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特許7575576残留有害物を含有せず向上した開繊品位を有するスパンボンド不織布の製造方法
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  • 特許-残留有害物を含有せず向上した開繊品位を有するスパンボンド不織布の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】残留有害物を含有せず向上した開繊品位を有するスパンボンド不織布の製造方法
(51)【国際特許分類】
   D04H 3/033 20120101AFI20241022BHJP
【FI】
D04H3/033
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023512353
(86)(22)【出願日】2021-08-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-13
(86)【国際出願番号】 KR2021010410
(87)【国際公開番号】W WO2022055131
(87)【国際公開日】2022-03-17
【審査請求日】2023-02-20
(31)【優先権主張番号】10-2020-0114900
(32)【優先日】2020-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0103337
(32)【優先日】2021-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】518215493
【氏名又は名称】コーロン インダストリーズ インク
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】パク,ヨン-シン
(72)【発明者】
【氏名】イ,ミン-ホ
(72)【発明者】
【氏名】チョ,ヒ-ジョン
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ウ-ソク
(72)【発明者】
【氏名】カン,ドンホン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,ジョン-スン
【審査官】斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-119258(JP,A)
【文献】国際公開第2018/079635(WO,A1)
【文献】特公平04-078744(JP,B2)
【文献】特許第2663398(JP,B2)
【文献】特開平06-248556(JP,A)
【文献】特開平07-268753(JP,A)
【文献】特開平08-325917(JP,A)
【文献】特開平05-093353(JP,A)
【文献】特開平08-158232(JP,A)
【文献】国際公開第2007/088824(WO,A1)
【文献】特開2008-159374(JP,A)
【文献】特開平10-331062(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2008-0040079(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04H 1/00 - 18/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂を溶融紡糸して連続的なフィラメントバンドルを得る段階と、
前記連続的なフィラメントバンドルを、ビスマス(Bi)またはビスマス合金を含む金属部材に衝突させて、摩擦帯電によって開繊されたフィラメントを得る段階と、
前記開繊されたフィラメントを連続コンベヤネット上に集束して繊維ウェブを形成する段階と
を含み、
前記連続的なフィラメントバンドルは、4,000m/min~6,000m/minの線速度、および、前記連続的なフィラメントバンドルを噴射する1つのノズルあたり2.0kg/hr~8.0kg/hrの質量流動率で、前記金属部材に衝突する、スパンボンド不織布の製造方法。
【請求項2】
前記ビスマス合金は、前記ビスマス合金の重量を基準として10重量%以上のビスマスを含む、請求項1に記載のスパンボンド不織布の製造方法。
【請求項3】
前記ビスマス合金は、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、スズ(Sn)、アルミニウム(Al)、モリブデン(Mo)、およびチタン(Ti)からなる群より選択された1種以上の金属を含む、請求項1に記載のスパンボンド不織布の製造方法。
【請求項4】
前記開繊されたフィラメントは、前記摩擦帯電による-3500nC/sec~-500nC/secの電荷発生量(ファラデーケージ法で測定された値)を有する、請求項1に記載のスパンボンド不織布の製造方法。
【請求項5】
前記開繊されたフィラメントは、前記フィラメントバンドルを噴射するノズルの回転角度範囲-15±5°~+15±5°および前記ノズルの往復速度3counter/sec~12counter/secの条件の下に、500mm以上の開繊幅で、前記連続コンベヤネット上に集束される(ここで、前記開繊幅は、前記連続コンベヤネット上に集束される、開繊されたフィラメントの移動方向を基準とする最大幅を意味する)、請求項1に記載のスパンボンド不織布の製造方法。
【請求項6】
前記熱可塑性樹脂は、200℃以上の融点を有し、
前記熱可塑性樹脂は、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、およびポリフェニレンスルフィドからなる群より選択された1種以上の樹脂である、
