(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-22
(45)【発行日】2024-10-30
(54)【発明の名称】乾燥食品製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 3/44 20060101AFI20241023BHJP
【FI】
A23L3/44
(21)【出願番号】P 2020203823
(22)【出願日】2020-12-09
【審査請求日】2023-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】391063075
【氏名又は名称】アスザックフーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104787
【氏名又は名称】酒井 伸司
(72)【発明者】
【氏名】山本 萌
【審査官】二星 陽帥
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第00/070973(WO,A1)
【文献】特表2013-530725(JP,A)
【文献】特開平09-023807(JP,A)
【文献】特開平10-179097(JP,A)
【文献】特開平03-047115(JP,A)
【文献】米国特許第05044091(US,A)
【文献】特開平07-255381(JP,A)
【文献】特開2013-255477(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 3/44
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
日経テレコン
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水分を含有して流動性を有する食材を凍結乾燥させることで、加水せずに食することが可能な乾燥食品を製造する乾燥食品製造方法であって、
前記食材としての第1の食材を容器体に収容する第1の工程と、
前記容器体内の前記第1の食材を冷却して当該第1の食材の流動性を低下させる第2の工程と、
前記容器体内における前記第1の食材の上に前記食材としての第2の食材を収容する第3の工程と、
前記第1の食材および前記第2の食材を前記容器体内で凍結乾燥させる第4の工程とを少なくとも実施する乾燥食品製造方法。
【請求項2】
前記第3の工程に先立ち、前記第2の食材を冷却する第5の工程を実施する請求項1記載の乾燥食品製造方法。
【請求項3】
前記第1の工程に先立ち、第1の原材料を調理して前記第1の食材を生成する第6の工程を実施すると共に、
前記第3の工程に先立ち、第2の原材料を調理して前記第2の食材を生成する第7の工程を実施する請求項1または2記載の乾燥食品製造方法
。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水分を含有して流動性を有する食材を凍結乾燥させることで、加水せずに食することが可能な乾燥食品を製造する乾燥食品製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、下記の特許文献1には、凍結乾燥果実の製造方法が開示されている。具体的には、特許文献1に開示の製造方法では、最初に、果実の果肉を潰してペースト状に加工する。この際には、必要に応じて、果汁、香料、酸味料、着色料、ゲル化剤および糖分などを添加する。次いで、ペースト状に加工した果実に脂質含有材料を配合する。この際に、脂質含有材料の配合量が多いときには、後の工程において凍結し易くするために水分を加える。続いて、上記のように加工した果実を容器に充填した状態で-20℃以下まで冷却して凍結させた後に、公知の凍結乾燥処理によって乾燥させる。これにより、乾燥食品が完成する。
【0003】
一方、下記の特許文献2には、果実または野菜のペーストや搾り汁等を凍結乾燥させて乾燥食品を製造する製造方法が開示されている。具体的には、特許文献2に開示の製造方法では、最初に、原材料の果実等をペーストや搾り汁、エキスの状態(以下、「流体状食材」ともいう)に加工した後に寒天を配合する。この際には、流体状食材を加熱することで寒天を十分に溶解させる共に、必要に応じて加水して適度な粘度に調整する。次いで、寒天を配合した流体状食材を容器に充填して冷却する。この際には、流体状食材がゼリー状に固化する(以下、固化した食材を「ゼリー状食材」ともいう)。続いて、ゼリー状食材を任意の寸法に細断する。次いで、細断したゼリー状食材を冷却して凍結させた後に、公知の凍結乾燥処理によって乾燥させる。これにより、乾燥食品が完成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-208250号公報(第3-6頁)
【文献】特開2017-012119号公報(第3-7頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記特許文献1,2の製造方法、およびこれらの製造方法に従って製造した乾燥食品には、以下のような課題が存在する。具体的には、特許文献1に開示の製造方法では、「口に入れたときに口中の水分が吸い取られるような感じがしない食品」を提供することを目的として、凍結乾燥処理に先立ち、食材をペースト状に加工する工程、および脂質含有材料を配合する工程を実施している。また、特許文献2に開示の製造方法では、「カリッとした歯応えが感じられる程度の大きさの粒状物に加工した食品」を提供することを目的として、凍結乾燥処理に先立ち、食材に寒天を配合してゼリー状に加工する工程、およびセリー状の食材を任意の大きさおよび形状に細断する工程を実施している。
【0006】
この場合、両特許文献1,2に開示の製造方法に従って製造される乾燥食品は、いずれも、原材料を均一に混ぜ合わせた状態の単一の食材(特許文献1では、脂質含有材料等を配合したペースト状の果実:特許文献2では、流体状食材に寒天を配合して固化させたゼリー状食材)を凍結乾燥させることで製造されている。このため、完成した食品の外面全体が同様の外観(いずれの向きから見ても色味や素材感が同様の見た目)となっており、また、食品の何処を囓った場合においても同様の食感で同様の味が知覚される状態となっている。したがって、両特許文献に開示の製造方法に従って製造された乾燥食品は、従前の製造方法に従って製造された乾燥食品とは異なる食感となっているものの、その外観や味については、同様の原材料で製造された従前の乾燥食品と大差ない状態となっている。
