(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-22
(45)【発行日】2024-10-30
(54)【発明の名称】車両用電源システムおよび車両用電池ユニットの制御方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/633 20140101AFI20241023BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20241023BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20241023BHJP
H01M 10/651 20140101ALI20241023BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20241023BHJP
H01M 10/6568 20140101ALI20241023BHJP
H01M 10/658 20140101ALI20241023BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20241023BHJP
B60L 58/12 20190101ALN20241023BHJP
B60L 58/24 20190101ALN20241023BHJP
B60L 58/19 20190101ALN20241023BHJP
B60L 58/22 20190101ALN20241023BHJP
【FI】
H01M10/633
H01M10/48 301
H01M10/48 P
H01M10/613
H01M10/651
H01M10/625
H01M10/6568
H01M10/658
H02J7/00 Y
H02J7/00 K
B60L58/12
B60L58/24
B60L58/19
B60L58/22
(21)【出願番号】P 2021033240
(22)【出願日】2021-03-03
【審査請求日】2023-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 嵩
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 敏貴
(72)【発明者】
【氏名】大路 潔
(72)【発明者】
【氏名】富岡 沙絵子
(72)【発明者】
【氏名】梶本 貴紀
(72)【発明者】
【氏名】吉原 久未
【審査官】右田 勝則
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-016230(JP,A)
【文献】特開2012-104458(JP,A)
【文献】特開2021-034217(JP,A)
【文献】特開平06-098477(JP,A)
【文献】特開2010-172062(JP,A)
【文献】国際公開第2014/156991(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/633
H01M 10/48
H01M 10/613
H01M 10/651
H01M 10/625
H01M 10/6568
H01M 10/658
H01M 50/20
H02J 7/00
B60L 58/12
B60L 58/24
B60L 58/19
B60L 58/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用の複数
の電池モジュールと、
前記複数の電池モジュールの温度をそれぞれ調節する複数
の温度調節機構と、
前記車両に供給される第1電力を出力するための第1出力端子と、
接地端子と、
前記複数の電池モジュールの接続の状態を、前記複数の電池モジュールのうち前記第1電力を出力する第1電源となる電池モジュールが前記第1出力端子と前記接地端子との間に接続される状態に切り換え可能な電池回路と、
前記複数の電池モジュールの温度をそれぞれ検出する複数
の温度センサと、
前記複数の電池モジュールのSOCをそれぞれ検出する複数
のSOCセンサと、
前記複数の電池モジュールの各々について、該電池モジュールに対応する前記SOCセンサにより検出された該電池モジュールのSOCに応じて前記該電池モジュールの目標温度を決定し、該電池モジュールに対応する前記温度センサにより検出された前記該電池モジュールの温度が前記目標温度となるように該電池モジュールに対応する前記温度調節機構を制御する制御部とを備える
ことを特徴とする車両用電源システム。
【請求項2】
請求項1の車両用電源システムにおいて、
前記制御部は、
前記複数の電池モジュールの各々について、該電池モジュールに対応する前記SOCセンサにより検出された
該電池モジュールのSOCが小さくなるほど
該電池モジュールの目標温度が高くなるように、
該電池モジュールのSOCに応じて
該電池モジュールの目標温度を決定する
ことを特徴とする車両用電源システム。
【請求項3】
請求項
1の車両用電源システムにおいて、
前記車両に供給される電力であり前記第1電力よりも高い第2電力を供給するための第2出力端子を備え、
前記電池回路は、前記複数の電池モジュールの接続の状態を、前記複数の電池モジュールのうち前記第1電源となる電池モジュールが前記第1出力端子と前記接地端子との間に接続され、且つ、前記複数の電池モジュールのうち少なくとも2つが前記第2出力端子と前記接地端子との間に直列に接続される状態に切り換え可能である
ことを特徴とする車両用電源システム。
【請求項4】
請求項
1~3のいずれか1つの車両用電源システムにおいて、
前記電池回路は、前記複数の電池モジュールの接続の状態を、前記複数の電池モジュールが並列に接続される状態に切り換え可能である
ことを特徴とする車両用電源システム。
【請求項5】
請求項
4の車両用電源システムにおいて、
前記制御部は、前記複数の電池モジュールが並列に接続されて前記複数の電池モジュールのSOCが平準化される場合に、前記複数の電池モジュールの平準化後のSOCを予測し、その予測されたSOCに応じて前記複数の電池モジュールの目標温度を決定し、前記複数の電池モジュールの温度が前記目標温度となるように前記複数の温度調節機構を制御する
ことを特徴とする車両用電源システム。
【請求項6】
請求項
4または
5の車両用電源システムにおいて、
前記電池回路は、前記複数の電池モジュールのうち前記第1電源となる電池モジュールを切り換え可能であり、
前記制御部は、前記複数の電池モジュールが並列に接続される状態から、前記複数の電池モジュールのうち前記第1電源となる電池モジュールが前記第1出力端子と前記接地端子との間に接続される状態に切り換える場合に、前記複数の電池モジュールのうち前記複数の電池モジュールが並列に接続される前に前記第1電源であった電池モジュールとは別の電池モジュールが前記第1電源となるように、前記電池回路を制御する
ことを特徴とする車両用電源システム。
【請求項7】
請求項
1~
6のいずれか1つ車両用電源システムにおいて、
前記制御部は、前記複数の電池モジュールのうちSOCが低下しやすい電池モジュールの前記第1電源となる頻度が少なくなるように、前記電池回路を制御する
ことを特徴とする車両用電源システム。
【請求項8】
請求項
1~
7のいずれか1つの車両用電源システムにおいて、
前記複数の電池モジュールと前記複数の温度調節機構との間に設けられる複数の伝熱調節機構を備え、
前記複数の伝熱調節機構の各々は、該伝熱調節機構に対応する前記電池モジュールと該伝熱調節機構に対応する前記温度調節機構との間の熱抵抗を調節可能であり、
前記制御部は、前記温度センサにより検出された前記電池モジュールの温度が前記目標温度となるように、前記温度調節機構および前記伝熱調節機構の少なくとも一方を制御する
ことを特徴とする車両用電源システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示する技術は、車両用電源システムおよび車両用電池ユニットの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電池残容量が第1残容量閾値以上で第2残容量以下になるように電池残容量を制御することと、電池温度が第1温度閾値以上で第2温度閾値以下になるように電池温度を制御することが開示されている。特許文献1では、電池温度が第1温度閾値以上で第2温度閾値以下、且つ、電池残容量が第1残容量閾値以上で第2残容量閾値以下であるときに、電池の劣化を判定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1には、電池モジュールの温度劣化の抑制とハイレート劣化の抑制とを両立するための制御については、何ら開示も示唆もない。
【0005】
ここに開示する技術は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、電池モジュールの温度劣化の抑制とハイレート劣化の抑制とを両立することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明者は、鋭意研究の結果、電池モジュールの温度劣化およびハイレート劣化が電池モジュールの温度およびSOCに依存することを見出した。そして、この知見に基づいて、本願発明者は、電池モジュールのSOCに応じて電池モジュールの温度を管理することで、電池モジュールの温度劣化の抑制とハイレート劣化の抑制とを両立することができることを見出した。
