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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-22
(45)【発行日】2024-10-30
(54)【発明の名称】牡蠣むき身装置
(51)【国際特許分類】
   A22C 29/04 20060101AFI20241023BHJP
【FI】
A22C29/04
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021028065
(22)【出願日】2021-02-25
(65)【公開番号】P2022129416
(43)【公開日】2022-09-06
【審査請求日】2024-01-22
(73)【特許権者】
【識別番号】594142160
【氏名又は名称】三工電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591079487
【氏名又は名称】広島県
(74)【代理人】
【識別番号】100146020
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 善光
(74)【代理人】
【識別番号】100062328
【弁理士】
【氏名又は名称】古田 剛啓
(72)【発明者】
【氏名】上川 哲治
(72)【発明者】
【氏名】友國 慶子
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 憲吾
(72)【発明者】
【氏名】藤原 吉光
(72)【発明者】
【氏名】黒川 義之
(72)【発明者】
【氏名】白鷹 常和
(72)【発明者】
【氏名】濱田 一三
(72)【発明者】
【氏名】中野 良広
(72)【発明者】
【氏名】東 忠昭
(72)【発明者】
【氏名】坂本 智則
(72)【発明者】
【氏名】田村 善光
【審査官】西村 賢
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-146023(JP,A)
【文献】特開昭53-048900(JP,A)
【文献】特開2000-050790(JP,A)
【文献】特開2009-082060(JP,A)
【文献】特開平08-332020(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0109285(US,A1)
【文献】登録実用新案第3138987(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A22C 5/00-29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
牡蠣から殻とむき身を分離し、むき身を取り出す牡蠣むき身装置であって、
前記牡蠣むき身装置が、
牡蠣を載置可能な受台と上方から押圧する押圧手段とに挟まれて固定された状態の牡蠣の殻頂から最も離隔した外套膜の縁辺近傍の位置に、ふた殻と身殻のいずれか又は両方の割れにより形成された開口部に挿入される、前記ふた殻と貝柱との接合部を切断可能な貝柱切断刃物と、
前記貝柱切断刃物の柄を把持し刃先を三次元で動かすことが可能な刃物移動部と、
前記刃物移動部の動作を制御する制御部と、を備える貝柱切断手段を備え、
前記刃先を前記ふた殻に沿って前進させながら刃先でふた殻近傍の貝柱を切断することを特徴とする牡蠣むき身装置。
【請求項2】
前記制御部が、前記刃物移動部に、前記貝柱切断刃物の切っ先を、平面視で貝柱と身殻との短手方向の間隔が狭い方の間に向かうように、かつ刃先を前記ふた殻に沿うように前記開口部から挿入させ、前記刃先を前記ふた殻に沿わせながらかつ前記切っ先を前記身殻に沿うように前進させて、前記切っ先近傍の刃先が前進しながら前記貝柱を切断する動作をさせる制御をすることを特徴とする請求項1に記載の牡蠣むき身装置。
