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  • 特許-タイヤ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-22
(45)【発行日】2024-10-30
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/12 20060101AFI20241023BHJP
   B60C 11/03 20060101ALI20241023BHJP
   B60C 11/13 20060101ALI20241023BHJP
【FI】
B60C11/12 C
B60C11/03 B
B60C11/03 300D
B60C11/13 C
B60C11/12 D
B60C11/12 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020152242
(22)【出願日】2020-09-10
(65)【公開番号】P2022046288
(43)【公開日】2022-03-23
【審査請求日】2023-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小石川 佳史
【審査官】高島 壮基
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-240456(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00-19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ周方向に延在する複数の周方向主溝と、前記周方向主溝と交差する方向に延在する複数のラグ溝と、前記周方向主溝によって区画され、前記周方向主溝と交差する方向に並ぶ複数の陸部と、をトレッド部に備え、
前記陸部のうち、車幅方向外側に別の陸部が配置される外側セカンド陸部と、タイヤ赤道面よりも車幅方向内側であり、かつ、車幅方向内側に別の陸部が配置される内側セカンド陸部とを有し、
前記外側セカンド陸部は、前記周方向主溝及び前記ラグ溝により区画される複数のブロックであり、接地面に前記周方向主溝と交差する方向に延在する複数の第1サイプが形成され、
前記第1サイプは、車幅方向の一方から他方に向かって移動した場合、周方向に隣接するブロックの前記第1サイプと、タイヤ周方向に移動する方向が異なる方向であり、
前記内側セカンド陸部は、一端が前記周方向主溝に開口し、他端が前記内側セカンド陸部内で終端した前記ラグ溝と、接地面に前記周方向主溝と交差する方向に延在する複数の第2サイプが形成され、
前記第2サイプは、車幅方向の一方から他方に向かって移動した場合、前記内側セカンド陸部の前記ラグ溝と、タイヤ周方向に移動する方向が同じ方向であり、
前記第1サイプは、前記車幅方向において、前記外側セカンド陸部の車幅方向内側の内側サイプと、車幅方向外側の外側サイプの2列が形成され、
前記内側サイプは、車幅方向の一方から他方に向かって移動した場合、前記外側サイプと、タイヤ周方向に移動する方向が異なる方向であるタイヤ。
【請求項2】
前記外側セカンド陸部は、周方向細溝が形成され、
前記内側サイプは、前記周方向細溝よりも車幅方向内側に形成され、
前記外側サイプは、前記周方向細溝よりも車幅方向外側に形成される請求項に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記外側セカンド陸部は、前記ブロックに一端が前記周方向主溝に開口し、他端が前記外側セカンド陸部内で終端した閉塞ラグ溝が形成され、
前記第1サイプは、周方向において、前記閉塞ラグ溝を介して隣接する部分の第1サイプと、車幅方向の一方から他方に向かって移動した場合、タイヤ周方向に移動する方向が異なる方向である請求項1または請求項2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記第1サイプ及び前記第2サイプは、タイヤ周方向及び溝深さ方向に振幅を有する三次元形状である請求項1から請求項のいずれか一項に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに関し、さらに詳しくは、トレッド面に複数のサイプが配置されたタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スタッドレスタイヤにおいて、氷上制動性能及び雪上走行性能の両立が要求されている。この種のスタッドレスタイヤでは、氷上制動性能を向上するために、陸部のトレッド面に複数のサイプを配置することで、ブロック剛性の確保や、サイプへの雪や氷の詰まりの防止を図っている。
