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  • -荷締め用ベルトの接合構造 図1
  • -荷締め用ベルトの接合構造 図2
  • -荷締め用ベルトの接合構造 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-22
(45)【発行日】2024-10-30
(54)【発明の名称】荷締め用ベルトの接合構造
(51)【国際特許分類】
   B65D 63/14 20060101AFI20241023BHJP
【FI】
B65D63/14 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018139973
(22)【出願日】2018-07-26
(65)【公開番号】P2020015526
(43)【公開日】2020-01-30
【審査請求日】2021-07-19
【審判番号】
【審判請求日】2023-04-21
【早期審理対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】510183730
【氏名又は名称】有限会社ファイバー浜松
(74)【代理人】
【識別番号】100136674
【弁理士】
【氏名又は名称】居藤 洋之
(72)【発明者】
【氏名】安立 敦彦
【合議体】
【審判長】金丸 治之
【審判官】木原 裕二
【審判官】稲葉 大紀
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-199116号公報(JP,A)
【文献】特開2003-170905号公報(JP,A)
【文献】実開昭48-004017(JP,U)
【文献】特開昭59-221216(JP,A)
【文献】特公昭49-2319(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D63/14,B29C65/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製の繊維を平たい帯状に織った荷締め用ベルト同士を互いに重ね合わせて一体的に接合する荷締め用ベルトの接合構造であって、
前記互いに重ね合わせた荷締め用ベルト同士間で貫通する貫通孔を有し、
前記貫通孔は、
前記荷締め用ベルトが荷締めに用いられる前の状態において、内周部分が溶融して前記互いに重ね合わせた荷締め用ベルト同士が前記貫通孔を塞がない状態で固化した融着部が形成されており、かつ、両端の開口部のうちの前記荷締め用ベルトが荷物に宛がわれる側の開口部に、前記溶融した材料の一部が外側に張り出して固化した張出部を有していることを特徴とする荷締め用ベルトの接合構造。
【請求項2】
請求項1に記載した荷締め用ベルトの接合構造において、
前記貫通孔は、複数形成されていることを特徴とする荷締め用ベルトの接合構造。
【請求項3】
請求項2に記載した荷締め用ベルトの接合構造において、
前記貫通孔は、
直径が2mm以下であることを特徴とする荷締め用ベルトの接合構造。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載した荷締め用ベルトの接合構造であって、
前記融着部は、
互いに隣接する貫通孔における融着部同士が繋がって形成されていることを特徴とする荷締め用ベルトの接合構造。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のうちのいずれか1つに記載した荷締め用ベルトの接合構造において、
前記荷締め用ベルトは、淡色で形成されていることを特徴とする荷締め用ベルトの接合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂製の繊維を平たい帯状に織った荷締め用ベルト同士を互いに重ね合わせて一体的に接合する荷締め用ベルトの接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、荷物を輸送または保管する際に荷物を縛る道具としてベルトが用いられている。例えば、下記特許文献1には、平坦な帯状に延びるベルトの一方の端部にバックルが連結された荷締め用のベルト部材が開示されている。この場合、ベルト部材は、ベルトの一方の端部が折り返されて縫合されることにより環状に形成されており、この環状部分にバックルが貫通して連結されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-104494号公報
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載されたベルト部材においては、バックルを連結する環状の部分が縫合によって形成されているため、縫合作業が煩雑で作業時間を要するという問題があった。
【発明の概要】
【0005】
本発明は上記問題に対処するためなされたもので、その目的は、樹脂製の繊維を平たい帯状に織った複数のベルトを簡単かつ短時間に互いに一体的に接合することができる荷締め用ベルトの接合構造を提供することにある。
