(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-22
(45)【発行日】2024-10-30
(54)【発明の名称】コア設計用処理方法、コア設計用処理装置、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 30/10 20200101AFI20241023BHJP
G06F 30/23 20200101ALI20241023BHJP
H02K 1/06 20060101ALI20241023BHJP
H02K 1/22 20060101ALI20241023BHJP
【FI】
G06F30/10 100
G06F30/23
H02K1/06 Z
H02K1/22 A
(21)【出願番号】P 2021060465
(22)【出願日】2021-03-31
【審査請求日】2023-11-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】大杉 保郎
(72)【発明者】
【氏名】本間 励
【審査官】松浦 功
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-133371(JP,A)
【文献】国際公開第2019/064801(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/051980(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/00 -30/398
H02K 1/00 - 1/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機器のコアを設計するために必要な情報の算出処理を実行するコア設計用処理方法であって、
前記コアの基本形状、高透磁率部の磁気特性データ、および低透磁率部の磁気特性データを含む条件データを取得する条件データ取得ステップと、
前記条件データに基づいて、前記コアにおける前記高透磁率部および前記低透磁率部の配置を決定する配置決定ステップと、を備え、
前記配置決定ステップは、
前記コアにおける前記高透磁率部および前記低透磁率部の仮配置を設定する設定ステップと、
前記設定された前記仮配置を有する前記コアを含む前記電気機器のモデルに対する電磁界解析を実行する電磁界解析ステップと、
前記電磁界解析により得られた前記電気機器のモデルの特性および前記仮配置に基づいて、前記コアにおける前記高透磁率部および前記低透磁率部の配置を決定する決定ステップと、を有し、
前記低透磁率部の比透磁率は、前記高透磁率部よりも小さく、かつ空気の比透磁率よりも大きい、コア設計用処理方法。
【請求項2】
前記条件データは、前記電気機器の運転条件をさらに含み、
前記電磁界解析ステップは、前記電気機器の運転条件の下で、前記電磁界解析を実行する、請求項1に記載のコア設計用処理方法。
【請求項3】
前記条件データは、複数の前記低透磁率部の磁気特性データを含み、
前記配置決定ステップは、前記複数の低透磁率部の磁気特性データの各々について実行され、
前記複数の低透磁率部の磁気特性データの各々について前記配置決定ステップにより決定された前記複数の前記仮配置のうちの1つを選択する選択ステップ、をさらに備える、請求項1または2に記載のコア設計用処理方法。
【請求項4】
前記低透磁率部の作製条件を取得する作製条件取得ステップと、
前記条件データ取得ステップは、前記低透磁率部の作製条件と、前記低透磁率部の磁気特性データとの関係を規定した関係規定情報を用いて、前記作製条件取得ステップで取得した前記低透磁率部の作製条件に応じた前記低透磁率部の磁気特性データを取得する、請求項1~3のいずれか1項に記載のコア設計用処理方法。
【請求項5】
前記決定ステップは、前記電磁界解析により得られた前記電気機器のモデルの特性が所定の条件を満たす場合の前記仮配置を前記コアにおける前記高透磁率部および前記低透磁率部の配置として決定する、請求項1~4のいずれか1項に記載のコア設計用処理方法。
【請求項6】
前記コアの基本形状には、空隙部が含まれており、
前記空隙部には、前記高透磁率部および前記低透磁率部が仮配置されない、請求項1~5のいずれか1項に記載のコア設計用処理方法。
【請求項7】
前記設定ステップは、所定の計算終了条件を満たさない場合、前記コアにおける前記高透磁率部および前記低透磁率部の仮配置を再設定し、
前記設定ステップおよび前記電磁界解析は、前記所定の計算終了条件を満たすまで繰り返し実行される、請求項1~6のいずれか1項に記載のコア設計用処理方法。
【請求項8】
前記決定ステップにより決定された、前記コアにおける前記高透磁率部および前記低透磁率部の配置に基づいて、前記電気機器のコアを設計する設計ステップを備える、請求項1~7のいずれか1項に記載のコア設計用処理方法。
【請求項9】
前記電気機器は、回転電機である、請求項1~8のいずれか1項に記載のコア設計用処理方法。
【請求項10】
電気機器のコアを設計するために必要な情報の算出処理を実行するコア設計用処理装置であって、
前記コアの基本形状、高透磁率部の磁気特性データ、および低透磁率部の磁気特性データを含む条件データを取得する条件データ取得部と、
前記条件データに基づいて、前記コアにおける前記高透磁率部および前記低透磁率部の配置を決定する配置決定部と、を備え、
前記配置決定部は、
前記コアにおける前記高透磁率部および前記低透磁率部の仮配置を設定する設定部と、
前記設定された前記仮配置を有する前記コアを含む前記電気機器のモデルに対する電磁界解析を実行する電磁界解析部と、
前記電磁界解析により得られた前記電気機器のモデルの特性および前記仮配置に基づいて、前記コアにおける前記高透磁率部および前記低透磁率部の配置を決定する決定部と、を有し、
前記低透磁率部の比透磁率は、前記高透磁率部よりも小さく、かつ空気の比透磁率よりも大きい、コア設計用処理装置。
【請求項11】
請求項1~9のいずれか1項に記載のコア設計用処理方法の各ステップをコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コア設計用処理方法、コア設計用処理装置、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
コア(鉄心)を備える電気機器においては、コアの設計が電気機器の特性に大きな影響を与える。例えば、IPMSM(Interior Permanent Magnet Synchronous Motor)では、ロータコア内の永久磁石の近傍にフラックスバリア(空隙)を適切に配置することで電気機器内における磁束の流れが適切に制御され、トルク増大、鉄損低減、および応力緩和による高回転数化などの特性向上を実現することができる。このようなコアの形状の設計手法として、例えば、数値解析により最適化する手法が提案されており、かかる手法は、パラメトリック最適化とトポロジー最適化とに大別される。パラメトリック最適化は、予め設定されたパラメータ(例えば大凡の形状が定まっている場合の当該形状の各部の寸法)の値の組み合わせを最適化する方法である。パラメトリック最適化では実現可能な形状が得られやすいが、設定されたパラメータの種類に解が拘束され、独創的な形状が得られにくい。また、パラメトリック最適化では形状の表現力を向上させようとするとパラメータの数が膨大になる為、最適解を得るための計算時間が長大化したり、現実的な時間内に最適解が得られなかったりする課題が生じる。一方、トポロジー最適化は、デザイン領域内で形状を高い自由度で変化させて最適形状を探索する手法の総称である。トポロジー最適化の手法として、例えば、デザイン領域内を複数のセル(グリッド)に分割し、各セルの物性を切り替えるOn-Off法がある。非特許文献1には、IPMSMのロータコアの形状を最適化する技術として、各セルのonの状態とoffの状態とをそれぞれ、磁性体と空気に対応させ、拘束条件を満足し、且つ、目的関数が最大(または最小)となるような、on/offの状態を探索することが記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】佐藤 孝洋 他5名、「トポロジー最適化による埋込磁石同期モータの回転子形状最適化」、電気学会論文誌D(産業応用部門誌)、IEEJ Transactions on Industry Applications、Vol.135、No.3、pp.291-298、2015年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記の非特許文献1に記載の技術では、トポロジー最適化によってコアの形状を設計するにあたり、デザイン領域を構成する各セルを、コア材(磁性体)と空気との二者択一とする。しかしながら、電気機器の特性を十分に向上させることができない場合がある。例えば、回転電機のトルクを向上させることができない場合がある。また、コアにおける空気の領域がデザイン領域内で可変となるので、例えば、磁性体が空気に囲まれて宙に浮くような形状が探索される虞がある。よって、電気機器の特性を向上させるうえではこのような磁性体と空気の配置が最適であるとしても、製造上の困難性から、このような配置をそのまま採用することができない場合がある。また、コアにおける空気の領域が可変となるので、コアの形状として機械的強度が低い形状が探索される虞がある。
【0005】
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、実現性が高く且つ電気機器の特性向上が可能なコアを設計することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のコア設計用処理方法は、電気機器のコアを設計するために必要な情報の算出処理を実行するコア設計用処理方法であって、前記コアの基本形状、高透磁率部の磁気特性データ、および低透磁率部の磁気特性データを含む条件データを取得する条件データ取得ステップと、前記条件データに基づいて、前記コアにおける前記高透磁率部および前記低透磁率部の配置を決定する配置決定ステップと、を備え、前記配置決定ステップは、前記コアにおける前記高透磁率部および前記低透磁率部の仮配置を設定する設定ステップと、前記設定された前記仮配置を有する前記コアを含む前記電気機器のモデルに対する電磁界解析を実行する電磁界解析ステップと、前記電磁界解析により得られた前記電気機器のモデルの特性および前記仮配置に基づいて、前記コアにおける前記高透磁率部および前記低透磁率部の配置を決定する決定ステップと、を有し、前記低透磁率部の比透磁率は、前記高透磁率部の比透磁率よりも小さく、かつ空気の比透磁率よりも大きい。
【0007】
本発明のコア設計用処理装置は、電気機器のコアを設計するために必要な情報の算出処理を実行するコア設計用処理装置であって、前記コアの基本形状、高透磁率部の磁気特性データ、および低透磁率部の磁気特性データを含む条件データを取得する条件データ取得部と、前記条件データに基づいて、前記コアにおける前記高透磁率部および前記低透磁率部の配置を決定する配置決定部と、を備え、前記配置決定部は、前記コアにおける前記高透磁率部および前記低透磁率部の仮配置を設定する設定部と、前記設定された前記仮配置を有する前記コアを含む前記電気機器のモデルに対する電磁界解析を実行する電磁界解析部と、前記電磁界解析により得られた前記電気機器のモデルの特性および前記仮配置に基づいて、前記コアにおける前記高透磁率部および前記低透磁率部の配置を決定する決定部と、を有し、前記低透磁率部の比透磁率は、前記高透磁率部の比透磁率よりも小さく、かつ空気の比透磁率よりも大きい。
【0008】
本発明のプログラムは、前記コア設計用処理方法の各ステップをコンピュータに実行させるためのものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、実現性が高く且つ電気機器の特性向上可能なコアを設計することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】コア設計用処理装置の機能的な構成の第1の例を示す図である。
【
図3】磁気特性データ抽出テーブルの一例を示す図である。
【
図4】設計対象のコアの基本形状の一例を示す図である。
【
図6】
図5のステップS503の詳細な処理の一例を説明するフローチャートである。
【
図7】コア設計用処理装置の機能的な構成の第2の例を示す図である。
【
図9】
図8のステップS803の詳細な処理の一例を説明するフローチャートである。
【
