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特許7575707成形ドラム体へのタイヤ材料の供給システムおよびタイヤの製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-22
(45)【発行日】2024-10-30
(54)【発明の名称】成形ドラム体へのタイヤ材料の供給システムおよびタイヤの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29D 30/08 20060101AFI20241023BHJP
【FI】
B29D30/08
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023129631
(22)【出願日】2023-08-08
【審査請求日】2024-05-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】近藤 正智
(72)【発明者】
【氏名】松村 謙介
(72)【発明者】
【氏名】沼崎 康
(72)【発明者】
【氏名】河合 勝広
(72)【発明者】
【氏名】大石 潤平
(72)【発明者】
【氏名】善養寺 千裕
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 武大
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 大
(72)【発明者】
【氏名】松丸 輝明
(72)【発明者】
【氏名】大西 康平
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 誠之
【審査官】上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-056074(JP,A)
【文献】特開2006-116817(JP,A)
【文献】特開平08-224803(JP,A)
【文献】国際公開第2006/048924(WO,A1)
【文献】特開2020-028997(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29D 30/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状のタイヤ材料が巻回されてストックされている供給ユニットと、成形ドラム体と、前記供給ユニットと前記成形ドラム体との間に配置されている供給コンベヤとを備えて、前記供給ユニットから繰り出されて定尺カットされた前記タイヤ材料が前記供給コンベヤに平置き状態で載置されて前記成形ドラム体に供給されて、前記成形ドラム体に巻付けられることにより筒状に成形される構成にした成形ドラム体へのタイヤ材料の供給システムにおいて、
複数のストック位置のそれぞれに配置されている前記供給ユニットを有し、隣り合う前記ストック位置の前記供給ユニットから繰り出される前記タイヤ材料どうしが異なる種類であり、互いの前記タイヤ材料の供給方向が平面視で所定角度で交差するようにそれぞれの前記供給ユニットが配置されていて、
それぞれの前記ストック位置の前記供給ユニットと前記供給コンベヤとの間で、平面視で旋回する旋回コンベヤを有し、
所定の一定位置に設置されている前記成形ドラム体および前記供給コンベヤに対して、それぞれの前記ストック位置に配置されている前記供給ユニットから繰り出されて定尺カットされた前記タイヤ材料が、前記旋回コンベヤを経由して前記供給コンベヤに移載されて前記成形ドラム体に供給される構成にした成形ドラム体へのタイヤ材料の供給システム。
【請求項2】
前記所定の一定位置に設置されている前記前記成形ドラム体および前記供給コンベヤと、一方の前記ストック位置の前記供給ユニットとが直列に配置されている請求項1に記載の成形ドラム体へのタイヤ材料の供給システム。
【請求項3】
前記所定角度が85°以上95°以下である請求項1に記載の成形ドラム体へのタイヤ材料の供給システム。
【請求項4】
それぞれの前記ストック位置の前記供給ユニットから繰り出されて定尺カットされたそれぞれの前記タイヤ材料が連続的に前記成形ドラム体に供給されて、定尺カットされたそれぞれの前記タイヤ材料の全長および全長に渡る幅方向位置が、前記旋回コンベヤから前記供給コンベヤに搬送される過程でセンサにより検知され、それぞれの前記タイヤ材料が前記成形ドラム体に巻き付けられる際に、そのタイヤ材料の前記センサにより検知された全長データ、全長に渡る幅方向位置データに基づいて前記成形ドラム体の回転速度、幅方向位置が調整される構成にした請求項1に記載の成形ドラム体へのタイヤ材料の供給システム。
【請求項5】
請求項1に記載の成形ドラム体へのタイヤ材料の供給システムを備えた成形装置によって、前記タイヤ材料が使用されたグリーンタイヤを成形し、このグリーンタイヤを加硫するタイヤの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形ドラム体へのタイヤ材料の供給システムおよびタイヤの製造方法に関し、さらに詳しくは、タイヤの成形装置をコンパクト化しつつ、複数種類のタイヤ材料を1つの成形ドラム体に効率的に供給することができるタイヤ材料の供給システムおよびタイヤの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
タイヤはグリーンタイヤを加硫することで製造される。グリーンタイヤは多数種類のタイヤ材料が積層して成形される。例えば、インナーライナ、カーカス材、ベルト材、トレッドゴム、一対のビード部材などを成形ドラム上で一体化させることでグリーンタイヤが成形される。
【0003】
多数種類のタイヤ材料をタイヤ成形機に供給するサービサーが種々提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1で提案されているサービサーは、それぞれのタイヤ材料が巻回状態でストックされている材料保持部と可動コンベアを1セットにして、複数のセットをレールに沿ってスライド移動可能に備えている。そして、所望のセットをスライド移動させることで、所定位置に設置されている定位置コンベアおよびタイヤ成形機と直列に配置する。その後、このセットの材料保持部からタイヤ材料を繰り出し、可動コンベアを介して定位置コンベアおよびタイヤ成形機に供給する。
【0004】
