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特許7575589薄膜の原子層制御のためのRFスパッターリング装置
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  • 特許-薄膜の原子層制御のためのRFスパッターリング装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】薄膜の原子層制御のためのRFスパッターリング装置
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/34 20060101AFI20241022BHJP
【FI】
C23C14/34 T
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023522421
(86)(22)【出願日】2021-08-31
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-08
(86)【国際出願番号】 KR2021011650
(87)【国際公開番号】W WO2022080658
(87)【国際公開日】2022-04-21
【審査請求日】2023-04-12
(31)【優先権主張番号】10-2020-0132905
(32)【優先日】2020-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】513281404
【氏名又は名称】プサン ナショナル ユニバーシティ インダストリー-ユニバーシティ コーポレーション ファウンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】ジョン、セ ヨン
(72)【発明者】
【氏名】イ、ユ シル
(72)【発明者】
【氏名】キム、ス ジェ
(72)【発明者】
【氏名】パク、サン オン
(72)【発明者】
【氏名】チョン、ミ ヨン
【審査官】今井 淳一
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-092925(JP,A)
【文献】特開昭63-174217(JP,A)
【文献】特開平08-227856(JP,A)
【文献】特開2002-249874(JP,A)
【文献】国際公開第2019/172274(WO,A1)
【文献】特開2012-129575(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、前記基板と対面するターゲットと、前記ターゲットが前記基板の上に蒸着されるようにスパッターリング工程が起こるチャンバーと、を有するスパッターリング本体と、
前記スパッターリング本体のターゲットとネットワークにより結ばれてRFパワーを印加する電源供給部と、
前記スパッターリング本体のチャンバーの内部に真空を形成する粗引きポンプ部と、
前記チャンバーの内部に反応ガスを供給するガス供給部と、
を備え、
前記電源供給部に電源を供給するパワーケーブルは、単結晶銅ワイヤーから形成され
前記スパッターリング本体は、床面から振動が伝わらないように、振動遮断部により底面の各角部が支持され、
前記振動遮断部は、
前記スパッターリング本体の底面に取り付けられて前記スパッターリング本体を支持して、前記床面に向かって進むにつれて次第に鋭くなる錐状であるスパイクと、
前記床面の上に載置され、前記スパイクの尖頭が収容される差込溝が上面に形成されて、前記スパイクの平面的な位置のみを固定するシューズと、を備える
ことを特徴とする薄膜の原子層制御のためのRFスパッターリング装置。
【請求項2】
前記スパッターリング本体のターゲットは、チョクラルスキー法またはブリッジマン法により育成した円筒状の単結晶金属を切断して単結晶ターゲットから形成される
請求項1に記載の薄膜の原子層制御のためのRFスパッターリング装置。
【請求項3】
前記電源供給部のRFパワーを前記スパッターリング本体に伝えるネットワークは、単結晶銅ワイヤーから形成される
請求項1に記載の薄膜の原子層制御のためのRFスパッターリング装置。
【請求項4】
前記電源供給部に接地される屋外接地部は、チョクラルスキー法またはブリッジマン法により育成した円筒状の単結晶銅を切断した単結晶銅バルクから形成される
請求項1に記載の薄膜の原子層制御のためのRFスパッターリング装置。
【請求項5】
前記粗引きポンプ部は、前記スパッターリング本体と物理的に分離されて、前記チャンバーとゴム材質の連結ホースにより連結され、
