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特許7575646工作機械、加工プログラム生成支援方法、コンピュータ、及び、コンピュータプログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】工作機械、加工プログラム生成支援方法、コンピュータ、及び、コンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/4093 20060101AFI20241022BHJP
   B23Q 15/00 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
G05B19/4093 F
B23Q15/00 301E
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2024547323
(86)(22)【出願日】2024-04-26
(86)【国際出願番号】 JP2024016524
【審査請求日】2024-08-08
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000114787
【氏名又は名称】ヤマザキマザック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142871
【弁理士】
【氏名又は名称】和田 哲昌
(74)【代理人】
【識別番号】100094743
【弁理士】
【氏名又は名称】森 昌康
(74)【代理人】
【識別番号】100175628
【弁理士】
【氏名又は名称】仁野 裕一
(72)【発明者】
【氏名】片山 拓朗
(72)【発明者】
【氏名】小池 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】山本 幹人
(72)【発明者】
【氏名】木内 優
(72)【発明者】
【氏名】熊坂 拓也
【審査官】亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/024438(WO,A1)
【文献】特開平1-281843(JP,A)
【文献】特開昭61-105610(JP,A)
【文献】特開平6-320386(JP,A)
【文献】特開平8-57744(JP,A)
【文献】特開2005-334987(JP,A)
【文献】特開平5-146943(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/18 - 19/46
B23Q 15/00
B23Q 3/155
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の加工工程においてそれぞれ利用される複数の工具を、それぞれ複数の被割当工具としてコンピュータに設定させ、
前記複数の加工工程のうちの被選択工程において利用される工具を、前記複数の被割当工具のうちの前記被選択工程に対応する第1被割当工具から第1被選択工具に変更するユーザからの入力を前記コンピュータに受け付けさせ、
前記被選択工程以外の前記複数の加工工程のうちのいずれかの工程であって、前記第1被割当工具から前記第1被選択工具に変更することにより、前記複数の被割当工具のうち該工程に対応する第2被割当工具が利用できなくなる改善要求工程が存在するか否かを前記コンピュータに判定させ、
前記改善要求工程が存在するとき、前記改善要求工程で利用される工具を、前記第2被割当工具から、前記改善要求工程で利用可能な第2被選択工具に前記コンピュータに変更させる、
ことを含む、加工プログラム生成支援方法。
【請求項2】
前記第2被割当工具によって削り取られる第1被切削形状を前記コンピュータに算出させて前記第1被切削形状をディスプレイに表示させ、
前記改善要求工程の変更に基づいて、前記改善要求工程において削り取られる第2被切削形状を前記コンピュータに算出させ、前記ディスプレイに前記第2被切削形状を表示させることをさらに含む、
請求項1に記載の加工プログラム生成支援方法。
【請求項3】
前記被選択工程は、前記改善要求工程で利用される工具が挿入される挿入口を形成する前加工工程を含み、
前記改善要求工程は、前記前加工工程において形成される前記挿入口に該工具を挿入させ、前記挿入口の側面を削る側面拡大工程を含む、
請求項1に記載の加工プログラム生成支援方法。
【請求項4】
前記第1被選択工具によって形成される前記挿入口の大きさが前記第1被割当工具によって形成される前記挿入口の大きさよりも小さくなることによって、前記第2被割当工具を前記挿入口に挿入できない場合、前記コンピュータは前記改善要求工程が存在すると判定する、
請求項3に記載の加工プログラム生成支援方法。
【請求項5】
前記改善要求工程が存在するとき、前記第2被割当工具を、前記第1被選択工具によって形成される前記挿入口に挿入可能な形状を有する前記第2被選択工具に前記コンピュータが変更する、
請求項4に記載の加工プログラム生成支援方法。
【請求項6】
前記改善要求工程は、前記被選択工程で利用される工具が挿入される挿入口を形成する前加工工程を含み、
前記被選択工程は、前記前加工工程において形成される前記挿入口に該工具を挿入させ、前記挿入口の側面を削る側面拡大工程を含む、
請求項1に記載の加工プログラム生成支援方法。
【請求項7】
前記第1被選択工具が前記第1被割当工具よりも大きくなることによって、前記第1被選択工具が前記挿入口に挿入できない場合、前記コンピュータは前記改善要求工程が存在すると判定する、
請求項6に記載の加工プログラム生成支援方法。
【請求項8】
前記改善要求工程が存在するとき、前記第2被割当工具を、前記第1被選択工具を挿入可能な大きさの挿入口を形成するために使用可能な前記第2被選択工具に前記コンピュータが変更する、
請求項7に記載の加工プログラム生成支援方法。
【請求項9】
前記挿入口を形成するために使用される工具が削孔工具であって、
前記挿入口に挿入される工具が旋削工具と、溝入れ工具とのうちの少なくとも1つである、
請求項3から8のいずれかに記載の加工プログラム生成支援方法。
【請求項10】
前記挿入口を形成するために使用される工具が溝入れ工具であって、
前記挿入口に挿入される工具が旋削工具である、
請求項3から8のいずれかに記載の加工プログラム生成支援方法。
【請求項11】
前記改善要求工程が存在するか否かを前記コンピュータに判定させることは、
前記コンピュータの記憶装置に、前記被選択工程と前記改善要求工程との対応関係を記憶させ、
前記入力によって受け付けた前記被選択工程から、前記対応関係に基づき前記改善要求工程を表す情報を取得し、前記情報に基づき、前記複数の加工工程の中に前記改善要求工程に相当する工程が含まれているかどうかを前記コンピュータに探索させる
ことを含む、
請求項1からのいずれかに記載の加工プログラム生成支援方法。
【請求項12】
前記改善要求工程がないとき、前記複数の被割当工具のうち前記第1被割当工具を前記第1被選択工具に修正した前記加工プログラムを前記コンピュータに生成させ、
前記改善要求工程が有るとき、前記複数の被割当工具のうち前記第1被割当工具を前記第1被選択工具に修正し、前記第2被割当工具を前記第2被選択工具に修正した前記加工プログラムを前記コンピュータに生成させる、
請求項1からのいずれかに記載の加工プログラム生成支援方法。
【請求項13】
請求項1からのいずれかの加工プログラム生成支援方法を実行するように構成されるコンピュータ。
【請求項14】
請求項1からのいずれかの加工プログラム生成支援方法を実行するように構成されるコンピュータを備える工作機械。
【請求項15】
コンピュータによる実行時に、請求項1からのいずれかの加工プログラム生成支援方法を前記コンピュータに実行させる指示を備えるコンピュータプログラム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械、加工プログラム生成支援方法、コンピュータ、及び、コンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1~特許文献3は、対話式の加工プログラム作成装置を示している。特許文献1及び特許文献2は、加工形状に応じた最適な工具を自動で選択して加工プログラムを作成する技術を示している。特許文献3は、ユーザが選択した工具に基づいて、ユーザが作成した加工領域を加工するツールパスを生成する技術を示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6674076号
【文献】特許第4286836号
【文献】特開2013―186866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1、2の技術によって選定される最適な工具が工作機械では利用できない場合、別の工具を選択する必要がある。特許文献3は、このように最適な工作機械が利用できない場合であってもユーザが選択する工具によって加工する加工プログラムを生成することができる。しかし、加工プログラムは、複数の加工工程から成るものが多く、1つの工程の工具を変更したときに別の工程の工具が利用できなくなることがある。特許文献3に係る発明はこのような問題に対応することができない。
【0005】
本願に開示される技術の課題は、例えば、複数の加工工程から成る加工プログラムの1つの工程の工具を変更する際に、その変更において影響される別の工程について工具を適切に変更することを可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1態様に係る加工プログラム生成支援方法は、複数の加工工程においてそれぞれ利用される複数の工具を、それぞれ複数の被割当工具としてコンピュータに設定させることを含む。当該方法は、複数の加工工程のうちの被選択工程において利用される工具を、複数の被割当工具のうちの被選択工程に対応する第1被割当工具から第1被選択工具に変更するユーザからの入力をコンピュータに受け付けさせることを含む。当該方法は、被選択工程以外の複数の加工工程のうちのいずれかの工程であって、第1被割当工具から第1被選択工具に変更することにより、複数の被割当工具のうち該工程に対応する第2被割当工具が利用できなくなる改善要求工程が存在するか否かをコンピュータに判定させることを含む。当該方法は、改善要求工程が存在するとき、改善要求工程で利用される工具を、第2被割当工具から、改善要求工程で利用可能な第2被選択工具にコンピュータに変更させることを含む。
【0007】
本開示の第2態様に係る加工プログラム生成支援方法は、複数の加工工程においてそれぞれ利用される複数の工具を、それぞれ複数の被割当工具としてコンピュータに設定させることを含む。当該方法は、複数の被割当工具の各々のツールパスを被設定ツールパスとしてコンピュータに設定させることを含む。当該方法は、複数の加工工程のうちの被選択工程において利用される工具を、複数の被割当工具のうちの被選択工程に対応する第1被割当工具から第1被選択工具に変更するユーザからの入力をコンピュータに受け付けさせることを含む。当該方法は、被選択工程以外の複数の加工工程のうちのいずれかの工程であって、第1被割当工具から第1被選択工具に変更することにより、複数の被割当工具のうち該工程に対応する第2被割当工具の被設定ツールパスを変更しなければ第1被選択工具が利用できなくなる改善要求工程が存在するか否かをコンピュータに判定させることを含む。当該方法は、改善要求工程が存在するとき、第2被割当工具のツールパスを、第1被選択工具が利用可能となるようにコンピュータに変更させることを含む。
【0008】
本開示の第3態様に係る加工プログラム生成支援方法は、複数の加工工程においてそれぞれ利用される複数の工具を、それぞれ複数の被割当工具としてコンピュータに設定させることを含む。当該方法は、複数の被割当工具の各々のツールパスを被設定ツールパスとしてコンピュータに設定させることを含む。当該方法は、複数の加工工程のうちの被選択工程において利用される工具のツールパスを、該工具の被設定ツールパスから被選択ツールパスに変更するユーザからの入力をコンピュータに受け付けさせることを含む。当該方法は、被選択工程以外の複数の加工工程のうちのいずれかの工程であって、被選択ツールパスに変更することにより、複数の被割当工具のうち該工程に対応する第2被割当工具が利用できなくなる改善要求工程が存在するか否かを前記コンピュータに判定させることを含む。当該方法は、改善要求工程が存在するとき、改善要求工程で利用される工具を、第2被割当工具から、改善要求工程で利用可能な第2被選択工具にコンピュータに変更させることを含む。
【0009】
本開示の第4態様によれば、第1態様または第3態様による加工プログラム生成支援方法では、被選択工程は、改善要求工程で利用される工具が挿入される挿入口を形成する加工工程を含む。改善要求工程は、前加工工程において形成される挿入口に該工具を挿入させ、挿入口の側面を削る側面拡大工程を含む。
【0010】
本開示の第5態様によれば、第4態様による加工プログラム生成支援方法では、第1被選択工具によって形成される挿入口の大きさが第1被割当工具によって形成される挿入口間の大きさよりも小さくなることによって、第2被割当工具を挿入口に挿入できない場合、コンピュータは改善要求工程が存在すると判定する。
【0011】
本開示の第6態様によれば、第5態様による加工プログラム生成支援方法では、改善要求工程が存在するとき、第2被割当工具を、第1被選択工具によって形成される挿入口に挿入可能な形状を有する第2被選択工具にコンピュータが変更する。
【0012】
本開示の第7態様によれば、第1態様または第2態様による加工プログラム生成支援方法では、改善要求工程は、被選択工程で利用される工具が挿入される挿入口を形成する前加工工程を含む。被選択工程は、前加工工程において形成される挿入口に該工具を挿入させ、挿入口の側面を削る側面拡大工程を含む。
【0013】
本開示の第8態様によれば、第7態様による加工プログラム生成支援方法では、第1被選択工具が第1被割当工具よりも大きくなることによって、第1被選択工具を挿入口に挿入できない場合、コンピュータは改善要求工程が存在すると判定する。
【0014】
本開示の第9態様によれば、第8態様による加工プログラム生成支援方法では、改善要求工程が存在するとき、第2被割当工具を、第1被選択工具を挿入可能な大きさの挿入口を形成するために使用可能な第2被選択工具にコンピュータが変更する。
【0015】
本開示の第10態様によれば、第4態様から第9態様のいずれかによる加工プログラム生成支援方法では、挿入口を形成するために使用される工具が削孔工具であって、挿入口に挿入される工具が旋削工具と、溝入れ工具とのうちの少なくとも1つである。
【0016】
本開示の第11態様によれば、第4態様から第9態様のいずれかによる加工プログラム生成支援方法では、挿入口を形成するために使用される工具が溝入れ工具であって、挿入口に挿入される工具が旋削工具である。
【0017】
本開示の第12態様によれば、第1から第11態様のいずれかによる加工プログラム生成支援方法は、第2被割当工具によって削り取られる第1被切削形状をコンピュータに算出させて第1被切削形状をディスプレイに表示させ、改善要求工程の変更に基づいて、改善要求工程において削り取られる第2被切削形状をコンピュータに算出させ、ディスプレイに第2被切削形状を表示させることをさらに含む。
【0018】