図10】発明例1における高透磁率部および低透磁率部の配置を示す図である。
【
図11】比較例1における高透磁率部および低透磁率部の配置を示す図である。
【
図12】発明例2における高透磁率部および低透磁率部の配置を示す図である。
【
図13】比較例2における高透磁率部および低透磁率部の配置を示す図である。
【
図14】発明例3における高透磁率部および低透磁率部の配置を示す図である。
【
図15】比較例3における高透磁率部および低透磁率部の配置を示す図である。
【
図16】発明例4における高透磁率部および低透磁率部の配置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
尚、長さ、位置、大きさ、間隔等、比較対象が同じであることは、厳密に同じである場合の他、発明の主旨を逸脱しない範囲で異なるもの(例えば、設計時に定められる公差の範囲内で異なるもの)も含むものとする。
【0012】
(第1実施形態)
まず、第1実施形態を説明する。
<コア設計用処理装置100>
図1は、コア設計用処理装置100の機能的な構成の一例を示す図である。コア設計用処理装置100のハードウェアは、例えば、プロセッサ、補助記憶装置、主記憶装置、および各種のインターフェースを備える情報処理装置、または、専用のハードウェアを用いることにより実現される。
【0013】
コア設計用処理装置100は、コアを設計するために必要な情報の算出処理を実行する装置であり、コアのデザイン領域(設計対象領域)に対する、高透磁率部および低透磁率部の配置を決定することが可能に構成される。一般的にコアは、高透磁率特性を有する軟磁性材料を用いて構成され、電気機器が動作しているときに発生する磁束の磁路となって、電気機器のインダクタンスを調整するためのものである。本実施形態において設計対象となるコアには、高透磁率部に加えて低透磁率部が含まれる。低透磁率部の比透磁率は、高透磁率部の比透磁率よりも小さく、且つ、空気の比透磁率(≒1)よりも大きい(空気の比透磁率<低透磁率部の比透磁率<高透磁率部の比透磁率)。低透磁率部は、高透磁率部と一体の形状で軟磁性材料を成形した後に、低透磁率部に当該する軟磁性材料の一部を低透磁率化することにより構成(作製)されても良いし、高透磁率部の形状で軟磁性材料を成形し、低透磁率部に当該する空隙部に低透磁率部材を配置することにより構成(作製)されても良い。このように空隙部に配置される低透磁率部材は、高透磁率部と同じ軟磁性材料を低透磁率化した部材で構成されるのが好ましいが、比透磁率が軟磁性材料の比透磁率よりも小さく、空気の比透磁率よりも大きい磁性材料であれば、他の磁性材料で構成されても良い。また、接着、溶接、勘合などの方法により低透磁率部材と高透磁率部材とを一体化させることでコアの構造体としての強度を高めることができる。
【0014】
設計対象のコアは、電気機器が備えるコアであればどのようなものであっても良い。例えば、設計対象のコアは、モータのロータコアであっても良い。モータは、インナーロータ型のモータであってもアウターロータ型のモータであっても良い。また、モータは、ラジアルギャップ型のモータであっても、アキシャルギャップ型のモータのロータコアであっても良い。また、設計対象のコアは、以上の各種のモータに備わるステータコアであっても良い。また、電気機器は、モータであっても良い。モータは、IPMSM、SPM(Surface Permanent Magnet Motor)、誘導モータ、およびSRM(Switched Reluctance Motor)等、どのようなモータであっても良い。また、電気機器は、発電機であっても良い。また、電気機器は、コアを備えていれば回転電機に限定されない。例えば、電気機器は、トランス(変圧器や変流器)およびインダクタであっても良い。
【0015】
また、コアを構成する軟磁性材料は特に限定されない。積層された複数の電磁鋼板を用いてコアが構成されても良い。また、コアは、例えば、圧粉磁心、アモルファスコア、およびナノ結晶コアであってもよい。尚、コアが、圧粉磁心、アモルファスコア、ナノ結晶コアである場合、コアを構成する軟磁性材料は、それぞれ、絶縁被覆された軟磁性粒子、アモルファス合金、ナノ結晶合金である。
【0016】
以上のように電気機器が備えるコアであれば設計対象のコアは特に限定されないが、本実施形態では、設計対象のコアが、インナーロータ型のIPMSMのロータコアである場合を例示する。
図2は、IPMSM200の構成の一例を示す図である。
図2は、IPMSM200の中心線0(ロータ210の回転軸線)に対して垂直に切った場合のIPMSM200の断面図である。
図2において、IPMSM200は、ロータ210と、ステータ220と、を備える。
【0017】
ステータ220は、ステータコア221と、不図示のステータコイルと、を備え、回転磁界を発生させるためのものである。尚、表記が複雑になるので、
図2では、ステータ220が備えるステータコイルの図示を省略するが、ステータコイルは、ステータコア221のスロット222に配置される(尚、表記が複雑になるため、
図2では48個のスロットのうちの1つのみに符号を付している)。
【0018】
ロータ210は、IPMSM200の中心線0を回転軸線として回転する。ロータ210は、ロータコア211と、複数の永久磁石212(1極あたり3個の永久磁石212a~212c)と、を備える。ロータコア211は、例えば、複数枚の電磁鋼板を、IPMSM200の中心線0に沿って積層させることにより構成される。ロータコア211には、IPMSM200の中心線0に平行な方向に複数の穴が形成されている。本実施形態では、当該穴が、ロータコア211の中心線0に平行な方向に貫通する貫通穴である場合を例示するが、当該穴は貫通穴でなくても良い。複数の永久磁石212は、それぞれ当該穴に挿入されることで、ロータコア211内に埋設される。また、ロータコア211内に形成される穴の領域のうち、永久磁石212が挿入されない領域は、フラックスバリア213(213a~213j)となる。フラックスバリア213には有体物が存在しておらず、空隙部(空気の領域)となっている。フラックスバリア213は、磁束が通らない(またはその周囲の領域よりも通りづらい)領域である。ただし、フラックスバリア213には非磁性体が設置されていてもよい。また、ロータコア211の内周側には、IPMSM200の中心線0に平行な方向に貫通する穴230が形成されている。穴230には、不図示のシャフト等が挿入される。
【0019】
図2では、IPMSM200の極数が8極である場合を例示する。
図2において、「1極」と示している両矢印線の範囲がIPMSM200の1極を構成する部分である。1極あたり3個の永久磁石212a~212cが埋設されており、ロータコア211には合計で24個の永久磁石が埋設されている。この極数や、1極当たりの永久磁石212の数や配置は一例を示すに過ぎず、任意に決めることができる。
図2では、表記が複雑になるので、ロータ210の1極を構成する部分にのみに符号を付しロータ210のその他の7極を構成する部分における符号を省略する。尚、IPMSM200の極数がn極(nは2以上の整数、
図2に示す例ではn=8)である場合、IPMSM200は、概ね、IPMSM200の中心線0を回転対称軸とするn回対称の回転対称性の関係を有する。
【0020】
本実施形態では、ロータコア211の領域のうち、高透磁率部および低透磁率部を配置しない領域を予め定めておき、この定められた領域以外の領域に、高透磁率部および低透磁率部のいずれかを配置する場合を例示する。本実施形態では、高透磁率部および低透磁率部を配置しない領域として、永久磁石212が挿入される領域と、フラックスバリア213となる領域と、シャフト等が挿入される穴230の領域と、が予め定められる場合を例示する。特に穴230は、電気機器内の磁束の流れに影響が少ないことが容易に推定できるため、本実施形態のみならず、後述する比較例においても、予め設計対象の領域から除外するものとする。ただし、ロータコア211の全ての領域に対し、高透磁率部および低透磁率部を配置可能としても良い。以下に、
図2に示すようなロータコア211を設計対象のコアとする場合を例に挙げて、コア設計用処理装置100の機能構成の一例を説明する。本実施形態では、設計対象のコア(ロータコア211)の形状として、IPMSM200の中心線0に垂直に切った断面における2次元形状を設計する場合を例に挙げて説明する。
図2において、IPMSM200の中心線0に垂直に切った断面は、x-y平面になる。ただし、設計対象のコア(ロータコア211)の形状は、2次元形状に限定されず、3次元形状であっても良い。
【0021】
図1に示す本実施形態では、コア設計用処理装置100は、作製条件取得部101と、記憶部102と、条件データ取得部103と、配置決定部104と、出力部105と、を備える。以下に、本実施形態のコア設計用処理装置100が有する各機能ブロックについて説明する。
【0022】
<<作製条件取得部101>>
作製条件取得部101は、低透磁率部の作製条件を取得する。
低透磁率部の作製条件は、低透磁率部の比透磁率が高透磁率部の比透磁率よりも低くなるようにしていれば、特に限定されない。
【0023】
例えば、設計対象のコアを構成する軟磁性材料(電磁鋼板)の領域のうち低透磁率部を構成する領域をプレスして、高透磁率部を構成する領域の厚みよりも低透磁率部を構成する領域の厚みを薄くすることにより、設計対象のコアを構成する軟磁性材料(電磁鋼板)の領域の一部を低透磁率化しても良い。このようにする場合、例えば、プレス比率を作製条件とする。プレス比率は、設計対象のコアを構成する軟磁性材料(電磁鋼板)の領域のうち、プレスされていない領域の厚みに対する、プレスすることにより形成された凹部の深さの割合を百分率で表したものである。例えば、低透磁率化する領域の厚みを、設計対象のコアを構成する軟磁性材料(電磁鋼板)の領域の元の厚みの70%の厚みとする場合、プレス比率は30%(={(100-70)÷100}×100)になる。また、軟磁性材料(電磁鋼鈑)の種類(板厚、グレードなど)に応じて所望の厚みを実現するプレス条件(プレス機の仕様およびプレス圧力等)を予め調査しておき、このプレス条件を作製条件とすることもできる。
【0024】
また、特開2011-114927号公報に記載されているように、設計対象のコアを構成する軟磁性材料(電磁鋼板)の領域のうち低透磁率部を構成する領域の厚みをエッチングすることにより薄くしても良い。このようにする場合、例えば、エッチング比率を作製条件とする。エッチング比率は、前述したプレス比率の説明において「プレス」を「エッチング」に置き換えたものである。
【0025】
また、特開2001-93717号公報に記載されているように、設計対象のコアを構成する軟磁性材料(電磁鋼板)の領域のうち低透磁率部を構成する領域に改質材料を添加しつつ高エネルギー密度のビームを照射することにより、設計対象のコアを構成する軟磁性材料(電磁鋼板)の領域の一部を低透磁率化しても良い。このようにする場合、例えば、添加・照射条件を作製条件とする。添加・照射条件は、例えば、改質材料の添加条件(改質材料の材質および添加量等)と、ビームの照射条件(ビームの種類、ビームのエネルギー密度、ビームの照射時間等)とを含む。
【0026】
また、特開平11-18324号公報に記載されているように、設計対象のコアを構成する軟磁性材料(電磁鋼板)の領域のうち低透磁率部を構成する領域を溶接することにより、設計対象のコアを構成する軟磁性材料(電磁鋼板)の領域の一部を低透磁率化しても良い。このようにする場合、例えば、溶接条件を作製条件とする。溶接条件は、例えば、溶接方法および溶接時間等を含む。また、特開平11-18324号公報に記載されているように、溶接に代えてまたは加えて歪みや転移を生じさせる処理を施しても良い。
【0027】
また、コアを構成する軟磁性材料(電磁鋼板)の領域の一部を低透磁率化せずに、低透磁率部を作製しても良い。例えば、特開2010-029514号公報に記載されているように、設計対象のコアを構成する軟磁性材料(電磁鋼板)の領域のうち低透磁率部を構成する領域に、IPMSM200の中心線0に平行な方向に穴(例えば貫通穴)を形成し、当該穴に低透磁率部材を充填することにより、低透磁率部を作製しても良い。このようにする場合、例えば、低透磁率部材の材質を作製条件とする。
【0028】
作製条件取得部101は、以上のような低透磁率部の作製条件を示す情報を取得する。低透磁率部の作製条件を示す情報の取得形態として、例えば、コア設計用処理装置100のユーザインターフェースに対する、低透磁率部の作製条件を示す情報の入力操作、外部装置から送信された、低透磁率部の作製条件を示す情報の受信、および可搬型記憶媒体に記憶された、低透磁率部の作製条件を示す情報の読み出しの少なくとも1つの形態を採用しても良い。