【請求項3】
前記貝柱切断刃物の形状を、前記開口部に挿入可能な幅と厚みを有する板状で、平面視で切っ先の形状が丸み形状を形成し、前記貝柱切断刃物の刃先と峰との幅を、少なくとも平面視で貝柱と身殻との短手方向の間隔が狭い方の身殻から、貝柱の前記身殻から最も離れた部位までの長さとすることを特徴とする請求項1又は2に記載の牡蠣むき身装置。
【請求項4】
前記刃物移動部に配置した、前記貝柱切断刃物の柄を把持する把持部を、前記貝柱切断刃物の切っ先を前記身殻に沿わせて前進させるときの前記切っ先の前進方向変化に、前記貝柱切断刃物の前進姿勢を維持するように追従可能にさせる把持部追従手段を備えることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の牡蠣むき身装置。
【請求項5】
前記貝柱切断刃物に微振動を与える振動発生手段を前記刃物移動部に設け、前記制御部が、前記刃物移動部が前進中に前記振動発生手段を動作させる制御をすることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の牡蠣むき身装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、牡蠣から殻とむき身を分離し、むき身を取り出す牡蠣むき身装置であって、牡蠣の殻の端部の開口部から貝柱を切断する貝柱切断装置を含む牡蠣むき身装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、それぞれ第1の殻が上側に位置し第2の殻が下側に位置するように二枚貝を把持する複数のテーブル治具が、テーブル上面に平面視で互いに一定の中心角を隔てて円周方向に並んで装着される一方、鉛直方向に伸びる回転軸を中心にして前記中心角と同一の回転角で間欠的に回転するターンテーブルと、前記ターンテーブルの周囲に配置され、二枚貝又は該二枚貝の構成部分に対して所定の処理、加工又は移送を行う二枚貝処理機構とを備えている、二枚貝を開殻して該二枚貝の身から殻を除去する二枚貝除殻装置であって、前記二枚貝処理機構は、それぞれ前記ターンテーブルの回転停止時において前記複数のテーブル治具と係合する位置に配置され、前記ターンテーブルの回転方向に順に並ぶ第1~第6のステーションを有し、第1のステーションに、順次各テーブル治具に二枚貝を投入する二枚貝投入装置が配設され、第2のステーションに、二枚貝の所定の部位で第1及び第2の殻の端部を切除する殻カット装置が配設され、第3のステーションに、二枚貝を所定の高さ位置に位置決めする二枚貝位置決め装置が配設され、第4のステーションに、貝柱上部を切断する第1貝柱カット装置が配設され、第5のステーションに、貝柱下部を切断する第2貝柱カット装置が配設され、第6のステーションに、二枚貝の身から殻を除去する殻除去装置が配設されている二枚貝除殻装置が開示されている。
【0003】
特許文献2には、少なくとも一方の刃物が開閉動作する一対の対向する刃物からなる切断装置において、前記一対の刃物が閉じたときに、前記一対の刃物の刃先間は一定の距離のすき間を設けた構成として、牡蠣の身を切断することなく牡蠣殻を切断する牡蠣殻の切断装置が開示されている。そして、作業者が、牡蠣殻の内部に容易にナイフを差し込むことが出来るようになりその結果、上下の殻の内側にそれぞれ付着している貝柱を容易に剥離させて身を取り出すことが出来ると記載されている。
【0004】
特許文献3には、刃先が上に向く下刃の手前にカキ殻置き台を略水平に取り付け、カキ殻置き台にカキ殻の反靭帯側の先端が下刃の上に載るようにカキ殻を置くとともに、刃先が下に向く上刃を下刃まで下降機構で自動的に下降させてカキ殻を切断する生カキ殻の切断装置が開示されている。そして、カキ殻に穴が開いているから、作業者がここから所定の切断具を挿入して貝柱1を切断してカキ殻を開けば、身は容易に取り出せると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2020-146023号公報