【0003】
一方で、上記した構成では、サイプの無い部分で接地圧が局所的に高くなり、荷重耐久性能が悪化する問題があった。このため、従来、サイプの無い部分に、周方向溝を設けた構成が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-34524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、サイプを配置したタイヤでは、氷上旋回性能を向上しつつ氷上制動性能を保持するために更なる改善の余地がある。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、氷上制動性能及び氷上旋回性能の向上が図れるタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るタイヤは、タイヤ周方向に延在する複数の周方向主溝と、前記周方向主溝と交差する方向に延在する複数のラグ溝と、前記周方向主溝によって区画され、前記周方向主溝と交差する方向に並ぶ複数の陸部と、をトレッド部に備え、前記陸部のうち、車幅方向外側に別の陸部が配置される外側セカンド陸部と、タイヤ赤道面よりも車幅方向内側であり、かつ、車幅方向内側に別の陸部が配置される内側セカンド陸部とを有し、前記外側セカンド陸部は、前記周方向主溝及び前記ラグ溝により区画される複数のブロックであり、接地面に前記周方向主溝と交差する方向に延在する複数の第1サイプが形成され、前記第1サイプは、車幅方向の一方から他方に向かって移動した場合、周方向に隣接するブロックの前記第1サイプと、タイヤ周方向に移動する方向が異なる方向であり、前記内側セカンド陸部は、一端が前記周方向主溝に開口し、他端が前記内側セカンド陸部内で終端した前記ラグ溝と、接地面に前記周方向主溝と交差する方向に延在する複数の第2サイプが形成され、前記第2サイプは、車幅方向の一方から他方に向かって移動した場合、前記内側セカンド陸部の前記ラグ溝と、タイヤ周方向に移動する方向が同じ方向である。
【0008】
前記第1サイプは、前記車幅方向において、前記外側セカンド陸部の車幅方向内側の内側サイプと、車幅方向外側の外側サイプの2列が形成され、前記内側サイプは、車幅方向の一方から他方に向かって移動した場合、前記外側サイプと、タイヤ周方向に移動する方向が異なる方向であることが好ましい。
【0009】
前記外側セカンド陸部は、周方向細溝が形成され、前記内側サイプは、前記周方向細溝よりも車幅方向内側に形成され、前記外側サイプは、前記周方向細溝よりも車幅方向外側に形成されることが好ましい。
【0010】
前記外側セカンド陸部は、前記ブロックに一端が前記周方向主溝に開口し、他端が前記内側セカンド陸部内で終端した閉塞ラグ溝が形成され、前記第1サイプは、周方向において、前記閉塞ラグ溝を介して隣接する部分の第1サイプと、車幅方向の一方から他方に向かって移動した場合、タイヤ周方向に移動する方向が異なる方向であることが好ましい。
【0011】
前記第1サイプ及び前記第2サイプは、タイヤ周方向及び溝深さ方向に振幅を有する三次元形状であることが好ましい。
【0012】
前記第1サイプ及び前記第2サイプは、延在方向に直交する方向の振幅が0.5mm以上1.2mm以下であり、溝深さ方向での溝底位置の振幅が5.0mm以上10.0mm以下であること好ましい。
【0013】
前記第1サイプ及び前記第2サイプは、車幅方向に対する傾斜角度が5°以上45°以下であることが好ましい。
【0014】
前記ラグ溝は、車幅方向に対する傾斜角度が5°以上45°以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るタイヤは、氷上制動性能及び氷上旋回性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本実施形態に係る空気入りタイヤのトレッド面を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、これらの実施形態により本発明が限定されるものではない。また、これらの実施形態の構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0018】
