(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-22
(45)【発行日】2024-10-30
(54)【発明の名称】セキュリティシステム用通信タグ
(51)【国際特許分類】
E05B 19/00 20060101AFI20241023BHJP
G06K 19/07 20060101ALI20241023BHJP
G06K 19/077 20060101ALI20241023BHJP
【FI】
E05B19/00 J
E05B19/00 G
G06K19/07 020
G06K19/07 230
G06K19/077 156
(21)【出願番号】P 2020166972
(22)【出願日】2020-10-01
【審査請求日】2023-07-24
(73)【特許権者】
【識別番号】501428545
【氏名又は名称】株式会社デンソーウェーブ
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】東良 哲平
【審査官】野尻 悠平
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-339176(JP,A)
【文献】特開2002-319800(JP,A)
【文献】特開2012-173767(JP,A)
【文献】特開2014-225497(JP,A)
【文献】特開2000-124626(JP,A)
【文献】特開2003-201781(JP,A)
【文献】特開2006-066623(JP,A)
【文献】特開2004-335973(JP,A)
【文献】特開2010-098654(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 19/00
G06K 19/07
G06K 19/077
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セキュリティシステムに使用される通信タグであって、
通信回路が搭載される基板と、
前記通信回路に電源を供給する電池と、
これらを内部に収容する上カバー及び下カバーと、
弾性体からなり、前記下カバーの内周側に凹んだ形状の本体と、前記上カバーと前記下カバーとを組み合わせた際に両者の間に介在するエッジ部とを有する防水部材と、
前記下カバーと前記基板との間に配置され、
前記弾性体からなる緩衝部材とを備え、
前記電池は、前記基板の上面に配置され、
前記緩衝部材は、前記基板の下面に当接する複数の支持点を有しているセキュリティシステム用通信タグ。
【請求項2】
前記緩衝部材は、棒状の2つの部材が平行となる配置である請求項1記載のセキュリティシステム用通信タグ。
【請求項3】
前記緩衝部材は、複数の部材が格子状に配置されている請求項1記載のセキュリティシステム用通信タグ。
【請求項4】
前記複数の支持点は、前記基板の下面に部品が配置されている領域を避けるようにして配置されている請求項1から3の何れか一項に記載のセキュリティシステム用通信タグ。
【請求項5】
前記電池及び前記基板は、前記本体の内部に収容され、
前記緩衝部材は、前記本体の内低部に配置されるように、前記防水部材と一体に成形されている請求項1から4の何れか一項に記載のセキュリティシステム用通信タグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セキュリティシステムに使用される通信タグに関する。
【背景技術】
【0002】
セキュリティシステムに使用される例えばRFIDタグなどの通信タグは、ユーザが携帯した状態で使用されるので地面等に落下することも想定される。また、一般に通信タグは通信回路等に電源を供給するため、比較的重量がある電池も内蔵している。したがって、タグの筐体内に収容されている基板や、その基板に搭載されている回路素子を、落下時に加わる衝撃から保護する必要がある。
【0003】