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の特徴は、樹脂製の繊維を平たい帯状に織った荷締め用ベルト同士を互いに重ね合わせて一体的に接合する荷締め用ベルトの接合構造であって、互いに重ね合わせた荷締め用ベルト同士間で貫通する貫通孔を有し、貫通孔は、荷締め用ベルトが荷締めに用いられる前の状態において、内周部分が溶融して互いに重ね合わせた荷締め用ベルト同士が貫通孔を塞がない状態で固化した融着部が形成されており、かつ、両端の開口部のうちの荷締め用ベルトが荷物に宛がわれる側の開口部に、溶融した材料の一部が外側に張り出して固化した張出部を有していることにある。
【0007】
このように構成した本発明の特徴によれば、荷締め用ベルトの接合構造は、互いに重ね合された複数のベルトを貫通する複数の貫通孔を有するとともに、この貫通孔は内周部分が溶融して複数のベルト同士が固化した融着部が形成されているため、互いに重ね合わせたベルトを部分的に溶融することで簡単かつ短時間に互いに一体的に接合することができる。この場合、少なくとも2つの互いに重ね合わせたベルトは、針状または棒状の部分が加熱されてベルトを溶融する鏝またはレーザ光を用いて貫通孔を形成することができる。
【0008】
また、このように構成した本発明の特徴によれば、荷締め用ベルトの接合構造は、貫通孔における両端の開口部のうちの荷締め用ベルトが荷物に宛がわれる側の開口部に溶融した材料の一部が外側に張り出して固化した張出部が形成されているため、ベルトで物品を縛った場合に物品との間における摩擦抵抗を向上させてベルトの位置ずれを生じ難くすることができる。
【0009】
また、本発明の他の特徴は、前記荷締め用ベルトの接合構造において、貫通孔は、複数形成されていることにある。
【0010】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、荷締め用ベルトの接合構造は、貫通孔が複数形成されているため、貫通孔が同じ場合に1つ貫通孔を形成した場合に比べて荷締め用ベルトの強度の低下を抑えて接合することができる。また、この荷締め用ベルトの接合構造によれば、互いに接合される荷締め用ベルトにおける剥がれ易い部分に重点的に貫通孔を形成することができ、接合強度を向上させることができる。
【0011】
また、本発明の他の特徴は、前記荷締め用ベルトの接合構造において、貫通孔は、直径が2mm以下であることにある。
【0012】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、荷締め用ベルトの接合構造は、貫通孔の直径が2mm以下に形成されているため、貫通孔を目立ち難くすることができるとともに荷締め用ベルトの周辺に存在する物が貫通孔内に進入して引っ掛かることを防止することができる。
【0013】
また、本発明の他の特徴は、前記荷締め用ベルトの接合構造において、融着部は、互いに隣接する貫通孔における融着部同士が繋がって形成されていることにある。
【0014】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、荷締め用ベルトの接合構造は、互いに隣接する貫通孔における融着部同士が互いに繋がって一体化しているため荷締め用ベルト間の接合力を向上させることができる。
【0016】
また、本発明の他の特徴は、前記荷締め用ベルトの接合構造において、荷締め用ベルトは、淡色で形成されていることにある。
【0017】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、荷締め用ベルトの接合構造は、荷締め用ベルトが淡色で形成されているため、レーザ光によって貫通孔を精度良く短時間に成形することができる。この場合、淡色とは、白色や灰色などの白色系の色のほか、透明または半透明も含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係るベルトの接合構造を備えたベルトの主要部の外観構成を概略的に示す斜視図である。
図2図1に示すベルトにおける接合部および貫通孔の内部構成を模式的に示す部分断面図である。
図3図1に示すベルトにおける接合部となる部分にレーザ光を照射して貫通孔を形成する様子を模式的に示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係るベルトの接合構造の一実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明に係るベルトの接合構造を備えたベルト100の主要部の外観構成を概略的に示す斜視図である。このベルト100は、荷物(図示せず)を輸送または保管する際に荷物を押えたり縛ったりするものである。
【0020】
(ベルト100の構成)
ベルト100は、荷物に掛けられる長尺状の部品であり、幅広で平坦なベルト状に形成されている。より具体的には、ベルト100は、ポリプロピレン、ポリエステルまたはナイロンなどの樹脂製の繊維を引っ張り強度に優れた幅広の帯状に織って形成されている。この場合、ベルト100は、白色の生地で構成されている。また、ベルト100の長さは、用途に応じて適宜設定される。このベルト100の先端部には、連結部101が形成されている。