本開示の第13態様によれば、第1態様から第12態様のいずれかによる加工プログラム生成支援方法では、改善要求工程が存在するか否かをコンピュータに判定させることは、コンピュータの記憶装置に、被選択工程と改善要求工程との対応関係を記憶させ、入力によって受け付けた被選択工程から、対応関係に基づき改善要求工程を表す情報を取得し、情報に基づき、複数の加工工程の中に改善要求工程に相当する工程が含まれているかどうかをコンピュータに探索させることを含む。
【0019】
本開示の第14態様によれば、第1態様から第13態様のいずれかによる加工プログラム生成支援方法では、改善要求工程がないとき、複数の被割当工具のうち第1被割当工具を第1被選択工具に修正した加工プログラムをコンピュータに生成させる。改善要求工程が有るとき、複数の被割当工具のうち第1被割当工具を第1被選択工具に修正し、第2被割当工具を第2被選択工具に修正した加工プログラムをコンピュータに生成させる。
【0020】
本開示の第15態様によれば、第1態様から第14態様のいずれかによる加工プログラム生成支援方法では、複数の加工工程においてそれぞれ利用される複数の工具を複数の被割当工具としてコンピュータに設定させることは、複数の加工工程において複数の被割当工具を利用して加工するような一次加工プログラムを生成することを含む。
【0021】
本開示の第16態様に係るコンピュータは、第1態様から第15態様のいずれかによる加工プログラム生成支援方法を実行するように構成される。
【0022】
本開示の第17態様に係る工作機械は、第1態様から第15態様のいずれかによる加工プログラム生成支援方法を実行するように構成されるコンピュータを備える。
【0023】
本開示の第18態様に係るコンピュータプログラムは、コンピュータによる実行時に、第1態様から第15態様のいずれかによる加工プログラム生成支援方法をコンピュータに実行させる指示を備える。
【0024】
本開示の第19態様に係るコンピュータ読出可能媒体は、コンピュータによる実行時に、第1態様から第15態様のいずれかによる加工プログラム生成支援方法をコンピュータに実行させる指示を備える。
【0025】
第1態様に係る加工プログラム生成支援方法、第1態様に係る加工プログラム生成支援方法を実行するように構成される第16態様に係るコンピュータ及び第17態様に係る工作機械、並びに、第1態様に係る加工プログラム生成支援方法をコンピュータに実行させる指示を備える第18態様に係るコンピュータプログラム及び第19態様に係るコンピュータ読出可能媒体では、第1被割当工具から第1被選択工具に変更することにより、複数の被割当工具のうち該工程に対応する第2被割当工具が利用できなくなる改善要求工程が存在するか否かをコンピュータに判定させ、改善要求工程が存在するとき、改善要求工程で利用される工具を、第2被割当工具から、改善要求工程で利用可能な第2被選択工具にコンピュータに変更させる。したがって、複数の加工工程から成る加工プログラムの1つの工程の工具を変更する際に、その変更において影響される別の工程について工具を適切に変更することを可能とする。
【0026】
第2態様に係る加工プログラム生成支援方法、第2態様に係る加工プログラム生成支援方法を実行するように構成される第16態様に係るコンピュータ及び第17態様に係る工作機械、並びに、第2態様に係る加工プログラム生成支援方法をコンピュータに実行させる指示を備える第18態様に係るコンピュータプログラム及び第19態様に係るコンピュータ読出可能媒体では、第1被割当工具から第1被選択工具に変更することにより、複数の被割当工具のうち該工程に対応する第2被割当工具の被設定ツールパスを変更しなければ第1被選択工具が利用できなくなる改善要求工程が存在するか否かをコンピュータに判定させ、改善要求工程が存在するとき、第2被割当工具のツールパスを、第1被選択工具が利用可能となるようにコンピュータに変更させる。したがって、複数の加工工程から成る加工プログラムの1つの工程の工具を変更する際に、その変更において影響される別の工程についてツールパスを適切に変更することを可能とする。
【0027】
第3態様に係る加工プログラム生成支援方法、第3態様に係る加工プログラム生成支援方法を実行するように構成される第16態様に係るコンピュータ及び第17態様に係る工作機械、並びに、第3態様に係る加工プログラム生成支援方法をコンピュータに実行させる指示を備える第18態様に係るコンピュータプログラム及び第19態様に係るコンピュータ読出可能媒体では、被選択ツールパスに変更することにより、複数の被割当工具のうち該工程に対応する第2被割当工具が利用できなくなる改善要求工程が存在するか否かをコンピュータに判定させ、改善要求工程が存在するとき、改善要求工程で利用される工具を、第2被割当工具から、改善要求工程で利用可能な第2被選択工具に変更させる。したがって、複数の加工工程から成る加工プログラムの1つの工程のツールパスを変更する際に、その変更において影響される別の工程について工具を適切に変更することを可能とする。
【0028】
第4態様に係る加工プログラム生成支援方法、第4態様に係る加工プログラム生成支援方法を実行するように構成される第16態様に係るコンピュータ及び第17態様に係る工作機械、並びに、第4態様に係る加工プログラム生成支援方法をコンピュータに実行させる指示を備える第18態様に係るコンピュータプログラム及び第19態様に係るコンピュータ読出可能媒体では、前加工工程の工具が変更されると側面拡大工程の該挿入口に挿入可能な工具が変化するため、前加工工程を被選択工程とし、側面拡大工程を改善要求工程とすることによって、有用な加工プログラムを生成することができる。
【0029】
第5態様に係る加工プログラム生成支援方法、第5態様に係る加工プログラム生成支援方法を実行するように構成される第16態様に係るコンピュータ及び第17態様に係る工作機械、並びに、第5態様に係る加工プログラム生成支援方法をコンピュータに実行させる指示を備える第18態様に係るコンピュータプログラム及び第19態様に係るコンピュータ読出可能媒体では、前加工工程の工具によって形成される挿入口の大きさが小さくなると、側面拡大工程において該挿入口に挿入可能な工具が小さくなり、予め設定された第2被割当工具が利用できなくなる。このような場合において、側面拡大工程を改善要求工程とすることはさらに有効である。
【0030】
第6態様に係る加工プログラム生成支援方法、第6態様に係る加工プログラム生成支援方法を実行するように構成される第16態様に係るコンピュータ及び第17態様に係る工作機械、並びに、第6態様に係る加工プログラム生成支援方法をコンピュータに実行させる指示を備える第18態様に係るコンピュータプログラム及び第19態様に係るコンピュータ読出可能媒体では、挿入口に挿入可能な形状を有する第2被選択工具を選択するため、第2被選択工具を改善要求工程で利用可能とすることができる。
【0031】
第7態様に係る加工プログラム生成支援方法、第7態様に係る加工プログラム生成支援方法を実行するように構成される第16態様に係るコンピュータ及び第17態様に係る工作機械、並びに、第7態様に係る加工プログラム生成支援方法をコンピュータに実行させる指示を備える第18態様に係るコンピュータプログラム及び第19態様に係るコンピュータ読出可能媒体では、側面拡大工程の工具が変更されると該工具を挿入可能な挿入口を形成できる工具が変化するため、側面拡大工程を被選択工程とし、前加工工程を改善要求工程とすることによって、有用な加工プログラムを生成することができる。
【0032】
第8態様に係る加工プログラム生成支援方法、第8態様に係る加工プログラム生成支援方法を実行するように構成される第16態様に係るコンピュータ及び第17態様に係る工作機械、並びに、第8態様に係る加工プログラム生成支援方法をコンピュータに実行させる指示を備える第18態様に係るコンピュータプログラム及び第19態様に係るコンピュータ読出可能媒体では、側面拡大工程において該挿入口に挿入可能な工具が大きくなると、予め設定された第2被割当工具では該工具を挿入可能な挿入口を形成できなくなる。したがって、側面拡大工程の工具の変更によって、挿入口が要求機能を発揮することができなくなり、第2被割当工具を利用できなくなる。このような場合において、前加工工程を改善要求工程とすることはさらに有効である。
【0033】
第9態様に係る加工プログラム生成支援方法、第9態様に係る加工プログラム生成支援方法を実行するように構成される第16態様に係るコンピュータ及び第17態様に係る工作機械、並びに、第9態様に係る加工プログラム生成支援方法をコンピュータに実行させる指示を備える第18態様に係るコンピュータプログラム及び第19態様に係るコンピュータ読出可能媒体では、第1被選択工具を挿入可能な大きさの挿入口を形成するために使用可能な第2被選択工具に変更するため、挿入口が要求機能を発揮することができるようになる。したがって、第2被選択工具を改善要求工程で利用可能とすることができる。
【0034】
第10態様に係る加工プログラム生成支援方法、第10態様に係る加工プログラム生成支援方法を実行するように構成される第16態様に係るコンピュータ及び第17態様に係る工作機械、並びに、第10態様に係る加工プログラム生成支援方法をコンピュータに実行させる指示を備える第18態様に係るコンピュータプログラム及び第19態様に係るコンピュータ読出可能媒体では、削孔工具によって長尺の穴をあけて、旋削工具、または、溝入れ工具によって穴の側面を広げる一連の加工工程を行う際に有利である。
【0035】
第11態様に係る加工プログラム生成支援方法、第11態様に係る加工プログラム生成支援方法を実行するように構成される第16態様に係るコンピュータ及び第17態様に係る工作機械、並びに、第11態様に係る加工プログラム生成支援方法をコンピュータに実行させる指示を備える第18態様に係るコンピュータプログラム及び第19態様に係るコンピュータ読出可能媒体では、溝入れ工具によってワークの平坦な端面もしくは湾曲した側面に溝状の挿入口を空けて、その挿入口に切削工具を挿入して溝幅を大きくするような一連の加工工程、もしくは、溝入れ工具によって上記削孔工具において開けられた穴の側面に溝状の挿入口を空けて、その挿入口に切削工具を挿入して溝幅を大きくするような一連の加工工程を行う際に有利である。
【0036】
第12態様に係る加工プログラム生成支援方法、第12態様に係る加工プログラム生成支援方法を実行するように構成される第16態様に係るコンピュータ及び第17態様に係る工作機械、並びに、第12態様に係る加工プログラム生成支援方法をコンピュータに実行させる指示を備える第18態様に係るコンピュータプログラム及び第19態様に係るコンピュータ読出可能媒体では、第2被割当工具によって削り取られる第1被切削形状と、第2被選択工具によって削り取られる第2被切削形状をディスプレイに表示させることができるので、変更前後の被切削形状をユーザが視認することができる。
【0037】
第13態様に係る加工プログラム生成支援方法、第13態様に係る加工プログラム生成支援方法を実行するように構成される第16態様に係るコンピュータ及び第17態様に係る工作機械、並びに、第13態様に係る加工プログラム生成支援方法をコンピュータに実行させる指示を備える第18態様に係るコンピュータプログラム及び第19態様に係るコンピュータ読出可能媒体では、コンピュータによる改善要求工程の探索を容易とする。
【0038】
第14態様に係る加工プログラム生成支援方法、第14態様に係る加工プログラム生成支援方法を実行するように構成される第16態様に係るコンピュータ及び第17態様に係る工作機械、並びに、第14態様に係る加工プログラム生成支援方法をコンピュータに実行させる指示を備える第18態様に係るコンピュータプログラム及び第19態様に係るコンピュータ読出可能媒体では、改善要求工程の不具合を修正した加工プログラムをさらに生成することができる。
【0039】
第15態様に係る加工プログラム生成支援方法、第15態様に係る加工プログラム生成支援方法を実行するように構成される第16態様に係るコンピュータ及び第17態様に係る工作機械、並びに、第15態様に係る加工プログラム生成支援方法をコンピュータに実行させる指示を備える第18態様に係るコンピュータプログラム及び第19態様に係るコンピュータ読出可能媒体では、一次加工プログラムを生成しているため、一次加工プログラムを修正することによって、改善要求工程の不具合を修正するばかりでなく、他にもユーザがカスタマイズを行いたい場合に有利である。
【発明の効果】
【0040】
本願に開示される技術によれば、例えば、複数の加工工程から成る加工プログラムの1つの工程の工具を変更する際に、その変更において影響される別の工程について工具を適切に変更することを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1図1は、実施形態に係る工作機械及び工作機械の加工プログラムを生成するためのコンピュータを含むシステムの概略構成を示す図である。
図2図2は、制御装置のハードウェアブロック図である。
図3図3は、コンピュータのハードウェアブロック図である。
図4図4は、一次加工プログラムの一例である。
図5図5は、一次加工プログラムによって加工される加工形状を表す画像の一例である。
図6図6は、旋削ドリルの工具情報の一例である。
図7図7は、旋削ドリルの形状と、被切削形状を説明するための図である。
図8図8は、旋削工具の工具情報の一例である。
図9図9は、旋削工具の形状と、被切削形状を説明するための図である。
図10図10は、一次加工プログラムの編集ウィンドウの一例である。
図11図11は、対応関係データの一例である。
図12図12は、二次加工プログラムの一例である。
図13図13は、二次加工プログラムによって加工される加工形状を表す画像の一例である。
図14図14は、一次加工プログラムの別の一例である。
図15図15は、図14のプログラムによる被切削形状と、溝入れ工具の形状を説明するための図である。
図16図16は、溝入れ工具の工具情報の一例である。
図17図17は、二次加工プログラムの別の一例である。
図18図18は、加工プログラム生成支援方法に係るフローチャートである。
図19図19は、図18のステップS3の詳細の処理の流れを示すフローチャートである。
図20図20は、図19のステップS10の詳細の処理の流れを示すフローチャートである。
図21図21は、図20の処理の続きの加工プログラム生成支援方法に係るフローチャートである。
図22図22は、図21の処理の続きの加工プログラム生成支援方法に係るフローチャートである。
図23図23は、図21の処理の続きの加工プログラム生成支援方法に係るフローチャートである。
図24図24は、図20の処理の続きの加工プログラム生成支援方法に係るフローチャートである。
図25図25は、図24の処理の続きの加工プログラム生成支援方法に係るフローチャートである。
図26図26は、図25の処理の続きの加工プログラム生成支援方法に係るフローチャートである。
図27図27は、図25の処理の続きの加工プログラム生成支援方法に係るフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、この発明をその実施の形態を示す図面に基づいて具体的に説明する。なお、図中において同じ符号は、対応するまたは実質的に同一の構成を示している。
【0043】
図1は、本発明の実施形態に係るシステム10の概略構成を示す。システム10は、工作機械100、コンピュータ200、及び、工作機械100とコンピュータ200とを接続するネットワーク290とを含む。ネットワーク290は、例えば、工場内に設置されるLAN(ローカルエリアネットワーク)である。図示されているネットワーク290は有線ネットワークであるが、ネットワーク290は無線ネットワークであってもよい。なお、図1に示すX軸は、工作機械100の高さ方向に沿い、Y軸は、工作機械100の奥行方向に沿い、Z軸は、工作機械100の幅方向に沿っている。本実施形態では、JIS規格に基づいて、ワークを保持する第1主軸122の回転軸線A3に平行な軸をZ軸としている。本実施形態では、この座標系をワーク座標系と呼ぶ。