請求項1に記載のスパンボンド不織布の製造方法。
【請求項7】
前記熱可塑性樹脂は、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、およびポリフェニレンスルフィドからなる群より選択された1種以上の樹脂である、請求項1に記載のスパンボンド不織布の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、残留有害物を含有せず、向上した開繊品位を有するスパンボンド不織布、その製造方法および製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、スパンボンド不織布の製造工程は、紡糸、冷却、延伸、ウェブ形成、結合、巻取の順に進行する。連続工程で行われるスパンボンド法は、生産性が高く、経済性に優れた特性を有する。
【0003】
スパンボンド不織布の製造工程は、紡糸工程から延伸工程までの差によりドカン(Docan)システムとライコフィル(Reicofil)システムとに区分され、ウェブ形成のためのフィラメント開繊技術により細分化される。
【0004】
ライコフィルシステムは、長方形の構造の紡糸パック(spinning-pack)から放流された溶融高分子が、閉鎖された冷却/延伸区間を経て、フィラメントカーテン(curtain)の形態で紡糸され、空力(空気力;aerodynamic-force)またはコロナ帯電(corona-charge)方式の分繊(separation)により、ウェブを形成する。ライコフィルシステムは、高い生産量と速い生産速度で、不織布の製造費用が安価であるというメリットを有しており、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのオレフィン原料を用いた、衛生材、防護服、フィルタ分野に適用中である。しかし、PETについては、低い機械的物性と外観品位のために、高付加価値市場への進入に困難がある。
【0005】
ドカンシステムは、円形の構造の紡糸パックから放流された溶融高分子が、開放された冷却/延伸区間を経て、フィラメントバンドル(bundle)状に繊維化し、機械力(mechanical-force)、静電気力(electrostatic-charge)または複合方式の開繊により、ウェブを形成する。ドカンシステムの下では、不織布の機械的物性に優れ、均一な外観品位を有するので、高付加価値製品に適用される。しかし、ライコフィルシステムに比べて生産性が低いので、製造費用が高いというデメリットを有する。
【0006】
ドカンシステムの下では、コロナ放電による強制帯電法、摩擦素材(例えば、金属)との衝突による摩擦帯電法など、多様な開繊方式が開発された。しかし、前記開繊方式によってフィラメントバンドルの開繊性が改善されても、ウェブの面密度不均衡(つまり、ウェブの単位面積あたりの重量の不均一)については、依然として改善が要求されている。
【0007】
一方、前記摩擦帯電法は、摩擦素材の帯電序列にしたがい、その性能が制御される。例えば、ポリエステルフィラメントと金属板材との間の摩擦(衝突)によって、ポリエステルフィラメントに負電荷を有するようにする。前記摩擦によって同じ電荷を有するようになったフィラメント同士の間のクーロン斥力(Coulomb repulsive-force)によって、フィラメントが開繊される。
【0008】
前記摩擦帯電法での金属板材としては、伝統的に鉛(Pb)が使用されている。しかし、鉛はもろいため、フィラメントとの摩擦によって摩耗しやすい。それによって、前記摩擦帯電法に、鉛を摩擦素材として用いて製造されたスパンボンド不織布では、残留鉛が存在しうる。
【0009】
鉛(Pb)は、欧州連合(EU)の有害物質制限(RoHS)指針による、6大有害物質の1つであって、人体有害性に対する潜在的リスクを有している。それによって、鉛(Pb)は、生活科学素材の用途別の許容限界値を有しており、ひいては未使用が勧告されているのが現状である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、鉛(Pb)と同等水準の負電荷供与性を有しながらも、人体の有害性がない摩擦素材を用いて、向上した開繊品位を有するスパンボンド不織布を製造する方法を提供する。
【0011】
本発明は、前記スパンボンド不織布の製造装置を提供する。
【0012】
そして、本発明は、残留有害物を含有せず、向上した開繊品位を有するスパンボンド不織布を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一実施形態によれば、
熱可塑性樹脂を溶融紡糸して連続的なフィラメントバンドルを得る段階と、
前記連続的なフィラメントバンドルを、ビスマス(Bi)またはビスマス合金を含む金属部材に衝突させて、摩擦帯電によって開繊されたフィラメントを得る段階と、
前記開繊されたフィラメントを、連続コンベヤネット上に集束して、繊維ウェブを形成する段階と
を含む、スパンボンド不織布の製造方法が提供される。
【0014】
本発明の他の実施形態によれば、
連続的なフィラメントバンドルを吐出するように構成されて配列された複数のノズルユニットと、
前記ノズルユニットによって吐出された、前記連続的なフィラメントバンドルと衝突するための位置にて、前記ノズルユニットのそれぞれに隣接する衝突ユニットと、
前記衝突ユニットとの摩擦帯電によって開繊されたフィラメントを捕集して移送する連続コンベヤネットとを含み、
前記衝突ユニットは、ビスマス(Bi)またはビスマス合金を含む金属部材である衝突面を含む、
スパンボンド不織布製造装置が提供される。
【0015】
本発明のさらに他の実施形態によれば、
