(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-22
(45)【発行日】2024-10-30
(54)【発明の名称】歯科模型及び咬合器
(51)【国際特許分類】
G09B 23/34 20060101AFI20241023BHJP
A61C 13/34 20060101ALI20241023BHJP
A61C 11/08 20060101ALI20241023BHJP
A61C 11/00 20060101ALI20241023BHJP
【FI】
G09B23/34
A61C13/34 Z
A61C11/08
A61C11/00 A
(21)【出願番号】P 2021508330
(86)(22)【出願日】2020-08-05
(86)【国際出願番号】 JP2020029980
(87)【国際公開番号】W WO2022029922
(87)【国際公開日】2022-02-10
【審査請求日】2023-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】391011490
【氏名又は名称】株式会社ニッシン
(73)【特許権者】
【識別番号】521066307
【氏名又は名称】キルゴアインターナショナル インク
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】グレゴリー マイケル
(72)【発明者】
【氏名】松尾 晃士朗
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 晃幸
(72)【発明者】
【氏名】松岡 侑平
(72)【発明者】
【氏名】和田 道之
(72)【発明者】
【氏名】田代 敦士
【審査官】鈴木 崇雅
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-004186(JP,A)
【文献】登録実用新案第3103569(JP,U)
【文献】特開2013-099408(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 23/28-34
A61C 11/00-08
A61C 13/34-36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
模型歯を挿入する挿入孔が設けられた歯肉部と、
前記歯肉部における前記挿入孔の口内側又は口外側に設けられ、
閉じた状態で前記歯肉部の一部を構成し、
開いた状態で、前記挿入孔から連続し且つ前記模型歯の歯根部の少なくとも一部を露出させる凹部を形成する、前記歯肉部の他部に対して開閉
可能な蓋部と、を備え、
前記蓋部は、前記歯肉部に、前記閉じた状態と、前記開いた状態との間で揺動可能に保持されている、
歯科模型。
【請求項2】
前記蓋部は、前記歯肉部の前記口内側に設けられている、
請求項1に記載の歯科模型。
【請求項3】
前記蓋部は、奥歯である前記模型歯の前記挿入孔の、前記口内側又は前記口外側に設けられている、
請求項1又は2に記載の歯科模型。
【請求項4】
前記挿入孔の内周面における、前記
口外側又は前記口内側を向く内面には、
窪み又は
凸部の一方が設けられ、
前記歯根部の外周面における
、前記口外側又は前記口内側を向く内面には、前記一方と係合する、前記
窪み又は前記
凸部の他方が設けられている、
請求項1から3のいずれか1項に記載の歯科模型。
【請求項5】
前記蓋部は、前記歯肉部に対してネジで固定されることにより、閉状態が維持される、
請求項1から4のいずれか1項に記載の歯科模型。
【請求項6】
奥歯部と、該奥歯部と連結する前歯部とに分割可能な、
請求項1から5のいずれか1項に記載の歯科模型。
【請求項7】
前記奥歯部と前記前歯部との互いに対向する面
の一方には凹溝が形成され、
前記奥歯部と前記前歯部との互いに対向する面
