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特許7575755表面波検出装置、液面位置検出装置及び液種特定装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-22
(45)【発行日】2024-10-30
(54)【発明の名称】表面波検出装置、液面位置検出装置及び液種特定装置
(51)【国際特許分類】
   G01F 23/2962 20220101AFI20241023BHJP
   G01N 29/024 20060101ALI20241023BHJP
   G01N 29/24 20060101ALI20241023BHJP
【FI】
G01F23/2962
G01N29/024
G01N29/24
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020202956
(22)【出願日】2020-12-07
(65)【公開番号】P2022090517
(43)【公開日】2022-06-17
【審査請求日】2023-10-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】304021288
【氏名又は名称】国立大学法人長岡技術科学大学
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100195648
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 悠太
(74)【代理人】
【識別番号】100175019
【弁理士】
【氏名又は名称】白井 健朗
(72)【発明者】
【氏名】井原 郁夫
(72)【発明者】
【氏名】和田 眞治
(72)【発明者】
【氏名】粉川 えみい
(72)【発明者】
【氏名】坂井 亮
(72)【発明者】
【氏名】笛吹 健志
【審査官】松山 紗希
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-034467(JP,A)
【文献】特開平10-185654(JP,A)
【文献】特開平4-204217(JP,A)
【文献】実開昭60-152935(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 23/00、23/14-23/2965、23/80
G01N 29/00-29/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面波が伝搬する伝搬面を有する伝搬体と、
前記表面波を発生させるとともに反射した前記表面波を検出する圧電素子と、を備え、
前記伝搬体は、液体に一端から浸る柱状部と、前記柱状部の他端と接続されて前記柱状部よりも薄い板状の薄板部と、を有し、
前記薄板部の外面と前記柱状部の主面は面一で、前記伝搬面を構成し、
前記圧電素子は、前記薄板部と対向して設けられ、前記薄板部に対してその厚み方向の振動を与えることで前記表面波を発生させる、
表面波検出装置。
【請求項2】
前記圧電素子は、前記薄板部と接触する、
請求項1に記載の表面波検出装置。
【請求項3】
前記伝搬体の長手方向に互いに間隔を空けて配列された複数の歯を有する櫛歯部をさらに備え、
前記圧電素子は、前記櫛歯部を挟んで前記薄板部と対向し、前記櫛歯部を介して前記薄板部に前記振動を与える、
請求項1に記載の表面波検出装置。
【請求項4】
前記伝搬体は、樹脂で形成され、
前記櫛歯部は、金属で形成されている、
請求項3に記載の表面波検出装置。
【請求項5】
前記櫛歯部は、前記伝搬体と一体であり、樹脂で形成されている、
請求項3に記載の表面波検出装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の表面波検出装置と、
前記圧電素子が検出した前記表面波の伝搬時間に基づいて前記液体の液面位置を検出する検出部と、を備える、
液面位置検出装置。
【請求項7】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の表面波検出装置と、
前記圧電素子が検出した前記表面波の伝搬時間に基づいて前記液体の種類を特定する特定部と、を備える、
