103aの間に形成され、低濃度領
域103eはチャネル形成領域103cとドレイン領域103bの間に形成されている。
図2(A)は、トランジスタ140の構成を説明する上面図であり、
図2(B)は、
図2
(A)にB1-B2の鎖線で示した部位の積層構造を説明する断面図である。
【0048】
低濃度領域103d及び低濃度領域103eを設けることにより、トランジスタ特性の劣
化や、短チャネル効果によるしきい値電圧のマイナスシフトを軽減することができる。
【0049】
トランジスタ100及びトランジスタ140は、トップゲート構造のトランジスタの一形
態である。
【0050】
次に、
図1に示すトランジスタ100の作製方法について、
図3及び
図4を用いて説明す
る。なお、
図3及び
図4は、
図1(A)のA1-A2の鎖線で示した部位の断面に相当す
る。
【0051】
まず、基板101上に下地層102を50nm以上300nm以下、好ましくは100n
m以上200nm以下の厚さで形成する。基板101は、ガラス基板、セラミック基板の
他、本作製工程の処理温度に耐えうる程度の耐熱性を有するプラスチック基板等を用いる
ことができる。また、基板に透光性を要しない場合には、ステンレス合金等の金属の基板
の表面に絶縁層を設けたものを用いてもよい。ガラス基板としては、例えば、バリウムホ
ウケイ酸ガラス、アルミノホウケイ酸ガラス若しくはアルミノケイ酸ガラス等の無アルカ
リガラス基板を用いるとよい。他に、石英基板、サファイア基板などを用いることができ
る。また、シリコンや炭化シリコンなどの単結晶半導体基板、多結晶半導体基板、シリコ
ンゲルマニウムなどの化合物半導体基板、SOI基板などを適用することも可能であり、
これらの基板上に半導体素子が設けられたものを、基板101として用いてもよい。
【0052】
下地層102は、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム、酸化窒
化アルミニウム、窒化シリコン、酸化シリコン、窒化酸化シリコンまたは酸化窒化シリコ
ンから選ばれた材料を、単層でまたは積層して形成することができ、基板101からの不
純物元素の拡散を防止する機能を有する。なお、本明細書中において、窒化酸化物とは、
その組成として、酸素よりも窒素の含有量が多いものであって、酸化窒化物とは、その組
成として、窒素よりも酸素の含有量が多いものを示す。なお、各元素の含有量は、例えば
、ラザフォード後方散乱法(RBS:Rutherford Backscatteri
ng Spectrometry)等を用いて測定することができる。
【0053】
下地層102は、スパッタリング法、CVD法、塗布法、印刷法等を適宜用いることがで
きる。本実施の形態では、下地層102として、窒化シリコンと酸化シリコンの積層を用
いる。具体的には、基板101上に窒化シリコンを50nmの厚さで形成し、該窒化シリ
コン上に酸化シリコンを150nmの厚さで形成する。なお、下地層102中にリン(P
)や硼素(B)がドープされていても良い。
【0054】
また、下地層102に、塩素、フッ素などのハロゲン元素を含ませることで、基板101
からの不純物元素の拡散を防止する機能をさらに高めることができる。下地層102に含
ませるハロゲン元素の濃度は、SIMS(二次イオン質量分析計)を用いた分析により得
られる濃度ピークにおいて、1×1015/cm3以上1×1020/cm3以下とすれ
ばよい。
【0055】
また、下地層102は、加熱により酸素放出される材料を用いてもよい。「加熱により酸
素放出される」とは、TDS(Thermal Desorption Spectro
scopy:昇温脱離ガス分光法)分析にて、酸素原子に換算しての酸素の放出量が1.
0×1018atoms/cm3以上、好ましくは3.0×1020atoms/cm3
以上であることをいう。
【0056】
ここで、TDS分析にて、酸素原子に換算しての酸素の放出量の測定方法について、以下
に説明する。
【0057】
TDS分析したときの気体の放出量は、スペクトルの積分値に比例する。このため、絶縁
層のスペクトルの積分値と、標準試料の基準値に対する比とにより、気体の放出量を計算
することができる。標準試料の基準値とは、所定の原子を含む試料の、スペクトルの積分
値に対する原子の密度の割合である。
【0058】
例えば、標準試料である所定の密度の水素を含むシリコンウェハのTDS分析結果、及び
絶縁層のTDS分析結果から、絶縁層の酸素分子の放出量(NO2)は、数式1で求める
ことができる。ここで、TDS分析で得られる質量数32で検出されるスペクトルの全て
が酸素分子由来と仮定する。質量数32のものとしてCH3OHがあるが、存在する可能
性が低いものとしてここでは考慮しない。また、酸素原子の同位体である質量数17の酸
素原子及び質量数18の酸素原子を含む酸素分子についても、自然界における存在比率が
極微量であるため考慮しない。
【0059】
NO2=NH2/SH2×SO2×α (数式1)
【0060】
NH2は、標準試料から脱離した水素分子を密度で換算した値である。SH2は、標準試
料をTDS分析したときのスペクトルの積分値である。ここで、標準試料の基準値を、N
H2/SH2とする。SO2は、絶縁層をTDS分析したときのスペクトルの積分値であ
る。αは、TDS分析におけるスペクトル強度に影響する係数である。数式1の詳細に関
しては、特開平6-275697公報を参照する。なお、上記絶縁層の酸素の放出量は、
電子科学株式会社製の昇温脱離分析装置EMD-WA1000S/Wを用い、標準試料と
して1×1016atoms/cm3の水素原子を含むシリコンウェハを用いて測定した
。
【0061】
また、TDS分析において、酸素の一部は酸素原子として検出される。酸素分子と酸素原
子の比率は、酸素分子のイオン化率から算出することができる。なお、上述のαは酸素分
子のイオン化率を含むため、酸素分子の放出量を評価することで、酸素原子の放出量につ
いても見積もることができる。
【0062】
なお、NO2は酸素分子の放出量である。絶縁層においては、酸素原子に換算したときの
酸素の放出量は、酸素分子の放出量の2倍となる。
【0063】
上記構成において、加熱により酸素放出される絶縁層は、酸素が過剰な酸化シリコン(S
iOX(X>2))であってもよい。酸素が過剰な酸化シリコン(SiOX(X>2))
とは、シリコン原子数の2倍より多い酸素原子を単位体積当たりに含むものである。単位
体積当たりのシリコン原子数及び酸素原子数は、ラザフォード後方散乱法により測定した
値である。
【0064】
下地層から酸化物半導体に酸素が供給されることで、下地層及び酸化物半導体の界面準位
を低減できる。この結果、トランジスタの動作などに起因して生じうる電荷などが、上述
の下地層及び酸化物半導体の界面に捕獲されることを抑制することができ、電気特性の劣
化の少ないトランジスタを得ることができる。
【0065】
さらに、酸化物半導体の酸素欠損に起因して電荷が生じる場合がある。一般に酸化物半導
体の酸素欠損は、一部がドナーとなりキャリアである電子を生じる。この結果、トランジ
スタのしきい値電圧がマイナス方向にシフトしてしまう。この傾向はバックチャネル側で
生じる酸素欠損において顕著である。なお、本明細書におけるバックチャネルとは、酸化
物半導体において下地層の界面近傍を指す。下地層から酸化物半導体に酸素が十分に放出
されることにより、しきい値電圧がマイナス方向へシフトする要因である酸化物半導体の
酸素欠損を補うことができる。
【0066】
即ち、酸化物半導体に酸素欠損が生じると、下地層と酸化物半導体との界面における電荷
の捕獲を抑制することが困難となるところ、下地層に、加熱により酸素放出される絶縁層
を設けることで、酸化物半導体及び下地層の界面準位、ならびに酸化物半導体の酸素欠損
を低減し、酸化物半導体及び下地層の界面における電荷捕獲の影響を小さくすることがで
きる。
【0067】
また、下地層102には、この後形成する酸化物半導体と同種の成分を含む絶縁材料を用
いてもよい。下地層102を異なる層の積層とする場合には、酸化物半導体に接する層を
酸化物半導体と同種の成分を含む絶縁材料とすればよい。このような材料は酸化物半導体
との相性が良く、これを下地層102に用いることで、酸化物半導体との界面の状態を良
好に保つことができるからである。ここで、「酸化物半導体と同種の成分」とは、酸化物
半導体の構成元素から選択される一または複数の元素を意味する。例えば、酸化物半導体
がIn-Ga-Zn系の酸化物半導体材料によって構成される場合、同種の成分を含む絶
縁材料としては酸化ガリウムなどがある。
【0068】
次に、下地層102上に酸化物半導体を形成する。なお、前処理として、酸化物半導体に
水素、水酸基及び水分がなるべく含まれないようにするために、成膜装置の予備加熱室で
基板101を予備加熱し、基板101や下地層102に吸着した水素、水分などの不純物
を脱離し排気することが好ましい。なお、予備加熱室に設ける排気手段はクライオポンプ
が好ましい。なお、この予備加熱の処理は省略することもできる。またこの予備加熱は、
下地層102の成膜前に、基板101にも同様に行ってもよい。
【0069】
酸化物半導体としては、少なくともインジウム(In)あるいは亜鉛(Zn)を含むこと
が好ましい。特にInとZnを含むことが好ましい。また、該酸化物半導体を用いたトラ
ンジスタの電気特性のばらつきを減らすためのスタビライザーとして、それらに加えてガ
リウム(Ga)を有することが好ましい。また、スタビライザーとしてスズ(Sn)を有
することが好ましい。また、スタビライザーとしてハフニウム(Hf)を有することが好
ましい。また、スタビライザーとしてアルミニウム(Al)を有することが好ましい。
【0070】
また、他のスタビライザーとして、ランタノイドである、ランタン(La)、セリウム(
Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム
(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホル
ミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ル
テチウム(Lu)のいずれか一種あるいは複数種を有してもよい。
【0071】
例えば、酸化物半導体として、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、二元系金属の酸化
物であるIn-Zn系酸化物、Sn-Zn系酸化物、Al-Zn系酸化物、Zn-Mg系
酸化物、Sn-Mg系酸化物、In-Mg系酸化物、In-Ga系酸化物、三元系金属の
酸化物であるIn-Ga-Zn系酸化物(IGZOとも表記する)、In-Al-Zn系
酸化物、In-Sn-Zn系酸化物、Sn-Ga-Zn系酸化物、Al-Ga-Zn系酸
化物、Sn-Al-Zn系酸化物、In-Hf-Zn系酸化物、In-La-Zn系酸化
物、In-Ce-Zn系酸化物、In-Pr-Zn系酸化物、In-Nd-Zn系酸化物
、In-Sm-Zn系酸化物、In-Eu-Zn系酸化物、In-Gd-Zn系酸化物、
In-Tb-Zn系酸化物、In-Dy-Zn系酸化物、In-Ho-Zn系酸化物、I
n-Er-Zn系酸化物、In-Tm-Zn系酸化物、In-Yb-Zn系酸化物、In
-Lu-Zn系酸化物、四元系金属の酸化物であるIn-Sn-Ga-Zn系酸化物、I
n-Hf-Ga-Zn系酸化物、In-Al-Ga-Zn系酸化物、In-Sn-Al-
Zn系酸化物、In-Sn-Hf-Zn系酸化物、In-Hf-Al-Zn系酸化物を用
いることができる。
【0072】
酸化物半導体層は、好ましくはInを含有する酸化物半導体、さらに好ましくは、In、
及びGaを含有する酸化物半導体である。
【0073】
ここで、例えば、In-Ga-Zn系酸化物とは、インジウム(In)、ガリウム(Ga
)、亜鉛(Zn)を有する酸化物という意味であり、InとGaとZnの比率は問わない
。また、InとGaとZn以外の金属元素を含んでもよい。
【0074】
また、酸化物半導体層は、化学式InMO3(ZnO)m(m>0)で表記される薄膜を
用いることができる。ここで、Mは、Sn、Zn、Ga、Al、MnおよびCoから選ば
れた一または複数の金属元素を示す。また、酸化物半導体として、In3SnO5(Zn
O)n(n>0)で表記される材料を用いてもよい。
【0075】
例えば、In:Ga:Zn=1:1:1(=1/3:1/3:1/3)あるいはIn:G
a:Zn=2:2:1(=2/5:2/5:1/5)の原子数比のIn-Ga-Zn系酸
化物やその組成の近傍の酸化物を用いることができる。あるいは、In:Sn:Zn=1
:1:1(=1/3:1/3:1/3)、In:Sn:Zn=2:1:3(=1/3:1
/6:1/2)あるいはIn:Sn:Zn=2:1:5(=1/4:1/8:5/8)の
原子数比のIn-Sn-Zn系酸化物やその組成の近傍の酸化物を用いるとよい。
【0076】
しかし、これらに限られず、必要とする半導体特性(移動度、しきい値、ばらつき等)に
応じて適切な組成のものを用いればよい。また、必要とする半導体特性を得るために、キ
ャリア密度や不純物濃度、欠陥密度、金属元素と酸素の原子数比、原子間結合距離、密度
等を適切なものとすることが好ましい。
【0077】
例えば、In-Sn-Zn系酸化物では比較的容易に高い移動度が得られる。しかしなが
ら、In-Ga-Zn系酸化物でも、バルク内欠陥密度を低減することにより移動度を上
げることができる。
【0078】
なお、例えば、In、Ga、Znの原子数比がIn:Ga:Zn=a:b:c(a+b+
