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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-22
(45)【発行日】2024-10-30
(54)【発明の名称】弁装置
(51)【国際特許分類】
   F16K 17/04 20060101AFI20241023BHJP
【FI】
F16K17/04 A
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021037294
(22)【出願日】2021-03-09
(65)【公開番号】P2022137688
(43)【公開日】2022-09-22
【審査請求日】2023-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】391002166
【氏名又は名称】株式会社不二工機
(74)【代理人】
【識別番号】100100365
【弁理士】
【氏名又は名称】増子 尚道
(72)【発明者】
【氏名】片山 俊治
(72)【発明者】
【氏名】浅野 恒
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 賢希
(72)【発明者】
【氏名】倉田 洸
【審査官】山崎 孔徳
(56)【参考文献】
【文献】特開昭54-016760(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を導入する流入路と前記冷媒を排出する流出路とに連通する弁室を有する弁本体と、
前記弁室内に形成した弁座に着座した閉弁状態と前記弁座から離間した開弁状態との間で前記弁座に対して進退動することにより前記冷媒の流量を変更する弁体と、
前記弁体を前記弁座に向けて付勢するとともに前記流入路から流入する冷媒から前記弁体が受ける圧力に従って伸縮することにより前記弁体の進退動を許容する感圧部材と
を備えた弁装置であって、
前記弁体の開弁方向を上方とし、前記弁体の閉弁方向を下方とした場合に、
前記流入路を前記弁本体の下端部に形成するとともに、前記流出路を前記弁本体の上端部に形成し、これら流入路と流出路との間に前記弁室を配置し、
前記弁装置は、
前記弁体の下側に備えられ、前記弁体の上下方向の移動を許容する一方、上下方向に直交する方向への前記弁体の移動を規制する案内手段
を有し、
当該案内手段を前記流入路の中心軸部に配置し、
当該案内手段の周囲を前記冷媒の流路とし
前記案内手段は、
前記流入路内に備えられ、上下方向に延びる案内穴を有する支持部と、
当該案内穴に下端部が摺動可能に嵌入されるように前記弁体に備えられた支持棒と
を含み、
前記支持部の上面は、前記弁座に対して下方に離間して配置され、且つ、前記弁座より内側に配置され、
前記弁体の下端面は、上下方向に直交する平面とされ、
閉弁状態において、前記流入路と、前記弁体と、前記支持部とによって、空間部が規定される
ことを特徴とする弁装置。
【請求項2】
冷媒を導入する流入路と前記冷媒を排出する流出路とに連通する弁室を有する弁本体と、
前記弁室内に形成した弁座に着座した閉弁状態と前記弁座から離間した開弁状態との間で前記弁座に対して進退動することにより前記冷媒の流量を変更する弁体と、
前記弁体を前記弁座に向けて付勢するとともに前記流入路から流入する冷媒から前記弁体が受ける圧力に従って伸縮することにより前記弁体の進退動を許容する感圧部材と
を備えた弁装置であって、
前記弁体の開弁方向を上方とし、前記弁体の閉弁方向を下方とした場合に、
前記流入路を前記弁本体の下端部に形成するとともに、前記流出路を前記弁本体の上端部に形成し、これら流入路と流出路との間に前記弁室を配置し、
前記弁装置は、
前記弁体の下側に備えられ、前記弁体の上下方向の移動を許容する一方、上下方向に直交する方向への前記弁体の移動を規制する案内手段
を有し、
当該案内手段を前記流入路の中心軸部に配置し、
当該案内手段の周囲を前記冷媒の流路とし、
前記案内手段は、
前記流入路内に備えられた支持部と、
当該支持部から前記弁体に向け上方へ起立する支持棒と、
前記弁体の下面部に穿設され、且つ、前記弁体の上下方向への移動を許容しつつ前記支持棒の上端部が嵌入される案内穴と
を含み、
前記支持部の上面は、前記弁座に対して下方に離間して配置され、且つ、前記弁座より内側に配置され、
前記弁体の下端面は、上下方向に直交する平面とされ、
閉弁状態において、前記流入路と、前記弁体と、前記支持部とによって、空間部が規定される
ことを特徴とする弁装置。
【請求項3】
前記感圧部材、前記弁体および前記案内手段を、上下方向に延びる軸に沿って同軸状に配置した
請求項1または2に記載の弁装置。
【請求項4】
前記支持部は、前記流入路を横切るように前記流入路の中間部に備えられ、
前記弁本体と一体に形成されている
請求項1または2に記載の弁装置。
【請求項5】
前記支持部は、前記流入路内を流れる前記冷媒が通過できるように当該支持部を上下方向に貫通する複数の流路孔を備えている
請求項1から4のいずれか一項に記載の弁装置。
【請求項6】
前記複数の流路孔は、前記支持部の中心軸から等距離隔てて円状に配列された複数の貫通孔からなる
請求項に記載の弁装置。
【請求項7】
前記案内穴と前記支持棒との間に介在されるように防振部材を備えた
請求項1から6のいずれか一項に記載の弁装置。
【請求項8】
前記防振部材は、前記支持棒を取り囲むように備えられた弾性を有するリング状部材である
