(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-22
(45)【発行日】2024-10-30
(54)【発明の名称】光偏向装置及び画像投射装置
(51)【国際特許分類】
G02B 26/10 20060101AFI20241023BHJP
G02B 26/08 20060101ALI20241023BHJP
H04N 5/74 20060101ALI20241023BHJP
【FI】
G02B26/10 C
G02B26/08 E
H04N5/74 A
(21)【出願番号】P 2021002102
(22)【出願日】2021-01-08
【審査請求日】2023-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000006220
【氏名又は名称】ミツミ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】山田 司
【審査官】河村 麻梨子
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-127969(JP,A)
【文献】特開2013-068741(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0043308(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0092161(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 26/08-26/10
H04N 5/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光部と、
第1揺動軸周りに第1反射面を揺動させることで、
前記発光部から発せられて前記第1反射面に入射する光を偏向させる第1光偏向部と、
前記第1揺動軸に交差する第2揺動軸周りに第2反射面を揺動させることで、前記第1反射面で反射された前記光を偏向させる第2光偏向部と、を有し、
前記第1揺動軸は、前記第1反射面に入射する前記光の中心軸と、前記第1反射面で反射された前記光の中心軸と、を含む第1入射平面に
垂直に交差し、
前記第2揺動軸は、前記第2反射面に入射する前記光の中心軸と、前記第2反射面で反射された前記光の中心軸と、を含む第2入射平面に
垂直に交差
し、
前記第2光偏向部により偏向された前記光を被走査面上で走査させる光偏向装置。
【請求項2】
前記第1光偏向部は、前記第1反射面に入射する前記光を偏向させて、前記第2反射面上で、前記第2揺動軸に沿う方向に走査させる請求項
1に記載の光偏向装置。
【請求項3】
前記第1光偏向部による走査角度範囲の中心を通る前記光は、前記第2揺動軸に交差する方向から前記第2反射面に入射する請求項1
又は2に記載の光偏向装置。
【請求項4】
揺動されていないときの前記第1反射面に対する前記第2揺動軸の傾きは、25.5度以上で34.5度以下である請求項1乃至
3の何れか1項に記載の光偏向装置。
【請求項5】
揺動されていないときの前記第2反射面に対する前記第1揺動軸の傾きは、30.5度以上で39.5度以下である請求項1乃至
4の何れか1項に記載の光偏向装置。
【請求項6】
請求項1乃至
5の何れか1項に記載の光偏向装置と、を有し、
前記光を前記光偏向装置により走査させることで、被走査面上に画像を投射する画像投射装置。
【請求項7】
前記光偏向装置は、前記被走査面上で、重力方向に沿う方向と前記重力方向に交差する方向の2つの方向に
前記光を走査させる請求項
6に記載の画像投射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光偏向装置及び画像投射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発光部が発する光を反射面で偏向させる光偏向装置を用い、被走査面上に画像を投射する画像投射装置が知られている。
【0003】
また画像投射装置として、光を第1方向に偏向させる第1偏向器と、第1偏向器と被走査面間に配設される走査光学系とを有する構成が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1の構成では、投射される画像のTVディストーションや台形歪みを抑えるために、走査光学系を構成する各光学部材の中心軸が該走査光学系の光軸として同一直線上に位置し、被走査面の中心は、該被走査面を含む平面と光軸との交点よりも第2方向にシフトしている。また第1偏向器は、該第1偏向器の回転軸が上記光軸及び第2方向を含む面内において、第2方向に対して第1角度だけ傾いて配設されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の構成では、画像投射装置の構成が複雑になる場合がある。
【0007】
本発明は、投射される画像のディストーションを簡単な構成で抑制可能な光偏向装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る光偏向装置は、発光部(10)と、第1揺動軸(A)周りに第1反射面(22)を揺動させることで、前記発光部(10)から発せられて前記第1反射面(22)に入射する光(L1)を偏向させる第1光偏向部(21)と、前記第1揺動軸(A)に交差する第2揺動軸(B)周りに第2反射面(32)を揺動させることで、前記第1反射面(22)で反射された前記光(L2)を偏向させる第2光偏向部(31)と、を有し、前記第1揺動軸(A)は、前記第1反射面(22)に入射する前記光(L1)の中心軸(L10)と、前記第1反射面(22)で反射された前記光(L2)の中心軸(L20)と、を含む第1入射平面(P1)に垂直に交差し、前記第2揺動軸(B)は、前記第2反射面(32)に入射する前記光(L2)の中心軸(L20)と、前記第2反射面(32)で反射された前記光(L3)の中心軸(L30)と、を含む第2入射平面(P2)に垂直に交差し、前記第2光偏向部(31)により偏向された前記光(L3)を被走査面(200)上で走査させる。
【0009】
なお、上記括弧内の参照符号は、理解を容易にするために付したものであり、一例にすぎず、図示の態様に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、投射される画像のディストーションを簡単な構成で抑制可能な光偏向装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態に係る画像投射装置の全体構成例を示す斜視図である。
