(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-22
(45)【発行日】2024-10-30
(54)【発明の名称】視野検査装置、視野検査方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 3/024 20060101AFI20241023BHJP
A61B 3/10 20060101ALI20241023BHJP
【FI】
A61B3/024
A61B3/10 300
(21)【出願番号】P 2024534306
(86)(22)【出願日】2023-12-20
(86)【国際出願番号】 JP2023045711
【審査請求日】2024-06-07
(31)【優先権主張番号】P 2022205169
(32)【優先日】2022-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】506423051
【氏名又は名称】株式会社QDレーザ
(73)【特許権者】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 誠
(72)【発明者】
【氏名】原口 兼明
(72)【発明者】
【氏名】村山 浩平
(72)【発明者】
【氏名】保田 雄亮
(72)【発明者】
【氏名】中澤 徹
(72)【発明者】
【氏名】矢花 武史
【審査官】増渕 俊仁
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/262206(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/213200(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00-3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を生成する光源と、前記レーザ光を走査する走査ミラーと、走査された前記レーザ光を被験者の水晶体の中心近傍で収束させる光学要素とを有し、前記被験者の網膜に前記レーザ光を照射するレーザ照射部と、
前記被験者の網膜に投影する投影画像を生成するとともに、前記レーザ照射部を制御することにより前記被験者の網膜に前記投影画像を投影する投影制御部と、
前記被験者が網膜に投影された前記投影画像の視認状態を、前記被験者の操作に基づく2値の出力値として取得するとともに装置全体の制御を行う制御部と、
を備え、
前記投影画像は、前記網膜上の投影領域全体に投影する背景画像と前記網膜上の横長の略楕円形領域を区分して得られるそれぞれの区分領域に投影する検査用画像とを含み、
前記検査用画像は、前記区分領域の所定領域ごとに異なった輝度で投影され、
前記制御部は、前記出力値に基づいて得られた前記区分領域ごとの前記検査用画像の視認状態に基づいて、判定結果画像を作成する、視野検査装置。
【請求項2】
前記制御部は、特定の前記区分領域において同値の前記出力値が規定回数取得された場合には、以降の投影動作において、当該特定の前記区分領域への前記検査用画像の投影を行わない、請求項1に記載の視野検査装置。
【請求項3】
前記水晶体の中心近傍の収束点から前記網膜へ投影される前記レーザ光の走査角度が、横方向で約42度、縦方向で約30度の範囲内であり、
前記区分領域の前記走査角度が約6度である、請求項1または2に記載の視野検査装置。
【請求項4】
前記区分領域は、矩形形状の28区分で構成され、前記略楕円形領域における中央部に位置する縦横4区分の第1の領域と、前記第1の領域の左右に隣接し、かつ前記略楕円形領域における縦方向の中央に位置する縦横2区分の第2の領域と、前記第1の領域の上下に隣接し、かつ前記略楕円形領域における横方向の中央に位置する縦1区分、横2区分の第3の領域と、からなる、請求項1または2に記載の視野検査装置。
【請求項5】
前記各区分領域に投影される検査用画像は、前記第1の領域の中央部の領域、前記第2の領域、前記第3の領域の下側の領域、前記第3の領域の上側の領域、の順に輝度が高くなる、請求項4に記載の視野検査装置。
【請求項6】
前記制御部は、取得された前記出力値のタイミングに基づいて前記被験者の反応時間を取得する、請求項1または2に記載の視野検査装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記区分領域ごとの判定結果を2種の態様で示した画像を作成して出力する、請求項1または2に記載の視野検査装置。
【請求項8】
レーザ光を生成する光源と、前記レーザ光を走査する走査ミラーと、走査された前記レーザ光を被験者の水晶体の中心近傍で収束させる光学要素とを有し、前記被験者の網膜に投影する投影画像を生成するとともに、レーザ照射部を制御することにより前記被験者の網膜に前記投影画像を投影する投影制御ステップと、
前記被験者が網膜に投影された前記投影画像の視認状態を、前記被験者の操作に基づく2値の出力値として取得する取得ステップと、
前記取得ステップで取得される前記出力値に基づいて判定結果画像を作成する画像作成ステップと、
を備え、
前記投影画像は、前記網膜上の投影領域全体に投影する背景画像と前記網膜上の横長の略楕円形領域を区分して得られるそれぞれの区分領域に投影する検査用画像とを含み、
