(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】アクティブ圧電ツール、アクティブ圧電デバイス、及びアクティブ圧電ツールの動作方法
(51)【国際特許分類】
B23B 27/00 20060101AFI20241022BHJP
B06B 1/06 20060101ALI20241022BHJP
H02N 2/06 20060101ALI20241022BHJP
B23B 29/02 20060101ALI20241022BHJP
B23Q 17/12 20060101ALI20241022BHJP
B23Q 15/12 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
B23B27/00 C
B06B1/06 A
H02N2/06
B23B29/02 A
B23Q17/12
B23Q15/12 A
(21)【出願番号】P 2023535950
(86)(22)【出願日】2021-12-10
(86)【国際出願番号】 EP2021025491
(87)【国際公開番号】W WO2022128150
(87)【国際公開日】2022-06-23
【審査請求日】2023-06-13
(31)【優先権主張番号】102020000031043
(32)【優先日】2020-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】517029381
【氏名又は名称】ヌオーヴォ・ピニォーネ・テクノロジー・ソチエタ・レスポンサビリタ・リミタータ
【氏名又は名称原語表記】Nuovo Pignone Tecnologie S.R.L.
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】グリリー,マルコ
(72)【発明者】
【氏名】ベッシー,モランド
(72)【発明者】
【氏名】グロッシー,ニッコロ
(72)【発明者】
【氏名】スキッパ,アントニオ
(72)【発明者】
【氏名】カンパテッリ,ギャンニ
(72)【発明者】
【氏名】バービエリ,ベンジャミン
【審査官】小川 真
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-509765(JP,A)
【文献】特表平06-503042(JP,A)
【文献】米国特許第05604413(US,A)
【文献】米国特許第05913955(US,A)
【文献】特開2016-025359(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 27/00
B06B 1/06
H02N 2/06
B23B 29/02
B23Q 17/12
B23Q 15/12
F16F 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークピースへの機械加工動作を実施するためのツールバーであって、
前記ツールバーが、長手方向軸を有し、
ワークピースを機械加工するための機械加工ツールと、
前記機械加工ツールに関連付けられた圧電デバイスと、を備え、前記圧電デバイスが、
第1の支持体と、
第2の支持体と、
一方向に沿って、前記ツールバーの速度と比例する電気信号を生成するように構成された前記機械加工ツールと関連付けられた少なくとも1つの加速度計と、
前記第1の支持体と前記第2の支持体との間に配置された少なくとも1つの圧電アクチュエータと、
前記少なくとも1つの加速度計及び前記少なくとも1つの圧電アクチュエータに動作可能に接続された制御論理ユニットと、を備え、当該制御論理ユニットが、前記ツールバーへのトルク及び振動を補償するように適合された前記少なくとも1つの加速度計によって検出された速度に比例する駆動信号により、前記少なくとも1つの圧電アクチュエータを駆動するように構成され、
前記少なくとも1つの圧電アクチュエータが、前記ツールバーの前記長手方向軸に対して偏心して配置され、
前記圧電デバイスが、上部及び下部を有するフレームを備え、前記下部が、
ねじ切りされ、かつ
前記機械加工ツールに剛性接続され、
前記第1の支持体が、前記フレームの前記上部に連結され、前記第2の支持体が、前記フレームの前記下部
のねじ山に係合され、前記第2の支持体が、前記第1の支持体に対向して配置されている
、
ツールバー。
【請求項2】
前記圧電デバイスが、
