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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-22
(45)【発行日】2024-10-30
(54)【発明の名称】給水装置
(51)【国際特許分類】
   H04Q 9/00 20060101AFI20241023BHJP
   F04B 49/10 20060101ALI20241023BHJP
【FI】
H04Q9/00 311K
F04B49/10 311
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021022141
(22)【出願日】2021-02-15
(65)【公開番号】P2022124398
(43)【公開日】2022-08-25
【審査請求日】2023-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000148209
【氏名又は名称】株式会社川本製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】509044109
【氏名又は名称】ウイングレット・システムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100195453
【弁理士】
【氏名又は名称】福士 智恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100205501
【弁理士】
【氏名又は名称】角渕 由英
(72)【発明者】
【氏名】藤田 雅之
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 裕大
(72)【発明者】
【氏名】豊田 耕司
(72)【発明者】
【氏名】西野 憲次郎
(72)【発明者】
【氏名】井上 正之
【審査官】吉村 伊佐雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-128751(JP,A)
【文献】特開2015-050634(JP,A)
【文献】特開2010-109866(JP,A)
【文献】特開2018-121151(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B49/00-51/00
G08C13/00-25/04
H03J9/00-9/06
H04B7/24-7/26
H04M3/00
3/16-3/20
3/38-3/58
7/00-7/16
11/00-11/10
H04Q9/00-9/16
H04W4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプと、該ポンプを駆動する電動機とを有するポンプユニットを備える給水装置であって、
前記ポンプユニットに関する情報を記憶する記憶部と、
該記憶部が記憶する前記情報を、移動体通信回線を介して送信する通信部と、
該通信部を制御する通信制御部と、を備え、
前記通信制御部は、前記通信部が前記情報を送信するとき、無作為なタイミングで前記通信部が通信接続を開始するように前記通信部を制御し、
前記無作為なタイミングは、通信接続する接続プログラムの起動が完了するまでの第一の待ち時間と、前記通信接続するプログラムにより通信接続を開始するまでの第二の待ち時間と、から構成されることを特徴とする給水装置。
【請求項2】
ポンプと、該ポンプを駆動する電動機とを有するポンプユニットを備える給水装置であって、
前記ポンプユニットに関する情報を記憶する記憶部と、
該記憶部が記憶する前記情報を、移動体通信回線を介して送信する通信部と、
該通信部を制御する通信制御部と、を備え、
前記通信制御部は、前記通信部が前記情報を送信するとき、無作為なタイミングで前記通信部が通信接続を開始するように前記通信部を制御し、
前記通信部は、通信接続を開始したとき、応答要求パケットを送信すると共に、前記応答要求パケットに対する応答パケットを受信し、
前記通信制御部は、受信した前記応答パケットの数に基づいて通信品質を測定し、
前記通信制御部は、前記通信品質の測定結果に基づいて通信障害の有無を判定し、通信障害が有ると判定した場合、再起動するまでの待ち時間を設定するウェイト処理を実行し、設定された前記待ち時間後に再起動することを特徴とする給水装置。
【請求項3】
前記ウェイト処理で設定される前記待ち時間は、前記通信制御部が再起動する回数に応じて増加することを特徴とする請求項2に記載の給水装置。
【請求項4】
前記通信制御部は、前記給水装置が起動した場合に、前記無作為なタイミングで前記通信部が通信接続を開始するように前記通信部を制御することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の給水装置。
【請求項5】
前記通信制御部は、前記ポンプユニットに関する異常を検知した場合に、前記無作為なタイミングで前記通信部が通信接続を開始するように前記通信部を制御することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の給水装置。
【請求項6】
前記通信制御部は、
疑似乱数を生成する疑似乱数発生器を有し、
該疑似乱数発生器により生成した疑似乱数に基づき前記無作為なタイミングを設定することを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の給水装置。
【請求項7】
前記通信制御部は、システムログを収集し、該システムログを用いて前記疑似乱数発生器により前記疑似乱数を生成して前記無作為なタイミングを設定することを特徴とする請求項に記載の給水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給水装置及び給水装置の通信接続方法に係り、特に、移動体通信回線に接続する通信器を備える給水装置とその通信接続方法に関する。
【背景技術】
【0002】
集合住宅、商業施設又は工場等で使用する水を供給するために、給水装置が広く利用されている。そして給水装置は、私たちの日常生活で必要な生活水や、経済活動を実現するための工業用水等を安定的に供給する上で重要な役割を担っている。そのため、給水装置には、その運転状態や故障に関する情報を取得するために種々なセンサが取り付けられおり、センサによって取得された情報を遠隔の管理装置に送信している。これにより、管理装置のオペレータは、安定した運転状態を維持することができるように給水装置を監視し、必要に応じて作業員を派遣して部品の交換やメンテナンス等を行うことができる。また、オペレータは、センサにより取得した情報を遠隔の管理装置に送信することで、例えば停電の発生等によって一時的に運転を中止した場合にも、適切な復旧対応を迅速に行うことが可能となる。
【0003】
特許文献1には、給水装置と通信装置とが近距離無線通信によって接続されて、給水装置の運転状況や故障に関する情報を遠隔のサーバに送信する技術が開示されている。通信装置としては、給水装置が設置された現場付近の情報端末、又は作業員が所持する携帯端末であって、PC、タブレット型端末、スマートフォン、ラップトップ型端末などが例示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-128751号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