前記検査用画像は、前記区分領域の所定領域ごとに輝度が異なり、
前記画像作成ステップでは、前記取得ステップで取得される前記出力値に基づいて得られた前記区分領域ごとの前記検査用画像の視認状態に基づいて、前記判定結果画像が作成される、視野検査方法。
【請求項9】
レーザ光を生成する光源と、前記レーザ光を走査する走査ミラーと、走査された前記レーザ光を被験者の水晶体の中心近傍で収束させる光学要素とを有し、前記被験者の網膜に投影する投影画像を生成するとともに、レーザ照射部を制御することにより前記被験者の網膜に前記投影画像を投影する投影制御ステップと、
前記被験者が網膜に投影された前記投影画像の視認状態を、前記被験者の操作に基づく2値の出力値として取得する取得ステップと、
前記取得ステップで取得される前記出力値に基づいて判定結果画像を作成する画像作成ステップと、
コンピュータに実行させるプログラムであって、
前記投影画像は、前記網膜上の投影領域全体に投影する背景画像と前記網膜上の横長の略楕円形領域を区分して得られるそれぞれの区分領域に投影する検査用画像とを含み、
前記検査用画像は、前記区分領域の所定領域ごとに輝度が異なり、
前記画像作成ステップでは、前記取得ステップで取得される前記出力値に基づいて得られた前記区分領域ごとの前記検査用画像の視認状態に基づいて、前記判定結果画像が作成される、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、視野検査装置、視野検査方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、被験者の視野を覆う筐体の中に注視点を提示し、被験者が視線を注視点に向けた状態で、輝点(視標)を被験者の視野内にランダムに表示し、それを被験者が視認できたかどうかを検査する視野検査装置が知られている。
【0003】
また、近年では、被験者の網膜にレーザ光を照射して検査用画像を網膜に投影させる網膜走査技術を用いた視野検査装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
視野検査における検査中は、視線を注視点に向け続ける必要がある。このため、検査時間が長くなると、被験者の負担が大きくなる。したがって、被験者の負担を軽減する観点からは、検査時間を短縮することが望ましい。
【0006】
そこで、1つの側面では、本発明は、被験者の負担を軽減できる視野検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
1つの態様では、
レーザ光を生成する光源と、前記レーザ光を走査する走査ミラーと、走査された前記レーザ光を被験者の水晶体の中心近傍で収束させる光学要素とを有し、前記被験者の網膜に前記レーザ光を照射するレーザ照射部と、
前記被験者の網膜に投影する投影画像を生成するとともに、前記レーザ照射部を制御することにより前記被験者の網膜に前記投影画像を投影する投影制御部と、
前記被験者が網膜に投影された前記投影画像の視認状態を、前記被験者の操作に基づく2値の出力値として取得するとともに装置全体の制御を行う制御部と、
を備え、
前記投影画像は、前記網膜上の投影領域全体に投影する背景画像と前記網膜上の横長の略楕円形領域を区分して得られるそれぞれの区分領域に投影する検査用画像とを含み、
前記検査用画像は、前記区分領域の所定領域ごとに異なった輝度で投影され、
前記制御部は、前記出力値に基づいて得られた前記区分領域ごとの前記検査用画像の視認状態に基づいて、判定結果画像を作成する、視野検査装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
1つの側面では、本発明によれば、被験者の負担を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施例の視野検査装置の構成を示す図である。
【
図1A】本実施例の視野検査装置が適用される検査器の外観を例示する図である。
【
図1B】本実施例の視野検査装置が適用される検査器の外観を例示する図である。
【
図3】検査用画像を含む投影画像と、網膜上の投影状態との関係を示す図である。
【
図3A】検査用画像を含む投影画像と、網膜上の投影状態との関係を示す図である。
【
図4】検査用画像が配置される領域を示す図である。
【
図4A】検査用画像が配置される領域を構成する第1の領域を示す図である。
【
図4B】検査用画像が配置される領域を構成する第2の領域を示す図である。
【
図4C】検査用画像が配置される領域を構成する第3の領域を示す図である。
【
図4D】検査用画像が網膜に投影される態様を示す図である。
【
図5】視野検査装置の動作例を示すフローチャートである。
【
図6】区分領域ごとの判定に必要な測定回数を示す図である。
【
図7】制御部により出力される判定結果を例示する図である。
【
図10】被験者の年齢と反応時間T(k)の平均との関係を例示する図である。
【
図10A】被験者の年齢と反応時間T(k)の標準偏差との関係を例示する図である。
【
図11】区分領域ごとの判定のためのアルゴリズムを変更した例を示す図である。
【
図12】区分領域に重み付けをした例を示す図である。
【
図12A】区分領域に重み付けをした例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本実施例の視野検査装置の構成を示す図である。