【
図2】実施形態に係る光偏向装置の構成例を示す図であり、
図2(a)は上面図、
図2(b)は左側面図、
図2(c)は正面図、
図2(d)は
図2(c)のA-A矢視断面図である。
【
図3】実施形態に係る第1光偏向部の構成例を示す斜視図である。
【
図4】駆動信号を説明する図であり、
図4(a)は水平駆動信号例の図、
図4(b)は垂直駆動信号例の図である。
【
図5】実施形態に係る第2光偏向部の構成例を示す斜視図である。
【
図6】実施形態に係る光偏向装置の配置例の図であり、
図6(a)は第1揺動軸方向から視た図、
図6(b)は第2揺動軸方向から視た図である。
【
図7】実施形態に係る光偏向装置へのレーザ光の入射例を示す図である。
【
図8】第1比較例に係る光偏向装置の構成を示す図である。
【
図9】第1比較例に係る光偏向装置へのレーザ光の入射を示す図であり、
図9(a)は第1揺動軸方向から視た図、
図9(b)は第2揺動軸方向から視た図である。
【
図10】第2比較例に係る光偏向装置の構成を示す斜視図である。
【
図11】第2比較例に係る光偏向装置へのレーザ光の入射を示す図である。
【
図12】ディストーションの一例を示す図であり、
図12(a)は第1比較例の図、
図12(b)は第2比較例の図、
図12(c)は実施形態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一の構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0013】
また以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための光偏向装置及び画像投射装置を例示するものであって、本発明を以下に示す実施形態に限定するものではない。以下に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、例示することを意図したものである。また図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張している場合がある。
【0014】
実施形態に係る光偏向装置は、第1揺動軸周りに第1反射面を揺動させることで、第1反射面に入射する光を偏向させる第1光偏向部を有する。また第1揺動軸に交差する第2揺動軸周りに第2反射面を揺動させることで、第1反射面で反射された光を偏向させる第2光偏向部を有する。
【0015】
このような光偏向装置は、例えば、被走査面上に画像を投射する画像投射装置等において、光を偏向させて被走査面上で走査させるために使用される。画像投射装置には、プロジェクタ、車両のウェルカムプロジェクタ、ヘッドアップディスプレイ、ヘッドマウントディスプレイ、車両のヘッドランプ、物体認識装置、測距装置又は眼底検査装置等が挙げられる。
【0016】
なお、車両のウェルカムプロジェクタとは、車両のドア等に設けられ、ドア開けた時にロゴ等を含む所望の画像を投射するプロジェクタをいう。また物体認識装置とは、投光した光の物体による反射光又は散乱光に基づき、物体の有無又は物体までの距離を検出して認識する装置をいう。
【0017】
このような画像投射装置では、投射される画像にディストーションが発生する場合がある。ディストーションとは、投射される画像が歪む現象をいう。ディストーションの種類には、画像の端ほど縮む樽型と、画像の端ほど伸びる糸巻き型と、樽型と糸巻き型の両方が表れる陣笠型等がある。実施形態の用語におけるディストーションの種類はこれらを何れも含み、またこれらが1つの画像の中に混在するディストーションも含む。
【0018】
また、別の観点では、ディストーションには、画像処理等で補正されるディストーションを意味する光学ディストーションと、画像処理等による補正を行わないディストーションを意味するTVディストーションがある。実施形態の用語におけるディストーションは、画像処理等による補正を想定しない点でTVディストーションということができる。
【0019】
実施形態では、第1揺動軸は、第1反射面に入射する光の中心軸と、第1反射面で反射された光の中心軸と、を含む第1入射平面に交差する。また第2揺動軸は、第2反射面に入射する光の中心軸と、第2反射面で反射された光の中心軸と、を含む第2入射平面に交差する。この構成により、投射される画像のディストーションを簡単な構成で抑制可能な光偏向装置を提供する。
【0020】
ここで、光の中心軸とは、光として伝搬する光束の中心を通る軸をいう。例えば光がレーザ光(レーザビーム)である場合には、レーザ光の中心軸は、レーザ光をその伝搬方向に直交する面で切断した際に、切断面の中心を通る軸であって進行方向に沿う軸を意味する。
【0021】
また、実施形態の用語における光の偏向とは、光の進行方向を変化させることをいう。実施形態では、反射面が光を反射することで光を偏向させる。
【0022】
以下、実施形態に係る光偏向装置を有する画像投射装置を一例として、実施形態を説明する。
【0023】
以下に示す図でX軸、Y軸及びZ軸により方向を示す場合があるが、X軸に沿うX方向は、実施形態に係る光偏向装置が備える第1光偏向部が光を偏向させて走査させる方向を示す。Y軸に沿うY方向は、実施形態に係る光偏向装置が備える第2光偏向部が光を偏向させて走査させる方向を示す。X軸とY軸は略直交する。Z軸に沿うZ方向は、X軸及びY軸の両方に略直交する方向を示す。
【0024】
また、X方向で矢印が向いている方向を+X方向、+X方向の反対方向を-X方向と表記し、Y方向で矢印が向いている方向を+Y方向、+Y方向の反対方向を-Y方向と表記し、Z方向で矢印が向いている方向を+Z方向、+Z方向の反対方向を-Z方向と表記する。但し、これらは光偏向装置及び画像投射装置の使用時における向きを制限するものではなく、光偏向装置及び画像投射装置は任意の向きで配置可能である。
【0025】
<画像投射装置100の構成例>
まず、
図1及び
図2を参照して、実施形態に係る画像投射装置100の全体構成、並びに画像投射装置100が有する光偏向装置20の構成について説明する。
【0026】
図1は、画像投射装置100の全体構成の一例を説明する斜視図である。また
図2は、光偏向装置20の構成の一例を説明する図である。
図2(a)は上面図、
図2(b)は左側面図、
図2(c)は正面図、
図2(d)は
図2(c)のA-A矢視断面図である。
【0027】
図1に示すように、画像投射装置100は、発光部10と、光偏向装置20と、制御部30とを有する。これらは、画像投射装置100が備える筐体に設けられている。
【0028】
