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特許7575788レーザアニール装置およびレーザアニール方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-22
(45)【発行日】2024-10-30
(54)【発明の名称】レーザアニール装置およびレーザアニール方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/268 20060101AFI20241023BHJP
   H01L 21/20 20060101ALI20241023BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20241023BHJP
   H01L 29/786 20060101ALI20241023BHJP
   G02F 1/1368 20060101ALN20241023BHJP
   G02F 1/13 20060101ALN20241023BHJP
【FI】
H01L21/268 J
H01L21/20
H01L21/268 T
H01L29/78 627G
G02F1/1368
G02F1/13 101
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021543012
(86)(22)【出願日】2020-08-27
(86)【国際出願番号】 JP2020032422
(87)【国際公開番号】W WO2021039920
(87)【国際公開日】2021-03-04
【審査請求日】2023-06-15
(31)【優先権主張番号】P 2019157087
(32)【優先日】2019-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020010744
(32)【優先日】2020-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】500171707
【氏名又は名称】株式会社ブイ・テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】弁理士法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小杉 純一
(72)【発明者】
【氏名】楊 映保
【審査官】佐藤 靖史
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-118409(JP,A)
【文献】特開2011-165717(JP,A)
【文献】特開2012-044046(JP,A)
【文献】特開2006-041092(JP,A)
【文献】特開2006-100427(JP,A)
【文献】特開平08-288520(JP,A)
【文献】特表2010-500759(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/268
H01L 21/20
H01L 21/336
G02F 1/1368
G02F 1/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の上に互いに平行をなす複数のゲートラインが形成され、複数の前記ゲートラインの上層に複数の前記ゲートラインの全体を覆うように成膜された非晶質シリコン膜に対して、
連続発振レーザ光を照射して前記非晶質シリコン膜の改質予定領域を結晶化膜に改質させるレーザアニール装置であって、
連続発振されるレーザ光をそれぞれ出射する複数の光源と、
複数の前記光源から出射されたそれぞれの前記レーザ光を、収束するレーザビームとなるように加工して、それぞれの前記レーザビームが前記ゲートラインの上方に位置する前記改質予定領域内に順次、対応して投影可能にする光学ヘッドと、
を備え、
前記光学ヘッドは、それぞれの前記レーザビームにおいて最も収束するスポット部が、前記改質予定領域の前記非晶質シリコン膜の膜内部に位置する状態で、前記レーザビームが前記改質予定領域内を相対的にスキャンされ、
前記光学ヘッドから出射された前記レーザビームは、前記非晶質シリコン膜の表面に対して所定の直線に沿って一定のピッチで並ぶように投影され、
前記光学ヘッドは、前記複数の前記レーザビームのピッチが、前記ゲートラインのピッチに等しくなるように回転移動可能である、ことを特徴とするレーザアニール装置。
【請求項2】
基板の上に互いに平行をなす複数のゲートラインが形成され、複数の前記ゲートラインの上層に前記複数の前記ゲートラインの全体を覆うように成膜された非晶質シリコン膜に対して、
連続発振レーザ光を照射して前記非晶質シリコン膜の改質予定領域を結晶化膜に改質させるレーザアニール装置であって、
連続発振されるレーザ光をそれぞれ出射する複数の光源と、
複数の前記光源から出射されたそれぞれの前記レーザ光を、収束するレーザビームとなるように加工して、それぞれの前記レーザビームが前記ゲートラインの上方に位置する前記改質予定領域内に順次、対応して投影可能にする光学ヘッドと、
を備え、
前記光学ヘッドは、それぞれの前記レーザビームにおいて最も収束するスポット部が、前記改質予定領域の前記非晶質シリコン膜の膜内部に位置する状態で、前記レーザビームが前記改質予定領域を内包する所定の領域を相対的にスキャンされ、
前記光学ヘッドから出射された前記レーザビームは、前記非晶質シリコン膜の表面に対して所定の直線に沿って一定のピッチで並ぶように投影される、
前記光学ヘッドは、複数の前記レーザビームのピッチが、前記ゲートラインのピッチに等しくなるように回転移動可能である、ことを特徴とするレーザアニール装置。
【請求項3】
基板の上に互いに平行をなす複数のゲートラインが形成され、複数の前記ゲートラインの上層に前記複数の前記ゲートラインの全体を覆うように成膜された非晶質シリコン膜に対して、
連続発振レーザ光を照射して前記非晶質シリコン膜の改質予定領域を結晶化膜に改質させるレーザアニール装置であって、
連続発振されるレーザ光をそれぞれ出射する複数の光源と、
複数の前記光源から出射されたそれぞれの前記レーザ光を、収束するレーザビームとなるように加工して、それぞれの前記レーザビームが前記ゲートラインの上方に位置する前記改質予定領域内に順次、対応して投影可能にする光学ヘッドと、
を備え、
前記光学ヘッドは、それぞれの前記レーザビームにおける焦点および焦点近傍を含みビームプロファイルがトップハット型を維持する領域が、前記改質予定領域の前記非晶質シリコン膜の膜内部の領域に重なる状態で、前記レーザビームが前記改質予定領域内を相対的にスキャンされ、
前記光学ヘッドから出射された前記レーザビームは、前記非晶質シリコン膜の表面に対して所定の直線に沿って一定のピッチで並ぶように投影され、
前記光学ヘッドは、複数の前記レーザビームのピッチが、前記ゲートラインのピッチに等しくなるように回転移動可能である、ことを特徴とするレーザアニール装置。
【請求項4】
基板の上に互いに平行をなす複数のゲートラインが形成され、複数の前記ゲートラインの上層に複数の前記ゲートラインの全体を覆うように成膜された非晶質シリコン膜に対して、
連続発振レーザ光を照射して前記非晶質シリコン膜の改質予定領域を結晶化膜に改質させるレーザアニール装置であって、
連続発振されるレーザ光をそれぞれ出射する複数の光源と、
複数の前記光源から出射されたそれぞれの前記レーザ光を、収束するレーザビームとなるように加工して、それぞれの前記レーザビームが前記ゲートラインの上方に位置する前記改質予定領域内に順次、対応して投影可能にする光学ヘッドと、
を備え、
前記光学ヘッドは、それぞれの前記レーザビームにおける焦点および焦点近傍を含みビームプロファイルがトップハット型を維持する領域が、前記改質予定領域の前記非晶質シリコン膜の膜内部の領域に重なる状態で、前記レーザビームが前記改質予定領域を内包する所定の領域を相対的にスキャンされ、