【文献】特開2005-102675号公報
【文献】特開2018-143166号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の発明は、二枚貝の開口部から二枚貝の内部に空気を噴射して前記開口部を経由して二枚貝内に切断刃を挿入して貝柱上部を切断するとの記載しかなく、どのような構造や仕組みで切断するのは不明であるという問題があった。例えば、切断刃の形状によっては貝柱がうまく切断できないという問題があった。
【0007】
特許文献2又は3に記載の発明は、貝柱の切断は人が行うことを前提としており、牡蠣の姿勢固定に関しての記載がなく、人の手による固定なしに貝柱を切断する技術を想到していないことから貝柱の切断の自動化は困難と判断されているという問題があった。
【0008】
本発明はこうした問題に鑑み創案されたもので、人の手によらずに牡蠣の貝柱を身の部分をキズつけることなく確実に切断する貝柱切断装置を備えた牡蠣むき身装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明において、ふた殻とは牡蠣の凹凸面の深さ又は高さが浅くて該凹凸面が略平らな形状の側の殻を意味し、身殻とは牡蠣の凹凸面の深さ又は高さが深くて該凹凸面が膨らんでいる形状の側の殻を意味する。
【0010】
請求項1に記載の牡蠣むき身装置は、牡蠣から殻とむき身を分離し、むき身を取り出す牡蠣むき身装置であって、前記牡蠣むき身装置が、牡蠣を載置可能な受台と上方から押圧する押圧手段とに挟まれて固定された状態の牡蠣の殻頂から最も離隔した外套膜の縁辺近傍の位置に、ふた殻と身殻のいずれか又は両方の割れにより形成された開口部に挿入される、前記ふた殻と貝柱との接合部を切断可能な貝柱切断刃物と、前記貝柱切断刃物の柄を把持し刃先を三次元で動かすことが可能な刃物移動部と、前記刃物移動部の動作を制御する制御部と、を備える貝柱切断手段を備え、前記刃先を前記ふた殻に沿って前進させながら刃先でふた殻近傍の貝柱を切断することを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の牡蠣むき身装置は、請求項1において、前記制御部が、前記刃物移動部に、前記貝柱切断刃物の切っ先を、平面視で貝柱と身殻との短手方向の間隔が狭い方の間に向かうように、かつ刃先を前記ふた殻に沿うように前記開口部から挿入させ、前記刃先を前記ふた殻に沿わせながらかつ前記切っ先を前記身殻に沿うように前進させて、前記切っ先近傍の刃先が前進しながら前記貝柱を切断する動作をさせる制御をすることを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の牡蠣むき身装置は、請求項1又は2において、前記貝柱切断刃物の形状を、前記開口部に挿入可能な幅と厚みを有する板状で、平面視で切っ先の形状が丸み形状を形成し、前記貝柱切断刃物の刃先と峰との幅を、少なくとも平面視で貝柱と身殻との短手方向の間隔が狭い方の身殻から、貝柱の前記身殻から最も離れた部位までの長さとすることを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の牡蠣むき身装置は、請求項1~3のいずれかにおいて、前記刃物移動部に配置した、前記貝柱切断刃物の柄を把持する把持部を、前記貝柱切断刃物の切っ先を前記身殻に沿わせて前進させるときの前記切っ先の前進方向変化に、前記貝柱切断刃物の前進姿勢を維持するように追従可能にさせる把持部追従手段を備えることを特徴とする。
【0014】
請求項5に記載の牡蠣むき身装置は、請求項1~4のいずれかにおいて、前記貝柱切断刃物に微振動を与える振動発生手段を前記刃物移動部に設け、前記制御部が、前記刃物移動部が前進中に前記振動発生手段を動作させる制御をすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1及び2に記載の牡蠣むき身装置は、牡蠣に形成された開口部から、自動で貝柱切断刃物を挿入させて、牡蠣の貝柱を身の部分をキズつけることなく確実に切断することができるという効果を奏する。
