(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-22
(45)【発行日】2024-10-30
(54)【発明の名称】内燃機関の制御装置
(51)【国際特許分類】
F02D 43/00 20060101AFI20241023BHJP
F02D 21/08 20060101ALI20241023BHJP
F02D 41/14 20060101ALI20241023BHJP
F02D 45/00 20060101ALI20241023BHJP
F02P 5/145 20060101ALI20241023BHJP
F02P 5/15 20060101ALI20241023BHJP
【FI】
F02D43/00 310A
F02D21/08 301C
F02D21/08 301E
F02D41/14
F02D43/00 301B
F02D43/00 301E
F02D43/00 301N
F02D45/00 360A
F02D45/00 368F
F02P5/145 K
F02P5/15 K
(21)【出願番号】P 2021057746
(22)【出願日】2021-03-30
【審査請求日】2023-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】澤田 徹
【審査官】戸田 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-332896(JP,A)
【文献】特開平05-149172(JP,A)
【文献】特開2006-009652(JP,A)
【文献】特開2008-014212(JP,A)
【文献】特開2007-285218(JP,A)
【文献】特開平08-254143(JP,A)
【文献】国際公開第2012/056515(WO,A1)
【文献】特開2010-196474(JP,A)
【文献】特開2006-016973(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 43/00
F02D 21/08
F02D 41/14
F02D 45/00
F02P 5/145
F02P 5/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気通路に設けられた排気浄化装置と、
前記排気浄化装置の上流に設けられた空燃比検出手段と、
前記排気浄化装置の下流に設けられた酸素濃度検出手段と、を備え、
前記空燃比検出手段の検出値が目標値となるように空燃比をフィードバック制御する内燃機関の制御装置であって、
前記酸素濃度検出手段の温度を取得する温度取得手段と、
前記酸素濃度検出手段の出力値に応じて前記目標値を補正する補正手段と、
前記温度取得手段によって取得した前記酸素濃度検出手段の温度に基づき、前記補正手段による前記目標値の補正量を変更する補正量変更手段と、を備え
、
前記補正手段は、前記酸素濃度検出手段の出力値が理論空燃比領域よりリッチ側の領域であるリッチ領域となった場合、前記目標値をリーン側に補正し、
前記リッチ領域は、前記理論空燃比領域からのズレの大きさに応じて複数の領域に区分され、前記補正手段は、前記酸素濃度検出手段の出力値が、前記リッチ領域を複数に区分した領域のうち前記理論空燃比領域からのズレが大きい領域に位置するほど前記目標値を大きくリーン側に補正し、
前記補正量変更手段は、前記温度取得手段によって取得した前記酸素濃度検出手段の温度が高いほど、前記目標値がよりリーン側になるように前記補正手段による補正量を変更し、
前記補正量変更手段は、前記リッチ領域を複数に区分した領域のうち前記理論空燃比領域からのズレが最も大きい領域に関しては、前記酸素濃度検出手段の温度に基づいた前記補正手段による補正量の変更を行わず、前記理論空燃比領域からのズレが最も小さい領域に関しては、前記酸素濃度検出手段の温度に基づいた前記補正手段による補正量の所定以上の変更を行わない
ことを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項2】
前記補正手段は、前記リッチ領域を複数に区分した領域のうち前記理論空燃比領域からのズレが最も小さい領域において、前記酸素濃度検出手段の温度が所定未満の場合は前記目標値の補正を行わず、
補正量変更手段は、前記酸素濃度検出手段の温度が所定以上の場合は、前記リッチ領域を複数に区分した領域のうち前記理論空燃比領域からのズレが最も小さい領域においても前記目標値の補正を行う
ことを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項3】