前記光学ヘッドから出射された前記レーザビームは、前記非晶質シリコン膜の表面に対して所定の直線に沿って一定のピッチで並ぶように投影され、
前記光学ヘッドは、前記複数の前記レーザビームのピッチが、前記ゲートラインのピッチに等しくなるように回転移動可能である、ことを特徴とするレーザアニール装置。
【請求項5】
基板の上に互いに平行をなす複数のゲートラインが形成され、複数の前記ゲートラインの上層に複数の前記ゲートラインの全体を覆うように成膜された非晶質シリコン膜に対して、
連続発振レーザ光を照射して前記非晶質シリコン膜の改質予定領域を結晶化膜に改質させるレーザアニール装置であって、
連続発振されるレーザ光をそれぞれ出射する複数の光源と、
複数の前記光源から出射されたそれぞれの前記レーザ光を、収束するレーザビームとなるように加工して、それぞれの前記レーザビームが前記ゲートラインの上方に位置する前記改質予定領域内に順次、対応して投影可能にする光学ヘッドと、
を備え、
前記光学ヘッドは、それぞれの前記レーザビームにおいて最も収束するスポット部が、前記改質予定領域の前記非晶質シリコン膜の膜内部に位置する状態で、前記レーザビームが前記改質予定領域内を相対的にスキャンされ、
複数の前記レーザビームのそれぞれの光量を検出する光量センサを備え、
前記光量センサで検出された前記レーザビームの光量に基づいて、当該レーザビームを出射する前記光源の出力を調整可能であり、
前記光学ヘッドは、前記レーザビームを側方へ反射するビームスプリッタを備え、前記光量センサは、前記光学ヘッドの側方に配置される、ことを特徴とするレーザアニール装置。
【請求項6】
基板の上に互いに平行をなす複数のゲートラインが形成され、複数の前記ゲートラインの上層に複数の前記ゲートラインの全体を覆うように成膜された非晶質シリコン膜に対して、
連続発振レーザ光を照射して前記非晶質シリコン膜の改質予定領域を結晶化膜に改質させるレーザアニール装置であって、
連続発振されるレーザ光をそれぞれ出射する複数の光源と、
複数の前記光源から出射されたそれぞれの前記レーザ光を、収束するレーザビームとなるように加工して、それぞれの前記レーザビームが前記ゲートラインの上方に位置する前記改質予定領域内に順次、対応して投影可能にする光学ヘッドと、
を備え、
前記光学ヘッドは、それぞれの前記レーザビームにおいて最も収束するスポット部が、前記改質予定領域の前記非晶質シリコン膜の膜内部に位置する状態で、前記レーザビームが前記改質予定領域内を相対的にスキャンされ、
複数の前記レーザビームのそれぞれの光量を検出する光量センサを備え、
前記光量センサで検出された前記レーザビームの光量に基づいて、当該レーザビームを出射する前記光源の出力を調整可能であり、
前記光学ヘッドは、前記レーザビームを側方へ反射するスキャンミラーを備え、前記光量センサは、前記光学ヘッドの側方に配置される、ことを特徴とするレーザアニール装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザアニール装置およびレーザアニール方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)、有機ELディスプレイ(OLED:Organic Electroluminescence Display)などの薄型ディスプレイ(FPD:Flat Panel Display)において、大型化および高精細化が進んでいる。
【0003】
FPDは、薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)が形成されたTFT基板を備える。TFT基板は、マトリクス状に配置された画素のそれぞれにアクティブ駆動するための微細なTFTを形成した基板であり、例えば、フルHD(1920×1080ドット)の解像度で120Hz駆動のディスプレイの場合、1000万個以上の画素が形成されている。
【0004】
TFTを構成する半導体層の材料としては、非晶質シリコン(a-Si:amorphous Silicon)や、多結晶シリコン(p-Si:polycrystalline Silicon)などが用いられている。非晶質シリコンは、電子の動き易さの指標である移動度が低く、さらに高密度・高精細化が進むFPDで要求される高移動度には対応しきれない。そこで、FPDにおけるTFTとしては、非晶質シリコンよりも移動度が高い多結晶シリコンでなる半導体層を形成することが好ましい。
【0005】
近年、多結晶シリコンや、横方向(ラテラル)結晶成長させた疑似単結晶シリコンを形成する方法として、例えば、波長が532nm程度の緑色系の連続発振(CW)レーザ光でなるラインビーム状のレーザビームで、複数列のリボン状もしくはアイランド状に加工した非晶質シリコン膜を跨ぐように、スキャンするという方法がある(例えば、特許文献1参照)。この方法では、非晶質シリコン膜の形成領域をTFTの形成領域に限定することにより、レーザアニールによって加熱される非晶質シリコン膜の面積を小さくしている。これによって、非晶質シリコン膜からガラス基板へ熱が及びガラス基板の温度を上昇されてクラックが発生することや、不純物が材料膜中に拡散したりすることなどを防止することが試みられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2003-86505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のCWレーザを用いた従来のレーザアニール方法においては、以下のような課題がある。このレーザアニール方法では、非晶質シリコン膜を最小限の領域に残したとしても、TFTを構成する非晶質シリコン膜の下方(下層)には、ゲートラインなどの金属配線パターンやガラス基板が存在する。また、レーザビームが連続発振であるため、ガラス基板上に熱が蓄積してこもることによりゲートラインなどの金属配線パターンやガラス基板を過熱して損傷させるという問題がある。加えて、このレーザアニール方法では、400~550nm程度の青色もしくは緑色系のレーザ光を用いた場合、ビームが非晶質シリコン膜よりも下層のゲートラインなどの金属配線パターンやガラス基板まで達してしまうため、こもった熱の作用と相まってゲートラインなどの金属配線パターンやガラス基板を過熱して損傷させるという問題がある。特に、上述のCWレーザを用いたレーザアニール方法では、基板として可撓性を有する、例えば、ポリイミドなどの樹脂でなる基板を適用することが困難であった。さらに、上述のCWレーザを用いたレーザアニール方法では、ラインビーム状のレーザビームを用いるため、TFTの活性半導体層とすべき領域以外の領域(非晶質シリコン膜を除去した領域)もアニールするため、エネルギー利用効率が悪いという課題がある。
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、非晶質シリコン膜よりも下層に配置された、基板ならびに配線層などを熱的損傷させることなく、TFTが形成される領域の非晶質シリコン膜のみを効率的に結晶化させるレーザアニール装置およびレーザアニール方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、基板の上にゲートラインが形成され、前記ゲートラインの上層に前記ゲートラインの全体を覆うように成膜された非晶質シリコン膜に対して、連続発振レーザ光を照射して前記非晶質シリコン膜の改質予定領域を結晶化膜に改質させるレーザアニール装置であって、連続発振されるレーザ光を出射する光源と、前記光源から出射された前記レーザ光を、収束するレーザビームとなるように加工して、前記レーザビームが前記ゲートラインの上方に位置する前記改質予定領域内に対応して投影可能にする光学ヘッドと、を備え、前記光学ヘッドは、前記レーザビームにおいて最も収束するスポット部が、前記改質予定領域の前記非晶質シリコン膜の膜内部に位置する状態で、前記レーザビームが前記改質予定領域内を相対的にスキャンされることを特徴とする。