このサービサーでは、複数種類のタイヤ材料を1つのタイヤ成形機に供給するには、タイヤ材料の種類毎に、材料保持部と可動コンベアのセットを用意して、それぞれのセットをレールに沿ってスライド可能に設置する必要がある。タイヤ材料の種類毎のセットを、スライド移動させるには多大なスペースが必要になるため、成形装置をコンパクト化することは難しい。また、材料保持部と可動コンベヤのセットは軽量ではないので、迅速にスライド移動させることは困難である。それ故、タイヤの成形装置をコンパクト化しつつ、複数種類のタイヤ材料を1つのタイヤ成形機に効率的に供給するには改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2000-25124号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、タイヤの成形装置をコンパクト化しつつ、複数種類のタイヤ材料を1つの成形ドラム体に効率的に供給することができるタイヤ材料の供給システムおよびタイヤの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため本発明の成形ドラム体へのタイヤ材料の供給システムは、帯状のタイヤ材料が巻回されてストックされている供給ユニットと、成形ドラム体と、前記供給ユニットと前記成形ドラム体との間に配置されている供給コンベヤとを備えて、前記供給ユニットから繰り出されて定尺カットされた前記タイヤ材料が前記供給コンベヤに平置き状態で載置されて前記成形ドラム体に供給されて、前記成形ドラム体に巻付けられることにより筒状に成形される構成にした成形ドラム体へのタイヤ材料の供給システムにおいて、複数のストック位置のそれぞれに配置されている前記供給ユニットを有し、隣り合う前記ストック位置の前記供給ユニットから繰り出される前記タイヤ材料どうしが異なる種類であり、互いの前記タイヤ材料の供給方向が平面視で所定角度で交差するようにそれぞれの前記供給ユニットが配置されていて、それぞれの前記ストック位置の前記供給ユニットと前記供給コンベヤとの間で、平面視で旋回する旋回コンベヤを有し、所定の一定位置に設置されている前記成形ドラム体および前記供給コンベヤに対して、それぞれの前記ストック位置に配置されている前記供給ユニットから繰り出されて定尺カットされた前記タイヤ材料が、前記旋回コンベヤを経由して前記供給コンベヤに移載されて前記成形ドラム体に供給される構成にしたことを特徴とする。
【0008】
本発明のタイヤの製造方法は、上記の成形ドラム体へのタイヤ材料の供給システムを備えた成形装置によって、前記タイヤ材料が使用されたグリーンタイヤを成形し、このグリーンタイヤを加硫することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の成形ドラム体へのタイヤ材料の供給システムによれば、隣り合う前記ストック位置の前記供給ユニットから繰り出される前記タイヤ材料どうしの供給方向が平面視で所定角度で交差するようにそれぞれの前記供給ユニットが配置されていて、それぞれの前記ストック位置の前記供給ユニットと前記供給コンベヤとの間に前記旋回コンベヤを有している。そのため、異なる種類の前記タイヤ材料を前記成形ドラム体に供給するには、それぞれの前記供給ユニットを移動させるのではなく、前記旋回コンベヤを旋回させればよいので、過大なスペースは不要になる。また、前記旋回コンベヤを旋回させるために過大なスペースは不要である。それ故、タイヤの成形装置をコンパクト化するには有利になる。そして、前記旋回コンベヤを旋回させるために長時間を要することはないので、複数種類のタイヤ材料を前記成形ドラム体に効率的に供給するには有利になる。
【0010】
本発明のタイヤの製造方法によれば、上記の成形ドラム体へのタイヤ材料の供給システムを備えた成形装置を用いることで、省スペースでタイヤを生産性よく製造するには有利になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】成形ドラム体へのタイヤ材料の供給システムの実施形態を備えたタイヤの製造システムを平面視で例示する説明図である。
図2図1の成形装置のそれぞれのドラムを正面視で例示する説明図である。
図3】インナーライナの供給ユニットからバンドドラムへの供給経路を側面視で例示する説明図である。
図4】カーカス材の供給ユニットからバンドドラムへの供給経路を側面視で例示する説明図である。
図5】サイド部の供給ユニットからバンドドラムへの供給経路を側面視で例示する説明図である。
図6】ベルト材の供給ユニットからベルトドラムへの供給経路を側面視で例示する説明図である。
図7】トレッド部の供給ユニットからベルトドラムへの供給経路を側面視で例示する説明図である。
図8】ベルト補強材の供給ユニットからベルトドラムへの供給経路を側面視で例示する説明図である。
図9】インナーライナおよびカーカス材をバンドドラムに供給する状態を平面視で例示する説明図である。
図10図9の定尺カットされたインナーライナ、カーカス材、サイド部を前進移動させた状態を平面視で例示する説明図である。
図11図10のインナーライナが載置された供給コンベヤを90°旋回させるとともに、定尺カットされたサイド部を供給コンベヤに移動させた状態を平面視で例示する説明図である。
図12図11の定尺カットされたインナーライナおよびカーカス材をバンドドラムに向かって移動させる状態を平面視で例示する説明図である。
図13図12の定尺カットされたインナーライナおよびカーカス材をバンドドラムに巻付けた状態を平面視で例示する説明図である。
図14図13のバンドドラムを幅方向に移動させて、その外周面に定尺カットされたサイド部を巻付けて内周側部材が成形された状態を平面視で例示する説明図である。
図15図14の成形された内周側部材に一対のビード部材を外嵌した状態を平面視で例示する説明図である。
図16】定尺カットされたベルト材およびトレッド部をベルトドラムに供給する状態を平面視で例示する説明図である。
図17図16の定尺カットされたベルト材およびトレッド部をベルトドラムに向かって移動させた状態を平面視で例示する説明図である。
図18図17の定尺カットされたベルト材を一方のベルトドラムに巻付けた状態を平面視で例示する説明図である。
図19図18のベルトドラムを時計回りに180°旋回させて一方のベルトドラムに巻付けたベルト材にベルト補強材を巻付けている状態を例示する説明図である。
図20図19の定尺カットされたトレッド部を一方のベルトドラムに巻付けて外周側部材を成形し、ベルト材を他方のベルトドラムに巻付けた状態を平面視で例示する説明図である。
図21図20のベルトドラムを反時計回りに180°旋回させた状態を平面視で例示する説明図である。
図22】一方のシェープドラムに内周側部材および一対のビード部材を外嵌した状態を平面視で例示する説明図である。
図23図22のシェープドラムを時計回りに180°旋回させ、他方のベルトドラムにベルト補強材を巻付けている状態を平面視で例示する説明図である。
図24図23の一方のシェープドラムにベルトドラムから移送した外周側部材を外嵌し、他方のシェープドラムに内周側部材および一対のビード部材を外嵌した状態を平面視で例示する説明図である。
図25図24のシェープドラムを反時計回りに180°旋回させ、一方のベルトドラムにベルト材を巻付けている状態を平面視で例示する説明図である。
