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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】切削インサートおよび回転切削工具
(51)【国際特許分類】
   B23C 5/28 20060101AFI20241022BHJP
   B23C 5/20 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
B23C5/28
B23C5/20
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2024550807
(86)(22)【出願日】2024-02-26
(86)【国際出願番号】 JP2024006788
【審査請求日】2024-08-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】503212652
【氏名又は名称】住友電工ハードメタル株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松原 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】力宗 勇樹
(72)【発明者】
【氏名】村岡 拓人
【審査官】増山 慎也
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第4035808(EP,A1)
【文献】特開2015-047693(JP,A)
【文献】特表2012-524669(JP,A)
【文献】国際公開第2019/220528(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23C 5/20、28
B23Q 11/00
B23B 51/00、06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転切削工具用の切削インサートであって、
台部材と、
前記台部材に取り付けられた刃先部材と、を備え、
前記刃先部材は、すくい面と、前記すくい面に連なる逃げ面と、を有し、
前記すくい面と前記逃げ面の稜線は、切れ刃を形成し、
前記台部材には、流体が通る流路が設けられており、
前記台部材は、前記刃先部材が配置される前端面と、前記前端面の反対にある後端面と、前記前端面と前記後端面との間にあり且つ前記流路の入口が設けられた第1側面と、前記第1側面の反対にあり且つ前記流路の出口が設けられた第2側面と、を有し、
前記後端面は、平面状であり、
前記第1側面は、平面状であり、
前記後端面に沿った仮想的な平面と、前記第1側面に沿った仮想的な平面とは、垂直であり、
前記流体が前記出口から流出する方向であって且つ前記流路の前記出口の接線方向に平行なベクトルは、前記後端面に垂直であり且つ前記前端面から前記後端面に向かう第1方向の成分を有し、前記成分は正である、切削インサート。
【請求項2】
前記流路は、前記入口を形成し且つ前記流体が溜まる第1流路部と、前記出口を形成し且つ前記第1流路部に連なる第2流路部と、を有する、請求項1に記載の切削インサート。
【請求項3】
前記出口の正面視において、前記すくい面に垂直な方向における前記出口の幅は、前記すくい面に平行な方向における前記出口の幅よりも大きい、請求項1または請求項2に記載の切削インサート。
【請求項4】
前記第1方向に平行であり且つ前記入口および前記出口の各々に交差する断面において、
前記流体が前記入口に流入する方向であって且つ前記流路の前記入口の接線方向と、前記第1方向の反対方向である第2方向とがなす角度は、0°以上90°以下であり、
前記流体が前記出口から流出する方向であって且つ前記流路の前記出口の接線方向と、前記第2方向とがなす角度は、90°より大きく180°以下である、請求項1または請求項2に記載の切削インサート。
【請求項5】
前記出口の正面視において、前記すくい面に垂直な方向における前記出口の幅は、前記すくい面に平行な方向における前記出口の幅よりも大きく、
前記第1方向に平行であり且つ前記入口および前記出口の各々に交差する断面において、
前記流体が前記入口に流入する方向であって且つ前記流路の前記入口の接線方向と、前記第1方向の反対方向である第2方向とがなす角度は、0°以上90°以下であり、
前記流体が前記出口から流出する方向であって且つ前記流路の前記出口の接線方向と、前記第2方向とがなす角度は、90°より大きく180°以下である、請求項2に記載の切削インサート。
【請求項6】
前記第2側面には、突出壁部が設けられており、
前記出口は、前記突出壁部の側面に開口している、請求項1または請求項2に記載の切削インサート。
【請求項7】
前記出口の数は、2以上である、請求項1または請求項2に記載の切削インサート。
【請求項8】
軸線の周りを回転可能な回転切削工具であって、
切削インサートと、
前記切削インサートが取り付けられる本体部と、を備え、