前記連結ホースは、床面とつながる壁面に中心が固定される
請求項1に記載の薄膜の原子層制御のためのRFスパッターリング装置。
【請求項6】
前記粗引きポンプ部は、床面から振動が伝わらないように、振動遮断部により底面の各角部が支持され、
前記振動遮断部は、
前記粗引きポンプ部の底面に取り付けられて前記粗引きポンプ部を支持するが、前記床面に向かって進むにつれて次第に鋭くなる錐状であるスパイクと、
前記床面の上に載置され、前記スパイクの尖頭が収容される差込溝が上面に形成されて、前記スパイクの平面的な位置のみを固定するシューズと、を備える
請求項5に記載の薄膜の原子層制御のためのRFスパッターリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜の原子層制御のためのRFスパッターリング装置に係り、さらに詳しくは、RFスパッターリング装置により金属薄膜を製造するに当たって、パワーケーブル及び電源線を単結晶銅ワイヤーから形成して電気的な雑音を取り除き、RFスパッターリング本体及びロータリーポンプを振動遮断部により支持して物理的な振動を遮断することにより、ターゲットから剥がれ落ちる粒子を原子層単位で制御して金属薄膜をエピタキシャルに成長させることのできるRFスパッターリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
基板に薄膜を形成する方法は、気体原料から化学反応を経て薄膜の固体材料を合成する化学的方法と、蒸着しようとする粒子を物理的な方法により基板に蒸着する物理的方法と、に大別できる。化学的方法には、化学気相蒸着(Chemical Vapor Deposition)とめっきなどがあり、物理的方法には、スパッターリング(sputtering)、スピンコード(spin coating)などがある。
【0003】
中でも、スパッターリングによる蒸着は、真空状態で蒸着物質であるターゲット物質に高周波(RF:Radio Frequency)パワーを加えてターゲット物質を粒子として剥がし落とし、その粒子を反対側に位置している基板の表面に蒸着して金属薄膜を製造することである。
【0004】
このようなRFスパッターリング蒸着方式は、他の薄膜蒸着技術に比べて経済性に富んでいることから、多岐にわたる応用分野において広く用いられるものの、全体の表面からターゲット粒子が一様に剥がれ落ちず、ターゲットから基板へと粒子が蒸着される過程において電気的な雑音または物理的な振動が加えられて高品質の薄膜を製造するのに限界を有している。
【0005】
RFスパッターリング装置を用いて、一定した方向性の単結晶からエピタキシャルに成長した高品質の金属薄膜を製造したり、表面の粗さがnmレベルにて制御される金属薄膜を製造したりするためには、基板に粒子が一様に蒸着されるように電気的な雑音ないし物理的な振動を取り除く必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、パワーケーブルとネットワークとを単結晶銅ワイヤーから形成して、ターゲット物質にRFパワーを印加するに当たって、電気的な雑音を取り除くことにより、高品質の金属薄膜を製造することのできるRFスパッターリング装置を提供することである。
【0007】
本発明の他の目的は、ターゲット物質として単結晶金属を用いて、スパッターリングによりターゲットから均質な粒子を分離することにより、高品質の金属薄膜を製造することのできるRFスパッターリング装置を提供することである。
【0008】
本発明のさらに他の目的は、スパッターリング本体と粗引きポンプとを分離し、両者を振動遮断部により支持してスパッターリングが行われるチャンバーへの物理的な振動を取り除くことにより、高品質の金属薄膜を製造することのできるRFスパッターリング装置を提供することである。
【0009】
本発明が解決しようとする技術的課題は、上述した技術的課題に何ら制限されるものではなく、未言及の他の技術的課題は、本発明の記載から当該分野において通常の知識を有する者にとって明らかに理解できる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決して上記の諸目的を達成するために、本発明は、スパッターリング過程において電気的な雑音と物理的な振動が取り除かれて高品質の金属薄膜を製造することのできる薄膜の原子層制御のためのRFスパッターリング装置を提供する。
【0011】
以下、この開示についてさらに詳しく説明する。
