(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/338 20060101AFI20241022BHJP
H01L 29/778 20060101ALI20241022BHJP
H01L 29/812 20060101ALI20241022BHJP
H01L 21/337 20060101ALI20241022BHJP
H01L 29/808 20060101ALI20241022BHJP
H01L 29/06 20060101ALI20241022BHJP
H01L 21/28 20060101ALI20241022BHJP
H01L 29/41 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
H01L29/80 H
H01L29/80 F
H01L29/80 P
H01L29/06 301F
H01L21/28 301B
H01L29/44 Y
(21)【出願番号】P 2024511492
(86)(22)【出願日】2023-02-24
(86)【国際出願番号】 JP2023006838
(87)【国際公開番号】W WO2023189082
(87)【国際公開日】2023-10-05
【審査請求日】2024-06-21
(32)【優先日】2022-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520133916
【氏名又は名称】ヌヴォトンテクノロジージャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】川島 克彦
(72)【発明者】
【氏名】高見 義則
(72)【発明者】
【氏名】元嶋 大
(72)【発明者】
【氏名】神田 裕介
【審査官】志津木 康
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-524242(JP,A)
【文献】特開2015-220430(JP,A)
【文献】特開2018-110138(JP,A)
【文献】特表2016-511544(JP,A)
【文献】特開2013-191759(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L29/80
H01L29/06
H01L21/28-21/445
H01L29/40-29/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の上方に設けられたIII族窒化物半導体からなるチャネル層と、
前記チャネル層の上方に設けられた、前記チャネル層よりバンドギャップの大きいIII族窒化物半導体からなるバリア層と、
前記バリア層の上方に、前記基板の平面視における第1方向において、互いに間隔を空けて設けられたソース電極およびドレイン電極と、
前記第1方向において、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間で、各々に対して間隔を空けて設けられたゲート電極と、
前記ゲート電極と前記ソース電極および前記ドレイン電極との間で、前記バリア層の上方に設けられた絶縁層と、を備え、
前記絶縁層は、最下層にシリコン窒化物からなる第1絶縁層と、前記第1絶縁層の上方にシリコン酸化物からなる第2絶縁層と、を含み、
前記ゲート電極は、
前記バリア層とショットキー接合した接合部と、
前記第1方向において、前記接合部よりも前記ソース電極側および前記ドレイン電極側の各々に張り出した張り出し部と、を含み、
前記絶縁層は、前記基板の主面に直交する第2方向における前記張り出し部と前記バリア層との間で、
前記接合部と前記ドレイン電極との間の前記絶縁層の前記接合部側端に設けられた第1サイドウォールと、
前記接合部と前記ソース電極との間の前記絶縁層の前記接合部側端に設けられた第2サイドウォールと、を含み、
前記張り出し部は、
前記平面視における前記第1サイドウォールの前記接合部側端である第1位置から、前記第1サイドウォールの前記ドレイン電極側端である第2位置までの区間の第1電界プレートと、
前記平面視における前記第2位置から、前記張り出し部の前記ドレイン電極側端である第3位置までの区間の第2電界プレートと、を含み、
前記第2電界プレートと前記バリア層との間には、積層された前記第1絶縁層と前記第2絶縁層とが設けられ、
前記第1方向および前記第2方向の各々に平行で、かつ、前記接合部を通る断面において、
前記第1サイドウォールの上面の前記第1位置における接線は、前記主面に対する第1仰角の傾きを有し、
前記第1電界プレートの下面最高位置は、前記第1位置から見て、前記主面に対する第2仰角の傾きを有し、
前記第2電界プレートの下面最低位置の前記ドレイン電極側端は、前記第1位置から見て、前記主面に対する第3仰角の傾きを有し、
前記第2仰角は、前記第3仰角より大きく、
前記第2電界プレートの下面は、前記ゲート電極から前記ドレイン電極への方向で、前記バリア層との間隔が単調増加する傾斜面を含
み、
前記断面において、前記第2電界プレートの下面最低位置の前記ドレイン電極側端から、前記第2電界プレートの下面最高位置の前記ドレイン電極側端を見たときの、前記主面に対する仰角を第5仰角とした場合、前記第5仰角は、前記第2仰角より小さく、
前記第2絶縁層は、前記平面視で、前記第2電界プレートの下面最低位置に重なっている、
半導体装置。
【請求項2】
基板と、
前記基板の上方に設けられたIII族窒化物半導体からなるチャネル層と、
前記チャネル層の上方に設けられた、前記チャネル層よりバンドギャップの大きいIII族窒化物半導体からなるバリア層と、
前記バリア層の上方に、前記基板の平面視における第1方向において、互いに間隔を空けて設けられたソース電極およびドレイン電極と、
前記第1方向において、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間で、各々に対して間隔を空けて設けられたゲート電極と、
前記ゲート電極と前記ソース電極および前記ドレイン電極との間で、前記バリア層の上方に設けられた絶縁層と、を備え、
前記絶縁層は、最下層にシリコン窒化物からなる第1絶縁層と、前記第1絶縁層の上方にシリコン酸化物からなる第2絶縁層と、を含み、
前記ゲート電極は、
前記バリア層とショットキー接合した接合部と、
前記第1方向において、前記接合部よりも前記ソース電極側および前記ドレイン電極側の各々に張り出した張り出し部と、を含み、
前記絶縁層は、前記基板の主面に直交する第2方向における前記張り出し部と前記バリア層との間で、
前記接合部と前記ドレイン電極との間の前記絶縁層の前記接合部側端に設けられた第1サイドウォールと、
前記接合部と前記ソース電極との間の前記絶縁層の前記接合部側端に設けられた第2サイドウォールと、を含み、
前記張り出し部は、
前記平面視における前記第1サイドウォールの前記接合部側端である第1位置から、前記第1サイドウォールの前記ドレイン電極側端である第2位置までの区間の第1電界プレートと、
前記平面視における前記第2位置から、前記張り出し部の前記ドレイン電極側端である第3位置までの区間の第2電界プレートと、を含み、
前記第2電界プレートと前記バリア層との間には、積層された前記第1絶縁層と前記第2絶縁層とが設けられ、
前記第1方向および前記第2方向の各々に平行で、かつ、前記接合部を通る断面において、
前記第1サイドウォールの上面の前記第1位置における接線は、前記主面に対する第1仰角の傾きを有し、
前記第1電界プレートの下面最高位置は、前記第1位置から見て、前記主面に対する第2仰角の傾きを有し、
前記第2電界プレートの下面最低位置の前記ドレイン電極側端は、前記第1位置から見て、前記主面に対する第3仰角の傾きを有し、
前記第1サイドウォールの上面最高位置は、前記第2サイドウォールの上面最高位置より下方に位置する、
半導体装置。
【請求項3】
前記第2電界プレートの下面は、前記ゲート電極から前記ドレイン電極への方向で、前記バリア層との間隔が単調増加する傾斜面を含む、
請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第2サイドウォールより前記ソース電極側の前記張り出し部は、前記第1サイドウォールの上面最高位置より下方に位置しない、
請求項1~3のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記断面において、前記第2電界プレートの下面最低位置の前記ドレイン電極側端から、前記第2電界プレートの下面最高位置の前記ドレイン電極側端を見たときの、前記主面に対する仰角を第5仰角とした場合、前記第5仰角は、前記第2仰角より小さい、
請求
項3に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記傾斜面は、前記主面に対する傾斜角が45度±5度の範囲内である少なくとも1つの傾斜面を含む、
請求項
1または5に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記断面において、前記第1位置から、前記第2電界プレートの下面最高位置の前記ドレイン電極側端を見たときの、前記主面に対する仰角を第4仰角とした場合、前記第3仰角は、前記第4仰角より大きい、
請求項
1または5に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記第2絶縁層は、前記平面視で、前記第2電界プレートの下面最低位置に重なっている、
請求項5に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記断面において、前記第1位置から、前記第2電界プレートの下面最高位置の前記ドレイン電極側端を見たときの、前記主面に対する仰角を第4仰角とした場合、前記第4仰角は、前記第3仰角より大きい、
請求項
1または5に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記第2電界プレートの下面は、前記第1絶縁層に接触する、
請求項
1または5に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記断面において、前記第1位置から、前記第2電界プレートの下面最高位置の前記ドレイン電極側端を見たときの、前記主面に対する仰角を第4仰角とした場合、前記第4仰角は、前記第3仰角と等しい、
請求項
1または5に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記ゲート電極の上方に設けられ、前記ソース電極と同電位設定されたソース電界プレートを備え、
前記断面において、前記ソース電界プレートは、前記第1位置と前記第2電界プレートの下面最高位置の前記ドレイン電極側端とを結ぶ仮想線より下方に突出しない、
請求項4に記載の半導体装置。
【請求項13】
前記断面において、前記ソース電界プレートの表面は、前記仮想線に接する、
請求項12に記載の半導体装置。
【請求項14】
基板と、
前記基板の上方に設けられたIII族窒化物半導体からなるチャネル層と、
前記チャネル層の上方に設けられた、前記チャネル層よりバンドギャップの大きいIII族窒化物半導体からなるバリア層と、
前記バリア層の上方に、前記基板の平面視における第1方向において、互いに間隔を空けて設けられたソース電極およびドレイン電極と、
前記第1方向において、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間で、各々に対して間隔を空けて設けられたゲート電極と、
前記ゲート電極と前記ソース電極および前記ドレイン電極との間で、前記バリア層の上方に設けられた絶縁層と、
前記ゲート電極の上方に設けられ、前記ソース電極と同電位設定されたソース電界プレートと、を備え、
前記絶縁層は、最下層にシリコン窒化物からなる第1絶縁層と、前記第1絶縁層の上方にシリコン酸化物からなる第2絶縁層と、を含み、
前記ゲート電極は、
前記バリア層とショットキー接合した接合部と、
前記第1方向において、前記接合部よりも前記ソース電極側および前記ドレイン電極側の各々に張り出した張り出し部と、を含み、
前記絶縁層は、前記基板の主面に直交する第2方向における前記張り出し部と前記バリア層との間で、
前記接合部と前記ドレイン電極との間の前記絶縁層の前記接合部側端に設けられた第1サイドウォールと、
前記接合部と前記ソース電極との間の前記絶縁層の前記接合部側端に設けられた第2サイドウォールと、を含み、
前記張り出し部は、
前記平面視における前記第1サイドウォールの前記接合部側端である第1位置から、前記第1サイドウォールの前記ドレイン電極側端である第2位置までの区間の第1電界プレートと、
前記平面視における前記第2位置から、前記張り出し部の前記ドレイン電極側端である第3位置までの区間の第2電界プレートと、を含み、
前記第2電界プレートと前記バリア層との間には、積層された前記第1絶縁層と前記第2絶縁層とが設けられ、
前記第1方向および前記第2方向の各々に平行で、かつ、前記接合部を通る断面において、
前記第1サイドウォールの上面の前記第1位置における接線は、前記主面に対する第1仰角の傾きを有し、
前記第1電界プレートの下面最高位置は、前記第1位置から見て、前記主面に対する第2仰角の傾きを有し、
