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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-22
(45)【発行日】2024-10-30
(54)【発明の名称】配線盗難防止具およびその施工方法
(51)【国際特許分類】
   H02G 9/00 20060101AFI20241023BHJP
   H02G 3/04 20060101ALI20241023BHJP
【FI】
H02G9/00
H02G3/04 037
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2024054894
(22)【出願日】2024-03-28
【審査請求日】2024-04-25
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】508107180
【氏名又は名称】株式会社ピー・エス・ディー
(74)【代理人】
【識別番号】100110652
【弁理士】
【氏名又は名称】塩野谷 英城
(72)【発明者】
【氏名】大山 伸善
(72)【発明者】
【氏名】勝家 誠一郎
【審査官】神田 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-038449(JP,A)
【文献】特開平09-247819(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 9/00
H02G 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向にトンネルを形成するケース本体と、
前記ケース本体の内側に複数吊り下げられる配管保持部材と、
前記配管保持部材を接地面から浮かせる引上機構と、
前記ケース本体に設けられ隣接するケース本体同士を前記長手方向に連結するための連結部と、
を備えた配線盗難防止具。
【請求項2】
前記ケース本体の接地部に設けられるスカート部と、
当該スカート部に複数設けられる接地面固定部と、
を備えた請求項1に記載の配線盗難防止具。
【請求項3】
請求項1に記載の配線盗難防止具の施工方法であって、
前記ケース本体を配管に被せるステップと、
当該配管を前記配管保持部材に保持させるステップと、
当該配管を保持した前記配管保持部材を前記引上機構により接地面から浮かせるステップと、
前記連結部により隣接する前記ケース本体同士を連結するステップと、
を含む配線盗難防止具の施工方法。
【請求項4】
請求項2に記載の配線盗難防止具の施工方法であって、
前記ケース本体を配管に被せるステップと、
当該配管を前記配管保持部材に保持させるステップと、
当該配管を保持した配管保持部材を前記引上機構により接地面から浮かせるステップと、
前記連結部により隣接する前記ケース本体同士を連結するステップと、
前記接地面固定部に固定具を施して前記スカート部を前記接地面に固定するステップと、
を含む配線盗難防止具の施工方法。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の配線盗難防止具の施工方法において、
前記ケース本体を配管に被せるステップの前に、
前記配管を切り欠くステップと、
当該切り欠きから露出した配線と奥の前記配管内壁との間に弾性シートを挟むステップと、
前記切り欠きから前記配線に向けて弾性体を挿入するステップと、
閉塞具により前記弾性体を押圧しながら前記切り欠きを閉塞するステップと、
を含む配線盗難防止具の施工方法。
【請求項6】
請求項3又は4に記載の配線盗難防止具の施工方法において、
前記ケース本体を配管に被せるステップの前に、
前記配管を切り欠くステップと、
当該切り欠きから露出した前記配管の内壁に結束バンドを当該配管の外に出す第1の孔と当該配管の外に出した結束バンドを当該配管内に戻す第2の孔とを形成するステップと、
当該第1および第2の孔を通した結束バンドにより前記配管内の配線を締めるステップと、
を含む配線盗難防止具の施工方法。
【請求項7】
請求項3に記載の配線盗難防止具の施工方法において、
前記配管保持部材を前記引上機構により接地面から浮かせるステップの後に、
当該引上機構の操作を妨げる操作忌避部材を取り付けるステップを含む、
配線盗難防止具の施工方法。
【請求項8】
請求項4に記載の配線盗難防止具の施工方法において、
前記固定具を施して前記スカート部を前記接地面に固定するステップの後に、
当該固定具の解除を妨げる解除忌避部材を取り付けるステップを含む、