【0044】
工作機械100は、ワークW1に対する切削加工(machining)を行う。切削加工は、旋削加工(turning)、ミル加工(milling)、削孔加工(drilling)、ネジ加工(threading)、リーマ加工(reaming)、及び、ボーリング加工(boring)の少なくとも1つを含む。図1に示すように、工作機械100は、コラム110と、第1主軸台120と、第2主軸台121と、を備えている。コラム110、第1主軸台120、及び、第2主軸台121は、基台140の上に配置されている。
【0045】
コラム110は、基台140上において、Y軸方向およびZ軸方向に移動可能である。コラム110には、工具主軸台112が取り付けられている。工具主軸台112は、コラム110に対して、X軸方向に移動可能である。工具主軸台112は、コラム110に対して、Y軸方向に沿う旋回軸線A1周りに旋回可能である。工具主軸台112には、工具主軸114が取り付けられている。工具主軸114は、工具主軸台112に対して回転軸線A2回りに回転可能である。回転軸線A2は、旋回軸線A1に直交する。工具主軸114には、切削工具(machining tool)である工具Taが保持されている。切削工具とは、旋削工具、ミル工具、削孔工具(drilling tool)、溝入れ工具(grooving tool)、ネジ加工工具(threading tool)、リーマ工具(reaming tool)、及び、ボーリング工具(boring tool)を包含する概念である。工作機械100は、工具Taを他の工具に交換するための、図示しない工具交換装置をさらに備える。工具Taは、ワークW1の加工内容に合わせて必要に応じて交換される。
【0046】
本実施形態では、軸線A1と軸線A2との交点を機械原点Omと呼び、回転軸線A2をZm軸とし、旋回軸線A1をYm軸とし、Zm軸とYm軸との夫々に対して垂直な軸をXm軸とする座標系を機械座標系と呼ぶ。機械原点Omから第1工具T1の先端に向かう方向をZm軸の正方向とする。ワーク座標系のZ軸の正方向を機械座標系のZm軸の正方向と同じ方向に向かうように、ワーク座標系のX軸をY軸回りに回転させたときのワーク座標系のX軸の正方向を、機械座標系のXm軸の正方向とする。ワーク座標系のY軸の正方向を機械座標系のYm軸の正方向とする。
【0047】
第1主軸台120は、基台140上に固定されている。第1主軸台120は、第1主軸122を備える。第1主軸122は、回転軸線A3周りに回転可能である。回転軸線A3は、Z軸方向に沿っている。第1主軸122には、第1チャック124を備える。第1チャック124は、ワークW1の第1端を掴持する。第2主軸台121は、基台140上でZ軸方向と平行な方向に移動可能に設けられている。第2主軸台121は、第2主軸123を備える。第2主軸123は、回転軸線A3周りに回転可能である。第2主軸123には、第2チャック125を備える。第2チャック125は、ワークW1の第1端とZ軸方向反対のワークW1の第2端を掴持する。工作機械100は、ワークW1の第2端を加工するときは、ワークW1を第1チャック124に掴持させる。工作機械100は、ワークW1の第1端を加工するときは、ワークW1を第2チャック125に掴持させる。
【0048】
工作機械100は、各回転軸線回りの回転、各旋回軸線回りの旋回及び各軸方向における移動を制御するために、制御装置150を備えている。制御装置150は、基台140に接続されている。ここで、制御装置150は、工作機械100の他の箇所に接続されてもよく、制御信号の送信や検出結果の受信ができれば、基台140とは別に設置されてもよい。制御装置150は、一般に、コンピュータ数値制御(Computer Numerical Control:CNC)装置と呼ばれる。つまり、制御装置150は一種のコンピュータである。
【0049】
図2は、制御装置150のハードウェアブロック図である。図2に示すように、制御装置150は、プロセッサ151と、メモリ152と、通信回路153と、タッチパネル付きディスプレイ154と、を備えている。プロセッサ151と、メモリ152と、通信回路153と、タッチパネル付きディスプレイ154は、バス155を介して互いに接続されている。メモリ152は、加工に必要なプログラム、加工プログラムを編集するプログラム、及び、それらに必要なデータを記憶している。プロセッサ151は、メモリ152に記憶されたプログラムを読み出して、読みだしたプログラムを実行する。これにより、制御装置150の各機能は、実現される。制御装置150が実現する各機能には、切削加工の実行の制御が含まれる。具体的には、メモリ152は、加工プログラム157を記憶している。加工プログラム157は、切削加工を実行するための制御指令を含んでいる。通常、加工プログラム157は、コンピュータ200において編集され、ネットワーク290を介して制御装置150に送信され、メモリ152に記憶される。通信回路153は、ネットワーク290を介してコンピュータ200と通信するための、通信パケットからデータへの変換機能とデータから通信パケットへの変換機能と通信パケット送受信機能とを有している。
【0050】
本実施形態では、メモリ152は、工作機械100に装着可能な工具Taの工具情報158を記憶する。工具情報158とは、工具Taに対応するT番号(T number)、工具Taの名称、工具Taの材質、工具Taの刃の特性(characteristics)、及び工具Taの使用状態(摩耗状態)を含む。工具Taの刃の特性とは、工具Taの呼び径、工具長(tool length)、工具径(tool diameter)、軸方向オフセット(axial offset)、径方向オフセット(radial offset)、刃数、刃先幅、刃先形状を規定する円弧の曲率半径(刃先の曲率半径)R、刃の割出角度(indexing angle)、有効な主軸回転方向、及び、刃の向きを含む。
【0051】
工具長とは、摩耗のない(新品の)工具Taが工具主軸114に取り付けられた状態での回転軸線A2に沿う向き(以下、軸方向と呼ぶ)の工具Taの長さである。別の言い方をすれば、工具長とは、機械座標系での工具TaのZm軸方向の長さである。工具径とは、摩耗のない(新品の)工具Taが工具主軸114に取り付けられた状態での回転軸線A2に対して垂直な向き(以下、径方向と呼ぶ)の工具Taの直径である。軸方向オフセットとは、摩耗のない(新品の)工具Taが工具主軸114に取り付けられた状態での、工具Taの基端点から工具Taの切刃先端部(tool tip)までの軸方向の距離である。工具Taの基端点とは、工具Taが工具主軸114に取り付けられた状態での工具Taの軸方向に沿う2つの端点のうち、工具主軸114に把持される工具Taの部分に属する端点である。別の言い方をすれば、軸方向オフセットとは、機械座標系での工具Taの基端点から切刃先端部までのZm軸方向の距離である。径方向オフセットとは、摩耗のない(新品の)工具Taが工具主軸114に取り付けられた状態での、工具Taの基端点から工具Taの刃先(cutting edge)までの径方向の座標値である。この座標値は、工具主軸台112が図1に示される姿勢であるときに、工具Taが工具主軸114に取り付けられた状態での工具Taの刃先のXm座標の値である。
【0052】
刃の割出角度とは、旋削工具の刃先が第1主軸122に向けられるか第2主軸123に向けられるかを示している。割出角度が0度である場合、旋削工具の刃先が第1主軸122に向けられる。割出角度が180度である場合、旋削工具の刃先が第2主軸123に向けられる。有効な主軸回転方向とは、旋削工具が向けられた主軸を旋削工具からみたときの当該主軸の有効な回転方向(時計回り、または、反時計回り)を示す。刃の向きとは、旋削工具が左勝手(left-handed)か右勝手(right-handed)かを示す。
【0053】
メモリ152は、さらに、素材情報161と機械定数(machine constant)データ162とを含む。素材情報161とは、加工するワークW1(被加工物(workpiece) W1)となる素材の参照情報(名称、IDなど)、形状(外径、内径(孔が空いている場合)、長さ)、及び、特性(比切削抵抗x(kg/mm2)を含む。機械定数データ162は、切削条件の計算において使用される工作機械100固有のパラメータである。機械定数データ162は、例えば、機械効率η、機械馬力HP(HP)、加工制限(仕上げ代)である。工具情報158は、通信回路153によって、ネットワーク290を介してコンピュータ200に送信される。また、工具情報158及び素材情報161は、後述する加工プログラム生成プログラム156、または、加工プログラム編集プログラム159の実行時に、メモリ152から読み出される。メモリ152は、加工プログラム157を生成するための加工プログラム生成プログラム156と、生成した加工プログラム157を編集するための加工プログラム編集プログラム159とを記憶してもよい。加工プログラム生成プログラム156は、国際公開第2021/014571号公報に記述された加工プログラム生成プログラム156と同等の機能を有する。本実施形態と無関係な加工プログラム生成プログラム156の機能の説明は省略される。しかし、国際公開第2021/014571号公報に記述された加工プログラム生成プログラム156の機能が、参照による援用(Incorporation by reference)によって参照されてもよい。以降の実施形態において加工プログラム生成プログラム156によって生成される加工プログラム157を一次加工プログラム157aと呼ぶ。加工プログラム編集プログラム159は、一次加工プログラム157aを変更して、二次加工プログラム157bを生成するプログラムである。加工プログラム編集プログラム159の機能は後述する。
【0054】
タッチパネル付きディスプレイ154は1つのディスプレイ154でなくてもよく、複数のディスプレイの集まりであってもよい。なお、タッチパネル付きディスプレイ154のディスプレイは、ディスプレイの一例であり、タッチパネルは、インタフェースの一例である。なお、タッチパネル付きディスプレイ154は、タッチパネルのないディスプレイと、ディスプレイ周辺に設けられたボタン・スイッチ・レバー・ポインティングデバイス等の入力機器との組み合わせによって代替されてもよい。その場合、当該入力機器は、インタフェースの一例である。
【0055】
図3は、コンピュータ200のハードウェアブロック図である。図3に示すように、コンピュータ200は、プロセッサ210と、メモリ220と、通信回路230と、ディスプレイ240と、入力インタフェース250と、を備えている。プロセッサ210と、メモリ220と、通信回路230と、ディスプレイ240と、入力インタフェース250は、バス260を介して互いに接続されている。入力インタフェース250は、インタフェースの一例であって、例えば、キーボード、マウスなどのポインティングデバイスを指す。なお、コンピュータ200は、タッチパネル付きディスプレイを有するタブレットコンピュータのように、ディスプレイ240と入力インタフェース250とが一体化されたものであってもよい。
【0056】
メモリ220は、上述する加工プログラム157、工具情報158、素材情報161、加工プログラム生成プログラム221、加工プログラム編集プログラム222と、オペレーティングシステムなどのプログラムと、を記憶している。加工プログラム生成プログラム221は、加工プログラム生成プログラム156と実質的に同じ機能を有する。加工プログラム編集プログラム222は、加工プログラム編集プログラム159と実質的に同じ機能を有する。ただし、加工プログラム編集プログラム222の画面表示方法が加工プログラム編集プログラム159の画面表示方法と部分的に相違してもよい。プロセッサ210は、メモリ220に記憶されたプログラムを読み出して、読みだしたプログラムを実行する。通信回路230は、ネットワーク290を介して制御装置150と通信するための、通信パケットからデータへの変換機能とデータから通信パケットへの変換機能と通信パケット送受信機能とを有している。
【0057】
コンピュータ200は、通信回路230を利用して、加工プログラム生成プログラム221を利用して生成された一次加工プログラム157a、加工プログラム編集プログラム222を利用して生成された二次加工プログラム157bを制御装置150に送信することができる。さらに、コンピュータ200は、加工プログラム生成プログラム221または加工プログラム編集プログラム222が実行されると、通信回路230を利用して、最新の工具情報158を、制御装置150から受信し、メモリ220内の工具情報158を更新することができる。
【0058】
次に、一次加工プログラム157a、二次加工プログラム157bにおいて共通する加工プログラム157の内容について説明する。本実施形態において、加工プログラム157は、工作機械100を数値制御するためのプログラムコードによって記述されている。加工プログラム157では、少なくとも以下の内容が定義される。
(1)共通ユニット:ワークW1の材質及び形状
(2)基本座標ユニット:ワーク座標系と機械座標系の設定方法
(3)加工ユニット:最終加工形状のうちの各部位(part)の加工法や加工形状
共通ユニット、基本座標ユニット、加工ユニットは、それぞれ、ユニット番号(unit number)を有している。加工ユニットは、加工内容を特定する情報を含むユニットデータと、工具Ta及び工具Taの切削条件(cutting condition)を設定する工具シーケンスと、当該加工ユニット内で加工される加工形状を規定する形状シーケンスとを含む。工具シーケンスとは、当該加工ユニットで規定される部位の加工形状(例えば、1つの棒材、1つのネジ山)を形成する上で必要となる一連の加工段階(machining stages)(1つの形状を形成する上で、工具を入れ替えながら荒加工(rough processing)、仕上げ加工(finishing processing)を行う一連の段階(例えば、穴加工(hole machining)の場合、スポット加工、徐々に工具径の大きいドリルを使った穴あけの荒加工、リーマ加工などの仕上げ加工のような一連の段階);ネジ加工の場合、スポット加工(spotting)、下穴加工(prepared hole processing)、タップ加工(tapping)の一連の段階)をいう。形状シーケンスとは、加工形状を決定するためのワーク座標での工具の刃先の開始点、終了点、開始点と終了点との間の接続関係(直線、円弧など)によって定義されたセグメント(segment)の集合をいう。ただし、ネジ加工(タップ加工)におけるネジのピッチは、加工ユニットのユニットデータの中に含まれる。本実施形態では、工具シーケンスのうちの1つの工具が行う加工段階のことを加工工程(machining process)と呼び、以下説明する。
【0059】
