(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-22
(45)【発行日】2024-10-30
(54)【発明の名称】研磨パッド
(51)【国際特許分類】
B24B 37/24 20120101AFI20241023BHJP
B24B 37/013 20120101ALI20241023BHJP
B24B 49/12 20060101ALI20241023BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20241023BHJP
【FI】
B24B37/24 Z
B24B37/013
B24B37/24 B
B24B49/12
H01L21/304 622S
H01L21/304 622F
(21)【出願番号】P 2020163732
(22)【出願日】2020-09-29
【審査請求日】2023-09-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000005359
【氏名又は名称】富士紡ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100156199
【氏名又は名称】神崎 真
(72)【発明者】
【氏名】立野 哲平
(72)【発明者】
【氏名】松岡 立馬
(72)【発明者】
【氏名】栗原 浩
(72)【発明者】
【氏名】鳴島 さつき
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼見沢 大和
【審査官】マキロイ 寛済
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-044814(JP,A)
【文献】特表2020-516474(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 37/24
B24B 37/013
B24B 49/00
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被研磨物を研磨する研磨層と、この研磨層に設けられて、被研磨物に対して照射される検査光及び該被研磨物からの反射光を透過させる終点検出用窓とを備えて、被研磨物からの反射光を基にして研磨加工時の終点を検出可能とした研磨パッドにおいて、
上記反射光の波長589nmのNaD線、波長486nmのNaF線、及び波長656nmのNaC線における屈折率nD、nF、nCを基にした式1から算出されるアッべ数vDが
38.1~
42.2となる材料を上記終点検出用窓として採用したことを特徴とする研磨パッド。
アッベ数vD=(nD-1)/(nF-nC) 式1
【請求項2】
終点検出用窓の材料として、波長486nmのNaF線における屈折率nFと、波長656nmのNaC線における屈折率nCの差が
0.0124~
0.0147となる材料を採用したことを特徴とする請求項1に記載の研磨パッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は研磨パッドに関し、より詳しくは、研磨層の所定位置に透明な終点検出用窓を備えた研磨パッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被研磨物としてのウエハを研磨するための研磨パッドは知られており、さらに、ウエハを研磨加工する際の終点を検出するために、被研磨物からの反射光を透過させる終点検出用窓を備えた研磨パッドは知られている(例えば特許文献1)。
特許文献1の研磨パッドにおいては、終点検出用窓となる材料の光の透過度を従来よりも上げることにより、終点検出に誤作動が生じるのを防止するとともに可視光での終点検出も問題なく使用できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1の研磨パッドのように終点検出用窓に用いる材料の透明度を上げたとしても、被研磨物からの反射光の分散が原因で色ずれとして発生する収差(色収差)が生じるため、依然として終点検出に誤作動が生じる可能性があった。
そこで、本発明の目的は、反射光の分散が原因となる収差を抑制して、従来よりも高い精度で終点検出が可能な検査用窓を備えた研磨パッドを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した事情に鑑み、本発明は、被研磨物を研磨する研磨層と、この研磨層に設けられて、被研磨物に対して照射される検査光及び該被研磨物からの反射光を透過させる終点検出用窓とを備えて、被研磨物からの反射光を基にして研磨加工時の終点を検出可能とした研磨パッドにおいて、