配線盗難防止具の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線盗難防止具およびその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
日本において、太陽光発電所の多くは、2009年頃より急速に普及した。これは、政府による電気の固定価格買取制度(FIT)の開始によるところが大きい。
【0003】
太陽光発電所の工事において、太陽光パネルの電源ケーブルを長距離にわたり埋設すれば多くの費用を伴う。そこで、費用のかかる埋設工事を避け、地面に直接並べた保護配管に電源ケーブルを通す工法が多く採られる。いわゆる「ころがし」である。現在、このような野立ての太陽光発電所が非常に多く存在する。当時はまだ銅線の価格が安く、銅線泥棒が今日のように頻繁に発生することは想定されていなかった。
【0004】
一方、2022年頃より、ウクライナ戦争や急速な円安の影響により、銅線の価格が急騰した。盗んだ銅線が非常に高値で買取されるため、様々な施設で銅線泥棒が散見されるようになった。中でも太いケーブルが長距離使用されている太陽光発電所は銅線泥棒にとって最高の狩場となっている。ほとんどの太陽光発電所は、ひと気のない田舎や山あいに設置されているケースが多く、銅線泥棒にはうってつけのターゲットとなっている。ここ数年は、太陽光発電所における銅線の盗難発生件数が急増している。
【0005】
上記のように、野立ての太陽光発電所は田舎に多く、電線泥棒が人目に付かずに容易に施設に侵入できる。そのうえ、ころがし配線の場合には、好きな場所で太い電源ケーブルを切断し、持ち去ることが可能である。このため、泥棒に狙われたらひとたまりもない状況になっている。
【0006】
一旦被害に遭うと、配線自体の損害はもとより、最近では電線の盗難が増えすぎて復旧用の配線の手配に数か月もかかることが常態化している。その間の発電損失額は、軽く1千万円を超えるような膨大な金額になっている。多くの太陽光発電所では盗難保険に入っており、まだ何とか被害の救済を受けられているが、保険会社の損害が多すぎて、最近では盗難保険も契約停止となって入れない状況になっている。かといって、現状のころがし配線を今更埋設することもできず、太陽光発電所のオーナーは電線盗難に怯えて戦々恐々とした日々を過ごしている。
ここで出願人は、上記に関する公知の先行技術文献を知らない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこのような状況に鑑みて成されたものであり、ころがし配線において電線の盗難を防止することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本願発明の一つは、次の構成を採る。即ち、長手方向にトンネルを形成するケース本体と、ケース本体の内側に複数吊り下げられる配管保持部材とを備える。また、配管保持部材を接地面から浮かせる引上機構と、ケース本体に設けられ隣接するケース本体同士を長手方向に連結するための連結部とを有する。
【0009】
ケース本体内で、ころがし配線の配管を配管保持部材に保持させ、引上機構により配管を接地面から浮かせた状態にする。すると、配管の重量が配管保持部材を介してケース本体にかかり、ケース本体を接地面に押し付ける。このため、配管を覆ったケース本体を取り除くことが難しくなり、ケース本体を除いて配管および配線を切断することが困難となる。
【0010】
また、一般的に蛇腹状の配管が配管保持部材に重量をあずけることにより、配管が配管保持部材に引っ掛かり又は配管と配管保持部材との間の摩擦が増大し、配管をトンネルから引き抜くことも難しくなる。
【発明の効果】
【0011】
よって、本発明によれば、ころがし配線において電線の盗難を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る配線盗難防止具の概略構成図(正面断面図および平面図)である。
図2】本発明の一実施形態に係る配線盗難防止具の概略構成図(右側面図)である。
図3】本発明の一実施形態に係る配線盗難策の説明図である。
図4】本発明の一実施形態に係る配線盗難策の説明図である。
図5】本発明の一実施形態に係る配線盗難策の説明図である。
図6】本発明の一実施形態に係る配線盗難策の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という)について、添付図面を参照して説明する。本明細書および図面において、実質的に同一の機能または構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複する説明を省略する。
