(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-22
(45)【発行日】2024-10-30
(54)【発明の名称】ジピロメテン-1-オン系化合物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C07D 207/44 20060101AFI20241023BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241023BHJP
A61K 31/4015 20060101ALI20241023BHJP
【FI】
C07D207/44
A61P35/00
A61K31/4015
(21)【出願番号】P 2023528168
(86)(22)【出願日】2021-01-26
(86)【国際出願番号】 CN2021073783
(87)【国際公開番号】W WO2022134262
(87)【国際公開日】2022-06-30
【審査請求日】2023-05-10
(31)【優先権主張番号】202011527195.7
(32)【優先日】2020-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521145657
【氏名又は名称】百▲順▼▲葯▼▲業▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】POSEIDON PHARMACEUTICAL CO., LTD.
(73)【特許権者】
【識別番号】521145668
【氏名又は名称】武▲漢▼大▲鵬▼▲葯▼▲業▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】WUHAN DAPENG PHARMACEUTICAL CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】陳 發普
(72)【発明者】
【氏名】石 聿新
(72)【発明者】
【氏名】陳 發凱
【審査官】▲来▼田 優来
(56)【参考文献】
【文献】Kazuhiro Kohori, et al.,"A Novel Synthesis of C/D-Rings Component of Phytochromobilin Dimethyl Ester",Bulletin of the Chemical Society of Japan,1994年,Vol.67, No.11,pp.3088-3093
【文献】Hideki Kinoshita, et al.,"A New and Convenient Wittig-type Reaction for the Preparation of Pyrromethenone Derivative",Chemistry Letters,1993年,Vol.22, No.8,pp.1441-1442
【文献】Takashi Kakiuchi, et al.,"Total Synthesis of (±)-Phytochromobilin Starting from Two Pyrrole Derivatives",Synlett,Vol.S1,1999年,pp.901-904
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式2の化合物と式3の化合物を縮合反応させることで得られ
る式1のジピロメテン-1-オン系化合物の製造方法であって、反応式は以下のとおりであり、
【化1】
式中、Rは水素、C
1~C
5アルキル基及びベンジル基のうちの1つから選ばれ、R
1はフェニルチオ基、フェニルスルフィニル基、フェニルスルホニル基、p-トリルチオ基、p-トルエンスルフィニル基、p-トルエンスルホニル基のうちの1つから選ばれ、R
2はメチル基、アルコキシカルボニル基、アセトキシメチル基、カルボキシル基及び水素のうちの1つから選ばれることを特徴とする、
ジピロメテン-1-オン系化合物の製造方法。
【請求項2】
Rは水素、C
1~C
5アルキル基から選ばれ、R
1はp-トリルチオ基、p-トルエンスルフィニル基、p-トルエンスルホニル基のうちの1つから選ばれ、R
2はメチル基、アルコキシカルボニル基及び水素のうちの1つから選ばれることを特徴とする、請求項1に記載のジピロメテン-1-オン系化合物
の製造方法。
【請求項3】