【0010】
本発明の他の態様は、基板の上にゲートラインが形成され、前記ゲートラインの上層に前記基板の全体を覆うように成膜された非晶質シリコン膜に対して、連続発振レーザ光を照射して前記非晶質シリコン膜の改質予定領域を結晶化膜に改質させるレーザアニール装置であって、連続発振されるレーザ光を出射する光源と、前記光源から出射された前記レーザ光を、収束するレーザビームとなるように加工して、前記レーザビームが前記ゲートラインの上方に位置する前記改質予定領域内に対応して投影可能にする光学ヘッドと、を備え、前記光学ヘッドは、前記レーザビームにおいて最も収束するスポット部が、前記改質予定領域の前記非晶質シリコン膜の膜内部に位置する状態で、前記レーザビームが前記改質予定領域を内包する所定の領域を相対的にスキャンされることを特徴とする。
【0011】
本発明の他の態様は、基板の上にゲートラインが形成され、前記ゲートラインの上層に前記ゲートラインの全体を覆うように成膜された非晶質シリコン膜に対して、連続発振レーザ光を照射して前記非晶質シリコン膜の改質予定領域を結晶化膜に改質させるレーザアニール装置であって、連続発振されるレーザ光を出射する光源と、前記光源から出射された前記レーザ光を、収束するレーザビームとなるように加工して、前記レーザビームが前記ゲートラインの上方に位置する前記改質予定領域内に対応して投影可能にする光学ヘッドと、を備え、前記光学ヘッドは、前記レーザビームにおける焦点および焦点近傍を含みビームプロファイルがトップハット型を維持する領域が、前記改質予定領域の前記非晶質シリコン膜の膜内部の領域に重なる状態で、前記レーザビームが前記改質予定領域内を相対的にスキャンされることを特徴とする。
【0012】
本発明の他の態様は、基板の上にゲートラインが形成され、前記ゲートラインの上層に前記基板の全体を覆うように成膜された非晶質シリコン膜に対して、
連続発振レーザ光を照射して前記非晶質シリコン膜の改質予定領域を結晶化膜に改質させるレーザアニール装置であって、連続発振されるレーザ光を出射する光源と、前記光源から出射された前記レーザ光を、収束するレーザビームとなるように加工して、前記レーザビームが前記ゲートラインの上方に位置する前記改質予定領域内に対応して投影可能にする光学ヘッドと、を備え、前記光学ヘッドは、前記レーザビームにおける焦点および焦点近傍を含みビームプロファイルがトップハット型を維持する領域が、前記改質予定領域の前記非晶質シリコン膜の膜内部の領域に重なる状態で、前記レーザビームが前記改質予定領域を内包する所定の領域を相対的にスキャンされることを特徴とする。
【0013】
上記態様としては、前記光源から出射された前記レーザ光は、前記光学ヘッドに設けられた光ファイバに導かれることが好ましい。
【0014】
上記態様としては、前記光ファイバの光軸方向と直角をなす断面形状が、正方形、長方形、あるいは六角形であることが好ましい。
【0015】
本発明の他の態様は、基板の上に互いに平行をなす複数のゲートラインが形成され、前記複数の前記ゲートラインの上層に前記複数の前記ゲートラインの全体を覆うように成膜された非晶質シリコン膜に対して、連続発振レーザ光を照射して前記非晶質シリコン膜の改質予定領域を結晶化膜に改質させるレーザアニール装置であって、連続発振されるレーザ光をそれぞれ出射する複数の光源と、複数の前記光源から出射されたそれぞれの前記レーザ光を、収束するレーザビームとなるように加工して、それぞれの前記レーザビームが前記ゲートラインの上方に位置する前記改質予定領域内に順次、対応して投影可能にする光学ヘッドと、を備え、前記光学ヘッドは、それぞれの前記レーザビームにおいて最も収束するスポット部が、前記改質予定領域の前記非晶質シリコン膜の膜内部に位置する状態で、前記レーザビームが前記改質予定領域内を相対的にスキャンされることを特徴とする。
【0016】
本発明の他の態様は、基板の上に互いに平行をなす複数のゲートラインが形成され、前記複数の前記ゲートラインの上層に前記基板の全体を覆うように成膜された非晶質シリコン膜に対して、連続発振レーザ光を照射して前記非晶質シリコン膜の改質予定領域を結晶化膜に改質させるレーザアニール装置であって、連続発振されるレーザ光をそれぞれ出射する複数の光源と、複数の前記光源から出射されたそれぞれの前記レーザ光を、収束するレーザビームとなるように加工して、それぞれの前記レーザビームが前記ゲートラインの上方に位置する前記改質予定領域内に順次、対応して投影可能にする光学ヘッドと、を備え、前記光学ヘッドは、それぞれの前記レーザビームにおいて最も収束するスポット部が、前記改質予定領域の前記非晶質シリコン膜の膜内部に位置する状態で、前記レーザビームが前記改質予定領域を内包する所定の領域を相対的にスキャンされることを特徴とする。
【0017】
本発明の他の態様は、基板の上に互いに平行をなす複数のゲートラインが形成され、前記複数の前記ゲートラインの上層に前記複数の前記ゲートラインの全体を覆うように成膜された非晶質シリコン膜に対して、連続発振レーザ光を照射して前記非晶質シリコン膜の改質予定領域を結晶化膜に改質させるレーザアニール装置であって、連続発振されるレーザ光をそれぞれ出射する複数の光源と、複数の前記光源から出射されたそれぞれの前記レーザ光を、収束するレーザビームとなるように加工して、それぞれの前記レーザビームが前記ゲートラインの上方に位置する前記改質予定領域内に順次、対応して投影可能にする光学ヘッドと、を備え、前記光学ヘッドは、それぞれの前記レーザビームにおける焦点および焦点近傍を含みビームプロファイルがトップハット型を維持する領域が、前記改質予定領域の前記非晶質シリコン膜の膜内部の領域に重なる状態で、前記レーザビームが前記改質予定領域内を相対的にスキャンされることを特徴とする。
【0018】
本発明の他の態様は、基板の上に互いに平行をなす複数のゲートラインが形成され、前記複数の前記ゲートラインの上層に前記基板の全体を覆うように成膜された非晶質シリコン膜に対して、連続発振レーザ光を照射して前記非晶質シリコン膜の改質予定領域を結晶化膜に改質させるレーザアニール装置であって、連続発振されるレーザ光をそれぞれ出射する複数の光源と、複数の前記光源から出射されたそれぞれの前記レーザ光を、収束するレーザビームとなるように加工して、それぞれの前記レーザビームが前記ゲートラインの上方に位置する前記改質予定領域内に順次、対応して投影可能にする光学ヘッドと、を備え、前記光学ヘッドは、それぞれの前記レーザビームにおける焦点および焦点近傍を含みビームプロファイルがトップハット型を維持する領域が、前記改質予定領域の前記非晶質シリコン膜の膜内部の領域に重なる状態で、前記レーザビームが前記改質予定領域を内包する所定の領域を相対的にスキャンされることを特徴とする。
【0019】
上記態様としては、前記改質予定領域は、薄膜トランジスタのチャネル半導体層であることが好ましい。
【0020】
上記態様としては、前記光学ヘッドから出射された前記レーザビームは、前記非晶質シリコン膜の表面に対して所定の直線に沿って一定のピッチで並ぶように投影されることが好ましい。
【0021】
上記態様としては、前記光学ヘッドは、前記複数の前記レーザビームのピッチが、ゲートラインのピッチに等しくなるように回転移動可能であることが好ましい。
【0022】
上記態様としては、前記複数の前記レーザビームのそれぞれの光量を検出する光量センサを備え、前記光量センサで検出された前記レーザビームの光量に基づいて、当該レーザビームを出射する前記光源の出力を調整可能であることが好ましい。
【0023】
上記態様としては、前記光量センサは、前記光学ヘッドの後方に配置されることが好ましい。
【0024】
上記態様としては、前記光学ヘッドは、前記レーザビームを側方へ反射するビームスプリッタを備え、前記光量センサは、前記光学ヘッドの側方に配置されることが好ましい。