【0011】
図1に示すように、本実施例の視野検査装置100は、レーザ光を照射するレーザ照射部110と、レーザ照射部110を制御することにより、被験者の網膜にレーザ光によって投影する投影画像を生成するとともに、網膜上の横長の略楕円形領域を区分して得られるそれぞれの区分領域に検査用画像を投影する投影制御部120と、網膜に投影された区分領域ごとの検査用画像の視認状態を、被験者の操作に基づく2値の出力値として取得するとともに、検査測定、結果判定及び判定結果の出力などを行う制御部130と、視野検査装置100による検査に必要なデータおよび検査結果を記憶する記憶部140と、を備える。
【0012】
図1A及び
図1Bは、本実施例の視野検査装置が適用される検査器の外観を例示する図である。
図1Aの例では、レーザ照射部110は、検査器の内部に収容される。なお、
図1Aでは、左右両眼に対応する検査器を示している。一方で、
図1Bに示したように、左右の片眼ずつの検査に対応した検査器を使用することもできる。このように検査器の構成は任意であり、例えば、被験者が頭部に装着可能なゴーグルないし眼鏡のような形状の装置内にレーザ照射部110を内蔵した検査器を使用することもできる。
【0013】
図1Aに示す検査器は、フレーム102、調整部材103、104、基部105、支持部106a、106b、画像投影部107a、107b、台座108、接眼部109a、109bを有する。また、基部105の上に台座108が設けられており、フレーム102は、両端が基部105の上面に固定されている。
【0014】
画像投影部107a、107bは、支持部106a、106bによって支持されている。画像投影部107a、107bは、レーザ照射部110によって、視野、視力、視認等の視覚を検査する被験者の左眼と右眼に対し、レーザ光を照射し、被験者の網膜に検査用画像を含む投影画像を投影させ、接眼部109a、109bは、被験者が投影画像を視認するための接眼部である。
【0015】
調整部材103は、画像投影部107a、107bが支持された支持部106a、106bを、
図1Aに示すY軸方向に移動させる。調整部材104は、画像投影部107a、107bを支持部106a、106bに沿って
図1Aに示すZ軸方向に移動させる。
【0016】
視野検査は、台座108とフレーム102のそれぞれに被験者の顎と額とを接触させ、調整部材103、104によって、被験者が画像投影部107a、107bから投影された投影画像を、接眼部109a、109bを介して両眼で覗くような状態となるように、画像投影部107a、107bを眼球に近づけた状態で行われる。
図1Aに示す検査器は、両眼を同時に検査できる形態であるが、
図1Bに示す検査器は、片眼ごとに検査を行う形態であり、画像投影部107c、接眼部109c、グリップ部G、トリガスイッチSWなどを有する。
【0017】
画像投影部107cは
図1Aでの画像投影部107a、107bと、接眼部109cは接眼部109a、109bと同様の機能を有する。グリップ部Gは、被験者が把持する部分で、被験者はここを把持して接眼部109cを視認しやすい位置に検査器を移動させる。トリガスイッチSWは、検査用画像などを視認したときに操作するものであり、被験者がこれを操作することで、操作入力として制御部130に入力される。
【0018】
図2は、レーザ照射部の構成を示す図である。レーザ照射部110は、マクスウェル視を利用して、投影制御部120の制御により、被験者の眼球20の網膜22にレーザ光を照射する。
【0019】
図2に示すように、レーザ照射部110は、光源111、調整部112、光学系113を有する。光学系113は、走査部114(走査ミラー)、平面ミラー115、レンズ116、117を有する。走査部114は、例えば、2軸のMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ミラーである。
【0020】
レーザ照射部110において、光源111が出射したレーザ光Lは、調整部112において開口数(NA)及び/又はビーム径が調整される。レーザ光Lは、赤色レーザ光、緑色レーザ光、及び青色レーザ光などの可視レーザ光である。
【0021】
レーザ光Lは、平面ミラー115で反射し、走査部114より2次元に走査される。走査されたレーザ光Lは、レンズ116及びレンズ117を介し、被験者の眼球20に照射される。レーザ光Lは、水晶体21近傍で収束し、硝子体23を通過し網膜22に照射される。これにより、網膜22に画像が投影される。走査部114は、例えば、横方向の走査線中1280ピクセル、縦方向720本の解像度を持つ画像が1秒間に60フレーム投影できるように28kHz等の比較的高い周波数で振動する。
【0022】
なお、接眼部109a、109bに対する眼球20の位置は、レーザ光Lが眼球20の瞳孔の位置に投影できるように、例えば、調整部材103、104により調整される。例えば、レーザ光Lが、その光軸方向について眼球20の水晶体21の中心付近で焦点を結ぶような位置関係を得ることにより、視野全体で画像を結像させることが可能となる。
【0023】
このように、
図1Aの形態では、台座108とフレーム102のそれぞれに被験者の顎と額とを接触させたうえで、接眼部109a、109bを眼球20の瞳孔の位置にあわせるためには、調整部材103、104を調整する必要がある。