前記式1の化合物の構造式は次の構造のうちの1つから選ばれることを特徴とする、請求項1に記載のジピロメテン-1-オン系化合物
の製造方法。
【化2】
【請求項4】
前記縮合反応に使用される溶媒はメタノール、エタノール、イソプロパノール、DMSO、DMF、トルエン、キシレン、テトラヒドロフラン及びメチルテトラヒドロフランのうちの1つ又は複数から選ばれることを特徴とする、請求項
1に記載のジピロメテン-1-オン系化合物の製造方法。
【請求項5】
前記縮合反応は塩基触媒下で行い、前記塩基は水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及びDBUのうちの1つ又は複数から選ばれることを特徴とする、請求項
1に記載のジピロメテン-1-オン系化合物の製造方法。
【請求項6】
前記縮合反応の温度を15~150℃に制御することを特徴とする、請求項
1に記載のジピロメテン-1-オン系化合物の製造方法。
【請求項7】
前記縮合反応の温度を70~110℃に制御することを特徴とする、請求項6に記載のジピロメテン-1-オン系化合物の製造方法。
【請求項8】
式2の化合物と、式3の化合物と、塩基とのモル比は1:(0.5~2):(0.2~2)であることを特徴とする、請求項
5に記載のジピロメテン-1-オン系化合物の製造方法。
【請求項9】
式2の化合物と、式3の化合物と、塩基とのモル比は1:(0.8~1.2):(0.5~1)であることを特徴とする、請求項8に記載のジピロメテン-1-オン系化合物の製造方法。
【請求項10】
前記ジピロメテン-1-オン系化合物が、乳癌または肺癌を治療する医薬組成物として使用される、請求項1~9のいずれか一項に記載のジピロメテン-1-オン系化合物の
製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明特許は医薬品化学の分野に属し、より具体的には、本発明はジピロメテン-1-オン系化合物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ジピロメテン-1-オン系化合物は重要な医薬品中間体であるが、従来技術において、開示されていたジピロメテン-1-オン系化合物は種類が少なく、且つ該化合物自体の用途も研究が少なく、また、開示されていた具体的なジピロメテン-1-オン系化合物の合成方法は複雑であり、例えば、文献Bull.Chem.Pharm.Bull.Jp.1994,67(11),3088には、該種類の化合物の合成方法が報告されており、具体的には、該文献では3-p-トルエンスルホニルエチル-4-メチル-5-p-トルエンスルホニル1,5-ジヒドロ-2H-2-ピロロンを原料とし、DBU及びトリブチルホスフィンの触媒下でピロールアルデヒドと縮合させ、ジピロメテン-1-オン類を生成する。
【0003】
【0004】
また、5-p-トルエンスルホニル-2-ピロリドンの合成はp-トルエンスルホニルエチレンを出発原料とし、付加、縮合、脱脂、環化、臭素化、加水分解等のステップを経て、生成物を得る。
【0005】
【0006】
該経路は反応経路が長く、いくつかのステップでの収率が低く、分離が困難で、カラムクロマトグラフィー方法による分離が必要であり、工業化の要求に適していない。合成過程ではいくつかの高価な試薬、例えばトリブチルホスフィン、トリメチルアニリントリブロミド等を使用する必要があり、原料コストが増加し、そのほか、大きな汚染を起こすいくつかの試薬、例えばトリフルオロ酢酸、DBU等、及び強い毒性を持つか又は可燃性/引火性のいくつかの試薬、例えばメタンスルホニルクロリド等、ニトロメタン等を使用する必要があり、工業的生産が制約される。
【0007】
したがって、従来技術に存在する様々の問題を解決するために、より多くのジピロメテン-1-オン系化合物を開発し、ジピロメテン-1-オン系化合物のより多くの用途を掘り起こし、より経済的で、安全で、分離しやすいジピロメテン-1-オン系化合物の合成方法を研究する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は一定程度で従来技術に存在する問題を解決することであり、そのために、新規のジピロメテン-1-オン系化合物及びその製造方法並びに用途を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1態様において、本発明はジピロメテン-1-オン系化合物を提供し、その構造式が式1に示すとおりであり、