前記少なくとも1つの圧電アクチュエータの予荷重を実現するために、前記フレームの前記下部の前記ねじ山に係合されるねじ山を有し、
前記少なくとも1つの圧電アクチュエータを前記第1と第2の支持体との間に押し付ける係止リングを備える、請求項1に記載のツールバー。
【請求項3】
前記係止リングが、1つ以上のねじ穴と、前記係止リングを前記フレームの前記下部と固定するために前記ねじ穴にねじ込まれるグレーンと、を有する、請求項
2に記載のツールバー。
【請求項4】
前記係止リングが、その回転を可能にするための少なくとも1つの穴を有する、請求項
2又は3に記載のツールバー。
【請求項5】
前記圧電デバイスが、
前記第1の支持体と前記第2の支持
体との間に配置され、前記ツールバーの前記長手方向軸に平行して整列された第1の圧電アクチュエータと、
前記第1の支持体と前記第2の支持体との間に配置され、前記ツールバーの前記長手方向軸と平行して整列された第2の圧電アクチュエータと、を備える、請求項1
から4のいずれか1項に記載のツールバー。
【請求項6】
前記第1の圧電アクチュエータ、前記第2の
圧電アクチュエータ、及び前記長手方向軸が、同一平面上に存在する、請求項
5に記載のツールバー。
【請求項7】
前記圧電
デバイスが、
第1の軸に沿って、前記ツールバーの加速度及び速度を測定するように配置された第1の加速度計と、
第2の軸に沿って、前記ツールバーの加速度及び速度を測定するように配置された第2の加速度計と、を備える、請求項
5又は6に記載のツールバー。
【請求項8】
前記第1の軸が、前記ツールバーの前記長手方向軸と平行であり、前記第2の軸が、前記第1の軸に直交し、前記
第1及び第2の圧電アクチュエータの存在する平面上に存在する、
請求項7に記載のツールバー。
【請求項9】
前記第1及び第2の加速度計が、各々、
対応する前記第1又は第2の圧電アクチュエータの付近に、又は
前記第1又は第2の圧電アクチュエータに対応して配置されている、請求項
7又は8に記載のツールバー。
【請求項10】
前記第1の支持体が、前記第2の支持体に対向し、少なくとも2つの座部を有する表面を有し、
前記第2の支持体が、前記第1の支持体に対向し、少なくとも2つの座部を有する表面を有し、
前記第1及び第2の圧電アクチュエータの
各端部が、前記第1の支持体及び前記第2の支持体の
対応する前記座部に収容されている、
請求項
5から9のいずれか1項に記載のツールバー。
【請求項11】
前記第1の支持体の前記座部及び前記第2の支持体の前記座部が、丸い、又は半球状の形状を有し
、
前記第1の圧電アクチュエータが、丸い形状又は半球状の形状で、前記第1の支持体及び前記第2の支持体の関連
する前記座部に各々収容されている、第1のヘッドと第2のヘッドと、を備え、
前記第2の圧電アクチュエータが、丸い形状又は半球状の形状で、前記第1の支持体及び前記第2の支持体の関連
する前記座部に各々収容されている、第1のヘッドと第2のヘッドと、を備える、
請求項
10に記載のツールバー。
【請求項12】
一端において、前記フレームに連結され、他端において、別の拡張部又は前記機械加工ツールに連結された少なくとも1つの拡張部を備える、請求項1
から11のいずれか1項に記載のツールバー。
【請求項13】
加工機械のスピンドルに接続されることが意図されたアダプタを備え、前記圧電デバイスが、前記アダプタと前記機械加工ツールとの間に配置されている、請求項1
から12のいずれか1項に記載のツールバー。
【請求項14】
前記ツールバーが、削孔ツールバーである、請求項1
から13のいずれか1項に記載のツールバー。
【請求項15】
長手方向軸を有するツールバーに設置することができる圧電デバイスであって、
第1の支持体と、
第2の支持体と、
一方向に沿って、前記圧電デバイスの速度に比例する電気信号を生成するように構成された少なくとも1つの加速度計と、
前記第1の支持体と前記第2の支持体との間に配置された少なくとも1つの圧電アクチュエータと、
前記少なくとも1つの加速度計及び前記少なくとも1つの圧電アクチュエータに動作可能に接続される制御論理ユニットと、を備え、前記制御論理ユニットが、前記ツールバーへのトルク及び振動をオフセットするために前記少なくとも1つの加速度計によって検出された速度と比例する駆動信号によって前記少なくとも1つの圧電アクチュエータを駆動するように構成され、
上部及び下部を有するフレームを
さらに備え、前記下部が