上記反射光の波長589nmのNaD線、波長486nmのNaF線、及び波長656nmのNaC線における屈折率nD、nF、nCを基にした式1から算出されるアッべ数vDが38.1~42.2となる材料を上記終点検出用窓として採用したことを特徴とするものである。
アッベ数vD=(nD-1)/(nF-nC) 式1
【発明の効果】
【0006】
このような構成によれば、被研磨物からの反射光の分散が原因となる収差を抑制することができ、それによって、従来よりも高い精度で終点検出が可能な検査用窓を備えた研磨パッドを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図示実施例について本発明を説明すると、
図1ないし
図2において、1は研磨装置であり、この研磨装置1は、薄板状の被研磨物2(例えば半導体ウエハ)を研磨パッド3によって研磨するようになっている。この研磨装置1は、被研磨物2を研磨する研磨加工を行う際に、被研磨物2の被研磨面2Aに検査光L1を照射して被研磨面2Aからの反射光L2を検出することで、研磨加工の進捗状況と加工終了となる終点を検出できるようになっている。
研磨装置1は、下方側に位置して上面に研磨パッド3が固定される研磨定盤4と、上方側に位置して下面に被研磨物2を保持する保持定盤5と、被研磨物2と研磨パッド3との間にスラリーを供給するスラリー供給機構6と、検査光L1を用いて被研磨物2の研磨加工の進捗状況と加工の終点を検出する検出機構7を備えている。
研磨装置1による研磨加工の対象となる被研磨物2は、光学材料、シリコンウェハ、液晶用ガラス基板、半導体基板の他、ガラス、金属、セラミック等の板状物である。また、スラリー供給機構6が供給するスラリーとしては、対象となる被研磨物2および求められる加工精度に応じて従来公知の好適な物を使用することができる。
上記研磨定盤4および保持定盤5はそれぞれ略円盤状となっており、それぞれ図示しない駆動機構によって矢印方向に回転するようになっており、また、上記保持定盤5は昇降可能に設けられている。
被研磨物2に研磨加工を行う際には、保持定盤5によって被研磨物2の被研磨面(下面)2Aを研磨パッド3の研磨面3Aに設定圧力で押し当てた状態で、それらが相対的に回転されるとともに、スラリー供給機構6からスラリーが被研磨物2の被研磨面2Aと研磨パッド3の研磨面3Aとの間に供給されるようになっている。
【0009】
ところで、被研磨物2の研磨加工を行う際には、該被研磨物2の研磨加工の進捗状況と加工終了となる終点を検出する必要がある。
そこで、この研磨装置1は、下方側から上方に向けて検査光L1を照射して、被研磨物2の被研磨面2Aから反射された反射光L2を基にして研磨加工の進捗状況と加工終点を検出する検出機構7を備えている。また、研磨パッド3の所定位置には、上記検査光L1を透過させ、かつ被研磨物2の被研磨面2Aからの反射光L2を透過させる透明な終点検出用窓3Bが設けられている。
図2に示すように、研磨パッド3は、上方側に位置する円板状の研磨層3Cと、研磨層3Cの下面に接着剤で接着された円板状の支持層3Dとを備えている。研磨層3Cの所定位置に透明で略円柱状の終点検出用窓3Bが設けられており、その下方側となる支持層3Dの位置には、検査光L1及び被研磨物2からの反射光L2を通過させるための貫通孔3Daが穿設されている。
終点検出用窓3Bの上面3Baと研磨層3Cの上面である研磨面3Aは同一平面となっている。また、終点検出用窓3Bの下面3Bbと研磨層3Cの下面は同一平面となっており、そこに接着剤により支持層3Dの上面が接着されている。そして、上下で一体となった研磨層3Cと支持層3Dからなる研磨パッド3は、その下面(支持層3Dの下面)を接着剤によって研磨定盤4の上面4Aに固定されている。
【0010】
研磨定盤4には、上記研磨パッド3の終点検出用窓3B及び支持層3Dの貫通孔3Daの下方位置に、検査光L1を鉛直上方へ照射する発光部7A及び被研磨物2からの反射光L2を受光する受光部7Bが設けられている。検出機構7は、これら発光部7A、受光部7Bと、それらの作動を制御し、かつ、研磨加工時における加工の進捗状況と加工終了となる終点を検出する制御部7Cを備えている。
被研磨物2を研磨加工中においては、検出機構7の発光部7Aから検査光L1が上方に向けて照射されるので、該検査光L1は透明な終点検出用窓3Bを透過して被研磨物2の被研磨面2Aに照射される。すると、検査光L1は被研磨物2の被研磨面2Aによって下方に向けて反射され、その反射光L2は透明な終点検出用窓3を透過して受光部7Bによって検出される。受光部7Bで検出した反射光L2は制御部7Cへ伝達されるようになっている。