前記第2電界プレートの下面最低位置の前記ドレイン電極側端は、前記第1位置から見て、前記主面に対する第3仰角の傾きを有し、
前記第2仰角は、前記第3仰角より大きく、
前記第2電界プレートの下面は、前記ゲート電極から前記ドレイン電極への方向で、前記バリア層との間隔が単調増加する傾斜面を含み、
前記第2サイドウォールより前記ソース電極側の前記張り出し部は、前記第1サイドウォールの上面最高位置より下方に位置せず、
前記断面において、前記ソース電界プレートは、前記第1位置と前記第2電界プレートの下面最高位置の前記ドレイン電極側端とを結ぶ仮想線より下方に突出せず、
前記断面において、前記ソース電界プレートの表面は、前記仮想線に接する、
半導体装置。
【請求項15】
前記断面において、前記第2電界プレートの下面最低位置の前記ドレイン電極側端から、前記第2電界プレートの下面最高位置の前記ドレイン電極側端を見たときの、前記主面に対する仰角を第5仰角とした場合、前記第5仰角は、前記第2仰角より小さい、
請求項14に記載の半導体装置。
【請求項16】
前記断面において、前記第1位置から、前記第2電界プレートの下面最高位置の前記ドレイン電極側端を見たときの、前記主面に対する仰角を第4仰角とした場合、前記第4仰角は、前記第3仰角と等しい、
請求項14に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置に関し、特に、III族窒化物半導体を用いたIII族窒化物半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
III族窒化物半導体、特に、窒化ガリウム(GaN)または窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)を用いたIII族窒化物半導体装置は、材料のバンドギャップの広さから、高い絶縁破壊電圧を有する。また、III族窒化物半導体装置では、AlGaN/GaN等のヘテロ構造を容易に形成できる。
【0003】
AlGaN/GaNヘテロ構造では、材料間での格子定数差から発生するピエゾ分極とAlGaNおよびGaNの自発分極とにより、AlGaN/GaN界面のGaN層側に高濃度の電子(以下「二次元電子ガス」と称する)によるチャネルが形成される。この二次元電子ガスのチャネルを利用したIII族窒化物半導体装置は、電子飽和速度が比較的高く、かつ、耐絶縁性が比較的高く、熱伝導率も比較的高いことから、高周波パワーデバイスに応用されている。
【0004】
これらのIII族窒化物半導体装置において特性を高めるためには、ゲート寸法(以下、Lgで表す)を微細化することが有効である。そして、Lgの微細化にあたってはフィールドプレートを用いた電界緩和と寄生容量の低減との両立が重要である。
【0005】
図19は、従来技術のゲート電極140xの構成を示す断面図である。具体的には、
図19は、特許文献1に記載のIII族窒化物からなる半導体装置100x内のゲート電極140x付近の構成を示している。
【0006】
特許文献1に記載された半導体装置100xでは、
図19に示すように、GaN層103xと、AlGaN層104xとが順に設けられており、ヘテロ構造によりGaN層103x側に二次元電子ガス110xが発生する。AlGaN層104xの上に絶縁層130xが設けられ、絶縁層130xには、AlGaN層104xが露出するように開口部130Axが設けられている。開口部130Axには、絶縁層130xの側面に接するようにドレイン電極側の第1サイドウォール133dxとソース電極側の第2サイドウォール133sxとが設けられている。なお、
図19には示されていないが、ドレイン電極は、ゲート電極140xよりもX軸の正側に配置されており、ソース電極は、ゲート電極140xよりもX軸の負側に配置されている。ドレイン電極およびソース電極はそれぞれ、二次元電子ガス110xにオーミック接続されている。ゲート電極140xは、絶縁層130xの上と開口部130Axとを覆うように、いわゆる断面形状がT字状(T型ゲート構造)になるように設けられている。特許文献1では、T型ゲート構造により、Lgを約0.1μmから約0.3μmまで縮小できると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許出願公開第2012/0119260号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1に記載された構成によれば、T型のゲート電極140xとAlGaN層104xとの間に挟まれた絶縁層130xによって、ゲート電極140xとドレイン電極と間の寄生容量を低減できうる。その一方で、
図19に示した構成では、電界緩和が不十分である。具体的には、T型のゲート電極140xでは、ゲート電極140xの、絶縁層130x上に張り出した部分のドレイン電極側の端部に、高い電界が局所的に集中しやすい。このように、電界緩和と寄生容量の低減とを両立することができない、という第1の問題がある。
【0009】
また、T型のゲート電極140xでは、絶縁層130xならびにサイドウォール133dxおよび133sxの直下方向では、二次元電子ガス110xの電子密度が高くなるので、オン抵抗を低抵抗化しうる。その一方で、
図19に示した構成では、オフ特性が低下する。具体的には、トランジスタのオフ時には、ゲート電極140xの直下方向に生じる電界が弱くなるため、空乏層が広がりにくくなってソース-ドレイン間のオフリーク電流が発生しやすくなる。このように、オン抵抗の低抵抗化とオフ特性の向上とを両立することができない、という第2の問題がある。
【0010】
そこで、本開示は、(i)電界緩和と寄生容量の低減との両立、または、(ii)オン抵抗の低抵抗化とオフ特性の向上との両立、の少なくとも一方を実現できる半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本開示に係る半導体装置の一態様は、基板と、前記基板の上方に設けられたIII族窒化物半導体からなるチャネル層と、前記チャネル層の上方に設けられた、前記チャネル層よりバンドギャップの大きいIII族窒化物半導体からなるバリア層と、前記バリア層の上方に、前記基板の平面視における第1方向において、互いに間隔を空けて設けられたソース電極およびドレイン電極と、前記第1方向において、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間で、各々に対して間隔を空けて設けられたゲート電極と、前記ゲート電極と前記ソース電極および前記ドレイン電極との間で、前記バリア層の上方に設けられた絶縁層と、を備え、前記絶縁層は、最下層にシリコン窒化物からなる第1絶縁層と、前記第1絶縁層の上方にシリコン酸化物からなる第2絶縁層と、を含み、前記ゲート電極は、前記バリア層とショットキー接合した接合部と、前記第1方向において、前記接合部よりも前記ソース電極側および前記ドレイン電極側の各々に張り出した張り出し部と、を含み、前記絶縁層は、前記基板の主面に直交する第2方向における前記張り出し部と前記バリア層との間で、前記接合部と前記ドレイン電極との間の前記絶縁層の前記接合部側端に設けられた第1サイドウォールと、前記接合部と前記ソース電極との間の前記絶縁層の前記接合部側端に設けられた第2サイドウォールと、を含み、前記張り出し部は、前記平面視における前記第1サイドウォールの前記接合部側端である第1位置から、前記第1サイドウォールの前記ドレイン電極側端である第2位置までの区間の第1電界プレートと、前記平面視における前記第2位置から、前記張り出し部の前記ドレイン電極側端である第3位置までの区間の第2電界プレートと、を含み、前記第2電界プレートと前記バリア層との間には、積層された前記第1絶縁層と前記第2絶縁層とが設けられ、前記第1方向および前記第2方向の各々に平行で、かつ、前記接合部を通る断面において、前記第1サイドウォールの上面の前記第1位置における接線は、前記主面に対する第1仰角の傾きを有し、前記第1電界プレートの下面最高位置は、前記第1位置から見て、前記主面に対する第2仰角の傾きを有し、前記第2電界プレートの下面最低位置の前記ドレイン電極側端は、前記第1位置から見て、前記主面に対する第3仰角の傾きを有し、前記第2仰角は、前記第3仰角より大きく、前記第2電界プレートの下面は、前記ゲート電極から前記ドレイン電極への方向で、前記バリア層との間隔が単調増加する傾斜面を含む。
【0012】
また、本開示に係る半導体装置の別の一態様は、基板と、前記基板の上方に設けられたIII族窒化物半導体からなるチャネル層と、前記チャネル層の上方に設けられた、前記チャネル層よりバンドギャップの大きいIII族窒化物半導体からなるバリア層と、前記バリア層の上方に、前記基板の平面視における第1方向において、互いに間隔を空けて設けられたソース電極およびドレイン電極と、前記第1方向において、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間で、各々に対して間隔を空けて設けられたゲート電極と、前記ゲート電極と前記ソース電極および前記ドレイン電極との間で、前記バリア層の上方に設けられた絶縁層と、を備え、前記絶縁層は、最下層にシリコン窒化物からなる第1絶縁層と、前記第1絶縁層の上方にシリコン酸化物からなる第2絶縁層と、を含み、前記ゲート電極は、前記バリア層とショットキー接合した接合部と、前記第1方向において、前記接合部よりも前記ソース電極側および前記ドレイン電極側の各々に張り出した張り出し部と、を含み、前記絶縁層は、前記基板の主面に直交する第2方向における前記張り出し部と前記バリア層との間で、前記接合部と前記ドレイン電極との間の前記絶縁層の前記接合部側端に設けられた第1サイドウォールと、前記接合部と前記ソース電極との間の前記絶縁層の前記接合部側端に設けられた第2サイドウォールと、を含み、前記張り出し部は、前記平面視における前記第1サイドウォールの前記接合部側端である第1位置から、前記第1サイドウォールの前記ドレイン電極側端である第2位置までの区間の第1電界プレートと、前記平面視における前記第2位置から、前記張り出し部の前記ドレイン電極側端である第3位置までの区間の第2電界プレートと、を含み、前記第2電界プレートと前記バリア層との間には、積層された前記第1絶縁層と前記第2絶縁層とが設けられ、前記第1方向および前記第2方向の各々に平行で、かつ、前記接合部を通る断面において、前記第1サイドウォールの上面の前記第1位置における接線は、前記主面に対する第1仰角の傾きを有し、前記第1電界プレートの下面最高位置は、前記第1位置から見て、前記主面に対する第2仰角の傾きを有し、前記第2電界プレートの下面最低位置の前記ドレイン電極側端は、前記第1位置から見て、前記主面に対する第3仰角の傾きを有し、前記第1サイドウォールの上面最高位置は、前記第2サイドウォールの上面最高位置より下方に位置する。
【発明の効果】
【0013】
本開示に係る半導体装置によると、(i)電界緩和と寄生容量低減との両立、または、(ii)オン抵抗の低抵抗化とオフ特性の向上との両立、の少なくとも一方が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、実施の形態1に係る半導体装置の構成を示す断面図である。
【
図2】
図2は、実施の形態1に係る半導体装置のゲート電極の構成を拡大して示す断面図である。
【
図3】
図3は、実施の形態1に係る半導体装置のゲート電極の、ドレイン電極側の張り出し部の下面の形状を説明するための拡大断面図である。
【
図4A】
図4Aは、実施の形態1に係る半導体装置の製造方法の各工程を示す断面図である。
【
図4B】
図4Bは、実施の形態1に係る半導体装置の製造方法の各工程を示す断面図である。
【
図4C】
図4Cは、実施の形態1に係る半導体装置の製造方法の各工程を示す断面図である。
【
図4D】
図4Dは、実施の形態1に係る半導体装置の製造方法の各工程を示す断面図である。
【
図4E】
図4Eは、実施の形態1に係る半導体装置の製造方法の各工程を示す断面図である。
【
図4F】
図4Fは、実施の形態1に係る半導体装置の製造方法の各工程を示す断面図である。
【
図4G】
図4Gは、実施の形態1に係る半導体装置の製造方法の各工程を示す断面図である。
【
図5】
図5は、実施の形態1の変形例1に係る半導体装置のゲート電極の構成を示す断面図である。
【
図6】
図6は、実施の形態1の変形例1に係る半導体装置のゲート電極の、ドレイン電極側の張り出し部の下面の形状を説明するための拡大断面図である。
【
図7】
図7は、実施の形態1の変形例2に係る半導体装置のゲート電極の構成を示す断面図である。
【
図8】
図8は、実施の形態1の変形例2に係る半導体装置のゲート電極の、ドレイン電極側の張り出し部の下面の形状を説明するための拡大断面図である。
【
図9】
図9は、実施の形態1の変形例3に係る半導体装置のゲート電極の下面の形状とソースフィールドプレートとの位置関係を説明するための拡大断面図である。
【
図10】
図10は、実施の形態2に係る半導体装置のゲート電極の構成を示す断面図である。
【
図11】
図11は、実施の形態2に係る半導体装置のサイドウォールの形状を説明するための拡大断面図である。
【
図12】
図12は、実施の形態2に係る半導体装置のゲート電極の、ドレイン電極側の張り出し部の下面の形状を説明するための拡大断面図である。
【
図13A】