加工プログラム157は、加工作業において使用される少なくとも1つの工具Ta、及び、少なくとも1つの工具Taの各工具による加工作業中の少なくとも1つの加工工程を規定する。一般に加工プログラム157は少なくとも1つの加工工程を有していればよいが、本実施形態は、複数の加工工程を有する加工プログラム157を対象としている。加工工程には、当該加工段階における工程(process)を実現するための、工具Ta及び工具Taの切削条件が定義される。工具Taの切削条件は、切削速度Vc、工具TaのワークW1に対する切込量、及び、ワークW1の送り速度(feed speed)を含む。切削速度Vc(m/min)は、主軸回転速度をnw(min-1)とし、ワーク直径をD(mm)とするとき、Vc=π×D×nw/1000という式から求められる。本実施形態では、送り速度とは、主軸1回転あたりの送り量(feed per revolution)f (mm/rev)を意味する。加工工程を定義するパラメータは、当該加工工程の段階を特定する情報(例.荒加工、仕上げ加工、スポット加工、下穴加工、タップ加工など)と、当該加工工程が属する加工ユニットの中での実行順を示す番号とをさらに含む。したがって、例えば、加工プログラム157の中で、工具シーケンスの中での荒加工の加工工程を番号1、仕上げ加工の加工工程を番号2として定義されているとすると、荒加工の加工工程が先に実行され、その後、仕上げ加工の加工工程が実行される。また、加工工程で定義される工具Ta及び工具Taの切削条件は、同じ加工ユニット内の形状シーケンス全体に適用される。
<加工プログラム生成プログラムの概略>
加工プログラム生成プログラム156を実行する制御装置150、及び、加工プログラム生成プログラム221を実行するコンピュータ200(以下、これらの装置を加工プログラム生成コンピュータと呼ぶ)は、ワークW1(被加工物)の3次元モデルと、目標物(製品、もしくは製品中の部品)の3次元モデルとを入力し、これらの3次元モデルの差分から加工面を設定、分類し、加工面に基づいて最適な工具Taを選択し、当該工具Taを利用した加工ユニットを生成する。つまり、加工プログラム生成コンピュータは、複数の加工工程においてそれぞれ利用される複数の工具Taを複数の被割当工具として設定する。加工ユニットは、複数の被割当工具のツールパスを規定する、パターンを表すパラメータ(詳細は後述)や工具シーケンスを含む。したがって、加工プログラム生成コンピュータは、複数の被割当工具の各々のツールパスを被設定ツールパスとして設定する。加工プログラム生成コンピュータは、複数の加工工程において複数の被割当工具を利用して加工するような一次加工プログラム157aを生成する。図4は、加工プログラム生成プログラム156の一次加工プログラム157aの一例である。図5は、一次加工プログラム157aによって加工される加工形状を表す画像の一例である。
【0060】
図4のユニット番号(UNo.)0は共通ユニットを示している。ユニット番号(UNo.)11は、旋削ドリルによる加工ユニットを示している。ユニット番号(UNo.)12は、旋削ドリルで加工された穴の側面を加工する加工ユニットを示している。以下、ユニット番号11の加工ユニットを、旋削ドリル加工ユニットと呼び、ユニット番号12の加工ユニットを棒材内径加工ユニットと呼ぶ。旋削ドリル加工ユニットは、シーケンス番号(SNo.)1の工具シーケンスと、FIG 1の始点-Zと終点-Zとから構成される形状シーケンスを含む。棒材内径加工ユニットは、シーケンス番号(SNo.)R1の工具シーケンスと、シーケンス番号(SNo.)F2の工具シーケンスと、FIG 1の線パターンを表す形状シーケンスを含む。なお、図4の加工プログラムでは、説明の便宜上、基本座標ユニットと上記に示した以外の加工ユニットの表示は省略されている。
【0061】
旋削ドリル加工ユニットは、ユニット番号(UNo.)とシーケンス番号(SNo.)との間に、工具シーケンスと形状シーケンスとに共通で使用される加工部パラメータと穴径パラメータとを含む。加工部パラメータは、ワークW1の右側の平坦な端面か左側の平坦な端面のいずれの端面を加工するかを設定するパラメータである。穴径パラメータは、ドリルの呼び径を指定するパラメータである。なお、図5のDr1は、旋削ドリルの呼び径に対応する。
【0062】
旋削ドリル加工ユニットの工具シーケンスは、例えば、工具パラメータ、呼びパラメータ、周速パラメータ、送りパラメータを含む。工具パラメータは、端面加工用の旋削ドリルを指定している。呼びパラメータは、呼び径(「32.0」)とサフィックス(「A」)とを含む。サフィックスは、同一の工具パラメータの工具で同じ呼び径の工具が複数ある場合にそれぞれを区別するために用いられる。周速パラメータは、ワークW1を保持する第1主軸122の回転速度を表す。なお、第1主軸122を固定して工具主軸114を回転させてもよい。この場合、周速パラメータと別のパラメータで設定される。送りパラメータは、旋削ドリルをZ軸方向に直線移動させるときの移動速度を示す。
【0063】
旋削ドリル加工ユニットの形状シーケンスは、Z座標の旋削開始地点(始点-Z)と、切込終了地点(終点-Z)とをパラメータとして含む。これによって、旋削ドリルの先端のツールパスが、機械原点からワーク座標系の(0,0,始点-Z)まで移動し、(0,0,始点-Z)から(0,0,終点-Z)まで直線移動し、(0,0,終点-Z)から(0,0,始点-Z)まで直線移動し、その後、ワーク座標系の(0,0,始点-Z)から機械原点まで往復するツールパスが被設定ツールパスとして設定されることになる。図5は、点OPは、ワーク座標系の原点を示す。形状シーケンスで指定される座標値は、ワーク座標系の原点OPを基準とした座標である。図5のZoffmaxは、Z軸方向の旋削ドリルの移動量(終点-Zの値から始点-Zとの値の差)を示し、水玉模様で示された領域IH1は、旋削ドリルによって切削される領域を示している。
【0064】
棒材内径加工ユニットは、ユニット番号(UNo.)とシーケンス番号(SNo.)との間に、工具シーケンスと形状シーケンスとに共通で使用されるパラメータとして、切込開始点のX座標(切込-Xの半分の座標値)、切込開始点のZ座標(切込-Z)、仕上加工における取代(仕上代-X)、及び、仕上加工における取代(仕上代-Z)を含む。シーケンス番号R1の工具シーケンスは、荒加工の工具等を定義する。以下、シーケンス番号R1の工具シーケンスを荒加工の工具シーケンスと呼ぶ。シーケンス番号R1の工具シーケンスは、旋削ドリル加工ユニットの工具シーケンスのパラメータに加えて、パターンパラメータと切込1パラメータを含んでいる。切込1パラメータは、1回のストロークで切削するX軸方向の最大の切込量を表している。X軸方向の切削深さが切込1パラメータの長さよりも大きい場合、工作機械100は、複数のストロークに分けて切削する。パターンパラメータは、各ストロークにおけるツールパスを規定する。この例では、1回のストロークにおいて刃先を切込開始点に移動させた後に、X軸方向に刃先を移動させて切込1パラメータ以内の切削深さでワークW1を切削し、その後刃先をX軸方向に移動させて刃先がZ軸方向の他端に移動した時点で刃先をX軸方向に移動させて刃先をワークW1から離間させて再度切込開始点に移動させるというツールパスが被設定ツールパスとして設定されることになる。なお、被設定ツールパスは、これ以外に種々のツールパスが設定されてもよい。シーケンス番号F2の工具シーケンスは、仕上加工の工具等を定義する。以下、シーケンス番号F2の工具シーケンスを仕上加工の工具シーケンスと呼ぶ。シーケンス番号F2の工具シーケンスでは、パターンパラメータと切込1パラメータとが設定されない。工作機械100は、自動で仕上加工に適したX軸方向の切込量と、仕上加工のツールパスとを設定する。形状シーケンスは、加工終了点のX座標(終点-X/2)、加工終了点のZ座標(終点-Z)を指定する。図5の破線を使用したハッチングで示された領域CP1は、棒材内径加工ユニットにおいて切削される領域を示す。Xoffmaxは、終点-X/2に相当し、製品形状の加工穴の半径と等しい。
【0065】
加工プログラム生成コンピュータは、旋削ドリル加工ユニットの工具シーケンスにおいて設定する工具を加工に最適な工具に設定する。図6は、旋削ドリルの工具情報158の一例である。図6に示すように、旋削ドリルの工具情報158は、T番号(TNo.)、ポケット番号(PNo.)、工具名(名称+加工部位)、呼び+サフィックスを有している。さらに、これらに対応する工具のパラメータ(寸法)として当該工具情報は、工具長、工具径、回転勝手、刃先角、工具材質、有効刃長のパラメータを含む。
【0066】
図7は、旋削ドリルの形状と、被切削形状を説明するための図である。図7を参照すると、工具長は、工具の長手方向の長さLdに対応する。工具径は、工具の直径Ddに対応する。回転勝手とは、第1主軸122によってワークW1を回転させるとき、第1チャック124のある側と反対側からワークW1を見たときに、時計回りまたは反時計回りのいずれに回転させるのが適切かを表すとともに、旋削ドリルをワークW1に対して左方向に動かすのが適切か、右方向に動かすのが適切かを表すパラメータである。刃先角は、図7の角度θdで表される角度である。工具材質は、旋削ドリルの材質を表す。有効刃長は、Ledに対応する。
【0067】
加工プログラム生成コンピュータは、例えば、以下の[条件1]~[条件6]を基準に、最適な旋削ドリルを選択し設定するとよい。
[条件1]工具の材質がワークW1を加工できる材質である。
[条件2]第1主軸122/第2主軸123の回転設定と、工具の進行方向に合った回転勝手である。
[条件3]工具長Ldが加工深さDEPより大きい。
[条件4]有効刃長Ledが加工深さDEPより大きい。
[条件5]被切削形状先端部分の先端角度θrが定義されているとき、刃先角θdは先端角度θrと等しい。
[条件6]工具径Ddが加工径Drと等しいか、加工径Drが旋削ドリルの使用可能な最大径よりも大きいときに、工具径Ddが旋削ドリルの使用可能な最大径である。
【0068】
加工プログラム生成コンピュータは、このような条件を具備するような工具径が最大のT番号40の呼びが32.Aの旋削ドリルを選択している。
【0069】
加工プログラム生成コンピュータは、棒材内径加工ユニットの工具シーケンスにおいて設定する工具を加工に最適な旋削工具に設定する。図8は、旋削工具の工具情報158の一例である。図8に示すように、旋削工具の工具情報158は、T番号(TNo.)、ポケット番号(PNo.)、工具名(名称+加工部位)、呼び+サフィックスを有している。さらに、これらに対応する工具のパラメータ(寸法)として当該工具情報は、工具長A、工具長B、工具幅、回転勝手、刃先R、切込角、刃先角、最小加工径、工具材質、用途(荒/仕上)のパラメータを含む。以下、これらのパラメータのうち、旋削ドリルのパラメータと異なるパラメータを中心に説明する。
【0070】
図9は、旋削ドリルの形状と、被切削形状を説明するための図である。図9を参照すると、工具長Aは、図9の工具突き出し量Ht1に相当する。工具長Bは、図9に示されるように回転軸線A2と刃先とのX軸方向の距離Wt1に相当する。工具幅は、図9に示される工具の首の部分の直径Dt1に相当する。回転勝手は、旋削ドリルの回転勝手と同じである。刃先Rは、刃先の曲率半径TR1である。切込角は、図9の角度βt1に相当する。刃先角は、図9の角度αt1に相当する。なお、以降の実施形態において、γt1=180°-αt1-βt1を副切込角と呼ぶ。最小加工径MR1は、工具長B(Wt1)と工具幅の半分(Dt1/2)との和と実質的に同じ値に相当する。
【0071】
加工プログラム生成コンピュータは、例えば、以下の[条件7]~[条件11]を基準に、最適な旋削工具を選択し設定するとよい。
[条件7]工具の材質がワークW1を加工できる材質である。
[条件8]第1主軸122/第2主軸123の回転設定と、工具の進行方向に合った回転勝手である。
[条件9]工具長A(Ht1)が加工深さDEP1より大きい。
[条件10]最小加工径MR1が加工径Dr1よりも小さい。なお、Dr1=Ddである。
[条件11]プログラム上の荒加工、仕上加工の用途に合っている。
【0072】
加工プログラム生成コンピュータは、棒材内径加工ユニットの荒加工の条件を具備するようなT番号10の呼びが10.Aの工具を、荒加工の工具シーケンスの工具として選択する。加工プログラム生成コンピュータは、棒材内径加工ユニットの仕上加工の条件を具備するようなT番号10の呼びが10.Iの工具を、仕上加工の工具シーケンスの工具として選択する。
<加工プログラム編集プログラムの概略>
加工プログラム編集プログラム159を実行する制御装置150、加工プログラム編集プログラム222を実行するコンピュータ200(以下、これらの装置を加工プログラム編集コンピュータと呼ぶ)は、一次加工プログラム157aを解析して、各工具によって削り取られる各被切削形状を算出し、各被切削形状をディスプレイ154(240)に表示させる。図10は、加工プログラム編集コンピュータが表示する一次加工プログラム157aの編集ウィンドウ30の一例である。この編集ウィンドウ30は、例えば、CG表示ウィンドウDISと、ユニット選択ウィンドウWIN1と、工具シーケンス選択ウィンドウWIN2と、工具情報表示ウィンドウWIN3とを含む。なお、この編集ウィンドウ30は、形状シーケンス表示ウィンドウをさらに備えてもよいが、形状シーケンス表示ウィンドウの説明を省略する。図10における、ユニット選択ウィンドウWIN1と、工具シーケンス選択ウィンドウWIN2と、工具情報表示ウィンドウWIN3の表示は一例であって、いくつかのウィンドウが統合されてもよく、ユニット選択ウィンドウWIN1と、工具シーケンス選択ウィンドウWIN2とが省略されてもよい。なお、図5は、CG表示ウィンドウDISを拡大表示した例である。
【0073】
CG表示ウィンドウDISにおいて、各工具によって削り取られる各被切削形状(以下、被切削部分と呼ぶ)を選択すると、ユニット選択ウィンドウWIN1において被切削部分に対応する加工ユニットがハイライトされ、ユニット選択ウィンドウWIN1においてハイライトされた加工ユニットに含まれる工具シーケンスが工具シーケンス選択ウィンドウWIN2に表示される。選択された加工ユニットが複数の工具シーケンスを含むときに、工具シーケンス選択ウィンドウWIN2において1つの工具シーケンスが選択されると、選択された工具シーケンスで指定される工具の工具情報が工具情報表示ウィンドウWIN3に表示される。図10の例では、棒材内径加工ユニットに対応する被選択部分HLが選択されハイライトされており、被選択部分HLに対応する棒材内径加工ユニットがハイライトHL1によって表示されている。工具シーケンス選択ウィンドウWIN2において仕上げ加工の工具シーケンスが選択されてハイライトHL2によって表示されており、仕上げ加工の工具シーケンスの工具の工具情報が工具情報表示ウィンドウWIN3に表示されている。
【0074】
逆に、ユニット選択ウィンドウWIN1において加工ユニットを選択すると、CG表示ウィンドウDISにおいて選択された加工ユニットに対応する被選択部分がハイライトされる。例えば、ユニット選択ウィンドウWIN1において旋削ドリル加工ユニットが選択されると(例えば、図10において水玉模様で表示されるUSEL1)、旋削ドリル加工ユニットに対応する被切削領域がハイライトUSELによって表示される。また、ユニット選択ウィンドウWIN1において加工ユニットが選択されなくても、工具シーケンス選択ウィンドウWIN2において工具シーケンスを選択することもでき、その場合、選択された工具シーケンスに対応する加工ユニットがユニット選択ウィンドウWIN1において選択され、当該加工ユニットに対応する被選択部分がCG表示ウィンドウDISにおいてハイライトされてもよい。
【0075】