【0007】
ここに開示する技術は、車両用電源システムに関し、この車両用電源システムは、車両用の電池モジュールと、前記電池モジュールの温度を調節する温度調節機構と、前記電池モジュールの温度を検出する温度センサと、前記電池モジュールのSOCを検出するSOCセンサと、前記SOCセンサにより検出された前記電池モジュールのSOCに応じて前記電池モジュールの目標温度を決定し、前記温度センサにより検出された前記電池モジュールの温度が前記目標温度となるように前記温度調節機構を制御する制御部とを備える。
【0008】
前記の構成では、電池モジュールのSOCに応じて電池モジュールの温度を管理することができる。これにより、電池モジュールの温度劣化の抑制とハイレート劣化の抑制とを両立することができる。
【0009】
前記車両用電源システムにおいて、前記制御部は、前記SOCセンサにより検出された前記電池モジュールのSOCが小さくなるほど前記電池モジュールの目標温度が高くなるように、前記電池モジュールのSOCに応じて前記電池モジュールの目標温度を決定してもよい。
【0010】
なお、本願発明者により得られた知見によれば、電池モジュールのSOCが比較的に大きい領域では、電池モジュールのハイレート劣化よりも温度劣化のほうが起こりやすく、電池モジュールのSOCが比較的に小さい領域では、電池モジュールの温度劣化よりもハイレート劣化のほうが起こりやすい。
【0011】
したがって、電池モジュールのSOCが小さくなるほど、電池モジュールの目標温度が高くなるように、電池モジュールのSOCに応じて電池モジュールの目標温度を決定することにより、電池モジュールの温度劣化の抑制とハイレート劣化の抑制とを適切に両立することができる。
【0012】
前記車両用電源システムは、複数の前記電池モジュールと、複数の前記温度調節機構と、前記車両に供給される第1電力を出力するための第1出力端子と、接地端子と、前記複数の電池モジュールの接続の状態を、前記複数の電池モジュールのうち前記第1電力を出力する第1電源となる電池モジュールが前記第1出力端子と前記接地端子との間に接続される状態に切り換え可能な電池回路と、複数の前記温度センサと、複数の前記SOCセンサとを備えてもよい。
【0013】
前記の構成では、複数の電池モジュールの各々において、電池モジュールの温度劣化の抑制とハイレート劣化の抑制とを両立することができる。また、第1電源となる電池モジュールにより第1電力を車両に供給することができる。
【0014】
前記車両用電源システムは、前記車両に供給される電力であり前記第1電力よりも高い第2電力を供給するための第2出力端子を備えてもよい。前記電池回路は、前記複数の電池モジュールの接続の状態を、前記複数の電池モジュールのうち前記第1電源となる電池モジュールが前記第1出力端子と前記接地端子との間に接続され、且つ、前記複数の電池モジュールのうち少なくとも2つが前記第2出力端子と前記接地端子との間に直列に接続される状態に切り換え可能であってもよい。
【0015】
前記の構成では、第1電源となる電池モジュールにより第1電力を車両に供給するとともに、直列に接続された2つ以上の電池モジュールにより第2電力を車両に供給することができる。
【0016】
前記車両用電源システムにおいて、前記電池回路は、前記複数の電池モジュールの接続の状態を、前記複数の電池モジュールが並列に接続される状態に切り換え可能であってもよい。
【0017】
前記の構成では、複数の電池モジュールを並列に接続することにより、複数の電池モジュールのSOCを平準化することができる。これにより、複数の電池モジュールのSOCのばらつきを低減することができる。
【0018】
前記車両用電源システムにおいて、前記制御部は、前記複数の電池モジュールが並列に接続されて前記複数の電池モジュールのSOCが平準化される場合に、前記複数の電池モジュールの平準化後のSOCを予測し、その予測されたSOCに応じて前記複数の電池モジュールの目標温度を決定し、前記複数の電池モジュールの温度が前記目標温度となるように前記複数の温度調節機構を制御してもよい。
【0019】
前記の構成では、複数の電池モジュールのSOCが平準化される平準化期間において、複数の電池モジュールの温度を適切に制御することができる。これにより、平準化期間において、電池モジュールの温度劣化の抑制とハイレート劣化の抑制とを両立することができる。
【0020】
前記車両用電源システムにおいて、前記電池回路は、前記複数の電池モジュールのうち前記第1電源となる電池モジュールを切り換え可能であってもよい。前記制御部は、前記複数の電池モジュールが並列に接続される状態から、前記複数の電池モジュールのうち前記第1電源となる電池モジュールが前記第1出力端子と前記接地端子との間に接続される状態に切り換える場合に、前記複数の電池モジュールのうち前記複数の電池モジュールが並列に接続される前に前記第1電源であった電池モジュールとは別の電池モジュールが前記第1電源となるように、前記電池回路を制御してもよい。
【0021】
前記の構成では、複数の電池モジュールにおいて低電圧電源となる電池モジュールが固定されないようにすることができる。これにより、複数の電池モジュールの劣化(使用頻度に応じた劣化)のばらつきを低減することができる。
【0022】
前記車両用電源システムにおいて、前記制御部は、前記複数の電池モジュールのうちSOCが低下しやすい電池モジュールの前記第1電源となる頻度が少なくなるように、前記電池回路を制御してもよい。
【0023】
前記の構成では、複数の電池モジュールのSOCのばらつきが大きくなる頻度を少なくすることができる。
【0024】
前記車両用電源システムは、前記複数の電池モジュールと前記複数の温度調節機構との間に設けられる複数の伝熱調節機構を備えてもよい。前記複数の伝熱調節機構の各々は、該伝熱調節機構に対応する前記電池モジュールと該伝熱調節機構に対応する前記温度調節機構との間の熱抵抗を調節可能であってもよい。前記制御部は、前記温度センサにより検出された前記電池モジュールの温度が前記目標温度となるように、前記温度調節機構および前記伝熱調節機構の少なくとも一方を制御してもよい。
【0025】
前記の構成では、伝熱調節機構を制御することにより、電池モジュールと熱交換部との間の熱抵抗を調節することができる。これにより、電池モジュールと熱交換部との間における熱の移動のしやすさを調節することができ、その結果、電池モジュールの温度を調節することができる。
【0026】
ここに開示する技術は、車両用の電池モジュールと、前記電池モジュールの温度を調節する温度調節機構とを有する車両用電池ユニットの制御方法に関し、この車両用電池ユニットの制御方法は、前記電池モジュールの温度を検出する温度検出ステップと、前記電池モジュールのSOCを検出するSOC検出ステップと、前記SOC検出ステップにより検出されたSOCに応じて前記電池モジュールの目標温度を決定する目標決定ステップと、前記温度検出ステップにより検出された前記電池モジュールの温度が前記目標決定ステップにより決定された前記目標温度となるように前記温度調節機構を制御する制御ステップとを備える。
【0027】
前記の方法では、電池モジュールのSOCに応じて電池モジュールの温度を管理することができる。これにより、電池モジュールの温度劣化の抑制とハイレート劣化の抑制とを両立することができる。
【発明の効果】
【0028】
ここに開示する技術によれば、電池モジュールの温度劣化の抑制とハイレート劣化の抑制とを両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】実施形態1の車両用電源システムの構成を例示する概略図である。
【
図2】電池モジュールの温度およびSOCと温度劣化およびハイレート劣化との関係を例示するグラフである。
【
図3】実施形態1の電池ユニットの制御(温度制御)について説明するためのフローチャートである。
【
図4】実施形態2の車両用電源システムの構成を例示する概略図である。
【
図5】実施形態2の電池ユニットの構成を例示する概略図である。
【
図6】実施形態2の電池ユニットの伝熱許容状態を例示する概略図である。
【
図7】実施形態2の電池ユニットの電気的な構成を例示する回路図である。
【
図8】実施形態2の電池モジュールの基本接続状態を例示する回路図である。
【
図9】実施形態2の電池モジュールの並列接続状態を例示する回路図である。
【
図10】低電圧電源となる電池モジュールの切り換えを例示する回路図である。
【
図11】実施形態2の車両用電源システムの構成を例示するブロック図である。
【
図12】実施形態2の電池ユニットの制御(SOC制御)について説明するためのフローチャートである。
【
図13】実施形態2の電池ユニットの制御(頻度調節処理)について説明するためのフローチャートである。
【
図14】実施形態2の電池ユニットの制御(温度制御)について説明するためのフローチャートである。
【
