(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】再配置可能なオーバーザスコープクリップ
(51)【国際特許分類】
A61B 17/128 20060101AFI20241022BHJP
A61B 17/122 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
A61B17/128
A61B17/122
(21)【出願番号】P 2023553618
(86)(22)【出願日】2022-06-13
(86)【国際出願番号】 US2022033236
(87)【国際公開番号】W WO2023003653
(87)【国際公開日】2023-01-26
【審査請求日】2023-09-04
(32)【優先日】2021-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】522368684
【氏名又は名称】ボストン サイエンティフィック メディカル デバイス リミテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】506192652
【氏名又は名称】ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BOSTON SCIENTIFIC SCIMED,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】アディカラス バラン、アルン
(72)【発明者】
【氏名】シン、ラジブクマール
(72)【発明者】
【氏名】シャルマ、ディーパック クマール
(72)【発明者】
【氏名】スミス、ポール
【審査官】段 吉享
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0397445(US,A1)
【文献】米国特許第11013518(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/128
A61B 17/122
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織を処置するためのクリッピングシステムであって、
内視鏡の遠位端上に取り付けられるように構成されたキャップであって、前記キャップは近位端から遠位端まで長手方向に延在するとともに、生体内の標的組織に隣接して配置され得るようにその内部を通って延在するチャネルを含む、キャップと、
前記キャップ上に取り付けられるように構成されたクリップであって、前記クリップは、ヒンジを介して互いに移動可能に連結された第1顎状部および第2顎状部を含み、前記ヒンジのうちの少なくとも1つは前記第1顎状部および第2顎状部を互いに向かって引き寄せるように付勢され、前記クリップは挿入形態、点検形態、および展開形態の間で前記キャップに対して移動可能であり、前記挿入形態において前記第1顎状部および第2顎状部が前記キャップの対向する部分を越えて延在し、前記第1顎状部および第2顎状部は互いに離間して標的組織をそれらの間に受容し、前記点検形態において前記クリップが前記キャップに対して遠位に移動され、前記クリップの少なくとも一部が前記キャップの取り付けられている内視鏡の光学系の視野内に延在するまで、前記クリップの一部が遠位に延在し、展開形態において前記クリップが前記クリップから遠位に移動され離脱し、前記第1顎状部および第2顎状部が前記少なくとも1つのヒンジの付勢下で互いに向かって引き寄せられることでそれらの間に受容された組織を覆うように閉じる、クリップと、
前記クリップに解放可能に連結された遠位端から前記キャップの前記チャネルを通って近位端まで延在する展開エレメントであって、前記近位端は使用中、前記キャップが前記標的組織に隣接している間、前記生体の外側に留まり、前記展開エレメントは、前記キャップに対する前記展開エレメントの近位移動が、前記展開形態に向かって前記クリップを前記キャップに対して遠位に移動させるように構成される、展開エレメントと、
前記キャップおよび前記クリップのうちの1つに連結された遠位端から、前記キャップの前記チャネルを近位に通って、使用時に前記生体の外側に留まる近位端まで延在する再位置決めエレメントであって、前記キャップに対して近位に前記再位置決めエレメントを移動させることによって、前記クリップを前記点検形態から前記挿入形態に前記キャップに対して近位に移動させるように構成されている、再位置決めエレメントと、
を含む、クリッピングシステム。
【請求項2】
前記展開エレメントの遠位部分であって、前記展開エレメントの前記遠位部分の一部が前記キャップの内側表面と前記キャップが取り付けられる内視鏡の外側表面との間に圧着されるように、前記展開エレメントの前記遠位部分が前記クリップの前記第1顎状部の周りに巻きつけられ、前記展開エレメントの前記遠位端の拡大部が前記第1顎状部の隣接する歯部の間に係合され、受容される前記クリップから近位に延在する前記展開エレメントの残りの長さ部分が前記キャップの取り付けられる前記内視鏡の遠位開口に進入し、前記内視鏡のチャネルを通って近位に延在する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記キャップは、透明材料から形成され、摩擦嵌合を介して内視鏡の前記遠位端上に取り付けられるように構成され、それにより、前記キャップの近位部分は前記キャップが取り付けられた内視鏡の前記遠位端を越えて延在し、前記キャップの遠位部分は前記内視鏡の前記遠位端を越えて遠位に延在する、請求項1および請求項2のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項4】
前記挿入形態において、前記クリップは前記キャップの前記近位部分を越えて延在し、前記点検形態において、前記キャップ
が取り付けられる内視鏡の光学系を介して前記クリップが視認可能であるように、前記クリップが前記キャップの前記遠位部分を越えて延在する、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記キャップは、前記キャップの外側表面から延在する突起を含み、前記突起は、前記クリップが前記点検形態にあるとき、前記クリップの一部に係合するように構成される、請求項1~
2のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記再位置決めエレメントの前記遠位端は、前記クリップの前記第2顎状部に解放可能に係合し、前記再位置決めエレメントの残りの長さ部分は、前記キャップを通って延在する長手方向スロットを通過して、前記キャップが取り付けられる内視鏡のチャネルを通って近位に延在する、請求項1~
2のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記キャップの遠位端と前記キャップが取り付けられる内視鏡の最遠位端にある止め具との間に延在する付勢エレメントをさらに備え、前記付勢エレメントは前記キャップを前記挿入形態に向かって付勢し、前記挿入形態において前記キャップ上に取り付けられた前記クリップの全体は前記内視鏡の前記最遠位端の近位に存在する、請求項1および請求項2のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
前記再位置決めエレメントの前記遠位端は前記キャップに連結され、前記キャップの残りの長さ部分は、前記キャップの内側表面と、前記キャップが取り付けられるとともに前記内視鏡のチャネルの遠位開口を介して遠位に通過する前記内視鏡の外側表面との間において遠位に延在し、それにより、前記再位置決めエレメントが前記内視鏡の前記チャネルを通って近位端まで近位に延在する、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記再位置決めエレメントは、前記内視鏡に対して近位に引き込まれて、前記キャップを前記内視鏡に対して遠位に移動させ、前記付勢エレメントを圧縮し、それにより、前記キャップおよびその上に取り付けられた前記クリップが前記点検形態に向かって移動される、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記点検形態において、把持形体は前記第1顎状部および第2顎状部に沿って延在し、前記第1顎状部および第2顎状部は前記内視鏡の最遠位端を越えて遠位に延在し、それにより、前記把持形体は前記内視鏡の視野内に存在する、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
組織クリッピングシステムであって、
内視鏡の遠位端上に取り付けられるように構成さ
れ透明