図13Aは、実施の形態2に係る半導体装置の製造方法の各工程を示す断面図である。
【
図13B】
図13Bは、実施の形態2に係る半導体装置の製造方法の各工程を示す断面図である。
【
図13C】
図13Cは、実施の形態2に係る半導体装置の製造方法の各工程を示す断面図である。
【
図13D】
図13Dは、実施の形態2に係る半導体装置の製造方法の各工程を示す断面図である。
【
図13E】
図13Eは、実施の形態2に係る半導体装置の製造方法の各工程を示す断面図である。
【
図14】
図14は、実施の形態2の変形例1に係る半導体装置のサイドウォールの形状を説明するための拡大断面図である。
【
図15】
図15は、実施の形態2の変形例2に係る半導体装置のサイドウォールの形状を説明するための拡大断面図である。
【
図16】
図16は、実施の形態2の変形例3に係る半導体装置のサイドウォールの形状を説明するための拡大断面図である。
【
図17】
図17は、実施の形態2の変形例4に係る半導体装置のサイドウォールの形状を説明するための拡大断面図である。
【
図18】
図18は、実施の形態2の変形例5に係る半導体装置のサイドウォールの形状を説明するための拡大断面図である。
【
図19】
図19は、従来技術のゲート電極の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示の一態様に係る半導体装置等の具体的な実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0016】
以下で説明する実施の形態は、いずれも本開示の一具体例を示すものである。したがって、以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置および接続形態、ならびに、ステップ(工程)およびステップの順序等は、一例であって本開示を限定する趣旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0017】
また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略または簡略化する。
【0018】
また、本明細書において、平行または垂直などの要素間の関係性を示す用語、および、矩形などの要素の形状を示す用語、ならびに、数値範囲は、厳格な意味のみを表す表現ではなく、実質的に同等な範囲、例えば数%程度の差異をも含むことを意味する表現である。
【0019】
また、本明細書において、半導体装置の構成における「上方」および「下方」という用語は、絶対的な空間認識における上方向(鉛直上方)および下方向(鉛直下方)を指すものではなく、積層構造における積層順を基に相対的な位置関係により規定される用語である。また、「上方」および「下方」という用語は、2つの構成要素が互いに間隔を空けて配置されて2つの構成要素の間に別の構成要素が存在する場合のみならず、2つの構成要素が互いに密着して配置されて2つの構成要素が接する場合にも適用される。
【0020】
また、本明細書および図面において、X軸、Y軸およびZ軸は、三次元直交座標系の三軸を示している。各実施の形態では、半導体装置が有する基板が含む主面(上面)に平行な二軸をX軸およびY軸とし、この主面に直交する方向をZ軸方向としている。具体的には、ソース電極、ゲート電極およびドレイン電極がこの順で並ぶ方向、すなわち、いわゆるゲート長方向をX軸方向としている。X軸方向は、第1方向の一例である。また、Z軸方向は、第2方向の一例である。以下で説明する実施の形態において、Z軸正方向を「上方」と記載し、Z軸負方向を「下方」と記載する場合がある。また、本明細書において「平面視」とは、特に断りのない限り、半導体装置が有する基板の主面(上面)をZ軸正方向から見たときのことをいう。
【0021】
また、本明細書において、III族窒化物半導体とは、1種類以上のIII族元素と窒素とを含む半導体である。III族元素は、例えば、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)などである。III族窒化物半導体の例としては、GaN、AlN、InN、AlGaN、InGaN、AlInGaNなどである。III族窒化物半導体には、シリコン(Si)、リン(P)などのIII族以外の元素が1種類以上含まれていてもよい。なお、以下の説明において、特に断り無く、III族窒化物半導体をAlInGaNと表記した場合には、III族窒化物半導体は、Al、In、GaおよびNのいずれも含んでいることを意味する。AlGaN、GaN等の他の表記についても同様である。
【0022】
また、III族窒化物半導体からなる層、および、III族窒化物半導体によって構成される層とは、当該層が実質的にIII族窒化物半導体のみを含んでいることを意味する。ただし、当該層には、例えば製造上混入を避けられない元素など他の元素が不純物として、1at%以下の割合で含まれていてもよい。
【0023】
また、本明細書において、窒化物半導体(層)のIII族元素の組成比(組成率)とは、窒化物半導体に含まれる複数のIII族元素のうちの、対象となるIII族元素の原子数の比を表している。例えば、窒化物半導体層がAlaInbGacN(a+b+c=1、a≧0、b≧0、c≧0)からなる場合、当該窒化物半導体層のAl組成比は、a/(a+b+c)で表すことができる。同様に、In組成比、Ga組成比はそれぞれ、b/(a+b+c)、c/(a+b+c)で表される。
【0024】
また、本明細書において、「第1」、「第2」などの序数詞は、特に断りの無い限り、構成要素の数または順序を意味するものではなく、同種の構成要素の混同を避け、区別する目的で用いられている。
【0025】
(実施の形態1)
まず、実施の形態1に係る半導体装置について、
図1~
図3を用いて説明する。
【0026】
図1は、実施の形態1に係る半導体装置100の構成を示す断面図である。
図2は、実施の形態1に係る半導体装置100のゲート電極140の構成を拡大して示す断面図である。
図3は、実施の形態1に係る半導体装置100のゲート電極140の、ドレイン電極122側の張り出し部142dの下面144aの形状を説明するための拡大断面図である。なお、
図1~
図3はいずれも、ソース電極121とドレイン電極122とが並ぶ方向(X軸方向)で、かつ、基板101の主面に直交し、かつ、ゲート電極140とバリア層104とがショットキー接合する接合部141を通る断面(XZ断面)を表している。
図4A以降の他の断面図についても同様である。
【0027】
本実施の形態では、半導体装置100がショットキー接合ゲート構造を備えた高電子移動度トランジスタ(High Electron Mobility Transistor:HEMT)である場合について説明する。
【0028】
図1に示すように、半導体装置100は、基板101と、バッファ層102と、チャネル層103と、バリア層104と、二次元電子ガス110と、ソース電極121と、ドレイン電極122と、ソースフィールドプレート123と、T型のゲート電極140と、絶縁層130と、第4絶縁層134と、を備える。絶縁層130は、第1絶縁層131と、第2絶縁層132と、第1サイドウォール133dと、第2サイドウォール133sと、を含む。
【0029】
基板101は、例えば、Siからなる基板である。基板101は、Siからなる基板に限らず、サファイア(Sapphire)、SiC、GaN、または、AlN等からなる基板であってもよい。
【0030】
バッファ層102は、基板101の上方に設けられている。例えば、バッファ層102は、基板101の上面に接触して設けられている。バッファ層102は、例えば、III族窒化物半導体からなる層である。一例として、バッファ層102は、厚さ2μmのAlNおよびAlGaNの複数の積層構造からなる。バッファ層102は、その他に、GaN、AlGaN、AlN、InGaN、AlInGaN等のIII族窒化物半導体の単層または複数層によって構成されていてもよい。バッファ層102は設けられていなくてもよい。
【0031】
チャネル層103は、基板101の上方に設けられている。例えば、チャネル層103は、バッファ層102の上面に接触して設けられている。チャネル層103は、III族窒化物半導体からなる層である。チャネル層103は、例えば、厚さ200nmのGaNによって構成される。なお、チャネル層103は、GaNに限らず、InGaN、AlGaN、AlInGaN等のIII族窒化物半導体によって構成されていてもよい。また、チャネル層103には、n型の不純物が含まれていてもよい。チャネル層103の厚さは、上述した例には限定されない。
【0032】
バリア層104は、チャネル層103の上方に設けられている。例えば、バリア層104は、チャネル層103の上面に接触して設けられている。バリア層104は、チャネル層103よりバンドギャップが大きいIII族窒化物半導体からなる層である。バリア層104は、例えば、厚さ20nmのAl組成比が25%のAlGaNによって構成される。バリア層104とチャネル層103とのヘテロ界面のチャネル層103側には、高濃度の二次元電子ガス110が発生する。二次元電子ガス110は、トランジスタのチャネルとして利用される。
【0033】
なお、バリア層104は、AlGaNに限らず、AlInGaN等のIII族窒化物半導体によって構成されていてもよい。また、バリア層104には、n型の不純物が含まれていてもよい。バリア層104の厚さおよびAl組成比は、上述した例には限定されない。
【0034】
なお、バリア層104上には、キャップ層として例えばGaNからなる厚さが約1nm以上約2nm以下のキャップ層が設けられてもよい。また、チャネル層103とバリア層104との間に、スペーサ層として、例えば、AlNからなる厚さ約1nmのスペーサ層が設けられてもよい。このように、チャネル層103とバリア層104とは接触していなくてもよい。
【0035】
ソース電極121とドレイン電極122とは、バリア層104の上方に互いに間隔を空けて設けられている。具体的には、ソース電極121とドレイン電極122とは、間にゲート電極140を挟んで対向するように設けられている。
【0036】
ソース電極121とドレイン電極122とは、導電性材料を用いて形成される。例えば、ソース電極121とドレイン電極122とは、Ti膜とAl膜とを順に積層した積層構造からなる多層電極膜であるが、これに限らない。なお、ソース電極121とドレイン電極122とは、Ti膜とAl膜との積層構造に限らず、スパッタにより成膜された遷移金属、遷移金属の窒化物または炭化物であってもよい。具体的には、ソース電極121とドレイン電極122は、Ta、Hf、W、Ni、TiN、TaN、HfN、WN、TiC、TaC、HfC、Au、Cu等でもよく、これらの元素を含んだ化合物でもよいし、複数の積層構造からなる多層電極膜であってもよい。
【0037】
また、ソース電極121とドレイン電極122とは、二次元電子ガス110と電気的にオーミック接続されている。
【0038】
なお、ソース電極121とドレイン電極122との少なくとも一方の下方には、バリア層104および/またはチャネル層103の一部を除去したリセス部、または、Siなどのドナーを含んだn型の不純物を含んだコンタクト層が設けられてもよい。n型の不純物を含んだコンタクト層は、例えば、プラズマ処理、イオン注入および再成長等により形成してもよい。
【0039】
絶縁層130は、ゲート電極140とソース電極121およびドレイン電極122との間で、バリア層104の上方に設けられている。
図1に示すように、絶縁層130は、第1絶縁層131と、第2絶縁層132と、第1サイドウォール133dと、第2サイドウォール133sと、を含む。
【0040】
第1絶縁層131は、絶縁層130内の最下層に位置する層である。第1絶縁層131は、バリア層104の上方に設けられている。例えば、第1絶縁層131は、バリア層104の上面に接触して設けられている。第1絶縁層131は、シリコン窒化物からなる層である。例えば、第1絶縁層131は、厚さが50nmのSi
3N
4によって構成される。また、
図1に示すように、第1絶縁層131には、ソース電極121とドレイン電極122とを設ける領域に、第1絶縁層131を貫通してバリア層104に到達する第1開口部131Aが設けられている。
【0041】
また、第1絶縁層131は、例えば、Si3N4のH含有量が少ないストイキオメトリーであってもよい。これにより、電子のトラップを低減して、かつ、第2絶縁層132をウェットエッチングにより選択的に除去できる。なお、第1絶縁層131は、Si3N4に限らずストイキオメトリーでなくてもよく、ストイキオメトリーと比べてSi組成率が大きくても、N組成率が大きくてもかまわない。また、第1絶縁層131は、単層でなく複数層であってもよい。複数層の第1絶縁層131では、最下層にはSi3N4を用いて上層はウェットエッチングのエッチレートを制御するため、ストイキオメトリーと比べてSi組成率が大きくてもよく、あるいは、N組成率が大きいSiNであってもよい。また、第1絶縁層131は、炭素を含んだSiCNであってもよい。
【0042】