【0014】
図1(b)は、配線盗難防止具の正面断面図、図1(a)は、配線盗難防止具の平面図である。図1(b)は、図1(a)のA-A断面を示している。また、図2は、配線盗難防止具の右側面図である。図2のA-A断面も図1(b)のように表れる。図1(a)および図2は、2つの配線盗難防止具10が連結された状態を示している。連結された一方と他方の配線盗難防止具10に個別に言及する場合は、符号10Aおよび10Bを用いて区別する。図1(a)および図2では、紙面の都合上、長手方向の図示を一部省略している。
【0015】
図1および図2に示す配線盗難防止具10は、長手方向にトンネルを形成するケース本体1と、ケース本体1の内側に複数吊り下げられる配管保持部材2とを備えている。また、配線盗難防止具10は、配管保持部材2を接地面Gから浮かせる引上機構3と、ケース本体1に設けられ隣接するケース本体1同士を長手方向に連結するための連結部4とを有する。
【0016】
これを更に詳述すると、本実施形態において、ケース本体1は、十分な強度を持つ金属やポリカーボネイト材等で形成される。ケース本体1は、天面11と、天面11から接地方向に伸びた対向する2枚の側面12,12とを備えている。ケース本体1は、天面11および対向する側面12,12が囲う空間にトンネルを形成する。配管(「ケーブル保護管」又は単に「保護管」ともいう)Hは、そのトンネル内に束となって配置されている。各配管Hの内部には配線(「電線」又は「電源ケーブル」ともいう)Cが通っている。本実施形態において、ケース本体1の断面形状は、図1(b)に示すように、天面11と側面12,12とから成るコの字状(方形)になっている。しかし、これに限らず、ケース本体1の断面形状は、天面11と側面12,12とが連続した円弧状等に形成されていてもよい。ケース本体1の形状は、接地面Gとの間に配管Hを囲うことができる形状であればよい。
【0017】
また、本実施形態において、ケース本体1の接地部には、スカート部5,5を備えている。スカート部5,5は、ケース本体1の2枚の側面12,12の接地部に設けられている。スカート部5,5は、ケース本体1の長手方向に沿って帯状に設けられている。スカート部5,5も金属によりケース本体1と一体的に成形されている。スカート部5,5の帯は、接地面Gに対向する向きに設定されている。
【0018】
スカート部5,5には、複数の接地面固定部51が設けられている。接地面固定部51は、スカート部5に開けられた孔である。複数の接地面固定部51の孔を通して、接地面Gに向けて固定具(ペグ)Pを施工することにより、ケース本体1が接地面Gに固定されるようになっている。
【0019】
配管保持部材2は、J型金具である。配管保持部材2の上部には図示しないネジが切られている。配管保持部材2の上部は、ケース本体1の天面11に開けられた孔を貫通し、天面11上で引上機構3としてのナットと噛み合う。これにより、配管保持部材2が天面11から吊られた状態で保持されている。配管保持部材2は、J型金具のフック部分に配管Hを保持するようになっている。
【0020】
引上機構3は、配管保持部材2の上部に形成されたネジと噛み合うナットを有する。引上機構3は、配管保持部材2の上部に形成されたネジとナットとの噛み合いの高さを調整することにより、配管保持部材2としてのJ型金具の接地面Gからの高さを調整する。
【0021】
連結部4は、同一形状の2つの配線盗難防止具10A,10Bを長手方向に連結するための構造を有する。連結部4は、配線盗難防止具10Aの後端部と配線盗難防止具10Bの先端部とを重ねることができるように、ケース本体1の寸法が幾分大きくなっている。連結部4は、2つの配線盗難防止具10A,10Bを重ねた状態で両者間に連結板6をボルト7で固定するためのボルト孔14を備えている。本実施形態において、連結板6は、天面11に3ヶ所、側面12,12にそれぞれ1ヶ所ずつ設けられている。
【0022】
連結部4のスカート部5,5も接地面Gから幾分浮いており、配線盗難防止具10Aの後端部のスカート部5と配線盗難防止具10Bの先端部のスカート部5とを重ねられるようになっている。
【0023】
ケース本体1に形成される配管保持部材2の貫通孔は、一方の配線盗難防止具10Aと他方の配線盗難防止具10Bとを重ねた状態で、両者の貫通孔の位置が一致するようになっている。本実施形態では、両者の貫通孔の位置を合わせ、貫通孔ごとに1本の配管保持部材2を挿通している。
【0024】
配管保持部材2を挿通する貫通孔は、図1(a)の平面では向かって左右に対称に設けられている。また、配管保持部材2を挿通する貫通孔は、図2の側面から見ると、ケース本体1の前方(向かって左)から後方(向かって右の連結部4)まで等間隔に3ヶ所設けられている。