画像投射装置100は、制御部30の制御下で、発光部10が発するRed、Green及びBuleの各色のレーザ光を光偏向装置20によりそれぞれX方向及びY方向に走査させ、被走査面200上にフルカラーの画像201を投射する。
【0029】
本実施形態では、一例として、Y方向は重力方向に対応し、X方向は重力方向に略直交する水平方向に対応する。光偏向装置20は、発光部10が発するRed、Green、Bule及びIR(infrared)の各波長のレーザ光をそれぞれ偏向させ、被走査面200上でX方向及びY方向の2つの方向に走査させることができる。
【0030】
但し、画像投射装置100が投射する画像201は、フルカラーの画像に限定されるものではなく、単色の画像等であってもよい。単色の画像を投射する場合には、画像投射装置100は、単色のレーザ光を被走査面200上で走査させる。
【0031】
画像投射装置100がプロジェクタの場合には、被走査面200はスクリーン等に対応する。画像投射装置100がヘッドアップディスプレイの場合には、被走査面200は自動車のフロントウインドシールド等に対応する。
【0032】
また画像投射装置100がヘッドマウントディスプレイ又は眼底検査装置の場合には、被走査面200は眼球の網膜等に対応する。画像投射装置100が車両のヘッドランプ、物体認識装置又は測距装置の場合には、空間内の仮想平面に対応する。
【0033】
発光部10は、Redのレーザ光を発するLD(Laser Diode)と、Greenのレーザ光を発するLDと、Blueのレーザ光を発するLDとを有する。発光部10は、各色のLDが発するRed、Green及びBlueの各色のレーザ光を光偏向装置20に入射させる。各色のレーザ光はそれぞれ発光部が発する光の一例である。
【0034】
図1及び
図2に示すように、光偏向装置20は、入射窓1と、第1光偏向ユニット2と、第2光偏向ユニット3と、出射窓4と、ハウジング5とを有する。
【0035】
入射窓1は、発光部10が発するレーザ光をハウジング5の内部に入射させる窓として機能する板状部材である。入射窓1は、発光部10が発する各色のレーザ光の波長に対して光透過性を有する光学ガラス、耐熱ガラス、硬質ガラス、光学プラスチック、硬質プラスチック等の材料を含んで構成されている。入射窓1の両面には、レーザ光の反射を防止するための反射防止膜を施すことが好ましい。
【0036】
第1光偏向ユニット2は、第1光偏向部と、第1光偏向部を保持する第1パッケージとを含む。第1光偏向ユニット2は、入射窓1を通って入射した各色のレーザ光のそれぞれを偏向させ、第2光偏向ユニット3に入射させる。
【0037】
第2光偏向ユニット3は、第2光偏向部と、第2光偏向部を保持する第2パッケージとを含む。第2光偏向ユニット3は、第1光偏向ユニット2により偏向された各色のレーザ光のそれぞれをさらに偏向させ、被走査面200上でX方向及びY方向の各方向に走査させる。
【0038】
第1及び第2パッケージは、アルミナセラミックスや、アルミニウム、アルミニウム合金又はステンレス等の金属材料、或いはプラスチック材料等を含んで構成されている。また第1及び第2パッケージは、FRP(Fiber Reinforced Plastics)又はFPC(Flexible printed circuits)等で構成された回路基板等を含んでいる。
【0039】
なお、第1光偏向ユニット2及び第2光偏向ユニット3の各構成については、
図3乃至
図6等を参照して別途詳述する。
【0040】
出射窓4は、第1光偏向ユニット2で偏向された後、第2光偏向ユニット3でさらに偏向されたレーザ光を、ハウジング5の内部から外部へ出射させる窓として機能する板状部材である。出射窓4は、発光部10が発する各色のレーザ光の波長に対して光透過性を有する光学ガラス、耐熱ガラス、硬質ガラス、光学プラスチック、硬質プラスチック等の材料を含んで構成されている。出射窓4の両面には、レーザ光の反射を防止するための反射防止膜を施すことが好ましい。
【0041】
ハウジング5は、入射窓1、第1光偏向ユニット2、第2光偏向ユニット3及び出射窓4のそれぞれを固定し、保持する部材である。またハウジング5は、内部へのゴミ又は埃等の侵入を防ぐことで、第1光偏向ユニット2又は第2光偏向ユニット3にゴミ又は埃等が付着することを防止する機能も有する。
【0042】
ハウジング5の材質には特段の制限はないが、アルミナセラミックスや、アルミニウム、アルミニウム合金又はステンレス等の金属材料、或いはプラスチック材料等を含んで構成可能である。
【0043】
例えば可視光の波長に対して光透過性を有さない不透明材料を含んでハウジング5を構成すると、室内照明や太陽光等の外部の光がハウジング5の内部に入射することを防ぎ、また発光部10が発するレーザ光がハウジング5の外部に漏出することを防げるため好適である。
【0044】
制御部30は、発光部10に駆動電圧等の駆動信号を印加することで、発光部10が有する各色のLDの発光を制御する。また制御部30は、光偏向装置20に駆動電圧等の駆動信号を印加することで、光偏向装置20によるレーザ光の走査を制御する。
【0045】
制御部30の機能は電気回路で実現される他、機能の一部又は全部をソフトウェア(CPU;Central Processing Unit)によって実現することができる。
【0046】
<第1光偏向部21の構成例>
次に
図3を参照して、第1光偏向部21の構成について説明する。
図3は、第1光偏向部21の構成の一例を説明する斜視図である。
図3は、説明の便宜のために、第1光偏向ユニット2に含まれる第1パッケージを取り外した状態での第1光偏向部21を表示している。
【0047】
第1光偏向部21は、第1揺動軸A周りに第1反射面22を揺動させることで、第1反射面22に入射するレーザ光を偏向させる。第1光偏向部21は、例えば圧電素子により第1反射面22を駆動させるMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ミラー等である。
【0048】
図3に示すように、第1光偏向部21は、第1反射面22と、第1可動部23と、捻れ梁24a及び24bと、第1支持部25と、第1駆動梁26a及び26bと、第1駆動源27a及び27bとを有する。
【0049】
第1反射面22は、光を反射する面である。第1反射面22は、外形が略円形状に形成され、第1可動部23の上面に支持されている。第1反射面22は、第1可動部23の上面に形成された面であってもよい。
【0050】
第1可動部23は、両側にある捻れ梁24a及び24bの端部に連結している。捻れ梁24a及び24bは、第1揺動軸Aを構成し、第1揺動軸A方向に沿って延在して第1揺動軸Aに沿う方向の両側から第1可動部23を支持している。
【0051】
