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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-22
(45)【発行日】2024-10-30
(54)【発明の名称】空気入りタイヤの製造方法および装置
(51)【国際特許分類】
   B29D 30/06 20060101AFI20241023BHJP
   B29C 73/16 20060101ALI20241023BHJP
【FI】
B29D30/06
B29C73/16
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020033299
(22)【出願日】2020-02-28
(65)【公開番号】P2021133644
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2023-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 智
【審査官】脇田 寛泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-224953(JP,A)
【文献】特開2010-280340(JP,A)
【文献】特開2011-020479(JP,A)
【文献】特開昭52-137803(JP,A)
【文献】特表2019-519644(JP,A)
【文献】特開2017-119510(JP,A)
【文献】国際公開第2018/093962(WO,A1)
【文献】特開2020-001179(JP,A)
【文献】特開2018-065350(JP,A)
【文献】特開2020-001528(JP,A)
【文献】特開2020-023152(JP,A)
【文献】特表2018-515660(JP,A)
【文献】特開2020-093776(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第116847999(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第111511534(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0061995(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C64/00-64/40
67/00-67/08
67/24-69/02
73/00-73/34
B29D1/00-33/00
99/00
B33Y10/00-99/00
B60C1/00-19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加硫されたタイヤ内面の所定範囲に、所定幅のシーラント層が介在して吸音層が備わる空気入りタイヤの製造方法において、
横断面視で前記所定幅の所定形状の凹部を有するヘッドを、前記凹部によって前記所定範囲における前記タイヤ内面を覆うように配置して、前記凹部と前記凹部に対向する前記タイヤ内面とによって囲まれた空間をキャビティとして使用し、シーラント材を前記キャビティに充填することにより、前記タイヤ内面に前記シーラント層を形成するに際して、タイヤ周方向全周に連続して延在する前記所定範囲の全体の前記タイヤ内面を、前記凹部によって覆うように前記ヘッドを円筒状に配置し、この形成した前記シーラント層の内周側に吸音材を積層して吸音層を形成することを特徴とする空気入りタイヤの製造方法。
【請求項2】
円筒状に配置した前記ヘッドの筒軸心部から前記キャビティに向かって供給管を放射状に複数本に分岐させて、分岐させたそれぞれの前記供給管を通じて前記シーラント材を前記キャビティに充填する請求項1に記載の空気入りタイヤの製造方法。
【請求項3】
加硫されたタイヤ内面の所定範囲に、所定幅のシーラント層が介在して吸音層が備わる空気入りタイヤの製造方法において、
横断面視で前記所定幅の所定形状の凹部を有するヘッドを、前記凹部によって前記所定範囲における前記タイヤ内面を覆うように配置して、前記凹部と前記凹部に対向する前記タイヤ内面とによって囲まれた空間をキャビティとして使用し、シーラント材を前記キャビティに充填することにより、前記タイヤ内面に前記シーラント層を形成するに際して、タイヤ周方向全周に連続して延在する前記所定範囲の周方向の一部区間の前記タイヤ内面を、前記凹部によって覆うように前記ヘッドを配置して、前記シーラント材を前記キャビティに充填する充填工程を、前記ヘッドの配置をタイヤ周方向に順次ずらした位置で行い、この形成した前記シーラント層の内周側に吸音材を積層して吸音層を形成することを特徴とする空気入りタイヤの製造方法。