第2絶縁層132は、第1絶縁層131の上方に設けられている。具体的には、第2絶縁層132は、第1絶縁層131と、ソース電極121と、ドレイン電極122との各々の上面に接触して設けられている。第2絶縁層132は、シリコン酸化物からなる層である。例えば、第2絶縁層132は、厚さが50nmのSiO2によって構成される。なお、第2絶縁層132は、SiO2に限らず、第1絶縁層131と比べて誘電率が低ければよい。また、第1絶縁層131に対して第2絶縁層132を選択的に除去できればよい。具体的には、第2絶縁層132は、SiNに酸素を含んだSiONであってもよいし、Low-k膜でSiOC、SiOCHまたは有機膜であってもよい。
【0043】
また、
図1に示すように、ソース電極121とドレイン電極122との間には、第1絶縁層131と第2絶縁層132とを貫通してバリア層104に到達する第2開口部132Aが設けられている。第2開口部132Aは、例えば、幅が400nmに構成される。なお、第2開口部132Aの幅は、100nmから600nmの範囲であってもかまわない。
【0044】
第2開口部132Aが設けられていることにより、
図2に示すように、断面視では、第1絶縁層131および第2絶縁層132は、ドレイン電極122側の部分とソース電極121側の部分とに分けることができる。具体的には、第1絶縁層131は、ドレイン電極122側の第1絶縁層131dと、ソース電極121側の第1絶縁層131sと、を含んでいる。また、第2絶縁層132は、ドレイン電極122側の第2絶縁層132dと、ソース電極121側の第2絶縁層132sと、を含んでいる。本実施の形態では、ドレイン電極122側の第1絶縁層131dおよび第2絶縁層132dの上面形状が、ソース電極121側の第1絶縁層131sおよび第2絶縁層132sの上面形状とは異なっている。具体的な形状の差異については後で説明する。
【0045】
なお、第1絶縁層131sと第1絶縁層131dとでは、厚さおよび層の組成が同じであるが、これに限定されず、厚さおよび組成の少なくとも一方が異なっていてもよい。例えば、第1絶縁層131sの厚さは、第1絶縁層131dの厚さより厚くてもよい。第2絶縁層132sと第2絶縁層132dとも、厚さおよび層の組成が同じであるが、これに限定されず、厚さおよび組成の少なくとも一方が異なっていてもよい。
【0046】
以下の説明では、第1絶縁層131sと第1絶縁層131dとに共通する事項を説明する場合には、第1絶縁層131として説明を行う。第2絶縁層132sと第2絶縁層132dとについても同様である。
【0047】
図2に示すように、第1サイドウォール133dおよび第2サイドウォール133sは、バリア層104とゲート電極140の張り出し部142dおよび142sとの間に設けられている。具体的には、第1サイドウォール133dおよび第2サイドウォール133sは、第2開口部132A内に設けられている。より具体的には、第1サイドウォール133dは、ゲート電極140の接合部141とドレイン電極122との間の絶縁層130の、接合部141側の端部に設けられている。第2サイドウォール133sは、接合部141とソース電極121との間の絶縁層130の、接合部141側の端部に設けられている。つまり、第1サイドウォール133dは、第1絶縁層131dの、接合部141側の側面に接するように設けられている。第2サイドウォール133sは、第1絶縁層131sおよび第2絶縁層132sの各々の、接合部141側の側面に接するように設けられている。
【0048】
第1サイドウォール133dと第2サイドウォール133sとは、例えば、幅が100nmのSiNによって構成される。ここで、SiNは一般的に引張応力を有する。第1サイドウォール133dと第2サイドウォール133sとが設けられていることにより、第2開口部132Aの開口部分を実質的に狭めることができ、例えば、バリア層104が露出している幅は200nmとなる。なお、第1サイドウォール133dと第2サイドウォール133sとの幅は、20nmから200nmとして任意の幅としてもかまわない。なお、第1サイドウォール133dと第2サイドウォール133sとは、幅(X軸方向の長さ)が異なっていてもよい。
【0049】
なお、第1サイドウォール133dは、高誘電体材料を用いて形成されてもよい。これにより、ゲート電極140とバリア層104とが接する部分(接合部141)のドレイン電極122側端の電界をさらに低減することができる。また、第2サイドウォール133sは、低誘電体材料を用いて形成されてもよい。これみより、ゲート電極140とソース電極121との間の寄生容量(ゲート-ソース間容量Cgs)を低減できる。
【0050】
図1に示すように、ゲート電極140は、ソース電極121とドレイン電極122との間で、各々に対して間隔を空けて設けられている。ゲート電極140は、いわゆるT型ゲート構造を有する。具体的には、ゲート電極140は、第2開口部132Aを覆うように、第2開口部132Aの底面に露出したバリア層104と、第1絶縁層131および第2絶縁層132の一部の上とに設けられている。
【0051】
図2に示すように、ゲート電極140は、バリア層104とショットキー接合した接合部141を含む。本実施の形態では、接合部141は、ゲート電極140とバリア層104とが接触する接触面である。接合部141は、平面視において、第1サイドウォール133dと第2サイドウォール133sとの間の部分に相当する。接合部141のX軸方向の長さが、いわゆるゲート長Lgに相当する。第1サイドウォール133dと第2サイドウォール133sとによってゲート長Lgを短くすることができる。
【0052】
また、ゲート電極140は、基板101の主面に対して平面視で見たとき、接合部141よりもソース電極121側およびドレイン電極122側の各々に張り出した張り出し部を含む。具体的には、
図2に示すように、ゲート電極140は、基板101の平面視で接合部141よりもソース電極121側に張り出した張り出し部142sと、基板101の平面視で接合部141よりもドレイン電極122側に張り出した張り出し部142dと、を含む。張り出し部142dおよび142sは、T型ゲート構造の腕部(T字の横棒部分)に相当し、接合部141は、T型ゲート構造の足裏部(T字の縦棒の下端)に相当する。張り出し部142dおよび142sは、絶縁層130の上方に位置しており、バリア層104には接触していない。
【0053】
本実施の形態では、
図2および
図3に示すように、ドレイン電極122側の張り出し部142dの下面が平坦ではない。断面視において、張り出し部142dの下面は、三次関数的に変化している。張り出し部142dの下面の具体的な形状については、後で説明する。
【0054】
ゲート電極140は、導電性材料を用いて形成される。ゲート電極140は、例えば、TiN膜とAl膜とを順に積層した積層構造からなる多層電極膜である。例えば、TiN膜の厚さが50nm、Al膜の厚さが500nmであるが、これに限らない。なお、ゲート電極140は、TiN膜とAl膜との積層構造に限らず、スパッタにより成膜された遷移金属の窒化物または炭化物であってもよい。具体的には、ゲート電極140は、Ni、TiN、WN、HfN、TiC、WC、HfC、W、Au、Cu等でもよく、これらの元素を含んだ化合物でもよいし、複数の積層構造からなる多層電極膜であってもよい。
【0055】
第4絶縁層134は、第2絶縁層132と、ゲート電極140との上方に設けられている。第4絶縁層134は、例えば、厚さが150nmのSiNによって構成される。なお、第4絶縁層134は、SiNに限らず、SiO2、SiCNでもよい。また、第4絶縁層134を構成するSiNは、Si組成率またはN組成率を変えてストレスを制御してもかまわない。
【0056】
ソースフィールドプレート123は、ゲート電極140の上方に設けられ、ソース電極121と同電位設定されたソース電界プレートである。具体的には、ソースフィールドプレート123は、第4絶縁層134の上方に設けられている。ソースフィールドプレート123は、平面視において、その少なくとも一部がゲート電極140とドレイン電極122との間に位置するように設けられる。
図1に示す例では、ソースフィールドプレート123は、平面視で一部がゲート電極140に重なるように配置される。ソースフィールドプレート123は、ゲート電極140およびドレイン電極122とは電気的に絶縁されており、ソース電極121に印加される電位(ソース電位)に設定される。ソースフィールドプレート123が設けられることによって、ゲート電極140に集中する電界を緩和することができる。
【0057】
ソースフィールドプレート123は、導電性材料を用いて形成される。ソースフィールドプレート123は、例えば、TiN膜とAl膜とを順に積層した積層構造からなる多層電極膜構成である。例えば、TiN膜の厚さが50nm、Al膜の厚さが500nmであるが、これに限らない。なお、ソースフィールドプレート123は、TiN膜とAl膜との積層構造に限らず、スパッタにより成膜された遷移金属の窒化物または炭化物であってもよい。具体的には、ソースフィールドプレート123は、Ti、Ta、W、Ni、TiN、TaN、WN、W、Au、Cu等でもよく、これらの元素を含んだ化合物でもよいし、複数の積層構造からなる多層電極膜であってもよい。
【0058】
次に、
図2および
図3を用いて、ゲート電極140と、ドレイン電極122側の第1絶縁層131dおよび第2絶縁層132dとの詳細な構造を説明する。
図2および
図3に示すように、ゲート電極140のドレイン電極122側への張り出し部142dは、第1ゲートフィールドプレート143と、第2ゲートフィールドプレート144と、を備えている。
【0059】
第1ゲートフィールドプレート143は、第1電界プレートの一例であり、基板101の平面視における第1サイドウォール133dの接合部141側端である第1位置から、第1サイドウォール133dのドレイン電極122側端である第2位置までの区間である。なお、第1位置は、ゲート電極140とバリア層104とが接する部分(接合部141)の、ドレイン電極122側端の位置でもある。第1ゲートフィールドプレート143は、張り出し部142dのうち、第1サイドウォール133dの直上方向に位置する部分、すなわち、平面視で第1サイドウォール133dと重なる区間の部分である。
【0060】
図2に示すように、第1ゲートフィールドプレート143の下面143aは、第1サイドウォール133dの上面133daと接触している。なお、第1サイドウォール133dの上面133daは、上方に向かって凸になるように湾曲している。第1ゲートフィールドプレート143の下面143aは、上面133daに沿って湾曲している。下面143aは、X軸の正方向に向かって、バリア層104との間隔が単調増加するように傾斜(湾曲)している。なお、上面133daおよび下面143aは、傾斜した平面であってもよく、階段状に形成されていてもよい。第2サイドウォール133sの上面133saについても同様に、湾曲面ではなく、傾斜した平面であってもよく、階段状に形成されていてもよい。
【0061】
第2ゲートフィールドプレート144は、第2電界プレートの一例であり、基板101の平面視における上記第2位置から、張り出し部142dのドレイン電極122側端である第3位置までの区間である。第2ゲートフィールドプレート144は、張り出し部142dのうち、第1絶縁層131の直上方向に位置する部分、すなわち、平面視で第1絶縁層131と重なる区間の部分である。本実施の形態では、第2ゲートフィールドプレート144とバリア層104との間に、積層された第1絶縁層131dと第2絶縁層132dとが設けられている。
【0062】
図2に示すように、第2ゲートフィールドプレート144の下面144aは、平坦面144bと、傾斜面144cと、平坦面144dと、を含む。なお、下面144aは、平坦面144bおよび144dの少なくとも一方を含んでいなくてもよい。
【0063】
平坦面144bは、基板101の主面に平行な平面(XY平面)であり、第1絶縁層131dの表面に接触している。本実施の形態では、平坦面144bは、第1絶縁層131dと第2絶縁層132dとの界面よりも下方に位置しているが、これに限らない。平坦面144bは、第1絶縁層131dと第2絶縁層132dとの界面と面一であってもよい。
【0064】
傾斜面144cは、X軸の正方向に向かって、バリア層104との間隔が単調増加する面である。傾斜面144cは、第2絶縁層132dのソース電極121側の端面と、第1絶縁層131dの凹部の側壁と、に接触している。傾斜面144cは、基板101の主面に対して傾斜した平面である。傾斜面144cは、上方または下方に凸の湾曲面であってもよい。傾斜面144cの傾斜角(XY平面に対してなす角度)は、特に限定されないが、例えば45度±5度の範囲内である。
【0065】
平坦面144dは、基板101の主面に平行な平面(XY平面)であり、第2絶縁層132dの上面に接触している。
【0066】
上述した形状の下面144aは、ゲート電極140の接合部141のドレイン電極122側端の位置P1から見たときの仰角によって定義することができる。以下では、
図3を用いて、第1仰角θ1~第5仰角θ5と、各仰角を定義するための仮想線VL1~VL5および位置P1~P5について説明する。
【0067】
第1仰角θ1~第5仰角θ5はそれぞれ、
図3に示す断面視において、所定の位置(点)から別の所定の位置(点)または所定の方向を見たときの、基板101の主面(XY平面)に対する仰角である。具体的には、第1仰角θ1~第5仰角θ5はそれぞれ、
図3に示す仮想線VL1~VL5の各々と、基板101の主面(XY平面)とがなす角度(<90°)で表される。
