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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-22
(45)【発行日】2024-10-30
(54)【発明の名称】山留壁の改良幅拡幅装置
(51)【国際特許分類】
   E02F 5/02 20060101AFI20241023BHJP
   E02D 13/02 20060101ALI20241023BHJP
   E02D 5/20 20060101ALI20241023BHJP
【FI】
E02F5/02 D
E02D13/02
E02D5/20 101
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021005562
(22)【出願日】2021-01-18
(65)【公開番号】P2022110270
(43)【公開日】2022-07-29
【審査請求日】2023-10-05
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 公開日:令和 2年10月5日~令和 2年12月20日 公開場所:(仮称)横浜市旧南区総合庁舎跡地施設計画工事現場(神奈川県横浜市南区花の木町3-48-1)
(73)【特許権者】
【識別番号】000179915
【氏名又は名称】ジェコス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】519043408
【氏名又は名称】株式会社篠原建機
(74)【代理人】
【識別番号】100087491
【弁理士】
【氏名又は名称】久門 享
(74)【代理人】
【識別番号】100104271
【弁理士】
【氏名又は名称】久門 保子
(72)【発明者】
【氏名】後藤 健治
(72)【発明者】
【氏名】黒田 裕規
(72)【発明者】
【氏名】篠原 孟
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】実開昭63-095742(JP,U)
【文献】実開昭61-102645(JP,U)
【文献】特開昭58-080029(JP,A)
【文献】特開平11-081367(JP,A)
【文献】特開平09-217345(JP,A)
【文献】特開平07-003774(JP,A)
【文献】米国特許第05417522(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 5/02
E02D 13/02
E02D 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソイルセメント柱列壁を構築するための並列する複数のロッドを備えた既存の多軸オーガー機に取り付けて使用される山留壁の改良幅拡幅装置であって、前記多軸オーガー機の複数のロッドどうしを連結するための連結バンド部と、前記連結バンド部の断面外側に取り付けられた拡幅掘削用の枠体部とを備え、前記枠体部の下部には掘削刃が設けられており、前記多軸オーガー機によって掘削される円柱をオーバーラップさせた溝状掘削範囲のオーバーラップ位置の溝幅が狭くなっている部分の外側の掘り残し部を前記枠体部に設けた掘削刃で掘削させるようにし、前記枠体部は前記溝状掘削範囲の片側を拡幅掘削するものであり、前記連結バンド部に対して一方が他方よりも拡幅しており、前記枠体部の前記溝状掘削範囲の片側へ突出幅が、前記多軸オーガー機の各オーガーの掘削半径とほぼ同一であることを特徴とする山留壁の改良幅拡幅装置。
【請求項2】
請求項1記載の山留壁の改良幅拡幅装置において、前記連結バンド部はその下面側と上面側で、それぞれ前記多軸オーガー機の複数のロッドを構成する下側のロッドユニットおよび上側のロッドユニットと接続されていることを特徴とする山留壁の改良幅拡幅装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソイルセメント柱列壁や山留壁を構築するための掘削孔を形成する際に、多軸オーガー機に取り付けて、掘削ロッドだけでは削れない部分も掘削して掘削孔を拡幅することができる山留壁の改良幅拡幅装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、土留工事や根切工事において、ソイルセメント柱列壁や山留壁を構築する場合、多軸オーガー機を用いて、連続した掘削孔を形成する。ソイルセメント柱列壁や山留壁を構築する技術として、例えば特許文献1~2記載の発明がある。
