(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-22
(45)【発行日】2024-10-30
(54)【発明の名称】全身水分量評価システム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/00 20060101AFI20241023BHJP
【FI】
A61B5/00 N
(21)【出願番号】P 2021561316
(86)(22)【出願日】2020-11-16
(86)【国際出願番号】 JP2020042618
(87)【国際公開番号】W WO2021106654
(87)【国際公開日】2021-06-03
【審査請求日】2023-09-26
(31)【優先権主張番号】P 2019213449
(32)【優先日】2019-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】517350355
【氏名又は名称】株式会社スキノス
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】百瀬 英哉
(72)【発明者】
【氏名】大橋 俊夫
(72)【発明者】
【氏名】坂口 正雄
【審査官】藤原 伸二
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/208650(WO,A1)
【文献】特開平05-192301(JP,A)
【文献】特開2010-046196(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00
A61B 5/053-5/0537
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発汗計を用いて求めた局所発汗量(mg/cm
2/min)と下記式(1)から、単位時間当たりの全身水分喪失量を算出する演算装置
と、測定開始指示及び測定周期(min)の入力機能を有する入力装置と、表示装置を備え、
前記演算装置が、前記単位時間当たりの全身水分喪失量と前記測定周期を用いて、前記測定開始指示以降の積算水分喪失量(mg)を算出する機能と、前記局所発汗量の増加率を算出する機能を有し、前記増加率が減少した際に、前記表示装置が、前記積算水分喪失量(mg)の増加を予告する、全身水分量評価システム。
単位時間当たりの全身水分喪失量(mg/min)=局所発汗量(mg/cm
2/min)×測定部位毎の補正係数×体表面積(cm
2)・・・(1)
【請求項2】
前記発汗計が、下記(A)~(D)からなる群から選択される何れかである、請求項1に記載の全身水分量評価システム。
(A)皮膚面から発生する水分量を測定する1種以上のセンサと、前記皮膚面の蒸散を促す1つ以上の蒸散促進機構、を備える発汗計
(B)皮膚面から発生する水分量を測定する2種以上のセンサ、を備える発汗計
(C)皮膚面から発生する水分量を測定する1種以上のセンサと、防湿機構と、液体の排出手段、を備える発汗計
(D)皮膚面に着接される開口部を有する筐体カプセルであって、該筐体カプセルの内部に自然空気を吸気するための吸気孔と、前記開口部に連通して前記皮膚面の汗を放散させると共に、放散した前記汗及び前記自然空気が混合して混合空気となる混合室と、前記混合室から前記混合空気を排気するための排気孔を有する筐体カプセルと、前記自然空気の湿度を測定するための第1の湿度センサと、前記混合空気の湿度を測定するための第2の湿度センサ、を備える発汗計
【請求項3】
前記入力装置が、体重データを入力する機能を備え、
前記演算装置が、前記積算水分喪失量(mg)と前記体重データから、水分減少率(%)を算出する機能を備える、請求項
1又は2に記載の全身水分量評価システム。
【請求項4】
前記水分減少率(%)に応じたレベル表示及び/又は警告表示を記憶した記憶装置を備える、請求項
3に記載の全身水分量評価システム。
【請求項5】
前記表示装置が、前記レベル表示及び/又は前記警告表示を表示する、請求項
4に記載の全身水分量評価システム。
【請求項6】
前記演算装置が、前記記憶装置から、前記水分減少率(%)に応じた
前記レベル表示及び/又は