例えば特許文献1では、携帯型無線キーの筐体内に収容される回路基板70の下面側に、電池80,ターミナル90及びLFアンテナ100が配置される構造において、落下時等に電子部品に及ぶ衝撃を吸収するため、LFアンテナ100と下側ケース20との間に矩形状のクッションシート110を介挿している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、クッションシート110は、LFアンテナ100に面で接する形状であるため、衝撃を吸収する際に、力が加わる方向に対して垂直な方向に弾性変形する余地が限られている。したがって、クッションシート110をなす材料の弾性が不十分であれば、衝撃が電子部品等に及んで破壊に至るおそれがある。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、落下時に加わる衝撃をより吸収し易い形状の緩衝部材を備えたセキュリティシステム用通信タグを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載のセキュリティシステム用通信タグによれば、通信回路が搭載される基板と、通信回路に電源を供給する電池と、これらを内部に収容する上カバー及び下カバーと、弾性体からなり、下カバーの内周側に凹んだ形状の本体と、上カバーと下カバーとを組み合わせた際に両者の間に介在するエッジ部とを有する防水部材と、下カバーと基板との間に配置され弾性体からなる緩衝部材とを備える。電池は基板の上面に配置され、緩衝部材は、基板の下面に当接する複数の支持点を有している。
【0008】
例えば、通信タグが落下して筐体に衝撃が加わった際に、緩衝部材が複数の支持点により基板の下面に当接して弾性変形した際に、複数の支持点の間に隙間があることで、基板と平行となる方向にも弾性変形する余地が生じる。したがって、同一の材料であれば、緩衝部材が基板の下面に対し1つの面のみで当接する構造に比較して、より衝撃を吸収し易い構造となっているので、耐衝撃性を向上させて、基板に搭載されている回路素子等をより確実に保護できる。
【0009】
請求項2記載のセキュリティシステム用通信タグによれば、緩衝部材を、棒状の2つの部材が平行となる配置とする。緩衝部材の個別の部材数を増やすほど、タグに加わる衝撃を吸収し易くなるが、その一方で、組み立て性が悪化することになる。また、緩衝部材を複数の支持点を有した一部材とすることもできるが、その場合、緩衝部材の製造コストが上昇するおそれがある。これに対して、緩衝部材を、棒状の2つの部材を平行に配置した構成とすれば単純な形状の二部材になるので、組み立て性の悪化や製造コストの上昇を招くことなく、耐衝撃性を向上させることができる。
【0010】
請求項3記載のセキュリティシステム用通信タグによれば、緩衝部材を、複数の部材が格子状に配置される構成とする。これにより、格子状に配置された複数の支持点で基板の下面側を支持して、衝撃をより広い領域に亘って吸収できる。
【0011】
請求項4記載のセキュリティシステム用通信タグによれば、複数の支持点を、基板の下面に部品が配置されている領域を避けるようにして配置する。このように構成すれば、筐体に衝撃が加わった際に、緩衝部材が基板の下面に配置されている部品に当接しないので、部品に加わるストレスを低減して部品を保護できる。
【0012】
請求項5記載のセキュリティシステム用通信タグによれば、電池及び基板は本体の内部に収容され、緩衝部材を、本体の内低部に配置するように防水部材と一体に成形する。
【0013】
すなわち、通信タグに防水機能が要求される際には、請求項1のように上カバーと下カバーとを組み合わせる間に防水部材のエッジ部を介在させて内部の防水を図ることになる。この際に、防水部材を緩衝部材と同じ弾性体で構成すれば、両者を一体に成形することができ、緩衝部材を設けるためのコストを削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】緩衝部材を、部材が延設されている方向と垂直な方向で切った断面図
【
図3】緩衝部材が単一の部材からなる場合の
図2相当図
【
図7】回路基板,電池ホルダ及び電池を示す分解斜視図
【
図8】第2実施形態であり、緩衝部材の構成を示す正面図及び平面図
【
図9】第3実施形態であり、緩衝部材の構成を示す正面図及び平面図
【
図10】第4実施形態であり、緩衝部材の構成を示す正面図及び平面図
【
図11】第1~第4実施形態の各緩衝部材の応力を測定した結果を示す図
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1実施形態)
以下、第1実施形態について
図1から
図7を参照して説明する。
図6は、セキュリティシステム用通信タグの一例であるRFIDタグの外観を示す斜視図であり、
図5は同分解斜視図である。RFIDタグ1は、例えば何れも樹脂製であり概ね一面が開放された矩形箱状の下カバー2と上カバー3とにより筐体4が構成されている。筐体4の内部には、防水ラバー5,回路基板6,電池ホルダ7及び電池8等が収容されている。尚、以下では上カバー3に向かう方向を上方向, 下カバー2に向かう方向を下方向と称する。
