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特許7575728頭位動揺測定装置、頭位動揺測定方法、及び、それを用いた生体情報取得システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-22
(45)【発行日】2024-10-30
(54)【発明の名称】頭位動揺測定装置、頭位動揺測定方法、及び、それを用いた生体情報取得システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 10/00 20060101AFI20241023BHJP
   A61B 5/11 20060101ALI20241023BHJP
   A61B 5/12 20060101ALI20241023BHJP
   A61B 3/113 20060101ALI20241023BHJP
【FI】
A61B10/00 W
A61B10/00 J
A61B5/11
A61B5/12
A61B3/113
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021553549
(86)(22)【出願日】2020-10-23
(86)【国際出願番号】 JP2020039838
(87)【国際公開番号】W WO2021079970
(87)【国際公開日】2021-04-29
【審査請求日】2023-10-23
(31)【優先権主張番号】P 2019193335
(32)【優先日】2019-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、国立研究開発法人日本医療研究開発機構、再生医療実現拠点橋渡し研究戦略的推進プログラム、「Pendred症候群/DFNB4内耳障害(難聴・めまい)に対するシロリムス少量療法」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】598121341
【氏名又は名称】慶應義塾
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 正人
(72)【発明者】
【氏名】忰田 かおり
(72)【発明者】
【氏名】山野邉 義晴
(72)【発明者】
【氏名】小川 郁
【審査官】門田 宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-344433(JP,A)
【文献】特開平09-075328(JP,A)
【文献】特開平08-224223(JP,A)
【文献】特開2018-149105(JP,A)
【文献】特開2010-207532(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 10/00
A61B 5/11
A61B 5/12
A61B 3/113
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の頭位の動揺の変動量を示す値である頭位動揺値を測定する頭位動揺測定装置であって、
前記被験者に目の開閉を指示する開閉指示部と、
前記被験者の前記頭位の変位を測定する変位測定部と、
測定された前記頭位の変位に基づいて前記頭位動揺値を認識する動揺認識部とを有し、
前記変位測定部は、前記開閉指示部が開眼を指示している状態における前記頭位の変位の測定値である第1測定値、及び、前記開閉指示部が閉眼を指示している状態における前記頭位の変位の測定値である第2測定値の一方を測定した後、連続的に又は所定の時間が経過した後に、他方を測定し、
前記動揺認識部は、前記第1測定値、及び、該第1測定値に対応する前記第2測定値に基づいて、前記頭位動揺値を認識し、
前記開閉指示部は、前記被験者に開眼を指示する第1の指示画像、又は、前記被験者に閉眼を指示する第2の指示画像を表示する画像表示部を含み、
前記第1の指示画像は、前記被験者の注視対象となる図形画像を含むことを特徴とする頭位動揺測定装置。
【請求項2】
請求項に記載の頭位動揺測定装置において、
前記第1の指示画像は、前記図形画像と、前記図形画像の背景となる背景画像とを含み、
前記図形画像の前記背景画像との境界部分は、該図形画像の周縁部から中心部に向かって、明度及び彩度の少なくとも一方が徐々に変化するグラデーション状になっていることを特徴とする頭位動揺測定装置。
【請求項3】
請求項に記載の頭位動揺測定装置において、
前記図形画像は、円形状又は多角形状の画像であり、
前記図形画像の明度及び彩度の少なくとも一方の値は、周縁部分から中心側に向かって高くなり、中央部分で中心に近づくほど低くなることを特徴とする頭位動揺測定装置。
【請求項4】
前記被験者の聴力閾値を測定する聴力測定装置、前記被験者の眼振データを測定する眼振測定装置、及び、前記被験者に対するめまいに関する問診結果を認識する問診結果認識部の少なくとも1つと、
請求項1~請求項のいずれか1項に記載の頭位動揺測定装置と、
前記頭位動揺測定装置による頭位動揺値の測定時刻から所定の時間経過前に測定された前記聴力閾値、前記眼振データ、及び、前記問診結果の少なくとも1つと、該頭位動揺値とを関連付けて格納するデータ格納部とを備えていることを特徴とする生体情報取得システム。
【請求項5】