熱可塑性樹脂フィラメントを含む繊維ウェブを含み、
0.01ppmw~10.0ppmwである、ビスマス(Bi)の残留量を有する、
スパンボンド不織布が提供される。
【0016】
以下、本発明の実施形態によりスパンボンド不織布の製造方法、スパンボンド不織布製造装置、および前記装置を用いて製造されたスパンボンド不織布について、より詳細に説明する。
【0017】
本明細書で他に定義されない限り、すべての技術的用語および科学的用語は、本発明の属する通常の技術者によって、一般に理解される意味と同一の意味を有する。本発明で説明に使用される用語は、単に特定の具体例を効果的に記述するためであり、本発明を制限すると意図されない。
【0018】
本明細書で使用される単数の形態は、文言がこれと明確に反対の意味を示さない限り、複数形態も含む。
【0019】
本明細書で使用される「含む」の意味は、特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分を具体化し、他の特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素、成分および/または群の存在や付加を除外させるわけではない。
【0020】
本発明は、多様な変更が加えられて、様々な形態を有しうるが、特定の実施例を例示して下記に詳細に説明する。しかし、これは、本発明を特定の開示形態に対して限定しようとするものではなく、前記思想および技術範囲に含まれる、あらゆる変更、均等物乃至代替物を含むことが理解されなければならない。
【0021】
本明細書において、例えば、「~上に」、「~上部に」、「~下部に」、「~側に」などと、2つの部分の位置関係が説明される場合、「直に」または「直接」という表現が使用されない以上、2つの部分の間に、1つ以上の他の部分が位置することができる。
【0022】
本明細書において、例えば、「~後に」、「~次に」、「~後に」、「~前に」などと時間的な前後関係が説明される場合、「直に」または「直接」という表現が使用されない以上、連続的でない場合も含むことができる。
【0023】
本明細書において、「少なくとも1つ」の用語は、1つ以上の関連項目から提示可能なすべての組み合わせを含むことが理解されなければならない。
【0024】
I.スパンボンド不織布の製造方法
発明の一実施形態によれば、
熱可塑性樹脂を溶融紡糸して、連続的なフィラメントバンドルを得る段階と、
前記連続的なフィラメントバンドルを、ビスマス(Bi)またはビスマス合金を含む金属部材に衝突させて、摩擦帯電によって開繊されたフィラメントを得る段階と、
前記開繊されたフィラメントを、連続コンベヤネット上に集束して、繊維ウェブを形成する段階と
を含む、スパンボンド不織布の製造方法が提供される。
【0025】
従来、ドカン(Docan)システムの開繊工程は、フィラメントバンドルと鉛板材との摩擦による、静電気力の発生で制御され、フィラメントの運動エネルギーによって、鉛板材が摩耗して製造された不織布内に微量の鉛が残存する。
【0026】
しかし、産業用素材とは異なり、生活科学素材においては、口腔、呼吸器または皮膚を通して残留鉛が露出する恐れがあり、このような潜在的なリスクによって、市場進入に困難があった。
【0027】
しかし、本発明者らの継続的な研究の結果、ドカンシステムによるスパンボンド不織布の製造の際、ビスマス(Bi)またはビスマス合金を含む金属部材を摩擦素材に適用する場合、従来の鉛(Pb)素材である金属部材と同等水準の負電荷供与性を示すことができるとともに、残留有害物を含有せず、向上した開繊品位を有するスパンボンド不織布を製造できることが確認された。
【0028】
図1は、本発明の一実施形態によるスパンボンド不織布製造装置を概略的に示す図である。
【0029】
まず、(i)熱可塑性樹脂を溶融紡糸して連続的なフィラメントバンドルを得る段階が行われる。
【0030】
前記熱可塑性樹脂としては、本発明の属する技術分野における通常の樹脂が、特別な制限なく使用可能である。
【0031】
前記熱可塑性樹脂は、200℃以上の融点を有することが、フィラメントの機械的物性の確保に有利であり得る。
【0032】
好ましくは、前記熱可塑性樹脂は、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、およびポリフェニレンスルフィドからなる群より選択された1種以上の樹脂であってもよい。
【0033】
具体的には、前記熱可塑性樹脂は、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、およびポリフェニレンスルフィドからなる群より選択された1種以上の樹脂であってもよい。
【0034】
前記熱可塑性樹脂は、スクリューと加熱体とを有する連続押出機で溶融して、紡糸口金を通して連続的に吐出されることによって、連続的なフィラメントバンドルを形成する。
【0035】
前記連続的なフィラメントバンドルは、ノズルユニット10の円筒形パイプ内で圧縮空気とエジェクタ(ejector)によって延伸されながら、ジェットノズルを通して吐出される。
【0036】
前記連続的なフィラメントバンドルをなすフィラメントの纎度(denier)および断面の形状は特に制限されない。非限定的な例として、前記フィラメントは、1~10デニールの繊度と、円形断面または異形断面を有することができる。
【0037】
連続して、(ii)前記連続的なフィラメントバンドルを、ビスマス(Bi)またはビスマス合金を含む金属部材に衝突させて、摩擦帯電によって開繊されたフィラメントを得る段階が行われる。
【0038】