給水装置をインターネット等の広域通信網と接続することによって、給水装置の運転状況や故障情報を遠隔の管理装置に送信することが可能となるものの、給水装置は、生活水や工業用水を供給するという重要な役割を担っていることから、通信の安定性及び天災地変等の災害が発生した際の迅速な復旧能力が求められている。
【0006】
特に災害が発生したときは、被災者の安否を確認するための通信によって通信回線が混雑し、通信の安定性が低下する。このように、通信回線が混雑することにより通信性能が低下する状態を、輻輳という。災害が発生すると、輻輳によって給水装置と管理装置との間に通信障害が発生し、給水装置に対する迅速な対応が妨げられるおそれがあった。
【0007】
そこで、本発明は上述した課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、給水装置と遠隔の管理装置との間で、より安定した通信を行い、災害等のトラブルが発生した際に迅速な対応を可能とする給水装置及び給水装置の通信接続方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題は、本発明の給水装置によれば、ポンプと、該ポンプを駆動する電動機とを有するポンプユニットを備える給水装置であって、前記ポンプユニットに関する情報を記憶する記憶部と、該記憶部が記憶する前記情報を、移動体通信回線を介して送信する通信部と、該通信部を制御する通信制御部と、を備え、前記通信制御部は、前記通信部が前記情報を送信するとき、無作為なタイミングで前記通信部が通信接続を開始するように前記通信部を制御し、前記無作為なタイミングは、通信接続する接続プログラムの起動が完了するまでの第一の待ち時間と、前記通信接続するプログラムにより通信接続を開始するまでの第二の待ち時間と、から構成されることにより解決される。
また、前記課題は、本発明の給水装置によれば、ポンプと、該ポンプを駆動する電動機とを有するポンプユニットを備える給水装置であって、前記ポンプユニットに関する情報を記憶する記憶部と、該記憶部が記憶する前記情報を、移動体通信回線を介して送信する通信部と、該通信部を制御する通信制御部と、を備え、前記通信制御部は、前記通信部が前記情報を送信するとき、無作為なタイミングで前記通信部が通信接続を開始するように前記通信部を制御し、前記通信部は、通信接続を開始したとき、応答要求パケットを送信すると共に、前記応答要求パケットに対する応答パケットを受信し、前記通信制御部は、受信した前記応答パケットの数に基づいて通信品質を測定し、前記通信制御部は、前記通信品質の測定結果に基づいて通信障害の有無を判定し、通信障害が有ると判定した場合、再起動するまでの待ち時間を設定するウェイト処理を実行し、設定された前記待ち時間後に再起動することにより解決される。
【0009】
通信部が無作為なタイミングで通信接続を開始するため、例えば複数の給水装置から管理装置に通信接続するタイミングにばらつきが生じる。そのため、多数の給水装置が同時に管理装置に通信接続を行うことによる通信回線の輻輳が抑制され、より安定した通信を実現することができる。
また、無作為なタイミングを第一の待ち時間及び第二の待ち時間により構成することで、より無作為なタイミングで接続を開始することができ、多数の給水装置が同時に接続することによる通信回線の輻輳を回避することが可能になる。
また、上記構成により、例えば給水装置と管理装置との間の通信回線を介して実際に到達した応答パケットの数を用いて通信品質の測定を行うため、より高い信頼性で通信回線の通信品質を測定することが可能になる。
また、通信品質が低下している場合、例えば災害等が発生したことによって通信回線全体が逼迫した状態にあると推測される。そのため、通信品質が低下した場合、すぐに再接続処理を行うと通信回線の逼迫した状態をさらに悪化させてしまうおそれがある。ウェイト処理を実行して待ち時間を設定し、その待ち時間後に再接続を試みることにより、通信回線の逼迫した状態をさらに悪化させてしまうことを回避することができる。
【0010】
前記給水装置において、前記通信制御部は、前記給水装置が起動した場合に、前記無作為なタイミングで前記通信部が通信接続を開始するように前記通信部を制御するとよい。
停電後の復電時において、複数の給水装置が同時に通信を開始する場合がある。給水装置が起動した場合に通信接続を開始するタイミングにばらつきを生じさせることで通信回線の輻輳が抑制されより安定した通信を実現することができる。
【0011】
また、前記給水装置において、前記通信制御部は、前記ポンプユニットに関する異常を検知した場合に、前記無作為なタイミングで前記通信部が通信接続を開始するように前記通信部を制御するとよい。
水道管の破裂や緊急速報を受信した場合等、異常を検知した場合において、複数のポンプが同時に通信を開始する場合がある。異常を検知した場合に無作為なタイミングで通信部が通信接続を開始するように通信部を制御することで、通信回線の輻輳が抑制されより安定した通信を実現することができる。
【0013】
また、前記給水装置において、前記通信制御部は、疑似乱数を生成する疑似乱数発生器を有し、該疑似乱数発生器により生成した疑似乱数に基づき前記無作為なタイミングを設定するとよい。
無作為なタイミングを設定するために疑似乱数を用いることで、通信接続を開始するタイミングによりばらつきが生じるようになる。多数の給水装置が同時に接続することが減少し通信回線の輻輳が抑制されるため、より安定した通信を実現することができる。
【0014】
また、前記給水装置において、前記通信制御部は、システムログを収集し、該システムログを用いて前記疑似乱数発生器により前記疑似乱数を生成して前記無作為なタイミングを設定するとよい。
システムログは、給水装置ごとに固有の情報であって、かつイベントが発生するたびに更新される。システムログを疑似乱数の生成に用いることで、給水装置が管理装置に通信接続するタイミングによりばらつきが生じるようになる。多数の給水装置が同時に接続することが減少し通信回線の輻輳が抑制されるため、より安定した通信を実現することができる。
【0017】
また、前記給水装置において、前記ウェイト処理で設定される前記待ち時間は、前記通信制御部が再起動する回数に応じて増加すると好適である。
通信回線全体が逼迫した状態を継続している場合に、再起動する回数に応じて待ち時間を増加することにより、再接続を行うタイミングを遅らせて、再接続により逼迫した状態を悪化させてしまう事態を回避することができる。
【0018】
また、前記課題は、本発明の給水装置の通信接続方法によれば、ポンプと、該ポンプを駆動する電動機とを有するポンプユニットと、前記ポンプユニットに関する情報を記憶する記憶部と、該記憶部が記憶する前記情報を、移動体通信回線を介して送信する通信部と、該通信部を制御する通信制御部と、を備える給水装置の通信接続方法であって、前記通信制御部が、無作為なタイミングを設定するステップと、前記通信部が前記情報を送信するとき、前記通信制御部が、前記無作為なタイミングで通信接続を開始するように前記通信部を制御するステップと、を有することにより解決される。