請求項に記載の生体情報取得システムにおいて、
前記頭位動揺測定装置は、持ち運び可能な装置であることを特徴とする生体情報取得システム。
【請求項6】
被験者の頭位の動揺の変動量を示す値である頭位動揺値を測定する頭位動揺測定方法であって、
前記被験者に目の開閉を指示する開閉指示部が、前記被験者に対して開眼及び閉眼の一方を指示した後、連続的に又は所定の時間が経過した後に、他方を指示するステップと、
前記被験者の前記頭位の変位を測定する変位測定部が、前記開閉指示部が開眼を指示している状態における前記頭位の変位の測定値である第1測定値、及び、前記開閉指示部が閉眼を指示している状態における前記頭位の変位の測定値である第2測定値を測定するステップと、
測定された前記頭位の変位に基づいて前記頭位動揺値を認識する動揺認識部が、前記第1測定値、及び、該第1測定値に対応する前記第2測定値に基づいて、前記頭位動揺値を認識するステップとを含み、
前記開閉指示部は、前記被験者に開眼を指示する第1の指示画像、又は、前記被験者に閉眼を指示する第2の指示画像を表示する画像表示部を含み、
前記第1の指示画像は、前記被験者の注視対象となる図形画像を含むことを特徴とする頭位動揺測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被験者の頭位の動揺の変動量を示す頭位動揺値を測定する頭位動揺測定装置及び頭位揺動測定装置、並びに、それを用いた生体情報取得システムに関する。
【背景技術】
【0002】
自分自身又は周囲のものが実際には動いていないのに、それらが動いたり回転したりするように感じることをめまい発作と呼ぶ(以下、単に「めまい」という。)。めまいの原因は様々であるが、三半規管等の内耳器官の異常によることが多い。
【0003】
そのため、一般に、めまいを生じさせる疾病の診断には、内耳器官の状態や身体(特に頭位)の動揺を測定する方法が有効である。そのため、その動揺を測定し、その測定値を診断の際に参照する診断補助方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-121512公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、めまいを生じさせる疾病のうち、例えば、常染色体劣性遺伝疾患の一部では、内耳器官の異常(内耳障害)の状態が不規則に変動する。しかし、その頻度、その異常に基づく聴力閾値の変化の変動幅、増悪期間等には、不明点が多い。
【0006】
しかし、特許文献1に記載のような従来の診断補助方法等に採用されている測定装置では、不規則に変動する内耳障害の病態を、精度よく把握することが困難であるという課題があった。
【0007】
本発明は以上の点に鑑みてなされたものであり、めまいの病態を示す情報を精度よく取得可能な頭位動揺測定装置及び頭位動揺測定方法、並びに、それを用いた生体情報取得システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
被験者の頭位の動揺の変動量を示す値である頭位動揺値を測定する頭位動揺測定装置であって、
前記被験者に目の開閉を指示する開閉指示部と、
前記被験者の前記頭位の変位を測定する変位測定部と、
測定された前記頭位の変位に基づいて前記頭位動揺値を認識する動揺認識部とを有し、
前記変位測定部は、前記開閉指示部が開眼を指示している状態における前記頭位の変位の測定値である第1測定値、及び、前記開閉指示部が閉眼を指示している状態における前記頭位の変位の測定値である第2測定値の一方を測定した後、連続的に又は所定の時間が経過した後に、他方を測定し、
前記動揺認識部は、前記第1測定値、及び、該第1測定値に対応する前記第2測定値に基づいて、前記頭位動揺値を認識することを特徴とする。
【0009】
このように、本発明の頭位動揺測定装置では、開閉指示部を介して、被験者に目の開閉を指示するとともに、開眼又は閉眼を指示している状態における頭位の変位の測定値である第1測定値及び第2測定値を測定し、それらの測定値に基づいて頭位動揺値を認識している。
【0010】
このとき、第1測定値及び第2測定値の測定は、連続的に又は所定の時間(すなわち、設計者が予め設定した時間)の経過後に行われる。そのため、第1測定値及び第2測定値の測定は、目の開閉状態を除き、必然的に同様の姿勢で行われる。
【0011】
そして、この頭位動揺測定装置によって得られる頭位動揺値は、そのようにして測定された第1測定値及び第2測定値に基づいて得られるものであるので、従来の測定装置で得られる値に比べ、正確な値になる。そのため、この頭位動揺測定装置で得られた頭位動揺値を参照することによって、めまいの病態を示す情報を従来よりも精度よく取得することができる。
【0012】
また、本発明においては、
前記開閉指示部は、前記被験者に対する目の開閉についての指示を表す指示画像を表示する画像表示部を含むことが好ましい。
【0013】
一般に、頭位動揺の測定を行うに際しては、被験者は、何らかの対象物を見ている状態でないと、周囲の対象物(例えば、部屋にある時計等)を見ようと、又は、何も見ないようにしようとしてしまう。これにより、視線がさまよってしまい、被験者に身体偏位が生じてしまう。
【0014】