の他方には、前記凹溝内をスライド可能な突条部が形成されている、
請求項6に記載の歯科模型。
【請求項8】
前記奥歯部と前記前歯部とは、磁力によって
互いに保持される、
請求項6または7に記載の歯科模型。
【請求項9】
請求項1から5のいずれか1項に記載の歯科模型と、
前記歯科模型を支持する模型支持部と、
を備える咬合器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科模型及び咬合器に関する。
【背景技術】
【0002】
歯科教育機関(歯科大学、衛生士学校、技工士学校)、歯科医院、歯科セミナー等においては、種々の実習や試験を行う場合に歯科模型が用いられている。従来、このような歯科模型として、複数の模型歯がそれぞれ着脱可能な挿入孔が設けられた模型歯台を備えるものがある。そして、挿入孔に模型歯が挿入され、模型歯台の裏側からネジによって模型歯と模型歯台とが固定されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、例えば奥歯の場合、天然の奥歯の歯根部は歯冠部より広がっている。従来の歯科模型においては、模型歯を挿入孔に挿入可能とするために、奥歯であっても歯根部は挿入孔より小さく形成され、天然歯と形状が異なっている。
歯科医になる試験においては、歯の神経を抜くという課題もある。このような場合、練習用又は試験用の歯科模型において、神経が通る歯根部の形状が実際の歯根部と同様の形状を有し、且つ歯肉部に対して着脱可能な歯科模型が望まれている。
【0005】
本発明は、実際の歯と同様の歯根部を有する模型歯が、歯肉部に対して着脱可能な歯科模型及び咬合器を提供すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の模型歯は、模型歯を挿入する挿入孔が設けられた歯肉部と、前記歯肉部における前記挿入孔の口内側又は口外側に設けられ、閉じた状態で前記歯肉部の一部を構成し、開いた状態で、前記挿入孔から連続し且つ前記模型歯の歯根部の少なくとも一部を露出させる凹部を形成する、前記歯肉部の他部に対して開閉な蓋部と、を備える。
【0007】
前記蓋部は、前記歯肉部の前記口内側に設けられていることが好ましい。
【0008】
前記蓋部が、奥歯である前記模型歯の前記挿入孔の、前記口内側又は前記口外側に設けられていることが好ましい。
【0009】
前記挿入孔の内周面には、突部又は凹部の一方が設けられ、前記歯根部の外周面には、前記一方と係合する、前記突部又は前記凹部の他方が設けられていてもよい。
【0010】
前記蓋部は、前記歯肉部に対してネジで固定されることにより、閉状態が維持されていてもよい。
【0011】
歯科模型は、複数の部分に分割可能であってもよい。
【0012】
歯科模型は、少なくとも第1の部分と第2の部分とに分割可能で、前記第1の部分の前記第2の部分と対向する面には凹溝が形成され、前記第2の部分の前記第1の部分と対向する面には、前記凹溝内をスライド可能な突条部が形成されていてもよい。
【0013】
歯科模型は、少なくとも第1の部分と第2の部分とに分割可能で、前記第2の部分は前記第1の部分に磁力によって保持されてもよい。
【0014】
また、本発明の他の態様は、上記歯科模型と、前記歯科模型を支持する模型支持部と、を備える咬合器を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、実際の歯と同様の歯根部を有する模型歯が、歯肉部に対して着脱可能な歯科模型及び咬合器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】歯科模型1を備える咬合器100の斜視図である。
【
図2】上模型固定部111Aと、上模型固定部111Aから取り外した状態の上歯科模型1Aとを示す図である。
【
図4】左奥歯部1bの斜視図であり、奥歯用蓋部13bが開いた状態を示す。
【