【0025】
上記態様としては、前記光学ヘッドは、前記レーザビームを側方へ反射するスキャンミラーを備え、前記光量センサは、前記光学ヘッドの側方に配置されることが好ましい。
【0026】
上記態様としては、前記複数の前記光源から出射されたそれぞれの前記レーザ光は、前記光学ヘッドに設けられたファイバアレイのそれぞれの光ファイバに導かれることが好ましい。
【0027】
上記態様としては、前記光学ヘッドは、前記ファイバアレイと、結像光学系と、を備え、前記ファイバアレイは、アクチュエータにより光軸方向に沿って移動可能であり、前記結像光学系は、テレセントリック光学系で構成されていることが好ましい。
【0028】
上記態様としては、前記光ファイバの光軸方向と直角をなす断面形状が、正方形、長方形、あるいは六角形であることが好ましい。
【0029】
本発明の他の態様は、基板の上にゲートラインが形成され、前記ゲートラインの上層に前記ゲートラインの全体を覆うように成膜された非晶質シリコン膜に対して、連続発振レーザ光を照射して前記非晶質シリコン膜の改質予定領域を結晶化膜に改質させるレーザアニール方法であって、光源から、連続発振されるレーザ光を出射させ、前記光源から出射された前記レーザ光を、光学ヘッドで、収束するレーザビームとなるように加工して、前記レーザビームが前記ゲートラインの上方に位置する前記改質予定領域内に対応して投影させ、前記レーザビームにおいて最も収束するスポット部が、前記改質予定領域の前記非晶質シリコン膜の膜内部に位置するように配置させ、前記光学ヘッドを、前記レーザビームが前記改質予定領域内を相対的にスキャンされるように移動させることを特徴とする。
【0030】
本発明の他の態様は、基板の上にゲートラインが形成され、前記ゲートラインの上層に前記基板の全体を覆うように成膜された非晶質シリコン膜に対して、
連続発振レーザ光を照射して前記非晶質シリコン膜の改質予定領域を結晶化膜に改質させるレーザアニール方法であって、光源から、連続発振されるレーザ光を出射させ、前記光源から出射された前記レーザ光を、光学ヘッドで、収束するレーザビームとなるように加工して、前記レーザビームが前記ゲートラインの上方に位置する前記改質予定領域内に対応して投影させ、前記レーザビームにおいて最も収束するスポット部が、前記改質予定領域の前記非晶質シリコン膜の膜内部に位置するように配置させ、前記光学ヘッドを、前記レーザビームが前記改質予定領域を内包する所定の領域を相対的にスキャンされるように移動させることを特徴とする。
【0031】
本発明の他の態様は、基板の上にゲートラインが形成され、前記ゲートラインの上層に前記ゲートラインの全体を覆うように成膜された非晶質シリコン膜に対して、連続発振レーザ光を照射して前記非晶質シリコン膜の改質予定領域を結晶化膜に改質させるレーザアニール方法であって、光源から、連続発振されるレーザ光を出射させ、前記光源から出射された前記レーザ光を、光学ヘッドで、収束するレーザビームとなるように加工して、前記レーザビームが前記ゲートラインの上方に位置する前記改質予定領域内に対応して投影させ、前記レーザビームにおいて焦点および焦点近傍を含みビームプロファイルがトップハット型を維持する領域が、前記改質予定領域の前記非晶質シリコン膜の膜内部の領域に重なるように配置させ、前記光学ヘッドを、前記レーザビームが前記改質予定領域内を相対的にスキャンされるように移動させることを特徴とする。
【0032】
本発明の他の態様は、基板の上にゲートラインが形成され、前記ゲートラインの上層に前記基板の全体を覆うように成膜された非晶質シリコン膜に対して、
連続発振レーザ光を照射して前記非晶質シリコン膜の改質予定領域を結晶化膜に改質させるレーザアニール方法であって、光源から、連続発振されるレーザ光を出射させ、前記光源から出射された前記レーザ光を、光学ヘッドで、収束するレーザビームとなるように加工して、前記レーザビームが前記ゲートラインの上方に位置する前記改質予定領域内に対応して投影させ、前記レーザビームにおいて焦点および焦点近傍を含みビームプロファイルがトップハット型を維持する領域が、前記改質予定領域の前記非晶質シリコン膜の膜内部の領域に重なるように配置させ、前記光学ヘッドを、前記レーザビームが前記改質予定領域を内包する所定の領域を相対的にスキャンされるように移動させることを特徴とする。
【0033】
本発明の他の態様は、基板の上に互いに平行をなす複数のゲートラインが形成され、前記複数のゲートラインの上層に前記複数のゲートラインの全体を覆うように成膜された非晶質シリコン膜に対して、連続発振レーザ光を照射して前記非晶質シリコン膜の改質予定領域を結晶化膜に改質させるレーザアニール方法であって、複数の光源のそれぞれから、連続発振されるレーザ光を出射させ、複数の前記光源から出射されたそれぞれの前記レーザ光を、光学ヘッドで、収束するレーザビームとなるように加工して、それぞれの前記レーザビームが前記ゲートラインの上方に位置する前記改質予定領域内に順次、対応して投影させ、それぞれの前記レーザビームにおいて最も収束するスポット部が、前記改質予定領域の前記非晶質シリコン膜の膜内部に位置するように配置させ、前記光学ヘッドを、前記レーザビームが前記改質予定領域内を相対的にスキャンされるように移動させることを特徴とする。
【0034】
本発明の他の態様は、基板の上に互いに平行をなす複数のゲートラインが形成され、前記複数のゲートラインの上層に前記基板の全体を覆うように成膜された非晶質シリコン膜に対して、連続発振レーザ光を照射して前記非晶質シリコン膜の改質予定領域を結晶化膜に改質させるレーザアニール方法であって、複数の光源のそれぞれから、連続発振されるレーザ光を出射させ、複数の前記光源から出射されたそれぞれの前記レーザ光を、光学ヘッドで、収束するレーザビームとなるように加工して、それぞれの前記レーザビームが前記ゲートラインの上方に位置する前記改質予定領域内に順次、対応して投影させ、それぞれの前記レーザビームにおいて最も収束するスポット部が、前記改質予定領域の前記非晶質シリコン膜の膜内部に位置するように配置させ、前記光学ヘッドを、前記レーザビームが前記改質予定領域を内包する所定の領域を相対的にスキャンされるように移動させることを特徴とする。
【0035】
本発明の他の態様は、基板の上に互いに平行をなす複数のゲートラインが形成され、前記複数のゲートラインの上層に前記複数のゲートラインの全体を覆うように成膜された非晶質シリコン膜に対して、連続発振レーザ光を照射して前記非晶質シリコン膜の改質予定領域を結晶化膜に改質させるレーザアニール方法であって、複数の光源のそれぞれから、連続発振されるレーザ光を出射させ、複数の前記光源から出射されたそれぞれの前記レーザ光を、光学ヘッドで、収束するレーザビームとなるように加工して、それぞれの前記レーザビームが前記ゲートラインの上方に位置する前記改質予定領域内に順次、対応して投影させ、それぞれの前記レーザビームにおいて焦点および焦点近傍を含みビームプロファイルがトップハット型を維持する領域が、前記改質予定領域の前記非晶質シリコン膜の膜内部の領域に重なるように配置させ、前記光学ヘッドを、前記レーザビームが前記改質予定領域内を相対的にスキャンされるように移動させることを特徴とする。
【0036】
本発明の他の態様は、基板の上に互いに平行をなす複数のゲートラインが形成され、前記複数のゲートラインの上層に前記基板の全体を覆うように成膜された非晶質シリコン膜に対して、連続発振レーザ光を照射して前記非晶質シリコン膜の改質予定領域を結晶化膜に改質させるレーザアニール方法であって、複数の光源のそれぞれから、連続発振されるレーザ光を出射させ、複数の前記光源から出射されたそれぞれの前記レーザ光を、光学ヘッドで、収束するレーザビームとなるように加工して、それぞれの前記レーザビームが前記ゲートラインの上方に位置する前記改質予定領域内に順次、対応して投影させ、それぞれの前記レーザビームにおいて焦点および焦点近傍を含みビームプロファイルがトップハット型を維持する領域が、前記改質予定領域の前記非晶質シリコン膜の膜内部の領域に重なるように配置させ、前記光学ヘッドを、前記レーザビームが前記改質予定領域を内包する所定の領域を相対的にスキャンされるように移動させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0037】