前記警告表示を選択して、前記表示装置に表示する、請求項
5に記載の全身水分量評価システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全身水分量評価システムに関する。
【背景技術】
【0002】
人体は、体重の約60%が体液(血液、リンパ液、消化液)で構成されている。
体液には、呼吸によって取り込んだ酸素や食物などから得た栄養素を体中に届ける働きがある。体液が正常よりも足りなくなっている状態(以下、脱水症という)を放置すると、血管や内臓、脳などを正常に動かすために必要な酸素や栄養素が行き渡らず、思わぬ病気につながるおそれがある。
特に、高齢者は体液の量(以下、全身水分量ともいう)が体重の50%程度に低下しており、内臓機能や感覚機能も低下しているため、脱水症に陥りやすい。近年、社会の高齢化に伴い、高齢者における脱水症予防への関心が高まっている。
また、スポーツ時には、全身水分量が体重の1%程度低下したあたりからパフォーマンスレベルの低下が始まるとされている。近年、スポーツ科学の普及に伴い、スポーツ時における適切な水分補給への関心も高まっている。
【0003】
被験者の生体の水分を測定する体内水分計に関し、体重、ヘマトクリット値、血清総蛋白、血清ナトリウム濃度、血漿浸透圧から選ばれる少なくとも1つをパラメータとして使用し、前記パラメータの基準値及び状態値を体内水分計に入力し、入力した前記パラメータを用いて体内の水分量に関連した体内状態量を算出する技術が開示されている(特許文献1)。
【0004】
しかし、特許文献1の体内水分計は、予め測定したパラメータを使用して体内状態量を算出するものであるため、体内水分計とは別に、パラメータ測定用の機器を準備して前記パラメータを予め測定しておく必要があり、例えばスポーツ中などに、リアルタイムで全身の水分喪失量を評価する用途には適さない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、コンパクトな装置構成で、全身の水分喪失量をリアルタイムで評価することができる全身水分量評価システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の[1]~[9]を提供する。
[1] 発汗計を用いて求めた局所発汗量(mg/cm2/min)と下記式(1)から、単位時間当たりの全身水分喪失量を算出する演算装置を備える、全身水分量評価システム。
単位時間当たりの全身水分喪失量(mg/min)=局所発汗量(mg/cm2/min)×測定部位毎の補正係数×体表面積(cm2)・・・(1)
[2] 前記発汗計が、下記(A)~(D)からなる群から選択される何れかである、[1]に記載の全身水分量評価システム。
(A)皮膚面から発生する水分量を測定する1種以上のセンサと、前記皮膚面の蒸散を促す1つ以上の蒸散促進機構、を備える発汗計
(B)皮膚面から発生する水分量を測定する2種以上のセンサ、を備える発汗計
(C)皮膚面から発生する水分量を測定する1種以上のセンサと、防湿機構と、液体の排出手段、を備える発汗計
(D)皮膚面に着接される開口部を有する筐体カプセルであって、該筐体カプセルの内部に自然空気を吸気するための吸気孔と、前記開口部に連通して前記皮膚面の汗を放散させると共に、放散した前記汗及び前記自然空気が混合して混合空気となる混合室と、前記混合室から前記混合空気を排気するための排気孔を有する筐体カプセルと、前記自然空気の湿度を測定するための第1の湿度センサと、前記混合空気の湿度を測定するための第2の湿度センサ、を備える発汗計
[3] 前記全身水分量評価システムが、測定開始指示及び測定周期(min)の入力機能を有する入力装置を備え、前記演算装置が、前記単位時間当たりの全身水分喪失量(mg/min)と前記測定周期(min)を用いて、前記測定開始指示以降の積算水分喪失量(mg)を算出する機能を有する、[1]又は[2]に記載の全身水分量評価システム。
[4] 前記入力装置が、体重データを入力する機能を備え、前記演算装置が、前記積算水分喪失量(mg)と前記体重データから、水分減少率(%)を算出する機能を備える、[3]に記載の全身水分量評価システム。