前記切削インサートは、
台部材と、
前記台部材に取り付けられた刃先部材と、を含み、
前記刃先部材は、すくい面と、前記すくい面に連なる逃げ面と、を有し、
前記すくい面と前記逃げ面の稜線は、切れ刃を形成し、
前記台部材には、流体が通る流路が設けられており、
前記台部材は、前記刃先部材が配置される前端面と、前記前端面の反対にある後端面と、前記前端面と前記後端面との間にあり且つ前記流路の入口が設けられた第1側面と、前記第1側面の反対にあり且つ前記流路の出口が設けられた第2側面と、を有し、
前記本体部は、被削材に対向する第1面と、前記第1面の反対にある第2面と、を有し、
前記軸線に平行であって且つ前記入口および前記出口の各々に交差する断面において、前記流体が前記出口から流出する方向であって且つ前記流路の前記出口の接線方向と、前記軸線と平行であって且つ前記第2面から前記第1面に向かう軸線前方とがなす角度は、90°より大きく180°以下である、回転切削工具。
【請求項9】
前記本体部において、前記流体が通る第3流路部が設けられており、
前記第3流路部は、前記流路に連なる本体出口と、前記本体出口の反対にある本体入口と、を有し、
前記軸線に平行であって且つ前記本体入口および前記本体出口の各々に交差する断面において、前記本体入口から前記本体出口に向かう方向と、前記軸線前方とがなす角度は、0°よりも大きく90°以下である、請求項8に記載の回転切削工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、切削インサートおよび回転切削工具に関する。
【背景技術】
【0002】
国際公開第2019/220528号(特許文献1)は、クーラント供給孔が設けられた切削インサートを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2019/220528号
【発明の概要】
【0004】
本開示に係る切削インサートは、回転切削工具用であって、台部材と、台部材に取り付けられた刃先部材と、を備えている。刃先部材は、すくい面と、すくい面に連なる逃げ面と、を有している。すくい面と逃げ面の稜線は、切れ刃を形成している。台部材には、流体が通る流路が設けられている。台部材は、刃先部材が配置される前端面と、前端面の反対にある後端面と、前端面と後端面との間にあり且つ流路の入口が設けられた第1側面と、第1側面の反対にあり且つ流路の出口が設けられた第2側面と、を有している。後端面は、平面状である。第1側面は、平面状である。後端面に沿った仮想的な平面と、第1側面に沿った仮想的な平面とは、垂直である。流体が出口から流出する方向であって且つ流路の出口の接線方向に平行なベクトルは、後端面に垂直であり且つ前端面から後端面に向かう第1方向の成分を有し、成分は正である。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1図1は、第1実施形態に係る切削インサートの構成を示す第1斜視模式図である。
図2図2は、第1実施形態に係る切削インサートの構成を示す第2斜視模式図である。
図3図3は、第1実施形態に係る切削インサートの構成を示す断面模式図である。
図4図4は、流路の出口の形状を示す正面模式図である。
図5図5は、第2実施形態に係る切削インサートの構成を示す断面模式図である。
図6図6は、第3実施形態に係る切削インサートの構成を示す斜視模式図である。
図7図7は、第4実施形態に係る切削インサートの構成を示す斜視模式図である。
図8図8は、第4実施形態に係る切削インサートの構成を示す断面模式図である。
図9図9は、本実施形態に係る回転切削工具の構成を示す斜視模式図である。
図10図10は、本実施形態に係る回転切削工具の構成を示す正面模式図である。
図11図11は、図10のXI-XI線に沿った断面模式図である。
図12図12は、図10のXII-XII線に沿った断面模式図である。
図13図13は、回転切削工具を用いて被削材を切削する状態を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様(本実施形態とも称する)を列記して説明する。
【0007】
(1)本開示に係る切削インサートは、回転切削工具用であって、台部材と、台部材に取り付けられた刃先部材と、を備えている。刃先部材は、すくい面と、すくい面に連なる逃げ面と、を有している。すくい面と逃げ面の稜線は、切れ刃を形成している。台部材には、流体が通る流路が設けられている。台部材は、刃先部材が配置される前端面と、前端面の反対にある後端面と、前端面と後端面との間にあり且つ流路の入口が設けられた第1側面と、第1側面の反対にあり且つ流路の出口が設けられた第2側面と、を有している。後端面は、平面状である。第1側面は、平面状である。後端面に沿った仮想的な平面と、第1側面に沿った仮想的な平面とは、垂直である。流体が出口から流出する方向であって且つ流路の出口の接線方向に平行なベクトルは、後端面に垂直であり且つ前端面から後端面に向かう第1方向の成分を有し、成分は正である。これにより、流体を切れ刃の後方に排出することができる。結果として、被削材に設けられた凹みに切屑が入り込むことを低減可能である。