【0007】
なお、上記特許文献1には、凍結乾燥処理によって生成した乾燥食品に対してチョコレート等のコーティング材料をコーティングしてコーティング菓子を製造する製造方法も開示されている。しかしながら、そのような製造方法であっても、チョコレート等でコーティングされた焼き菓子などの既存の食品とは外観、食感および味などが大きく相違する食品を提供するのは困難となっている。
【0008】
一方、出願人は、その外観、食感および味などの点において既存の乾燥食品とは大きく相違する趣向性の高い乾燥食品を提供すべく、色味や素材感、食感および味などが互いに相違する2種類以上の食材を層状に配置した状態で凍結乾燥させた乾燥食品を試作した。具体的には、一例として、2種類の食材(以下、この2種類の食材を「第1の食材」および「第2の食材」ともいう)を用いて2層の乾燥食品を製造する際には、最初に、ペースト状または液状の第1の食材、およびペースト状または液状の第2の食材をそれぞれ生成(調理)する。次いで、第1の食材を容器体に収容し、その上に、第2の食材を収容する。続いて、従前の製造方法と同様にして、両食材を凍結乾燥させる。これにより、乾燥食品が完成する。
【0009】
しかしながら、出願人が試作した乾燥食品では、その製造過程において、第2の食材を容器体に収容するときに、既に容器体内に収容されている第1の食材と新たに収容する第2の食材とが容器体内で混ざり合ってしまうことがある。特に、両食材のいずれか、または双方が液状であるとき(食材の流動性が高いとき)には、両食材の混ざり合の度合いが高くなり、最悪の場合には、恰も1種類の食材を容器体に収容したかのように混ざり合ってしまうことがある。このため、互いに相違する食材で構成された2層の乾燥食品を製造しようとしているにも拘わらず、第1の食材の層、および第2の食材の層の間に両食材が混ざり合った状態の混合食材の層が形成されたり、1種類の食材で構成されている従前の乾燥食品と同様に全体が混合食材で形成された状態となったりしてしまう。このため、上記のような製造方法では、その外観から2層の乾燥食品であることが判り難くなり、第1の食材の食感および味や第2の食材の食感および味を個々に知覚するのが困難となってしまう。
【0010】
なお、第1の食材の上に第2の食材を少量ずつ時間をかけて収容することで、両食材の混ざり合の度合いを軽減することが可能となる。しかしながら、両食材がペースト状または液状であり、水分を含んでいるため、両食材の収容を完了してから凍結乾燥を開始するまでの間に、第1の食材の水分が第2の食材の層に浸透したり、第2の食材の水分が第1の食材の層に浸透したりしてしまう。また、第2の食材の収容に要する時間が長くなり、この工程がボトルネックとなって乾燥食品の生産性が悪化し、製造コストの高騰を招くおそれもある。
【0011】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、製造コストの高騰を招くことなく、趣向性の高い乾燥食品を確実に製造し得る乾燥食品製造方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成すべく、請求項1記載の乾燥食品製造方法は、水分を含有して流動性を有する食材を凍結乾燥させることで、加水せずに食することが可能な乾燥食品を製造する乾燥食品製造方法であって、前記食材としての第1の食材を容器体に収容する第1の工程と、前記容器体内の前記第1の食材を冷却して当該第1の食材の流動性を低下させる第2の工程と、前記容器体内における前記第1の食材の上に前記食材としての第2の食材を収容する第3の工程と、前記第1の食材および前記第2の食材を前記容器体内で凍結乾燥させる第4の工程とを少なくとも実施する。
【0013】
また、請求項2記載の乾燥食品製造方法は、請求項1記載の乾燥食品製造方法において、前記第3の工程に先立ち、前記第2の食材を冷却する第5の工程を実施する。
【0014】
さらに、請求項3記載の乾燥食品製造方法は、請求項1または2記載の乾燥食品製造方法において、前記第1の工程に先立ち、第1の原材料を調理して前記第1の食材を生成する第6の工程を実施すると共に、前記第3の工程に先立ち、第2の原材料を調理して前記第2の食材を生成する第7の工程を実施する。
【発明の効果】
【0016】
請求項1記載の乾燥食品製造方法は、第1の食材を容器体に収容する第1の工程と、容器体内の第1の食材を冷却して第1の食材の流動性を低下させる第2の工程と、容器体内における第1の食材の上に第2の食材を収容する第3の工程と、第1の食材および第2の食材を容器体内で凍結乾燥させる第4の工程とを少なくとも実施して、加水せずに食することが可能な乾燥食品を製造する
【0017】
したがって、請求項1記載の乾燥食品製造方法によれば、第1の食材層および第2の食材層の複数の食材層が一体化した状態(積層された状態)に製造されることで、その外観全体が同様の見た目で何処を食しても同様の食感が知覚される既存の乾燥食品とは異なり、外観が美しく、各種の食感が知覚される非常に趣向性の高い乾燥食品を提供することができる。また、第2の工程によって第1の食材の流動性を低下させた後に第3の工程を実施することにより、先に容器体内に収容されている第1の食材と、新たに収容する第2の食材とが容器体内で混ざり合う事態を確実かつ容易に回避することができる。これにより、第2の食材を少量ずつゆっくり収容する必要がなくなるため、乾燥食品の製造コストを十分に低減することができる。また、第1の食材だけで構成された第1の食材層、および第2の食材だけで構成された第2の食材層が存在する美しい乾燥食品を提供することができ、また、第1の食材および第2の食材が混ざり合った混合食材層が存在しないことで、第1の食材層の食感、および/または第2の食材層の食感を好適に知覚させることができる。
【0018】
請求項2記載の乾燥食品製造方法によれば、第3の工程に先立ち、第2の食材を冷却する第5の工程を実施することにより、第3の工程において容器体内に収容する第2の食材によって第1の食材の温度が上昇させられて第1の食材の流動性が低下する事態を好適に回避できるため、第1の食材と第2の食材とが混ざり合う事態を一層好適に回避することができる。
【0019】