請求項に記載の弁装置。
【請求項9】
前記弁装置は、前記弁体を上方へ付勢する圧縮コイルばねを前記弁体の下側に備え、
前記リング状部材は、前記圧縮コイルばねによる上方への付勢力の反力を受けて上下方向に押し潰されることにより前記支持棒を押圧する
請求項に記載の弁装置。
【請求項10】
前記弁装置は、前記弁体を上方へ付勢する圧縮コイルばねを前記弁体の下側に備え、
前記防振部材は、
上下方向に延びるスリットを有する横断面C字形の筒状部材で、径が変化するように弾性変形が可能であり、
前記支持棒に巻き付けるように設置され、
前記圧縮コイルばねによる上方への付勢力の反力を受けて当該反力を中心軸に向かう径方向への力に変換できるように外方へ向かって下り勾配となるテーパ面を上端部および下端部のうちのいずれか一方または双方に備えており、
前記反力を受けることにより当該防振部材の内周面が前記支持棒の外周面に押し付けられるようにした
請求項に記載の弁装置。
【請求項11】
前記弁体を上方へ付勢する圧縮コイルばねを前記弁体の下側に備えるとともに、
前記感圧部材の下端部を前記弁体との相対的な横ずれを阻止できるように前記弁体に接触させ、
これにより前記感圧部材の下端部を支持した
請求項1から10のいずれか一項に記載の弁装置。
【請求項12】
前記弁装置は、前記感圧部材の上端部を支持する支持部材を備え、
前記感圧部材は、上端部を、前記支持部材との相対的な横ずれを阻止できるように前記支持部材に接触させてある
請求項11に記載の弁装置。
【請求項13】
前記弁装置は、
前記支持部材に上下動可能に設置され、前記感圧部材の上端部に係合して前記感圧部材の付勢力を調節可能な調節ねじ
を備え、
前記調節ねじ、および、前記感圧部材の上端部のうちの一方に、上下方向に突出する突起を備えるとともに、
前記調節ねじ、および、前記感圧部材の上端部、のうちの他方に、前記突起が嵌入する
係合穴を備え、
前記係合穴は、当該係合穴の軸線および前記突起の軸線のいずれか一方または双方が上下方向の軸線に対して傾くことを許容しつつ、当該係合穴と前記突起とが相対的に横ずれすることを阻止できるように、前記突起を保持し、
これにより前記感圧部材と前記支持部材との相対的な横ずれを阻止できるようにした
請求項12に記載の弁装置。
【請求項14】
前記支持部材は、前記弁本体と一体に形成されている
請求項12または13に記載の弁装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍サイクルに使用される弁装置に係り、特に、感圧ベローズを備えた蒸発圧力調整弁に関する。
【背景技術】
【0002】
冷凍サイクルでは、蒸発器で冷媒を気化させ周囲の雰囲気と熱交換を行うが、負荷が小さいときに蒸発器が過度に冷却されて着霜することがある。着霜は一旦生じると氷の層により通風が遮断され冷却能率が急激に低下することから、これを防ぐために蒸発器の出口側配管に蒸発圧力調整弁が備えられる。
【0003】
蒸発圧力調整弁は、蒸発器の出口側流路を絞り、蒸発器内の圧力を一定の大きさ以上に保持することにより蒸発器の着霜を防ぐ。
【0004】
また、このような蒸発圧力調整弁(蒸発圧力制御弁)を開示するものとして下記特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭63-270981号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記特許文献1に記載の制御弁では、冷媒の流量を調整する弁体に傾きや軸ずれが生じやすく、弁体の円滑な作動と安定した制御を得ることが難しい。
【0007】
具体的には、当該文献記載の制御弁では、弁体は感圧部材であるベローズを介して冷媒の流入路と同軸状に弁本体(ボディ)に支持されている。弁体を支持するベローズは、基端部は弁本体に固定された座板に支持されているものの、弁体が設置される先端側は片持ち梁のように弁本体には支持されていない。しかも当該ベローズは、弁体が受ける圧力に感応して伸縮する必要から軸方向の寸法が長く可撓性を有する。
【0008】
したがって、このように長尺で可撓性のあるベローズの先端に備えられた弁体は、左右に(水平方向へ)振れやすく、流れ込む冷媒に押されて傾いたり左右に位置ずれして流入路の内壁面に接触することにより弁体の円滑な作動が妨げられるおそれがある。また、接触した流入路壁面との間に摺動抵抗が生じ、弁体の実際の作動圧力がベローズにより設定された設計圧力から逸脱する不具合が生じる可能性もある。
【0009】
また、弁体の傾きを抑えるためには、嵌入長L(図17参照)と弁体の外径dとの比(縦横比)L/dを十分大きくする必要があるが、上記特許文献1に記載の制御弁では、弁部の外径dは必要な流路面積を確保するのに十分大きくする必要があることから、Lを大きくとらざるを得なかった。このため、制御弁の全長が長くなり、車両搭載時に取り付けスペースをとってしまう問題が生じることがあった。
【0010】
さらに、前記特許文献1記載の制御弁では、ばね荷重調整用のねじ部材と感圧部材と弁体を一体に連結する必要があり、一部の部品や箇所に傾きや軸ずれが生じると可動部全体に影響が及び、この点からも弁体に傾きや軸ずれが生じやすい難がある。また当該文献記載の制御弁は、防振機構を備えていないことから、弁体が共振して異音が発生するおそれもある。
【0011】