【0019】
上記構成によれば、通信部が疑似乱数に基づく無作為なタイミングで通信接続を開始するため、例えば複数の給水装置から管理装置に通信接続するタイミングにばらつきが生じる。そのため、多数の給水装置が同時に管理装置に通信接続を行うことによる通信回線の輻輳が抑制され、より安定した通信を実現することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る給水装置及び給水装置の通信接続方法によれば、給水装置と遠隔の管理装置との間で、より安定した通信を行い、災害等のトラブルが発生した際に迅速な対応を可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】給水装置管理を備える給水装置管理システムの全体構成を示す構成図である。
図2】給水装置を示す斜視図である。
図3】給水装置の機能ブロックを示すブロック図である。
図4】起動接続処理の流れを示すフロー図である。
図5】接続タイミングの無作為化の概念を示す説明図である。
図6】接続開始ウェイト処理の流れを示すフロー図である。
図7】接続処理の流れを示すフロー図である。
図8】再起動ウェイト処理の流れを示すフロー図である。
図9】定期通知処理の流れを示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態(以下、本実施形態)について図1図9を用いて説明する。
【0023】
<<給水装置管理システム>>
本実施形態の給水装置10を備えた給水装置管理システム1の概要について説明する。
給水装置管理システム1は、天災地変等の災害が発生し、通信回線が混雑した状態においても、適切な通信タイミングを行うよう設定されたシステムである。適切な通信タイミングで、給水装置10と遠隔の管理装置50とを通信することにより、給水装置10と遠隔の管理装置50との間に安定した通信回線を確保し、給水装置10に対する迅速な対応を可能にする。
【0024】
図1は、給水装置管理システム1の全体構成を示す図である。給水装置管理システム1は、複数の給水装置10と、給水装置10の運転状態及び異常に関する情報を収集して給水装置10を集中管理する管理装置50と、から構成されている。複数の給水装置10と管理装置50とは、移動体通信事業者(携帯電話キャリア)が運用する移動体通信回線(携帯電話回線)MNと広域通信網であるインターネット回線INを介して通信可能に接続される。
【0025】
移動体通信回線MNは、第四世代移動体通信規格(LTE)に準拠し、複数の基地局Bと、基地局Bの受信信号に対して通信制御を行うMME(Mobility Management Equipment)(不図示)及びSGW(Service Gateway)(不図示)と、インターネット回線INに接続するゲートウェイとしての役割を担うPDNG(Packet Data Network Gateway)(不図示)等を含んでいる。また、第三世代移動体通信規格や第五世代移動体通信規格に準拠した通信設備及び通信機器を含んでもよい。
【0026】
図1において4台の給水装置10が示されているが、給水装置10の台数は4台に限定されることはなく、管理装置50は4台以上の給水装置10を集中管理してよい。同様に、図1において1社の移動体通信事業者によってそれぞれ運用される移動体通信回線MNが示されているが、2社以上の移動体通信事業者によってそれぞれ運用される2以上の移動体通信回線があってもよい。
【0027】
給水装置10は、後述するように、移動体通信回線MNを介して管理装置50と通信接続する機能を有している。また、給水装置10は、災害からの復旧したとき管理装置50に自動的に接続するが、同時アクセスによる輻輳を回避するために、無作為なウェイト時間を用いて通信接続のタイミングを遅延させることができる。
これにより、給水装置10は、輻輳の回避を行いつつ、管理装置50に対して適切な通信回線の確保することが可能となる。給水装置10は、運転状態、設定情報又は異常に関する情報を管理装置50に送信し、管理装置50から適切な運転パラメータを受信することができるため、トラブルの発生時に給水装置10に対して迅速な対応を図ることができる。
【0028】
<<給水装置の概要>>
本実施形態の給水装置10は、集合住宅やビルにおける一般的な給水のために用いられる装置である。給水装置10は、例えば簡易水道や、農業用水、工業用水の給水のために利用されてもよい。
また、本実施形態では、給水装置10を、水道管から供給される水道水をいったん受水槽に貯めて、受水槽の水を揚水する貯水槽方式に採用している。しかしながら、これは一例であり、給水装置10を、水道管に直結して水道管から供給される水道水を直接揚水する直結方式に利用することもできる。
【0029】
図2は、給水装置10を示す斜視図である。図2に示すように、給水装置10は、基台11と、基台11上に設置されたポンプユニット12と、ポンプユニット12の運転を制御する制御部22と、制御部22を収容した制御盤16とを有する。
ポンプユニット12は、互いに並べて設置された2台のポンプユニット(第一のポンプユニット12A及び第二のポンプユニット12B)により構成される。
【0030】
2台のポンプユニット12A、12Bのそれぞれには、吸込口17(第一の吸込口17A、第二の吸込口17B)が設けられている。また、2台のポンプユニット12A、12Bはそれぞれの吐出口が、合流管18により接続されている。2台のポンプユニット12A、12Bは、吸込口17に連結される吸込配管から吸込まれる水を増圧し、合流管18において吐出水を合流し、合流管18の合流吐出口19から吐出水を吐出する。
また、合流管18には、合流管18内の水圧を所定の圧力に維持するための蓄圧タンク20が接続されている。
【0031】
また、図3に示すように、ポンプユニット12A、12Bのそれぞれには、揚力を発生するポンプ13(第一のポンプ13A、第二のポンプ13B)と、ポンプ13に回転動力を伝えるモータ14(電動機:第一のモータ14A、第二のモータ14B)とが設けられている。また、ポンプユニット12A、12Bのそれぞれは、ポンプユニット12A、12Bの運転状況を検出する検出器15(第一の検出器15A、第二の検出器15B)を有している。
【0032】
ここで、第一のポンプユニット12Aと第二のポンプユニット12Bとは同一の構成を有しているため、以下の説明において、第一のポンプユニット12Aと第二のポンプユニット12Bとを特に区別する必要がない場合には、単に「ポンプユニット12」として説明する。ポンプユニット12の構成部品であるポンプ13、モータ14、検出器15及び吸込口17についても、同様である。
【0033】
制御部22は、第一のポンプユニット12A及び第二のポンプユニット12Bを単独で、又は同時に並列運転制御することができる。これにより、給水装置10から供給可能な水量を、1台のポンプユニット12の場合と比べて増量することができる。複数台のポンプユニット12A、12Bによって給水装置10を構成することにより、1台の大型のポンプユニットで給水装置10を構成する場合と比べて、所望の給水性能を、よりコンパクトに、かつ高い省エネルギー性と共に実現することができる。