c=1)である酸化物の組成が、原子数比がIn:Ga:Zn=A:B:C(A+B+C
=1)の酸化物の組成の近傍であるとは、a、b、cが、
(a―A)2+(b―B)2+(c―C)2≦r2
を満たすことをいい、rは、例えば、0.05とすればよい。他の酸化物でも同様である
。
【0079】
酸化物半導体は単結晶でも、非単結晶でもよい。後者の場合、アモルファスでも、多結晶
でもよい。また、アモルファス中に結晶性を有する部分を含む構造でも、非アモルファス
でもよい。
【0080】
アモルファス状態の酸化物半導体は、比較的容易に平坦な表面を得ることができるため、
これを用いてトランジスタを作製した際の界面散乱を低減でき、比較的容易に、比較的高
い移動度を得ることができる。
【0081】
また、結晶性を有する酸化物半導体では、よりバルク内欠陥を低減することができ、表面
の平坦性を高めればアモルファス状態の酸化物半導体以上の移動度を得ることができる。
表面の平坦性を高めるためには、平坦な表面上に酸化物半導体を形成することが好ましく
、具体的には、平均面粗さ(Ra)が1nm以下、好ましくは0.3nm以下、より好ま
しくは0.1nm以下の表面上に形成するとよい。なお、Raは原子間力顕微鏡(AFM
:Atomic Force Microscope)にて評価可能である。
【0082】
結晶性を有する酸化物半導体としては、CAAC-OS(C Axis Aligned
Crystalline Oxide Semiconductor)が好ましい。C
AAC-OSは、完全な単結晶ではなく、完全な非晶質でもない。CAAC-OSは、非
晶質相に結晶部を有する結晶-非晶質混相構造の酸化物半導体である。なお、当該結晶部
は、一辺が100nm未満の立方体内に収まる大きさであることが多い。また、透過型電
子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscop
e)による観察像では、CAAC-OSに含まれる非晶質部と結晶部との境界は明確では
ない。また、TEMによってCAAC-OSには粒界(グレインバウンダリーともいう。
)は確認できない。そのため、CAAC-OSは、粒界に起因する電子移動度の低下が抑
制される。
【0083】
CAAC-OSに含まれる結晶部は、c軸がCAAC-OSの被形成面の法線ベクトルま
たは表面の法線ベクトルに平行な方向に揃い、かつab面に垂直な方向から見て三角形状
または六角形状の原子配列を有し、c軸に垂直な方向から見て金属原子が層状または金属
原子と酸素原子とが層状に配列している。なお、異なる結晶部間で、それぞれa軸および
b軸の向きが異なっていてもよい。本明細書において、単に垂直と記載する場合、85°
以上95°以下の範囲も含まれることとする。また、単に平行と記載する場合、-5°以
上5°以下の範囲も含まれることとする。
【0084】
なお、CAAC-OSにおいて、結晶部の分布が一様でなくてもよい。例えば、CAAC
-OSの形成過程において、酸化物半導体膜の表面側から結晶成長させる場合、被形成面
の近傍に対し表面の近傍では結晶部の占める割合が高くなることがある。また、CAAC
-OSへ不純物を添加することにより、当該不純物添加領域において結晶部が非晶質化す
ることもある。
【0085】
CAAC-OSに含まれる結晶部のc軸は、CAAC-OSの被形成面の法線ベクトルま
たは表面の法線ベクトルに平行な方向に揃うため、CAAC-OSの形状(被形成面の断
面形状または表面の断面形状)によっては互いに異なる方向を向くことがある。なお、結
晶部のc軸の方向は、CAAC-OSが形成されたときの被形成面の法線ベクトルまたは
表面の法線ベクトルに平行な方向となる。結晶部は、成膜することにより、または成膜後
に加熱処理などの結晶化処理を行うことにより形成される。
【0086】
CAAC-OSは、その組成などに応じて、導体であったり、半導体であったり、絶縁体
であったりする。また、その組成などに応じて、可視光に対して透明であったり不透明で
あったりする。なお、CAAC-OSの一部は窒素で置換されてもよい。
【0087】
CAAC-OSを用いたトランジスタは、可視光や紫外光の照射による電気特性の変動を
低減することが可能である。よって、当該トランジスタは、信頼性が高い。
【0088】
CAAC-OSに含まれる結晶構造の一例について
図15乃至
図17を用いて詳細に説明
する。なお、特に断りがない限り、
図15乃至
図17は上方向をc軸方向とし、c軸方向
と直交する面をab面とする。なお、単に上半分、下半分という場合、ab面を境にした
場合の上半分、下半分をいう。また、
図15において、丸で囲まれたOは4配位のOを示
し、二重丸で囲まれたOは3配位のOを示す。
【0089】
図15(A)に、1個の6配位のInと、Inに近接の6個の4配位の酸素原子(以下4
配位のO)と、を有する構造を示す。ここでは、金属原子が1個に対して、近接の酸素原
子のみ示した構造を小グループと呼ぶ。
図15(A)の構造は、八面体構造をとるが、簡
単のため平面構造で示している。なお、
図15(A)の上半分および下半分にはそれぞれ
3個ずつ4配位のOがある。
図15(A)に示す小グループは電荷が0である。
【0090】
図15(B)に、1個の5配位のGaと、Gaに近接の3個の3配位の酸素原子(以下3
配位のO)と、Gaに近接の2個の4配位のOと、を有する構造を示す。3配位のOは、
いずれもab面に存在する。
図15(B)の上半分および下半分にはそれぞれ1個ずつ4
配位のOがある。また、Inも5配位をとるため、
図15(B)に示す構造をとりうる。
図15(B)に示す小グループは電荷が0である。
【0091】
図15(C)に、1個の4配位のZnと、Znに近接の4個の4配位のOと、を有する構
造を示す。
図15(C)の上半分には1個の4配位のOがあり、下半分には3個の4配位
のOがある。または、
図15(C)の上半分に3個の4配位のOがあり、下半分に1個の
4配位のOがあってもよい。
図15(C)に示す小グループは電荷が0である。
【0092】
図15(D)に、1個の6配位のSnと、Snに近接の6個の4配位のOと、を有する構
造を示す。
図15(D)の上半分には3個の4配位のOがあり、下半分には3個の4配位
のOがある。
図15(D)に示す小グループは電荷が+1となる。
【0093】
図15(E)に、2個のZnを含む小グループを示す。
図15(E)の上半分には1個の
4配位のOがあり、下半分には1個の4配位のOがある。
図15(E)に示す小グループ
は電荷が-1となる。
【0094】
ここでは、複数の小グループの集合体を中グループと呼び、複数の中グループの集合体を
大グループ(ユニットセルともいう。)と呼ぶ。
【0095】
ここで、これらの小グループ同士が結合する規則について説明する。
図15(A)に示す
6配位のInの上半分の3個のOは、下方向にそれぞれ3個の近接Inを有し、下半分の
3個のOは、上方向にそれぞれ3個の近接Inを有する。
図15(B)に示す5配位のG
aの上半分の1個のOは、下方向に1個の近接Gaを有し、下半分の1個のOは、上方向
に1個の近接Gaを有する。
図15(C)に示す4配位のZnの上半分の1個のOは、下
方向に1個の近接Znを有し、下半分の3個のOは、上方向にそれぞれ3個の近接Znを
有する。この様に、金属原子の上方向の4配位のOの数と、そのOの下方向にある近接金
属原子の数は等しく、同様に金属原子の下方向の4配位のOの数と、そのOの上方向にあ
る近接金属原子の数は等しい。Oは4配位なので、下方向にある近接金属原子の数と、上
方向にある近接金属原子の数の和は4になる。従って、金属原子の上方向にある4配位の
Oの数と、別の金属原子の下方向にある4配位のOの数との和が4個のとき、金属原子を
有する二種の小グループ同士は結合することができる。例えば、6配位の金属原子(In
またはSn)が下半分の4配位のOを介して結合する場合、4配位のOが3個であるため
、5配位の金属原子(GaまたはIn)または4配位の金属原子(Zn)のいずれかと結
合することになる。
【0096】
これらの配位数を有する金属原子は、c軸方向において、4配位のOを介して結合する。
また、このほかにも、層構造の合計の電荷が0となるように複数の小グループが結合して
中グループを構成する。
【0097】
図16(A)に、In-Sn-Zn系酸化物の層構造を構成する中グループのモデル図を
示す。
図16(B)に、3つの中グループで構成される大グループを示す。なお、
図16
(C)は、
図16(B)の層構造をc軸方向から観察した場合の原子配列を示す。
【0098】
図16(A)においては、簡単のため、3配位のOは省略し、4配位のOは個数のみ示し
、例えば、Snの上半分および下半分にはそれぞれ3個ずつ4配位のOがあることを丸枠
の3として示している。同様に、
図16(A)において、Inの上半分および下半分には
それぞれ1個ずつ4配位のOがあり、丸枠の1として示している。また、同様に、
図16
(A)において、下半分には1個の4配位のOがあり、上半分には3個の4配位のOがあ
るZnと、上半分には1個の4配位のOがあり、下半分には3個の4配位のOがあるZn
とを示している。
【0099】
図16(A)において、In-Sn-Zn系酸化物の層構造を構成する中グループは、上
から順に4配位のOが3個ずつ上半分および下半分にあるSnが、4配位のOが1個ずつ
上半分および下半分にあるInと結合し、そのInが、上半分に3個の4配位のOがある
Znと結合し、そのZnの下半分の1個の4配位のOを介して4配位のOが3個ずつ上半
分および下半分にあるInと結合し、そのInが、上半分に1個の4配位のOがあるZn
2個からなる小グループと結合し、この小グループの下半分の1個の4配位のOを介して
4配位のOが3個ずつ上半分および下半分にあるSnと結合している構成である。この中
グループが複数結合して大グループを構成する。
【0100】
ここで、3配位のOおよび4配位のOの場合、結合1本当たりの電荷はそれぞれ-0.6
67、-0.5と考えることができる。例えば、In(6配位または5配位)、Zn(4
配位)、Sn(5配位または6配位)の電荷は、それぞれ+3、+2、+4である。従っ
て、Snを含む小グループは電荷が+1となる。そのため、Snを含む層構造を形成する
ためには、電荷+1を打ち消す電荷-1が必要となる。電荷-1をとる構造として、
図1
5(E)に示すように、2個のZnを含む小グループが挙げられる。例えば、Snを含む
小グループが1個に対し、2個のZnを含む小グループが1個あれば、電荷が打ち消され
るため、層構造の合計の電荷を0とすることができる。
【0101】
具体的には、
図16(B)に示した大グループが繰り返されることで、In-Sn-Zn
系酸化物の結晶(In
2SnZn
3O
8)を得ることができる。なお、得られるIn-S
n-Zn系酸化物の層構造は、In
2SnZn
2O
7(ZnO)
m(mは0または自然数
。)とする組成式で表すことができる。
【0102】
また、このほかにも、四元系金属の酸化物であるIn-Sn-Ga-Zn系酸化物や、三
元系金属の酸化物であるIn-Ga-Zn系酸化物(IGZOとも表記する。)、In-
Al-Zn系酸化物、Sn-Ga-Zn系酸化物、Al-Ga-Zn系酸化物、Sn-A
l-Zn系酸化物や、In-Hf-Zn系酸化物、In-La-Zn系酸化物、In-C
e-Zn系酸化物、In-Pr-Zn系酸化物、In-Nd-Zn系酸化物、In-Sm
-Zn系酸化物、In-Eu-Zn系酸化物、In-Gd-Zn系酸化物、In-Tb-
Zn系酸化物、In-Dy-Zn系酸化物、In-Ho-Zn系酸化物、In-Er-Z
n系酸化物、In-Tm-Zn系酸化物、In-Yb-Zn系酸化物、In-Lu-Zn
系酸化物や、二元系金属の酸化物であるIn-Zn系酸化物、Sn-Zn系酸化物、Al
-Zn系酸化物、Zn-Mg系酸化物、Sn-Mg系酸化物、In-Mg系酸化物や、I
n-Ga系酸化物、などを用いた場合も同様である。
【0103】
例えば、
図17(A)に、In-Ga-Zn系酸化物の層構造を構成する中グループのモ
デル図を示す。
【0104】
図17(A)において、In-Ga-Zn系酸化物の層構造を構成する中グループは、上
から順に4配位のOが3個ずつ上半分および下半分にあるInが、4配位のOが1個上半
分にあるZnと結合し、そのZnの下半分の3個の4配位のOを介して、4配位のOが1
個ずつ上半分および下半分にあるGaと結合し、そのGaの下半分の1個の4配位のOを
介して、4配位のOが3個ずつ上半分および下半分にあるInと結合している構成である
。この中グループが複数結合して大グループを構成する。
【0105】
図17(B)に3つの中グループで構成される大グループを示す。なお、
図17(C)は
、
図17(B)の層構造をc軸方向から観察した場合の原子配列を示している。
【0106】
ここで、In(6配位または5配位)、Zn(4配位)、Ga(5配位)の電荷は、それ
ぞれ+3、+2、+3であるため、In、ZnおよびGaのいずれかを含む小グループは
、電荷が0となる。そのため、これらの小グループの組み合わせであれば中グループの合
計の電荷は常に0となる。
【0107】
また、In-Ga-Zn系酸化物の層構造を構成する中グループは、
図17(A)に示し
た中グループに限定されず、In、Ga、Znの配列が異なる中グループを組み合わせた
大グループも取りうる。
【0108】
具体的には、
図17(B)に示した大グループが繰り返されることで、In-Ga-Zn
系酸化物の結晶を得ることができる。なお、得られるIn-Ga-Zn系酸化物の層構造
は、InGaO
3(ZnO)
n(nは自然数。)とする組成式で表すことができる。
【0109】