本発明に係るレーザアニール装置およびレーザアニール方法によれば、非晶質シリコン膜よりも下層に配置された、基板ならびにゲートラインなどを熱的損傷させることなく、改質予定領域の非晶質シリコン膜のみを効率的に結晶化させるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1図1は、本発明の第1の実施の形態に係るレーザアニール装置を用いたTFTアレイの製造方法を示す断面説明図である。
図2図2は、本発明の第1の実施の形態に係るレーザアニール装置の概略を示す構成図である。
図3図3は、本発明の第1の実施の形態に係るレーザアニール装置を用いたTFTアレイの製造方法を示す平面説明図である。
図4-1】図4-1は、本発明の第1の実施の形態に係るレーザアニール装置を用いたレーザアニール方法を示す平面説明図である。
図4-2】図4-2は、本発明の第1の実施の形態に係るレーザアニール装置において光学ヘッドを回転させてビームピッチを変更した状態を示すTFTアレイの製造方法を示す平面説明図である。
図5図5は、本発明の第2の実施の形態に係るレーザアニール装置の概略を示す構成図である。
図6図6は、本発明の第3の実施の形態に係るレーザアニール装置の概略を示す構成図である。
図7図7は、本発明の第4の実施の形態に係るレーザアニール装置の概略を示す構成図である。
図8図8は、本発明の第4の実施の形態に係るレーザアニール装置の要部を示す側面図である。
図9図9は、本発明の第5の実施の形態に係るレーザアニール装置の概略を示す構成図である。
図10図10は、本発明の第6の実施の形態に係るレーザアニール装置の概略を示す構成図である。
図11図11は、本発明の第6の実施の形態に係るレーザアニール装置における結像光学系の構成図である。
図12図12は、本発明の第7の実施の形態に係るレーザアニール装置を示す概略構成図である。
図13図13は、本発明の第8の実施の形態に係るレーザアニール装置におけるレーザビームの焦点および焦点近傍を含み、エネルギー密度のプロファイルがトップハット型を維持する領域Aを示す説明図である。
図14-1】図14-1は、図13における(4)の領域のレーザビームの半径方向の位置とパワー密度との関係を示す説明図である。
図14-2】図14-2は、図13における(2)の領域のレーザビームの半径方向の位置とパワー密度との関係を示す説明図である。
図14-3】図14-3は、図13における(1)の領域のレーザビームの半径方向の位置とパワー密度との関係を示す説明図である。
図14-4】図14-4は、図13における(3)の領域のレーザビームの半径方向の位置とパワー密度との関係を示す説明図である。
図14-5】図14-5は、図13における(5)の領域のレーザビームの半径方向の位置とパワー密度との関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下に、本発明の実施の形態に係るレーザアニール装置およびレーザアニール方法の詳細を図面に基づいて説明する。但し、図面は模式的なものであり、各部材の数、各部材の寸法、寸法の比率、形状などは現実のものと異なることに留意すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率や形状が異なる部分が含まれている。
【0040】
[第1の実施の形態]
(レーザアニール装置の構成)
図1および図2に示すように、本実施の形態に係るレーザアニール装置1は、光源ユニット2と、光学ヘッド3と、基板10を搬送する図示しない基板搬送手段と、図示しない変位計と、を備えている。
【0041】
光源ユニット2は、連続発振レーザ光(CWレーザ光)を発振する光源としての複数の半導体レーザLD(LD1~LDn)を備えている。ここで、連続発振レーザ光(CWレーザ光)とは、目的領域に対して連続してレーザ光を照射する所謂疑似連続発振も含む概念である。つまり、レーザ光がパルスレーザであっても、パルス間隔が加熱後のシリコン薄膜(非晶質シリコン膜)の冷却時間よりも短い(固まる前に次のパルスで照射する)疑似連続発振レーザであってもよい。レーザ光源としては、半導体レーザ、固体レーザ、液体レーザ、気体レーザなどの各種のレーザを用いることが可能である。
【0042】
なお、本実施の形態では、半導体レーザLDの予備Rとして、例えば、半導体レーザLD100~LDnを備えている。
【0043】
光源ユニット2は、上記の複数の半導体レーザLDと、ドライブ回路20と、複数のカップリングレンズ21と、を備えている。ドライブ回路20は、複数の半導体レーザLDのそれぞれに接続されており、それぞれの半導体レーザLDを駆動する。
【0044】
カップリングレンズ21は、それぞれの半導体レーザLDの出射側に接続されている。
それぞれのカップリングレンズ21には、導波路としての光ファイバ22の一端部が接続されている。本実施の形態では、光ファイバ22としてマルチモードファイバを適用している。
【0045】
光学ヘッド3は、ファイバアレイ31と、結像光学系32と、を備える。ファイバアレイ31は、光ファイバ22の他端部が接続されている。本実施の形態では、ファイバアレイ31に接続された光ファイバ22の出射端は、ファイバアレイ31の出射側端面において、一つの直線上に沿って一列に並ぶように配置されている。
【0046】
結像光学系32は、少なくとも入射側の第1レンズ33と、出射側の第2レンズ34と、を備えている。図2に示すように、結像光学系32は、ファイバアレイ31から出射されたレーザ光が入射される。図1に示すように、光学ヘッド3では、レーザ光を下流側(後側)へ向けてスポット部Fで収束するレーザビームLBcwとなるように加工する。本実施の形態では、図4-1に示すように、光学ヘッド3の出射側において、レーザビームLBcwは、一直線の上に沿ってピッチP1で配置された位置から出射される。このピッチP1は、後述するゲートライン12のピッチと同一に設定されている。なお、この実施の形態では、レーザビームLBcwの並ぶ方向が後述するゲートライン12の延びる方向と直角をなすように設定されている。
【0047】
なお、光学ヘッド3の側方には図示しない、光学ヘッド3と基板10との位置ずれを補正する変位計が設けられている。この変位計で検出した光学ヘッド3と基板10との位置ずれ量のデータに基づいて、光学ヘッド3から出射されるレーザビームLBcwのピント調整を自動で行えるオートフォーカスの機能を備える。なお、本実施の形態では、オートフォーカスの手段として変位計を用いたが、これには限定されず、様々な公知の技術を用いることができる。
【0048】
なお、本実施の形態において、レーザビームLBcwは、トップハット型形状の特性を持ち、光軸に直交する方向の断面形状が正方形である。なお、レーザビームLBcwの断面形状は、長方形、六角形などであってもよい。レーザビームLBcwの断面形状をこのような形状にするには、光ファイバ22のコアの断面形状を、正方形、長方形、六角形などに設定すればよい。
【0049】
図示しない基板搬送手段は、レーザアニール処理を施す基板10をスキャン方向へ任意の速度で搬送する機構を備える。したがって、光学ヘッド3の位置を固定した状態で基板10側を搬送することによって、基板10に対してレーザビームLBcwを相対的にスキャンするようになっている。
【0050】