前記段階(ii)は、前記ノズルユニット10のジェットノズルを通して吐出された、連続的なフィラメントバンドル11を、衝突ユニット20の衝突面に衝突させることによって、前記衝突面の素材とフィラメントバンドルとの帯電の序列によって摩擦帯電を誘導し、同じ電荷を有するようになったフィラメント同士の間のクーロン斥力によってフィラメントを開繊する段階である。
【0039】
前記段階(ii)にて、フィラメントバンドル11の分散形態と開繊品位を決定する主要な要素の1つは、前記衝突ユニット20の衝突面をなす素材の種類である。
【0040】
前記衝突ユニット20の衝突面をなす素材としては、鉛(Pb)が伝統的に使用されてきた。しかし、フィラメントとの摩擦によって脱落した微量の鉛が不織布内に残存して、人体有害性に対する潜在的リスクを誘発する。
【0041】
固体物理学(solid-state physics)に基づいたアプローチによれば、鉛(Pb)は次のように分類される。鉛(Pb)は、5×10S/mの導電率を有することで、電気的に、導体、半導体および不導体のうちの「導体」に分類される。鉛(Pb)は、-23.0×10-6cm/mol(at 298K)の磁化率(magnetic susceptibility)を有して、磁気的に強磁性体、常磁性体および反磁性体のうちの「反磁性体」に分類される。鉛(Pb)は、600.61K(327.46℃、621.43°F)の融点を有することで、熱的に、高温溶融体および低温溶融体のうちの「低温溶融体」に分類される。そして、鉛(Pb)は、8.11のビッカース硬度(Hv)を有することで、機械的に硬質および軟質のうちの「軟質」、そして脆性および靭性のうちの「靭性」に分類される。
【0042】
発明の一実施例によれば、前記連続フィラメントバンドル11をビスマス(Bi)またはビスマス合金を含む金属部材に衝突させる。
【0043】
ビスマス(Bi)は、7.7×10S/mの導電率を有することで、電気的に「導体」に分類されるのであり;-280.1×10-6cm/mol(at 298K)の磁化率(magnetic susceptibility)を有することで、磁気的に「反磁性体」に分類され;544.7K(271.5℃、520.7°F)の融点を有することで、熱的に「低温溶融体」に分類され;11.55のビッカース硬度(Hv)を有することで、機械的に「軟質」および「靭性」に分類される。
【0044】
ビスマス(Bi)は、鉛(Pb)と対比して同等水準の負電荷供与性を示すことができるのでありながらも、より硬く、欧州連合(EU)の有害物質制限(RoHS)指針による有害物質に属しない。
【0045】
したがって、前記衝突ユニット20の衝突面に、ビスマスまたはビスマス合金を適用することによって、残留有害物を含有せず、向上した開繊品位を有するスパンボンド不織布を得ることができる。
【0046】
好ましくは、前記衝突ユニット20の衝突面に、ビスマスからなる金属部材を適用することができる。
【0047】
また、前記衝突面に、ビスマス合金からなる金属部材が適用可能である。好ましくは、前記ビスマス合金は、前記ビスマス合金の重量を基準として10重量%以上、あるいは20重量%以上、あるいは30重量%以上、あるいは40重量%以上、あるいは45重量%以上、あるいは50重量%以上のビスマスを含むことが、本発明による前記効果の発現に有利であり得る。具体的には、前記ビスマス合金は、前記ビスマス合金の重量を基準として10重量%~80重量%、あるいは20重量%~80重量%、あるいは20重量%~70重量%、あるいは30重量%~70重量%、あるいは30重量%~60重量%、あるいは40重量%~60重量%、あるいは45重量%~60重量%、あるいは45重量%~55重量%のビスマスを含むものであってもよい。
【0048】
前記ビスマス合金には、ビスマスのほか、前記RoHS指針による有害物質に属せず、かつ、ビスマスの特性を阻害しない金属が、さらに含まれる。例えば、前記ビスマス合金は、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、スズ(Sn)、アルミニウム(Al)、モリブデン(Mo)、およびチタン(Ti)からなる群より選択された1種以上の金属を含むことができる。非限定的な例として、前記ビスマス合金は、50重量%のビスマス(Bi)と50重量%の銅(Cu)を含むものであってもよい。前記ビスマス合金に含まれるビスマス以外の金属は、その金属が有する物性、前記衝突面に付与しようとする物性などを考慮して選択可能である。
【0049】
発明の一実施例によれば、前記連続的なフィラメントバンドル11は、4,000m/min~6,000m/min、あるいは4,500m/min~6,000m/min、あるいは4,500m/min~5,500m/minの線速度で、前記金属部材に衝突することができる。
【0050】
そして、前記連続的なフィラメントバンドル11は、前記連続的なフィラメントバンドルを噴射する1つのノズルあたり、2.0kg/hr~8.0kg/hr、あるいは3.0kg/hr~8.0kg/hr、あるいは3.0kg/hr~6.0kg/hrの質量流動率で、前記金属部材に衝突することができる。
【0051】
前記金属部材との衝突による摩擦帯電が十分に発生するようにしながらも、開繊品位と操業性の確保のために、前記連続的なフィラメントバンドル11は、前記線速度範囲と質量流動率範囲との範囲内で前記金属部材に衝突することが好ましい。
【0052】
発明の一実施例によれば、前記摩擦帯電によって開繊されたフィラメント22は、-3500nC/sec~-500nC/sec、あるいは-3400nC/sec~-600nC/sec、あるいは-3400nC/sec~-700nC/secの電荷発生量(ファラデーケージ法で測定された値)を有することができる。
【0053】