【0016】
請求項3に記載の牡蠣むき身装置は、自動で牡蠣の貝柱を切断するために効果的な貝柱切断刃物の大きさや形状を規定しており、貝柱切断刃物の一回の前進で貝柱を切断できるという効果を奏する。
【0017】
請求項4に記載の牡蠣むき身装置は、牡蠣の殻の内側の形状変化に対して、前進中の貝柱切断刃物が途中停止したり、期待していない方向に前進したりするのを避けることができるという効果を奏する。
【0018】
請求項5に記載の牡蠣むき身装置は、より確実に貝柱を切断するという効果、及び、貝柱切断刃物の刃先を研ぐ間隔を長くすることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の牡蠣むき身装置の工程全体の説明図である。
図2】本発明の牡蠣むき身装置の貝柱切断装置で貝柱切断刃物の動きを制御する形態の場合の概要説明図である。
図3】本発明の牡蠣むき身装置の貝柱切断装置で貝柱切断刃物の動きの一部を手首自在機構により作動させた形態の場合の概要説明図である。
図4図2における牡蠣固定手段の左側面図である。
図5】前工程の殻開口部形成装置で開口部を形成した牡蠣の説明図で、(a)は正面図で、(b)は(a)の左側面に形成された開口部の説明図である。
図6】貝柱切断刃物の説明図である。
図7】牡蠣の短手方向断面で正面視における、貝柱を切断する貝柱切断刃物の動きの説明図で、(a)は貝柱切断刃物を開口部に挿入したときの状態の説明図で、(b)は貝柱切断刃物を開口部から少し前進させた状態の説明図で、(c)は貝柱切断刃物で貝柱を切断する直前の状態の説明図である。
図8】牡蠣の上側にしたふた殻を除いた状態で平面視における、貝柱を切断する貝柱切断刃物の動きの説明図で、(a)は貝柱切断刃物を開口部に挿入したときの状態の説明図で、(b)は貝柱切断刃物を開口部から少し前進させた状態の説明図で、(c)は貝柱切断刃物で貝柱を切断する直前の状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の牡蠣むき身装置1は、図1に示すように、牡蠣2からむき身を自動的に取り出す装置であって、工程順に殻開口部形成装置1a、貝柱切断装置1b、むき身取出装置1cを備える。本発明は前記牡蠣むき身装置1の中で前記貝柱切断装置1bに係る発明である。
【0021】
本発明の牡蠣むき身装置1は、図1図2図7又は図8に示すように、牡蠣2から殻3とむき身を分離し、むき身を取り出す牡蠣むき身装置1であって、前記牡蠣むき身装置1が、牡蠣2を載置可能な受台16と上方から押圧する押圧手段6とに挟まれて固定された状態の牡蠣2の殻頂21から最も離隔した外套膜23の縁辺近傍の位置に、ふた殻3aと身殻3bのいずれか又は両方の割れにより形成された開口部20に挿入される、前記ふた殻3aと貝柱8との接合部を切断可能な貝柱切断刃物4と、前記貝柱切断刃物4の柄12を把持し刃先10を三次元で動かすことが可能な刃物移動部5と、前記刃物移動部5の動作を制御する制御部40と、を備える貝柱切断手段1bを備え、前記刃先10を前記ふた殻3aに沿って前進させながら刃先10でふた殻3a近傍の貝柱8を切断する。
【0022】
前記貝柱切断装置1bは、図1又は図2に示すように、牡蠣固定部30と、貝柱8を切断する貝柱切断刃物4と、前記柱切断刃物4を把持する把持部7と、前記柱切断刃物4を移動させたり姿勢を変えたりする刃物移動部5と、制御部40とを備える。前記牡蠣固定部30は、牡蠣2を載置く受台16と、上方から下降して牡蠣2に接して押圧をかける押圧手段6を備え、さらに前記押圧手段6は牡蠣2の殻3に接する押圧先端部18と、前記押圧先端部18を昇降させて牡蠣2に所定の圧力を加える押圧昇降部17を備える。前記押圧昇降部17は筐体19に固定される。