図5】左奥歯部1bの斜視図であり、奥歯用蓋部13bが開いて奥模型歯50bが取り外された状態を示す。
【
図6】左奥歯部1bの斜視図であり、奥歯用蓋部13bが開いて奥模型歯50b及び奥歯用蓋部13bが取り外された状態を示す。
【
図7】前歯部1fの上面図であり、前歯用蓋部13fが開いた状態を示す。
【
図8】前歯部1fの上面図であり、前歯用蓋部13fが開いて前模型歯50fが内側に移動された状態を示す。
【
図9】前歯部1fの上面図であり、前歯用蓋部13fが開いて前模型歯50fが取り外された状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(咬合器100)
本発明の実施形態の歯科模型1について図面を参照しながら説明する。
図1は、歯科模型1を備える咬合器100の斜視図である。咬合器100は、歯科模型1と、模型支持部101とを備える。歯科模型1は、上歯科模型1Aと下歯科模型1Bとを備える。
以下、図示するように、歯科模型1が実際の口内である場合の舌が存在する舌側を口内側、その逆側である頬側及び唇側を口外側と定義する。また、図示するように奥歯側及び前歯側を定義する。また、歯科模型1が実際の口内である場合の上の歯の側を上、下の歯の側を下とする。
【0018】
(模型支持部101)
模型支持部101は、上歯科模型1Aを支持する上模型支持部101Aと、下歯科模型1Bを支持する下模型支持部101Bとを備える。
【0019】
(上模型支持部101A)
上模型支持部101Aは、上模型固定部111Aと、上模型固定部111Aの後方を保持する上保持部112Aと、上保持部112Aから後方斜め下に延びる一対の上後方延出部113Aとを備える。
【0020】
図2は、上模型固定部111Aと、上模型固定部111Aから取り外した状態の上歯科模型1Aとを示す図である。
上模型固定部111Aは磁性体で製造されており、下面には上歯科模型1Aの上面形状に対応した形状を有する収納部114Aが設けられている。一方、上歯科模型1Aには磁石が埋め込まれている。上歯科模型1Aは、上模型固定部111Aの収納部114Aに嵌め込まれて、着脱可能に磁力によって保持される。
【0021】
図1に戻り、上保持部112Aは、上模型固定部111Aの後方を着脱可能に保持する。一対の上後方延出部113Aは、上保持部112Aの後面における長手方向の一端側及び他端側から後方斜め下に延びる。
【0022】
(下模型支持部101B)
下模型支持部101Bは、下模型固定部111Bと、下模型固定部111Bの後方を着脱可能に保持する下保持部112Bと、下保持部112Bから後方斜め上に延びる一対の下後方延出部113Bとを備える。
【0023】
上模型固定部111Aと同様に、下模型固定部111Bは磁性体で製造されており、上面には下歯科模型1Bの下面形状に対応した形状を有する収納部114Bが設けられている。一方、上歯科模型1Aと同様に下歯科模型1Bには磁石が埋め込まれている。下歯科模型1Bは、下模型固定部111Bの収納部114Bに嵌め込まれて、着脱可能に磁力によって保持される。
【0024】
下保持部112Bは、下模型固定部111Bの後方を着脱可能に保持する。一対の下後方延出部123は、下保持部112Bの後面における長手方向の一端側及び他端側から後方斜め上に延びる。
そして、上後方延出部113Aの下端と下後方延出部113Bの上端とは、回転可能に連結されている。
【0025】
(歯科模型1)
次に、実施形態の歯科模型1について説明する。
上歯科模型1Aは、硬質の合成樹脂材から形成されている。歯科模型1は、模型歯台10と、複数の模型歯50とを備える。
模型歯台10は、模型支持部101の収納部114の底面と接する平坦面14を有する台座部11と、台座部11と一体で、台座部11より突出した歯肉部12とを備える。
模型歯50は、歯肉部12の突出した部分の頂部に設けられた挿入孔20にそれぞれ挿入されている。
なお、下歯科模型1Bについてもこれらの構造は同様であるので説明を省略する。