ポンプユニット12は、所望の給水性能を得ることができればよく、その台数は2台に限定されない。給水装置10は、3台以上、例えば6台のポンプユニット12を有することとしてもよい。この場合、制御部22が6台のポンプユニット12を制御することができる。
【0034】
図3は、給水装置10の機能ブロックを示している。上述したように、2つのポンプユニット12(第一のポンプユニット12A、第二のポンプユニット12B)のそれぞれが、揚力を発生するポンプ13(第一のポンプ13A、第二のポンプ13B)を有する。また、ポンプ13に回転動力を伝えるモータ14(第一のモータ14A、第二のモータ14B)と、ポンプユニット12の運転状況を検出する検出器15(第一の検出器15A、第二の検出器15B)とを有している。制御盤16に収容された制御部22は、供給すべき水量に応じてモータ14を回転制御し、複数のポンプユニット12が単独で、又は同時に並列運転を行うことによって給水を行う。すなわち、制御部22と共に制御盤16の内部に収容されたインバータ21から供給される電気エネルギーをモータ14が回転動力に変換し、この回転動力によってポンプ13内に配設された羽根車(不図示)が回転する。羽根車の回転運動は、ポンプ13の吸込口17から吸い込まれた水に対して遠心力を与える。この遠心力が揚力となって、吸込み水は増圧された状態で吐き出される。
【0035】
本実施形態において、モータ14は永久磁石同期モータ(PMモータ)であるが、ポンプ13に対して必要な回転動力を伝えることができればよく、モータ14は例えば誘導モータ又は電磁石同期モータであってもよい。
検出器15は、給水装置10の運転情報を検出可能なセンサ類であって、圧力センサや流量センサ等が含まれる。検出器15の出力は、制御部22によりポンプユニット12を制御するために必要な情報として用いられる。
【0036】
制御部22は、ポンプユニット12の運転制御を行うと共に、後述する運転情報取得部23を介して取得する信号等に基づいて異常の有無を判定する。具体的には、制御部22は、ポンプユニット12の異常及び受水槽の液面異常を判定し、判定結果を後述する記憶部27の履歴情報記憶部28に格納する。そして、災害等が発生した場合の停電及び復電に関する情報、及び、後述する通信制御部24が検出する通信障害に関する情報も、履歴情報記憶部28に格納される。
【0037】
運転情報取得部23は、ポンプユニット12の運転情報として、ポンプユニット12の検出器15が出力する各種センサ信号とインバータ21の運転情報とを取得する。そしてさらに、給水装置10に接続された受水槽の液面に関する情報を取得して、これを制御部22に対して出力する。
運転情報取得部23は、A/D変換器、LPF(低域通過フィルタ)、BPF(帯域通過フィルタ)を有しており、必要に応じてアナログ信号をディジタル信号に変換すると共に、不要な周波数帯域のノイズを除去し、所望の周波数成分を有する信号を出力することができる。
【0038】
記憶部27は、フラッシュメモリからなる不揮発性メモリであって、履歴情報記憶部28(本発明の異常履歴情報記憶部)と、設定記憶部29と、給水装置識別情報記憶部31と、待ち時間記憶部32とを有する。
【0039】
履歴情報記憶部28は、記憶部27が記憶する情報として、給水装置10の異常に関する履歴データ(本発明の異常履歴情報)を格納している。履歴データには、異常の発生日時、異常の種類、異常発生時のポンプユニット12の運転状況を含むことができる。異常の種類には、上述したように、ポンプユニット12の異常、受水槽の液面異常、停電及び復電を含む電源異常及び通信異常を含むことができる。ポンプユニット12の運転状況には、インバータ21の運転周波数、検出器15が出力する吸込圧力センサ、流量センサ、そして吐出圧力センサの検出値、ポンプユニット12の積算運転時間を含むことができる。また、地震等の災害発生時に通知する「緊急停止通知」、水道管の破裂等を検知した場合に通知する「吸込み圧力低下通知」を送信したことが履歴データとして記憶されてもよい。
これらの情報は、システムログ41として履歴情報記憶部28に記憶される。
【0040】
設定記憶部29は、記憶部27が記憶する情報として、給水装置10の設定情報を格納している。具体的には、給水装置10の納入日、設置日、設置場所の他、給水装置10の運転パラメータである運転圧力設定値、加速時間、減速時間と、を含んでいる。
【0041】
給水装置識別情報記憶部31には、記憶部27が記憶する情報として、給水装置10の製品種別や製品型番と、給水装置10を識別可能な給水装置識別情報と、第一のポンプユニット12A及び第二のポンプユニット12Bをそれぞれ識別可能なポンプユニット識別情報とを含む情報を格納している。
【0042】
待ち時間記憶部32は、通信制御部24及び通信器25を再起動する前に実行するウェイト処理の待ち時間WTを記憶する。待ち時間WTの詳細については後述する。
【0043】
<通信制御部及び通信器>
次に、通信制御部24及び通信器25(本発明の通信部)について説明する。通信器25は、SIM(Subscriber Identification Module)を搭載し、移動体通信事業者が運用する移動体通信回線(携帯電話回線)MNを介して通信可能な通信機器である。具体的には、通信器25は、eSIM(Embedded SIM)を内蔵すると共に、拡張カードとしてUSIM(Universal Subscriber Identification Module)を搭載することができる。通信器25は、移動体通信回線MNを介して遠隔の管理装置50とパケット通信を行うことができるLTEに準拠した通信モデムである。
【0044】
通信制御部24は、通信器25とシリアル通信接続され、通信器25に対する通信制御を行う。具体的には、通信制御部24は、履歴情報記憶部28に記憶された給水装置10の履歴データを、給水装置識別情報記憶部31に記憶された識別情報及び設定記憶部29に記憶された設定情報と共に管理装置50に送信するように通信器25を制御する。これにより、管理装置50は複数の給水装置10の異常に関する情報を給水装置10の識別情報と共に集中管理することができる。なお、通信器25が送信する情報は、履歴データのみであってもよく、また、管理装置50からの要求に応じて識別情報又は設定情報のみを送信してもよい。
【0045】
管理装置50のオペレータは、給水装置10の設定情報を確認し、必要に応じて給水装置10の運転パラメータを変更することができる。通信器25は、管理装置50から給水装置10に対して送信される運転パラメータを受信する。制御部22は、通信器25が受信した運転パラメータを上述した設定記憶部29に格納する。
【0046】
<運転開始時の通信接続>
通信制御部24は、給水装置10の運転を開始する際、又は、給水装置10に関する異常を検知した場合に無作為なタイミングで管理装置50と接続するように通信器25を制御する。
従来、停電後の復電時に、複数の給水装置10が一斉に管理装置50に対して通信接続を開始するため、給水装置10と管理装置50との間の通信回線が輻輳して通信品質が低下するおそれがあった。
また、複数の給水装置10は、異常を検知した場合、例えば、地震等の災害発生時に通知される「緊急停止通知」又は水道管破裂時に通知される「吸い込み圧低下通知」を受信したときも、一斉に管理装置50に対して通信接続を開始する場合があった。そのため、給水装置10と管理装置50との間の通信回線が輻輳して通信品質が低下するおそれがあった。