液種特定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面波検出装置、液面位置検出装置及び液種特定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1、2には、圧電素子によって、液体に浸る伝搬体に振動を与えて表面波を発生させるとともに、反射した表面波を検出する技術が開示されている。特許文献1に記載の技術は、検出した表面波の伝搬時間に基づいて液体の液面位置を検出する。また、特許文献2に記載の技術は、検出した表面波の伝搬時間に基づいて液体の種類を特定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平4-86525号公報
【文献】特開2018-54321号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
伝搬体に振動を与える圧電素子としては、すべり振動を伝搬体に与えるすべり素子、縦振動(厚み方向の振動)を伝搬体に与える縦振動子などが挙げられるが、コストの観点からは縦振動子が好ましい。しかしながら、特許文献1、2に記載の技術に縦振動子を単に適用するだけでは、検出可能な表面波を発生させることが困難であった。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、縦振動子を用いつつ、検出可能な表面波を発生させることができる表面波検出装置、液面位置検出装置及び液種特定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係る表面波検出装置は、
表面波が伝搬する伝搬面を有する伝搬体と、
前記表面波を発生させるとともに反射した前記表面波を検出する圧電素子と、を備え、
前記伝搬体は、液体に一端から浸る柱状部と、前記柱状部の他端と接続されて前記柱状部よりも薄い板状の薄板部と、を有し、
前記薄板部の外面と前記柱状部の主面は面一で、前記伝搬面を構成し、
前記圧電素子は、前記薄板部と対向して設けられ、前記薄板部に対してその厚み方向の振動を与えることで前記表面波を発生させる。
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の第2の観点に係る液面位置検出装置は、
前記表面波検出装置と、
前記圧電素子が検出した前記表面波の伝搬時間に基づいて前記液体の液面位置を検出する検出部と、を備える。
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の第3の観点に係る液種特定装置は、
前記表面波検出装置と、
前記圧電素子が検出した前記表面波の伝搬時間に基づいて前記液体の種類を特定する特定部と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、縦振動子を用いつつ、検出可能な表面波を発生させることができる表面波検出装置、液面位置検出装置及び液種特定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1実施形態に係る液面位置検出装置の概略構成図。
図2】第1実施形態に係る表面波検出装置の要部側面図。
図3】本発明の第2実施形態に係る液種特定装置の概略構成図。
図4】変形例1に係る表面波検出装置の要部側面図。
図5】変形例2に係る表面波検出装置の要部側面図。
図6】変形例3に係る表面波検出装置の要部側面図。
図7】変形例4に係る表面波検出装置の要部側面図。
図8】実験で得た表面波の波形を示す図であり、(a)は実施例1に係り、(b)は実施例2に係る図。
図9】実験で得た表面波の波形を示す図であり、(a)は実施例3に係り、(b)は実施例4に係る図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0012】
(第1実施形態)
第1実施形態に係る液面位置検出装置100は、図1に示すように、表面波検出装置1と、制御部2と、を備える。液面位置検出装置100は、容器3内に入れられた液体4の液面4aの位置(以下、液面位置とも言う。)を検出する。液体4の量の増減に伴い、液面4aは上下する。
【0013】
表面波検出装置1は、図1に示すように、伝搬体10と、圧電素子20と、フランジ部30と、を備える。
【0014】
伝搬体10は、図1の上下方向に長尺の形状をなし、例えば、PPS(ポリフェニレンサルファイド)などの合成樹脂から形成されている。伝搬体10は、圧電素子20の駆動によって発生する表面波Wが伝搬する主要部分である伝搬面10aを有する。伝搬面10aは、伝搬体10の長手方向(図1の上下方向)に延びる帯状をなす。伝搬面10aの先端は、表面波Wが反射する反射部10bとして機能する。
【0015】
伝搬体10は、液体4に一端(先端)から浸る柱状部11と、図2に示すように、柱状部11の他端(基端)と接続されて柱状部11よりも薄い板状の薄板部12と、を備える。
【0016】