【0026】
上歯科模型1Aは複数に分割可能である。
図3は上歯科模型1Aを分割した状態を示す。実施形態で上歯科模型1Aは、右奥歯部(第1の部分)1rと、右奥歯部1rと連結する前歯部1f(第2の部分)と、前歯部1fと連結する左奥歯部1bとの3つの分割歯科模型に分割可能である。
【0027】
右奥歯部1rの前歯部1f側の側面には、上下に延びる凹溝15aが形成されている。前歯部1fの右奥歯部1r側には、上下に延びる且つ凹溝15a内をスライド可能な突条部16aが形成されている。右奥歯部1rの凹溝15aに、前歯部1fの突条部16aがスライドすることにより、右奥歯部1rと前歯部1fとが着脱される。また、右奥歯部1rと前歯部1fとには、それぞれ、右奥歯部1rと前歯部1fとを組み合わせた場合に対向する位置に磁石が埋め込まれている。そのため、右奥歯部1rと前歯部1fとを組み合わせた状態は、磁力によって保持される。
【0028】
前歯部1fの左奥歯部1b側には、上下に延びる突条部16bが形成されている。左奥歯部1bの前歯部1f側には、上下に延びる凹溝15bが形成されている。左奥歯部1bの凹溝15bに前歯部1fの突条部16bがスライドすることにより、左奥歯部1bと前歯部1fとが着脱される。また、前歯部1fと左奥歯部1bとには、それぞれ、前歯部1fと左奥歯部1bとを組み合わせた場合に対向する位置に磁石が埋め込まれている。そのため、前歯部1fと左奥歯部1bとを組み合わせた状態は、磁力によって保持される。
【0029】
歯肉部12の突出した部分の頂部には、複数の挿入孔20が設けられている。挿入孔20より、模型歯50が歯肉部12にそれぞれ挿入されている。
【0030】
(奥歯用蓋部13b)
挿入孔20のうちの、着脱可能な奥模型歯50bが取り付けられている奥挿入孔20bの口内側には、奥挿入孔20bから続く凹部18bが形成され、凹部18bには奥歯用蓋部13bが取り付けられている。
図4は、左奥歯部1bの斜視図であり、奥歯用蓋部13bが開いた状態を示す。
図5は、左奥歯部1bの斜視図であり、奥歯用蓋部13bが開いて奥模型歯50bが取り外された状態を示す。
図6は、左奥歯部1bの斜視図であり、奥歯用蓋部13bが開いて奥模型歯50b及び奥歯用蓋部13bが取り外された状態を示す。
【0031】
奥歯用蓋部13bは、歯肉部12と同じ材料で製造されている。奥歯用蓋部13bは、閉じた状態で歯肉部12の一部を構成し、歯肉部12の表面と一体となる表面131bと、その逆側の内面132bとを備える。内面132bには、後述する歯根部52bが挿入される歯根挿入孔24のうちの一つの歯根挿入孔241を形成する内周面の一部が形成されている。
【0032】
図3に示す閉じた状態で奥歯用蓋部13bの表面131bは、歯肉部12の一部を構成し、実際の口中の歯肉部形状が模擬され、奥歯用蓋部13bの上縁部は、奥挿入孔20bの開口の縁の一部を構成する。
【0033】
図6に示すように、奥歯用蓋部13bの基端部の両側部には、歯列方向に延びる軸部17がそれぞれ突出して形成されている。一方、歯肉部12の凹部18bの内側面には、軸部17が挿入される溝部19が設けられている。
溝部19は、模型歯50の歯先側から平坦面14に向かって上下方向に延びているが、平坦面14までは貫通しておらず、底部191が設けられている。そして、溝部19の内側面における底部191よりも下方(
図6では上となる歯先側)には突起192が設けられている。
【0034】
軸部17は、歯先側から溝部19に挿入されて、平坦面14側にスライドされ、突起192を乗り越えると、溝部19における突起192と底部191との間の空間に保持される。軸部17は、一旦、その空間に保持されると、突起192を乗り越えるだけの力を加えられない限り、空間内に回転可能に保持される。軸部17がその空間内で回転することにより、奥歯用蓋部13bは軸部17を中心として
図3の閉じた状態と、
図4及び