<本実施形態>
本実施形態に係る空気入りタイヤについて説明する。以下の説明において、タイヤ径方向とは、タイヤの回転軸と直交する方向をいい、タイヤ径方向内側とはタイヤ径方向において回転軸に向かう側、タイヤ径方向外側とはタイヤ径方向において回転軸から離れる側をいう。また、タイヤ周方向とは、上記回転軸を中心軸とする周り方向をいい、周方向溝の延在方向をいう。さらに、タイヤ幅方向とは、上記回転軸と平行な方向であって周方向主溝と交差する方向をいい、車両装着時内側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面から図示左側であり、車両装着時外側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面から図示右側である。なお、タイヤ赤道面とは、空気入りタイヤの回転軸に直交するとともに、タイヤ幅の中心を通る平面である。
【0019】
図1は、本実施形態に係る空気入りタイヤのトレッド面を示す平面図である。図1の符号CLはタイヤ赤道面を示し、符号Tはそれぞれタイヤの接地端を示す。また、本実施形態に係る空気入りタイヤ1(以下、単にタイヤ1と称する場合もある)は車両に対する装着方向が指定されており、図1の例では、タイヤ赤道面CLを中心とする左右非対称なトレッドパターンとなっている。なお、図1において、接地端Tよりもタイヤ幅方向外側に示される領域にはいわゆるサイドウォール部を含む。
【0020】
接地端Tは、タイヤ1を規定リムに装着して規定内圧を付与するとともに静止状態にて平板に対して垂直に置いて規定荷重に対応する負荷を加えたときのタイヤ1と平板との接触面におけるタイヤ軸方向の最大幅位置として定義される。
【0021】
規定リムとは、JATMAに規定される「適用リム」、TRAに規定される「Design Rim」、あるいはETRTOに規定される「Measuring Rim」をいう。また、規定内圧とは、JATMAに規定される「最高空気圧」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、あるいはETRTOに規定される「INFLATION PRESSURES」をいう。また、規定荷重とは、JATMAに規定される「最大負荷能力」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、あるいはETRTOに規定される「LOAD CAPACITY」をいう。ただし、JATMAにおいて、乗用車用タイヤの場合には、規定内圧が空気圧180[kPa]であり、規定荷重が最大負荷能力の88[%]である。
【0022】
タイヤ1のトレッド部10は、ゴム材(トレッドゴム)からなり、タイヤ1のタイヤ径方向の最も外側で露出し、その表面がタイヤ1の輪郭となる。トレッド部10の表面は、タイヤ1を装着する車両(図示せず)が走行した際に路面と接触する面となるトレッド面12として形成されている。
【0023】
タイヤ1は、トレッド面12に、タイヤ周方向に延在する複数の周方向主溝21、22、23、24と、これらの周方向主溝21、22、23、24に区画された複数の陸部31、32、33、34、35と、各陸部31、32、33、34、35に配置された複数のラグ溝311、321、322、331、342、351と、各陸部31、32、33、34、35に配置された複数のサイプ4(41、42、43、44、45)と、を備える。ここで、周方向主溝21、22、23、24とは、タイヤ周方向に延在してJATMAに規定されるウェアインジケータの表示義務を有する溝であり、一般に、5.0mm以上の溝幅及び6.5mm以上の溝深さを有する。ラグ溝311、321、322、331、342、351とは、周方向主溝と交差する方向(タイヤ幅方向)に延在する横溝であり、一般に1.0mm以上の溝幅及び3.0mm以上の溝深さを有する。また、サイプ4とは、トレッド面12に形成された切り込みであり、一般に1.0mm未満のサイプ幅及び2.0mm以上のサイプ深さを有することにより、タイヤ接地時に閉塞する。後述するが、本実施形態のサイプ4は、接地面における延在方向及び深さ方向の位置により形状が変化する3次元形状とすることが好ましい。サイプ4は、延在方向において、タイヤ周方向の位置が周期的に変化する形状である。この場合、サイプ4の延在方向は、周期変化する同じ位置を結んだ線分となる。