したがって、本発明の目的は、弁体の円滑な作動を確保し、より安定した制御が可能な弁装置を得ることにある。また、本発明の更なる目的は、弁体の振動を防止または抑制して異音の発生を防ぐことにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決し目的を達成するため、本発明に係る弁装置は、冷媒を導入する流入路と冷媒を排出する流出路とに連通する弁室を有する弁本体と、弁室内に形成した弁座に着座した閉弁状態と弁座から離間した開弁状態との間で弁座に対して進退動することにより冷媒の流量を変更する弁体と、弁体を弁座に向けて付勢するとともに流入路から流入する冷媒から弁体が受ける圧力に従って伸縮することにより弁体の進退動を許容する感圧部材とを備えた弁装置であって、弁体の開弁方向を「上(上方)」とし、弁体の閉弁方向を「下(下方)」とした場合に、流入路を弁本体の下端部に形成するとともに、流出路を弁本体の上端部に形成し、これら流入路と流出路との間に弁室を配置したものである。
【0013】
そして、当該弁装置は、弁体の上下方向(本願では「垂直方向」とも言う)の移動を許容する一方で上下方向に直交する方向(本願では「水平方向」又は「横方向」とも言う)への弁体の移動を規制する案内手段を弁体の下側に備え、当該案内手段を流入路の中心軸部に配置し、当該案内手段の周囲を冷媒の流路とした。
【0014】
なお、本発明では、典型的には、上記感圧部材、弁体および案内手段を上下方向に延びる軸(例えば中心軸)に沿って同軸状に配置する。弁体の水平方向へのずれを防ぎつつ垂直方向への円滑な動作を可能とするためである。また上記弁本体は、複数の部材(例えば後述する実施形態のように2つの部材、或いは3つ以上の部材)により構成してあっても良い。さらに本発明の典型的な態様では、例えば、流入路と流出路が共に上下方向に延び且つ流入路と弁室と流出路とが上下方向に直線状に配列されるようにする。
【0015】
本発明の弁装置では、弁体の横方向への移動を規制する案内手段を弁体下側の流入路の中心軸部に備えるから、案内手段(案内穴や支持棒)を細長く(弁体の移動方向である上下方向に長く)形成することができ、これにより弁体の傾きや横ずれを効果的に防ぐことが可能となる。
【0016】
前述したように特許文献1記載の制御弁では、弁体の外径dを必要な流路面積を確保するために十分大きくする必要があることから、嵌入長Lと弁体の外径dとの比(縦横比)L/dを大きくすることが難しい。これに対し本発明によれば、案内手段の径(特許文献1の外径dに相当)を流路面積(流入路の径)とは無関係に設定することが出来るから、嵌入長Lを大きくしなくても径dを小さくすることで縦横比L/dを大きくすることが出来る。したがって本発明によれば、案内手段による弁体の安定した動作を弁装置の大型化(流入路長や装置の全長の長大化)を招くことなく実現することが出来る。さらに本発明では、入口側となる流入路と、出口側となる流出路が直線状に配置されることから、配管の取り回しがしやすいという利点も従来のような問題を引き起こすことなく享受することが出来る。
【0017】
案内手段の具体的な態様としては、例えば、流入路内に備えられ上下方向に延びる案内穴を有する支持部と、当該案内穴に下端部が摺動可能に嵌入されるように弁体に備えられた支持棒とを案内手段が含むようにする。
【0018】
また案内手段が、流入路内に備えられた支持部と、当該支持部から前記弁体に向け上方へ起立する支持棒と、弁体の下面部に穿設され且つ弁体の上下方向への移動を許容しつつ支持棒の上端部が嵌入される案内穴とを含むようにしても良い。
【0019】
なお、上記支持棒は、弁体(又は支持部)と一体に形成された(1つの部材として作製された)ものであっても良く、弁体(又は支持部)とは別部材であるが弁体(又は支持部)に固定されたものであっても良い。当該支持棒は、中空のまたは中実の棒状部分または棒状部材により構成すれば良い。
【0020】
上記支持部は、流入路を横切るように流入路の中間部に備えることが出来る。また当該支持部は、弁本体と別に作製して弁本体に取り付けることも可能であるが、弁本体と一体に形成することが好ましい。弁本体と一体に形成(弁本体と繋がったひと続きの部材として構成)すれば、当該支持部の支持強度を高めることができ、支持部を別に取り付ける作業工程を不要にすることが出来るからである。
【0021】
さらに、上記支持部は、流入路内を流れる冷媒が通過できるように当該支持部を上下方向に貫通する複数の流路孔を有することがある。これら複数の流路孔は、例えば、支持部の中心軸(上下方向の軸)から等距離隔てて円状に配列された複数の貫通孔からなるものとする。
【0022】
上記弁装置では、好ましい一態様として、案内穴と支持棒との間に介在されるように防振部材を備える。自励振動のような弁体の振動により異音が発生することを防ぎ或いは抑制するためである。
【0023】
当該防振部材は、例えば、支持棒を取り囲むように備えた弾性を有するリング状部材とする。
【0024】
また、弁体を上方へ付勢する圧縮コイルばねを弁体の下側に備えるとともに、上記リング状部材(防振部材)が、当該圧縮コイルばねによる上方への付勢力の反力を受けて上下方向に押し潰されることにより支持棒を押圧するようにしても良い。
【0025】
このような態様によれば、より効果的に弁体の振動を抑えることが可能となる。弁振動は特に弁開度が小さいときほど(閉弁状態に近づくほど)弁体周りの圧力や冷媒の流れが不安定となって振動が生じやすくなるが、上記態様によれば、弁開度が小さいときほど圧縮コイルばねが圧縮されてばね荷重が大きくなるため、リング状部材の変形も大きくなって支持棒を押圧する力が大きくなり、防振効果が高まるためである。