【請求項4】
1本の帯状の前記吸音材の前端と後端を突き合わせることで、タイヤ周方向全周に連続して延在する円筒状の前記吸音層を形成する請求項1~3のいずれかに記載の空気入りタイヤの製造方法。
【請求項5】
1本の帯状の前記吸音材の前端と後端を突き合わせることで、タイヤ周方向全周に連続して延在する円筒状の前記吸音層を形成し、前記前端と前記後端との突き合わせ位置と、前記充填工程を順次行うことで生じる前記シーラント材のつなぎ位置とを、タイヤ周方向にずらした位置にする請求項4に記載の空気入りタイヤの製造方法。
【請求項6】
シーラント供給手段と吸音材取付け手段とを有し、加硫されたタイヤ内面の所定範囲に、前記シーラント供給手段から供給されたシーラント材によって形成された所定幅のシーラント層を介して、前記吸音材取付け手段により吸音材が設置されて吸音層が形成される空気入りタイヤの製造装置において、
横断面視で前記所定幅の所定形状の凹部を有するヘッドと、前記シーラント供給手段と前記ヘッドとを連通させる供給管と、前記所定範囲における前記タイヤ内面が前記凹部によって覆われるように前記ヘッドを配置するセット機構とを備えて、
タイヤ周方向全周に連続して延在する前記所定範囲の全体の前記タイヤ内面が、前記凹部によって覆われるように、前記セット機構により前記ヘッドが円筒状に配置される構成にして、前記セット機構によって配置された前記ヘッドの前記凹部と前記凹部に対向する前記タイヤ内面とにより囲まれた空間がキャビティとなり、前記シーラント材が前記キャビティに充填されることにより前記シーラント層が形成され、形成された前記シーラント層の内周側に前記吸音材取付け手段によって前記吸音材が積層されることで前記吸音層が形成される構成にしたことを特徴とする空気入りタイヤの製造装置。
【請求項7】
シーラント供給手段と吸音材取付け手段とを有し、加硫されたタイヤ内面の所定範囲に、前記シーラント供給手段から供給されたシーラント材によって形成された所定幅のシーラント層を介して、前記吸音材取付け手段により吸音材が設置されて吸音層が形成される空気入りタイヤの製造装置において、
横断面視で前記所定幅の所定形状の凹部を有するヘッドと、前記シーラント供給手段と前記ヘッドとを連通させる供給管と、前記所定範囲における前記タイヤ内面が前記凹部によって覆われるように前記ヘッドを配置するセット機構とを備えて、
タイヤ周方向全周に連続して延在する前記所定範囲の周方向の一部区間の前記タイヤ内面が、前記凹部によって覆われるように、前記セット機構により前記ヘッドが配置されて、前記セット機構によって配置された前記ヘッドの前記凹部と前記凹部に対向する前記タイヤ内面とにより囲まれた空間がキャビティとなり、前記シーラント材が前記キャビティに充填されることにより前記シーラント層が形成され、前記シーラント材を前記キャビティに充填する充填工程が、前記ヘッドの配置をタイヤ周方向に順次ずらした位置にして行われる構成にして、形成された前記シーラント層の内周側に前記吸音材取付け手段によって前記吸音材が積層されることで前記吸音層が形成される構成にしたことを特徴とする空気入りタイヤの製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤの製造方法および装置に関し、さらに詳しくは、タイヤ内面の所定範囲に、所定幅のシーラント層が介在して吸音層が備わる空気入りタイヤを、より安定的かつ迅速に製造できる空気入りタイヤの製造方法および装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤのパンク防止するために、タイヤ内面にシーラント層を備えたタイヤが知られている。シーラント層を形成するシーラント材が、発生したパンク穴を自動的に塞ぐことによってタイヤの外部へ空気が流出することが防止される。このようなシーラント層の内周側に吸音層を設けたタイヤが提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1では、シーラント層を形成する際に、タイヤを回転させながらノズルからシーラント材を吐出して、紐状のシーラント材をタイヤ内面に連続的に螺旋状に塗布することでシーラント層が形成される。そして、シーラント層の内周面に吸音材を積層することで吸音層が形成される。シーラント材は、吸音層をタイヤ内面に接合する接合剤として機能している。