【0012】
本発明は、基板と、前記基板と対面するターゲットと、前記ターゲットが前記基板の上に蒸着されるようにスパッターリング工程が起こるチャンバーと、を有するスパッターリング本体と、前記スパッターリング本体のターゲットとネットワークにより結ばれてRFパワーを印加する電源供給部と、前記スパッターリング本体のチャンバーの内部に真空を形成する粗引きポンプ部と、前記チャンバーの内部に反応ガスを供給するガス供給部と、を備え、前記電源供給部に電源を供給するパワーケーブルは、単結晶銅ワイヤーから形成される、薄膜の原子層制御のためのRFスパッターリング装置を提供する。
【0013】
本発明において、前記スパッターリング本体のターゲットは、チョクラルスキー法またはブリッジマン法により育成した円筒状の単結晶金属を切断して単結晶ターゲットから形成されてもよい。
【0014】
本発明において、前記電源供給部のRFパワーを前記スパッターリング本体に伝えるネットワークは、単結晶銅ワイヤーから形成されてもよい。
【0015】
本発明において、前記電源供給部に接地される屋外接地部は、チョクラルスキー法またはブリッジマン法により育成した円筒状の単結晶銅を切断した単結晶銅バルクから形成されてもよい。
【0016】
本発明において、前記スパッターリング本体は、床面から振動が伝わらないように、振動遮断部により底面の各角部が支持されるが、前記振動遮断部は、前記スパッターリング本体の底面に取り付けられて前記スパッターリング本体を支持するが、前記床面に向かって進むにつれて次第に鋭くなる錐状であるスパイクと、前記床面の上に載置され、前記スパイクの尖頭が収容される差込溝が上面に形成されて、前記スパイクの平面的な位置のみを固定するシューズと、を備えていてもよい。
【0017】
本発明において、前記粗引きポンプ部は、前記スパッターリング本体と物理的に分離されて、前記チャンバーとゴム材質の連結ホースにより連結され、前記連結ホースは、床面とつながる壁面に中心が固定されてもよい。
【0018】
本発明において、前記粗引きポンプ部は、床面から振動が伝わらないように、振動遮断部により底面の各角部が支持されるが、前記振動遮断部は、前記粗引きポンプ部の底面に取り付けられて前記粗引きポンプ部を支持するが、前記床面に向かって進むにつれて次第に鋭くなる錐状であるスパイクと、前記床面の上に載置され、前記スパイクの尖頭が収容される差込溝が上面に形成されて、前記スパイクの平面的な位置のみを固定するシューズと、を備えていてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の薄膜の原子層制御のためのRFスパッターリング装置によれば、パワーケーブルとネットワークとを単結晶銅ワイヤーから形成して、スパッターリング装置に供給される電源の安定性を高めて電源のノイズを取り除き、プラズマの均質性を高めることにより、ターゲット物質にRFパワーを印加するに当たって電気的な雑音が取り除かれる。
【0020】
本発明の薄膜の原子層制御のためのRFスパッターリング装置によれば、ターゲット物質として単結晶金属を用いることにより、ターゲットから分離されて基板に蒸着される粒子が全体の表面において均質になる。
【0021】
本発明の薄膜の原子層制御のためのRFスパッターリング装置によれば、スパッターリング本体と粗引きポンプ部とを分離し、両者を振動遮断部により支持することにより、スパッターリングが行われる本体のチャンバーへの物理的な振動を取り除くことができる。
【0022】
上述したように、ターゲット粒子を均質に分離し、電気的な雑音と物理的な振動を取り除くことにより、基板に蒸着される金属薄膜の結晶構造を原子層単位で制御して、一定した方向性の単結晶からエピタキシャルに成長した高品質の金属薄膜を製造することができる。
【0023】
本発明の効果は、上述した効果に何ら制限されるものではなく、未言及の他の効果は、発明の詳細な説明の欄及び特許請求の範囲の欄の記載から当業者にとって明らかに理解できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明に係る薄膜の原子層制御のためのRFスパッターリング装置の各構成を示す概略図である。
図2】本発明に係る薄膜の原子層制御のためのRFスパッターリング装置により製造された薄膜と従来のスパッターリング方法により製造された薄膜との品質を比較して説明した結果図である。