そこで、このように、指示画像を介して目の開閉を被験者に指示するようにすると、被験者に自然とその指示画像を注視させて、被験者の視線を固定して(ひいては、姿勢を安定させて)、被験者の身体偏位を抑制することができる。これにより、頭位動揺値、ひいては、めまいの病態を示す情報を、さらに精度よく取得することができる。
【0015】
また、本発明においては、指示画像を表示する構成の場合、
前記指示画像は、所定の図形画像と、前記図形画像の背景となる背景画像とを含み、
前記図形画像の前記背景画像との境界部分は、該図形画像の周縁部から中心部に向かって、明度又は彩度の少なくとも一方が徐々に変化するグラデーション状になっていることが好ましい。
【0016】
頭位動揺測定において、被験者が注視する図形画像の境界線が明確なものであると、その境界線からの影響を受けて、視刺激による動揺抑制機能が過度に発揮されて、めまいによる動揺が抑制されてしまうおそれがある。
【0017】
そこで、このように、その境界部分をグラデーション状にすると、そのような動揺抑制機能の過度の発揮を抑制することができる。これにより、頭位動揺値、ひいては、めまいの病態を示す情報を、さらに精度よく取得することができる。
【0018】
また、本発明においては、指示画像が図形画像と図形画像を含む構成の場合、
前記図形画像は、円形状又は多角形状の画像であり、
前記図形画像の明度及び彩度の少なくとも一方の値は、周縁部分から中心側に向かって高くなり、中央部分で中心に近づくほど低くなることが好ましい。
【0019】
ここで、「円形状」とは、円だけでなく、楕円といった略円形も含む。また、「多角形状」とは、各辺が直線状であるものの他、各辺が外周側に向かってものも含む。
【0020】
このように構成すると、図形画像は周縁部分及び中央部分がぼんやりとした画像(すなわち、環状に見える画像)となる。これにより、被験者の視線は、自然と図形画像の中心部に誘導されるので、視線をしっかりと固定して、不要な身体偏位を効率よく抑制することができる。
【0021】
また、本発明の生体情報取得システムは、
前記被験者の聴力閾値を測定する聴力測定装置、前記被験者の眼振データを測定する眼振測定装置、及び、前記被験者に対するめまいに関する問診結果を認識する問診結果認識部の少なくとも1つと、
上記いずれかの頭位動揺測定装置と、
前記頭位動揺測定装置による頭位動揺値の測定時刻から所定の時間経過前に測定された前記聴力閾値、前記眼振データ、及び、前記問診結果の少なくとも1つと、該頭位動揺値とを関連付けて格納するデータ格納部とを備えていることを特徴とする。
【0022】
めまいの病態を評価するためのデータとしては、頭位動揺値の他、眼振データも用いられる。また、めまいは、内耳器官の異常(内耳障害)に基づいて発生することがあるので、めまいの病態を表すデータと聴力閾値とを対比して検討することによって、内耳障害を把握することもできる。さらに、実際のめまいによる影響は、被験者の感じ方によっても異なるので、被験者に対する問診を併用することによって、その日常生活における影響を正確に把握できる場合もある。
【0023】
そこで、頭位動揺測定装置によって得られる頭位動揺値とともに、聴力閾値、眼振データ、又は、めまいに関する問診結果を一連のデータとして関連付けて格納するようにすると、その格納されたデータを参照することによって、めまいの病態を示す情報をさらに精度よく把握したり、内耳障害の病態を精度よく把握したりすることもできる。
【0024】
また、本発明の生体情報取得システムにおいては、
前記頭位動揺測定装置は、持ち運び可能な装置であることが好ましい。
【0025】
このように構成すると、頭位動揺測定装置を、被験者の自宅等にも設置することができる。すなわち、従来、被験者が来院したときにのみ行われていた検査を、被験者の自宅等で日常的に行うことができる。これにより、被験者に関する詳しい病態の変化を日常的に(すなわち、継続的に)取得することができる。その結果、治験における治療効果等も、精度よく把握することができる。
【0026】
また、本発明は、
被験者の頭位の動揺の変動量を示す値である頭位動揺値を測定する頭位動揺測定方法であって、
前記被験者に目の開閉を指示する開閉指示部が、前記被験者に対して開眼及び閉眼の一方を指示した後、連続的に又は所定の時間が経過した後に、他方を指示するステップと、
前記被験者の前記頭位の変位を測定する変位測定が、前記開閉指示部が開眼を指示している状態における前記頭位の変位の測定値である第1測定値、及び、前記開閉指示部が閉眼を指示している状態における前記頭位の変位の測定値である第2測定値を測定するステップと、
測定された前記頭位の変位に基づいて前記頭位動揺値を認識する動揺認識部が、前記第1測定値、及び、該第1測定値に対応する前記第2測定値に基づいて、前記頭位動揺値を認識するステップとを含むことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】実施形態に係る測定システムの概略構成を示す説明図。
図2図1の測定システムの処理部の構成を示すブロック図。
図3図1の測定システムによって取得された頭位の変位の時系列データの一例を示す模式図。
図4図1の測定システムが被験者に開眼を指示する画像の一例。
図5図1の測定システムが被験者に閉眼を指示する画像の一例。
