(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】核燃料貯蔵用自動調整式地震抑制システム
(51)【国際特許分類】
G21F 5/008 20060101AFI20241022BHJP
G21F 5/08 20060101ALI20241022BHJP
G21C 19/32 20060101ALI20241022BHJP
G21F 9/36 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
G21F5/008
G21F5/08
G21C19/32 040
G21F9/36 501H
(21)【出願番号】P 2023564164
(86)(22)【出願日】2022-04-19
(86)【国際出願番号】 US2022025362
(87)【国際公開番号】W WO2022225939
(87)【国際公開日】2022-10-27
【審査請求日】2023-12-18
(32)【優先日】2021-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520481747
【氏名又は名称】ホルテック インターナショナル
(74)【代理人】
【識別番号】110003579
【氏名又は名称】弁理士法人山崎国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100118647
【氏名又は名称】赤松 利昭
(74)【代理人】
【識別番号】100123892
【氏名又は名称】内藤 忠雄
(74)【代理人】
【識別番号】100169993
【氏名又は名称】今井 千裕
(74)【代理人】
【識別番号】100173978
【氏名又は名称】朴 志恩
(72)【発明者】
【氏名】シン、クリシュナ、ピー
【審査官】坂上 大貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-064654(JP,A)
【文献】特開昭61-155995(JP,A)
【文献】米国特許第3515638(US,A)
【文献】特開2020-122711(JP,A)
【文献】米国特許第3194746(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0027600(US,A1)
【文献】特開2011-247584(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 19/00-19/50
23/00
G21F 1/00-9/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
核燃料貯蔵用の自動調整式地震抑制システムであって、
核燃料を収納するように構成され、垂直中心線を画定する自立型の第1の燃料貯蔵構成要素;
前記第1の燃料貯蔵構成要素を受け入れるように構成された、固定型の第2の燃料貯蔵構成要素;
前記第1および第2の燃料貯蔵構成要素の間に形成された本体間ギャップ;
前記本体間ギャップ内に配置され、固定くさび部材と可動緩みくさび部材とを備える少なくとも1つの地震抑制アセンブリ;
前記第2の燃料貯蔵構成要素に固定的に結合された前記固定くさび部材であって、前記本体間ギャップ内に配置されている、固定くさび部材;
前記固定くさび部材であって、傾斜耐荷重面を確定する、固定くさび部材;
前記本体間ギャップ内に配置された前記可動緩みくさび部材であって、前記固定くさび部材の前記傾斜耐荷重面と摺動自在に係合する傾斜耐荷重面を画定する、可動緩みくさび;を備え
地震発生時または前記第1の燃料貯蔵構成要素の熱膨張時に、前記第1の燃料貯蔵構成要素が前記第2の燃料貯蔵構成要素に向かって移動し、これにより前記本体間ギャップが縮小し、前記緩みくさび部材が前記固定くさび部材に対して垂直方向に変位する、システム。
【請求項2】
前記緩みくさび部材が、前記緩みくさび部材が垂直に変位するとき、前記傾斜耐荷重面が前記固定くさび部材の前記傾斜耐荷重面に沿って摺動し、かつ、前記傾斜耐荷重面との接触を維持するように構成され、かつ、作動可能である、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記固定くさび部材および前記緩みくさび部材の両方の前記傾斜耐荷重面は、前記固定くさび部材と前記緩みくさび部材との間に平坦対平坦の摺動接触面を画定する平坦である、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記緩みおよび固定くさび部材は、それぞれ横断面が三角形状である、請求項1~3のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項5】
前記緩みくさび部材の前記傾斜耐荷重面は、前記第1の燃料貯蔵構成要素の垂直中心線に対して鋭角に配置されている、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記固定くさび部材が、前記固定くさび部材の底部に位置する水平面を備え、前記緩みくさび部材が、前記緩みくさび部材の頂部に位置して前記固定くさび部材全体の上方で垂直方向に間隔を隔てた水平面を備える、請求項
4に記載のシステム。
【請求項7】
前記緩みくさび部材は、前記傾斜耐荷重面に対向し、前記水平面と垂直に交差する垂直面をさらに備える、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記緩みくさび部材は、前記緩みくさび部材の垂直面と前記緩みくさび部材の傾斜耐荷重面との交差部の間に鋭角の傾斜角度を画定し、前記傾斜角度は、地震発生時に前記緩みくさび部材が前記固定くさび部材と係合したまま前記固定くさび部材から外れないように臨界角度よりも約5%大きくなるように選択される、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記本体間ギャップが、第1の燃料貯蔵構成要素の垂直側壁と第2の燃料貯蔵構成要素の垂直壁との間に画定される、請求項
1に記載のシステム。
【請求項10】
前記緩みくさび部材の垂直面は、前記緩みくさび部材が垂直に変位するとき、前記第1の燃料貯蔵構成要素の垂直側壁に摺動自在に係合する、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記第1の燃料貯蔵構成要素は、使用済み核燃料を収容する円筒形の燃料キャニスタであり、前記第2の燃料貯蔵構成要素は、前記燃料キャニスタを保持する間隙を画定する円筒形の外側キャスクであり、前記本体間ギャップは、前記燃料キャニスタと前記キャスクとの間に円周方向に延在する環状体である、請求項9または10に記載のシステム。
【請求項12】
前記環状体中に配置された、円周方向に間隔をおいて配置された複数の前記地震抑制アセンブリをさらに備える、請求項11に記載のシステム
【請求項13】
前記緩みくさび部材および前記固定くさび部材が、相補的な円弧状に湾曲した形状を備えた水平方向に細長い金属棒から形成されている、請求項1
1に記載のシステム。
【請求項14】
前記第1の燃料貯蔵構成要素は、複数の使用済み核燃料アセンブリを収容する燃料ラックであり、前記第2の燃料貯蔵構成要素の垂直壁は、前記燃料ラックが浸漬される水を含む使用済み燃料プールの壁であり、前記本体間ギャップは、前記燃料ラックと前記燃料プールの壁との間に画定される直線状の横方向空間である、請求項9または10に記載のシステム。
【請求項15】
前記緩みくさび部材および前記固定くさび部材は、直線状の真っすぐな形状を有する水平方向に細長い金属棒から形成されている、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記緩みくさび部材は定位置に支持され、前記固定くさび部材の前記傾斜耐荷重面のみによって前記固定くさび部材との係合が完全に外れることが防止される、請求項1に記載のシステム。