【化3】
式中、Rは水素、C1~C5アルキル基及びベンジル基のうちの1つから選ばれ、R1はフェニルチオ基、フェニルスルフィニル基、フェニルスルホニル基、p-トリルチオ基、p-トルエンスルフィニル基、p-トルエンスルホニル基のうちの1つから選ばれ、R2はメチル基、アルコキシカルボニル基、アルデヒド基、アセトキシメチル基、カルボキシル基及び水素のうちの1つから選ばれる。
好ましくは、Rは水素、C1~C5アルキル基から選ばれ、R1はp-トリルチオ基、p-トルエンスルフィニル基、p-トルエンスルホニル基のうちの1つから選ばれ、R2はメチル基、アルコキシカルボニル基及び水素のうちの1つから選ばれる。
より好ましくは、ジピロメテン-1-オン系化合物(式1に示す化合物)の構造式は次の構造から選ばれる。
【化4】
【0010】
本発明の第2態様において、本発明は上記化合物の製造方法をさらに提供する。前記化合物は式2の化合物と式3の化合物を縮合反応させることで得られ、反応式は以下のとおりであり、
【化5】
式中、Rは水素、C1~C5アルキル基及びベンジル基のうちの1つから選ばれ、R1はフェニルチオ基、フェニルスルフィニル基、フェニルスルホニル基、p-トリルチオ基、p-トルエンスルフィニル基、p-トルエンスルホニル基のうちの1つから選ばれ、R2はメチル基、アルコキシカルボニル基、アセトキシメチル基、カルボキシル基及び水素のうちの1つから選ばれる。
本発明の実施例によれば、前記縮合反応に使用される溶媒はメタノール、エタノール、イソプロパノール、DMSO、DMF、トルエン、キシレン、テトラヒドロフラン及びメチルテトラヒドロフランのうちの1つ又は複数から選ばれる。
【0011】
本発明の実施例によれば、前記縮合反応は塩基触媒下で行う。
【0012】
本発明の実施例によれば、前記縮合反応は塩基触媒下で行い、好ましくは、前記塩基は水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及びDBUのうちの1つ又は複数から選ばれる。
【0013】
本発明の実施例によれば、前記縮合反応の温度を15~150℃に制御し、好ましくは70~110℃に制御する。
【0014】
本発明の実施例によれば、式2の化合物と、式3の化合物と、塩基とのモル比は1:(0.5~2):(0.2~2)であり、好ましくは1:(0.8~1.2):(0.5~1)である。
【0015】
本発明は上記のジピロメテン-1-オンの、腫瘍を治療する医薬の製造における用途をさらに提供する。
【0016】
本発明の実施例によれば、前記腫瘍は乳癌又は肺癌である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の有益な効果は主に以下のとおりである。
【0018】
1、本発明は、腫瘍、例えば、乳癌又は肺癌を治療する医薬を製造することができる新規のジピロメテン-1-オン系化合物を提供する。
【0019】
2、本発明は新規のジピロメテン-1-オン系化合物の製造方法を提供し、その製造プロセスが簡単で、条件が穏和で、室温で実行可能であり、コストが低い。従来技術における類似の化合物の合成方法に比べて、本発明はトリブチルホスフィン、トリフルオロ酢酸、ニトロメタン等の試薬を省略し、原料が簡単で入手しやすく、より経済的で、より安全で、分離精製がより容易で、工業的生産に適する。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下において本発明の実施例を詳細に説明する。以下に説明される実施例は例示的なものであり、単に本発明を解釈するためのものに過ぎず、本発明を限定するものと理解すべきではない。NMRはBruker-AMX400核磁気共鳴分光計で測定し、ESI-MSはFinnigan-MAT-95質量分析計で測定し、いずれの試薬も分析用試薬である(国薬試剤社)。説明されていない化合物原料は全て市場から購入される。以下に記載の実施例において、tert-ブチル5-ホルミル-4-メチル-3-メトキシカルボニルエチル-2-ピロールカルボキシラート(式4に示す化合物)は文献Bull.Chem.Soc.Jpn.,1994,67,3088~3093の方法で製造し、3,5-ジメチル-4-メトキシカルボニルエチルピロールカルボキシアルデヒド(式8に示す化合物)は文献J.Chem.Soc.,Perkin I,1987,265~276の方法で製造し、4-メトキシカルボニルエチル-3-メチル-2-ピロールカルボキシアルデヒド(式9に示す化合物)は文献Tetrahedron,1990,42,7599の方法で製造し、2,2-ジメトキシプロピルアミン(式13に示す化合物)は文献Euro.J.Med.Chem.,1995,30,931~942の方法で製造し、4-p-トリルチオブチリルクロリド(式14に示す化合物)は文献MedChemComm,2017,8,1268~1274の方法で製造する。