捻れ梁24a及び24bが捻れることで、第1可動部23に支持された第1反射面22が第1揺動軸A周りに揺動する。第1反射面22が揺動することで、第1反射面22に入射し、反射されたレーザ光を第1揺動軸A周りに偏向させ、走査させることができる。捻れ梁24a及び24bは、第1支持部25に連結支持されている。
【0052】
第1可動部23には、第1反射面22の円周に沿うようにスリット28が形成されている。スリット28により、捻れ梁24a及び24bの捻れ動作によって発生する応力集中を分散させて第1反射面22の破損を防止しつつ捻れ梁24a及び24bによる捻れを第1反射面22へ伝達することができる。
【0053】
第1駆動梁26a及び26bは、捻れ梁24a及び24bと直交する方向に、第1反射面22及び第1可動部23を挟むように対をなして設けられている。第1駆動梁26aの上面には第1駆動源27aが形成され、第1駆動梁26bの上面には第1駆動源27bが形成されている。
【0054】
第1駆動源27aは、第1駆動梁26aの上面の圧電素子の薄膜(以下「圧電薄膜」ともいう。) の上に形成された上部電極と、圧電薄膜の下面に形成された下部電極とを含む。第1駆動源27aは、上部電極と下部電極に印加する駆動電圧の極性に応じて伸長したり縮小したりする。
【0055】
同様に第1駆動源27bは、第1駆動梁26bの上面の圧電薄膜の上に形成された上部電極と、圧電薄膜の下面に形成された下部電極とを含む。第1駆動源27bは、上部電極と下部電極に印加する駆動電圧の極性に応じて縮小し、或いは伸長及び縮小する。
【0056】
第1駆動梁26aと第1駆動梁26bとで異なる位相の駆動電圧を交互に印加すると、第1反射面22の左側と右側で第1駆動梁26aと第1駆動梁26bとが上下反対側に交互に振動する。これにより、捻れ梁24a及び24bを含んで構成される第1揺動軸A周りに第1反射面22を揺動させることができる。例えば第1駆動梁26a及び26bによる揺動には共振振動が用いられ、高速に第1反射面22を揺動させることができる。
【0057】
ここで、
図4は駆動信号を説明する図であり、
図4(a)は水平駆動信号の一例を示す図、
図4(b)は垂直駆動信号の一例を示す図である。
【0058】
図4に示すように、水平駆動信号AHp及び水平駆動信号AHnは、共に同一の周期及び振幅を有する正弦波で、水平駆動信号AHnは、水平駆動信号AHpに対して位相が半周期ずれている。すなわち、水平駆動信号AHp、AHnとは、中間電位に対して電位が反転した関係にある。第1反射面22は、水平駆動信号AHpと水平駆動信号AHnとの電位差に応じて駆動され、その振れ角は、水平駆動信号AHp及び水平駆動信号AHnの振幅に対応する。
【0059】
このような第1光偏向部21は、例えば支持層、埋め込み(BOX:Buried Oxide)層及び活性層を有するSOI(Silicon On Insulator)基板を用いて、半導体プロセスにより製作することができる。
【0060】
<第2光偏向部31の構成例>
次に
図5を参照して、第2光偏向部31の構成について説明する。
図5は、第2光偏向部31の構成の一例を説明する斜視図である。
図5は、説明の便宜のために、第2光偏向ユニット3に含まれる第2パッケージを取り外した状態での第2光偏向部31を表示している。
【0061】
第2光偏向部31は、第1揺動軸Aに交差する第2揺動軸B周りに第2反射面32を揺動させることで、第1反射面22で反射されたレーザ光を偏向させる。第2光偏向部31は、例えば圧電素子により第2反射面32を駆動させるMEMSミラー等である。
【0062】
図5に示すように、第2光偏向部31は、第2反射面32と、第2可動部33と、第1接続部34a及び34bと、第2駆動梁35a及び35bと、第2駆動源36a及び36bと、第2接続部37a及び37bと、第2支持部38とを有する。
【0063】
第2反射面32は、光を反射する面である。第2反射面32は、外形が略矩形状に形成され、第2可動部33の上面に支持されている。第2反射面32は、第2可動部33の上面に形成された面であってもよい。
【0064】
第2可動部33は、第1接続部34aを介して第2駆動梁35aの一方の端部に接続している。第2駆動梁35aは、第2揺動軸Bに垂直な方向に延在する複数の矩形状の垂直梁、及び隣接する垂直梁の端部同士を連結する折り返し部を備え、全体としてジグザグ状の形状である。第2駆動梁35aの他方の端部は、第2接続部37aを介して第2支持部38に連結支持されている。
【0065】
また、第2可動部33は、第1接続部34bを介して第2駆動梁35bの一方の端部に接続している。第2駆動梁35bは、第2揺動軸Bに垂直な方向に延在する複数の矩形状の垂直梁、及び隣接する垂直梁の端部同士を連結する折り返し部を備え、全体としてジグザグ状の形状である。第2駆動梁35bの他方の端部は、第2接続部37bを介して第2支持部38に連結支持されている。
【0066】
第2駆動梁35aの上面には、曲線部を含まない矩形単位である垂直梁ごとに第2駆動源36aが形成されている。第2駆動源36a は、第2駆動梁35aの上面の圧電薄膜の上に形成された上部電極と、圧電薄膜の下面に形成された下部電極とを含む。
【0067】
第2駆動梁35bの上面には、曲線部を含まない矩形単位である垂直梁ごとに第2駆動源36bが形成されている。第2駆動源36bは、第2駆動梁35bの上面の圧電薄膜の上に形成された上部電極と、圧電薄膜の下面に形成された下部電極とを含む。第2駆動源36bは、第2駆動梁35bの上面の圧電薄膜の上に形成された上部電極と、圧電薄膜の下面に形成された下部電極とを含む。
【0068】
第2駆動梁35a及び35bは、垂直梁ごとに隣接している第2駆動源36a及び36b同士で、駆動電圧を印加することにより、全ての垂直梁を上方向に反らせ、各垂直梁の反りの蓄積を第2可動部33に伝達する。第2駆動梁35a及び35bは、この動作により、第2揺動軸B周りに第2反射面32を揺動させる。例えば第2駆動梁35a及び35bによる揺動駆動には、非共振振動を用いることができる。なお、本実施形態では、第1光偏向部21は共振駆動、第2光偏向部31は非共振駆動する構成を例示するが、両方とも共振駆動、或いは両方とも非共振駆動を行ってもよい。
【0069】
例えば、第2駆動源36aを、第2可動部33側から第2可動部33に対して遠ざかる方向に並ぶ第2駆動源36a1及び36a2を含むものとする。また第2駆動源36bを、第2可動部33側から第2可動部33に対して遠ざかる方向に並ぶ第2駆動源36b1及び36b2を含むものとする。
【0070】