[5] 前記水分減少率(%)に応じたレベル表示及び/又は警告表示を記憶した記憶装置を備える、[4]に記載の全身水分量評価システム。
[6] 前記レベル表示及び/又は警告表示を表示する表示装置を備える、[5]に記載の全身水分量評価システム。
[7] 前記演算装置が、前記記憶装置から、前記水分減少率(%)に応じたレベル表示及び/又は警告表示を選択して、前記表示装置に表示する、[6]に記載の全身水分量評価システム。
[8] 前記積算水分喪失量(mg)の増加を予告する表示装置を備える、[3]に記載の全身水分量評価システム。
[9] 前記演算装置が、前記局所発汗量(mg/cm2/min)の増加率を算出し、前記増加率が減少した際に、前記予告を行う、[8]に記載の全身水分量評価システム。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、コンパクトな装置構成で、全身の水分量をリアルタイムに評価することができる全身水分量評価システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係る全身水分量評価システムの概略説明図である。実施形態(D)における発汗計の概略説明図を含む。
【
図2】本発明の一実施形態に係る全身水分量評価システムの装置構成図である。
【
図3A】実施形態(A)における発汗計の概略説明図である。
【
図3B】実施形態(A)における発汗計の概略説明図である。
【
図4】実施形態(B)における発汗計の概略説明図である。
【
図5】実施形態(C)における発汗計の概略説明図である。
【
図6】実施例の説明図であり、発汗計による局所発汗量(mg/cm
2/min)の測定結果と体重測定タイミングを示す図である。
【
図7】実施例の説明図であり、全身水分量評価システムで算出した測定開始指示から以降の積算水分喪失量(g)と体重減少量(g)の比較データである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態における全身水分量評価システムを詳細に説明する。ただし、本発明は下記の実施形態に限定されるものではない。
【0011】
本実施形態の全身水分量評価システムは、
図1に示すように、発汗計1と演算装置19を備える。演算装置19は、前記発汗計1を用いて求めた局所発汗量(mg/cm
2/min)と下記式(1)から単位時間当たりの全身水分喪失量(mg/min)を算出する。
単位時間当たりの全身水分喪失量(mg/min)=局所発汗量(mg/cm
2/min)×測定部位毎の補正係数×体表面積(cm
2)・・・(1)
【0012】
上記式(1)における「測定部位毎の補正係数」とは、発汗計1が取り付けられる測定部位の汗の出やすさに対応した係数であり、例えば、発汗量の多い前額部、胸部、背部などを対象としたときには小さい値となり、発汗量の少ない四肢などを対象としたときには大きな値となる。
全身水分量評価システムが対象とする測定部位が1箇所に決定される場合、前記「測定部位毎の補正係数」は固定の値で良いが、単位時間当たりの全身水分喪失量の算出精度を向上するために、個人差を補正する機能を有することが好ましい。具体的には、下記式(2)に従って、ある時間の運動時の体重減少と測定部位におけるその時間の局所発汗量の積算値を比較し、個人差を加味した測定部位毎の補正係数を求めることが好ましい。下記式(2)の補正係数を求める際、運動中の水分補給は行わないものとする。
個人差を加味した測定部位毎の補正係数=(運動前の体重[kg]-運動後の体重[kg])/対表面積[cm2]/局所発汗量の積算[mg/cm2]・・・(2)
【0013】
演算装置19の具体的態様は特に限定されず、例えば、携帯端末のCPUを利用することもできる。
演算装置19として携帯端末のCPUを使用する場合、
図2に示すように、携帯端末30の画面を表示装置20として、演算装置の算出結果を表示することができる。
【0014】
[発汗計]
発汗計1は、特に限定されないが、皮膚の表面(以下、皮膚面という)から発生する水分の量(以下、水分量)を測定するもの、皮膚のインピーダンスを電気的に測定するもの、人体の一部分に装着されたセンサから局所的な発汗量の経時変化(局所発汗量)を測定できるものなどが好ましい。何れの場合も、コンパクトな装置構成であることが特に好ましい。発汗計1は、スポーツ時の装着にも適するように、例えば、リストバンド型とすることが好ましい。