図1に示すように、被レーザアニール処理基板としての基板10は、ガラス基板11を本体とする。このガラス基板11の上には、銅(Cu)でパターン形成された複数のゲートライン12およびその他の金属配線パターン、シリコン窒化膜(Si3N4)13、シリコン酸化膜(SiO2)14、被レーザアニール処理膜としての非晶質シリコン膜15aなどが順次積層されている。複数のゲートライン12は、互いに平行をなすように配置されている。上述したように、ゲートライン12同士のピッチは、ピッチP1に設定されている。
【0051】
ゲートライン12は、図示しない画素領域毎に形成されるTFTのゲート電極となる部分を含む。因みに、一例として、ゲートライン12の厚さ寸法は200~700nm、シリコン窒化膜13の厚さ寸法は300nm程度、シリコン酸化膜14の厚さ寸法は50~100nm、非晶質シリコン膜15aの厚さ寸法は50nm程度を挙げることができる。
【0052】
本実施の形態では、非晶質シリコン膜15aの表面に照射されるレーザビームLBcwのビーム径寸法は、例えば、5μm以上300μm以内の任意の寸法に設定されている。
なお、このビーム径寸法の範囲は、レーザビームLBcwの照射面がTFTの半導体活性領域(改質予定領域)に収容され得る大きさである。なお、このレーザビームLBcwの照射面の径寸法は、10μm以上100μm以内であることが好ましい。
【0053】
本実施の形態においては、レーザビームLBcwが非晶質シリコン膜15aに対して、相対的にスキャンされるスキャン速度は、200mm~500mm/秒であることが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0054】
図3に示すように、上述した条件でレーザビームLBcwを非晶質シリコン膜15aにおける改質予定領域内をゲートライン12の延びる方向に沿って照射することにより、非晶質シリコン膜15aを部分的に疑似単結晶シリコン膜15Laに改質することができる。なお、疑似単結晶シリコン膜15Laが形成された領域は、改質予定領域と一致する。
【0055】
本実施の形態に係るレーザアニール装置1によれば、レーザビームLBcwにおけるパワー密度の高いスポット部Fが非晶質シリコン膜15aの膜内部に位置するため、非晶質シリコン膜15aに重点的に大きな熱量が供給される。そして、スポット部Fから大部分の熱が側方(図1における矢印h方向)に向けて非晶質シリコン膜15a内を伝達される。スポット部Fの後側(下側)では、ビームが拡散するため、下地のシリコン酸化膜14等に到達する光のパワー密度が低くなり、非晶質シリコン膜15aの下層側を過熱することを抑制できる。このため、本実施の形態に係るレーザアニール装置1によれば、ゲートライン12やその他の配線パターンやガラス基板11などが過熱により損傷されることを回避できる。
【0056】
本実施の形態に係るレーザアニール装置1によれば、非晶質シリコン膜15aを全てのゲートライン12の全体を覆うように成膜した状態でも、ゲートライン12やその他の配線やガラス基板11にダメージが発生することがない。
【0057】
また、本実施の形態に係るレーザアニール装置1によれば、TFTのチャネル半導体層とすべき改質予定領域のみにレーザビームLBcwを照射すればよいため、エネルギー効率を高めることができる。
【0058】
なお、上記スポット部Fは、パワー密度がトップハット型形状の特性を維持する範囲として、光軸方向に有限の幅(余裕)を持っても構わない。このような範囲内であれば均一なアニール処理が可能であり、非晶質シリコン膜15aにエネルギーが集中する状態が維持されるからである。スポット部Fにおけるパワー密度がトップハット型形状の特性を維持する範囲については、第8の実施の形態において後述する。
【0059】
また、本発明においては、レーザビームLBcwのビーム径は、トップハット型形状の平坦部の径寸法として考えることができる。これは、改質予定領域に均一なアニール処理を施すことができればよく、レーザビームLBcwにおけるトップハット型形状の平坦部の外側ではパワー密度が急激に減少するため、熱的損傷の回避とエネルギー利用効率の改善とを両立することが可能となるからである。
【0060】
さらに、基板全面に非晶質シリコン膜15aが形成されていて、かつ、ビーム径(照射領域の幅)がゲートライン間の距離よりも十分小さい場合であれば、ビーム径が改質予定領域より大きくても構わない。熱の発生は非晶質シリコン15aに集中し、従来のようなラインビームでのアニール処理に比べてエネルギー利用効率が大きく改善されるからである。ここで、ビーム径がゲートライン間の距離より十分小さいとは、例えば、ビーム径がゲートライン間の距離の1/10以下である。このような条件において、レーザビームLBcwの照射領域がゲートラインの幅方向にはみ出した場合の照射領域が、本発明における、改質予定領域を内包する所定の領域と定義する。
【0061】
[第1の実施の形態の変形例]
図4-2は、本発明の第1の実施の形態に係るレーザアニール装置1の変形例の光学ヘッド3を示す。この変形例では、光学ヘッド3が図示しない回転駆動部により回転可能に駆動されるように設定されている。なお、この変形例における光学ヘッド3の基本的な構成は、上記第1の実施の形態と同様である。
【0062】
この変形例では、ゲートライン12同士のピッチP2が図4-1に示すゲートライン12のピッチP1より短い場合に適用できる。図4-2に示すように、複数のゲートライン12にレーザビームLBcwが対応するように光学ヘッド3を回転調整することにより、ゲートライン12の上方の非晶質シリコン膜15aの改質予定領域に的確にレーザビームLBcwを照射することが可能となる。なお、図4-2に示すように斜めに回転移動させた光学ヘッド3を基板10に対して相対的にスキャンした場合、適正な改質予定領域にレーザビームLBcwが照射されるタイミングは、ゲートライン12毎に順次ずれるため、ドライブ回路20で半導体レーザLDへの出力タイミングを順次遅延させるように設定すればよい。
【0063】
この変形例によれば、レーザビームLBcwが照射される列同士のピッチを光学ヘッド3の回転により変えることができる。したがって、基板におけるゲートライン12のピッチが変更された場合にも適用できるレーザアニール装置を実現できる。
【0064】
[レーザアニール方法]
次に、本実施の形態に係るレーザアニール方法について説明する。レーザアニール方法は、レーザアニール装置1を用いて基板10における改質予定領域に疑似単結晶シリコン膜15Laを形成するためのレーザアニール処理方法である。
【0065】
まず、このレーザアニール方法では、図1に示すように、ガラス基板11の上に互いに平行をなす複数のゲートライン12が形成され、複数のゲートライン12の上層にこれらゲートライン12の全体を覆うように非晶質シリコン膜15aが成膜された基板10を用意する。
【0066】
次に、基板10を図示しない基板搬送手段に基板10をセットし、半導体レーザLDのそれぞれから、連続発振されるレーザ光を出射させ、レーザ光を光学ヘッド3で、収束するレーザビームLBcwとなるように加工して、それぞれのレーザビームLBcwをゲートライン12の上方に位置する図示しない改質予定領域内に順次、対応するように投影する。
【0067】
このとき、レーザビームLBcwにおいて最も収束するスポット部Fを、改質予定領域の非晶質シリコン膜15aの膜内部に位置するように配置する。
【0068】
そして、図示しない基板搬送手段で基板10を移動させて、レーザビームLBcwが改質予定領域内をゲートライン12が延びる方向に沿って、相対的にスキャンさせる。この結果、TFTのチャネル半導体層となるべき領域を疑似単結晶シリコン膜15Laに改質できる。
【0069】