図15】電池モジュールの温度およびSOCの変化とハイレート劣化との関係について説明するためのグラフである。
【
図16】電池モジュールの温度およびSOCの変化と温度劣化との関係について説明するためのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照して実施の形態を詳しく説明する。なお、図中同一または相当部分には同一の符号を付しその説明は繰り返さない。
【0031】
(実施形態1)
図1は、実施形態1の車両用電源システム1の構成を例示する。車両用電源システム1は、車両に設けられ、車両に搭載された電動機などのデバイスに電力を供給する。この車両用電源システム1は、車両用電池ユニット10と、温度センサ21と、SOCセンサ22と、制御装置30とを備える。この例では、車両用電源システム1は、これらの構成要素に加えて、ラジエータ2と、第1流路3と、第2流路4と、ポンプ5と、ファン6とを備える。なお、以下では、車両用電池ユニット10を単に「電池ユニット10」と記載する。
【0032】
車両用電源システム1では、ラジエータ2と後述する電池ユニット10の熱交換部12とが第1流路3と第2流路4により接続されることで、冷却水が循環する冷却水回路が構成される。冷却水は、熱交換媒体の一例であり、冷却水回路は、熱交換媒体が循環する熱交換媒体回路の一例である。
【0033】
ポンプ5は、冷却水回路において冷却水を循環させる。ファン6は、ラジエータ2を通過する空気の流量を調節する。ラジエータ2は、ラジエータ2を通過する冷却水と空気とを熱交換させる。ラジエータ2から流出した冷却水は、第1流路3を流れ、電池ユニット10の熱交換部12において熱交換(この例では吸熱)を行う。電池ユニット10の熱交換部12から流出した冷却水は、第2流路4を流れ、ラジエータ2において熱交換(この例では放熱)を行う。ラジエータ2は、熱交換器の一例である。
【0034】
なお、ポンプ5の回転数は、可変である。ポンプ5の回転数が増加することで、冷却水回路を循環する冷却水の流量が増加し、電池ユニット10の熱交換部12およびラジエータ2における熱交換が促進される。また、ポンプ5の回転数が減少することで、冷却水回路を循環する冷却水の流量が減少し、電池ユニット10の熱交換部12およびラジエータ2における熱交換が促進されなくなる。
【0035】
また、ファン6の回転数は、可変である。ファン6の回転数が増加することで、ラジエータ2を通過する空気の流量が増加し、ラジエータ2における熱交換が促進される。その結果、電池ユニット10の熱交換部12における熱交換も促進される。また、ファン6の回転数が減少することで、ラジエータ2を通過する空気の流量が減少し、ラジエータ2における熱交換が促進されなくなる。その結果、電池ユニット10の熱交換部12における熱交換も促進されなくなる。
【0036】
〔電池ユニット〕
図1に示すように、電池ユニット10は、車両用の電池モジュール11と、熱交換部12とを有する。これらの電池ユニット10の構成要素は筐体に収容される。なお、以下では、車両用の電池モジュール11を単に「電池モジュール11」と記載する。
【0037】
〈電池モジュール〉
電池モジュール11は、電力を蓄積する。例えば、電池モジュール11は、リチウムイオン電池である。
【0038】
〈熱交換部〉
熱交換部12は、電池モジュール11の温度を調節するために設けられる。熱交換部12は、熱交換媒体と熱交換を行う。この例では、熱交換部12には、冷却水回路を循環する冷却水が流れる。熱交換部12は、熱交換部12を流れる冷却水と熱交換(この例では放熱)を行う。例えば、熱交換部12は、熱伝導性が高い材料で構成される。熱伝導性が高い材料の例としては、銅、アルミニウムなどが挙げられる。なお、熱交換部12は、電池モジュール11の温度を調節する温度調節機構の一例である。
【0039】
〔温度センサ〕
温度センサ21は、電池モジュール11の温度を検出する。なお、温度センサ21は、電池モジュール11の温度を直接的に検出してもよいし、電池モジュール11の温度を間接的に検出してもよい。
【0040】
〔SOCセンサ〕
SOCセンサ22は、電池モジュール11のSOC(State of Charge)を検出する。なお、SOCセンサ22は、電池モジュール11のSOCを直接的に検出してもよいし、電池モジュール11のSOCを間接的に検出してもよい。
【0041】
〔制御装置〕
制御装置30は、車両用電源システム1の各部を制御する。
図1に示すように、この例では、制御装置30は、温度センサ21、SOCセンサ22、ポンプ5、ファン6などと信号線により接続される。制御装置30は、記憶部31と、制御部32とを有する。
【0042】
記憶部31は、各種の情報を記憶する。例えば、記憶部31には、車両用電源システム1の各部の制御のために利用される情報が記憶される。車両用電源システム1の各部の制御のために利用される情報の例としては、各種のセンサにより検出された値、各種の制御に利用される閾値などが挙げられる。
【0043】
制御部32は、車両用電源システム1の各部を制御する。例えば、制御部32は、プロセッサと、プロセッサを動作させるためのプログラムおよびデータを記憶するメモリとにより構成される。
【0044】
〔本願発明者により得られた知見〕
本願発明者は、鋭意研究の結果、電池モジュール11の温度劣化およびハイレート劣化が電池モジュール11の温度およびSOCに依存することを見出した。そして、この知見に基づいて、本願発明者は、電池モジュール11のSOCに応じて電池モジュール11の温度を管理することで、電池モジュール11の温度劣化の抑制とハイレート劣化の抑制とを両立することができることを見出した。
【0045】
次に、
図2を参照して、上記の知見について詳しく説明する。
図2は、電池モジュール11の温度およびSOCと温度劣化およびハイレート劣化との関係を例示する。なお、ハイレート劣化は、電池モジュール11に大電流が流れることで内部抵抗が一時的に上昇する劣化のことである。
【0046】
図2において、3つの実線の曲線は、電池モジュール11のSOCと温度劣化の起こりやすさとの関係を示す。最も下に位置する実線の曲線は、電池モジュール11の温度が「45℃」である場合の曲線である。下から2番目の実線の曲線は、電池モジュール11の温度が「48℃」である場合の曲線である。最も上に位置する実線の曲線は、電池モジュール11の温度が「45℃」である場合の曲線である。
【0047】
また、3つの一点鎖線の曲線は、電池モジュール11のSOCとハイレート劣化の起こりやすさとの関係を示す。最も上に位置する一点鎖線の曲線は、電池モジュール11の温度が「45℃」である場合の曲線である。上から2番目の一点鎖線の曲線は、電池モジュール11の温度が「48℃」である場合の曲線である。最も下に位置する一点鎖線の曲線は、電池モジュール11の温度が「50℃」である場合の曲線である。
【0048】
図2に示すように、電池モジュール11の温度が高くなるほど、電池モジュール11の温度劣化が起こりやすくなる。一方、電池モジュール11の温度が低くなるほど、電池モジュール11のハイレート劣化が起こりやすくなる。
【0049】
また、
図2に示すように、電池モジュールのSOCが大きくなるほど、電池モジュールの温度劣化が起こりやすくなる。一方、電池モジュール11のSOCが小さくなるほど、電池モジュール11のハイレート劣化が起こりやすくなる。
【0050】
また、
図2に示すように、電池モジュール11のSOCが比較的に大きい領域では、電池モジュール11のハイレート劣化よりも温度劣化のほうが起こりやすい。電池モジュール11のSOCが比較的に小さい領域では、電池モジュール11の温度劣化よりもハイレート劣化のほうが起こりやすい。
【0051】
したがって、電池モジュール11のSOCが小さくなるほど、電池モジュール11の目標温度が高くなるように、電池モジュール11のSOCに応じて電池モジュール11の目標温度を決定し、その目標温度となるように電池モジュール11の温度を制御することにより、電池モジュールの温度劣化の抑制とハイレート劣化の抑制とを適切に両立することができる。
【0052】
例えば、
図2の例では、電池モジュール11の目標温度は、電池モジュール11のSOCが40%を上回る場合に「45℃」に設定され、電池モジュール11のSOCが35%以上で40%以下の場合に「40℃」に設定され、電池モジュール11のSOCが35%を下回る場合に「50℃」に設定されてもよい。なお、これらの数値は、あくまで一例である。電池モジュール11のSOCに応じた電池モジュール11の目標温度は、実験、シミュレーションなどにより導出することが可能である。
【0053】
〔電池ユニットの制御(温度制御)〕
次に、
図3を参照して、温度制御について説明する。温度制御は、電池モジュール11の温度が目標温度となるように電池モジュール11の温度を管理するための処理である。制御部32は、以下の処理を繰り返し行う。
【0054】
〈ステップS11(SOC検出ステップ)〉
まず、制御部32は、SOCセンサ22により検出された電池モジュール11のSOCを取得する。
【0055】
〈ステップS12(目標決定ステップ)〉
次に、制御部32は、電池モジュール11のSOCに応じて電池モジュール11の目標温度Tb0を決定する。なお、目標温度Tb0は、幅のある値(すなわち目標範囲)であってもよい。