図26図25の一方のシェープドラムからグリーンタイヤを取り出し、ベルトドラムを反時計回りに180°旋回させた状態を平面視で例示する説明図である。
図27図26のグリーンタイヤを加硫している加硫装置を、一部拡大して縦断面視で例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の成形ドラム体へのタイヤ材料の供給システムおよびタイヤの製造方法を、図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0013】
図1に例示するタイヤの製造システムは、成形装置1と加硫装置15とを有している。成形装置1には、本発明の成形ドラム体へのタイヤ材料の供給システム(以下、供給システムという)の実施形態が備わっている。成形装置1を用いて複数種類の未加硫のタイヤ部材Mが積層されてグリーンタイヤGが成形される。成形されたグリーンタイヤGが加硫装置15を用いて加硫されることでタイヤTが製造される。加硫装置15にはタイヤ仕様に応じた加硫用モールド16が装着されている。公知の種々の加硫装置15を用いることができる。
【0014】
グリーンタイヤGは、タイヤ部材Mとして少なくとも、インナーライナM1、カーカス材M2およびサイド部M3を有する内周側部材MAと、ベルト材M4とトレッド部M5を有する外周側部材MBと、一対のビード部材MCとを有している。この実施形態では、外周側部材MBはさらにベルト補強材M6を有している。ベルト補強材M6は任意で採用することができ、タイヤ部材Mには必要に応じてその他の種類の材料が採用される。尚、以下ではインナーライナM1、カーカス材M2、サイド部M3、ベルト材M4、トレッド部M5、ベルト補強材M6をそれぞれ、タイヤ材料M1、M2、M3、M4、M5、M6という。タイヤ材料M1~M5は帯状であり、タイヤ材料M6は線状(細い帯状)である。
【0015】
図1図8に例示するように成形装置1は、シェープドラム2(2a、2b)、バンドドラム3およびベルトドラム4(4a、4b)の3種類のドラム(成形ドラム体)と、それぞれのタイヤ材料M1、M2、M3、M4、M5、M6の供給ユニット5(5A、5B)、6(6A、6B)、7(7A、7B)、8(8A、8B)、9(9A、9B)、10(10A、10B)と、一対のビード部材MCのビード供給ユニット11(11A、11B)とを有している。図中のX、Y、Z矢印はそれぞれ、成形装置1の幅方向、奥行き方向、高さ方向を示していて互いに直交する方向である。
【0016】
2つのシェープドラム2(2a、2b)、1つのバンドドラム3、2つのベルトドラム4(4a、4b)が備わっていて、シェープドラム2(2a、2b)は、X方向でバンドドラム3とベルトドラム4との間に配置されている。この実施形態では、2つのシェープドラム2a、2bが平面視で旋回軸2pを中心にして180°旋回移動した位置に設けられている。2つのシェープドラム2a、2bは、旋回軸2pを中心にして時計回りおよび反時計回りに180°旋回することで交互に同じ位置に固定配置される。
【0017】
バンドドラム3のドラム軸心C1はX方向に延在していて、X方向に延在するガイドレール3rに沿って移動可能である。また、2つのベルトドラム4a、4bが平面視で旋回軸4pを中心にして180°旋回移動した位置に設けられている。2つのベルトドラム4a、4bは、旋回軸4pを中心にして時計回りおよび反時計回りに180°旋回することで交互に同じ位置に固定配置される。
【0018】
それぞれのシェープドラム2a、2bは旋回軸2pを中心にして旋回して、バンドドラム3側、ベルトドラム4側に固定配置されると、それぞれのドラム軸心C1、C2はX方向に延在する(X方向と平行になる)。旋回してバンドドラム3側に固定配置されたシェープドラム2とバンドドラム3の互いのドラム軸心C1はX方向に平行でかつY、Z方向で一致する。即ち、隣接するシェープドラム2とバンドドラム3の互いのドラム軸心C1はX、YおよびZ方向で一致する。
【0019】
それぞれのベルトドラム4a、4bは旋回軸4pを中心にして旋回して、シェープドラム2側、反シェープドラム2側に固定配置されると、それぞれのドラム軸心C2、C3はX方向に延在する(X方向と平行になる)。旋回してシェープドラム2側に固定配置されたベルトドラム4と、旋回してベルトドラム4側に固定配置されたシェープドラム2の互いのドラム軸心C2は、X方向に平行でかつY、Z方向で一致する。即ち、隣接するベルトドラム4とシェープドラム2の互いのドラム軸心C2はX、YおよびZ方向で一致する。
【0020】
それぞれの供給ユニット5~10は、それぞれのタイヤ材料M1~M6のストック位置P1~P6に配置されている。ビード供給ユニット11は、ビード部材MCのストック位置P7に配置されている。それぞれのストック位置P1~P6では、対応する供給ユニットが複数並列されている。即ち、ストック位置P1では供給ユニット5A、5B、ストック位置P2では供給ユニット6A、6B、ストック位置P3では供給ユニット7A、7B、ストック位置P4では供給ユニット8A、8B、ストック位置P5では供給ユニット9A、9B、ストック位置P6では供給ユニット10A、10Bが並列して配置されている。
【0021】
尚、この実施形態では、1本のグリーンタイヤGには、定尺カットされた1枚のタイヤ材料M1、M5、定尺カットされた2枚のタイヤ材料M2、M4、定尺カットされた2枚一対のタイヤ材料M3が使用される。そのため、ストック位置P2では、それぞれの供給ユニット6A、6Bは2つ縦列されている(Y方向に直列に配置されている)。ストック位置P4でも、それぞれの供給ユニット8A、8Bは2つ縦列されている(Y方向に直列に配置されている)。そして、1本のグリーンタイヤGを成形するには、縦列された2つの供給ユニット6Aまたは縦列された2つの供給ユニット6Bのいずれか一方から2枚のタイヤ材料M2が順次供給され、縦列された2つの供給ユニット8Aまたは縦列された2つの供給ユニット8Bのいずれか一方から2枚のタイヤ材料M4が順次供給される。また、それぞれの供給ユニット7A、7Bには、2枚一対のタイヤ材料M3がストックされていて、いずれか一方の供給ユニット7A、7Bから2枚一対のタイヤ材料M3が順次供給される。
【0022】
それぞれの供給ユニット5~10は、巻取り芯を有していて、それぞれのタイヤ材料M1~M6がその巻取り芯を中心にして巻回状態でストックされている。それぞれのタイヤ材料M1~M5は剥離ライナとともにその巻取り芯を中心にして巻回されている。タイヤ材料M6は剥離ライナ無しでその巻取り芯を中心にして巻回されている。この実施形態では、それぞれのタイヤ材料M1~M6は長尺体の状態で巻回されてストックされているが、タイヤ材料M1~M5は、所定長さに定尺カットされたものを多数、その巻取り芯を中心して巻回状態でストックすることもできる。
【0023】