、ねじ切りされ、かつ
機械加工ツールに剛性接続され、
前記第1の支持体が、前記フレームの前記上部に連結され、前記第2の支持体が、前記フレームの前記下部
のねじ山に係合され、前記第2の支持体が、前記第1の支持体に対向して配置されている
、
圧電デバイス。
【請求項16】
前記圧電デバイスが、
前記少なくとも1つの圧電アクチュエータの予荷重を実現するために、前記フレームの前記下部の前記ねじ山に係合されるねじ山を有し、
前記少なくとも1つの圧電アクチュエータを前記第1と第2の支持体との間に押し付ける係止リングを備える、請求項
15に記載の圧電デバイス。
【請求項17】
前記圧電デバイスが、
前記第1の支持体と前記第2の支持体との間に配置され、前記ツールバーの前記長手方向軸と平行に整列された第1の圧電アクチュエータと、
前記第1の支持体と前記第2の支持体との間に配置され、前記ツールバーの前記長手方向軸と平行に整列された第2の圧電アクチュエータを、を備え、
前記第1の圧電アクチュエータ、前記第2の圧電アクチュエータ、及び前記長手方向軸が、同一平面上に存在する、
請求項
15又は16に記載の圧電デバイス。
【請求項18】
前記圧電
デバイスが、
第1の軸に沿って、前記ツールバーの加速度及び速度を測定するように配置された第1の加速度計と、
第2の軸に沿って、前記ツールバーの加速度及び速度を測定するように配置された第2の加速度計と、を備え、
前記第1の軸が、前記ツールバーの前記長手方向軸と平行であり、前記第2の軸が、前記第1の軸と直交し、前記
第1及び第2の圧電アクチュエータの存在する平面上に存在する、請求項17に記載の圧電デバイス。
【請求項19】
請求項1から14のいずれか1項記載のツールバーへのトルクを補償し、かつ振動を減衰させる方法であって
、前記方法が、
方向とともに前記ツールバーの速度信号を受信する工程と、
前記
速度信号を増幅する工程と、
前記ツールバーの前記長手方向軸に対する前記トルクと前記ツールバーへの前記振動を補償するために、前記少なくとも1つの圧電アクチュエータを駆動するように、前記ツールバーの速度と比例する駆動信号を生成する工程と、を含む、方法。
【請求項20】
前記圧電デバイスが、互いに平行に、かつ、前記ツールバーの前記長手方向軸に平行に配置された2つの圧電アクチュエータを備え、
前記圧電デバイスが、第1の軸及び第2の軸に沿って、前記ツールバーの前記速度を検出するように構成された2つの加速度計を備え、前記第1の軸が、前記ツールバーの前記長手方向軸と平行であり、前記第2の軸が、前記第1の軸と直交し、前記
2つの圧電アクチュエータの存在する平面上に存在する、
請求項
19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、機械加工動作によって引き起こされる機械加工振動を減衰させるように適合された内蔵圧電デバイスを装備したアクティブ圧電ツールに関する。
【背景技術】
【0002】
有害な振動の発現は、特に、細長いツールの使用を必要とする(例えば、深部への削孔)機械加工ツールにおいて、回転又は削孔工程の性能を限定する主要要素の1つである。これらの影響はまた、内部削孔動作の性能及びクオリティの低減を引き起こすが、これらはむしろ、ケース、クッション、往復動コンプレッサ、及び内軸機械加工など、例えば、ターボ機械の構成要素のセットにとって重大である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
現在、例えば、削孔ツールバーによって得られた完成面上のチャタリングは、通常、より低い材料除去率及びより高いスクラップ率に関連する、より高いコストをもたらす。
【0004】
したがって、機械加工動作中、削孔ツールバーなどのツールによって生成される振動を補償することができ、迅速に、かつ、データ処理の見地から経済的に、いずれの振動も補償することができる、改善されたツールバーが当技術において歓迎される。
【0005】
一態様において、本明細書に開示される主題は、特に細長いツールによる、機械加工における振動の有害な影響を軽減することが可能なアクティブ機械加工ツールの開発を対象にしたものである。
【0006】