【0068】
図3に示すように、仮想線VL1は、第1サイドウォール133dの上面133daの位置P1における接線である。仮想線VL2は、位置P1と位置P2とを結ぶ直線である。仮想線VL3は、位置P1と位置P3とを結ぶ直線である。仮想線VL4は、位置P1と位置P4とを結ぶ直線である。仮想線VL5は、位置P3と位置P4とを結ぶ直線である。
【0069】
位置P1は、第1サイドウォール133dの接合部141側端である。具体的には、位置P1は、第1位置の一例であり、接合部141のドレイン電極122側端でもある。
【0070】
位置P2は、第1ゲートフィールドプレート143の下面143aの最高位置である。具体的には、位置P2は、第1サイドウォール133dの上面133daの最高位置でもある。
【0071】
位置P3は、第2ゲートフィールドプレート144の下面144a(
図2参照)の最低位置のドレイン電極122側端である。具体的には、位置P3は、平坦面144bのドレイン電極122側端である。本実施の形態では、位置P3は、傾斜面144cの下端でもある。
【0072】
位置P4は、第2ゲートフィールドプレート144の下面144a(
図2参照)の最高位置のドレイン電極122側端である。具体的には、位置P4は、平坦面144dのドレイン電極122側端である。
【0073】
位置P5は、傾斜面144cの上端である。本実施の形態では、位置P5は、第2ゲートフィールドプレート144の下面144a(
図2参照)の最高位置の接合部141側端でもある。
【0074】
本実施の形態では、第2仰角θ2は、第3仰角θ3より大きい。これにより、
図19に示した従来の構成と比べて、第2ゲートフィールドプレート144の下面144aの最低位置(位置P3)は、第1サイドウォール133dの最高位置(位置P2)より下方になる。また、ゲート電極140のドレイン電極122側の張り出し部142dの下面には、X軸方向のドレイン電極122側へ向かって単調増加する傾斜面144cが含まれる。
【0075】
これにより、ゲート電極140とバリア層104とが接する部分(接合部141)のドレイン電極122側端(位置P1)への局所的な電界集中を、位置P4だけでなく、位置P3および傾斜面144cにも分散させることができる。このため、電界緩和を実現できる。
【0076】
また、第2ゲートフィールドプレート144の下面の最低位置(P3)は、第1サイドウォール133dの上面133daの最高位置(P2)より下方であることにより、トランジスタのオフ時には、ゲート電極140の下方のドレイン電極122側に空乏層が広がりやすくなる。このため、ゲート電極140とドレイン電極122との間にかかる印加電圧が低電圧時のとき、二次元電子ガス110の位置は、従来の技術と比べてドレイン電極122側に、すなわち、ゲート電極140から離れて位置する。これにより、二次元電子ガス110とゲート電極140との対向する面積が小さくなる。さらに、第2仰角θ2が第3仰角θ3より大きいと、二次元電子ガス110と第1ゲートフィールドプレート143との距離を延ばせるため、寄生容量(ゲート-ドレイン間容量Cgd)が低減できる。
【0077】
このように、本実施の形態に係る半導体装置100によれば、電界強度の低減と寄生容量の低減との両立を実現することができる。
【0078】
なお、
図2に示すように、ソース電極121側の張り出し部142sは、第2サイドウォール133sよりソース電極121側の部分において、第1サイドウォール133dの最高位置(位置P2)より下方に位置しない。このようにすることで、ゲート電極140とソース電極121との寄生容量の上昇を抑制できる。
【0079】
また、
図3に示すように、第5仰角θ5は、第2仰角θ2より小さい。このように、第5仰角θ5を小さくすると、位置P3から位置P4にかけての傾斜を緩やかにすることができる。このため、第2ゲートフィールドプレート144の下面144aの最低位置のドレイン電極122側端部(位置P3)の電界を緩和して電界の起伏を低減できる。
【0080】
また、第1絶縁層131dおよび第2絶縁層132sの少なくとも一方は、ソース電極121側の第1絶縁層131sおよび第2絶縁層132sの膜厚と比べて、薄くてもよい。このようにすることで、ゲート電極140の接合部141とバリア層104とが接するドレイン電極122側端部(位置P1)への局所的な電界集中を分散させることで電界強度をさらに低減できる。
【0081】
以上のように、本実施の形態に係る半導体装置100は、基板101と、基板101の上方に設けられたIII族窒化物半導体からなるチャネル層103と、チャネル層103の上方に設けられた、チャネル層103よりバンドギャップの大きいIII族窒化物半導体からなるバリア層104と、バリア層104の上方に、基板101の主面におけるX軸方向において、互いに間隔を空けて設けられたソース電極121およびドレイン電極122と、X軸方向において、ソース電極121とドレイン電極122との間で、各々に対して間隔を空けて設けられたゲート電極140と、ゲート電極140とソース電極121およびドレイン電極122との間で、バリア層104の上方に設けられた絶縁層130と、を備える。絶縁層130は、最下層にシリコン窒化物からなる第1絶縁層131と、第1絶縁層131の上方にシリコン酸化物からなる第2絶縁層132と、を含む。ゲート電極140は、バリア層104とショットキー接合した接合部141と、X軸方向において、接合部141よりもソース電極121側およびドレイン電極122側の各々に張り出した張り出し部142sおよび142dと、を含む。絶縁層130は、基板101の主面に直交するZ軸方向における張り出し部142dとバリア層104との間で、接合部141とドレイン電極122との間の絶縁層130の接合部141側端(接合部141側の端部)に設けられた第1サイドウォール133dと、接合部141とソース電極121との間の絶縁層130の接合部141側端(接合部141側の端部)に設けられた第2サイドウォール133sと、を含む。張り出し部142dは、平面視における第1サイドウォール133dの接合部141側端である第1位置から、第1サイドウォール133dのドレイン電極122側端である第2位置までの区間の第1ゲートフィールドプレート143と、平面視における第2位置から、張り出し部142dのドレイン電極122側端である第3位置までの区間の第2ゲートフィールドプレート144と、を含む。第2ゲートフィールドプレート144とバリア層104との間には、積層された第1絶縁層131dと第2絶縁層132dとが設けられる。X軸方向およびZ軸方向の各々に平行で、かつ、接合部141を通る断面(XZ断面)において、第1サイドウォール133dの上面133daの第1位置(位置P1)における接線(仮想線VL1)は、主面に対する第1仰角θ1の傾きを有し、第1ゲートフィールドプレート143の下面143aの最高位置(位置P2)は、第1位置から見て、基板101の主面に対する第2仰角θ2の傾きを有し、第2ゲートフィールドプレート144の下面144aの最低位置のドレイン電極122側端(位置P3)は、第1位置から見て、基板101の主面に対する第3仰角θ3の傾きを有する。第2仰角θ2は、第3仰角θ3より大きい。第2ゲートフィールドプレート144の下面144aは、ゲート電極140からドレイン電極122への方向で、バリア層104との間隔が単調増加する傾斜面144cを含む。
【0082】
これにより、チャネル層103内にはバリア層104との界面近傍に二次元電子ガス110が発生するので、発生した二次元電子ガス110をチャネルとして利用したトランジスタを実現することができる。また、ゲート電極140が接合部141と張り出し部142dとを含むことにより、ゲート長(Lg)の微細化と、張り出し部142dによる電界緩和とを実現しやすくなる。
【0083】
また、半導体装置100では、第2ゲートフィールドプレート144の下面144aの最低位置(位置P3)は、第1ゲートフィールドプレート143の下面143aの最高位置(位置P2)より下方に位置している。また、第2ゲートフィールドプレート144の下面144aは、単調増加する傾斜面144cを含んでいる。
【0084】
これらにより、電界を、第2ゲートフィールドプレート144のドレイン電極122側端(位置P4)、第2ゲートフィールドプレート144の下面144aの最低位置(位置P3)および傾斜面144cへ分散させることができ、電界集中を緩和することができる。
【0085】
また、第2仰角θ2が第3仰角θ3より大きいので、第1サイドウォール133dが厚くなる。これにより、二次元電子ガス110とゲート電極140の張り出し部142dとの距離を長く確保しやすくなるので、寄生容量(ゲート-ドレイン間容量Cgd)を低減することができる。
【0086】
また、上記構成では、第2ゲートフィールドプレート144とバリア層104との間に第1絶縁層131dと第2絶縁層132dとの積層膜が設けられている。第2絶縁層132dは、第1絶縁層131dを構成するシリコン窒化膜よりも比誘電率が低いシリコン酸化膜からなるので、寄生容量(ゲート-ドレイン間容量Cgd)を低減することができる。このように、上記構成によれば、電界緩和と寄生容量の低減とを両立させることができる。
【0087】
また、シリコン窒化膜からなる第1絶縁層131、第1サイドウォール133dおよび第2サイドウォール133sは、バリア層104の窒素欠損を補填し、界面準位を低減することができる。このため、ゲート電極140とドレイン電極122との間のオフリーク電流を低減することができる。
【0088】
また、例えば、半導体装置100では、第2サイドウォール133sよりソース電極121側の張り出し部142sは、第1サイドウォール133dの上面133daの最高位置(位置P2)より下方に位置しない。
【0089】
これにより、ソース電極121側の二次元電子ガス110とゲート電極140の張り出し部142sとの距離を確保することができるので、寄生容量(ゲート-ソース間容量Cgs)を低減することができる。
【0090】
また、例えば、半導体装置100では、
図3に示す断面において、第2ゲートフィールドプレート144の下面144aの最低位置のドレイン電極122側端(位置P3)から、第2ゲートフィールドプレート144の下面144aの最高位置のドレイン電極122側端(位置P4)を見たときの、基板101の主面に対する仰角を第5仰角θ5とした場合、第5仰角θ5は、第2仰角θ2より小さい。
【0091】
これにより、位置P3から位置P4にかけての傾斜を緩やかにすることができる。このため、第2ゲートフィールドプレート144の下面144aの最低位置のドレイン電極122側端部(位置P3)の電界を緩和して電界の起伏を低減できる。
【0092】
また、本変形例に係る半導体装置100では、第2ゲートフィールドプレート144の下面144aが含む傾斜面は、基板101の主面に対する傾斜角が45度±5度の範囲内である少なくとも1つの傾斜面144cを含む。
【0093】
これにより、例えばウェットエッチングのような等方的なエッチング方法により、絶縁層130の上面形状を容易に形成することができる。ゲート電極140の張り出し部142dの下面形状は、絶縁層130の上面形状に沿った形状になるので、ゲート電極140の製造ばらつきが低減されて信頼性の高いデバイスを実現することができる。
【0094】
なお、本実施の形態において、平坦面144bおよび平坦面144dの少なくとも一方は、傾斜していてもよい。傾斜は、X軸の正方向に向かって、バリア層104との間隔が増加する傾斜であってもよく、減少する傾斜であってもよい。また、傾斜は、平坦であってもよく、湾曲していてもよい。
【0095】
[製造方法]
以下、
図4A~
図4Gを参照しながら、本実施の形態に係る半導体装置100の製造方法を説明する。
【0096】
図4A~
図4Gは、それぞれ、本実施の形態に係る半導体装置100の製造方法の各工程を説明するための断面図である。
図4A~
図4Gはそれぞれ、製造途上における半導体装置100の断面構成を示している。なお、
図4Eおよび
図4Fにはそれぞれ、第1サイドウォール133dの近傍部分の拡大図も表している。
【0097】
また、
図4A~
図4Dには、各図間での位置の対応関係を分かりやすくするため、バリア層104の上面からZ軸方向に延びる3本の線L1~L3を二点鎖線で示している。線L1は、第1サイドウォール233dのドレイン電極122側端の位置を表している。線L2は、第2サイドウォール133sのソース電極121側端の位置を表している。線L3は、接合部141の中心位置を表している。
【0098】
まず、
図4Aに示すように、Siからなる基板101の上に、有機金属気相成長法(MOCVD:Metal Organic Chemical Vapor Deposition)を用いて、厚さが2μmでAlNおよびAlGaNの積層構造からなるバッファ層102と、厚さが200nmでGaNからなるチャネル層103と、厚さが20nmでAl組成比25%のAlGaNからなるバリア層104とが+c面方向(<0001>方向)に順次エピタキシャル成長されて、形成される。この結果、バリア層104とチャネル層103とのヘテロ界面のチャネル層103側には、高濃度の二次元電子ガス110が発生し、二次元電子ガス110のチャネルが形成される。
【0099】
次に、