ビード供給ユニット11は、旋回軸11pを中心にして水平旋回する環状のラックを有していて、そのラックに多数のビード部材MCが架けられている。このラックは周方向に2つの領域のユニット11A、11Bに区分されている。それぞれのビード供給ユニット11A、11Bに所定数の一対のビード部材MCが架けられていて、ラックが周方向に旋回することでそれぞれのビード供給ユニット11A、11Bが順次、供給位置と待機位置に移動する。供給位置に移動したビード供給ユニット11から一対のビード部材MCが順次供給される。
【0024】
タイヤ材料M1、M2、M3は、それぞれの供給ユニット5、6、7からそれぞれの供給経路を通じてバンドドラム3に供給される。タイヤ材料M4、M5、M6は、それぞれの供給ユニット8、9、10からそれぞれの供給経路を通じてベルトドラム4に供給される。
【0025】
供給ユニット5とバンドドラム3との間には、カッター5c、スライドコンベヤ5d、旋回コンベヤ5e、供給コンベヤ6eが配置されている。供給ユニット6とバンドドラム3との間には、カッター6c、スライドコンベヤ6d、旋回コンベヤ5e、供給コンベヤ6eが配置されている。供給ユニット7とバンドドラム3との間には、カッター7c、スライドコンベヤ7d、供給コンベヤ7eが配置されている。
【0026】
図4に例示するように、ストック位置P2で縦列に配置されている供給ユニット6毎にカッター6cを有していて、それぞれのカッター6cと1つのスライドコンベヤ6dとの間に上下に2段に供給ガイドが設置されている。即ち、Y方向でバンドドラム3に近い側に配置されている供給ユニット6から繰り出される材料M2は、下側に設置された供給ガイドを通じてスライドコンベヤ6dに供給される。Y方向でバンドドラム3に遠い側に配置されている供給ユニット6から繰り出されるタイヤ材料M2は、上側に設置された供給ガイドを通じてスライドコンベヤ6dに供給される。
【0027】
それぞれの供給ユニット8、9とベルトドラム4との間には、カッター8c、9c、スライドコンベヤ8d、9d、供給コンベヤ8e、9eが配置されている。図6に例示するように、ストック位置P4で縦列に配置されている供給ユニット8毎にカッター8c、スライドコンベヤ8d、供給コンベヤ8eを有していて、カッター8c、スライドコンベヤ8d、供給コンベヤ8eはそれぞれ上下2段に設置されている。即ち、Y方向でベルトドラム4に近い側に配置されている供給ユニット8から繰り出される材料M4は、下側に設置された供給ガイドを通じて下側に配置されたスライドコンベヤ8dおよび供給コンベヤ8eに供給される。Y方向でベルトドラム4に遠い側に配置されている供給ユニット6から繰り出されるタイヤ材料M4は、上側に設置された供給ガイドを通じて上側に配置されたスライドコンベヤ8dおよび供給コンベヤ8eに供給される。この実施形態では、上方に配置されているカッター8cは上方に配置されているスライドコンベヤ8dとともにスライド移動し、下方に配置されているカッター8cは下方に配置されているスライドコンベヤ8dとともにスライド移動する。
【0028】
供給ユニット10とベルトドラム4との間には、カッター10c、フェスツーン部10d、ヘッド10eが配置されている。図8に例示するように、それぞれの供給ユニット10A、10Bから繰り出されるタイヤ材料M6はそれぞれ個別の供給経路を通じて別々のヘッド10e、10eに供給される。それぞれのヘッド10e、10eはベルトドラム4の下方でY方向に縦列配置されている。
【0029】
カッター5c、6c、7c、8c、9cは、それぞれのタイヤ材料M1、M2、M3、M4、M5を予め設定された所定長さに定尺カットする。スライドコンベヤ5d、6d、7d、8d、9d、旋回コンベヤ5eおよび供給コンベヤ6e、7e、8e、9eは、それぞれのタイヤ材料M1、M2、M3、M4、M5を平置き状態で搬送するベルトコンベヤである。
【0030】
旋回コンベヤ5eは、平面視で、それぞれのスライドコンベヤ5d、6dと供給コンベヤ6eとの間に設置され、その位置で水平旋回する。この実施形態では、旋回コンベヤ5eの旋回角度が90°に設定されている。スライドコンベヤ5d、6d、7d、8d、9dは、それぞれのストック位置P1~P5で、並列されている供給ユニット5、6、7、8、9に対して1つ配置されている。例えば、タイヤ材料M1のストック位置P1では、並列して配置されている供給ユニット5(5A、5B)の幅方向にスライドする1つのスライドコンベヤ5dが配置されている。スライドコンベヤ5dは、それぞれの供給ユニット5A、5Bのタイヤ材料M1の供給方向前方で両者の間を幅方向に移動する。他のストック位置P2、P3、P4、P5も同様に構成されている。
【0031】
カッター10cは、タイヤ材料M6どうしを接合する際にタイヤ材料M6の後端部をカットする。フェスツーン部10dは、タイヤ材料M6を所定の必要量(必要長さ)貯留する。ヘッド10eは、フェスツーン部10dを通過したタイヤ材料M6をベルトドラム4のドラム表面に向かって導出する。タイヤ材料M6は長尺体の状態でベルトドラム4に供給されて、ベルトドラム4上にてヘッド10eによって所定長さにカットされる。
【0032】
バンドドラム3とシェープドラム2との間には、バンド移送機12が配置されている。ベルトドラム4とシェープドラム2との間には、ベルト移送機13が配置されている。ビード供給ユニット11とシェープドラム2との間には、ビード移送機14が配置されている。
【0033】
バンドドラム3では、供給されたタイヤ材料M1~M3を用いて筒状の内周側部材MAが成形される。ベルトドラム4では、供給されたタイヤ材料M4~M6を用いて筒状の外周側部材MBが成形される。バンド移送機12は、バンドドラム3から内周側部材MAをシェープドラム2に移送する。ベルト移送機13は、ベルトドラム4から外周側部材MBをシェープドラム2に移送する。ビード移送機14は、ビード供給ユニット11A、11Bの一方から一対のビード部材MCを移送して筒状の内周側部材MAに外嵌する。シェープドラム2では、内周側部材MA(M1~M3)、外周側部材MB(M4~M6)および一対のビード部材MCを用いて筒状のグリーンタイヤGが成形される。
【0034】
本発明の供給システムの実施形態は、タイヤ材料M1、M2をバンドドラム(成形ドラム体)3に供給する供給システムである。即ち、本発明の供給システムの典型的な実施形態は、図3、4、9~13に例示するように、タイヤ材料M1、M2が巻回されてストックされている隣り合うストック位置P1、P2の供給ユニット5、6と、バンドドラム3と、供給ユニット5、6とバンドドラム3との間に配置されている供給コンベヤ6eとを備えている。さらに、それぞれの供給ユニット5、6と供給コンベヤ5eとの間で、平面視で旋回する旋回コンベヤ5eを有している。そして、それぞれのストック位置P1、P2の供給ユニット5、6から繰り出されるタイヤ材料M1、M2どうしが異なる種類であり、平面視で互いのタイヤ材料M1、M2の供給方向が所定角度Sで交差するようにそれぞれの供給ユニット5、6が配置されている。