【0029】
<<記憶部102>>
記憶部102は、低透磁率部の作製条件と、低透磁率部の磁気特性データとの関係を規定した関係規定情報(
図3参照)を記憶する。磁気特性データは、磁束密度と磁界強度とを相互に変換するためのデータであり、例えば、透磁率、比透磁率およびBH特性のうち少なくとも一つが含まれる。ここで、BH特性は、磁束密度Bと磁界強度Hとの関係を示す曲線である。磁束密度Bと磁界強度Hとの関係(B=μH)から求められるのが透磁率μである。すなわち、μ―H特性ともいえる。比透磁率μ
rは、透磁率μを真空の透磁率で除算したものである。すなわち、μ
r-H特性ともいえる。また、BW特性を磁気特性データに含めても良い。BW特性は、磁束密度Bと鉄損Wとの関係を示す曲線であり、例えば、コアの鉄損を算出する場合に用いられる。尚、BH特性を示す情報は、磁束密度Bと磁界強度Hとの関係式であっても、磁束密度Bと磁界強度Hとを相互に関連付けたテーブルであってもよい。同様に、BW特性を示す情報は、磁束密度Bと鉄損Wとの関係式であっても、磁束密度Bと鉄損Wとを相互に関連付けたテーブルであってもよい。
【0030】
図3は、磁気特性データ抽出テーブル300の一例を示す図である。磁気特性データ抽出テーブル300は、低透磁率部の作製条件と、低透磁率部の磁気特性データと、が相互に関連付けられたテーブルであり、低透磁率部の作製条件と、低透磁率部の磁気特性データと、の関係を規定した関係規定情報の一例である。
【0031】
低透磁率部の磁気特性データは、例えば、以下のようにして得られる。
設計対象のコアを構成する軟磁性材料(電磁鋼板)の領域の一部を低透磁率化する場合(
図3においては、プレス比率、エッチング比率、添加・照射条件、および溶接条件に関連付ける磁気特性データを作製する場合)、設計対象のコアを構成する軟磁性材料(電磁鋼板)と同じ軟磁性材料のサンプルを用意する。そして、軟磁性材料のサンプルを、
図3に示す作製条件のそれぞれにおいて低透磁率化する。そして、低透磁率化したサンプルの磁気特性データ(透磁率、比透磁率、BH特性、BW特性)を測定することを、それぞれの作製条件(プレス比率=x
1~x
P%、エッチング比率=y
1~y
Q%、添加・照射条件=条件1~R、溶接条件=条件1~S)で作製したサンプルのそれぞれに対して実行することにより磁気特性データが得られる。
【0032】
尚、磁気特性データとして透磁率、比透磁率、BH特性、BW特性の全てを測定する必要はなく、電気機器の特性を評価する為に必要な磁気特性データを適宜選択して必要な磁気特性データのみ測定すればよい。また、
図3に示す磁気特性データ抽出テーブル300では、複数種類の作製条件を含むが、少なくとも1つの作製条件(例えばプレス比率など)を含めば良い。さらに、同じ条件の磁気特性データを既に取得済みである場合は、新規に測定する必要はなく、過去の実績データをそのまま採用することもできる。また、公知文献に記載がある場合は、その磁気特性データを採用しても良い。これら以外にも、ユーザが任意に作成した磁気特性データを採用しても良い。例えば、製造実績は無いが理論から推定される磁気特性データを作成し、採用することができる。これにより、製造前に電気機器の特性を推定することが可能となる。
【0033】
また、低透磁率部材を充填することにより低透磁率部を作製する場合(
図3においては、低透磁率部材の材質に関連付ける磁気特性データを作製する場合)、低透磁率部材と同じ材質のサンプルを用意する。そして、低透磁率部材のサンプルの磁気特性データ(透磁率、比透磁率、BH特性、BW特性)を測定することを、各材質(材質1~T)のサンプルに対して実行することにより磁気特性データが得られる。この場合でも、設計対象のコアを構成する軟磁性材料(電磁鋼板)の領域の一部を低透磁率化する場合と同様に、低透磁率部の作製条件および磁気特性データを適宜選択して、電気機器の特性を評価する為に必要な作製条件および磁気特性データのみ測定すればよい。また、同じ材質の過去の実績データや、公知文献に記載のデータ、ユーザが任意に作成したデータを採用することもできる。
尚、磁気特性データの測定は、軟磁性材料(電磁鋼板)の場合、公知の方法(例えば、単板試験(JIS C 2556)およびエプスタイン試験(JIS C 2550)で実現される。
【0034】
磁気特性データ抽出テーブル300の磁気特性データの欄に記憶される情報(a1~aP、b1~bQ、c1~cR、d1~dS、e1~eT)は、磁気特性データを示す情報ではなく、磁気特性データの記憶先の情報でも良い。また、ここでは、低透磁率部の作製条件と、低透磁率部の磁気特性データと、の関係を規定した関係規定情報が、テーブルである場合を例示する。しかしながら、低透磁率部の作製条件と、低透磁率部の磁気特性データと、の関係を規定した関係規定情報は、テーブルに限定されない。例えば、磁気特性データが比透磁率であり、比透磁率を、作製条件に対応する値を変数とする関数で定めることができる場合、当該関数を、低透磁率部の作製条件と、低透磁率部の磁気特性データと、の関係を規定した関係規定情報としても良い。尚、記憶部102は、コア設計用処理装置100の外部にあっても良い。
【0035】
<<条件データ取得部103>>
条件データ取得部103は、条件データを取得する。条件データは、設計対象のコアの設計条件を示すデータであり、設計対象のコアの基本形状400と、高透磁率部の磁気特性データ500と、磁気特性データ抽出テーブル300から抽出される低透磁率部の磁気特性データ600と、を含む。また、条件データは、電気機器の運転条件700を含んでいても良い。IPMSM200のロータコア211を設計対象のコアとする場合、IPMSM200の運転条件700が条件データに含まれる。条件データに運転条件700が含まれることで、指定された運転条件に適した設計が可能となる。
【0036】
図4は、設計対象のコアの基本形状400の一例を示す図である。
図4では、
図2に示したロータコア211の形状を、設計対象のコアの基本形状400とする場合を例示する。
図4に示すロータコア211は、
図2に示したフラックスバリア213の領域と、永久磁石212が挿入される領域とが、空隙部(空気の領域)401a~401gとなっている。また、前述したように本実施形態では、設計対象のコア(ロータコア211)の形状として、IPMSM200の中心線0に垂直に切った断面における2次元形状を設計する場合を例に挙げて説明する。従って、設計対象のコアの基本形状400も2次元形状である。
【0037】
以上のことから
図4に示す例において、設計対象コアの基本形状400は、ロータコア211の外周面および内周面を外周および内周とする中空円に対し、フラックスバリア213の領域と、永久磁石212が挿入される領域とが、空隙部401a~401gとなっている形状である。すなわち、設計対象のコアを構成する軟磁性材料(電磁鋼板)の外形線を基本形状400とする。尚、
図4でも、
図2と同様に、表記が複雑になるので、1極を構成する部分にのみに符号を付し、その他の7極を構成する部分における符号を省略する。
【0038】
条件データ取得部103は、設計対象のコアの基本形状400の情報として、例えば、設計対象のコアの空隙部となっている領域の座標と、空隙部となっていない領域の座標と、を取得する。本実施形態では、設計対象のコアの基本形状400の情報が、記憶部102に記憶されている場合を例示する。コア設計用処理装置100における、設計対象のコアの基本形状400の情報の取得形態として、例えば、コア設計用処理装置100のユーザインターフェースに対する、設計対象のコアの基本形状400の情報の入力操作、外部装置から送信された、設計対象のコアの基本形状400の情報の受信、および可搬型記憶媒体に記憶された、設計対象のコアの基本形状400の情報の読み出しの少なくとも1つの形態を採用しても良い。
【0039】
高透磁率部の磁気特性データ500は、例えば、以下のようにして得られる。設計対象のコアを構成する軟磁性材料(電磁鋼板)と同じ軟磁性材料のサンプルを用意する。そして、軟磁性材料のサンプルの磁気特性データ(透磁率、比透磁率、BH特性、BW特性)を測定する。高透磁率部の作製条件は1つであるので、高透磁率部の磁気特性データ500(透磁率、比透磁率、BH特性、BW特性のそれぞれ)は、その1つの作製条件に対応したものであればよい。ここで、設計対象のコアを構成する軟磁性材料(電磁鋼板)の磁気特性データを既に取得済みである場合は、新規に測定する必要はなく、過去の実績データをそのまま採用することもできる。また、公知文献に記載がある場合は、その磁気特性データを採用しても良い。これら以外にも、ユーザが任意に作成した磁気特性データを採用しても良い。例えば、製造実績は無いが理論から推定される磁気特性データを作成し、採用することができる。
【0040】
条件データ取得部103は、以上のようにして得られた高透磁率部の磁気特性データ500を取得する。本実施形態では、高透磁率部の磁気特性データ500が、記憶部102に記憶されている場合を例示する。高透磁率部の磁気特性データ500の取得形態として、例えば、コア設計用処理装置100のユーザインターフェースに対する、高透磁率部の磁気特性データ500の入力操作、外部装置から送信された、高透磁率部の磁気特性データ500の受信、および可搬型記憶媒体に記憶された、高透磁率部の磁気特性データ500の読み出し、の少なくとも1つの形態を採用しても良い。
【0041】
条件データ取得部103は、低透磁率部の作製条件と、低透磁率部の磁気特性データと、の関係を規定した関係規定情報を用いて、低透磁率部の作製条件に応じた低透磁率部の磁気特性データ600を取得する。
【0042】
条件データ取得部103は、例えば、以下のようにして、低透磁率部の作製条件に応じた低透磁率部の磁気特性データ600を取得する。
まず、条件データ取得部103は、磁気特性データ抽出テーブル300の磁気特性データの欄のうち、作製条件取得部101により取得された低透磁率部の作製条件に関連づけられている欄に記憶されている情報を参照する。参照した情報が、磁気特性データを示すものである場合、条件データ取得部103は、当該情報を、低透磁率部の作製条件に応じた低透磁率部の磁気特性データ600として取得する。参照した情報が、磁気特性データの記憶先である場合、条件データ取得部103は、当該記憶先にアクセスして当該記憶先に記憶されている磁気特性データを、低透磁率部の作製条件に応じた低透磁率部の磁気特性データ600として取得する。
【0043】
尚、コア設計用処理装置100は、上述した作成条件取得部101を備えていなくてもよい。この場合、条件データ取得部103は関係規定情報を用いることなく、高透磁率部の磁気特性データ500を取得する場合と同様に、低透磁率部の磁気特性データ600を取得することができる。例えば、コア設計用処理装置100のユーザインターフェースに対する、低透磁率部の磁気特性データ600の入力操作、外部装置から送信された、低透磁率部の磁気特性データ600の受信、および可搬型記憶媒体に記憶された低透磁率部の磁気特性データ600の読み出し、の少なくとも1つの形態を採用しても良い。
【0044】
また、条件データ取得部103は、電気機器の運転条件700を示す情報を取得する。本実施形態では、電気機器の運転条件700を示す情報が、記憶部102に記憶されている場合を例示する。電気機器の運転条件700を示す情報の取得形態として、例えば、コア設計用処理装置100のユーザインターフェースに対する、当該情報の入力操作、外部装置から送信された、当該情報の受信、および可搬型記憶媒体に記憶された、当該情報の読み出しの少なくとも1つの形態を採用しても良い。IPMSM200のロータコア211を設計対象のコアとする場合、IPMSM200の運転条件700として、例えば、回転数、励磁電流、進角、運転時間比率が含まれても良い。尚、或る運転条件700に含まれる運転時間比率は、全運転時間に対する、当該運転条件700に含まれる回転数、励磁電流、および進角で運転される時間の割合を百分率で表したものである。
【0045】
条件データ取得部103は、以上のようにして設計対象のコアの基本形状400、高透磁率部の磁気特性データ500、低透磁率部の磁気特性データ600、および電気機器の運転条件700を取得し、これらを含む条件データを配置決定部104に出力する。
【0046】
<<配置決定部104>>