【0026】
また、同様の理由から次のような態様によっても効果的な制振を行うことが出来る。
【0027】
前記弁装置が、弁体を上方へ付勢する圧縮コイルばねを弁体の下側に備え、防振部材が、上下方向に延びるスリット(すり割り)を有する横断面C字形の筒状部材で、径が変化するように弾性変形が可能であり、支持棒に巻き付けるように設置され、圧縮コイルばねによる上方への付勢力の反力を受けて当該反力を中心軸に向かう径方向への力に変換できるように外方へ向かって下り勾配となるテーパ面を上端部および下端部のうちのいずれか一方または双方に備えており、前記反力を受けることにより当該防振部材の内周面が支持棒の外周面に押し付けられるようにする。
【0028】
さらに、本発明の別の一態様では、弁体を上方へ付勢する圧縮コイルばねを弁体の下側に備えるとともに、感圧部材の下端部を弁体との相対的な横ずれを阻止できるように弁体に接触させ、これにより感圧部材の下端部を支持する。
【0029】
このような態様によれば、従来のように感圧部材と弁体を連結しなくても弁体を動作させることができ、可動部である感圧部材や弁体の調心性を向上させる(感圧部材に傾きが生じても弁の円滑な開閉動作を行わせる)ことが出来る。すなわち当該態様では、弁体を感圧部材に押し付ける荷重を加える圧縮コイルばねを弁体の下側に備え、感圧部材と弁体との相対的な横ずれ(水平方向への相対移動)は阻止するが、上下方向(軸線方向)については圧縮コイルばねによって弁体を感圧部材に押し付けているだけで固定されていない。言い換えれば、弁体と感圧部材とを連結せずに相対的に接離可能となっている。したがって、例えば感圧部材が弁体に対して傾いてもこの傾きの影響が弁体に及ぶことがなく、弁体の円滑な上下動が可能となる。
【0030】
また上記態様ではさらに、感圧部材の上端部を支持する支持部材に対して感圧部材を、当該支持部材との相対的な横ずれを阻止できるように当該支持部材に接触させる構造とすることが好ましい。
【0031】
感圧部材上端部の支持構造を弁体と感圧部材間の係合関係と同様の構造にすることにより、感圧部材上端部の支持部材と感圧部材についても調心性を向上させるためである。当該構造によれば、例えば弁装置組立時の支持部材の取付誤差や支持部材自体の製作公差等により支持部材に傾きが生じてもその影響が感圧部材に及ぶことを防ぐことが出来る。
【0032】
感圧部材上端部を支持する上記支持部材は、弁本体と別に構成した部材として良いが、弁本体と支持部材を一体に形成することも可能である。このような態様によれば、弁装置の組立時に支持部材の取付誤差が生じることを回避することが出来るとともに、支持部材の取付作業を省くことが出来るから弁装置の製造効率を高めることが出来る。
【0033】
また本発明の弁装置は、典型的には、感圧部材の付勢力を調節する調節ねじを感圧部材の上部に備えているが(調節ねじを備えていなくても良い)、このような調節ねじを備えた場合の感圧部材上端部の支持構造を提示するのが次の態様である。
【0034】
すなわち当該態様では、本発明に係る弁装置が、支持部材に上下動可能に設置され感圧部材の上端部に係合して感圧部材の付勢力を調節可能な調節ねじを備え、調節ねじと感圧部材の上端部とのうちの一方に上下方向に突出する突起を備えるとともに、調節ねじと感圧部材の上端部とのうちの他方に前記突起が嵌入する係合穴を備え、当該係合穴は、当該係合穴の軸線および前記突起の軸線のいずれか一方または双方が上下方向の軸線に対して傾く(傾動又は揺動する)ことを許容しつつ、当該係合穴と前記突起とが相対的に横ずれすることを阻止できるように前記突起を保持し、これにより感圧部材と支持部材との相対的な横ずれを阻止できるようにする。
【0035】
このような態様によれば、感圧部材と調節ねじを連結しなくても、弁体を動作させ或いは調節ねじで感圧部材の付勢力を調節することが可能となる。
【0036】
なお、上記「係合穴の軸線および突起の軸線のいずれか一方または双方が上下方向の軸線に対して傾くことを許容する」とは、言い換えれば、調節ねじ(突起又は係合穴)と感圧部材(係合穴又は突起)とが相対的に傾くことが可能なこと、さらに言い換えれば、係合穴の軸線(深さ方向に延びる中心軸)と突起の軸線(突出方向に延びる中心軸)とが相対的に傾く(係合穴の軸線と突起の軸線がなす角度が変化する)ことである。
【0037】
このような相対傾動可能な保持構造は、例えば後述の第3から第6実施形態で示すように、突起の先端部が半球状で、当該半球状の先端部が係合穴に嵌入され且つ当該突起が傾動(揺動)できるような支持構造により実現することが可能である。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、弁体を円滑に作動させて安定した制御が可能な弁装置を提供することが出来る。また本発明の一態様によれば、弁体の振動を防止または抑制して異音の発生を防ぐことが出来る。
【0039】
本発明の他の目的、特徴および利点は、図面に基いて述べる以下の本発明の実施の形態の説明により明らかにする。なお、各図中、同一の符号は、同一又は相当部分を示す。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1図1は、本発明の第1の実施形態に係る蒸発圧力調整弁(閉弁状態)を示す縦断面図である。
図2図2は、前記第1実施形態に係る蒸発圧力調整弁を示す横断面図(図1のA-A矢視断面)である。
図3図3は、前記第1実施形態に係る蒸発圧力調整弁(開弁状態)を示す縦断面図である。