前記摩擦帯電によって開繊されたフィラメント22は、前記範囲の電荷発生量を有して、広い開繊幅と優れた品位で開繊される。
【0054】
前記開繊されたフィラメント22が有する電荷発生量は、前記金属部材との衝突によってフィラメントが有するようになった静電気放電量(amount of electrostatic discharge)であって、ファラデーケージ(Faraday cage)法を利用して測定されうる。
【0055】
ファラデーケージは、内部ケージと外部ケージとに区分される。絶縁された前記内部ケージは、前記金属部材に衝突して開繊されたフィラメント22が閉じ込められるように設置される。接地された前記外部ケージは、前記内部ケージの全体の面を囲むように設置される。前記内部ケージにデジタルクーロンメーターを接触させる。前記内部ケージと前記外部ケージとの電荷量の差が-9,000nCに到達する時間を、前記デジタルクーロンメーターで測定し、時間で標準化することで、前記開繊されたフィラメントが有する静電気放電量を得ることができる。
【0056】
発明の一実施例によれば、前記段階(ii)でフィラメントバンドルを噴射するジェットノズルは、ステップモータ(step motor)の軸に連結されて、-15±5°~+15±5°のノズルの回転角度範囲および3counter/sec~12counter/secのノズルの往復速度で制御されうる。
【0057】
連続して、(iii)前記開繊されたフィラメント22を連続コンベヤネット30上に集束して繊維ウェブ33を形成する段階が行われる。
【0058】
前記摩擦帯電によって負電荷を有するようになったフィラメントは、フィラメント同士の間のクーロン斥力によって開繊されながら、金属製である連続コンベヤネット30が位置する下方に落下する。負電荷を呈したフィラメントは、接地された前記コンベヤネット30上に静電気力によって載置して繊維ウェブ33を形成する。
【0059】
発明の一実施例によれば、前記開繊されたフィラメント22は、前記フィラメントバンドルを噴射するノズルの回転角度範囲-15±5°~+15±5°および前記ノズルの往復速度3counter/sec~12counter/secの条件下、500mm以上の開繊幅で、前記連続コンベヤネット30上に集束されうる。
【0060】
優れた開繊品位の確保のために、前記開繊されたフィラメント22の開繊幅は、500mm以上であることが好ましい。好ましくは、前記開繊幅は、500mm以上、あるいは500mm~700mm、あるいは500mm~650mm、あるいは520~650mmであってもよい。
【0061】
ここで、前記開繊幅は、前記連続コンベヤネット30上に集束される開繊されたフィラメント22の移動方向を基準とする最大幅を意味する。前記開繊幅は、1つのノズルユニットと、それに対応する衝突ユニットとから得られる、開繊されたフィラメントが示す値を基準とする。
【0062】
次に、前記繊維ウェブを熱接着などによって結合することによって、前記スパンボンド不織布が得られる。前記結合は、カレンダーロールまたはエンボスロールを用いて行われる。
【0063】
II.スパンボンド不織布製造装置
発明の他の実施形態によれば、
連続的なフィラメントバンドル11を吐出するように構成され配列された複数のノズルユニット10と、
前記ノズルユニット10によって吐出された、前記連続的なフィラメントバンドル11と衝突するための位置にて、前記ノズルユニット10のそれぞれに隣接する衝突ユニット20と、
前記衝突ユニット20との摩擦帯電によって開繊されたフィラメント22を、捕集して移送する連続コンベヤネット30とを含み、
前記衝突ユニット20は、ビスマス(Bi)またはビスマス合金を含む金属部材である衝突面を含む、
スパンボンド不織布製造装置が提供される。
【0064】
前記スパンボンド不織布製造装置は、上述した「I.スパンボンド不織布の製造方法」の実行に用いられる。
【0065】
図1は、本発明の一実施形態によるスパンボンド不織布製造装置を概略的に示す図である。
【0066】
発明の実施形態によるスパンボンド不織布製造装置は、連続的なフィラメントバンドル11を吐出するように構成され、配列された複数のノズルユニット10を含む。
【0067】
原料である熱可塑性樹脂は、スクリューと加熱体とを有する連続押出機(図1に図示せず)にて溶融されて、紡糸口金を通して連続的に吐出されることによって、連続フィラメントバンドルを形成する。
【0068】
ノズルユニット10は、前記紡糸口金に連結された円筒形パイプと、前記円筒形パイプの一側に形成されたジェットノズル(jet nozzle)とを含む。
【0069】
前記連続的なフィラメントバンドルは、ノズルユニット10の前記円筒形パイプ内にて、圧縮空気とエジェクタ(ejector)によって延伸されながら、ジェットノズルを通して吐出される。
【0070】
前記ジェットノズルは、ステップモータ(step motor)の軸に連結されて、-15±5°~+15±5°のノズルの回転角度範囲および3counter/sec~12counter/secのノズルの往復速度で制御される。
【0071】
前記ジェットノズルは、連続的なフィラメントバンドル11を4,000m/min~6,000m/min、あるいは4,500m/min~6,000m/min、あるいは4,500m/min~5,500m/minの線速度で吐出することができる。
【0072】
そして、前記連続的なフィラメントバンドル11は、前記連続的なフィラメントバンドルを噴射する1つのジェットノズルあたり2.0kg/hr~8.0kg/hr、あるいは3.0kg/hr~8.0kg/hr、あるいは3.0kg/hr~6.0kg/hrの質量流動率で衝突ユニット20の金属部材に衝突することができる。
【0073】