n=1(InGaZnO
4)の場合は、例えば、
図18(A)に示す結晶構造を取りうる
。なお、
図18(A)に示す結晶構造において、
図15(B)で説明したように、Ga及
びInは5配位をとるため、GaがInに置き換わった構造も取りうる。
【0110】
また、n=2(InGaZn
2O
5)の場合は、例えば、
図18(B)に示す結晶構造を
取りうる。なお、
図18(B)に示す結晶構造において、
図15(B)で説明したように
、Ga及びInは5配位をとるため、GaがInに置き換わった構造も取りうる。
【0111】
本実施の形態では、まず、下地層102上に、スパッタリング法により1nm以上10n
m以下の第1の酸化物半導体を形成する。第1の酸化物半導体を形成する時の基板温度は
200℃以上400℃以下とする。
【0112】
ここで、酸化物半導体を形成するスパッタリング装置について、以下に詳細を説明する。
【0113】
酸化物半導体を形成する成膜室は、リークレートを1×10-10Pa・m3/秒以下と
することが好ましく、それによりスパッタリング法により成膜する際、膜中への不純物の
混入を低減することができる。
【0114】
リークレートを低くするには、外部リークのみならず内部リークを低減する必要がある。
外部リークとは、微小な穴やシール不良などによって真空系の外から気体が流入すること
である。内部リークとは、真空系内のバルブなどの仕切りからの漏れや内部の部材からの
放出ガスに起因する。リークレートを1×10-10Pa・m3/秒以下とするためには
、外部リーク及び内部リークの両面から対策をとる必要がある。
【0115】
外部リークを減らすには、成膜室の開閉部分はメタルガスケットでシールするとよい。メ
タルガスケットは、フッ化鉄、酸化アルミニウム、または酸化クロムによって被覆された
金属材料を用いると好ましい。メタルガスケットはOリングと比べ密着性が高く、外部リ
ークを低減できる。また、フッ化鉄、酸化アルミニウム、酸化クロムなどの不動態によっ
て被覆された金属材料を用いることで、メタルガスケットから生じる水素を含む放出ガス
が抑制され、内部リークも低減することができる。
【0116】
成膜室の内壁を構成する部材として、水素を含む放出ガスの少ないアルミニウム、クロム
、チタン、ジルコニウム、ニッケルまたはバナジウムを用いる。また、前述の材料を鉄、
クロム及びニッケルなどを含む合金材料に被覆して用いてもよい。鉄、クロム及びニッケ
ルなどを含む合金材料は、剛性があり、熱に強く、また加工に適している。ここで、表面
積を小さくするために部材の表面凹凸を研磨などによって低減しておくと、放出ガスを低
減できる。あるいは、前述の成膜装置の部材をフッ化鉄、酸化アルミニウム、酸化クロム
などの不動態で被覆してもよい。
【0117】
さらに、スパッタガスを成膜室に導入する直前に、スパッタガスの精製機を設けることが
好ましい。このとき、精製機から成膜室までの配管の長さを5m以下、好ましくは1m以
下とする。配管の長さを5m以下または1m以下とすることで、配管からの放出ガスの影
響を長さに応じて低減できる。
【0118】
成膜室の排気は、ドライポンプなどの粗引きポンプと、スパッタイオンポンプ、ターボ分
子ポンプ及びクライオポンプなどの高真空ポンプとを適宜組み合わせて行うとよい。また
、成膜室内の残留水分を除去するためには、吸着型の真空ポンプ、例えば、クライオポン
プ、イオンポンプ、チタンサブリメーションポンプを用いることが好ましい。ターボ分子
ポンプは大きいサイズの分子の排気が優れる一方、水素や水の排気能力が低い。そこで、
水の排気能力の高いクライオポンプ及び水素の排気能力の高いスパッタイオンポンプを組
み合わせることが有効となる。また、ターボ分子ポンプにコールドトラップを加えたもの
であってもよい。クライオポンプ等の吸着型の真空ポンプを用いて排気した成膜室は、例
えば、水素原子、水(H2O)など水素原子を含む化合物(より好ましくは炭素原子を含
む化合物も)等が排気されるため、当該成膜室で成膜した酸化物半導体層に含まれる不純
物の濃度を低減できる。
【0119】
成膜室の内側に存在する吸着物は、内壁に吸着しているために成膜室の圧力に影響しない
が、成膜室を排気した際のガス放出の原因となる。そのため、リークレートと排気速度に
相関はないが、排気能力の高いポンプを用いて、成膜室に存在する吸着物をできる限り脱
離し、予め排気しておくことが重要である。なお、吸着物の脱離を促すために、成膜室を
ベーキングしてもよい。ベーキングすることで吸着物の脱離速度を10倍程度大きくする
ことができる。ベーキングは100℃以上450℃以下で行えばよい。このとき、不活性
ガスを添加しながら吸着物の除去を行うと、排気するだけでは脱離しにくい水などの脱離
速度をさらに大きくすることができる。
【0120】
スパッタリング法において、プラズマを発生させるための電源装置は、RF電源装置、A
C電源装置、DC電源装置等を適宜用いることができる。
【0121】
酸化物半導体としてIn-Ga-Zn系酸化物材料をスパッタリング法で形成するための
In-Ga-Zn系酸化物ターゲットは、例えば、In2O3:Ga2O3:ZnO=1
:1:1[mol数比]の組成比を有するターゲットを用いることができる。また、In
2O3:Ga2O3:ZnO=1:1:2[mol数比]の組成比を有するターゲット、
またはIn2O3:Ga2O3:ZnO=1:1:4[mol数比]の組成比を有するタ
ーゲット、In2O3:Ga2O3:ZnO=2:1:8[mol数比]の組成比を有す
るターゲットを用いることもできる。また、原子数比がIn:Ga:Zn=1:1:1、
4:2:3、3:1:2、1:1:2、2:1:3、または3:1:4で示されるIn-
Ga-Zn系酸化物ターゲットを用いることができる。前述の原子数比を有するIn-G
a-Zn系酸化物ターゲットを用いて酸化物半導体を形成することで、多結晶またはCA
AC-OSが形成されやすくなる。
【0122】
また、酸化物半導体としてIn-Sn-Zn系酸化物をスパッタリング法で形成する場合
、好ましくは、原子数比がIn:Sn:Zn=1:1:1、2:1:3、1:2:2、ま
たは20:45:35で示されるIn-Sn-Zn系酸化物ターゲットを用いる。前述の
原子数比を有するIn-Sn-Zn系酸化物ターゲットを用いて酸化物半導体を形成する
ことで、多結晶またはCAAC-OSが形成されやすくなる。
【0123】
また、酸化物半導体を形成するための金属酸化物ターゲットの相対密度は90%以上10
0%以下、好ましくは95%以上99.9%以下である。相対密度の高い金属酸化物ター
ゲットを用いることにより、成膜した酸化物半導体層を緻密な膜とすることができる。
【0124】
なお、スパッタリングガスは、希ガス(代表的にはアルゴン)雰囲気、酸素雰囲気、希ガ
ス及び酸素の混合ガスを適宜用いる。また、スパッタリングガスには、水素、水、水酸基
または水素化物などの不純物が除去された高純度ガスを用いることが好ましい。例えば、
スパッタガスとしてアルゴンを用いる場合は、純度9N、露点-121℃、含有H2O量
0.1ppb以下、含有H2量0.5ppb以下が好ましく、酸素を用いる場合は、純度
8N、露点-112℃、含有H2O量1ppb以下、含有H2量1ppb以下が好ましい
。
【0125】
また、成膜時の基板温度は150℃以上450℃以下、好ましくは200℃以上350℃
以下である。150℃以上450℃以下、好ましくは200℃以上350℃以下に基板を
加熱しながら成膜をすることによって、膜中への水分(水素を含む)などの混入を防ぐこ
とができる。
【0126】
基板を加熱しながら成膜することにより、成膜した酸化物半導体に含まれる水素、水分、
水素化物、または水酸化物などの不純物濃度を低減することができる。また、スパッタリ
ングによる損傷が軽減される。そして、成膜室内の残留水分を除去しつつ水素及び水分が
除去されたスパッタガスを添加し、上記ターゲットを用いて、1nm以上10nm以下、
好ましくは2nm以上5nm以下の厚さで第1の酸化物半導体を成膜する。
【0127】
本実施の形態では、酸化物半導体用ターゲットとして、In-Ga-Zn系酸化物半導体
用ターゲット(In2O3:Ga2O3:ZnO=1:1:2[mol数比])を用いて
、基板とターゲットの間との距離を170mm、基板温度250℃、圧力0.4Pa、直
流(DC)電源電力0.5kW、スパッタガスとして酸素のみ、アルゴンのみ、又はアル
ゴン及び酸素を用いて膜厚5nmの第1の酸化物半導体を成膜する。
【0128】
次いで、基板を配置するチャンバー雰囲気を窒素、または乾燥空気とし、第1の加熱処理
を行う。第1の加熱処理の温度は、400℃以上750℃以下とする。第1の加熱処理に
よって、第1の酸化物半導体が結晶化され、第1の結晶性酸化物半導体となる。
【0129】
第1の加熱処理の温度にもよるが、第1の加熱処理によって、膜表面から結晶化が起こり
、膜の表面から内部に向かって結晶成長し、C軸配向した結晶が得られる。第1の加熱処
理によって、亜鉛と酸素が膜表面に多く集まり、上平面が六角形をなす亜鉛と酸素からな
るグラフェンタイプの二次元結晶が最表面に1層または複数層形成され、これが膜厚方向
に成長して重なり積層となる。加熱処理の温度を上げると表面から内部、そして内部から
底部と結晶成長が進行する。
【0130】
第1の加熱処理によって、下地層102中の酸素を第1の結晶性酸化物半導体との界面ま
たはその近傍(界面からプラスマイナス5nm)に拡散させて、第1の結晶性酸化物半導
体の酸素欠損を低減する。従って、下地層102は、下地層102中(バルク中)、また
、第1の結晶性酸化物半導体と下地層102の界面、のいずれかに少なくとも化学量論比
を超える量の酸素が存在することが好ましい。
【0131】
次いで、第1の結晶性酸化物半導体上に10nmよりも厚い第2の酸化物半導体を形成す
る。第2の酸化物半導体の形成は、スパッタリング法を用い、その成膜時における基板温
度は200℃以上400℃以下とする。成膜時における基板温度を200℃以上400℃
以下とすることにより、第1の結晶性酸化物半導体の表面上に接して成膜する酸化物半導
体にプリカーサの整列が起き、所謂、秩序性を持たせることができる。
【0132】
本実施の形態では、酸化物半導体用ターゲットとして、In-Ga-Zn系酸化物半導体
用ターゲット(In2O3:Ga2O3:ZnO=1:1:2[mol数比])を用いて
、基板とターゲットの間との距離を170mm、基板温度400℃、圧力0.4Pa、直
流(DC)電源電力0.5kW、スパッタガスとして酸素のみ、アルゴンのみ、又はアル
ゴン及び酸素を用いて膜厚25nmの第2の酸化物半導体を成膜する。
【0133】
次いで、基板を配置するチャンバー雰囲気を窒素、または乾燥空気とし、第2の加熱処理
を行う。第2の加熱処理の温度は、400℃以上750℃以下とする。第2の加熱処理に
よって、第2の結晶性酸化物半導体を形成する。第2の加熱処理は、窒素雰囲気下、酸素
雰囲気下、或いは窒素と酸素の混合雰囲気下で行うことにより、第2の結晶性酸化物半導
体の高密度化及び欠陥数の減少を図る。第2の加熱処理によって、第1の結晶性酸化物半
導体を核として膜厚方向、即ち底部から内部に結晶成長が進行して第2の結晶性酸化物半
導体が形成される。このとき、第1の結晶性酸化物半導体と第2結晶性酸化物半導体が同
一の元素から構成されることをホモ成長という。または、第1の結晶性酸化物半導体と第
2の結晶性酸化物半導体とが、少なくとも一種以上異なる元素から構成されることをヘテ
ロ成長という。
【0134】
このように、酸化物半導体の形成工程において、成膜室の圧力、成膜室のリークレートな
どにおいて、不純物の混入を極力抑えることによって、酸化物半導体への水素及び水分な
どの不純物の混入を低減することができる。酸化物半導体に含まれる水素は、金属原子と
結合する酸素と反応して水となると共に、酸素が脱離した格子(あるいは酸素が脱離した
部分)には欠陥が形成されてしまう。
【0135】
このため、酸化物半導体の形成工程において、不純物を極めて減らすことにより、酸化物
半導体の欠陥を低減することが可能である。これらのことから、不純物をできるだけ除去
し、高純度化させたCAAC-OSからなる酸化物半導体をチャネル領域に用いることに
より、トランジスタに対する光照射やBT試験前後でのしきい値電圧の変化量が少ないた
め、安定した電気的特性を有することができる。
【0136】
また、第2の加熱処理を行った後、温度を保持しつつ酸化性雰囲気に切り替えてさらに加
熱処理を行うと好ましい。酸化性雰囲気での加熱処理により、酸化物半導体中の酸素欠陥
を低減することができる。
【0137】
なお、酸化物半導体に用いることが可能な金属酸化物は、バンドギャップが2eV以上、
好ましくは2.5eV以上、より好ましくは3eV以上である。このように、バンドギャ
ップの広い金属酸化物を用いることで、トランジスタのオフ電流を低減することができる
。
【0138】
また、下地層102の形成から第2の加熱処理までの工程を、大気に触れることなく連続
的に行うことが好ましい。下地層102の形成から第2の加熱処理までの工程は、水素及
び水分をほとんど含まない雰囲気(不活性雰囲気、減圧雰囲気、乾燥空気雰囲気など)下
に制御することが好ましく、例えば、水分については露点-40℃以下、好ましくは露点
-50℃以下の乾燥窒素雰囲気とする。
【0139】
次いで、第1の結晶性酸化物半導体と第2の結晶性酸化物半導体からなる酸化物半導体の
積層を加工して、島状の酸化物半導体層103を形成する(
図3(A)参照)。
【0140】
酸化物半導体の加工は、所望の形状のマスクを酸化物半導体上に形成した後、当該酸化物