排気を吸気に還流する排気還流手段を備え、
前記補正手段は、
前記酸素濃度検出手段の出力値が前記リッチ領域となった場合、前記目標値をリーン側に補正するとともに、排気の還流量が多くなるほど、前記目標値をリーン側に補正すること
を特徴とする
請求項1又は2に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項4】
前記内燃機関の点火時期を変更する点火時期変更手段を備え、
前記補正手段は、
前記酸素濃度検出手段の出力値が前記リッチ領域となった場合、前記目標値をリーン側に補正するとともに、点火時期が遅角されるほど、前記目標値をリッチ側に補正する
請求項1又は2に記載の内燃機関の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気空燃比の検出技術に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の排気通路には、内燃機関の空燃比を制御して排気を良化したり燃費や運転性を向上させたりするために、排気通路の空燃比を検出するセンサが設けられている。
例えば特許文献1には、排気通路に設けられた排気浄化触媒の近傍に空燃比センサ(空燃比検出手段)とO2センサ(酸素濃度検出手段)を備え、空燃比センサの検出値に基づいて燃料噴射制御を行うとともに、O2センサの検出値に基づいて空燃比センサの検出値を補正して、空燃比センサの検出値の精度を向上させている。
【0003】
更に、特許文献1では、内燃機関の吸入空気量及び目標空燃比に基づいて排気温度を推定し、推定した排気温度に基づいてO2センサの検出値を補正して、O2センサの検出値に基づいて補正する空燃比センサの検出値の精度を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、推定した排気温度に基づいてO2センサの検出値を加算補正している。このO2センサの検出値に基づいて空燃比センサの検出値を補正する際は、排気温度に基づいて加算補正したO2センサの検出値を使用することになる。しかしながら、補正後のO2センサの検出値は、補正前のO2センサの検出値よりも排気通路内の酸素濃度の変化を正確に表せていない場合があるため、空燃比センサの検出値に基づく空燃比フィードバック制御の精度を十分に向上させることができない場合がある。
【0006】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、酸素濃度検出手段の検出値を使用した補正を適切に行い、空燃比検出手段の検出値に基づく空燃比フィードバック制御の精度を向上させる内燃機関の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明の内燃機関の制御装置は、内燃機関の排気通路に設けられた排気浄化装置と、前記排気浄化装置の上流に設けられた空燃比検出手段と、前記排気浄化装置の下流に設けられた酸素濃度検出手段と、を備え、前記空燃比検出手段の検出値が目標値となるように空燃比をフィードバック制御する内燃機関の制御装置であって、前記酸素濃度検出手段の温度を取得する温度取得手段と、前記酸素濃度検出手段の出力値に応じて前記目標値を補正する補正手段と、前記温度取得手段によって取得した前記酸素濃度検出手段の温度に基づき、前記補正手段による前記目標値の補正量を変更する補正量変更手段と、を備え、前記補正手段は、前記酸素濃度検出手段の出力値がリッチ領域となった場合、前記目標値をリーン側に補正し、前記リッチ領域は、理論空燃比領域からのズレの大きさに応じて複数の領域に区分され、前記補正手段は、前記酸素濃度検出手段の出力値が、前記リッチ領域を複数に区分した領域のうち前記理論空燃比領域からのズレが大きい領域に位置するほど前記目標値を大きくリーン側に補正し、前記補正量変更手段は、前記温度取得手段によって取得した前記酸素濃度検出手段の温度が高いほど、前記目標値がよりリーン側になるように前記補正手段による補正量を変更し、前記補正量変更手段は、前記リッチ領域を複数に区分した領域のうち前記理論空燃比領域からのズレが最も大きい領域に関しては、前記酸素濃度検出手段の温度に基づいた前記補正手段による補正量の変更を行わず、前記理論空燃比領域からのズレが最も小さい領域に関しては、前記酸素濃度検出手段の温度に基づいた前記補正手段による補正量の所定以上の変更を行わないことを特徴とする。
【0008】
これにより、酸素濃度検出手段における温度の影響を抑制して、酸素濃度検出手段の検
出値に基づく空燃比のフィードバック制御の目標値の補正精度を向上させることができる
。
【0009】