図4図4は、本発明の第2の実施形態に係る蒸発圧力調整弁(閉弁状態)を示す縦断面図である。
図5図5は、前記第2実施形態に係る蒸発圧力調整弁を示す横断面図(図4のB-B矢視断面)である。
図6図6は、前記第2実施形態に係る蒸発圧力調整弁(開弁状態)を示す縦断面図である。
図7図7は、本発明の第3の実施形態に係る蒸発圧力調整弁(閉弁状態)を示す縦断面図である。
図8図8は、前記第3実施形態に係る蒸発圧力調整弁を示す横断面図(図7のC-C矢視断面)である。
図9図9は、前記第3実施形態に係る蒸発圧力調整弁を示す横断面図(図7のD-D矢視断面)である。
図10図10は、前記第3実施形態に係る蒸発圧力調整弁(開弁状態)を示す縦断面図である。
図11図11は、本発明の第4の実施形態に係る蒸発圧力調整弁(閉弁状態)を示す縦断面図である。
図12図12は、前記第4実施形態に係る蒸発圧力調整弁(開弁状態)を示す縦断面図である。
図13図13は、本発明の第5の実施形態に係る蒸発圧力調整弁(閉弁状態)を示す縦断面図である。
図14図14は、前記第5実施形態に係る蒸発圧力調整弁(開弁状態)を示す縦断面図である。
図15図15は、本発明の第6の実施形態に係る蒸発圧力調整弁(閉弁状態)を示す縦断面図である。
図16図16は、前記第6実施形態に係る蒸発圧力調整弁(開弁状態)を示す縦断面図である。
図17図17は、従来(前記特許文献1)の蒸発圧力調整弁を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
〔第1実施形態〕
図1から図3を参照して本発明の第1の実施形態に係る弁装置について説明する。なお、本実施形態(後述の各実施形態についても同様)に係る弁装置は、冷凍サイクルの蒸発器の出口側配管に備えられて蒸発器内の圧力を一定の大きさ以上に保持する蒸発圧力調整弁(以下、単に「調整弁」と称することがある)である。また、各図には上下左右の各方向を表す二次元直交座標を適宜表示し、以下の説明はこれらの方向に基いて行う(後述の各実施形態についても同様)。
【0042】
図1から図3に示すように本発明の第1の実施形態に係る蒸発圧力調整弁11は、冷媒を導入する流入路21と冷媒を排出する流出路22とに連通する弁室13を有する弁本体12と、弁室13内に形成した弁座14に当接した閉弁状態(図1参照)と弁座14から離れた開弁状態(図3参照)との間で弁座14に対して進退動(上下動)することにより冷媒の流量を変更する弁体15と、弁体15を弁座14に向けて付勢するとともに流入路21から流入する冷媒から弁体15が受ける圧力に従って伸縮することにより弁体15の上下動を許容する感圧ベローズ(感圧部材/以下単に「ベローズ」と言うことがある)16と、弁体15の水平方向(左右方向等の上下方向に直交する方向)への移動(横ずれや傾き)を防ぐ案内機構(後述の案内穴32及び支持棒34)とを備えている。
【0043】
弁本体12は、本実施形態(第2以降の実施形態でも同様)では2つの部材、つまり流入路21と弁室13を内部に有する下部弁本体12aと、流出路22を内部に有し下部弁本体12aの上端部に連結した上部弁本体12bとからなる。また、弁室13に冷媒を導入する流入路21と弁室13から冷媒を排出する流出路22は共に上下方向に延び、これらの流路21,22と弁室13および感圧部材16とが同軸状に且つ上下方向に直線状に並ぶように配置してある。なお、上部弁本体12bと下部弁本体12aとの連結は、感圧ベローズ16の上端部を支持する座板20を両弁本体12a,12bの間に挟み込みつつ下部弁本体12aの上端部をかしめることにより行っている。
【0044】
ベローズ16は、その上端部を座板20に調節ねじ(雄ねじ)18を介して支持する一方、下端部を弁体15の上面に板状連結部材23を介して連結してある。ベローズ16の上端部に一体に備えた調節ねじ18は座板20の中心部に形成したねじ孔(雌ねじ)20bと螺合し、調節ねじ18を回すと当該調節ねじ18が上下方向に移動してベローズ16の設定圧力(下方への付勢力)を調節することが出来る。なお、調節ねじ18の座板上面側には、調節ねじ18の緩みを防ぐロックナット19を備えてある。また座板20には、弁室13から流出路22へ冷媒を通過させる貫通孔20aを備える。さらに本実施形態では、ベローズ16の下端と弁体15とを互いに水平方向だけでなく垂直方向への相対移動も出来ないように連結してある。
【0045】
弁座14は、弁室13の下面部、より詳しくは、流入路21の弁室13への開口部(流入路21の上端部)に形成してある。一方、弁体15は、弁座14に当接して流入路21を塞ぐことが出来るように平坦な下面を有するとともに、下面中心部から垂直下方へ延びる支持棒34を備えている。
【0046】
また、流入路21の上下方向の中間位置には、上記支持棒34を支持する円柱状のフランジ部(本発明の支持部に相当する)31を備えてある。このフランジ部31は、流入路21を横切るように下部弁本体12aと一体に(ひと続きの部分として)形成してあり、上下方向に貫通して支持棒34の下端部を摺動可能に受け入れる案内穴32を中心軸部に有する。これら案内穴32と支持棒34は、前記案内機構(本発明に言う案内手段)を構成するもので、弁体15の上下方向の移動を許容する一方、上下方向に直交する方向(左右方向を含む水平方向)への弁体15の移動を規制することにより弁体15の横ずれや傾動を阻止する。
【0047】