【0008】
(2)上記(1)に係る切削インサートによれば、流路は、入口を形成し且つ流体が溜まる第1流路部と、出口を形成し且つ第1流路部に連なる第2流路部と、を有してもよい。これにより、切削インサートを軽量化することができる。結果として、回転切削工具を高速回転することができる。
【0009】
(3)上記(1)または(2)に係る切削インサートによれば、出口の正面視において、すくい面に垂直な方向における出口の幅は、すくい面に平行な方向における出口の幅よりも大きくてもよい。これにより、流体の吐出量を多くすることができる。結果として、被削材に設けられた凹みに切屑が入り込むことをさらに低減可能である。
【0010】
(4)上記(1)から(3)のいずれかに係る切削インサートによれば、第1方向に平行であり且つ入口および出口の各々に交差する断面において、流体が入口に流入する方向であって且つ流路の入口の接線方向と、第1方向の反対方向である第2方向とがなす角度は、0°以上90°以下であり、流体が出口から流出する方向であって且つ流路の出口の接線方向と、第2方向とがなす角度は、90°より大きく180°以下であってもよい。これにより、切れ刃に近い領域において、流路の出口から流体を放出することができる。結果として、被削材に設けられた凹みに切屑が入り込むことをさらに低減可能である。
【0011】
(5)上記(2)に係る切削インサートによれば、出口の正面視において、すくい面に垂直な方向における出口の幅は、すくい面に平行な方向における出口の幅よりも大きくてもよい。第1方向に平行であり且つ入口および出口の各々に交差する断面において、流体が入口に流入する方向であって且つ流路の入口の接線方向と、第1方向の反対方向である第2方向とがなす角度は、0°以上90°以下であり、流体が出口から流出する方向であって且つ流路の出口の接線方向と、第2方向とがなす角度は、90°より大きく180°以下であってもよい。これにより、流体の吐出量を多くすることができる。さらに、切れ刃に近い領域において、流路の出口から流体を放出することができる。結果として、被削材に設けられた凹みに切屑が入り込むことをさらに低減可能である。
【0012】
(6)上記(1)から(5)のいずれかに係る切削インサートによれば、第2側面には、突出壁部が設けられていてもよい。出口は、突出壁部の側面に開口していてもよい。突出壁部によって切屑が切れ刃の前方に移動することを防止できる。結果として、被削材に設けられた凹みに切屑が入り込むことをさらに低減可能である。
【0013】
(7)上記(1)から(6)のいずれかに係る切削インサートによれば、出口の数は、2以上であってもよい。
【0014】
(8)本開示に係る回転切削工具は、軸線の周りを回転可能であって、切削インサートと、切削インサートが取り付けられる本体部と、を備えている。切削インサートは、台部材と、台部材に取り付けられた刃先部材と、を含む。刃先部材は、すくい面と、すくい面に連なる逃げ面と、を有する。すくい面と逃げ面の稜線は、切れ刃を形成する。台部材には、流体が通る流路が設けられている。台部材は、刃先部材が配置される前端面と、前端面の反対にある後端面と、前端面と後端面との間にあり且つ流路の入口が設けられた第1側面と、第1側面の反対にあり且つ流路の出口が設けられた第2側面と、を有している。本体部は、被削材に対向する第1面と、第1面の反対にある第2面と、を有している。軸線に平行であって且つ入口および出口の各々に交差する断面において、流体が出口から流出する方向であって且つ流路の出口の接線方向は、軸線と平行であって且つ第2面から第1面に向かう軸線前方とがなす角度は、90°より大きく180°以下である。これにより、被削材がある方向と反対の方向に流体を排出することができる。結果として、被削材に設けられた凹みに切屑が入り込むことを低減可能である。
【0015】
(9)上記(8)に係る回転切削工具によれば、本体部において、流体が通る第3流路部が設けられていてもよい。第3流路部は、流路に連なる本体出口と、本体出口の反対にある本体入口と、を有してもよい。軸線に平行であって且つ本体入口および本体出口の各々に交差する断面において、本体入口から本体出口に向かう方向と、軸線前方とがなす角度は、0°よりも大きく90°以下であってもよい。これにより、切れ刃に近い領域において、流路の出口から流体を放出することができる。結果として、被削材に設けられた凹みに切屑が入り込むことをさらに低減可能である。
【0016】
本開示の実施形態の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰返さない。