本実施の形態のレーザアニール方法では、TFTのチャネル半導体層を形成すべき領域だけに疑似単結晶シリコン膜15Laを形成できるため、エネルギー効率のよいアニールを行うことができる。このため、このレーザアニール方法では、大幅な低コスト化を実現できる。因みに、エキシマレーザによるラインビームを用いた従来のアニール方法では、非晶質シリコン膜全体の領域をラインビームで塗りつぶすようにレーザ照射して結晶化させるため、非晶質シリコン膜への照射領域に継ぎ目が発生していた。このため、この継ぎ目領域でのチャネル半導体層と、それ以外の領域でのチャネル半導体層とでは、移動度が異なりTFT基板全体のチャネル半導体層で移動度にばらつきがであった。これに対して、本実施の形態のレーザアニール方法では、照射領域の継ぎ目が発生しないため、チャネル半導体層の移動度を均一にすることができる。
【0070】
また、本実施の形態のレーザアニール方法では、ゲートライン12やガラス基板11などを熱的に損傷させることがないため、歩留まりの高いTFT基板の製造を実現することができる。
【0071】
[第2の実施の形態]
図5は、本発明の第2の実施の形態に係るレーザアニール装置1Aを示す概略構成図である。
【0072】
本実施の形態では、複数のレーザビームLBcwのそれぞれの光量を検出する光量センサD1を備えることを特徴とする。本実施の形態における他の構成は、上記第1の実施の形態に係るレーザアニール装置1と同様であるため、説明を省略する。
【0073】
光量センサD1は、光学ヘッド3の後方に配置され、レーザビームLBcwのスポット部Fに順次移動できるようになっている。また、この光量センサD1は、1つレーザビームLBcwの光量を検出するときに、隣接するレーザビームLBcwが入射しないように設定されている。
【0074】
本実施の形態では、光量センサD1で検出したデータは、ドライブ回路20へフィードバックされ、当該レーザビームLBcwの光源としての半導体レーザLDの出力調整を行うようになっている。
【0075】
本実施の形態では、レーザアニール処理を行う前に、それぞれのレーザビームLBcwの光量調整を行って、これらレーザビームLBcwの出力(光量)の均一化を図ることができる。このため、本実施の形態に係るレーザアニール装置1Aによれば、TFT同士のチャネル半導体層の電気的特性の均一化を図ることができる。
【0076】
[第3の実施の形態]
図6は、本発明の第3の実施の形態に係るレーザアニール装置1Bの概略構成図である。本実施の形態に係るレーザアニール装置1Bは、結像光学系32B内の光路にビームスプリッタ35を備え、ビームスプリッタ35の側方に側方レンズ36および光量センサD2が配置されている。本実施の形態では、ビームスプリッタ35で反射されたレーザビームLBcwが側方レンズ36を通して光量センサD2に入射されるように設定されている。本実施の形態に係るレーザアニール装置1Bの他の構成は、上記第1の実施の形態と同様である。
【0077】
本実施の形態では、光量センサD2で検出されたデータは、ドライブ回路20へフィードバックされ、当該レーザビームLBcwの光源としての半導体レーザLDの出力調整を行うようになっている。本実施の形態では、レーザアニール装置1Bを運転しながら、各半導体レーザLDの出力調整を行うことができる。
【0078】
[第4の実施の形態]
図7は、本発明の第4の実施の形態に係るレーザアニール装置1Cを示す概略構成図、図8はレーザアニール装置1Cの要部側面図である。本実施の形態に係るレーザアニール装置1Cは、ファイバアレイ31から出射されたレーザ光を、第1レンズ33を通して例えば、ガルバノミラーなどのスキャンミラーSMで下方(側方)へ向けて反射させる。スキャンミラーSMで反射されたレーザビームLBcwは、下方に配置された第2レンズ34を通して基板側へ照射される。図8に示すように、スキャンミラーSMは、傾斜度合いを変更可能にするために、矢印A方向に回転調整可能に設定されている。
【0079】
本実施の形態によれば、装置の高さ寸法を短くして、装置をコンパクトにすることができる。また、スキャンミラーSMを回転調整することにより、レーザビームLBcwの照射位置や、非晶質シリコン膜15a表面からの膜厚方向におけるスポット部Fの深さ位置を調整することが可能となる。
【0080】
[第5の実施の形態]
図9は、本発明の第5の実施の形態に係るレーザアニール装置1Dの概略構成図である。この実施の形態は、上記第2の実施の形態に係るレーザアニール装置1Aの結像光学系32における瞳位置に開口37Aを有するマスク37を配置して構成した結像光学系32Dを備える。本実施の形態に係るレーザアニール装置1Dの他の構成は、上記第2の実施の形態に係るレーザアニール装置1Aと同様である。
【0081】
本実施の形態によれば、マスク37によって、結像光学系32Dを通過するレーザビームLBcwのパターンを変更することができる。本実施の形態においても、光量センサD1を備えるため、パターンを変更したレーザビームLBcwのそれぞれの光量を光量センサD1で検出することできる。
【0082】
[第6の実施の形態]
図10は、本発明の第6の実施の形態に係るレーザアニール装置1Eの概略構成図である。図11は、レーザアニール装置1Eにおける結像光学系38の概略構成図である。
【0083】
図10に示すように、本実施の形態に係るレーザアニール装置1Eは、第1の実施の形態と同様に、光学ヘッド3として、ファイバアレイ31と、結像光学系38と、を備える。ファイバアレイ31は、光ファイバ22の他端部が接続されている。光ファイバ22の出射端は、ファイバアレイ31の出射側端面において、一つの直線上に沿って一列に並ぶように配置されている。
【0084】
本実施の形態では、結像光学系38は、テレセントリック光学系で構成されている。また、ファイバアレイ31は、アクチュエータ39によって光軸方向に沿って変位されるようになっている。本実施の形態では、レーザアニール装置1Eのオートフォーカス時に、アクチュエータ39でファイバアレイ31のみを光軸に沿って移動させるようになっている。このとき、光源ユニット2および結像光学系38は、移動しないようになっている。
【0085】
図11に示すように、本実施の形態において、結像光学系38は、光軸方向に沿って順次配置された複数のレンズなどの光学部材L1~L14でテレセントリック光学系を構成している。このようなテレセントリック光学系でなる結像光学系38によれば、基板10に対してピント合わせを行う際に、アクチュエータ39が軽量なファイバアレイ31のみを移動させればよいため、迅速な応答性を有するオートフォーカス性能を得ることができる。
【0086】
また、結像光学系38は、テレセントリック光学系でなるため、基板10に対して像のずれがなく、基板10表面における複数のレーザビームLBcwの照射位置のピッチが変わらないという利点がある。
【0087】
なお、アクチュエータ39としては、ピエゾ圧電効果を応用した位置決め素子であるピエゾアクチュエータを適用することができる。ピエゾアクチュエータは、ナノメータ程度の極めて微小な範囲から数百ミクロンメータまでの位置決めを正確に行うことができる。
また、ピエゾアクチュエータは、セラミックで形成されているため非常に硬く、大きな力を生み出すことができる。また、ピエゾアクチュエータは、コンパクトで省エネルギーな駆動を行うことができる。なお、本実施の形態では、アクチュエータ39として、ピエゾアクチュエータを適用したが、リニアモータなどの他の駆動手段を適用することも勿論可能である。
【0088】
このレーザアニール装置1Eでは、軽量なファイバアレイ31のみを移動させるだけでよいため、アクチュエータ39の負荷が小さく、迅速なオートフォーカス機能を備えることができる。
【0089】
[第7の実施の形態]
図12は、本発明の第7の実施の形態に係るレーザアニール装置1Fを示す概略構成図である。本実施の形態では、単一の光源としての半導体レーザLDと、カップリングレンズ21と、単一の光ファイバ22と、単一の光学ヘッド3と、基板10を搬送する図示しない基板搬送手段と、を備えている。
【0090】
半導体レーザLDは、上記の各実施の形態と同様に、連続発振レーザ光(CWレーザ光)を発振する。カップリングレンズ21は、半導体レーザLDの出射側に接続されている。カップリングレンズ21には、導波路としての光ファイバ22の一端部が接続されている。本実施の形態では、光ファイバ22として例えば方形ファイバを適用している。