図6図1の測定システムを用いて被験者の頭位動揺値を測定する際に実行される処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照して、実施形態に係る測定システムS(生体情報取得システム)について説明する。
【0029】
[システムの概略構成]
まず、図1を参照して、測定システムSの概略構成について説明する。
【0030】
測定システムSは、タブレット1と、頭位動揺測定器2と、オージオメータ3(聴力測定装置)と、フレンツェル眼鏡4(眼振測定装置)と、サーバ5とを備えている。
【0031】
頭位動揺測定器2、オージオメータ3及びフレンツェル眼鏡4の各々は、タブレット1と近距離無線又は有線によって、相互に情報通信可能に構成されている。また、タブレット1とサーバ5とは、インターネット網、公衆回線等を通じて、相互に情報通信可能に構成されている。
【0032】
ここで、後述するように頭位動揺測定器2及びフレンツェル眼鏡4は、ウェアラブルデバイスとして構成されており、オージオメータ3は、持ち運び可能な軽量なデバイスとして構成されている。すなわち、測定システムSを構成する機器のうち、サーバ5以外の機器は、持ち運び可能な装置で構成されており、被験者Tの自宅等にも設置可能となっている。
【0033】
そのため、測定システムSによれば、従来、被験者Tが来院したときにのみ行われていた検査を、被験者Tの自宅等で日常的に行うことができる。これにより、被験者Tに関する詳しい病態の変化を日常的に(すなわち、継続的に)取得することができる。その結果、治験における治療効果等も、精度よく把握することができる。
【0034】
タブレット1は、タッチパネル1a(開閉指示部、画像表示部)、スピーカ(不図示)、マイク(不図示)等の入力部及び出力部を備えている。タブレット1は、頭位動揺測定器2と協働して、頭位動揺測定装置Dを構成している(図2参照)。
【0035】
頭位動揺測定器2は、メガネ型のウェアラブルデバイスである。頭位動揺測定器2は、フレームの内部に、被験者Tの頭位の変位を測定するための加速度センサ2a(変位測定部)が内蔵されている(図2参照)。加速度センサ2aで測定された被験者Tの頭位の変位は、タブレット1に送信される。
【0036】
なお、測定システムSでは、メガネ型ウェアラブルデバイスである頭位動揺測定器2に搭載された加速度センサ2aを、変位測定部として用いた例を示している。しかし、本発明の変位測定部は、そのような構成に限定されるものではなく、被験者の頭位の変位を測定できるものであればよい。
【0037】
そのため、例えば、撮影画像によって変位を測定する場合には、変位測定部として、測定を行う部屋に設置されたカメラ、測定に使用されるタブレット等に搭載されたカメラ等の撮影機器を用いてもよい。また、加速度センサに代わりGPS等の他のセンサをウェアラブルデバイスに搭載し、変位測定部として、そのセンサを用いてもよい。
【0038】
また、前述の通り、測定システムSでは、頭位動揺測定装置Dは、タブレット1と頭位動揺測定器2とが協働することによって構成されている。しかし、本発明の頭位動揺測定装置は、このような構成に限定されるものではない。例えば、タブレットのカメラを利用して被験者の頭位動揺を測定できるのであれば、独立した頭位動揺測定器を省略して、タブレットのみで頭位動揺測定装置を構成してもよい。
【0039】
オージオメータ3は、持ち運びの可能なデバイスとして構成されている。オージオメータ3は、被験者Tが装着するヘッドフォンと、ヘッドフォンと接続されている本体部と、音が聞こえているか否かを被験者Tが入力するための入力部とを有している。
【0040】
フレンツェル眼鏡4は、ゴーグル型のウェアラブルデバイスとして構成されている。フレンツェル眼鏡4は、測定した眼球の動画を眼振データとして認識する。
【0041】
なお、本発明の眼振測定装置は、フレンツェル眼鏡に限定されるものではなく、被験者の眼振データを測定できるものであればよい。そのため、例えば、フレンツェル眼鏡に代わり、いわゆる電気眼振計を用いて眼振データを測定してもよい。また、フレンツェル眼鏡に代わり、タブレットに搭載されているカメラを眼振測定装置として、そのカメラを用いて眼振データを測定してもよい。
【0042】
サーバ5には、タブレット1を介して、頭位動揺測定装置Dによって測定された、被験者Tの頭位の動揺の変動量を示す値である頭位動揺測定値、オージオメータ3で生成されたオージオグラム、フレンツェル眼鏡4で測定された眼振データ、及び、タブレット1を介して表示された問診に対する被験者Tの回答内容(問診結果)が、互いに関連付けて送信される。サーバ5には、それらのデータが、日時ごとに分けて格納される。
【0043】
なお、測定システムSでは、1つのサーバ5に対し、頭位動揺測定装置D、オージオメータ3、及び、フレンツェル眼鏡4といった測定装置を1つずつだけ示している。
【0044】
しかし、本発明は、そのような構成に限定されるものではなく、1つのサーバに対し、複数の測定装置が設けられていてもよい。そのように構成した場合には、頭位揺動値、聴力閾値、眼振データ、及び、問診結果に関して多数のデータを収集して、ビッグデータとすることができる。
【0045】