【0056】
〈ステップS13(温度検出ステップ)〉
次に、制御部32は、温度センサ21により検出された電池モジュール11の温度Tbを取得する。以下では、電池モジュール11の温度Tbを「電池温度Tb」と記載する。
【0057】
〈ステップS14〉
次に、制御部32は、電池温度Tbが目標温度Tb0(または目標範囲内の温度)になっているか否かを判定する。電池温度Tbが目標温度Tb0になっている場合には、処理が終了し、そうでない場合には、ステップS15処理が行われる。
【0058】
〈ステップS15〉
電池温度Tbが目標温度Tb0(または目標範囲内の温度)になっていない場合、制御部32は、電池温度Tbが目標温度Tb0(または目標範囲の上限値)よりも高いか否かを判定する。電池温度Tbが目標温度Tb0よりも高い場合には、ステップS16の処理が行われ、そうでない場合には、ステップS17の処理が行われる。
【0059】
〈ステップS16(制御ステップ)〉
電池温度Tbが目標温度Tb0(または目標範囲内の上限値)よりも高い場合、制御部32は、電池温度Tbが低下するように、熱交換部12を制御する。
【0060】
この例では、制御部32は、熱交換部12の冷却能力が増加するように、熱交換部12の冷却能力を制御する。具体的には、制御部32は、ポンプ5の回転数およびファン6の回転数の少なくとも一方を増加させる。これにより、熱交換部12の冷却能力が増加し、電池温度Tbが低下する。その結果、電池温度Tbが目標温度Tb0に近づく。
【0061】
〈ステップS17(制御ステップ)〉
一方、電池温度Tbが目標温度Tb0(または目標範囲内の下限値)よりも低い場合、制御部32は、電池温度Tbが上昇するように、熱交換部12を制御する。
【0062】
この例では、制御部32は、熱交換部12の冷却能力が減少するように、熱交換部12の冷却能力を調節する。具体的には、制御部32は、ポンプ5の回転数およびファン6の回転数の少なくとも一方を減少させる。これにより、熱交換部12の冷却能力が減少し、電池温度Tbが上昇する。その結果、電池温度Tbが目標温度Tb0に近づく。
【0063】
〔実施形態1の効果〕
以上のように、実施形態1では、制御部32は、SOCセンサ22により検出された電池モジュール11のSOCに応じて電池モジュール11の目標温度を決定し、温度センサ21により検出された電池モジュール11の温度が目標温度となるように熱交換部12を制御する。このような構成により、電池モジュール11のSOCに応じて電池モジュール11の温度を管理することができる。これにより、電池モジュール11の温度劣化の抑制とハイレート劣化の抑制とを両立することができる。
【0064】
特に、実施形態1では、制御部32は、SOCセンサ22により検出された電池モジュール11のSOCが小さくなるほど電池モジュール11の目標温度が高くなるように、電池モジュール11のSOCに応じて電池モジュールの目標温度を決定する。このような構成により、電池モジュール11の温度劣化の抑制とハイレート劣化の抑制とを適切に両立することができる。
【0065】
また、電池モジュール11のSOCが小さくなるほど、電池モジュール11の目標温度が高くなるように、電池モジュール11のSOCに応じて電池モジュール11の目標温度を決定することにより、電池モジュール11のハイレート劣化を抑制することができるので、電池モジュール11に大電流を流すことが可能となる。これにより、電池モジュール11をハイレートで充放電することができる。
【0066】
(実施形態2)
図4は、実施形態2の車両用電源システム1の構成を例示する。実施形態2の車両用電源システム1は、電池ユニット10の構成が実施形態1の車両用電源システム1と異なる。また、実施形態2の車両用電源システム1は、複数の温度センサ21と、複数のSOCセンサ22とを備える。実施形態2の車両用電源システム1のその他の構成は、実施形態1の車両用電源システム1の構成と同様である。
【0067】
〔電池ユニット〕
実施形態2では、電池ユニット10は、複数の電池モジュール11と、複数の熱交換部12と、複数の伝熱調節機構15と、第1出力端子41と、第2出力端子42と、接地端子43と、電池回路45とを有する。なお、
図4では、第1出力端子41と第2出力端子42と接地端子43と電池回路45の図示を省略している。
【0068】
〈電池モジュール〉
複数の電池モジュール11の各々は、電力を蓄積する。複数の電池モジュール11は、それぞれ同様の構成を有する。この例では、電池モジュール11は、扁平な直方体形状に形成される。そして、複数の電池モジュール11は、隣り合う2つの電池モジュール11の扁平面(面積が最大となる面)が互いに向き合うように、一列に並ぶ。例えば、電池モジュール11は、リチウムイオン電池である。
【0069】
〈熱交換部〉
複数の熱交換部12は、複数の電池モジュール11と一対一で対応する。複数の熱交換部12の各々は、その熱交換部12に対応する電池モジュール11の温度を調節するために設けられる。実施形態2の熱交換部12の構成は、実施形態1の熱交換部12の構成と同様である。
【0070】
この例では、複数の熱交換部12は、冷却水回路において、ラジエータ2に対して並列に接続される。熱交換部12には、冷却水回路を循環する冷却水が流れる。熱交換部12は、熱交換部12を流れる冷却水と熱交換(この例では放熱)を行う。
【0071】
〈伝熱調節機構〉
図5に示すように、複数の伝熱調節機構15は、複数の電池モジュール11と一対一で対応する。また、複数の伝熱調節機構15は、複数の熱交換部12と一対一で対応する。そして、複数の伝熱調節機構15は、その伝熱調節機構に対応する電池モジュールと熱交換部12との間の熱抵抗を調節可能である。
【0072】
この例では、複数の伝熱調節機構15は、それぞれ同様の構成を有する。伝熱調節機構15は、伝熱板101と、複数の断熱部材102と、駆動部110とを有する。
【0073】
伝熱板101は、波板形状に形成され、熱の移動の状態を変化させようとする2つの部材(この例では電池モジュール11および熱交換部12)の間に配置される。伝熱板101は、2つの部材に対して互いに近づく方向に移動させるための外力が印加されると、2つの部材に押されて波板形状(
図5に示す形状)から平板形状(
図6に示す形状)に変形する。また、伝熱板101は、上記の外力の印加が解除されると、復元力により平板形状から波板形状に戻る。例えば、伝熱板101は、熱伝導性が高い材料で構成される。
【0074】
複数の断熱部材102は、細長い板状に形成され、伝熱板101の波板形状の頂点部分のうち電池モジュール11と対向する頂点部分に沿うように取り付けられる。断熱部材102は、断熱性を有する材料で構成される。断熱性を有する材料の例としては、発泡ポリスチレン、木材などが挙げられる。なお、
図6では、断熱部材102の図示を省略している。
【0075】
駆動部110は、熱の移動の状態を変化させようとする2つの部材に対して上記の外力(2つの部材を互いに近づく方向に移動させるための外力)を印加する。駆動部110により外力が印加されることで、伝熱板101が2つの部材に押されて波板形状から平板形状に変形する。そして、駆動部110による外力の印加が解除されることで、伝熱板101が復元力により平板形状から波板形状に戻る。
【0076】
この例では、駆動部110は、筐体10aに固定される。駆動部110は、2つの部材の一方(この例では電池モジュール11)を2つの部材の他方(この例では熱交換部12)へ向かう方向に押し付けることで、2つの部材の間に配置された伝熱板101を波板形状から平板形状に変形させる。また、駆動部110は、2つの部材の一方に対する押し付けを解除することで、伝熱板101の復元力により伝熱板101を平板形状から波板形状に戻す。例えば、駆動部110は、電磁ソレノイドである。
【0077】
熱の移動の状態を変化させようとする2つの部材の間に配置された伝熱板101が波板形状である場合、2つの部材と波板形状の伝熱板101との間に隙間(空気層)が形成されるので、伝熱板101が平板形状である場合よりも、2つの部材の間の熱抵抗が大きくなる。
【0078】
また、この例では、伝熱板101の波板形状の頂点部分に沿うように断熱部材102が取り付けられている。そのため、伝熱板101が波板形状である場合に、伝熱板101の波板形状の頂点部分と部材(熱の移動の状態を変化させようとする部材)との間に断熱部材102が介在することになるので、熱の移動の状態を変化させようとする2つの部材の間の断熱性を向上させることができる。これにより、2つの部材の間の熱の移動を阻害することができる。
【0079】
また、熱の移動の状態を変化させようとする2つの部材の間に配置された伝熱板101が2つの部材に押されて平板形状となる場合、伝熱板101と部材(熱の移動の状態を変化させようとする部材)とが接触するので、伝熱板101が波板形状である場合よりも、2つの部材の間の熱抵抗が小さくなる。
【0080】
なお、この例では、伝熱板101に取り付けられる断熱部材102の形状(特に厚み)は、伝熱板101が2つの部材に押されて平板形状となる場合に、伝熱板101が部材(熱の移動の状態を変化させようとする部材)と接触することが可能となるように設計されている。