図10をさらに参照すると、一次加工プログラム157aの編集ウィンドウ30は、ユニット選択ウィンドウWIN1に編集ボタンBU1を有し、工具シーケンス選択ウィンドウWIN2に編集ボタンBU2を有している。ユニット選択ウィンドウWIN1においていずれか1つの加工ユニットが選択され、編集ボタンBU1が押下されると、その加工ユニットのユニット番号(UNo.)とシーケンス番号(SNo.)との間のパラメータを編集する画面が表示される。この画面は、テキストボックスなどの周知のグラフィカルユーザインタフェース(GUI)なので説明を省略する。工具シーケンス選択ウィンドウWIN2においていずれか1つの工具シーケンスが選択され、編集ボタンBU2が押下されると、工具情報158として記憶されている工具のうち、工具名が一致するもののリストを表示し、その中から1つの工具を選択することによって工具を変更することができる。加工プログラム編集コンピュータは、例えば、図6図8に示された内容をリスト形式で表示し、行ごとに選択可能なGUIを提供するとよい。このインタフェースの詳細は、例えば、WO2021-024438号公報の図14を参照してもよい。
【0076】
加工プログラム編集コンピュータは、このように、複数の加工工程のうちの被選択工程(選択された工具シーケンス)において利用される工具を、複数の被割当工具のうちの被選択工程に対応する第1被割当工具(一次加工プログラム157aにおける選択された工具シーケンスの工具)から第1被選択工具(GUIで選択された工具)に変更するユーザからの入力を受け付ける。以降の説明では、旋削ドリル加工ユニットの工具シーケンスによって指定される工具が呼び32.Aの工具から10.Aの工具に変更されたものとして以下説明する。
【0077】
つぎに、加工プログラム編集コンピュータは、被選択工程以外の複数の加工工程のうちのいずれかの工程であって、第1被割当工具から第1被選択工具に変更することにより、複数の被割当工具のうち該工程に対応する第2被割当工具が利用できなくなる改善要求工程が存在するか否かを判定する。このために、加工プログラム編集コンピュータのメモリ152(220)(記憶装置)は、被選択工程と改善要求工程との対応関係を記憶する。この対応関係を表すデータを対応関係データ163と呼ぶ。加工プログラム編集コンピュータは、上記入力によって受け付けた被選択工程から、上記対応関係に基づき改善要求工程を表す情報を取得し、当該情報に基づき、複数の加工工程の中に改善要求工程に相当する工程が含まれているかどうかを探索する。
【0078】
図11は、対応関係データ163の一例である。対応関係データ163は、例えば、第1被選択ユニット163aと、第1被選択工具名163bと、呼び変化163cと、シーケンス位置163dと、第2被選択ユニット163eと、第2被割当工具名163fとを含む。第1被選択工具名163bと、第2被割当工具名163fとは、それぞれ、第1被選択工具、第2被割当工具の工具名(名称+加工部位)を表す。ただし、加工部位の定義がない工具シーケンスについては、名称のみで記述している。加工プログラム編集コンピュータは、同一の加工ユニット内の工具シーケンスにおいて、第1被選択工具名163bとして表される工具名と、第2被割当工具名163fとして表される工具名とが両方存在するか判定する。両方存在する場合、加工プログラム編集コンピュータは、第1被選択工具の呼び径が呼び変化163cで表される変化が生じているか判定し、生じている場合、第2被割当工具が利用可能か否かの具体的な判定を行う。この具体的な判定方法は後述する。そして、利用可能でない場合、加工プログラム編集コンピュータは、第2被割当工具を設定している工具シーケンスを改善要求工程と判定する。
【0079】
第1被選択ユニット163aと、シーケンス位置163dと、第2被選択ユニット163eとは、異なる加工ユニットの工具シーケンスで改善要求工程の有無を判定するために用いられる。第1被選択ユニット163aは、被選択工程を含む加工ユニットを表す。第2被選択ユニット163eは、第1被割当工具から第1被選択工具に変更することにより当初割り当てられた工具(第2被割当工具)が利用できなくなる可能性がある工具シーケンスを含む加工ユニットを定義したものである。このような加工ユニットが複数あるときはデリミタ(/)で区切りを定義している。このような表記方法は一例であって、対応関係データ163は、同様の管理ができるフォーマットであれば、いかなるフォーマットであってよい。
【0080】
シーケンス位置163dは、加工プログラム157(一次加工プログラム157a)における第1被選択ユニット163aと第2被選択ユニット163eとの位置関係を表す。このパラメータが「後」と設定されているときは、加工プログラム157(一次加工プログラム157a)において、第2被選択ユニット163eが第1被選択ユニット163aよりも後に記述されている。このパラメータが「前」と設定されているときは、加工プログラム157(一次加工プログラム157a)において、第2被選択ユニット163eが第1被選択ユニット163aよりも前に記述されている。
【0081】
図11において、シーケンス位置が「後」と設定されている第1被選択ユニット163aと第2被選択ユニット163eとの関係を見ると、第1被選択ユニット163aは、第2被選択ユニット163eで利用される工具が挿入される挿入口を形成する前加工工程である。第2被選択ユニット163eは、第1被選択ユニット163aにおいて形成される挿入口に該工具を挿入させ、挿入口の側面を削る側面拡大工程である。なお、第1被選択ユニット163aと第2被選択ユニット163eとの設定がない第1被選択工具名163bにおいて設定されているドリル工具シーケンスは、その後のエンドミル工具シークエンスで利用されるエンドミル、または、ボーリング工具シーケンスで利用されるボーリング工具が挿入される挿入口を形成する前加工工程である。該エンドミル工具シーケンス、該ボーリング工具シーケンスは、それぞれ、該ドリル工具シーケンスにおいて形成される挿入口にエンドミル、ボーリング工具を挿入させ、挿入口の側面を削る側面拡大工程である。第1被選択ユニット163aと第2被選択ユニット163eとの設定がない第1被選択工具名163bにおいて設定されているエンドミル工具シーケンスは、その後のボーリング工具シークエンスで利用されるボーリング工具が挿入される挿入口を形成する前加工工程である。該ボーリング工具シーケンスは、該エンドミル工具シーケンスにおいて形成される挿入口にボーリング工具を挿入させ、挿入口の側面を削る側面拡大工程である。
【0082】
したがって、被選択工程は、改善要求工程で利用される工具が挿入される挿入口を形成する前加工工程を含むと言える。改善要求工程は、前加工工程において形成される挿入口に該工具を挿入させ、挿入口の側面を削る側面拡大工程を含むと言える。また、挿入口を形成するために使用される工具が削孔工具(例えば、ドリル)、または、エンドミルであって、挿入口に挿入される工具が旋削工具、溝入れ工具、エンドミル、及び、ボーリング工具のうちの少なくとも1つであると言える。なお、旋削工具は、ドリル、エンドミル以外に、ドラゴンダイアモンドコアドリルのようなものであってもよい。あるいは、挿入口を形成するために使用される工具が溝入れ工具であって、挿入口に挿入される工具が旋削工具であると言える。
【0083】
図11において、シーケンス位置が「前」と設定されている第1被選択ユニット163aと第2被選択ユニット163eとの関係を見ると、第2被選択ユニット163eは、第1被選択ユニット163aで利用される工具が挿入される挿入口を形成する前加工工程である。第1被選択ユニット163aは、上記前加工工程において形成される挿入口に該工具を挿入させ、挿入口の側面を削る側面拡大工程である。なお、第1被選択ユニット163aと第2被選択ユニット163eとの設定がない第2被割当工具名163fとして設定されているドリル工具シーケンスは、その後のボーリング工具シーケンスで利用されるボーリング工具が挿入される挿入口を形成する前加工工程である。第1被選択ユニット163aと第2被選択ユニット163eとの設定がない第1被選択工具名163bとして設定されているボーリング工具シーケンスは、該ドリル工具シーケンスにおいて形成される挿入口にボーリング工具を挿入させ、挿入口の側面を削る側面拡大工程である。したがって、改善要求工程は、被選択工程で利用される工具が挿入される挿入口を形成する前加工工程を含むと言える。被選択工程は、前加工工程において形成される挿入口に該工具を挿入させ、挿入口の側面を削る側面拡大工程を含むと言える。
【0084】
加工プログラム編集コンピュータは、シーケンス位置163dによって指定された位置に存在する第2被選択ユニット163e内の工具シーケンスにおいて第2被割当工具名163fとして表される工具名が存在するとき、第1被選択ユニット163aと第2被選択ユニット163eとのうち後に実行される加工ユニットの工具シーケンスの工具が、第1被選択ユニット163aと第2被選択ユニット163eとのうち先に実行される加工ユニットの工具シーケンスによって切削される被切削部分を通過するか否か判定する。
【0085】
通過する場合、加工プログラム編集コンピュータは、第1被選択工具の呼び径が呼び変化163cで表される変化が生じているか判定し、生じている場合、第2被割当工具が利用可能か否かの具体的な判定を行う。この具体的な判定方法は後述する。そして、利用可能でない場合、加工プログラム編集コンピュータは、第2被割当工具を設定している工具シーケンスを改善要求工程と判定する。
【0086】
このとき、図4の一次加工プログラム157aにおいて、旋削ドリル加工ユニットの工具シーケンスによって指定される工具が呼び32.Aの旋削ドリルから呼び10.Aの旋削ドリルに変更されたものとする。そして、変更された工具が「旋削ドリル 端面」であって、その工具シーケンスを含む加工ユニットが「旋削ドリル」加工ユニットである。旋削ドリル加工ユニットは、1つの工具シーケンスしか含まないため、加工プログラム編集コンピュータは、対応関係データ163を参照し、「旋削ドリル」加工ユニットの後ろに、棒材/倣い加工ユニットのいずれかが存在するか否かを探索する。一次加工プログラム157aにおいて「旋削ドリル」加工ユニットの後ろに「棒材」加工ユニットを見つけると、加工プログラム編集コンピュータは、次に、棒材加工ユニットの中に「旋削」の工具名の工具を有する工具シーケンスがあるかどうか判定する。「旋削」の工具名の工具を有する工具シーケンスがあると判定すると、加工プログラム編集コンピュータは、棒材加工ユニットの加工部パラメータが「内径」であるか否か判定する。棒材加工ユニットの加工部パラメータが「内径」であるということは、棒材加工ユニットの「旋削 内径」の工具が、先の「旋削ドリル」によって空けられた穴を通過することを意味するためである。
【0087】
荒加工の工具シーケンスの呼びが10.Aの工具と、仕上加工の工具シーケンスの呼びが10.Iの工具は、これら全ての条件を具備するため、加工プログラム編集コンピュータは、上述の[条件10]を具備するかに基づいて、それら2つの工具が利用可能か否かを判定する。
【0088】
図6の工具情報158を参照すると、「旋削ドリル」の呼びが10.Aに変更されたため、加工径Dr1=10.0mmとなる。一方で、図8の工具情報158を参照すると、呼びが10.Aの旋削工具と、呼びが10.Iの旋削工具とではいずれも、最小加工径MR1が12.5となる。したがって、加工プログラム編集コンピュータは、呼びが10.Aの旋削工具と、呼びが10.Iの旋削工具とのいずれも利用できなくなったと判定する。したがって、加工プログラム編集コンピュータは、荒加工の工具シーケンスと、仕上加工の工具シーケンスとが、改善要求工程であると判定する。このように、第1被選択工具(呼び10.Aの旋削ドリル)によって形成される挿入口(ドリル穴)の大きさが第1被割当工具(呼び32.Aの旋削ドリル)によって形成される挿入口(ドリル穴)の大きさよりも小さくなることによって、第2被割当工具(呼びが10.A、10.Iの旋削工具)を該挿入口に挿入できない場合、加工プログラム編集コンピュータは、改善要求工程が存在すると判定する。
【0089】
このように、改善要求工程が存在するとき、加工プログラム編集コンピュータは、第2被割当工具(呼びが10.A、10.Iの旋削工具)を、第1被選択工具(呼び10.Aの旋削ドリル)によって形成される該挿入口に挿入可能な形状を有する第2被選択工具に変更する。具体的には、加工プログラム編集コンピュータは、荒加工の工具シーケンスにおいて利用する工具を、呼びが10.Aの工具から、荒加工の工具シーケンスにおいて利用可能な工具に変更する。荒加工の工具シーケンスにおいて利用可能な工具とは、上記[条件7]~[条件11]の全てを具備するものであって、図8に挙げた例の中では、例えば、呼び5.Aの工具が相当する。つまり、呼び5.Aの旋削工具が上記第2被選択工具に相当する。なお、このような条件を具備するものが複数ある場合、加工プログラム編集コンピュータは、最小加工径MR1が最も大きいもの(最小加工径MR1の変更が最も小さいもの)を選択する。
【0090】
同様に、加工プログラム編集コンピュータは、仕上加工の工具シーケンスにおいて利用する工具を、呼びが10.Iの工具から、仕上加工の工具シーケンスにおいて利用可能な工具に変更する。仕上加工の工具シーケンスにおいて利用可能な工具とは、上記[条件7]~[条件11]の全てを具備するものであって、図8に挙げた例の中では、例えば、呼び5.Gの工具が相当する。つまり、呼び5.Gの旋削工具が上記第2被選択工具に相当する。図12は、以上のように修正された二次加工プログラム157bを示す。図12では、二次加工プログラム157bにおいて一次加工プログラム157aから修正された箇所を白抜きで示す。なお、加工プログラム編集コンピュータは、改善要求工程が決定されると、形状シーケンスの始点-Xパラメータを、第1被選択工具(呼び10.Aの旋削ドリル)の呼びに合わせて10.0に修正することが好ましい。
【0091】
さらに、加工プログラム編集コンピュータは、工具の変更前後の被切削形状をディスプレイ154(240)に表示させることができる。図5は、工具の変更前の被切削形状の表示例である。図5に示されるように、加工プログラム編集コンピュータは、第2被割当工具(呼びが10.A、10.Iの旋削工具)によって削り取られる第1被切削形状(図5のCP1)を算出し、第1被切削形状をディスプレイ154(240)に表示させる。図13は、工具の変更後の被切削形状の表示例である。図13において、Dr2は、変更後の旋削ドリルの呼び径10.Aに対応する。水玉模様で示された領域IH2は、変更後の旋削ドリルによって切削される領域を示している。破線を使用したハッチングで示された領域CP2は、変更後の棒材内径加工ユニットにおいて切削される領域を示す。図13に示されるように、加工プログラム編集コンピュータは、改善要求工程(棒材内径加工ユニットの2つの工具シーケンス)の変更に基づいて、改善要求工程において削り取られる第2被切削形状(CP2)を算出し、ディスプレイ154(240)に第2被切削形状を表示させる。
【0092】
さらに、改善要求工程がないとき、加工プログラム編集コンピュータは、複数の被割当工具のうち第1被割当工具を第1被選択工具に修正した加工プログラム(二次加工プログラム157b)を生成する。改善要求工程が有るとき、加工プログラム編集コンピュータは、複数の被割当工具のうち第1被割当工具を第1被選択工具に修正し、第2被割当工具を第2被選択工具に修正した加工プログラム(二次加工プログラム157b)を生成する。
【0093】