また、測定システムSでは、各処理部を、頭位動揺測定器2、オージオメータ3、フレンツェル眼鏡4、及び、サーバ5に分散して配置している。しかし、このような構成は一例にすぎず、各処理部を設ける機器は適宜設定してもよい。例えば、聴力測定及び眼振についての動画の撮影を、タブレット等の携帯端末で行う場合には、聴力認識部及び眼振認識部は、その携帯端末に設ければよい。
【0046】
[処理部の構成]
次に、図2図5を参照して、測定システムSが備えている処理部について説明する。
【0047】
図2に示すように、測定システムSは、タブレット1に実装されたハードウェア構成又はプログラムにより実現される機能(処理部)として、動揺認識部1bと、問診結果認識部1cとを備えている。
【0048】
動揺認識部1bは、タッチパネル1aを介して、被験者Tに対し、目の開閉についての指示を表す指示画像6を表示する(図4図5参照)。
【0049】
また、動揺認識部1bは、頭位動揺測定器2の加速度センサ2aに基づいて得られた測定値(すなわち、被験者Tの頭位の変位の測定値)を、時系列に沿って認識する。そして、動揺認識部1bは、その測定値に基づいて頭位動揺測定値を認識するとともに、サーバ5に送信する。
【0050】
なお、測定システムSでは、後述するように、測定値として、タブレット1が開眼を指示している状態における頭位の変位である測定値である第1測定値、及び、タブレット1が閉眼を指示している状態における頭位の変位の測定値である第2測定値を採用している。そのため、それらの測定値を時系列に沿ってプロットすると、例えば、図3に示すようなデータが得られる。
【0051】
ここで、頭位動揺値としては、例えば、第1測定値及び第2測定値を用いて算出されたロンベルグ率等が挙げられる。測定システムSでは、第1測定値及び第2測定値の各々に関して、測定時間内における頭位の変位の軌跡の総軌跡長又は変位の軌跡から求められる面積を用いて、ロンベルグ率を算出し、そのロンベルグ率を頭位動揺測定値としている。
【0052】
なお、本発明における頭部動揺値は、ロンベルグ率に限定されるものではなく、第1測定値、及び、その第1測定値に対応する第2測定値に基づいて得られた値であればよい。例えば、第1測定値及び第2測定値の各々について所定の閾値以上の変位が生じた時間の差の値等を用いてもよい。また、頭位動揺値を認識するに先立ち、第1測定値及び第2測定値の各々について所定の閾値以上の変位が生じた場合には、所定の計算方法を用いてそれらの測定値を補正するようにしてもよい。
【0053】
問診結果認識部1cは、服薬確認、副作用調査、自覚症状等の生活問診票として問診すべき事項に関するデータを格納している。そのデータに基づいて、問診結果認識部1cは、タッチパネル1aを介して、被験者Tに対し、生活問診票を回答可能な形式で提示する(図1参照)。そして、被験者Tからの回答があった場合には、問診結果認識部1cは、その問診結果を認識するとともに、サーバ5に送信する。
【0054】
なお、問診に対する回答の入力方法は、タッチパネル1aに対する入力の他、タブレット1に搭載されているマイクによる音声入力であってもよい。
【0055】
また、測定システムSは、オージオメータ3の本体部に実装されたハードウェア構成又はプログラムにより実現される機能(処理部)として、聴力認識部3aを備えている。
【0056】
聴力認識部3aは、ヘッドフォンを介して発する音(純音)の周波数を制御するとともに、測定された聴力閾値に基づいてオージオグラムを生成し、タブレット1を介して、そのオージオグラムをサーバ5へ送信する。
【0057】
また、測定システムSは、フレンツェル眼鏡4の本体部に実装されたハードウェア構成又はプログラムにより実現される機能(処理部)として、眼振測定部4aを備えている。
【0058】
眼振測定部4aは、フレンツェル眼鏡4で撮影した動画データを眼振データとして認識するとともに、タブレット1を介して、その眼振データをサーバ5に送信する。
【0059】
また、サーバ5は、は、に実装されたハードウェア構成又はプログラムにより実現される機能(処理部)として、データ格納部5aを備えている。
【0060】
データ格納部5aは、連続的に又は所定の時間内に認識され、タブレット1から送信された頭位動揺値、オージオグラム、眼振データ、及び、問診結果を、互に関連付けて格納する。
【0061】
[指示画像の詳細]
ところで、前述のように、測定システムSでは、タッチパネル1aを介して、被験者Tに対し、被験者Tに対し、目の開閉についての指示を表す指示画像6を表示するように構成されている。そこで、図4及び図5を参照して、指示画像6について詳細に説明する。
【0062】
まず、一般に、頭位動揺の測定を行うに際しては、被験者は、何らかの対象物を見ている状態でないと、周囲の対象物(例えば、部屋にある時計等)を見ようと、又は、何も見ないようにしようとしてしまう。その結果、視線がさまよってしまい、被験者に身体偏位が生じてしまうおそれがある。
【0063】
そこで、測定システムSは、タブレット1のタッチパネル1aに指示画像6を表示して、その指示画像6を介して目の開閉を被験者に指示するように構成されている。これにより、測定システムSでは、被験者Tに自然とその指示画像6を注視させて、被験者Tの視線を固定して(ひいては、姿勢を安定させて)、被験者Tの身体偏位の抑制を図っている。
【0064】