この場合には、第2駆動源36a1及び36b2に同一鋸歯状波形、第2駆動源36a2及び36b1に左右反転鋸歯状波形を印加して駆動させることで、第2可動部33を第2揺動軸B周りに揺動できる。なお、
図5に示す第2光偏向部31は点対称構造であるが、第2光偏向部31が線対称構造である場合には、第2駆動源36a1、36b1、36a2及び36b2のそれぞれに左右反転鋸歯状波形を印加して駆動させる。
【0071】
第2反射面32は、点対称な位置に配置された第1接続部34a及び34bを介して第2駆動梁35a及び35bと接続されているので、垂直駆動信号は
図4(b)のような関係で印加される。また、各垂直梁は上下逆方向に反るわけではなく、上方向にしか反らない。圧電薄膜に印加される駆動信号は
図4(b)と同様である。
【0072】
垂直駆動信号AVp及びAVnは、共に同一の周期及び振幅を有する鋸歯状波形で、垂直駆動信号AVp及びAVnとは、中間電位に対して電位が反転した関係にある。第2反射面32は垂直駆動信号AVp及びAVnとの電位差に応じて駆動され、その振れ角は、垂直駆動信号AVp及びAVnの振幅に対応する。
【0073】
第2駆動源36a及び36bそれぞれの上部電極及び下部電極に駆動電圧を印加する駆動配線は、第2支持部38に設けられた端子群に含まれる所定の端子と接続されている。
【0074】
第2光偏向部31も、第1光偏向部21と同様に、例えば支持層、埋め込み(BOX)層及び活性層を有するSOI基板を用いて、半導体プロセスにより形成可能である。
【0075】
<光偏向装置20の配置例>
次に
図6を参照して、光偏向装置20の配置について説明する。
図6は、光偏向装置20の配置の一例を説明する図である。
図6は、説明の便宜のために、光偏向装置20において、ハウジング5等を取り除いた状態での第1光偏向ユニット2及び第2光偏向ユニット3を表示している。
【0076】
図6(a)は、第1光偏向ユニット2と第2光偏向ユニット3を第1揺動軸Aの右方向から視た図である。
図6(a)の視る方向は
図2(c)と同じである。
図6(b)は、第1光偏向ユニット2と第2光偏向ユニット3を第2揺動軸Bの左方向から視た図である。
図6(b)の視る方向は、
図2(b)と同じである。
【0077】
図6に示すように、第1光偏向ユニット2は、第1光偏向部21と、第1パッケージ2aとを含む。また第2光偏向ユニット3は、第2光偏向部31と、第2パッケージ3aとを含む。
【0078】
第2光偏向ユニット3は、第2光偏向部31の第2揺動軸BがX軸に沿うように配置されている。第1光偏向ユニット2は、第1光偏向部21の第1揺動軸Aが第2揺動軸Bに略直交するように配置されている。
【0079】
また、第1光偏向部21は、第1反射面22を第1揺動軸A周りに揺動させることで第1反射面22に入射するレーザ光を偏向させ、第2反射面32上で、第2揺動軸Bに沿って走査させることができるように配置されている。
【0080】
図6(a)に示すように、揺動されていないときの第1反射面22に対する第2揺動軸Bの傾きは角度θ
1である。この角度θ
1は好ましくは30度である。但し、製造誤差等を考慮して90度の1/10である9.0度、すなわち±4.5度の変化幅を許容するものとする。従って角度θ
1は、好ましくは25.5度以上で34.5度以下である。
【0081】
図6(a)に破線で示した走査角度範囲η
1は、第1光偏向部21により走査されるレーザ光強度中心の走査角度範囲を示している。走査角度範囲η
1の中央を通る走査中央レーザ光63は、第2揺動軸Bに略直交する方向から第2反射面32に入射するようになっている。つまり、走査中央レーザ光63と第2揺動軸Bとのなす角度θ
3は略90度である。
【0082】
また、
図6(b)に示すように、揺動されていないときの第2反射面32に対する第1揺動軸Aの傾きは角度θ
2である。この角度θ
2は好ましくは35度である。但し、製造誤差等を考慮して±4.5度の変化幅を許容し、角度θ
2は、好ましくは30.5度以上で39.5度以下である。
【0083】
図6(b)に破線で示した走査角度範囲η
2は、第2光偏向部31により走査されるレーザ光強度中心の走査角度範囲を示している。
【0084】
<光偏向装置20へのレーザ光の入射例>
次に
図7を参照して、光偏向装置20へのレーザ光の入射について説明する。
図7は、光偏向装置20へのレーザ光の入射の一例を説明する斜視図である。
【0085】
図7は、光偏向装置20におけるハウジング5等を取り除いた状態で、第1光偏向ユニット2及び第2光偏向ユニット3と、第1光偏向ユニット2及び第2光偏向ユニット3のそれぞれに入射し、偏向されるレーザ光を表示している。
【0086】
また第1光偏向ユニット2及び第2光偏向ユニット3のそれぞれに入射し、偏向されるレーザ光は、Red、Green、Blue及びIRのうちの何れか1つのレーザ光のみを表示している。何れの色のレーザ光においても、第1光偏向ユニット2及び第2光偏向ユニット3の作用は同じである。
【0087】
図7に示すように、入射レーザ光L1は、第1光偏向ユニット2の第1光偏向部21における第1反射面22に入射するレーザ光である。破線の矢印で示した入射中心軸L10は、入射レーザ光L1の中心軸である。入射レーザ光L1は、入射中心軸L10の矢印が示す方向に伝搬して第1反射面22に入射する。その後、入射レーザ光L1は、第1反射面22により、第2光偏向ユニット3の第2光偏向部31における第2反射面32に向けて反射される。
【0088】
反射レーザ光L2は、第1反射面22で反射され、第2反射面32に入射するレーザ光である。破線の矢印で示した反射中心軸L20は、反射レーザ光L2の中心軸である。第1反射面22及び第2反射面32が揺動していない場合には、反射レーザ光L2は、反射中心軸L20の矢印が示す方向に伝搬して第2反射面32に入射する。その後、反射レーザ光L2は、第2反射面32により反射される。
【0089】
出射レーザ光L3は、第2反射面32で反射され、光偏向装置20の内部から外部に向けて出射するレーザ光である。破線の矢印で示した出射中心軸L30は、出射レーザ光L3の中心軸である。出射レーザ光L3は、第1反射面22及び第2反射面32が揺動していない場合、出射中心軸L30の矢印が示す方向に伝搬し、光偏向装置20から出射する。
【0090】
第1光偏向部21は、第1揺動軸A周りに第1反射面22を揺動させることで、入射レーザ光L1を偏向させる。第1反射面22で反射され、偏向された反射レーザ光L2は、第2反射面32上で第2揺動軸Bに沿う方向に走査する。
【0091】
第2光偏向部31は、第2揺動軸B周りに第2反射面32を揺動させることで、反射レーザ光L2を偏向させる。第2反射面32で反射され、偏向された出射レーザ光L3は、光偏向装置20から出射し、被走査面200上(