柱状部11は、概ね四角柱状に形成され、主面11a、裏面11b、側面11c及び底面11dを有する。また、柱状部11は、図2に示す基端面11eを有する。なお、図2は、表面波検出装置1のうち、主要部以外の構成を省略して表した側面図である。後述の図4図7における各部の表し方も同様である。
【0017】
主面11aは、伝搬面10aの一部を構成する。裏面11bは、伝搬体10における主面11aの裏側に位置する。例えば、主面11aと裏面11bは互いに平行である。側面11cは図1図2の紙面法線方向に向く。なお、柱状部11は、側面11cの裏側に位置する、図示しない側面も有する。例えば、側面11cと図示しない側面は互いに平行である。底面11dは、図1に示すように、主面11aと裏面11bとを繋ぐ傾斜面である。例えば、底面11dは、主面11aとなす角が鋭角で、裏面11bとなす角が鈍角の面である。底面11dと主面11aとの接続部が、前述の反射部10bとして機能する。底面11dにより、柱状部11の先端部は先細りの形状をなす。底面11dの傾斜によって、主面11aを先端に向かって伝搬する表面波Wが裏面11bに回り込むことを抑制することができ、伝搬体10の反射部10bで反射して再び主面11aを伝搬する表面波Wを効率良く圧電素子20に向かわせることができる。図2に示す基端面11eは、図1に示すフランジ部30によって覆われる。
【0018】
図2に示す薄板部12は、柱状部11と同一の材料により一体に形成されている。薄板部12は、柱状部11の主面11aと面一に形成された外面12aと、外面12aの裏側に位置する内面12bと、を有する。例えば、外面12aと内面12bは互いに平行である。前述の伝搬面10aは、柱状部11の主面11aと薄板部12の外面12aとから構成される。なお、薄板部12の厚さ(つまり、外面12aと内面12bの間隔)は任意に設定可能であるが、後述のように表面波Wの波長λ以下であることが好ましい。
【0019】
圧電素子20は、伝搬体10に振動を与えることで伝搬体10に表面波Wを発生させる。具体的には図2に示すように、圧電素子20は、薄板部12の内面12bと対向して設けられている。圧電素子20は、薄板部12に対してその厚み方向の振動V(縦振動)を与える、いわゆる縦振動子である。第1実施形態の圧電素子20は、薄板部12の内面12bと接触する。また、圧電素子20は、反射部10bで反射した表面波Wを検出し、検出結果を示す検出信号(電圧信号)を出力する。例えば、表面波Wは、空気中ではレイリー波であり、液体4中ではシュルツ波である。圧電素子20は、セラミックス等の無機材料、又は有機材料を用いた公知の超音波トランスデューサから構成され、直方体状をなす。
【0020】
図1に示すフランジ部30は、例えば合成樹脂により形成され、圧電素子20を収容する収容部31と、収容部31の外径方向に迫り出したフランジ32と、フランジ32の図1での上方に位置する中空状のキャップ部33と、を有する。
【0021】
収容部31は、伝搬体10の基端面11e及び薄板部12と、圧電素子20とを収容する。なお、収容部31と伝搬体10の間は、図示しないパッキンにより水密性が保たれる。フランジ32は、容器3に、図示しないビス等の固定手段によって取り付けられる部分である。キャップ部33は、図示しないカプラを有する。カプラの内部には、図示しない出力端子が位置する。外部機器とカプラが連結されると、当該外部機器と出力端子が電気的に接続される。例えば、キャップ部33の内部には、圧電素子20及び出力端子の各々と電気的に接続され、後述の送信回路、受信回路などが形成された図示しないPCB(Printed Circuit Board)が収容される。
【0022】
図1に模式的に示す制御部2は、例えばマイクロコンピュータから構成され、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を備える。制御部2は、圧電素子20が検出した表面波Wの伝搬時間に基づいて液体4の液面位置を検出する検出部として機能する。PCBの送信回路は、制御部2の制御により、圧電素子20に駆動信号を送信して圧電素子20を駆動する。この結果、伝搬体10に表面波Wが発生する。PCBの受信回路は、反射した表面波Wを示す検出信号を圧電素子20から受信し、制御部2に供給する。検出信号を受信した制御部2は、当該検出信号に基づき、液面4aの位置(高さ)を算出する。
【0023】
なお、送信回路及び受信回路は、制御部2に備えられていてもよい。また、制御部2の少なくとも一部の機能を、フランジ部30の内部に設けられたPCBに実装してもよい。
【0024】