そして、被研磨物2の研磨加工が進行して、被研磨物2の被研磨面2Aが徐々に研磨されることに伴って、受光部7Bによって検出される反射光L2の強度等が変化する。制御部7Cは、受光部7Bによって検出された反射光L2の強度等が、予め登録された強度等になると、被研磨面2Aが加工終点になったものと判定して、研磨加工を停止させる。すると、駆動機構が停止されるので研磨定盤4及び保持定盤5の回転が停止するとともに、スラリー供給機構6からのスラリーの供給も停止されるようになっている。
検出機構7は、このようにして被研磨物2の研磨加工が行われる際に研磨加工の終点を検出するようになっている。なお、このような検査光L1と反射光L2を用いた検出機構7の構成は上記特許文献1等により公知である。
【0011】
研磨層3Cは、硬質ウレタンにより形成されている。硬質ウレタンは、ボリオール成分とイソシアネート成分との反応中間体であるウレタンプレポリマーを用い、ジアミン類又はジオール類等の硬化剤(鎖延長剤)、発泡剤、触媒等を添加混合して得られるポリウレタンポリウレア樹脂を硬化させるプレポリマー法により製造される。なお、以下に研磨層や終点検出用窓をポリウレタンポリウレア樹脂として説明するが、ポリウレタン樹脂やポリウレア樹脂を用いてもよい。
【0012】
研磨層3Cの製造方法としては、例えば、少なくともプレポリマーとしてのポリウレタン結合含有イソシアネート化合物、硬化剤、中空体を準備する準備工程;少なくとも、上記ポリウレタン結合含有イソシアネート化合物、硬化剤を混合して成形体成形用の混合液を得る混合工程;上記成形体成形用混合液からポリウレタンポリウレア樹脂成形体を成形する成形体成形工程;および上記ポリウレタンポリウレア樹脂成形体から、上記研磨面を有する研磨層を形成する研磨層形成工程、を含むことが挙げられる。
【0013】
上記準備工程として、上記研磨層3Cの製造には、ポリウレタンポリウレア樹脂成形体の原料として、例えば、ポリウレタン結合含有イソシアネート化合物、硬化剤、中空体が用いられる。更にポリオール化合物を上記成分とともに用いてもよく、本発明の効果を損なわない範囲で、上記以外の成分を併せて用いてもよい。
【0014】
上記準備工程で準備される上記ポリウレタン結合含有イソシアネート化合物は、下記ポリィソシアネート化合物とポリオール化合物とを、通常用いられる条件で反応させることにより得られる化合物であり、ポリウレタン結合とイソシアネート基を分子内に含むものである。また、本発明の効果を損なわない範囲内で、他の成分がポリウレタン結合含有イソシアネート化合物に含まれていてもよい。
上記ポリウレタン結合含有イソシアネート化合物としては、市販されているものを用いてもよく、ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物とを反応させて合成したものを用いてもよい。上記反応に特に制限はなく、ポリウレタン樹脂の製造において公知の方法および条件を用いて付加重合反応すればよい。
例えば、40℃に加温したポリオール化合物に、窒素雰囲気にて撹枠しながら50℃に加温したポリイソシアネート化合物を添加し、30分後に80℃まで昇温させ更に80℃にて60分間反応させるといった方法で製造することが出来る。
【0015】
まず、上記ポリィソシアネート化合物とは、分子内に2つ以上のイソシアネート基を有する化合物を意味する。またポリィソシアネート化合物としては、分子内に2つ以上のイソシアネート基を有していれば特に制限されるものではない。
例えば、分子内に2つのイソシアネート基を有するジイソシアネート化合物としては、m-フエニレンジイソシアネート、p-フエニレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート(2,6-TDI)、2,4-トリレンジイソシアネート(2,4-TDI)、ナフタレンー1,4-ジイソシアネー卜、ジフェニルメタン-4,4'-ジイソシアネート(MDI)、4,4'-メチレンービス(シクロヘキシルイソシアネート)(水添MDI)、3,3'-ジメトキシー4,4'-ビフエニルジイソシアネート、3,3'-ジメチルジフェニルメタンー4,4,-ジイソシアネート、キシリレンー1,4-ジイソシアネート、4,4,-ジフエニルプロパンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、へキサメチレンジイソシアネート、プロピレン-1,2-ジイソシアネート、ブチレンー1,2-ジイソシアネート、シクロヘキシレン-1,2-ジイソシアネート、シクロヘキシレン-1,4-ジイソシアネート、P-フェニレンジイソチオシアネート、キシリレンー1,4-ジイソチオシアネート、エチリジンジイソチオシアネート等を挙げることができる。
さらに、ポリイソシアネート化合物としては、ジイソシアネート化合物やジイソチオシアネートが好ましく、中でも2,4-TDI、2,6-TDI,MDI、P-フェニレンジイソチオシアネート、キシリレンー1,4-ジイソチオシアネート、エチリジンジイソチオシアネートがより好ましく、2,4-TDI、2,6-TDI、P-フェニレンジイソチオシアネート、キシリレンー1,4-ジイソチオシアネートが特に好ましい。