【0021】
<実施例1>
9-tert-ブトキシカルボニル-2,7-ジメチル-8-(2-メトキシカルボニルエチル)-3-(2-p-トリルチオエチル)-ジピロメテン-1-オン(式1aに示す化合物)の合成
【0022】
【0023】
窒素保護下で、14.85グラム(42.8mmol)の1-tert-ブトキシカルボニル-3-p-トルエンスルホニルエチル-4-メチル-1,5-ジヒドロ-2H-2-ピロロン(式5に示す化合物)と11.80グラム(40.0mmol)のtert-ブチル5-ホルミル-4-メチル-3-メトキシカルボニルエチル-2-ピロールカルボキシラート(式4に示す化合物)とを混合し、20ミリリットルのトルエンで溶解させ、さらに4.0ミリリットルのDBUを加え、90℃で保温しながら10時間撹拌し、降温させ、減圧蒸留して溶媒を除去し、残留物をジクロロメタンで溶解させ、希塩酸でpH5に酸性化させ、ジクロロメタン層を分離し、濃縮させ、残留物をエタノールで再結晶し、13.60グラムの黄色固体を得、収率は73%である。1H NMR(400MHz,CDCl3):δ1.55(s,9H)、2.06(s,3H)、2.13(s,3H)、2.27(s,3H)、2.53(t,J=8.0Hz,2H)、2.80(t,J=7.2Hz,2H)、3.03(t,J=8.0Hz,2H)、3.15(t,J=7.2Hz,2H)、3.71(s,3H)、6.02(s,1H)、7.03(d,J=8.1Hz,2H)、7.23(d,J=8.1Hz,2H)、9.91(s,1H)、10.17(s,1H)、ESI-Mass:546.63[M+Na]+。
【0024】
<実施例2>
9-tert-ブトキシカルボニル-3,7-ジメチル-8-(2-メトキシカルボニルエチル)-2-(2-p-トルエンスルフィニルエチル)-ジピロメテン-1-オン(式1bに示す化合物)の合成
【0025】
【0026】
窒素保護下で、3.47グラム(10mmol)の1-tert-ブトキシカルボニル-3-p-トルエンスルフィニルエチル-4-メチル-1,5-ジヒドロ-2H-2-ピロロン(式6に示す化合物)及び3.00グラム(10.2mmol)の化合物tert-ブチル5-ホルミル-4-メチル-3-メトキシカルボニルエチル-2-ピロールカルボキシラート(式4に示す化合物)を、20ミリリットルのトルエンで溶解させ、さらに4.0ミリリットルのDBUを加え、90℃で保温しながら10時間撹拌し、降温させ、減圧蒸留して溶媒を除去し、残留物をジクロロメタンで溶解させ、希塩酸でpH5に酸性化させ、ジクロロメタン層を分離し、濃縮させ、残留物をエタノールで再結晶し、3.56グラムの黄色固体を得、収率は66%である。1H NMR(400MHz,CDCl3):δ1.57(s,9H)、2.08(s,3H)、2.15(s,3H)、2.30(s,3H)、2.54(t,J=8.0Hz,2H)、2.80(t,J=7.2Hz,2H)、3.03(t,J=8.0Hz,2H)、3.17(t,J=7.2Hz,2H)、3.70(s,3H)、6.00(s,1H)、7.03(d,J=8.0Hz,2H)、7.23(d,J=8.0Hz,2H)、9.89(s,1H)、10.20(s,1H)、ESI-Mass:563.45[M+Na]+。
【0027】
<実施例3>
9-tert-ブトキシカルボニル-3,7-ジメチル-8-(2-メトキシカルボニルエチル)-2-(2-p-トルエンスルホニルエチル)-ジピロメテン-1-オン(式1cに示す化合物)の合成
【0028】
【0029】