発明の実施形態によるスパンボンド不織布製造装置は、前記ノズルユニット10によって吐出された、前記連続的なフィラメントバンドル11と衝突するための位置にて、前記ノズルユニット10のそれぞれに隣接する衝突ユニット20を含む。
【0074】
前記衝突ユニット20は、ビスマス(Bi)またはビスマス合金を含む金属部材である衝突面を含む。前記衝突面は、前記衝突ユニット20における前記連続的なフィラメントバンドル11に直接的に衝突する一面を意味する。
【0075】
好ましくは、前記衝突ユニット20の衝突面に、ビスマスからなる金属部材を適用することができる。
【0076】
また、前記衝突面にビスマス合金からなる金属部材が適用可能である。好ましくは、前記ビスマス合金は、前記ビスマス合金の重量を基準として10重量%以上、あるいは20重量%以上、あるいは30重量%以上、あるいは40重量%以上、あるいは45重量%以上、あるいは50重量%以上のビスマスを含むことが、本発明による前記効果の発現に有利であり得る。具体的には、前記ビスマス合金は、前記ビスマス合金の重量を基準として10重量%~80重量%、あるいは20重量%~80重量%、あるいは20重量%~70重量%、あるいは30重量%~70重量%、あるいは30重量%~60重量%、あるいは40重量%~60重量%、あるいは45重量%~60重量%、あるいは45重量%~55重量%のビスマスを含むものであってもよい。
【0077】
前記ビスマス合金には、ビスマスのほか、前記RoHS指針による有害物質に属さず、かつ、ビスマスの特性を阻害しない金属が、さらに含まれる。例えば、前記ビスマス合金は、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、スズ(Sn)、アルミニウム(Al)、モリブデン(Mo)、およびチタン(Ti)からなる群より選択された1種以上の金属を含むことができる。非限定的な例として、前記ビスマス合金は、50重量%のビスマス(Bi)と、50重量%の銅(Cu)とを含むのであってもよい。前記ビスマス合金に含まれるビスマス以外の金属は、その金属が有する物性、前記衝突面に付与しようとする物性などを考慮して選択可能である。
【0078】
前記衝突ユニット20は、前記ノズルユニット10によって吐出された、前記連続的なフィラメントバンドル11と衝突するための位置にて、摩擦帯電によって開繊されたフィラメント22が、連続コンベヤネット30上に捕集できるようにする所定の角度で設置されうる。
【0079】
発明の実施形態によるスパンボンド不織布製造装置は、前記衝突ユニット20との摩擦帯電によって開繊されたフィラメント22を、捕集して移送する連続コンベヤネット30を含む。
【0080】
前記連続コンベヤネット30は、接地されているのが好ましい。つまり、前記衝突ユニット20との摩擦帯電によって負電荷を有するようになった開繊されたフィラメント22が、前記連続コンベヤネット30上に、静電気力によって据え付けられ得るようにすることが好ましい。
【0081】
前記連続コンベヤネット30は、前記開繊されたフィラメント22の捕集によって形成された繊維ウェブ33を連続的に移送する。
【0082】
その他、発明の実施形態によるスパンボンド不織布製造装置は、前記繊維ウェブ33を、所定の厚さに調節して結合するための結合ユニットを含むことができる。
【0083】
前記結合ユニットは、本発明の属する技術分野にて、不織布を結合するのに用いられるカレンダーロールおよびエンボスロールといった、通常の構成を有することができる。
【0084】
III.スパンボンド不織布
発明のさらに他の実施形態によれば、
上述した製造方法で得られ、
熱可塑性樹脂フィラメントを含む繊維ウェブを含み、
0.01ppmw~10.0ppmwであるビスマス(Bi)の残留量を有する、
スパンボンド不織布が提供される。
【0085】
前記スパンボンド不織布は、上述した「I.スパンボンド不織布の製造方法」により得られたものであってもよい。
【0086】
そして、前記スパンボンド不織布は、上述した「II.スパンボンド不織布製造装置」を用いて得られたものであってもよい。
【0087】
発明の実施形態によれば、スパンボンド不織布は、熱可塑性樹脂フィラメントを含む繊維ウェブを含む。
【0088】
前記熱可塑性樹脂フィラメントは、熱可塑性樹脂を用いて得られたものである。
【0089】
前記熱可塑性樹脂としては、本発明の属する技術分野における通常の樹脂が特別な制限なく使用可能である。
【0090】
前記熱可塑性樹脂は、200℃以上の融点を有することが、フィラメントの機械的物性の確保に有利であり得る。
【0091】
好ましくは、前記熱可塑性樹脂は、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、およびポリフェニレンスルフィドからなる群より選択された1種以上の樹脂であってもよい。
【0092】
具体的には、前記熱可塑性樹脂は、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、およびポリフェニレンスルフィドからなる群より選択された1種以上の樹脂であってもよい。
【0093】
前記熱可塑性樹脂フィラメントの繊度(denier)および断面の形状は特に制限されない。非限定的な例として、前記フィラメントは、1~10デニールの繊度と円形断面または異形断面を有することができる。
【0094】
優れた機械的物性の確保のために、前記スパンボンド不織布は、20~150g/m、あるいは50~120g/mの単位面積あたりの重量を有することができる。
【0095】
特に、前記スパンボンド不織布は、上述した「I.スパンボンド不織布の製造方法」によって得られることによって、鉛(Pb)といった残留有害物を実質的に含有せず、向上した開繊品位を示すことができる。