図4Bに示すように、第1絶縁層131と、ソース電極121およびドレイン電極122と、第2絶縁層132と、を形成する。具体的には、まず、厚さが50nmのSi
3N
4からなる第1絶縁層131が減圧CVD(Chemical Vapor Deposition)法により堆積される。さらに、レジストが塗布された後に、リソグラフィー法により当該レジストがパターニングされることで、ソース電極121およびドレイン電極122を形成する領域以外にマスクが形成される。
【0100】
次に、ドライエッチング法が用いられて、バリア層104が露出するように第1絶縁層131に第1開口部131Aが形成された後にマスクおよびポリマーを除去する。なお、本実施の形態では、ドライエッチング法が用いられているが、ウェットエッチング法が用いられて第1絶縁層131に第1開口部131Aが形成されてもよい。
【0101】
次に、蒸着によりTi膜およびAl膜が順に堆積された後、リフトオフ法によりソース電極121とドレイン電極122とが形成される。次に、熱処理が施されることで、二次元電子ガス110と、ソース電極121およびドレイン電極122の各々とが電気的にオーミック接続される。なお、スパッタ法によりTi膜およびAl膜が順に堆積した後に、リソグラフィー法およびドライエッチング法が順に適用されることにより、ソース電極121とドレイン電極122とが形成されてもよい。
【0102】
次に、第2絶縁層132は、第1絶縁層131と、ソース電極121およびドレイン電極122との上に形成される。第2絶縁層132は、厚さが50nmのSiO2がプラズマCVDによって堆積することによって、形成される。
【0103】
次に、
図4Cに示すように、第2開口部132Aと、第3絶縁層133とを形成する。具体的には、まず、レジストが塗布された後に、リソグラフィー法により当該レジストがパターニングされて、第2開口部132Aを形成する領域以外にマスクが形成される。次に、ドライエッチング法が用いられて、バリア層104が露出するように第1絶縁層131および第2絶縁層132に第2開口部132Aを形成する。第2開口部132Aが形成された後に、マスクおよびポリマーを除去する。
【0104】
次に、厚さが100nmのSiNからなる第3絶縁層133がプラズマCVD法により堆積される。第3絶縁層133は、第2開口部132Aを埋めるように設けられる。
【0105】
次に、
図4Dに示すように、ドライエッチング法が用いられて第3絶縁層133をエッチバックする。これにより、バリア層104が露出するように第1サイドウォール133dおよび第2サイドウォール133sが形成される。
【0106】
次に、
図4Eに示すように、レジストが塗布された後に、リソグラフィー法によりレジストがパターニングされてマスク(レジストパターン150)が形成される。マスクは、第1サイドウォール133dおよび第2サイドウォール133sを露出させるように形成される。
図4Eに示す断面視で、レジストパターン150は、ドレイン電極122側のマスク部151と、ソース電極121側のマスク部152と、を含んでいる。
【0107】
具体的には、平面視において、レジストパターン150のマスク部151の端部は、第1サイドウォール133dのドレイン電極122側の端部よりも、ドレイン電極122側に位置している。すなわち、マスク部151は、第2絶縁層132dのソース電極121側の端部およびその近傍を露出させるように配置される。
図4Eに拡大して示すように、マスク部151のソース電極121側の端部と、第1サイドウォール133dのドレイン電極122側の端部との間の距離Dが0より大きい距離で確保されている。
【0108】
一方で、レジストパターン150のマスク部152の端部は、第2サイドウォール133sのソース電極121側の端部よりも、ドレイン電極122側に位置している。すなわち、マスク部152は、第2絶縁層132sを完全に覆い、一部が第2サイドウォール133sを覆うように位置する。なお、本実施の形態では、マスク部152のドレイン電極122側の端部は、平面視において、第2サイドウォール133sのソース電極121側の端部と一致していてもよい。また、マスク部152の端部は、バリア層104の上になるように位置してもよい。
【0109】
次に、
図4Fに示すように、第2絶縁層132dの一部(具体的には、第1サイドウォール133d側の端部の近傍部分)を除去する。具体的には、ウェットエッチング法が用いられて、ドレイン電極122側のマスク部151から露出した第2絶縁層132dの一部を選択的に除去した後に、レジストパターン150を除去する。例えば、室温のBHF(Buffered HydroFluoric acid)を用いて第2絶縁層132dの一部を選択的に除去する。なお、BHFの混合比は任意のものを用いてもよいし、DHF(Diluted Hydrofluoric acid )を用いて第2絶縁層132dの一部を選択的に除去してもよい。ウェットエッチングは、第1サイドウォール133dとマスク部151との隙間から、等方的にエッチングが進行する。このため、
図4Fに示すように、第2絶縁層132dのソース電極121側の端部は、斜めに傾斜した傾斜面になる。
【0110】
なお、本実施の形態では、第1絶縁層131と第3絶縁層133とがSiNで、第2絶縁層132はSiO2として選択的に第2絶縁層132をBHFによるウェットエッチング法で除去しているが、この組み合わせに限らない。第2絶縁層132を選択的に除去できる組み合わせであれば、いかなる絶縁材料が用いられてもよい。また、ウェットエッチング法を用いているが、第1絶縁層131と第3絶縁層133とがSiO2で、第2絶縁層132はSiNとしてケミカルドライエッチング法を用いてもよい。
【0111】
次に、
図4Gに示すように、ゲート電極140を形成する。具体的には、厚さが50nmのTiNと、厚さが450nmのAlとがスパッタ法により順に堆積される。その後、ゲート電極140が形成される領域に、レジストが塗布された後にリソグラフィー法が用いられてレジストがパターニングされてマスクが形成される。次に、ドライエッチング法が用いられて、ゲート電極140が形成された後にマスクおよびポリマーを除去する。
【0112】
次に、厚さが150nmのSiNからなる第4絶縁層134がプラズマCVD法により堆積された後、厚さが50nmのTiNと、厚さが450nmのAlとがスパッタ法により順に堆積される。その後、ソースフィールドプレート123を形成される領域に、レジストが塗布された後にリソグラフィー法が用いられてレジストがパターニングされてマスクが形成される。次に、ドライエッチング法が用いられて、ソースフィールドプレート123が形成された後にマスクおよびポリマーを除去する。
【0113】
以上の一連の工程を経ることで、
図1に示した構造の半導体装置100が完成する。
【0114】
(実施の形態1の変形例)
続いて、実施の形態1の変形例について説明する。
【0115】
以下に示す変形例では、実施の形態1と比較して、ゲート電極140のドレイン電極122側の張り出し部142dの下面の形状が相違する。実施の形態1との相違点を中心に説明を行い、共通点の説明を省略または簡略化する。
【0116】
[変形例1]
まず、変形例1について、
図5および
図6を用いて説明する。
【0117】
図5は、実施の形態1の変形例1に係る半導体装置100Aのゲート電極140の構成を示す断面図である。
図6は、実施の形態1の変形例1に係る半導体装置100Aのゲート電極140の、ドレイン電極122側への張り出し部142dの下面144aの形状を説明するための拡大断面図である。
【0118】
図5に示すように、第2ゲートフィールドプレート144の下面144aは、傾斜面144cと、平坦面144dと、を含む。下面144aは、
図2に示した平坦面144bを含んでいない。第2ゲートフィールドプレート144の下面144aにおける最低位置(
図6に示す位置P3)の下方に第2絶縁層132がある。本変形例では、第1サイドウォール133dは、第1絶縁層131dおよび第2絶縁層132dの各々の、接合部141側の側面に接するように設けられている。
【0119】
図6に示すように、変形例1に係る半導体装置100Aでは、第3仰角θ3は、第4仰角θ4より大きい。このようにすることで、第2ゲートフィールドプレート144の下面144aの最低位置のドレイン電極122側端(位置P3)と二次元電子ガス110との距離を伸ばせるため、位置P3の電界強度が低減できる。また、SiO
2からなる第2絶縁層132は、SINからなる第1絶縁層131と比べて誘電率が低いため、位置P3の電界強度が低減できるとともに、寄生容量(ゲート-ドレイン間容量Cgd)を低減することができる。
【0120】
以上のように、本変形例に係る半導体装置100Aでは、
図6に示す断面において、第1位置(位置P1)から、第2ゲートフィールドプレート144の下面144aの最高位置のドレイン電極122側端(位置P4)を見たときの、基板101の主面に対する仰角を第4仰角θ4とした場合、第3仰角θ3は、第4仰角θ4より大きい。
【0121】
これにより、第2ゲートフィールドプレート144の下面144aの最低位置(位置P3)と二次元電子ガス110との距離を長くすることができるので、位置P3への電界集中を緩和でき、かつ、寄生容量(ゲート-ドレイン間容量Cgd)を低減することができる。
【0122】
また、本変形例に係る半導体装置100Aでは、第2絶縁層132dは、平面視で、第2ゲートフィールドプレート144の下面144aの最低位置に重なっている。
【0123】
これにより、比誘電率が低いシリコン酸化膜からなる第2絶縁層132dが設けられていることで、位置P3への電界集中を緩和でき、かつ、寄生容量(ゲート-ドレイン間容量Cgd)を低減することができる。
【0124】
なお、本変形例では、第2ゲートフィールドプレート144の下面144aは、平坦面144dを含んでいなくてもよい。また、第2ゲートフィールドプレート144の下面144aは、位置P3よりも第1サイドウォール133d側に位置する平坦面を含んでもよい。例えば、下面144aは、位置P3からX軸の負方向に沿って延びる平坦面が設けられていてもよい。当該平坦面は、
図2に示した平坦面144bよりも上方に位置し、かつ、当該平坦面より下方には第2絶縁層132dの一部が設けられている。このため、電界集中の緩和と寄生容量の低減とを両立させることができる。
【0125】
[変形例2]
次に、変形例2について、
図7および
図8を用いて説明する。
【0126】
図7は、実施の形態1の変形例2に係る半導体装置100Bのゲート電極140の構成を示す断面図である。
図8は、実施の形態1の変形例2に係る半導体装置100Bのゲート電極140の、ドレイン電極122側への張り出し部142dの下面144aの形状を説明するための拡大断面図である。
【0127】
図7に示すように、第2ゲートフィールドプレート144の下面144aは、3つの平坦面144b、144dおよび144fと、2つの傾斜面144cおよび144eと、を含んでいる。具体的には、X軸の正方向に向かって、平坦面144b、傾斜面144e、平坦面144f、傾斜面144cおよび平坦面144dは、この順に並んでいる。平坦面144bは、平坦面144fより下方に位置し、平坦面144fは、平坦面144dより下方に位置している。すなわち、下面144aは、階段状に設けられている。平坦面144b、傾斜面144eおよび平坦面144fは、第1絶縁層131dに接触している。傾斜面144cおよび平坦面144dは、第2絶縁層132dに接触している。傾斜面144cおよび144eの各々の傾斜角は、同じであるが、異なっていてもよい。例えば、傾斜面144cおよび144eの各々の傾斜角は、45度±5度の範囲内である。
【0128】
図8に示すように、変形例2に係る半導体装置100Bでは、第3仰角θ3は、第4仰角θ4より小さい。つまり、第2ゲートフィールドプレート144の下面144aの最低位置のドレイン電極122側端(位置P3)は、仮想線VL4よりも下方に位置する。これにより、位置P3と二次元電子ガス110との距離を縮めることができるため、ゲート電極140とバリア層104とが接するドレイン電極122側端(位置P1)の電界強度を低減できる。
【0129】
また、SiNからなる第1絶縁層131dは、SiO2からなる第2絶縁層132dと比べて誘電率が高い。このため、ゲート電極140とバリア層104とが接するドレイン電極122側端(位置P1)の電界強度をより低減できる。したがって、ゲート電極140の下方のドレイン電極122側に空乏層が広がりやすくなるため、ショートチャネル効果を抑制できる。
【0130】
以上のように、本変形例に係る半導体装置100Bでは、
図8に示す断面において、第1位置(位置P1)から、第2ゲートフィールドプレート144の下面144aの最高位置のドレイン電極122側端(位置P4)を見たときの、基板101の主面に対する仰角を第4仰角θ4とした場合、第4仰角θ4は、第3仰角θ3より大きい。
【0131】
これにより、第2ゲートフィールドプレート144の下面144aの最低位置(位置P3)が二次元電子ガス110に近づくので、接合部141のドレイン電極122側端(位置P1)への電界集中を緩和することができる。
【0132】
また、本変形例に係る半導体装置100Bでは、第2ゲートフィールドプレート144の下面144aは、第1絶縁層131dに接触する。
【0133】