【0004】
しかしながら、タイヤ内面の所定範囲にシーラント層を形成するには、紐状のシーラント材をタイヤ内面に沿ってタイヤ周方向に多数回巻き付けて延在させる必要がある(特許文献1の段落0098)。これに伴い、シーラント層を形成するには相応の時間を要する。また、形成されたシーラント層は、紐状のシーラント材が幅方向に並列した状態になるので、シーラント層の幅方向において厚さのバラつきが生じ易い。これに伴い、吸音層を安定的にタイヤ内面に接合するにも不利になる。そのため、タイヤ内面の所定範囲に、所定幅のシーラント層が介在して吸音層が備わる空気入りタイヤを、より安定的かつ迅速に製造するには改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6184523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、タイヤ内面の所定範囲に、所定幅のシーラント層が介在して吸音層が備わる空気入りタイヤを、より安定的かつ迅速に製造できる製造方法および装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の空気入りタイヤの製造方法は、加硫されたタイヤ内面の所定範囲に、所定幅のシーラント層が介在して吸音層が備わる空気入りタイヤの製造方法において、横断面視で前記所定幅の所定形状の凹部を有するヘッドを、前記凹部によって前記所定範囲における前記タイヤ内面を覆うように配置して、前記凹部と前記凹部に対向する前記タイヤ内面とによって囲まれた空間をキャビティとして使用し、シーラント材を前記キャビティに充填することにより、前記タイヤ内面に前記シーラント層を形成するに際して、タイヤ周方向全周に連続して延在する前記所定範囲の全体の前記タイヤ内面を、前記凹部によって覆うように前記ヘッドを円筒状に配置し、この形成した前記シーラント層の内周側に吸音材を積層して吸音層を形成することを特徴とする。
本発明の別の空気入りタイヤの製造方法は、加硫されたタイヤ内面の所定範囲に、所定幅のシーラント層が介在して吸音層が備わる空気入りタイヤの製造方法において、横断面視で前記所定幅の所定形状の凹部を有するヘッドを、前記凹部によって前記所定範囲における前記タイヤ内面を覆うように配置して、前記凹部と前記凹部に対向する前記タイヤ内面とによって囲まれた空間をキャビティとして使用し、シーラント材を前記キャビティに充填することにより、前記タイヤ内面に前記シーラント層を形成するに際して、タイヤ周方向全周に連続して延在する前記所定範囲の周方向の一部区間の前記タイヤ内面を、前記凹部によって覆うように前記ヘッドを配置して、前記シーラント材を前記キャビティに充填する充填工程を、前記ヘッドの配置をタイヤ周方向に順次ずらした位置で行い、この形成した前記シーラント層の内周側に吸音材を積層して吸音層を形成することを特徴とする。
【0008】
本発明の空気入りタイヤの製造装置は、シーラント供給手段と吸音材取付け手段とを有し、加硫されたタイヤ内面の所定範囲に、前記シーラント供給手段から供給されたシーラント材によって形成された所定幅のシーラント層を介して、前記吸音材取付け手段により吸音材が設置されて吸音層が形成される空気入りタイヤの製造装置において、横断面視で前記所定幅の所定形状の凹部を有するヘッドと、前記シーラント供給手段と前記ヘッドとを連通させる供給管と、前記所定範囲における前記タイヤ内面が前記凹部によって覆われるように前記ヘッドを配置するセット機構とを備えて、タイヤ周方向全周に連続して延在する前記所定範囲の全体の前記タイヤ内面が、前記凹部によって覆われるように、前記セット機構により前記ヘッドが円筒状に配置される構成にして、前記セット機構によって配置された前記ヘッドの前記凹部と前記凹部に対向する前記タイヤ内面とにより囲まれた空間がキャビティとなり、前記シーラント材が前記キャビティに充填されることにより前記シーラント層が形成され、形成された前記シーラント層の内周側に前記吸音材取付け手段によって前記吸音材が積層されることで前記吸音層が形成される構成にしたことを特徴とする。