【0016】
図7に示すように、電池ホルダ7は、円盤状の電池8を収容し、内部に配置されている電極を介して回路基板6に電源を供給する。電池ホルダ7は回路基板6の上面に配置され、回路基板6の下面は回路素子等が搭載される部品面となっている。
図7では、回路素子の一例として、透視した下面側に搭載されている加速度センサ9やセラミックコンデンサ10を示している。
【0017】
防水ラバー5は、例えばゴムのような弾性体からなり、上面が開口し、概ね下カバー2の内面に沿って凹んだ形状の本体5Hを有して、その内部に回路基板6及び電池ホルダ7を収容する。防水ラバー5のエッジ部5Eは、本体5Hの4つの側壁面より外方に若干突出しており、下カバー2と上カバー3とを組み合わせた際に両者の間に挟まれることで、タグ1の内部を防水する。防水ラバー5は防水部材の一例である。
【0018】
そして、
図1に示すように、防水ラバー5の内底中央部には、緩衝部材11が配置されている。この緩衝部材11は、2つの角棒状の部材11a,11bを平行に配置してなる。これら2つの部材11a,11bが回路基板6の下面をそれぞれ支持することで、タグ1が地面に落下などした際に加わる衝撃が回路基板6に及ぶことを抑制する。防水ラバー5と緩衝部材11とを同じ弾性体で構成することで、両者を一体に成形できる。
【0019】
図2は、緩衝部材11を、部材11a,11bが延設されている方向と垂直な方向で切った断面を示す。図中の上方から衝撃に伴い荷重が印加された際に、両者の間に隙間があることで、部材11a,11bは図中の上下方向に加えて、左右方向にも弾性変形する余地を有している。したがって、
図3に示すように、緩衝部材が単一の部材からなる場合に比較して、衝撃力を吸収し易くなる。
【0020】
図4は、緩衝部材11が回路基板6の下面を支持している状態の断面を示している。緩衝部材11は回路基板6の下面を、2つの部材11a,11bのそれぞれの上面により支持しているが、各面を一体と捉えれば2点で支持していることになる。また、2つの部材11a,11bは、回路基板6の下面に部品である回路素子等が搭載されている領域を避けて支持する配置となっている。
【0021】
以上のように本実施形態によれば、RFIDタグ1に、通信回路が搭載される回路基板6と、通信回路に電源を供給する電池8と、これらを内部に収容する上カバー3及び下カバー2と、下カバー2と回路基板6との間に配置され弾性体からなる緩衝部材11とを備える。電池8は回路基板6の上面に配置され、回路基板6の下面が部品面となり、緩衝部材11は、回路基板6の下面に当接する2つの支持点を有している。
【0022】
これにより、タグ1が落下して筐体4に衝撃が加わった際に、緩衝部材11が2つの支持点により回路基板6の下面に当接して弾性変形した際に、複数の支持点の間に隙間があるので回路基板6と平行となる方向にも弾性変形する。したがって、緩衝部材が回路基板6の下面に対し1つの面のみで当接する構造に比較して、より衝撃を吸収し易い構造となっているので、耐衝撃性を向上させて回路基板6に搭載されている回路素子等をより確実に保護できる。
【0023】
この場合、緩衝部材11を、棒状の2つの部材11a,11bで構成し、これらを平行に配置する。このように構成すれば、2つの支持点が回路基板6と平行となる方向に弾性変形するためのスペースを、部材11a,11bの間に十分に確保できる。
【0024】
ここで、緩衝部材の部材数を増やすほどタグ1に加わる衝撃を吸収し易くなるが、それに応じて、組み立て性が悪化したり緩衝部材の製造コストが上昇するおそれがある。これに対して、緩衝部材11を、2つの部材11a,11bを平行に配置した構成とすれば単純な形状の二部材になるので、組み立て性の悪化や製造コストの上昇を招くことなく、耐衝撃性を向上させることができる。
【0025】
加えて、防水ラバー5を、下カバー2の内周側に凹んだ形状の本体5Hと、カバー2及び3を組み合わせた際に両者の間に介在するエッジ部5Hとを有する構成とし、電池8及び回路基板6を本体5Hの内部に収容する。そして、緩衝部材11を、本体5Hの内低部に配置するように防水ラバー5と一体に成形する。これにより、緩衝部材11を設けるためのコストを削減できる。
【0026】
また、2つの部材11a,11bを、回路基板6の下面に部品が搭載されている領域を避けて支持する配置としたことで、筐体4に衝撃が加わった際に緩衝部材11が部品に当接しないため、部品に加わるストレスを低減して部品を保護できる。
【0027】
(第2実施形態)