図1参照)で、X方向及びY方向の各方向に沿って走査する。
【0092】
ここで、
図7に一点鎖線の平行四辺形で示した第1入射平面P1は、入射レーザ光L1の入射中心軸L10と、反射レーザ光L2の反射中心軸L20とを含む平面である。本実施形態では、第1揺動軸Aが第1入射平面P1に略直交するように構成されている。換言すると、第1揺動軸Aと第1入射平面P1とのなす角度φ
1が略90度になるように構成されている。なお、略直交は交差の一例である。
【0093】
また、
図7に二点鎖線の平行四辺形で示した第2入射平面P2は、反射レーザ光L2の反射中心軸L20と、出射レーザ光L3の出射中心軸L30とを含む平面である。本実施形態では、第2揺動軸Bが第2入射平面P2に略直交するように構成されている。換言すると、第2揺動軸Bと第2入射平面P2とのなす角度φ
2が略90度になるように構成されている。
【0094】
なお、反射レーザ光L2が第2反射面32に入射する方向は、第1光偏向部21による走査で変化するため、これに応じて第2入射平面P2の向きも変化する。従って、第2揺動軸Bと第2入射平面P2が直交する状態からずれる場合がある。
【0095】
これに対し、本実施形態では、第1光偏向部21による走査角度範囲η
1の中央を通る走査中央レーザ光63は、第2揺動軸Bに略直交する方向から第2反射面32に入射するようになっている(
図6参照)。これにより、反射レーザ光L2が第1光偏向部21により走査された場合にも、走査される反射レーザ光L2のそれぞれで形成される第2入射平面P2と第2揺動軸Bが直交する状態により近づくようになっている。
【0096】
<光偏向装置20の作用>
次に光偏向装置20の作用について説明する。まず、作用の説明に先立ち、第1比較例に係る光偏向装置20aと、第2比較例に係る光偏向装置20bのそれぞれの構成及び配置について説明する。
【0097】
(第1比較例に係る光偏向装置20aの構成及び配置)
図8は、第1比較例に係る光偏向装置20aが有する光偏向部31aの構成を説明する図である。光偏向装置20aは、1つの光偏向部31aを用いて2つの方向にレーザ光を走査させる。
【0098】
図8において、光偏向部31aは、第1揺動軸Aa周り及び第2揺動軸Ba周りの両方に反射面32aを揺動させることで、反射面32aで反射されたレーザ光を、第1揺動軸Aa周り及び第1揺動軸Aa周りの2つの方向に偏向させ、走査させることができる。光偏向部31aは、例えば圧電素子により反射面32aを駆動させるMEMSミラー等である。
【0099】
光偏向部31aの構成は、
図5に示した第2光偏向部31における第2可動部33に代えて
図3に示した第1光偏向部21を設け、第2駆動梁35a及び35bを第1支持部25に接続した構成と等価である。そのため、ここでは光偏向部31aの構成についての重複する説明を省略する。
【0100】
次に
図9は、光偏向装置20aへのレーザ光の入射を説明する図である。
図9(a)は第1揺動軸Aa方向から視た図、
図9(b)は第2揺動軸Ba方向から視た図である。
【0101】
図9に示すように、光偏向部31aはパッケージ2aaに保持されている。入射レーザ光L1aは、光偏向部31aにおける反射面32aに入射するレーザ光である。破線の矢印で示した入射中心軸L10aは、入射レーザ光L1aの中心軸である。入射レーザ光L1aは入射中心軸L10aの矢印が示す方向に伝搬して反射面32aに入射する。その後、入射レーザ光L1aは、反射面32aにより反射される。
【0102】
反射レーザ光L2は、反射面32aで反射され、光偏向装置20aの内部から外部に向けて出射するレーザ光である。破線の矢印で示した反射中心軸L20aは、反射レーザ光L2aの中心軸である。反射レーザ光L2aは反射中心軸L20aの矢印が示す方向に伝搬し、光偏向装置20aから出射する。
【0103】
光偏向部31aは、第1揺動軸Aa周りに反射面32aを揺動させることで、入射レーザ光L1aを偏向させる。また光偏向部31aは、第2揺動軸Ba周りに反射面32aを揺動させることで、入射レーザ光L1aを偏向させる。反射面32aで反射され、偏向された反射レーザ光L2aは、光偏向装置20aから出射し、例えば被走査面200上(
図1参照)で、X方向及びY方向の各方向に沿って走査する。
【0104】
ここで、
図9に一点鎖線の平行四辺形で示した入射平面P1aは、入射レーザ光L1aの入射中心軸L10aと、反射レーザ光L2aの反射中心軸L20aとを含む平面である。第1比較例では、入射平面P1aに第1揺動軸Aaが略平行になるように構成されている。
【0105】
このように、光偏向装置20aは、1つの光偏向部31aによりレーザ光を2つの方向に走査させる点が実施形態に係る光偏向装置20とは異なっている。また光偏向装置20aは、入射平面P1aに第1揺動軸Aaが略平行になるように構成されている点が光偏向装置20とは異なっている。
【0106】
(第2比較例に係る光偏向装置20aの構成及び配置)
次に
図10は、第2比較例に係る光偏向装置20bの構成を説明する斜視図である。光偏向装置20bは、第1光偏向ユニット2bと第2光偏向ユニット3bを用いて2つの方向にレーザ光を走査させる。
【0107】
図10に示すように、第1光偏向ユニット2bは、第1光偏向部21bと、第1光偏向部21bを保持する第1パッケージ2abとを有する。
【0108】
第1光偏向部21bは、第1揺動軸Ab周りに第1反射面22bを揺動させることで、第1反射面22bで反射されたレーザ光を第1揺動軸Ab周りに偏向させる。第1光偏向部21bは、例えば圧電素子により第1反射面22bを駆動させるMEMSミラー等である。
【0109】
また
図10に示すように、第2光偏向ユニット3bは、第2光偏向部31bと、第2光偏向部31bを保持する第2パッケージ3abとを有する。
【0110】
第2光偏向部31bは、第2揺動軸Bb周りに第2反射面32bを揺動させることで、第2反射面32bで反射されたレーザ光を第2揺動軸Bb周りに偏向させる。第2光偏向部31bは、例えば圧電素子により第2反射面32bを駆動させるMEMSミラー等である。
【0111】
第1光偏向ユニット2bの構成は、第1光偏向ユニット2と等価であり、第2光偏向ユニット3bの構成は、第2光偏向ユニット3と等価である。そのため、ここでは第1光偏向ユニット2b及び第2光偏向ユニット3bの構成についての重複する説明を省略する。
【0112】
次に
図11は、光偏向装置20bへのレーザ光の入射を説明する図である。
【0113】