しかし、
図1Bの形態では、被験者の眼球と接眼部109cとの位置関係は、
図1Aに含まれる機構を用いることなく、被検者が自ら本検査器を視認しやすい位置に移動させることで、レーザ光Lが眼球20の瞳孔に投射されるように位置決めをすることができる。
このように、
図1Bの形態であれば、
図1Aの機構を用いることなく、机上であっても、把持した状態であっても、被験者は容易に眼球20の位置合わせをすることができるので、視野検査を容易に開始することができ、かつ容易に実行することができるようになる。
【0024】
図3および
図3Aは、検査用画像を含む投影画像と、網膜上の投影状態との関係を示す図である。
図3には、検査用画像50を含む投影画像10が示されている。また、
図3Aには瞳孔25を介して網膜22上に投影される投影画像10が示されている。
【0025】
本実施例では、投影制御部120の制御により、網膜22上の任意の領域(区分領域)に検査用画像50を投影するために、その領域に対応した投影画像10上の領域に検査用画像50が表示される複数の画像データが使用される。これらの画像データはあらかじめ記憶部140に格納される。記憶部140に格納された複数の画像データから、投影制御部120が画像データを1つずつ選択し、レーザ照射部110によって網膜22に投影する動作を繰り返すことにより、視野検査が行われる。
【0026】
図3、
図3Aでは、説明のために縦横の分解能を粗く記載しているが、実際には、横1278ピクセル、縦720ピクセル程度が一例であり、検査用画像50は通常複数ピクセルで描画される。
【0027】
図4は、検査用画像が配置される領域を示す図である。また、
図4A~
図4Cは、検査用画像が配置される領域を構成する第1~第3の領域を示す図である。なお、
図4~
図4Cの左右方向が、網膜22(視野)の横方向に対応している。
【0028】
図4において、検査用画像50が配置される領域5は、1~4のいずれかの番号を付した矩形の区分領域の集合として構成されている。
図4に示すように、領域5は、網膜22上の横長の略楕円形領域に対応し、28区分の区分領域で構成される。領域5は、それぞれ複数の区分領域を有する第1の領域5A、第2の領域5Bおよび第3の領域5Cにより構成され、領域6A(
図4A)、領域6B(
図4B)が最小区分の例である。
【0029】
領域5の範囲は、被験者が実際に目視する対象物の視野角度で、
図2のθの角度に相当し、横方向で約42度、縦方向で約30度の範囲に相当する。例えば、横方向で42度±10%以内、縦方向で30度±10%以内、あるいは横方向で42度±20%以内、縦方向で30度±20%以内とされる。また、領域5に含まれる各区分領域の縦幅および横幅に相当する上記の走査角度は、縦方向、横方向とも約6度である。例えば、縦方向、横方向とも6度±10%以内、あるいは縦方向、横方向とも6度±20%以内とされる。
【0030】
実際に網膜に投影される場合は、水晶体の屈折率によって、1/屈折率の角度となる。
【0031】
図4Aに示すように、第1の領域5Aは、上記の略楕円形領域における中央に位置する縦横4区分(全部で16区分)に対応する。
図4Bに示すように、第2の領域5Bは、第1の領域5Aの左右に隣接し、かつ上記の略楕円形領域における縦方向の中央に位置する縦横2区分(全部で8区分)に対応する。
図4Cに示すように、第3の領域5Cは、第1の領域5Aの上下に隣接し、かつ上記の略楕円形領域における横方向の中央に位置する縦1区分、横2区分(全部で4区分)に対応する。
【0032】
本実施例では、領域5を構成する28個の区分領域の中から1つずつ区分領域(領域6A、領域6Bなど)が選択され、選択された区分領域に検査用画像50が投影される。
【0033】
図4~
図4Cの区分領域に付された1~4の番号は、検査用画像50が投影された状態における輝度レベルを示している。具体的には、番号が小さいほど、検査用画像50の輝度が小さく、検査用画像50が投影された状態(第1の状態)と検査用画像50が投影されない状態(第2の状態)との間でのコントラストが低いことを示している。このような輝度の相違は、視野内における視覚の感度に対応しており、感度が高い視野の中央部では、検査用画像50の輝度を下げ、感度がより低い視野の周辺部では検査用画像50の輝度を上げている。第1の状態および第2の状態における輝度は、検査の目的や被験者の状態に応じて任意に設定できる。例えば、
図4において、所定領域としての「1」、「2」、「3」および「4」を付された区分領域に対して、それぞれ、第1の状態において27dB、26dB、25dBおよび23dBの輝度を対応付けることができる。dB値は最高輝度に対する減衰率を示したものなので、値が大きいほど輝度が低い(暗い)ことを示している。すなわち、輝度レベル「1」の領域が一番輝度が低く、「2」「3」「4」の順で輝度が高く(明るく)投影される。
【0034】
このように、本実施例では、視野内の中心部と周辺部とで各区分領域5に対応づける検査用画像50の輝度を変化させている。これにより、視野全体にわたり有効な検査結果を得ることができる。このため、検査時間を短縮しつつ、検査の精度を高めることができる。
【0035】
図4A、
図4B及び
図4Cは、投影する領域についての概念について説明したものである。次に、実際に被験者の網膜へ投影される画像について、