ここで、液面4aの位置の算出方法の一例を説明する。以下では、圧電素子20の駆動により伝搬体10に表面波Wが発生した時点から、表面波Wが反射部10bで反射して圧電素子20に入力した時点までの期間を、表面波伝搬期間と言う。表面波Wは、伝搬体10が液体4に浸かった部分では、伝搬体10(伝搬面10a)を進む速度が遅くなる。このため、液面4aが高い位置にあるほど、表面波伝搬期間が長くなる。この特性を利用して、制御部2は、表面波伝搬期間を計測し、予めROMに記憶した、表面波伝搬期間と液面4aの位置との関係を示す液面位置検出データを参照し、液面位置を算出する。なお、液面位置検出データは、数式とテーブルの少なくともいずれかを用いて構成されていればよい。また、液面位置検出装置100は、図示しない温度センサを備え、温度センサが検出した温度に基づいて、温度依存性がある表面波伝搬期間を補正してもよい。液面4aの位置の算出手法、温度補正の手法としては、公知技術を適宜用いることができる。
【0025】
制御部2は、検出した液面位置を図示しない報知部によってユーザに報知する。報知部は、例えば、液面位置を画像、インジケータ、指針などによりユーザに報知可能な構成であればよい。
【0026】
ここで、図8(a)、(b)を参照して、第1実施形態に係る表面波検出装置1による効果を説明する。図8(a)、(b)は、実験により観測された表面波Wの信号波形を示す。当該実験では、PPSで形成した伝搬体10に、周波数400kHzの振動Vを圧電素子20により加え、約950m/sの音速(実験室温での音速)の表面波Wを発生させた。この場合、表面波Wの波長λは、λ=(表面波Wの音速)/(振動Vの周波数)の式により、約2.38mmである。図8(a)は、実施例1として、薄板部12の厚さを1.11λに設定した場合に観測された表面波Wの信号波形を示す。図8(b)は、実施例2として、薄板部12の厚さを0.56λに設定した場合に観測された表面波Wの信号波形を示す。なお、図8(a)、(b)では、グレーの波形は表面波Wであり、黒色の部分はノイズである。また、図8(a)、(b)に示すグラフは、信号強度を縦軸にとり、経過時間を横軸にとったものであり、圧電素子20の駆動を開始してから所定時間経過した後の信号波形を示す。
【0027】
図8(a)、(b)を参照すると、実施例1及び2では、検出に充分な表面波Wが発生していることが分かる。また、図8(a)と図8(b)を比較すると、薄板部12の厚さがλ以下である実施例2のほうが、実施例1よりもSN比が良好であることが分かる。薄板部12の厚さが1.11λよりも大きい場合についても検証したが、良好なSN比を得る観点からは、薄板部12の厚さがλ以下であることが好ましいことが分かる。
【0028】
第1実施形態に係る液面位置検出装置100は、縦振動子を用いつつ、検出可能な表面波を発生させることができる表面波検出装置1を備えるため、液面位置を検出可能である。第1実施形態の説明は以上である。
【0029】
(第2実施形態)
ここからは、第2実施形態に係る液種特定装置200について、主に図3を参照して説明する。なお、第1実施形態と共通の機能を有する各部については、第1実施形態と同一又は対応する符号を付すとともに、適宜説明を省略する。また、第2実施形態では、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0030】
第2実施形態に係る液種特定装置200は、図3に示すように、表面波検出装置1と、制御部2Mと、を備える。液種特定装置200は、容器3内に入れられた液体4の種類(以下、液種とも言う。)を特定する。
【0031】
表面波検出装置1の構成は、第1実施形態と同様である。第2実施形態では、容器3に対する表面波検出装置1の取り付け態様が第1実施形態と異なる。第2実施形態に係る表面波検出装置1は、例えば、伝搬体10が容器3の底から液面4aに向かう姿勢で、容器3に取り付けられている。なお、伝搬体10は、少なくとも、伝搬面10aの全域が液体4に浸っていればよい。
【0032】
また、第2実施形態に係る制御部2Mは、第1実施形態と構成に関しては同様であるものの、その機能が第1実施形態と異なっている。制御部2Mは、圧電素子20が検出した表面波Wの伝搬時間に基づいて液体4の種類を特定する特定部として機能する。なお、制御部2Mの少なくとも一部の機能は、フランジ部30の内部に設けられたPCBに実装されていてもよい。
【0033】
制御部2Mは、表面波伝搬期間に基づいて液体4の種類を特定する。具体的に、制御部2Mは、表面波伝搬期間と液体4の種類とが関係付けられたデータテーブルを参照することによって、液体4の種類を特定する。以下、表面波伝搬期間に基づいて液体4の種類を特定することができる原理を説明する。
【0034】