図3】本発明に係る薄膜の原子層制御のためのRFスパッターリング装置において、各構成を漸進的に追加する場合についての薄膜の品質の変化を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明において用いられる用語としては、本発明における機能を考慮しつつ、できる限り現在汎広く用いられている一般的な用語を選択したが、これは、当分野に携わっている技術者の意図又は判例、新たな技術の出現などによって異なる。なお、特定の場合は、出願人が任意に選定した用語もあり、この場合に、当該する発明の説明の部分の欄において詳しくその意味を記載する。よって、本発明において用いられる用語は、単なる用語の名称ではなく、その用語が有する意味と本発明の全般に亘っての内容を踏まえて定義される。
【0026】
技術的用語及び科学的用語を含めてこの開示に用いられる全ての用語は、本明細書中で特に指摘したり、明らかに文脈と矛盾したりしない限り、この開示が属する技術分野において通常の知識を有する者にとって一般的に理解される意味と同じ意味を有している。一般に用いられる、辞書に定義されているような用語は、関連技術の文脈上有する意味と一致する意味を有し、この開示において明らかに定義しない限り、理想的な意味として、または過度に形式的な意味ではない。
【0027】
以下、添付図面に基づいて、本発明の実施形態について説明する。しかしながら、記述される本発明の実施形態は、色々な他の実施形態に変形可能であり、本発明の範囲が後述する実施形態によって限定されることはない。図示の要素の形状及び大きさなどは、より明確な説明のために誇張され得る。なお、本発明の名称は、明細書の全般にわたって、「RFスパッターリング装置」または「スパッターリング装置」と略称され得る。
【0028】
図1は、本発明に係る薄膜の原子層制御のためのRFスパッターリング装置の各構成を示す概略図である。本発明は、金属薄膜の結晶構造を原子層単位で制御して高品質の金属薄膜を製造できるRFスパッターリング装置に関するものであって、図1に示すように、スパッターリング本体10と、電源供給部20と、粗引きポンプ部30及びガス供給部40を備える。
【0029】
スパッターリング本体10は、基板11の上に金属薄膜を蒸着するスパッターリング工程が行われる空間であって、基板11と、ターゲット12と、チャンバー13と、を備える。基板11は、スパッターリング工程のアノード部分であって、通常、サファイアディスク状に形成され得る。基板11と対面するカソード部分にはターゲット12が位置し、ターゲット12は、基板11の上に蒸着しようとする薄膜の金属物質から形成される。このような基板11とターゲット12はチャンバー13の内部に位置して、以降にスパッターリング工程によりターゲット12から剥がれ落ちた粒子が分離されて基板11の上に蒸着されることにより金属薄膜が製造される。
【0030】
電源供給部20は、スパッターリング工程のために、スパッターリング本体10のターゲット12に高周波パワーであるRFパワーを印加する構成要素であって、ターゲット12とネットワーク22により結ばれる。
【0031】
一方、スパッターリング工程のために、チャンバー13は、真空状態にして真空を形成しなければならないが、粗引きポンプ部(roughing pump)30は、スパッターリング本体10のチャンバー13の内部に真空を形成するようにチャンバー13の内部の流体を吸い込む構成要素であって、一般的に用いるロータリーポンプであり得る。また、真空状態のチャンバー13の内部にスパッターリング工程のために反応ガスを供給するガス供給部40がスパッターリング本体10のチャンバー13と連結され、ガス供給部40が供給する反応ガスはアルゴン(Ar)ガスであり得、アルゴンガスの純度が高ければ高いほど、ターゲット12の全体の表面から均質に蒸着粒子が分離される。
【0032】
上記のような構成により、真空状態で、反応ガスが供給されたチャンバー13内のターゲット12に電源供給部20を介してRFパワーを印加すれば、グロー放電(glow discharge)により反応ガスがイオン化されて基板11とターゲット12との間にプラズマ放電(plasma discharge)が生じ、放電領域に存在する正イオンが電気的なパワーによりターゲット12の表面を加撃して、ターゲット12の表面から剥がれ落ちた蒸着粒子が向かい合う基板11の上に蒸着されることにより金属薄膜が製造される。
【0033】