これらのポリイソシアネート化合物は、単独で用いてもよく、複数のポイソソシアネート化合物を組み合わせて用いてもよい。
【0016】
次に上記ポリオール化合物とは、分子内に2つ以上のアルコール性水酸基(OH)を有する化合物を意味する。
上記ポリウレタン結合含有イソシアネート化合物の合成に用いられるポリオール化合物としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール(DEG)、ブチレングリコール等のジオール化合物、トリオール化合物等;ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール(又はポリテトラメチレンエーテルグリコール)(PTMG)等のポリエーテルポリオール化合物;エチレングリコールとアジピン酸との反応物やブチレングリコールとアジピン酸との反応物等のポリエステルポリオール化合物;ポリカーボネートポリオール化合物、ポリカプロラクトンポリオール化合物等を挙げることができる。
また、エチレンオキサイドを付加した3官能性プロピレングリコールを用いることもできる。これらの中でも、PTMG、又はPTMGとDEGの組み合わせが好ましい。
上記ポリオール化合物は単独で用いてもよく、複数のポリオール化合物を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
ここで、NCO基1個当たりのプレポリマーの分子量を示すプレポリマーのNCO当量としては、200~800であることが好ましく、300~700であることがより好ましく、400~600であることがさらにより好ましい。
具体的に上記プレポリマーのNCO当量は以下のようにして求めることができる。
プレポリマーのNCO当量=(ポリイソシアネート化合物の質量部十ポリオール化合物の質量部)/[(ポリイソシアネート化合物1分子当たりの官能基数×ポリイソシアネート化合物の質量部/ポリイソシアネート化合物の分子量)一(ポリオール化合物1分子当たりの官能基数×ポリオール化合物の質量部/ポリオール化合物の分子量)]
【0018】
上記硬化剤としては、例えば、ポリアミン化合物および/又はポリオール化合物を用いることができる。
ポリアミン化合物とは、分子内に2つ以上のアミノ基を有する化合物を意味し、脂肪族や芳香族のポリアミン化合物、特にはジアミン化合物を使用することができる。
例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、へキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタンー4,4,-ジアミン、3,3,-ジクロロー4,4,-ジアミノジフェニルメタン(メチレンビスーo-クロロアニリン)(以下、MOCAと略記する。)、MOCAと同様の構造を有するポリアミン化合物等を挙げることができる。また、ポリアミン化合物が水酸基を有していてもよく、このようなアミン系化合物として、例えば、2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、2-ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、ジー2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、ジー2-ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、2-ヒドロキシプロピルエチレンジアミン、ジー2-ヒドロキシプロピルエチレンジアミン等を挙げることができる。
ポリアミン化合物としては、ジアミン化合物が好ましく、MOCA、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホンがより好ましく、MOCAが特に好ましい。
ポリアミン化合物は、単独で用いてもよく、複数のポリアミン化合物を組み合わせて用いてもよい。
ポリアミン化合物は、他の成分と混合し易くするためおよび/又は後の成形体形成工程における気泡径の均一性を向上させるために、必要により加熱した状態で減圧下脱泡することが好ましい。減圧下での脱泡方法としては、ポリウレタンの製造において公知の方法を用いればよく、例えば、真空ポンプを用いて0.1MPa以下の真空度で脱泡することができる。硬化剤として固体の化合物を用いる場合は、加熱により溶融させつつ、減圧下脱泡することができる。
【0019】
また、硬化剤としてのポリオール化合物としては、ジオール化合物やトリオール化合物等の化合物であれば特に制限なく用いることができる。また、プレポリマーを形成するのに用いられるポリオール化合物と同一であっても異なっていてもよい。