【0035】
この実施形態では、所定角度Sが90°に設定されていて、それぞれの供給ユニット5、6から繰り出されるタイヤ材料M1、M2の供給方向が平面視で直交している。上記の所定角度Sは例えば60°以上120°以下であり、85°以上95°以下が好ましい。所定角度Sをこのような範囲にすることで、隣り合うストック位置P1、P2の供給ユニット5、6を集約的に配置できるので、成形装置1をコンパクトにするには有利になる。尚、旋回コンベヤ5eの旋回角度は上記の所定角度Sと同じ角度に設定される。
【0036】
この実施形態では、ストック位置P1には複数の供給ユニット5A、5Bが並列配置され、ストック位置P2には複数の供給ユニット6A、6Bが並列配置されているが、本発明の供給システムは、それぞれのストック位置P1、P2には単数の供給ユニット5A、6Aが配置された構成でもよい。この構成の場合、それぞれのストック位置P1、P2の供給ユニット5、6に対するスライドコンベヤ5d、6dは不要である。
【0037】
そして、所定の一定位置に設置されているバンドドラム3および供給コンベヤ6eに対して、それぞれのストック位置P1、P2の供給ユニット5、6から繰り出されて定尺カットされたタイヤ材料M1、M2が、旋回コンベヤ5eを経由して供給コンベヤ6eに移載されてバンドドラム3に順次供給される。この実施形態では、タイヤ材料M1、M2が供給される際に、所定の一定位置に設置されているバンドドラム3および供給コンベヤ6eと、一方のストック位置P2の一方の供給ユニット6Aとが直列に配置されている(Y方向に縦列されている)。
【0038】
次に、この製造システムを用いたタイヤの製造方法の手順の一例を説明する。この製造方法では、本発明の供給システムの実施形態を備えた成形装置1によってグリーンタイヤGが順次連続的に成形される。この製造システムの成形装置1には、異なる2種類のタイヤ材料M1、M2を供給するために、本発明の供給システムの実施形態が備わっている。成形装置1には、別の複数種類のタイヤ材料を供給するために本発明の供給システムを備えることもできる。
【0039】
成形装置1では同時期に複数本のグリーンタイヤGの成形作業が行われる。同時期に成形されるグリーンタイヤGはすべて同じ仕様の場合もあるが、途中で異なる仕様のグリーンタイヤGに切り換わることもある。タイヤ仕様を変えずに多数本のグリーンタイヤGの成形を続ける場合は、それぞれのストック位置P1~P6では、並列されたそれぞれの供給ユニット5~10に同じ仕様のタイヤ材料M1~M6が必要量ストックされる。ストック位置P7では、それぞれのビード供給ユニット11A、11Bに同じ仕様のビード部材MCが必要量ストックされる。
【0040】
途中でタイヤ仕様を変えてグリーンタイヤGの成形を行う場合は、それぞれのストック位置P1~P6では、一方の供給ユニット5A~10A、他方の供給ユニット5B~10B毎に、成形するグリーンタイヤGのタイヤ仕様に応じたタイヤ材料M1~M6が必要量ストックされる。ストック位置P7では、それぞれのビード供給ユニット11A、11B毎に、成形するグリーンタイヤGのタイヤ仕様に応じたビード部材MCが必要量ストックされる。
【0041】
この製造方法では、筒状の内周側部材MA、筒状の外周側部材MBが同時進行で成形される。図9図14に例示するように内周側部材MAを成形し、図16図21に例示するように外周側部材MBを成形する。そして、図22図26に例示するように内周側部材MA、一対のビード部材MCおよび外周側部材MCを用いてグリーンタイヤGを成形する。
【0042】
図9図14に例示するように、内周側部材MAのそれぞれのタイヤ材料M1~M3をそれぞれの供給コンベヤ6e、7eによって、それぞれのストック位置P1~P3から、対応するスライドコンベヤ5d~7dを経由して、予め定尺カットされた状態でバンドドラム3に供給する。バントドラム3では、定尺カットされたそれぞれのタイヤ材料M1~M3を用いて内周側部材MAが成形される。
【0043】
詳述すると、一方の供給ユニット5A、6A、6A、7Aから繰り出されたタイヤ材料M1、M2、M2、M3を、それぞれのカッター5c、6c、6c、7cにより所定長さに定尺カットして、それぞれの一方の供給ユニット5A、6A、6A、7Aの前方に配置されたスライドコンベヤ5d、6d、6d、7dに載置して、供給コンベヤ6e、6e、6e、7eに搬送する。タイヤ材料M1、M2は旋回コンベヤ5eを経由する。旋回コンベヤ5eは平面視で90°旋回可能になっていて、スライドコンベヤ5dからタイヤ材料M1を受け取る時は、図9図10に例示するようにスライドコンベヤ5dとX方向で縦列した状態になる。スライドコンベヤ5dからタイヤ材料M1を受け取った旋回コンベヤ5eは、図11に例示するように、90°旋回してスライドコンベヤ6dおよび供給コンベヤ6eとY方向で縦列した状態になる。
【0044】
図12に例示するように、一方の供給ユニット5Aから繰り出されたタイヤ材料M1、縦列された一方のそれぞれの供給ユニット6A、6Aから供給されたタイヤ材料M2、M2がバンドドラム3に対して、直列に配置された状態になる。図13に例示するように、直列されて定尺カットされているタイヤ材料M1、M2、M2を順次、ドラム軸心C1を中心にしてバンドドラム3を一方向に回転させながらバンドドラム3に巻き付けて筒状に成形して積層する。
【0045】
また、タイヤ材料M1、M2、M2がバンドドラム3に巻き付けられて筒状に成形されて積層される間に、一方の供給ユニット7Aから繰り出されて定尺カットされた一対のタイヤ材料M3が供給コンベヤ7eに搬送される。次いで、供給コンベヤ6eの前方にあるバンドドラム3を、図14に例示するようにX方向に移動させて、供給コンベヤ7eの前方に設置する。その後、搬送コンベヤ7eに載置されている定尺カットされた一対のタイヤ材料M3を、ドラム軸心C1を中心にしてバンドドラム3を回転させながらバンドドラム3に巻き付けて筒状に成形して積層する。これにより、タイヤ材料M1、M2、M3が順に積層された筒状の内周側部材MAが成形される。このように内周側部材MAを順次、連続的に成形する。
【0046】