【0017】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る切削インサートの構成を示す第1斜視模式図である。図1に示されるように、第1実施形態に係る切削インサート1は、回転切削工具用であって、台部材10と、刃先部材20とを有している。刃先部材20は、台部材10に取り付けられている。刃先部材20は、すくい面21と、逃げ面22とを有している。逃げ面22は、すくい面21に連なっている。すくい面21と逃げ面22の稜線は、切れ刃23を形成している。
【0018】
図2は、第1実施形態に係る切削インサート1の構成を示す第2斜視模式図である。図1および図2に示されるように、台部材10は、前端面15と、後端面16と、第1側面11と、第2側面12と、第3側面13と、第4側面14と、を有している。前端面15は、被削材に対向する面である。後端面16は、前端面15の反対にある。後端面16は、平面状である。前端面15から後端面16に向かう方向は、第1方向R1とされる(図3参照)。第1方向R1は、後端面16に垂直である。第1方向R1の反対方向は、第2方向R2とされる(図3参照)。前端面15には、刃先部材20が配置される。刃先部材20が形成する切れ刃23の一部は、前端面15よりも第2方向R2に位置している。
【0019】
台部材10には、流路50が設けられている。流路50には、流体が通る。流体は、例えばクーラントであるが、クーラントに限定されない。流体は、液体であってもよいし、気体であってもよいし、ミストであってもよい。
【0020】
台部材10は、流路50の入口(以降、第1開口41とも呼ぶ)と、流路50の出口(以降、第2開口42とも呼ぶ)を有している。第1開口41は、第1側面11に設けられている。第1側面11は、前端面15と後端面16との間にある。第1側面11は、平面状である。後端面16に沿った仮想的な平面と、第1側面11に沿った仮想的な平面とは、垂直である。第2開口42は、第2側面12に設けられている。第2側面12は、第1側面11の反対にある。第2側面12は、前端面15と後端面16との間にある。流体は、第1開口41を通って流路50に入る。流体は、第2開口42を通って流路50から出る。
【0021】
台部材10には、取付ネジ配置孔2が設けられている。取付ネジ配置孔2は、台部材10を貫通している。取付ネジ配置孔2には、取付ネジ3が配置される(図9参照)。取付ネジ配置孔2は、第1側面11および第2側面12の各々に開口している。第1方向R1に平行な方向において、取付ネジ配置孔2は、第2開口42と後端面16との間に位置する。切削インサート1は、取付ネジ3を用いて本体部70に取り付けられる(図9参照)。
【0022】
第4側面14は、第3側面13の反対にある。第3側面13から第4側面14に向かう方向において、刃先部材20は、第3側面13と第4側面14との間に配置されている。第1方向R1に平行な方向において、第3側面13および第4側面14の各々は、前端面15と後端面16との間に位置している。
【0023】
図3は、第1実施形態に係る切削インサート1の構成を示す断面模式図である。図3に示される断面は、第1方向R1に平行であり且つ流路50の入口および出口の各々に交差する。
【0024】
図3に示されるように、流路50は、第1流路部51と、第2流路部52とを有している。第1流路部51は、流路50の入口(第1開口41)を形成する。第1流路部51には、流体が溜まる。第2流路部52は、流路50の出口(第2開口42)を形成する。第2流路部52は、第1流路部51に連なる。第2流路部52は、第1流路部51の下流側にある。第1流路部51の体積は、第2流路部52の体積よりも大きくてもよい。
【0025】
第1流路部51の側面において、第3開口43が設けられている。第3開口43は、第2流路部52の入口である。流体は、第3開口43を通って、第2流路部52に入る。流体が第1開口41を通って第1流路部51に入る方向は、第1流動方向A1とされる。第1方向R1に平行であり且つ流路50の入口および出口の各々に交差する断面において、第1流動方向A1は、例えば第2方向R2に対して垂直であってもよいし、第2方向R2に垂直な直線に対して傾斜していてもよい。流体が第3開口43を通って第2流路部52に入る方向は、第2流動方向A2とされる。第2流動方向A2は、例えば第2方向R2と実質的に同じ方向である。図3に示される断面は、第2開口42の中心および第3開口43の中心を含む。なお、本願明細書において、開口の中心とは、当該開口を通る流体の流動方向に見て、当該開口の幅が最大となる方向における直線と、当該開口とが交差する2点間の中間位置とされる。
【0026】
流体が第2開口42から流出する方向であって且つ第2開口42の接線方向は、第3流動方向A3とされる。第3流動方向A3に平行なベクトルは、第1方向R1の成分を有する。当該成分は正である。別の観点から言えば、第3流動方向A3と、第2方向R2とがなす角度(以降、第1角度θ1とも呼ぶ)は、90°より大きく180°以下である。第1角度θ1は、100°よりも大きくてもよいし、110°よりも大きくてもよいし、120°よりも大きくてもよい。第1角度θ1は、170°以下でもよいし、160°以下でもよいし、150°以下でもよい。第2開口42の接線方向は、第2流路部52の内、第2開口42に施された面取り部を除き、最も第2開口42に近い位置において測定される。