【0081】
したがって、熱の移動の状態を変化させようとする2つの部材に対して互いに近づく方向に移動させるための外力を印加して伝熱板101を波板形状から平板形状にすることにより、2つの部材の間の熱抵抗を減少させて、2つの部材の間における熱の移動の状態を「熱の伝達が阻害される伝熱阻害状態」から「熱の伝達が許容される伝熱許容状態」にすることができる。また、2つの部材に対して印加される外力を解除して伝熱板101を平板形状から波板形状にすることにより、2つの部材の間の熱抵抗を増加させて、2つの部材の間における熱の移動の状態を「伝熱許容状態」から「伝熱阻害状態」にすることができる。
【0082】
また、熱の移動の状態を変化させようとする2つの部材に印加される外力(互いに近づく方向に移動させるための外力)が次第に増加していくと、2つの部材の間に配置された伝熱板101が2つの部材に押されて波板形状から平板形状に次第に変形していく。これにより、伝熱板101と部材(熱の移動の状態を変化させようとする部材)との接触面積が次第に大きくなり、2つの部材の間の熱抵抗を次第に減少していく。
【0083】
逆に、熱の移動の状態を変化させようとする2つの部材に印加される外力(互いに近づく方向に移動させるための外力)が次第に減少していくと、2つの部材の間に配置された伝熱板101が平板形状から波板形状に次第に変形していく。これにより、伝熱板101と部材(熱の移動の状態を変化させようとする部材)との接触面積が次第に小さくなり、2つの部材の間の熱抵抗を次第に増加していく。
【0084】
したがって、熱の移動の状態を変化させようとする2つの部材に印加される外力を調節することにより、2つの部材の間における熱抵抗を変化させることができ、2つの部材の間における熱の移動のしやすさを調節することができる。これにより、追従性に富んだ温度制御を実現することができる。
【0085】
〈各種の端子〉
図7に示すように、第1出力端子41は、車両の低電圧系のデバイスに供給される低電圧電力を出力するための端子である。車両の低電圧系のデバイスの例としては、車両の補機が挙げられる。なお、低電圧電力は、車両に供給される第1電力の一例である。
【0086】
第2出力端子42は、車両の高電圧系のデバイスに供給される高電圧電力を出力するための端子である。車両の高電圧系のデバイスの例としては、車両の駆動源となる電動機が挙げられる。なお、高電圧電力は、車両に供給される電力であり第1電力よりも高い第2電力の一例である。
【0087】
接地端子43は、接地(アース)に接続するための端子である。
【0088】
例えば、電池モジュール11の電力および低電圧電力は、12Vの電力であり、高電圧電力は、48Vの電力である。
【0089】
〈電池回路〉
電池回路45は、複数の電池モジュール11の接続の状態を切り換え可能である。
図7に示すように、この例では、電池回路45は、電源ライン50と、電源ライン50に設けられた複数(具体的には16個)のリレー60とを有する。
【0090】
以下では、説明の便宜上、複数の電池モジュール11を区別するために、電池モジュール11に枝番を付している。
図7の電源記号の近傍に記載された数字は、電池モジュール11に付された枝番を示す。また、複数のリレー60を区別するために、リレー60に枝番を付している。
図7の丸付き数字は、リレー60に付された枝番を示す。
【0091】
《電源ライン》
複数の電源ライン50には、第1電源ライン51と、第2電源ライン52と、第3電源ライン53と、第4電源ライン54とが含まれる。第1電源ライン51は、複数の電池モジュール11の正極と第1出力端子41とを接続する。第2電源ライン52は、複数の電池モジュール11の負極と接地端子43とを接続する。第3電源ライン53は、複数の電池モジュール11を直列且つ環状に接続する。第4電源ライン54は、複数の電池モジュール11の正極と第2出力端子42とを接続する。
【0092】
なお、
図7では、第3電源ライン53のうち電池モジュール11
-4の正極と電池モジュール11
-1の負極とを接続する部分を破線および黒太矢印で示しているが、以降の図では、図の煩雑さを避けるために、この破線を省略している。
【0093】
《リレー》
複数のリレー60は、それぞれ同様の構成を有する。リレー60は、オン状態(閉状態)とオフ状態(開状態)とを切り換え可能である。リレー60がオン状態である場合、そのリレー60の両端の電源ラインが接続状態となり、リレー60がオフ状態である場合、そのリレー60の両端の電源ラインが非接続状態となる。例えば、リレー60は、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor)などのスイッチング素子により構成される。
【0094】
複数のリレー60には、第1電源ライン51に設けられる複数の第1リレー61と、第2電源ライン52に設けられる複数の第2リレー62と、第3電源ライン53に設けられる複数の第3リレー63と、第4電源ライン54に設けられる複数の第4リレー64とが含まれる。
【0095】
複数の第1リレー61は、複数の電池モジュール11と一対一で対応する。複数の第1リレー61の各々は、その第1リレー61に対応する電池モジュール11と第1出力端子41との接続の状態を切り換える。
図7の例では、リレー60
-1,60
-3,60
-5,60
-7が第1リレー61である。
【0096】
複数の第2リレー62は、複数の電池モジュール11と一対一で対応する。複数の第2リレー62の各々は、その第2リレー62に対応する電池モジュール11と接地端子43との接続の状態を切り換える。
図7の例では、リレー60
-2,60
-4,60
-6,60
-8が第2リレー62である。
【0097】
複数の第3リレー63は、複数の電池モジュール11と一対一で対応する。複数の第3リレー63の各々は、その第3リレー63に対応する電池モジュール11の正極と、第3電源ライン53においてその電池モジュールと隣り合う電池モジュール11の負極との接続の状態を切り換える。
図7の例では、リレー60
-9,60
-10,60
-11,60
-12が第3リレー63である。
【0098】
複数の第4リレー64は、複数の電池モジュール11と一対一で対応する。複数の第4リレー64の各々は、その第4リレー64に対応する電池モジュール11の正極と第2出力端子42との接続の状態を切り換える。
図7の例では、リレー60
-13,60
-14,60
-15,60
-16が第4リレー64である。
【0099】
〈電池回路の動作:基本接続状態〉
電池回路45は、複数の電池モジュール11の接続の状態を、複数の電池モジュール11のうち低電圧電力を出力する低電圧電源となる電池モジュール11が第1出力端子41と接地端子43との間に接続される状態に切り換え可能である。低電圧電源は、第1電力を出力する第1電源の一例である。
【0100】
この例では、電池回路45は、複数の電池モジュール11の接続の状態を、複数の電池モジュール11のうち低電圧電源となる電池モジュール11が第1出力端子41と接地端子43との間に接続され、且つ、複数の電池モジュール11のうち少なくとも2つ(この例では4つの電池モジュール11の全部)が第2出力端子42と接地端子43との間に直列に接続される状態状態に切り換え可能である。以下では、この接続の状態を「基本接続状態」と記載する。
【0101】
図8(a)~
図8(d)に示すように、基本接続状態には、4つの状態がある。なお、
図8(a)~
図8(d)では、12Vの低電圧電力を出力する電気の流れを破線PHで示し、48Vの高電圧電力を出力する電気の流れを破線PLで示している。また、複数のリレー60のうちオン状態であるリレー60に点模様を付している。
【0102】
図8(a)の状態では、リレー60
-1,60
-2,60
-9,60
-10,60
-11,60
-16がオン状態であり、他のリレー60がオフ状態である。この状態では、第2出力端子42と接地端子43との間に、電池モジュール11
-4,11
-3,11
-2,11
-1が順に直列に接続される。また、電池モジュール11
-1が低電圧電源となり、電池モジュール11
-1が第1出力端子41と接地端子43との間に接続される。
【0103】
図8(b)の状態では、リレー60
-3,60
-4,60
-10,60
-11,60
-12,60
-13がオン状態であり、他のリレー60がオフ状態である。この状態では、第2出力端子42と接地端子43との間に、電池モジュール11
-1,11
-4,11
-3,11
-2が順に直列に接続される。また、電池モジュール11
-2が低電圧電源となり、電池モジュール11
-2が第1出力端子41と接地端子43との間に接続される。
【0104】
図8(c)の状態では、リレー60
-5,60
-6,60
-9,60
-11,60
-12,60
-14がオン状態であり、他のリレー60がオフ状態である。この状態では、第2出力端子42と接地端子43との間に、電池モジュール11
-2,11
-1,11
-4,11
-3が順に直列に接続される。また、電池モジュール11
-3が低電圧電源となり、電池モジュール11
-3が第1出力端子41と接地端子43との間に接続される。