汗は皮膚から液体として拍出されると、一部は蒸散し、一部は皮膚に液体として留まる。前者を有効発汗、後者を無効発汗といい、皮膚表面の環境条件によりその割合が変化する。例えば、湿度が低ければ蒸散しやすく有効発汗が増える。発汗量は、有効発汗で蒸散した水蒸気量と、無効発汗で皮膚に液体として留まった水分量の総和である。
【0015】
実施形態(A)における発汗計は、皮膚面から発生する水分量を測定する1種以上のセンサと、前記皮膚面の蒸散を促す1つ以上の蒸散促進機構、を備える。
本実施形態の発汗計は、
図3A示すように、気体に対してセンシティブであり有効発汗を高感度に検知できるセンサ101Aと、前記皮膚面の蒸散を促す1つ以上の蒸散促進機構102、を備えるか、
図3Bに示すように、液体に対してセンシティブであり無効発汗を高感度に検知できるセンサ101Bと、前記皮膚面の蒸散を促す1つ以上の蒸散促進機構102、を備える構成とすることが好ましい。
<センサ>
センサとして、湿度センサ、インピーダンスセンサ、光学センサ、質量センサ、体積センサ、カラーセンサ、熱・温度センサ、カメラ等を例示することができる。その他、汗に含まれる汗に含有する成分(カリウム、マグネシウム、亜鉛、鉄、重炭酸イオンなどのミネラルや電解質、または乳酸、尿素など)の成分センサであってもよい。
前記湿度センサは、水分が発生することで、皮膚表面の湿度が上昇することを利用するものである。前記インピーダンスセンサは、水分が発生することで、皮膚のインピーダンスが変化することを利用するものである。前記光学センサは、例えば1.45μmなど水に特徴的に吸収される発光素子を利用し、その光の減衰量を利用する。光学センサは、液体だけでなく水蒸気に対しても有効である。前記質量センサは、水の重さを測定し、利用するものである。前記体積センサは、水の体積を測定し、利用するものである。前記カメラは、皮膚から拍出される水滴を映像で捉え、その水滴の数を利用するものである。前記カラーセンサは、水に反応する発色物質を皮膚に塗布した場合有効で、その色変化を捉えるものである。前記熱・温度センサは、水分が蒸散する時に気化熱が奪われることによって変化する温度や熱の移動を捉えるものである。
前記各センサのうち、有効発汗を高感度に検知できるセンサ101Aとしては、湿度センサ、光学センサ、熱・温度センサ等が好適であり、無効発汗を高感度に検知できるセンサ101Bとしては、インピーダンスセンサ、質量センサ、体積センサ、カメラ等が好適である。
<蒸散促進機構>
蒸散促進機構として、コンプレッサ等の換気装置、皮膚表面の湿度を下げるシリカゲル等の除湿装置、皮膚表面の温度をあげて相対湿度を下げるヒーター等を例示することができる。
蒸散促進機構を備える本実施形態の発汗計によれば、汗はセンサに検出された後に、皮膚やセンサ検知部にとどまらず排出されるので、コンパクトな装置構成で、発汗量の時間変化(局所発汗量(mg/cm
2/min))を容易に求めることができる。
【0016】
実施形態(B)における発汗計は、皮膚面から発生する水分量を測定する2種以上のセンサ、を備える。
前記2種以上のセンサは、実施形態(A)で例示したセンサからなる群から選択された2種以上を用いることができる。
前記2種以上のセンサとして、有効発汗を高感度に検知できるセンサ101Aと無効発汗を高感度に検知できるセンサ101Bを組み合わせて使用することが好ましい。
本実施形態の発汗計は、
図4に示すように、前記2種以上のセンサ(101A、101B)の他に、排出手段103と、前記2種以上のセンサから得られる発汗量を合算する手段104を備えることが好ましい。
勘弁かつ高精度に発汗量を測定するには、液体を即座に全て気体にして測定、その後排出するか、液体として測定した後、即座に蒸散して排出する、ことが好ましい。
前記2種以上のセンサの他に、排出手段と、前記2種以上のセンサから得られる発汗量を合算する手段を備えることにより、汗はセンサに検出された後に、皮膚やセンサ検知部にとどまらず排出されるので、コンパクトな装置構成で、発汗量の時間変化(局所発汗量(mg/cm