【0027】
図1および図3に示されるように、第2側面12には、突出壁部19が設けられていている。突出壁部19は、前端面15に連なっている。突出壁部19は、第1領域31と、第2領域32とを有している。第1領域31は、第1方向R1に沿って延びる。第2領域32は、第1領域31に連なっている。第2領域32は、第1領域31よりも第1方向R1にある。第2領域32は、第1領域31に対して傾斜している。第2領域32は、第1領域31に対して前端面15の反対に位置する。流路50の出口は、第2領域32に設けられる。
【0028】
第2側面12は、第3領域33と、第4領域34とを有している。第3領域33は、第2領域32よりも第1方向R1にある。第3領域33は、第2領域32に連なっている(図1参照)。第3領域33は、凹むように湾曲している。第4領域34は、第3領域33よりも第1方向R1にある。第4領域34は、第3領域33に連なっている。第4領域34は、第1方向R1に沿って延びる。取付ネジ配置孔2は、第4領域34に開口している。
【0029】
切れ刃23によって切削された被削材の切屑は、切れ刃23から第3領域33に向かって移動し、第3領域33でカールして分断される。分断された切屑は、流路50の第2開口42から出た流体によって、第3流動方向A3に飛ばされる。なお、流路50の第2開口42から出た流体の一部は、第3領域33にあたってもよい。
【0030】
図4は、流路50の出口の形状を示す正面模式図である。図4に示されるように、流路50の出口である第2開口42は、細長い形状を有している。具体的には、第2開口42の正面視において、すくい面21に垂直な方向における出口の幅(第1幅W1)は、すくい面21に平行な方向における出口の幅(第2幅W2)よりも大きくてもよい。なお、第2開口42の正面視は、第3流動方向A3の反対方向に沿って見た視野である。第1幅W1は、第2幅W2の1.5倍以上であってもよいし、2倍以上であってもよい。第1幅W1は、第2幅W2の10倍以下であってもよいし、5倍以下であってもよい。
【0031】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る切削インサート1の構成について説明する。第2実施形態に係る切削インサート1は、主に、流体の流路50は、流体が溜まる流路部を有していない点において異なっており、その他の構成については、第1実施形態に係る切削インサート1と実質的に同じである。以下、第1実施形態に係る切削インサート1と異なる構成を中心に説明する。
【0032】
図5は、第2実施形態に係る切削インサート1の構成を示す断面模式図である。図5に示される断面図は、図3に示される断面図に対応する。
【0033】
図5に示されるように、流体の流路50は、流体が溜まる流路部を有していない。第2方向R2における流路50の幅は、連続的に小さくなっていてもよい。流路50の入口を形成する第1開口41は、第1開口端部41aと、第2開口端部41bとを有している。第2方向R2において、第2開口端部41bは、第1開口端部41aと前端面15との間に位置している。
【0034】
流体が流路50に流入する方向であって、且つ、第1開口端部41aにおける流路50の接線方向は、第7接線方向A7とされる。第2方向R2と第7接線方向A7とがなす角度は、第7角度θ7とされる。流体が流路50に流入する方向であって、且つ、第2開口端部41bにおける流路50の接線方向は、第8接線方向A8とされる。第2方向R2と第8接線方向A8とがなす角度は、第8角度θ8とされる。流体が入口に流入する方向であって且つ流路50の入口の接線方向と、第2方向R2とがなす角度は、第2角度θ2とされる。第2角度θ2は、第7角度θ7と第8角度θ8との平均値とされる。第1開口端部41aにおける流路50の接線方向は、流路50の内、第1開口端部41aに施された面取り部を除き、最も第1開口端部41aに近い位置において測定される。同様に、第2開口端部41bにおける流路50の接線方向は、流路50の内、第2開口端部41bに施された面取り部を除き、最も第2開口端部41bに近い位置において測定される。
【0035】
図5に示されるように、第2角度θ2は、0°以上90°以下である。第2角度θ2は、10°以上であってもよいし、20°以上であってもよい。第2角度θ2は、80°以下であってもよいし、70°以下であってもよい。
【0036】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態に係る切削インサート1の構成について説明する。第3実施形態に係る切削インサート1は、主に、流路50の出口の数が2以上である点において第1実施形態に係る切削インサート1と異なっており、その他の構成については、第1実施形態に係る切削インサート1と実質的に同じである。以下、第1実施形態に係る切削インサート1と異なる構成を中心に説明する。
【0037】