半導体をエッチングすることによって行うことができる。上述のマスクは、フォトリソグ
ラフィなどの方法を用いて形成することができる。または、インクジェット法や印刷法な
どの方法を用いてマスクを形成しても良い。
【0141】
なお、酸化物半導体のエッチングは、ドライエッチング法でもウェットエッチング法でも
よい。もちろん、これらを組み合わせて用いてもよい。
【0142】
また、上記作製方法により、得られる第1の結晶性酸化物半導体及び第2の結晶性酸化物
半導体は、C軸配向を有していることを特徴の一つとしている。ただし、第1の結晶性酸
化物半導体及び第2の結晶性酸化物半導体は、単結晶構造ではなく、非晶質構造でもない
構造であり、C軸配向を有した結晶性酸化物半導体(CAAC-OS)である。
【0143】
また、第1の結晶性酸化物半導体上に第2の結晶性酸化物半導体を形成する2層構造に限
定されず、第2の結晶性酸化物半導体の形成後に第3の結晶性酸化物半導体を形成するた
めの成膜と加熱処理のプロセスを繰り返し行って、3層以上の積層構造としてもよい。
【0144】
酸化物半導体層103のように、第1の結晶性酸化物半導体と第2の結晶性酸化物半導体
の積層をトランジスタに用いることで、安定した電気的特性を有し、且つ、信頼性の高い
トランジスタを実現できる。
【0145】
次に、酸化物半導体層103上にゲート絶縁層104を形成する。ゲート絶縁層104は
、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム
、窒化シリコン、酸化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化窒化シリコン、酸化タンタル、
または酸化ランタン、から選ばれた材料を、単層でまたは積層して形成することができる
。
【0146】
また、ゲート絶縁層104として、ハフニウムシリケート(HfSiOx(x>0))、
窒素が添加されたハフニウムシリケート(HfSixOyNz(x>0、y>0、z>0
))、窒素が添加されたハフニウムアルミネート(HfAlxOyNz(x>0、y>0
、z>0))、酸化ハフニウム、酸化イットリウムなどのhigh-k材料を用いること
で、実質的な(例えば、酸化シリコン換算の)ゲート絶縁膜の厚さを変えないまま、物理
的なゲート絶縁膜を厚くすることにより、ゲートリークを低減できる。さらには、hig
h-k材料と、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化シリコン、窒化酸化シリコン、酸
化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、及び酸化ガリウムのいずれか一以上との積層構
造とすることができる。ゲート絶縁層104の厚さは、1nm以上300nm以下、より
好ましくは5nm以上50nm以下とするとよい。
【0147】
ゲート絶縁層104は、スパッタリング法、CVD法等により形成する。ゲート絶縁層1
04の形成は、スパッタリング法やプラズマCVD法などの他、μ波(例えば周波数2.
45GHz)を用いた高密度プラズマCVD法などの成膜方法を適用することができる。
また、ゲート絶縁層104は単層に限らず異なる層の積層でも良い。なお、ゲート絶縁層
104は、酸化物半導体層103と接する部分が酸素を含む絶縁層であることが好ましく
、特に好ましくは加熱により酸素を放出する酸化物絶縁層である。例えば、ゲート絶縁層
104に酸化シリコンを用いることで、酸化物半導体層103に酸素を拡散させて、酸化
物半導体層103中の酸素欠損を低減することができ、トランジスタの特性を良好にする
ことができる。
【0148】
本実施の形態に示す構造では、基板上に凹凸を生じさせる構造物が酸化物半導体層103
のみであり、ゲート絶縁層104を起因とするリーク電流を低減し、かつゲート絶縁層1
04の耐圧を高めることができる。そのため、ゲート絶縁層104を5nm近くまで薄膜
化して用いてもトランジスタを動作させることができる。なお、ゲート絶縁層104を薄
膜化することで、短チャネル効果を低減し、かつトランジスタの動作速度を高める効果を
奏する。
【0149】
なお、ゲート絶縁層104を形成する前に、酸化物半導体層103の表面を、酸素、オゾ
ン、一酸化二窒素等の酸化性ガスのプラズマに曝し、酸化物半導体層103の表面を酸化
して酸素欠損を低減してもよい。本実施の形態では、ゲート絶縁層104として、酸化物
半導体層103上に酸化シリコンを100nmの厚さで形成する。
【0150】
次に、ゲート絶縁層104上に、スパッタリング法、真空蒸着法、またはメッキ法を用い
て導電層を形成し、該導電層上にマスクを形成し、該導電層を選択的にエッチングしてゲ
ート電極105を形成する。導電層上に形成するマスクは印刷法、インクジェット法、フ
ォトリソグラフィ法を適宜用いることができる。ゲート電極105は、ゲート絶縁層10
4に接するゲート電極105aと、ゲート電極105a上に積層されたゲート電極105
bにより形成される。
【0151】
ゲート電極105aを形成する材料としては、窒素を含むインジウムガリウム亜鉛酸化物
(In-Ga-Zn-O)や、窒素を含むインジウム錫酸化物(In-Sn-O)や、窒
素を含むインジウムガリウム酸化物(In-Ga-O)や、窒素を含むインジウム亜鉛酸
化物(In-Zn-O)や、窒素を含む酸化錫(Sn-O)や、窒素を含むインジウム酸
化物(In-O)や、金属窒化物(InN、ZnNなど)を用いることが好ましい。
【0152】
これらの材料は5eV、好ましくは5.5eV以上の仕事関数を有し、ゲート電極105
aをゲート電極105bとゲート絶縁層104の間に設け、また、ゲート電極105aを
ゲート絶縁層104を介して酸化物半導体層103と重畳させることで、トランジスタの
電気特性のしきい値電圧をプラスにすることができ、所謂ノーマリーオフのスイッチング
素子を実現できる。例えば、ゲート電極105aに窒素を含むIn-Ga-Zn-Oを用
いる場合、少なくとも酸化物半導体層103より高い窒素濃度、具体的には窒素濃度が7
原子%以上のIn-Ga-Zn-Oを用いる。
【0153】
ゲート電極105bを形成する材料としては、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、
銅(Cu)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、タングステン(
W)、ネオジム(Nd)、スカンジウム(Sc)から選ばれた金属元素、上述した金属元
素を成分とする合金、上述した金属元素を組み合わせた合金、上述した金属元素の窒化物
などを用いて形成することができる。また、マンガン(Mn)、マグネシウム(Mg)、
ジルコニウム(Zr)、ベリリウム(Be)のいずれか一または複数から選択された金属
元素を用いてもよい。
【0154】
また、ゲート電極105bは、単層構造でも、二層以上の積層構造としてもよい。例えば
、シリコンを含むアルミニウムを用いた単層構造、アルミニウム上にチタンを積層する二
層構造、窒化チタン上にチタンを積層する二層構造、窒化チタン上にタングステンを積層
する二層構造、窒化タンタル上にタングステンを積層する二層構造、Cu-Mg-Al合
金上にCuを積層する二層構造、チタンと、そのチタン上にアルミニウムを積層し、さら
にその上にチタンを形成する三層構造などがある。
【0155】
また、ゲート電極105bは、インジウム錫酸化物、酸化タングステンを含むインジウム
酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸
化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化ケイ素を添加
したインジウム錫酸化物などの透光性を有する導電性材料を適用することもできる。また
、上記透光性を有する導電性材料と、上記金属元素の積層構造とすることもできる。
【0156】
本実施の形態では、ゲート電極105aとして、窒素を含むインジウムガリウム亜鉛酸化
物を用いる。また、ゲート電極105bとして、窒化チタン上にタングステンを積層する
二層構造を用いる(
図3(B)参照)。なお、形成されたゲート電極105の端部をテー
パー形状とすると、後に形成される層の被覆性が向上するため好ましい。
【0157】
次に、自己整合プロセスによりソース領域103a及びドレイン領域103bを形成する
。具体的には、ゲート電極105をマスクとして、イオンドーピング法またはイオンイン
プランテーション法によりドーパント106を酸化物半導体層103へ添加する。酸化物
半導体層103に添加するドーパント106としては、希ガスまたは水素(H)のうち、
一種類または複数種類の元素を用いることができる。
【0158】
水素は、酸化物半導体中で電子供与体(ドナー)となり、酸化物半導体をn型化させる。
また、希ガス元素は酸化物半導体中に欠陥を作り、酸化物半導体をn型化させる。なお、
水素は拡散しやすく、チャネル形成領域に水素が拡散すると、トランジスタ特性が劣化す
る恐れがある。このため、ドーパント106として希ガス元素を用いる方が、半導体装置
の信頼性が良く好ましい。
【0159】
また、酸化物半導体層103のゲート電極105と重畳する領域は、ゲート電極105が
マスクとなりドーパント106が添加されず、チャネル形成領域103cとなる。
【0160】
ドーパント106が添加されたソース領域103a及びドレイン領域103bは、n型の
酸化物半導体となり、チャネル形成領域103cよりも抵抗率が低下する。このため、ソ
ース領域103a及びドレイン領域103bの抵抗値が小さくなり、トランジスタ100
を高速動作させることが可能となる。加えて、ソース領域103a及びドレイン領域10
3bと、ゲート電極105との重なりがほとんど生じず、寄生容量を低減することができ
るため、トランジスタ100をさらに高速動作させることが可能となる。
【0161】
また、ゲート電極105をマスクとして、ソース領域及びドレイン領域となる酸化物半導
体層103上のゲート絶縁層104を除去して酸化物半導体層103を露出させ、露出し
た酸化物半導体層103へドーパント106を添加し、ソース領域103a及びドレイン
領域103bを形成してもよい。酸化物半導体層103上のゲート絶縁層104の除去は
、酸化物半導体層103がエッチングされにくい条件で行う。
【0162】
露出した酸化物半導体層103へのドーパント106の添加は、イオンドーピング法また
はイオンインプランテーション法で行うことができる。なお、ドーパント106の添加は
、添加する元素を含むガス雰囲気にてプラズマを発生させ、酸化物半導体層103の露出
した部分に対してプラズマ処理を行うことによって行うこともできる。しかしながら、プ
ラズマ処理による添加は、酸化物半導体がエッチングされ、薄層化されてしまう恐れがあ
る。このため、酸化物半導体層103へのドーパント106の添加は、イオンドーピング
法またはイオンインプランテーション法で行うことが好ましい。
【0163】
なお、酸化物半導体層103へのドーパント106の添加をイオンドーピング法またはイ
オンインプランテーション法により行う場合は、酸化物半導体層103を露出させず、ゲ
ート絶縁層104を残したまま行うことが好ましい。ドーパント106をゲート絶縁層1
04を通過して酸化物半導体層103へ添加することで、ドーパント106の添加におけ
る酸化物半導体層103への過剰なダメージを軽減することができる。また、酸化物半導
体層103とゲート絶縁層104の界面も清浄に保たれるので、トランジスタの特性や信
頼性が高まる。また、ドーパント106の添加深さ(添加領域)が制御し易くなり、酸化
物半導体層103へドーパント106を精度よく添加することができる。
【0164】
本実施の形態では、ドーパント106としてキセノン(Xe)を用い、キセノンをイオン
インプランテーション法により、ゲート絶縁層104を通過させて酸化物半導体層103
へ添加する。また、キセノンの添加により形成されるソース領域103a及びドレイン領
域103b中のキセノン濃度が、5×10
19atoms/cm
3以上、1×10
22a
toms/cm
3以下となるようにする(
図3(C)参照)。
【0165】
ドーパント106の添加後、減圧雰囲気下、窒素や希ガスなどの不活性ガス雰囲気下で、
300℃以上600℃以下の温度で熱処理を行ってもよい。本実施の形態では、加熱処理
装置の一つである電気炉を用いて、窒素雰囲気下で450℃1時間の熱処理を行う。
【0166】
なお、加熱処理装置は電気炉に限られず、抵抗発熱体などの発熱体からの熱伝導または熱
輻射によって、被処理物を加熱する装置を備えていてもよい。例えば、GRTA(Gas
Rapid Thermal Anneal)装置、LRTA(Lamp Rapid
Thermal Anneal)装置等のRTA(Rapid Thermal An
neal)装置を用いることができる。LRTA装置は、ハロゲンランプ、メタルハライ
ドランプ、キセノンアークランプ、カーボンアークランプ、高圧ナトリウムランプ、高圧
水銀ランプなどのランプから発する光(電磁波)の輻射により、被処理物を加熱する装置
である。GRTA装置は、高温のガスを用いて加熱処理を行う装置である。高温のガスに
は、アルゴンなどの希ガス、または窒素のような、加熱処理によって被処理物と反応しな
い不活性ガスが用いられる。
【0167】
例えば、熱処理として、高温に加熱した不活性ガス中に基板を移動させて入れ、数分間加
熱した後、基板を移動させて高温に加熱した不活性ガス中から出すGRTAを行ってもよ
い。
【0168】