【請求項17】
前記緩みくさび部材および前記固定くさび部材は、高さまたは幅よりも大きい長さを有する水平方向に細長い金属棒から形成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項18】
請求項1に記載のシステムを使用する方法であって、 以下を含む方法:
前記自立型の第1の燃料貯蔵構成要素が半径方向または横方向に熱膨張する工程;
前記第1の燃料貯蔵構成要素の熱膨張により前記本体間ギャップが縮小する工程;および
前記緩みくさび部材が、前記固定くさび部材との接触を維持しながら、前記固定くさび部材に沿って垂直上方に摺動する工程。
【請求項19】
核燃料貯蔵用の自動調整式地震抑制システムであって、
核燃料を収納するように構成され、垂直中心線を画定する自立型の第1の燃料貯蔵構成要素;
核燃料を収容するように構成され、垂直中心線を画定する自立型の第2の燃料貯蔵構成要素;
第1および第2の燃料貯蔵構成要素の間に形成された本体間ギャップ;
前記本体間ギャップ内に配置された少なくとも1つの地震抑制アセンブリであって、前記地震抑制アセンブリは、一対の第1および第2の固定くさび部材と、前記第1および第2の固定くさび部材の間に配置された可動二重テーパ状くさび部材とを備える、地震抑制アセンブリ;
前記本体間ギャップ内で第1の燃料貯蔵構成要素に固定的に結合された第1の固定くさび部材;
第2の固定くさび部材であって、本体間ギャップ内で第2の燃料貯蔵構成要素に固定的に結合され、第1の固定くさび部材から横方向に間隔をあけて配置され、第1の固定くさび部材と第2の固定くさび部材の間に間隙を画定する、第2の固定くさび部材; および
前記間隙内に配置され、第1および第2の固定くさび部材によって摺動自在に支持された二重テーパ状くさび部材;を備え、
地震の発生または第1または第2の燃料貯蔵構成要素の熱膨張の際に、第1の燃料貯蔵構成要素間の前記本体間ギャップが収縮し、二重テーパ状くさび部材が第1および第2の固定くさび部材に対して垂直方向に変位する、システム。
【請求項20】
前記二重テーパ状くさび部材は、一方の側に第1の傾斜耐荷重面を画定し、反対側に第2の傾斜耐荷重面を画定し、前記第1の傾斜耐荷重面は、前記第1の固定くさび部材の対応する傾斜耐荷重面と摺動自在に係合し、前記第2の傾斜耐荷重面は、前記第2の固定くさび部材の対応する傾斜耐荷重面と摺動自在に係合する、請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
前記二重テーパ状くさび部材は、前記緩みくさび部材が垂直に変位するときに、前記二重テーパ状くさび部材の傾斜耐荷重面が、前記固定くさび部材の傾斜耐荷重面に沿って摺動し、前記固定くさび部材の傾斜耐荷重面との接触を維持するように構成され、作動可能である、請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
二重テーパ状くさび部材の第1および第2の傾斜耐荷重面と、第1および第2の固定くさび部材の傾斜耐荷重面とが平坦であり、第1および第2の固定くさび部材と二重テーパ状くさび部材との間の平坦対平坦の摺動接触面を画定する、請求
項21に記載のシステム。
【請求項23】
前記二重テーパ状くさび部材は、横断面において台形形状の本体を有する、請求
項22に記載のシステム。
【請求項24】
前記二重テーパ状くさび部材の第1および第2の傾斜耐荷重面のそれぞれが、垂直に対して鋭角の傾斜角度で配置される、請求
項23に記載のシステム。
【請求項25】
前記傾斜角度のそれぞれが、臨界角度よりも約5%大きくなるように選択され、これにより、地震発生時に、二重テーパ状くさび部材が、第1および第2の固定くさび部材と係合したままとなり、第1および第2の固定くさび部材から外れることがない、請求項24に記載のシステム。
【請求項26】
第1および第2の固定くさび部材はそれぞれ、底部に位置する水平面、頂部に位置する反対側の水平面、および前記底部に位置する水平面と前期頂部に位置する反対側の水平面との間に延在する傾斜耐荷重面を備え、横断面において台形状の本体を有する、請求項2
0に記載のシステム。
【請求項27】
前記第1および第2の自立型燃料貯蔵構成要素は、使用済み核燃料プール内に水没状態で配置されるように構成された各燃料ラックであり、各燃料ラックは、複数の使用済み核燃料アセンブリを保持するように構成されている、請求項2
0に記載のシステム。
【請求項28】
前記本体間ギャップが、前記燃料ラックの平坦な垂直外壁間に画定される、請求項27に記載のシステム。
【請求項29】
前記二重テーパ状くさび部材ならびに第1および第2の固定くさび部材が、高さまたは幅よりも大きい長さを有する水平方向に細長い金属棒から形成されている、請求
項28に記載のシステム。
【請求項30】
前記二重テーパ状くさび部材は定位置に支持され、前記固定くさび部材の前記傾斜耐荷重面のみによって第1および第2の固定くさび部材との係合が完全に外れることが防止される、請求
項29に記載のシステム。
【請求項31】
前記二重テーパ状くさび部材は定位置に支持され、第1および第2の固定くさび部材の前記傾斜耐荷重面のみによって第1および第2の固定くさび部材の係合が完全に外れることが防止される、請求
項29に記載のシステム。
【請求項32】
請求項19に記載のシステムを使用する方法であって、以下を含む方法:
自立型第1の燃料貯蔵構成要素および自立型第2の燃料貯蔵構成要素の少なくとも1つが、横方向に熱膨張する工程;
前記本体間ギャップが、第1の燃料貯蔵構成要素および第2の燃料貯蔵構成要素の少なくとも1つの熱膨張によって縮小する工程;および
前記二重テーパ状くさび部材が、第1および第2の固定くさび部材の両方との接触を維持しながら、第1および第2の固定くさび部材に沿って垂直上方に摺動する工程。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年4月19日に出願された米国特許仮出願第63/176,496号の優先権を主張し、その内容の全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
技術分野
本発明は、核燃料貯蔵用の自動調整式地震抑制システムに関する。
【背景技術】
【0002】
本開示は、原子力発電施設に関し、より詳細には、地震発生時に自立型核燃料貯蔵構成要素を支持するための摺動自在な地震抑制アセンブリを備える地震抑制システム及び関連方法に関する。
【0003】
核燃料を装填され、外側の放射線遮蔽コンクリートと鋼製オーバーパックまたはキャスク内に配置された鋼製多目的キャニスタ(MPC)、および燃料プールに沈められた鋼製使用済み核燃料ラック、などの大量の使用済み核燃料貯蔵構成要素は、原子力発電所で日常的に使用されている「自立型構成要素」(FSC)の部類に属する。「自立型」の用語は、これらの燃料貯蔵構成要素が別の構造物に所定位置で固定的にまたは堅固に結合されていないことを意味する。これらのFSCは、燃料貯蔵容器の完全性を損なうことなく、地震発生によって引き起こされる振動慣性荷重に耐えるように設計されなければならない。
【0004】