定尺カットされたタイヤ材料M1、M2、M2のバンドドラム3への供給手順をさらに詳述すると、図12、13に例示するように、それぞれのタイヤ材料M1、M2、M2は、旋回コンベヤ5eから供給コンベヤ6eに搬送される過程で、上方に設置されたセンサによってその全長および全長に渡る幅方向位置(例えば幅方向中心位置)が検知される。そして、センサによる検知データを用いてそれぞれのタイヤ材料M1、M2、M2はバンドドラム3に適切に巻き付けられる。例えば、図12の状態からタイヤ材料M1をバンドドラム3に巻き付ける際に、センサにより検知されたこのタイヤ材料M1の全長データに基づいてバンドドラム3の回転移動量(回転速度)に対する供給コンベヤ6eの移動量(搬送速度)が調整され、かつ、検知された幅方向位置データに基づいてバンドドラム3を幅方向に移動させてバンドドラム3に対するこのタイヤ材料M1の幅方向位置が調整される。このタイヤ材料M1のバンドドラム3への巻き付け動作と同時に、1番目のタイヤ材料M2を旋回コンベヤ5eから供給コンベヤ6eに搬送するとともにこのタイヤ材料M2の全長および全長に渡る幅方向位置をセンサにより検知する。さらにこれと同時に、2番目のタイヤ材料M2をスライドコンベヤ6dから旋回コンベヤ5eに搬送する。次いで、供給コンベヤ6eに載置されている1番目のタイヤ材料M2をバンドドラム3に巻き付ける際に、センサにより検知された1番目のタイヤ材料M2の全長データに基づいてバンドドラム3の回転速度が調整され、かつ、検知された幅方向位置データに基づいてバンドドラム3を幅方向に移動させてバンドドラム3に対する1番目のタイヤ材料M2の幅方向位置が調整される。1番目のタイヤ材料M2のバンドドラム3への巻き付け動作と同時に、2番目のタイヤ材料M2を旋回コンベヤ5eから供給コンベヤ6eに搬送するとともに2番目のタイヤ材料M2の全長および全長に渡る幅方向位置をセンサにより検知する。次いで、供給コンベヤ6eに載置されている2番目のタイヤ材料M2をバンドドラム3に巻き付ける際に、センサにより検知された2番目のタイヤ材料M2の全長データに基づいてバンドドラム3の回転速度が調整され、かつ、検知された幅方向位置データに基づいてバンドドラム3を幅方向に移動させてバンドドラム3に対する2番目のタイヤ材料M2の幅方向位置が調整される。
【0047】
上記の供給手順により、それぞれのタイヤ材料M1、M2、M2を連続的にバンドドラム3の幅方向中心にセンタリングしつつ巻き付けて長さ方向に過不足なくスプライスする。上記の供給手順では、タイヤ材料M1、M2、M2を連続的にバンドドラム3に供給する一連の過程の中で、それぞれの全長および全長に渡る幅方向位置が検知され、それぞれの検知データに基づいてバンドドラム3の動作が制御される。その結果、予め設定された短いサイクルタイムで、それぞれのタイヤ材料M1、M2、M2が積層される前にバンドドラム3に対してセンタリングされて巻き付けられるので、積層ずれが抑制された高品質の筒所の積層体を効率よく成形できる。
【0048】
次いで、図15に例示するように、一方のビード供給ユニット11Aから一対のビード部材MCを供給して、ビード移送機14を用いて内周側部材MAに外嵌する。それぞれのビード部材MCは、内周側部材MAの幅方向(X方向)に間隔をあけて外嵌される。
【0049】
図16図21に例示するように、外周側部材MBのそれぞれのタイヤ材料M4、M5をそれぞれの供給コンベヤ8e、9eによって、それぞれのストック位置P4、P5から対応するスライドコンベヤ8d、9dを経由して、予め定尺カットされた状態でベルトドラム4に供給する。材料M6は、フェスツーン部10cを経由して長尺体の状態でベルトドラム4の下方に隣接配置されたヘッド10eまで供給される。ベルトドラム4では、定尺カットされたそれぞれのタイヤ材料M4、M5およびヘッド10eから導出されるタイヤ材料M6を用いて外周側部材MBが成形される。
【0050】
詳述すると、一方の供給ユニット8A、8A、9Aから繰り出されたタイヤ材料M4、M4、M5を、それぞれのカッター8c、8c、9cにより所定長さに定尺カットして、一方の供給ユニット8A、8A、9Aの前方に配置されたスライドコンベヤ8d、8d、9dに載置して、供給コンベヤ8e、8e、9eに搬送する。図6に例示する上下に配置された供給コンベヤ8e、8eにはそれぞれ、定尺カットされた1枚のタイヤ材料M4が載置される。
【0051】
図18に例示するように、縦列された一方のそれぞれの供給ユニット8A、8Aから供給されたタイヤ材料M4、M4が順次、一方のベルトドラム4aに巻き付けられて筒状に成形されて積層される。例えば、上方に配置された供給コンベヤ8eに載置された定尺カットされたタイヤ材料M4を、ドラム軸心C2を中心にしてベルトドラム4aを一方向に回転させながらベルトドラム4aに巻き付けて筒状に成形する。次いで、下方に配置された供給コンベヤ8eに載置された定尺カットされたタイヤ材料M4を、ドラム軸心C2を中心にしてベルトドラム4aを他方向に回転させながらベルトドラム4aに巻き付けて筒状に成形する。
【0052】
次いで、図19に例示するように、旋回軸4pを中心にしてベルトドラム4を時計回りに180°旋回させる。これにより、一方のベルトドラム4aを供給コンベヤ9eの前方に移動させるとともに、他方のベルトドラム4bを供給コンベヤ8e、8eの前方に移動させる。そして、ドラム軸心C3を中心にして一方のベルトドラム4aを一方向に回転させながら、一方の供給ユニット10Aから供給されたタイヤ材料M6を一方のヘッド10eを用いてベルトドラム4aに螺旋状に巻付ける。これにより、筒状に成形されたタイヤ材料M4の外周面の所定の幅方向(X方向)範囲にタイヤ材料M6により形成されたベルト補強層を積層する。
【0053】
次いで、図20に例示するように、供給コンベヤ9eに載置された定尺カットされた材料M5を、ドラム軸心C3を中心にして一方のベルトドラム4aを一方向に回転させながらベルトドラム4aに巻き付けて筒状に成形して積層する。これにより、一方のベルトドラム4aには、タイヤ材料M4、M4、M6、M5が順に積層された筒状の外周側部材MBが成形される。他方のベルトドラム4bには、ドラム軸心C2を中心にしてベルトドラム4bを回転させながら、それぞれの供給コンベヤ8e、8eに載置された定尺カットされたタイヤ材料M4、M4をベルトドラム4bに順次巻き付けて筒状に成形して積層する。
【0054】
次いで、図21に例示するように、旋回軸4pを中心にしてベルトドラム4を反時計まわりに180°旋回させる。これにより、外周側部材MBが成形されている一方のベルトドラム4aをシェープドラム2側に移動させる。
【0055】
図22に例示するように、成形された内周側部材MAはバンド移送機12を用いてバンドドラム3から一方のシェープドラム2aに移送する。これにより、一方のシェープドラム2aには内周側部材MAおよび一対のビード部材MCが外嵌された状態になる。そして、シェープドラム2aでは公知の方法で、内周側部材MAの幅方向両端部をビード部材MC周りにターンアップする。そして、ターンアップされた内周側部材MAの幅方向両端部は、ドラム軸心C1を中心にしてシェープドラム2aを回転させながら、公知の方法でドラム軸心C1に向かって押圧される。
【0056】
次いで、図23に例示するように、旋回軸2pを中心にしてシェープドラム2を時計回りに180°旋回させる。これにより、一方のシェープドラム2aと一方のベルトドラム4aをX方向に並列させる。
【0057】