そこで、通信制御部24は、運転を開始した場合又は異常を検知した場合に無作為なタイミングを設定し、無作為なタイミングで管理装置50に対して通信接続を行う。これにより、複数の給水装置10から同時に管理装置50に対して通信接続することによる通信品質の低下を抑制することができる。無作為なタイミングは、乱数を生成して、乱数に基づいて設定してよい。また、無作為なタイミングは、例えば給水装置10を識別可能な給水装置識別情報に基づいて設定してもよい。無作為なタイミングの詳細な生成方法については、後述する。
【0047】
また、通信制御部24は、通信回線で通信品質の低下を検出した場合には、通信制御部24及び通信器25の再起動を行う前に、ウェイト処理を実行する。全ての通信回線で通信品質が低下している場合、災害等の影響によって通信回線全体が逼迫した状態にあることが予想される。このため、ウェイト処理を実行することによって給水装置10と管理装置50の間の通信接続の頻度を低下させて、給水装置10と管理装置50の間の通信接続によってさらに通信回線を逼迫させてしまうことを抑制する。
【0048】
操作パネル26は、オペレータの入力操作を受け付けて、給水装置10に対する設定情報を入力することができる。また、操作パネル26は、給水装置10の運転状態及び異常に関する情報を出力表示することができる。
【0049】
制御部22は、図示しないCPU、不揮発性メモリ、及び揮発性メモリを有し、不揮発性メモリには、予めOS(Operating System)プログラム及びポンプユニット12の運転状態を監視してポンプユニット12を運転制御するためのプログラムが格納されている。CPUは、これらのプログラムを不揮発性メモリから揮発性メモリにロードして順次実行する。
同様に、通信制御部24は、図示しないCPU、不揮発性メモリ、及び揮発性メモリを有する。不揮発性メモリには、あらかじめOSプログラム及び通信パケットを用いて通信回線の通信品質を測定し、該測定結果に基づいて複数の通信回線の切り替え制御を行うためのプログラムが格納されている。CPUは、これらのプログラムを不揮発性メモリから揮発性メモリにロードして順次実行する。
【0050】
<<起動時の通信接続処理>>
次に、起動時において給水装置10と管理装置50の間で行われる通信接続処理について説明する。通信接続処理は、起動時から管理装置50に接続されるまでに実行される起動接続処理と、管理装置50に接続した後、一定の時間間隔で管理装置50に対して給水装置10の運転状態や異常に関する情報を送信する定期通知処理と、を含む。
以下では、まず、起動時に実施される通信接続処理(起動接続処理)について説明する。
【0051】
図4は、給水装置10の起動時に通信制御部24によって実行される起動接続処理の全体の流れを示している。起動接続処理は、例えば停電が発生した後の復電によって給水装置10が復旧し、管理装置50と通信接続を行うときに実行される処理である。また、起動接続処理は、給水装置10に対するメンテナンス作業の終了後に給水装置10を再起動して管理装置50と通信接続するときに実行される処理でもある。
【0052】
図4に示すように、復電した際、給水装置10は、通信制御部24を起動して、OS等をロードする等の起動処理(ステップS10)を行う。通信制御部24は、起動した後、接続開始ウェイト処理(ステップS11)を行う。具体的には、複数の給水装置10が同時に管理装置50に対して通信接続することによる輻輳の発生を防止する目的で、給水装置10の通信器25が管理装置50に対して通信接続するタイミングを無作為に遅延させる処理を実行する。すなわち、乱数に基づく無作為な待ち時間を算出し、その待ち時間を経過した後にステップS12の接続処理を実行させるためのウェイト処理を実行する。接続開始ウェイト処理(ステップS11)の詳細は、図5及び図6を参照して後述する。
【0053】
次に通信制御部24は、管理装置50に対して接続処理を行う(ステップS12)。続いて通信制御部24は、通信障害の有無を判定する(ステップS13)。ステップS12において、通信回線が輻輳し、通信品質が低下して通信パケットが失われる場合がある。通信制御部24は、ステップS13において、送信した通信パケットが失われる場合、通信障害有りと判定する。
ステップS13で通信障害有りと判定された場合(ステップS13でYes)、通信制御部24は、一定の時間、接続処理を待機する再起動ウェイト処理(ステップS14)を実行する。
【0054】
通信制御部24は、再起動ウェイト処理(ステップS14)を行った後、通信制御部24及び通信器25を再起動する。再起動する前に再起動ウェイト処理(ステップS14)を実行する理由を説明すると、移動体通信回線MNにおいて通信障害が検出された場合、災害等によって通信回線全体が逼迫した状態にあることが予想される。この場合、再起動と再接続の処理を繰り返すと通信回線の逼迫状態をさらに悪化させてしまう。通信回線の逼迫状態を回避するため、通信制御部24は、通信制御部24及び通信器25を再起動するように制御する前に、待ち時間を設定し、その待ち時間の経過後に再度、起動処理(ステップS10)を行う。
これにより、短時間で再起動と再接続が繰り返されて通信回線の逼迫状態を悪化させてしまうことを防止することができる。再起動ウェイト処理(ステップS14)の詳細は、図8を参照して後述する。
【0055】
ステップS13で通信障害が無いと判定された場合(ステップS13でNo)、通信制御部24は、起動時の通信接続処理を完了(ステップS15)し、続いて定期通信処理を行う。
【0056】
ここで、接続開始ウェイト処理(ステップS11)の詳細について説明する。上述したように、複数の給水装置10が同時に管理装置50に接続することを防止するために、本実施形態の給水装置10は、通信制御部24に対して無作為な待ち時間を設定する接続開始ウェイト処理(ステップS11)を実行する。
まず、給水装置10が起動、すなわち通信制御部24が起動してから管理装置50と通信を開始するまでの処理の流れと、待ち時間の関係について説明する。
図5は、接続タイミングの無作為化の概念を示す図である。図5に示すように、通信制御部24が起動してから管理装置50に対して接続を開始するまでの間に、2種類の待ち時間(第一の待ち時間WT1及び第二の待ち時間WT2)が設定されている。
【0057】
<第一の待ち時間WT1>
第一の待ち時間WT1は、通信制御部24が起動してから、管理装置50に接続する接続プログラムの起動が終了するまでの時間である。言い換えれば、接続プログラムがメモリにロードされ、そのロードが完了するまでの待ち時間である。本実施形態では、最大の待ち時間を60秒とした無作為な時間が、第一の待ち時間WT1として設定されている。
【0058】
<第二の待ち時間WT2>
第二の待ち時間WT2は、接続プログラムの起動が終了してから、実際に管理装置50に対して接続処理を開始するまでの待ち時間である。言い換えれば、接続プログラムのロードが完了してから、管理装置50への接続を開始するまでの時間である。本実施形態では、最大の待ち時間を600秒(10分)とした無作為な時間が、第二の待ち時間WT2として設定されている。
【0059】