別の態様において、本明細書に開示される主題は、ワークピースへの機械加工動作を実施するためのツールバーに関する。ツールバーは、2つの対向支持体と、1つの関連方向に沿って、ツールバーの速度に比例する電気信号を生成するように構成された1つ、好ましくは2つの加速度計と、を有する、圧電デバイスを内蔵する。圧電デバイスはまた、2つの支持体の間に配置され、駆動信号下で伸張又は後退することが可能な圧電アクチュエータを備える。圧電デバイスはまた、ツールバーへのトルク及び振動を補償するように適合された加速度計によって検出された速度と比例する駆動信号により、圧電アクチュエータを駆動するように構成された制御論理ユニットを備える。
【0007】
別の態様において、ツールバーの長手方向軸と平行に整列された第1の圧電アクチュエータと、ツールバーの長手方向軸と平行に整列された第2の圧電アクチュエータと、を備え、第1の圧電アクチュエータ、第2の圧電アクチュエータ、及び長手方向軸が同一平面上に存在する圧電デバイスを、本明細書において開示する。
【0008】
本開示の更なる態様は、第1の支持体及び第2の支持体が、丸い、又は半球状の形状を有する座部を有して他方の支持体に対向する表面を有し、各圧電アクチュエータの端部は、第1の支持体及び第2の支持体の各座部に収容されている。
【0009】
本明細書中に開示される別の態様において、圧電アクチュエータは、丸い形状又は半球状の形状で、支持体の関連座部に各々収容された第1のヘッドと第2のヘッドと、を備える。
【0010】
別の態様において、ツールバーへのトルクを補償し、かつ振動を減衰させる方法であって、ツールバーの速度に比例する信号が受信及び増幅され、機械加工動作中にツールバーが晒されるトルクを補償し、ツールバーへの振動を減衰させるために、ツールバーの速度に比例して、圧電デバイスを駆動するための駆動信号が生成される方法を、本明細書において開示する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本発明の開示される実施形態、及びそれに付随する利点の多くについての完全な理解は、添付図面に関連して考慮される場合、以下の発明を実施するための形態を参照することによって、それらがより良好に理解される際、容易に得られるであろう。
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係るアクティブ圧電デバイスの設けられた削孔ツールバーの斜視図を例解する。
【
図3】
図3は、第1の実施形態に係るアクティブ圧電デバイスの斜視図を例解する。
【
図4】
図4は、
図3のアクティブ圧電デバイスの詳細を例解する。
【
図5】
図5は、本開示に係るアクティブ圧電デバイスの圧電アクチュエータを例解する。
【
図6】
図6は、本開示に係るアクティブ圧電デバイスの制御論理ユニットの概略を例解する。
【
図7】
図7は、動作中の本開示に係る削孔ツールバーの第1の側面図を例解する。
【
図8】
図8は、動作中の本開示に係る削孔ツールバーの第2の側面図を例解する。
【
図9】
図9は、本開示に係る制御論理ユニットによって処理されるパラメータを示した転送システムのブロック図を例解する。
【
図10】
図10は、振動制御の場合と振動非制御の場合とにおける、時間の関数としての削孔ツールバーの加速度の第1のグラフを例解する。
【
図11】
図11は、振動制御の場合と振動非制御の場合とにおける、時間の関数としての削孔ツールバーの加速度の第2のグラフを例解する。
【
図12】
図12は、振動制御の場合と、振動非制御の場合とにおける、周波数の関数としての削孔ツールバーの振幅のグラフを例解する。
【
図13】
図13は、本開示に係るトルクを補償し、振動を減衰させる方法のフロー図を例解する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
金属、木材、及び/又は他の材料を加工する機械には、削孔ツールバーなどの機械加工ツールが設けられる。機械加工動作中、機械的摩擦、温度、及び他の可能な物理的パラメータにより、機械加工ツールを伝搬する振動が生成される。このような振動は、特に細長いツールにおいて、機械加工のクオリティを低下させ得る。本主題は、ツール上に生成された振動を減衰させ、かつトルクを補償することができる、機械加工ツールに内蔵されたアクティブ振動減衰システムを対象とする。振動補償デバイスは、圧電アクチュエータを駆動する切断動作中に生成される振動に対抗することができ、ツールが受けるトルクを補償する。このソリューションは、大きいケーシングの削孔機械加工ケース全体におけるチャタリングを最少化することを目指すものである。