配置決定部104は、条件データ取得部103により取得された条件データに基づいて、設計対象のコアにおける高透磁率部および低透磁率部の配置を決定する。本実施形態では、配置決定部104が、設計対象のコアの基本形状400に対して高透磁率部および低透磁率部の配置を決定する場合を例示する。
【0047】
配置決定部104は、設定部104aと、電磁界解析部104bと、決定部104cと、を有する。
設定部104aは、設計対象のコアの基本形状400に対し高透磁率部および低透磁率部の仮配置を設定する。
【0048】
図2を参照しながら説明したように、設計対象のコアの基本形状400において、フラックスバリア213の領域と、永久磁石212が挿入される領域とが、空隙部401a~401gとなっている。本実施形態では、設計対象のコアの基本形状400において空隙部となっている領域(フラックスバリア213の領域と、永久磁石212が挿入される領域)には高透磁率部および低透磁率部が配置されないようにする場合を例示する。従って、設定部104aは、設計対象のコアの基本形状400において空隙部401a~401gとなっている領域には、高透磁率部および低透磁率部を仮配置しない。ただし、前述したように、設計対象のコアの全ての領域に対し、高透磁率部および低透磁率部を仮配置しても良い。
【0049】
設計対象のコアにおける高透磁率部および低透磁率部の仮配置を設定する方法は特に限定されないが、形状最適化のアルゴリズムを用いて、設計対象のコアにおける高透磁率部および低透磁率部の配置を決定する場合、当該アルゴリズムに従って、設計対象のコアに高透磁率部および低透磁率部を仮配置する。
【0050】
非特許文献1に記載されているOn-Off法を、メタヒューリスティクス手法の一つである遺伝的アルゴリズムを用いて実行する場合、設定部104aは、例えば、設計対象のコアの基本形状400の領域のうち、設計対象のコアの基本形状400において空隙部となっている領域を除く領域に対して複数のセルを設定する。このとき、設計対象のコアの基本形状400の領域のうち、設計対象のコアの基本形状400において空隙部となっている領域を除く領域の全てがいずれか1つのセルに属するようにする。
【0051】
そして、設定部104aは、高透磁率部の領域であることを示す情報と、低透磁率部であることを示す情報と、のうちのいずれかを、複数のセルのそれぞれに設定することにより、仮配置を設定する。例えば、設定部104aは、高透磁率部の領域であることを示す情報として「1」を設定し、低透磁率部であることを示す情報として「0」を設定する。このように、高透磁率部の領域であることを示す情報と、低透磁率部であることを示す情報と、のいずれかを複数のセルにそれぞれ設定することにより、1つの仮配置の設定がなされる。
【0052】
1回目の仮配置の設定の際には、設定部104aは、乱数を用いて、複数の仮配置を候補解として設定する。2回目以降の仮配置の際には、設定部104aは、後述する電気機器のモデルの特性に基づいて、形状最適化のアルゴリズム(例えば遺伝的アルゴリズム)に従って、仮配置(候補解)を更新する。
【0053】
尚、形状最適化のアルゴリズムは、On-Off法に限定されない。例えば、一般的なOn-Off法に代えて非特許文献1に記載されているNGnetを用いた手法を用いても良い。また、これらの手法以外のトポロジー最適化の手法を用いても良い。例えば、特願2020-00622号明細書に記載されているように、高透磁率部の一部の領域に対して低透磁率部を配置し、配置した低透磁率部に対する写像を施して低透磁率部の形状、大きさ、位置、および数のうちの少なくとも1つを変更して最適な低透磁率部の形状を探索してもよい。このようにする場合、候補解は、写像の内容を示す情報になる。また、高透磁率部の領域のうち、写像を施すことにより低透磁率部となった領域を低透磁率部とすることと、低透磁率部の領域のうち、写像を施すことにより高透磁率部の領域となった領域を高透磁率部とすることにより、仮配置が更新される。この他、公知のトポロジー最適化の手法を用いても、総当たり法等の公知の組み合わせ最適化手法を用いても良い。
【0054】
電磁界解析部104bは、設定部104aにより設定された仮配置を有する設計対象のコアを含む電気機器のモデルに対する電磁界解析を実行する。本実施形態では、電磁界解析部104bは、条件データ取得部103により取得された条件データに含まれる電気機器の運転条件700の下で、設定部104aにより設定された仮配置を有する設計対象のコアを含む電気機器のモデルに対する電磁界解析を実行する。前述したように設定部104aにより複数の仮配置が設定される。従って、電磁界解析部104bは、複数の仮配置(候補解)を有する設計対象のコアを含む電気機器のモデルのそれぞれに対して電磁界解析を実行する。従って、電磁界解析の結果は、複数の仮配置(候補解)の数だけ得られる。尚、電気機器のモデルとは、数値解析を実行することができるように実際の電気機器を複数の微小領域(メッシュ)で近似したものであり、解析モデル等とも称される。
【0055】
電磁界解析部104bは、励磁条件を含む電磁場解析条件に従って、マックスウェルの方程式に基づき、有限要素法を用いて、各微小領域(メッシュ)における磁束密度ベクトルBと渦電流ベクトルJeを計算する。励磁条件は、条件データ取得部103により取得された条件データに含まれる電気機器の運転条件700に基づいて定められる。尚、各微小領域における磁束密度ベクトルBと渦電流ベクトルJeとを計算することができれば、有限要素法以外の方法(差分法等)を用いて、各微小領域における磁束密度ベクトルBと渦電流ベクトルJeを計算しても良い。
【0056】
磁束密度ベクトルBと渦電流ベクトルJeを計算するための基礎方程式は、一般に、以下の(1)式~(4)式で与えられる。
【0057】
【0058】
(1)式~(4)式において、μは、透磁率[H/m]であり、Aは、ベクトルポテンシャル[T・m]であり、σは、導電率[S/m]であり、tは、時間[s]であり、J0は、励磁電流密度[A/m2]であり、φは、スカラーポテンシャル[V]、Jeは、渦電流密度[A/m2]、である。
(1)式および(2)式を連立して解いて、ベクトルポテンシャルAとスカラーポテンシャルφを求めた後、(3)式、(4)式から、磁束密度ベクトルBと渦電流ベクトルJeが計算される。
【0059】
電磁界解析においては、計算した磁束密度ベクトルBに対応する透磁率をBH特性から求め直して、磁束密度ベクトルBと渦電流ベクトルJeとを計算し直すことを、磁束密度ベクトルBが収束条件を満たすまで繰り返し実行する収束計算を実行する。BH特性は、磁束密度と磁界強度との非線形特性を示すものである。従って、BH特性を用いて収束計算を実行すると、磁束密度ベクトルBの収束に時間がかかる場合がある。そこで、この収束計算の際に、すべての大きさの磁束密度ベクトルBに対して非線形特性を有するBH特性を用いるのではなく、ある1つの大きさの磁束密度ベクトルBに対する磁界強度ベクトルHを非線形特性から求め、この時の磁束密度ベクトルBと磁界強度ベクトルHとの関係から求まる透磁率または比透磁率が、すべての大きさの磁束密度ベクトルBに対して適用できると仮定しても良い。このように仮定すると、磁束密度と磁界強度との関係が線形となる。従って、収束計算において磁束密度ベクトルBが収束条件を満たすまでの時間が短くなる。ただし、1つの透磁率または比透磁率を求めた際の磁束密度ベクトルBとは異なる大きさの磁束密度ベクトルBに対する磁界強度ベクトルHは、磁束密度と磁界強度との関係が線形となる仮定をした場合の値と、非線形特性のBH特性から求められる値とは、異なる場合がある。これに伴って、電磁界解析の結果が異なり、その結果として得られる電気機器の特性も異なる(線形を仮定した電磁界解析は精度が落ちる)場合がある。尚、透磁率または比透磁率を1つに決めるための磁束密度ベクトルBの大きさは任意に設定できるが、当該電気機器の運転条件におけるコア内の平均磁束密度と同程度の大きさとすることで、電磁界解析の精度低下を抑制することができる。
【0060】
従って、電磁界解析の高精度化よりも計算の高速化を重視する場合には、高透磁率部および低透磁率部の少なくとも一方に対する電磁界解析の際に、非線形特性を有するBH特性を用いずに、1つの透磁率または1つの比透磁率を用いるのが好ましい。一方、計算の高速化よりも電磁界解析の高精度化を重視する場合には、高透磁率部および低透磁率部のいずれにおいても非線形特性を有するBH特性を用いて電磁界解析を実行するのが好ましい。
【0061】
高透磁率部のBH特性および透磁率または比透磁率、低透磁率部のBH特性および透磁率または比透磁率は、それぞれ、条件データ取得部103により取得された条件データに含まれる、高透磁率部の磁気特性データ500、低透磁率部の磁気特性データ600により特定される。
【0062】
尚、有限要素法により電磁界を解析する手法は、「中田高義、高橋則雄著、「電気工学の有限要素法」、第2版、森北出版株式会社、1986年4月」等に詳細に記載されているように、一般的な手法であるので、ここでは、その詳細な説明を省略する。
【0063】
そして、電磁界解析部104bは、電磁界解析の結果に基づいて、電気機器のモデルの特性を算出する。前述したように電磁界解析の結果(各微小領域(メッシュ)における磁束密度ベクトルBおよび渦電流ベクトルJe)は、複数の仮配置(候補解)の数だけ得られる。従って、電気機器のモデルの特性も、複数の仮配置(候補解)の数だけ得られる。
【0064】
本実施形態では、電磁界解析部104bは、条件データ取得部103により取得された条件データに含まれる電気機器の運転条件700の下で、電気機器のモデルの特性を算出する。電気機器の特性としては、例えば、ロータのトルク、コアの鉄損、モータの効率等が挙げられる。このように電気機器のモデルの特性は、電気機器を構成する部品の特性を含む概念である。例えば、ロータ210の平均トルクを電気機器のモデルの特性として算出する場合、公知のマクスウェル応力法や節点力法により求められる。例えばマクスウェル法では、電磁界解析部104bは、各微小領域(メッシュ)における磁束密度ベクトルBに基づいて、以下の(5)式により、各微小領域におけるトルクFを計算し、計算したトルクFに基づいて、ロータ210の平均トルクを算出する。
【0065】
【0066】
(5)式において、nx、nyは、それぞれ、x軸、y軸方向の単位ベクトルであり、μ0は、真空の透磁率である。∫dΓは、電磁力を求める物体を囲む閉曲線に沿った線積分であることを示す。また、||B||は、磁束密度ベクトルBの大きさであり、Bx、Byは、それぞれ、磁束密度ベクトルBのx軸成分、y軸成分である。
【0067】
決定部104cは、電磁界解析部104bによる電磁界解析により得られた電気機器のモデルの特性と、設計対象のコアにおける高透磁率部および低透磁率部の仮配置と、に基づいて、設計対象のコアにおける高透磁率部および低透磁率部の配置を決定する。
【0068】
本実施形態では、決定部104cは、電磁界解析部104bにより算出された電気機器のモデルの特性を示す値の中に所定の条件を満たす値があるか否かを判定する。電気機器のモデルの特性が、ロータ210の平均トルクである場合、所定の条件は、例えば、ロータ210の平均トルクの値が、所定値以上であるという条件である。所定値は、例えば、IPMSM200に要求される値に基づいて定められる。
【0069】
この判定の結果、電気機器のモデルの特性を示す値の中に所定の条件を満たす値がある場合、決定部104cは、当該所定の条件を満たす値に対応する仮配置(候補解)を、設計対象のコアにおける高透磁率部および低透磁率部の配置として決定する。例えば、電気機器のモデルの特性が、ロータ210の平均トルクである場合、決定部104cは、所定値以上のロータ210の平均トルクの値に対応する仮配置(候補解)を、設計対象のコアにおける高透磁率部および低透磁率部の配置として決定する。
【0070】
複数の仮配置(候補解)のそれぞれに対応する電気機器のモデルの特性が電磁界解析部104bにより算出される場合、決定部104cは、所定の条件を満たす電気機器のモデルの特性を示す値のうち、当該特性が最も良いことを示す値に対応する仮配置を当該複数の仮配置から選択して、設計対象のコアにおける高透磁率部および低透磁率部の配置として決定しても良い。例えば、電気機器のモデルの特性がロータ210の平均トルクである場合、決定部104cは、複数の仮配置(候補解)のうち、ロータ210の平均トルクの値が最も大きくなる仮配置を、設計対象のコアにおける高透磁率部および低透磁率部の配置として決定する。
【0071】