地震荷重の影響を軽減するために、使用済み核燃料(SNF)を貯蔵するそのような自立型構成要素(FSC)は、そこに加えられる振動力及び場合によっては隣接する構造物との激しい衝突によって引き起こされるガタガタ(rattling)運動から物理的に抑制されなければならない。MPCの場合、地震発生時の厳しい慣性荷重およびそれによる衝撃から保護されなければならないのは、MPCを収容する貯蔵キャスクの内壁である。燃料プール内に水中貯蔵されている自立型燃料ラックの場合、FSCによる衝撃から保護されなければならないのは、周辺に位置するラックの場合は隣接するプール壁、または隣接する別のラックである。燃料キャニスタの巨大な外側貯蔵キャスクや鉄筋コンクリートの燃料プール壁の場合のように固定されているものであれ、燃料プール内の隣接する燃料ラックの場合のように可動性のものであれ、FSCと隣接する構造物との間の小さい隙間(以下、「本体間ギャップ」と呼ぶ。)が、FSCの設置を容易にし、運転中の熱膨張を許容し、地震発生時の振動力によって引き起こされる動きに対応するために必要である。MPCの場合、これらの核燃料貯蔵構成要素のSNF貯蔵物から放出される崩壊熱によってFSCが膨張するため、運転中の直径方向の熱膨張だけでも+-3/8インチ(9.5ミリメートル)にもなる可能性がある。
【0005】
本体間ギャップ内に配置可能であり、地震発生時の過度の移動を抑制し、通常運転時の核燃料貯蔵構成要素の熱膨張に対応することができる地震抑制具の改善。
【発明の概要】
【0006】
本開示は、核燃料貯蔵用に構成された自動調整式地震抑制システムを提供する。1つの実施形態では、本システムは、自立型の第1の燃料貯蔵構成要素と隣接する第2の燃料貯蔵構成要素との間の本体間ギャップに、2ピースの摺動自在に移動可能な地震抑制アセンブリを提供し、第2の燃料貯蔵構成要素は本質的に自立型であっても固定型であってもよい(たとえば、外部貯蔵キャスクまたは燃料プールの垂直壁)。別の実施形態では、3ピースの摺動自在に移動可能な地震抑制アセンブリが、2つの自立型燃料貯蔵構成要素の間での使用のために提供される。いずれの実施形態も、有利であることには、地震発生時の燃料貯蔵構成要素間の過度の移動および衝突に対する保護とともに、1つ以上の燃料貯蔵構成要素の熱膨張または熱収縮を補償することを提供する。
【0007】
1つの様相では、核燃料貯蔵用の自動調整式地震抑制システムは、核燃料を収容するように構成され、垂直の中心線を画定する自立型の第1の燃料貯蔵構成要素;第1の燃料貯蔵構成要素を受け入れるように構成された固定型の第2の燃料貯蔵構成要素;第1および第2の燃料貯蔵構成要素間に形成された本体間ギャップ;本体間ギャップ内に配置され、固定くさび部材と可動緩みくさび部材とを備える少なくとも1つの地震抑制アセンブリ;第2の燃料貯蔵構成要素に固定的に結合された固定くさび部材であって、本体間ギャップ内に配置されている、固定くさび部材;傾斜した耐荷重面を規定する固定型くさび部材;本体間ギャップに配置された可動緩みくさび部材であって、固定くさび部材の傾斜した耐荷重面と摺動自在に係合する傾斜した耐荷重面を規定する可動緩みくさび部材;を備え、地震発生時または第1の燃料貯蔵構成要素の熱膨張時に、第1の燃料貯蔵構成要素が第2の燃料貯蔵構成要素に向かって移動し、これにより本体間ギャップが収縮して、緩みくさび部材が固定くさび部材に対して垂直方向に変位する。緩みくさび部材は、それが垂直に変位したときに、その傾斜耐荷重面が、固定くさび部材の傾斜耐荷重面に沿って摺動し、かつ、その傾斜耐荷重面との接触を維持するように構成され、かつ、作動可能である。固定くさび部材と緩みくさび部材の傾斜耐荷重面は両方とも平坦であり、その間に平坦対平坦の摺動接触面を画定する。様々な実施形態では、緩みくさび部材および固定くさび部材は、相補的な円弧状に湾曲した形状または真っすぐな形状の棒を含む水平方向に細長い金属棒から形成される。
【0008】
上記のシステムを使用する方法は、自立型の第1の燃料貯蔵構成要素が半径方向または横方向に熱膨張するステップ;第1の燃料貯蔵構成要素の熱膨張によって本体間ギャップが収縮するステップ;および緩みくさび部材が固定くさび部材との接触を維持しながら固定くさび部材に沿って垂直上方に摺動するステップ;を含む。
【0009】
別の様相では、核燃料貯蔵用の自動調整式地震抑制システムは、核燃料を収容するように構成され、垂直の中心線を画定する自立型の第1の燃料貯蔵構成要素;核燃料を収容するように構成され、垂直の中心線を画定する自立型の第2の燃料貯蔵構成要素;第1および第2の燃料貯蔵構成要素間に形成された本体間ギャップ;本体間ギャップに配置された少なくとも1つの地震抑制アセンブリであって、当該地震抑制アセンブリは、一対の第1および第2の固定くさび部材と、当該第1および第2の固定くさび部材間に配置された可動二重テーパ状くさび部材とを備える、地震抑制アセンブリ;本体間ギャップ内で第1の燃料貯蔵構成要素に固定的に結合された第1の固定くさび部材;本体間ギャップ内で第2の燃料貯蔵構成要素に固定的に結合され、第1の固定くさび部材から横方向に間隔をあけて配置されて、それらの間に間隙を画定する第2の固定くさび部材;当該間隙に配置され、第1および第2の固定くさび部材によって摺動自在に支持された二重テーパ状くさび部材;を備え、地震発生時または第1または第2の燃料貯蔵構成要素の熱膨張時に、第1および第2の燃料貯蔵構成要素間の本体間ギャップが収縮し、二重テーパ状くさび部材が第1および第2の固定くさび部材に対して垂直方向に変位する。
【0010】
二重テーパ状くさび部材は、一方の側に第1の傾斜耐荷重面を、反対側に第2の耐荷重面を画定し、第1の傾斜耐荷重面は、第1の固定くさび部材の対応する傾斜耐荷重面と摺動自在に係合し、第2の傾斜耐荷重面は、第2の固定くさび部材の対応する傾斜耐荷重面と摺動自在に係合する。二重テーパ状くさび部材は、その傾斜耐荷重面が、緩みくさび部材が垂直方向に変位するときに、固定くさび部材の傾斜耐荷重面に沿って摺動し、接触状態を維持するように構成され、作動可能である。二重テーパ状くさび部材の第1および第2の傾斜耐荷重面と、第1および第2の固定くさび部材の傾斜耐荷重面とは、平坦であり、第1および第2の固定くさび部材と二重テーパ状くさび部材との間の平坦対平坦の摺動接触面を画定する。1つの実施形態では、二重テーパ状くさび部材は、横断面において台形状の本体を有し、真っすぐな金属製で水平方向に細長い棒に形成されている。第1および第2の固定くさび部材は、同様の構造および形状とされてもよい。
【0011】
二重テーパ状くさび部材と第1および第2の固定くさび部材とを備える上記のシステムを使用する方法は、自立型の第1の燃料貯蔵構成要素および自立型の第2の燃料貯蔵構成要素の少なくとも1つが横方向に熱膨張するステップ;第1の燃料貯蔵部材または第2の燃料貯蔵部材の少なくとも1つの熱膨張によって本体間ギャップが縮小するステップ;および二重テーパ状くさび部材が、第1および第2の固定くさび部材との接触を維持しながら、上記固定くさび部材の両方に沿って垂直上方に摺動するステップ;を含む。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本開示の発明は、詳細な説明および添付された図面から、より完全に理解されるだろう。図面の説明では、類似の要素は同じような番号が付けられる。
【0013】
【
図1】使用済み核燃料キャニスタ、外側放射線遮蔽貯蔵キャスクおよびその間に配置された本開示による地震抑制システムを備える核燃料貯蔵システムの第1の実施形態の垂直断面図である。
【0014】
【
図2A】
図2Aは、第1の動作位置にある地震抑制システムの地震抑制アセンブリを示す、
図1から取った拡大詳細図である。
【0015】
【
図2B】
図2Bは、
図2Aの拡大詳細図であるが、第2の動作位置に摺動自在に移動した地震抑制アセンブリを示す図である。
【0016】
【0017】
【0018】
【
図5】
図5は、
図1の燃料キャニスタの熱膨張によってくさび部材に作用する反力を示す、地震抑制アセンブリの可動緩みくさび部材の部分側面図である。
【0019】
【
図6】
図6は、後記される
図7から取った拡大詳細図であり、2つの自立型燃料貯蔵構成要素の間で使用するための3ピース地震抑制アセンブリを示す図である。