【0013】
ここで図面を参照すると、
図1は、細長いツールであって、長手方向軸Aを有する機械加工ツール、特に、削孔ツールバー1を示している。削孔ツールバー1は、削孔ツールバー1が設置された機械の動力取り出し装置、特に、かつ、一般的には、スピンドルに接続可能なアダプタ2を備える。削孔ツールバー1は、以下に更に詳細に説明されており、かつ後者の動作中に削孔ツールバー1を通じて生成される振動を補償するように適合されている、アクティブ圧電デバイス3と、連続して接続された2つの拡張部4と、本実施形態においては、金属のワークピースに対して機械加工動作を実施するための削孔バーである機械加工ツール5と、を備える。他の実施形態において、機械加工ツール5は、ミリングツール、ドリルビットなど、任意の他の機械加工ツールであり得る。
【0014】
次いで、
図1に示される実施形態において、アクティブ圧電デバイス3は、削孔ツールバー1に内蔵されるが、アクティブ圧電デバイス3は、他の機械加工装備に設置することが可能である。
【0015】
アダプタ2は、大抵、削孔ツールバー1が設置されるべき機械に依存する。それは、削孔ツールバー1をスピンドルに接続させることで、機械加工ツール5を駆動するのに必要な動力を取り出し、必要な機械加工動作を実施する。
【0016】
図2、
図3、
図4、及び
図5を参照し、
図1の参照を続けると、アクティブ圧電デバイス3は、本実施形態においては実質的に円筒形状を有するフレーム31を備える。フレーム31も中空であり、上部311と、ねじ込まれる下部312と、を有する。
【0017】
アクティブ圧電デバイス3はまた、フレーム31の上部311に連結された第1の支持体又はリング32と、フレーム31の312の下部に連結された第2の支持体又はリング33と、を備える。
【0018】
第1のリング32は、平坦で、第2のリング33に対向して配置された第1の表面321を有する。第1の表面321は、複数の周辺座部324を有する。本実施形態において、周辺座部324の数は8であるが、異なる数の座部324を予見することができる。座部324は、以下により良好に説明されるように、半球状である。第1のリング32はまた、第1の表面321の反対に第2の表面322を有する。第1のリング32はまた、これに応じて、複数のねじ穴325が得られる、本実施形態中では円筒形状を有する外面323を有する。ねじ穴325は、関連グレーン326と各々係合されることで、第1のリング32をフレーム31の上部311に固定することが意図されている。第1のリング32の外面において、2つの周辺溝部327が得られる。
【0019】
第1のリング32に対向する面331において、第2のリング33は、第1のリング32の周辺座部に相似して半球形状を有する周辺座部332(
図3において透視可能である)を有する。第2の支持体又はリング33はまた、2つの周辺溝部334が得られる、本実施形態中では円筒形状を有する外面333を有する。
【0020】
アクティブ圧電デバイス3は、圧電アクチュエータの対、より具体的には、丸い形状又は半球状の形状で、第1のヘッド341及び第2のヘッド342を有する第1の圧電アクチュエータ34と、これに応じて、丸い形状又は半球状の形状で、第1のヘッド351及び第2のヘッド352を有する第2の圧電アクチュエータ35と、を更に備える。圧電アクチュエータ34及び35は両方とも、伸張形状を有する。
【0021】
圧電アクチュエータ34及び35は両方とも、第1のリング32と第2のリング33との間に配置される。より具体的には、各圧電アクチュエータ34及び35は、各々、参照符号341及び351で示され、当該第1のリング32に連結され、各周辺座部324に収容された第1の座部と、各々、参照符号342及び352で示され、当該第2のリング33に連結され、各周辺座部332に収容された第2のヘッドと、を有する。
【0022】
圧電アクチュエータ34及び35は、当該リング32又は当該リング33の直径の線に沿って配置されることで、両方がフレーム31に平行となり、フレーム31がそれらの間に介在するようにする。より具体的には、
図1に示された参照のデカルトフレームが考慮され、図中、Z軸は、削孔ツールバー1の長手方向軸A及びフレーム31の軸と整列されており、X軸は、Z軸に直交し、Y軸は、Z軸及びX軸に直交している。削孔ツールバー1において、2つの圧電アクチュエータ34及び35は、互いに平行に、かつZ軸に平行に(したがってフレーム31に平行に)配置され、両方がX-Z平面内に存在する。