図5の開いた状態との間で揺動可能となる。
【0035】
また、奥歯用蓋部13bには、表面131b側から内面132b側へと貫通した横向きのネジ挿通孔25bが設けられている。一方、歯肉部12の凹部18bの口内側を向いた内面には、横向きにネジ切孔26bが設けられている。
【0036】
(奥模型歯50b)
図5に示すように奥模型歯50bは、歯冠部51bと、歯根部52bとを備える。
歯冠部51bは、奥模型歯50bを歯肉部12に固定した状態で、歯肉部12の奥挿入孔20bから露出する部分である。
歯根部52bは、奥模型歯50bを歯肉部12に固定した状態で、奥挿入孔20bの内部に挿入されて蓋部13を含む歯肉部12に覆われる部分である。
【0037】
奥模型歯50bの歯根部52bは、口内側の歯根部521と、口外側の歯根部522及び歯根部523と、の3つの歯根部52bを含み、口内側の歯根部521は歯冠部51bよりも外側に広がっている。外側に広がっているとは、模型歯50を歯冠部51側からみたときに、歯根部52が歯冠部51の外側にはみ出て見えることをいう。
【0038】
(凹部18b)
歯肉部12に設けられている奥挿入孔20bの内部には、口外側の歯根部522及び歯根部523が挿入される、歯根挿入孔242及び歯根挿入孔243が設けられている。
また、口内側の歯根部521が挿入される歯根挿入孔241を形成する内周面の一部も設けられている。奥歯用蓋部13bが閉じると、奥歯用蓋部13bに設けられた歯根挿入孔241を形成する内周面の一部と、凹部18bに設けられた歯根挿入孔241を形成する内周面の一部とで、歯根挿入孔241が形成される。
また、奥挿入孔20bの上縁部と奥歯用蓋部13bの上縁部とにより、奥挿入孔20bの開口の縁部が画される。
【0039】
ここで、実施形態の奥挿入孔20bの開口は、実際の口内と同様に、歯冠部51bの根元である、歯冠部51bと歯根部52bとの境界部の外周と略同じ形状である。したがって、歯冠部51bよりも広がっている歯根部521を有する奥模型歯50bは、奥歯用蓋部13bが閉じた状態では奥挿入孔20bより歯肉部12に対して着脱することができない。
【0040】
しかし、実施形態では、
図5のように奥歯用蓋部13bを開いて、奥挿入孔20bから連続する凹部18bを開放する。
そして、奥模型歯50bの歯根部522と歯根部523を、奥挿入孔20bの内部に設けられた歯根挿入孔242と歯根挿入孔243とにそれぞれ挿入する。歯根部521の外周面の一方は、凹部18bに設けられた歯根挿入孔241の一部を構成する内周面と当接する。これにより、
図4に示すような状態となる。
【0041】
図4の状態から奥模型歯50bを閉じると、奥模型歯50bの歯根部52bの、外周面の他方が、奥歯用蓋部13bの内面132bに設けられた歯根挿入孔241の他部を構成する内面と当接する。
奥歯用蓋部13bを閉じた状態で、ネジ挿通孔25bからネジ27bを横向きに挿通して歯肉部12のネジ切孔26bに螺合させる。これにより、奥模型歯50bの歯根部521が奥歯用蓋部13bによって押さえられるので、奥模型歯50bが歯肉部12に固定される。
【0042】
奥模型歯50bを歯肉部12より取り外す場合、上記の取り付け時と逆に、ネジ27bを回転させて、ネジ切孔26b及びネジ挿通孔25bから取り外す。そして、奥歯用蓋部13bを開くと、歯冠部51bよりも広がっている歯根部521を有する奥模型歯50bを歯肉部12から取り外すことができる。
【0043】
(前歯用蓋部13f)
実施形態では、挿入孔20のうちの、歯肉部12における、着脱可能な前模型歯50fが取り付けられている前挿入孔20fの口内側にも、凹部18fが形成され、凹部18fには前歯用蓋部13fが取り付けられている。
図7は、前歯部1fの上面図であり、前歯用蓋部13fが開いた状態を示す。
図8は、前歯部1fの上面図であり、前歯用蓋部13fが開いて前模型歯50fが内側に移動された状態を示す。