【0105】
図8(d)の状態では、リレー60
-7,60
-8,60
-9,60
-10,60
-12,60
-15がオン状態であり、他のリレー60がオフ状態である。この状態では、第2出力端子42と接地端子43との間に、電池モジュール11
-3,11
-2,11
-1,11
-4が順に直列に接続される。また、電池モジュール11
-4が低電圧電源となり、電池モジュール11
-4が第1出力端子41と接地端子43との間に接続される。
【0106】
〈電池回路の動作:並列接続状態〉
また、電池回路45は、複数の電池モジュール11の接続の状態を、複数の電池モジュール11が並列に接続される状態に切り換え可能である。
【0107】
この例では、電池回路45は、複数の電池モジュール11の接続の状態を、複数の電池モジュールが第1出力端子41と接地端子43との間に並列に接続される状態に切り換え可能である。以下では、この接続の状態を「並列接続状態」と記載する。
【0108】
図9に示すように、並列接続状態では、リレー60
-1,60
-2,60
-3,60
-4,60
-5,60
-6,60
-7,60
-8がオン状態であり、他のリレー60がオフ状態である。この状態では、4つの電池モジュール11のSOCが平準化される。また、並列に接続された4つの電池モジュール11により低電圧電力が供給される。
【0109】
〈電池回路の動作:低電圧電源となる電池モジュールの切り換え〉
また、電池回路45は、複数の電池モジュール11のうち低電圧電源となる電池モジュール11を切り換え可能である。
【0110】
ここで、
図10(a)~
図10(e)を参照して、低電圧電源となる電池モジュール11を切り換えについて説明する。以下では、低電圧電源となる電池モジュール11を「電池モジュール11
-1」から「電池モジュール11
-2」に切り換える場合を例に挙げている。
【0111】
図10(a)に示すように、電池モジュール11
-1に対応するリレー60
-1,60
-2がオン状態である。これにより、低電圧電源である電池モジュール11
-1が第1出力端子41と接地端子43との間に接続される。また、リレー60
-9,60
-10,60
-11,60
-16がオン状態である。これにより、高電圧電力が出力される。なお、他のリレー60は、オフ状態である。
【0112】
次に、
図10(b)に示すように、リレー60
-9,60
-10,60
-11がオフ状態となる。これにより、高電圧電力の供給が停止される。
【0113】
次に、
図10(c)に示すように、電池モジュール11
-2に対応するリレー60
-3,60
-4がオン状態となる。これにより、次に低電圧電源となる電池モジュール11
-2が第1出力端子41と接地端子43との間に接続される。
【0114】
次に、
図10(d)に示すように、電池モジュール11
-1に対応するリレー60
-1,60
-2がオフ状態となる。これにより、前に低電圧電源であった電池モジュール11
-1が第1出力端子41および接地端子43から切り離される。
【0115】
次に、
図10(e)に示すように、リレー60
-10,60
-11,60
-12がオン状態となる。これにより、高電圧電力の供給が再開される。
【0116】
なお、低電圧電源となる電池モジュール11の切り換えにおいて、
図10(c)の状態の代わりに、
図9に示した状態(並列接続状態)となってもよい。すなわち、複数の電池モジュール11が並列に接続された後に、複数の電池モジュール11のうち低電圧電源となる電池モジュール11が切り換えられてもよい。
【0117】
〔温度センサ〕
複数の温度センサ21は、複数の電池モジュール11と一対一で対応する。複数の温度センサ21の各々は、その温度センサ21に対応する電池モジュール11の温度を検出する。なお、実施形態2の温度センサ21の構成は、実施形態1の温度センサ21の構成と同様である。
【0118】
〔SOCセンサ〕
複数のSOCセンサ22は、複数の電池モジュール11と一対一で対応する。複数のSOCセンサ22の各々は、そのSOCセンサ22に対応する電池モジュール11のSOC(State of Charge)を検出する。なお、実施形態2のSOCセンサ22の構成は、実施形態1のSOCセンサ22の構成と同様である。
【0119】
〔制御装置〕
制御装置30は、車両用電源システム1の各部を制御する。
図11に示すように、この例では、制御装置30は、複数の温度センサ21、複数のSOCセンサ22、ポンプ5、ファン6、電池回路45、複数の伝熱調節機構15などと信号線により接続される。制御装置30は、記憶部31と、制御部32とを有する。なお、実施形態2の記憶部31および制御部32の構成は、実施形態1の記憶部31および制御部32の構成と同様である。
【0120】
〔電池ユニットの制御(SOC制御)〕
次に,
図12を参照して、実施形態2におけるSOC制御について説明する。SOC制御は、複数の電池モジュール11のSOCを管理するための処理である。制御部32は、以下の処理を繰り返し行う。なお、SOC制御の開始時において、複数の電池モジュール11の接続の状態は、
図8(a)~
図8(d)に示した基本接続状態となっている。
【0121】
〈ステップS21〉
まず、制御部32は、複数のSOCセンサ22によりそれぞれ検出された複数の電池モジュール11のSOCを取得する。
【0122】
〈ステップS22〉
制御部32は、複数の電池モジュール11のSOCのうち最小SOCが予め定められた第1閾値Sth1を下回るか否かを判定する。最小SOCが第1閾値Sth1を下回る場合には、ステップS22の処理が行われ、そうでない場合には、ステップS21の処理が行われる。
【0123】
〈ステップS30〉
最小SOCが第1閾値Sth1を下回る場合、制御部32は、頻度調節処理を行う。頻度調節処理は、複数の電池モジュール11のうちSOCが低下しやすい電池モジュール11の使用頻度(低電圧電源となる頻度)が少なくなるように、複数の電池モジュール11の各々の使用頻度を調節する処理である。例えば、複数の電池モジュール11の各々の使用頻度を示す使用頻度情報は、記憶部31に記憶される。頻度調節処理については、後で詳しく説明する。
【0124】
〈ステップS23〉
次に、制御部32は、複数の電池モジュール11の接続の状態が「基本接続状態」から「並列接続状態(
図9参照)」になるように、電池回路45を制御する。これにより、複数の電池モジュール11が並列に接続され、複数の電池モジュール11のSOCが次第に平準化していく。
【0125】
「並列接続状態」から「基本接続状態」への切り換えから予め定められた維持時間が経過すると、制御部32は、複数の電池モジュール11の接続の状態が「並列接続状態」から「基本接続状態」になるように、電池回路45を制御する。例えば、維持時間は、複数の電池モジュール11のSOCを平準化することができる時間に設定される。
【0126】
〈ステップS24〉
次に、制御部32は、複数のSOCセンサ22によりそれぞれ検出された複数の電池モジュール11のSOCを取得する。
【0127】
〈ステップS25〉
制御部32は、複数の電池モジュール11のSOCのうち最小SOCが予め定められた第2閾値Sth2を下回るか否かを判定する。第2閾値Sth2は、第1閾値Sth1よりも小さい。最小SOCが第2閾値Sth2を下回る場合には、ステップS26の処理が行われ、そうでない場合には、ステップS24の処理が行われる。
【0128】
〈ステップS26〉
最小SOCが第2閾値Sth2を下回る場合、制御部32は、複数の電池モジュール11の接続の状態が「基本接続状態」から「並列接続状態」になるように、電池回路45を制御する。これにより、複数の電池モジュール11が並列に接続され、複数の電池モジュール11のSOCが次第に平準化していく。
【0129】
〈ステップS27〉
ステップS26における「並列接続状態」から「基本接続状態」への切り換えから予め定められた維持時間が経過すると、制御部32は、複数の電池モジュール11の接続の状態が「並列接続状態」から「基本接続状態」になるように、電池回路45を制御する。このとき、制御部32は、複数の電池モジュール11のうち低電圧電源となる電池モジュール11が切り換わるように、電池回路45を制御する。
【0130】
例えば、ステップS26において「並列接続状態」に切り換えられる前の「基本接続状態」における低電圧電源が「電池モジュール11-1」である場合、ステップ27において「並列接続状態」から切り換えられた後の「基本接続状態」における低電圧電源は、「電池モジュール11-1」ではない他の電池モジュール11(例えば電池モジュール11-2)となる。
【0131】
なお、この例では、制御部32は、複数の電池モジュール11のうちSOCが低下しやすい電池モジュール11の使用頻度(低電圧電源となる頻度)が少なくなるように、電池回路45を制御する。
【0132】
例えば、制御部32は、複数の電池モジュール11の各々の使用頻度を示す使用頻度情報を記憶部31から読み出し、複数の電池モジュール11の各々の使用頻度が使用頻度情報に示された使用頻度となるように、電池回路45を制御して低電圧電源となる電池モジュール11を切り換える。
【0133】
〔頻度調節処理〕
次に、