測定システムSでは、図4に示すように、タッチパネル1aに表示する指示画像6は、指示内容を具体的に示す文章である指示文6aと、被験者Tの注視対象となる指標6b(図形画像)と、指標6bの背景となる背景画像6cとからなる。図4及び図5に示すように、その時々に被験者Tに指示する内容に応じて、指示文6aは、文章の内容が変化し、指標6b及び背景画像6cは、表示及び非表示が切り換わるようになっている。
【0065】
なお、図示の例では、指示文6aの下方に指標6b及び背景画像6cが配置されたレイアウトとなっているが、そのレイアウトは、測定時において推奨される被験者Tの姿勢等に応じて、適宜変更してよい。
【0066】
ここで、指標6bの境界線が明確なものであると、その境界線からの影響を受けて、視刺激による被験者Tの揺動抑制機能が過度に発揮されて、めまいによる動揺が抑制されてしまうおそれがある。
【0067】
そこで、測定システムSでは、指標6bの背景画像6cとの境界部分は、指標6bの周縁部から中心部に向かって、彩度が徐々に変化するグラデーション状になっている。これにより、その境界部分をあいまいにして、境界線からの刺激によって被験者Tの動揺抑制機能が過度に発揮されてしまうことが防止されている。
【0068】
なお、本発明の図形画像の境界部分は、必ずしも彩度のみを徐々に変化させてグラデーション状に構成する必要はなく、明度、又は、明度及び彩度を徐々に変化させてグラデーション状に構成してもよい。
【0069】
また、本発明の図形画像は、境界部分をグラデーション状としたものに限定されるものではない。例えば、被験者が幼児であるために、動揺抑制機能が過度に発揮されてしまうことを防止することよりも、視線を固定することを優先すべきである場合等には、輪郭のはっきりしたキャラクターの画像を図形画像として採用してもよい。
【0070】
また、指標6bは、円形状の画像であり、指標6bの彩度の値は、周縁部分から中心側に向かって高くなり、中央部分で中心に近づくほど低くなるような図形となっている。すなわち、指標6bは、周縁部分だけでなく、中央部分がぼんやりとした図形の画像(すなわち、環状に見える画像)となっている。また、指標6bの背景である背景画像6cの色は、白色となっている。
【0071】
これにより、被験者Tの視線は、自然と指標6bの中心部に誘導され、また、背景画像6cには誘導されにくくなっている。その結果、被験者Tをしっかりと固定して、身体偏位を効率よく抑制できるようになっている。
【0072】
なお、本発明の図形画像の形状が、円形ではなく、多角形状であっても、周縁部分で中心側に近づくほど高くなり、中央部分で中心に近づくほど低くなるように構成されていれば、同様の効果を奏する。ここで、「円形状」とは、円だけでなく、楕円といった略円形も含むものである。また、「多角形状」とは、各辺が直線状であるものの他、各辺が外周側に向かって湾曲しているものも含むものである。
【0073】
また、本発明の背景画像の白色である必要はなく、背景画像にあわせて表示される図形画像の色、測定する場所の明るさ等に応じて、適宜変更してよい。
【0074】
また、本発明の図形画像は、中央部分の明度又は彩度の値を背景画像の明度又は彩度の値とは異なるものとして、指標6bのように中央部が淡く色づいた画像にしてもよいし、図形画像の中央部分の明度又は彩度の値を背景画像の明度又は彩度の値と同じとなるまで変化させて、実際に環状の画像にしてしまってもよい。
【0075】
ところで、指標6bが小さすぎると、注視することによる身体偏位の抑制を十分に発揮させることができなくなるおそれがある。一方で、指標6bが大きすぎると、画像から受ける威圧感によって被験者の姿勢が不安定になってしまうおそれがある。
【0076】
そこで、測定システムSでは、指標6bの直径は、2.5cm以上、且つ、10cm以下となるように構成されている。この値は、めまい学会誌(2000年 59巻 6号 p.568-573)に掲載された「重心動揺検査における視標の影響についての検討」における記載を参照して決定された値である。
【0077】
これにより、例えば、被験者Tとタブレット1のタッチパネル1a(すなわち、指標6b)との間の距離が1m程度である場合に(すなわち、一般的な腕の長さであり、指示画像を表示している機器を手で持っている場合に)、適切にその身体偏位の抑制を生じさせるとともに、被験者Tに与える威圧感をやわらげて、姿勢の不安定化を防止することができるようになっている。
【0078】
なお、本発明の図形画像のサイズは、このようなサイズに限定されるものではない。例えば、測定の際の被験者に推奨する姿勢、図形画像を表示するデバイスの構成(例えば、メガネ上のデバイスでレンズに図形画像を表示する場合等)に応じて、図形画像のサイズは適宜変更してよい。
【0079】
[実行される処理]
次に、図1図2図4図6を参照して、被験者Tの頭位動揺値を測定する際に、測定システムSが実行する処理(すなわち、頭位動揺測定方法)について説明する。
【0080】
この処理においては、まず、タブレット1の動揺認識部1bが、タブレット1のタッチパネル1aに開眼を指示する指示画像6を表示する(図6/STEP01)。
【0081】
具体的には、図4に示すように、動揺認識部1bは、タッチパネル1aに、「目を開けて緑の点を見てください」という指示文6a、指標6b及び背景画像6cを含む指示画像6を表示する。