表面波伝搬期間は表面波伝搬速度に反比例するため、表面波伝搬速度が速くなるにつれて表面波伝搬期間が短くなる一方で、表面波伝搬速度が遅くなるにつれて表面波伝搬期間が長くなる。伝搬体10の少なくとも伝搬面10aが全体に渡って液体4に浸っているときの表面波伝搬速度は、液体4に固有の液中の音速vl及び密度ρlによって定まる。すなわち、伝搬体10の少なくとも伝搬面10aが全体に渡って液体4に浸っているときの表面波伝搬速度は、液体4の種類によって変化する。そのため、実測又はシミュレーション等によって、伝搬体10の少なくとも伝搬面10aが全体に渡って液体4に浸っているときの表面波伝搬速度と液体4の種類との関係を得ることができる。この関係に基づいて作成された表面波伝搬期間と液体4の種類とが関係付けられたデータテーブルを制御部2MのROMに記憶することによって、液種特定装置200は、表面波伝搬期間を用いて液体4の種類を特定することができる。
【0035】
なお、制御部2Mが、表面波伝搬期間に基づいて液体4の種類を特定するという表現には、制御部2Mが、表面波伝搬期間から表面波伝搬速度を算出し、算出した表面波伝搬速度に基づいて液体4の種類を特定することも含まれる。すなわち、制御部2Mは、表面波伝搬速度と液体4の種類とが関係付けられたデータテーブルを参照することによって、算出した表面波伝搬速度に基づいて液体4の種類を特定してもよい。この場合では、制御部2Mは、表面波伝搬期間と液体4の種類とが関係付けられたデータテーブルの代わりに、表面波伝搬速度と液体4の種類とが関係付けられたデータテーブルをROMに記憶していればよい。
【0036】
以上のように、液種特定装置200では、表面波伝搬期間に基づいて液体4の種類を特定することができる。前述のように、表面波伝搬期間及び表面波伝搬速度は、温度依存性があるため、図示しない温度センサが検出した温度に基づいて、温度依存性がある表面波伝搬期間又は表面波伝搬速度を補正してもよい。
【0037】
第2実施形態に係る液種特定装置200は、縦振動子を用いつつ、検出可能な表面波Wを発生させることができる表面波検出装置1を備えるため、液種を特定可能である。第2実施形態の説明は以上である。
【0038】
表面波検出装置1は、以上に示した例に限られず、種々の変形が可能である。以下、図4図7に示す変形例1~4に係る表面波検出装置1a~1dを順に説明する。なお、これらの変形例に係る表面波検出装置1a~1dは、前記の実施形態と同様に液面位置検出装置100又は液種特定装置200に適用可能である。このため、以下では、液面検出及び液種特定の手法の説明を省略する。また、第1実施形態に係る表面波検出装置1と共通の機能を有する各部については、第1実施形態と同一又は対応する符号を付すとともに、適宜説明を省略する。
【0039】
(変形例1)
図4に示す変形例1に係る表面波検出装置1aは、金属で形成された櫛歯部40をさらに備える。圧電素子20は、櫛歯部40を挟んで薄板部12の内面12bと対向し、櫛歯部40を介して薄板部12に振動Vを与える。
【0040】
櫛歯部40は、先端が薄板部12に接触する複数の歯41と、複数の歯41の基端と接続されたベース42とを有し、例えばアルミから一体に形成されている。複数の歯41は、それぞれの先端面が薄板部12の内面12bと平行に形成される。複数の歯41は、伝搬体10の長手方向(図4の上下方向)に互いに間隔Pを空けて配列されている。例えば、間隔Pは一定である。ベース42は、均一の厚さBを有する板状の部分であり、複数の歯41を保持する面の裏面において圧電素子20と接触する。
【0041】
薄板部12に表面波Wを良好に発生させるべく、櫛歯部40において、歯41の厚さT、及び、隣り合う歯41の間隔Pは、それぞれ、例えば、表面波Wの波長λの1/2に設定されている(T=0.5λ、P=0.5λ)。歯41の高さH、及び、ベース42の厚さBは、任意に設定可能であるが、それぞれ、例えば、表面波Wの波長λの1/2に設定されている(H=0.5λ、B=0.5λ)。なお、図4では、櫛歯部40が4つの歯41を有する例を示したが、櫛歯部40が有する歯41の数は任意であり、実験により最適な数を定めればよい。
【0042】
ここで、図9(a)、(b)を参照して、変形例1に係る表面波検出装置1aによる効果を説明する。図9(a)、(b)は、実験により観測された表面波Wの信号波形を示し、グラフの表し方は図8(a)、(b)と同様である。また、当該実験の条件は、櫛歯部40を設けた以外の点については、図8(a)、(b)と同様である。実験では、櫛歯部40は、アルミで形成し、歯41の厚さT、間隔P、高さH、ベース42の厚さBのそれぞれを、表面波Wの波長λの1/2に設定した(T=0.5λ、P=0.5λ、H=0.5λ、B=0.5λ)。図9(a)は、実施例3として、薄板部12の厚さを1.11λに設定した場合に観測された表面波Wの信号波形を示す。図9(b)は、実施例4として、薄板部12の厚さを0.56λに設定した場合に観測された表面波Wの信号波形を示す。