一方、電気機器のモデルの特性を示す値の中に所定の条件を満たす値がない場合、決定部104cは、そのことを示す情報を、設定部104aに出力する。設定部104aは、設計対象のコアにおける高透磁率部および低透磁率部の仮配置を再設定する。このとき、設定部104aは、既に設定している仮配置と異なる仮配置を再設定する。複数の仮配置を再設定する場合、設定部104aは、複数の仮配置の少なくとも1つが既に設定している仮配置と異なる仮配置を再設定する。また、設定部104aは、仮配置の数を変更しても良い。
【0072】
そして、再設定後の仮配置に基づいて、電磁界解析部104bの処理が実行される。このように、本実施形態では、設定部104aおよび電磁界解析部104bの処理が繰り返し実行され得る。
【0073】
そして、決定部104cは、設定部104aおよび電磁界解析部104bの繰り返し処理の実行回数が所定値である場合、当該繰り返し処理の実行回数が所定値であるときに既に算出した電気機器のモデルの特性を示す値のうち、当該特性が最も良いことを示す値が得られる仮配置(候補解)を当該複数の仮配置から選択して、設計対象のコアにおける高透磁率部および低透磁率部の配置として決定しても良い。例えば、電気機器のモデルの特性が、ロータ210の平均トルクである場合、決定部104cは、ロータ210の平均トルクの値が所定値以上でない場合であっても、当該繰り返し処理の実行回数が所定値であるときに既に算出したロータ210の平均トルクのうち、最大の平均トルクに対応する仮配置(候補解)を、設計対象のコアにおける高透磁率部および低透磁率部の配置として決定する。
【0074】
複数の仮配置(候補解)のそれぞれに対応する電気機器のモデルの特性が電磁界解析部104bにより算出される場合においても、決定部104cは、当該繰り返し処理の実行回数が所定値であるときに既に算出した電気機器のモデルの特性を示す値のうち、当該特性が最も良いことを示す値が得られる仮配置を当該複数の仮配置から選択して、設計対象のコアにおける高透磁率部および低透磁率部の配置として決定しても良い。例えば、電気機器のモデルの特性が、ロータ210の平均トルクである場合、決定部104cは、ロータ210の平均トルクの値が所定値以上である仮配置(候補解)が1つもない場合であっても、当該繰り返し処理の実行回数が所定値であるときに既に算出したロータ210の平均トルクのうち、最大の平均トルクに対応する仮配置(候補解)を、設計対象のコアにおける高透磁率部および低透磁率部の配置として決定する。
【0075】
前述した繰り返し処理の実行回数と比較される所定値として、形状最適化のアルゴリズム(例えば遺伝的アルゴリズム)において一般的に用いられる値が用いられる。
以上のように、設定部104aおよび電磁界解析部104bの繰り返し処理の実行回数が所定値である場合には、電気機器のモデルの特性が、所定の条件を満たしていなくても、設計対象のコアにおける高透磁率部および低透磁率部の配置を決定するようにすれば、計算時間が過大になることを防止することができると共に、設計対象のコアにおける高透磁率部および低透磁率部の配置が決定されないこと(いわゆる解なし)を防止することができる。
【0076】
以上のように本実施形態では、電気機器のモデルの特性が、所定の条件を満たすという条件と、設定部104aおよび電磁界解析部104bの繰り返し処理の実行回数が所定値であるという条件と、の少なくとも一方の条件を満たす場合に所定の計算終了条件を満たすとし、所定の計算終了条件を満たしたときに、設計対象のコアにおける高透磁率部および低透磁率部の配置が決定される場合を例示する。
【0077】
<<出力部105>>
出力部105は、配置決定部104(決定部104c)により決定された、設計対象のコアにおける高透磁率部および低透磁率部の配置を示す情報を出力する。出力部105は、例えば、設計対象のコアにおける高透磁率部の領域および低透磁率部の領域を特定する情報を出力する。設計対象のコアにおける高透磁率部の領域および低透磁率部の領域を特定する情報は、例えば、設計対象のコアにおける高透磁率部の領域の座標と、設計対象のコアにおける低透磁率部の領域の座標とを含んでいても良い。また、On-Off法を用いた形状最適化を実行する場合、設計対象のコアにおける高透磁率部の領域および低透磁率部の領域を特定する情報は、各セルの座標と、各セルが高透磁率部および低透磁率部のいずれであるかを示す情報を含んでいても良い。出力部105による情報の出力先は特に限定されない。本実施形態では、コンピュータディスプレイ110であるが、これと共に、あるいはこれ代えて、例えば外部装置への送信と、解析装置300の内部または外部の記憶媒体への記憶と、のうち、少なくとも1つの形態などを採用してもよい。
【0078】
そして、設計対象のコアにおける高透磁率部および低透磁率部の配置に基づいて、設計対象のコアの設計が実行される。設計対象のコアの設計は、設計者が行っても、コア設計用処理装置100が行ってもよい。尚、コアの設計には、当該コアの設計図に含める情報を設定することが含まれる。コアの設計においては、例えば、コアの外形および各部の形状、大きさ、および位置を特定するための具体的な数値情報や、コアの材質および製造方法等が設定される。本実施形態では、一般的なコアの設計において設定される情報に加えて、例えば、低透磁率部の形状、大きさ、および位置を特定するための具体的な数値情報と、低透磁率部の作製条件を示す情報とが設定される。
【0079】
<コア設計用処理方法>
次に、
図5のフローチャートを参照しながら、コア設計用処理装置100を用いたコア設計用処理方法の一例を説明する。尚、
図5のフローチャートが開始する前に、磁気特性データ抽出テーブル300が記憶部102に記憶されているものとする。
【0080】
まず、ステップS501において、作製条件取得部101は、低透磁率部の作製条件を1つ取得する。
次に、ステップS502において、条件データ取得部103は、条件データを取得する。条件データには、設計対象のコアの基本形状400、高透磁率部の磁気特性データ500、低透磁率部の磁気特性データ600、および電気機器の運転条件700が含まれる。低透磁率部の磁気特性データ600については、ステップS501で取得された低透磁率部の作製条件に対応する低透磁率部の磁気特性データ600が、磁気特性データ抽出テーブル300を用いて取得される。
【0081】
次に、ステップS503において、配置決定部104は、ステップS502で取得された条件データに基づいて、設計対象のコアにおける高透磁率部および低透磁率部の配置を決定する。ステップS503の詳細については、
図6を参照しながら後述する。
【0082】
次に、ステップS504において、出力部105は、ステップS503で決定された設計対象のコアにおける高透磁率部および低透磁率部の配置を示す情報を出力する。
次に、ステップS505において、設計者は、ステップS505で出力された、設計対象のコアにおける高透磁率部および低透磁率部の配置を示す情報を参照して、設計対象のコアを設計する。ステップS505の設計ステップが終了すると、
図5のフローチャートは終了する。
【0083】
尚、前述したように、設計対象のコアの設計は、コア設計用処理装置100が行ってもよい。このようにする場合、コア設計用処理装置100は、設計対象のコアにおける高透磁率部および低透磁率部の配置に基づいて、設計対象のコアを設計する不図示の設計部を備える。このようにする場合、
図5のフローチャートは、例えば、以下のように変更される。まず、ステップS504において、出力部105は、設計対象のコアにおける高透磁率部および低透磁率部の配置を示す情報を、解析装置300の内部に記憶する。次に、ステップS505において、不図示の設計部は、設計対象のコアにおける高透磁率部および低透磁率部の配置に基づいて、設計対象のコアを設計する。このステップS505の処理が終了した後、出力部105は、設計対象のコアの設計内容を示す情報を出力する。
【0084】
次に、
図6のフローチャートを参照しながら、
図5のステップS503の詳細な処理の一例を説明する。
まず、ステップS601において、設定部104aは、設計対象のコアの基本形状400に対し高透磁率部および低透磁率部の仮配置(候補解)を設定する。ステップS601において、設定部104aは、複数の仮配置(候補解)を設定しても良い。1回目のステップS601においては、設定部104aは、例えば、乱数を用いて、仮配置(候補解)を設定する。2回目以降のステップS601においては、設定部104aは、後述するステップS603で算出された電気機器のモデルの特性に基づいて、形状最適化のアルゴリズム(例えば遺伝的アルゴリズム)に従って、仮配置(候補解)を更新する。
【0085】
次に、ステップS602において、電磁界解析部104bは、ステップS601で設定された仮配置を有する設計対象のコアを含む電気機器のモデルに対する電磁界解析を実行する。ステップS601において複数の仮配置が設定された場合、電磁界解析部104bは、複数の仮設定を有する設計対象のコアを含む電気機器のモデルそれぞれに対して電磁界解析を実行する。
【0086】
次に、ステップS603において、電磁界解析部104bは、ステップS602における電磁界解析の結果に基づいて、電気機器のモデルの特性を算出する。ステップS602において複数の仮設定を有する設計対象のコアを含む電気機器のモデルそれぞれに対して電磁界解析が実行された場合、電磁界解析部104bは、電磁界解析の結果のそれぞれに基づいて、電気機器のモデルの特性をそれぞれ算出する。
【0087】
次に、ステップS604において、決定部104cは、所定の計算終了条件を満たすか否かを判定する。決定部104cは、電気機器のモデルの特性が所定の条件を満たすという条件と、設定部104aおよび電磁界解析部104bの繰り返し処理の実行回数が所定値であるという条件と、の少なくとも一方の条件を満たす場合に所定の計算終了条件を満たすと判定し、そうでない場合に所定の計算終了条件を満たさないと判定する。この判定の結果、所定の計算終了条件を満たさない場合(ステップS604でNOの場合)、ステップS601の処理が再び実行される。
【0088】
一方、所定の計算終了条件を満たす場合(ステップS604でYESの場合)、ステップS605の処理が実行される。ステップS605において、決定部104cは、ステップS603で算出された電気機器のモデルの特性に基づいて、設計対象のコアにおける高透磁率部および低透磁率部の配置を決定する。電気機器のモデルの特性が所定の条件を満たすことにより所定の計算終了条件を満たすと判定した場合、決定部104cは、電気機器のモデルの特性が所定の条件を満たす場合の、設計対象のコアにおける高透磁率部および低透磁率部の仮配置(候補解)を、設計対象のコアにおける高透磁率部および低透磁率部の配置として決定する。また、ステップS601~S604の繰り返し処理の実行回数が所定値であることにより所定の計算終了条件を満たすと判定した場合、決定部104cは、これまでのステップS603の処理で算出された電気機器のモデルの特性を示す値のうち、当該特性が最も良いことを示す値が得られる仮配置(候補解)を、設計対象のコアにおける高透磁率部および低透磁率部の配置として決定する。尚、一般的な遺伝的アルゴリズムに基づけば、当該特性が最も良いことを示す値は、最新のステップS603の処理で算出されることになる。特性が良い仮配置(候補解)は、次の繰り返し処理のステップS601で再び設定されるからである。
図6のステップS605の処理が終了すると、
図5のフローチャートに戻り、ステップS504の処理が実行される。
【0089】
<まとめ>
以上のように本実施形態では、コア設計用処理装置100は、設計対象のコアの基本形状400、高透磁率部の磁気特性データ500、および低透磁率部の磁気特性データ600を含む条件データを取得し、取得した条件データに基づいて、設計対象のコアにおける高透磁率部および低透磁率部の配置を決定する。コア設計用処理装置100は、設計対象のコアにおける高透磁率部および低透磁率部の配置を決定するために、設計対象のコアにおける高透磁率部および低透磁率部の仮配置を設定し、設定した仮配置を有するコアを含む電気機器のモデルに対する電磁界解析し、電磁界解析により得られた電気機器のモデルの特性と、設計対象のコアにおける高透磁率部および低透磁率部の仮配置とに基づいて、設計対象のコアにおける高透磁率部および低透磁率部の配置を決定する。従って、トポロジー最適化によってコアの形状を設計するにあたり、デザイン領域を構成する各セルを、コア材(磁性体)と空気との二者択一とする場合よりも、設計対象のコアにおける高透磁率部および低透磁率部の配置として、回転電機のトルクなどの電気機器の特性をより向上させることができる配置を探索することができる。コアにおける空隙部の領域を可変にする場合のように、磁性体が空気に囲まれて宙に浮くような、実現性が乏しい形状がコアの形状として探索されることを防止することができる。よって、形状の制約を可及的に受けずに、電気機器の特性を向上させるコアを設計することが可能になる。また、コアの形状として機械的強度が低い形状が探索されることを防止することができる。設計対象のコアがロータコアである場合、コアの形状として機械的強度が低い形状が探索されると、コアの形状として実現可能な形状が探索されたとしても、高回転数に耐えられない形状が探索される可能性がある。これに対し本実施形態では、磁性体が空気に囲まれて浮くような形状が排除されると共に、低透磁率部が構造部材として機能するため、コアの形状を高回転数に耐えられる形状とすることが可能になる。よって、実現性が高く且つ電気機器の特性向上が可能なコアを設計することができる。