請求項3記載の乾燥食品製造方法によれば、第1の工程に先立ち、第1の原材料を調理して第1の食材を生成する第6の工程を実施すると共に、第3の工程に先立ち、第2の原材料を調理して第2の食材を生成する第7の工程を実施することにより、第1の食材および第2の食材の生成(第6の工程および第7の工程)から最終工程の第4の工程(凍結乾燥)までの各処理のすべてを実施することにより、第4の工程の完了時の状態、すなわち実際に食することが可能な状態の第1の食材層の外観、食感および味や、第2の食材層の外観、食感および味を考慮して第1の食材や第2の食材の味付けや調理方法を任意に調整することができるため、例えば、第1の工程において使用する第1の食材や、第3の工程において使用する第2の食材として調理済の食材(他者が生成した第1の食材および第2の食材)を使用して乾燥食品を製造する製造方法と比較して、一層美しくかつ一層美味しい乾燥食品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図3】2層乾燥食品製造処理20のフローチャートである。
【
図4】2層乾燥食品1の食感について説明するための説明図である。
【
図5】2層乾燥食品11の食感について説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、乾燥食品製造方法の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0024】
図1に示す2層乾燥食品1は、「乾燥食品製造方法」に従って製造された「加水せずに食することが可能な乾燥食品」の一例である「オムライススナック(オムライスを乾燥させたかのような菓子)」であって、1口に頬張って口内でかみ砕いて食したり、2口または3口程度に分けて口内でかみ砕いて食したりすることができるようにブロック状に形成されている。この2層乾燥食品1は、後述する2層乾燥食品製造処理20(
図3参照)により、「オムライス」における「卵の層」に対応する第1の食材層2(「第1の食材層」の一例)と、「オムライス」における「ケチャップライスの層」に対応する第2の食材層3(「第2の食材層」の一例)とが一体に積層された二層構造に形成されている。
【0025】
この場合、第1の食材層2は、卵、乳糖、還元水あめ、タピオカ澱粉、着色料(β-カロテン)、食塩、および酵母エキスなどの原材料(「第1の原材料」の一例)を調理した第1の食材2a(「水分を含有して流動性を有する食材」としての「第1の食材」の一例)が凍結乾燥させられて層状に形成されている。また、第2の食材層3は、炊飯米、ケチャップ、バター、還元水あめ、タピオカ澱粉、コンソメ、食塩、酸化防止剤、紅麹色素、クエン酸、および酵母エキスなどの原材料(「第2の原材料」の一例)を調理した第2の食材3a(「水分を含有して流動性を有する食材」としての「第2の食材」の一例)が凍結乾燥させられて層状に形成されている。
【0026】
また、
図2に示す2層乾燥食品11は、「乾燥食品製造方法」に従って製造された「加水せずに食することが可能な乾燥食品」の他の一例である「カレーライススナック(ターメリックライスカレーを乾燥させたかのような菓子)」であって、1口に頬張って口内でかみ砕いて食したり、2口または3口程度に分けて口内でかみ砕いて食したりすることができるようにブロック状に形成されている。この2層乾燥食品11は、2層乾燥食品製造処理20により、「カレーライス」における「カレーの層」に対応する第1の食材層12(「第1の食材層」の他の一例)と、「カレーライス」における「ライスの層」に対応する第2の食材層13(「第2の食材層」の他の一例)とが一体に積層された二層構造に形成されている。
【0027】
この場合、第1の食材層12は、乾燥人参、還元水あめ、乳糖、カレー粉、タピオカ澱粉、クミンパウダー、コンソメ、酵母エキス、酸化防止剤、乾燥パセリ、およびガラムマサラパウダーなどの原材料(「第1の原材料」の他の一例)を調理した第1の食材12a(「水分を含有して流動性を有する食材」としての「第1の食材」の他の一例)が凍結乾燥させられて層状に形成されている。また、第2の食材層13は、炊飯米、還元水あめ、タピオカ澱粉、食塩、ターメリックパウダー、および酸化防止剤などの原材料(「第2の原材料」の一例)を調理した第2の食材13a(「水分を含有して流動性を有する食材」としての「第2の食材」の他の一例)が凍結乾燥させられて層状に形成されている。
【0028】
次に、2層乾燥食品1の製造方法について、添付図面を参照して説明する。
【0029】
上記の2層乾燥食品1の製造に際しては、
図3に示す2層乾燥食品製造処理20における各ステップの工程を実行する。なお、以下の説明において例示する各原材料の重量は、1個(1ブロック)の2層乾燥食品1を製造するのに必要となる重量であり、実際には、同時に複数個(複数ブロック)分の原材料を調理するため、例示する重量の比率に応じた量の原材料が使用される。
【0030】
最初に、第1の食材2aを生成する(ステップ21)。具体的には、全卵液(卵:1.0g)および着色料(β-カロテン:0.02g)を常温下で混合した原材料液(以下、「原材料液Aa」を生成すると共に、還元水あめ(0.2g)、食塩(0.01g)、乳糖(0.5g)、酵母エキス(0.01g)およびタピオカ澱粉(0.05g)を湯で溶解した原材料液(以下、「原材料液Ba」ともいう)を生成する。次いで、90℃程度まで加熱した原材料液Baに上記の原材料液Aaを流し入れることにより、いわゆる「かきたま」を生成する。これにより、第1の食材2a(かきたま)が生成される(「第1の原材料を調理して第1の食材を生成する第6の工程」の一例)。
【0031】
次いで、生成した第1の食材2aを図示しないプラスチックトレー(「容器体」の一例)の食材収用部における1/3程度の高さまで平らに充填(収容)する(「第1の食材を容器体に収容する第1の工程」の一例:ステップ22)。続いて、プラスチックトレーごと第1の食材2aを冷却することにより、第1の食材2aの流動性を低下させる(「容器体内の第1の食材を冷却して第1の食材の流動性を低下させる第2の工程」の一例:ステップ23)。この際には、第1の食材2aを22.5℃程度まで冷却することによって142Pa・s以上の粘度とする。
【0032】
次いで、第2の食材3aを生成する(ステップ24)。具体的には、炊飯米(2.0g)、ケチャップ(0.7g)、コンソメ(0.05g)、バター(0.2g)、紅麹色素(0.01g)、還元水あめ(0.2g)、クエン酸(0.01g)、食塩(0.02g)、酸化防止剤(0.02g)、酵母エキス(0.01g)およびタピオカ澱粉(0.1g)を湯で溶解し、80℃程度の状態で3分程度に亘って加熱することにより、液状の「ケチャップライス」を生成する。これにより、第2の食材3a(ケチャップライス液)が生成される(「第2の原材料を調理して第2の食材を生成する第7の工程」の一例)。