このように通信制御部24を起動してから管理装置50との接続処理を開始するまでの時間を、2つの無作為な待ち時間(第一の待ち時間WT1及び第二の待ち時間WT2)によって遅延させる処理が、接続開始ウェイト処理である。2段階で無作為な待ち時間を設定することにより、1段階で無作為な待ち時間を設定するよりも、給水装置10から管理装置50に対する接続タイミングのばらつきの度合いが大きくなる。そのため、複数の給水装置10が管理装置50に対して同時に通信接続を行うことが抑制され、同時接続による輻輳の発生を抑制することができる。
【0060】
なお、本実施形態では2段階で無作為な待ち時間を設定して接続を開始しているが、これは一例であり、無作為な待ち時間を設けるのは一段階でもよく、第一の待ち時間WT1又は第二の待ち時間WT2のいずれか一方を無作為な待ち時間にし、管理装置50との接続を開始してもよい。また、2段階目の第二の待ち時間WT2の後に、さらに無作為な待ち時間を設定して、管理装置50との接続を開始してもよい。
【0061】
<待ち時間の生成方法について>
次に、第一の待ち時間WT1及び第二の待ち時間WT2の生成方法について説明する。
本実施形態において、通信制御部24は、疑似的な乱数を発生する疑似乱数発生器40を備えており、通信制御部24は、疑似乱数発生器40を用いて第一の待ち時間WT1及び第二の待ち時間WT2を生成する。具体的には、通信制御部24は、エントロピープールを収集し、収集したエントロピープールに基づいて第一の待ち時間WT1及び第二の待ち時間WT2を生成する。エントロピープールとは、通信制御部24が取得する不規則かつ予測できないイベント情報の集合である。本実施形態において、通信制御部24は、通信制御部24のOSが取得するシステムログ41からエントロピープールを収集する。
【0062】
より詳細に述べると、システムログ41は、通信制御部24の機能を実行するCPUに搭載されたOSによって取得されるデータである。システムログ41には、通信制御部24の起動と共に発生した各種イベントに関する情報が記録されている。システムログ41には、例えば、制御部22や通信器25との通信メッセージ、通信制御部24の起動と終了、OSが取得する警告やエラー情報などが、その発生時刻と共に蓄積されている。
そのため、通信制御部24のシステムログ41は、複数の給水装置10のそれぞれに固有のイベント履歴データとなり、イベントの発生と共にその内容が更新される。
したがって、複数の給水装置10の通信制御部24は、それぞれ固有のエントロピープール(不規則かつ予測できないイベント情報の集合)に基づいて疑似乱数を生成することができる。
【0063】
第一の待ち時間WT1及び第二の待ち時間WT2は、この通信制御部24のOSが取得するシステムログ41に基づいて生成されたエントロピープールを疑似乱数発生器40に入力することによって生成される。なお、本実施形態では、このシステムログ41は履歴情報記憶部28に記録されている。
【0064】
疑似乱数発生器40が出力する疑似乱数は、所定の最大待ち時間を上限とする無作為な数値である。第一の待ち時間WT1の最大待ち時間については、接続プログラムの起動時間を考慮して30秒~90秒の間で設定するのがよく、60秒とするの望ましい。
第二の待ち時間WT2の最大値については、例えば管理装置50が管理する給水装置10の台数を考慮して設定するのがよい。本実施形態では、第二の待ち時間WT2の最大待ち時間を600秒(10分)とした。これは一例であり、最大の待ち時間の設定は、給水装置管理システム1の構成に応じて変更されてよい。
【0065】
また、疑似乱数を生成する際、上述したシステムログ41と共に、給水装置10の固有情報を組み合わせてもよい。給水装置10の固有情報として、例えば、給水装置識別情報記憶部31に記憶された識別情報、制御盤16の製造番号、給水装置10の故障来歴、及び、給水装置10の位置情報等が含まれてよい。
なお、疑似乱数の生成方法は上述した方法に限定されない。例えば線形合同法など、公知の疑似乱数生成アルゴリズムを用いて疑似乱数を生成してもよい。
【0066】
また、本実施形態では疑似乱数の発生にソフトウェアによる疑似乱数発生器40を用いているが、乱数を物理的な手法で取得してもよい。例えば、電気的にランダムノイズを発生させ、任意の時刻におけるノイズの値を時間に変換することにより、無作為なタイミングを設定する。電気的に発生させたノイズであるため定期的にその値を取得してもランダム値になる。このランダムノイズは、例えば定電圧ダイオードに電圧を加え、ダイオードのカソード側から発生させたアバランシェノイズ、所謂ホワイトノイズであってもよく、また、-3dBのフィルタを通したピンクノイズであってもよい。なお、ホワイトノイズ又はピンクノイズは測定機の周波数特性を測定する際にも使用される。
【0067】
<<接続開始ウェイト処理>>
図6に、通信制御部24が実行する接続開始ウェイト処理(ステップS11)の流れを示す。通信制御部24は、先ず、エントロピープールを収集する(ステップS20)。具体的には、通信制御部24は、CPUに搭載されたOSが蓄積し、履歴情報記憶部28に記録されたシステムログ41を取得する。
【0068】
次に、通信制御部24は、第一の待ち時間WT1を生成する(ステップS21)。続いいて第二の待ち時間WT2を生成する(ステップS22)。通信制御部24は、例えばステップS21及びS22において、ステップS20で収集したエントロピープールを疑似乱数発生器40に入力することによって、第一の待ち時間WT1及び第二の待ち時間WT2を生成する。
【0069】
続いて通信制御部24は、第一のウェイト処理(ステップS23)を実行する。すなわち、通信制御部24が起動してからステップS31で生成した第一の待ち時間WT1経過するまで待機する。第一の待ち時間WT1経過後、通信制御部24は、管理装置50に接続する接続プログラムを起動、具体的には不揮発性メモリ(不図示)から揮発性メモリに接続プログラムをロードする(ステップS24)。
【0070】
そして通信制御部24は、第二のウェイト処理(ステップS25)を実行し、ステップS22で生成した第二の待ち時間WT2の経過後に、接続開始ウェイト処理(ステップS11)を終了し、引き続き、管理装置50に対する接続処理(図4のステップS12)を実行する。
【0071】
以上で説明した接続開始ウェイト処理によって、複数の給水装置10は、それぞれが無作為なタイミングで管理装置50に対して通信接続を開始する。そのため、複数の給水装置10が同時に管理装置50に対して通信接続を行うことによる輻輳を回避し、安定した通信品質を確保することができる。
また、2段階で無作為な待ち時間を設定することにより、給水装置10から管理装置50に対する接続タイミングのばらつきの度合いを大きくすることができる。
【0072】
<管理装置に対する接続処理>
次に、図4の管理装置50に対する接続処理(ステップS12)について説明する。管理装置50に対する接続処理は、移動体通信回線MNに接続する処理と、接続した移動体通信回線MN及びインターネット回線INの通信品質を測定する処理とを含む。具体的には、通信制御部24は、所定時間内に管理装置50から受信した通信パケット数又は通信時間に基づいて、通信回線の品質を測定する。
【0073】
ここで、通信品質を、通信パケット数又は通信時間に基づいて測定することについて説明する。