図4Dを用いて説明する。
【0036】
領域6Aは
図4Aに示した領域6Aと同じ位置に表記したもので、実際にこの矩形は投影されないので点線で示している。領域6Bも同様である。
【0037】
検査用画像50Aが、領域6Aの位置に輝点として投影され、検査用画像50Bが領域6Bの位置に同様に輝点として投影される。ここで、
図4Aでは領域6Aの位置には輝度レベル「1」の値があることから、検査用画像50Aは、最も暗い輝度(27dB)で投影され、同様に検査用画像50Bは、
図4Bの領域6Bは輝度レベル「3」なので、3番目の25dBの輝度で投影される。
【0038】
背景画像7は、被験者の網膜上での検査領域全体に投影される画像であって、輝度レベル「1」が示す輝度27dBよりも暗い輝度で投影される。
【0039】
固視指標8は、被験者に視線を固定させるために、視野の中心付近に投影されるもので、視野検査においては、検査中、被験者はこの固視指標8を注視したうえで、視野内に投影された検査用画像が視認できたかどうかを検査する。固視指標8の輝度は、被験者の視認性を高めるためにある程度の高めの輝度とするのが好ましい。
【0040】
図4Dでは、説明のために検査用画像50A,50Bを同時に表記しているが、実際の検査では投影される検査用画像は通常1つのみである。
【0041】
次に、視野検査装置100の動作について説明する。
【0042】
図5は、視野検査装置の動作例を示すフローチャートである。
図5に示す処理は、制御部130により実行される。
【0043】
図5のステップS102では、制御部130は、領域5に含まれる28個すべての区分領域についてのカウント数C(i)、カウント数N(i)、カウント数P(i)および終了フラグF(i)の値を0(ゼロ)に初期化する。ここで、「i」は、それぞれの区分領域を示す数字(1~28)である。また、カウント数C(i)は、当該区分領域において投影(検査)が行われた回数、カウント数N(i)は、当該区分領域において検査用画像50が視認されなかった回数、カウント数P(i)は、当該区分領域において検査用画像50が視認された回数である。また、終了フラグF(i)は、当該区分領域において検査用画像50の投影を終了(キャンセル)するか否かの状態を示すフラグである。終了フラグF(i)=0は、検査用画像50の投影、すなわち測定を継続する(終了しない)状態を示し、終了フラグF(i)=1は、検査用画像50の投影、すなわち測定を終了(キャンセル)する状態を示す。
【0044】
ステップS103では、リピート数Mの値を0に設定する。本実施例では、28個の区分領域を2-3巡投影(検査)することとされ、その順序は、まず28個の各区分領域を1回づつ投影し、それを最大3巡繰り返すようにしている。リピート数Mの値は、1巡目の検査が終了するまでの間は「0」に、1巡目の検査が終了した後は「1」に、2巡目の検査が終了した後は「2」に、それぞれ設定される。
【0045】
ステップS104では、制御部130は、終了フラグF(i)=0であり、かつカウント数C(i)=リピート数M という条件を満たす区分領域の中からランダムに区分領域(i=k)を選択する。「k」は、1~28のいずれかである。
【0046】
ステップS106では、制御部130は、ステップS104で選択された区分領域(i=k)に検査用画像50を投影するための画像データを画像記憶部140から取得する。
【0047】
ステップS108では、制御部130は、ステップS106で取得された画像データに基づく画像を所定のタイミングでレーザ照射部110により投影する動作を開始する。また、制御部130は、カウント数C(k)の値に1を加算する。なお、画像の投影時間は、例えば、0.2秒である。また、画像の投影間隔(ステップS108の処理が実行される間隔)は、例えば、1秒前後でランダムな間隔とする。これは、一定の間隔で投影すると、被検者は視認できたかどうかにかかわらずそのタイミングで操作することがあり、正確な検査ができなくなることを回避するためである。ここで、ランダムな間隔での1秒前後での短いほうの間隔は、被験者の反応が間に合わなくならない程度である必要があり、長いほうは、全体の検査時間に影響を与えない範囲での間隔とすることが好ましい。
【0048】
ステップS110では、制御部130は、被験者からの操作が行われたか否か判断し、判断が肯定されれば処理をステップS110Aへ進め、判断が否定されれば処理をステップS112へ進める。なお、ステップS110の判断が肯定されるのは、被験者が規定の時間内(後述するステップS112)に検査用画像50を視認し、被験者からの操作が行われた場合である。制御部130は、被験者からの操作があった場合と、未操作の場合とにそれぞれ対応する2値の出力値を出力する。操作がされた場合に対応する出力値が出力されている場合に、ステップS110の判断が肯定される。
【0049】
ステップS110Aでは、制御部130は、ステップS108において検査用画像50の投影が開始されてから現在までの経過時間を、被験者の反応時間T(k)として取得し、記憶部140に保存する。また、制御部130は、被験者の操作に基づく出力値を未操作の値にリセットする。
【0050】
ステップS114では、制御部130は、カウント数P(k)に1を加算する。
【0051】