次いで、図24に例示するように、外周側部材MBを、一方のベルトドラム4aからベルト移送機13を用いて一方のシェープドラム2aに移送して、内周側部材MAに外挿する。そして、シェープドラム2aでは、内周側部材MAの外周面と外周側部材MBの内周面とを当接させて、ドラム軸心C2を中心にしてシェープドラム2aを回転させながら外周側部材MBをドラム軸心C2に向かって押圧して、内周側部材MA、外周側部材MBおよび一対のビード部材MCを一体化してグリーンタイヤGを成形する。尚、他方のベルトドラム4bには、既述した同様の手順で、タイヤ材料M6、M5を巻付けて外周側部材MBを成形する。また、他方のシェープドラム2bには、既述した同様の手順で、内周側部材MAおよび一対のビード部材MCを外嵌する。
【0058】
次いで、図25に例示するように、旋回軸2pを中心にしてシェープドラム2を反時計まわりに180°旋回させる。その後、図26に例示するように、グリーンタイヤGを一方のシェープドラム2aから取外して加硫装置15に搬送する。
【0059】
図27に例示するように、グリーンタイヤGは、加硫装置15に装着された加硫用モールド16の中に配置される。その後、閉型した加硫用モールド16と膨張した加硫用ブラダ17との間でグリーンタイヤGが加硫されてタイヤTが完成する。グリーンタイヤGの加硫は、公知の種々の方法を用いることができる。この実施形態では空気入りタイヤTが製造されているが、本発明は種々のタイプのタイヤTを製造する際に適用することも可能である。
【0060】
そして、本発明の供給システムの実施形態によれば、異なる種類のタイヤ材料M1、M2をバンドドラム3に供給するには、それぞれの供給ユニット5、6を移動させるのではなく、それぞれのスライドコンベヤ5d、6dをスライド移動させるとともに旋回コンベヤ5eを旋回させればよいので、過大なスペースは不要になる。それぞれの種類のタイヤ材料M1、M2を1つのバンドドラム3に巻付けるために、バンドドラム3を移動させる必要もない。それぞれのストック位置P1、P2に単数の供給ユニット5A、6Aが配置されていて、それぞれのスライドコンベヤ5d、6dが存在しない本発明の供給システムの実施形態であれば、異なる複数種類のタイヤ材料M1、M2を1つのバンドドラム3に供給するには、旋回コンベヤ5eを旋回させればよいで、成形装置1をコンパクト化するには一段と有利になる。
【0061】
そして、旋回コンベヤ5eを旋回させるために長時間を要することはないので、複数種類のタイヤ材料M1、M2を1つのバンドドラム3に効率的に供給するには有利になる。この実施形態のように、スライドコンベヤ5d、6dを有していても、ライドコンベヤ5d、6dをスライド移動させるために長時間を要することはない。
【0062】
この実施形態のグリーンタイヤGの成形工程では、所定数のグリーンタイヤGを成形すると、それぞれのタイヤ材料M1~M6でのストック位置P1~P6では、一方の供給ユニット5A~10Aにストックされているタイヤ材料M1~M6が空になる。この場合は、スライドコンベヤ5d~9dを並列されている供給ユニット5~9の幅方向にスライド移動させることで、他方の供給ユニット5B~9Bからそのタイヤ材料M1~M5を供給することができる。
【0063】
即ち、スライドコンベヤ5d~9dを他方の供給ユニット5B~9Bの前方にスライド移動させて定尺カットされたタイヤ材料M1~M5をスライドコンベヤ5d~9dに載置する。その後、スライドコンベヤ5d~9dをスライド移動させて、供給コンベヤ6e~9eに定尺カットされたタイヤ材料M1~M5を移載して供給する。タイヤ材料M1、M2は、旋回コンベヤ5eも使用してスライドコンベヤ5d、6dから供給コンベヤ6eに移載する。そして、他方の供給ユニット5B~9Bから定尺カットされたタイヤ材料M1~M5が供給コンベヤ6e~9eに供給されている間に、タイヤ材料M1~M5が空になった一方の供給ユニット5A~9Aを、そのタイヤ材料M1~M5がストックされた新たな供給ユニット5A~9Aに置き換える。
【0064】
そのため、それぞれのストック位置P1~P5からは、スライドコンベヤ5d~9d(タイヤ材料M1、M2はさらに旋回コンベヤ5e)を介していずれかの供給ユニット5~9からタイヤ材料M1~M5を対応するドラム3、4に連続的に供給できる。したがって、タイヤ材料M1~M5の補充に起因する時間ロスをより低減して、タイヤ成形工程での作業効率を向上させるには有利になる。これに伴い、タイヤ材料M1~M5の補充に起因する時間ロスを低減するために、供給コンベヤ6e~9eに余分な量のタイヤ材料M1~M5を載置してストックする必要がないので、供給コンベヤ6e~9eの長さを最小限にできる。その結果、成形装置を1コンパクト化するには益々有利になる。
【0065】
さらに、一方のビード供給ユニット11Aの一対のビード部材MCが空になると、他方のビード供給ユニット11Bから一対のビード部材MCを供給できる。そして、他方のビード供給ユニット11Bから一対のビード部材MCを供給している間に、ビード部材MCが空になった一方のビード供給ユニット11Aを供給位置から待機位置に旋回移動させて、ビード供給ユニット11Aに新たな一対のビード部材MCを補充できるので、一対のビード部材MCの補充に起因して成形工程が停止することも回避できる。
【0066】
上述した本発明の供給システムの実施形態を備えた成形装置1よって、タイヤ材料M1、M2が使用されたグリーンタイヤGを成形し、このグリーンタイヤGを加硫する本発明のタイヤの製造方法によれば、省スペースでタイヤTを生産性よく製造するには有利になる。
【0067】
旋回コンベヤ5e、それぞれの供給コンベヤ6e~9e、それぞれのスライドコンベヤ5d~9dをより短くすることで、成形装置1をコンパクト化するには有利になる。旋回コンベヤ5e、それぞれの供給コンベヤ6e~9e、それぞれのスライドコンベヤ5d~9dは、載置されるタイヤ材料M1~M5の1枚の長さより長ければよい。そこで、旋回コンベヤ5e、それぞれの供給コンベヤ6e~9eの長さ、それぞれのスライドコンベヤ5d~9dの長さは、例えば、そのコンベヤに載置されるタイヤ材料M1~M5の1枚の長さの100%以上150%以下、より好ましくは105%以上130%以下、さらに好ましくは105%以上120%以下にする。
【0068】
この実施形態では、旋回コンベヤ5eは、2つのストック位置P1、P2の供給ユニット5、6に対して設置されているが、3つ以上のストック位置の供給ユニットに対して設置することもできる。即ち、3つ以上のストック位置の供給ユニットから繰り出されて定尺カットされたタイヤ材料を、1つの旋回コンベヤ5eを介して、供給コンベヤ6eに移載してバントドラム3に供給する構成にすることもできる。
【0069】