図11に示すように、入射レーザ光L1bは、第1光偏向ユニット2bの第1光偏向部21bにおける第1反射面22bに入射するレーザ光である。破線の矢印で示した入射中心軸L10bは、入射レーザ光L1bの中心軸である。入射レーザ光L1bは入射中心軸L10bの矢印が示す方向に伝搬して第1反射面22bに入射する。その後、入射レーザ光L1bは、第1反射面22bにより、第2光偏向ユニット3bの第2光偏向部31bにおける第2反射面32bに向けて反射される。
【0114】
反射レーザ光L2bは、第1反射面22bで反射され、第2反射面32bに入射するレーザ光である。破線の矢印で示した反射中心軸L20bは、反射レーザ光L2bの中心軸である。反射レーザ光L2bは反射中心軸L20bの矢印が示す方向に伝搬して第2反射面32bに入射する。その後、反射レーザ光L2bは、第2反射面32bにより反射される。
【0115】
出射レーザ光L3bは、第2反射面32bで反射され、光偏向装置20bの内部から外部に向けて出射するレーザ光である。破線の矢印で示した出射中心軸L30bは、出射レーザ光L3bの中心軸である。出射レーザ光L3bは出射中心軸L30bの矢印が示す方向に伝搬し、光偏向装置20bから出射する。
【0116】
第1光偏向部21bは、第1揺動軸Ab周りに第1反射面22bを揺動させることで、入射レーザ光L1bを偏向させる。第1反射面22bで反射され、偏向された反射レーザ光L2bは、第2反射面32b上で第2揺動軸Bbに沿う方向に走査する。
【0117】
第2光偏向部31bは、第2揺動軸Bb周りに第2反射面32bを揺動させることで、反射レーザ光L2bを偏向させる。第2反射面32bで反射され、偏向された出射レーザ光L3bは、光偏向装置20bから出射し、例えば被走査面200上(
図1参照)で、X方向及びY方向の各方向に沿って走査する。
【0118】
ここで、
図11に一点鎖線の長方形で示した第1入射平面P1bは、入射レーザ光L1bの入射中心軸L10bと、反射レーザ光L2bの反射中心軸L20bとを含む平面である。第2比較例では、第1入射平面P1bに第1揺動軸Abが略平行になるように構成されている。
【0119】
また、
図11に二点鎖線の長方形で示した第2入射平面P2bは、反射レーザ光L2bの反射中心軸L20bと、出射レーザ光L3bの出射中心軸L30bとを含む平面である。第2比較例では、第2入射平面P2bに第2揺動軸Bbが略直交するように構成されている。
【0120】
このように、光偏向装置20bは、第1光偏向ユニット2bと第2光偏向ユニット3bの配置が実施形態に係る光偏向装置20とは異なっている。また光偏向装置20bは、第1入射平面P1bに第1揺動軸Abが略平行になるように構成されている点が光偏向装置20とは異なっている。
【0121】
(ディストーションの一例)
次に、画像投射装置100が第1及び第2比較例、並びに本実施形態のそれぞれに係る光偏向装置を用いた場合ディストーションについて説明する。
【0122】
図12は、このようなディストーションの一例を説明する図である。
図12(a)は第1比較例に係る光偏向装置20aを用いた場合を示す図、
図12(b)は第2比較例に係る光偏向装置20bを用いた場合を示す図、
図12(c)は本実施形態に係る光偏向装置20を用いた場合を示す図である。
【0123】
図12(a)に示すように、光偏向装置20aを用いた場合の画像201aでは、X方向における中央に向かうほど、+Y方向側の端部が+Y方向に伸びており、また-Y方向側の端部が+Y方向に縮んでいる。樽型と糸巻き型が混在したディストーションが大きく発生している。
【0124】
光偏向装置20aでは、入射平面P1aに第1揺動軸Aaが略平行になるように構成されている(
図9参照)。そのため、発光部10に対して近い側と、発光部10に対して遠い側との間で、光偏向部31aによる走査が非対称になりやすい。これにより、ディストーションが大きく発生すると考えられる。
【0125】
また、
図12(b)に示すように、光偏向装置20bを用いた場合の画像201bでも、X方向における中央に向かうほど、+Y方向側の端部が+Y方向に伸びており、また-Y方向側の端部が+Y方向に縮んでいる。樽型と糸巻き型が混在したディストーションが大きく発生している。
【0126】
光偏向装置20bでは、第1入射平面P1bに第1揺動軸Abが略平行になるように構成されている(
図11参照)。そのため、発光部10に対して近い側と、発光部10に対して遠い側との間で、第1光偏向部21bによる走査が非対称になりやすい。これにより、ディストーションが大きく発生すると考えられる。
【0127】
これに対し、本実施形態に係る光偏向装置20では、第1入射平面P1に第1揺動軸Aが略直交するように構成されている(
図7参照)。そのため、発光部10に対して近い側と、発光部10に対して遠い側との間で、第1光偏向部21による走査に非対称性が生じにくくなる。
【0128】
その結果、
図12(c)に示すように、光偏向装置20を用いた場合の画像201では、ディストーションが抑制され、歪みがない長方形状の画像が得られる。
【0129】
<光偏向装置20の効果>
次に、光偏向装置20の効果について説明する。
【0130】
従来、発光部が発する光を反射面で偏向させる光偏向装置を用いて被走査面上に2次元の画像を投射する画像投射装置が知られている。
【0131】
しかしながら、直交する2つの方向に反射面を揺動させて光を偏向させる光偏向装置を用いると、第1比較例に係る画像201a等のように、ディストーションが大きくなる場合がある。
【0132】
また、第1揺動軸周りに第1反射面を揺動させて光を偏向させる第1光偏向部と、第1揺動軸に交差する第2揺動軸周りに第2反射面を揺動させて光を偏向させる第2光偏向部とを有する構成を用いる構成も考えられる。
【0133】
しかしながら、この場合にも、第1反射面に入射する光の中心軸と第1反射面で反射された光の中心軸とを含む第1入射平面に第1揺動軸が略平行になるように構成すると、第2比較例に係る画像201b等のように、ディストーションが大きくなる場合がある。
【0134】
また、光偏向装置によるディストーションを抑制するために、元の画像データに対して変倍等の画像処理を施し、ディストーションを補正することも考えられる。しかしながら、画像処理に伴って画像の解像度が低下したり、投射される画像の画角が狭くなったり、投射された画像にモアレ(干渉縞)が発生したりする場合がある。
【0135】
一方、投射される画像のTVディストーションや台形歪みを抑えるために、光を第1方向に偏向させる第1偏向器と、第1偏向器と被走査面間に配設される走査光学系とを有する構成が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0136】