窒素保護下で、2.80グラム(10mmol)の1-tert-ブトキシカルボニル-3-p-トルエンスルホニルエチル-4-メチル-1,5-ジヒドロ-2H-2-ピロロン(式7に示す化合物)及び3.00グラム(10.2mmol)の化合物tert-ブチル5-ホルミル-4-メチル-3-メトキシカルボニルエチル-2-ピロールカルボキシラート(式4に示す化合物)を、20ミリリットルのトルエンで溶解させ、さらに4.0ミリリットルのDBUを加え、90℃で保温しながら10時間撹拌し、降温させ、減圧蒸留して溶媒を除去し、残留物をジクロロメタンで溶解させ、希塩酸でpH5に酸性化させ、ジクロロメタン層を分離し、濃縮させ、残留物をエタノールで再結晶し、3.31グラムの黄色固体を得、収率は56%である。1H NMR(400MHz,CDCl3):δ1.56(s,9H)、2.11(s,3H)、2.14(s,3H)、2.35(s,3H)、2.52(t,J=8.10Hz,2H)、2.87(t,J=7.18Hz,2H)、2.99(t,J=8.07Hz,2H)、3.45(t,J=7.30Hz,2H)、3.67(s,3H)、5.96(s,1H)、6.66(s,1H)、7.26(d,J=8.23Hz,2H)、7.72(d,J=8.23Hz,2H)、9.16(s,1H)、9.49(s,1H)、ESI-Mass:579.27[M+Na]+。
【0030】
<実施例4>
3,7,9-トリメチル-8-(2-メトキシカルボニルエチル)-2-(2-p-トリルチオエチル)-ジピロメテン-1-オン(式1dに示す化合物)の合成
【0031】
【0032】
3.47グラム(10mmol)の化合物1-tert-ブトキシカルボニル-3-p-トリルチオエチル-4-メチル-1,5-ジヒドロ-2H-2-ピロロン(式5に示す化合物)及び2.30グラム(11.0mmol)の3,5-ジメチル-4-メトキシカルボニルエチルピロールカルボキシアルデヒド(式8に示す化合物)を、20ミリリットルのトルエンで溶解させ、さらに4.0ミリリットルのDBUを加え、90℃で保温しながら10時間撹拌し、降温させ、減圧蒸留して溶媒を除去し、残留物をジクロロメタンで溶解させ、希塩酸でpH5に酸性化させ、ジクロロメタン層を分離し、濃縮させ、残留物をエタノールで再結晶し、2.32グラムの黄色固体を得、収率は53%である。1H NMR(400MHz,CDCl3):δ2.09(s,3H)、2.13(s,3H)、2.28(s,3H)、2.35(s,3H)、2.44(t,J=7.6Hz,2H)、2.69~2.64(m,4H)、3.08(t,J=7.6Hz,2H)、3.67(s,3H)、6.14(s,1H)、7.06(d,J=8.0Hz,2H)、7.23(d,J=8.0Hz,2H)、9.45(s,1H)、10.17(s,1H)、ESI-Mass:461.50[M+Na]+。
【0033】
<実施例5>
3,7,9-トリメチル-8-(2-メトキシカルボニルエチル)-2-(2-p-トルエンスルフィニルエチル)-ジピロメテン-1-オン(式1eに示す化合物)の合成
【0034】
【0035】
3.63グラム(10.0mmol)の1-tert-ブトキシカルボニル-3-p-トルエンスルフィニルエチル-4-メチル-1,5-ジヒドロ-2H-2-ピロロン(式6に示す化合物)及び2.30グラムの3,5-ジメチル-4-メトキシカルボニルエチル-2-ピロールカルボキシアルデヒド(式8に示す化合物)を、20ミリリットルのトルエンで溶解させ、さらに4.0ミリリットルのDBUを加え、90℃で保温しながら10時間撹拌し、降温させ、減圧蒸留して溶媒を除去し、残留物をジクロロメタンで溶解させ、希塩酸でpH5に酸性化させ、ジクロロメタン層を分離し、濃縮させ、残留物をエタノールで再結晶し、2.58グラムの黄色固体を得、収率は57%である。1H NMR(400MHz,CDCl3):δ2.10(s,3H)、2.13(s,3H)、2.28(s,3H)、2.36(s,3H)、2.45(t,J=7.4Hz,2H)、2.68~2.65(m,4H)、3.09(t,J=7.6Hz,2H)、3.67(s,3H)、6.14(s,1H)、7.07(d,J=8.0Hz,2H)、7.22(d,J=8.0Hz,2H)、9.44(s,1H)、10.16(s,1H)、ESI-Mass:477.22[M+Na]+。
【0036】
<実施例6>
3,7,9-トリメチル-8-(2-カルボキシルエチル)-2-(2-p-トリルチオエチル)-ジピロメテン-1-オン(式1fに示す化合物)の合成
【0037】
【0038】