図9は、前歯部1fの上面図であり、前歯用蓋部13fが開いて前模型歯50fが取り外された状態を示す。
図10は、前模型歯50fの側面図である。
【0044】
前歯用蓋部13fは、歯肉部12と同じ材料で製造されている。前歯用蓋部13fは、閉じた状態で歯肉部12の一部を構成し、歯肉部12の表面と一体となる表面131fと、その逆側の内面132fとを備える。内面132fには、後述する歯根部52fが挿入される歯根挿入孔242を形成する内周面の一部が形成されている。
【0045】
図3に示す閉じた状態で前歯用蓋部13fの表面131fは、歯肉部12の一部を構成し、実際の口中の歯肉部形状が模擬され、前歯用蓋部13fの上端部は、前挿入孔20f開口の縁の一部を形成する。
【0046】
前歯用蓋部13fの歯肉部12への取付構造は奥歯用蓋部13bの歯肉部12への取付構造と同様であるので説明を省略する。
【0047】
前歯用蓋部13fには、閉じたときに上下となる方向に貫通したネジ挿通孔25fが設けられている。一方、歯肉部12の凹部18fの内面には、上下方向に延びるネジ切孔26fが設けられている。
【0048】
また、閉じた状態で、口外側を向く前歯用蓋部13fの内面には、窪み28inが設けられている。
【0049】
(前模型歯50f)
図10に示すように、前模型歯50fは、歯冠部51fと、歯根部52fとを備える。前模型歯50fの歯根部52fは、奥模型歯50bと異なり、歯冠部51fよりも広がっていない。そして、歯根部521の外周面の口内側と口外側には、それぞれ凸部53inと53ouとが設けられている。
【0050】
(凹部18f)
歯肉部12に設けられている凹部18fの内部には、歯根部52fが挿入される歯根挿入孔24fが設けられている。歯根挿入孔24fの内周面の口内側を向く部分には、窪み28ouが設けられている。
【0051】
また、歯根挿入孔24fの口内側は、歯根部52fの歯冠部51f側の一部を覆っていない。ゆえに、歯根挿入孔24fに歯根部52fが挿入された状態で、前歯用蓋部13fが開いているとき、歯根部52fの歯冠部51f側の一部は露出している。前歯用蓋部13fが閉じると、前歯用蓋部13fの内面が、その一部を覆う。
そして、歯根挿入孔24fの縁部と、前歯用蓋部13fの縁部とで前挿入孔20fの開口が画される。
【0052】
図9のように前歯用蓋部13fが開いた状態で、開放された歯根挿入孔24fに、前模型歯50fを挿入する。
このとき、まず、
図8に示すように前模型歯50fは、歯先が口内側に傾いた状態で挿入し、前模型歯50fを奥まで挿入したら、前模型歯50fを口外側に倒す。
そうすると、歯根部52fの外周面の口外側に設けられた凸部53ouが、歯肉部12の歯根挿入孔24fの内周面の口中側を向く部分に設けられた窪み28ouに嵌り込む。これにより、
図7に示すような状態となる。
【0053】
図7の状態から前模型歯50fを閉じる。そうすると、歯根部52fの外周面の口内側に設けられた凸部53inが、前歯用蓋部13fの口外側を向く内面に設けられた窪み28inに嵌り込む。
次いで、前歯用蓋部13fを閉じた状態でネジ挿通孔25fから、ネジ27fを下から上に挿通して歯肉部12のネジ切孔26fに螺合させる。これにより、前歯用蓋部13fが歯肉部12に固定される。
【0054】
ここで、実施形態の前挿入孔20fの開口は、実際の口内と同様に、歯冠部51fの根元である歯冠部51fと歯根部52fとの境界部の外周と略同じ形状である。
したがって、何ら対策が施されていない場合、歯冠部51fよりも細い歯根部52fを有する前模型歯50fは、前歯用蓋部13fが閉じた状態でも挿入孔20より抜け出すことができる。
【0055】
しかし、実施形態では、歯根部52fに設けられた凸部53ouと歯根挿入孔24fの内周面に設けられた窪み28ouとの嵌合、及び歯根部52fに設けられた凸部53inと前歯用蓋部13fに設けられた窪み28inとの嵌合によって前模型歯50fの、挿入孔20からの抜け出しを防止することができる。