【0003】
また、多軸オーガー機だけでは掘削できない掘り残し部分を掘削するための技術として例えば特許文献3~5記載の発明がある。
【0004】
特許文献1には、先端部にオーガーヘッドを備える複数のオーガーを一列をなすように配列して隣合うオーガーヘッドの回転軌跡をラップさせた構成の多軸混練オーガー機を用いて、該多軸混練オーガー機で原地盤を削孔しつつその先端よりセメントスラリーを吐出して混練することにより、各軸のオーガーによりそれぞれ造成されるソイルセメント柱体を相互にラップさせた状態で1エレメントのソイルセメント壁体を順次造成し、該ソイルセメント壁体を連続的に一体造成することによって所定壁厚の遮水壁を構築する工法が記載されている。
【0005】
先行エレメントにより先行造成したソイルセメント壁体の端部に位置するソイルセメント柱体と、後行エレメントにより後行造成するソイルセメント壁体の端部に位置するソイルセメント柱体とを重複させることによって、双方のソイルセメント壁体を連続的に一体造成するとともに、前記多軸混練オーガー機における各軸のオーガーの先端部に備えられているオーガーヘッドとして、攪拌半径が一定の固定翼式オーガーヘッドと、該固定翼式オーガーヘッドよりも攪拌半径を拡大可能な拡翼式オーガーヘッドとを併用して、それら固定翼式オーガーヘッドと拡翼式オーガーヘッドとを交互に配列しておくことにより、該多軸混練オーガー機により造成する各ソイルセメント柱体の径寸法を1本おきに拡大造成することを特徴としている。
【0006】
特許文献2には、複数のオーガーを具備し、前記オーガーを回転させて基準エレメントを形成する多連型の削孔装置を用いてソイルセメント柱列壁を構築する、ソイルセメント柱列壁の構築方法であって、既設の基準エレメントの一方の端部中心と先行エレメントの一方の端部中心との間の距離P2が基準エレメントの両端部の中心間距離P1を超えるように先行エレメントを構築する工程と、後行エレメントの一端が基準エレメントの端部に一部ラップしてラップ代を形成するとともに、後行エレメントの他端が先行エレメントの端部に一部ラップしてラップ代を形成するように後行エレメントを構築する工程と、前記基準エレメントと先行エレメントの端部の一部をラップさせた前記ラップ代に芯材を建て込む工程と、を含み、前記ラップし合う各エレメント端部の削孔穴の外周交点を結ぶ距離dが、前記芯材の幅Hより大きく、かつ、前記削孔穴の径D1より小さいことを特徴とする、ソイルセメント柱列壁の構築方法が記載されている。
【0007】
特許文献3には、先端部の掘削ビット及び攪拌翼が平面的に見て相互に一部ラップする間隔で複数本並列に並べられた垂直な掘削攪拌軸で地盤を所要の深度まで掘削し、掘削した原位置土中に掘削攪拌軸の先端部から安定剤を注入し攪拌混合して固化させると共に前記の原位置土中に心材を挿入して一体化させる山止めソイル壁構築方法において、立面方向に見ると掘削ビット及び攪拌翼に可及的に近い下方の位置、平面的に見ると隣接する二つの掘削ビット及び攪拌翼の中間位置に掘削ビット及び攪拌翼の先端円を接線方向に結ぶ配置で垂直方向に振動する振動プレートを垂直な向きに設け、掘削ビット及び攪拌翼に近い非可動部分に垂直方向の振動発生装置を設け、該振動発生装置から垂直方向下向きに延びる振動軸の先端部に前記振動プレートが取り付けられた矩形山止めソイル柱列壁掘削機で地盤を所要の深度まで掘削し、且つ隣接する二つの掘削ビットの中間位置の掘り残し土を振動プレートで掻き取り、かくして平面形状を矩形状に掘削した原位置土中に掘削攪拌軸の先端部から安定剤を注入し攪拌混合して固化させること、及び、前記の原位置土中に心材を所要のピッチで、且つ壁厚方向に所要の配置で挿入して一体化させることをそれぞれ特徴とする矩形山止めソイル柱列壁構築方法が記載されている。
【0008】
特許文献4には、下端に掘削ヘッドを有する複数本の掘削軸が上下方向平行に設けられ、適数本の掘削軸の略水平適位置にそれぞれ歯車が固着あるいは回動自在に支持され、該歯車には、先端が前記掘削ヘッドの外径部に位置する適数の破砕爪を外周に有するチェ-ンが前記掘削軸により回動自在に懸架されてなることを特徴とする多軸掘削機が記載されている。
【0009】