本発明の別の空気入りタイヤの製造装置は、シーラント供給手段と吸音材取付け手段とを有し、加硫されたタイヤ内面の所定範囲に、前記シーラント供給手段から供給されたシーラント材によって形成された所定幅のシーラント層を介して、前記吸音材取付け手段により吸音材が設置されて吸音層が形成される空気入りタイヤの製造装置において、横断面視で前記所定幅の所定形状の凹部を有するヘッドと、前記シーラント供給手段と前記ヘッドとを連通させる供給管と、前記所定範囲における前記タイヤ内面が前記凹部によって覆われるように前記ヘッドを配置するセット機構とを備えて、タイヤ周方向全周に連続して延在する前記所定範囲の周方向の一部区間の前記タイヤ内面が、前記凹部によって覆われるように、前記セット機構により前記ヘッドが配置されて、前記セット機構によって配置された前記ヘッドの前記凹部と前記凹部に対向する前記タイヤ内面とにより囲まれた空間がキャビティとなり、前記シーラント材が前記キャビティに充填されることにより前記シーラント層が形成され、前記シーラント材を前記キャビティに充填する充填工程が、前記ヘッドの配置をタイヤ周方向に順次ずらした位置にして行われる構成にして、形成された前記シーラント層の内周側に前記吸音材取付け手段によって前記吸音材が積層されることで前記吸音層が形成される構成にしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、前記所定範囲における前記タイヤ内面を、前記所定幅の凹部によって覆うように前記ヘッドを配置することで前記キャビティが構築され、前記シーラント材を前記キャビティに充填することで前記所定幅の前記シーラント層が形成される。そのため、前記所定幅の前記シーラント層は幅方向全体が一度に形成される。したがって、紐状のシーラント材をタイヤ内面に沿ってタイヤ周方向に多数回巻き付けて延在させてシーラント層を形成する必要がなく、所定幅のシーラント層を迅速に形成できる。これに伴い、所定幅のシーラント層が介在して吸音層が備わる空気入りタイヤを迅速に製造するには有利になる。
【0010】
また、形成されたシーラント層の幅方向における厚さのバラつきが抑制されるので、所望仕様のシーラント層を安定的に形成するには有利になる。これに伴い、シーラント層の内周側に形成される吸音層も安定するので、所定幅のシーラント層が介在して吸音層が備わる空気入りタイヤを安定して製造するには有利になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の空気入りタイヤの製造装置の概要を例示する説明図である。
図2図1のヘッド周辺を正面視で例示する断面図である。
図3図2のヘッド周辺を側面視で例示する説明図である。
図4】ヘッドをタイヤの内部に挿入した状態を側面視で例示する断面図である。
図5図4のタイヤの内部を横断面視で例示する説明図である。
図6図4のヘッドをタイヤ内面に当接させてセットした状態を側面視で例示する断面図である。
図7図6のタイヤの内部を横断面視で例示する説明図である。
図8図7のキャビティにシーラント材を充填した状態を例示する説明図である。
図9】シーラント層が形成されたタイヤを側面視で例示する断面図である。
図10】シーラント層の内周面に吸音材を載置している状態を側面視で例示する断面図である。
図11】吸音層が形成されたタイヤを側面視で例示する断面図である。
図12図11の吸音材の前端と後端の突き合わせ位置を平面視で例示する説明図である。
図13】製造装置の別の実施形態のヘッド周辺を側面視で例示する説明図である。
図14図13のヘッドをタイヤ内面に当接させてセットした状態を側面視で例示する断面図である。
図15図14のタイヤの内部を横断面視で例示する説明図である。
図16図15のキャビティにシーラント材を充填した状態を例示する説明図である。
図17図14のヘッドをタイヤ周方向にずらした位置でタイヤ内面に当接させてセットした状態を側面視で例示する断面図である。
図18】シーラント材のつなぎ位置と吸音材の突き合わせ位置との位置関係を平面視で例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の空気入りタイヤの製造方法および装置を、図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0013】
図1図3に例示する本発明の空気入りタイヤの製造装置1を用いることによって、加硫された空気入りタイヤT1のタイヤ内面Taの所定範囲に所定幅Wのシーラント層SLが形成され、このシーラント層SLの内周側に吸音層PLが形成される。即ち、製造装置1を使用することで、シーラント層SLが介在して吸音層PLが備わる空気入りタイヤT2が製造される。
【0014】