具体例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-へキサンジオールなどの低分子量ジオール、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどの高分子量のポリオール化合物などが挙げられる。
上記ポリオール化合物は単独で用いてもよく、複数のポリオール化合物を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
ここで、上記ポリウレタン結合含有イソシアネート化合物の末端に存在するイソシアネート基に対する、硬化剤に存在する活性水素基(アミノ基および水酸基)の当量比であるR値が、0.60~1.40となるよう、各成分を混合する。R値は、0.65~1.30が好ましく、0.70~1.20がより好ましい。
【0021】
上記中空体とは、空隙を有する微小球体を意味する。微小球体には、球状、楕円状、およびこれらに近い形状のものが含まれる。中空体の例としては、熱可塑性樹脂からなる外殻(ポリマー殻)と、外殻に内包される低沸点炭化水素とからなる未発泡の加熱膨張性微小球状体や未発泡の加熱膨張性微小球状体を加熱膨張させたものが挙げられる。上記ポリマー殻としては、特開昭57-137323号公報等に開示されているように、例えば、アクリロニトリルー塩化ピニリデン共重合体、アクリロニトリルーメチルメタクリレート共重合体、塩化ビニルーエチレン共重合体などの熱可塑性樹脂を用いることができる。同様に、ポリマー殻に内包される低沸点炭化水素としては、例えば、イソブタン、ペンタン、イソペンタン、石油エーテル等を用いることができる。
なお、上記中空体を用いる他、水発泡等の化学的発泡や機械的な撹祥による発泡を用いて気泡を形成しても良く、これらの方法を組み合わせても良い。
【0022】
次に混合工程について説明すると、当該混合工程では、上記準備工程で準備した、プレポリマーとしてのポリウレタン結合含有イソシアネート化合物、硬化剤および中空体を、混合機内に供給して攪拝・混合する。混合工程は、上記各成分の流動性を確保できる温度に加温した状態で行われる。
混合順序に特に制限はないが、ポリウレタン結合含有イソシアネート化合物と中空体とを混合した混合液と、硬化剤および必要に応じて他の成分を混合した混合液とを用意し、両混合液を混合器内に供給して混合撹祥することが好ましい。このようにして、成形体成形_用の混合液が調製される。
【0023】
次に成形体成形工程では、上記混合工程で調製された成形体成形用の混合液を50~100℃の型枠内に流し込み、プレポリマー、硬化剤が反応してポリウレタンポリウレア樹脂を形成することにより該混合液は硬化し、ポリウレタンポリウレア樹脂成形体を成形する。
【0024】
そして、研磨層形成工程では、上記成形体成形工程により得られたポリウレタンポリウレア樹脂成形体をシート状にスライスするとともに、スライスした樹脂シートを所定形状に裁断する。このようにして得られた状態の樹脂シートは表面及び/又は裏面を研削処理する。一方の面が上記研磨面3Aとなり、当該研磨面3Aに対して所要のカッターを用いて切削加工等を行うことで、任意のピッチ、幅、深さを有する溝を形成することができ、これにより研磨層3Cが得られることとなる。
【0025】
支持層3Dには、樹脂を含浸してなる含浸不織布、ポリエチレンフォームやポリウレタンフォームなどの発泡体、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の支持基材を用いることができる。含浸不織布を支持層3Dとする場合、支持層3Dを製造するためには、少なくなくとも不織布基体に含浸した樹脂を湿式凝固させる工程、湿式凝固した繊維集合体の両面をパフ処理する工程、を含むことが挙げられる。本実施例の不織布基体は、特に限定されるものではなく、種種公知のものを採用できる。
不織布基体の例としては、ポリオレフイン系、ポリアミド系、ポリエステル系などの不織布を挙げることができる。また、不織布基体を得る際に繊維を交絡させる方法としても特に限定されず、例えば、ニードルパンチであってもよく、水流交絡であってもよい。不織布基体は上述した中から1種を単独で用いることができ、2種以上を組み合わせて用いることもできる。不織布基体は繊維の間の隙間が多く吸水性に富むが、樹脂を含浸させることにより隙間が樹脂で満たされるため吸水性が低下する。
【0026】
不織布基体に含浸させる樹脂は、ポリウレタン、ポリウレタンポリウレアなどのポリウレタン系、ポリアクリレート、ポリアクリロニトリルなどのアクリル系、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリフッ化ビニリデンなどのビニル系、ポリサルホン、ポリエーテルサルホンなどのポリサルホン系、アセチル化セルロース、ブチリル化セルロース等のアシル化セルロース系、ポリアミド系及びポリスチレン系などが挙げられる。