図13を参照して、頻度調節処理について説明する。
【0134】
〈ステップS31〉
まず、制御部32は、複数の電池モジュール11のSOCの中から最小SOCを検出する。そして、制御部32は、最小SOCの電池モジュール11が「低電圧電源となる電池モジュール11」であるか否かを判定する。最小SOCの電池モジュール11が「低電圧電源となる電池モジュール11」である場合には、ステップS32の処理が行われ、そうでない場合には、ステップS33の処理が行われる。
【0135】
〈ステップS32〉
次に、制御部32は、複数の電池モジュール11のうちSOCの低下が大きい電池モジュール11があるか否かを判定する。例えば、制御部32は、複数の電池モジュール11の各々を判定対象として順に選択し、「複数の電池モジュール11のうち判定対象とする電池モジュール11を除く他の電池モジュール11のSOCの平均値」から「判定対象とする電池モジュール11のSOC」を減算して得られる値が予め定められた基準値を上回る場合に、その判定対象とする電池モジュール11が「SOCの低下が大きい電池モジュール11」であると判定する。
【0136】
SOCの低下が大きい電池モジュール11がある場合には、ステップS34の処理が行われ、そうでない場合には、処理が終了する。
【0137】
〈ステップS33〉
最小SOCの電池モジュール11が「低電圧電源となる電池モジュール11」ではない場合、制御部32は、最小SOCの電池モジュール11の使用頻度(低電圧電源となる頻度)が少なくなるように、複数の電池モジュール11の各々の使用頻度を決定する。例えば、制御部32は、ステップS33において決定された複数の電池モジュール11の各々の使用頻度を示す使用頻度情報を、記憶部31に記憶(または上書き)する。
【0138】
なお、上記の低電圧電源ではないがSOCが最小SOCとなる電池モジュール11は、SOCが低下しやすい電池モジュール11の一例である。
【0139】
〈ステップS34〉
SOCの低下が大きい電池モジュール11がある場合、制御部32は、SOCの低下が大きい電池モジュール11の使用頻度(低電圧電源となる頻度)が少なくなるように、複数の電池モジュール11の各々の使用頻度を決定する。例えば、制御部32は、ステップS34において決定された複数の電池モジュール11の各々の使用頻度を示す使用頻度情報を、記憶部31に記憶(または上書き)する。
【0140】
なお、上記のSOCの低下が大きい電池モジュール11は、SOCが低下しやすい電池モジュール11の一例である。
【0141】
〔電池ユニットの制御(温度制御)〕
次に、
図14を参照して、実施形態2における温度制御について説明する。制御部32は、以下の処理を繰り返し行う
〈ステップS40〉
まず、制御部32は、複数の電池モジュール11の接続の状態が「並列接続状態」であるか否かを判定する。複数の電池モジュール11の接続の状態が並列接続状態である場合には、ステップS41の処理が行われ、そうでない場合には、ステップS10の処理が行われる。
【0142】
〈ステップS41〉
複数の電池モジュール11の接続の状態が並列接続状態である場合、制御部32は、複数のSOCセンサ22によりそれぞれ検出された複数の電池モジュール11のSOCを取得する。そして、制御部32は、複数の電池モジュール11のSOCから「電池モジュール11の平準化後のSOC」を予測する。例えば、制御部32は、複数の電池モジュール11のSOCの平均値を「電池モジュール11の平準化後のSOC」とする。
【0143】
〈ステップS42〉
制御部32は、電池モジュール11の平準化後のSOCに応じて電池モジュール11の目標温度Tb0を決定する。なお、目標温度Tb0は、幅のある値(すなわち目標範囲)であってもよい。
【0144】
次に、制御部32は、数の電池モジュール11の各々に対して、予測SOCに応じた目標温度に基づく温度制御を個別に行う。具体的には、制御部32は、複数の電池モジュール11の各々について、以下のステップS42~S47の処理を行う。以下では、1つの電池モジュール11と、その電池モジュール11に対応する温度センサ21と熱交換部12と伝熱調節機構15とを例に挙げて説明する。
【0145】
〈ステップS43〉
制御部32は、温度センサ21により検出された電池温度Tb(電池モジュール11の温度)を取得する。
【0146】
〈ステップS44〉
次に、制御部32は、電池温度TbがステップS42において決定された目標温度Tb0(または目標範囲内の温度)になっているか否かを判定する。電池温度Tbが目標温度Tb0になっている場合には、処理が終了し、そうでない場合には、ステップS45の処理が行われる。
【0147】
〈ステップS45〉
電池温度TbがステップS42において決定された目標温度Tb0(または目標範囲内の温度)になっていない場合、制御部32は、電池温度Tbが目標温度Tb0(または目標範囲の上限値)よりも高いか否かを判定する。電池温度Tbが目標温度Tb0よりも高い場合には、ステップS46の処理が行われ、そうでない場合には、ステップS47の処理が行われる。
【0148】
〈ステップS46〉
電池温度TbがステップS42において決定された目標温度Tb0(または目標範囲内の上限値)よりも高い場合、制御部32は、電池温度Tbが低下するように、熱交換部12および伝熱調節機構15の少なくとも一方を制御する。
【0149】
例えば、制御部32は、電池モジュール11と熱交換部12との間の熱抵抗が減少するように、伝熱調節機構15を制御する。電池モジュール11と熱交換部12との間の熱抵抗が減少することにより、電池モジュール11から熱交換部12へ向けて熱が移動しやすくなる。これにより、電池モジュール11の冷却が促進される。その結果、電池温度Tbが低下し、電池温度Tbが目標温度Tb0に近づく。
【0150】
なお、複数の電池モジュール11において電池温度Tbが目標温度Tb0よりも高い場合など、複数の電池モジュール11の全ての冷却を促進することが要求される場合、制御部32は、熱交換部12の冷却能力が増加するように、熱交換部12を制御してもよい。具体的には、制御部32は、複数の熱交換部12の全ての冷却能力が増加するように、ポンプ5の回転数およびファン6の回転数の少なくとも一方を増加させてもよい。
【0151】
〈ステップS47〉
一方、電池温度TbがステップS42において決定された目標温度Tb0(または目標範囲内の下限値)よりも低い場合、制御部32は、電池温度Tbが上昇するように、熱交換部12および伝熱調節機構15の少なくとも一方を制御する。
【0152】
例えば、制御部32は、電池モジュール11と熱交換部12との間の熱抵抗が増加するように、伝熱調節機構15を制御する。電池モジュール11と熱交換部12との間の熱抵抗が増加することにより、電池モジュール11から熱交換部12へ向けて熱の移動しにくくなる。これにより、電池モジュール11の冷却が阻害される。その結果、電池温度Tbが上昇し、電池温度Tbが目標温度Tb0に近づく。
【0153】
なお、複数の電池モジュール11において電池温度Tbが目標温度Tb0よりも低い場合など、複数の電池モジュール11の全ての冷却を阻害することが要求される場合、制御部32は、熱交換部12の冷却能力が減少するように、熱交換部12を制御してもよい。具体的には、制御部32は、複数の熱交換部12の全ての冷却能力が減少するように、ポンプ5の回転数およびファン6の回転数の少なくとも一方を減少させてもよい。
【0154】
〈ステップS10〉
また、複数の電池モジュール11の接続の状態が並列接続状態ではない場合、制御部32は、複数の電池モジュール11の各々に対して、計測SOCに応じた目標温度に基づく温度制御を個別に行う。
【0155】
具体的には、制御部32は、複数の電池モジュール11の各々について、
図3に示したステップS11~S17の処理を行う。なお、ステップS16では、ステップS46と同様に、制御部32は、電池温度Tbが低下するように、熱交換部12および伝熱調節機構15の少なくとも一方を制御する。ステップS17では、ステップS47と同様に、制御部32は、電池温度Tbが上昇するように、熱交換部12および伝熱調節機構15の少なくとも一方を制御する。
【0156】
〔実施形態と比較例との対比〕
次に、
図15および
図16を参照して、実施形態2の電池ユニット10とその比較例とを対比して説明する。以下では、比較例となる電池ユニットの構成要素のうち実施形態の電池ユニット10の構成要素と同様の構成要素については、実施形態の電池ユニット10の構成要素の符号と同一の符号を用いている。
【0157】
〈比較例の説明〉
まず、比較例となる電池ユニットについて説明する。比較例となる電池ユニットでは、制御部32は、複数の電池モジュール11のSOCと温度とを別々に制御する。具体的には、制御部32は、SOC制御および温度制御のうち一方の制御を完了した後に他方の制御を開始する。SOC制御では、制御部32は、複数の電池モジュール11が並列に接続されるように、電池回路45を制御する。温度制御では、制御部32は、複数の電池モジュール11の各々について、その電池モジュール11の温度が目標温度となるように、その電池モジュール11に対応する熱交換部12および伝熱調節機構15の少なくとも一方を制御する。
【0158】