【0023】
各圧電アクチュエータ34及び35は、ともに貼り合わせられた単一のセルの積層を備え、これは、横剪断力に対して脆弱となっている。第1のリング32及び第2のリング33の各々の周辺座部342及び333の半球状の形状により、ボールチップを装備したアクチュエータの収容を可能にして、曲げ及び剪断の力を圧電セラミックスから遠ざける。第1の圧電アクチュエータ34のヘッド341及び342と、第2の圧電アクチュエータ35のヘッド351及び352は、上述のとおり、丸い又は半球状であり、周辺座部342及び333に挿入されることで、(座部の表面と比較して)より少ない面積で接触が発生し、著しい剪断力をアクチュエータ34又は35に伝えないようにする。
【0024】
他の実施形態において、圧電アクチュエータ34及び35は、X-Z平面においてフレームに31に対して異なる位置に配置することができる。この具体的な配置の利点が、以下でより良好に説明される。
【0025】
アクティブ圧電デバイス3はまた、4つのワッシャ36を備える。4つのワッシャのうちの2つは、第1のリング32の外面323の周辺溝部327上に配置される。残りの2つのワッシャは、第2のリング33の外面333の周辺溝部334上に配置される。
【0026】
アクティブ圧電デバイス3はまた、ねじ山371を有し、フレーム31の下部312のねじ山に係合される係止リング37を備える。係止リング37はまた、好適なグレーン373に係合され、係止リング37をフレーム31の下部312と固定することが意図された3つのねじ穴372(異なる数も予見することができる)を有する。ねじ穴372は、係止リング37をフレーム31により良好に固定するために、削孔ツールバー1の長手方向軸Aに対して傾斜することができるが、直交しない。
【0027】
係止リング37はまた、キーなど、外部ツールでその回転を可能にするために、ブラインドホール374の組を有する。係止リング37は、第1の圧電アクチュエータ34と第2の圧電アクチュエータ35の事前搭載を実現し、これら両方を第1のリング32と第2のリング33との間に押し付け、このような事前搭載がブラインドホール374に作用するように調整することができる。
【0028】
アクティブ圧電デバイス3は、フレーム31の外面に連結された一対の加速度計38a及び38bを更に含む。各加速度計38a及び38bは、各圧電アクチュエータ34又は35の付近に、又は各圧電アクチュエータ34又は35に対応して配置される。また、第1の加速度計38aは、Z軸に沿って整列されることで、この方向に沿った削孔ツールバー1の速度を検出するようにし、第2の加速度計38bは、X軸に沿って整列されることで、この他の方向に沿った削孔ツールバー1の速度を検出するようにする。
【0029】
アクティブ圧電デバイス3のアセンブリは、第2のリング33上に得られる好適なガイドに収容されてフレーム31に沿った第2のリング33を案内する一対のキー39を備える。
【0030】
アクティブ圧電デバイス3はまた、フレーム31内に収容され、加速度計38a及び38b、並びに圧電アクチュエータ34及び35とともに動作可能に接続される制御論理ユニット6を備える。
【0031】
制御論理ユニット6には、圧電アクチュエータ34及び35、並びに加速度計38a及び38bによって生成された電気信号を処理するように構成された回路が設けられる。
【0032】
アクティブ圧電デバイス3は、プレキシガラスカバーCによって保護され、これは、オペレータがそれを通じて中を見ることを可能にし、内部に含まれるシステムをチェックするようにするが、他の実施形態においては、カバーCは、作業条件に応じて異なる材料で作製することができる。
【0033】
いくつかの実施形態において、特に
図6を参照すると、中央制御部6は、プロセッサ61と、プロセッサ61が接続されているバス62と、バス62に接続されて、プロセッサ61によりアクセス及び制御されるデータベース63と、更にバス62に接続されて、プロセッサ61によりアクセス及び制御されるコンピュータ可読メモリ64と、バス62に接続され、加速度計38a及び38bから信号を受信するように、かつ制御及び駆動信号を第1の圧電アクチュエータ34及び第2の圧電アクチュエータ35に伝送するように構成された受信・伝送モジュール65と、を備え得る。プロセッサ61は、PLC、マイクロプロセッサ、又は任意の他のプログラム可能なマイクロ電子デバイスによって具現化することができる。