【0024】
トレッド面12には、タイヤ周方向に延在する複数(図1では4本)の周方向主溝21、22、23、24がタイヤ幅方向にそれぞれ所定の間隔で設けられている。本実施形態では、図1に示すように、車幅方向内側から車幅方向外側に向けて、周方向主溝21、22、23、24の順で配置される。周方向主溝23がタイヤ赤道面CLに最も近い周方向主溝となる。また、本実施形態では、2本の周方向主溝21、22が車幅方向内側にそれぞれ設けられ、2本の周方向主溝23、24が車幅方向外側にそれぞれ設けられている。ここで、車幅方向内側及び車幅方向外側は、タイヤ1を車両に装着した際の車幅方向に対する向きとして規定される。また、タイヤ幅方向最外側の2本の周方向主溝21、24をショルダー主溝、タイヤ幅方向内側の4本の周方向主溝22、23をセンター主溝と定義する。
【0025】
図1の例では、ショルダー主溝である周方向主溝21、24は、それぞれ溝幅が周方向で変化しないストレート形状である。センター主溝のうち周方向主溝22、23は、タイヤ周方向に延びつつタイヤ幅方向に振幅するジグザグ状に形成されている。車幅方向内側のセンター主溝である周方向主溝22は、タイヤ赤道面CL側の溝壁がタイヤ幅方向の位置は変化しないストレート形状である一方、接地端T側の溝壁がタイヤ周方向に延びつつタイヤ幅方向に振幅するジグザグ状に形成されている。なお、周方向主溝21、22、23、24の数は、上記に限るものではなく、トレッド面12に3本以下あるいは5本以上配置してもよい。
【0026】
また、トレッド面12には、4本の周方向主溝21、22、23、24によって、タイヤ周方向に延在する複数(図1では5列)の陸部31、32、33、34、35が区画形成されている。本実施形態では、ショルダー主溝である周方向主溝21、24によってタイヤ幅方向外側にそれぞれ区画された陸部31、35をショルダー陸部と定義する。また、周方向主溝21と周方向主溝22とで区画された陸部32、周方向主溝23と周方向主溝24とで区画された陸部34、つまり、ショルダー陸部31、35とショルダー主溝を介してタイヤ幅方向内側に隣接する陸部をセカンド陸部と定義する。また、センター主溝である周方向主溝22、23で区画された陸部33をセンター陸部と定義する。このセンター陸部である陸部33は、タイヤ赤道面CLと重なる陸部に設けられている。
【0027】
図1の例では、1つセンター陸部である陸部33設けたが、5本の周方向主溝を備える構成では、2つのセンター陸部が形成される。また、3本の周方向主溝を備える構成では、センター陸部がセカンド陸部を兼ねてもよい。
【0028】
左右のショルダー陸部である陸部31、35は、それぞれ複数のラグ溝311、351を備える。これらラグ溝311、351は、それぞれショルダー主溝である周方向主溝21、24に一方の端部が開口し、タイヤ幅方向外側に延在して、接地端Tを跨いだ領域で他方の端部が終端している。ショルダー陸部である陸部31、35には、それぞれ複数のラグ溝311、351がタイヤ周方向に繰り返し設けられている。このため、ショルダー陸部である陸部31、35は、これらのラグ溝311、351によりそれぞれ複数のブロック(ショルダーブロック)に区画されている。これらブロックのそれぞれには、複数のサイプ41、45が形成される。周方向細溝312、352は、タイヤ周方向に延在しており、周方向の一方の端部がラグ溝311、351に開口し、他方の端部がブロック内で終端する。周方向細溝312と、周方向細溝352とは、タイヤ周方向の異なる側の端部がラグ溝に開口している。ショルダー陸部31は、サイプ41が形成される。ショルダー陸部35は、サイプ45が形成される。サイプ41、45は、車幅方向に対して、傾斜している。
【0029】