材料から形成されたキャップであって、前記キャップは近位端から遠位端まで長手方向に延在し、それを通って延在するチャネルを含み、前記キャップが取り付けられる内視鏡の前記遠位端上に延在するように構成された近位部分と、前記キャップが取り付けられる内視鏡の遠位端を越えて遠位に延在するように構成された遠位部分と、を含む
、キャップと、
前記キャップ上に取り付けられるように構成されたクリップであって、前記クリップは、ヒンジを介して互いに移動可能に連結された第1顎状部および第2顎状部を含み、前記ヒンジのうちの少なくとも1つは前記第1顎状部および第2顎状部を互いに向かって引き寄せるように付勢され、前記クリップは挿入形態、点検形態、および展開形態の間で前記キャップに対して移動可能であり、前記挿入形態において前記第1顎状部および第2顎状部が前記キャップの前記近位部分に沿って対向する部分を越えて延在し、それにより、前記第1顎状部および第2顎状部は互いから離間されて標的組織をそれらの間に受容し、前記点検形態において前記クリップは前記キャップに対して遠位に移動され、それにより、前記キャップが取り付けられている内視鏡の光学系の視野内に存在するように構成される位置まで、前記クリップは前記キャップの前記遠位部分を越えて延在し、展開形態において前記クリップは前記クリップから遠位に移動されて離脱し、それにより、前記第1顎状部および第2顎状部が前記少なくとも1つのヒンジの付勢下で互いに引き寄せられる、クリップと、
前記クリップに解放可能に連結された展開エレメントであって、前記展開エレメントが第1の距離を介して前記キャップに対して近位に引き込まれたとき、前記クリップは前記挿入形態から前記点検形態に向かって移動され、前記展開エレメントが第2の距離に亘って、前記キャップに対してさらに近位に引き込まれるとき、前記クリップは前記点検形態から前記展開形態に向かって移動される、展開エレメントと、
前記クリップに解放可能に連結される再位置決めエレメントであって、標的組織に対して前記クリップを再位置決めすることが所望されるとき、前記再位置決めエレメントは前記キャップに対して近位に引き込まれることによって、前記クリップを前記点検形態から前記挿入形態に向かって移動させる、再位置決めエレメントと、を含む、クリッピングシステム。
【請求項12】
前記展開エレメントの遠位部分が前記クリップの前記第1顎状部の周りに巻きつけられ、それにより、前記展開エレメントの前記遠位部分の一部が前記キャップの内側表面と前記キャップが取り付けられる内視鏡の外側表面との間に圧着されて、前記展開エレメントの前記遠位端の拡大部が前記第1顎状部の隣接する歯部の間に係合され、前記展開エレメントの残りの長さ部分が、前記キャップが取り付けられる内視鏡の遠位開口内に受容される前記クリップから近位に延在することで、前記内視鏡のチャネルを通って近位に延在する、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記クリップが前記展開形態において前記キャップの遠位に移動されるとき、前記展開エレメントの前記遠位部分は、前記拡大部が前記クリップから係合を解除され、前記クリップは前記展開エレメントから解放されて、前記標的組織上で閉じたままであるように、前記第1顎状部から巻き戻される、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記再位置決めエレメントの前記遠位端は、前記クリップの前記第2顎状部に解放可能に係合し、前記再位置決めエレメントの残りの長さ部分は前記キャップを通って延在する長手方向スロットを通過する、請求項11~13のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項15】
前記キャップは、前記キャップの外側表面から延在する突起を含み、前記突起は前記クリップが前記点検形態にあるときに前記クリップの一部に係合するように構成される、請求項11~
13のいずれか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、内視鏡デバイスに関する。特に、胃腸管に沿って組織を処置するための内視鏡クリッピングデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
医師は積極的な介入的および治療的内視鏡胃腸(GI)処置をより進んで実施するようになってきており、このことはGI管の壁を穿孔するリスクを増加させ得るか、あるいは、手順の一部としてGI管壁の閉鎖を必要とし得る。そのような手順は、例えば、大きな病変の除去、粘膜下の潰瘍を処置するためのGI管の粘膜層下のトンネリング、組織の全層除去、GI管を介して身体に進入し組織を貫通してGI管から出てGI管の外側の組織を手術すること、ならびに手術後の問題(例えば、手術後漏出、外科的ステープルラインの機能停止、および吻合部漏出)の内視鏡的処置/修復を含み得る。
【0003】
現在、組織は、スルーザスコープクリップまたはオーバーザスコープクリップを含む内視鏡用閉鎖デバイスを介して処置され得る。オーバーザスコープクリップは、より大きな組織欠損の閉鎖を達成するために特に有用であり得る。これらの内視鏡閉鎖デバイスは、病院の費用を節約することができ、患者に利益を提供し得る。しかし、場合によっては、現在の内視鏡的閉鎖デバイスは、使用が困難であるか、位置決めに時間がかかるか、または特定の穿孔、状態、解剖学的形状に対して不十分である可能性がある。例えば、現在のオーバーザスコープクリップは、概して、クリップ自体が操作者に視認不可能な位置からクリップを送り出す必要がある。つまり、クリッピングに先立って、操作者はクリッピングされる標的組織を視認し得、標的組織のこの可視化に基づいて、デバイスの遠位端およびクリップが標的組織に対して所望の位置にあることを判断し得る。次いで、標的組織の観察に基づいて、操作者は、クリップを展開するまで、クリップ自体を確認することができない状態でクリップを展開する。
【発明の概要】
【0004】
本実施形態は、組織を処置するためのクリッピングシステムを対象とし、キャップを含む。キャップは、内視鏡の遠位端上に取り付けられるように構成され、キャップは近位端から遠位端まで長手方向に延在するとともに、生体内の標的組織に隣接して配置され得るようにその内部を通って延在するチャネルを含む。クリップは前記キャップ上に取り付けられるように構成され、前記クリップは、ヒンジを介して互いに移動可能に連結された第1顎状部および第2顎状部を含み、前記ヒンジのうちの少なくとも1つは前記第1顎状部および第2顎状部を互いに向かって引き寄せるように付勢される。前記クリップは挿入形態、点検形態、および展開形態の間で前記キャップに対して移動可能である。前記挿入形態において前記第1顎状部および第2顎状部が前記キャップの対向する部分を越えて延在し、前記第1顎状部および第2顎状部は互いに離間して標的組織をそれらの間に受容する。前記点検形態において前記クリップが前記キャップに対して遠位に移動され、前記クリップの少なくとも一部が前記キャップの取り付けられている内視鏡の光学系の視野内に延在するまで、前記クリップの一部が遠位に延在する。展開形態において前記クリップが前記クリップから遠位に移動されて離脱し、前記第1顎状部および第2顎状部が前記少なくとも1つのヒンジの付勢下で互いに向かって引き寄せられることでそれらの間に受容された組織を覆うように閉じる。展開エレメントは、前記クリップに解放可能に連結された遠位端から前記キャップの前記チャネルを通って近位端まで延在し、前記近位端は使用中、前記キャップが前記標的組織に隣接している間、前記生体の外側に留まる。前記展開エレメントは、前記キャップに対する前記展開エレメントの近位移動が、前記展開形態に向かって前記クリップを前記キャップに対して遠位に移動させるように構成される。再位置決めエレメントは、前記キャップおよび前記クリップのうちの1つに連結された遠位端から、前記キャップの前記チャネルを通って、使用時に前記生体の外側に留まる近位端まで近位に延在し、前記キャップに対して前記再位置決めエレメントを近位に移動させることによって、前記クリップを前記点検形態から前記挿入形態に前記キャップに対して近位に移動させるように構成される。
【0005】
一実施形態において、前記展開エレメントの遠位部分であって、前記展開エレメントの前記遠位部分の一部が前記キャップの内側表面と前記キャップが取り付けられる内視鏡の外側表面との間に圧着されるように、前記展開エレメントの前記遠位部分が前記クリップの前記第1顎状部の周りに巻きつけられ得る。前記展開エレメントの前記遠位端の拡大部が前記第1顎状部の隣接する歯部の間に係合され得、受容される前記クリップから近位に延在する前記展開エレメントの残りの長さ部分が前記キャップの取り付けられる前記内視鏡の遠位開口に進入し、前記内視鏡のチャネルを通って近位に延在する。