特許文献5には、多軸オーガースクリューにより構成された掘削機により掘削して地中連続壁を施工するに際し掘り残し三角部分を除去するゾーンカッタであり、ドリルヘッド近くでスクリュー間においてスクリューの間隔保持のための連結板に軸受を介して軸付カムを支承し、その軸付カムの軸に切削用刃先の付いたホルダを取付け、またオーガースクリューにカム板を取付け、そのカム板により軸付カムのカムを駆動して前記ホルダを首振り動かさせ、ホルダの切削用刃先により前記掘り残し三角部分を除去するゾーンカッタを備えていることを特徴とする多軸ソイルミキシングウォール楕円形掘削機が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特許第5043731号公報
【文献】特許第4841899号公報
【文献】特開平09-217345号公報
【文献】特開平07-292672号公報
【文献】特開平07-247544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来のソイルセメント柱列壁や山留壁の構築方法では、図5(a)に示したように、掘削孔の外周から芯材までの被り厚を確保するために、芯材とソイル造成壁の被りを見越した位置に芯材を建て込まなければならず、芯材を掘削孔の中心に挿入しなければならない。
【0012】
また、図5(b)に示したように、掘削孔の外周から芯材までの被り厚を確保しなければならないため、山留壁の施工位置を敷地境界から所定の距離を離した位置にしかソイルセメント柱列壁や山留壁を造成できない。
【0013】
特許文献1記載の発明は、固定翼式オーガーヘッドと拡翼式オーガーヘッドを併用してソイルセメント柱体の径を1本おきに拡大し、遮水壁全体の有効壁厚を拡大させているが、被り厚や敷地境界までの施工位置に対する考慮は無い。
【0014】
特許文献2記載の発明は、各エレメントのラップ代を自在にすることで、エレメント間の施工ピッチが広がったり、エレメント同士のラップ部分の体積を減らしたりすることができるが、特許文献1記載の発明と同様に、被り厚や敷地境界までの施工位置に対して効果があるものではない。
【0015】
また、従来の多軸方式や特許文献1、2記載の発明では、隣り合う掘削孔のラップ部分前後の掘り残し土が削り切れない。特許文献3~5記載の発明は、その掘り残し土も削れるようにした発明である。
【0016】
特許文献3記載の発明は、隣接する二つの掘削ビット及び攪拌翼の中間位置に掘削ビット及び攪拌翼の先端円を接線方向に結ぶ配置で垂直方向に振動する振動プレートを設けたり、掘削ビット及び攪拌翼に近い非可動部分に垂直方向の振動発生装置を設けたりしているが、構造が複雑であり、地盤に掘削機を挿入して掘削する際に、掘削ビットや撹拌翼、振動プレートや振動発生装置の動作全てを制御することは困難である。
【0017】
特許文献4記載の発明は、掘削軸に歯車や破砕爪が設けられているが、動力機構が複雑であり、また掘削土が歯車や破砕爪に詰まり、正常に動かなくなる可能性も考えられる。
【0018】
特許文献5記載の発明は、オーガースクリューに取付けたカム板により駆動される軸付カムが軸を通して刃物ホルダに伝えられ、刃物ホルダが首振りを行い、スクリューの地山への押付け力と回転力により切削するが、部品の交換やメンテナンスが必要である。
【0019】
本発明は、上述のような背景のもと、山留壁やソイルセメント柱列壁などを構築する際に容易に多軸オーガー機に取り付けることができ、かつ確実に掘削孔を拡幅しながら掘削することができる山留壁の改良幅拡幅装置を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明に係る山留壁の改良幅拡幅装置は、ソイルセメント柱列壁を構築するための並列する複数のロッドを備えた多軸オーガー機に使用される山留壁の改良幅拡幅装置であって、前記多軸オーガー機の複数のロッドどうしを連結するための連結バンド部と、前記連結バンド部の断面外側に取り付けられた拡幅掘削用の枠体部とを備え、前記枠体部の下部には掘削刃が設けられており、前記多軸オーガー機によって掘削される円柱をオーバーラップさせた溝状掘削範囲のオーバーラップ位置の溝幅が狭くなっている部分の外側の掘り残し部を前記枠体部に設けた掘削刃で掘削させるようにしたことを特徴とするものである。
【0021】
本発明の山留壁の改良幅拡幅装置を用いることによって、多軸オーガー機のスクリュー翼が円柱を削孔するのと同時に、その掘削される円柱をオーバーラップさせた溝状掘削範囲のオーバーラップ位置の溝幅が狭くなっている部分の外側の掘り残し部を同時に削っていくことができる。この掘り残し部も掘削できることで、ソイルセメント柱列壁の造成幅を広げることができる。
【0022】