また、車幅方向内側のセカンド陸部(内側セカンド陸部)32は、2種類かつ複数のラグ溝321、322と、ラグ溝321(第1ラグ溝)は、一方の端部が上記したラグ溝311の一方の端部と対向してショルダー主溝21に開口し、他方の端部がセカンド陸部32の内部で終端する。また、ラグ溝322(第2ラグ溝)は、一方の端部がセンター主溝22に開口すると共に、他方の端部がセカンド陸部32の内部で終端する。この図1の例では、ラグ溝322の一方の端部は、ジグザグ形状のセンター主溝22における接地端T側に突出した角部に開口している。したがって、ラグ溝321、322は、セカンド陸部32を横断しないセミクローズド構造を有する。また、これらラグ溝321、322は、タイヤ周方向に千鳥状(互い違い)に配置され、それぞれタイヤ周方向における同一方向に傾斜して延在するとともに、タイヤ幅方向にそれぞれオーバーラップしている。このため、セカンド陸部32は、ラグ溝321、322によりタイヤ周方向で分断されずタイヤ周方向に連続するリブとして形成される。セカンド陸部32は、リブに複数のサイプ42が形成される。サイプ42は、車幅方向に対して、傾斜している。サイプ42は、ラグ溝321、322と同じ方向に傾斜している。つまり、サイプ42は、車幅方向の一方から他方に向かって移動した場合、ラグ溝321、322と、タイヤ周方向に移動する方向が同じ方向である。
【0030】
センター陸部である陸部33は、複数のラグ溝331を備える。ラグ溝331は、2本のセンター主溝である周方向主溝22、23の間でタイヤ幅方向に延びて形成され、センター主溝である周方向主溝22、23に両端部がそれぞれ開口している。図1の例では、ラグ溝331の一方の端部は、ジグザグ形状のセンター主溝である周方向主溝23の直弱部の周方向の中央近傍に開口している。センター陸部である陸部33は複数のラグ溝331により、複数のブロックに区画されており、各ブロックのそれぞれには、複数のサイプ43が設けられている。サイプ43は、車幅方向に対して、傾斜している。サイプ43は、ラグ溝331と同じ方向に傾斜している。つまり、サイプ43は、車幅方向の一方から他方に向かって移動した場合、ラグ溝331と、タイヤ周方向に移動する方向が同じ方向である。
【0031】
車幅方向外側のセカンド陸部34は、複数のラグ溝341、342と周方向細溝343とを備える。ラグ溝341は、隣り合うセンター主溝23とショルダー主溝24との間でタイヤ幅方向に延びて形成され、一端がセンター主溝23に開口し、他端がショルダー主溝24に開口している。図1の例では、ラグ溝351の一方の端部は、ジグザグ形状のセンター主溝23の接地端T側に突出した角部に開口し、他方の端部は、上記したラグ溝351の一方の端部と対向してショルダー主溝25に開口している。セカンド陸部34は、複数のラグ溝341により、複数のブロックに区画されている。ラグ溝342は、一端がセカンド陸部34内で終端し、他端ショルダー主溝24に開口している。図1の例では、ラグ溝342の一方の端部は、セカンド陸部34内で終端し、他方の端部は、上記したラグ溝351の一方の端部と対向してショルダー主溝25に開口している。セカンド陸部34は、タイヤ周方向にラグ溝341とラグ溝342とが交互に等間隔で配置されている。これらブロックには、それぞれ周方向細溝343が形成されている。図1の例では、周方向細溝353は、タイヤ周方向に延びつつタイヤ幅方向に振幅するジグザグ状に形成されている。周方向細溝343は、タイヤ周方向に延在する細溝であり、溝幅が1.0mm以上3.0mm以下である。周方向細溝343は、ウェアインジケータが配置されていない。
【0032】
セカンド陸部(外側セカンド陸部)34には、複数のサイプ44が形成される。サイプ44は、車幅方向に延在し、車幅方向に対して傾斜している。つまり、サイプ44は、車幅方向の一方から他方に向かって移動した場合、タイヤ周方向に移動する形状である。サイプ44は、ラグ溝351を介して隣接するブロックのサイプ44と異なる方向に傾斜している。つまり、サイプ44は、車幅方向の一方から他方に向かって移動した場合、ラグ溝351を介して隣接するブロックのサイプ44と、タイヤ周方向に移動する方向が異なる方向である。さらに、サイプ44は、ラグ溝352を介して隣接するブロックのサイプ44と異なる方向に傾斜している。つまり、サイプ44は、車幅方向の一方から他方に向かって移動した場合、ラグ溝352を介して隣接するブロックのサイプ44と、タイヤ周方向に移動する方向が異なる方向である。
【0033】