上記熱処理を行う場合は、ドーパント106添加後であれば、いつ行ってもよい。
【0169】
また、イオンドーピング法またはイオンインプランテーション法等によりドーパント10
6を添加する際に、基板を加熱しながら行ってもよい。
【0170】
次に、酸化物半導体層103及びゲート電極105を覆って、スパッタリング法、CVD
法等により、絶縁層107及び絶縁層108を形成する。絶縁層107及び絶縁層108
は、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウ
ム、窒化シリコン、酸化シリコン、窒化酸化シリコンまたは酸化窒化シリコンから選ばれ
た材料を用いて形成することができる。また、絶縁層107及び絶縁層108は、それぞ
れを単層または積層して用いることができる。
【0171】
このとき、少なくとも絶縁層107は、加熱により酸素を放出しにくい材料を用いること
が好ましい。これは、ソース領域103a及びドレイン領域103bの導電率を低下させ
ないためである。具体的には、CVD法により、シランガスを主材料とし、酸化窒素ガス
、窒素ガス、水素ガス及び希ガスから適切な原料ガスを混合して成膜すればよい。また、
基板温度を300℃以上550℃以下とすればよい。CVD法を用いることで、加熱によ
り酸素を放出しにくい材料とすることができる。また、シランガスを主材料とすることで
絶縁層中に水素が残留し、該水素が拡散することでソース領域103a及びドレイン領域
103bの導電率をさらに高めることができる。絶縁層107中の水素濃度は、0.1原
子%以上25原子%以下とすればよい。
【0172】
絶縁層107及び絶縁層108の膜厚は、50nm以上、好ましくは200nm以上50
0nm以下とする。本実施の形態では、絶縁層107として、膜厚300nmの酸化シリ
コンを形成し、絶縁層108として、膜厚100nmの酸化アルミニウムを形成する。
【0173】
絶縁層108は、外部からの不純物等の侵入を防ぐため、窒化シリコンまたは酸化アルミ
ニウムを用いて形成することが好ましい。本実施の形態では、絶縁層108として、膜厚
100nmの酸化アルミニウムを形成する(
図3(D)参照)。また、絶縁層107と絶
縁層108は、どちらか一方または両方を省略してもよい。
【0174】
絶縁層108の形成後、必要であれば、熱処理(温度範囲150℃以上650℃以下、好
ましくは200℃以上500℃以下)を行ってもよい。
【0175】
次に、絶縁層108上にマスクを形成し、該マスクを用いて、ゲート絶縁層104、絶縁
層107、絶縁層108の一部を選択的にエッチングして、ソース領域103a及びドレ
イン領域103bの一部を露出させ、コンタクトホール109を形成する(
図4(A)参
照)。
【0176】
次に、絶縁層108上に導電層を形成し、該導電層上にマスクを形成し、該導電層を選択
的にエッチングしてソース電極110a及びドレイン電極110bを形成する(
図4(B
)参照)。ソース電極110a及びドレイン電極110bを形成するための導電層は、ゲ
ート電極105bと同様の材料を適用することができる。
【0177】
本実施の形態では、ソース電極110a及びドレイン電極110bを形成するための導電
層として、Cu-Mg-Al合金上にCuを積層した導電層を用いる。絶縁層108と接
してCu-Mg-Al合金材料を設けることで、導電層の密着性を向上させることができ
る。
【0178】
なお、トランジスタ100のチャネル長は、
図1(B)において、ソース領域103aと
ドレイン領域103bに挟まれた、チャネル形成領域103cの長さに相当する。また、
トランジスタ100のチャネル長は、ゲート電極105の幅とほぼ等しくなる。
【0179】
以上の工程により、トランジスタを微細化し、チャネル長を縮小した際にも電気特性が良
好で、かつ信頼性の高い酸化物半導体を用いたトランジスタ100を作製することができ
る。
【0180】
トランジスタ140は、酸化物半導体層103中に低濃度領域103d及び低濃度領域1
03eを有している。トランジスタ140は、トランジスタ100の作製工程にサイドウ
ォール111の作製工程を追加し、酸化物半導体層103へのドーパント106の添加を
2回に分けて行うことで作製することができる。
【0181】
低濃度領域103d及び低濃度領域103eは、ゲート電極105をマスクとして用いる
自己整合プロセスにより形成することができる。具体的には、ゲート電極105形成後、
ゲート電極105をマスクとして、トランジスタ100と同様の方法によりドーパント1
06を酸化物半導体層103へ添加する(第1のドープ工程ともいう)。第1のドープ工
程で酸化物半導体層103へ添加するドーパント106としては、トランジスタ100で
用いるドーパント106と同様の元素を用いることができる。第1のドープ工程では、酸
化物半導体層103中のドーパント106の濃度が5×1018atoms/cm3以上
、5×1019atoms/cm3未満となるように添加する。
【0182】
次に、ゲート電極105の側面にサイドウォール111を形成する。サイドウォール11
1は、既知の方法により作製することができる。
【0183】
次に、ゲート電極105及びサイドウォール111をマスクとして、ドーパント106を
酸化物半導体層103へ添加する(第2のドープ工程ともいう)。第2のドープ工程で酸
化物半導体層103へ添加するドーパント106としては、トランジスタ100で用いる
ドーパント106と同様の元素を用いることができる。第2のドープ工程では、酸化物半
導体層103中のドーパント106の濃度が5×1019atoms/cm3以上、1×
1022atoms/cm3以下となるようにする。
【0184】
このようにして、トランジスタ140にソース領域103a、ドレイン領域103b、低
濃度領域103d、及び低濃度領域103eを形成することができる。低濃度領域103
d、及び低濃度領域103eは、ソース領域103a、及びドレイン領域103bよりも
ドーパント濃度が低く、抵抗率が高い。
【0185】
低濃度領域103d及び低濃度領域103eを設けることにより、トランジスタ特性の劣
化や、短チャネル効果によるしきい値電圧のマイナスシフトを軽減することができ、より
信頼性の高いトランジスタを作製することができる。
【0186】
なお、トランジスタ140のチャネル長は、
図2(B)において、低濃度領域103dと
低濃度領域103eに挟まれた、チャネル形成領域103cの長さに相当する。また、ト
ランジスタ140のチャネル長は、ゲート電極105の幅とほぼ等しくなる。
【0187】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0188】
(実施の形態2)
本実施の形態では、実施の形態1で開示したトランジスタとは異なる構成を有するトラン
ジスタの例について説明する。
【0189】
図5(A)は、トランジスタ150の構成を説明する上面図であり、
図5(B)は、
図5
(A)にC1-C2の鎖線で示した部位の積層構造を説明する断面図である。なお、
図5
(A)において、基板及び絶縁層の記載は省略している。
【0190】
図5(B)に示すトランジスタ150は、実施の形態1で開示したトランジスタ100と
比較して、ソース電極110a及びドレイン電極110bの積層位置が異なっている。ト
ランジスタ150は、下地層102上にソース電極110a及びドレイン電極110bが
形成され、下地層102、ソース電極110a及びドレイン電極110b上に酸化物半導
体層103が形成されている。
【0191】
トランジスタ150では、ソース電極110a及びドレイン電極110bが、コンタクト
ホール109を介さず酸化物半導体層103のソース領域103a及びドレイン領域10
3bと接続する構成であるため、接続面積を増やしやすく、接触抵抗の低減が容易である
。
【0192】
なお、トランジスタ150のチャネル長は、
図5(B)において、ソース領域103aと
ドレイン領域103bに挟まれた、チャネル形成領域103cの長さに相当する。また、
トランジスタ150のチャネル長は、ゲート電極105の幅とほぼ等しくなる。
【0193】
図6に示すトランジスタ160は、トランジスタ150の構成に加えて、ゲート電極10
5の側面にサイドウォール111を有し、酸化物半導体層103のサイドウォール111
と重畳する領域に、低濃度領域103d及び低濃度領域103eを有している。低濃度領
域103dはチャネル形成領域103cとソース領域103aの間に形成され、低濃度領
域103eはチャネル形成領域103cとドレイン領域103bの間に形成されている。
図6(A)は、トランジスタ160の構成を説明する上面図であり、
図6(B)は、
図6
(A)にD1-D2の鎖線で示した部位の積層構造を説明する断面図である。
【0194】
酸化物半導体層103中に低濃度領域103dまたは低濃度領域103eを設けることで
、チャネル形成領域103cと、ソース領域103aまたはドレイン領域103bの間に
生じる電界を緩和し、トランジスタ特性の劣化を軽減することができる。特に、チャネル
形成領域103cとドレイン領域103bに生じる電界の緩和は、トランジスタ特性の劣
化軽減に有効である。また、低濃度領域103dまたは低濃度領域103eを設けること
により、トランジスタの微細化に伴う短チャネル効果を抑制することができる。
【0195】
なお、トランジスタ160のチャネル長は、
図6(B)において、低濃度領域103dと
低濃度領域103eに挟まれた、チャネル形成領域103cの長さに相当する。また、ト
ランジスタ160のチャネル長は、ゲート電極105の幅とほぼ等しくなる。
【0196】
図7(A)に示すトランジスタ170は、ボトムゲート構造のトランジスタの一形態であ
る。
【0197】
図7(A)は、トランジスタ170の断面構造を示している。トランジスタ170は、基
板101上にゲート電極105が形成され、ゲート電極105上にゲート絶縁層104が
形成されている。ゲート電極105は、ゲート電極105b上にゲート電極105aが積
層された構成を有している。基板101とゲート電極105の間に、実施の形態1で説明
した下地層を設けても良い。
【0198】
また、ゲート絶縁層104上に酸化物半導体層103が形成され、酸化物半導体層103
上にチャネル保護層112、ソース電極110a、及びドレイン電極110bが形成され
ている。酸化物半導体層103は、チャネル保護層112と重畳するチャネル形成領域1
03cと、ソース電極110aと電気的に接続するソース領域103aと、ドレイン電極
110bと電気的に接続するドレイン領域103bを有している。
【0199】
チャネル保護層112は、ゲート絶縁層104と同様の材料及び方法を用いて形成するこ
とができる。チャネル保護層112の厚さは、10nm以上500nm以下、より好まし
くは100nm以上300nm以下とするとよい。
【0200】
ソース領域103a及びドレイン領域103bは、チャネル保護層112をマスクとして
用い、トランジスタ100と同様に形成することができる。
【0201】
また、チャネル保護層112、ソース電極110a、及びドレイン電極110b上に、絶
縁層108が形成されている。絶縁層108は、複数の絶縁層の積層としてもよい。
【0202】
なお、トランジスタ170のチャネル長は、
図7(A)において、ソース領域103aと
ドレイン領域103bに挟まれた、チャネル形成領域103cの長さに相当する。また、
トランジスタ170のチャネル長は、チャネル保護層112の幅とほぼ等しくなる。
【0203】
図7(B)は、トランジスタ180の断面構造を示している。トランジスタ180は、ト
ランジスタ100にバックゲート電極115と絶縁層113を設けた構造を有している。
トランジスタ180は、下地層102上にバックゲート電極115が形成され、バックゲ
ート電極115上に絶縁層113が形成されている。また、トランジスタ180の酸化物
半導体層103は、絶縁層113を介して、バックゲート電極115と重畳して形成され
ている。
【0204】
バックゲート電極115は、ゲート電極105とバックゲート電極115で酸化物半導体
層103のチャネル形成領域103cを挟むように配置する。バックゲート電極115は
導電層で形成され、ゲート電極105と同様に機能させることができる。また、バックゲ
ート電極115の電位を変化させることで、トランジスタのしきい値電圧を変化させるこ
とができる。
【0205】
バックゲート電極115は、ゲート電極105bと同様の材料及び方法で形成することが
できる。また、バックゲート電極115と絶縁層113の間に、ゲート電極105aと同
様の層を設けてもよい。
【0206】
絶縁層113は、ゲート絶縁層104と同様の材料及び方法で形成することができる。ま
た、下地層102を形成せず、絶縁層113で下地層102を兼ねる構成とすることもで
きる。
【0207】
なお、トランジスタ180のチャネル長は、
図7(B)において、ソース領域103aと
ドレイン領域103bに挟まれた、チャネル形成領域103cの長さに相当する。また、
トランジスタ180のチャネル長は、ゲート電極105の幅とほぼ等しくなる。
【0208】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0209】
(実施の形態3)
本実施の形態では、CAAC-OSからなる酸化物半導体膜の形成方法について、実施の
形態1で開示した以外の方法について、以下に説明する。
【0210】
まず、下地層102上に、厚さ1nm以上50nm以下の酸化物半導体膜を形成する。
【0211】
成膜時の基板温度は150℃以上450℃以下、好ましくは200℃以上350℃以下で