従来方法では、例えば図5に示したように、削孔した円柱の中心にH型鋼などの芯材を削孔の外周から被り厚を確保しつつ挿入し設置する。しかし、図4の斜線部に示した掘り残し部を掘削できると、掘り残し部の外側から被り厚を考慮すればよく、芯材挿入位置を敷地境界側へ近付けることができる。
【0023】
本発明の改良幅拡幅装置における枠体部の材質は特に限定されないが、地中に挿入するための強度と耐久性があるもので、例えば鋼製などの連結バンド部と同じ材質が好ましい。
【0024】
本発明の山留壁の改良幅拡幅装置において、前記枠体部は前記溝状掘削範囲の両側または片側を拡幅掘削するものである。
【0025】
例えば、敷地境界側だけを拡幅掘削する場合は、多軸オーガー機によって掘削する円柱をオーバーラップさせた溝状掘削範囲の片側だけを拡幅掘削すればよく、枠体部の片側だけを拡幅させておけばよい。また、敷地境界側の逆側も同時に拡幅掘削させる場合は、枠体部の両側を拡幅させておけばよい。
【0026】
本発明の山留壁の改良幅拡幅装置において、前記枠体部の前記溝状掘削範囲の両側または片側へ突出幅が、前記多軸オーガー機の各オーガーの掘削半径とほぼ同一であるとよい。枠体部の突出幅が各オーガーの掘削半径とほぼ同一にすれば、多軸オーガー機によって掘削する円柱と枠体部に設けた掘削刃で掘削する掘り残し部の外周がほぼ同じ直線状となる。
【0027】
本発明の山留壁の改良幅拡幅装置において、前記連結バンド部はその下面側と上面側で、それぞれ前記多軸オーガー機の複数のロッドを構成する下側のロッドユニットおよび上側のロッドユニットと接続する形とすることができる。
【0028】
改良幅拡幅装置の連結バンド部は、従来から多軸オーガー機で使用されていた既存の連結バンドを使用することができ、その場合、ロッドユニットとの接続も従来の機構をそのまま利用することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明の山留壁の改良幅拡幅装置および改良幅拡幅方法は、以上のような構成からなり、次のような効果が得られる。
【0030】
(1)円柱を削孔するのと同時に、その掘削される円柱をオーバーラップさせた溝状掘削範囲のオーバーラップ位置の溝幅が狭くなっている部分の外側の掘り残し部を同時に掘削し、ソイルセメント柱列壁の造成幅を広げることができれば、芯材の配置位置の自由度が広がる。
【0031】
(2)従来の施工方法のまま、ソイルセメント柱列壁の芯材建込み位置を隣接する敷地境界側へ寄せることができ、掘削範囲を広げることができる。
【0032】
(3)ソイルセメント柱列壁の平均壁厚が厚くなることにより、遮水性を向上させることができる。
【0033】
(4)改良幅拡幅装置を多軸オーガー機の複数のロッドに取り付けるため、その取り付け部の強度が上がり、スクリュー翼の振れが小さくなることで削孔精度を向上させることができる。
【0034】
(5)既存の連結バンド部の形状を変更するだけで、山留壁の改良幅拡幅装置として使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明に係る山留壁の改良幅拡幅装置を多軸オーガー機に取り付けた場合の一実施形態を示した正面図である。
図2】従来の連結バンドを多軸オーガー機に取り付けた場合を示した正面図である。
図3】本発明に係る山留壁の改良幅拡幅装置の断面図を示しており、(a)は枠体部1bの片側だけを拡幅させたもの、(b)は枠体部1bの両側を拡幅させたものである。
図4図3(a)の実施形態の改良幅拡幅装置を取り付けて掘削した場合を概略的に示したものであり、(a)は拡大断面図、(b)は断面図である。
図5】従来の掘削方法を概略的に示したものであり、(a)は拡大断面図、(b)は断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の具体的な実施形態を添付図面に基づいて説明する。なお、本発明は以下に示される実施形態に限定されるものではない。
【0037】
図1は、本発明に係る山留壁の改良幅拡幅装置1を多軸オーガー機2に取り付けた場合を示した正面図である。3連の多軸オーガー機2のロッドに設けられたスクリュー翼2aとロッド下部の掘削ロッド2bとの間に、隣り合うロッドを連結させるように改良幅拡幅装置1を取り付けている。改良幅拡幅装置1の外側は枠体部1bであり、枠体部1bの下部には掘削刃1cが設けられている。
【0038】
多軸オーガー機2に改良幅拡幅装置1を設けることによって、地中に挿入し、掘削ロッド2bで円柱を削孔すると同時に、改良幅拡幅装置1の掘削刃1cで掘削される円柱をオーバーラップさせた溝状掘削範囲のオーバーラップ位置の溝幅が狭くなっている部分の外側の掘り残し部10を掘削することができる。