窒素保護下で、3.47グラム(10mmol)の1-tert-ブトキシカルボニル-3-p-トルエンスルホニルエチル-4-メチル-1,5-ジヒドロ-2H-2-ピロロン(式7に示す化合物)及び2.30グラム(11.0mmol)の3,5-ジメチル-4-メトキシカルボニルエチルピロールカルボキシアルデヒド(式8に示す化合物)を、20ミリリットルのトルエンで溶解させ、さらに4ミリリットルのDBUを加え、80℃で保温しながら6時間撹拌し、降温させ、希塩酸でpH5に酸性化させ、ジクロロメタンで抽出し、黄色固体を析出させ、吸引濾過し、エタノールで洗浄し、2.22グラムの薄黄色固体を得、収率は65%である。1H NMR(400MHz,DMSO-D6):δ2.11(s,3H)、2.15(s,3H)、2.25(s,3H)、2.35(s,3H)、2.42(t,J=7.6Hz,2H)、2.62~2.66(m,4H)、3.10(t,J=7.6Hz,2H)、6.15(s,1H)、7.08(d,J=8.0Hz,2H)、7.21(d,J=8.0Hz,2H)、9.40(s,1H)、10.11(s,1H)、ESI-Mass:423.32[M-1]+。
【0039】
<実施例7>
3,7-ジメチル-8-(2-エトキシカルボニルエチル)-2-(2-p-トリルチオエチル)-ジピロメテン-1-オン(式1gに示す化合物)の合成
【0040】
【0041】
3.47グラム(10.0mmol)の1-tert-ブトキシカルボニル-3-p-トリルチオエチル-4-メチル-1,5-ジヒドロ-2H-2-ピロロン(式5に示す化合物)及び2.14グラム(11.0mmol)の4-メトキシカルボニルエチル-3-メチル-2-ピロールカルボキシアルデヒド(式9に示す化合物)を秤量し、20ミリリットルのトルエンで溶解させ、さらに4.0ミリリットルのDBUを加え、90℃で保温しながら5時間撹拌し、降温させ、減圧蒸留して溶媒を除去し、残留物をジクロロメタンで溶解させ、希塩酸でpH5に酸性化させ、ジクロロメタン層を分離し、濃縮させ、残留物をエタノールで再結晶し、2.80グラムの黄色固体を得、収率は66%である。1H NMR(400MHz,CDCl3):δ1.26(t,J=7.4Hz,3H)、2.12(s,3H)、2.16(s,3H)、2.27(s,3H)、2.52(t,J=8.3Hz,2H)、2.71~2.76(m,4H)、3.14(t,J=7.2Hz,2H)、4.15(q,J=7.4Hz,2H)、6.23(s,1H)、6.79(d,J=2.4Hz,2H)、7.05(d,J=8.0Hz,2H)、7.25(d,J=8.0Hz,2H)、10.51(s,1H)、11.15(s,1H)、ESI-Mass:461.20[M+Na]+。
【0042】
<実施例8>
3,7,9-トリメチル-8-(2-メトキシカルボニルエチル)-2-(2-p-トルエンスルフィニルエチル)-ジピロメテン-1-オン(式1hに示す化合物)の合成
【0043】
【0044】
3.63グラムの1-tert-ブトキシカルボニル-3-p-トルエンスルフィニルエチル-4-メチル-1,5-ジヒドロ-2H-2-ピロロン(式6に示す化合物)及び1.95グラムの4-メトキシカルボニルエチル-3-メチル-2-ピロールカルボキシアルデヒド(式9に示す化合物)を秤量し、20ミリリットルのトルエンで溶解させ、さらに4.0ミリリットルのDBUを加え、90℃で保温しながら10時間撹拌し、降温させ、減圧蒸留して溶媒を除去し、残留物をジクロロメタンで溶解させ、希塩酸でpH5に酸性化させ、ジクロロメタン層を分離し、濃縮させ、残留物をエタノールで再結晶し、2.24グラムの黄色固体を得、収率は51%である。1H NMR(400MHz,CDCl3):δ1HNMR(400MHz,CDCl3):δ1.26(t,J=7.2Hz,3H)、2.11(s,3H)、2.16(s,3H)、2.28(s,3H)、2.57(t,J=8.0Hz,2H)、2.70~2.77(m,4H)、3.14(t,J=7.2Hz,2H)、4.16(q,J=7.2Hz,2H)、6.22(s,1H)、6.79(d,J=2.4Hz,2H)、7.07(d,J=8.0Hz,2H)、7.25(d,J=8.0Hz,2H)、10.51(s,1H)、11.15(s,1H)、ESI-Mass:477.22[M+Na]+。
【0045】
<実施例9>
3,7,9-トリメチル-8-(2-メトキシカルボニルエチル)-2-(2-p-トルエンスルホニルエチル)-ジピロメテン-1-オン(式1iに示す化合物)の合成
【0046】
【0047】