ある。150℃以上450℃以下、好ましくは200℃以上350℃以下に基板を加熱し
ながら成膜をすることによって、膜中への水分(水素を含む)などの混入を防ぐことがで
きる。また、結晶性を含む酸化物半導体膜であるCAAC-OSを形成することができる
。
【0212】
さらに、酸化物半導体形成後に、基板101に加熱処理を施して、酸化物半導体からより
水素を放出させると共に、下地層102に含まれる酸素の一部を、酸化物半導体と、下地
層102における酸化物半導体の界面近傍に拡散させることが好ましい。また、該加熱処
理を行うことによって、より結晶性の高いCAAC-OSを有する酸化物半導体を形成す
ることができる。
【0213】
該加熱処理の温度は、酸化物半導体から水素を放出させると共に、下地層102に含まれ
る酸素の一部を放出させ、さらには酸化物半導体に拡散させる温度が好ましく、代表的に
は、200℃以上基板101の歪み点未満、好ましくは250℃以上450℃以下とする
。酸化物半導体に酸素を拡散させることにより、酸化物半導体中の酸素欠損を低減するこ
とができる。
【0214】
また該加熱処理は、RTA(Rapid Thermal Anneal)装置を用いる
ことができる。RTAを用いることで、短時間に限り、基板の歪み点以上の温度で熱処理
を行うことができる。そのため、非晶質領域に対して結晶領域の割合の多い酸化物半導体
を形成するための時間を短縮することができる。
【0215】
加熱処理は、不活性ガス雰囲気で行うことができ、代表的には、ヘリウム、ネオン、アル
ゴン、キセノン、クリプトン等の希ガス、または窒素雰囲気で行うことが好ましい。また
、酸素雰囲気及び減圧雰囲気で行ってもよい。処理時間は3分~24時間とする。処理時
間を長くするほど非晶質領域に対して結晶領域の割合の多い酸化物半導体を形成すること
ができるが、24時間を超える熱処理は生産性の低下を招くため好ましくない。
【0216】
以上の方法で、CAAC-OSからなる酸化物半導体を形成することができる。
【0217】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0218】
(実施の形態4)
本実施の形態では、実施の形態1及び実施の形態2に示した酸化物半導体を用いたトラン
ジスタの電気特性への影響について、バンド図を用いて説明する。
【0219】
図8は、
図1に示すトランジスタ100と同等の積層構造を有するトランジスタの断面図
である。
図9は、
図8に示すX1-X2断面におけるエネルギーバンド図(模式図)を示
す。さらに、
図9(B)はソースとドレインの間の電圧を等電位(VD=0V)とした場
合を示している。
図8は、第1の酸化物半導体領域(OS1とする)及び一対の第2の酸
化物半導体領域(OS2とする)からなる酸化物半導体層と、ソース電極及びドレイン電
極(metalとする)により形成されるトランジスタである。
【0220】
図8におけるトランジスタのチャネル形成領域は、OS1により形成されており、OS1
は、膜中から水分(水素を含む)などの不純物をできるだけ除去、脱離させて高純度化し
、さらに膜中の酸素欠損を低減することにより真性(i型)としたもの、又は限りなく真
性に近づけた酸化物半導体により形成されている。そうすることにより、フェルミ準位(
Ef)は真性フェルミ準位(Ei)と同じレベルにすることができる。
【0221】
また、
図8におけるトランジスタのソース領域及びドレイン領域は、一対のOS2により
形成されており、OS2は、上記OS1と同様に、膜中から水分(水素を含む)などの不
純物をできるだけ除去、脱離させて高純度化し、さらに膜中の酸素欠損を低減することに
より真性(i型)としたもの、又は限りなく真性に近づけた酸化物半導体とし、その後、
水素もしくは希ガスのうち、少なくともいずれか一つから選択された元素を添加すること
によって、ドナーもしくは酸素欠損を生じさせて形成される。それにより、OS2は、O
S1と比べてキャリア密度が高くなり、フェルミ準位の位置が伝導帯の近くになる。
【0222】
図9(A)は、真空準位(Evacとする)、第1の酸化物半導体領域(OS1とする)
、第2の酸化物半導体領域(OS2とする)、及びソース電極及びドレイン電極(met
alとする)のバンド構造の関係である。ここで、IPはイオン化ポテンシャル、Eaは
電子親和力、Egはエネルギーギャップ、Wfは仕事関数を示す。また、Ecは伝導帯の
下端、Evは価電子帯の上端、Efはフェルミ準位を示す。なお、各符号の末尾に示す記
号は、1がOS1を、2がOS2を、mがmetalをそれぞれ示す。ここでmetal
としてWf_mが4.1eV(チタンなど)を想定している。
【0223】
OS1はi型または実質的にi型化された酸化物半導体であり、極めてキャリア密度が低
いためEf_1はEc及びEvの概ね中央にあるとする。また、OS2はキャリア密度の
高いn型の酸化物半導体であり、Ec_2とEf_2が概ね一致する。OS1及びOS2
に示す酸化物半導体は、エネルギーギャップ(Eg)が3.15eV、電子親和力(Ea
)は4.3eVと言われている。
【0224】
図9(B)に示すように、チャネル形成領域であるOS1と、ソース領域及びドレイン領
域であるOS2が接触すると、フェルミ準位が一致するようにキャリアの移動が起こり、
OS1及びOS2のバンド端が曲がる。さらに、OS2と、ソース電極及びドレイン電極
であるmetalが接触した場合も、フェルミ準位が一致するようにキャリアの移動が起
こり、OS2のバンド端が曲がる。
【0225】
このように、チャネル形成領域となるOS1とソース電極及びドレイン電極となるmet
alとの間に、n型の酸化物半導体であるOS2が形成されることにより、酸化物半導体
と金属とのコンタクトをオーミックにすることができ、またコンタクト抵抗を低減させる
ことができる。その結果としてトランジスタのオン電流を増加させることができる。
【0226】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0227】
(実施の形態5)
図10(A)に半導体装置を構成する記憶素子(以下、メモリセルとも記す)の回路図の
一例を示す。メモリセルは、酸化物半導体以外の材料をチャネル形成領域に用いたトラン
ジスタ1160と酸化物半導体をチャネル形成領域に用いたトランジスタ1162によっ
て構成される。
【0228】
酸化物半導体をチャネル形成領域に用いたトランジスタ1162は、実施の形態1に従っ
て作製することができる。
【0229】
図10(A)に示すように、トランジスタ1160のゲート電極と、トランジスタ116
2のソース電極またはドレイン電極の一方とは、電気的に接続されている。また、第1の
配線(1st Line:ソース線とも呼ぶ)とトランジスタ1160のソース電極とは
、電気的に接続され、第2の配線(2nd Line:ビット線とも呼ぶ)とトランジス
タ1160のドレイン電極とは、電気的に接続されている。そして、第3の配線(3rd
Line:第1信号線とも呼ぶ)とトランジスタ1162のソース電極またはドレイン
電極の他方とは、電気的に接続され、第4の配線(4th Line:第2信号線とも呼
ぶ)と、トランジスタ1162のゲート電極とは、電気的に接続されている。
【0230】
酸化物半導体以外の材料、例えば単結晶シリコンをチャネル形成領域に用いたトランジス
タ1160は十分な高速動作が可能なため、トランジスタ1160を用いることにより、
記憶内容の読み出しなどを高速に行うことが可能である。また、酸化物半導体をチャネル
形成領域に用いたトランジスタ1162は、トランジスタ1160に比べてオフ電流が小
さいという特徴を有している。このため、トランジスタ1162をオフ状態とすることで
、トランジスタ1160のゲート電極の電位を極めて長時間にわたって保持することが可
能である。
【0231】
ゲート電極の電位が保持可能という特徴を生かすことで、次のように、情報の書き込み、
保持、読み出しが可能である。
【0232】
はじめに、情報の書き込み及び保持について説明する。まず、第4の配線の電位を、トラ
ンジスタ1162がオン状態となる電位として、トランジスタ1162をオン状態とする
。これにより、第3の配線の電位が、トランジスタ1160のゲート電極に与えられる(
書き込み)。その後、第4の配線の電位を、トランジスタ1162がオフ状態となる電位
として、トランジスタ1162をオフ状態とすることにより、トランジスタ1160のゲ
ート電極の電位が保持される(保持)。
【0233】
トランジスタ1162のオフ電流はトランジスタ1160に比べて小さいから、トランジ
スタ1160のゲート電極の電位は長時間にわたって保持される。例えば、トランジスタ
1160のゲート電極の電位がトランジスタ1160をオン状態とする電位であれば、ト
ランジスタ1160のオン状態が長時間にわたって保持されることになる。また、トラン
ジスタ1160のゲート電極の電位がトランジスタ1160をオフ状態とする電位であれ
ば、トランジスタ1160のオフ状態が長時間にわたって保持される。
【0234】
次に、情報の読み出しについて説明する。上述のように、トランジスタ1160のオン状
態またはオフ状態が保持された状態において、第1の配線に所定の電位(低電位)が与え
られると、トランジスタ1160のオン状態またはオフ状態に応じて、第2の配線の電位
は異なる値をとる。例えば、トランジスタ1160がオン状態の場合には、第1の配線の
電位に対して、第2の配線の電位が低下することになる。また、トランジスタ1160が
オフ状態の場合には、第2の配線の電位は変化しない。
【0235】
このように、情報が保持された状態において、第2の配線の電位と、所定の電位とを比較
することで、情報を読み出すことができる。
【0236】
次に、情報の書き換えについて説明する。情報の書き換えは、上記情報の書き込み及び保
持と同様に行われる。つまり、第4の配線の電位を、トランジスタ1162がオン状態と
なる電位として、トランジスタ1162をオン状態とする。これにより、第3の配線の電
位(新たな情報に係る電位)が、トランジスタ1160のゲート電極に与えられる。その
後、第4の配線の電位を、トランジスタ1162がオフ状態となる電位として、トランジ
スタ1162をオフ状態とすることにより、新たな情報が保持された状態となる。
【0237】
このように、開示する発明に係るメモリセルは、再度の情報の書き込みによって直接的に
情報を書き換えることが可能である。このためフラッシュメモリなどにおいて必要とされ
る消去動作が不要であり、消去動作に起因する動作速度の低下を抑制することができる。
つまり、メモリセルを有する半導体装置の高速動作が実現される。
【0238】
また、
図10(A)を発展させたメモリセルの回路図の一例を
図10(B)に示す。
【0239】
図10(B)に示すメモリセル1100は、第1の配線SL(ソース線)と、第2の配線
BL(ビット線)と、第3の配線S1(第1信号線)と、第4の配線S2(第2信号線)
と、第5の配線WL(ワード線)と、トランジスタ1164(第1のトランジスタ)と、
トランジスタ1161(第2のトランジスタ)と、トランジスタ1163(第3のトラン
ジスタ)と、から構成されている。トランジスタ1164及びトランジスタ1163は、
酸化物半導体以外の材料をチャネル形成領域に用いており、トランジスタ1161は酸化
物半導体をチャネル形成領域に用いている。
【0240】
ここで、トランジスタ1164のゲート電極と、トランジスタ1161のソース電極また
はドレイン電極の一方とは、電気的に接続されている。また、第1の配線SLと、トラン
ジスタ1164のソース電極とは、電気的に接続され、トランジスタ1164のドレイン
電極と、トランジスタ1163のソース電極とは、電気的に接続されている。そして、第
2の配線BLと、トランジスタ1163のドレイン電極とは、電気的に接続され、第3の
配線S1と、トランジスタ1161のソース電極またはドレイン電極の他方とは、電気的
に接続され、第4の配線S2と、トランジスタ1161のゲート電極とは、電気的に接続
され、第5の配線WLと、トランジスタ1163のゲート電極とは電気的に接続されてい
る。
【0241】
次に、回路の動作について具体的に説明する。
【0242】
メモリセル1100への書込みを行う場合は、第1の配線SLを0V、第5の配線WLを
0V、第2の配線BLを0V、第4の配線S2を2Vとする。データ”1”を書き込む場
合には第3の配線S1を2V、データ”0”を書き込む場合には第3の配線S1を0Vと
する。このとき、トランジスタ1163はオフ状態、トランジスタ1161はオン状態と
なる。なお、書き込み終了にあたっては、第3の配線S1の電位が変化する前に、第4の
配線S2を0Vとして、トランジスタ1161をオフ状態にする。
【0243】
その結果、データ”1”書込み後にはトランジスタ1164のゲート電極に接続されるノ
ード(以下、ノードA)の電位が約2V、データ”0”書込み後にはノードAの電位が約
0Vとなる。ノードAには、第3の配線S1の電位に応じた電荷が蓄積されるが、トラン
ジスタ1161のオフ電流は、単結晶シリコンをチャネル形成領域に用いたトランジスタ
と比べて小さく、トランジスタ1164のゲート電極の電位は長時間にわたって保持され
る。
【0244】
次に、メモリセルの読み出しを行う場合は、第1の配線SLを0V、第5の配線WLを2
V、第4の配線S2を0V、第3の配線S1を0Vとし、第2の配線BLに接続されてい
る読出し回路を動作状態とする。このとき、トランジスタ1163はオン状態、トランジ
スタ1161はオフ状態となる。