【0006】
一実施形態において、前記キャップは、透明材料から形成され、摩擦嵌合を介して内視鏡の前記遠位端上に取り付けられるように構成され得、それにより、前記キャップの近位部分は前記キャップが取り付けられた内視鏡の前記遠位端を越えて延在し、前記キャップの遠位部分は前記内視鏡の前記遠位端を越えて遠位に延在する。
【0007】
一実施形態では、前記挿入形態において、前記クリップは前記キャップの前記近位部分を越えて延在し得、前記点検形態において、前記キャップが前記透明キャップを通して取り付けられる内視鏡の光学系を介して前記クリップが視認可能であるように、前記クリップが前記キャップの前記遠位部分を越えて延在し得る。
【0008】
一実施形態において、前記キャップは、前記キャップの外側表面から延在する突起を含み得、前記突起は前記クリップが前記点検形態にあるときに前記クリップの一部に係合するように構成される。
【0009】
一実施形態において、前記再位置決めエレメントの前記遠位端は、前記クリップの前記第2顎状部に解放可能に係合し得、前記再位置決めエレメントの残りの長さ部分は、前記キャップを通って延在する長手方向スロットを通過して、前記キャップが取り付けられる内視鏡のチャネルを通って近位に延在する。
【0010】
一実施形態において、システムは前記キャップの遠位端と前記キャップが取り付けられる内視鏡の最遠位端にある止め具との間に延在する付勢エレメントをさらに備え得、前記付勢エレメントは前記キャップを前記挿入形態に向かって付勢し、前記挿入形態において前記キャップ上に取り付けられた前記クリップの全体は前記内視鏡の前記最遠位端の近位に存在する。
【0011】
一実施形態において、前記再位置決めエレメントの前記遠位端は前記キャップに連結され得、前記キャップの残りの長さ部分は、前記キャップの内側表面と、前記キャップが取り付けられるとともに前記内視鏡のチャネルの遠位開口を介して遠位に通過する前記内視鏡の外側表面との間において遠位に延在し、それにより、前記再位置決めエレメントが前記内視鏡の前記チャネルを通って近位端まで近位に延在する。
【0012】
一実施形態において、前記再位置決めエレメントは、前記内視鏡に対して近位に引き込まれて、前記キャップを前記内視鏡に対して遠位に移動させ、前記付勢エレメントを圧縮し、それにより、前記キャップおよびその上に取り付けられた前記クリップが前記点検形態に向かって移動される。
【0013】
一実施形態において、前記点検形態において、把持形体は前記第1顎状部および第2顎状部に沿って延在し得、前記第1顎状部および第2顎状部は前記内視鏡の最遠位端を越えて遠位に延在し、それにより、前記把持形体が前記内視鏡の視野内に存在する。
【0014】
本実施形態は、また、組織クリッピングシステムを対象とし、透明キャップを含む。透明キャップは、内視鏡の遠位端上に取り付けられるように構成され、前記キャップは近位端から遠位端まで長手方向に延在し、それを通って延在するチャネルを含み、前記キャップが取り付けられる内視鏡の前記遠位端を越えて延在するように構成された近位部分と、前記キャップが取り付けられる内視鏡の遠位端を越えて遠位に延在するように構成された遠位部分と、を含む。クリップは前記キャップ上に取り付けられるように構成され、前記クリップは、ヒンジを介して互いに移動可能に連結された第1顎状部および第2顎状部を含み、前記ヒンジのうちの少なくとも1つは前記第1顎状部および第2顎状部を互いに向かって引き寄せるように付勢される。前記クリップは挿入形態、点検形態、および展開形態の間で前記キャップに対して移動可能である。前記挿入形態において前記第1顎状部および第2顎状部は前記キャップの前記近位部分に沿って対向する部分を越えて延在し、それにより、前記第1顎状部および第2顎状部は互いに離間して標的組織をそれらの間に受容する。前記点検形態において前記クリップが前記キャップに対して遠位に移動され、それにより、前記キャップが取り付けられている内視鏡の光学系の視野内に存在するように構成される位置まで、前記クリップは前記キャップの前記遠位部分を越えて延在する。展開形態において前記クリップは前記クリップから遠位に移動されて離脱し、それにより、前記第1顎状部および第2顎状部が前記少なくとも1つのヒンジの付勢下で互いに向かって引き寄せられる。展開エレメントは前記クリップに解放可能に連結され、前記展開エレメントが第1の距離を介して前記キャップに対して近位に引き込まれるとき、前記クリップは前記挿入形態から前記点検形態に向かって移動される。前記展開エレメントが第2の距離に亘って前記キャップに対してさらに近位に引き込まれるとき、前記クリップは前記点検形態から前記展開形態に向かって移動される。再位置決めエレメントは前記クリップに解放可能に連結され、標的組織に対して前記クリップを再位置決めすることが所望されるとき、前記再位置決めエレメントは前記キャップに対して近位に引き込まれることによって、前記クリップを前記点検形態から前記挿入形態に向かって移動させる。
【0015】
前記展開エレメントの遠位部分が前記クリップの前記第1顎状部の周りに巻きつけられ得、それにより、前記展開エレメントの前記遠位部分の一部が前記キャップの内側表面と前記キャップが取り付けられる内視鏡の外側表面との間に圧着されて、前記展開エレメントの前記遠位端の拡大部が前記第1顎状部の隣接する歯部の間に係合され、前記展開エレメントの残りの長さ部分が、前記キャップが取り付けられる内視鏡の遠位開口内に受容される前記クリップから近位に延在することで、前記内視鏡のチャネルを通って近位に延在する。
【0016】
一実施形態において、前記クリップが前記展開形態において前記キャップの遠位に移動されるとき、前記展開エレメントの前記遠位部分は、前記拡大部が前記クリップから係合を解除され、前記クリップは前記展開エレメントから解放されて、前記標的組織上で閉じたままであるように、前記第1顎状部から巻き戻され得る。
【0017】
一実施形態において、前記再位置決めエレメントの前記遠位端は、前記クリップの前記第2顎状部に解放可能に係合し得、前記再位置決めエレメントの残りの長さ部分は前記キャップを通って延在する長手方向スロットを通過する。
【0018】
一実施形態において、前記キャップは、前記キャップの外側表面から延在する突起を含み得、前記突起は前記クリップが前記点検形態にあるときに前記クリップの一部に係合するように構成される。
【0019】
本実施形態は、また、組織を処置するための方法を対象とする。クリップは内視鏡を介して身体管腔内の標的領域に挿入され、挿入形態において、透明キャップを介して内視鏡の遠位端上に取り付けられ、キャップの近位端が内視鏡の遠位端を越えて延在し、キャップの遠位部分が内視鏡の遠位端の遠位に延在する。クリップはキャップの近位部分上に取り付けられ、それにより、クリップの顎状部が挿入形態において互いに離間する。吸引力が内視鏡の作業チャネルを通して加えられ、それにより、組織はキャップのチャネル内に、かつ、クリップの顎状部の間に引き込まれる。クリップに解放可能に連結された展開エレメントは内視鏡に対して近位に移動され、それにより、点検形態に向かってクリップが移動される。点検形態では、クリップが点検形態において内視鏡の視野内にあるように、クリップはキャップに沿って遠位に移動されて、遠位部分を越えて延在する。クリップが点検形態にあるとき、クリップが標的組織に対して所望の位置にあるかどうかが判断される。展開エレメントは内視鏡に対してさらに近位に移動され、クリップは展開形態に向かってキャップの遠位に移動されて離脱する。展開形態において、クリップは付勢された閉鎖形態に向かって戻る。閉鎖形態において、クリップが標的組織に対して所望の位置にあると判断されるとき、顎状部は互いに向かって引き寄せられ、その間に組織を把持する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、挿入形態における、本開示の例示的な実施形態による組織クリッピングシステムの遠位部分の斜視図を示す。
【
図2】
図2は、点検形態における、
図1のシステムの遠位部分の別の斜視図を示す。
【
図3】
図3は、
図1のシステムの遠位部分の縦断面斜視図を示す。
【
図4】
図4は、
図1のシステムの遠位部分の別の縦側断面図を示す。
【
図5】
図5は、
図1の例示的なシステムによるアクチュエータアセンブリの斜視図を示す。
【
図6】
図6は、挿入形態における、
図1のシステムの縦側面図を示す。
【
図7】
図7は、点検形態における、
図1のシステムの縦側面図を示す。
【
図8】
図8は、挿入形態に向かって移動する、
図1のシステムの縦側面図を示す。
【
図9】
図9は、点検形態に向かって移動する、
図1のシステムの縦側面図を示す。
【
図11】