【0090】
また、本実施形態では、コア設計用処理装置100は、電気機器の運転条件700をさらに含む条件データを取得し、当該電気機器の運転条件700の下で電磁界解析を実行する。従って、電気機器の運転条件700ごとに、コアにおける高透磁率部および低透磁率部の配置を決定することができる。
【0091】
また、本実施形態では、コア設計用処理装置100は、低透磁率部の作製条件を取得する。そして、コア設計用処理装置100は、低透磁率部の作製条件と、低透磁率部の磁気特性データ600との関係を規定した関係規定情報を用いて、取得した低透磁率部の作製条件に応じた低透磁率部の磁気特性データ600を取得する。従って、実行可能な作製条件の低透磁率部の配置を決定することができる。また、設計対象のコアの形状や大きさ等に応じて適切な作製条件を容易に選択することができる。
【0092】
また、本実施形態では、コア設計用処理装置100は、電磁界解析により得られた電気機器のモデルの特性が、所定の条件を満たす場合の、設計対象のコアにおける高透磁率部および低透磁率部の仮配置を、設計対象のコアにおける高透磁率部および低透磁率部の配置として決定する。従って、電気機器に求められる特性を可及的に満たすように、高透磁率部および低透磁率部の配置を決定することができる。
【0093】
また、本実施形態では、コア設計用処理装置100は、設計対象のコアの基本形状400として、空隙部が含まれている基本形状400を含む条件データを取得する。そして、コア設計用処理装置100は、当該空隙部には、高透磁率部および低透磁率部を仮配置しない。従って、設計対象のコアにおける磁束の流れを規制するために必要な空隙(空気の領域)に高透磁率部および低透磁率部が配置されることを防止することができる。
【0094】
また、本実施形態では、コア設計用処理装置100は、所定の計算終了条件を満たさない場合、設計対象のコアにおける高透磁率部および低透磁率部の仮配置を再設定する。コア設計用処理装置100は、設計対象のコアにおける高透磁率部および低透磁率部の仮配置の設定と、電磁界解析とを、所定の計算終了条件を満たすまで繰り返し実行する。従って、電気機器に求められる特性を可及的に満たすように、高透磁率部および低透磁率部の配置を決定することができる。
【0095】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態を説明する。第1実施形態では、高透磁率部の磁気特性データ500と低透磁率部の磁気特性データ600とをそれぞれ1つずつ用いた場合の、設計対象のコアにおける高透磁率部および低透磁率部の配置を決定する場合を例示した。これに対し本実施形態では、低透磁率部の磁気特性データ600を異ならせて、高透磁率部の磁気特性データ500と低透磁率部の磁気特性データ600のそれぞれとを用いた場合の、設計対象のコアにおける高透磁率部および低透磁率部の配置を決定し、決定した配置のうちの1つを選択する場合について説明する。このように本実施形態と第1実施形態は、低透磁率部の磁気特性データ600として複数の磁気特性データを用いることによる構成および処理が主として異なる。従って、本実施形態の説明において第1実施形態と同一の部分については、
図1~
図6に付した符号と同一の符号を付す等して詳細な説明を省略する。
<コア設計用処理装置100>
図7は、コア設計用処理装置700の機能的な構成の一例を示す図である。コア設計用処理装置700のハードウェアは、例えば、第1実施形態のコア設計用処理装置100のハードウェアと同じもので実現される。
【0096】
図7において、本実施形態では、コア設計用処理装置700は、作製条件取得部101と、記憶部102と、条件データ取得部103と、配置決定部104と、出力部105と、に加え、選択部701を備える。以下に、本実施形態のコア設計用処理装置100が有する各機能ブロックについて説明する。
【0097】
<<作製条件取得部101>>
作製条件取得部101は、第1実施形態で説明したように、低透磁率部の作製条件を取得する。ただし、本実施形態では、作製条件取得部101は、低透磁率部の複数の作製条件を取得する。作製条件取得部101は、作製方法が相互に異なる複数の作製条件を取得しても、同一の作製方法における相互に異なる複数の作製条件を取得しても、作製方法が相互に異なる複数の作製条件と同一の作製方法における相互に異なる複数の作製条件との双方を取得しても良い。
【0098】
図3に示す例において、作製条件取得部101は、作製方法が相互に異なる複数の作製条件として、例えば、プレス比率(=x
1%)と、添加・照射条件(=条件1)とを取得しても良い。また、作製条件取得部101は、同一の作製方法における相互に異なる複数の作製条件として、例えば、プレス比率=x
1%と、プレス比率=x
2%とを取得しても良い。尚、作製条件取得部101が取得する、複数の低透磁率部の作製条件の数は、2に限定されず、3以上であっても良い。
【0099】
<<記憶部102>>
記憶部102は、第1実施形態で説明した記憶部102と同じである。
【0100】
<<条件データ取得部103>>
条件データ取得部103は、第1実施形態で説明したように、条件データを取得する。第1実施形態で説明したように、条件データは、設計対象のコアの設計条件を示すデータであり、設計対象のコアの基本形状400、高透磁率部の磁気特性データ500、および低透磁率部の磁気特性データ600を含む。また、条件データは、電気機器の運転条件700を含んでいても良い。ただし、本実施形態では、条件データ取得部103は、作製条件取得部101により取得された低透磁率部の複数の作製条件に対応する複数の低透磁率部の磁気特性データ600を取得する。本実施形態でも第1実施形態と同様に、条件データ取得部103が、低透磁率部の作製条件と、低透磁率部の磁気特性データと、の関係を規定した関係規定情報の一例として、磁気特性データ抽出テーブル300を用いて低透磁率部の磁気特性データ600を取得する場合を例示する。
【0101】
例えば、作製条件取得部101により、プレス比率(=x1%)と、添加・照射条件(=条件1)と、が取得された場合、条件データ取得部103は、磁気特性データ抽出テーブル300を参照して、磁気特性データa1、b1を取得する。また、例えば、作製条件取得部101により、プレス比率=x1%と、プレス比率=x2%と、が取得された場合、条件データ取得部103は、磁気特性データ抽出テーブル300を参照して、磁気特性データa1、a2を取得する。尚、条件データ取得部103が取得する複数の低透磁率部の磁気特性データ600の数は、作製条件取得部101により取得された複数の低透磁率部の作製条件の数と同じである。
【0102】
尚、第1実施形態で説明したように、磁気特性データ抽出テーブル300において参照した情報が、磁気特性データを示すものである場合、条件データ取得部103は、当該情報を、低透磁率部の作製条件に応じた低透磁率部の磁気特性データ600として取得する。一方、磁気特性データ抽出テーブル300において参照した情報が、磁気特性データの記憶先である場合、条件データ取得部103は、当該記憶先にアクセスして当該記憶先に記憶されている磁気特性データを、低透磁率部の作製条件に応じた低透磁率部の磁気特性データ600として取得する。
【0103】
設計対象のコアの基本形状400、高透磁率部の磁気特性データ500、および電気機器の運転条件700については、第1実施形態で説明と同様に、条件データ取得部103により、それぞれ1つずつ取得される。
条件データ取得部103は、以上のようにして取得した、設計対象のコアの基本形状400、高透磁率部の磁気特性データ500、複数の低透磁率部の磁気特性データ600、および電気機器の運転条件700を含む条件データを配置決定部104に出力する。
【0104】
<<配置決定部104>>
配置決定部104は、第1実施形態で説明したように、条件データ取得部103により取得された条件データに基づいて、設計対象のコアにおける高透磁率部および低透磁率部の配置を決定する。また、本実施形態でも第1実施形態と同様に、配置決定部104が、条件データに含まれる、設計対象のコアの基本形状400に対する高透磁率部および低透磁率部の配置を決定する場合を例示する。ただし、本実施形態では、配置決定部104は、条件データ取得部103により取得された複数の低透磁率部の磁気特性データ600を1つずつ用いて、設計対象のコアにおける高透磁率部および低透磁率部の配置を、(1つの)低透磁率部の磁気特性データ600ごとに決定する。
【0105】
具体的に、配置決定部104は、条件データ取得部103で取得された複数の低透磁率部の磁気特性データ600の1つを選択する。このようにして選択された低透磁率部の磁気特性データ600を用いて、設定部104a、電磁界解析部104b、および決定部104cは、第1実施形態で説明した処理を実行し、設計対象のコアにおける高透磁率部および低透磁率部の配置を決定する。具体的に、電磁界解析部104bは、前述したようにして選択された低透磁率部の磁気特性データ600を用いて、第1実施形態で説明した収束計算を実行する。
【0106】
そして、設定部104a、電磁界解析部104b、および決定部104cは、条件データ取得部103で取得された複数の低透磁率部の磁気特性データ600の全てについて、第1実施形態で説明した処理を個別に実行し、設計対象のコアにおける高透磁率部および低透磁率部の配置を1つずつ決定する。以上のようにして、設計対象のコアにおける高透磁率部および低透磁率部の配置が、複数の低透磁率部の磁気特性データ600の数と同じ数だけ決定される。
【0107】
<<選択部701>>
選択部701は、配置決定部104(決定部104c)により決定された、設計対象のコアにおける高透磁率部および低透磁率部の複数の配置のうちの1つを選択する。
【0108】
選択部701は、例えば、電磁界解析部104bにより求められた電気機器のモデルの特性に基づいて、設計対象のコアにおける高透磁率部および低透磁率部の複数の配置のうちの1つを選択しても良い。例えば、選択部701は、設計対象のコアにおける高透磁率部および低透磁率部の複数の配置のうち、電気機器のモデルの特性が最も良いことを示す配置を1つ選択しても良い。具体的に、電気機器のモデルの特性が、ロータ210の平均トルクである場合、選択部701は、設計対象のコアにおける高透磁率部および低透磁率部の複数の配置のうち、ロータ210の平均トルクの値が最も高くなる配置を1つ選択しても良い。
【0109】
尚、選択部701は、必ずしも、電気機器のモデルの特性に基づいて、設計対象のコアにおける高透磁率部および低透磁率部の複数の配置のうちの1つを選択する必要はない。例えば、電気機器のモデルの特性に加えてまたは代えて、設計対象のコアにおける低透磁率部の大きさ(面積または体積)と位置とのうち、少なくとも一方に基づいて、設計対象のコアにおける高透磁率部および低透磁率部の複数の配置のうちの1つを選択しても良い。選択部701は、設計対象のコアにおける高透磁率部に対する低透磁率部の大きさ(面積または体積)の割合が所定値以下の配置を選択してもよい。このようにすれば、低透磁率部の作製負荷を軽減することができる。また、選択部701は、設計対象のコアにおいて予め設定された領域に低透磁率部が含まれない配置を選択しても良い。このようにすれば、例えば、設計対象のコアにおいて低透磁率部を作製しづらい領域に低透磁率部が配置されることを防止することができる。また、設計対象のコアにおける低透磁率部の大きさや位置に基づいて複数の配置を選択可能な場合、選択部701は、当該複数の配置のうち、電気機器のモデルの特性が最も良いことを示す配置を1つ選択しても良い。
【0110】