【0034】
【0035】
削孔ツールバー1の動作中、機械加工ツール、すなわち削孔バー5(図示せず)は、ホルダヘッド5に連結され、機械のヘッド2から駆動力を受け取る。
【0036】
機械の動作中、加速度計38は、削孔ツールバー1を通じて、かつ、その全体に機械的に伝送される、機械動作によって生成される振動を検出する。また、
図7及び
図8を参照すると、削孔ツールバー1は、削孔ツールバー1の長手方向軸に対するトルクT
actに晒されることが見て取れる。
【0037】
各加速度計38a及び38bは、制御論理ユニット6に伝送される加速度及び速度に比例した電気信号を生成して、プロセッサ61によって適正に増幅及び処理され、それによって、駆動信号は、第1の圧電アクチュエータ34及び第2の圧電アクチュエータ35の両方に伝送される。第1の圧電アクチュエータ34及び第2の圧電アクチュエータ35は、機械加工プロセスで生成される振動を減衰させるための逆信号によって駆動される。
【0038】
削孔ツールバー1の動態の加速度計38a及び38b、すなわち、Z軸及びX軸に沿ったその加速度とひいては速度、ひいては速度計によって生成された信号は、制御論理ユニット1のプロセッサ61により、適正に増幅され(ゲインが一定又は時間依存し得る)処理されることで、上述のとおり、削孔ツールバー1の上述のZ軸及びX軸に沿った速度に比例する、各圧電アクチュエータ34及び35に対する制御信号を生成するようにする。上述のとおり、
図7及び
図8にもいれられたデカルトフレームのZ軸に平行な削孔ツールバー1の長手方向軸Aに沿って生成されたトルクT
actをオフセットするために、これらの信号が生成される。
【0039】
本実施形態において、第1の圧電アクチュエータ34及び第2の圧電アクチュエータ35を駆動する信号も、削孔ツールバー1と、ひいてはアクティブ圧電デバイス3の振動を減衰させる。したがって、減衰対象の速度に比例する減衰力が想定される。したがって、制御論理ユニット6は、アクティブな減衰を達成するための制御信号を生成する。
【0040】
換言すると、2つの圧電アクチュエータ34及び35は、プロセス応答に基づいて伸張又は後退するための駆動信号により、電気的にシミュレーションされる。ツールバーの長手方向軸Aに沿った第1の圧電アクチュエータ34及び第2の圧電アクチュエータ35の長さの変化により、X-Z平面上での削孔ツールバー1の歪み又は曲げを引き起こす。これらの調整は、機械加工中の切断力によって削孔ツールバー1に生成されるトルクTactに対抗するため、振動も減衰させることが意図されている。制御論理ユニット6に接続された加速度計38a及び38bは、直接的な速度フィードバックを集めることで、連続的なプロセスモニタリング及び調整を可能にする。必要とされる際、制御論理ユニット6からの信号は、切断力に対抗するためにアクチュエータ34及び35を伸張又は後退する増幅器に送信される。
【0041】
開示される実施形態において、速度に比例する力が供給される。したがって、動態システムには追加の減衰が実質的に導入され、実際には、以下の等式に示されるとおり、速度に比例している。
Ma+Cv+Kx=Fact
式中、aは、加速度であり、vは、速度であり、xは、変位であり、Mは、質量でありCは、減衰剛性であり、Kは、剛性である。追加の減衰は、実施されるベンチテストによって実証されるとおり、共振に近い周波数における振動を低減することを可能にする。
【0042】
次いで、フィードバック制御信号は、機械加工ツール、又は同等に、アクティブ圧電デバイス3の速度vに比例する。
【0043】
圧電デバイス3に1つの圧電アクチュエータのみが備えられたままである場合、後者は、削孔ツール1の長手方向軸Aに対して偏心して、すなわち長手方向軸Aに沿わないように載置されなければならず、そのため、制御論理ユニット6の駆動信号による伸張又は後退時に、削孔ツールバー1は、機械加工動作中に晒されるトルクTactをオフセットすることができる。
【0044】
図7を参照すると、フィードバック方式は、中央制御部6によって実装され、機械加工動作のために削孔ツールバー1が晒される力F
cutを考慮にいれると、これはトルクT
actを生じ、関連の検出軸(Z又はX)に沿って加速度計38a及び38bのうちの一方によって検出された速度