特に、酸素濃度検出手段の温度が高いほど、補正手段による目標値の補正量を大きくするので、温度が高いほど出力値の変動範囲が狭くなる酸素濃度検出手段の特性に対応して、空燃比のフィードバック制御の目標値の補正精度を向上させることができる。
好ましくは、前記補正手段は、前記リッチ領域を複数に区分した領域のうち前記理論空燃比領域からのズレが最も小さい領域において、前記酸素濃度検出手段の温度が所定未満の場合は前記目標値の補正を行わず、補正量変更手段は、前記酸素濃度検出手段の温度が所定以上の場合は、前記リッチ領域を複数に区分した領域のうち前記理論空燃比領域からのズレが最も小さい領域においても前記目標値の補正を行うとよい。
【0010】
これにより、酸素濃度検出手段の温度が所定未満の際に目標値を補正しない酸素濃度検出手段の出力値であっても、酸素濃度検出手段の温度が所定以上の場合には空燃比のフィードバック制御の目標値を補正するので、温度が高いほど出力値の変動範囲が狭くなる特性を有する酸素濃度検出手段においても、酸素濃度の変化を適切に捉えフィードバック制御を精度良く行うことができる。
【0012】
好ましくは、排気を吸気に還流する排気還流手段を備え、前記補正手段は、前記酸素濃度検出手段の出力値が前記リッチ領域となった場合、前記目標値をリーン側に補正するとともに、排気の還流量が多くなるほど、前記目標値をリーン側に補正するとよい。
【0013】
これにより、排気の還流量が多くなることで排気中の窒素酸化物(NOx)が低減することに対応して、目標値をリーン側に補正することで、排気浄化装置に流入する排気の空燃比を、窒素酸化物及び一酸化炭素(CO)の排出が低下する適正範囲に制御することができる。
好ましくは、内燃機関の点火時期を変更する点火時期変更手段を備え、前記補正手段は、前記酸素濃度検出手段の出力値が前記リッチ領域となった場合、前記目標値をリーン側に補正するとともに、点火時期が遅角されるほど、前記目標値をリッチ側に補正するとよい。
【0014】
これにより、点火時期が遅角することで排気中の一酸化炭素が低下することに対応して、目標値をリッチ側に補正することで、排気浄化装置に流入する排気の空燃比を、窒素酸化物及び一酸化炭素の排出が低下する適正範囲に制御することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の内燃機関の制御装置によれば、酸素濃度検出手段の温度に基づいて、酸素濃度検出手段の検出値に基づく空燃比のフィードバック制御の目標値の補正量を変更することで、酸素濃度検出手段の温度による検出値の影響を抑制して、空燃比のフィードバック制御の目標値を適切に設定することができる。これにより、排気浄化装置に流入する排気の空燃比を適切に制御して、排気浄化装置における排気浄化性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係るエンジンの給排気系の概略構成図である。
【
図2】三元触媒における排気空燃比に対する各排気成分の浄化性能とO2センサの出力値を示すグラフである。
【
図3】LAFS補正量の設定用マップの一例である。
【
図4】LAFS補正量の設定用マップの他の例である。
【
図5】三元触媒における排気空燃比に対する各排気成分の浄化性能とO2センサの出力値を示すグラフであり、LAFS補正量を決定する閾値の設定例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に基づき本発明の一実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る制御装置を適用したエンジン2(内燃機関)の給排気系の概略構成図である。
エンジン2は、走行駆動源として車両に搭載されている。
エンジン2は、多気筒のガソリンエンジンであって、
図1では簡略して1つの気筒のみ記載している。エンジン2は、各気筒の吸気ポート4に設けられた燃料噴射弁3から、任意の噴射時期及び噴射量で各気筒の吸気ポート4内に燃料を噴射可能な構成となっている。
【0018】
エンジン2の吸気通路5には、新気の流量を調整するためのスロットルバルブ6が設けられている。
一方、エンジン2の排気通路10には、排気浄化装置として三元触媒12が備えられている。
三元触媒12は、理論空燃比において排気中のHC、COを酸化させるとともにNOxを還元し、これらの排気成分を排気中から除去する機能を有する。
【0019】
エンジン2の排気通路10には、三元触媒12の上流側にLAFS(リニア空燃比センサ)22(排気空燃比検出手段)を備えるとともに、三元触媒12の下流側に排気空燃比を検出するO2センサ23(酸素濃度検出手段)と排気温度を検出する排気温度センサ24(温度取得手段)が設けられている。