これにより、第2ゲートフィールドプレート144の下面144aの最低位置(位置P3)が二次元電子ガス110に近づくので、接合部141のドレイン電極122側端(位置P1)への電界集中を緩和することができる。また、ゲート電極140の下方のドレイン電極122側に空乏層が広がりやすくなり、ショートチャネル効果を抑制することができる。
【0134】
[変形例3]
次に、変形例3について、
図9を用いて説明する。
【0135】
図9は、実施の形態1の変形例3に係る半導体装置100Cのゲート電極140の下面の形状とソースフィールドプレート123との位置関係を説明するための拡大断面図である。
【0136】
図9に示すように、変形例3に係る半導体装置100Cでは、第3仰角θ3は、第4仰角θ4と等しい。そして、結果的に、第3仰角θ3は、第5仰角θ5に等しくなる。すなわち、仮想線VL3は、仮想線VL4およびVL5の各々に一致する。この結果、第2ゲートフィールドプレート144の下面144aは、位置P3から位置P4に向かって単調増加する傾斜面になる。
【0137】
このようにすることで、ゲート電極140にかかる電界の局所集中がなくなり、電界を均一にできる。したがって、第3仰角θ3を小さくすることにより、電界強度を低減できる。
【0138】
このとき、第5仰角θ5は、45度±5度の範囲内であってもよい。本変形例では、第5仰角θ3は、傾斜面である下面144aの傾斜角に一致する。上述したように、第2ゲートフィールドプレート144の下面144aの形状は、第2絶縁層132dの部分的なエッチングによって形成される。この場合に、等方的なエッチング方法を利用することができるので、下面144aの形状を容易に形成することができる。
【0139】
また、
図9では、ソースフィールドプレート123は、仮想線VL4より下方に突出しない。具体的には、ソースフィールドプレート123の表面は、仮想線VL4に接する。より具体的には、ソースフィールドプレート123の下面のドレイン電極122側端(位置P6)が仮想線VL4に接している。
【0140】
このようにすることで、ソースフィールドプレート123のドレイン電極122側端(位置P6)の電界強度を低減することができる。また、ソースフィールドプレート123のドレイン電極122側端(位置P6)と、ゲート電極140のドレイン電極122側端部(位置P1、P3およびP4)との各々に加わる電界を均一にできる。
【0141】
以上のように、本変形例に係る半導体装置100Cでは、
図9に示す断面において、第1位置(位置P1)から、第2ゲートフィールドプレート144の下面144aの最高位置のドレイン電極122側端(位置P4)を見たときの、基板101の主面に対する仰角を第4仰角θ4とした場合、第4仰角θ4は、第3仰角θ3と等しい。
【0142】
これにより、ゲート電極140に加わる電界の均一化を図ることができ、電界集中の緩和効果を高めることができる。
【0143】
また、本変形例に係る半導体装置100Cは、ゲート電極140の上方に設けられ、ソース電極121と同電位設定されたソースフィールドプレート123を備える。
図9に示す断面において、ソースフィールドプレート123は、第1位置(位置P1)と第2ゲートフィールドプレート144の下面144aの最高位置のドレイン電極122側端(位置P4)とを結ぶ仮想線VL4より下方に突出しない。
【0144】
これにより、ゲート電極140に集中する電界をソースフィールドプレート123によって緩和することができる。また、仮想線VL4よりも下方にソースフィールドプレート123が突出しないので、ソースフィールドプレート123に対する局所的な電界集中を緩和することができる。これにより、寄生容量(ソース-ドレイン間容量Cds)を低減することができる。
【0145】
また、本変形例に係る半導体装置100Cでは、
図9に示す断面において、ソースフィールドプレート123の表面は、仮想線VL4に接する。
【0146】
これにより、ゲート電極140およびソースフィールドプレート123に加わる電界の均一化を図ることができ、電界集中の緩和効果を高めることができる。
【0147】
(実施の形態2)
続いて、実施の形態2に係る半導体装置について説明する。
【0148】
実施の形態2では、実施の形態1と比較して、ドレイン電極側のサイドウォールとソース電極側のサイドウォールとで、高さが異なる点が相違する。以下では、実施の形態1との相違点を中心に説明を行い、共通点の説明を省略または簡略化する。
【0149】
図10は、実施の形態2に係る半導体装置200のゲート電極140の構成を拡大して示す断面図である。
図11は、実施の形態2に係る半導体装置200のサイドウォールの形状を説明するための拡大断面図である。
【0150】
図10および
図11に示すように、本実施の形態に係る半導体装置200では、実施の形態1に係る半導体装置100と比較して、ドレイン電極122側の第1サイドウォール133dの代わりに、第1サイドウォール233dを備える点が相違する。
【0151】
図10および
図11に示すように、第1サイドウォール233dの上面233daの最高位置は、第2サイドウォール133sの上面133saの最高位置より下方に位置する。簡単に言えば、第1サイドウォール233dは、第2サイドウォール133sよりも背が低い(Z軸方向に短い)。なお、第1サイドウォール233dは、第2サイドウォール133sと比べて幅が小さくてもよい。
【0152】
図11には、第1サイドウォール233dの上面233daの最高位置を位置P2で表している。第1サイドウォール233dの高さは、バリア層104の上面と位置P2との距離であり、H
SWdで表される。第2サイドウォール133sの上面133saの最高位置を位置P7で表している。第2サイドウォール133sの高さは、バリア層104の上面と位置P7との距離であり、H
SWsで表される。本実施の形態では、H
SWd<H
SWsの関係を満たしている。なお、本実施の形態では、「高さ」とは、特に断りのない限り、バリア層104の上面からのZ軸方向への距離を表している。
【0153】
また、
図11では、ドレイン電極122側の絶縁層130の厚さ、すなわち、第1絶縁層131dと第2絶縁層132dとの積層構造の厚さをH
FPdで表している。厚さH
FPdは、ゲート電極140のドレイン電極122側への張り出し部142dの下面の最高位置の高さに相当している。また、第1絶縁層131dの厚さをH
Iで表している。
【0154】
また、ソース電極121側の絶縁層130の厚さ、すなわち、第1絶縁層131sと第2絶縁層132sとの積層構造の厚さをHFPsで表している。厚さHFPsは、ゲート電極140のソース電極121側への張り出し部142sの下面の最高位置の高さに相当している。
【0155】
この場合において、HSWs=HFPd=HFPsが成立している。これにより、ソース電極121側およびドレイン電極122側の各々において、張り出し部142dおよび142sの直下方向における二次元電子ガス110の電子密度を高めることができ、オン抵抗を低減することができる。
【0156】
また、HSWd<HIが成立している。すなわち、第1サイドウォール233dの最高位置P2は、第1絶縁層131dと第2絶縁層132dとの界面よりも低い位置に位置している。具体的には、第1サイドウォール233dの最高位置P2は、第1絶縁層131dの上面(張り出し部142dの平坦面144bに接触する部分)と同じ高さになっている。このため、第1サイドウォール233dの上面233daから第1絶縁層131dの上面が滑らかに連続する。これにより、ゲート電極140の張り出し部142dの下面は、第1ゲートフィールドプレート143の下面143aと、第2ゲートフィールドプレート144の下面144a(具体的には、傾斜面144c)とが滑らかに連続する。凹凸が減ることにより、ゲート電極140のカバレッジが向上し、デバイスの信頼性を高めることができる。
【0157】
また、本実施の形態では、第2ゲートフィールドプレート144の下面144aは、実施の形態1と同様に、X軸の正方向へ向かってバリア層104との間隔が単調増加する傾斜面144cを含んでいる。これにより、実施の形態1と同様に、電界集中を分散させることができ、電界強度を低減することができる。
【0158】
以上のように、本実施の形態に係る半導体装置200は、基板101と、基板101の上方に設けられたIII族窒化物半導体からなるチャネル層103と、チャネル層103の上方に設けられた、チャネル層103よりバンドギャップの大きいIII族窒化物半導体からなるバリア層104と、バリア層104の上方に、基板101の主面におけるX軸方向において、互いに間隔を空けて設けられたソース電極121およびドレイン電極122と、X軸方向において、ソース電極121とドレイン電極122との間で、各々に対して間隔を空けて設けられたゲート電極140と、ゲート電極140とソース電極121およびドレイン電極122との間で、バリア層104の上方に設けられた絶縁層130と、を備える。絶縁層130は、最下層にシリコン窒化物からなる第1絶縁層131と、第1絶縁層131の上方にシリコン酸化物からなる第2絶縁層132と、を含む。ゲート電極140は、バリア層104とショットキー接合した接合部141と、X軸方向において、接合部141よりもソース電極121側およびドレイン電極122側の各々に張り出した張り出し部142sおよび142dと、を含む。絶縁層130は、基板101の主面に直交するZ軸方向における張り出し部142dとバリア層104との間で、接合部141とドレイン電極122との間の絶縁層130の接合部141側端(接合部141側の端部)に設けられた第1サイドウォール233dと、接合部141とソース電極121との間の絶縁層130の接合部141側端(接合部141側の端部)に設けられた第2サイドウォール133sと、を含む。張り出し部142dは、平面視における第1サイドウォール233dの接合部141側端である第1位置から、第1サイドウォール233dのドレイン電極122側端である第2位置までの区間の第1ゲートフィールドプレート143と、平面視における第2位置から、張り出し部142dのドレイン電極122側端である第3位置までの区間の第2ゲートフィールドプレート144と、を含む。第2ゲートフィールドプレート144とバリア層104との間には、積層された第1絶縁層131dと第2絶縁層132dとが設けられる。X軸方向およびZ軸方向の各々に平行で、かつ、接合部141を通る断面(XZ断面)において、第1サイドウォール133dの上面133daの第1位置(位置P1)における接線(仮想線VL1)は、主面に対する第1仰角θ1の傾きを有し、第1ゲートフィールドプレート143の下面143aの最高位置(位置P2)は、第1位置から見て、基板101の主面に対する第2仰角θ2の傾きを有し、第2ゲートフィールドプレート144の下面144aの最低位置のドレイン電極122側端(位置P3)は、第1位置から見て、基板101の主面に対する第3仰角θ3の傾きを有する。第1サイドウォール233dの上面233daの最高位置(位置P2)は、第2サイドウォール133sの上面133daの最高位置(位置P7)より下方に位置する。
【0159】
これにより、チャネル層103内にはバリア層104との界面近傍に二次元電子ガス110が発生するので、発生した二次元電子ガス110をチャネルとして利用したトランジスタを実現することができる。また、ゲート電極140が接合部141と張り出し部142dとを含むことにより、ゲート長(Lg)の微細化と、張り出し部142dによる電界緩和とを実現しやすくなる。
【0160】
また、半導体装置200では、第1サイドウォール233dの高さが低くなるため、第1ゲートフィールドプレート143と二次元電子ガス110との距離が短くなる。そのため、トランジスタのオフ時に、チャネル層103内の空乏層が広がりやすくすることができ、ショートチャネル効果を抑制することができる。よって、ソース電極121とドレイン電極122との間のオフリーク電流を抑制することができるので、半導体装置200のオフ特性を向上させることができる。
【0161】
また、第2サイドウォール133sの高さが高いため、第2サイドウォール133sの下方の二次元電子ガス110の電子密度が高くなる。このため、ゲート電極140とソース電極121との間の寄生抵抗を低抵抗にできるので、オン抵抗を低抵抗化することができる。
【0162】
このように、本実施の形態に係る半導体装置200によれば、オン抵抗の低抵抗化とオフ特性の向上との両立を実現することができる。
【0163】
また、本実施の形態に係る半導体装置200では、第2ゲートフィールドプレート144の下面144aは、ゲート電極140からドレイン電極122への方向で、バリア層104との間隔が単調増加する傾斜面144cを含む。
【0164】
これにより、電界をゲート電極140のドレイン電極122側の端部および第2ゲートフィールドプレート144の下面144aの最低位置(位置P3)へ分散させることができ、電界集中を緩和することができる。
【0165】
ここで、
図12は、本実施の形態に係る半導体装置200のゲート電極140の、ドレイン電極122側の張り出し部142dの下面144aの形状を説明するための拡大断面図である。本実施の形態においても、
図12に示すように、第1仰角θ1~第5仰角θ5が定義される。第1仰角θ1~第5仰角θ5はそれぞれ、実施の形態1に係る半導体装置100の場合と同じであり、仮想線VL1~VL5および位置P1~P5によって定義される。