【0021】
連結部101は、フックFを連結するための部分であり、ベルト100の先端部を折り返してベルト100自身に接合することで環状に形成されている。ここで、フックFは、ベルト100を荷役用のパレット(図示せず)に引っ掛けるための部品であり、金属製の板状体を略J字状に折り曲げて形成されている。この連結部101には、ベルト100の先端部を折り曲げてベルト100自身に接合した部分に接合部102が形成されている。なお、図1においては、フックFを二点鎖線で示している。
【0022】
接合部102は、連結部101を環状に成形するために折り曲げられたベルト100の先端部をベルト100自身に接合する部分であり、互いに重ね合わせた2つのベルト100間に複数の貫通孔103を形成して構成されている。
【0023】
貫通孔103は、図2に示すように、互いに重ね合わせた2つのベルト100の生地間を貫通する孔である。この貫通孔103における内周面の表層には、融着部104が形成されている。融着部104は、互いに重ね合わせたベルト100の生地を加熱することで溶融させた後冷却することで2つのベルト100の生地を一体的に固化させた部分である。本実施形態において貫通孔103は、約1mmの直径に形成されている。この融着部104は、貫通孔103の内周面の全域に亘って円筒状に形成されている。
【0024】
この場合、融着部104は、互いに隣接する貫通孔103の融着部104同士が互いに繋がらず離隔する厚さで形成されている。これにより、接合部102の柔軟性を確保して曲げ易くすることができる。なお、融着部104は、互いに隣接する貫通孔103の融着部104同士が互いに繋がって形成されることで接合力を向上させることができる。なお、図2においては、融着部104を薄い灰色のハッチングで示している。
【0025】
また、貫通孔103は、一方の端部側の開口部に凹部105が形成されているとともに、他方の端部側の開口部に張出部106が形成されている。凹部105は、接合部102の表面を滑らかな面にするための部分であり、貫通孔103の開口部における外側から内部に向かう円錐面状の傾斜面で構成されている。この凹部105は、本実施形態においては、ベルト100における固縛対象である荷物に面する側とは反対側の面に形成されている。
【0026】
張出部106は、接合部102の表面の粗さを粗くさせるための部分であり、貫通孔103の開口部における外縁部の少なくとも一部が同開口部の周辺部分よりも外側に張り出して形成されている。本実施形態においては、張出部106は、ベルト100における固縛対象である荷物に面する側の面から環状に張り出して形成されている。また、張出部106の張り出し量は、0.3mm~2mm程度が好適である。
【0027】
(接合部102の製造)
次に、このように構成したベルト100における接合部102の製造方法について説明する。まず、作業者は、フックFが取り付けられていない直線状に延びるベルト100とフックFとをそれぞれ用意する。次に、作業者は、フックFの長穴状の取付孔にベルト100の先端部を通した後、この先端部を折り返してベルト100自身に重ね合わせる。
【0028】
次に、作業者は、ベルト100における互いに重ね合わせた部分を接合する。具体的には、作業者は、図3に示すように、ベルト100を構成する樹脂材を溶融することができる線状のレーザ光L(例えば、炭酸ガスレーザなど)を照射するレーザ溶着装置(図示せず)を用意するとともに、このレーザ溶融装置が備えるレーザ照射ヘッドHに対してベルト100における接合部102となる部分を配置してレーザ光Lを照射させる。
【0029】
この場合、作業者は、レーザ溶着装置に対してレーザ光Lを照射する強さ、時間および照射位置をそれぞれ設定する。ここで、レーザ光Lを照射する強さ、時間および照射位置は、ベルト100における接合部102となる部分において、互いに重ねられた2つのベルト100を溶融して貫通孔103を形成するレーザ光Lの照射の強さ、時間および照射位置である。なお、図3においては、レーザ光Lを濃い灰色のハッチングで示しているとともに、融着部104を薄い灰色のハッチングで示している。また、図3においては、レーザ照射ヘッドHが貫通孔103の形成位置ごとにレーザ光Lの照射と中断とを繰り返して移動する方向を破線矢印で示している。
【0030】
これにより、ベルト100には、接合部102となる互いに重ねられた2つのベルト100に対して指定された位置に貫通孔103が形成される。本実施形態においては、ベルト100における接合部102となる部分に縦横7つずつの正方形状に並んだ状態で貫通孔103が形成される。この場合、ベルト100は、接合部102となる互いに重ねられた2つのベルト100がレーザ光Lによってそれぞれ溶融して貫通孔103が形成されるとともに、その後のレーザ光の照射の停止によって再凝固することで互いに重ねられた2つのベルト100同士が一体的に繋がる融着部104が形成される。