ステップS116では、制御部130は、カウント数P(k)=2か否か判断し、判断が肯定されれば処理をステップS118へ進め、判断が否定されれば処理をステップS150へ進める。
【0052】
ステップS118では、制御部130は、終了フラグF(k)の値を1に設定する。
【0053】
ステップS120では、制御部130は、区分領域(i=k)の判定結果R(k)の値に1を格納して記憶部140に記憶し、処理をステップS140へ進める。
【0054】
一方、ステップS112では、制御部130は、ステップS108において検査用画像50の投影が開始されてから規定の時間が経過したか否か判断し、判断が肯定されれば処理をステップS132へ進め、判断が否定されれば処理をステップS110へ進める。なお、ステップS112の判断が肯定されるのは、被験者が規定の時間内に検査用画像50を視認できず、被験者からの操作が行われなかった場合である。
【0055】
ステップS132では、制御部130は、カウント数N(k)に1を加算する。
【0056】
ステップS134では、制御部130は、カウント数N(k)=2か否か判断し、判断が肯定されれば処理をステップS136へ進め、判断が否定されれば処理をステップS150へ進める。
【0057】
ステップS136では、制御部130は、終了フラグF(k)の値を1に設定する。
【0058】
ステップS138では、制御部130は、区分領域(i=k)の判定結果R(k)の値に0を格納して記憶部140に記憶し、処理をステップS140へ進める。
【0059】
ステップS140では、制御部130は、すべての区分領域の終了フラグF(i)の値が1となっているか否か判断し、判断が肯定されれば処理をステップS142へ進め、判断が否定されれば処理をステップS150へ進める。
【0060】
ステップS142では、制御部130は、ステップS110A、ステップS120またはステップS138において記憶部140に記憶されているすべての区分領域の判定結果R(i)と、被験者の反応時間T(i)とを出力し、処理を終了する。
【0061】
ステップS150では、制御部130は、28個すべての区分領域のカウント数C(i)の値がリピート数M+1の値 に一致するか否か判断し、判断が肯定されれば処理をステップS152へ進め、判断が否定されれば処理をステップS104へ進める。
【0062】
ステップS152では、制御部130は、リピート数Mの値に1を加算し、ステップS104へ処理を進める。
【0063】
このように、本実施例では、規定の時間内に検査用画像50を視認できたかどうかを被験者の操作の有無(取得部13からの2値の出力値)に応じて判断している。そして、規定の時間内に検査用画像50を視認できた場合に、カウント数P(k)をカウントアップし、規定の時間内に検査用画像50を視認できなかった場合に、カウント数N(k)をカウントアップしている。
【0064】
また、カウント数N(k)が2に到達すれば、制御部130は、記憶部140の判定結果R(k)の値に0を格納し、当該区分領域(i=k)についての測定を終了している。すなわち、この場合、当該区分領域(i=k)について被験者が検査用画像50を視認できなかったものと判定され、当該区分領域(i=k)に対する以降の測定を取りやめている。したがって、本実施例では、測定を短時間で終了することができ、被験者の負担が軽減される。
【0065】
また、カウント数P(k)が2に到達すれば、制御部130は、記憶部140の判定結果R(k)の値に1を格納し、当該区分領域(i=k)についての測定を終了している。すなわち、この場合、当該区分領域(i=k)について被験者が検査用画像50を視認できたものと判定され、当該区分領域(i=k)に対する以降の測定を取りやめている。したがって、本実施例では、測定を短時間で終了することができ、被験者の負担が軽減される。
【0066】
図6は、区分領域ごとの判定に必要な測定回数を示す図である。
図6において、「○」および「×」は、1巡目~3巡目の測定における測定結果を示しており、「○」は、被験者が規定の時間内に検査用画像50を視認できた場合(ステップS110の判断が肯定された場合)を示し、「×」は、被験者が規定の時間内に検査用画像50を視認できなかった場合(ステップS112の判断が肯定された場合)を示している。
【0067】
図6に示すように、本実施例では、区分領域ごとに最大3回の測定(3巡目までの測定)が必要となるが、1巡目および2巡目の測定結果が同じであれば、3巡目の測定がキャンセルされる。したがって、測定を短時間で終了することができ、被験者の負担が軽減される。
【0068】
本実施例では、被験者が2回、検査用画像50を視認できた場合、および被験者が2回、検査用画像50を視認できなかった場合に、判定が確定する。しかし、判定を確定させるための測定回数は任意である。例えば、被験者が3回、検査用画像50を視認できた場合に判定結果R(k)の値を1とし、被験者が2回、検査用画像50を視認できなかった場合に判定結果R(k)の値を0としてもよい。この場合、最大で4巡目までの測定が必要となる。しかし、被験者が1巡目~3巡目で、続けて検査用画像50を視認できた場合には、3巡目までで測定は終了する。また、被験者が1巡目~2巡目で、続けて検査用画像50を視認できなかった場合には、2巡目までで測定は終了する。
【0069】
図7は、制御部130により出力される判定結果を例示する図である。