【0020】
【
図7】
図7は、使用済み核燃料プール内の水中核燃料ラックと、本開示による少なくとも2つの異なるタイプを備える複数の地震抑制アセンブリとを備える核燃料貯蔵システムの第2の実施形態の垂直断面図である。
【0021】
【
図8】
図8は、2ピース地震抑制アセンブリの1つの
図7から取った拡大詳細図である。
【0022】
【
図9】
図9は、
図1の燃料キャニスタまたは
図7の燃料ラックに貯蔵可能な核燃料を保持する直方体形状の核燃料アセンブリの斜視図である。
【0023】
すべての図面は概略図であり、必ずしも縮尺通りではない。特定の図において番号付けされ、他の図において番号付けされていないように見える特徴または項目は、本明細書において特に断りのない限り、同じ特徴または項目である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の特徴および利点は、本開示の態様が具体化され得る非限定的な実施例を参照することにより、本明細書において例示および説明される。実施例のこの説明は、添付の図面または写真に関連して読まれることが意図されており、これらは、本明細書全体の一部とみなされるべきである。従って、本開示は、本明細書に開示された特徴の単独または他の組み合わせで存在し得る特徴のいくつかの可能な非限定的組み合わせを例示するそのような実施例に明示的に限定されるべきではない。
【0025】
本明細書に開示された実施例の説明において、方向または向きに関する言及は、単に説明の便宜のために意図されたものであり、本発明の範囲を限定することは一切意図されていない。「下の(lower)」、「上の(upper)」、「水平の(horizontal)」、「垂直の(vertical)」、「上の(above)」、「下の(below)」、「上へ(up)」、「下へ(down)」、「一番上の(top)」、「一番下の(bottom)」およびそれらの派生語(たとえば、「水平に(horizontally)」、「下方に(downwardly)」、「上方に(upwardly)」等)などの相対的な用語は、そのときに説明された、または議論中の図面に示されたような向きを指すものと解釈されるべきである。これらの相対的な用語は、説明の便宜のためだけのものであり、装置が特定の向きで構築または操作されることを要求するものではない。「付属され(attached)」、「貼付され(affixed)」、「連結され(connected)」、「結合され(coupled)」、「相互接続され(interconnected)」および類似用語などの用語は、明示的に別段の記載がない限り、構造体が、介在する構造体を介して直接的または間接的に互いに固定されまたは取り付けられる関係とともに可動のまたは固定の両方の連結または結びつきを指す。
【0026】
全体を通して使用されるように、本明細書で開示されるあらゆる範囲は、範囲内にある各値およびすべての値を記載するための略記として使用されている。範囲内の任意の値が範囲の終端として選択されることができる。
【0027】
図1は、本開示による核燃料貯蔵用の自動調整式地震抑制システム102の第1の実施形態を含む第1の核燃料貯蔵システム100の垂直断面図である。
図2~4は、その追加の図面および詳細である。
【0028】
図1~4を参照すると、燃料貯蔵システム100は、円筒形の核使用済み燃料キャニスタ110(すなわち、1つの燃料貯蔵構成要素)と、円筒形の外側貯蔵オーバーパックまたはキャスク130(別の燃料貯蔵構成要素)を備える。
【0029】
キャニスタ110は垂直方向に細長い燃料貯蔵構成要素または容器であり、垂直中心線Vcを画定し、内部空洞113を画定する外殻111を備える円筒形本体110aを有し、内部空洞113は
図1に概略的に表される使用済み核燃料(SNF)を収容する。外殻111は垂直かつ円周方向に延在する円筒状の側壁111aを画定し、側壁111aはキャニスタの頂部から底部まで延在している。SNFは、
図7に示される燃料アセンブリ124の形態であってもよい。燃料キャニスタは、米国、ニュージャージー州カムデンのHoltec International社から入手可能な多目的キャニスタ(MPC)など、任意の市販の適当なキャニスタであってもよい。このようなキャニスタは、さらに詳しく説明するまでもなく、当該技術分野で周知である。燃料キャニスタ110は、好ましくはステンレス鋼製であり、キャニスタの垂直外殻111に溶接された円形の蓋115および底板114を含む密閉容器である。キャニスタ110は、その中に貯蔵された核燃料の一次格納容器を提供するが、キャニスタが原子力発電プラントの使用済み燃料プール121から取り出されるときは、核燃料は放射線遮蔽されておらず、原子力発電プラントにおいてキャニスタが水中で核燃料を装填されている場合にその湿潤環境で放射線遮蔽が提供される。
【0030】
貯蔵キャスク130が、燃料プール121(
図7も参照)の外にあるときに、燃料キャニスタ110の代わりに放射線遮蔽を提供する。キャスク130は、鋼製外殻132、鋼製内殻131およびこれらの間の環状空間137を備える本体130aを有する重放射線遮蔽燃料貯蔵構成要素または容器である。環状空間137は、1つの実施形態ではコンクリート充填物を含む放射線遮蔽材料133で充填されている。必要に応じて、コンクリートに加えて、あるいはコンクリートの代わりに、ホウ素含有材料を含む他の放射線遮蔽材が使用されるべきである。
【0031】
キャスク130は、
図1に示されたように内部空洞135を画定し、その中に燃料キャニスタ110を挿入可能に受け入れる。キャスク130はまた、内殻および外殻131、132の底部に溶接された固定鋼製底板136と、放射線遮蔽のための鋼製およびコンクリート充填構造である取り外し可能な上蓋134を備える。蓋134は、燃料キャニスタ110をキャスク内に装填するために取り外されることができ、その後、元に戻されてキャスクを閉鎖する。
【0032】
キャスク130の内殻131は、キャニスタ110の円筒状側壁111aに面する本体間ギャップGの一方の側で、キャスク空洞135内に円筒状垂直壁131aを画定する。
【0033】
キャスク130のような貯蔵キャスクは、典型的な高さが約20フィート(6.1メートル)、燃料キャニスタを含まない重量が約135~160トン、内殻131によって画定される内径が約6フィート(1.8メートル)、外殻132によって画定される外径が約11フィート(3.4メートル)、キャニスタ110を収容する内部空洞135の高さが約16フィート(4.9メートル)である巨大で重い構造物であることは注目に値する。このようなキャスクは、米国、ニュージャージー州、カムデンのHoltec International社のHI-STORM 100Sキャスクなど、メーカーから市販されている。このような構造物は、重いキャスクを吊り上げて運搬するのに十分な吊り上げ能力を有する、当該技術分野で周知の大型のトラック駆動のキャスククローラーで移動されなければならない。したがって、どの点から見ても、巨大な核燃料貯蔵キャスクは、キャスクが容易に移動できず、大きな熱膨張を伴わないため、自立型燃料キャニスタ110に対して「固定型」燃料貯蔵構成要素とみなされる。
【0034】
燃料キャニスタ110は、キャスクの内部空洞135の直径よりも小さい外径を有し、それによって、キャニスタ全体の周囲を円周方向に延在する環状体138の形態をした本体間ギャップGが形成される。
【0035】
核燃料キャニスタ110は、外側貯蔵キャスク130内に固定的に取り付けられていないため、地震によって発生する起振力にさらされたときに、したがって自由に動くので、「自立型」の第1の燃料貯蔵構成要素とみなされてもよい。逆に、キャスク130は、次に、その巨大で重い鋼鉄およびコンクリートの構造により、また、本明細書で既に説明されたように、実質的な熱膨張により、固定型の第2の燃料貯蔵構成要素とみなされてもよい。