2/min))を容易に求めることができる。
【0017】
実施形態(C)における発汗計は、皮膚面から発生する水分量を測定する1種以上のセンサと、防湿機構と、液体の排出手段、を備える。
本実施形態の発汗計は、
図5に示すように、無効発汗を高感度に検知できるセンサ101Bと、防湿機構105と、液体の排出手段103、を備えることが好ましい。
防湿機構を備えることにより、汗を液体として発汗量を測定することができる。
単に防湿機構を備える場合、汗を貯める大きな貯蔵構造が必要となるが、
図5に示すように、防湿機構と、液体の排出手段、を備えることにより、コンパクトな装置構成で、発汗量の時間変化(局所発汗量(mg/cm
2/min))を容易に求めることができる。
【0018】
実施形態(D)における発汗計は、
図1に示すように、皮膚面に着接される開口部2を有する筐体カプセル3であって、該筐体カプセル3の内部に自然空気を吸気するための吸気孔4と、前記開口部2に連通して前記皮膚面の汗を放散させると共に、放散した前記汗及び前記自然空気が混合して混合空気となる混合室5と、前記混合室5から前記混合空気を排気するための排気孔6を有する筐体カプセル3と、前記自然空気の湿度を測定するための第1の湿度センサ7と、前記混合空気の温湿度を測定するための第2の湿度センサ8を備える。
【0019】
<筐体カプセル3>
筐体カプセル3の形態は特に限定されないが、例えば、上端が閉じられた略筒状(一例として略円筒状)に形成することができる。
筐体カプセル3の素材も特に限定されないが、例えば、合成樹脂によって形成することができる。
筐体カプセル3の内部に自然空気を吸気するための吸気孔4は、筒状の筐体カプセル3の内径よりも小径(小さいサイズ)である。
筐体カプセル3は、下端(皮膚面1側)に、皮膚面1に着接(貼付)される開口部2を有する。
開口部2の開口面積は、限定されないが、例えば、1cm2とすることができる。皮膚面1の発汗量の単位をmg/cm2・minで表す場合、開口部2の開口面積が1cm2であれば、発汗量の測定値を面積で除算して換算することなくそのまま使用することができる。
筐体カプセル3の皮膚面への貼付は、開口部2の周辺部に例えば両面テープ、接着剤又は粘着剤を付して行うことができる。
筐体カプセル3は、内側に、前記開口部2に連通する混合室5を有する。
混合室5は、皮膚面1に着接された状態で皮膚面1の汗を放散させると共に、放散した汗と自然空気とを混合させる空間としての機能を有する。
混合室5から前記混合空気を排気するための排気孔6は、筒状の筐体カプセル3の内径よりも小径(小さいサイズ)である。
【0020】
<送風部13>
発汗計1は、前記自然空気を送風する送風部13または前記混合空気を吸引する吸引機を備えることが好ましい。
送風部13及び吸引機は、筐体カプセル3の内部に配置してもよく、筐体カプセル3の外部に配置してもよい。
図1に示す実施形態のように、送風部13が筐体カプセル3の外部にある場合、例えば、コンプレッサを送風部13として使用することができる。コンプレッサは自然空気を吸入したうえ、自然空気を一定の流量で送出する。コンプレッサから送出された自然空気は、フレキシブルパイプ14を経由して、筐体カプセル3の混合室5に供給される。
送風部13が筐体カプセル3の内部にある場合、送風部13は混合室5の上流に配置することが好ましい。混合室5の上流に配置された送風部13は、吸気孔4から自然空気を吸気して、混合室5に送風する。例えば、電動のエアーファン、エアーポンプ又はエアーブロワを送風部13として使用することができる。
【0021】
<第1の湿度センサ7>
第1の湿度センサ7は、吸気孔4から吸気される自然空気の湿度を測定する機能を備える。
図1に示す実施形態では、筐体カプセル3の外部にあるボックス15の内部に、第1の湿度センサ7が配設されている。
図1に示す実施形態において、第1の湿度センサ7は、送風部13であるコンプレッサから送出され、ボックス15の内部に供給された自然空気の絶対湿度を測定する。
絶対湿度を測定する第1の湿度センサ7の代わりに、ボックス15の内部に、相対湿度センサと温度センサを配設して、ボックス15の内部に流れてきた自然空気の絶対湿度を求めることもできる。温度センサと湿度センサとが一体的に形成されたものを用いてもよい。