【0025】
スカート部5の接地面固定部51も同様に、図1(a)の平面では向かって左右に対称に設けられている。また、図2の側面から見ると、接地面固定部51は、ケース本体1の前方(向かって左)から後方(向かって右の連結部4)まで等間隔に3ヶ所設けられている。
【0026】
ただし、図示した各要素の寸法や位置は、保護する配管の仕様に応じて、適宜設計されればよい。ケース本体1の長さは、運搬や施工性を考慮すると1.5m程度が好ましい。
【0027】
次に、本実施形態における配線盗難防止具10の施工方法を説明する。
【0028】
まず、ケース本体1を配管Hに被せる。ケース本体1のトンネル内に配管Hを配置する。続いて、当該配管Hを配管保持部材2に保持させる。本実施形態では、束になっている5本の配管Hのうち両脇の2本の配管を左右の2ヶ所の配管保持部材2のフックに載せて保持させる。このとき、配管Hの蛇腹に配管保持部材2のフックが挟まるようにするとよい。ケース本体1に装備されたすべての配管保持部材2に同様に配管Hを保持させる。連結部4の配管保持部材2は、隣接するケース本体1同士を連結して配管保持部材2の貫通孔を合わせてから、その貫通孔に挿通し、引上機構3に保持させる。
【0029】
続いて、配管Hを保持した配管保持部材2を引上機構3により接地面Gから浮かせる。引上機構3としてのナットを締めることにより、配管保持部材2が接地面Gから上方に引き上げられ、配管Hが接地面Gから浮いた状態に保持される。
【0030】
ここで、先に引上機構3を調整し、配管保持部材2を接地面Gから浮かせ、その状態で、配管Hを配管保持部材2のフックに載せて保持させてもよい。結果的に、配管Hが接地面Gから浮いた状態に保持される。
【0031】
続いて、接地面固定部51に固定具(ペグ)Pを施し、スカート部5を接地面Gに固定する。ペグを打つ方向はランダムでよい。連結部4に施工するペグには、スクリューペグを採用するとよい。また、連結したケース本体1同士に連結板6を当て、ボルト7を打って固定する。
【0032】
以上の工程を、連結するすべての配線盗難防止具10に対して行う。図中には2つの配線盗難防止具10しか図示していないが、連結する配線盗難防止具10の数に限りはない。配管Hの全体を覆うように必要な数の配線盗難防止具10を連結する。
【0033】
以上の施工により、配管Hの重量が配管保持部材2を介してケース本体1にかかり、ケース本体1を接地面Gに押し付ける。このため、配管Hを覆ったケース本体1をはがすことは難しくなり、ケース本体1をはがして配管Hおよび配線Cを切断することが困難となる。
【0034】
また、スカート部5に複数の接地面固定部51を設け、固定具Pで接地面Gに固定しているので、ケース本体1をはがすことがさらに難しくなっている。
【0035】
さらに本実施形態では、連結部4において、隣接するケース本体1およびスカート部5を重ねた状態で、配管保持部材2を貫通し、接地面固定部51に固定具Pを貫通し、かつ複数の連結板6を固定しているので、隣接する配線盗難防止具10の連結が強固であり、連結を解いて隙間から配管および配線Cを切断することも困難である。
【0036】
また、蛇腹状の配管Hが配管保持部材2に重量をあずけることにより、配管Hが配管保持部材2に引っ掛かり又は配管Hと配管保持部材2との間の摩擦が増大し、配管Hをトンネルから引き抜くことも難しい。
【0037】
このように、本実施形態の配線盗難防止具10によれば、配管Hおよび配線Cの切断や、配管Hの引き抜きを難しくすることによって、配線Cの盗難を防止することができる。
【0038】
[盗難防止効果を高める方法1]
次に、配線Cの盗難防止効果をさらに高める方法を説明する。上記実施形態により、配管Hの引き抜きを抑止できるとしても、配管H内部の配線を引き抜かれる可能性が残る。そこで、配管H内部の配線の引き抜きを防止する構造を図3に示す。図3は、配管Hの長手方向に沿った断面を示している。ケース本体1を配管Hに被せる前に、まず、配管Hの任意の箇所を切り欠き、内部の配線Cを切り欠きから露出させる。
【0039】
続いて、切り欠きから露出した配線Cと奥(図3の下方)の配管内壁との間に弾性シート31としてのゴムシートを挟む。本実施形態では、ゴムシートを配線Cに巻き付けている。
【0040】
続いて、配管Hの切り欠きから配線Cに向けて弾性体としての硬いゴム製のストッパー32を挿入する。ストッパーの寸法は、配線Cに巻いた弾性シート31に一端が接した状態で、他端が配管Hの面から幾分(数cm)はみ出す程度がよい。
【0041】