【0045】
【数1】
(すなわち、v)は、中央制御部6によって処理され、減衰アクティブ化の力F
actを生成するが、これは上の式の項Cvに主に対応していることが概略的に示されている。
【0046】
本実施形態において、制御は、常にアクティブであり、アクティブ化は、高振動(高速)の場合にのみ感知可能である。他の実施形態において、トリガを提供することが可能であり、そのため、アクティブ圧電デバイス3は、削孔ツールバー1の速度が特定の閾値を超えた後にのみ動作する。
【0047】
図10、
図11、及び
図12を参照すると、システム挙動を試験するためのテストベンチにおける測定結果が示されており、衝撃試験(
図12)と正弦波励振試験(
図10及び
図11)の結果の両方において、システムによって達成可能な著しい減衰作用を示している。削孔ツールバー1の減衰がなかった場合、特定の動作周波数(すなわち、システムの固有周波数)、図示の場合では約320ヘルツの周波数に対して、加速度信号の振幅が顕著に増加する。
【0048】
図12は、圧電アクチュエータ34及び35を駆動するために、中央制御部6のプロセッサ61によって実施される工程をまとめたフローチャートを示す。実行される方法は、加速度計38a及び38bからの速度信号を受信する工程71を含む。当該信号は、加速度計38a及び38bによって直接生成され、X軸及びZ軸の方向に沿って取得される。次いで、信号は、好適なゲインによって工程72で増幅される。次いで、工程73で、削孔ツールバー1の長手方向軸Aに対するトルクT
act及びツールバー1への振動を補償することができる、ツールバー1の速度に比例する駆動信号が生成される。
【0049】
ソリューションとしてのアクティブ圧電デバイス3の利点は、アクティブ圧電デバイスの制御が、いずれの種別の型式又は周波数応答測定(frequency response measurement、FRF)の実装も必要としないという利点を有するということである。
【0050】
アクティブ圧電ツールの別の利点は、材料除去率(material removal rate、MRR)を増加させることによって機械加工の時間を低減することができること、及び表面のクオリティを改善することである。これは、単一の構成要素当たりの機械加工コストを低減させ、部品クオリティを増加させるという点において、利点となる。
【0051】
本明細書中に開示される主題の別の利点は、タップ試験時の固有周波数ピークを80%まで低減させることである。また現在の市場におけるソリューションと比較して、増加された減衰能力は、より高い材料除去率を可能にする。
【0052】
本発明の態様は、様々な特定の実施形態に関して説明されてきたが、特許請求の範囲の趣旨及び範囲を逸脱することなく多くの修正、変更、及び省略が可能であることが、当業者には明らかであろう。加えて、本明細書で別段の指定がない限り、いずれのプロセス又は方法工程の順序又は配列も、代替的な実施形態に従って変更又は再配列され得る。
【0053】
本開示の実施形態に対して詳細な参照がなされており、これらの1つ以上の例は、図面に例解されている。各例は、本開示を限定するものではなく、本開示の説明として提供するものである。実際には、本開示の範囲又は趣旨から逸脱しない限り、本開示に様々な修正及び変形を加えることができるということが、当業者には明らかであろう。本明細書全体を通して「ある実施形態」又は「一実施形態」又は「いくつかの実施形態」への言及は、一実施形態に関して説明される特定の特徴、構造、又は特性が、開示される主題の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体を通して様々な個所における「ある実施形態では」又は「一実施形態では」又は「いくつかの実施形態では」という句が現れると、それは、必ずしも同一の実施形態を指しているものではない。また、特定の特徴、構造、又は特性は、1つ以上の実施形態において、任意の好適な様式において組み合わされ得る。
【0054】
様々な実施形態の要素を提示する際、冠詞「a」、「an」、「the」、及び「当該(said)」は、要素のうちの1つ以上があることを意味することを意図している。「備える(comprising)」、「含む(including)」、及び「有する(having)」という用語は、非排他的であることが意図され、列記された要素以外の追加の要素が存在し得ることを意味するものである。