(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-22
(45)【発行日】2024-10-30
(54)【発明の名称】太陽電池及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 31/18 20060101AFI20241023BHJP
H01L 31/0224 20060101ALI20241023BHJP
H05K 3/16 20060101ALN20241023BHJP
H05K 3/12 20060101ALN20241023BHJP
【FI】
H01L31/04 422
H01L31/04 264
H05K3/16
H05K3/12 610
(21)【出願番号】P 2022580319
(86)(22)【出願日】2021-06-09
(86)【国際出願番号】 CN2021099062
(87)【国際公開番号】W WO2022052534
(87)【国際公開日】2022-03-17
【審査請求日】2022-12-23
(31)【優先権主張番号】202010933895.X
(32)【優先日】2020-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】516082763
【氏名又は名称】中国科学院蘇州納米技術与納米▲ファン▼生研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100206911
【氏名又は名称】大久保 岳彦
(74)【代理人】
【識別番号】100204467
【氏名又は名称】石川 好文
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100195833
【氏名又は名称】林 道広
(72)【発明者】
【氏名】スン,ジィァンジィェン
(72)【発明者】
【氏名】ルー,シュロン
(72)【発明者】
【氏名】ローン,ジンホワ
(72)【発明者】
【氏名】リー,シュェフェイ
(72)【発明者】
【氏名】ダイ,パン
【審査官】吉岡 一也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-143174(JP,A)
【文献】特開2012-116990(JP,A)
【文献】特開2016-219586(JP,A)
【文献】特開2002-076399(JP,A)
【文献】特開2012-084703(JP,A)
【文献】国際公開第2012/050157(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第111463303(CN,A)
【文献】特開平04-291717(JP,A)
【文献】特開平11-121774(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/02-31/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
InP材料で製造され
たInP基板上に発電層を形成する
第1ステップと、
前記第1ステップに次いで、前記発電層の前記InP基板に背向する表面にオーミックコンタクト層を形成する
第2ステップと、
前記第2ステップに次いで、前記InP基板の前記発電層に背向する表面に裏面電極を形成する
第3ステップと、
前記第3ステップに次いで、前記オーミックコンタクト層にスクリーン印刷版を配置する第4ステップと、
前記第4ステップに次いで、前記スクリーン印刷版を介して、ナノ銀ペースト層を印刷する第5ステップと、
前記第5ステップに次いで、前記ナノ銀ペースト層に対して焼鈍硬化を行って、前記上部電極を形成する
第6ステップと、
を含む、太陽電池の製造方法。
【請求項2】
前記発電層及び前記オーミックコンタクト層を、III-V族半導体材料で製造する、
請求項1に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項3】
前記
第5ステップ
では、
前記ナノ銀ペースト層を130mm/s~160mm/sの印刷速度
で印刷し、
前記スクリーン印刷版のスクリーンのメッシュ数は、300メッシュ~500メッシュである、請求項1または2に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項4】
前記裏面電極を形成する
前記第3ステップは、
前記InP基板の前記発電層に背向する表面にTi層、Pt層及びAu層を順に積層形成するステップと、
Arガス雰囲気中で前記積層されたTi層、Pt層及びAu層を焼鈍して、前記裏面電極を形成するステップとを含む、請求項1~3のいずれかに記載の太陽電池の製造方法。
【請求項5】
前記上部電極を形成した後に、前記上部電極をマスクとして前記オーミックコンタクト層をエッチングして、前記発電層の一部領域を露出させるステップと、
前記一部領域に反射防止膜を形成するステップとをさらに含む、
請求項1~4のいずれかに記載の太陽電池の製造方法。
【請求項6】
前記反射防止膜を形成するステップは、前記一部領域にTi3O5層とSiO2層を順に積層形成するステップを含む、請求項5に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項7】
前記InP基板上に前記発電層を形成する
前記第1ステップは、
前記InP基板上に裏面電界層を形成するステップと、
前記裏面電界層上に光起電力層を形成するステップと、
前記光起電力層上に窓層を形成するステップと、
を含む、請求項1~6のいずれかに記載の太陽電池の製造方法。
【請求項8】