別の例として、図12に示されたプログラムが一次加工プログラム157aであって、荒加工の工具シーケンスの工具を呼び10.Aの旋削工具に、仕上加工の工具シーケンスの工具を呼び10.Iの旋削工具にユーザによって上述するインタフェースを介して変更された場合を考える。このとき、被選択工程は、荒加工の工具シーケンスと、仕上加工の工具シーケンスとの各々に相当する。被選択工程を荒加工の工具シーケンスとするとき、第1被割当工具は呼び5.Aの旋削工具に相当し、第1被選択工具は呼び10.Aの旋削工具に相当する。被選択工程を仕上加工の工具シーケンスとするとき、第1被割当工具は呼び5.Gの旋削工具に相当し、第1被選択工具は呼び10.Iの旋削工具に相当する。
【0094】
このとき、加工プログラム編集コンピュータは、図11に示されるような対応関係データ163を参照し、第1被選択工具名163bが「旋削 内径」の場合、その工具シーケンスよりも前に「旋削ドリル 端面」の工具シーケンスか、「溝入れ 内径」の工具シーケンスが存在する場合に改善要求工程が存在することを確認する。つぎに、加工プログラム編集コンピュータは、第1被選択工具が設定された工具シーケンスを含む「棒材内径加工ユニット」の中に「旋削ドリル 端面」の工具シーケンスか、「溝入れ 内径」の工具シーケンスが含まれるか探索する。図12に示される加工プログラムでは当該「棒材内径加工ユニット」の中に「旋削ドリル 端面」の工具シーケンスも「溝入れ 内径」の工具シーケンスも存在しないため、加工プログラム編集コンピュータは、当該「棒材内径加工ユニット」の前に、「旋削ドリル 端面」の工具シーケンスを含む旋削ドリル加工ユニットか、「溝入れ 内径」の工具シーケンスを含む溝入れ加工ユニットのいずれかが存在するかを探索する。図12に示される加工プログラムの場合、加工プログラム編集コンピュータは、このようにして、「旋削ドリル 端面」の工具シーケンスを含むユニット番号11の旋削ドリル加工ユニットを検出する。なお、第1被選択工具名163bが「旋削 内径」である場合、旋削ドリル加工ユニットの「旋削ドリル 端面」によって指定される旋削ドリルによって空けられた穴を第1被選択工具名163bによって指定される旋削工具が通過することを意味する。
【0095】
つぎに、加工プログラム編集コンピュータは、上記[条件10]を具備するかに基づいて、呼び10.Aの旋削ドリル(第2被割当工具)が利用可能か否かを判定する。「旋削工具」の呼びが10.A、10.Iに変更されたため、これらの工具では、いずれも、最小加工径MR1が12.5となる。一方、「旋削ドリル」の呼びは10.Aであるため、加工径Dr1=10.0mである。したがって、加工プログラム編集コンピュータは、呼び10.Aの旋削ドリルが利用できなくなったと判定する。したがって、加工プログラム編集コンピュータは、「旋削ドリル 端面」の工具シーケンスを含むユニット番号11の旋削ドリル加工ユニットが、改善要求工程であると判定する。このように、第1被選択工具(呼び10.A、10.Iの旋削工具)が第1被割当工具(呼び5.A、5.Iの旋削工具)よりも大きくなることによって、第1被選択工具(呼び10.A、10.Iの旋削工具)が挿入口に挿入できない場合、加工プログラム編集コンピュータは、改善要求工程が存在すると判定する。
【0096】
このように、改善要求工程が存在するとき、加工プログラム編集コンピュータは、第2被割当工具(呼び10.Aの旋削ドリル)を、第1被選択工具(呼び10.A、10.Iの旋削工具)を挿入可能な大きさの挿入口を形成するために使用可能な第2被選択工具に変更する。「旋削ドリル 端面」の工具シーケンスにおいて利用可能な工具とは、上記[条件1]~[条件5]と[条件10]の全てを具備するものであって、図6に挙げた例の中では、例えば、呼び32.Aの旋削ドリルが相当する。つまり、呼び32.Aの旋削ドリルが上記第2被選択工具に相当する。なお、このような条件を具備するものが複数ある場合、加工プログラム編集コンピュータは、最小加工径MR1が最も小さいもの(最小加工径MR1の変化が変更前後で最も小さいもの)を選択する。さらに、加工プログラム編集コンピュータは、旋削ドリルの呼び32.Aが決定されると、棒材内径加工ユニットの形状シーケンスの始点-Xパラメータを、第2被選択工具(旋削ドリル)の呼び32.Aに合わせて32.0に修正することが好ましい。
<溝入れ工具を含む加工プログラムの場合の処理の特徴>
図14は、溝入れ工具を含む加工プログラム157の一例を示す。説明の便宜上、図14のプログラムは、図4のユニット番号12の棒材加工ユニットの後ろに設けられているものとして以下説明する。図15は、図14の加工プログラム157による被切削形状と、溝入れ工具の形状を説明するための図である。
【0097】
図14のユニット番号(UNo.)13は図4のコードによって加工された穴の外周面をさらに加工するための溝入れ工具による加工ユニットを示している。ユニット番号(UNo.)14は、溝入れ工具で加工された穴の側面を加工する加工ユニットを示している。以下、ユニット番号13の加工ユニットを、溝入れ加工ユニットと呼び、ユニット番号14の加工ユニットを棒材内径加工ユニットと呼ぶ。溝入れ加工ユニットは、シーケンス番号(SNo.)F1の工具シーケンスと、FIG 1の始点-X、始点-Z、終点-X、終点-Zとから構成される形状シーケンスを含む。棒材内径加工ユニットは、シーケンス番号(SNo.)R1の工具シーケンスと、シーケンス番号(SNo.)F2の工具シーケンスと、FIG 1のテーパーパターンを表す形状シーケンスを含む。
【0098】
溝入れ加工ユニットは、ユニット番号(UNo.)とシーケンス番号(SNo.)との間に、工具シーケンスと形状シーケンスとに共通で使用される加工部パラメータ、溝形状パターン定義パラメータ、溝数パラメータ、溝ピッチパラメータ、溝幅パラメータ、仕上代パラメータを含む。加工部パラメータは、ワークW1の右側の平坦な端面、左側の平坦な端面のいずれの端面、ワークW1の外径の端面、ワークW1に開けられた穴の側面(「内径」)のいずれを加工するかを設定するパラメータである。溝形状パターン定義パラメータ(「パターン」)は、溝入れ工具による被切削形状を規定するパラメータである。この被切削形状の回転軸線A2に対して平行な方向の断面形状VG1は、図15における水玉模様にて示されている。溝数パラメータ(「数」)は、加工部パラメータにおいて設定された箇所に溝形状パターン定義パラメータで設定される形状の溝をいくつ設けるかを設定するためのパラメータである。溝ピッチパラメータ(「ピッチ」)は、溝数パラメータで設定された数が複数のとき、溝の間隔を規定するパラメータである。溝幅パラメータは、図15におけるWgで示される溝幅の長さである。仕上代パラメータは、仕上加工における取代である。本加工ユニットでは、荒加工がなく、全て仕上加工であるため、仕上代パラメータの入力は省略されている。
【0099】
溝入れ加工ユニットの工具シーケンスは、仕上加工用の工具シーケンスである。この工具シーケンスは、例えば、工具パラメータ、呼びパラメータ、パターンパラメータ、切込1パラメータ、周速パラメータ、送りパラメータを含む。この工具シーケンスは仕上加工用の工具シーケンスである。工具パラメータは、溝入れ加工用の溝入れ工具を指定している。呼びパラメータは、呼び径(「10.0」)とサフィックス(「A」)とを含む。サフィックスは、同一の工具パラメータの工具で同じ呼び径の工具が複数ある場合にそれぞれを区別するために用いられる。切込1パラメータは、1回のストロークで切削するX軸方向の最大の切込量を示す。パターンパラメータは、各ストロークにおけるツールパスを規定する。この例では、1回目のストロークにおいて刃先を切込開始点に移動させた後に、X軸方向に刃先を移動させて切込1パラメータ以内の切削深さでワークW1を切削し、その後、切込開始点に戻る。以降のストロークでは、再度X軸方向に刃先を移動させて切込1パラメータ以内の切削深さでワークW1を切削することによって最終的に要求される溝深さまで切削する。さらに、溝幅Wgが刃先幅BW1(図15参照)より長い場合、刃先をZ軸方向にシフトさせて同様のストロークを繰り返す。以上に示されるようなツールパスが被設定ツールパスとして設定されることになる。なお、被設定ツールパスは、これ以外に種々のツールパスが設定されてもよい。仕上加工用の工具シーケンスではこのようなツールパスが自動的に設定される。周速パラメータは、ワークW1を保持する第1主軸122の回転速度を表す。送りパラメータは、溝入れ工具をX軸方向等に直線移動させるときの移動速度を示す。
【0100】
図14のユニット番号14の棒材加工ユニットは、形状シーケンスを除いて、図4のユニット番号12の棒材加工ユニットと同じパラメータを設定しているため、形状シーケンスのみの説明を行う。図15の斜線ハッチング領域TCは、この形状シーケンスで定義された形状を表す。斜線ハッチング領域TCは、ユニット番号14の棒材加工ユニットによって切削される被切削形状の回転軸線A2に対して平行な方向の断面形状を表す。図15中の点Aは、切込開始点を表し、(切込-X/2,切込-Z)によって規定される。図15中の点Bは、(始点-X/2,始点-Z)によって規定される。図15中の点Cは、(終点-X/2,終点-Z)によって規定される。斜線ハッチング領域TCは点A、B、Cと(切込-X/2,始点-Z)とで表される4点から成る台形で定義される。
【0101】
加工プログラム生成コンピュータは、溝入れ加工ユニットの工具シーケンスにおいて設定する工具を加工に最適な溝入れ工具を設定する。図16は、溝入れ工具の工具情報158の一例である。図16に示すように、旋削工具の工具情報158は、T番号(TNo.)、ポケット番号(PNo.)、工具名(名称+加工部位)、呼び+サフィックスを有している。さらに、これらに対応する工具のパラメータ(寸法)として当該工具情報は、工具長A、工具長B、工具幅、回転勝手、刃先R、溝深さ、刃先幅、最小加工径、工具材質、用途(荒/仕上)のパラメータを含む。これらのパラメータは、殆どが旋削工具のパラメータと同じであるが、溝深さと、刃先幅とのみが異なる。溝深さは、図15の長さBH1に相当する。刃先幅は、図15の長さBW1に相当する。図15は、溝入れ工具の工具長A、工具長B、工具幅、最小加工径を、それぞれ、Ht2、Wt2、Dt2、MR2と表している。
【0102】
加工プログラム生成コンピュータは、例えば、以下の[条件14]~[条件20]を基準に、最適な溝入れ工具を選択し設定するとよい。
[条件14]工具の材質がワークW1を加工できる材質である。
[条件15]第1主軸122/第2主軸123の回転設定と、工具の進行方向に合った回転勝手である。
[条件16]工具長A(Ht2)が加工深さDEP2より大きい。
[条件17]最小加工径MR2がユニット番号12の棒材ユニットにて形成される加工径Dr2よりも小さい。
[条件18]プログラム上の荒加工、仕上加工の用途に合っている。
[条件19]刃先幅BW1は、溝幅Wgよりも短い。より詳細には、刃先幅BW1は、溝形状パターンの断面形状VG1を形成可能な長さに形成される。
[条件20]溝深さBH1は、溝高さWh=|(終点-X/2)-(始点-X/2)|より短い。
【0103】
加工プログラム生成コンピュータは、ユニット番号14の棒材加工ユニットの旋削工具を、上記[条件7]~[条件11]に加えて、[条件12][条件13]を基準に、最適な旋削工具を選択し設定するとよい。
[条件12]副切込角γt1はarctan(Wh/Wg)よりも小さい。つまり、Wgtanγt1>Whとなるように副切込角γt1が設定される。これにより、旋削工具の刃先が内側隅Ciに当たっているときであっても旋削工具が外側隅Coに当たらない。
[条件13]切込角βt1は、図15の角度θよりも大きい。なお、断面形状VG1の反対側にも溝入れ加工ユニットによって加工される場合(図15では点線領域VG2にて示されている)、旋削工具の刃先が内側隅Cieに当たっているときであっても旋削工具が外側隅Coeに当たらないように、切込角βt1は、図15の角度φよりも大きい。
【0104】
加工プログラム生成コンピュータは、[条件14]~[条件20]に基づいて、溝入れ工具ユニットの工具シーケンスの工具を呼び10.Aの工具を被割当工具として設定する。加工プログラム生成コンピュータは、[条件14]~[条件20]に基づいて、棒材内径加工ユニットの荒加工の条件を具備するようなT番号10の呼びが10.Aの工具を、被割当工具として選択する。加工プログラム生成コンピュータは、棒材内径加工ユニットの仕上加工の条件を具備するようなT番号10の呼びが10.Iの工具を、被割当工具として選択する。
【0105】
つぎに、上述するインタフェースを用いて、荒加工用の工具シーケンスに用いられる旋削工具を呼び10.Aの旋削工具から呼び10.Gの旋削工具に変更された場合を例に挙げて、加工プログラム編集コンピュータの処理を説明する。この例では、荒加工用の工具シーケンスが被選択工程に相当し、もとの呼び10.Aの旋削工具が第1被割当工具に相当し、呼び10.Gの旋削工具が第1被選択工具に相当する。まず、加工プログラム編集コンピュータは、対応関係データ163を参照し、第1被選択工具名163bが呼び10.Gの旋削工具の工具名である「旋削 内径」の場合、その工具シーケンスよりも前に「旋削ドリル 端面」の工具シーケンスか、「溝入れ 内径」の工具シーケンスが存在する場合に改善要求工程が存在することを確認する。
【0106】
つぎに、加工プログラム編集コンピュータは、第1被選択工具が設定された工具シーケンスを含む「棒材内径加工ユニット」の中に「旋削ドリル 端面」の工具シーケンスか、「溝入れ 内径」の工具シーケンスが含まれるか探索する。図14に示される加工プログラムではユニット番号14の棒材内径加工ユニットの中に「旋削ドリル 端面」の工具シーケンスも「溝入れ 内径」の工具シーケンスも存在しないため、加工プログラム編集コンピュータは、当該棒材内径加工ユニットの前に、「旋削ドリル 端面」の工具シーケンスを含む旋削ドリル加工ユニットか、「溝入れ 内径」の工具シーケンスを含む溝入れ加工ユニットのいずれかが存在するかを探索する。
【0107】
当該加工プログラムでは、旋削ドリル加工ユニットと溝入れ加工ユニットとの両方が存在するが、その場合、加工プログラム編集コンピュータは、ユニット番号14の棒材内径加工ユニットにより近い「溝入れ加工ユニット」において「溝入れ 内径」の工具シーケンスがあるか否か探索する。ここでより近いとは、参照元の加工ユニットと参照先の加工ユニットとの間の他の加工ユニットの数に基づいて求められるとよい。図14に示される加工プログラムの場合、加工プログラム編集コンピュータは、このようにして、「溝入れ 内径」の工具シーケンスを含むユニット番号13の溝入れ加工ユニットを検出する。加工プログラム編集コンピュータは、「棒材内径加工ユニット」の(切込-X/2、切込-Z)から定まる切込開始点(図15の点A)が、溝入れ加工ユニットの溝形状パターンの断面形状VG1と接しているため、先に実行される溝入れ加工ユニットの「溝入れ 内径」によって指定される溝入れ工具によって空けられた穴を後に実行される棒材加工ユニットの呼び10.Aの旋削工具が通過すると判定する。
【0108】