【0033】
続いて、生成した第2の食材3aに冷却水を添加することにより、第2の食材3aを60℃程度まで冷却(温度低下)させる(「第2の食材を冷却する第5の工程」の一例:ステップ25)。なお、上記のステップ21~23の工程、およびステップ24,25の工程については、ステップ24,25の工程の後にステップ21~23の工程を実施したり、ステップ21~23の工程とステップ24,25の工程とを並行して実施したりすることもできる。
【0034】
次いで、プラスチックトレー内における第1の食材2aの上に、食材収用部の上縁部まで第2の食材3aを平らに充填(収容)する(「容器体内における第1の食材の上に第2の食材を収容する第3の工程」の一例:ステップ26)。この際に、本例の製造方法では、上記のステップ23において第1の食材2aが冷却されて流動性が低下しているため、プラスチックトレー(食材収容部)内に新たに収容した第2の食材3aと、第2の食材3aの収容以前にプラスチックトレー(食材収容部)内に収容されている第1の食材2aとが混ざり合う事態(第1の食材2aと第2の食材3aとの混合食材の層が形成される事態)が好適に回避される。これにより、第1の食材2aだけが存在する層、および第2の食材3aだけが存在する層がそれぞれ形成される。
【0035】
また、本例の製造方法とは異なり、上記のステップ25の工程を行わずに、ステップ24の工程における加熱によって高温となっている第2の食材3aを第1の食材2aの上に収容したときには、プラスチックトレー(食材収容部)内の第1の食材2aに高温の第2の食材3aが接することで第1の食材2aにおける上方部位が温度上昇して流動性が高くなる。したがって、生成(調理)に際して加熱を要する食材を「第2の食材」として「乾燥食品」を製造する際に、上記のステップ25の工程を実施しなかった場合には、プラスチックトレー(食材収容部)内において、「第1の食材」と「第2の食材」とが混ざり合う(「第1の食材」と「第2の食材」との混合食材の層が形成される)おそれがある。
【0036】
これに対して、本例の製造方法では、上記のステップ25の工程において第2の食材3aを十分に冷却しているため、上記のステップ26の工程において第1の食材2aの上に第2の食材3aを収容したときに、第2の食材3aに接した第1の食材2aの温度が上昇する事態(流動性が高くなる事態)が好適に回避される。これにより、プラスチックトレー(食材収容部)内に、第1の食材2aだけが存在する層、および第2の食材3aだけが存在する層がそれぞれ形成される。
【0037】
次いで、第2の食材3aの収容が完了したプラスチックトレーを-25℃程度まで冷却して凍結させる(食材の予備冷凍:ステップ27)。続いて、凍結した第1の食材2aおよび第2の食材3aの積層体をプラスチックトレーごと真空槽内に収容して真空槽内を真空引き(減圧)する(ステップ28)。この際には、プラスチックトレー(食材収容部)内の第1の食材2aおよび第2の食材3aに含まれる水分が昇華させられる結果、第1の食材2aおよび第2の食材3aがそれぞれ乾燥させられる。これにより、第1の食材2aが乾燥した状態の第1の食材層2、および第2の食材3aが乾燥した状態の第2の食材層3の積層体である2層乾燥食品1が完成し、2層乾燥食品製造処理20が完了する。
【0038】
なお、本例の製造方法では、上記のステップ27,28の工程が「第1の食材および第2の食材を容器体内で凍結乾燥させる第4の工程」に相当するが、製造する「乾燥食品」の種類(「第1の食材」や「第2の食材層」の組成)によっては、ステップ27の予備冷凍の工程を行わずにステップ28の工程を「第4の工程」として実施することもできる。かかる製造方法においては、真空槽内を減圧する課程において「第1の食材」および「第2の食材」が断熱膨張させられて凍結し、その後に、「第1の食材」および「第2の食材」に含まれる水分が昇華させられて「第1の食材」および「第2の食材」が乾燥させられる。これにより、「第1の食材」が乾燥した状態の「第1の食材層」、および「第2の食材」が乾燥した状態の「第2の食材層」の積層体である「乾燥食品」が完成する。
【0039】
次いで、2層乾燥食品11の製造方法について、添付図面を参照して説明する。
【0040】
前述の2層乾燥食品11の製造に際しても、
図3に示す2層乾燥食品製造処理20における各ステップの工程を実行する。なお、以下の説明において例示する各原材料の重量は、1個(1ブロック)の2層乾燥食品11を製造するのに必要となる重量であり、実際には、同時に複数個(複数ブロック)分の原材料を調理するため、例示する重量の比率に応じた量の原材料が使用される。
【0041】
最初に、第1の食材12aを生成する(ステップ21)。具体的には、カレー粉(0.18g)、還元水あめ(0.2g)、コンソメ(0.03g)、乳糖(0.2g)、酵母エキス(0.01g)、クミンパウダー(0.06g)、ガラムマサラパウダー(0.003g)、酸化防止剤(0.01g)およびタピオカ澱粉(0.18g)を湯で溶解し、80℃程度の状態で3分程度に亘って加熱した後に、乾燥人参(0.3g)および乾燥パセリ(0.01g)を混合する。これにより、第1の食材12a(カレー液)が生成される(「第1の原材料を調理して第1の食材を生成する第6の工程」の他の一例)。
【0042】
次いで、生成した第1の食材12aを図示しないプラスチックトレー(「容器体」の一例)の食材収用部における1/2程度の高さまで平らに充填(収容)する(「第1の食材を容器体に収容する第1の工程」の他の一例:ステップ22)。続いて、プラスチックトレーごと第1の食材12aを冷却することにより、第1の食材12aの流動性を低下させる(「容器体内の第1の食材を冷却して第1の食材の流動性を低下させる第2の工程」の他の一例:ステップ23)。この際には、第1の食材12aを41.7℃程度まで冷却することによって168Pa・s以上の粘度とする。
【0043】
次いで、第2の食材13aを生成する(ステップ24)。具体的には、炊飯米(1.5g)、ターメリックパウダー(0.01g)、還元水あめ(0.2g)、食塩(0.02g)、酸化防止剤(0.01g)およびタピオカ澱粉(0.18g)を湯で溶解し、80℃程度の状態で3分程度に亘って加熱することにより、液状の「ターメリックライス」を生成する。これにより、第2の食材13a(ターメリックライス液)が生成される(「第2の原材料を調理して第2の食材を生成する第7の工程」の他の一例)。