【0036】
引き続いて
図1~4を参照すると、地震抑制システム102は、1つの実施形態では、核燃料キャニスタ110と外側貯蔵キャスク130との間に形成される接触面(すなわち、本体間ギャップG)に位置する少なくとも1つの2ピース地震抑制アセンブリ200を含む。好ましくは、この設置については、円周方向に間隔を空けた複数の地震抑制アセンブリ200が、本体間ギャップG(たとえば、
図3参照)においてキャニスタの全周に設置されて、キャニスタを360度全方位で支持し、地震発生時の過度の移動を防止すると同時に、通常運転時のキャニスタの熱膨張または熱収縮を許容する。抑制アセンブリは、いくつかの実施形態では、等間隔に配置されてもよいが、そのような配置に限定されるものではない。
【0037】
図示の便宜上、4つの地震抑制アセンブリ200が示されているが、他の実施形態では、必要に応じて、より少ないまたはより多い地震抑制アセンブリが提供されてもよい。好ましくは、少なくとも4つのアセンブリ200が提供されて、地震発生時にキャニスタの各四分円の側面を半径方向/横方向に支持し安定化させる。実際には、地震抑制アセンブリの数は、キャニスタ110の外周の環状体138(本体間ギャップG)の不均一がそれらの取り付けと使用の成功を妨げないような数だけ、環状体隙間に沿って配列される。1つの好ましいが非限定的な実施形態では、キャニスタ110の円周の約15度にわたる8つの円周方向に等間隔に離間した地震抑制アセンブリ200が、必要な機能を果たすのに十分であるだろう。
【0038】
地震抑制アセンブリ200は、本体間ギャップG内の適切な場所に垂直に配置されることができる。1つの実施形態では、各地震抑制アセンブリは、好ましくは、本体間ギャップの上半分に配置され、より好ましくは、キャニスタ110の上端近くの本体間ギャップの頂端に近接して配置される。地震発生時に、キャニスタに加えられる振動力は、キャスク本体130aに向かってキャニスタの頂端を半径方向外側に傾ける傾向があり、地震抑制アセンブリによって安定化されなければ、キャニスタと本体間ギャップとの上部領域で接触することになる。したがって、燃料キャニスタ110の上部は、本明細書でさらに説明されるように、地震抑制アセンブリ200によって自動的に調整可能かつ移動可能な態様で半径方向に支持されていると考えることができる。
【0039】
各地震抑制アセンブリ200は、固定くさび部材201と、固定くさび部材と摺動自在に係合した嵌合相補的に構成された可動緩みくさび部材202とを備える。固定くさび部材201は、キャスク空洞135内で外側貯蔵キャスク130の本体130aに固定的かつ堅固に結合されている。より具体的には、固定くさび部材は1つの実施形態では、キャスク135内の内殻131を画定する円筒状垂直壁131aに、本体間ギャップG内で固定的に結合されてもよい。固定くさび部材201は、たとえば、限定されることなく溶接、ボルト締め、または他の技術などの当該技術分野で公知の任意の適当な手段によってキャスク内殻131に固定的に結合されてもよい。
【0040】
緩みくさび部材202および固定くさび部材201は、高さまたは幅よりも大きい(設置位置において水平方向に測定された)長さを有する水平に細長い金属棒から形成されている。長さは垂直方向の高さの5倍超であってもよい。緩みくさび部材202および固定くさび部材201のそれぞれは、上端と下端がわずかに切り落とされているものの、横断面ではくさび形状の実質的に三角形の本体を有する(たとえば、
図2参照)。「実質的に」の用語は、くさび部材の2つの対向する鋭角に尖った先端が、これらの尖った先端領域をなくすことによってくさびの物理的な取り扱いを容易にするために、図示のようにわずかに平らに切り取られていることを意味する。しかし、これらのくさびの全体的な構成は、図示のように実質的に三角形のままである。
【0041】
固定くさび部材201は、垂直面207を画定する垂直面、水平面206を画定する水平面、および垂直面と水平面との間に延在する傾斜したまたは斜めになった耐荷重面205を備える。幾何学的に言えば、耐荷重面205は、三角形のくさび部材201の斜辺である。垂直面207は、キャスク本体130a(すなわち、燃料貯蔵部材)の垂直壁131aに固定的に溶接されたまたは他の方法で結合されたくさび部材201の部分である。
図2A-Bに最もよく示されるように、垂直面207と、固定くさび部材201の傾斜耐荷重面205との間に鋭角の傾斜角度A1が定義される。
【0042】
可動緩みくさび部材202は、固定くさび部材201と摺動自在に係合し、それによって支持される。緩みくさび部材202は、垂直面208を画定する垂直面、水平面203を画定する水平面、および垂直面と水平面との間に延在する傾斜したまたは斜めになった耐荷重面204を備える。幾何学的に言えば、耐荷重面204は三角形のくさび部材201の斜辺である。垂直面208は、くさび部材201が固定くさび部材201に沿って上方/下方に移動する際に、燃料キャニスタ110(すなわち別の燃料貯蔵構成要素)の垂直側壁111aに摺動自在に係合するくさび部材202の部分である。
図2A-Bに最もよく示されているように、垂直面208と緩みくさび部材202の傾斜耐荷重面204との間に鋭角の傾斜角度Cが定義される。
【0043】
図2に示された各地震抑制アセンブリ200は、通常の運転状態において、燃料キャニスタ110と外側貯蔵キャスク130の内殻131との間の本体間ギャップGの一部を埋める役割を果たす。具体的には、緩みくさび部材202は、それぞれの固定くさび部材201とキャニスタ110の垂直側壁111aとの間の半径方向の隙間を埋める。従って、各地震抑制アセンブリの緩みくさび部材202は、図示のように、緩みくさび部材が相補的に構成された固定くさび部材に「キー」をかけるように、固定くさび部材201に対して裏返しにされる。緩みくさび部材202では、水平面203が上部にあるのに対し、固定くさび部材201の水平面206は、くさび部材間のキー付きの平坦接触面の形成を可能にするために下部にある。くさび部材201、202はそれぞれ、直角三角形に分類される三角形の本体を有する。
【0044】
固定くさび部材201および可動緩みくさび部材202の両方は、適当な強度の金属で作られ、好ましい実施形態では、耐食性のためにステンレス鋼で形成されてもよい。この構成は、係合する傾斜耐荷重面204、205に錆が形成されないことを保証し、錆が形成されると、キャニスタ110の通常の熱膨張/収縮時および地震発生時に固定くさび部材201に沿って上下に摺動する緩みくさび部材の能力に悪影響を及ぼすくさび間接触面での表面粗さおよび摩擦を増大させることになる。
【0045】
第1の実施形態の
図3および
図4に最もよく示されているように、地震抑制アセンブリ200の固定くさび部材201および可動緩みくさび部材202はそれぞれ、上面図において、本体間ギャップG(および、ギャップを画定する環状体138を形成するキャニスタ110およびキャスク130)の曲率半径に一致する円弧状に湾曲した本体を有する。したがって、くさび部材201、202は、燃料キャニスタ110および外側貯蔵キャスク130の内殻131の曲率半径に相補的に構成された円弧セグメントを形成するように曲げられた金属棒からなる。
【0046】
地震発生時およびキャニスタの熱膨張時に、緩みくさび部材202が垂直上方に変位したときにまたは垂直下方に摺動して戻ったときに、緩みくさび部材は、その傾斜耐荷重面204が固定くさび部材の傾斜耐荷重面205に沿って摺動し、かつその傾斜耐荷重面205との接触を維持するように構成され、かつ動作可能である。固定くさび部材201および緩みくさび部材202の両方の傾斜耐荷重面は平坦であり、その間に平坦対平坦の摺動接触面を画定する。