エンジンコントロールユニット30は、入出力装置、記憶装置(ROM、RAM、不揮発性RAM等)、タイマ及び中央演算処理装置(CPU)等を含んで構成され、LAFS22、O2センサ23等の各種センサの検出情報と、その他車両のアクセル操作量等の車両運転情報を入力し、当該各種情報に基づいて、燃料噴射弁3からの燃料噴射量、 スロットルバルブ6の開度を演算して、上記各種機器の作動制御を行うことで、エンジン2の運転制御を行う。
【0020】
具体的には、エンジンコントロールユニット30は、LAFS22の検出値が目標空燃比(目標値)、例えば理論空燃比を示す値になるように燃料噴射量をフィードバック制御する。
図2は、所定回転速度及び所定負荷でのエンジン2の運転時において、三元触媒12における排気空燃比に対する各排気成分の浄化性能とO2センサ23の出力値を示すグラフである。
図2(A)において、実線がLAFS22の出力値を示す。また、破線が一酸化炭素CO及び炭化水素HC、一点鎖線が窒素酸化物NOxの三元触媒12からの排出量を示す。一酸化炭素CO、炭化水素HC、窒素酸化物NOxの三元触媒12からの排出量が少なくなる空燃比、すなわち理論空燃比付近の領域(理論空燃比領域)を目標空燃比として、LAFS22の検出値に基づき燃料噴射量をフィードバック制御する。
図2(B)は、O2センサ23の出力値を示す。
図2(B)において、破線はO2センサ23が高温状態であるときのO2センサ23の出力値、一点鎖線はO2センサ23が低温(常温)であるときのO2センサ23の出力値である。O2センサ23の出力値は、理論空燃比領域において大きく変化し、理論空燃比領域よりもリッチ側及びリーン側では小さく変化する。そのため、理論空燃比領域とリッチ領域との境界(リッチ境界)におけるO2センサ23の出力値と、理論空燃比領域とリーン領域との境界(リーン境界)におけるO2センサ23の出力値との差は大きくなる。O2センサ23は、例えばリッチ境界及びリーン境界における出力値にそれぞれリッチ閾値(リッチ判定値)、リーン閾値(リーン判定値)を設けることで、O2センサ23の出力値に基づいて三元触媒12の下流側の排気空燃比の状態、すなわち排気空燃比が理論空燃比領域にあるか、若しくはリッチ、リーン状態にあるかを判定することができる。
【0021】
エンジンコントロールユニット30は、O2センサ23の出力値に基づいて、LAFS22の出力値を補正する機能を有する。
更に、本実施形態のエンジンコントロールユニット30は、上記フィードバック制御における目標空燃比を補正する目標空燃比補正部1を備えている。目標空燃比補正部1は、排気温度センサ24によって検出した排気温度に基づいてO2センサ23の温度を取得する温度取得部35(温度取得手段)と、目標空燃比を補正する補正部36(補正手段、補正量変更手段)と、を有する。なお、三元触媒12、LAFS22、O2センサ23、排気温度センサ24、及びエンジンコントロールユニット30における目標空燃比補正部1と空燃比のフィードバック制御機能と、が本発明の制御装置に該当する。
【0022】
補正部36は、O2センサ23の出力値とO2センサ23の温度とに基づいて目標空燃比を補正する。なお、ここでは、排気温度センサ24によって検出した排気温度を基にO2センサ23の温度を推定する。具体的には、O2センサ23の温度が排気温度に対して遅れて変化することを考慮して、O2センサ23の温度を推定する。補正部36は、
図3に示すようなマップを用いて、O2センサ23の出力値とO2センサ23の温度(排気温度)とに基づいて、LAFS補正量(目標空燃比の補正量)を設定する。
図3に示すように、O2センサ23の出力値が理論空燃比に近くなるほどLAFS補正量(目標空燃比の補正量)の絶対値を小さくし、O2センサ23の出力値がリッチになるほどあるいはリーンになるほどLAFS補正量の絶対値を大きくする。即ち、O2センサ23の出力値がリッチあるいはリーンになるほど、LAFS補正量の絶対値を大きくして、目標空燃比を大きく変化させる。
【0023】
また、排気温度が高くなるほど、即ちO2センサ23の温度が高くなるほど、LAFS補正量(目標空燃比の補正量)の絶対値を大きくする。
なお本実施形態では、補正部36によって