さらに、案内穴32の周囲には、弁室13に向け流入路21内を流れる冷媒を通過させるため、フランジ部31を上下方向に貫通する複数の流路孔33を穿設する。これらの流路孔33は、流入路21内を進行する冷媒の流れが均一になるようにフランジ部31の中心軸から等距離隔てて円状に配列させてある(図2参照)。
【0048】
このような本実施形態に係る調整弁11では、弁体15の上下方向の位置(弁の開度)は、ベローズ16による下方への付勢力と、流入路21を通じて弁室13内に流入する冷媒による上方への圧力(これは調整弁11の上流に接続される蒸発器内の冷媒圧力に等しい)とのつり合いによって決定される。
【0049】
なお、ベローズ16の内部には、弁体15を下方へ付勢するコイルばね17を備えてあり、上記「ベローズによる下方への付勢力」とは、当該コイルばね17を含めたベローズ16全体の付勢力を意味する。また、ベローズ16内は真空としても良いし、ベローズ16の付勢力を大きくしたいときなど必要に応じてガスを封入しても良い。さらに、ベローズ上端部の調節ねじ18を回すことによりベローズ16の付勢力を調整できることは既に述べたとおりである。
【0050】
ベローズ16は、流入路21を通じて弁室13内に流入する冷媒の圧力(蒸発器内の冷媒圧力)の変動に従って上下方向に伸縮し、これにより冷媒圧力が一定値以上に保たれるが、具体的には次のとおりである。
【0051】
まず、図1に示す閉弁状態では、弁体15が弁座14に当接し、流入路21と流出路22とが連通せずに遮断されている。一方、図2に示す開弁状態では、弁体15が上方へ移動して弁座14から離れ、流入路21と流出路22とが弁室13を介して連通し、流入路21から流入した冷媒は、弁体15と弁座14との間を通って弁室13に浸入し、流出路22を通じて外部へ排出され(図3の矢印R参照)、圧縮機(図示せず)へ送られる。このときベローズ16は、弁体15が受ける冷媒の圧力(上方への力)に従って閉弁時より縮んでおり、弁体15はベローズ16からの弾発力(下方への付勢力)を受けている。
【0052】
この開弁状態において冷媒の圧力が低下すると、上記弾発力によりベローズ16が伸びて弁体15が弁座14に向け下方へ変位し、冷媒の流路面積が減少する。これにより冷媒圧力が増大する。このようにして、流入路21から流入する冷媒の圧力(上流に接続された蒸発器内の圧力)が一定値以上に保たれる。
【0053】
また、上記のような動作時に弁体15は、当該弁体15と一体に形成され案内穴32に下端部が嵌入された支持棒34により下面側から常に支持されているため、弁体15が傾いたり水平方向へ位置ずれしたりすることを防ぐことが出来る。さらに、弁体15が弁室13の内壁面に当接して弁体15の動作が妨げられ、或いは弁体15と弁室13の内壁面との間に摺動抵抗が生じて蒸発器内の冷媒圧力が設定圧力から逸脱するような不具合が生じることも防止することが出来る。
【0054】
またこのような案内機構(案内穴32及び支持棒34)は、本実施形態の調整弁11では流入路21の中心軸部に配置するから、前述した特許文献1記載の調整弁と異なり、流入路21の径とは無関係に案内機構(案内穴32及び支持棒34)の径dを設定することが出来る。したがって、当該径dを小さくすることにより縦横比L/dを大きくすることが可能で、これにより弁体15の安定した動作を実現することが出来る。
【0055】
〔第2実施形態〕
図4から図6を参照して本発明の第2の実施形態に係る調整弁41について説明する。なお、第1実施形態と同様の構成については同一の符号を付して重複した説明を省略し、相違点を中心に説明を行う(後述の第3から第6実施形態についても同様)。
【0056】
本発明の第2の実施形態に係る調整弁41は、前記第1実施形態の調整弁11と同様に感圧ベローズ16によって上下動する弁体15を案内する案内機構(案内穴32を有するフランジ部31と、弁体下面側に備えた支持棒34)を有するものであるが、弁振動を抑制するために支持棒34に巻き付けるように設置した防振シリンダ(防振部材)42と、弁体15の下面側から弁体15を上方へ付勢するコイルばね35と、上下方向へ摺動可能に支持棒34に取り付けられてコイルばね35の下端を支持するばね受け部材36とをさらに備えている。
【0057】
なお、コイルばね35は圧縮された状態で弁体15とばね受け部材36との間に設置した圧縮コイルばねである。また、弁体下面側に圧縮コイルばね35を備えた本実施形態(第3以降の実施形態も同様)の調整弁41では、前記第1実施形態の調整弁11と異なり、弁体15の上下方向の位置(弁の開度)は、ベローズ16による下方への付勢力と、圧縮コイルばね35による上方への付勢力と、流入路21を通じて弁室13内に流入した冷媒による上方への圧力とのつり合いによって決定される。
【0058】
防振シリンダ42は、上下方向に延びるスリット(すり割り)42c(図5参照)を有する横断面C字形の筒状部材で、スリット42cを有することにより径が変化するように弾性変形が可能である。また、防振シリンダ42の上部に備える圧縮コイルばね35からの反力(弁体15を上方に付勢する力の反力)をばね受け部材36を介して受け、当該反力を中心軸に向かう径方向への力に変換できるように外方へ向かって下り勾配となるテーパ面42a,42bを防振シリンダの上端部(上面)および下端部(下面)に備えている。なお、当該防振シリンダ42の上面のテーパ面42aに対応してばね受け部材36の下面も、中心軸から径方向に外方へ向かうにつれ下り勾配となるテーパ面とする。同様に、フランジ部31の案内穴32の上端部にも、防振シリンダ下面のテーパ面42bに対応したテーパ面を形成してある。
【0059】