【0082】
次に、動揺認識部1bは、頭位動揺測定器2の加速度センサ2aによって測定された被験者Tの頭位の変位の測定値の取得を開始する(図6/STEP02)。
【0083】
次に、動揺認識部1bは、頭位の変位の測定値の取得の開始から、40秒が経過したか否かを判断する(図6/STEP03)。
【0084】
40秒が経過していないと判断した場合(STEP03でNOの場合)、動揺認識部1bは、頭位の変位の測定値の取得を継続するとともに、所定の制御周期で、再度STEP03における処理を実行する。
【0085】
一方、40秒が経過したと判断した場合(STEP03でYESの場合)、動揺認識部1bは、頭位の変位の測定値の取得を停止するとともに、開眼を指示する指示画像6を表示してから取得した測定値を第1測定値(開眼状態における測定値)として認識する(図6/STEP04)。
【0086】
次に、動揺認識部1bは、タッチパネル1aに閉眼を指示する画像を表示する(図6/STEP05)。
【0087】
具体的には、図5に示すように、動揺認識部1bは、タッチパネル1aに、指標6b及び背景画像6cを非表示にし、「目を閉じてください」という指示文6aのみ指示画像6として表示する。
【0088】
次に、動揺認識部1bは、閉眼を指示する画像を表示してから、6秒が経過したか否かを判断する(図6/STEP06)。
【0089】
この6秒の期間は、被験者Tが目を開いている状態から目を閉じている状態に遷移するための待機時間である状態遷移期間である。この状態遷移期間は、被験者Tの身体特性(例えば、年齢等)、測定姿勢等に応じて、適宜設定してよい。
【0090】
6秒が経過していないと判断した場合(STEP06でNOの場合)、所定の制御周期で、再度STEP06における処理を実行する。
【0091】
一方、6秒が経過したと判断した場合(STEP06でYESの場合)、動揺認識部1bは、頭位動揺測定器2の加速度センサ2aによって測定された被験者Tの頭位の変位の測定値の取得を開始する(図6/STEP07)。
【0092】
次に、動揺認識部1bは、頭位の変位の測定値の取得の開始から、40秒が経過したか否かを判断する(図6/STEP08)。
【0093】
40秒が経過していないと判断した場合(STEP08でNOの場合)、動揺認識部1bは、頭位の変位の測定値の取得を継続するとともに、所定の制御周期で、再度STEP08における処理を実行する。
【0094】
一方、40秒が経過したと判断した場合(STEP06でYESの場合)、動揺認識部1bは、頭位の変位の測定値の取得を停止するとともに、閉眼を指示する指示画像6を表示した後に6秒経過してから取得した測定値を第2測定値(閉眼状態における測定値)として認識する(図6/STEP09)。
【0095】
ここまでの処理により、図3に示すような被験者Tの頭位の変位に関するデータが、取得される。
【0096】
次に、動揺認識部1bは、認識した第1測定値及び第2測定値に基づいて、頭位動揺値を認識する(図6/STEP10)。
【0097】
具体的には、動揺認識部1bは、第1測定値及び第2測定値に基づいて、システム設計者が設定した値(例えば、ロンベルグ率)が算出され、その値が頭位動揺値として認識される。
【0098】
次に、動揺認識部1bは、認識した頭位動揺値を、サーバ5に送信し(図6/STEP11)、今回の処理を終了する。
【0099】
なお、測定システムSでは、上記の手順による頭位動揺値の認識とともに、聴力閾値の測定、眼振データの測定、及び、問診を、頭位動揺値の測定時刻から所定の時間経過前(すなわち、所定の測定期間(例えば、10分~15分)以内)に行い、それらのデータを互いに関連付けて、サーバ5のデータ格納部5aに格納する。それらの測定順序、及び、測定期間は、測定に用いる装置の種類、測定する生体情報の種類等に応じて適宜設定してよい。
【0100】
以上説明したように、測定システムSが備える頭位動揺測定装置Dでは、タブレット1のタッチパネル1aを介して、被験者Tに目の開閉を指示するとともに、それに連動する形で、開眼又は閉眼を指示している状態における頭位の変位の測定値である第1測定値及び第2測定値を測定し、それらの測定値に基づいて頭位動揺値を認識している。
【0101】
このとき、第1測定値及び第2測定値の測定は、所定の時間(すなわち、設計者のが予め設定した時間)の経過後に行われる。そのため、第1測定値及び第2測定値の測定は、目の開閉状態を除き、必然的に同様の姿勢で行われる。
【0102】
そして、この頭位動揺測定装置によって得られる頭位動揺値は、そのようにして測定された第1測定値及び第2測定値に基づいて得られるものであるので、従来の測定装置で得られる値に比べ、正確な値になる。そのため、この頭位動揺測定装置Dで得られた頭位動揺値を参照することによって、めまいの病態を示す情報を従来よりも精度よく取得することができる。
【0103】
ところで、めまいの病態を評価するためのデータとしては、頭位動揺値の他、眼振データも用いられる。また、めまいは、内耳器官の異常(内耳障害)に基づいて発生することがあるので、めまいの病態を表すデータと聴力閾値とを対比して検討することによって、内耳障害を把握することもできる。さらに、実際のめまいによる影響は、被験者Tの感じ方によっても異なるので、被験者Tに対する問診を併用することによって、その日常生活における影響を正確に把握できる場合もある。