【0022】
<第2の湿度センサ8>
第2の湿度センサ8は、前記混合空気の湿度を測定する機能を備える。
図1に示す実施形態では、筐体カプセル3の外部にあるボックス16の内部に、第2の湿度センサ8が配設されている。
図1に示す実施形態において、第2の湿度センサ8は、筐体カプセル3から排気され、ボックス16の内部に供給された混合空気の絶対湿度を測定する。
絶対湿度を測定する第2の湿度センサ8の代わりに、ボックス16の内部に、相対湿度センサと温度センサを配設して、ボックス16の内部に流れてきた混合空気の絶対湿度を求めることもできる。温度センサと湿度センサとが一体的に形成されたものを用いてもよい。
【0023】
[演算装置]
演算装置19は、前記発汗計1を用いて求めた局所発汗量(mg/cm2/min)と下記式(1)から単位時間当たりの全身水分喪失量を算出する。
単位時間当たりの全身水分喪失量(mg/min)=局所発汗量(mg/cm2/min)×測定部位毎の補正係数×体表面積(cm2)・・・(1)
【0024】
演算装置19は、更に、予め入力された測定周期(min)と測定開示指示以降の経過時間と前記単位時間当たりの全身水分喪失量(mg/min)から、測定開始指示から以降の積算水分喪失量(mg)を算出する機能を備えることもできる。当該機能を備えることにより、例えばスポーツ中などに、リアルタイムで全身の水分喪失量を評価することが可能となる。
演算装置19は、更に、予め入力された体重データと前記積算水分喪失量(mg)から、水分減少率(%)を算出する機能を備えることもできる。
【0025】
[記憶装置]
本発明の全身水分量評価システムは、例えば、脱水症状防止を目的として使用する際に好適な脱水症防止用データや、スポーツ時のパフォーマンス低下防止を目的として使用する際に好適なパフォーマンス低下防止用データを記憶する記憶装置18を備えることもできる。
脱水症状防止を目的として使用する際に好適な脱水症防止用データとして、例えば、下記表1に示すものを使用することができる。パフォーマンス低下防止用データとして、例えば、それぞれ、下記表2に示すものを使用することができる。
【0026】
【0027】
【0028】
[表示装置]
演算装置19は、記憶装置18に記憶したデータから、前記算出結果に対応するレベル表示及び/又は警告表示を選択し、表示装置20に表示させることができる。
【0029】
[入力装置]
全身水分量評価システムは、測定開始指示及び測定周期(min)の入力機能を有する入力装置を備えることができる。
演算装置19として携帯端末のCPUを使用する場合、携帯端末の画面を入力装置22として使用することができる。
入力装置22は、測定開始指示、前記測定周期(min)、体重データ、水分摂取量の入力に用いることができる。
【0030】
<回路構成>
発汗計1の第1の湿度センサ7、第2の湿度センサ8は、それぞれフィルタ回路F1、F2と電気的に接続されている。
フィルタ回路F1及びF2は、前記の各センサから出力された上記検知信号を入力すると、それぞれの検知信号に含まれる雑音成分を除去したあと、所定の増幅率で検知信号を増幅する。
フィルタ回路F1、F2の出力側に差動増幅器DA1が接続されている。
フィルタ回路F1の出力側は差動増幅器DA1の反転入力端子(-)に接続されている。
フィルタ回路F2の出力側は差動増幅器DA1の非反転入力端子(+)に接続されている。
この構成により、差動増幅器DA1は、第1の湿度センサ7により検知された自然空気の絶対湿度に対応した信号と、第2の湿度センサ8により検知された混合空気の絶対湿度に対応した信号との差の信号を出力する。差動増幅器DA1から出力される信号は、皮膚面から混合室5に放散された発汗量である局所発汗量(mg/cm2/min)に対応している。
差動増幅器DA1から出力された信号が、演算装置19に入力されると、演算装置19は、それぞれの入力信号に基づいて皮膚面から混合室5に放散された実際の発汗量である局所発汗量(mg/cm2/min)を算出した後、上記式(1)から単位時間当たりの全身水分喪失量(mg/min)を算出する。
【0031】