以降の第2~第4実施形態は、緩衝部材の形状のバリエーションを示すものである。
図8に示す第2実施形態は、13個の正方形状の部材12(1)~12(13)で構成される緩衝部材12を示している。9個の部材12(1)~12(9)と、4個の部材12(10)~12(13)とは、それぞれ格子状に配置されている。後者の4個の部材12(10)~12(13)は、全体の中心に位置する部材12(5)の周辺に配置されている。そして、各部材の頂角が接する部分で互いが連結されている。結果として、13個の部材12(1)~12(13)は、市松模様をなすように配置されている。
【0028】
以上のように構成される第2実施形態によれば、緩衝部材12は、13個の部材による13個の支持点によって回路基板6の下面側を支持するので、衝撃をより広い領域に亘って吸収できる。尚、例えば9個の部材12(1)~12(9)のみや、4個の部材12(10)~12(13)のみで格子状の配置としても良い。
【0029】
(第3実施形態)
図9に示す第3実施形態は、平面形状が正方形状である13個の部材13(1)~13(13)で構成される緩衝部材13を示している。これらは、緩衝部材12と同様に市松模様をなすように配置されているが、部材13(1)~13(13)は連結されておらず、これらは独立した部材である。また、各部材13(1)~13(13)の縦断面は、三角形状である。
【0030】
以上のように構成される第3実施形態によれば、緩衝部材13は、第2実施形態と同様に、13個の部材による13個の支持点によって回路基板6の下面側を支持するが、各部材の縦断面形状を三角形とすることで、緩衝部材13が回路基板6の下面に当接する部分,つまり支持点側の面積が最小となり、そこから下カバー2に向かう方向に面積が大きくなる。したがって、衝撃をよりソフトに吸収できる。
【0031】
(第4実施形態)
図10に示す第4実施形態は、平面形状が円形である5個の部材14(1)~14(5)で構成される緩衝部材14を示している。これらのうち、4つの部材14(1)~14(4)は、正方形の各頂角に配置されており、部材14(5)は、それらの中心に配置されている。また、各部材14(1)~14(5)の縦断面は、半円状である。
【0032】
以上のように構成される第4実施形態によれば、緩衝部材14は、5個の部材による5個の支持点によって回路基板6の下面側を支持するが、各部材の縦断面形状を半円形とすることで、第3実施形態と同様に、緩衝部材14の面積が、回路基板6の下面に当接する側は小さく下カバー2に向かう方向により大きくなるので、衝撃をソフトに吸収できる。
【0033】
また、
図11は、第1~第4実施形態の各緩衝部材の応力を測定して比較したものである。尚、比較対象として、従来技術に相当する同じゴム材で1つの正方形の部材で構成したもの;比較対象1と、ポロンを用いて同じ面積の正方形の部材で構成したもの;比較対象2も示している。この図から分かるように、第1~第4実施形態の各緩衝部材の応力は、何れも比較対象1と比較対象2との間にあり、第1実施形態から第4実施形態にかけて、同じ荷重に対する変形量が大きくなっており、衝撃力をより吸収し易くなる方向に変化している。
【0034】
本発明は上記した、又は図面に記載した実施形態にのみ限定されるものではなく、以下のような変形又は拡張が可能である。
弾性体は、ゴム材に限らない。
緩衝部材に用いる部材の個数は、各実施形態に示したものに限らない。
防水ラバー5は必要に応じて設ければ良く、緩衝部材を下カバー2と回路基板6との間に配置しても良い。
電池ホルダ7も必要に応じて設ければ良く、電池8を回路基板6に直付けしても良い。
必ずしも回路基板6の下面を部品面とする必要はなく、回路基板6の上面を部品面としても良い。
【0035】
各実施形態に用いた緩衝部材を、適宜組み合わせて使用しても良い。例えば、第2実施形態の部材12(10)~12(13)を、第3実施形態の部材13(10)~13(13)に置き換えても良い。この場合、衝撃力が印加された初期の段階は、先に部材13(10)~13(13)が回路基板6の下面に当接することで衝撃力をソフトに吸収し、部材13(10)~13(13)の変形が進んでその厚さが12(1)~12(9)に等しくなると、全ての部材により衝撃力をより大きく吸収できるようになる。
セキュリティシステム用通信タグは、RFIDタグに限ることはない。
【符号の説明】
【0036】
図面中、1はRFIDタグ、2は下カバー、3は上カバー、4は筐体、5は防水ラバー、6は回路基板、7は電池ホルダ、8は電池、11~14は緩衝部材を示す。