3.63グラムの1-tert-ブトキシカルボニル-3-p-トルエンスルフィニルエチル-4-メチル-1,5-ジヒドロ-2H-2-ピロロン(式7に示す化合物)及び1.95グラムの4-メトキシカルボニルエチル-3-メチル-2-ピロールカルボキシアルデヒド(式9に示す化合物)を秤量し、20ミリリットルのトルエンで溶解させ、さらに4.0ミリリットルのDBUを加え、90℃で保温しながら10時間撹拌し、降温させ、減圧蒸留して溶媒を除去し、残留物をジクロロメタンで溶解させ、希塩酸でpH5に酸性化させ、ジクロロメタン層を分離し、濃縮させ、残留物をエタノールで再結晶し、2.24グラムの黄色固体を得、収率は51%である。1H NMR(400MHz,CDCl3):δ1HNMR(400MHz,CDCl3):δ1.26(t,J=7.2Hz,3H)、2.11(s,3H)、2.16(s,3H)、2.28(s,3H)、2.57(t,J=8.0Hz,2H)、2.70~2.77(m,4H)、3.14(t,J=7.2Hz,2H)、4.16(q,J=7.2Hz,2H)、6.22(s,1H)、6.79(d,J=2.4Hz,2H)、7.07(d,J=8.0Hz,2H)、7.25(d,J=8.0Hz,2H)、10.51(s,1H)、11.15(s,1H)、ESI-Mass:477.22[M+Na]+。
【0048】
<実施例10>
実験群1 1-tert-ブトキシカルボニル-3-(2-p-トルエンスルフィニルエチル)-4-メチル-1H-2(5H)ピロロン(式7に示す化合物)の合成
【0049】
【0050】
3.47グラムの式5に示す化合物を秤量し、50ミリリットルのメタノールで溶解させ、5.7ミリリットルの30%過酸化水素を加え、75℃で2時間保温し、10%亜硫酸水素ナトリウム溶液で洗浄し、ジクロロメタンで抽出し、有機層を分離し、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濃縮させ、3.47グラムの薄黄色油状物を得、収率は91%であり、そのまま次の反応に使用する。
【0051】
実験群2 N-tert-ブトキシカルボニル-3-(2-p-トルエンスルフィニルエチル)-4-メチル-1H-2(5H)ピロロン(式6に示す化合物)の合成
【0052】
【0053】
3.47グラムの式5に示す化合物を秤量し、50ミリリットルのジクロロメタンで溶解させ、0℃まで降温させ、2.21グラムの85%m-クロロ過安息香酸をバッチで加え、温度を5℃以下に制御し、添加が完了した後に保温しながら引き続き2時間撹拌し、10%亜硫酸水素ナトリウム溶液で洗浄し、有機層を分離し、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濃縮させ、3.48グラムの薄黄色油状物を得、収率は95%であり、そのまま次の反応に使用する。
【0054】
実験群3 N-tert-ブトキシカルボニル-3-(2-p-トリルチオエチル)-4-メチル-1H-2(5H)ピロロン(式5に示す化合物)の合成
【0055】
【0056】
6.80グラムの式10に示す化合物を秤量し、3.0グラムの水酸化ナトリウムが溶解した50ミリリットルのDMSOに入れ、室温で30分間撹拌し、反応物を100ミリリットルの氷水に入れ、酢酸エチルで抽出し、希塩酸で中性になるまで洗浄し、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濃縮させ、エタノールで再結晶し、6.0グラムの土色固体を得、収率は84%である。1H NMR(400MHz,CDCl3):δ1.55(s,9H)、δ1.95(s,3H)、2.30(s,3H)、2.57(t,J=7.2Hz,2H)、3.11(t,J=7.2Hz,2H)、4.03(s,2H)、7.08(d,J=8.0Hz,2H)、7.25(d,J=8.0Hz,2H)、ESI-Mass:717.14[2M+Na]+。
【0057】
実験群4 N-アセトニル-N-tert-ブトキシカルボニル-4-p-トリルチオブタンアミド(式10に示す化合物)の合成
【0058】
【0059】
8グラムの式11に示す化合物を秤量し、50ミリリットルのジクロロメタンで溶解させ、さらに8.0グラムのDMAPを加え、0℃まで降温させ、90ミリリットルのジクロロメタンに溶解した13.2グラムのBoc2Oを緩徐に滴下し、温度を5℃を超えないように制御し、滴下が完了した後に15~30℃で10時間撹拌し、反応物を100ミリリットルの氷水に入れ、水相を希塩酸でpH3に酸性化させ、有機層を分離し、順に飽和炭酸水素ナトリウム、食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濃縮させ、10.81グラムの薄黄色液体であるN-アセトニル-N-tert-ブトキシカルボニル-4-p-トリルチオブタンアミドを得、収率は99%である。1H NMR(400MHz,CDCl3):δ1.47(s,9H)、1.93~1.97(m,2H)、2.14(s,3H)、2.30(s,3H)、2.93(t,J=6.0Hz,2H),3.08(t,J=7.2Hz,2H)、4.49(s,2H)、7.08(d,J=8.2Hz,2H)、7.25(d,J=8.2Hz,2H)、ESI-Mass:387.97[M+Na]+。