【0023】
図2又は図3に示すように、牡蠣2は下側を受台16で支持され、上側を下降してきた押圧先端部18とに挟まれて牡蠣2は固定される。前記押圧先端部18の圧力は、牡蠣2の殻3は割れないが載置された牡蠣2に位置ずれや姿勢変化をもたらさない圧力とする。
【0024】
前記牡蠣固定部30は、殻3の身殻3bやふた殻3aの外壁表面に起伏があって部位に高さが変化する牡蠣2を横にして固定可能な装置であればいずれでもよく、例えば受台16が平板状で上から弾力性を有する板状体を被覆させてその収縮力で押圧させて固定する装置などがある。
【0025】
前記開口部20は、牡蠣2の殻頂21から最も離隔した外套膜23の縁辺近傍の位置に、ふた殻3aと身殻3bのいずれか又は両方の割れにより形成される。そして、前記開口部20は、図5に示すように、殻頂21から最も離隔した部位に位置する外套膜23近傍に形成されている。そして、開口部20の大きさは、例えば図5(b)に示すように、刃物移動部5を挿入可能な大きさとして例えば高さ約5mmで幅約20mmの大きさがあり、刃物移動部5を挿入可能な大きさがあればいずれの大きさでもよい。
【0026】
図5又は図7に示すように前記開口部20が形成された牡蠣2は、図2図3又は図7に示すように、ふた殻3aを上側にして載置すると、前記ふた殻3aの高さから前記開口部20の高さは、前記牡蠣2の大きさは略同じであればほとんど同じ高さになる。そのため、前記貝柱切断刃物4の切っ先9を開口部20から牡蠣2の内部に挿入させる軌跡を、予め定めた牡蠣2の大きさの区分ごとに前記軌跡を記憶部に記憶させておけば制御部40の指示により確実に牡蠣2の内部に前記貝柱切断刃物4の切っ先9を挿入させることができる。
【0027】
次に、前記貝柱切断刃物4について説明する。前記貝柱切断刃物4の形状は、前記開口部20に挿入可能な幅と厚みを有する板状で、図6に示すように、平面視で切っ先9の形状が丸み形状を形成し、前記貝柱切断刃物4の刃先10と峰12との幅Wを、図7(a)に示すように、少なくとも平面視で貝柱8と身殻3bとの短手方向の間隔Yが狭い方の身殻3bから、貝柱8の前記身殻3bから最も離れた部位までの長さとする。
【0028】
前記貝柱切断刃物4の刃先10の形状は、図5に示すように、平面視で、略直線状の峰11の先端に切っ先9があり、その切っ先9は丸みを形成させて、その切っ先9から前記峰11に対して10°~70°のうちのいずれかの角度で斜めに刃先10を形成している。そして前記刃先10は所定の幅Wを確保するようにしている。前記刃先10と前記峰11とは切っ先9を角にした略三角形の2辺の形態を有している。
【0029】
前記刃先10の幅Wを、貝柱8から近い方の身殻3bの内壁面から貝柱8が全て含まれる位置までの幅Wとしたので、前記刃先10を身殻3bの内壁面の沿わせながら殻頂21の方向に、つまり奥に進行させていけば貝柱8は視認しなくても切断される。
【0030】
これにより、上側にふた殻3aの状態で固定させた牡蠣2内に挿入後の前記貝柱切断刃物4の軌跡を、前記切っ先9を牡蠣2の身殻3bの内壁に沿わせて、且つ前記刃先10を前記ふた殻3aの下面に接しながら牡蠣2の奥に進入させると、前記刃先10が貝柱8を切断することができる。ここで、切っ先9を沿わせる身殻3bは、平面視で貝柱8に近い方の身殻3bである。
【0031】
また、前記貝柱切断刃物4は、前記ふた殻3aと貝柱8との接合部を切断可能であり、図6に示すように、厚さ数mmの板状であって、切っ先9、刃先10、峰11及び柄12を有している。前記貝柱切断刃物4は、牡蠣2内への挿入から貝柱8を切断するまでの過程で曲がったりしない剛性を持ち、かつ開口部20に挿入可能な厚みを有する。
【0032】