一実施形態において、演算装置19は、前記単位時間当たりの全身水分喪失量(mg/min)と前記測定周期(min)と測定開始指示後の経過時間から、測定開始指示から以降の積算水分喪失量(mg)を算出し、前記積算水分喪失量(mg)と前記体重データから水分減少率(%)を算出し、記憶装置18に記憶したデータから、前記水分減少率(%)に対応するレベル表示及び/又は警告表示を選択し、表示装置20に表示する。
前記表示後に、ユーザーが入力装置22を介して水分摂取量を入力することで、システムがリセットされる構成とすることもできる。
【0032】
一実施形態において、ユーザーは水分摂取時に、当該水分摂取量と測定開始指示とを入力することもできる。
この場合、演算装置19は、前記単位時間当たりの全身水分喪失量(mg/min)と前記測定周期(min)と測定開始指示後の経過時間から、測定開始指示から以降の積算水分喪失量(mg)を算出し、前記積算水分喪失量(mg)が前記水分摂取量を上回った時点で、表示装置20に給水を促す表示をすることもできる。
【0033】
一実施形態において、演算装置19は、前記局所発汗量(mg/cm2/min)の増加率を算出し、前記増加率が高止まりした時点で、表示装置20に、前記積算水分喪失量(mg)の増加を予告する表示をすることもできる。具体的に、例えば、所定時間(例えば、数十秒から数分)ごとに、その区間における局所発汗量の平均値(Xi)を算出し、その直前区間における局所発汗量の平均値(Xi-1)からの増加率(dXi=Xi-Xi-1)が、減少に転じた時点で、前記表示を行う。
一般に運動時は、数分から数十分の潜時(運動の開始から発汗が開始するまでの時間)をもって発汗が開始し、その後、発汗量は緩やかに増加し、ある値で高止まりする。発汗量が高止まりすると、以降、前記積算水分喪失量(mg)が急激に増加する傾向があるため、発汗量が高止まりした時点で、全身水分喪失量(mg/min)の増加を予告し、早めの給水を促す等の予告表示を行うことで、スポーツ時のパフォーマンス低下を回避することができる。
【実施例】
【0034】
本発明の全身水分量評価システムにより測定した積算水分喪失量と、体重減少量との関係を調べた。
【0035】
積算水分喪失量は、
図1の装置構成の全身水分量評価システムを使用して算出した。
被験者(30代男性、体重58kg、身長165cm)の手首に筐体カプセル3の開口部2を着接し、室内(気温:25℃、湿度:50%)で、10分間のステップ運動を4回繰り返した。各回のステップ運動終了後に体重を測定した。被験者のパーソナル情報は、身長、体重を使用し、そこから体表面積を求めた。運動時はトレーニングウェアを着用し、体重測定は、ウェアを脱いで汗を拭いた後、体重計(株式会社タニタ製 BC-314 分解能50g)を用いて行った。実験中の給水は行わなかった。
図6に、発汗計1による局所発汗量(mg/cm
2/min)の測定結果と、体重測定タイミングを示す。
図7に、全身水分量評価システムで算出した測定開始指示から以降の積算水分喪失量(g)と体重減少量(g)の比較データを示す。
【0036】
図7に示すように、本発明の全身水分量評価システムで算出した積算水分喪失量(g)は、体重減少量(g)とほぼ同一の値を示すことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0037】
例えば、本発明の全身水分量評価システムを構成する発汗計を、ウェアラブル形態として手首等に装着し、発汗計の測定データをスマートフォンアプリで処理できるシステムを構築することで、スポーツ中や、日常生活において、リアルタイムで水分喪失量を把握して、適切な水分補給を促すことができる。
【符号の説明】
【0038】
1 発汗計
2 開口部
3 筐体カプセル
4 吸気孔
5 混合室
6 排気孔
7 第1の湿度センサ
8 第2の湿度センサ
13 送風部
14 フレキシブルパイプ
15 ボックス
16 ボックス
17 フレキシブルパイプ
18 記憶装置
19 演算装置
20 表示装置
22 入力装置
30 携帯端末
101A 有効発汗を高感度に検知できるセンサ
101B 無効発汗を高感度に検知できるセンサ
102 蒸散促進機構
103 排出手段
104 2種以上のセンサから得られる発汗量を合算する手段
105 防湿機構