【0245】
データ”0”、つまりノードAが約0Vの状態であればトランジスタ1164はオフ状態
であるから、第2の配線BLと第1の配線SL間の抵抗は高い状態となる。一方、データ
”1”、つまりノードAが約2Vの状態であればトランジスタ1164がオン状態である
から、第2の配線BLと第1の配線SL間の抵抗は低い状態となる。読出し回路は、メモ
リセルの抵抗状態の違いから、データ”0”,”1”を読み出すことができる。なお、書
込み時の第2の配線BLは0Vとしたが、フローティング状態や0V以上の電位に充電さ
れていても構わない。読み出し時の第3の配線S1は0Vとしたが、フローティング状態
や0V以上の電位に充電されていても構わない。
【0246】
なお、データ”1”とデータ”0”は便宜上の定義であって、逆であっても構わない。ま
た、上述した動作電圧は一例である。動作電圧は、データ”0”の場合にトランジスタ1
164がオフ状態となり、データ”1”の場合にトランジスタ1164がオン状態となる
ように、また、書込み時にトランジスタ1161がオン状態、書込み時以外ではオフ状態
となるように、また、読み出し時にトランジスタ1163がオン状態となるように選べば
よい。特に2Vの代わりに、周辺の論理回路の電源電位VDDを用いてもよい。
【0247】
本実施の形態では理解の簡単のため、最小記憶単位(1ビット)のメモリセルについて説
明したが、メモリセルの構成はこれに限られるものではない。複数のメモリセルを適当に
接続して、より高度な半導体装置を構成することもできる。例えば、上記メモリセルを複
数用いて、NAND型やNOR型の半導体装置を構成することが可能である。配線の構成
も
図10(A)や
図10(B)に限定されず、適宜変更することができる。
【0248】
図11に、m×nビットの記憶容量を有する本発明の一態様に係る半導体装置のブロック
回路図を示す。
【0249】
図11に示す半導体装置は、m本の第5の配線及び第4の配線と、n本の第2の配線及び
第3の配線と、複数のメモリセル1100(1、1)~1100(m、n)が縦m個(行
)×横n個(列)(m、nは自然数)のマトリクス状に配置されたメモリセルアレイ11
10と、第2の配線及び第3の配線駆動回路1111や、第4の配線及び第5の配線駆動
回路1113や、読出し回路1112といった周辺回路によって構成されている。他の周
辺回路として、リフレッシュ回路等が設けられてもよい。
【0250】
各メモリセルの代表として、メモリセル1100(i、j)を考える。ここで、メモリセ
ル1100(i、j)(iは1以上m以下の整数、jは1以上n以下の整数)は、第2の
配線BL(j)、第3の配線S1(j)、第5の配線WL(i)及び第4の配線S2(i
)、及び第1の配線にそれぞれ接続されている。第1の配線には第1の配線電位Vsが与
えられている。また、第2の配線BL(1)~BL(n)及び第3の配線S1(1)~S
1(n)は第2の配線及び第3の配線駆動回路1111及び読出し回路1112に、第5
の配線WL(1)~WL(m)及び第4の配線S2(1)~S2(m)は第4の配線及び
第5の配線駆動回路1113にそれぞれ接続されている。
【0251】
図11に示した半導体装置の動作について説明する。本構成では、行ごとの書込み及び読
出しを行う。
【0252】
第i行のメモリセル1100(i、1)~1100(i、n)に書込みを行う場合は、第
1の配線電位Vsを0V、第5の配線WL(i)を0V、第2の配線BL(1)~BL(
n)を0V、第4の配線S2(i)を2Vとする。このときトランジスタ1161は、オ
ン状態となる。第3の配線S1(1)~S1(n)は、データ”1”を書き込む列は2V
、データ”0”を書き込む列は0Vとする。なお、書き込み終了にあたっては、第3の配
線S1(1)~S1(n)の電位が変化する前に、第4の配線S2(i)を0Vとして、
トランジスタ1161をオフ状態にする。また、非選択の第5の配線WLは0V、非選択
の第4の配線S2は0Vとする。
【0253】
その結果、データ”1”の書込みを行ったメモリセルのトランジスタ1164のゲート電
極に接続されるノード(以下、ノードA)の電位は約2V、データ”0”の書込みを行っ
たメモリセルのノードAの電位は約0Vとなる。また、非選択メモリセルのノードAの電
位は変わらない。
【0254】
第i行のメモリセル1100(i、1)~1100(i、n)の読み出しを行う場合は、
第1の配線電位Vsを0V、第5の配線WL(i)を2V、第4の配線S2(i)を0V
、第3の配線S1(1)~S1(n)を0Vとし、第2の配線BL(1)~BL(n)に
接続されている読出し回路を動作状態とする。読出し回路では、例えば、メモリセルの抵
抗状態の違いから、データ”0”,”1”を読み出すことができる。なお、非選択の第5
の配線WLは0V、非選択の第4の配線S2は0Vとする。なお、書込み時の第2の配線
BLは0Vとしたが、フローティング状態や0V以上の電位に充電されていても構わない
。読出し時の第3の配線S1は0Vとしたが、フローティング状態や0V以上の電位に充
電されていても構わない。
【0255】
なお、データ”1”とデータ”0”は便宜上の定義であって、逆であっても構わない。ま
た、上述した動作電圧は一例である。動作電圧は、データ”0”の場合にトランジスタ1
164がオフ状態となり、データ”1”の場合にトランジスタ1164がオン状態となる
ように、また、書込み時にトランジスタ1161がオン状態、書込み時以外ではオフ状態
となるように、また、読み出し時にトランジスタ1163がオン状態となるように選べば
よい。特に2Vの代わりに、周辺の論理回路の電源電位VDDを用いてもよい。
【0256】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0257】
(実施の形態6)
本実施の形態では、容量素子を有するメモリセルの回路図の一例を示す。
図12(A)に
示すメモリセル1170は、第1の配線SL、第2の配線BL、第3の配線S1、第4の
配線S2と、第5の配線WLと、トランジスタ1171(第1のトランジスタ)と、トラ
ンジスタ1172(第2のトランジスタ)と、容量素子1173とから構成されている。
トランジスタ1171は、酸化物半導体以外の材料をチャネル形成領域に用いており、ト
ランジスタ1172はチャネル形成領域に酸化物半導体を用いている。
【0258】
ここで、トランジスタ1171のゲート電極と、トランジスタ1172のソース電極また
はドレイン電極の一方と、容量素子1173の一方の電極とは、電気的に接続されている
。また、第1の配線SLと、トランジスタ1171のソース電極とは、電気的に接続され
、第2の配線BLと、トランジスタ1171のドレイン電極とは、電気的に接続され、第
3の配線S1と、トランジスタ1172のソース電極またはドレイン電極の他方とは、電
気的に接続され、第4の配線S2と、トランジスタ1172のゲート電極とは、電気的に
接続され、第5の配線WLと、容量素子1173の他方の電極とは、電気的に接続されて
いる。
【0259】
次に、回路の動作について具体的に説明する。
【0260】
メモリセル1170への書込みを行う場合は、第1の配線SLを0V、第5の配線WLを
0V、第2の配線BLを0V、第4の配線S2を2Vとする。データ”1”を書き込む場
合には第3の配線S1を2V、データ”0”を書き込む場合には第3の配線S1を0Vと
する。このとき、トランジスタ1172はオン状態となる。なお、書き込み終了にあたっ
ては、第3の配線S1の電位が変化する前に、第4の配線S2を0Vとして、トランジス
タ1172をオフ状態にする。
【0261】
その結果、データ”1”の書込み後にはトランジスタ1171のゲート電極に接続される
ノード(以下、ノードA)の電位が約2V、データ”0”の書込み後にはノードAの電位
が約0Vとなる。
【0262】
メモリセル1170の読み出しを行う場合は、第1の配線SLを0V、第5の配線WLを
2V、第4の配線S2を0V、第3の配線S1を0Vとし、第2の配線BLに接続されて
いる読出し回路を動作状態とする。このとき、トランジスタ1172は、オフ状態となる
。
【0263】
第5の配線WLを2Vとした場合のトランジスタ1171の状態について説明する。トラ
ンジスタ1171の状態を決めるノードAの電位は、第5の配線WLとノードA間の容量
C1と、トランジスタ1171のゲート電極と、ソース電極及びドレイン電極間の容量C
2に依存する。
【0264】
なお、読出し時の第3の配線S1は0Vとしたが、フローティング状態や0V以上の電位
に充電されていても構わない。データ”1”とデータ”0”は便宜上の定義であって、逆
であっても構わない。
【0265】
書き込み時の第3の配線S1の電位は、書込み後にトランジスタ1172がオフ状態とな
り、また、第5の配線電位が0Vの場合にトランジスタ1171がオフ状態である範囲で
、データ”0”、”1”の電位をそれぞれ選べばよい。読出し時の第5の配線電位は、デ
ータ”0”の場合にトランジスタ1171がオフ状態となり、データ”1”の場合にトラ
ンジスタ1171がオン状態となるように選べばよい。また、トランジスタ1171のし
きい値電圧も、一例である。上述したトランジスタ1171の状態を変えない範囲であれ
ば、どのようなしきい値でも構わない。
【0266】
また、第1のゲート電極、及び第2のゲート電極を有する選択トランジスタと、容量素子
を有するメモリセルを用いるNOR型の半導体記憶装置の例について
図12(B)を用い
て説明する。
【0267】
図12(B)に示す本発明の一態様に係る半導体装置は、I行(Iは2以上の自然数)J
列(Jは自然数)にマトリクス状に配列された複数のメモリセルを備えたメモリセルアレ
イを具備する。
【0268】
図12(B)に示すメモリセルアレイは、i行(iは3以上の自然数)j列(jは3以上
の自然数)にマトリクス状に配列された複数のメモリセル1180と、i本のワード線W
L(ワード線WL_1乃至ワード線WL_i)と、i本の容量線CL(容量線CL_1乃
至容量線CL_i)と、i本のゲート線BGL(ゲート線BGL_1乃至ゲート線BGL
_i)と、j本のビット線BL(ビット線BL_1乃至ビット線BL_j)と、ソース線
SLと、を具備する。
【0269】
さらに、複数のメモリセル1180のそれぞれ(メモリセル1180(M,N)(ただし
、Mは1以上i以下の自然数、Nは1以上j以下の自然数)ともいう)は、トランジスタ
1181(M,N)と、容量素子1183(M,N)と、トランジスタ1182(M,N
)と、を備える。
【0270】
なお、半導体記憶装置において、容量素子は、第1の容量電極、第2の容量電極、並びに
第1の容量電極及び第2の容量電極に重畳する誘電体層により構成される。容量素子は、
第1の容量電極及び第2の容量電極の間に印加される電圧に応じて電荷が蓄積される。
【0271】
トランジスタ1181(M,N)は、Nチャネル型トランジスタであり、ソース電極、ド
レイン電極、第1のゲート電極、及び第2のゲート電極を有する。なお、本実施の形態の
半導体記憶装置において、必ずしもトランジスタ1181をNチャネル型トランジスタに
しなくてもよい。
【0272】
トランジスタ1181(M,N)のソース電極及びドレイン電極の一方は、ビット線BL
_Nに接続され、トランジスタ1181(M,N)の第1のゲート電極は、ワード線WL
_Mに接続され、トランジスタ1181(M,N)の第2のゲート電極は、ゲート線BG
L_Mに接続される。トランジスタ1181(M,N)のソース電極及びドレイン電極の
一方がビット線BL_Nに接続される構成にすることにより、メモリセル毎に選択的にデ
ータを読み出すことができる。
【0273】
トランジスタ1181(M,N)は、メモリセル1180(M,N)において選択トラン
ジスタとしての機能を有する。
【0274】
トランジスタ1181(M,N)としては、酸化物半導体をチャネル形成領域に用いたト
ランジスタを用いることができる。
【0275】
トランジスタ1182(M,N)は、Pチャネル型トランジスタである。なお、本実施の
形態の半導体記憶装置において、必ずしもトランジスタ1182をPチャネル型トランジ
スタにしなくてもよい。
【0276】
トランジスタ1182(M,N)のソース電極及びドレイン電極の一方は、ソース線SL
に接続され、トランジスタ1182(M,N)のソース電極及びドレイン電極の他方は、
ビット線BL_Nに接続され、トランジスタ1182(M,N)のゲート電極は、トラン
ジスタ1181(M,N)のソース電極及びドレイン電極の他方に接続される。
【0277】
トランジスタ1182(M,N)は、メモリセル1180(M,N)において、出力トラ
ンジスタとしての機能を有する。トランジスタ1182(M,N)としては、例えば単結
晶シリコンをチャネル形成領域に用いるトランジスタを用いることができる。
【0278】
容量素子1183(M,N)の第1の容量電極は、容量線CL_Mに接続され、容量素子
1183(M,N)の第2の容量電極は、トランジスタ1181(M,N)のソース電極
及びドレイン電極の他方に接続される。なお、容量素子1183(M,N)は、保持容量
としての機能を有する。
【0279】
ワード線WL_1乃至ワード線WL_iのそれぞれの電圧は、例えばデコーダを用いた駆
動回路により制御される。
【0280】
ビット線BL_1乃至ビット線BL_jのそれぞれの電圧は、例えばデコーダを用いた駆
動回路により制御される。
【0281】
容量線CL_1乃至容量線CL_iのそれぞれの電圧は、例えばデコーダを用いた駆動回
路により制御される。
【0282】
ゲート線BGL_1乃至ゲート線BGL_iのそれぞれの電圧は、例えばゲート線駆動回