この製造装置1は、シーラント供給手段2と、ヘッド5と、シーラント供給手段2とヘッド5とを連通させる供給管6と、ヘッド6をタイヤ内面Taの所望の位置にセットするセット機構6bと、保持機構7と、吸音材取付け手段8と、制御部11とを備えている。制御部11によって製造装置1のそれぞれの構成要素の動作が制御される。
【0015】
シーラント供給手段2は、供給管6を通じてシーラント材Sをヘッド5に供給する。シーラント材Sは常温では粘度が高く容易に流動しない。タイヤパンク防止用として使用されている公知の様々なシーラント材S(例えば、ブチルゴム系のシーラント材S)を用いることができる。
【0016】
この実施形態では、シーラント供給手段2として、押出機3とプランジャ4とが直列的に接続されたプランジャタイプの射出成型機が採用されている。押出機3を構成するシリンダ3aにはスクリュー3bが内設されている。プランジャ4を構成するシリンダ4aには進退するピストン部4bが内設されている。プランジャ4の吐出口には供給管6が接続されている。
【0017】
ヘッド5は、例えば金属で形成されていて、図2に例示するように、横断面視で所定幅Wの所定形状の凹部5aを有している。この所定幅Wは形成するシーラント層SLの幅と実質的に同じである。この実施形態では、複数のヘッド5が備わっていて、図3に例示するように、それぞれのヘッド5は側面視で円弧形状になっている。周方向に隣り合うヘッド5どうしを連結してそれぞれのヘッド5を円筒状に配置すると、すべてのヘッド5の凹部5aが周方向に連通する。
【0018】
供給管6は、プランジャ4から延在する1本の軸心管6aと、軸心管6aから放射状に分岐して延在する複数本の放射状管6bを有している。それぞれの放射状管6bの先端にヘッド5が接続されている。それぞれの放射状管6bはテレスコピック構造になっていて伸縮する。このテレスコピック構造の放射状管6bが、セット機構として機能する。図中の一点鎖線CLは軸心管6aの軸心を示している。
【0019】
保持機構7は、タイヤT1は所定状態に保持できれば構成は限定されない。この実施形態では、保持機構7は回転ローラ7aと、ベース7bと、ベース7bに立設された支柱部7cとを有している。支柱部7cには、4本の回転ローラ7aが回転可能に軸支されている。保持機構7は、軸心CL方向にスライド移動することができる。
【0020】
吸音材取付け手段8は、タイヤ内面Taに形成されたシーラント層SLの内周側に吸音材Pを積層できれば、様々な機構を採用することができる。この実施形態では、吸音材取付け手段8は、吸音材Pを誘導するガイドローラ9aと、ガイドローラ9aに誘導された吸音材Pをシーラント層SLの内周面に載置しつつ押圧する押圧部9bと、押圧部9bを所望の位置に位置決めする位置決め機構10とを備えている。公知の様々な吸音材P(スポンジなどの多孔質発泡体、不織布など)を用いることができる。位置決め機構10には、例えば産業用ロボットなどを使用できる。
【0021】
次に、本発明によって空気入りタイヤT2を製造する手順の一例を説明する。
【0022】
まず、公知の方法によってグリーンタイヤを加硫してタイヤT1を製造する。このタイヤT1の所定範囲のタイヤ内面Taに対して、必要に応じて、付着している離型剤などを除去する処理を施す。タイヤT1は、保持機構7の回転ローラ7aを用いて保持する。次いで、図4図5に示すように、それぞれの放射状管6bを収縮させた状態にして、保持機構7をプランジャ4に近接させるように軸心CL方向にスライド移動させて、それぞれのヘッド5をタイヤT1の内部に配置する。
【0023】
その後、図6図7に例示するように、それぞれの放射状管6bを伸長させることで、それぞれのヘッド5をタイヤ内面Taに当接させて、周方向に隣り合うヘッド5どうし連結した状態にしてヘッド5を円筒状に配置する。これにより、凹部5aによって所定範囲におけるタイヤ内面Taを覆うようにヘッド5を配置する。この実施形態では、タイヤ周方向全周に連続して延在する所定範囲の全体のタイヤ内面Taを、凹部5aによって覆うようにヘッド5が円筒状に配置されている。
【0024】
ヘッド5をこのようにタイヤT1にセットすると、図6に例示するように、円筒状に配置したヘッド5の筒軸心部にある軸心管6aからそれぞれのヘッド5に向かって複数本の放射状管6bが放射状に分岐した状態になる。タイヤ内面Taの所定範囲では、タイヤ内面Taに当接しているヘッド5の凹部5aと凹部5aに対向するタイヤ内面Taとによって囲まれた空間Cが形成される。本発明はこの空間CをキャビティCとして使用する。
【0025】