【0027】
不織布の密度は、樹脂含浸前の状態(ウェッブの状態)で、好ましくは0.3g/cm3以下であり、より好ましくは0.1~0.2g/cm3である。また、樹脂含浸後の不織布の密度は、好ましくは0.5g/cm3以下であり、より好ましくは0.3~0.4g/cm3である。不織布の密度が高すぎると加工精度が悪化する傾向があり、低すぎると比較的吸水しやすくなる傾向がある。また不織布に対する樹脂の付着率は、不織布の重量に対する付着させた樹脂の重量で表され、好ましくは50%以上であり、より好ましくは75~200%である。樹脂の付着率が大きすぎると支持層3Dとしての所望のクッション性を示さなくなる傾向があり、低すぎると支持層3Dが吸水してしまい、研磨特性に影響を及ぼす。
【0028】
不織布基体に樹脂を含浸させ湿式凝固する例としてポリウレタン樹脂を用いた場合を説明する。ポリウレタン樹脂と、ポリウレタン樹脂を溶解可能であって、後述の凝固液に混和する溶媒と、必要に応じてその他の添加剤とを混合し、更に必要に応じて減圧下で脱泡してポリウレタン樹脂溶液を準備する。溶媒としては、特に限定されないが、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、イソプロピルアルコール(IPA)及びN,Nジメチルアセトアミドが挙げられる。例えば、ポリウレタン樹脂を、ポリウレタン樹脂溶液の全体量に対して5~25質量%の範囲、より好ましくは8~15質量%の範囲で溶媒に溶解させてもよい。上記の範囲の場合、不織布基体に全体に行き渡らせやすくすることができる。
【0029】
次に、ポリウレタン樹脂溶液にシート状の不織布を浸漬した後、1対のローラ間を加圧可能なマングルローラを用いて樹脂溶液を絞り落とすことで所望の樹脂溶液付着量に調整し、不織布基体に樹脂溶液を略均一に含浸させる。次いで、樹脂溶液を含浸した不織布基体を、樹脂に対する貧溶媒、例えば水、を主成分とする凝固液中に浸漬することにより、ポリウレタン樹脂を凝固再生させる。凝固液には、樹脂の再生速度を調整するために、樹脂溶液中の溶媒以外の極性溶媒等の有機溶媒を添加してもよい。また、凝固液の温度は、樹脂を凝固できる温度であれば特に限定されず、例えば、15~60℃であってもよい。その後、必要に応じて、樹脂を含浸した不織布内に残存する溶媒を従来知られている洗浄液を用いて除去し、さらに、マングルローラを用いたり乾燥したりすることにより洗浄液を除去してもよい。このようにして、樹脂が湿式凝固した繊維集合体を得ることができる。その後、繊維集合体の両面にパフ処理を行い、繊維集合体の厚さを調整する。
【0030】
厚みが調整された繊維集合体は、所定位置に厚み方向に貫通孔が形成される。貫通孔は孔開け加工等により形成することができる。これにより、支持層3Dが得られることとなる。
【0031】
支持層3Dには、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)の透明な基材も用いることができる。ポリエチレンテレフタレートの基材の両面に両面テープや接着剤などを用いて、必要により加圧することにより研磨層3Cと接着・固定することができる。研磨層3Cとの接着に用いる両面テープや接着剤に特に制限はなく、当技術分野において公知の両面テープや接着剤の中から任意に選択して使用することができる。
【0032】
終点検出用窓3Bは、研磨層3Cと同様の材料を用いることができ、例えば硬質ウレタンにより形成されている。終点検出用窓3Bの硬質ウレタンは、ウレタンプレポリマーを用い、ジアミン類又はジオール類等の硬化剤(鎖延長剤)、添加剤、触媒等を添加混合して得られるポリウレタンポリウレア樹脂を硬化させるプレポリマー法により製造される。
【0033】
終点検出用窓3Bに用いるウレタンプレポリマーは、研磨層3Cと同様の、例えばポリウレタン結合含有イソシアネート化合物を用いることができる。上記ポリウレタン結合含有イソシアネート化合物としては、市販されているものを用いてもよく、ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物とを反応させて合成したものを用いてもよい。上記反応に特に制限はなく、ポリウレタン樹脂の製造において公知の方法および条件を用いて付加重合反応すればよい。また、本発明の効果を損なわない範囲内で、他の成分がポリウレタン結合含有イソシアネート化合物に含まれていてもよい。