【0047】
緩みくさび部材202は、固定くさび部材201上の所定位置に支持され、固定くさび部材の傾斜耐荷重面のみによって、固定くさび部材から完全に外れるのを防止される。非限定的な例示された実施形態では、可動緩みくさび部材202を安定させまたは支持を提供する可能性のある他の構造または構成要素への、いかなる種類の他の支持物または接続物も存在しない。したがって、可動緩みくさび部材202は「自由に」可動であると見なされてもよい。
【0048】
地震抑制システム102の動作理論では、
図5を追加的に参照すると、核燃料キャニスタ110(たとえば、第1の燃料貯蔵構成要素、すなわち「本体1」)がキャスク130(たとえば、 第2の燃料貯蔵構成要素、すなわち「本体2」)に比べて半径方向に熱収縮したとすると、可動緩みくさび部材202は、固定ウェッジ部材201の傾斜耐荷重面205に沿って下方に単に摺動して、地震抑制アセンブリ200における本体間ギャップGの閉鎖を維持することになる。他方において、キャニスタ110(本体1)が、キャスク本体130a(本体2)よりも、その中に収納された燃料アセンブリ124から放出される崩壊熱による熱影響によって半径方向に熱膨張したとすると、緩みくさび部材202は、緩みくさび部材の傾斜角度Cが、熱膨張に起因して緩みくさび部材にかけられる外向きに作用する半径方向の力Fが固定くさび部材と緩みくさび部材202との間の傾斜接触面における摩擦抵抗力fRに打ち勝つことができるように十分に大きければ、固定くさび部材201の傾斜耐荷重面205に沿って上方に摺動することになる。
【0049】
傾斜角度Cが大きくなるにつれて、緩みくさび部材202の傾斜耐荷重面204が水平方向に向かってより平坦になり、その逆もまた同様であることに注目すべきである。したがって、傾斜角度を大きくすると、耐荷重面204がより平坦となり、この耐荷重面204は、緩いくさび部材202が固定くさび部材201に沿って上方に摺動することに適応しそれを可能にする。
【0050】
逆に、緩みくさび部材202は、緩みくさび部材の傾斜角度Cが小さすぎると、固定くさび部材201の傾斜耐荷重面205に沿って上方に摺動しないことがある。この場合には、キャニスタ110の半径方向の膨張によって生じる外向きに作用する熱膨張に関連した半径方向の力Fは、固定くさび部材と緩みくさび部材202との間の傾斜接触面における摩擦抵抗力fRに打ち勝つには十分ではない。むしろ、圧縮応力が接触面で発生し、緩みくさび部材202をそこに拘束して摺動を妨げ、それによって、キャニスタ110の半径方向の熱膨張を抑制して、金属容器の熱応力亀裂をもたらすことがある。したがって、傾斜角度Cが小さいほど、緩みくさび部材202の耐荷重面204はより急勾配となり、摩擦接触面力fRに打ち勝ち、固定くさび部材201の傾斜した耐荷重面205に沿って緩みくさび部材を上方に押し上げまたは変位させるためには、より大きい熱膨張半径方向力Fが必要となる。
【0051】
したがって、緩みくさび部材202の適当な傾斜角度Cは、キャニスタ110(第1の燃料貯蔵構成要素、すなわち、本体1)の半径方向の熱膨張および半径方向の力F、傾斜耐荷重面204、205の表面粗さに起因する緩みくさび部材と固定くさび部材201との間の傾斜接触面における摩擦力、および緩みくさび部材の重量を考慮して決定されることができる。
【0052】
したがって、キャニスタ110の熱膨張の観点からは、適当な傾斜角度Cは、可動緩みくさび部材202が固定くさび部材201に沿って熱膨張に関連する半径方向の力Fによって摺動して上方に変位し、それによって圧縮応力が緩和されるのに十分なような大きい値となる。
【0053】
図2および
図5を参照すると、傾斜角度Cの限界値(しきい値または臨界角度CAと呼ばれる。)は、可動緩みくさび部材202を上方に押しまたは摺動自在に変位させる傾向のある、地震抑制アセンブリくさびの傾斜耐荷重面204、205間の接触面に沿って作用する角度反力Rが、緩みくさび部材の摺動移動に抵抗する摩擦力fRに等しいときの値である。実質的にすべての適用において、臨界角度CAは、可動緩みくさび部材202が固定くさび部材201に沿って上方に上昇して、半径方向の力Fによって生じる半径方向の熱応力が緩和されるのに十分なような大きい値となることが望ましい。
【0054】
図5を具体的に参照すると、「F」は、可動緩みくさび部材202に加えられる熱膨張半径方向力であり、「R」は、傾斜接触面表面に作用する半径方向力Fの垂直方向に作用する角度成分である傾斜耐荷重面204、205接触面に作用する角度反力であり、fRは、図示された力の方向を示す矢印によって注記されるように、角度反力Rと反対方向に作用する傾斜耐荷重面接触面に作用する摩擦力である。
【0055】
拘束されていない可動緩みくさび部材202に関する垂直力平衡方程式は、次のように容易に記される:
【0056】
RsinC=fRcosCまたはrf=tanC。
【0057】
したがって、可動緩みくさび部材202を固定くさび部材201から押しのけて排出する傾向のある垂直力「V」は、次のようになる:V=RsinC-fRcosC。
【0058】
上記から分かるように、傾斜角度Cの値が大きいほど、緩みくさび部材201に作用する排出力は大きくなる。固定くさび部材201から緩みくさび部材が押しのけられまたは排出されることは、熱膨張の際にキャニスタ110を何らかの方法で拘束しようとする地震抑制アセンブリ200の能力を完全に否定することになり、これは避けなければならない状況である。
【0059】
そして、緩みくさび部材202に関する水平力平衡方程式が得られる:
【0060】
F=RcosC+fRsinCまたはR=F/(cosC+fsinC)
【0061】
しかしながら、地震抑制アセンブリ200の設計は、上記の熱成長/熱膨張の考慮のみに基くことはできない。しかし、地震時に発生する地震荷重の場合は、熱膨張とは幾分異なる。地震によってキャニスタ110(本実施例では第1の燃料貯蔵構成要素、すなわち本体1)に誘起され、それに課される大きい振動慣性力は、可動緩みくさび部材202に排出力または押しのけ力を及ぼす傾向があり、その大きさは傾斜角度Cによって支配され、角度Cが大きいほど、排出力は大きくなる。キャニスタ110にかかる地震に関連した慣性力は通常非常に大きいため、排出力もそれに対応して大きくなる。排出力が十分に大きい場合、可動緩みくさび部材202はその座から突然排出され、横方向または半径方向の地震抑制システムが作動不可能になる可能性がある。この好ましくない状態を防ぐには、傾斜角度Cの正しい値を選択することが必要である。
【0062】
理想的には、緩みくさび部材202の傾斜角度Cは、臨界角度CAよりもわずかに大きくあるべきである。しかし、臨界角度CAは、緩みくさび部材202と固定くさび部材201との間の傾斜接触面における摩擦係数に依存し、それはガウス分布の様式で変動し得る。信頼性の高い設計を開発するためには、同じ材料で作られた金属クーポンを使用して、互いに接する傾斜耐荷重面204、205間の摩擦係数の測定を統計的に有意な数だけ実施する必要がある。適切な傾斜角度Cを規定するためには、平均値および3つの標準偏差値が使用されるべきである。しきい値または臨界角度CAよりもわずかに大きい、たとえば、いくつかの非限定的な実施形態では、約5~15%大きい、緩みくさび部材202の傾斜角度Cの実際の設計値を使用することによって、地震条件下で、緩みくさび部材202の突然の排出または押しのけの危険を冒すことなく、固定くさび部材201に沿って上方または下方への可動緩みくさび部材の摺動が保証されるとともに、通常の動作条件の(すなわち、地震活動がない)間、キャニスタ110の熱膨張に必要な摺動運動に対応する。1つの実施形態では、傾斜角度Cは、燃料キャニスタ110の熱膨張のために固定くさび部材201に沿った緩みくさび部材202の摺動運動を提供しながら、緩みくさび部材202の排出を防止するために、臨界角度CAよりも約5%大きくてもよい。