従来、通信品質については、無線電波の受信信号レベルに基づいて、すなわち、通信器25が接続する基地局Bによって送信される無線電波に基づいて測定されていた。
しかしながら、基地局Bから高い信号レベルの無線電波を受信することができても、基地局Bから先のインターネット回線INが輻輳状態にある場合、送信した通信パケットが、相手先(管理装置50)まで到達することなく失われる可能性がある。
そのため、測定した無線電波の受信信号レベルが高いときでも、管理装置50と正常に通信できない場合があった。
本実施形態では、確実に接続されているか否かを判定するため、無線電波の受信信号レベルではなく、管理装置50から受信した通信パケット数又は通信時間に基づいて通信回線の品質を測定する。所定の通信時間において実際に通信相手に到達した通信パケット数を算出することにより通信回線の品質を測定することにより、通信回線の信頼性を高めることができる。
【0074】
図7に、通信制御部24が管理装置50に接続する際の接続処理(管理装置接続処理)の流れを示す。
先ず通信制御部24は、移動体通信回線MNに接続を開始する(ステップS30)。具体的には、APN(Access Point Name)及び認証情報を外部の認証サーバに対して送信し、認証を受ける。
次に通信制御部24は、管理装置50に応答要求パケット(通信パケット)を送信する(ステップS31)。具体的には、通信制御部24は、管理装置50に対してPINGコマンドを実行する。PINGコマンドとは、ICMP(Internet Control Message Protocol)を利用したネットワーク診断プログラムである。
【0075】
続いて通信制御部24は、管理装置50から応答パケット(通信パケット)を受信する(ステップS32)。通信品質が低下した状況では、管理装置50が送信した応答パケットの一部又は全てが給水装置10まで到達することなく失われることがある。また、通信制御部24が送信した応答要求パケットが管理装置50に到達することなく失われ、管理装置50が応答パケットを送信しないこともある。
【0076】
次に通信制御部24は、受信した応答パケットの数量(通信パケット数)及び通信時間を算出し、通信品質の測定を行う(ステップ33)。
通信制御部24は、通信品質の測定結果に基づいて、通信障害の有無を判定する(図4のステップS13)。例えば、送信した応答要求パケットの数量より、受信した応答パケットの数量が大幅に小さい場合、何らかの障害で通信パケットが届いていない可能性があり、通信障害有りと判定する。また、応答パケットの受信に通常よりも多くの時間がかかっている場合、通信障害有と判定する。通信障害有りと判定した場合、再起動ウェイト処理(ステップS14)が実行される。
【0077】
<再起動ウェイト処理>
次に、通信障害有りと判定された場合に実行される再起動ウェイト処理(ステップS14)について説明する。
移動体通信回線MNについて通信障害有りと判定された場合(図4のステップS13でYes)、移動体通信回線MNが逼迫した状態にあると推測される。この状態で、管理装置50に再接続を繰り返し実行すると、通信回線の逼迫した状態をさらに悪化させてしまうおそれがある。そこで、再起動ウェイト処理は、再起動と再接続を繰り返し試みることによる通信回線の逼迫した状態を回避するために、再起動するまでの待ち時間を設定するウェイト処理を実行する。
【0078】
図8に、通信制御部24が実行する再起動ウェイト処理(ステップS14)の詳細な流れを示す。先ず通信制御部24は、通信制御部24の起動後の経過時間Tを取得する(ステップS40)。起動後の経過時間Tは、例えば給水装置10の制御盤16に設けられたカウントアップタイマによって取得することができる。カウントアップタイマは、起動後の経過時間を測定しており、測定結果は起動する毎にリセットされる。
【0079】
次に、通信制御部24は、起動後の経過時間Tが予め設定された閾値TH1を上回るか否かを判定する(ステップS41)。
この判定処理は、給水装置10を試験運転する際に、不必要に再起動するまでの時間が長くなることを防止するために実施される。動作検証やメンテナンス作業時に行われる試験運転では、給水装置10を短時間だけ起動して短時間のうちに再起動する場合が多い。閾値TH1は、給水装置10が試験運転されているのか否かを判定するために設定された閾値である。閾値TH1は、例えば1時間に設定される。動作検証等に1時間以上かかる場合は、閾値TH1を2時間に設定してもよい。
通信制御部24が起動後の経過時間Tが、閾値TH1に設定された時間、例えば1時間以内である場合は、試験運転中であると判断し(ステップS41でNo)、待ち時間を初期化する(ステップS45)。再起動ウェイト処理は終了し、通信制御部24は直ちに再起動される。
【0080】
起動後の経過時間Tが閾値TH1を超える場合は、継続して使用されている状態で本運転状態にあると推定され、試験運転中ではないと判定する(ステップS41でYes)。
【0081】
給水装置10が本運転状態であると判定した場合、通信制御部24は、再起動までの待ち時間を算出する(ステップS42)。
本実施形態において、再起動までの待ち時間は、再起動されるたびに増加するように設定されている。これは、管理装置50と接続できない場合、復旧に時間がかかっていることが推測され、短期間に管理装置50への接続を繰り返すと、かえって通信回線が逼迫した状態を助長するおそれがあるからである。
そのため、本実施形態において、再起動するまでの待ち時間が再起動の回数に応じて長くなるよう設定されている。
【0082】
具体的には、通信制御部24は、前回の再起動時の待ち時間を待ち時間記憶部32から読み出し、所定の係数Kを乗算することによって今回(n回目)の待ち時間を算出する。すなわち、n回目の再起動時の待ち時間WT(n)を、次の式によって求める。ここで、WT(n-1)は前回の待ち時間、所定の係数Kは1より大きい実数である。
【0083】
【数1】
・・・・・・・・(数式1)
【0084】
例えば、所定の係数Kが「2」である場合、前回(n-1回目)の待ち時間の2倍の時間が今回(n回目)の待ち時間として設定される。
【0085】
再起動するまでの待ち時間の算定方法は、上記の方法に限定されず、別の方法でもよい。例えば、次の式によって求めることもできる。
【0086】
【数2】
・・・・・・・(数式2)
ここで、ここでWT(0)は待ち時間WTの初期値であり、nは再起動を行った回数である。
通信制御部24は、ステップ42において、数式1又は数式2を用いてn回目の待ち時間WT(n)を算出した後、算出した待ち時間WT(n)待ち(ウェイト処理:ステップS43)、待ち時間記憶部32に待ち時間WT(n)を記憶(ステップS44)し、再起動ウェイト処理を終了する。
【0087】
再起動ウェイト処理において、数式1又は数式2を用いて待ち時間WT(n)を算出することで、通信制御部24は、再起動するたびに待ち時間が増加するウェイト処理を実行するようになる。すなわち、数式1及び数式2において、係数Kが1より大きい実数であるため、待ち時間WTは、再起動を行う回数に応じて指数関数的に増加する。再起動の回数に応じて待ち時間WTが増加することから、通信制御部24が再起動と再接続を繰り返しても、通信回線の逼迫した状態を助長することが避けられ、悪化させてしまう事態を回避することができる。
【0088】