【0070】
図7の例では、28の区分領域5のうち、判定結果R(k)=0となった区分領域に対して1点を、判定結果R(k)=1となった区分領域に対して0点を与え、合計点を視野検査のスコアとしている。この例では、すべての区分領域で検査用画像50が視認された場合にスコアが0点となり、すべての区分領域で検査用画像50が視認できない場合にスコアが28点となる。なお、スコアの設定方法は任意であり、例えば、すべての区分領域で検査用画像50が視認できない場合のスコアが0点となり、すべての区分領域で検査用画像50が視認された場合のスコアが100点となるように、スコアの数値を標準化してもよい。
【0071】
制御部130は、この判定結果を、各区分領域の判定結果がわかるように、
図7に示すような「0」、「1」の数字や、2種の色で異ならせるなどの態様で判定結果画像を作成して出力する。
【0072】
図8は、年齢とスコアの関係を例示する図である。
図8の例では、すべての区分領域で検査用画像50が視認できない場合のスコアが0点となり、すべての区分領域で検査用画像50が視認された場合のスコアが100点となるように、スコアの数値が標準化されている。
【0073】
図8に示すように、年齢とともにスコアの平均値61が上昇するとともに、スコアのばらつきが大きくなっている。ここで、スコアのばらつきの判定で平均値を用いているが、スコアの近似曲線を用いることもでき、さまざまな統計手法を用いることで年齢に対するスコアのばらつきを分析することができる。
【0074】
【0075】
図9の上から順に、右眼、左眼、右眼、右眼における正常型の判定結果が示されている。これらの場合、右眼では右側に盲点が、左眼では左側に盲点が出現するが、他の領域では、検査用画像50が視認されている。これらの例では、被験者の視野は正常であり、また、測定中に、被験者は正しく注視点を注視していると考えられる。ここで、盲点は
図9の領域20a及び20bで観測される。
【0076】
【0077】
網膜症型の場合は、全体に見えているとも言えず、見えていないとも言えない状態を示す。まだら模様、周辺が見えない、中心が見えないなどのパターンがある。まだら模様の場合は網膜色素変性が、周辺が見えない場合は糖尿性網膜症が、中心が見えない場合は加齢性黄斑変性などが疑われる。網膜症型では、領域ごとのばらつきが大きく、標準偏差を疾病の指標とすることができる。
【0078】
【0079】
図9Bの上から順に、右眼、右眼、左眼、右眼における緑内障型の判定結果が示されている。緑内障型では、盲点から派生した見えない領域が、眼底の血管に沿って広がり、上下非対称となるのが特徴である(右眼では領域21aおよび領域21b)。上半分の区分領域のスコアと、下半分の区分領域のスコアの差、もしくは上下対称な領域ごとの差分の大きさを数値化し、緑内障の疾病リスクの指標とすることができる。
【0080】
【0081】
脳障害型はレアケースであり、明確な診断はできない。左右眼の差が顕著に現れる、あるいは左右眼で対称のパターンになるなどの特徴がある。リスクの指標として、左半分の区分領域のスコアと、右半分の区分領域のスコアの差、もしくは左右対称な領域ごとの差分の大きさを数値化することが考えられる。
【0082】
【0083】
白内障では、加齢とともに、主には水晶体が濁ってくることにより発症する。このため、見えない領域は視野全体に及ぶ。したがって、視野全体におけるスコアの合計点を、白内障もしくはアイフレイルのリスク指標とすることができる。ただし、
図9Dの一番下に示すように全く見えないような場合、被験者の認知機能に起因する可能性も考えられるため、認知機能の状態を併せて考慮する必要がある。
【0084】
図10は、被験者の年齢と反応時間T(k)の平均との関係を例示する図である。また、
図10Aは、被験者の年齢と反応時間T(k)の標準偏差との関係を例示する図である。
【0085】
図10に示すように、被験者の年齢が上昇するに従い、反応時間T(k)の平均が徐々に長くなることが認められる。また、
図10Aに示すように、被験者の年齢が上昇すると、とくに55~60歳のあたりから、反応時間T(k)のばらつき(標準偏差)が拡大することが認められる。
【0086】
また、本実施例の視野検査装置100では、カウント数N(k)が規定回数(例えば、2)に到達すれば、制御部130は、記憶部140の判定結果R(k)の値に0を格納し、当該区分領域(i=k)についての測定を終了している。また、カウント数P(k)が規定回数(例えば、2)に到達すれば、制御部130は、記憶部140の判定結果R(k)の値に1を格納し、当該区分領域(i=k)についての測定を終了している。このため、視野検査における測定回数が抑制され、視野測定に要する時間を短縮できる。したがって、視野検査における被験者の負担を軽減できる。
【0087】
視野検査装置100で行われた視野検査の判定結果を参照することで、被験者の視認状態に関する情報を得ることができ、その内容に応じて、眼科医の受診を勧奨するなどの対応もできるようになる。
【0088】
次に、他の実施例について説明する。
【0089】
図11は、区分領域ごとの判定のためのアルゴリズムを変更した例を示す図である。
図6と同様、
図11において、「○」および「×」は、1巡目および2巡目の測定における測定結果を示しており、「○」は、被験者が規定の時間内に検査用画像50を視認できた場合を示し、「×」は、被験者が規定の時間内に検査用画像50を視認できなかった場合を示している。