そして、加工プログラム編集コンピュータは、呼び変化163cで表される第1被選択工具の呼び径が大きくなる変化が生じているため、第2被割当工具が利用可能か否かの具体的な判定を行う。具体的な判定として、加工プログラム編集コンピュータは、[条件7]~[条件13]を具備するか否か判定する。このとき、副切込角γt1は180°-95°-55°=30°となり、もとの溝入れ加工ユニットのままでは、Wgtanγt1=1.732..<Wh=2となる。したがって、[条件12]が具備されず、溝入れ加工ユニットの工具シーケンスの溝幅Wgを変えなければ、呼び10.Gの旋削工具が利用できなくなる。したがって、加工プログラム編集コンピュータは、溝入れ加工ユニットの工具シーケンスが改善要求工程であると判定する。このとき、呼び10.Aの溝入れ工具が第2被割当工具に相当する。別の言い方をすれば、加工プログラム編集コンピュータは、被選択工程以外の複数の加工工程のうちのいずれかの工程であって、第1被割当工具から第1被選択工具に変更することにより、複数の被割当工具のうち該工程に対応する第2被割当工具の被設定ツールパスを変更しなければ第1被選択工具が利用できなくなる改善要求工程が存在するか否かを判定する。被設定ツールパスは、溝幅パラメータと、シーケンス番号F1の工具シーケンスのパターンパラメータで規定されるツールパスである。
【0109】
このように、改善要求工程が存在するとき、加工プログラム編集コンピュータは、第2被割当工具(溝入れ工具)のツールパスを、第1被選択工具が利用可能となるように変更する。具体的には、加工プログラム編集コンピュータは、溝入れ加工ユニットの溝幅パラメータを4.0に変更する。このようにすると、Wgtanγt1=2.309..>Wh=2.0となり、[条件12]が具備されるからである。この溝幅パラメータが変化されても製品形状は変わらないように設定される必要があるため、溝幅パラメータが変化するときに製品形状が変わってしまう場合、溝入れ加工ユニットの形状シーケンスも変更する必要がある。この例では、溝形状パターンが「2」となっており、形状シーケンスの水玉模様でハッチングされた(始点-X/2,始点-Z)(終点-X/2,終点-Z)は、溝形状パターンの断面形状VG1の右側の辺のみを指定するため、溝入れ加工ユニットの形状シーケンスを変更する必要がない。さらに、溝幅パラメータを変更したことに伴い、棒材加工ユニットの切込-Zのパラメータを溝入れ加工ユニットにおいて切り欠かれた部分の角に相当する点に対応するように変更する。
【0110】
さらに、加工プログラム編集コンピュータは、改善要求工程で利用される工具(溝入れ工具)を、第2被割当工具(呼び10.Aの溝入れ工具)から、改善要求工程で利用可能な第2被選択工具に変更することが好ましい。「溝入れ 内径」の工具シーケンスにおいて利用可能な工具とは、上記[条件12]、[条件14]~[条件20]の全てを具備するものであって、刃先幅BW1が最も大きいものが望ましい。ストロークの数を少なくすることが出来る為である。図16に挙げた例の中では、例えば、呼び10.Gの溝入れ工具が相当する。この刃先幅BW1は、溝形状パターンの断面形状VG1の上底の長さに相当する。図17は、以上のように修正された二次加工プログラム157bを示す。図17では、二次加工プログラム157bにおいて一次加工プログラム157aから修正された箇所を白抜きで示す。
【0111】
別の例として、図17に示されたプログラムが一次加工プログラム157aであって、ユーザが上述するインタフェースを介して呼び10.Gの溝入れ工具を呼び10.Aの溝入れ工具に変更し、溝幅パラメータを3.0に変更した場合を考える。この溝幅パラメータの変更は、例えば、図10のユニット選択ウィンドウWIN1の編集ボタンBU1を押下し、GUIにて溝幅パラメータを変更することによっても変更されてもよく、あるいは、加工プログラム編集プログラム159が溝入れ工具の修正とともに溝幅パラメータを自動で変更する機能を有していてもよい。このとき、被選択工程は、溝入れ加工ユニットの工具シーケンスに相当する。第1被割当工具は呼び10.Gの溝入れ工具に相当し、第1被選択工具は呼び10.Aの溝入れ工具に相当する。溝幅パラメータを変更するということは、溝入れ工具のツールパスを変更することに相当する。つまり、加工プログラム編集コンピュータは、複数の加工工程のうちの被選択工程(溝入れ加工ユニットの工具シーケンス)において利用される工具(溝入れ工具)のツールパスを、該工具の被設定ツールパス(溝幅4.0のときのツールパス)から被選択ツールパス(溝幅3.0のときのツールパス)に変更するユーザからの入力を受け付ける。
【0112】
つぎに、加工プログラム編集コンピュータは、被選択工程(溝入れ加工ユニットの工具シーケンス)以外の複数の加工工程のうちのいずれかの工程であって、被選択ツールパス(溝幅3.0のときのツールパス)に変更することにより、複数の被割当工具のうち該工程に対応する第2被割当工具が利用できなくなる改善要求工程が存在するか否かを判定する。具体的には、第1被選択工具名163bが呼び10.Aの溝入れ工具である「溝入れ 内径」の場合、その工具シーケンスよりも後に「旋削 内径」の工具シーケンスが存在する場合に改善要求工程が存在することを確認する。
【0113】
当該加工プログラムでは、溝入れ加工ユニットの後ろにユニット番号14の「旋削 内径」の工具シーケンスが存在する。したがって、加工プログラム編集コンピュータは、ユニット番号14の「棒材加工ユニット」において「旋削 内径」の工具シーケンスがあるか否かを探索する。図14に示される加工プログラムの場合、加工プログラム編集コンピュータは、このようにして、「旋削 内径」の工具シーケンスを含むユニット番号14の棒材加工ユニットを検出する。
【0114】
つぎに、加工プログラム編集コンピュータは、「棒材内径加工ユニット」の(切込-X/2,切込-Z)から定まる切込開始点(図5の点A)が、ツールパス変更前(溝幅4.0のときのツールパスのときの)溝入れ加工ユニットの溝形状パターンの断面形状VG1と接しているため、先に実行される溝入れ加工ユニットの「溝入れ 内径」によって指定される溝入れ工具によって空けられた穴を後に実行される棒材加工ユニットの呼び10.Gの旋削工具が通過すると判定する。したがって、呼び10.Gの旋削工具は、第2被割当工具に相当する。
【0115】
したがって、つぎに、加工プログラム編集コンピュータは、呼び変化163cを参照する。ここで、呼び変化163cが[小]というのは、第1被選択工具の呼び径とは無関係にツールパスによって形成される開口部の大きさを言う。この場合、加工プログラム編集コンピュータは、溝幅パラメータの大きさが小さくなっていれば、呼び変化163cで表される変化が生じていると判定する。この例では、溝幅パラメータが4.0から3.0へと小さくなっているから、加工プログラム編集コンピュータは、呼び変化163cで表される変化が生じていると判定する。
【0116】
加工プログラム編集コンピュータは、呼び変化163cで表される変化が生じているため、第2被割当工具(呼び10.Gの旋削工具)が利用可能か否かの具体的な判定を行う。「旋削 内径」の工具シーケンスにおいて利用可能な工具とは、上記[条件7]~[条件13]の全てを具備する工具である。上述のように、Wgtanγt1=1.732..<Wh=2となるため、[条件12]を具備しない。したがって、第2被割当工具(呼び10.Gの旋削工具)が利用できず、加工プログラム編集コンピュータは、ユニット番号14の棒材加工ユニットのシーケンス番号R1の工具シーケンスを改善要求工程として決定する。
【0117】
加工プログラム編集コンピュータは、改善要求工程(シーケンス番号R1の工具シーケンス)が存在するとき、改善要求工程(シーケンス番号R1の工具シーケンス)で利用される工具を、第2被割当工具(呼び10.Gの旋削工具)から、改善要求工程(シーケンス番号R1の工具シーケンス)で利用可能な第2被選択工具(呼び10.Aの旋削工具)に変更する。このとき、副切込角γt1は180°-95°-50°=35°となり、なお、Wgtanγt1=2.100..>Wh=2となって、[条件12]を具備するためである。その他のパラメータも呼び10.Aと同じであるため、[条件7]~[条件13]を具備する。この場合においても、加工プログラム編集コンピュータは、工具の変更前後の被切削形状をディスプレイ154(240)に表示させてもよい。
【0118】
図17の例において旋削工具(呼び10.G)をより大きな旋削工具に入れ替えたときに、溝入れ工具を変えなくても溝幅パラメータのみを変更することによって旋削工具を溝入れ工具によって形成される挿入口に挿入可能である場合、溝幅パラメータのみが変更されてもよい。その場合、溝入れ工具のツールパスのみが変更されることとなる。
【0119】
また、図14図17の例は、ワークW1に空けられた穴の内径を加工する例であるが、ワークの外周(外径)や、端面を加工する場合にも以下に述べる工具選択の条件の相違点を除き、図14図17の例をそのまま適用可能である。ワークの外周(外径)や、端面を加工する場合には、穴の壁面と工具との干渉を考慮する必要がないため、旋削工具については[条件7]、[条件8]、[条件11]~[条件13]を具備するように工具が選択され、溝入れ工具については[条件14]、[条件15]、[条件18]~[条件20]を具備するように工具が選択されればよい。
<加工プログラム編集プログラム159を利用した二次加工プログラム157bの生成方法>
つぎに、加工プログラム編集プログラム159を利用した加工プログラム157の生成支援方法を、フローチャートを利用して説明する。図18は、当該加工プログラム生成支援方法に係るフローチャートである。図18のステップS1において、加工プログラム編集コンピュータは、複数の加工工程において複数の被割当工具を設定する。ステップS2において、加工プログラム編集コンピュータは、複数の被割当工具の各々のツールパスを被設定ツールパスとして設定させる。これらは、例えば、加工プログラム編集コンピュータが、加工プログラム生成コンピュータが生成した一次加工プログラム157aを読み込むことによって実現される。しかし、加工プログラム編集コンピュータが読み込むデータは、一次加工プログラム157aでなくても、工具とツールパスのみが定義された中間処理データであってもよい。
【0120】
ステップS3において、加工プログラム編集コンピュータは、図10に示されるような一次加工プログラム157aの編集ウィンドウ30を用いて、被選択工程の修正入力を受け付ける。具体的には、図19のステップS3Aでは、加工プログラム編集コンピュータは、工具シーケンス選択ウィンドウWIN2を用いて、被選択工程の第1被割当工具を第1被選択工具に変更する入力を受け付ける。当該入力が受け付けられると(ステップS3AがYes)、ステップS3Bにおいて、加工プログラム編集コンピュータは、選択された第1被選択工具と第1被選択ユニット163aとをメモリ152(220)(記憶装置)に記憶させる。第1被割当工具を第1被選択工具に変更する入力がないと(ステップS3AがNo)、図19のステップS3Bでは、加工プログラム編集コンピュータは、ユニット選択ウィンドウWIN1(例えば、溝入れ加工ユニットの溝幅パラメータの編集)、工具シーケンス選択ウィンドウWIN2(例えば、エンドミル工具シーケンスの加工穴径パラメータの編集)を用いて、被選択工程の被設定ツールパスを被選択ツールパスに変更する入力を受け付ける。当該入力が受け付けられると(ステップS3CがYes)、ステップS3Dにおいて、加工プログラム編集コンピュータは、被選択ツールパスに対応する工程の加工ユニットを第1被選択ユニット163aとして、その工程の工具を第1被選択工具として、メモリ152(220)(記憶装置)に記憶させる。
【0121】
ステップS4において、加工プログラム編集コンピュータは、対応関係データ163から、被選択工程の第1被選択工具名163bに対応する、第2被割当工具名163fとシーケンス位置163dを探索する。なお、被選択工程の第1被選択工具名163bに対応する第2被割当工具名163fとシーケンス位置163dが複数存在する場合、加工プログラム編集コンピュータは、対応する第2被割当工具名163fとシーケンス位置163dを全て抽出する。
【0122】
ステップS5において、加工プログラム編集コンピュータは、ステップS4で抽出された第2被割当工具名163fのうち、シーケンス位置163dが「前」の第1被選択工具名163bがあるかどうか判定する。シーケンス位置163dが「前」の第1被選択工具名163bがなければ(ステップS5でNo)、ステップS7に進む。シーケンス位置163dが「前」の第1被選択工具名163bがあるとき(ステップS5でYes)、ステップS6において、加工プログラム編集コンピュータは、探索方向を前とし、ステップS10を実行する。ステップS7では、加工プログラム編集コンピュータは、ステップS4で抽出された第2被割当工具名163fのうち、シーケンス位置163dが「後」の第1被選択工具名163bがあるかどうか判定する。シーケンス位置163dが「後」の第1被選択工具名163bがなければ(ステップS7でNo)、ステップS9において、加工プログラム編集コンピュータは、一次加工プログラム157aか、ステップS10によって一次加工プログラム157aが修正されていれば、二次加工プログラム157bを出力する。シーケンス位置163dが「後」の第1被選択工具名163bがあるとき(ステップS7でYes)、ステップS8において、加工プログラム編集コンピュータは、探索方向を後とし、ステップS10を実行する。
【0123】
図20のステップS11において、加工プログラム編集コンピュータは、被選択工程と同一の加工ユニットで被選択工程からステップS6またはS8で定められた探索方向に工具シーケンスを順に探索する。ステップS12において、加工プログラム編集コンピュータは、探索された工具シーケンスの工具名が、探索方向と同じ向きのシーケンス位置163dとなる第2被割当工具名163fと一致するか否か判定する。例えば、被選択工程が、溝入れ加工ユニットの工具シーケンスであるとき、探索方向が「前」のとき、シーケンス位置163d「前」の第2被割当工具名163fがある「旋削 内径」の工具名か、「旋削ドリル 端面」の工具名のいずれかと一致するかどうか判定する。一致するものがある場合(ステップS12でYes)、図21のステップS22に進む。一致するものがない場合(ステップS12でNo)、ステップS13において、加工プログラム編集コンピュータは、被選択工程が存在する加工ユニット内において、探索方向に工具シーケンスを全て探索したかどうか判定し、工具シーケンスを全て探索していない場合(ステップS13でNo)、加工プログラム編集コンピュータは、工具シーケンスを全て探索するまでステップS11からステップS13の動作を繰り返す。
【0124】
図21のステップS22では、加工プログラム編集コンピュータは、工具名が第2被割り当て工具名と一致する工具シーケンスの工具を第2被割当工具と決定する。なお、対応関係データ163では、被選択工程によっては、被選択工程とシーケンス位置が同じ第2被割当工具名163fが複数定義されている。しかし、ステップS22では、工具名が第2被割り当て工具名と一致し、被選択工程から近い順の工具シーケンスの工具が順に、第2被割当工具として決定される。そして、加工プログラム編集コンピュータは、探索方向が前であれば(ステップS23でYes)、ステップS24において、第1被選択工具のサイズが第1被割当工具のサイズよりも大きくなるか否か判定する。第1被選択工具のサイズが第1被割当工具のサイズよりも大きくなるということは、工具の呼び径が大きくなるか、溝入れ工具の刃先幅BW1が大きくなるか、旋削工具の副切込角γt1が小さくなるかのいずれかを意味する。
【0125】