【0039】
図2は、多軸オーガー機に従来の連結バンド2cを取り付けた正面図を示している。従来、多軸オーガー機2を用いて削孔する場合、図2のように連結バンド2cに上側ロッドユニット2dと下側ロッドユニット2eを接続して連結する。本発明の改良幅拡幅装置1は、多軸オーガー機2に用いていた既存の連結バンド2cを改良幅拡幅装置1の連結バンド部1aに利用して、改良幅拡幅装置1を取り付けることができる。
【0040】
つまり、連結バンド部1aは、従来から使用されている既存の連結バンド2cと同様のものをそのまま使用することもでき、その場合上下のロッドユニット2d、2eとの接続も従来の機構をそのまま利用することができる。
【0041】
また、図1のように改良幅拡幅装置1を多軸オーガー機2に取り付けると、取り付け部の強度が上がるため、削孔する際にスクリュー翼2aの振れが小さくなり、削孔精度を向上させることができる。
【0042】
図3は、山留壁の改良幅拡幅装置1の断面図であり、点線は多軸オーガー機2による掘削孔11を示している。
【0043】
図3(a)の改良幅拡幅装置1は、連結バンド部1aにロッドに取り付けるためのロッド挿入孔を3か所設けている。連結バンド部1aの断面外側に枠体部1bを設けており、連結バンド部1aに対して一方が他方よりも拡幅している。拡幅した突出幅は多軸オーガー機2の各オーガーの掘削半径とほぼ同一としている。
【0044】
図3(b)の改良幅拡幅装置1は、図3(a)と同様に連結バンド部1aに3か所のロッド挿入孔がある。連結バンド部1aの断面外側に設けた枠体部1bは、連結バンド部1aに対して対称的に同程度拡幅されており、その突出幅は図3(a)と同様に多軸オーガー機2の各オーガーの掘削半径とほぼ同一としている。
【0045】
枠体部1bの突出幅を多軸オーガー機2の各オーガーの掘削半径とほぼ同一にすることで、掘削孔11の外周と改良幅拡幅装置1で掘削される部分(掘り残し部10)を直線状に揃えることができる。
【0046】
図3は連結バンド部1aにロッド挿入孔を3か所設ける例を示したが、多軸オーガー機2のロッド数に合わせればよい。また、連結バンド部1aと枠体部1bの材質は特に限定されないが、地中に挿入するための強度と耐久性が必要であり、例えば鋼製などの連結バンド部1aと枠体部1bは同じ材質である方が好ましい。
【0047】
図4は、図3(a)に示した山留壁の改良幅拡幅装置1を多軸オーガー機2に取り付けて掘削し、ソイルセメント柱列壁を構築した断面を概略的に示した説明図である。図5は、従来方法でソイルセメント柱列壁を構築した断面を概略的に示した説明図である。
【0048】
従来方法では、図5のように多軸オーガー機2で円柱の掘削孔11を連続して掘削し、芯材12を挿入して、掘削時の余分なソイル壁は除去していた。掘削孔11に挿入する芯材12は、掘削孔11外周からの被り厚σ(σ≧25mm、σ≧L/600mm)を確保しなければならないため、芯材12を掘削孔11の中心に挿入しなければならなかった。また、円柱で掘削し、芯材12を掘削孔11の中心に設置するため、山留壁施工位置を敷地境界Pに現状以上近づけることができなかった。
【0049】
しかし、図3(a)の改良幅拡幅装置1を多軸オーガー機2に取り付けて削孔すると、図4(b)のように、円柱の掘削孔11を連続して掘削すると同時に、掘削孔11をオーバーラップさせた溝状掘削範囲のオーバーラップ位置の溝幅が狭くなっている部分の外側の掘り残し部10を掘削することができる。
【0050】
この掘り残し部10を掘削することによって、ソイルセメント柱列壁の造成幅を広げて平均壁厚が厚くすることができるため、従来のソイルセメント柱列壁よりも遮水性を向上させることができる。また、芯材12の被り厚σを掘り残し部10の外側から確保すればよく(図4(a)参照)、芯材12の挿入位置をAからBへ敷地境界P側に寄せることができる。
【0051】
ここでは図3(a)の改良幅拡幅装置1を多軸オーガー機2に取り付けて溝状掘削範囲の片側を拡幅する実施例を図4に示したが、図3(b)の改良幅拡幅装置1を用いて溝状掘削範囲の両側を拡幅掘削してもよい。
【符号の説明】
【0052】
1…改良幅拡幅装置
1a…連結バンド部
1b…枠体部
1c…掘削刃
2…多軸オーガー機
2a…スクリュー翼
2b…掘削ロッド
2c…連結バンド
2d…上側ロッドユニット
2e…下側ロッドユニット
10…掘り残し部
11…掘削孔
12…芯材(H形鋼)
σ…被り厚
P…敷地境界
図1
図2
図3
図4
図5