図11は、本開示の別の例示的な実施形態による組織クリッピングシステムの遠位部分の縦側面図を示す。
【
図14】
図14は、
図11の例示的なシステムによるアクチュエータアセンブリの斜視図を示す。
【
図18】
図18は、再位置決めエレメントを介して挿入形態に向かって移動される、
図11のシステムの遠位部分の縦側面図を示す。
【
図19】
図19は、点検形態に向かって移動される、
図11のシステムの遠位部分の縦側面図を示す。
【
図20】
図20は、展開形態に向かって移動される、
図11のシステムの遠位部分の縦側面図を示す。
【
図21】
図21は、クリップが標的組織上でクリッピングされた体内に展開されている状態の、
図11のシステムの遠位部分の縦側面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本開示は、以下の説明および添付の図面を参照してさらに理解することができ、同様の要素は同じ参照番号で参照される。本開示はクリッピングシステムに関する。特に、クリップの初期配置がその展開の前に視認され調節され得る、オーバーザスコープ内視鏡クリッピングシステムに関する。本開示の例示的な実施形態は、キャップを介して内視鏡の遠位端上に装着可能なクリップを含む。クリップは、クリップに解放可能に連結された展開エレメント、およびクリップまたはキャップのうちの1つに連結された再位置決めエレメント、のうちの1つを介して、挿入形態、点検形態、および展開形態の間で内視鏡に対して移動可能である。例示的な実施形態のクリップは、体内の標的部位に挿入され得、挿入形態において標的組織上に位置決めされ得る。
【0022】
挿入形態において、クリップはキャップ上に取り付けられ、クリップの顎状部は開放形態に向かって互いに離間し、それにより、組織がその間に受容され得る。点検形態において、クリップは内視鏡に対して遠位に移動され、クリップの少なくとも一部が内視鏡の視野内に延在する。この点検形態において、顎状部はそれらの間に標的組織を受容するように互いに離間した状態で、クリップは開放形態に向かってキャップ上に取り付けられたままとなり、その間に内視鏡を介して視認可能であり、それにより、システムの操作者はクリップが標的組織に対して所望の位置にあるかどうかを判断し得る。クリップが標的組織に対して所望の位置にあると判断される場合、クリップは、展開エレメントを介して展開形態に向かって移動され得る。展開形態において、クリップはキャップから遠位に移動されて離脱し、それにより、クリップは付勢された閉鎖形態に向かって戻り、その顎状部の間で標的組織を把持する。
【0023】
いったんクリップが展開されて閉鎖形態になると、クリップは内視鏡から解放され体内に留まり、標的組織にクリッピングされる。しかしながら、点検形態中に、クリップが標的組織に対して所望の位置にないと判断された場合、クリップは、再位置決めエレメントを介して内視鏡に対して近位に、挿入形態に向かって引き込まれてもよく、それにより、クリップは標的組織上に再位置決めされ得る。この手順は、クリップが標的組織に対して所望の位置にあると判断されるまで、必要に応じて繰り返され得る。クリップが標的組織に対して所望の位置にあると判断されると、クリップは展開形態に向かってクリップから遠位に移動されて離脱する。この展開形態で、クリップは標的組織を覆ってクリッピングされ、内視鏡から完全に離間され、それにより、クリップは標的組織上の体内に留まる。
【0024】
クリップが展開形態に向かって移動すると、クリップは内視鏡から完全に離間され、体内で恒久的に解放されることが、当業者に理解されよう。本明細書で使用される場合、近位および遠位という用語はそれぞれ、デバイスのユーザに向かう方向およびユーザから離れる方向を指すように意図されることが、当業者に理解されよう。
【0025】
図1~
図10に示すように、本開示の例示的な実施形態による組織の欠損および/または穿孔を治療するためのクリッピングシステム100は、透明キャップ108を介して内視鏡104の遠位部分106上に取り付けられるように構成されたクリップ102を備える。クリップ102は、展開エレメント110に解放可能に連結される。展開エレメント110は、クリップ102に連結され、展開エレメント110に張力をかけることで、クリップ102を挿入形態から点検形態に向かって内視鏡104(およびその上に取り付けられたキャップ108)に対して遠位に移動させ得、かつ、クリップ102が標的組織に対して所望の位置にあるとシステム100の操作者(例えば、外科医)によって判断されると、クリップ102を点検形態から展開形態に移動させ得る。この展開形態では、クリップ102はキャップ108から解放されて標的組織上で閉鎖する。
【0026】
クリップ102はまた、再位置決めエレメント112に解放可能に連結される。それにより、点検形態においてクリップ102を視認したときにクリップ102が標的組織に対して所望の位置にないと判断される場合、再位置決めエレメント112が張力をかけられることで、クリップ102がキャップ108に対して近位に、点検形態から挿入形態に向かって引き込まれ得、よって、クリップ102は標的組織に対して再配置され得る。挿入形態において、クリップ102はキャップ108上に取り付けられ、キャップ108は、クリップ102の顎状部114がキャップ108の周囲で互いに離間した状態の開放位置においてクリップ102を保持する。それにより、クリップされる組織がキャップ108のチャネル116を通って顎状部114の間に引き込まれ得る。この挿入形態において、クリップ102の(顎状部114を含む)全体は、キャップ108の遠位端118の近位にあり、内視鏡104の光学システムの視野の任意の障害物を最小限にし、それにより、ユーザはキャップ108に隣接する組織を完全に観察することができる。
【0027】
クリップ102を挿入形態から点検形態に向かって移動させるために、展開エレメント110に張力がかけられることで、クリップ102の一部がキャップ108上に形成された突起120に対して当接するまで、クリップ102をキャップ108に沿って遠位に押す。これは、クリップ102が点検形態にあることを示す触知可能なフィードバックをオペレータに提供する。点検形態において、顎状部114はキャップ108の遠位部分140上に取り付けられたままであり、内視鏡104の遠位端106を越えて遠位に延在し、顎状部114は開放を維持され互いに離間した状態である。点検形態における一実施形態では、クリップ102は、顎状部114が解放状態でキャップ108上に取り付けられたまま、顎状部114の歯部122の先端は、キャップ108の遠位端118およびクリップ102を越えて遠位に延在する。キャップ108は透明であるので、クリップ102がキャップ108の遠位部分140上に取り付けられるとき、クリップ102は内視鏡104の光学系の視野内に存在する。
【0028】
点検形態において、操作者は、クリップ102が標的組織に対して所望の位置にあるかどうかを視覚的に判断し得る。クリップ102が所望のように位置決めされている場合、標的組織は、(例えば、内視鏡104の作業チャネルを通して吸引力を加えることにより)キャップ108内に引き込まれる。次いで、クリップ102を突起120上に押してキャップ108から離脱させる所定の力を超えるまで展開エレメント110に張力をかけることによって、クリップ102は展開される。クリップ102がキャップ108から押し出されるとき、クリップ102の顎状部114は、キャップ108内に引き込まれた組織を把持するそれらの固有のバイアスにより閉じる。
【0029】
しかしながら、点検形態中にクリップ102が標的組織に対して所望の位置に存在していないと、操作者が判断した場合、再位置決めエレメント112に張力が加えられ、クリップ102は点検形態から挿入形態に向かって、内視鏡および内視鏡キャップ108に対して近位に引き込まれる。クリップ102は挿入形態と点検形態との間で移動され得、それにより、クリップ102が標的組織に対して所望の位置に存在していると判断されるまで、デバイスは再位置決めされ得る。いったんクリップ102が標的組織に対して所望の位置にあると判断されると、上述のように、クリップ102は展開される。以下でさらに詳細に説明されるように、展開エレメント110および再位置決めエレメント112は、クリップ102を挿入形態、点検形態、および展開形態の間で移動させるために使用され得る。また、以下でさらに詳細に説明されるように、展開エレメント110および再位置決めエレメント112の移動は、
図5に示されるように、内視鏡104の近位端に取り付けられる作動アセンブリ124を介して制御され得る。
【0030】