<<出力部105>>
第1実施形態では出力部105は、配置決定部104(決定部104c)により決定された、設計対象のコアにおける高透磁率部および低透磁率部の配置を示す情報を出力する。これに対し本実施形態では、出力部105は、選択部701により選択された、設計対象のコアにおける高透磁率部および低透磁率部の配置を示す情報を出力する。出力部105が出力する情報は、第1実施形態で説明した情報と同じである。
【0111】
<コア設計用処理方法>
次に、
図8のフローチャートを参照しながら、本実施形態のコア設計用処理装置700を用いたコア設計用処理方法の一例を説明する。尚、第1実施形態で説明した
図5のフローチャートと同様に、
図8のフローチャートが開始する前に、磁気特性データ抽出テーブル300が記憶部102に記憶されているものとする。
【0112】
まず、ステップS801において、作製条件取得部101は、低透磁率部の複数の作製条件を取得する。
【0113】
次に、ステップS802において、条件データ取得部103は、条件データを取得する。条件データには、設計対象のコアの基本形状400、高透磁率部の磁気特性データ500、低透磁率部の磁気特性データ600、および電気機器の運転条件700が含まれる。低透磁率部の磁気特性データ600については、ステップS801で取得された低透磁率部の複数の作製条件のそれぞれに対応する複数の低透磁率部の磁気特性データ600が、磁気特性データ抽出テーブル300を用いて取得される。
【0114】
次に、ステップS803において、配置決定部104は、ステップS802で取得された条件データに基づいて、設計対象のコアにおける高透磁率部および低透磁率部の配置を決定する。本実施形態では、配置決定部104は、ステップS802で取得された複数の低透磁率部の磁気特性データ600を1つずつ用いて、設計対象のコアにおける高透磁率部および低透磁率部の配置を、(1つの)低透磁率部の磁気特性データ600ごとに決定する。ステップS803の詳細については、
図9を参照しながら後述する。
【0115】
次に、ステップS804において、選択部701は、ステップS803で(1つの)低透磁率部の磁気特性データ600ごとに決定された、設計対象のコアにおける高透磁率部および低透磁率部の複数の配置のうちの1つを選択する。
【0116】
次に、ステップS805において、出力部105は、ステップS804で選択された設計対象のコアにおける高透磁率部および低透磁率部の配置を示す情報を出力する。
次に、ステップS806において、設計者は、ステップS805で出力された、設計対象のコアにおける高透磁率部および低透磁率部の配置を示す情報を参照して、設計対象のコアを設計する。設計対象のコアを設計は、コア設計用処理装置100が行ってもよいことは第1実施形態で説明した通りである。ステップS806の設計ステップが終了すると、
図8のフローチャートは終了する。
【0117】
次に、
図9のフローチャートを参照しながら、
図8のステップS803の詳細な処理の一例を説明する。
まず、ステップS901において、配置決定部104は、ステップS802で取得された条件データに含まれる、複数の低透磁率部の磁気特性データ600のうち、本ステップS901で未選択の低透磁率部の磁気特性データ600を1つ選択する。
【0118】
次に、ステップS902において、設定部104aは、設計対象のコアの基本形状400に対し高透磁率部および低透磁率部の仮配置(候補解)を設定する。ステップS902は、第1実施形態で説明したステップS601と同じであり、ステップS902において、設定部104aは、複数の仮配置(候補解)を設定しても良い。また、1回目のステップS902においては、設定部104aは、例えば、乱数を用いて、仮配置(候補解)を設定する。2回目以降のステップS902においては、設定部104aは、後述するステップS904で算出された電気機器のモデルの特性に基づいて、形状最適化のアルゴリズム(例えば遺伝的アルゴリズム)に従って、仮配置(候補解)を更新する。
【0119】
次に、ステップS903において、電磁界解析部104bは、ステップS902で設定された仮配置を有する設計対象のコアを含む電気機器のモデルに対する電磁界解析を実行する。ステップS903は、低透磁率部の磁気特性データ600として、ステップS901で選択された低透磁率部の磁気特性データ600を用いる電磁界解析を実行する。その他のステップS903の処理は、第1実施形態で説明したステップS602の処理と同じであり、ステップS902において複数の仮配置が設定された場合、電磁界解析部104bは、複数の仮設定を有する設計対象のコアを含む電気機器のモデルそれぞれに対して電磁界解析を実行する。
【0120】
次に、ステップS904において、電磁界解析部104bは、ステップS903における電磁界解析の結果に基づいて、電気機器のモデルの特性を算出する。ステップS904は、第1実施形態で説明したステップS603と同じであり、ステップS903において複数の仮設定を有する設計対象のコアを含む電気機器のモデルそれぞれに対して電磁界解析が実行された場合、電磁界解析部104bは、電磁界解析の結果のそれぞれに基づいて、電気機器のモデルの特性をそれぞれ算出する。
【0121】
次に、ステップS905において、決定部104cは、所定の計算終了条件を満たすか否かを判定する。この判定の結果、所定の計算終了条件を満たさない場合(ステップS905でNOの場合)、ステップS902の処理が再び実行される。ステップS905は、第1実施形態で説明したステップS604と同じであり、電気機器のモデルの特性が所定の条件を満たすという条件と、設定部104aおよび電磁界解析部104bの繰り返し処理の実行回数が所定値であるという条件と、の少なくとも一方の条件を満たす場合に所定の計算終了条件を満たすと判定され、そうでない場合に所定の計算終了条件を満たさないと判定される。
【0122】
一方、所定の計算終了条件を満たす場合(ステップS905でYESの場合)、ステップS906の処理が実行される。ステップS906において、決定部104cは、ステップS904で算出された電気機器のモデルの特性に基づいて、設計対象のコアにおける高透磁率部および低透磁率部の配置を決定する。ステップS906は、第1実施形態で説明したステップS605と同じである。従って、電気機器のモデルの特性が所定の条件を満たすことにより所定の計算終了条件を満たすと判定した場合、決定部104cは、電気機器のモデルの特性が所定の条件を満たす場合の、設計対象のコアにおける高透磁率部および低透磁率部の仮配置(候補解)を、設計対象のコアにおける高透磁率部および低透磁率部の配置として決定する。また、ステップS902~S905の繰り返し処理の実行回数が所定値であることにより所定の計算終了条件を満たすと判定した場合、決定部104cは、本ステップS906の直前のステップS902~S904の繰り返し処理で算出された電気機器のモデルの特性を示す値のうち、当該特性が最も良いことを示す値が得られる仮配置(候補解)を、設計対象のコアにおける高透磁率部および低透磁率部の配置として決定する。
【0123】
次に、ステップS907において、配置決定部104は、ステップS802で取得された条件データに含まれる、複数の低透磁率部の磁気特性データ600の全てを選択したか否かを判定する。この判定の結果、複数の低透磁率部の磁気特性データ600の全てを選択していない場合(ステップS907でNOの場合)、ステップS901の処理が再び実行される。一方、複数の低透磁率部の磁気特性データ600の全てを選択した場合(ステップS907でYESの場合)、ステップS906において、複数の低透磁率部の磁気特性データ600のそれぞれについて、設計対象のコアにおける高透磁率部および低透磁率部の配置が1つずつ決定されたことになる。この場合、処理は
図8のフローチャートに戻り、ステップS804の処理が実行される。
【0124】
<まとめ>
以上のように本実施形態では、コア設計用処理装置100は、複数の低透磁率部の磁気特性データ600の各々について、電磁界解析により得られた電気機器のモデルの特性と、設計対象のコアにおける高透磁率部および低透磁率部の仮配置とに基づいて、設計対象のコアにおける高透磁率部および低透磁率部の配置を決定する。そして、コア設計用処理装置100は、複数の低透磁率部の磁気特性データ600の各々について決定した複数の配置のうちの1つを選択する。従って、電気機器の特性がより一層向上するコアを設計するような、高透磁率部および低透磁率部の配置を探索することができる。
【0125】
本実施形態においても、第1実施形態で説明した種々の変形例を採用しても良い。
また、第1実施形態および第2実施形態では、高透磁率部と、単一の比透磁率の低透磁率部の配置を決定する場合を例示した。しかしながら、設計対象の1つのコアに対し、高透磁率部と、比透磁率が異なる複数の低透磁率部との配置を決定しても良い。このようにする場合、例えば、1つの候補解の中に、高透磁率部と、比透磁率が異なる複数の低透磁率部との仮配置を含める。
【0126】
(計算例)
次に、計算例を説明する。本計算例では、
図4に示したロータコア211の基本形状400に対し、第1実施形態で説明したコア設計用処理装置100(コア設計用処理方法)により、高透磁率部および低透磁率部の配置を決定することを発明例とした。一方、
図4に示したロータコア211の基本形状400に対し、高透磁率部および空隙部の配置を決定することを比較例とした。比較例では、低透磁率部は配置されず、発明例における低透磁率部を空隙部に変更する他は、発明例と同じ処理を実行した。
【0127】
<第1計算例>
第1計算例では、IPMSM200の運転条件を、回転数=3000rpm、励磁電流(の実効値)=20A、進角=30deg、運転時間比率=3%とした(以下、この運転条件を運転条件1とも称する)。
【0128】
発明例では、運転条件1でIPMSM200を運転する場合について、
図4に示したロータコア211の基本形状400に対し高透磁率部および低透磁率部の配置を決定した。このとき、低透磁率部の作製条件をプレス比率=50%とすると共に、高透磁率部および低透磁率部の配置としてロータ210の平均トルクが最大となる配置を決定した。以下、第1計算例における発明例を発明例1とも称する。
【0129】
一方、比較例では、運転条件1でIPMSM200を運転する場合について、
図4に示したロータコア211の基本形状400に対し高透磁率部および空隙部の配置を決定した。このとき、高透磁率部および空隙部の配置としてロータ210の平均トルクが最大となる配置を決定した。以下、第1計算例における比較例を比較例1とも称する。
【0130】
図10は、発明例1における高透磁率部および低透磁率部の配置を示す図である。
図10において、ロータコア211の領域のうちグレーで示す領域が高透磁率部1001である。また、
図10において、ロータコア211の領域のうち黒で示す領域が低透磁率部1002a~1002iである。また、
図10において、ロータコア211内の白で示す領域が空隙部401a~401gである。空隙部401a~401gは、穴であり、永久磁石212a~212cが挿入される領域およびフラックスバリアとなる領域である。尚、
図10でも、
図2と同様に、表記が複雑になるので、1極を構成する部分にのみに符号を付し、その他の7極を構成する部分における符号を省略する。
【0131】
図11は、比較例1における高透磁率部および空隙部の配置を示す図である。
図11において、ロータコア211の領域のうちグレーで示す領域が高透磁率部1101を示す。また、
図11において、ロータコア211の外周よりも内側の白で示す領域が空隙部1102a~1102iである。尚、
図11でも、
図2と同様に、表記が複雑になるので、1極を構成する部分にのみに符号を付し、その他の7極を構成する部分における符号を省略する。
【0132】
図10に示すように発明例1では、ロータコア211の形状が、磁性体が空気に囲まれて宙に浮くような形状にならないように、高透磁率部1001および低透磁率部1002a~1002iを配置することができることが分かる。
図11に示すように比較例1でも発明例1と同様に、ロータコア211の形状が、磁性体が空気に囲まれて宙に浮くような形状にならないように、高透磁率部および低透磁率部を配置することができることが分かる。
【0133】
しかしながら、発明例1では比較例1よりもIPMSM200の特性を向上させることができた。具体的に、
図4に示した基本形状400のロータコア211を用いたIPMSM200を運転条件1で運転した場合のロータ210の平均トルクに対し、発明例1では平均トルクが4.0%増大した。すなわち、