【0060】
実験群5 N-アセトニル-4-p-トリルチオブタンアミド(式11に示す化合物)の合成
【0061】
【0062】
11.73グラムの式12に示す化合物を50mlのジクロロメタンで溶解させ、8.0グラム(10.8mmol)の5%希塩酸を加え、室温で4時間撹拌し、静置し、ジクロロメタン層を分離し、順に飽和食塩水、水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濃縮させ、10.20グラムの白色固体であるN-アセトニル-4-p-トリルチオブタンアミドを得、収率は96%である。N-アセトニル-4-p-トリルチオブタンアミド:1H NMR(400MHz,CDCl3):δ1.92~1.97(m,2H)、2.20(s,3H)、2.31(s,3H)、2.39(t,6.8Hz,2H)、2.93(t,J=6.8Hz,2H)、4.14(d,J=4.0Hz,2H)、6.22(s,1H)、7.09(d,J=4.0Hz,2H)、7.26(d,J=8.0Hz,2H)、ESI-Mass:266.0[M+H]+。
【0063】
実験群6 N-(2,2-ジメトキシプロピル)-4-p-トリルチオブタンアミド(12)の合成
【0064】
【0065】
6.80グラムの2,2-ジメトキシプロピルアミン(式13に示す化合物、57.1mmol)を秤量し、20ミリリットルのジクロロメタンで溶解させ、さらに6.10グラムのトリエチルアミン(60.4mmol)を加え、0℃まで降温させ、20ミリリットルのジクロロメタンに溶解した13.03グラム(57.1mmol)の4-p-トリルチオブチリルクロリド(式14に示す化合物)を緩徐に滴下し、温度を5℃以下に制御し、滴下が完了した後に20~30℃下で10時間撹拌し、濾過し、N-(2,2-ジメトキシプロピル)-4-p-トリルチオブタンアミドを得、ケーキはジクロロメタンで洗浄し、濾液はそのまま次の反応に使用する。
【0066】
<実施例11>
1.実験方法
抗腫瘍活性試験
A-549乳癌細胞のインビトロ抗腫瘍活性を測定し、スルホローダミンB(SRB)法を採用する。対数増殖するA-549ヒト乳癌細胞を90μL/ウェルで96ウェルマイクロプレート内に接種し、24h培養した後に本発明で得られた化合物1a、1b、1c、1d、1e、1f、1g、1h、1iを含有する溶液をそれぞれ10μL/ウェルで添加し、いずれの濃度も3連ウェルとし、他に無細胞ゼロ調整ウェルも設ける。前記本発明で得られた化合物1a、1b、1c、1d、1e、1f、1g、1h、1iを含有する溶液の化合物濃度はいずれも10-5Mである。腫瘍細胞は37℃、5%CO2の条件下で72h培養した後、培養液を捨て、100μL/ウェルで10%TCAを添加して4℃で1h固定し、蒸留水で3回洗浄し、自然乾燥させる。4mg/mLのSRB(Sigma)染色液を100μL/ウェルで添加し、室温で15分間染色し、1%酢酸水溶液で3回洗浄し、自然乾燥させる。100μL/ウェルで10mMのTris-base水溶液を添加する。続いてマイクロプレートリーダーを用いて560nm波長で光学密度(OD560)値を測定する。(対照群OD値-投与群OD値)/対照群OD値×100%で被験物の腫瘍細胞増殖に対する阻害率を計算する。
【0067】
2.実験結果は表1に示すとおりである。
【0068】
【0069】
3.結論
上記濃度で化合物はA-549ヒト乳癌細胞に対して一定の阻害活性を有する。よって、本発明のジピロメテン-1-オンは腫瘍を治療する医薬又はリード化合物、特に乳癌、肺癌を治療する医薬及びリード化合物の製造に用いることができる。
【0070】
以上は本発明の実施例を示して説明したが、上記実施例は例示的なものであり、本発明を限定するものと理解してはいけないことが理解可能であり、当業者であれば本発明の範囲内で上記実施例に対する変更、修正、置換及び変形は可能である。