図3に示すように、O2センサ23の出力値をリッチ領域及びリーン領域の夫々において大、中、小の第3段階に、排気温度を4段階に区分しており、LAFS補正量を大、中、小、0(補正なし)の4段階に設定する。O2センサ23の出力値がリッチ大あるいはリーン大(すなわち、理論空燃比領域からのズレが大きい領域)の場合には、排気温度に拘わらずLAFS補正量の絶対値が大に設定される。O2センサ23の出力値がリッチ中あるいはリーン中(理論空燃比領域からのズレがリッチ大あるいはリーン大より少ない領域)の場合には、上記のように排気温度が高くなるほどLAFS補正量(目標空燃比の補正量)の絶対値を小→中→大のように大きくする。O2センサ23の出力値がリッチ小あるいはリーン小(理論空燃比領域からのズレがリッチ中あるいはリーン中より少ない領域)の場合には、排気温度が4段階のうちの最も低い領域では補正を行わず(LAFS補正量=0)、その他の領域でLAFS補正量を小に設定する。なお、排気温度が4段階のうちの最も低い領域は、O2センサ23の活性温度以上の領域であり、活性温度近傍(活性温度を含む)から広がっていることが好ましい。
【0024】
このように補正することで、温度上昇によって出力値の変動範囲が狭くなるといったO2センサ23の特性に対応して、LAFS補正量を大きく設定することで、空燃比フィードバック制御における目標空燃比を温度変化に対応して大きく変化させることができる。すなわち、温度上昇によってO2センサ23の出力値の変動範囲が狭くなった場合は、LAFS補正量を大きくすることによって、少ないO2センサ23の出力値変動を目標空燃比に反映させている。したがって、この補正された目標空燃比を使用して、LAFS22の出力値に基く空燃比フィードバック制御を精度良く実行することができる。
【0025】
また、O2センサ23の出力値がリッチ小あるいはリーン小の場合には、排気温度が4段階のうちの最も低い領域ではLAFS補正量を0にしている。しかしながら、このようにO2センサ23の出力値が理論空燃比に近い領域であっても、排気温度が4段階のうち下から2番目に低い領域以上の場合にはLAFS補正量を0ではなく小にする。
これにより、酸素濃度検出手段の温度が所定未満の低温時にLAFS補正量を補正しないO2センサ23の出力値であっても、O2センサ23の温度が所定以上の場合にはLAFS補正量を小としてフィードバック制御における目標空燃比を補正するので、O2センサ23付近の排気の空燃比が理論空燃比に近くてもフィードバック制御を精度良く行うことができる。すなわち、O2センサ23の温度が所定未満の場合であればリッチ閾値あるいはリーン閾値を超えるようなO2センサ23の出力値であっても、O2センサ23の温度が所定(排気温度が4段階のうちの下から2番目に低い領域)以上の場合は、O2センサ23の出力値の変動範囲が狭くなり、O2センサ23の出力値がリッチ閾値あるいはリーン閾値を超えなくなるため、本来であれば目標空燃比の補正を行いたい排気状態なのに補正が行われない場合がある。酸素濃度検出手段の温度が所定未満の低温時にLAFS補正量を補正しないO2センサ23の出力値であっても、O2センサ23の温度が所定以上の場合にはLAFS補正量を小としてフィードバック制御における目標空燃比を補正することで、このような事態を解消し、フィードバック制御を精度良く行うことができる。
【0026】
また、エンジン2にEGR装置(排気還流手段)が備えられている場合には、更にEGR量(排気還流量)に基づいて目標空燃比を補正するとよい。具体的には、補正部36は、排気の還流量が多くなるほど、目標空燃比をリーン側に補正するとよい。
これにより、排気の還流量が多くなることで排気中のNOxが低減することに対応して目標空燃比を補正することができる。具体的には、排気浄化装置が三元触媒12であり目標空燃比が理論空燃比である場合を例示すると、排気の還流量が多くなることで排気中のNOxが低減するが、排気中のCOはNOxほど大きく低減しない。そのため、COとNOxの三元触媒12からの排出量が少なくなる空燃比領域はリーン側に拡大することとなる。この拡大した空燃比領域の中央部で目標空燃比を設定することで、空燃比が変動したとしても排気を良好に保つことができる。したがって、空燃比が変動しても理論空燃比領域から逸脱し難くなり、三元触媒12における排気浄化性能を向上させることができる。なお、目標空燃比は拡大した空燃比領域の中央部に設定する必要はないが、このようにすることにより、空燃比が変動しても、変動した空燃比がCOとNOxの三元触媒12からの排出量が少なくなる空燃比領域内に納まりやすくなる。
【0027】
また、エンジンコントロールユニット30に点火時期を変更する機能(点火時期変更手段)を備えている場合には、更に点火時期に基づいて目標空燃比を補正するとよい。具体的には、補正部36は、点火時期が遅角されるほど、目標空燃比をリッチ側に補正するとよい。