また、サイプ44は、周方向細溝343よりもタイヤ赤道面Cl側、つまり車幅方向内側の領域に形成される内側サイプ441と、周方向細溝343よりも接地端T側、つまり車幅方向外側の領域に形成される外側サイプ442と、を含む。車幅方向に隣接する、つまり同じブロックに形成される内側サイプ441と外側サイプ442とは、異なる方向に傾斜している。内側サイプ441は、車幅方向の一方から他方に向かって移動した場合、周方向細溝343を介して隣接するブロックの外側サイプ442と、タイヤ周方向に移動する方向が異なる方向である。
【0034】
なお、本実施形態に係る空気入りタイヤ1は、従来の空気入りタイヤと同様の子午断面形状を有する。ここで、空気入りタイヤの子午断面形状とは、タイヤ赤道面CLと垂直な平面上に現れる空気入りタイヤの断面形状をいう。本実施形態のタイヤ1は、図示は省略するが、タイヤ子午断面視で、タイヤ径方向内側から外側に向かって、ビード部、サイドウォール部、ショルダー部及びトレッド部10を有する。そして、タイヤ1は、例えば、タイヤ子午断面視で、トレッド部10から両側のビード部まで延在して一対のビードコアの周りで巻回されたカーカス層と、上記カーカス層のタイヤ径方向外側に順次形成された、ベルト層及びベルト補強層とを備える。
【0035】
タイヤ1は、セカンド陸部(外側セカンド陸部)34は、周方向主溝及びラグ溝により区画される複数のブロックであり、接地面に周方向主溝と交差する方向に延在する複数のサイプ44(第1サイプ)が形成される。また、サイプ44は、車幅方向の一方から他方に向かって移動した場合、周方向に隣接するブロックのサイプ44と、タイヤ周方向に移動する方向が異なる方向である。また、セカンド陸部(内側セカンド陸部)32は、一端が周方向主溝に開口し、他端が内側セカンド陸部内で終端したラグ溝321、322と、接地面に周方向主溝と交差する方向に延在する複数のサイプ(第2サイプ)42が形成される。サイプ(第2サイプ)42は、車幅方向の一方から他方に向かって移動した場合、内側セカンド陸部のラグ溝321、322と、タイヤ周方向に移動する方向が同じ方向である。タイヤ1は、セカンド陸部34の接地面Rのサイプをブロックごとに傾斜方向を異なる方向とすることで、ブロックの倒れ込み抑制効果及び地面を捉えるエッジ効果が増大でき、氷上でも旋回性能を向上できる。また、セカンド陸部32の接地面のサイプ42をラグ溝と同じ方向に傾斜させることで、入り込んだ雪や氷を、タイヤ1の接地時に周方向主溝21、22と交差する方向の最外側に抵抗なく順に押し出すことができ、雪や氷付きを抑制できる。これにより、雪や氷が介在しない接地面積の確保効果及び地面を捉えるエッジ効果が増大でき、氷上でも制動性能が向上できる。したがって、氷上制動性能及び氷上旋回性能を向上できる。
【0036】
タイヤ1は、サイプ44が車幅方向において、外側セカンド陸部の車幅方向内側のサイプ(内側サイプ)441と、車幅方向外側のサイプ(外側サイプ)442の2列とし、サイプ441が、車幅方向の一方から他方に向かって移動した場合、外側サイプ442と、タイヤ周方向に移動する方向が異なる方向とすることで、ブロックの倒れ込み抑制効果及び地面を捉えるエッジ効果が増大でき、氷上でも旋回性能を向上できる。
【0037】
タイヤ1は、周方向細溝343を設け、サイプ441とサイプ442の境界を周方向細溝343とすることで、ブロックの倒れ込み抑制効果及び地面を捉えるエッジ効果が増大でき、氷上でも旋回性能を向上できる。
【0038】
さらにタイヤ1は、セカンド陸部34にラグ溝(閉塞ラグ溝)343を設け、サイプ44を、周方向において、ラグ溝343を介して隣接する部分のサイプ44と、車幅方向の一方から他方に向かって移動した場合、タイヤ周方向に移動する方向が異なる方向である形状とすることで、ブロックの倒れ込み抑制効果及び地面を捉えるエッジ効果が増大でき、氷上でも旋回性能を向上できる。
【0039】
また、サイプ42、44は、タイヤ周方向及び溝深さ方向に振幅を有する三次元形状であることが好ましい。つまり、サイプ42、44は、三次元サイプであることが好ましい。さらに、タイヤ1に形成したサイプは、全て三次元サイプであることが好ましい。サイプ42、44を三次元サイプとすることで、氷上制動性能及び氷上旋回性能を向上できる。
【0040】