【0044】
続いて、生成した第2の食材13aに冷却水を添加することにより、第2の食材13aを60℃程度まで冷却(温度低下)させる(「第2の食材を冷却する第5の工程」の他の一例:ステップ25)。なお、上記のステップ21~23の工程、およびステップ24,25の工程については、ステップ24,25の工程の後にステップ21~23の工程を実施したり、ステップ21~23の工程とステップ24,25の工程とを並行して実施したりすることもできる。
【0045】
次いで、プラスチックトレー内における第1の食材12aの上に、食材収用部の上縁部まで第2の食材13aを平らに充填(収容)する(「容器体内における第1の食材の上に第2の食材を収容する第3の工程」の他の一例:ステップ26)。この際に、本例の製造方法では、上記のステップ23において第1の食材12aが冷却されて流動性が低下しているため、プラスチックトレー(食材収容部)内に新たに収容した第2の食材13aと、第2の食材13aの収容以前にプラスチックトレー(食材収容部)内に収容されている第1の食材12aとが混ざり合う事態(第1の食材12aと第2の食材13aとの混合食材の層が形成される事態)が好適に回避される。これにより、第1の食材12aだけが存在する層、および第2の食材13aだけが存在する層がそれぞれ形成される。
【0046】
また、本例の製造方法では、上記のステップ25の工程において第2の食材13aを十分に冷却しているため、上記のステップ26の工程において第1の食材12aの上に第2の食材13aを収容したときに、第2の食材13aに接した第1の食材12aの温度が上昇する事態(流動性が高くなる事態)が好適に回避される。これにより、プラスチックトレー(食材収容部)内に、第1の食材12aだけが存在する層、および第2の食材13aだけが存在する層がそれぞれ形成される。
【0047】
次いで、第2の食材13aの収容が完了したプラスチックトレーを-25℃程度まで冷却して凍結させる(食材の予備冷凍:ステップ27)。続いて、凍結した第1の食材12aおよび第2の食材13aの積層体をプラスチックトレーごと真空槽内に収容して真空槽内を真空引き(減圧)する(ステップ28)。この際には、プラスチックトレー(食材収容部)内の第1の食材12aおよび第2の食材13aに含まれる水分が昇華させられる結果、第1の食材12aおよび第2の食材13aがそれぞれ乾燥させられる。これにより、第1の食材12aが乾燥した状態の第1の食材層12、および第2の食材13aが乾燥した状態の第2の食材層13の積層体である2層乾燥食品11が完成し、2層乾燥食品製造処理20が完了する。なお、本例の製造方法では、上記のステップ27,28の工程が「第1の食材および第2の食材を容器体内で凍結乾燥させる第4の工程」に相当する。
【0048】
続いて、前述の特許文献1,2に開示の製造方法に従って製造された「乾燥食品」、出願人が試作した「乾燥食品」、および上記の2層乾燥食品1,11の相違点について、添付図面を参照して説明する。
【0049】
上記の製造方法に従って製造された2層乾燥食品1,11では、前述の特許文献1,2に開示の製造方法に従って製造された「乾燥食品」とはその外観が大きく相違している。また、2層乾燥食品1,11では、出願人が試作した「乾燥食品」とも外観が相違している。具体的には、前述したように、両特許文献1,2に開示の製造方法では、原材料を均一に混ぜ合わせた状態の単一の食材を凍結乾燥させることで製造されている。このため、完成した食品の外面全体が同様の外観となっている。また、出願人が試作した「乾燥食品」では、組み合わせる食材のそれぞれの流動性(粘度)や、容器体内への収容方法によっては、各食材の境界部とすべき部位において食材が混ざり合って混合食材の層が形成されたり、最悪の場合には、その全体が各食材を混合させた単一の食材で形成された状態となったりする。このため、「多層の乾燥食品」であると認識され難い状態となることがある。
【0050】
これに対して、上記の2層乾燥食品製造処理20の製造方法に従って製造した2層乾燥食品1,11では、その製造時に、第1の食材層2,12を形成する第1の食材2a,12aをプラスチックトレー(食材収容部)内に収容する工程(2層乾燥食品製造処理20におけるステップ22)の後に、第2の食材層3,13を形成する第2の食材3a,13aをプラスチックトレー(食材収容部)内に収容する工程(ステップ26)に先立ち、プラスチックトレー(食材収容部)内の第1の食材2a,12aを冷却することで流動性を低下させる工程(ステップ23)を実施することで、プラスチックトレー(食材収容部)内において第1の食材2a,12aと第2の食材3a,13aとが混ざり合う事態が回避されている。
【0051】
これにより、
図1,2に示すように、2層乾燥食品1,11では、第1の食材2a,12aが乾燥させられた第1の食材層2,12と、第2の食材3a,13aが乾燥させられた第2の食材層3,13との境界部が明確となっており、「2層の乾燥食品」であることを確実かつ容易に認識させることが可能となっている。この場合、第1の食材層2,12の色や素材感と、第2の食材層3,13の色や素材感とが大きく相違する本例の2層乾燥食品1,11では、「2層の乾燥食品」であることを一層確実かつ一層容易に認識させることが可能となっている。したがって、上記の「製造方法」に従って製造することで、その外面全体が同様の外観となっている「乾燥食品」や、2種類の「食材層」の間に「混合食材層」が存在する「乾燥食品」では実現し得ない非常に趣向性の高い「乾燥食品」を提供することが可能となっている。
【0052】
また、2層乾燥食品1,11では、前述の特許文献1,2に開示の製造方法に従って製造された「乾燥食品」とは知覚される味や食感も大きく相違している。また、2層乾燥食品1,11では、出願人が試作した「乾燥食品」とも味や食感が相違している。具体的には、両特許文献1,2に開示の製造方法では、前述したように、原材料を均一に混ぜ合わせた状態の単一の食材で製造されているため、食品の何処を囓った場合においても同様の食感で同様の味が知覚される状態となっている。また、出願人が試作した「乾燥食品」では、各食材の境界部とすべき部位に混合食材の層が形成されたときには、2種類の食材の一方の食感や味、両食材の他方の食感や味のいずれとも相違する混合食材の食感や味が知覚される部位が存在する状態となり、両食材の混ざり合の度合いが高いときには、両食材の食感や味とは相違する混合食材の食感や味だけが知覚される状態となる。
【0053】