シーラント材供給手段2では、押出機3のスクリュー3bを回転させることでシリンダ3a内部に収容されているシーラント材Sに適度に熱入れしつつ粘度を適度に低下させて、シリンダ先端部の押出口からシーラント材Sを押し出してプランジャ4に投入する。プランジャ4では、ピストン部4bを前進させることで、投入されたシーラント材Sを所望量だけ供給管6を通じてヘッド5(キャビティC)に供給する。
【0026】
即ち、軸心管6aおよびそれぞれの放射状管6bを通じて、図8に例示するように、シーラント材SがキャビティCに充填される。プランジャ4を用いることで、シーラント材Sの供給量を精度よく調整できる。キャビティCに充填されたシーラント材Sが、ヘッド5によって所定時間(例えば数十秒~2分程度)、型付けされることで、タイヤ内面Taの所定範囲に所定幅Wのシーラント層SLが形成される。
【0027】
シーラント層SLが形成された後は、それぞれの放射状管6bを収縮させて、それぞれのヘッド5を、製造したタイヤT1(タイヤ内面Taおよびシーラント層SL)から分離させてタイヤT1の外側に移動させる。このようにして、図9に例示するように、タイヤ内面Taの所定範囲に所定幅Wのシーラント層SLが形成される。
【0028】
次いで、図10に例示するように、吸音材取付け手段8を用いて、シーラント層SLの内周面の所望の範囲に吸音材Pを積層して接合させることで吸音層PLを形成する。この実施形態では、1本の帯状の吸音材Pを使用する。位置決め機構10によって、ガイドローラ9aおよび押圧部9bをタイヤT1の内部に移動させて、押圧部9bが所定位置に位置決めされる。
【0029】
次いで、供給源から供給された吸音材Pはガイドローラ9aに誘導されて押圧部9bに送られる。押圧部9bはバネ等によってタイヤ内面Taに向かって付勢されている。そのため、押圧部9bは吸音材Pの先端部をシーラント層SLの内周面に載置しつつ押圧してする。この時、タイヤT1を保持機構7によって回転させる。押圧された吸音材Pの先端部は、シーラント材Sの粘着力によってシーラント層SLの内周面に接合される。そのため、タイヤT1の回転に伴って吸音材Pは順次、タイヤ内面Taに送り出される。その結果、図11図12に例示するように、帯状の吸音材Pの先端と後端が突き合わされて、タイヤ周方向全周に連続して延在する円筒状の吸音層PLが形成される。
【0030】
吸音材Pとシーラント層SLとの間に接着層を介在させて、吸音材Pをシーラント層SLの内周面に接合させることもできる。この場合は例えば、吸音材Pのシーラント層SLに対向する面に両面接着テープなどの接着層を設けておく。
【0031】
図12に例示するように、この実施形態では吸音材Pの前端と後端との突き合わせ位置Pcを、タイヤ幅方向に対して傾斜させている。図12では、水平方向がタイヤ幅方向、上下方向がタイヤ方向になっている。突き合わせ位置Pcをタイヤ幅方向に平行に延在させることもできるが、このように傾斜させて延在させることで、突き合わせに起因するタイヤT2のユニフォミティ悪化を回避するには有利になる。
【0032】
吸音層PLはこの実施形態で例示した形態に限定されず、タイヤ周方向に間隔をあけて断続的に形成することもできる。また、タイヤ幅方向に間隔をあけた複数位置に吸音層PLを形成することもできる。或いは、吸音材Pをタイヤ周方向に螺旋状に延在させてシーラント層SLの内周側に吸音層PLを形成することもできる。
【0033】
上述のように、シーラント材SをキャビティCに充填することで、所定幅Wのシーラント層SLは幅方向全体が一度に形成される。したがって、紐状のシーラント材をタイヤ内面Taに沿ってタイヤ周方向に多数回巻き付けて延在させる煩雑な操作をすることなく、所定幅Wのシーラント層SLを迅速に形成できる。しかも、この実施形態では、タイヤ周方向に連続する円筒状のシーラント層SLが一度に形成されるので、シーラント層SLの形成に要する時間を短縮するには非常に有利になっている。
【0034】
キャビティCに充填された所定量のシーラント材Sは、ヘッド5によってタイヤ内面Taに押圧されるとともに型付けされる。これに伴い、シーラント層SLの幅方向における厚さのバラつきが抑制される。それ故、所望仕様のシーラント層SLを安定的に形成するには有利になる。シーラント層SLのタイヤ周方向の厚さのバラつきも抑制される。凹部5aの横断面形状を、形成するシーラント層SLの横断面形状(プロファイル)と同じ形状にすることで、複雑なプロファイルのシーラント層SLであっても容易に形成することができる。
【0035】