【0091】
光学ヘッド3は、結像光学系としての、入射側の第1レンズ33と、出射側の第2レンズ34と、を備えている。図12に示すように、光学ヘッド3には、光ファイバ22の他端部から出射されたレーザ光が入射される。光学ヘッド3では、レーザ光を下流側(後側)へ向けてスポット部Fで収束するレーザビームLBcwとなるように加工する。本実施の形態においても、スポット部Fが非晶質シリコン膜の膜内部(深さ方向の内部)に位置するように設定されている。
【0092】
本実施の形態においても、レーザビームLBcwは、トップハット型形状の特性を持ち、光軸に直交する方向の断面形状が正方形である。なお、レーザビームLBcwの断面形状は、長方形、六角形などであってもよい。レーザビームLBcwの断面形状をこのような形状にするには、光ファイバ22のコアの断面形状を、正方形、長方形、六角形などに設定すればよい。
【0093】
図示しない基板搬送手段は、上記した各実施の形態と同様に、レーザアニール処理を施す基板10をスキャン方向へ任意の速度で搬送する機構を備える。したがって、光学ヘッド3の位置を固定した状態で基板10側を搬送することによって、基板10に対してレーザビームLBcwを相対的にスキャンするようになっている。
【0094】
本実施の形態に係るレーザアニール装置1Fによれば、レーザビームLBcwにおけるパワー密度の高いスポット部Fが非晶質シリコン膜の膜内部に位置するため、非晶質シリコン膜に重点的に大きな熱量が供給される。そして、スポット部Fから大部分の熱が側方に向けて非晶質シリコン膜の内部を伝達される。スポット部Fの後側(下側)では、ビームが拡散するため、下地のシリコン酸化膜等に到達する光のパワー密度が低くなり、非晶質シリコン膜の下層側を過熱することを抑制できる。このため、レーザアニール装置1Fによれば、ゲートラインやその他の配線パターンやガラス基板などが過熱により損傷されることを回避できる。
【0095】
なお、本実施の形態におけるレーザアニール方法は、ゲートライン上層の非晶質シリコン膜に対して、単一の光源から連続発振されるレーザ光を出射させ、単一の改質予定領域にレーザビームを照射する方法である。レーザビームLBcwによる作用は、上記第1の実施の形態に係るレーザアニール方法と同様である。
【0096】
[第8の実施の形態]
図13は、本発明の第8の実施の形態に係るレーザアニール装置およびレーザアニール方法の基本原理を示す。
【0097】
上記の第1~7の実施の形態では、レーザビームLBcwにおいて最も収束するスポット部Fが、改質予定領域の非晶質シリコン膜15aの膜内部に位置する状態で、レーザビームLBcwをスキャンさせた。これに対して、本実施の形態では、図13に示すように、レーザビームLBcwにおける焦点および焦点近傍を含みビームプロファイルがトップハット型を維持する領域Aが、非晶質シリコン膜15aの膜内部の領域に重なる状態で、レーザビームLBcwを改質予定領域内でスキャンさせる。すなわち、本実施の形態に係るレーザアニール装置では、図13に示すレーザビームLBcwの領域Aに非晶質シリコン15aが重なる状態であればよい。
【0098】
図13に示すように、領域Aは、レーザビームLBcwにおける(1)、(2)および(3)を含む。図14-3は、図13における(1)の範囲のレーザビームの半径方向の位置とパワー密度との関係を示している。図13に示すように、(1)の領域は、略焦点深度の領域であり、図14-3に示すように、典型的なトップハット型のビームプロファイルを示す。(2)の領域は、(1)の領域よりも焦点の手前に位置するが、図14―2に示すように、レーザプロファイルがトップハット型とみなせる領域である。(3)の領域は、(1)の領域よりも焦点よりも後方に位置するが、図14―4に示すように、レーザプロファイルがトップハット型とみなせる領域である。
【0099】
(4)の領域は、(2)の領域よりも手前に位置し、図14―1に示すように、レーザプロファイルがトップハット型とみなせない形状となる。(5)の領域は、(3)の領域よりも後方に位置し、図14―5に示すように、レーザプロファイルがトップハット型とみなせない形状となる。したがって、本実施の形態では、図13に示す領域Aが、ビームプロファイルがトップハット型を維持する領域と定義される。なお、この領域Aは、光学ヘッド3などの条件によって適宜設定すればよい。
【0100】
(1)の領域は、図14-3に示すように、非晶質シリコン15aをアニールするのに十分なエネルギー密度を有し、必要領域をアニールできる平坦部の幅寸法を有している。(2)および(3)の領域は、図14―2および図14-4に示すように、(1)の領域の特性に近似するが、(4)と(5)の領域は、図14-1および図14-5に示すように、エネルギー密度が不十分であり、必要領域をアニールするための平坦部の幅が狭いため、非晶質シリコン15aの局所的なアニールには不適切な領域である。
【0101】
以上、本発明の第8の実施の形態について説明したが、他の構成は、上記した第1の実施の形態に係るレーザアニール装置およびレーザアニール方法と同様である。
【0102】
本実施の形態では、例えば、非晶質シリコン15aが、図13に示す(2)の領域に位置する場合に、見かけ上は非晶質シリコン15aの下側の基板や配線などに焦点位置が来るが、光の大半が非晶質シリコン15aで吸引されるので、非晶質シリコン15aの下側の基板、配線などに対して熱的損傷を与えることはない。したがって、本実施の形態によれば、光学ヘッド3などの条件設定が容易となり装置コストを低減することが可能である。
【0103】
(その他の実施の形態)
以上、本発明の実施の形態について説明したが、実施の形態の開示の一部をなす論述および図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例および運用技術が明らかとなろう。
【0104】
上記の実施の形態では、レーザビームLBcwとして、トップハット型を適用したが、ドーナツ型形状のレーザビームLBcwとしてもよい。このようなドーナツ型形状のレーザビームLBcwを用いることにより、改質予定領域に形成した結晶化膜の輪郭部も確実に結晶化できるという利点がある。
【0105】
上記の各実施の形態では、ファイバアレイ31の出射端面において、光ファイバ22の他端部が一直線上に並ぶように配置したが、等間隔なゲートライン12に対応してレーザビームLBcwを照射できれば、光ファイバ22の他端部が一直線上に並ばなくともよい。
【0106】
上記の第1~6の実施の形態では、複数のレーザビームLBcwのピッチが、ゲートラインのピッチと同じになるように設定して、レーザビームLBcwをゲートライン12に沿った方向にスキャンしたが、レーザビームLBcwのピッチを、ゲートライン12に沿ってTFTを形成する改質予定領域のピッチの整数倍に設定すれば、レーザビームLBcwをゲートライン12と直交する方向にスキャンすることも可能である。
【符号の説明】
【0107】
D1,D2 光量センサ
LD 半導体レーザ
1,1A,1B,1C,1D,1E,1F レーザアニール装置
2 光源ユニット
3 光学ヘッド
10 基板(被レーザアニール処理基板)
11 ガラス基板(基板)
12 ゲートライン
13 シリコン窒化膜
14 シリコン酸化膜
15a 非晶質シリコン膜
21 カップリングレンズ
22 光ファイバ
31 ファイバアレイ
32,32B 結像光学系
33 第1レンズ
34 第2レンズ
35 ビームスプリッタ
36 側方レンズ
37 マスク
37A 開口
38 結像光学系
39 アクチュエータ
図1
図2
図3
図4-1】
図4-2】
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14-1】
図14-2】
図14-3】
図14-4】
図14-5】