また、内周側部材MAを移送する際のバンドドラム3とシェープドラム2とのドラム軸心C1が同軸上に設定され、外周側部材MBを移送する際のベルトドラム4とシェープドラム2とのドラム軸心C2が同軸上に設定されている。そのため、バンド移送機12およびベルト移送機13は、それぞれのドラム2、3、4の共通のドラム軸心C1、C2方向のみに移動させるだけ済むので成形装置1のコンパクト化には益々有利になる。その結果、成形装置1をコンパクト化しつつ、タイヤTを生産性よく製造するには有利になる。
【0070】
定尺カットすることでタイヤ材料M1~M5は経時的に収縮し、その収縮具合にバラつきが生じるが、それぞれのストック位置P1~P5では、それぞれのタイヤ材料M1~M5を長尺体の状態でストックしておき、それぞれのタイヤ材料M1~M5を供給ユニット5~9から繰り出して定尺カットする。そして、定尺カットされたそれぞれのタイヤ材料M1~M5を、対応するスライドコンベヤ5d~9dおよび供給コンベヤ6e~9e(タイヤ材料M1、M2はさらに旋回コンベヤ5e)を経由して、対応するドラム3、4に供給する。尚、それぞれのストック位置P1、P2に単数の供給ユニット5A、6Aが配置されていて、それぞれのスライドコンベヤ5d、6dが存在しない本発明の供給システムの実施形態であれば、定尺カットされたそれぞれのタイヤ材料M1、M2を、それぞれの供給ユニット5A、6Aから旋回コンベヤ5eを経由してベルトドラム3に供給する。このように、グリーンタイヤGの成形直前にタイヤ材料M1~M5を定尺カットすることで、予め定尺カットしてストックする場合に比して、これらタイヤ材料M1~M5の経時的な収縮や収縮量のバラつきを最小限にするには有利になる。その結果、製造したタイヤTの品質向上に寄与する。
【0071】
本発明の供給システムは、上記に例示した成形装置1に限らず、公知の種々の成形装置1に適用することができる。また、本発明の供給システムによりタイヤ材料を供給する成形ドラム体は、上述したドラム2、3、4に限らず、例えば製造するタイヤTの内面と実質的に同じ外面を有する所謂、剛性コアであってもよい。
【0072】
本開示は以下の発明を包含する。
発明1:
帯状のタイヤ材料が巻回されてストックされている供給ユニットと、成形ドラム体と、前記供給ユニットと前記成形ドラム体との間に配置されている供給コンベヤとを備えて、前記供給ユニットから繰り出されて定尺カットされた前記タイヤ材料が前記供給コンベヤに平置き状態で載置されて前記成形ドラム体に供給されて、前記成形ドラム体に巻付けられることにより筒状に成形される構成にした成形ドラム体へのタイヤ材料の供給システムにおいて、
複数のストック位置のそれぞれに配置されている前記供給ユニットを有し、隣り合う前記ストック位置の前記供給ユニットから繰り出される前記タイヤ材料どうしが異なる種類であり、互いの前記タイヤ材料の供給方向が平面視で所定角度で交差するようにそれぞれの前記供給ユニットが配置されていて、
それぞれの前記ストック位置の前記供給ユニットと前記供給コンベヤとの間で、平面視で旋回する旋回コンベヤを有し、
所定の一定位置に設置されている前記成形ドラム体および前記供給コンベヤに対して、それぞれの前記ストック位置に配置されている前記供給ユニットから繰り出されて定尺カットされた前記タイヤ材料が、前記旋回コンベヤを経由して前記供給コンベヤに移載されて前記成形ドラム体に供給される構成にした成形ドラム体へのタイヤ材料の供給システム。
発明2:
前記所定の一定位置に設置されている前記前記成形ドラム体および前記供給コンベヤと、一方の前記ストック位置の前記供給ユニットとが直列に配置されている発明1に記載の成形ドラム体へのタイヤ材料の供給システム。
発明3:
前記所定角度が85°以上95°以下である発明1または2に記載の成形ドラム体へのタイヤ材料の供給システム。
発明4:
それぞれの前記ストック位置の前記供給ユニットから繰り出されて定尺カットされたそれぞれの前記タイヤ材料が連続的に前記成形ドラム体に供給されて、定尺カットされたそれぞれの前記タイヤ材料の全長および全長に渡る幅方向位置が、前記旋回コンベヤから前記供給コンベヤに搬送される過程でセンサにより検知され、それぞれの前記タイヤ材料が前記成形ドラム体に巻き付けられる際に、そのタイヤ材料の前記センサにより検知された全長データ、全長に渡る幅方向位置データに基づいて前記成形ドラム体の回転速度、幅方向位置が調整される構成にした発明1~3のいずれかに記載の成形ドラム体へのタイヤ材料の供給システム。
発明5:
発明1~4のいずれかに記載の成形ドラム体へのタイヤ材料の供給システムを備えた成形装置によって、前記タイヤ材料が使用されたグリーンタイヤを成形し、このグリーンタイヤを加硫するタイヤの製造方法。
【符号の説明】
【0073】
1 成形装置
2(2a、2b) シェープドラム
2p 旋回軸
3 バンドドラム
3r ガイドレール
4(4a、4b) ベルトドラム
4p 旋回軸
5(5A、5B) インナーライナの供給ユニット
5c カッター
5d スライドコンベヤ
5e 旋回コンベヤ
6(6A、6B) カーカス材の供給ユニット
6c カッター
6d スライドコンベヤ
6e 供給コンベヤ
7(7A、7B) サイド部の供給ユニット
7c カッター
7d スライドコンベヤ
7e 供給コンベヤ
8(8A、8B) ベルト材の供給ユニット
8c カッター
8d スライドコンベヤ
8e 供給コンベヤ
9(9A、9B) トレッド部の供給ユニット
9c カッター
9d スライドコンベヤ
9e 供給コンベヤ
10(10A、10B) ベルト補強材の供給ユニット
10c カッター
10d フェスツーン部
10e ヘッド
11(11A、11B) ビード供給ユニット
11P 旋回軸
12 バンド移送機
13 ベルト移送機
14 ビード移送機
15 加硫装置
16 加硫用モールド
17 加硫用ブラダ
M タイヤ部材
MA 内周側部材
MB 外周側部材
MC ビード部材
M1 インナーライナ
M2 カーカス材
M3 サイド部
M4 ベルト材
M5 トレッド部
M6 ベルト補強材
G グリーンタイヤ
T 加硫済みタイヤ(完成タイヤ)
【要約】
【課題】タイヤの成形装置をコンパクト化しつつ、複数種類のタイヤ材料を1つの成形ドラム体に効率的に供給する供給システムおよびタイヤの製造方法を提供する。
【解決手段】隣り合うストック位置P1、P2に異なる種類のタイヤ材料M1、M2を巻回状態でストックした供給ユニット5、6を配置して、各供給ユニット5、6から繰り出されるタイヤ材料M1、M2どうしの供給方向が平面視で交差するようにして、各供給ユニット5、6と供給コンベヤ6eとの間に、平面視で旋回する旋回コンベヤ5eを配置して、所定の一定位置に設置されているバントドラム3および供給コンベヤ6eに対して、各供給ユニット5、6から繰り出されて定尺カットされたタイヤ材料M1、M2を、旋回コンベヤ5eを経由して供給コンベヤ6eに移載してバンドドラム3に供給し、バンドドラム3に巻付けて筒状に成形する。
【選択図】 図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27