【0166】
図12に示すように、第2仰角θ2は、第3仰角θ3より大きい。また、第2仰角θ2は、第5仰角θ5より大きい。第3仰角θ3は、第4仰角θ4より大きい。これらにより、実施の形態1の場合と同様に、電界緩和と寄生容量の低減とを実現することができる。
【0167】
なお、後述する変形例の場合では、第2仰角θ2は、第3仰角θ3より小さくなる場合(
図15の半導体装置200B)がある。また、図には示していないが、第2仰角θ2は、第3仰角θ3に等しくてもよい。また、第3仰角θ3は、第4仰角θ4より小さくてもよい。また、第3仰角θ3と第4仰角θ4と第5仰角θ5とは等しくてもよい。このように、本実施の形態においても、実施の形態1およびその変形例において説明した各仰角に関わる変形例を適用することができる。
【0168】
[製造方法]
以下、
図13A~
図13Eを参照しながら、本実施の形態に係る半導体装置200の製造方法を説明する。
【0169】
図13A~
図13Eは、それぞれ、本実施の形態に係る半導体装置200の製造方法の各構成を説明するための断面図である。
図13A~
図13Eはそれぞれ、製造途上における半導体装置200の断面構成を示している。なお、各図に示されている、バリア層104の上面からZ軸方向に延びる3本の線L1~L3はそれぞれ、
図4Aに示した線L1~L3と同じである。
【0170】
まず、第2絶縁層132を形成するまでの工程は、実施の形態1と同様である。すなわち、
図4Aおよび
図4Bを用いて説明した処理によって、基板101の上方に、バッファ層102、チャネル層103、バリア層104、第1絶縁層131、ソース電極121、ドレイン電極122および第2絶縁層132が形成される。
【0171】
次に、
図13Aに示すように、所定の領域が開口したレジストパターン250を形成する。具体的には、レジストが塗布された後に、リソグラフィー法によりレジストがパターニングされて、第3開口部132B(
図13Bを参照)を形成する領域以外にマスク(レジストパターン250)が形成される。レジストパターン250に設けられる開口は、例えば、線L1と線L3との間の範囲を除去することで形成される。
【0172】
次に、
図13Bに示すように、ウェットエッチング法が用いられて第2絶縁層132を選択的に除去することで、第3開口部132Bが形成された後にマスク(レジストパターン250)を除去する。例えば、室温のBHFを用いて第2絶縁層132の一部を選択的に除去する。なお、BHFの混合比は任意のものを用いてもよいし、DHFを用いて第2絶縁層132を選択的に除去してもよい。
【0173】
なお、本実施の形態では、第1絶縁層131がSiNで、第2絶縁層132はSiO2として選択的に第2絶縁層132をBHFによるウェットエッチング法で除去しているが、この組み合わせに限らない。第2絶縁層132を選択的に除去できる組み合わせであればよい。ウェットエッチング法を用いているが、第1絶縁層131がSiO2で、第2絶縁層132はSiNとしてケミカルドライエッチング法を用いてもよい。
【0174】
次に、
図13Cに示すように、第2開口部132Aと、第3絶縁層233と、を形成する。具体的には、まず、レジストが塗布された後に、リソグラフィー法により当該レジストがパターニングされてマスクが形成される。具体的には、平面視において、レジストパターンのドレイン電極122側端部は、第3開口部132Bの中(具体的には、線L1に一致する位置)に位置する。また、レジストパターンのソース電極121側端部は、第3開口部132Bよりソース電極121側の第2絶縁層132上(具体的には、線L2に一致する位置)になるように位置する。
【0175】
次に、ドライエッチング法が用いられて、バリア層104が露出するように、第1絶縁層131および第2絶縁層132に第2開口部132Aを形成する。第2開口部132Aが形成された後に、マスクおよびポリマーを除去する。
【0176】
次に、厚さが100nmのSiNからなる第3絶縁層233がプラズマCVD法により堆積される。第3絶縁層233は、第2開口部132Aを埋めるように設けられる。
【0177】
次に、
図13Dに示すように、ドライエッチング法が用いられて第3絶縁層233をエッチバックする。これにより、バリア層104が露出するように第1サイドウォール233dおよび第2サイドウォール133sが形成される。
【0178】
次に、
図13Eに示すように、ゲート電極140を形成する。具体的には、厚さが50nmのTiNと、厚さが450nmのAlとがスパッタ法により順に堆積される。その後、ゲート電極140が形成される領域に、レジストが塗布された後にリソグラフィー法が用いられてレジストがパターニングされてマスクが形成される。次に、ドライエッチング法が用いられて、ゲート電極140が形成された後にマスクおよびポリマーを除去する。
【0179】
以降の工程は、実施の形態1と同様である。具体的には、第4絶縁層134およびソースフィールドプレート123を形成する。
【0180】
以上の一連の工程を経ることで、
図10に示した構造の半導体装置200が完成する。
【0181】
(実施の形態2の変形例)
続いて、実施の形態2の変形例について説明する。
【0182】
以下に示す変形例では、実施の形態2と比較して、第1サイドウォール233dの高さおよび/またはゲート電極140の張り出し部142dの下面の形状が相違する。以下では、実施の形態2との相違点を中心に説明を行い、共通点の説明を省略または簡略化する。
【0183】
[変形例1]
まず、変形例1について、
図14を用いて説明する。
【0184】
図14は、実施の形態2の変形例1に係る半導体装置200Aのサイドウォールの形状を説明するための拡大断面図である。
図14に示すように、本変形例では、実施の形態2と比較して、第1サイドウォール233dの高さが高くなっている。具体的には、第1サイドウォール233dの高さH
SWdは、第2サイドウォール133sの高さH
SWsより低く、第1絶縁層131dの膜厚H
Iよりも高い。
【0185】
この構成により、第1サイドウォール233dの直下方向において、二次元電子ガス110とゲート電極140の張り出し部142dとの距離を長く確保しやすくなるので、寄生容量(ゲート-ドレイン間容量Cgd)を低減することができる。
【0186】
[変形例2]
次に、変形例2について、
図15を用いて説明する。
【0187】
図15は、実施の形態2の変形例2に係る半導体装置200Bのサイドウォールの形状を説明するための拡大断面図である。
図15に示すように、本変形例では、実施の形態2と比較して、第1サイドウォール233dの高さがより低くなっている。具体的には、第1サイドウォール233dの高さH
SWdは、第1絶縁層131dの膜厚H
Iよりも低く、かつ、第1絶縁層131dの上面(張り出し部142dの平坦面144bに接触する部分)よりも低くなっている。このため、第1サイドウォール233dの上面233daと第1絶縁層131dの上面との間には、段差が生じる。
【0188】
この構成により、第1サイドウォール233dがより低くなることで、トランジスタのオフ時に、第1サイドウォール233dの直下方向で空乏層が更に広がりやすくなるので、ショートチャネル効果を抑制することができる。よって、オフ特性を向上させることができる。
【0189】
[変形例3]
次に、変形例3について、
図16を用いて説明する。
【0190】
図16は、実施の形態2の変形例3に係る半導体装置200Cのサイドウォールの形状を説明するための拡大断面図である。
図16に示すように、本変形例では、実施の形態2と比較して、第1サイドウォール233dの形状は同じであるのに対して、ゲート電極140の張り出し部142dの下面の形状が異なっている。具体的には、第2ゲートフィールドプレート144の下面144aが傾斜面を含まない。下面144aは、基板101の主面に平行な平坦面である。
【0191】
この構成であっても、第1サイドウォール233dの高さが低いため、第1ゲートフィールドプレート143と二次元電子ガス110との距離が短くなる。そのため、トランジスタのオフ時に、チャネル層103内の空乏層が広がりやすくすることができ、ショートチャネル効果を抑制することができる。よって、ソース電極121とドレイン電極122との間のオフリーク電流を抑制することができるので、半導体装置200のオフ特性を向上させることができる。
【0192】
また、第2サイドウォール133sの高さが高いため、第2サイドウォール133sの下方の二次元電子ガス110の電子密度が高くなる。このため、ゲート電極140とソース電極121との間の寄生抵抗を低抵抗にできるので、オン抵抗を低抵抗化することができる。
【0193】
このように、本変形例に係る半導体装置200Cであっても、オン抵抗の低抵抗化とオフ特性の向上との両立を実現することができる。
【0194】
[変形例4]
次、変形例4について、
図17を用いて説明する。
【0195】
図17は、実施の形態2の変形例4に係る半導体装置200Dのサイドウォールの形状を説明するための拡大断面図である。
図17に示すように、本変形例では、変形例3と比較して、第1サイドウォール233dの高さが高くなっている。具体的には、第1サイドウォール233dの高さH
SWdは、第2サイドウォール133sの高さH
SWsより低く、第1絶縁層131dの膜厚H
Iよりも高い。
【0196】
この構成により、第1サイドウォール233dの直下方向において、二次元電子ガス110とゲート電極140の張り出し部142dとの距離を長く確保しやすくなるので、寄生容量(ゲート-ドレイン間容量Cgd)を低減することができる。
【0197】
[変形例5]
次に、変形例5について、
図18を用いて説明する。
【0198】
図18は、実施の形態2の変形例5に係る半導体装置200Eのサイドウォールの形状を説明するための拡大断面図である。
図18に示すように、本変形例では、変形例3と比較して、第1サイドウォール233dの高さがより低くなっている。具体的には、第1サイドウォール233dの高さH
SWdは、第1絶縁層131dの膜厚H
Iよりも低く、かつ、第1絶縁層131dの上面(張り出し部142dの平坦面144bに接触する部分)よりも低くなっている。このため、第1サイドウォール233dの上面233daと第1絶縁層131dの上面との間には、段差が生じる。
【0199】
この構成により、第1サイドウォール233dがより低くなることで、トランジスタのオフ時に、第1サイドウォール233dの直下方向で空乏層が更に広がりやすくなるので、ショートチャネル効果を抑制することができる。よって、オフ特性を向上させることができる。
【0200】
(他の実施の形態)
以上、1つまたは複数の態様に係る半導体装置について、実施の形態に基づいて説明したが、本開示は、これらの実施の形態に限定されるものではない。例えば、実施の形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態や、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で実施の形態における構成要素および機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本開示に含まれる。
【0201】
例えば、上記の各実施の形態および変形例では、第2絶縁層132がソース電極121およびドレイン電極122を覆う例を示したが、これに限定されない。第2絶縁層132は、ゲート電極140の張り出し部142sおよび142dの直下方向に少なくとも配置されていればよい。すなわち、平面視でゲート電極140に重ならない範囲、例えば、ゲート電極140とソース電極121との間、ゲート電極140とドレイン電極122との間、および、ソース電極121およびドレイン電極122の直上方向などには、第2絶縁層132は設けられていなくてもよい。
【0202】
また、上記の実施の形態は、請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0203】
本開示に係る半導体装置は、高速動作が要求される通信機器やインバータ、および、電源回路等に用いられるパワースイッチング素子等に有用である。
【符号の説明】
【0204】
100、100A、100B、100C、200、200A、200B、200C、200D、200E 半導体装置
101 基板
102 バッファ層
103 チャネル層
104 バリア層
110 二次元電子ガス
121 ソース電極
122 ドレイン電極
123 ソースフィールドプレート
130 絶縁層
131、131d、131s 第1絶縁層
131A 第1開口部
132、132d、132s 第2絶縁層
132A 第2開口部
132B 第3開口部
133、233 第3絶縁層
133d、233d 第1サイドウォール
133da、133sa、233da 上面
133s 第2サイドウォール
134 第4絶縁層
140 ゲート電極
141 接合部
142d、142s 張り出し部
143 第1ゲートフィールドプレート
143a、144a 下面
144 第2ゲートフィールドプレート
144b、144d、144f 平坦面
144c、144e 傾斜面
150、250 レジストパターン
151、152 マスク部