図4に示した基本形状400のロータコア211を用いたIPMSM200を運転条件1で運転した場合のロータ210の平均トルクを100%とした場合に、発明例1ではロータ210の平均トルクは104%になった。一方、
図4に示した基本形状400のロータコア211を用いたIPMSM200を運転条件1で運転した場合のロータ210の平均トルクに対し、比較例1では平均トルクが3.2%増大した。このように、発明例1の方が比較例1よりもロータ210の平均トルクを増大させることができることが分かる。
【0134】
<第2計算例>
第2計算例では、IPMSM200の運転条件を、回転数=6000rpm、励磁電流(の実効値)=3A、進角=30deg、運転時間比率=20%に変更する他は(以下、この運転条件を運転条件2とも称する)、発明例1、比較例1と同様にして、
図4に示したロータコア211の基本形状400に対する、高透磁率部および低透磁率部の配置、高透磁率部および空隙部の配置をそれぞれ決定した。以下、第2計算例における発明例を発明例2とも称し、第2計算例における比較例を比較例2とも称する。
【0135】
図12は、発明例2における高透磁率部および低透磁率部の配置を示す図である。
図13は、比較例2における高透磁率部および空隙部の配置を示す図である。
図12および
図13の表記の方法は、
図10および
図11の表記の方法と同じであり、
図12、
図13においてロータコア211の領域のうちグレーで示す領域が高透磁率部1201、1301であり、
図12において黒で示す領域が低透磁率部1202a~1202lであり、
図12、
図13において白で示す領域が空隙部401a~401g、1302a~1302jである。尚、
図12および
図13でも、
図2と同様に、表記が複雑になるので、1極を構成する部分にのみに符号を付し、その他の7極を構成する部分における符号を省略する。
【0136】
図4に示した基本形状400のロータコア211を用いたIPMSM200を運転条件2で運転した場合のロータ210の平均トルクに対し、発明例2ではロータ210の平均トルクが3.6%増大し、比較例2ではロータ210の平均トルクが14.2%増大した。このように、高透磁率部および空隙部の配置を決定する場合の方が、高透磁率部および低透磁率部の配置を決定する場合よりも、電気機器の特性が向上する場合がある。
【0137】
しかしながら、
図12に示すように発明例2でも発明例1と同様に、ロータコア211の形状が、磁性体が空気に囲まれて宙に浮くような形状にならないように、高透磁率部および低透磁率部を配置することができるのに対し、
図13に示すように比較例2では、高透磁率部の一部が空気に囲まれて宙に浮くような、高透磁率部と空隙部だけでは実現性が乏しい形状となっていることが分かる(高透磁率部1301の領域1301aを参照)。このような場合、例えば、空隙部1302aに非磁性材料を配置して、高透磁率部1301の領域1301aとその他の領域とを結合するなどの対策が必要になる。
【0138】
また、高透磁率部および空隙部を配置すると空隙部が増大することによりコアの機械的強度が低下する虞がある。例えば、電気機器がモータである場合、機械的強度が低いロータコアを採用すると、高回転数でモータを運転しているときにロータコアが破損する虞がある。一方、例えば、高透磁率部をプレスすることにより低透磁率部を作製する場合、プレスした領域(低透磁率部)は加工効果により引張強度が高くなるため、モータの回転数を高くした場合のロータコアの遠心力に対する耐性を高めることができる。従って、高透磁率部および低透磁率部の配置を決定する場合の方が、高透磁率部および空隙部の配置を決定する場合よりも、実現性が高く、且つ、電気機器を安全に運転することができるコアを設計することができる。
【0139】
<第3計算例>
第3計算例では、IPMSM200の運転条件を、回転数=16000rpm、励磁電流(の実効値)=3A、進角=55deg、運転時間比率=5%に変更する他は(以下、この運転条件を運転条件3とも称する)、発明例1、比較例1と同様にして、
図4に示したロータコア211の基本形状400に対する、高透磁率部および低透磁率部の配置、高透磁率部および空隙部の配置をそれぞれ決定した。以下、第3計算例における発明例を発明例3とも称し、第3計算例における比較例を比較例3とも称する。
【0140】
図14は、発明例3における高透磁率部および低透磁率部の配置を示す図である。
図15は、比較例3における高透磁率部および空隙部の配置を示す図である。
図14および
図15の表記の方法は、
図10および
図11の表記の方法と同じであり、
図14および
図15においてロータコア211の領域のうちグレーで示す領域が高透磁率部1401、1501であり、
図14において黒で示す領域が低透磁率部1402a~1402iであり、
図14および
図15において白で示す領域が空隙部401a~401g、1502a~1502eである。尚、
図14および
図15でも、
図2と同様に、表記が複雑になるので、1極を構成する部分にのみに符号を付し、その他の7極を構成する部分における符号を省略する。
【0141】
図4に示した基本形状400のロータコア211を用いたIPMSM200を運転条件3で運転した場合のロータ210の平均トルクに対し、発明例3ではロータ210の平均トルクが9.1%増大し、比較例3ではロータ210の平均トルクが26.6%増大した。
【0142】
しかしながら、
図14に示すように発明例3でも発明例2と同様に、ロータコア211の形状が、磁性体が空気に囲まれて宙に浮くような形状にならないように、高透磁率部および低透磁率部を配置することができるのに対し、
図15に示すように比較例3でも比較例2と同様に、高透磁率部の一部が空気に囲まれて宙に浮くような、高透磁率部と空隙部だけでは実現性が乏しい形状となっていることが分かる(高透磁率部1501の領域1501aを参照)。
【0143】
<運転条件毎の複数の配置から1つの配置を決定する方法の具体例>
一般に回転電機は複数の運転条件(回転数、励磁電流等)で運転される。第1~第3計算例で示したように、回転電機の運転条件を変更すると最適化結果(高透磁率部および低透磁率部の配置)は異なる(
図10、
図12、
図14を参照)。これは、回転電機の運転条件が変わることによりコア内の磁気飽和状態が変化して磁束の分布が変化し、低透磁率部で磁束の流れを妨げる効果が変化するためである。
【0144】
ここで、第1~第3計算例で示した運転条件1~3が1つのIPMSM200の運転条件であるものとする。この場合、高透磁率部および低透磁率部の配置を運転条件ごとに変更することは不可能であるので、高透磁率部および低透磁率部の配置を1つに決定する必要がある。この場合、特定の1つの運転条件における最適化結果(高透磁率部および低透磁率部の配置)を採用する方法が考えられる。表1に、運転条件1~3の内容と、運転条件1~3における発明例(発明例1~3)および比較例(比較例1~3)の結果を示す。
【0145】
【0146】
表1において、トルク増大代は、基本形状400のロータコア211を用いたロータ210の平均トルクを100%として百分率で表されるロータ210の平均トルクから、当該基本形状400のロータコア211を用いたロータ210の平均トルク(=100%)を引いた値である。具体的にトルク増大代は、第1計算例で示した値(発明例1=4.0%、比較例1=3.2%)、第2計算例で示した値(発明例2=3.6%、比較例2=14.2%)、および第3計算例で示した値(発明例3=9.1%、比較例3=26.6%)である。
【0147】
表1において、当該IPMSM200の運転条件1~3以外の運転条件の運転時間比率は72%であるが、運転条件1~3以外の個々の運転条件の運転時間比率は3%未満であり、運転条件1~3に比べて運転時間は短い。このため、運転条件1~3のいずれかの運転条件における最適化結果(高透磁率部および低透磁率部の配置)を採用することが考えられる。例えば、運転時間比率が最も高い運転条件を採用することや、IPMSM200の特性の増大代(表1に示す例ではトルク増大代)が最も大きくなる運転条件を採用することなどが考えられる。
【0148】
表1に示す例では、最も運転時間比率の高い運転条件を採用する場合には運転条件2における最適化結果(高透磁率部および低透磁率部の配置)を採用し(
図12を参照)、トルク増大代が最も大きくなる運転条件を採用する場合には運転条件3における最適化結果(高透磁率部および低透磁率部の配置)を採用すれば良い(
図14を参照)。また、最大励磁電流となる運転条件を採用する場合には運転条件1における最適化結果(高透磁率部および低透磁率部の配置)を採用すれば良い(
図10を参照)。
【0149】
<第4計算例>
第4計算例では、プレス比率を50%から30%に変更する他は、第1計算例における発明例1と同様にして、
図4に示したロータコア211の基本形状400に対し高透磁率部および低透磁率部の配置を決定した。以下、第5計算例を発明例4とも称する。
図16は、発明例4における高透磁率部および低透磁率部の配置を示す図である。
図16の表記の方法は、
図10の表記の方法と同じであり、ロータコア211の領域のうちグレーで示す領域が高透磁率部1601であり、黒で示す領域が低透磁率部1602a~1602jであり、白で示す領域が空隙部401a~401gである。
【0150】
図16に示すように発明例4でも発明例1と同様に、ロータコア211の形状が、磁性体が空気に囲まれて宙に浮くような形状にならないように、高透磁率部1601および低透磁率部1602a~1602jを配置することができることが分かる。
図4に示した基本形状400のロータコア211を用いたIPMSM200を運転条件1で運転した場合のロータ210の平均トルクに対し、発明例4ではロータ210の平均トルクが1.8%増大した。発明例4では発明例1に比べると平均トルクの増加量が小さい。低透磁率部の作製条件が異なると、低透磁率部の磁気特性データ600が異なるため、高透磁率部および低透磁率部の配置およびIPMSM200の特性も異なることになる。従って、例えば、第2実施形態で説明したように、低透磁率部の複数の作製条件の中から、電気機器の特性が良好な作製条件を探索することにより、電気機器の特性がより良好な低透磁率部の配置を探索することができることが分かる。
【0151】
(その他の変形例)
尚、以上説明した本発明の実施形態は、コンピュータがプログラムを実行することによって実現することができる。また、前記プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体及び前記プログラム等のコンピュータプログラムプロダクトも本発明の実施形態として適用することができる。記録媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM等を用いることができる。また、本発明の実施形態は、PLC(Programmable Logic Controller)により実現されてもよいし、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の専用のハードウェアにより実現されてもよい。
また、以上説明した本発明の実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0152】
100、700 コア設計用処理装置
101 作製条件取得部
102 記憶部
103 条件データ取得部
104 配置決定部
104a 設定部
104b 電磁界解析部
104c 決定部
105 出力部
110 コンピュータディスプレイ
200 IPMSM
210 ロータ
211 ロータコア
212(212a~212c) 永久磁石
213(213a~213j) フラックスバリア
220 ステータ
221 ステータコア
222 スロット
230 穴
300 磁気特性データ抽出テーブル
400 設計対象のコアの基本形状
401a~401g 空隙部
500 高透磁率部の磁気特性データ
600 低透磁率部の磁気特性データ
700 電気機器の運転条件
701 選択部
1001 高透磁率部
1002a~1002i 低透磁率部
1101 高透磁率部
1102a~1102i 空隙部
1201 高透磁率部
1202a~1202l 低透磁率部
1301 高透磁率部
1302a~1302j 空隙部
140 1 高透磁率部
1402a~1402i 低透磁率部
1501 高透磁率部
1502a~1502e 空隙部
1601 高透磁率部
1602a~1602j 低透磁率部