【0031】
また、この場合、貫通孔103は、両端部におけるレーザ光Lが照射される側の開口部に凹部105が形成されるとともに、レーザ光Lが貫通する側の開口部には張出部106が形成される。これにより、ベルト100には、正方形状に並んだ複数の貫通孔103の集合によって互いに重ねられた2つのベルト100が貼り合わされた接合部102およびこの接合部102によって環状に形成された連結部101がそれぞれ形成される。なお、このベルト100は、両端部にそれぞれ接合部102および連結部101が形成されてフックFが設けられている。
【0032】
(ベルト100の作動)
次に、上記のように構成したベルト100の作動について説明する。このベルト100は、荷物(図示せず)を輸送または保管する際に荷物を押えたり縛ったりする。この場合、ベルト100は、ベルト100の両端部にそれぞれ取り付けられたフックFが荷役用のパレット(図示せず)に掛けられてこの荷役用のパレット上に載置された荷物を固定する。
【0033】
この場合、ベルト100は、複数の貫通孔103における各融着部104によって互いに重ね合されたベルト100同士が一体化しているため、荷物を縛る際の張力によって融着部104における2つのベルト100が剥がれて連結部101が解けてフックFが外れることはない。
【0034】
上記作動説明からも理解できるように、上記実施形態によれば、ベルト100の接合構造は、互いに重ね合された2つのベルト100を貫通する複数の貫通孔103を有するとともに、これらの貫通孔103は内周部分が溶融して2つのベルト100同士が固化した融着部104が形成されているため、互いに重ね合わせたベルト100を部分的に溶融することで簡単かつ短時間に互いに一体的に接合することができる。
【0035】
さらに、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。なお、各変形例の説明においては、参照する図における上記実施形態と同様の構成部分については同じ符号を付すとともに重服する説明は適宜省略する。
【0036】
例えば、上記実施形態においては、レーザ光Lを用いて貫通孔103を形成した。しかし、貫通孔103は、ベルト100を溶融して成形することができればよい。したがって、貫通孔103は、例えば、ベルト100の溶融温度まで加熱した針を挿し込むことで形成することもできる。
【0037】
また、上記実施形態においては、ベルト100は、貫通孔103の両端部における一方の開口部に凹部105を形成するとともに、他方の開口部に張出部106を形成して構成した。これにより、ベルト100は、接合部102における凹部105が形成された側の表面を滑らかにして手触りおよび美観を向上することができる。また、ベルト100は、接合部102における張出部106が形成された側の表面が荷物を縛った場合に荷物との間における摩擦抵抗を向上させてベルト100の位置ずれを生じ難くすることができる。しかし、ベルト100は、貫通孔103の両端部の開口部にそれぞれ凹部105または張出部106を形成してもよいし、凹部105および張出部106をそれぞれ省略して構成することもできる。
【0038】
また、上記実施形態においては、貫通孔103を複数形成した。しかし、貫通孔103は、少なくとも1つ形成されていればよい。
【0039】
また、上記実施形態においては、貫通孔103は、直径を約1mmに形成した。これにより、ベルト100は、貫通孔103を目立ち難くすることができるとともにベルト100の周辺に存在する物が貫通孔103内に進入して引っ掛かることを防止することができる。この場合、貫通孔103は、直径を2mm以下に形成することで同様の効果を発揮できる。しかし、貫通孔103は、直径を2mmを超える大きさに形成してもよいことは当然である。
【0040】
また、上記実施形態においては、ベルト100を白色で構成した。このように、ベルト100は、白色や灰色などの白色系の色のほか、透明または半透明などの淡色に形成することによりレーザ光Lによって貫通孔103を精度良く短時間に成形することができる。しかし、ベルト100は、黒色または紺色などの濃色で構成することもできる。
【0041】
また、上記実施形態においては、接合部102は、ベルト100の先端部を折り返して連結部101を成形した。しかし、接合部102は、1つのベルト100の両端部を互いに重ね合わせて接合してベルト100全体を環状に形成するようにしてもよいし、互いに独立した2つ以上のベルト100を互いに接合するようにしてもよい。
【0042】
また、上記実施形態においては、接合部102は、2つのベルト100を互いに重ね合せて接合するように構成した。しかし、接合部102は、少なくとも2つ以上のベルト100を重ね合せて接合するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0043】
F…フック、H…レーザ照射ヘッド、L…レーザ光、
100…ベルト、101…連結部、102…接合部、103…貫通孔、104…融着部、105…凹部、106…張出部。
図1
図2
図3