内視鏡104の遠位端106上に取り付けられる(例えば、遠位端106上を摺動され、摩擦嵌合を介してそこに保持される)ように大きさ、形状、および構成が決められたキャップ108を介して、クリップ102は任意の標準的な内視鏡104に取り付けられ得る。当業者によって理解されるように、内視鏡104は、身体管腔を通って管腔内の標的領域に挿入されるように構成され、したがって、身体管腔の曲がりくねった経路でさえも通って進むため十分に可撓性を備えなくてはならない。例示的な実施形態によれば、内視鏡104の遠位部分は、その壁156を通って伸長する長手方向スロット154を含む。長手方向スロット154は、以下でさらに詳細に説明されるように、その中に再位置決めエレメント112を受容されるように大きさおよび構成が決められる。
【0031】
内視鏡104の近位端はハンドル部材134を含んでもよく、それを介して、医師または他のユーザは、身体管腔(例えば、胃腸管)を通して標的部位に内視鏡を誘導してもよい。以下でさらに詳細に説明される、作動アセンブリ124は、内視鏡104のハンドル部材134に連結され得る。代替的な実施形態において、キャップ108は、クリッピングされる組織が位置する体内の標的部位に接近するために好適な任意の(可撓性または剛性の)挿入デバイスの遠位端上に取り付けられるように大きさおよび形状が決められてもよい。
【0032】
キャップ108は近位端136から遠位端118まで長手方向に延在し、そこを通って長手方向に延在するチャネル116を含む。キャップ108は内視鏡104の遠位端106上に取り付けられるように構成され、キャップ108のチャネル116は内視鏡104の長手方向軸線と実質的に整列され、内視鏡104のチャネル105と連通する。チャネル116は内視鏡104の遠位端106から離れて延在し、それにより、内視鏡の視野の閉塞が最小化される。キャップ108は内視鏡104の断面形状に対応する大きさおよび形状であり、それにより、キャップ108は摩擦嵌合を介してその上に嵌合する。キャップ108は、キャップ108が内視鏡の遠位端106上に取り付けられたときに、キャップ108の近位部分138が内視鏡シャフト106上に延在し、同時に、キャップ108の遠位部分140が内視鏡104の遠位端106を越えて遠位に延在するように構成される。キャップ108は透明材料から形成され、それにより、キャップ108の遠位部分140の上に、またはそれを越えて、延在するクリップ102の一部分が内視鏡104の視野内に存在する。1つの例示的な実施形態によれば、キャップ108の遠位部分140の長さは、組織がキャップ108内に吸引されるときであってもクリップ102の一部分が視認可能なままであるように選択され得る。一実施例において、可視領域の近位端とキャップ108内に吸引された組織との間に約10mmの隙間が存在し得、それにより、組織がキャップ108内に吸引されたときに、吸引された組織に対するクリップ102の位置がユーザに視認可能なままとなる。
【0033】
キャップ108は、その外側表面142から延在するとともに、クリップ102の一部に係合するように構成された突起120を含む。一実施形態において、キャップ108は、互いに直径方向に対向するとともに、キャップ108に沿って位置決めされた一対の突起120を含み、それにより、クリップ102が突起120に係合するとき、クリップ102は点検形態においてキャップ108を越えて延在する。突起120は、所定の閾値を超える遠位方向の力がクリップ102に加えられたとき、クリップ102が展開形態に向かって突起上を遠位方向に移動されるように、大きさ、形状、および構成が決められる。
【0034】
キャップ108の近位部分138は、その壁160を通って延在する長手方向スロット158を含み得る。長手方向スロット158は、その大きさおよび形状において内視鏡104の長手方向スロット154に実質的に対応し得、それにより、キャップ108が内視鏡104の遠位端106上に取り付けられるとき、キャップ108の長手方向スロット158が内視鏡104の長手方向スロット154と実質的に整列される。以下でさらに詳細に説明されるように、再位置決めエレメント112は長手方向スロット154および158を通過し、それにより、再位置決めエレメント112の一部は内視鏡104を通過して作動アセンブリ124まで延在し得る。
【0035】
クリップ102は、ヒンジ126を介して互いに連結された一対の顎状部114を含み、これは顎状部114が互いに離間した開放形態と、顎状部114が互いに向かって移動される閉鎖形態との間で、顎状部114の互いに対する移動を可能にする。顎状部114の各々は第1端部128から第2端部130まで曲線に沿って延在し得、それにより、ヒンジ126のうちの第1ヒンジが顎状部114の各々の第1端部128を連結し、ヒンジ126のうちの第2ヒンジが顎状部114の各々の第2端部130を連結する。例示的な一実施形態によれば、ヒンジ126は、キャップ108の突起120と係合するような大きさおよび形状の溝132を含むリビングヒンジであってもよい。ヒンジ126は付勢バネであり得、顎状部114を閉鎖形態に向かって付勢する。例示的な一実施形態において、顎状部114の各々は、例えば歯部122などの把持形体を含み、それにより、顎状部114が閉鎖形態に向かい、互いに向かって移動されるとき、組織は歯部122を介して顎状部114の間に把持され得る。
【0036】
クリップ102がキャップ108上に取り付けられるとき、顎状部114はキャップ108の対向する部分を越えて延在し、それにより、キャップ108の外側表面142は、顎状部114が開放形態において互いに離間した状態で、クリップ102を開放状態に保持する。開放形態において、組織は、例えば、内視鏡104を通して加えられる吸引力、または内視鏡104の作業チャネルを通して挿入される把持デバイスを介して、キャップ108のチャネル116内および顎状部114の間に引き込まれ得る。挿入形態において、クリップ102はキャップ108の近位部分138上に取り付けられてもよい。
【0037】
しかしながら、点検形態において、クリップ102の溝132が突起120に係合し、そのクリップ102がキャップ108の遠位部分140を越えて延在されるまで、クリップ102はキャップ108に対して遠位に移動される。一実施形態において、クリップ102の歯部122は、キャップ108の遠位端118を越えて遠位に延在する。したがって、クリップ102、および標的組織に対する歯部122の位置は、内視鏡104の光学システムを介して操作者に視認可能となる。しかしながら、クリップ102がキャップ108から遠位に移動されて離脱するとき、クリップ102は、顎状部114の間に受容されたものを把持するために、その付勢された閉鎖形態に戻ることが可能となる。クリップ102のヒンジ126および/または顎状部114は、上述のように、ヒンジ126が顎状部114を閉鎖形態に向かって付勢する限り、種々の材料のうちのいずれかから形成され得ることが、当業者に理解されよう。一実施例では、クリップ102の一部(例えば、ヒンジ126)は、例えば、ニチノール等の形状記憶合金から形成されてもよい。
【0038】
上述のように、クリップ102は、展開エレメント110を介し、挿入形態から点検形態に向かって、および点検形態から展開形態に向かって、キャップ108に対して移動され得る。展開エレメント110は、クリップ102に解放可能に連結された遠位端144から作動アセンブリ124に連結された近位端まで延在する、糸、ワイヤ、ストランド、フィラメント、または他の類似の可撓性長手方向エレメントとして形成され得る。
【0039】
例示的な実施形態によれば、遠位端144は、一例においてノット146として構成され得る、拡大端を含む。展開エレメント110の遠位部分148はクリップ102の一部の周りに巻きつけられ、それにより、展開エレメント110の一部がクリップ102とキャップ108の外側表面142との間に圧着され、ノット146がクリップ102の一部に係合する。展開エレメント110の残りの長さ部分は、クリップ102から遠位に延在し、キャップ108のチャネル116の遠位開口を通って、チャネル116および内視鏡104の作業チャネルを通って作動アセンブリ112まで近位に延在し得る。一実施形態において、展開エレメント110の遠位部分148は、顎状部114のうちの第1顎状部の周りで巻きつけられてもよく、2つの隣接する歯部122の間でノット146がクリップ102に係合する。
【0040】
より具体的には、展開エレメント110の遠位端144におけるノット146は、隣接する歯部122の間に係合され、顎状部114のうちの第1顎状部の周りに巻きつけられ、それにより、ノット146のすぐ近位の展開エレメント110の一部は、クリップ102とキャップ108の外側表面142との間に圧着される。遠位部148は、第1顎状部114の周りに巻きつけられ、それにより、展開エレメント110の残りの長さ部分は、クリップ102から、キャップのチャネル116の遠位開口を通って、チャネル116および内視鏡104の作業チャネルを近位に通って、遠位に延在する。したがって、展開エレメント110が内視鏡104に対して近位方向に引き込まれ、それに張力を加えることにより、クリップ102はキャップ108に対して遠位方向に移動される。