【0043】
図9(a)、(b)を参照すると、検出に充分な表面波Wが発生していることが分かる。また、図8(a)、(b)を参照して説明した実施例1及び2に比べて、実施例3及び4では、高い信号強度の表面波Wが得られることが分かる。実験結果から、櫛歯部40を設けた実施例3及び4では、必ずしも、薄板部12の厚さがλ以下である必要はないと考えられる。薄板部12の厚さ、及び、櫛歯部40の諸条件は、SN比を考慮して適宜定めればよい。
【0044】
(変形例2)
図5に示す変形例2に係る表面波検出装置1bは、PPS等の樹脂により、伝搬体10と一体に形成された櫛歯部50をさらに備える。圧電素子20は、櫛歯部50を挟んで薄板部12の内面12bと対向し、櫛歯部50を介して薄板部12に振動Vを与える。
【0045】
櫛歯部50は、先端(図5の左方に向く端)が圧電素子20に接触する一方で、基端が薄板部12に接続された、複数の歯51を有する。例えば、複数の歯51は、それぞれの先端面が圧電素子20と平行に形成される。複数の歯51は、伝搬体10の長手方向(図5の上下方向)に互いに間隔を空けて配列されている。例えば、当該間隔は一定である。図示しないが、例えば、櫛歯部50の幅は、伝搬面10aの幅と略等しく(丁度等しいことも含む。)設定されている。なお、ここで言う幅は、図5の紙面法線方向の幅である。
【0046】
薄板部12に表面波Wを良好に発生させるべく、櫛歯部50の歯51の厚さ、隣り合う歯51の間隔等は、変形例1と同様に設定すればよい。なお、図5では、櫛歯部50が4つの歯51を有する例を示したが、櫛歯部50が有する歯51の数は任意であり、実験により最適な数を定めればよい。変形例2に係る表面波検出装置1bにおいても、前記と同様の実験を行ったが、金属で形成された櫛歯部40を有する変形例1に比べ、表面波Wの信号強度の増加は見られなかった。しかしながら、検出可能な表面波Wを発生させることができることが確認されている。変形例2に係る表面波検出装置1bは、櫛歯部50が伝搬体10と一体であるため、装置の組み立てが容易であるという利点がある。
【0047】
(変形例3)
図6に示す変形例3に係る表面波検出装置1cは、薄板部12に変えて、伝搬体10が傾斜部13を有する構成である。具体的に、変形例3では、伝搬体10は、柱状部11に接続された傾斜部13及び壁部14を有する。傾斜部13及び壁部14は、柱状部11同一の材料(例えばPPS)により一体に形成されている。傾斜部13は、柱状部11の主面11aと面一に形成された外面13aと、外面13aの裏側に位置する傾斜面13bと、を有する。変形例3では、傾斜面13b上に圧電素子20が設けられている。例えば、傾斜面13bは、外面13aに対する角度が45°以下に設定されている。壁部14は、柱状部11の裏面11bと面一に形成された外面14aと、外面14aの裏側に位置する内面14bと、を有する。この内面14bと傾斜面13bの間に形成された収容室に圧電素子20が収容される。当該収容室は、図1に示すフランジ部30によって覆われる。
【0048】
また、表面波検出装置1cは、傾斜部13の外面13aに固定された金属部材60をさらに備える。金属部材60は、板状をなし、例えばアルミから形成されている。金属部材60は、傾斜部13を挟んで圧電素子20と対向する位置に設けられる。例えば、金属部材60の幅は、伝搬面10aの幅と略等しく(丁度等しいことも含む。)設定されている。なお、ここで言う幅は、図6の紙面法線方向の幅である。
【0049】
変形例3に係る表面波検出装置1cは、圧電素子20により、傾斜部13に対してその厚み方向(傾斜面13bの法線方向)の振動V(縦振動)を与える。そして、傾斜部13を介して金属部材60に伝達された振動により、伝搬面10aに表面波Wを発生させる。そして、第1実施形態と同様に反射部10bで反射した表面波Wは、上記と逆の順序で伝搬し、振動として圧電素子20に検出される。以上の構成の変形例3に係る表面波検出装置1cによっても、検出可能な表面波Wを発生させることができる。
【0050】
(変形例4)
図7に示す変形例4に係る表面波検出装置1dは、変形例3の金属部材60を、変形例1の櫛歯部40に変更した構成である。櫛歯部40の配置が変形例1と異なるため、当該配置について主に説明する。
【0051】