次に、刃物移動部5について説明する。前記刃物移動部5は、前記貝柱切断刃物4の柄12を把持し刃先10を三次元で動かすことが可能であり、前記貝柱切断刃物4を把持する把持部7、把持部7の姿勢を変える手首動作手段15又は手首自在機構25、前記把持部7と前記手首動作手段15又は手首自在機構25とを3次元方向に移動させる刃物駆動部29を備える。前記制御部40により、前記貝柱切断刃物4の切っ先9及び刃先10に再現させようとする軌跡を、再現させるための、刃物移動部5の前記手首動作手段15又は前記手首自在機構25、及び刃物駆動部29の制御方法を記憶部(図示なし)に記憶させておき、前記記憶部から必要な情報を取り出して、刃物移動部5の前記手首動作手段15又は前記手首自在機構25、及び刃物駆動部29に指示を出し作動させる。
【0033】
前記手首動作手段15と前記手首自在機構25とはともに、前記貝柱切断刃物4を把持した把持部7の姿勢、すなわち把持部7の水平方向の角度及び上下方向の角度を変える機構である。
【0034】
前記手首動作手段15は、前記貝柱切断刃物4を牡蠣2の中に挿入し貝柱8を切断して元位置まで戻るまでの一巡の軌跡を再現させる、前記手首動作手段15の制御方法を予め記憶部に記憶させておき、前記制御部40により前記記憶部に記憶させた制御で前記軌跡通りに進行させる、前記制御部40からの指示で作動する機構である。よって、前記手首動作手段15は、前記貝柱切断刃物4を把持した把持部7の左右方向の角度及び上下方向の角度を変えられる構造体であればよく、シリンダー、球面軸受、歯車、スプリング等の構成部材から構成される。
【0035】
同じ大きさの牡蠣2の場合に牡蠣2の身殻3b、ふた殻3a及び貝柱8の位置関係は略同じであるので、予め所定の大きさに区分けした牡蠣2の大きさに合わせて前記貝柱切断刃物4の進行経路を再現させる、前記手首動作手段15及び前記刃物駆動部29の制御方法を記憶部に記憶させておいて、制御部40で記憶部からの情報で前記手首動作手段15及び前記刃物駆動部29を作動させる。
【0036】
一方、前記手首自在機構25は、前記刃物移動部5に配置した、前記貝柱切断刃物4の柄12を把持する把持部7を、前記貝柱切断刃物4の切っ先9を前記身殻3bに沿わせて前進させるときの前記切っ先9の前進方向変化に、前記貝柱切断刃物4の前進姿勢を維持するように追従可能にさせる把持部追従手段である。
【0037】
すなわち、前記手首自在機構25は、前記貝柱切断刃物4を牡蠣2の中に挿入し貝柱8を切断して元位置まで戻るまでの動作の中で、前記貝柱切断刃物4を牡蠣2の中に挿入するときの姿勢、及び、挿入後に貝柱8と、貝柱8に近い方の身殻3bの内壁との間に向けた方向は設定するが、進行に伴って刃先10の向きは切っ先9又は刃先10の抵抗によってメカ的に前記貝柱切断刃物4の姿勢を変えながら進行させる。前記手首自在機構25としては、例えば、出願人が発明した特許第6284129号に開示された、両端に球面軸受を取付けた入れ子構造体に、入れ子構造体の両端の間隔を拡大させる方向に付勢力を有する付勢手段を備えた伸縮傾動機構がある。
【0038】
前記手首自在機構25の場合も、同じ大きさの牡蠣2の場合に牡蠣2の身殻3b、ふた殻3a及び貝柱8の位置関係は略同じであるので、予め所定の大きさに区分けした牡蠣2の大きさに合わせて前記貝柱切断刃物4の進行経路を再現させる、前記手首自在機構25及び前記刃物駆動部29の制御補法を記憶部に記憶させておいて、制御部40で前記記憶部からの情報で前記手首自在機構25及び前記刃物駆動部29を作動させる。
【0039】
前記刃物駆動部29は、前記把持部7で把持された前記貝柱切断刃物4を前後方向の移動、左右方向の移動及び上下方向の移動のアクチュエーターであり、制御部40により動作を制御される。前記刃物駆動部29は、シリンダー又はモーターなどの駆動機構があり、前記把持部9並びに前記手首動作手段15又は前記手首自在機構25を、上下方向、左右方向、前後方向に移動可能な機構であればいずれでもよい。
【0040】