【0096】
発明の一実施例によれば、前記スパンボンド不織布は、0.1ppmw(重量ppm)以下である鉛(Pb)の残留量を有することができる。好ましくは、前記スパンボンド不織布は、残留鉛を含有しない。
【0097】
発明の一実施例によれば、前記スパンボンド不織布は、ビスマス(Bi)またはビスマス合金を含む金属部材との衝突によって開繊されたフィラメントを含むものであって、0.01ppmw~10.0ppmw、あるいは0.05ppmw~5.0ppmw、あるいは0.1ppmw~2.5ppmwである、ビスマス(Bi)の残留量を有することができる。
【0098】
そして、前記スパンボンド不織布において、前記ビスマス合金に含まれているビスマス以外の金属の残留量は、0.1ppmw以下として示されうる。前記ビスマス合金は、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、スズ(Sn)、アルミニウム(Al)、モリブデン(Mo)、およびチタン(Ti)からなる群より選択された1種以上の金属を含むことができる。
【0099】
発明の一実施例によれば、前記スパンボンド不織布は、下記式1で定義される350以下の品位指数(Q)を有することができる:
【0100】
[式1]
品位指数(Q)=SD/OD
【0101】
上記式1中、
ODは、品位評価装置(formation tester)を用いて測定される、前記スパンボンド不織布の光学密度(optical density)であり、
SDは、前記光学密度の標準偏差(standard deviation of OD)である。
【0102】
前記光学密度(OD)は、スパンボンド不織布の、単位面積あたりの光源の透過率と、前記透過率の分布とにより得られる値である。前記品位指数(Q)は、前記光学密度の標準偏差(SD)を、前記光学密度(OD)で標準化した値である。前記ODおよびSDは、本発明の属する技術分野における、通常の品位評価装置を用いて得られる。
【0103】
均一で優れた品質の確保のために、前記スパンボンド不織布は、350以下の前記品位指数(Q)を有することが好ましい。より好ましくは、前記スパンボンド不織布の前記品位指数(Q)は、250~350、あるいは270~350、あるいは275~300であってもよい。
【発明の効果】
【0104】
本発明によれば、鉛(Pb)と同等水準の負電荷供与性を有しながらも、人体有害性がない摩擦素材を用いて、向上した開繊品位を有するスパンボンド不織布を製造する方法と装置が提供される。前記装置では、前記摩擦素材の取替周期の延長が可能で、操業性の改善にも寄与できる。前記装置と方法により製造されたスパンボンド不織布は、残留有害物を含有せず、向上した開繊品位を有しており、産業用素材はもちろん、生活科学素材に適用されることで、人体有害性に対する潜在的なリスクの解消を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0105】
図1】本発明の一実施形態によるスパンボンド不織布製造装置を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0106】
以下、発明の理解のために好ましい実施例が提示される。しかし、下記の実施例は、本発明を例示するためのものに過ぎず、本発明をこれらのみに限定するものではない。
【0107】
実施例1
図1による装置を用いてスパンボンド不織布を製造した。
【0108】
まず、0.665dl/gの固有粘度(IV)および254℃の融点(T)を有するポリエチレンテレフタレート樹脂を、284℃で溶融させて連続的に吐出した。前記吐出によって得られたフィラメントバンドルは、ノズルユニットの円筒形パイプ内にて、圧縮空気とエジェクタ(ejector)を用いて、5,000m/minの速度で延伸されつつ、EDJノズル(electric distribution jet nozzle)を通して吐出された。前記EDJノズルは、ステップモータ(step motor)の軸に連結されており、前記ノズルの回転角度範囲-15±5°~+15±5°および前記ノズルの往復速度10counter/secに制御された。
【0109】
吐出されたフィラメントバンドルは、前記ノズルユニットに隣接して所定の角度で位置した衝突ユニットに前記速度で衝突した。前記衝突ユニットの衝突面としては、ビスマス(Bi)からなる金属部材(厚さ2.0±0.15mmの金属板)が用いられた。この際、前記金属部材に衝突するフィラメントの質量流動率は、前記連続的なフィラメントバンドルを噴射する1つのノズルあたり5.0kg/hrであり、フィラメントの線速度は5,000m/minに制御された。
【0110】
前記衝突ユニットとの摩擦帯電によって負電荷を有するようになったフィラメントは、フィラメント同士の間のクーロン斥力によって開繊されつつ、コンベヤネットが位置する下方へと落下する。負電荷を呈したフィラメントは、接地された前記連続コンベヤネット上に、静電気力によって据え付けられて繊維ウェブを形成した。
【0111】
前記繊維ウェブは、130℃と35N/mmを維持するカレンダーローラの間に通過させて、適切な厚さを有するようにした。次に、前記繊維ウェブに熱風を加えて熱接着することによって、スパンボンド不織布(厚さ0.27±0.03mm、重量60±2.0g/m)を得た。
【0112】
実施例2
前記衝突ユニットの衝突面にビスマス金属部材の代わりにビスマス/銅合金(Bi50重量%、Cu50重量%)からなる金属部材を適用したことを除き、前記実施例1と同様の方法でスパンボンド不織布を得た。
【0113】
比較例1