【0041】
クリップ102が挿入形態において、キャップ108上に取り付けられるとき、展開エレメント110は、選択された第1の距離を介して内視鏡104に対して近位に引き込まれ得、それにより、クリップ102の溝132が突起120に当接し、クリップ102が点検形態となる。点検形態から、展開エレメント110は、第2の距離を介して内視鏡104に対してさらに近位に引き込まれてもよく、所定の閾値を超える力を加えることにより、結果として、クリップ102が展開形態に向かって突起120を越えて遠位に移動される。クリップ102がキャップ108から展開形態に向かって遠位に移動されて離脱するとき、展開エレメント110の遠位部分148が解けて、クリップ102の係合を解除し、それによってクリップ102を体内で標的組織上に解放する。したがって、展開エレメント110は、所定の閾値を超える力に対する耐性を備えることができなくてはならないことが、当業者によって理解されるであろう。
【0042】
上述したように、クリップ102が標的組織に対して所望の位置にないと判断された場合、クリップ102はキャップ108に対して近位に引き込まれることで、再位置決めエレメント112を介してクリップ102を点検形態から挿入形態に向かって移動させてもよい。展開エレメント110と同様に、再位置決めエレメント112は、クリップ102に解放可能に連結された遠位端150から作動アセンブリ124に連結された近位端まで延在する、糸、ワイヤ、ストランド、フィラメント、または他の類似の可撓性長手方向エレメントとして形成されてもよい。
【0043】
例示的な一実施形態によれば、再位置決めエレメント112は、顎状部114のうちの第2顎状部に係合し得、それにより、再位置決めエレメント112は展開エレメント110に実質的に対向する内視鏡104の一部に沿って延在する。展開エレメント110と同様に、再位置決めエレメント112の遠位端150は、例えばノット152として構成された拡大端を含む。一実施形態において、ノット152は、第2顎状部114の隣接する歯部122の間でクリップ102に係合し得る。ノット152のすぐ近位の再位置決めエレメント112の一部は、クリップ102とキャップ108の外側表面142との間で圧着され、それにより、再位置決めエレメント112の残りの長さ部分は、キャップ108の長手方向スロット158および内視鏡104の長手方向スロット154を通過して、内視鏡104のチャネル105を通って延びる。したがって、再位置決めエレメント112が内視鏡104に対して近位に移動されるとき、クリップ102は、点検形態から挿入形態に向かってキャップ108に対して近位に移動され得る。
【0044】
内視鏡104およびキャップ108に沿った長手方向スロット154と158の長さおよび位置は、それぞれ、クリップ102がキャップ108を越えて近位に移動されることができないように選択されることが、当業者に理解されよう。クリップ102が(展開エレメント110を介して)展開形態に向かってキャップ108から遠位に移動されて離脱するとき、再位置決めエレメント112は、クリップ102とキャップ108の外側表面142との間から解放され、ノット152はクリップ102の係合を解除して、クリップを体内の標的組織上に解放する。
【0045】
作動アセンブリ124は、展開エレメント110および再位置決めエレメント112を作動させるために使用され得る。上述のように、作動アセンブリ124は内視鏡104の近位端でハンドル部材134に連結され、展開エレメント110および再位置決めエレメント112の近位端に連結され得る。作動アセンブリ124は、例えば、スナップインターフェースを含む、いくつかの連結エレメント125のうちのいずれかを介して、ハンドル部材134に連結され得る。
【0046】
一実施形態では、作動アセンブリ124は2つの作動エレメント、例えば、展開エレメント110を制御するための第1ノブ162および再位置決めエレメント112を制御するための第2ノブ164と、を含む。第1ノブ162および第2ノブ164は、例えば、サムホイールとして構成されてもよく、それにより、システム100のユーザがハンドル部材134を介して内視鏡104を保持しているときに、そのユーザは展開エレメント110および再位置決めエレメント112の移動を容易に制御し得る。当業者によって理解されるように、展開エレメント110の近位端は内視鏡104のチャネル105から近位に延在することで、第1ノブ162に連結される第1回転ホイール166の周りに巻かれてもよく、それにより、第1ノブ162の回転は対応して第1回転ホイール166を回転させ、よって、展開エレメント110を所望のように移動させる。例えば、第1ノブ162の回転は展開エレメントを内視鏡104およびキャップ108に対して近位に移動させ、展開エレメント110に張力を加えることで、クリップ102をキャップ108に対して挿入形態から点検形態に向かって、または点検形態から展開形態に向かって移動させる。
【0047】
同様に、第2ノブ164は第2回転ホイール168に連結され、再位置決めエレメント112の近位端は第2回転ホイール168の周りに巻き付けられてもよく、それにより、第2ノブ164の回転は位置決めエレメント112の移動を制御し、よって、クリップ102の移動を制御する。例えば、第2ノブ164の回転は、再位置決めエレメント112を内視鏡104およびキャップ108に対して近位に移動させ、それにより、クリップ102は点検形態から挿入形態に向かってキャップ108に対して近位に、対応して移動される。
【0048】
図6~
図10に示されるように、クリッピングシステム100を利用する組織閉鎖のための例示的な方法によれば、クリップ102は内視鏡104を介して、例えば胃腸管などの身体管腔を通って、身体管腔内の標的領域に挿入され得る。上述のように、挿入形態において、
図6に示すように、クリップ102はキャップ108の近位部分138上に取り付けられ、これは内視鏡104の遠位端106上に取り付けられ、それにより、顎状部114は開放形態に向かって互いに離間する。クリップ102は内視鏡104を介して標的領域に誘導され、標的組織上に位置決めされる。吸引力は内視鏡104の作業チャネルを介して加えられてもよく、それにより、標的組織がキャップ108のチャネル116の中に引き込まれ得る。
【0049】
図7に示されるように、クリップ102は、次いで、展開エレメント110を介してキャップ108に対して遠位にクリップ102を移動させることによって、点検形態に向かって移動させられてもよい。特に、展開エレメント110は、クリップ102の溝132がキャップ108の突起120に係合するまで、内視鏡104に対して近位に移動されてもよく、このことは、クリップ102が点検形態にあることを示す触知できるフィードバックをユーザに提供する。点検形態において、クリップ102はキャップ108の遠位部分140を越えて延在し、歯部122はその遠位端118を越えて遠位に延在し得、それにより、標的組織に対するクリップ102の位置が内視鏡104の視野内に存在する。したがって、点検形態において、ユーザはクリップ102が標的組織に対して所望の把持位置にあるかどうかを判断し得る。
【0050】
クリップ102が標的組織に対して所望の位置にあると判断される場合、展開エレメント110は内視鏡104に対してさらに近位に移動されてもよく、それにより、展開エレメント110に及ぼされる力が所定の閾値レベルを超え、これはクリップ102が、展開形態に向かってキャップ108の突起120上を遠位に移動されることを可能にする(
図10参照)。クリップ102は、クリップがキャップ108から遠位に移動されて離脱されるまで、かつ、クリップ102がその付勢された閉鎖形態に戻ることを可能にされるまで、キャップ108に対して遠位に移動され、よって、それらの間に標的組織を把持する。上述のように、クリップ102が展開形態に向かって移動されるとき、展開エレメント110および再位置決めエレメント112の各々は、クリップ102の係合を解除し、クリップ102を体内で解放し、標的組織上にクリッピングされる。
【0051】
しかしながら、点検形態の間、クリップ102が標的組織に対して所望の位置にないと判断される場合、クリップ102は、