図6は、第3実施形態に係る切削インサート1の構成を示す斜視模式図である。図6に示されるように、流路50の出口(第2開口42)の数は、2であってもよい。別の観点から言えば、第2流路部52は、第1流路部51から2つに分岐していてもよい。流体の出口は、すくい面21に対して垂直な方向に沿って並んで配置されていてもよい。流路50の出口の数は、2に限定されない。流路50の出口の数は、3であってもよいし、4以上であってもよい。
【0038】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態に係る切削インサート1の構成について説明する。第4実施形態に係る切削インサート1は、主に、流路50の出口の数が2つあり、且つ出口の向きが異なっている点において第1実施形態に係る切削インサート1と異なっており、その他の構成については、第1実施形態に係る切削インサート1と実質的に同じである。以下、第1実施形態に係る切削インサート1と異なる構成を中心に説明する。
【0039】
図7は、第4実施形態に係る切削インサート1の構成を示す斜視模式図である。図8は、第4実施形態に係る切削インサート1の構成を示す断面模式図である。図8に示される断面図は、図3に示される断面図に対応する。
【0040】
図7および図8に示されるように、流路50は、第1流路部51と、第2流路部52と、第4流路部54とを有している。第1流路部51は、第1開口41を有する。第1開口41は、第1流路部51の入口である。第2流路部52は、第2開口42と、第3開口43とを有する。第2開口42は、第2流路部52の出口である。第2流路部52は、第1流路部51に連なる。第3開口43は、第2流路部52の入口であり、且つ、第1流路部51の出口である。
【0041】
第4流路部54は、第4開口44と、第5開口45とを有する。第4開口44は、第4流路部54の出口である。第4流路部54は、第1流路部51に連なる。第5開口45は、第4流路部54の入口であり、且つ、第1流路部51の出口である。流体は、第5開口45を通って、第4流路部54に入る。流体が第5開口45を通って第4流路部54に入る方向は、第5流動方向A5とされる。第5流動方向A5は、例えば第2方向R2と実質的に同じ方向である。
【0042】
流体が第4開口44から流出する方向であって且つ第4開口44の接線方向は、第4流動方向A4とされる。第4流動方向A4は、第3流動方向A3と異なる。すくい面21に対して垂直な方向に見て、第4流動方向A4は、切れ刃23と交差してもよい。第4流動方向A4は、第1流動方向A1と実質的に同じ方向であってもよい。第4開口44の接線方向は、第4流路部54の内、第4開口44に施された面取り部を除き、最も第4開口44に近い位置において測定される。
【0043】
図8に示されるように、第4開口44は、突出壁部19の第1領域31に設けられている。第2開口42は、突出壁部19の第2領域32に設けられている。第2方向R2において、第4開口44は、前端面15と第2開口42との間に位置している。第1側面11から第2側面12に向かう方向において、第5開口45は、第3開口43と第1側面11との間に位置している。
【0044】
図9は、本実施形態に係る回転切削工具の構成を示す斜視模式図である。図9に示されるように、本実施形態に係る回転切削工具は、例えばフライス用カッターである。回転切削工具は、軸線Bの周りを回転可能である。回転切削工具は、本体部70と、切削インサート1と、取付ネジ3と、位置調整ネジ4と、を主に有している。本体部70には、切削インサート1が取り付けられる。
【0045】
本体部70は、第1面71と、第2面72と、外周面73と、内周面74と、を有している。第1面71は、被削材に対向する面である。第2面72は、第1面71の反対にある。第2面72は、工作機械の主軸に対向する。外周面73は、第1面71および第2面72の各々に連なる。軸線Bに沿った方向において、外周面73は、第1面71と第2面72との間に位置している。複数の切削インサート1は、第1面71と外周面73との境界に配置されている。複数の切削インサート1は、回転方向に沿って等間隔に配置されている。
【0046】
切削インサート1は、取付ネジ3を用いて本体部70に取り付けられる。位置調整ネジ4は、軸線Bに沿った方向における切削インサート1の位置を調整する。軸線Bに沿った方向において、位置調整ネジ4は、切削インサート1と第2面72との間にある。複数の切削インサート1の各々に対して、対応する位置調整ネジ4が設けられている。
【0047】
図10は、本実施形態に係る回転切削工具の構成を示す正面模式図である。図10に示されるように、本体部70において、第3流路部80が設けられている。第3流路部80には、流体が通る。第3流路部80は、本体部70の内周面74から外周面73に向かって延びている。第3流路部80は、本体入口81と、本体出口82とを有する。本体入口81は、内周面74に開口する。本体出口82は、本体入口81の反対にある。図10に示されるように、軸線Bに沿って見た場合、第3流路部80は、直線状に延びている。複数の切削インサート1の各々に対応するように、複数の第3流路部80が設けられている。