前記衝突ユニットの衝突面に、ビスマス金属部材の代わりに、鉛(Pb)からなる金属部材を適用したことを除き、前記実施例1と同様の方法でスパンボンド不織布を得た。
【0114】
比較例2
前記衝突ユニットの衝突面に、ビスマス金属部材の代わりに、銅(Cu)からなる金属部材を適用したことを除き、前記実施例1と同様の方法でスパンボンド不織布を得た。
【0115】
比較例3
前記衝突ユニットの衝突面に、ビスマス金属部材の代わりにスズ(Sn)からなる金属部材を適用したことを除き、前記実施例1と同様の方法でスパンボンド不織布を得た。
【0116】
比較例4
前記衝突ユニットの衝突面に、ビスマス金属部材の代わりに、アルミニウム(Al)からなる金属部材を適用したことを除き、前記実施例1と同様の方法でスパンボンド不織布を得た。
【0117】
比較例5
前記衝突ユニットの衝突面に、ビスマス金属部材の代わりに、亜鉛(Zn)からなる金属部材を適用したことを除き、前記実施例1と同様の方法でスパンボンド不織布を得た。
【0118】
比較例6
前記衝突ユニットの衝突面に、ビスマス金属部材の代わりに、モリブデン(Mo)からなる金属部材を適用したことを除き、前記実施例1と同様の方法でスパンボンド不織布を得た。
【0119】
比較例7
前記衝突ユニットの衝突面に、ビスマス金属部材の代わりに、チタン(Ti)からなる金属部材を適用したことを除き、前記実施例1と同様の方法でスパンボンド不織布を得た。
【0120】
試験例
(1)電荷発生量(nC/sec)
ファラデーケージ(Faraday cage)法を利用して、開繊されたフィラメントが有する単位時間あたりの静電気放電量(amount of electrostatic discharge)を測定した。
【0121】
ファラデーケージは、内部ケージと外部ケージとに区分される。絶縁された前記内部ケージは、前記金属部材に衝突して、開繊されたフィラメント22が閉じ込められるように設置される。接地された前記外部ケージは、前記内部ケージの全体の面を囲むように設置される。前記内部ケージに、デジタルクーロンメーター(NK-1002、KASUGA DENKI,Inc.)を接触させる。前記内部ケージと前記外部ケージとの電荷量の差が-9,000nCに到達する時間を、前記デジタルクーロンメーターで測定し、時間で標準化して、前記開繊されたフィラメントが有する、単位時間あたりの静電気放電量の平均値を得た。
【0122】
(2)開繊幅(mm)
前記衝突ユニットとの摩擦帯電によって開繊されたフィラメントが形成する開繊幅を測定した。ここで、前記開繊幅は、前記連続コンベヤネット上に集束される開繊されたフィラメントの移動方向を基準とする最大幅を意味する。前記開繊幅は、1つのノズルユニットと、それに対応する衝突ユニットとから得られる、開繊されたフィラメントが示す値を基準とする。前記開繊幅は、前記EDJノズルの回転角度範囲-15±5°~+15±5°および前記EDJノズルの往復速度10counter/secの条件の下に、10回測定後の平均値で示した。
【0123】
(3)品位指数(Q)
品位評価装置(Formation tester、FMT-III、Manufactuerd by NOMURA SHOJI CO.)を用いて、スパンボンド不織布の単位面積あたりの光源の透過率と、前記透過率の分布とにより、光学密度(OD)と前記光学密度の標準偏差(SD)を測定した。上記式1により、品位指数を計算した。
【0124】
前記品位評価装置(FMT-III)は、2次元CCDカメラを用いた画像解析型品位分析器である。不織布サンプルは、下部からの照明がなされるステージに配置される。CCDカメラは、320x230ピクセルのイメージをキャプチャし、各ピクセルによって光強度が測定される。CCDカメラに連結されたPCは、前記光強度を透過率(%)および光学密度(OD)に変換する。
【0125】
(4)金属部材の使用周期(days)
スパンボンド不織布の製造工程にて、衝突ユニットに含まれている金属部材(厚さ2.0±0.15mmの金属板)に、厚さ方向の穿孔が発生する時点、または摩耗による凹凸の発生で、操業性が低下する時点を測定した。この際、前記金属部材に衝突するフィラメントの質量流動率は、前記連続的なフィラメントバンドルを噴射する1つのノズルあたり、5.0kg/hrであり、フィラメントの線速度は、5,000m/minの範囲に制御された。
【0126】
(5)無機物残留量(ppmw)
誘導結合プラズマ(ICP)を用いてスパンボンド不織布内の無機物残留量を測定した。スパンボンド不織布の試験片は、酸分解法で粒子と有機物を除去した水溶液でもって前処理した。試験片内の無機物残留量は、一次的に誘導結合プラズマ-原子放出分光器(ICP-AES)を用いて測定したのであり、残留無機物が未検出であったとき、誘導結合プラズマ-質量分光器(ICP-MS)を用いて、分解能を高めて再測定した。
【0127】
【表1】
【0128】
前記表1を参照すれば、比較例1では、品位指数と開繊幅に優れていたが、不織布から残留鉛が検出されて生活科学素材への使用に不適であった。
【0129】
実施例では、比較例1に対比して同等水準の品位指数と開繊幅を有しながらも、不織布から残留有害物が検出されなかった。そして、実施例に適用された金属部材は、比較例1に比べて約2倍以上の使用周期を有することから、操業性が顕著に向上したことが確認された。
【0130】
比較例2および3では、不織布の無機物残留量が低かったが、品位指数と開繊幅に劣っていた。比較例4~7では、不織布の残留無機物が検出されなかったが、フィラメントの開繊が不良であったことが確認された。
【符号の説明】
【0131】
10:ノズルユニット 11:フィラメントバンドル
20:衝突ユニット 22:開繊されたフィラメント
30:コンベヤネット 33:繊維ウェブ
図1