【0063】
最適な傾斜角度Cが、くさび部材201、202に選択された金属製接触面材料と、係合する耐荷重面204、205のそれぞれの摩擦係数との関数であることは、上記から明らかである。様々な設計用途に対して、上記の式および考察に基いて最適な傾斜角度を決定することは、十分に当業者の領域内のことである。
【0064】
図2Aは、第1の動作位置にある地震抑制アセンブリ200を示す。可動緩みくさび部材202は、固定くさび部材201に対して第1の低い位置にある。核燃料キャニスタ110(第1の燃料貯蔵構成要素、すなわち本体1)が半径方向外側に熱膨張または増大すると、キャニスタとキャニスタを収容する外側貯蔵キャスク130の内殻131との間の本体間ギャップGは、閉じて半径方向の寸法が縮む。半径方向の増大は、いくつかの場合には+-3/8インチ(0.95cm)の大きさになることがある。閉じるギャップGによって緩みくさび部材202にかかる熱膨張に関連した半径方向の力Fは、キャスク130の内殻131に固定的に結合された固定くさび部材201に沿って緩みくさび部材を上方に変位させ移動させる。緩みくさび部材202は、固定くさび部材202の傾斜耐荷重面205に沿って自動的に上方に摺動し、この移動の間、その接触を維持する。
図2Bは、緩みくさび部材の新しい第2の上方位置を示す。緩みくさび部材202のこの摺動変位および移動は、係合するこれらのくさび部材間の圧縮応力の蓄積を解放または防止する。したがって、地震抑制アセンブリ200は、予め規定された半径方向の増大範囲内で、キャニスタ110のあらゆる程度の熱膨張も自動的に調整する。
【0065】
キャニスタ110内に貯蔵された燃料アセンブリ124によって放出される崩壊熱が時間の経過とともに減少するにつれて、キャニスタは半径方向の寸法が縮小する可能性があり、本体間ギャップが広がる。緩みくさび部材202は、緩みくさび部材に作用する重力とその重量により、固定くさび部材201の傾斜耐荷重面205に沿って自動的に下方に摺動して戻る。したがって、地震抑制アセンブリ200は、半径方向の動きの所定の範囲内でキャニスタ110のあらゆる程度の熱膨張または熱収縮を有利なことに自動的に調整する。キャニスタ110に貯蔵される使用済み核燃料の熱負荷に基いて、地震抑制システム102の使用中に予想されることができる半径方向運動の適切な最大範囲を容易に決定することは、十分に当業者の領域の範囲内である。
【0066】
図7および
図8は、本開示に従う核燃料貯蔵について本明細書で先に説明した自動調整式地震抑制システム102の第1の実施形態を使用する別のタイプの核燃料貯蔵システム100を示す。緩みおよび固定くさび部材201、202を備える地震抑制アセンブリ200は、使用済み核燃料アセンブリ124を保持する使用済み燃料プール121内の使用済み核燃料貯蔵ラックの地震抑制を提供するために、水中燃料貯蔵環境において適用される。
【0067】
使用済み核燃料(SNF)プール121は、本明細書では簡略に「燃料プール」とも呼ばれ、プール水Wで表面レベルまで満たされる。典型的な燃料プール121は、非限定的な例として、約40フィート(12.2m)の総深さを有してもよい。
【0068】
燃料プール121は、水平の平らな床スラブ121bから上方に立ち上がる複数の垂直壁121aを備え、これらのすべては、プール水を収容するための水密のボウルを形成するために、厚い鉄筋コンクリート構造で形成されてもよい。厚いコンクリート製トップパッド121cが燃料プールを取り囲み、燃料アセンブリを冷却し放射線遮蔽を提供するプール水Wに浸漬された燃料ラック122から燃料アセンブリ124を出し入れするためにプールにアクセスするのに使用される機器の重量を支えることができる。床スラブ121bは人工盛り土121dに埋め込まれてもよい。使用済み核燃料プールの上記の態様は、これ以上過度な説明を必要とすることなく、当該技術分野において周知である。
【0069】
引き続いて
図7および
図8を参照すると、燃料プール121内のプール水Wは、燃料プールの床スラブ121bに据え付けられた複数の燃料ラック122の、上方に開いたセル125に収納された複数の燃料アセンブリ124(たとえば、
図9参照)から放出される崩壊熱によって加熱される。燃料ラックは、底板122bと、燃料アセンブリを受け入れるオープンセル125を画定するチューブまたは相互接続されたスロット付きプレートのような複数の垂直に細長い壁構造122aと、を含む角柱構造を有する。垂直壁構造122aは、本明細書では、あるいは、簡潔に壁122aと呼ばれることもあるが、同じ構造であってよい。各燃料ラック122の最も外側に露出した垂直壁122aは、直方体に構成されたラック(すなわち長方形の立方体形状)の4つの側面または側壁を形成する。これらの外壁122aは垂直にまっすぐで平らであり、燃料ラックの隣接する垂直外壁と垂直に接している。
【0070】
底板122bおよび壁構造122aは、1つの実施形態では、耐食性のためにステンレス鋼で形成されてもよい。セル125は、使用済み核燃料棒124aを含む燃料アセンブリを収容するために、任意の適当な断面形状を有してもよい。1つの実施形態では、オープンセルは、燃料アセンブリ124をそこに挿入するための直方体断面形状を有してもよく、燃料アセンブリ124は米国で使用されている燃料アセンブリに典型的な、対応する直方体断面形状を有する(たとえば、
図9を参照)。別の実施形態では、セル125は、ロシアなど米国外で使用されている燃料アセンブリに対応する六角形の断面を有してもよい。
【0071】
各燃料ラック122は、燃料プール床スラブ121bに係合するように燃料ラックの水平底板122bから下方に延在する複数の台122eを備えてもよい。これは、燃料ラックを燃料プール121の床スラブ121bから持ち上げ、プール水Wが燃料ラックの下を循環して、そこに貯蔵された燃料アセンブリを冷却することができる。燃料ラックおよび燃料アセンブリの上記の態様は、当技術分野では周知であり、これ以上過度な説明は必要ない。
【0072】
地震抑制アセンブリ200のこの燃料プールへの適用では、本体間ギャップGは、燃料プール121の垂直壁121aに隣接するが、燃料プール121の垂直壁121aからわずかに離間した使用済燃料ラック122の外周の間に形成される。具体的には、ギャップGは、燃料ラック122の最も外側の垂直壁構造122aの外周と、ボルト締めまたは当該技術分野で使用される他の適当な剛性取付け技術によるなどして燃料プールのコンクリート垂直壁121aの内側面(
図8に最もよく示される。)に固定的に取り付けられたステンレス鋼ライナー126と、の間に形成される。燃料ラック122はそれぞれ、第1の燃料貯蔵構成要素(すなわち、本体1)を形成し、燃料プール垂直壁121aは、第2の燃料貯蔵構成要素(すなわち、本体2)を形成し、これらは、本明細書で先に説明した燃料キャニスタ110および貯蔵キャスク130アセンブリを参照するならば、それらにそれぞれ対応するものである。燃料プール壁121aが土壌または人工盛り土121dに埋め込まれた巨大で重いコンクリート構造物であるため静止したままであるのに対して、燃料ラック122は、ラックのセル内に貯蔵された核燃料アセンブリ124によって放出される崩壊熱により、横方向外側に熱的に成長/膨張する(例えば、
図7を参照)。各燃料ラック122は、燃料プールの平らな床スラブ121bに固定的に取り付けられていないため、「自立型」の第1の燃料貯蔵構成要素と見なされてもよい。燃料プール垂直壁121aは、その巨大で重い構造から、静止した第2の燃料貯蔵構成要素と見なされてもよい。
【0073】
引き続いて
図7および