これに対して、上記の2層乾燥食品製造処理20の製造方法に従って製造した2層乾燥食品1,11では、前述したように、第1の食材2a,12aが乾燥させられた第1の食材層2,12と、第2の食材3a,13aが乾燥させられた第2の食材層3,13との境界部が明確となっている。これにより、本例の2層乾燥食品1,11では、第1の食材層2,12だけ食したとき(囓ったとき)、第2の食材層3,13だけ食したとき(囓ったとき)、および第1の食材層2,12と第2の食材層3,13とを一緒に食したとき(囓ったとき)に、それぞれ相違する味や食感が知覚されるように製造されている。したがって、上記の「製造方法」に従って製造することで、原材料を均一に混ぜ合わせた状態の単一の食材で製造された「乾燥食品」や、意図せずに混合された混合食材の層が存在した状態の「乾燥食品」では実現し得ない非常に趣向性の高い「乾燥食品」を提供することが可能となっている。
【0054】
具体的には、「オムライススナック」である2層乾燥食品1では、第1の食材層2だけが食されたときには、「加熱調理した卵」の味が知覚され、第2の食材層3だけが食されたときには、「ケチャップライス」の味が知覚され、第1の食材層2および第2の食材層3が一緒に食されたときには、「オムライス(加熱調理した卵およびケチャップライス)」の味が知覚される。また、「カレーライススナック」である2層乾燥食品11では、第1の食材層12だけが食されたときには、「カレー」の味が知覚され、第2の食材層13だけが食されたときには、「ターメリックライス」の味が知覚され、第1の食材層12および第2の食材層13が一緒に食されたときには、「カレーライス(カレーおよびターメリックライス)」の味が知覚される。
【0055】
さらに、2層乾燥食品1,11では、第1の食材層2,12単体の食感と、第2の食材層3,13単体の食感とが互いに相違している。具体的には、2層乾燥食品1における第1の食材層2および第2の食材層3や、2層乾燥食品11における第1の食材層12および第2の食材層13について、日本計測システム株式会社製のテクスチャー試験器「TEX-100N」を使用し、測定用のプランジャー(「測定用探針」の一例)を突き刺すのに要する力(食材層12,13に対するプランジャーの突き刺し時に測定される最大荷重:「食品を囓った際に知覚される食感」を左右するパラメータの一例)を測定する測定処理を実行した。
【0056】
具体的には、上記の2層乾燥食品製造処理20におけるステップ24~26を除く各工程と同様の手順で2層乾燥食品1,11における第1の食材層2,12を単体で生成した3つの試料、および2層乾燥食品製造処理20におけるステップ21~23を除く各工程と同様の手順で2層乾燥食品1,11における第2の食材層3,13を単体で生成した3つの試料を用意して、各資料についての測定処理を実施した。また、測定処理に際しては、一例として、先端部が円錐形で直径が20mmのプランジャを第1の食材層2や第2の食材層3に向かって100mm/minの速度で下降させ、プランジャの先端部が第1の食材層2や第2の食材層3に接してから20mm下降するまでの間(先端部が深さ20mmに達するまでの間)にプランジャに加わる最大荷重を「予め規定された速度で予め規定された深さまで突き刺すのに要する力」として測定した。
【0057】
この測定処理の結果、
図4に示すように、2層乾燥食品1では、第1の食材層2の各試料について取得された最大荷重(N)の平均値が76.21Nであるのに対し、第2の食材層3の各試料について取得された最大荷重(N)の平均値が29.54Nであった。つまり、2層乾燥食品1では、第1の食材層2よりも第2の食材層3の方が柔らかな食感を得られることが判る。
【0058】
また、2層乾燥食品1では、第1の食材層2の試料について取得された最大荷重が、第2の食材層3の試料について取得された最大荷重に対する2倍以上の値となっている。この場合、
図1に示すように、2層乾燥食品1では、第2の食材層3よりも硬い食感が得られる第1の食材層2が第2の食材層3よりも薄厚に形成されている。このため、第1の食材層2および第2の食材層3を一緒に食したときに、第2の食材層3については、それ自体の柔らかさによって容易に噛み砕くことができ、第1の食材層2については、それ自体の硬さによって若干の抵抗感を知覚した後に比較的容易に噛み砕くことができる。
【0059】
このような食感は、「乾燥食品」ではない通常のオムライスを食するときに、食器(スプーン等)や歯が卵の薄厚層を破ってケチャップライスの部位に達する際の感覚と似ており、単一食材で形成された従来の「乾燥食品」では実現が困難な非常に趣向性の高い食感となっている。なお、2層乾燥食品1において第1の食材層2を第2の食材層3よりも薄厚としたときには、上記のように食感の向上が図られることに加え、2層乾燥食品1を視認したときに、第1の食材層2が「オムライス」における「加熱調理した卵の層」に相当する部位であると直感的に認識されるとの利点もある。
【0060】
一方、
図5に示すように、2層乾燥食品11では、第1の食材層12の各試料について取得された最大荷重(N)の平均値が59.90Nであるのに対し、第2の食材層13の各試料について取得された最大荷重(N)の平均値が14.31Nであった。つまり、2層乾燥食品11では、第1の食材層12よりも第2の食材層13の方が柔らかな食感を得られることが判る。
【0061】
また、2層乾燥食品11では、第1の食材層12の試料について取得された最大荷重が、第2の食材層13の試料について取得された最大荷重に対する2倍以上の値となっている。この場合、
図2に示すように、この2層乾燥食品11では、上記の2層乾燥食品1とは異なり、第1の食材層12および第2の食材層13が同程度の厚みに形成されている。このため、第1の食材層12および第2の食材層13を一緒に食したときには、柔らかな第2の食材層13が最初に噛み砕かれ、その後に、ある程度の硬さを有している第1の食材層12が噛み砕かれることとなる。
【0062】
この際に、第1の食材層12を構成する第1の食材12aには、前述したように、カレー粉やガラムマサラパウダーなどの香辛料成分が含まれている。したがって、2層乾燥食品11を食したときには、第1の食材層12に先立って第2の食材層13が噛み砕かれることでターメリックライスの味が知覚された後に、第1の食材層12が噛み砕かれてカレー内の香辛料による辛みが知覚されることとなり、単一食材で形成された従来の「乾燥食品」では実現が困難な非常に趣向性の高い食感となっている。
【0063】