上述のように、所定幅Wのシーラント層SLが迅速に形成されることに伴い、所定幅Wのシーラント層SLが介在して吸音層PLが備わるタイヤT2を迅速に製造するには有利になる。また、タイヤ内面Taの所定範囲に所定幅Wのシーラント層SLが安定して形成されるので、シーラント層SLの内周側に形成される吸音層PLも安定して形成できる。したがって、所定幅Wのシーラント層SLが介在して吸音層PLが備わるタイヤT2を安定して製造するには有利になる。
【0036】
図13図17に製造装置1の別の実施形態を例示する。この実施形態は、先の実施形態に対して、ヘッド5の仕様を異ならせていて、その他の構成は先の実施形態と実質的に同じである。
【0037】
この実施形態では、ヘッド5が1個のみ備わっている、また、保持機構7によって、タイヤT1をヘッド5に対して相対的にタイヤ周方向に回転させる。この保持機構7はタイヤT1を回転させる構造であるが、この保持機構7に代えて軸心管6aを中心にしてヘッド5を回転させる機構を採用することもできる。或いは、タイヤT1およびヘッド5を回転させる機構を採用することもできる。
【0038】
シーラント層SLを形成するには、保持機構7の回転ローラ7aを用いてタイヤT1を立った状態に保持する。次いで、放射状管6bを収縮させた状態でヘッド5をタイヤT1の内部に配置する。その後、図14図15に例示するように、放射状管6bを伸長させることで、ヘッド5をタイヤ内面Taに当接させて、凹部5aによって所定範囲におけるタイヤ内面Taを覆うようにヘッド5を配置する。この実施形態では、図11に例示するように、タイヤ周方向全周に連続して延在する所定範囲の周方向の一部区間のタイヤ内面Taを、凹部5aによって覆うようにヘッド5が配置されている。
【0039】
次いで、図16に例示するように、供給管6を通じてシーラント材SをキャビティCに充填する充填工程を行って周方向の一部区間のシーラント層SLを形成する。その後、図17に例示するように、ヘッド5の配置を順次タイヤ周方向にずらした位置でシーラント材SをキャビティCに充填する充填工程を行う。即ち、1つの位置で充填工程を行って周方向の一部区間のシーラント層SLを形成すると、直ちに、保持機構7を作動させてヘッド5を周方向の一部区間分だけタイヤ周方向にずらした位置に配置して、そのずらした位置で充填工程を行うことを繰り返す。これにより、タイヤ内面Taの所定範囲に所定幅Wでタイヤ周方向に連続する円筒状のシーラント層SLが形成される。
【0040】
この実施形態では、1本の放射状管6bの先端に1つのヘッド5を設けた構造にしているが、複数本の放射状管6bを設けてそれぞれの先端にヘッド5を設けた構造にすることもできる。即ち、タイヤ内面Taに周方向に間隔をあけてヘッド5を配置して、周方向に断続的なシーラント層SLを形成し、その後、それぞれのヘッド5の配置を周方向に順次ずらした位置にして充填工程を行う。このようにして、タイヤ内面Taの所定範囲に所定幅Wでタイヤ周方向に連続する円筒状のシーラント層SLを形成することもできる。そして、形成したシーラント層SLの内周面に吸音層PLを形成する。
【0041】
このシーラント層SLは、複数回の充填工程をタイヤ周方向に順次ずらした位置で行うことで形成されている。そのため、図18に例示するように、それぞれの充填工程を行った範囲の境界にシーラント材Sのつなぎ位置Scが存在している。図18では、水平方向がタイヤ幅方向、上下方向がタイヤ方向になっている。このつなぎ位置Scでは、つなぎ位置Scを挟んで両側のシーラント材Sが滑らかに一体化しているが、僅かな段差や粘度差が生じることもある。そこで、このつなぎ位置Scと、吸音材Pの前端と後端との突き合わせ位置Pcとがタイヤ周方向にずれた位置になるように吸音材Pを積層するとよい。つなぎ位置Scと突き合わせ位置Pcとをタイヤ周方向にずらした位置にすることで、タイヤT2のユニフォミティ悪化を回避するには有利になる。
【符号の説明】
【0042】
1 製造装置
2 シーラント供給手段
3 押出機
3a シリンダ
3b スクリュー
4 プランジャ
4a シリンダ
4b ピストン部
5 ヘッド
5a 凹部
6 供給管
6a 軸心管
6b 放射状管(セット機構)
7 保持機構
7a 回転ローラ
7b ベース
7c 支柱部
8 吸音材取付け手段
9a ガイドローラ
9b 押圧部
10 位置決め機構
11 制御部
S シーラント材
SL シーラント層
P 吸音材
PL 吸音層
T1、T2 タイヤ
Ta タイヤ内面
図1
図2
図3
図4
図5
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