【0056】
取り外す場合、上記の取り付け時と逆に、ネジ27fを回転させて、ネジ切孔26及びネジ挿通孔25から取り外す。そして、前歯用蓋部13fを開く。そうすると、前歯用蓋部13fの口外側を向く内面に設けられた窪み28inが、歯根部52fの外周面の口内側に設けられた凸部53inから離れる。
次いで前模型歯50fを口内側に倒す。そうすると、歯肉部12の歯根挿入孔241の内周面の口中側を向く部分に設けられた窪み28ouから、歯根部521の外周面の口外側に設けられた凸部53ouが離れる。
これにより、前模型歯50fを歯根挿入孔241から取り外すことができる。
【0057】
以上、本実施形態によると、以下の効果を有する。
実施形態の歯科模型1によると、実際の歯と同様の、歯冠部51より広がった歯根部52を有する模型歯50であっても、歯肉部12に設けられた蓋部18を開いて歯根部52の少なくとも一部を露出することにより、模型歯50を歯肉部12に対して着脱可能とすることができる。
このとき、蓋部18が閉じた状態で、挿入孔20の開口は歯冠部51bと歯根部52との境界部の外周と略同形であるので、境界部の周囲に隙間が空くことがない。
さらに、蓋部18を開くことにより、歯根部52の少なくとも一部が露出されるので、歯肉部12に取り付けられている状態での歯根部52を観察することができる。
【0058】
模型歯50が、天然歯と同様の形状であるので、例えば、模型歯50を用いた神経を抜く練習を行うことができる。
【0059】
蓋部18は、閉じた状態で歯肉部12の一部を構成するので、実際の歯茎形状を損なうことがない。
【0060】
歯科模型は分割可能であるので、例えは歯科教育の試験を行う際に、必要な部分だけ提出するようにすることができ、採点側も、観察が容易で且つ保管場所も少なくてよい。
【0061】
(変形形態)
上述の実施形態において、左奥歯部1bに含まれる模型歯50の内の一つの奥模型歯50bの口内側に奥歯用蓋部13bが設けられ、その奥模型歯50bが歯肉部12から着脱可能である。そして、前歯部1fに含まれる模型歯50の内の一つの前模型歯50fの口内側に前歯用蓋部13fが設けられ、その前模型歯50fが歯肉部12から着脱可能である。
しかし、これに限らず、蓋部が設けられて着脱可能な模型歯50はこれらの歯に限らず他の歯であってもよく、また着脱可能な模型歯50の数も2つに限らず、それ以上でもそれ以下であってもよく、さらに全ての模型歯が着脱可能であってもよい。
【0062】
実施形態では、上歯科模型1Aに、蓋部13が設けられている例について説明したが、本発明はこれに限定されず、下歯科模型1Bに蓋部が設けられていてもよい。
【0063】
蓋部13は、歯肉部12に対して軸部17によって揺動可能としたが、これに限らず、軸部17により係合されていなくてもよく、例えば取り外す際に分離される形態であってもよい。
【0064】
実施形態では蓋部13は挿入孔20の口内側に設けられた。これによると、口外側から見たときに蓋部13が見えないので、外観的に優れる。しかし、これに限定されず、蓋部13は挿入孔20の口外側に設けられていてもよい。
【0065】
実施形態で上歯科模型1Aは3つに分割可能であったが、これに限らず。分割の数は3つに限らず、また分割の位置も、実施形態の位置に限定されない。また、下歯科模型1Bが分割可能であってもよい。
【符号の説明】
【0066】
1 歯科模型
1A 上歯科模型
1B 下歯科模型
12 歯肉部
13 蓋部
14 平坦面
15 凹溝
16a 突条部
16b 突条部
17 軸部
18 蓋部
18b 凹部
18f 凹部
19 溝部
20 挿入孔
24 歯根挿入孔
25 ネジ挿通孔
26 ネジ切孔
27 ネジ
28 窪み
50 模型歯
51 歯冠部
52 歯根部
53 凸部
100 咬合器
101 模型支持部
131 表面
132 内面
191 底部
192 突起