図8に示されるように、点検形態からキャップ108に沿い挿入形態に向かって近位に移動されてもよい。上述のように、再位置決めエレメント112は、内視鏡104に対して近位に引き込まれ、それによって、クリップ102がキャップ108の近位部分138を越えて延在するまで、クリップ102をキャップ108に対して近位に移動させ得る。次いで、所望に応じてクリップ102は標的組織上に再位置決めされてもよく、
図9に示されるように、クリップ102は再び点検形態に向かって移動されてもよい。クリップ102が所望のように標的組織上にクリッピングされたことをユーザが視覚的に確認することができるまで、必要に応じてこの手順は繰り返され得る。いったんユーザが標的組織が所望のようにクリッピングされたことを確認すると、上述され
図10に示されるように、クリップ102は点検形態から展開形態に移動されることで、内視鏡104からクリップ102を解放し得る。
【0052】
図11~
図21に示すように、別の例示的な実施形態による組織クリッピングシステム200は、組織クリッピングシステム100と実質的に同様であり得る。組織クリッピングシステム200は、キャップ208を介して内視鏡204の遠位端206上に取り付け可能なクリップ202を含み、それにより、クリップ202は、クリップ202に解放可能に連結された展開エレメント210および再位置決めエレメント212のうちの1つを介して挿入形態、点検形態、および展開形態の間で内視鏡204に対して移動可能である。システム100と同様に、挿入形態において、クリップ202は開放位置でキャップ208上に取り付けられる。この開放位置において、クリップ202の顎状部214は互いに離間してそれらの間に組織を受容する。この挿入形態において、クリップ202は体内の標的部位に挿入され得る。点検形態において、クリップ202は内視鏡204に対して遠位に移動されることで、内視鏡204の視野を向上させる。それにより、標的組織に対するクリップ202の位置はシステム200の操作者(例えば、外科医または他のユーザ)にとって、視認可能となる。
【0053】
しかしながら、クリップ202をキャップ208に対して移動させるのではなく、クリップ202が取り付けられたキャップ208を内視鏡204に対して遠位に移動させることで、クリップ202を挿入形態から点検形態に向かって移動させることができる。クリップ202は、クリップ202を開放位置に維持する間、クリップ202の一部がキャップ208の遠位端218を越えて遠位に延在するように、キャップ208上に取り付けられる。それにより、キャップ208が内視鏡204に対して点検形態に向かって遠位に移動されるとき、クリップ202の一部が内視鏡204の遠位端206の遠位に延在し、よって、遠位端206を越えて遠位に延在するクリップ202の一部は内視鏡204の視野内に存在する。
【0054】
一実施例において、可視領域の近位端とキャップ108内に吸引された組織との間に約10mmの隙間が存在し得、それにより、組織がキャップ108内に吸引されたときでさえ、吸引された組織に対するクリップ202の位置はユーザにとって視認可能なままとなる。クリップ202が標的組織に対して所望の位置にあると操作者が判断した場合、クリップ202は点検形態から展開形態に向かって移動され得る。しかしながら、操作者が、クリップ202が標的組織に対して所望の位置にないと判断した場合、クリップ202は点検形態から挿入形態に戻るように移動され得、それにより、クリップ202が標的組織に対して再位置決めされ得る。
【0055】
内視鏡204に対するキャップ208およびクリップ202の挿入形態と点検形態との間の移動を容易にするために、システム200は付勢エレメント220をさらに含む。付勢エレメント220は、キャップ208と内視鏡204の最遠位端207との間で近位端274から遠位端272まで延在し、キャップ208およびその上に取り付けられたクリップ202を挿入形態に向かって付勢する。再位置決めエレメント212は、その遠位端250がキャップ208に連結され、クリップ202が標的組織に対して所望の構成にあると操作者が判断するまで、必要に応じて、キャップ208およびクリップ202を挿入形態および点検形態との間で移動させるために使用され得る。いったんクリップ202が標的組織に対して所望の位置にあると操作者が判断すると、遠位端244が解放可能にクリップ202に連結されている展開エレメント210を使用して、クリップ202を展開形態に向かってキャップ208から遠位に移動させて離脱させ得る。展開形態において、クリップ202は付勢された閉鎖形態に向かって戻り、その顎状部214の間に標的組織を把持する。クリップ202を挿入形態、点検形態、展開形態との間で移動させるための展開エレメント210および/または再位置決めエレメント212の操作は、内視鏡204の近位端にあるアクチュエータアセンブリ224を介して制御され得る。
【0056】
内視鏡204は内視鏡104と実質的に同様であり得る。内視鏡204はハンドル部材234を含む近位端から、キャップ208が取り付けられる遠位端206まで長手方向に延在し得、それを通って延在するチャネル205を含む。この実施形態において、内視鏡204は付勢エレメント220の遠位端272に係合するために、かつ、付勢エレメント220の遠位端272が止め具270を越えて遠位に延在するのを止めるために、最遠位端207においてキャップ208の外側表面242から延在する止め具270、肩部、または他の突起をさらに含む。
【0057】
キャップ208はまた、キャップ108と実質的に同様であり得、近位端236から遠位端218まで長手方向に延在し、その内部にチャネル216を含む。チャネル216は、キャップ208がその上に移動可能に取り付けられ得るように、内視鏡204の大きさに対応する。例示的な一実施形態において、内視鏡204に対するキャップ208の移動を容易にするために、キャップ208は、キャップ208の対応する形状の凹部278内に受容される複数のローラボール276を含むことができ、それにより、ローラボール276は凹部278内で回転可能であり、キャップ208の外側表面242に沿って移動可能である。以下でさらに詳細に説明されるように、キャップ208はまた、その壁260を通って延在する開口258を含み、開口258はその内部に再位置決めエレメント212を受容するように構成される。
【0058】
付勢エレメント220は、キャップ208の遠位端218と内視鏡204の止め具270との間に延在することで、キャップ208を挿入形態に向かって付勢し得る。1つの例示的な実施形態によれば、付勢エレメント220は、キャップ208の遠位端218と内視鏡204の最遠位端207における止め具270との間で内視鏡204の遠位端206の周りに延在するばねとして構成され得る。挿入形態において、クリップ102と実質的に同様であるクリップ202はキャップ208上に取り付けられ、クリップ202の顎状部214はキャップ208の対向する部分上に延在する。キャップ208の外側表面242は、顎状部214を開放状態に保持し、それにより、顎状部214は互いに離間し、その間に組織を受容し得る。クリップ202はキャップ208上に取り付けられてもよく、例えば、歯部222がキャップ208の遠位端218を越えて遠位に延在する。しかしながら、挿入形態において、キャップ208の遠位端218は、選択された距離を介して内視鏡204の最遠位端207から離間され、それにより、歯部222は内視鏡204の最遠位端207を越えて遠位に延在しない。
【0059】
クリップ202を点検形態に向かって移動させるために、キャップ208は内視鏡204に対して遠位に移動され、これにより、歯部222が内視鏡204の視野内に存在するように、歯部222は内視鏡204の最遠位端207を越えて遠位に延在するようになるまで、付勢エレメント220を圧縮する。したがって、点検形態において、操作者またはユーザは、クリップ202が標的組織に対して所望の位置にあるかどうかを判断し得る。クリップ202が所望の位置にある場合、クリップ202はクリップ202をキャップ208から遠位に押し離脱させることによって、展開形態に向かって移動されてもよい。しかしながら、クリップ202が標的組織に対して所望の位置にないと判断される場合、付勢エレメント220上の圧縮力は解放され、それにより、付勢エレメント220はその付勢形態に戻る。これにより、キャップ208は内視鏡204に沿って挿入形態に向かって近位に押され、クリップ202は必要に応じて再配置され得る。以下でさらに詳細に説明されるように、挿入形態および点検形態との間のクリップ202の移動は、再位置決めエレメント212を介して制御され、点検形態から展開形態に向かうクリップ202の移動は、展開エレメント210を介して制御される。
【0060】
展開エレメント210は展開エレメント110と実質的に同様であり得、例えば、クリップ202に解放可能に連結される遠位端244からアクチュエータアセンブリ224に連結された近位端まで延在する、糸、ワイヤ、ストランド、フィラメント、または他の同様の可撓性長手方向エレメントを含み得る。展開エレメント210は展開エレメント110と実質的に同じ方法でクリップ202に解放可能に連結され得る。