変形例4に係る表面波検出装置1dは、変形例3と同様の形状の伝搬体10と、櫛歯部40とを備える。変形例4では、櫛歯部40は、傾斜部13の外面13aに固定されている。櫛歯部40は、傾斜部13を挟んで圧電素子20と対向する位置に設けられる。櫛歯部40が有する複数の歯41は、先端が傾斜部13の外面13aに接触する。伝搬面10aに表面波Wを良好に発生させるべく、櫛歯部40の歯41の厚さ、隣り合う歯41の間隔等は、変形例1と同様に設定すればよい。
【0052】
変形例4に係る表面波検出装置1dは、圧電素子20により、傾斜部13に対してその厚み方向(傾斜面13bの法線方向)の振動V(縦振動)を与える。そして、傾斜部13を介して櫛歯部40に伝達された振動により、伝搬面10aに表面波Wを発生させる。そして、第1実施形態と同様に反射部10bで反射した表面波Wは、上記と逆の順序で伝搬し、振動として圧電素子20に検出される。以上の構成の変形例4に係る表面波検出装置1dによっても、検出可能な表面波Wを発生させることができる。なお、櫛歯部40の歯41の厚さ、隣り合う歯41の間隔等を調整することにより、変形例3に比べて良好に表面波Wを発生させることができると想定される。
【0053】
なお、本発明は以上の実施形態、変形例及び図面によって限定されるものではない。本発明の要旨を変更しない範囲で適宜の変更(構成要素の削除も含む)を加えることが可能である。
【0054】
表面波Wは、漏洩レイリー波、横波型弾性表面波(SH-SAW)等であってもよい。
【0055】
第2実施形態では、伝搬体10が液体4の深さ方向に沿って設けられる例を示したが、容器3及び液体4に対する伝搬体10(表面波検出装置1)の姿勢は、伝搬面10aが液体4に浸っている限りは任意であり、限定されるものではない、例えば、伝搬体10は、液面4aの面内方向(水平方向)に沿っていてもよい。また、第1実施形態に係る液面位置検出装置100も、液面位置が検出できる限りにおいては、液体4及び容器3に対する伝搬体10の姿勢は任意である。例えば、伝搬体10は、液体4の深さ方向(鉛直方向)に対して斜めに延びていてもよい。
【0056】
液体4の液面位置を検出するとは、液面4aの位置を詳細に検出することの他、液面4aの位置を何段階かに分けて現在の液面4aの位置がどの段階に属するかを検出すること、液面4aの位置に応じて変化する液体4の容量を検出すること等も含む。また、液体4の種類は限られず、水、ガソリン、アルコール、洗浄液など任意である。また、容器3は、車両に搭載される燃料タンクであってもよい。
【0057】
伝搬体10の材質も、表面波Wが良好に伝搬できるものであれば任意である。例えば、伝搬体10として使用される樹脂は、PPSに限られず、POM(ポリアセタール)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)等であってもよい。また以上では、櫛歯部40、金属部材60がアルミで形成される例を示したが、櫛歯部40、金属部材60を構成する金属の種類は、表面波Wを良好に発生可能な限りにおいては任意である。
【0058】
以上の実施形態及び変形例1,2では、圧電素子20を薄板部12の内面12bの側に設けた例を示したが、薄板部12の外面12aの側に設けることも可能である。ただし、圧電素子20を内面12bの側に設けた方が、フランジ部30に収容する観点から好ましい。
【0059】
以上の手法で、液面位置の検出、又は、液種の特定を行うことができる限りにおいては、表面波Wの種類は任意である。以上では、表面波Wが超音波(例えば、20KHz以上の音波であればよい。)のパルス(超音波パルス)である例を説明したが、例えば、表面波Wは、超音波よりも低い周波数の音波であってもよい。
【0060】
以上の説明では、本発明の理解を容易にするために、公知の技術的事項の説明を適宜省略した。
【0061】
本発明は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。すなわち、本発明の範囲は、実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして特許請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、本発明の範囲内とみなされる。
【符号の説明】
【0062】
100…液面位置検出装置
1,1a~1d…表面波検出装置
2…制御部(検出部の一例)、3…容器、4…液体、4a…液面
W…表面波
10…伝搬体、10a…伝搬面、10b…反射部
11…柱状部、11a…主面、11b…裏面
12…薄板部、12a…外面、12b…内面
20…圧電素子、V…振動
30…フランジ部
40,50…櫛歯部、41,51…歯
60…金属部材
200…液種特定装置、2M…制御部(特定部の一例)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9