このように、製造する「乾燥食品」において実現しようとする食感に応じて、「第1の食材層」および「第2の食材層」において「先端部が円錐形の測定用探針を予め規定された速度で予め規定された深さまで突き刺すのに要する力(すなわち、硬さ)」や、「第1の食材層」および「第2の食材層」の厚みの比を最適化することにより、その全体が単一の食材で形成された「乾燥食品」では知覚させるのが困難な様々な食感を知覚させることができる。
【0064】
この場合、出願人は、上記の2層乾燥食品1と同様の第1の食材層2および第2の食材層3からなる「2層乾燥食品」(図示せず)を、前述の製造方法とは異なる製造方法で製造した。具体的には、一例として、上記の測定処理に際して生成した第1の食材層2の試料、および第2の食材層3の試料(以下、単に「第1の食材層2」および「第2の食材層3」ともいう)を、水あめ等(食品同士を接着することができる食品:以下、「食用接着剤」ともいう)で接着して一体化させて「2層乾燥食品」を製造した。
【0065】
この際に、十分な量の食用接着剤を用いて第1の食材層2および第2の食材層3を接着したときには、完成してから食する(囓る)まで第1の食材層2および第2の食材層3が一体化した状態を好適に維持できるものの、使用する食用接着剤の量が少ないときには、第1の食材層2および第2の食材層3の接着力が不足して、食する前に分離してしまったり、囓り始めた瞬間に分離してしまったりすることがある。
【0066】
また、十分な量の食用接着剤を使用することで第1の食材層2および第2の食材層3を十分な接着力で一体化させることができるものの、製造段階において、第1の食材層2および/または第2の食材層3に対して食用接着剤を塗布したときに、食用接着剤中の水分が塗布対象(第1の食材層2および/または第2の食材層3)に浸透し、浸透部位の食感や見た目が悪化してしまう。さらに、第1の食材層2や第2の食材層3とは相違する食用接着剤の薄厚の層が存在する状態となり、第1の食材層2や第2の食材層3の食感とは相違する違和感を覚える(2層乾燥食品の食感が悪化する)おそれもある。
【0067】
また、水あめ等の食用接着剤を用いて第1の食材層2および第2の食材層3を一体化させるときには、第1の食材層2および第2の食材層3のいずれか、または双方に食用接着剤を塗布する工程に加え、塗布した食用接着剤を乾燥させる工程を行う必要が生じる。このため、2層乾燥食品の製造に要する時間が長くなると共に、食用接着剤の乾燥工程の分だけ2層乾燥食品の製造工程が増えるため、その製造コストの低減が困難となる。さらに、本例の2層乾燥食品1における第1の食材層2のように薄厚の「食材層」を有する「2層乾燥食品」では、接着に先立って薄厚の「食材層」が破損してしまうおそれもある。このため、別個に生成した「食材層」を食用接着剤によって接着して一体化させて「2層乾燥食品」を製造する製造方法では、見た目や食感が良好な「2層乾燥食品」を安価に製造するのが困難であり、また、「食材層」の破損などに起因して歩留まりが悪化するという問題点がある。
【0068】
これに対して、前述の「製造方法」に従って製造された2層乾燥食品1では、第1の食材2aの層および第2の食材3aの層が接した状態で凍結乾燥させられる。このため、食用接着剤等を使用することなく、第1の食材層2と第2の食材層3とが十分な強度で一体化した状態に製造されると共に、薄厚の第1の食材層2が単体で存在することがないため、その破損を好適に回避することが可能となっている。また、食用接着剤等の塗布を行わないため、第1の食材層2や第2の食材層3の見た目や食感が悪化する事態が回避され、食用接着剤の層が存在しないことで、第1の食材層2の食感および第2の食材層3の食感とは異なる食感の部位が2層乾燥食品1中に存在しない状態に製造されている。
【0069】
このように、この2層乾燥食品1,11の製造方法は、第1の食材2a,12aを容器体に収容する「第1の工程」と、容器体内の第1の食材2a,12aを冷却して第1の食材2a,12aの流動性を低下させる「第2の工程」と、容器体内における第1の食材2a,12aの上に第2の食材3a,13aを収容する「第3の工程」と、第1の食材2a,12aおよび第2の食材3a,13aを容器体内で凍結乾燥させる「第4の工程」とを少なくとも実施して、加水せずに食することが可能な2層乾燥食品1,11を製造する。
【0070】
したがって、この2層乾燥食品1,11の製造方法、およびそのような製造方法に従って製造された2層乾燥食品1,11によれば、第1の食材層2,12および第2の食材層3,13の複数の「食材層」が一体化した状態(積層された状態)に製造されることで、その外観全体が同様の見た目で何処を食しても同様の食感が知覚される既存の「乾燥食品」とは異なり、外観が美しく、各種の食感が知覚される非常に趣向性の高い2層乾燥食品1,11を提供することができる。また、「第2の工程(2層乾燥食品製造処理20におけるステップ23の工程)」によって第1の食材2a,12aの流動性を低下させた後に「第3の工程(ステップ26の工程)」を実施することにより、先に容器体内に収容されている第1の食材2a,12aと、新たに収容する第2の食材3a,13aとが容器体内で混ざり合う事態を確実かつ容易に回避することができる。これにより、第2の食材3a,13aを少量ずつゆっくり収容する必要がなくなるため、2層乾燥食品1,11の製造コストを十分に低減することができる。また、第1の食材2a,12aだけで構成された第1の食材層2,12、および第2の食材3a,13aだけで構成された第2の食材層3,13が存在する美しい2層乾燥食品1,11を提供することができ、また、第1の食材2a,12aおよび第2の食材3a,13aが混ざり合った混合食材層が存在しないことで、第1の食材層2,12の食感、および/または第2の食材層3,13の食感を好適に知覚させることができる。
【0071】
また、この2層乾燥食品1,11の製造方法、およびそのような製造方法に従って製造された2層乾燥食品1,11によれば、「第3の工程」に先立ち、第2の食材3a,13aを冷却する「第5の工程」を実施することにより、「第3の工程」において容器体内に収容する第2の食材3a,13aによって第1の食材2a,12aの温度が上昇させられて第1の食材2a,12aの流動性が低下する事態を好適に回避できるため、第1の食材2a,12aと第2の食材3a,13aとが混ざり合う事態を一層好適に回避することができる。
【0072】