路を用いて制御される。
【0283】
ゲート線駆動回路は、例えばダイオード及び第1の容量電極がダイオードのアノード及び
ゲート線BGLに電気的に接続される容量素子を備える回路により構成される。
【0284】
トランジスタ1181の第2のゲート電極の電圧を調整することにより、トランジスタ1
181の閾値電圧を調整することができる。従って、選択トランジスタとして機能するト
ランジスタ1181の閾値電圧を調整し、オフ状態におけるトランジスタ1181のソー
ス電極及びドレイン電極の間に流れる電流を極力小さくすることができる。よって、記憶
回路におけるデータの保持期間を長くすることができる。また、データの書き込み及び読
み出しに必要な電圧を従来の半導体装置より低くすることができるため、消費電力を低減
することができる。
【0285】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0286】
(実施の形態7)
本実施の形態では、先の実施の形態に示すトランジスタを用いた半導体装置の例について
、
図13を参照して説明する。
【0287】
図13(A)には、いわゆるDRAM(Dynamic Random Access
Memory)に相当する構成の半導体装置の一例を示す。
図13(A)に示すメモリセ
ルアレイ1120は、複数のメモリセル1130がマトリクス状に配列された構成を有し
ている。また、メモリセルアレイ1120は、m本の第1の配線、及びn本の第2の配線
を有する。なお、本実施の形態においては、第1の配線をビット線BLと呼び、第2の配
線をワード線WLと呼ぶ。
【0288】
メモリセル1130は、トランジスタ1131と、容量素子1132と、から構成されて
いる。トランジスタ1131のゲート電極は、第1の配線(ワード線WL)と接続されて
いる。また、トランジスタ1131のソース電極またはドレイン電極の一方は、第2の配
線(ビット線BL)と接続されており、トランジスタ1131のソース電極またはドレイ
ン電極の他方は、容量素子の電極の一方と接続されている。また、容量素子の電極の他方
は容量線CLと接続され、一定の電位が与えられている。トランジスタ1131には、先
の実施の形態に示すトランジスタが適用される。
【0289】
先の実施の形態において示した酸化物半導体をチャネル形成領域に用いるトランジスタは
、単結晶シリコンをチャネル形成領域に用いたトランジスタに比べてオフ電流が小さいと
いう特徴を有する。このため、いわゆるDRAMとして認識されている
図13(A)に示
す半導体装置に当該トランジスタを適用する場合、実質的な不揮発性メモリを得ることが
可能である。
【0290】
図13(B)には、いわゆるSRAM(Static Random Access M
emory)に相当する構成の半導体装置の一例を示す。
図13(B)に示すメモリセル
アレイ1140は、複数のメモリセル1150がマトリクス状に配列された構成とするこ
とができる。また、メモリセルアレイ1140は、第1の配線(ワード線WL)、第2の
配線(ビット線BL)及び第3の配線(反転ビット線/BL)をそれぞれ複数本有する。
【0291】
メモリセル1150は、第1のトランジスタ1151、第2のトランジスタ1152、第
3のトランジスタ1153、第4のトランジスタ1154、第5のトランジスタ1155
、及び第6のトランジスタ1156を有している。第1のトランジスタ1151と第2の
トランジスタ1152は、選択トランジスタとして機能する。また、第3のトランジスタ
1153と第4のトランジスタ1154のうち、一方はnチャネル型トランジスタ(ここ
では、第4のトランジスタ1154)であり、他方はpチャネル型トランジスタ(ここで
は、第3のトランジスタ1153)である。つまり、第3のトランジスタ1153と第4
のトランジスタ1154によってCMOS回路が構成されている。同様に、第5のトラン
ジスタ1155と第6のトランジスタ1156によってCMOS回路が構成されている。
【0292】
第1のトランジスタ1151、第2のトランジスタ1152、第4のトランジスタ115
4、第6のトランジスタ1156は、nチャネル型のトランジスタであり、先の実施の形
態において示したトランジスタを適用することができる。第3のトランジスタ1153と
第5のトランジスタ1155は、pチャネル型のトランジスタであり、酸化物半導体以外
の材料(例えば、単結晶シリコンなど)をチャネル形成領域に用いる。
【0293】
本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み
合わせて用いることができる。
【0294】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0295】
(実施の形態8)
酸化物半導体をチャネル形成領域に用いたトランジスタを少なくとも一部に用いてCPU
(Central Processing Unit)を構成することができる。
【0296】
図14(A)は、CPUの具体的な構成を示すブロック図である。
図14(A)に示すC
PUは、基板1190上に、演算回路(ALU:Arithmetic logic u
nit)1191、ALUコントローラ1192、インストラクションデコーダ1193
、インタラプトコントローラ1194、タイミングコントローラ1195、レジスタ11
96、レジスタコントローラ1197、バスインターフェース(Bus I/F)119
8、書き換え可能なROM1199、及びROMインターフェース(ROM I/F)1
189を有している。基板1190は、半導体基板、SOI基板、ガラス基板などを用い
る。ROM1199及びROMインターフェース1189は、別チップに設けても良い。
勿論、
図14(A)に示すCPUは、その構成を簡略化して示した一例にすぎず、実際の
CPUはその用途によって多種多様な構成を有している。
【0297】
バスインターフェース1198を介してCPUに入力された命令は、インストラクション
デコーダ1193に入力され、デコードされた後、ALUコントローラ1192、インタ
ラプトコントローラ1194、レジスタコントローラ1197、タイミングコントローラ
1195に入力される。
【0298】
ALUコントローラ1192、インタラプトコントローラ1194、レジスタコントロー
ラ1197、タイミングコントローラ1195は、デコードされた命令に基づき、各種制
御を行なう。具体的にALUコントローラ1192は、ALU1191の動作を制御する
ための信号を生成する。また、インタラプトコントローラ1194は、CPUのプログラ
ム実行中に、外部の入出力装置や、周辺回路からの割り込み要求を、その優先度やマスク
状態から判断し、処理する。レジスタコントローラ1197は、レジスタ1196のアド
レスを生成し、CPUの状態に応じてレジスタ1196の読み出しや書き込みを行なう。
【0299】
また、タイミングコントローラ1195は、ALU1191、ALUコントローラ119
2、インストラクションデコーダ1193、インタラプトコントローラ1194、及びレ
ジスタコントローラ1197の動作のタイミングを制御する信号を生成する。例えばタイ
ミングコントローラ1195は、基準クロック信号CLK1を元に、内部クロック信号C
LK2を生成する内部クロック生成部を備えており、クロック信号CLK2を上記各種回
路に供給する。
【0300】
図14(A)に示すCPUでは、レジスタ1196に、記憶素子が設けられている。レジ
スタ1196の記憶素子には、実施の形態5に記載されている記憶素子を用いることがで
きる。
【0301】
図14(A)に示すCPUにおいて、レジスタコントローラ1197は、ALU1191
からの指示に従い、レジスタ1196における保持動作の選択を行う。すなわち、レジス
タ1196が有する記憶素子において、位相反転素子によるデータの保持を行うか、容量
素子によるデータの保持を行うかを、選択する。位相反転素子によるデータの保持が選択
されている場合、レジスタ1196内の記憶素子への、電源電圧の供給が行われる。容量
素子におけるデータの保持が選択されている場合、容量素子へのデータの書き換えが行わ
れ、レジスタ1196内の記憶素子への電源電圧の供給を停止することができる。
【0302】
電源停止に関しては、
図14(B)または
図14(C)に示すように、記憶素子群と、電
源電位VDDまたは電源電位VSSの与えられているノード間に、スイッチング素子を設
けることにより行うことができる。以下に
図14(B)及び
図14(C)の回路の説明を
行う。
【0303】
図14(B)及び
図14(C)では、記憶素子への電源電位の供給を制御するスイッチン
グ素子に、酸化物半導体をチャネル形成領域に用いたトランジスタを含む記憶回路の構成
の一例を示す。
【0304】
図14(B)に示す記憶装置は、スイッチング素子1141と、記憶素子1142を複数
有する記憶素子群1143とを有している。具体的に、各記憶素子1142には、実施の
形態5に記載されている記憶素子を用いることができる。記憶素子群1143が有する各
記憶素子1142には、スイッチング素子1141を介して、ハイレベルの電源電位VD
Dが供給されている。さらに、記憶素子群1143が有する各記憶素子1142には、信
号INの電位と、ローレベルの電源電位VSSの電位が与えられている。
【0305】
図14(B)では、スイッチング素子1141として、酸化物半導体をチャネル形成領域
に有するトランジスタを用いており、該トランジスタは、そのゲート電極に与えられる信
号SigAによりスイッチングが制御される。
【0306】
なお、
図14(B)では、スイッチング素子1141がトランジスタを一つだけ有する構
成を示しているが、特に限定されず、トランジスタを複数有していても良い。スイッチン
グ素子1141が、スイッチング素子として機能するトランジスタを複数有している場合
、上記複数のトランジスタは並列に接続されていても良いし、直列に接続されていても良
いし、直列と並列が組み合わされて接続されていても良い。
【0307】
また、
図14(B)では、スイッチング素子1141により、記憶素子群1143が有す
る各記憶素子1142への、ハイレベルの電源電位VDDの供給が制御されているが、ス
イッチング素子1141により、ローレベルの電源電位VSSの供給が制御されていても
良い。
【0308】
また、
図14(C)には、記憶素子群1143が有する各記憶素子1142に、スイッチ
ング素子1141を介して、ローレベルの電源電位VSSが供給されている、記憶装置の
一例を示す。スイッチング素子1141により、記憶素子群1143が有する各記憶素子
1142への、ローレベルの電源電位VSSの供給を制御することができる。
【0309】
記憶素子群と、電源電位VDDまたは電源電位VSSの与えられているノード間に、スイ
ッチング素子を設け、一時的にCPUの動作を停止し、電源電圧の供給を停止した場合に
おいてもデータを保持することが可能であり、消費電力の低減を行うことができる。具体
的には、例えば、パーソナルコンピュータのユーザーが、キーボードなどの入力装置への
情報の入力を停止している間でも、CPUの動作を停止することができ、それにより消費
電力を低減することができる。
【0310】
ここでは、CPUを例に挙げて説明したが、DSP(Digital Signal P
rocessor)、カスタムLSI、FPGA(Field Programmabl
e Gate Array)等のLSIにも応用可能である。
【0311】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【符号の説明】
【0312】
100 トランジスタ
101 基板
102 下地層
103 酸化物半導体層
104 ゲート絶縁層
105 ゲート電極
106 ドーパント
107 絶縁層
108 絶縁層
109 コンタクトホール
111 サイドウォール
112 チャネル保護層
113 絶縁層
115 バックゲート電極
140 トランジスタ
150 トランジスタ
160 トランジスタ
170 トランジスタ
180 トランジスタ
190 トランジスタ
1100 メモリセル
1110 メモリセルアレイ
1111 配線駆動回路
1112 回路
1113 配線駆動回路
1120 メモリセルアレイ
1130 メモリセル
1131 トランジスタ
1132 容量素子
1140 メモリセルアレイ
1141 スイッチング素子
1142 記憶素子
1143 記憶素子群
1150 メモリセル
1151 トランジスタ
1152 トランジスタ
1153 トランジスタ
1154 トランジスタ
1155 トランジスタ
1156 トランジスタ
1160 トランジスタ
1161 トランジスタ
1162 トランジスタ
1163 トランジスタ
1164 トランジスタ
1170 メモリセル
1171 トランジスタ
1172 トランジスタ
1173 容量素子
1180 メモリセル
1181 トランジスタ
1182 トランジスタ
1183 容量素子
1189 ROMインターフェース
1190 基板
1191 ALU
1192 ALUコントローラ
1193 インストラクションデコーダ
1194 インタラプトコントローラ
1195 タイミングコントローラ
1196 レジスタ
1197 レジスタコントローラ
1198 バスインターフェース
1199 ROM
103a ソース領域
103b ドレイン領域
103c チャネル形成領域
103d 低濃度領域
103e 低濃度領域
105a ゲート電極
105b ゲート電極
110a ソース電極
110b ドレイン電極