なお、上述したようにステップS41で起動後の経過時間Tが閾値TH1を超えると判定されなかった場合(ステップS41でNo)、給水装置10は試験運転状態にあると推定される。この時、通信制御部24は、記憶部27の待ち時間をリセットしてから再起動ウェイト処理を終了する。すなわち、試験運転の場合には、ウェイト処理を実行する必要がなく、待ち時間を指数関数的に増加させる必要もないため、待ち時間記憶部32に初期値であるWT(0)を格納(ステップS45)して、再起動する。
【0089】
上述したように、本実施形態の通信制御部24は、無作為なタイミングで管理装置50に接続を開始すると共に、接続中の移動体通信回線MNの通信品質を測定し、測定結果に基づいて移動体通信回線MNの切替制御を行う。これにより、給水装置10と管理装置50との間で安定した通信回線を確保することができる。
【0090】
<<定期通知処理>>
続いて、給水装置10と管理装置50が上述した起動接続処理によって接続した後に定期的に実行される定期通知処理について説明する。
通信制御部24は、給水装置10の運転情報、設定情報又は異常に関する履歴情報を管理装置50に対して定期的に送信する定期通知処理を行っている。
【0091】
図9は、通信制御部24が実行する定期通知処理の流れを示している。定期通知処理は、例えば24時間ごとに通信制御部24によって実行される。
定期通知処理において、まず、通信制御部24は、給水装置識別情報記憶部31に記憶された給水装置識別情報を取得する(ステップS50)。次に、通信制御部24は、運転情報取得部23を介してポンプユニット12の運転情報を取得する(ステップS51)。そして、履歴情報記憶部28に記憶された給水装置10の異常に関する情報の履歴データを取得する(ステップS52)。履歴情報記憶部28は、送信済みの履歴データと、未送信の履歴データを区別可能に記憶しており、通信制御部24は、履歴情報記憶部28に記憶された履歴データのうち、未送信の履歴データを取得する。
【0092】
続いて、通信制御部24は、設定記憶部29に記憶された設定情報を取得する(ステップS53)。そして通信制御部24は、ステップS50で取得した給水装置識別情報と、ステップS51で取得した履歴データと、とステップS52で取得した設定情報と、を管理装置50に送信して(ステップS54)、定期通知処理を終了する。
【0093】
以上の定期通知処理によって、運転情報、履歴データ、及び設定情報は、給水装置識別情報と共に管理装置50に送信される。したがって、管理装置50のオペレータは、給水装置識別情報ごとに運転情報、履歴データ、及び設定情報を確認することができるため、複数の給水装置10を集中管理することができる。
なお、運転情報、履歴データ、及び設定情報のいずれか一つ、又は2つのみを給水装置識別情報と共に管理装置50に送信することとしてもよい。
【0094】
また、管理装置50のオペレータは、履歴データに何らかの異常がある場合に、履歴データと共に受信した運転情報及び設定情報を確認し、設定情報の変更の要否を判断することができる。設定情報の変更が必要な場合には、新たな設定情報を給水装置10に送信する。給水装置10は新たな設定情報を受信し、受信した設定情報に基づいて設定を変更する。定期的に給水装置の運転情報等を確認できるため、管理装置50のオペレータは、給水装置10に異常が発生した場合に迅速な対応をとることができる。
【0095】
次に、通知処理の変形例について説明する。上述した実施形態において、一定の時間間隔で定期的に履歴情報記憶部28に格納された履歴データを、遠隔の管理装置50へ送信することとして説明した。これに対して本変形例では、制御部22が異常を検出したときにその異常に関する情報を遠隔の管理装置50へ送信することとしてもよい。これにより、管理装置50のオペレータは、異常の発生を早期に認識することが可能となり、異常の種類に応じて迅速な対応をとることが可能となる。
【0096】
なお、本実施形態では、給水装置10が停電復帰した場合に実施される通信制御部24の起動したときの起動接続処理について説明したが、無作為なタイミングで通信器25が通信接続をすることは、給水装置が起動する場合に限定されない。
無作為なタイミングで通信器25を通信させる処理は、ポンプユニット12に関する異常を検知した場合であってもよい。
【0097】
例えば、給水装置10には「吸込み圧力低下通知」を通知する吸込み圧力発信器(通信器25の一例)が、給水装置10の吸込み側(給水装置10の一次側)に設置されている。吸込み圧力発信器は、何らかの原因で一次側の水道管圧が一定値以下になった場合に、給水装置10の通信制御部24により「吸い込み圧力低下通知」を送信するよう構成されている。
一次側の水道管圧が一定値以下となった場合、ポンプ13を起動させるとポンプ13が起動した建物以外の水道管を共用している建物に給水ができなくなるおそれがあるため、法令で、吸込み圧力低下の通知を行い、給水装置10を停止することが定められている。
この法令は、水道管に直結する給水装置全般に適用されるため、水道管が破裂する等の事象が発生した場合、複数の給水装置10が一斉に通知を行う場合がある。
そのため、吸込み圧力発振器(通信器25)が「吸込み圧力低下通知」を送信する際に、通信制御部24により無作為なタイミングで通信接続を開始するように制御する。これにより、複数の給水装置10が一斉に通知を行うことによる通信回線の輻輳を抑制することができる。
【0098】
また、地震等の災害発生時において検出器15が強い揺れを検出したとき、緊急停止すると共に通信器25により「緊急停止通知」を送信する場合がある。このような場合でも複数の給水装置10が一斉に「緊急停止通知」を行う可能性があることから、輻輳状態を抑制するために、通信制御部24により無作為なタイミングで通信接続を開始するよう制御してもよい。
【0099】
以上、図を用いて本発明の実施形態及び変形例を説明したが、この実施形態及び変形例は、本発明の理解を容易にするための一例であり、本発明を限定するものではない。つまり、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはもちろんである。
【符号の説明】
【0100】
1 給水装置管理システム
10 給水装置
11 基台
12 ポンプユニット
12A 第一のポンプユニット
12B 第二のポンプユニット
13 ポンプ
13A 第一のポンプ
13B 第二のポンプ
14 モータ(電動機)
14A 第一のモータ
14B 第二のモータ
15 検出器
15A 第一の検出器
15B 第二の検出器
16 制御盤
17 吸込口
17A 第一の吸込口
17B 第二の吸込口
18 合流管
19 合流吐出口
20 蓄圧タンク
21 インバータ
22 制御部
23 運転情報取得部
24 通信制御部
25 通信器(通信部)
26 操作パネル
27 記憶部
28 履歴情報記憶部(異常履歴情報記憶部)
29 設定記憶部
31 給水装置識別情報記憶部
32 待ち時間記憶部
40 疑似乱数発生器
41 システムログ
50 管理装置
WT1 第一の待ち時間
WT2 第二の待ち時間
WT 待ち時間
B 基地局
IN インターネット回線
MN 移動体通信回線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9