ポリイソシアネート化合物としては、ジイソシアネート化合物やジイソチオシアネートが好ましく、研磨層3Cで用いるジイソシアネート化合物やジイソチオシアネートを使用することができる。中でも、2,4-TDI、2,6-TDI、MDI、P-フェニレンジイソチオシアネート、キシリレンー1,4-ジイソチオシアネート、エチリジンジイソチオシアネートがより好ましく、2,4-TDI,2,6-TDI、P-フェニレンジイソチオシアネート、キシリレンー1,4-ジイソチオシアネートが特に好ましい。これらのポリイソシアネート化合物は、単独で用いてもよく、複数のポリイソシアネート化合物を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
上記ポリウレタン結合含有イソシアネート化合物の合成に用いられるポリオール化合物も、研磨層で用いるポリオール化合物を使用することができる。ポリオール化合物の中でも、PTMG、又はPTMGとDRGの組み合わせが好ましい。上記ポリオール化合物は単独で用いてもよく、複数のポリオール化合物を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
終点検出用窓3Bに用いるプレポリマーについて、NCO基1個当たりのプレポリマーの分子量を示すプレポリマーのNCO当量としては、200~800であることが好ましく、300~700であることがより好ましく、400~600であることがさらにより好ましい。
【0036】
上記硬化剤としては、例えば、ポリアミン化合物および/又はポリオール化合物を用いることができる。ポリアミン化合物としては、硫黄原子を含み且つハロゲンを含まないジアミン化合物が好ましく、2-メチル-4,6-ビス(メチルチオ)-1,3-ベンゼンジアミン、ジメチルチオトルエンジアミンがより好ましく、2-メチル-4,6-ビス(メチルチオ)-1,3-ベンゼンジアミンが特に好ましい。ポリアミン化合物は、単独で用いてもよく、ここで挙げた複数のポリアミン化合物を組み合わせて用いてもよい。
終点検出用窓3Bに用いるポリアミン化合物は、研磨層3Cのときと同様の、他の成分と混合し易くするためおよび/又は気泡を除去するために、必要により加熱した状態で減圧下脱泡することが好ましい。
【0037】
また、終点検出用窓3Bに用いる硬化剤としてのポリオール化合物としては、ジオール化合物やトリオール化合物等の化合物であれば特に制限なく用いることができる。また、終点検出用窓3Bに用いるプレポリマーを形成するのに用いられるポリオール化合物と同一であっても異なっていてもよい。上記ポリオール化合物は単独で用いてもよく、複数のポリオール化合物を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
ここで、終点検出用窓3Bに用いるポリウレタン結合含有イソシアネート化合物の末端に存在するイソシアネート基に対する、終点検出用窓に用いる硬化剤に存在する活性水素基(アミノ基および水酸基)の当量比であるR値が、0.60~1.40となるよう、各成分を混合する。R値は、0.65~1.30が好ましく、0.70~1.20がより好ましい。
【0039】
また、終点検出用窓3Bの材料としてUV硬化樹脂を用いることもでき、例えば、アクリル(メタクリル)系エステルやそのウレタン変性物、チオコール系等が挙げられ、適宜用途に応じて反応性希釈剤や有機溶剤を用いることができる。
【0040】
本実施形態の研磨パッド3の製造方法は、研磨層と基材層とを貼り合わせる方法や、基材層上に研磨層を形成する方など、公知の方法が挙げられる。
【実施例】
【0041】
以下、本発明を実施例及び比較例を用いてより具体的に説明する。本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
(実施例1)
まず、研磨パッド3の作製を行った。2,4-トリレンジイソシアネートとポリオキシテトラメチレングリコールとの付加物を含むプレポリマーに、硬化剤として3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタンを加え、硬化させ研磨層3Cを形成した。また、基材層は、ポリエチレン繊維からなる不織布に、ポリウレタン樹脂溶液を含浸させた後に湿式凝固させ、乾燥させることで得た。この基材層を研磨層にホットメルト型の接着層を有する両面テープにより接着させ、研磨パッド3を得た。
つぎに、終点検出用窓部材の作製を行った。2,4-トリレンジイソシアネートとポリオキシテトラメチレングリコールとの付加物を含むプレポリマーに、硬化剤として2-メチル-4,6-ビス(メチルチオ)-1,3-ベンゼンジアミン(製品名:エタキュア300)を加え、硬化させ終点検出用窓部材を得た。
最後に、研磨パッド3の一部を6cm×10cmの貫通穴を設け、そこへ貫通穴と同じ形状に加工した終点検出用窓部材を嵌め込み、終点検出用窓3Bを備えた研磨パッド3とした。
(実施例2)