【0061】
例示的な実施形態において、展開エレメント210の遠位部分248は、顎状部214のうちの第1顎状部の一部の周りに巻きつけられ得、それにより、展開エレメント210の一部がクリップ202とキャップ208の外側表面242との間に圧着され、一方、例えば、遠位端244におけるノット246は、顎状部214のうちの第1顎状部の隣接する歯部222の間に係合され得る。展開エレメント210の残りの長さ部分は、クリップ202から遠位に延在し、チャネル205の遠位開口内に受容され、そこを通って近位に延在する。したがって、展開エレメント210を内視鏡204に対して近位に引き抜くことで、クリップ202はキャップ208に対して遠位に移動され、それにより、クリップ202は展開形態に向かって移動され得る。上述のように、クリップ202がキャップ208から展開形態に向かって遠位方向に押されて離脱するとき、展開エレメント210の遠位部分248がクリップ202から巻き戻され、それにより、ノット246はクリップ202との係合を解除され、クリップ202は体内で標的組織上に解放される。
【0062】
再位置決めエレメント212は再位置決めエレメント112と実質的に同様であり得、例えば、糸、ストランド、ワイヤフィラメント、または他の同様の可撓性長手方向エレメントを含む。しかしながら、再位置決めエレメント212の遠位端250は、クリップ202に解放可能に連結されるのではなく、キャップ208の一部に解放不可能に固着され得る。1つの例示的な実施形態によれば、遠位端250は、例えばノット252などの拡大端を含み、結果として、再位置決めエレメント212はキャップ208の壁260を通って延びる開口258を通過するとき、ノット252は遠位端250がそこを通過するのを防止する。したがって、再位置決めエレメント212のノット252は、キャップ208の外側表面242に沿ってキャップ208に係合し、それにより、再位置決めエレメント212の残りの長さ部分は開口258を通って、キャップ208の内側表面217と内視鏡204の外側表面280との間で遠位に、付勢エレメント220と外側表面280との間で遠位に延在する。その結果、再位置決めエレメント212は、チャネル205の遠位開口内に受容され、そこを通って近位に延在する。したがって、再位置決めエレメント212が内視鏡204に対して近位に移動されることで、キャップ208は挿入形態から点検形態に向かって内視鏡204に対して遠位に移動され得る。この点検形態では、付勢エレメント220は再位置決めエレメント212に沿って維持される張力を介して圧縮形態に維持される。しかしながら、点検形態中に、クリップ202が標的組織に対して所望の位置にないと判断された場合、再位置決めエレメント212に沿った張力は、付勢エレメント220がその付勢形態に戻ることを可能にするように解放され得、それによって、点検形態から挿入形態に向かって内視鏡204に対して近位にキャップ208を移動させる。
【0063】
展開エレメント210および再位置決めエレメント212の各々の近位端は、アクチュエータアセンブリ224に連結され得、これは、1つの例示的実施形態において、
図14および
図15に示されるように、内視鏡204のハンドル部材234に連結され得る。例示的な実施形態によれば、アクチュエータアセンブリ224は内視鏡204に対する再位置決めエレメント212の移動を制御するように構成されたレバー264と、内視鏡204に対する展開エレメント210の移動を制御するための押しボタン262とを含み得る。例えば、再位置決めエレメント212の近位端は、レバー264が押されたときに、再位置決めエレメント212が内視鏡204に対して近位に移動されるように、レバー264に連結される。それによって、キャップ208は挿入形態から点検形態に向かって内視鏡に対して遠位に移動される。再位置決めエレメント212に沿って張力を維持し、付勢エレメント220を点検形態に向かって圧縮されたままにするために、レバー264は押されたままであるべきである。一実施形態において、レバー264はロック機構を含み得、それにより、レバー264は圧縮形態に向かってロックされ得る。
【0064】
この点検形態中に、クリップ202が標的組織に対して所望の位置にあると操作者が判断した場合、その操作者は、例えば自分の親指を使用して押しボタン262を押すことができる。押しボタン262は展開エレメント210の近位端に連結されており、それにより、押したときに、展開エレメント210が内視鏡204に対して近位方向に引き込まれて、クリップ202がキャップ208から遠位方向に移動されて離脱するまで、クリップ202をキャップ208に対して遠位方向に移動させる。しかしながら、点検形態中に、クリップ202が標的組織に対して所望の位置にないと操作者が判断した場合、その操作者はレバー264を解放し得、それによって、それに沿った張力を解放することで、付勢エレメント220がその付勢形態に戻ることを可能にし得る。付勢エレメント220がその付勢形態に向かって戻るとき、付勢エレメント220はキャップ208を内視鏡204に沿って点検形態から挿入形態に向かって近位に押し、それにより、クリップ202が必要に応じて再位置決めされ得る。
【0065】
図16~
図21に示されるように、クリッピングシステム200を使用して組織をクリッピングするための例示的な方法は、システム100を使用して組織をクリッピングするための方法と実質的に同様であり得る。システム100と同様に、挿入形態においてキャップ208を介して内視鏡204の遠位端206上に取り付けられたクリップ202は、(例えば、胃腸管等の)身体管腔を通って体内の標的部位に挿入され得る。上述のように、キャップ208は付勢エレメント220を介して挿入形態に向かって付勢される。
図16に示されるように、いったんクリップ202が標的組織上に位置決めされると、吸引力は内視鏡204の作業チャネルを通して加えられ得、クリップ202の顎状部214の間で、その中の組織を引き込む。次いで、クリップ202は、
図17に示されるように、内視鏡204に対して近位に再位置決めエレメント212を移動させることによって、挿入形態から点検形態に向かって移動され得る。それにより、キャップ208がそれに沿って遠位に移動させられ、よって、付勢エレメント220を圧縮する。点検形態において、歯部222は内視鏡204の最遠位端207を越えて遠位に延在し得、それにより、標的組織に対する歯部222の位置は内視鏡204を介して視認可能である。
【0066】
クリップ202が点検形態にあるとき、操作者はクリップ202が標的組織に対して所望の位置にあるかどうかを判断し得る。クリップ202が所望の位置にない場合、再位置決めエレメント212に沿った張力が解放され得、それにより、
図18に示されるように、付勢エレメント220がその付勢形態に戻ることによって、キャップ208を点検形態から挿入形態に戻すように移動させ得る。挿入形態において、
図19に示されるように、クリップ202は標的組織に対して再位置決めされ得、再び点検形態に向かって移動され得る。この手順はクリップ202が標的組織に対して所望の位置にあると判断されるまで、必要に応じて繰り返され得る。
【0067】
いったんクリップ202が所望の位置にあると判断されると、
図21に示されるように、キャップ208から遠位に押されて離脱するまで、
図20に示されるように、内視鏡204に対して近位に展開エレメント210を移動させることによって、クリップ202は展開形態に向かって移動され得る。上述のように、クリップ202がキャップ208から遠位方向に押されて離脱するとき、クリップ202は付勢された閉鎖形態に戻ることが可能となり、それにより、標的組織がクリップ202の顎状部214の間に把持される。加えて、展開エレメント210はもはやクリップ202とキャップ208との間で圧着されていないので、展開エレメント210の遠位部分248はクリップ202から解かれるようになり、それにより、ノット246がそこから係合を解除され、クリップ202が体内で解放され標的組織上にクリッピングされる。再位置決めエレメント212はキャップ208に連結されクリップ202には決して連結されないので、再位置決めエレメント212はキャップ208から解放または係合を解除する必要がないことが、当業者に理解されるであろう。
【0068】
本開示の範囲から逸脱することなく、本開示において様々な修正が行われ得ることが当業者には明らかであろう。さらに、当業者は、様々な実施形態のいずれかの特徴が、実施形態の説明および/または機能と矛盾しない任意の方法で組み合わされ得ることを理解するであろう。