【0048】
図11は、図10のXI-XI線に沿った断面模式図である。図11に示される断面模式図は、軸線Bに平行であり、且つ、切削インサート1に設けられた流路50の出口および入口の各々に交差する。図11に示される断面は、第2流路部52の出口である第2開口42の中心と、第2流路部52の入口である第3開口43の中心とを含む。
【0049】
第3流動方向A3は、流体が切削インサート1出口から流出する方向であって且つ切削インサート1の流路50の出口の接線方向である。軸線前方R3は、軸線Bと平行であって且つ第2面72から第1面71に向かう方向である。第3流動方向A3と、軸線前方R3とがなす角度(以降、第10角度θ10とも呼ぶ)は、90°より大きく180°以下である。
【0050】
第10角度θ10は、第1角度θ1と実質的に同じである。第10角度θ10は、100°よりも大きくてもよいし、110°よりも大きくてもよいし、120°よりも大きくてもよい。第10角度θ10は、170°以下でもよいし、160°以下でもよいし、150°以下でもよい。
【0051】
図12は、図10のXII-XII線に沿った断面模式図である。図12に示される断面模式図は、軸線Bに平行であり、且つ、本体入口81および本体出口82の各々に交差する。図12に示される断面は、本体入口81の中心および本体出口82の中心を含む。
【0052】
切削インサート1が本体部70に取り付けられた状態において、第3流路部80の本体出口82は、切削インサート1の流路50に連なる。流体は、第3流路部80の本体入口81から第3流路部80に入り、本体出口82に向かって流れる。本体出口82を出た流体は、切削インサート1の第1開口41から、切削インサート1に設けられた第1流路部51に入る。第1流路部51に入った流体は、第2流路部52を通って、第2開口42から切削インサート1の外部に放出される。
【0053】
図12に示されるように、軸線Bに平行であって且つ本体入口81および本体出口82の各々に交差する断面において、本体入口81から本体出口82に向かう方向は、第6流動方向A6とされる。第6流動方向A6と、軸線前方R3とがなす角度(以降、第3角度θ3とも呼ぶ)は、0°よりも大きく90°以下である。本体入口81の中心は、第6流動方向A6に垂直な面で第3流路部80を仮想的に切断した場合に、第3流路部80の輪郭が切れ目なくつながっている断面の内、最も本体入口81に近い断面において求められる。同様に、本体出口82の中心は、第6流動方向A6に垂直な面で第3流路部80を仮想的に切断した場合に、第3流路部80の輪郭が切れ目なくつながっている断面の内、最も本体出口82に近い断面において求められる。なお、本願明細書において、入口または出口の中心とは、当該断面に対して垂直な方向に見て、当該断面における流路部の幅が最大となる方向における直線と、当該流路部とが交差する2点間の中間位置とされる。
【0054】
第3角度θ3は、10°よりも大きくてもよいし、20°よりも大きくてもよいし、30°よりも大きくてもよい。第3角度θ3は、80°以下でもよいし、70°以下でもよいし、60°以下でもよい。
【0055】
図13は、回転切削工具を用いて被削材を切削する状態を示す断面模式図である。
図13に示されるように、回転切削工具100の第1面71が被削材90に対向するように、回転切削工具100が配置される。被削材90は、例えばエンジンブロックである。エンジンブロックの被削面91には、複数の凹み92が形成されている。
【0056】
回転切削工具100を用いて被削材90に対して平面加工を行う際、本体部70の第3流路部80に流体であるクーラントが導入される。クーラントは、本体部70の第3流路部80を通過した後、切削インサート1の流路50に入り、第3流動方向A3に沿って切削インサート1の外部に放出される。切れ刃23によって切削された被削材90の切屑は、すくい面21上を移動し、第3領域33においてカールされて分断される。分断された切屑は、クーラントによって第3流動方向A3に飛ばされる。クーラントの一部は、切れ刃23を冷却する。
【0057】
なお、上記において、回転切削工具100がフライス用カッターである場合について説明したが、回転切削工具100はフライス用カッターに限定されない。回転切削工具100は、例えばリーマであってもよい。
【0058】
次に、本実施形態に係る切削インサート1および回転切削工具100の作用効果について説明する。
【0059】
本実施形態に係る切削インサート1によれば、流体が出口から流出する方向であって且つ流路50の出口の接線方向に平行なベクトルは、前端面15から後端面16に向かう第1方向R1の成分を有し、当該成分は正である。これにより、流体を切れ刃23の後方に排出することができる。結果として、被削材90に設けられた凹み92に切屑が入り込むことを低減可能である。
【0060】