そして、閉塞具33としての直線継手を、切り欠きを覆うように配管Hに装着し締める。閉塞具33としての直線継手は、ストッパー32を押圧しながら切り欠きを閉塞する。直線継手は、本来、2本の配管Hを繋ぐために使用するが、これを配管Hの切り欠きを閉塞すると共にストッパー32を配線C側に押圧するために使用する。
【0042】
これにより、図3に示す構造となり、配線Cおよびこれに巻かれた弾性シート31がストッパー32と配管Hの内壁との間で圧迫される。この結果、配線C周りの摩擦力が上昇し、配管Hから配線Cを引き抜くことが困難になる。この配線圧迫の箇所を配線盗難防止具10で覆えば、どの位置で配線が圧迫されているかを知ることもできない。
【0043】
盗難犯は、ケース本体1をはがし、閉塞具33を見つけて外さない限り、配線Cを抜き取ることができない。長距離に渡りカバーされている配管Hから閉塞具33の位置を特定することは非常に困難であり、発見するまでに非常に時間がかかる。盗難は深夜に短時間(通常は30分程度)で実行される。この時間では、連結された多数のケース本体1をはがす時間も労力もかけることができない。ゆえに、最初に配線Cの引き抜きがうまくいかない時点で、あきらめて逃走することになる。
【0044】
これにより、太陽光発電施設側の被害は最小限にとどめられ、大元で切られた配線Cを接続しなおすだけで、すぐに発電の再開が可能となる。よって、部材費もダウンタイムの売電損失も大幅に削減することができる。
【0045】
なお、太陽光発電施設の契約満了や設備の寿命等により電線の撤去が必要になった場合には、施工図面上に記載した配線圧迫の箇所をピンポイントで解除することにより、配線Cの引き抜きが再び可能となる。
【0046】
[盗難防止効果を高める方法2]
配管Hから配線Cを引き抜く行為は、図4に示す構造によっても防止することができる。図4は、配管Hの長手方向に沿った断面を示している。ケース本体1を配管Hに被せる前に、まず、配管Hの任意の箇所を切り欠き、内部の配線Cを切り欠きから露出させる。
【0047】
続いて、切り欠きの奥(図4の下方)の配管内壁に結束バンド34を通す孔を開ける。結束バンド34を通す孔は、結束バンド34の先端を一旦配管Hの外に出す第1の孔と、結束バンド34の先端を再び配管Hの中に戻す第2の孔である。結束バンド34を通す第1および第2の孔は、配管Hの蛇腹の溝に沿って並べて(図面の手前と奥に)形成するとよい。第1および第2の孔は、1本の結束バンド34を通す孔の組である。図4に示すように複数の結束バンド34,34を通す場合、結束バンド34を通す第1および第2の孔の組を、各結束バンド34,34の配置に応じて、複数組形成する。
【0048】
そして、各結束バンド34,34を第1および第2の孔に通し、配線Cを結束バンド34,34で締める。これにより、配線Cが配管Hの内壁に押し付けられ、配線Cと配管Hの内壁との間の摩擦力が上昇し、配管Hから配線Cを引き抜くことが困難になる。結束バンド34,34の施工後は、閉塞具33としての直線継手によって配管Hの切り欠きを閉塞する。このようにしても、図3に示した構造と同様の盗難防止効果を奏する。さらに、図4の構造では、図3よりも簡易な構造により、現場での施工を比較的短時間で行うことができる。また、図4の構造では、結束バンド34の長さによって、配管内の配線Cの量や太さに柔軟に対応することができる。
【0049】
[盗難防止効果を高める方法3]
次に、盗難防止効果を高める他の方法を説明する。図5は、ケース本体1(天面11)の上部に露出した配管保持部材2としてのJ型金具の上端部と、これに係合する引上機構3としてのナットとを示している。先に説明したように、引上機構3としてのナットを回すことにより、配管保持部材2としてのJ型金具を接地面Gから引上げることができ、これにより、接地面Gから浮いた配管Hの重量をケース本体1にかけることができる。逆に、ナットを回すことにより、J型金具を接地面Gに降ろせば、配管Hの重量がケース本体1にかからなくなり、ケース本体1を接地面Gから浮かせることも可能になる。そうなれば、ケース本体1を剥がされるおそれがある。
【0050】
そこで、引上機構3としてのナットを盗難犯に回されないように守る構造を追加するとよい。図5に示すように、ナットの側面をカバーする操作忌避部材35として凸型金具を設置する。凸型金具の寸法は、ナットと凸型金具との間にナットを回す工具が入らないほどに、隙間を狭めるものとする。凸型金具の上部には、J型金具の上端を貫通させる貫通孔35aが設けられている。凸型金具の足とケース本体1の天面11には、互いに対応する位置に固定部36aとしてリベット孔が形成されている。凸型金具は、リベット孔に通された固定部材36としてのリベットによってケース本体1の天面11に固定される。予めリベット孔を設けておけば、リベットの施工は、現場で電動リベッターを用いることにより、速やかに行うことができる。