一方、本発明において、電源供給部20に電源を供給するパワーケーブル21は、単結晶銅ワイヤーから形成されるが、このことから、パワーケーブル21に伝えられる信号にノイズ及び信号の歪みが混ざることがなく、ターゲット12に印加されるRFパワーの安定性が高くなって、ターゲット12の全体の表面から蒸着粒子が均質に剥がれ落ちることができるので、基板11に蒸着される金属薄膜の品質を向上させることができる。特に、パワーケーブル21を構成する単結晶銅ワイヤーと単結晶端子はもっぱら物理的にしか連結されることができず、この場合、半田などにより二つの部分を貼り合わせるときに比べて、鉛から発せられる信号の歪みが取り除かれるため、ターゲット12に印加されるRFパワーへの電気的な雑音が取り除かれてターゲット12の全体の表面から蒸着粒子を均質に剥がし落とすことができる。一方、本発明のパワーケーブル21を構成する単結晶銅ワイヤーは、チョクラルスキー法またはブリッジマン法により育成した単結晶銅をワイヤーカットまたはパターンをもった金型を用いてプレス加工により線材に加工してもよく、単結晶銅を引抜き加工して線材として形成してもよい。
【0034】
また、ターゲット12から剥がれ落ちる蒸着粒子の均質性は、蒸着粒子がターゲット12から分離されるものであるという点で、ターゲット12の結晶性につながる。したがって、本発明において、スパッターリング本体10に備えられるターゲット12は、単結晶金属から形成されてよく、特に、単結晶金属の製造方法のうち、チョクラルスキー法またはブリッジマン法により育成した円筒状の単結晶金属を切断して形成されることができ、切断した単結晶金属は、円板状または四角形状に形成することができる。このように、ターゲット12を単結晶金属から形成する場合、ターゲット12の全体の表面に金属粒子が一定した方向性をもって一様に形成されるため、これから分離される蒸着粒子もまた均質になり、蒸着される金属薄膜を高品質に製造することができる。ターゲット12を形成する単結晶金属の種類は、基板11に蒸着しようとする金属薄膜の種類に応じて決定され、銅、銀または単一元素の金属であり得る。
【0035】
さらに、電源供給部20のRFパワーをスパッターリング本体10のターゲット12に伝えるネットワーク22もまた単結晶銅ワイヤーから形成され得る。RFパワーを伝えるネットワーク22もまた単結晶銅ワイヤーから形成されることにより、ターゲット12に印加されるRFパワーへの電気的な雑音を取り除き、パワーの安定性を高めることができるので、基板11とターゲット12との間に形成されるプラズマ放電の均質性を高めることができて、ターゲット12の全体の表面から蒸着粒子を均質に剥がし落とすことができる。
【0036】
これらに加えて、電源供給部20の接地のために形成される屋外接地部23は、チョクラルスキー法またはブリッジマン法により育成した円筒状の単結晶銅を切断した単結晶銅バルクから形成されてもよく、一例を挙げると、単結晶銅バルクは円板状であってもよい。屋外接地部23を構成する単結晶銅は、ターゲット12の金属の種類が銅である場合、ターゲット12のように製造され得る。このように、屋外接地部23を単結晶銅バルクから形成する場合、RFパワーの安定性を高めることができて、蒸着粒子を均質に剥がし落とすことができるということは、叙上の通りである。
【0037】
上述したように、ターゲット12の均質化または電気的な雑音の除去を通じて、蒸着粒子を均質に剥がし落として、金属薄膜の品質を向上させることの他に、本発明は、ターゲット12から剥がれ落ちた蒸着粒子が基板11に蒸着される過程において物理的な振動が加えられることを防いで、金属薄膜が一定した方向性を有するようにエピタキシャルに成長させることができ、以下では、これについて述べる。
【0038】
上述した本発明のスパッターリング本体10は、床面からの振動が伝わらないように、振動遮断部50により底面の各角部が支持され得る。振動遮断部50は、床面の振動はスパッターリング本体10に伝えることなく、逆に、スパッターリング本体10から生じる振動は外部(床面)に排出して打ち消す力学的な非可逆構造を有する。具体的に、振動遮断部50は、スパイク51とシューズ52を備えてなる。スパイク51は、スパッターリング本体10の底面に取り付けられてスパッターリング本体10を支持する構成要素であって、床面に向かって進むにつれて次第に鋭くなる錐状を呈する。シューズ52は、床面の上に載置されて、スパイク51を上面に収容する構成要素であって、シューズ52の上面にはスパイク51の尖頭が収容される差込溝52aが形成され、シューズ52の差込溝52aにスパイク51が収容されることにより、スパイク51の平面的な位置が固定される。このようなスパイク51とシューズ52を備える振動遮断部50により、床面から生じる振動はシューズ52のみを揺動させることに留まり、スパイク51に力を加えることができないため、スパイク51が支持するスパッターリング本体10に伝わらない。その結果、スパッターリング本体10は、床面の振動に影響されないため、ターゲット12から分離された蒸着粒子が基板11に蒸着される過程においていかなる物理的な外部の力も伝わらないので、基板11の上に均質に蒸着されて金属薄膜の品質を向上させることができる。一方、スパイク51は、錐状であればよいが、円錐状、三角錐状、四角錐状など種々の形状を呈し得る。