また、サイプ42、44は、延在方向に直交する方向の振幅が0.5mm以上1.2mm以下であり、溝深さ方向での溝底位置の振幅(溝深さ方向での溝底位置)が5.0mm以上10.0mm以下であることが好ましい。タイヤ1に形成したサイプは、全てのサイプが上記数値範囲を満たすことが好ましい。サイプを上記形状とすることで、氷上制動性能及び氷上旋回性能をより向上できる。
【0041】
また、サイプ42、44は、車幅方向に対する傾斜角度が5°以上45°以下であることが好ましい。傾斜角度を45°以下とすることで、それぞれに入り込んだ雪や氷がタイヤ1の接地時に周方向溝101と交差する方向の最外側に順に押し出しやすくなり、雪や氷が介在しない接地面積を確保できる。また、傾斜角度を5°以上とすることで、エッジ効果を高くすることができる。
【0042】
また、ラグ溝は、車幅方向に対する傾斜角度が5°以上45°以下であることが好ましい。傾斜角度を45°以下とすることで、それぞれに入り込んだ雪や氷がタイヤ1の接地時に周方向溝101と交差する方向の最外側に順に押し出しやすくなり、雪や氷が介在しない接地面積を確保できる。また、傾斜角度を5°以上とすることで、エッジ効果を高くすることができる。
【0043】
次に、タイヤ1の性能を評価した実施例について説明する。この性能試験では、複数種類の試験タイヤについて、氷上制動性能、氷上旋回性能を評価した。タイヤは、タイヤサイズ195/65R15 91Qの試験タイヤがリムサイズ15X6.5Jの規定リムに組み付け、試験タイヤに規定の空気圧を付与した。また、試験タイヤを、試験車両である排気量1800[cc]かつFF(Front engine Front drive)方式の車両の総輪に装着した。各タイヤには、空気圧250/240kPaを充填している。
【0044】
氷上制動性能に関する評価では、スケートリンクにてテストドライバーによる制動試験(20km/h)を実施した。そして、この試験結果に基づいて従来例を基準100とした指数評価が行われる。この評価は、指数が高いほど制動距離が短く氷上制動性能が優れていることを示している。
【0045】
氷上旋回性能に関する評価では、スケートリンクにてテストドライバーによる円旋回(7R)を実施した。そして、この試験結果に基づいて従来例を基準100とした指数評価が行われる。この評価は、指数が高いほど旋回タイムが短く氷上旋回性能が優れていることを示している。
【0046】
性能評価試験は、従来のタイヤの一例である従来例のタイヤと、参考例、本発明に係るタイヤ1である実施例の空気入りタイヤについて行った。これらの従来例、参考例、実施例のタイヤは、いずれも陸部のトレッド面にサイプが設けられている。このうち、従来例は、車両装着時外側及び内側のサイプがラグ溝と同一方向である。
【0047】
これに対し、本発明に係るタイヤの一例である実施例は、外側のセカンド陸部のサイプの傾斜角度を周方向に隣接するブロックと異なる、互い違いの形状とし、内側のセカンド陸部のサイプの傾斜方向を、ラグ溝と同一方向とした。さらに、実施例に係るタイヤは、サイプの延在方向や、サイプの各種寸法や、ラグ溝の傾斜角度や、サイプの傾斜角度が、それぞれ異なっている。
【0048】
これらのタイヤを用いて性能評価試験を行った結果を表1、表2に示す。
【表1】
【表2】
【0049】
表1、表2に示すように、実施例に係るタイヤは、従来例に対して、氷上制動性能及び氷上旋回性能を向上させることができることが分かった。つまり、実施例に係るタイヤは、氷上制動性能と氷上旋回性能とを両立することができる。
【0050】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、タイヤとして空気入りタイヤを例示して説明したが、これに限るものではなく、エアレスタイヤのような空気が充填されていないタイヤにも適用することもできることは勿論である。また、上記実施形態で例示した空気入りタイヤに充填される気体としては、通常の又は酸素分圧を調整した空気の他にも、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガスを用いることができる。
【符号の説明】
【0051】
1 タイヤ(空気入りタイヤ)
10 トレッド部
12 トレッド面
21、22、23、24 周方向主溝(周方向溝)
31、32、33、34、35 陸部
41、42、43、44、45、46、441、442 サイプ
311、321、322、331、341、342、351 ラグ溝
CL タイヤ赤道面
T 接地端
図1