本実施形態に係る切削インサート1によれば、流路50は、入口を形成し且つ流体が溜まる第1流路部51と、出口を形成し且つ第1流路部51に連なる第2流路部52と、を有してもよい。これにより、切削インサート1を軽量化することができる。結果として、回転切削工具100を高速回転することができる。
【0061】
本実施形態に係る切削インサート1によれば、出口の正面視において、すくい面21に垂直な方向における出口の幅は、すくい面21に平行な方向における出口の幅よりも大きくてもよい。これにより、流体の吐出量を多くすることができる。結果として、被削材90に設けられた凹み92に切屑が入り込むことをさらに低減可能である。
【0062】
本実施形態に係る切削インサート1によれば、第1方向R1に平行であり且つ入口および出口の各々に交差する断面において、流体が入口に流入する方向であって且つ流路50の入口の接線方向と、第1方向R1の反対方向である第2方向R2とがなす角度は、0°以上90°以下であり、流体が出口から流出する方向であって且つ流路50の出口の接線方向と、第2方向R2とがなす角度は、90°より大きく180°以下であってもよい。これにより、切れ刃23に近い領域において、流路50の出口から流体を放出することができる。結果として、被削材90に設けられた凹み92に切屑が入り込むことをさらに低減可能である。
【0063】
本実施形態に係る切削インサート1によれば、第2側面12には、突出壁部19が設けられていてもよい。出口は、突出壁部19の側面に開口していてもよい。突出壁部19によって切屑が切れ刃23の前方に移動することを防止できる。結果として、被削材90に設けられた凹み92に切屑が入り込むことをさらに低減可能である。
【0064】
本実施形態に係る回転切削工具100によれば、軸線Bに平行であって且つ入口および出口の各々に交差する断面において、流体が出口から流出する方向であって且つ流路50の出口の接線方向と、軸線Bと平行であって且つ第2面72から第1面71に向かう軸線前方R3とがなす角度は、90°より大きく180°以下である。これにより、被削材90がある方向と反対の方向に流体を排出することができる。結果として、被削材90に設けられた凹み92に切屑が入り込むことを低減可能である。
【0065】
本実施形態に係る回転切削工具100によれば、軸線Bに平行であって且つ本体入口81および本体出口82の各々に交差する断面において、本体入口81から本体出口82に向かう方向と、軸線前方R3とがなす角度は、0°よりも大きく90°以下であってもよい。これにより、本体部70の外周面73と第1面71との境界付近に取り付けられる切削インサート1の流路50に対して、本体部70の第3流路部80を通して流体を効果的に導入することができる。
【0066】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態ではなく請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0067】
1 切削インサート、2 取付ネジ配置孔、3 取付ネジ、4 位置調整ネジ、10 台部材、11 第1側面、12 第2側面、13 第3側面、14 第4側面、15 前端面、16 後端面、19 突出壁部、20 刃先部材、21 すくい面、22 逃げ面、23 切れ刃、31 第1領域、32 第2領域、33 第3領域、34 第4領域、41 第1開口、41a 第1開口端部、41b 第2開口端部、42 第2開口、43 第3開口、44 第4開口、45 第5開口、50 流路、51 第1流路部、52 第2流路部、54 第4流路部、70 本体部、71 第1面、72 第2面、73 外周面、74 内周面、80 第3流路部、81 本体入口、82 本体出口、90 被削材、91 被削面、92 凹み、100 回転切削工具、A1 第1流動方向、A2 第2流動方向、A3 第3流動方向、A4 第4流動方向、A5 第5流動方向、A6 第6流動方向、A7 第7接線方向、A8 第8接線方向、B 軸線、R1 第1方向、R2 第2方向、R3 軸線前方、W1 第1幅、W2 第2幅。
【要約】
切削インサートは、台部材と、刃先部材とを有している。刃先部材は、すくい面と、すくい面に連なる逃げ面と、を有している。すくい面と逃げ面の稜線は、切れ刃を形成している。台部材には、流体が通る流路が設けられている。台部材は、刃先部材が配置される前端面と、前端面の反対にある後端面と、前端面と後端面との間にあり且つ流路の入口が設けられた第1側面と、第1側面の反対にあり且つ流路の出口が設けられた第2側面と、を有している。後端面は、平面状である。第1側面は、平面状である。後端面に沿った仮想的な平面と、第1側面に沿った仮想的な平面とは、垂直である。流体が出口から流出する方向であって且つ流路の出口の接線方向に平行なベクトルは、後端面に垂直であり且つ前端面から後端面に向かう第1方向の成分を有し、当該成分は正である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13