しかしながら、特許文献1の構成では、走査光学系に対して第1偏向器等の光偏向装置を傾けて配置するため、画像投射装置の構成や調整が複雑になる場合がある。
【0137】
これに対し、本実施形態に係る光偏向装置20は、第1揺動軸A周りに第1反射面22を揺動させることで、第1反射面22に入射する入射レーザ光L1を偏向させる第1光偏向部21を有する。また第1揺動軸Aに交差する第2揺動軸B周りに第2反射面32を揺動させることで、第1反射面22で反射された反射レーザ光L2を偏向させる第2光偏向部31を有する。
【0138】
また、第1揺動軸Aは、第1反射面22に入射する入射レーザ光L1の入射中心軸L10と、第1反射面22で反射された反射レーザ光L2の反射中心軸L20とを含む第1入射平面P1に略直交する。また第2揺動軸Bは、第2反射面32に入射する反射レーザ光L2の反射中心軸L20と、第2反射面32で反射された出射レーザ光L3の出射中心軸L30とを含む第2入射平面P2に略直交する。
【0139】
この構成により、発光部10に対して近い側と、発光部10に対して遠い側との間で、第1光偏向部21による走査に非対称性が生じにくくなる。また、第1反射面22に対して近い側と、第1反射面22に対して遠い側との間で、第2光偏向部31による走査に非対称性が生じにくくなる。
【0140】
その結果、投射される画像201のディストーションを抑制できる。第1光偏向部21と第2光偏向部31の配置を適正化するだけでディストーションの抑制作用が得らえるため、投射される画像201のディストーションを、簡単な構成で抑制可能な光偏向装置を提供できる。
【0141】
なお、本実施形態では、第1揺動軸Aが第1入射平面P1に略直交し、第2揺動軸Bが第2入射平面P2に略直交する構成を例示したが、これに限定されるものではない。第1揺動軸Aが第1入射平面P1に交差し、第2揺動軸Bが第2入射平面P2に交差する構成であればよい。但し、直交に近づくほどディストーションの抑制効果がより大きくなるため、直交により近い状態に構成することが好ましい。
【0142】
また本実施形態では、元の画像データに対し、ディストーションを補正するための画像処理を行わない場合には、画像処理のための演算器の省略により構成を簡素化できるうえ、画像処理に伴う画像の解像度低下及び画角狭小化を防ぎ、モアレの発生を防ぐこともできる。
【0143】
また、本実施形態に係る画像投射装置100では、走査光学系を用いず、光偏向装置20で走査させたレーザ光により画像を投射する。そのため、走査光学系を用いない簡単で構成でディストーションを抑制できる。
【0144】
なお、走査光学系を用いる画像投射装置に光偏向装置20を適用することもできる。この場合にも、走査光学系に対して光偏向装置20を傾ける等の複雑な配置及び調整が不要であるため、画像投射装置の構成をより簡素化できる。
【0145】
また本実施形態では、第1光偏向部21による走査角度範囲η1の中央を通る走査中央レーザ光63は、第2揺動軸Bに略直交する方向から第2反射面32に入射する。
【0146】
この構成により、反射レーザ光L2が第1光偏向部21により走査された場合にも、走査される反射レーザ光L2のそれぞれで形成される第2入射平面P2と第2揺動軸Bが、何れも直交する状態により近くなる。これにより、画像201のディストーションを簡単な構成で抑制できる。
【0147】
また本実施形態では、第1光偏向部21は、第1反射面22に入射する入射レーザ光L1を偏向させて、第2反射面32上で、第2揺動軸Bに沿う方向に走査させる。この構成により、第2揺動軸Bを第2入射平面P2に対して好適に交差させることができる。
【0148】
また本実施形態では、揺動されていないときの第1反射面22に対する第2揺動軸Bの傾きは、25.5度以上で34.5度以下である。また揺動されていないときの第2反射面32に対する第1揺動軸Aの傾きは、30.5度以上で39.5度以下である。
【0149】
この構成により、第1揺動軸Aを第1入射平面P1に対して好適に交差させることができ、また第2揺動軸Bを第2入射平面P2に対して好適に交差させることができる。
【0150】
以上、実施形態を説明してきたが、本発明は、具体的に開示された上記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。
【0151】
ここで、ヘッドアップディスプレイ又はヘッドマウントディスプレイ等の用途では、ホログラム光学系を用いる場合がある。ホログラム光学系は、DOE(Diffractive Optical Element)に入射した光を回折することで、ユーザに実像又は虚像を視認させるものである。
【0152】
走査される光をDOEに入射させる場合に、ディストーションがあると、走査される光のDOEへの入射角度が所望の角度からずれるため、視認させる実像又は虚像の品質が低下する場合がある。
【0153】
本実施形態に係る光偏向装置及び画像投射装置は、ディストーションを好適に抑制できるため、走査される光をDOEに所望の角度で入射させることができ、ホログラム光学系を用いて視認させる実像又は虚像の品質の低下を抑制できる。そのため、ホログラム光学系を用いる用途への適用が特に好適である。
【0154】
なお、実施形態の説明で用いた序数、数量等の数字は、全て本発明の技術を具体的に説明するために例示するものであり、本発明は例示された数字に制限されない。また、構成要素間の接続関係は、本発明の技術を具体的に説明するために例示するものであり、本発明の機能を実現する接続関係をこれに限定するものではない。
【符号の説明】
【0155】
1…入射窓、2…第1光偏向ユニット、2a…第1パッケージ、21…第1光偏向部、22…第1反射面、23…第1可動部、24a、24b…捻れ梁、25…第1支持部、26a、26b…第1駆動梁、27a、27b…第1駆動源、3…第2光偏向ユニット、3a…第2パッケージ、31…第2光偏向部、32…第2反射面、33…第2可動部、34a、34b…第1接続部、35a、35b…第2駆動梁、36a、36b…第2駆動源、37a、37b…第2接続部、38…第2支持部、4…出射窓、5…ハウジング、10…発光部、20…光偏向装置、30…制御部、63…走査中央レーザ光、100…画像投射装置、200…被走査面、201…画像、A…第1揺動軸、B…第2揺動軸、θ1、θ2、θ3…角度、φ1…第1揺動軸と第1入射平面とのなす角度、φ2…第2揺動軸と第2入射平面とのなす角度、η1、η2…走査角度範囲、P1…第1入射平面、P2…第2入射平面、L1…入射レーザ光、L10…入射中心軸、L2…反射レーザ光、L20…反射中心軸、L3…出射レーザ光、L30…出射中心軸