終点検出用窓部材を、UV硬化性樹脂であるウレタンアクリレート(製品名:ルクシディアV4260 DIC社製)とした以外は、実施例1と同様の方法で終点検出用窓を備えた研磨パッドとした。なお、硬化の際の希釈剤は、アロニックスM-111(東亞合成製 単官能ノニルフェノールアクリレート)、光重合開始剤はイルガキュア184 (IGM Resins B.V.製α-ヒドロキシアルキルフェノン)、混合比率(重量比)は3:7:0.5(樹脂:希釈剤:開始剤)とした。
(比較例)
終点検出用窓部材として用いられる硬化剤を、3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタンとした以外は、実施例1と同様の方法で終点検出用窓を備えた研磨パッド3とした。
【0042】
本実施例は、上記終点検出用窓3Bに用いる材料に関してアッベ数及びその計算の基礎となる3種類の光の屈折率に着目したものであり、本実施例の終点検出用窓3Bによれば、被研磨物2からの反射光L2の式収差(色ずれ)を抑制することができ、それによって上記検出機構7による高精度な終点位置の検出を行うことが可能となっている。
表1は、本発明の実施例1及び実施例2としての終点検出用窓と、比較対象とした比較例の終点検出用窓に関する3種類の光の屈折率及びアッベ数の計算の基礎となる数値と算出後のアッベ数を示したものである。
この表1において、実施例1は、エタキュア300とプレポリマーを材料として製造された終点検出用窓であり、実施例2はUV硬化樹脂のみで製造された終点検出用窓である。他方、比較例はMOCAにプレポリマーを加えて製造された終点検出用窓を示している。
そして、これら実施例1、実施例2および比較例について、それらについて3種類の反射光の屈折率を測定した。そして、それら3種類の屈折率に基づいて計算したアッベ数の基礎となる数値(アッべ数の分子とアッべ数の分母)を求めるとともに、後述する計算式によって実施例1、実施例2及び比較例についてアッベ数vDを算出した。
より具体的には、実施例1、2および比較例について、長さ30~40mm、幅8mm、厚さ1mmの試験片を用意し、アタゴ社製の「多波長アッベ屈折計DR-M4」を用いて、温度20℃、中間液としてモノブロモナフタレンを用いて、波長589nmのNaD線、波長486nmのNaF線、及び波長656nmのNaC線における試験片の光の屈折率nD、nF、nCを測定し、かかる3つの屈折率をもとにしてアッベ数vDを算出した。
アッベ数vDの算出方法は以下のとおりである。
すなわち、アタゴ社製の「多波長アッベ屈折計DR-M4」を用いて、25℃で、波長589nmのNaD線、波長486nmのNaF線、及び波長656nmのNaC線における試験片の屈折率nD、nF、nCを測定し、かかる3つの屈折率から下記の計算式に従ってアッベ数vDを算出した。
アッベ数vD=(nD-1)/(nF-nC)
【0043】
(終点検出評価)
被研磨物としてのウエハの膜厚の終点検出評価は以下のような手法で行った。ウエハとして、8インチのシリコンウエハに酸化膜を1μm製膜したものを用い、化学機械研磨装置(MIRRA(アプライドマテリアルズ社製))を用いて、下記の条件で研磨し。ウエハの酸化膜が研磨された時点を終点とした。これをウエハ10枚に対して行った。
スラリー供給量;200mL/分
Retainer Ring 圧;5psi
Membrane圧;4.5psi
Inner Tube圧;4.5psi
定盤回転数;70rpm
ヘッド回転数;65rpm
研磨後の各ウエハに対して干渉式膜厚測定装置(大塚電子社製)を用い、波長領域400~800nmにおいて膜厚測定を行った。表1に示すように算出される膜厚結果、再現性よく、膜厚の値がばらつきなく精度良く測定されている場合は○、一方で再現性が悪く、検出精度が不十分な場合は×とした。
【表1】
【0044】
このように、本実施例によれば、終点検出用窓に用いる材料のアッベ数を上げることにより、終点検出用窓を透過する検査光及び反射光の式収差(色ずれ)を抑制することができるので、検出機構7によって高精度な終点検出を行うことができる。
また、波長486nmのNaF線における屈折率をnFと、波長656nmのNaC線における屈折率をnCとの差が0.0124~0.0147であることで、高波長から短波長の様々な光に対して屈折率のばらつきがなく、安定した精度で終点検出を行うことができる。
【0045】
以上のように、本実施例の研磨パッド3は終点検出用窓3Bとして上述した屈折率とアッべ数の値の材料を採用しているので、終点検出用窓3Bを透過する反射光の式収差(色ずれ)を抑制することができる。そのため、検出機構7によって高精度な終点検出を行うことが可能となっている。
【符号の説明】
【0046】
2…被研磨物 3…研磨パッド
3A…研磨面 3B…終点検出用窓
3C…研磨層 7…検出機構
L1…検査光 L2…反射光