【0051】
引上機構3により配線保持部材2および配管Hを接地面Gから浮かせた後、引上機構3をカバーするように操作忌避部材35をケース本体1に固定する。これにより、盗難犯は、接地面Gから浮いている配管Hを接地面Gに降ろすことが困難となり、より強固な盗難対策が可能となる。
【0052】
[盗難防止効果を高める方法4]
また、図6に示すように、接地面Gに打ち込んだ固定具Pとしてのペグの頭に対し、解除忌避部材37として凸状金具を被せてもよい。凸状金具とスカート5の互いに対応する位置に固定部38aとしてのリベット孔を設けておく。リベット孔に固定部材38としてのリベットを通し、スカート5に解除忌避部材37を固定する。これにより、盗難犯は、スカート部5からペグを外すことが困難となり、さらに強固な盗難対策が可能となる。凸状金具の固定にあたっては、凸状金具の長手方向とスカート5の長手方向とを揃えるとよい。
【0053】
上述した操作忌避部材35の取り付けや、解除忌避部材37の取り付けは必須ではない。しかし、これらの対策を順次追加することにより、配線盗難の難易度が格段に上昇する。このため、犯人が下見の段階で盗難のターゲットから外すという効果が期待できる。
【0054】
[ケース本体の汎用性を高める方法]
上記実施形態において、ケース本体1は、天面11と、側面12,12とから形成されている。ここで、ケース本体1を構成する部材は、天面11を形成する部材と、側面12,12を形成する部材とに分かれていてもよい。この場合、天面部材と、側面部材とにそれぞれリベット孔を設け、方形の天面部材の対向する辺にそれぞれ同一形状の側面部材をリベット接合により固定してもよい。
【0055】
このようにすると、ケース本体1内に収納する配管Hの幅に応じて天面部材の幅を変えても、側面部材は共通部品として用いることができる。これにより、様々な幅の完成ケースを製造、在庫する必要がなくなる。現場に応じて天面部材の幅だけを選ぶことで、臨機応変にケースを組み立てて設置することができる。
【0056】
ここで、本発明は上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限りその他種々の応用例、変形例を取り得ることは勿論である。
例えば、上述した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために構成を詳細かつ具体的に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されない。また、本実施形態の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることも可能である。本発明は、太陽光発電所のころがし配線に適するが、太陽光発電所への適用に限るものではない。
【符号の説明】
【0057】
1…ケース本体、2…配管保持部材(J型金具)、3…引上機構(ナット)、4…連結部、5…スカート部、6…連結板、7…ボルト、10,10A,10B…配線盗難防止具、11…天面、12…側面、14…ボルト孔、31…弾性シート(ゴムシート)、32…ストッパー(弾性体)、33…閉塞具(直線継手)、34…結束バンド、35…操作忌避部材(凸状金具)、35a…貫通孔、36,38…固定部材(リベット)、36a,38a…固定部(リベット孔)、37…解除忌避部材(凸状金具)、51…接地面固定部、C…配線、G…接地面、H…配管、P…固定具(ペグ)
【要約】
【課題】太陽光発電所等のころがし配線において電線の盗難を防止する。
【解決手段】長手方向にトンネルを形成するケース本体1と、ケース本体1の内側に複数吊り下げられる配管保持部材2とを備える。また、配管保持部材2を接地面Gから浮かせる引上機構3と、ケース本体1に設けられ隣接するケース本体1同士を長手方向に連結するための連結部4とを有する。ケース本体1内で、ころがし配線の配管Hを配管保持部材2に保持させ、引上機構3により配管Hを接地面Gから浮かせた状態にする。すると、配管Hの重量が配管保持部材2を介してケース本体1にかかり、ケース本体1を接地面Gに押し付ける。このため、配管Hを覆ったケース本体1を取り除くことが難しくなり、ケース本体1を除いて配管Hおよび配線Cを切断することが困難となる。
【選択図】図1
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図6