そして、加工プログラム編集コンピュータは、探索方向が後であれば(ステップS23でNo)、ステップS25において、第1被選択工具によって加工される挿入口のサイズが第1被割当工具によって加工される挿入口のサイズよりも小さくなるか否か判定する。第1被選択工具のサイズが第1被割当工具のサイズよりも大きくなるということは、工具の呼び径が大きくなるか、溝入れ工具の刃先幅BW1が大きくなるか、旋削工具の副切込角γt1が小さくなるかのいずれかを意味する。第1被選択工具のサイズが第1被割当工具のサイズよりも大きくならないか(ステップS24でNo)、第1被選択工具によって加工される挿入口のサイズが第1被割当工具によって加工される挿入口のサイズよりも小さくならないとき(ステップS25でNo)、ステップS11に戻る。第1被選択工具のサイズが第1被割当工具のサイズよりも大きくなるか(ステップS24でYes)、第1被選択工具によって加工される挿入口のサイズが第1被割当工具によって加工される挿入口のサイズよりも小さくなるとき(ステップS25でYes)、加工プログラム編集コンピュータは、第1被選択工具と第2被割当工具とのうち先に使用される工具の種類に応じて以下の処理を行う(ステップS26)。
【0126】
ステップS26で先に使用される工具が旋削ドリルであるとき、加工プログラム編集コンピュータは、図22のステップS30において、後に実行される加工ユニットにおいて利用される旋削工具は、上記[条件10]を具備しているか否か判定する。[条件10]を具備している(ステップS30でYes)場合、ステップS11に戻る。[条件10]を具備していない(ステップS30でNo)場合、ステップS31において、加工プログラム編集コンピュータは、第2被割当工具を含む工具シーケンスを改善要求工程として決定する。改善要求工程が旋削工具を含む工具シーケンスであるとき(ステップS32でYes)、加工プログラム編集コンピュータは、ステップS33において、[条件7]~[条件11]を具備し、第2被割当工具である旋削工具のサイズよりも小さいサイズを有する旋削工具である第2被選択工具を求める。改善要求工程が旋削ドリルを含む工具シーケンスであるとき(ステップS32でNo)、加工プログラム編集コンピュータは、ステップS34において、[条件1]~[条件5][条件10]を具備し、第2被割当工具である旋削ドリルのサイズよりも大きいサイズを有する旋削ドリルである第2被選択工具を求める。
【0127】
ステップS26で先に使用される工具が溝入れ工具であるとき、加工プログラム編集コンピュータは、図23のステップS40において、後に実行される加工ユニットにおいて利用される旋削工具は、上記[条件12]を具備しているか否か判定する。[条件12]を具備している(ステップS40でYes)場合、ステップS11に戻る。[条件12]を具備していない(ステップS40でNo)場合、ステップS41において、加工プログラム編集コンピュータは、第2被割当工具を含む工具シーケンスを改善要求工程として決定する。改善要求工程が旋削工具を含む工具シーケンスであるとき(ステップS42でYes)、加工プログラム編集コンピュータは、ステップS43において、第2被割当工具である旋削工具の代わりとなる、[条件7]~[条件13]を具備する形状を有する旋削工具である第2被選択工具を求める。改善要求工程が溝入れ工具を含む工具シーケンスであるとき(ステップS42でNo)、加工プログラム編集コンピュータは、ステップS44において、[条件12]を具備するような、第2被割当工具である溝入れ工具のツールパス(溝幅パラメータ)を求める。加工プログラム編集コンピュータは、ステップS45において、第2被割当工具よりも良い溝入れ工具が存在するか否か判定する。これは、加工プログラム編集コンピュータは、[条件14]~[条件20]を具備し、且つ、第2被割当工具である溝入れ工具の刃先幅よりも大きい刃先幅を有する溝入れ工具である第2被選択工具が存在するか否か判定する。そのような工具が存在する場合(ステップS45でNo)、ステップS46において、加工プログラム編集コンピュータは、[条件14]~[条件20]、[条件12]を具備し、且つ、第2被割当工具である溝入れ工具の刃先幅よりも大きい刃先幅を有する溝入れ工具である第2被選択工具を求める。
【0128】
図20を参照すると、ステップS33、S34、S43、S46のいずれかが終了、もしくは、S46を実行せずS45で終了したとき(S45でNo)、加工プログラム編集コンピュータは、図20のステップS18において、第2被割当工具によって削り取られる第1被切削形状を算出し、第1被切削形状をディスプレイ154(240)に表示させ、改善要求工程の変更に基づいて、改善要求工程において削り取られる第2被切削形状を算出し、ディスプレイ154(240)に第2被切削形状を表示させる。ステップS19において、加工プログラム編集コンピュータは、ディスプレイ154(240)に表示された形状に基づいて、ユーザからの改善要求工程の修正OKの指示を受け付ける。改善要求工程の修正を拒絶する指示を受け付けると(ステップS19でNo)、加工プログラム編集コンピュータは、ステップS20において、ステップS3の受付をキャンセルする。改善要求工程の修正OKの指示を受け付けると(ステップS19でYes)、加工プログラム編集コンピュータは、ステップS21において、第2被割当工具を求めた第2被選択工具に変更する、及び/又は、改善要求工程のツールパスを求めたツールパスに変更する。
【0129】
図20に戻り、被選択工程と同じ加工ユニット内に第2被割当工具名163fと一致する工具による工具シーケンスが存在しない、または、利用できない第2被割当工具がなかったと判断される場合(ステップS13でYes)、加工プログラム編集コンピュータは、ステップS14において、対応関係データ163から第2被割当工具名163fに対応する第2被選択ユニット163eを抽出する。ステップS15において、加工プログラム編集コンピュータは、被選択工程のある加工ユニットからステップS6またはS8で定められた探索方向に加工ユニットを順に探索する。ステップS16において、加工プログラム編集コンピュータは、探索された加工ユニットが、第2被選択ユニット163eと一致するか否か判定する。一致する場合(ステップS16でYes)、図24のステップS70に進む。一致しない場合(ステップS16でNo)、ステップS17において、加工プログラム編集コンピュータは、探索方向に加工ユニットを全て探索したかどうか判定し、加工ユニットを全て探索していない場合(ステップS17でNo)、加工プログラム編集コンピュータは、加工ユニットを全て探索するまでステップS15からステップS17の動作を繰り返す。
【0130】
図24のステップS70において、加工プログラム編集コンピュータは、第2被選択ユニット163eで被選択工程からステップS6またはS8で定められた探索方向に工具シーケンスを順に探索する。ステップS71において、加工プログラム編集コンピュータは、探索された工具シーケンスの工具名が、探索方向と同じ向きのシーケンス位置163dとなる第2被割当工具名163fと一致するか否か判定する。例えば、被選択工程が、溝入れ加工ユニットの工具シーケンスであるとき、探索方向が「前」のとき、シーケンス位置163d「前」の第2被割当工具名163fがある「旋削 内径」の工具名か、「旋削ドリル 端面」の工具名のいずれかと一致するかどうか判定する。一致するものがある場合(ステップS71でYes)、ステップS72において、加工プログラム編集コンピュータは、第1被選択ユニット163aと第2被選択ユニット163eとのうち先に実行される加工ユニットの工具シーケンスによって切削される被切削部分を後に実行される工具シーケンスの工具が通過するかを判定する。これは、例えば、旋削ドリル加工ユニットと棒材内径加工ユニットとの関係においては、加工部位が「内径」であるかどうかで判定可能である。溝入れ加工ユニットと棒材加工ユニットとの関係においては、変更前の溝入れ加工の図形の中に棒材ユニットの切込開始点が含まれているかどうかで判定可能である。先に実行される加工ユニットの工具シーケンスによって切削される被切削部分を後に実行される工具シーケンスの工具が通過する場合(ステップS72でYes)、図25のステップS22'に進む。ステップS71において一致するものがない場合(ステップS71でNo)または、工具が通過しない場合(ステップS72でNo)、ステップS73において、加工プログラム編集コンピュータは、第2被選択ユニット163e内において、探索方向に工具シーケンスを全て探索したかどうか判定し、工具シーケンスを全て探索していない場合(ステップS73でNo)、加工プログラム編集コンピュータは、工具シーケンスを全て探索するまでステップS70からステップS73の動作を繰り返す。工具シーケンスを全て探索していた場合、図20のステップS15に戻る。
【0131】
図25のステップS22'から図27のステップS46'のそれぞれの処理の内容は、「'」を除いた図21のステップS22から図23のステップS46と同じであるが、丸と符号で示した処理の移行先のみが異なる。処理の移行先は、図24図20に示す通りである。具体的には、ステップS24'、S25'、S30'、S40'の条件を具備しないとき、ステップS70に移行することがステップS22からステップS46までの移行と異なる。したがって、詳細な処理の説明は省略する。
<実施形態の作用及び効果>
本実施形態に係る加工プログラム生成支援方法、工作機械100、及び、加工プログラム編集プログラム159は、被選択工程以外の複数の加工工程のうちのいずれかの工程であって、被選択工程の第1被割当工具を第1被選択工具に変更することにより、複数の加工工程において利用される複数の被割当工具のうち該工程に対応する第2被割当工具が利用できなくなる改善要求工程が存在するか否かを加工プログラム編集コンピュータに判定させる。そして、当該方法、工作機械100、加工プログラム編集プログラム159は、改善要求工程が存在するとき、改善要求工程で利用される工具を、第2被割当工具から、改善要求工程で利用可能な第2被選択工具に加工プログラム編集コンピュータに変更させる。したがって、複数の加工工程から成る加工プログラム157の1つの工程の工具を変更する際に、その変更において影響される別の工程について工具を適切に変更することを可能とする。
【0132】
また、本実施形態に係る加工プログラム生成支援方法、工作機械100、及び、加工プログラム編集プログラム159は、被選択工程以外の複数の加工工程のうちのいずれかの工程であって、被選択工程の第1被割当工具を第1被選択工具に変更することにより、複数の加工工程において利用される複数の被割当工具のうち該工程に対応する第2被割当工具の被設定ツールパスを変更しなければ第1被選択工具が利用できなくなる改善要求工程が存在するか否かを加工プログラム編集コンピュータに判定させる。当該方法、工作機械100、加工プログラム編集プログラム159は、改善要求工程が存在するとき、第2被割当工具のツールパスを、第1被選択工具が利用可能となるように加工プログラム編集コンピュータに変更させる。したがって、複数の加工工程から成る加工プログラム157の1つの工程の工具を変更する際に、その変更において影響される別の工程についてツールパスを適切に変更することを可能とする。
【0133】
さらに、本実施形態に係る加工プログラム生成支援方法、工作機械100、及び、加工プログラム編集プログラム159は、複数の加工工程のうちの被選択工程において利用される工具のツールパスを被設定ツールパスから被選択ツールパスに変更するユーザからの入力を加工プログラム編集コンピュータに受け付けさせる。当該方法、工作機械100、及び、加工プログラム編集プログラム159は、被選択工程以外の複数の加工工程のうちのいずれかの工程であって、被選択ツールパスに変更することにより、複数の被割当工具のうち該工程に対応する第2被割当工具が利用できなくなる改善要求工程が存在するか否かを加工プログラム編集コンピュータに判定させる。当該方法、工作機械100、及び、加工プログラム編集プログラム159は、改善要求工程が存在するとき、改善要求工程で利用される工具を、第2被割当工具から、改善要求工程で利用可能な第2被選択工具に加工プログラム編集コンピュータに変更させる。したがって、複数の加工工程から成る加工プログラムの1つの工程のツールパスを変更する際に、その変更において影響される別の工程について工具を適切に変更することを可能とする。
<変形例>
上述の実施形態にて示された技術は、1つの穴を、ドリル、エンドミル、ボーリング工具のような複数の工具で径を調整しながら空ける場合にも適用可能である。上述の実施形態における仕上-X、始点-X、終点-Xのパラメータは、対応する加工点のX座標の2倍(加工穴の直径の長さ)に対応しているが、仕上-X、始点-X、終点-Xのパラメータは、対応する加工点のX座標(加工穴の半径の長さ)に対応してもよい。図4の一次加工プログラム157aでは、棒材加工ユニットが荒加工の工具シーケンスと仕上加工の工具シーケンスの両方を含む場合を例示しているが、荒加工の工具シーケンスが省略されていることもありうる。その場合、旋削ドリルユニットの旋削ドリルの呼び径が小さくなる場合には、荒加工の工具ユニットが追加されてもよい。また、ユニット番号12の棒材加工ユニットそのものが省略され、ユニット番号13以降の溝入れ加工ユニットが記載されていることもありうる。その場合、旋削ドリルユニットの旋削ドリルの呼び径が小さくなる場合には、実施例に示されるような棒材加工ユニットが追加されてもよい。
【0134】
本願においては、「備える」およびその派生語は、構成要素の存在を説明する非制限用語であり、記載されていない他の構成要素の存在を排除しない。これは、「有する」、「含む」およびそれらの派生語にも適用される。
【0135】
「~部材」、「~部」、「~要素」、「~体」、および「~構造」という文言は、単一の部分や複数の部分といった複数の意味を有し得る。
【0136】
「第1」や「第2」などの序数は、単に構成を識別するための用語であって、他の意味(例えば特定の順序など)は有していない。例えば、「第1要素」があるからといって「第2要素」が存在することを暗に意味するわけではなく、また「第2要素」があるからといって「第1要素」が存在することを暗に意味するわけではない。
【0137】
程度を表す「実質的に」、「約」、および「およそ」などの文言は、最終結果が大きく変わらないような合理的なずれ量を意味し得る。本願に記載される全ての数値は、「実質的に」、「約」、および「およそ」などの文言を含むように解釈され得る。
【0138】
本願において「A及びBの少なくとも一方」という文言は、Aだけ、Bだけ、及びAとBの両方を含むように解釈されるべきである。
【0139】
上記の開示内容から考えて、本発明の種々の変更や修正が可能であることは明らかである。したがって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、本願の具体的な開示内容とは別の方法で本発明が実施されてもよい。
【要約】

加工プログラム生成支援方法は、複数の加工工程においてそれぞれ利用される複数の工具を、それぞれ複数の被割当工具としてコンピュータに設定させることを含む。当該方法は、複数の加工工程のうちの被選択工程において利用される工具を、複数の被割当工具のうちの被選択工程に対応する第1被割当工具から第1被選択工具に変更するユーザからの入力をコンピュータに受け付けさせることを含む。当該方法は、被選択工程以外の複数の加工工程のうちのいずれかの工程であって、第1被割当工具から第1被選択工具に変更することにより、複数の被割当工具のうち該工程に対応する第2被割当工具が利用できなくなる改善要求工程が存在するか否かをコンピュータに判定させることを含む。当該方法は、改善要求工程が存在するとき、改善要求工程で利用される工具を、第2被割当工具から、改善要求工程で利用可能な第2被選択工具にコンピュータに変更させることを含む。
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