これにより、点火時期が遅角することで排気中のCOが低下することに対応して目標空燃比を補正することができる。具体的には、排気浄化装置が三元触媒12であり目標空燃比が理論空燃比である場合を例示すると、点火時期を遅角することで排気中のCOが低減するが、排気中のNOxはCOほど大きく低減しない。そのため、COとNOxの三元触媒12からの排出量が少なくなる空燃比領域はリッチ側に拡大することとなる。この拡大した空燃比領域の中央部で目標空燃比を設定することで、空燃比が多少変動したとしても排気を良好に保つことができる。したがって、空燃比が変動しても理論空燃比領域から逸脱し難くなり、三元触媒12における排気浄化性能を向上させることができる。
【0028】
以上で本発明の説明を終了するが、本発明は上記の実施形態に限定するものではない。
例えば、上記の実施形態では、補正部36において、O2センサ23の出力値をリッチ及びリーンにおいて夫々大、中、小の第3段階、排気温度を4段階に区分して、LAFS補正量を大、中、小、0の4段階に設定しているが、その他の2以上の段階に適宜設定してもよいし、連続的に設定してもよい。また、O2センサ23の出力値がリッチ小あるいはリーン小の場合であって、かつ排気温度が最も低い領域において、LAFS補正量を0に設定しているが、小に設定してもよいし、小よりも少ない値に設定してもよい。
【0029】
また、リッチとリーンにおいてLAFS補正量を異なるように設定してもよい。例えば、リーン領域におけるO2センサ23の出力値はO2センサ23の温度変化の影響を受けにくいため、リッチ領域よりもリーン領域でのLAFS補正量を小さく設定してもよいし、リーン領域においてLAFS補正量を0にしてもよい。なお、リーン領域の方がリッチ領域よりも温度変化の影響を受けやすいような場合が考えられるのであれば、リーン領域でのLAFS補正量をリッチ領域でのLAFS補正量よりも大きくしてもよい。
【0030】
また、排気浄化装置は三元触媒に限らず、燃料噴射量をフィードバック制御する際のLAFS22の検出値の目標空燃比は理論空燃比でなくともよい。
また、上記実施態では補正部36において、O2センサ23の出力値と排気温度からLAFS補正量(目標空燃比の補正量)を変更するように設定しているが、O2センサ23の出力値と排気温度からLAFS補正量を決定する閾値を変更することにより、結果的にLAFS補正量を変更してもよい。
【0031】
補正部36は、例えば
図4、5に示すように、O2センサ23の出力値についてリッチ側より順番に第1閾値、第2閾値、第3閾値の3個有し、O2センサ23の出力値がこれらの閾値のいずれの間の範囲であるかによって、LAFS補正量を設定する。更に、この第1閾値、第2閾値、第3閾値の設定が、排気温度(O2センサ23の温度)によって異なる。例えば排気温度が適宜設定された常温域においては、O2センサ23の出力値が第1閾値以上ではLAFS補正量が大、第1閾値未満第2閾値以上ではLAFS補正量が小、第2閾値未満第3閾値以上ではLAFS補正量が0であるのに対し、排気温度が常温域より高い高温域では、O2センサ23の出力値が第1閾値以上ではLAFS補正量が大、第1閾値未満第2閾値以上ではLAFS補正量が大、第2閾値未満第3閾値以上ではLAFS補正量が小に設定される。すなわち、常温域における第1閾値と第2閾値が、高温域ではそれぞれ第2閾値と第3閾値まで低下したこととなる。なお、O2センサ23の出力値が第3閾値未満においては、空燃比が理論空燃比領域及び理論空燃比領域に近い領域にあるものと判断して、LAFS補正量は0とする。したがって、排気温度が常温域より高い高温域では、常温域の場合よりも、LAFS補正量を決定する閾値を下げることになる。
【0032】
これにより、上記実施形態と同様に、O2センサの温度に基づいてLAFS補正量が変更され目標空燃比を適切に設定することができる。
なお、リーン領域においても、上記のリッチ領域と同様にLAFS補正量(絶対値)を設定してもよい。この場合には、排気温度が高温域では常温域の場合よりも、LAFS補正量を0から小に切り換えるO2センサ23の出力値であるリーン判定値を上げることになる。これにより、リーン領域においてもLAFS補正量を変更して目標空燃比を適切に設定することが可能になる。
【0033】
また、車両の走行駆動用以外のエンジンについても、排気通路に空燃比検出手段を備え、空燃比検出手段の検出値に基づいて空燃比をフィードバック制御する内燃機関に対して広く適用することができる。
【符号の説明】
【0034】
1 目標空燃比補正部
2 エンジン(内燃機関)
10 排気通路
12 三元触媒(排気浄化装置)
22 LAFS(空燃比検出手段)
23 O2センサ(酸素濃度検出手段)
24 排気温度センサ(温度取得手段)
30 エンジンコントロールユニット
35 温度取得部(温度取得手段)
36 補正部(補正手段、補正量変更手段)