したがって、防振シリンダ42は上記コイルばね35の反力を受けることにより径が小さくなるように弾性変形し、防振シリンダ42の内周面が支持棒34の外周面に押し付けられる。これにより弁体15の振動を抑制することが出来る。しかも、弁体15が下方に位置する(弁座14に近い位置にある)ほどコイルばね35が圧縮されて上記反力が大きくなり、防振シリンダ42の支持棒34への押圧力も強くなるから、弁振動が発生しやすい微小開度のときに弁振動を効果的に防ぐことが可能となる。
【0060】
〔第3実施形態〕
図7から図10に示すように本発明の第3の実施形態に係る調整弁51は、前記第2実施形態の調整弁41と同様に感圧ベローズ16によって上下動する弁体15を案内する案内機構(案内穴32を有するフランジ部31と、弁体下面側に備えた支持棒34)と、支持棒34に設置した防振シリンダ42と、弁体15を上方に付勢する圧縮コイルばね35と、ばね受け部材36とを有するものであるが、弁体15とベローズ16との接続構造、および、ベローズ16の上端部の支持構造が異なる。
【0061】
なお、本実施形態(後述の第4及び第5実施形態も同様)では、案内穴32の深さ(上下方向の長さ)を大きくして案内穴32への支持棒34の嵌入長Lを長くするために、フランジ部31の中心部(案内穴32の周囲)を円筒状に下方へ突出させた突出部31aを備えてある。
【0062】
弁体15とベローズ16との接続構造は、弁体15の上面に形成した凹部にベローズ16の下端部を嵌め込んだ構造で、ベローズ16の下端部は弁体上面の凹部の内周面に当接して水平方向へは移動することが出来ないが、垂直方向(上下方向)についてはベローズ16と弁体15とを連結していない(上下方向の相対的な移動を規制していない)。
【0063】
このような構造を採用できるのは、弁体15の下面側に備えた圧縮コイルばね35が、防振シリンダ42にばね荷重を加えるだけでなく、弁体15を下から持ち上げる(ベローズ16に向けて付勢する)働きもしているからである。このため、本実施形態や後に述べる第4から第6実施形態では、第1実施形態のようにベローズ16に固定した前記板状連結部材23を介して弁体15をベローズ16に連結しなくても、当該圧縮コイルばね35が弁体15を持ち上げる働きによってベローズ16と弁体15が上下方向に離れることがない。なお、弁体15とベローズ16の相対的な横ずれは上記凹部にベローズ16を嵌入させることで阻止することが出来る。
【0064】
しかも、上記のような接続構造によれば、ベローズ16と弁体15とが相対的に傾くことが可能となり、ベローズ16の傾きが弁体15に伝わることを防ぐことが出来ることから、製造時の組立誤差や使用中の冷媒の不安定な流れなどによってベローズ16が傾斜してもその影響が弁体15に及ぶことを回避することができ、弁体15のより安定した動作を実現することが出来る。
【0065】
なお、本実施形態では、弁体15側に凹部を形成して当該凹部にベローズ16の下端部を挿し込んだが、これとは逆に、ベローズ16の下面に凹部を形成し、この凹部に弁体15の上端部を差し込む構造とすることも可能である。
【0066】
ベローズ上端部の支持構造は次のとおりである。
【0067】
第1実施形態と同様の座板を上部弁本体12bと一体に形成した座板部52とする。座板部52の中心部には調節ねじ53と螺合するねじ孔(雌ねじ)52bを形成してこのねじ孔52bに調節ねじ53をねじ込むが、この調節ねじ53は、第1実施形態と異なり本実施形態ではベローズ16と一体になっておらず、別部材として構成する。調節ねじ53の先端部(下端部)には先端(下端)が半球状となった突起54を備えるとともに、ベローズ16の上面部に当該突起54が嵌入する係合穴55を備える。また、ベローズ16の上端部と座板部52(調節ねじ53)とは連結されておらず(垂直方向について拘束されておらず)、弁体下面側に備えた圧縮コイルばね35の上方への付勢力によってベローズ16の上面が座板部52の下面に押し付けられているだけである。
【0068】
ここで、係合穴55は、上記突起54の水平方向への相対移動、つまり座板部52および調節ねじ53とベローズ16との間の水平方向への相対移動は阻止するが、垂直方向への相対移動、ならびに、相対的な傾動、すなわち突起54(調節ねじ53)の軸線と係合穴55の軸線が一致しておらず且つ平行になってもいない状態(例えば突起54が係合穴55に対して斜めに差し込まれているような状態)となることを許容するように突起54を保持する。
【0069】
したがって、本実施形態の支持構造によれば、座板部52およびベローズ上端部は、中心軸(上下方向の軸線)に対して傾くことが可能で、この傾きが接続相手(座板部52にとってはベローズ16、ベローズ16にとっては座板部52)に影響を与えることがない。このため、例えば座板部52や上部弁本体12bの製造公差や組立誤差によって座板部52(上部弁本体12b)が斜めになっていたとしてもその影響がベローズ16や弁体15に及ぶことを防ぐことが出来る。また本実施形態によれば、座板部52が上部弁本体12bと一体に備えられるから、座板部52(前記座板20)の取付誤差が生じることがなく、座板の取付作業を省いて製造工程を簡便化できる利点もある。
【0070】
〔第4実施形態〕
図11から図12に示すように本発明の第4の実施形態に係る調整弁61は、前記第3実施形態の調整弁51と同様に、感圧ベローズ16によって上下動する弁体15を案内する案内機構(案内穴32を有するフランジ部31と、弁体下面側に備えた支持棒34)と、弁体15を上方に付勢する圧縮コイルばね35と、第3実施形態と同様の弁体15とベローズ16の接続構造と、ベローズ上端部の支持構造(座板部52、調節ねじ53、突起54および係合穴55)とを有するものであるが、流入路21内に備える防振構造が異なる。