【0090】
図11の例では、被験者が1回、検査用画像50を視認できた時点で判定結果R(k)の値を1とし、判定が確定する。この場合、2巡目の測定は不要となり、測定を2巡目まで必ず行う場合に比べて、測定を短時間で終了することが可能となる。その結果、被験者の負担がより軽減される。他方、1巡目の結果が良好でない場合(すなわち「×」である場合)、2巡目の測定が「○」であれば、判定結果R(k)の値を1とし、判定が確定する。このようにして、最大で2巡目のうちの、少なくとも一方で測定が「○」であれば、判定結果R(k)の値を1とし、判定が確定する。ここで、被験者によっては、1巡目では、不慣れにより、見えているのに反応が遅れる等に起因して、1巡目の結果が「×」となる場合もある。かかる被験者は、2巡目であれば、測定に慣れて、見えているのに反応が遅れることも少なくなる。本実施例によれば、かかる被験者にも対応できる態様で、被験者の負担を低減しつつ、測定結果の信頼性を高めることができる。
【0091】
図12および
図12Aは、区分領域に重み付けをした例を示す図である。区分領域に対する重み付けは、区分領域ごとの判定のアルゴリズムに依らず適用できる。この重み付けは、視野検査のスコアに反映される。
【0092】
図12において、各区分領域に付した0~3の数字は、右眼における区分領域ごとのスコアへの重み付けの係数A(i=k)を示している。係数A(i=k)×区分領域ごとのスコアをすべての区分領域(i=k)について積算した値を視野検査のトータルスコアとすることができる。なお、
図7の例と同様、判定結果R(k)=0となった区分領域に対して1点を、判定結果R(k)=1となった区分領域に対して0点を与えている。このように算出されたトータルスコアにより全体として反応の有無、程度を判断することができる。
図7の例で示したように、例えば、すべての区分領域で検査用画像50が視認できない場合のトータルスコアが0点となり、すべての区分領域で検査用画像50が視認された場合のトータルスコアが100点となるように、スコアの数値を標準化してもよい。なお、
図12および
図12Aにおいて、盲点に対応する区分領域の重み付けは「0」としているが、この領域は被験者が「固視」できているか否かの判定に用いることができる。例えば、この領域の光に反応する場合には、検査中に視点が移動した可能性があると判定することができる。
【0093】
さらに、光に反応はできたけれどもその反応の区分領域が偏っている場合、好発部位のスコアの値を用いることで、特定の疾患のリスクを判断することができる。
【0094】
例えば、緑内障の好発部位に相当する
図12Aの領域51および領域52における区分領域に対し、重み付けを大きくすることができる。例えば、この場合の領域51および領域52における区分領域ごとのスコアの積算値を、緑内障のリスクの評価値とすることができる。評価値が高いほど、緑内障のリスクが高いことを示す。評価値を所定の閾値と対比することにより、緑内障の可能性を段階的に(例えば、5段階で)示すことができる。また、当該評価値を上記のトータルスコアと併せ用いることにより、緑内障のリスクに対する気づきを与えることができる。
【0095】
領域5の中心部にある
図12Aの領域53は、黄斑疾患の好発部位に相当する。この場合、領域53における区分領域に対し、重み付けを大きくすることにより、領域53における区分領域ごとのスコアの積算値などに基づいて、黄斑疾患のリスクを評価することが可能となる。
【0096】
図12Aでは、緑内障および黄斑疾患のリスク評価に対応する例を示したが、評価の目的に応じて区分領域への重み付けを変更することができる。例えば、任意の評価項目に合わせて、区分領域への重み付けを設定してもよい。区分領域への重み付けを複数の評価項目のそれぞれに対応して設定することにより、1回の測定に基づいて複数の評価項目に対する評価結果を得ることができる。
【0097】
以上、各実施例について詳述したが、特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。また、前述した実施例の構成要素を全部又は複数を組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0098】
100 視野検査装置
110 レーザ照射部
111 光源
113 光学系
114 走査部
115 平面ミラー
116、117 レンズ
120 投影制御部
130 制御部
140 記憶部
【要約】
レーザ照射部を制御することにより、被験者の網膜にレーザ光によって投影する投影画像を生成するとともに、網膜上の横長の略楕円形領域を区分して得られるそれぞれの区分領域に検査用画像を投影する投影制御部と、被験者が網膜に投影された投影画像の視認状態を、被験者の操作に基づく2値の出力値として取得するとともに装置全体の制御を行う制御部と、を備え、投影画像は、網膜上の投影領域全体に投影する背景画像と網膜上の横長の略楕円形領域を区分して得られるそれぞれの区分領域に投影する検査用画像とを含み、検査用画像は、区分領域の所定領域ごとに異なった輝度で投影され、制御部は、出力値に基づいて得られた区分領域ごとの検査用画像の視認状態に基づいて、判定結果画像を作成する。