図8を参照すると、使用済み核燃料プールおよび燃料ラック燃料貯蔵システムにおいて、固定くさび部材201は、溶接、ボルト締め、これらの組合せ、または当該技術分野で知られた他の適当な剛性締結方法によるなどして、金属プールライナー126に固定的かつ剛性的に結合される。垂直方向に可動の緩みくさび部材202は、固定くさび部材201と、燃料プール壁121aに面する各燃料ラック122の最も外側の垂直壁構造または壁122aと、の間の空間を橋渡しして、地震およびそのような事象中に生じる関連する振動力の発生に際して、燃料ラックの摺動的な地震抑制を提供する。これは、プールライナー126および/または燃料ラックに潜在的に損傷を与える可能性がある燃料ラックの燃料プール壁への直接衝突を防ぐ。同時に、地震抑制アセンブリ200は有利なことに、燃料ラック外周と燃料プール壁121aとの間の本体間ギャップGが広がったり狭まったりする燃料ラック122の横方向の熱膨張または熱収縮を許容する。緩みおよび固定くさび部材201、202は、
図2A-Bに示され、本明細書で既に説明されたのと同じ様式で機能する。
【0074】
各燃料ラック122は、1つ以上の2ピース地震抑制アセンブリ200を備え、この地震抑制アセンブリ200は、燃料プール壁121aと、それに隣接する燃料ラック122の外側垂直壁122aとの間の本体間ギャップGに配置された一対の緩みくさび部材202および固定くさび部材201からそれぞれ構成される。アセンブリ200は、
図7に示されたように、燃料ラックの垂直壁122aの上端に近接して配置される。円筒形燃料キャニスタ110およびキャスク130燃料貯蔵システムに使用される円弧状に湾曲した緩みくさび部材202および固定くさび部材201とは対照的に、燃料ラック122に適用される緩みくさび部材202および固定くさび部材201は、高さまたは幅よりも長い(設置位置で水平方向に測定された)長さを有する直線状の水平に細長い金属棒から形成される。真っすぐな棒は、直方体の燃料ラックの真っすぐな側面に適合している。
【0075】
地震抑制システム102の別の態様では、隣接する「自立型」燃料ラック122の各対の間の間隙または空間Sは、地震抑制アセンブリを備えてもよく、この地震抑制アセンブリはラックの熱膨張/収縮を可能にするように構成されるのみならず、有利なことには、ラックに地震保護も提供して、地震発生時に生じる振動力によって一方のラックの隣接するラックへの衝突が引き起こされるのを防止する。燃料ラックは「自立型」構造である(すなわち、燃料プールに固定的に締結されていない)ため、それぞれが熱膨張/収縮を受ける隣接する2つの燃料貯蔵構成要素を受け入れることができる適当な地震抑制が必要である。
図6および
図7は、隣接する燃料ラック間に設置される、この目的のためのそのような3ピース地震抑制アセンブリ300を示す。
【0076】
図6および
図7を参照すると、地震抑制アセンブリ300は、一対の静止くさび部材301と、それらを分離する静止くさび部材間の間隙Sに配置された、垂直方向に可動で二重テーパ状のくさび部材302とを備える。したがって、くさび部材302は、対向する一対の固定くさび部材301の間の間隙Sを自動調整式に橋渡しする。本体間ギャップGは、燃料貯蔵構成要素のこの実施形態では、隣接する燃料ラック122の各対の間で横方向に延在するギャップとして定義される。
【0077】
固定くさび部材301は、溶接、ボルト締め、それらの組み合わせ、または当該技術分野で知られた他の方法などの任意の適当な方法によって、各燃料ラック122の最も外側の垂直壁122aに固定的かつ堅固に結合される。各固定くさび部材301は、
図6に最も良く示されているように、一対の対向する上部および底部水平面306、一対の表面306間に延在する直線垂直面307、および垂直面307の反対側で一対の表面306の間に延在する傾斜耐荷重面305を備える。1つの実施形態では、各固定くさび部材301は、横断面が2つの隣接する直角を有する直角台形(直角の台形とも呼ばれる。)として構成された本体を備えてもよい。角度を付けたまたは傾斜した耐荷重面205が二重テーパ状のくさび部材302と摺動自在に係合するように画定されている限り、他の適当な幾何学的形状の固定くさび部材301が使用されてもよい。
【0078】
1つの実施形態では、二重テーパ状のくさび部材302は、台形の本体横断面を備えてもよい。非限定的な例示された実施形態では、くさび部材302は、幾何学的に、底角が同じ角度を有する等脚台形であってもよい。楔部材302は、
図6に最もよく示されるように、上部水平面309、反対側の底部水平面303、および2つの水平面間の一対の対向する傾斜耐荷重面308を備える。くさび部材302が図示のように取り付けられると、上部水平面309は底部水平面303よりも長くなる。傾斜耐荷重面308は、好ましいが非限定的な実施形態では等しい長さを有する。
【0079】
傾斜耐荷重面308は、固定くさび部材301のそれぞれの傾斜耐荷重面305と摺動自在に係合する。各傾斜耐荷重面308は、垂直方向または垂直面に対して鋭角の傾斜角度Cを画定する。最適な傾斜角度Cは、燃料ラックの熱膨張と最大限の耐震保護とのバランスをとるために、地震抑制アセンブリ200について上記された手法と同様に決定される。好ましい実施形態では、くさび部材301および302も同様にステンレス鋼で作られる。
【0080】
1つ以上の3ピース地震抑制アセンブリ300は、
図7に示されるように、好ましくは燃料ラックの頂部に近接して、隣接する燃料ラック122間の本体間ギャップG内に設置されてもよい。隣接する燃料ラック122に適用される二重テーパ状のくさび部材302と一対の固定楔部材301および固定楔部材201は、高さまたは幅よりも長い(設置位置で水平方向に測定された)長さを有する、直線的に真っ直ぐで水平に細長い金属棒から形成される。真っすぐな棒は、直方体の燃料ラックの真っすぐな側面に適合している。
【0081】
3ピース地震抑制アセンブリ300は、本明細書で上記された2ピース地震抑制アセンブリ200と同様に動作する。一般に、地震の発生または燃料プール121内の隣接する一対の燃料ラック122の少なくとも一方の熱膨張もしくは熱収縮は、本体間ギャップGを縮小させ、それによって、拘束されていない二重テーパ状のくさび部材302を摺動自在に変位させて二重傾斜面接触面に沿って、対向する対の固定くさび部材301の間で上方にまたは下方に移動させる。
【0082】
上記の説明および図面は本発明の実施例を表すものであるけれども、添付の特許請求の範囲の精神および範囲および均等物の範囲から逸脱することなく、様々な追加、修正、および置換を行うことができることが理解されるであろう。特に、本発明が、その精神または本質的な特徴から逸脱することなく、他の形態、構造、配置、比率、サイズ、また他の要素と一緒に、材料、および構成要素に具体化され得ることは、当業者には明らかであろう。さらに、本発明の精神から逸脱することなく、本明細書に記載されている適用可能な方法/プロセスの多くの変形が行われることができる。当業者であればさらに、本発明は、本発明の原理から逸脱することなく、本発明の実施において使用される構造、配置、比率、サイズ、材料、および構成要素などを、特に特定の環境および操作上の要件に適合させる多くの変更を加えて使用されることができることを理解するであろう。したがって、現在開示されている実施例は、あらゆる点で例示的なものであり制限的なものではないと考えられるべきであり、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義され、上記の説明または実施例に限定されるものではない。むしろ、添付の特許請求の範囲は、本発明の均等物の範囲から逸脱することなく、当業者によってなされ得る本発明の他の変形を含むように、広く解釈されるべきである。