【0104】
そこで、測定システムSは、前述のように、頭位動揺値だけでなく、聴力閾値、眼振データ、及び、めまいに関する問診結果を一連のデータとして関連付けて、サーバ5のデータ格納部5aに格納するように構成されている。これにより、その格納されたデータを参照することによって、めまいの病態を示す情報を精度よく把握するだけでなく、内耳障害の病態も精度よく把握することができるようになっている。
【0105】
[その他の実施形態]
以上、図示の実施形態について説明したが、本発明はこのような形態に限定されるものではない。
【0106】
例えば、上記実施形態では、測定システムSは、被験者Tの頭部動揺値に加えて、聴力閾値、眼振データ、及び、めまいに関する問診結果を、一連のデータとして関連付けたものとして格納できるように構成されている。これは、この測定システムSが、めまいに加えて、難聴といった内耳器官の異常を精度よく把握することを目的とした生体情報取得システムとして構成されているためである。
【0107】
しかし、本発明の生体情報取得システムは、そのような構成に限定されるものではなく、頭位動揺測定装置に加え、聴力測定装置、眼振測定装置、及び、問診結果認識部の少なくとも1つと、それらのデータを関連付けて格納するデータ格納部とを備えるものであればよい。また、頭位動揺測定装置を単体で用いてもよい。
【0108】
また、上記実施形態では、開閉指示部としてタブレット1のタッチパネル1aを採用し、そのタッチパネル1aに指示画像6を表示することによって、被験者Tの目の開閉を指示している。
【0109】
しかし、本発明の開閉指示部は、このような構成に限定されるものではなく、被験者に目の開閉を指示できるものであればよい。そのため、例えば、タブレットに搭載されているスピーカの音声を用いて、又は、音声と画像を併用して、開閉指示を構成して、被験者に目の開閉を行ってもよい。
【0110】
また、上記実施形態では、頭位動揺測定装置Dでは、タッチパネル1aを介して開眼を指示している状態における被験者Tの頭位の変位の測定値を、第1測定値とし、タッチパネル1aを介して閉眼を指示している状態における被験者Tの頭位の変位の測定値を、第2測定値としている。そのうえで、頭位動揺測定装置Dでは、第1測定値を40秒間測定した後、6秒の状態遷移期間をあけて、第2測定値を40秒間測定している。
【0111】
しかし、本発明の頭位動揺測定装置は、そのような構成に限定されるものではなく、第1測定値及び第2測定値の一方を測定した後、連続的に又は所定の時間が経過した後に、他方を測定するものであればよい。
【0112】
そのため、例えば、第1測定値の測定期間、第2測定値の測定期間、状態遷移期間は、被験者の状態、測定装置の種類等に応じて適宜設定してよい。また、第1測定値及び第2測定値の一方を測定した後に、状態遷移期間を挟まずに、他方を測定してもよい。
【0113】
なお、閉眼状態で測定する第2測定値を測定した後に、開眼状態で測定する第1測定値を測定する場合には、被験者に対する開眼の指示は、タブレットのスピーカ等から発する音声によって行うようにするとよい。
【0114】
また、上記実施形態においては、変位測定部である加速度センサ2aにおける測定値を、動揺認識部1bが適宜取得して、第1測定値及び第2測定値を認識している。しかし、本発明は、そのような構成に限定されるものではない。例えば、開眼又は閉眼を指示している期間のみにおいて、変位測定部が測定を行ってもよい。
【0115】
ところで、上記実施形態では、被験者Tが開眼している状態で40秒間、第1測定値を測定した後、状態遷移期間である6秒経過した後に、被験者Tが閉眼している状態で40秒間、第2測定値を測定している。
【0116】
ここで、第1測定値を測定している期間、及び、状態遷移期間において、タブレット1のタッチパネル1aに指示画像6を表示している。これは、指示画像6を介して目の開閉を被験者Tに指示するようにすることによって、被験者Tに自然とその指示画像6を注視させて、被験者Tの視線を固定して(ひいては、姿勢を安定させて)、被験者Tの身体偏位を抑制するためである。
【0117】
これに加え、測定システムSでは、指示画像6に含まれる指標6b及び背景画像6cについて、種々の工夫を加えることによって、精度よく測定を行うことができるようになっている。
【0118】
しかし、そのような指示画像による効果は、必ずしも、第1測定値及び第2測定値の一方を測定した後、連続的に又は所定の時間が経過した後に、他方を測定する場合に奏されるものではない。例えば、第1測定値を独立して測定する場合(すなわち、単に開眼状態で測定する場合)においても、そのような効果が奏される。
【符号の説明】
【0119】
1…タブレット、1a…タッチパネル(開閉指示部、画像表示部)、1b…動揺認識部、1c…問診結果認識部、2…頭位動揺測定器、2a…加速度センサ(変位測定部)、3…オージオメータ(聴力測定装置)、3a…聴力認識部、4…フレンツェル眼鏡(眼振測定装置)、4a…眼振測定部、5…サーバ、5a…データ格納部、6…指示画像、6a…指示文、6b…指標(図形画像)、6c…背景画像、D…頭位動揺測定装置、S…測定システム(生体情報取得システム)、T…被験者。
図1
図2
図3
図4
図5
図6