【0039】
そして、スパッターリング本体10への物理的な振動をさらに遮断するために、本発明は、スパッターリング本体10と粗引きポンプ部30とを物理的に分離することができる。粗引きポンプ部30の一例であるロータリーポンプは、スパッターリング本体10のチャンバー13を真空にするように流体を吸い込む過程において、ポンプの動作により多くの振動が生じるため、スパッターリング本体10と粗引きポンプ部30とが物理的に一緒に構成された場合、粗引きポンプ部30の動作過程において生じる振動がスパッターリング本体10にそのまま伝わって、基板11に蒸着される蒸着粒子が一様に形成されない。したがって、本発明は、粗引きポンプ部30をスパッターリング本体10と物理的に分離し、チャンバー13との連結はゴム材質の連結ホース31により行い、連結ホース31の振動までもスパッターリング本体10に伝わることを遮断するために、連結ホース31は、床面とつながる壁面にその中心が固定され得る。
【0040】
一方、粗引きポンプ部30がスパッターリング本体10と物理的に分離される場合、このような粗引きポンプ部30それ自体もまた振動から遮断される必要があるため、スパッターリング本体10のように床面からの振動が伝わらないように、振動遮断部50により底面の各角部が支持され得、振動遮断部50の具体的な構成は、上述した通りである。
【0041】
図2は、本発明に係る薄膜の原子層制御のためのRFスパッターリング装置により製造された薄膜と従来のスパッターリング方法により製造された薄膜との品質を比較して説明した結果図である。図3は、本発明に係る薄膜の原子層制御のためのRFスパッターリング装置において、各構成を漸進的に追加する場合についての薄膜の品質の変化を示す図表である。図2及び図3を参照して、本発明を通じて製造される薄膜の品質について説明することにより、本発明の優秀性について説明する。
【0042】
図2を参照すると、一般的なRFスパッターリング方法により薄膜を製造する場合(I)には、結晶が多方向に成長してその品質が一様ではないものの、本発明を通じて電気的な雑音と物理的な振動を取り除く場合(II)、結晶と結晶との間の結晶粒界(grain boundary)がほとんどなく、一方向にのみ成長して、原子レベルまで表面が平らであることが分かる。
【0043】
図3を参照して、構成の漸進的な追加による薄膜の品質の向上についてさらに説明する。まず、従来のRFスパッターリング装置により薄膜を製造する場合(1)、表面粗さについての二乗平均平方根(RMS:Root mean square)値が~45nmのレベルであるものの、ターゲットを単結晶金属に取り替える場合(2)、RMS粗さは~10nmのレベルまで減るということが分かる。これに加えて、さらに屋外接地部を単結晶銅バルクに取り替え、パワーケーブルとネットワークとを単結晶銅ワイヤーから形成する場合(3)、RMS粗さは85%の確率で0.2~0.5nmのレベルまで改善される。なお、スパッターリング本体を振動遮断部により支持すれば(4)、90%の確率で0.2~0.4nmのレベルまでRMS粗さを実現することができ、粗引きポンプ部をスパッターリング本体と物理的に分離し、粗引きポンプ部を振動遮断部により支持すれば、98%の確率で0.3nm以下のRMS粗さを実現することができる。
【0044】
以上の説明から、本発明に属する技術分野における当業者であれば、本発明のその技術的な思想や必須的な特徴を変更することなく、他の具体的な形態として実施できるということが理解できる。これと関連して、上述した実施形態は、あらゆる面において例示的なものに過ぎず、限定的ではない。
【符号の説明】
【0045】
10 スパッターリング本体
11 基板
12 ターゲット
13 チャンバー
20 電源供給部
21 パワーケーブル
22 ネットワーク
23 屋外接地部
30 粗引きポンプ部
31 連結ホース
40 ガス供給部
50 振動遮断部
51 スパイク
52 シューズ
52a 差込溝
図1
図2
図3