さらに、この2層乾燥食品1,11の製造方法、およびそのような製造方法に従って製造された2層乾燥食品1,11によれば、「第1の工程」に先立ち、「第1の原材料」を調理して第1の食材2a,12aを生成する「第6の工程」を実施すると共に、「第3の工程」に先立ち、「第2の原材料」を調理して第2の食材3a,13aを生成する「第7の工程」を実施することにより、第1の食材2a,12aおよび第2の食材3a,13aの生成(第6の工程および第7の工程)から最終工程の「第4の工程(凍結乾燥)」までの各処理のすべてを実施することにより、「第4の工程」の完了時の状態、すなわち実際に食することが可能な状態の第1の食材層2,12の外観、食感および味や、第2の食材層3,13の外観、食感および味を考慮して第1の食材2a,12aや第2の食材3a,13aの味付けや調理方法を任意に調整することができるため、例えば、「第1の工程」において使用する「第1の食材」や、「第3の工程」において使用する「第2の食材」として「調理済の食材(他者が生成した「第1の食材」および「第2の食材」)」を使用して「乾燥食品」を製造する製造方法と比較して、一層美しくかつ一層美味しい2層乾燥食品1,11を提供することができる。
【0073】
また、この2層乾燥食品1,11は、乾燥した状態の第1の食材2a,12aで構成された第1の食材層2,12と、乾燥した状態の第2の食材3a,13aで構成された第2の食材層3,13とを少なくとも備え、先端部が円錐形のプランジャーを予め規定された速度(本例では、100mm/min)で予め規定された深さ(本例では、20mm)まで突き刺すのに要する力が、第1の食材層2,12および第2の食材層3,13において互いに相違している。
【0074】
したがって、この2層乾燥食品1,11によれば、各食材層2,3,12,13の外観(色や素材間)の相違だけでなく、食感が互いに相違する第1の食材層2,12および第2の食材層3,13を有することで、第1の食材層2,12だけを食した際に知覚される食感、第2の食材層3,13だけを食した際に知覚される食感、および第1の食材層2,12と第2の食材層3,13とを一緒に食した際に知覚される食感の3態様で2層乾燥食品1,11を食することができる。これにより、1種類の食材で構成された既存の「乾燥食品」とは全く相違する非常に趣向性の高い2層乾燥食品1,11を提供することができる。
【0075】
なお、「乾燥食品製造方法」の具体的内容は、上記の2層乾燥食品製造処理20の手順の例に限定されない。
【0076】
例えば、第1の食材層2および第2の食材層3からなる2層乾燥食品1、並びに第1の食材層12および第2の食材層13からなる2層乾燥食品11の構成や製造方法を例に挙げて説明したが、3層以上の複数の「食材層」を有する構成とし、その製造時に上記2層乾燥食品1,11の製造方法と同様の製造方法と採用することができる。
【0077】
具体的には、一例として、A層、B層およびC層の3層の「食材層」を有する「3層乾燥食品」を製造するときには、A層を構成する食材Aの生成(第6の工程)、容器体に対する食材Aの収容(第1の工程)、食材Aの冷却(第2の工程)、B層を構成する食材Bの生成(第6の工程)、容器体に対する食材Bの収容(第1の工程)、食材Bの冷却(第2の工程)、C層を構成する食材Cの生成(第7の工程)、容器体に対する食材Cの収容(第3の工程)、および食材A~Cの凍結乾燥(第4の工程)を実施する。また、必要に応じて、容器体に対する食材Bの収容に先立って食材Bを冷却(第5の工程)したり、容器体に対する食材Cの収容に先立って食材Cを冷却(第5の工程)したりすることもできる。以上の製造方法により、前述の2層乾燥食品1,11と同様に趣向性が高い3層の「乾燥食品」を低コストで製造することができる。
【0078】
また、「第3の工程(2層乾燥食品製造処理20におけるステップ26の工程)」に先立ち、第2の食材3a,13aを冷却する「第5の工程(ステップ25)」を実施する製造方法を例について説明したが、「第2の食材」の温度が十分に低いとき(「第2の食材」の温度が、「第1の食材」の上に収容したときに「第1の食材」の流動性が著しく高くなるような温度まで温度上昇させるような高温ではないとき)には、「第5の工程」を不要とすることができる。
【0079】
また、「第1の工程(2層乾燥食品製造処理20におけるステップ22の工程)」に先立ち、「第1の原材料」を調理して第1の食材2aを生成する「第6の工程(ステップ21の工程)」を実施すると共に、「第3の工程(ステップ26の工程)」に先立ち、「第2の原材料」を調理して第2の食材3aを生成する「第7の工程(ステップ24)」を実施する製造方法を例について説明したが、「第1の食材」および「第2の食材」のいずれか、または双方について、他者が製造した「水分を含有して流動性を有する食材」を用いて「乾燥食品」を製造することもできる。
【0080】
また、「先端部が円錐形の測定用探針を予め規定された速度で予め規定された深さまで突き刺すのに要する力」が互いに相違する(食感が互いに相違する)第1の食材層2,12および第2の食材層3,13を有する2層乾燥食品1,11の構成について説明したが、上記のような「力」が同程度の(食感が同様の)「第1の食材層」および「第2の食材層」を有するように「乾燥食品」を構成することもできる。
【0081】
また、「容器体内における第1の食材の上に第2の食材を収容する第3の工程」に先立ち、「容器体内の第1の食材を冷却して第1の食材の流動性を低下させる第2の工程」を実施する「乾燥食品製造方法」について説明したが、この「第2の工程」に代えて、「第1の食材を容器体に収容する第1の工程」に先立ち、「第1の食材に流動性低下用の食材を添加することで第1の食材の流動性を低下させる工程」を実施することにより、「第3の工程」において「第1の食材」と「第2の食材」とが混ざり合う事態を回避することができる。この場合、上記の「流動性低下用の食材」としては、「食用でん粉」などを使用することができる。
【0082】
加えて、「オムライススナック」の2層乾燥食品1や、「カレーライススナック」の2層乾燥食品11の製造方法を例に挙げて説明したが、この他にも、「ハヤシライススナック(ハヤシライスを乾燥させたかのような乾燥食品)」や「天津飯スナック」(天津飯を乾燥させたかのような乾燥食品)」などの各種の食品について、上記の2層乾燥食品1,11の製造方法と同様の製造方法によって製造することができる。
【符号の説明】
【0083】
1,11 2層乾燥食品
2,12 第1の食材層
2a,12a 第1の食材
3,13 第2の食材層
3a,13a 第2の食材
20 2層乾燥食品製造処理