次に、前記制御部40について説明する。前記制御部40は、前記貝柱切断刃物4の切っ先9及び刃先10の軌跡をさせる前記手首動作手段15又は前記手首自在機構25、並びに、前記刃物駆動部29の制御方法を記憶させた記憶部から情報を取り出して、前記刃物移動部5に、前記貝柱切断刃物4の切っ先9を、平面視で貝柱8と身殻3bとの短手方向の間隔が狭い方の間に向かうように、かつ刃先10を前記ふた殻3aに沿うように前記開口部20から挿入させ、前記刃先10を前記ふた殻3aに沿わせながらかつ前記切っ先9を前記身殻3bに沿うように前進させて、前記切っ先9近傍の刃先10が前進しながら前記貝柱8を切断する動作をさせる制御をする。
【0041】
前記制御部40は、図2図3又は図4に示すように固定され、すでに図5に示すように端部に開口部20が形成された牡蠣2に対して、図6に示すような貝柱切断刃物4を、図6及び図7に示すような軌跡をする制御を行う。なお、牡蠣2の殻3の上下については、貝柱8の前記ふた殻3a近傍を切断するので、ふた殻3a側を上側にするのが貝柱8が少しでも下方に垂れるので身をきず付ける懸念が極めて小さいので好ましい。また、貝柱8の前記ふた殻3a近傍を切断するのは、身殻3b側を切断するのは身殻3bの高さ方向の差が大きいので貝柱8の切断が難しい面があるが、ふた殻は略平坦であるので薄板状の刃物を挿入しやすく、貝柱8を切りやすい。
【0042】
まず、前記開口部20に貝柱切断刃物4を挿入させるところは、図7(a)に示すように上下方向も、図8(a)に示すように横方向も、前記開口部20の中央狙いに挿入可能に切っ先9の軌跡を制御する。これにより、前記貝柱切断刃物4の切っ先9を確実に牡蠣2内に挿入することができる。
【0043】
挿入が完了すると、図7(b)に示すように、前記刃先10をふた殻3aに当てる姿勢になるように制御し、同時に図8(b)に示すように、切っ先9を貝柱8に近い方の身殻3bの壁面に当てるように刃先10及び切っ先9の向きを変える。
【0044】
そして、貝柱8と、前記貝柱8に最も近い殻3の内壁との間を進めるときに、前記貝柱切断刃物4の切っ先9及び刃先10を外套膜23と殻3との間に進めていくため、牡蠣2の外套膜23を切断しないという効果がある。
【0045】
さらに、切っ先9を丸い形状にしていることにより、外套膜23に当たっても外套膜23をキズをつけず、切っ先9を進めるときに外套膜23に接しても外套膜23をよけながら進めることができる。
【0046】
そのまま奥側に進行させて、図7(c)に示すように刃先10をふた殻3aに当てながら、かつ図8(c)に示すように切っ先9を貝柱8に近い方の身殻3bの壁面に当てながら奥に進行させると、刃先10が貝柱8に当たって切断することができる。
【0047】
以上により、牡蠣2の貝柱8を自動的に切断することができる。
【0048】
また、前記貝柱切断刃物4に微振動を与える振動発生手段(図示なし)を前記刃物移動部5に設け、前記制御部40が、前記刃物移動部5が前進中に前記振動発生手段を動作させる制御をすることもできる。
【0049】
切っ先9や刃先10を進めるときに微振動をさせると、貝柱8を刃先10で切断しやすく、前記貝柱切断刃物4の幅を横方向の振幅分ほど狭くすることができるので、貝柱8の切断力を変えずに狭い開口部20でも、前記貝柱切断刃物4を前記開口部20から挿入させることができる。
【符号の説明】
【0050】
1 牡蠣むき身装置
1a 殻開口部形成装置
1b 貝柱切断装置
1c むき身取出装置
2 牡蠣
3 殻
3a ふた殻
3b 身殻
4 貝柱切断刃物
5 刃物移動部
6 押圧手段
7 把持部
8 貝柱
9 切っ先
10 刃先
11 峰
12 柄
15 手首動作手段
16 受台
17 押圧昇降部
18 押圧先端部
19 筐体
20 開口部
21 殻頂
22 可食部
23 外套膜
25 手首自在機構
29 刃物駆動部
30 牡蠣固定部
40 制御部
W 幅
Y 間隔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8