〈実施形態の説明〉
実施形態2の電池ユニット10では、制御部32は、SOC制御(
図12参照)と温度制御(
図14参照)とを並行して行う。具体的には、制御部32は、複数の電池モジュール11が並列に接続されて複数の電池モジュール11のSOCが平準化される場合に、複数の電池モジュール11の平準化後のSOCに応じて複数の電池モジュール11の目標温度を決定する。
【0159】
〈ハイレート劣化の比較〉
図15は、電池モジュール11の温度およびSOCの変化とハイレート劣化との関係を例示する。
図15では、電池モジュール11のSOCおよび温度の状態を、状態P11または状態P13から状態P10に変化させる場合を例示している。なお、状態P10は、複数の電池モジュール11のSOCの平準化が完了し、且つ、複数の電池モジュール11の各々の温度が平準化後のSOCに応じた目標温度となる状態である。
【0160】
比較例となる電池ユニットでは、電池モジュール11のSOCおよび温度の状態は、状態P11(または状態P13)から、状態P10よりもハイレート劣化が起こりやすい状態P12(または状態P14)を経由した後に、状態P10に至る。そのため、電池モジュール11のハイレート劣化を適切に抑制することができない。
【0161】
一方、実施形態2の電池ユニット10では、電池モジュール11のSOCおよび温度の状態は、状態P11(または状態P13)から、状態P12(または状態P14)を経由せずに、状態P10に至る。そのため、電池モジュール11のハイレート劣化を適切に抑制することができる。
【0162】
〈温度劣化の比較〉
図16は、電池モジュール11の温度およびSOCの変化と温度劣化との関係を例示する。
図16では、電池モジュール11のSOCおよび温度の状態を、状態P21または状態P23から状態P20に変化させる場合を例示している。なお、状態P20は、複数の電池モジュール11のSOCの平準化が完了し、且つ、複数の電池モジュール11の各々の温度が平準化後のSOCに応じた目標温度となる状態である。
【0163】
比較例となる電池ユニットでは、電池モジュール11のSOCおよび温度の状態は、状態P21(または状態P23)から、状態P20よりも温度劣化が起こりやすい状態P22(または状態P24)を経由した後に、状態P20に至る。そのため、電池モジュール11の温度劣化を適切に抑制することができない。
【0164】
一方、実施形態2の電池ユニット10では、電池モジュール11のSOCおよび温度の状態は、状態P21(または状態P23)から、状態P22(または状態P24)を経由せずに、状態P20に至る。そのため、電池モジュール11の温度劣化を適切に抑制することができる。
【0165】
〔実施形態2の効果〕
以上のように、実施形態2では、複数の電池モジュール11の各々において、電池モジュール11のSOCに応じて電池モジュール11の温度を管理することができる。これにより、複数の電池モジュール11の各々において、電池モジュール11の温度劣化の抑制とハイレート劣化の抑制とを両立することができる。
【0166】
また、実施形態2では、電池回路45は、複数の電池モジュール11の接続の状態を「複数の電池モジュール11のうち低電圧電源となる電池モジュールが第1出力端子41と接地端子43との間に接続される状態」に切り換え可能である。このような構成により、低電圧電源となる電池モジュール11により低電圧電力を車両に供給することができる。
【0167】
なお、実施形態2では、電池回路45は、複数の電池モジュール11の接続の状態を「複数の電池モジュール11のうち低電圧電源となる電池モジュール11が第1出力端子41と接地端子43との間に接続され、且つ、複数の電池モジュール11のうち少なくとも2つ(この例では全部)が第2出力端子42と接地端子43との間に直列に接続される状態」に切り換え可能である。このような構成により、低電圧電源となる電池モジュール11により低電圧電力を車両に供給するとともに、直列に接続された2つ以上(この例では全部)の電池モジュール11により高電圧電力を車両に供給することができる。
【0168】
また、実施形態2では、電池回路45は、複数の電池モジュール11の接続の状態を「複数の電池モジュール11が並列に接続される状態」に切り換え可能である。このような構成により、複数の電池モジュール11を並列に接続して複数の電池モジュール11のSOCを平準化することができる。これにより、複数の電池モジュール11のSOCのばらつきを低減することができる。
【0169】
また、実施形態2では、制御部32は、複数の電池モジュール11が並列に接続されて複数の電池モジュール11のSOCが平準化される場合に、複数の電池モジュール11の平準化後のSOCを予測し、その予測されたSOCに応じて複数の電池モジュール11の目標温度を決定し、複数の電池モジュール11の温度が目標温度となるように複数の熱交換部12を制御する。このような構成により、複数の電池モジュール11のSOCが平準化される平準化期間において、複数の電池モジュール11の温度を適切に制御することができる。これにより、平準化期間において、電池モジュール11の温度劣化の抑制とハイレート劣化の抑制とを両立することができる。
【0170】
また、実施形態2では、制御部32は、並列接続状態(複数の電池モジュール11が並列に接続される状態)から基本接続状態(複数の電池モジュール11のうち低電圧電源となる電池モジュール11が第1出力端子41と接地端子43との間に接続される状態)に切り換える場合に、複数の電池モジュール11のうち複数の電池モジュール11が並列に接続される低電圧電源であった電池モジュール11とは別の電池モジュール11が低電圧電源となるように、電池回路45を制御する。このような構成により、複数の電池モジュール11において低電圧電源となる電池モジュール11が固定されないようにすることができる。これにより、複数の電池モジュール11の劣化(使用頻度に応じた劣化)のばらつきを低減することができる。
【0171】
また、実施形態2では、制御部32は、複数の電池モジュール11のうちSOCが低下しやすい電池モジュール11の使用頻度(低電圧電源となる頻度)が少なくなるように、電池回路45を制御する。このような構成により、複数の電池モジュール11のSOCのばらつきが大きくなる頻度を少なくすることができる。
【0172】
また、実施形態2では、制御部32は、温度センサ21により検出された電池モジュール11の温度が目標温度となるように、熱交換部12および伝熱調節機構15の少なくとも一方を制御する。このように、伝熱調節機構15を制御することにより、電池モジュール11と熱交換部12との間の熱抵抗を調節することができる。これにより、電池モジュール11と熱交換部12との間における熱の移動のしやすさを調節することができ、その結果、電池モジュール11の温度を調節することができる。このように、追従性に富んだ温度制御を実現することができる。
【0173】
(その他の実施形態)
以上の説明において、ラジエータ2と電池ユニット10の熱交換部12とにより構成される冷却水回路(熱交換媒体回路の一例)に、車両に搭載された他のデバイス(例えば電気駆動系のデバイス)が接続されて冷却されるようになっていてもよい。
【0174】
また、以上の説明では、伝熱調節機構15の伝熱板101に断熱部材102が取り付けられる場合を例に挙げたが、これに限定されない。伝熱板101には、断熱部材102が取り付けられなくてもよい。
【0175】
また、以上の説明において、複数の熱交換部12と一対一で対応する複数のポンプ5が冷却水回路に設けられてもよい。複数のポンプ5は、そのポンプ5に対応する熱交換部12を流れる冷却水の流量を調節する。この場合、制御部32は、複数の電池モジュール11の各々に対し、その電池モジュール11の温度が目標温度となるように、その電池モジュール11に対応するポンプ5および伝熱調節機構15の少なくとも1つを制御するように構成されてもよい。ポンプ5の回転数を制御することで、そのポンプ5に対応する熱交換部12を流れる冷却水の流量が調節され、その結果、その熱交換部12の冷却能力を制御することができる。
【0176】
また、以上の説明では、頻度調節処理が
図12に示したステップS22の後に行われる場合を例に挙げたが、これに限定されない。例えば、頻度調節処理は、
図12に示したSOC制御とは別に、定期的に行われてもよい。
【0177】
また、以上の実施形態および変形例を適宜組み合わせて実施してもよい。以上の実施形態および変形例は、本質的に好ましい例示であって、ここに開示する技術、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0178】
以上説明したように、ここに開示する技術は、車両用電源システムとして有用である。
【符号の説明】
【0179】
1 車両用電源システム
2 ラジエータ
3 第1流路
4 第2流路
5 ポンプ
6 ファン
10 車両用電池ユニット
11 電池モジュール
12 熱交換部(温度調節機構)
15 伝熱調節機構
21 温度センサ
22 SOCセンサ
30 制御装置
31 記憶部
32 制御部
41 第1出力端子
42 第2出力端子
43 接地端子
45 電池回路
50 電源ライン
60 リレー