【0071】
具体的には、本実施形態では、前記防振シリンダ42に代え、樹脂やゴム等の弾性材料によって形成したリング状部材(Oリング)62を備える。このOリング62は、支持棒34を取り囲むように案内穴32の上端部の段差部に配置する。また、Oリング62の上部には、前記第3実施形態と同様に圧縮コイルばね35の下端を支持するばね受け部材36を備えるが、圧縮コイルばね35の反力(下方への力)がばね受け部材36を介してOリングに加わるようにばね受け部材36の下面は平坦な(水平な)面としてあり、Oリング62が下方へ押し潰されて横に広がり支持棒34を押圧するようになっている。
【0072】
したがって、弁開度が小さくなるほどOリング62が押し潰される程度が大きくなって支持棒34への押圧力が強くなるから、前記防振シリンダ42と同様に、弁体15が不安定となりやすい微小開度のときに効果的に弁振動を防ぐことが可能となる。
【0073】
なお、本実施形態では、リング状部材62が備えられる空間、すなわち案内穴32の上端部の段差部とばね受け部材36とにより形成される空間を、蒸発圧力調整弁の断面において台形の形状となるようにしても良い。この場合、当該台形は蒸発圧力調整弁の中心軸側が下底、外側が上底となるようにする。つまり、ばね受け部材36の下面は平坦な(水平な)面のほか、中心軸側から外側へ向かって下り勾配となる傾斜面(テーパ形状)としても良い。このような態様によれば、リング状部材62による支持棒34への押圧力を強め、防振機能を高めることが可能となる。
【0074】
〔第5実施形態〕
図13から図14に示すように本発明の第5の実施形態に係る調整弁71は、前記第4実施形態の調整弁61と同様に、感圧ベローズ16によって上下動する弁体15を案内する案内機構(案内穴32を有するフランジ部31と、弁体下面側に備えた支持棒34)と、弁体15を上方に付勢する圧縮コイルばね35と、第4実施形態と同様の弁体15とベローズ16の接続構造と、ベローズ上端部の支持構造(座板部52、調節ねじ53、突起54および係合穴55)とを有するものであるが、流入路21内に備える防振構造が異なる。
【0075】
具体的には、本実施形態では、支持棒34の周方向に水平に延びる溝を支持棒34の下端部外周面に形成し、この溝内に前記第4実施形態と同様に弾性を有するOリング72を設置する。このOリング72はフランジ部31の案内穴32の内周面に当接して弁振動を抑制する。なお、圧縮コイルばね35の下端はフランジ部31により支持するから、ばね受け部材は備えていない。
【0076】
〔第6実施形態〕
図15から図16に示すように本発明の第6の実施形態に係る調整弁81は、前記第5実施形態の調整弁71と同様のベローズ上端部の支持構造、および、ベローズ16と弁体15の接続構造を有するものであるが、弁体15の案内機構と防振構造が異なる。
【0077】
具体的には、本実施形態の案内機構は、弁体15の下面から垂直上方に延びるように弁体15の下面に穿設した案内穴32と、この案内穴32に上端部が相対摺動可能に(弁体15が上下動できるように)差し込まれた支持棒34とからなる。支持棒34は、流入路21の上下方向の中間位置に形成したフランジ部31に固定する。支持棒34は、フランジ部31の中心部から垂直上方へ立ち上がる。また、支持棒34の周囲のフランジ部31には、前記第1実施形態(図2)と同様の複数の流路孔33を形成する。
【0078】
また防振部材として、本実施形態では、前記第5実施形態と同様のOリング82を設置する。但し、本実施形態では、弁体下面の案内穴32の下端部に、周方向に水平に延びる段差部を形成し、この段差部にOリング82を設置する。段差部はOリング82を収容した後、Oリング82が下方へ脱落することがないように下方から留め輪83で塞ぎ、当該留め輪83を弁体下端部をかしめることにより固定する。そして、弁体15を上方へ付勢する圧縮コイルばね35は、本実施形態では、上記留め輪83とフランジ部31との間に圧縮した状態で設置する。
【0079】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の範囲内で種々の変更を行うことができることは当業者に明らかである。
【0080】
例えば、前記実施形態では蒸発圧力調整弁を構成したが本発明はこれに限定されず、圧力応動スイッチや減圧弁その他の冷媒圧力に従って弁体を作動させる各種の弁装置に本発明を適用することが可能である。
【符号の説明】
【0081】
11,41,51,61,71,81 蒸発圧力調整弁
12 弁本体
12a 下部弁本体
13b 上部弁本体
13 弁室
14 弁座
15 弁体
16 感圧ベローズ
17 コイルばね
18,53 調節ねじ
19 ロックナット
20 座板
20a 貫通孔
20b ねじ孔(雌ねじ)
21 流入路
22 流出路
23 板状連結部材
31 フランジ部
31a 突出部
32 案内穴
33 流路孔
34 支持棒
35 圧縮コイルばね
36 ばね受け部材
42 防振シリンダ(防振部材)
42a,42b テーパ面
42c スリット(すり割り)
52 座板部
54 突起
55 係合穴
62,72,82 Oリング(防振部材)
83 留め輪
R 冷媒の流れ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17