前記上部電極を形成する前に、前記オーミックコンタクト層の表面を洗浄液で洗浄するステップをさらに含む、請求項1~7のいずれかに記載の太陽電池の製造方法。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載の太陽電池の製造方法により製造される、太陽電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光起電力素子の技術分野に関し、特に太陽電池及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池は、太陽光を利用して直接発電する半導体素子である。太陽光を受光することができるために、太陽電池の受光面に設けられた電極は、グリッド状である。太陽光は、上部電極の隙間を通って太陽電池の受光面に入射してから、太陽電池の光起電力作用で電気エネルギーに変換される。
【0003】
現在、太陽電池の上部電極は、一般的に電子ビーム蒸着プロセス又はマグネトロンスパッタリングプロセスにより形成される。電子ビーム蒸着プロセス又はマグネトロンスパッタリングプロセスにより金属材料を蒸着する前、フォトレジスト露光現像プロセスによりグリッド状マスクを形成する過程を含み、金属材料を蒸着した後に、特殊な腐食液を使用してフォトレジストマスクを溶解する過程をさらに含み、また、フォトレジストマスクを溶解した後に、洗浄過程をさらに含み、フォトレジストマスクに形成された金属材料を除去することにより、完全な上部電極を形成する。
【0004】
上記のように、電子ビーム蒸着プロセス又はマグネトロンスパッタリングプロセスにより太陽電池の上部電極を形成する場合、そのプロセスが複雑すぎるため、太陽電池の生産能力が制限され、太陽電池が限られた分野でしか使用できないことをもたらす。
【発明の概要】
【0005】
従来技術に存在する欠点に鑑み、本発明は、以下の技術的解決手段を提供する。
【0006】
本発明の一態様に係る太陽電池の製造方法は、
基板上に発電層を形成するステップと、
前記発電層の前記基板に背向する表面にオーミックコンタクト層を形成するステップと、
前記基板の前記発電層に背向する表面に裏面電極を形成するステップと、
印刷プロセスにより前記オーミックコンタクト層の前記発電層に背向する表面に上部電極を形成するステップとを含む。
【0007】
好ましくは、前記上部電極を形成する方法は、具体的には、
前記オーミックコンタクト層にスクリーン印刷版を設けるステップと、
130mm/s~160mm/sの印刷速度でナノ銀ペースト層を印刷するステップと、
前記ナノ銀ペースト層に対して焼鈍硬化を行って、前記上部電極を形成するステップとを含み、
前記スクリーン印刷版のスクリーンのメッシュ数は、300メッシュ~500メッシュである。
【0008】
好ましくは、前記裏面電極を形成する方法は、具体的には、
前記基板の前記発電層に背向する表面にTi層、Pt層及びAu層を順に積層形成するステップと、
Arガス雰囲気中で前記積層されたTi層、Pt層及びAu層を焼鈍して、前記裏面電極を形成するステップとを含む。
【0009】
好ましくは、前記上部電極を形成した後に、前記製造方法は、
前記上部電極をマスクとして前記オーミックコンタクト層をエッチングして、前記発電層の一部領域を露出させるステップと、
前記一部領域に反射防止膜を形成するステップとをさらに含む。
【0010】
好ましくは、前記反射防止膜を形成する方法は、具体的には、前記一部領域にTi3O5層とSiO2層を順に積層形成するステップを含む。
【0011】
好ましくは、前記基板上に前記発電層を形成する方法は、
前記基板上に裏面電界層を形成するステップと、
前記裏面電界層上に光起電力層を形成するステップと、
前記光起電力層上に窓層を形成するステップとを含む。
【0012】
好ましくは、前記基板は、InP材料で製造される。
【0013】
好ましくは、前記発電層及び前記オーミックコンタクト層は、III-V族半導体材料で製造される。
【0014】
好ましくは、前記上部電極を形成する前に、前記製造方法は、前記オーミックコンタクト層の表面を洗浄液で洗浄するステップをさらに含む。
【0015】
本発明の別の態様に係る太陽電池は、以上のような製造方法により製造される。
【0016】
本発明に係る太陽電池の製造方法を用いて太陽電池を製造する場合、上部電極の製造過程は、印刷及び硬化過程のみを含むため、上部電極の製造過程を効果的に簡略化し、太陽電池の生産能力をさらに向上させる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施例に係る太陽電池の製造方法のフローチャートである。
【
図2a】本発明の実施例に係る太陽電池の製造工程図である。
【
図2b】本発明の実施例に係る太陽電池の製造工程図である。
【
図2c】本発明の実施例に係る太陽電池の製造工程図である。
【
図2d】本発明の実施例に係る太陽電池の製造工程図である。
【
図3a】本発明の別の実施例に係る太陽電池の製造工程図である。
【
図3b】本発明の別の実施例に係る太陽電池の製造工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の目的、技術的解決手段及び利点をより明確にするために、以下、図面を参照しながら本発明の具体的な実施形態を詳細に説明する。これらの好ましい実施形態の例を図面に例示する。図面に示され、図面に基づいて説明された本発明の実施形態は、例示的なものに過ぎず、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではない。ここで、不必要な詳細により本発明を不明瞭にすることを回避するために、図面において本発明に係る解決手段と密接に関連する構造及び/又は処理ステップのみが示され、本発明との関係が薄い他の詳細が省略される。
【0019】
また、理解されるように、層、膜、領域又は基板のような素子が他の素子又は他の素子の表面「上」に「位置する」と言及された時、該素子は、上記他の素子又は上記他の素子の表面上に直接に位置してもよく、又は中間素子が存在してもよい。好ましくは、素子が他の素子又は他の素子の表面「上」に「直接的に位置する」と言及された時、中間素子が存在しない。
【0020】
背景技術に記載のように、現在、太陽電池の上部電極は、一般的に電子ビーム蒸着プロセス又はマグネトロンスパッタリングプロセスにより形成される。しかしながら、上記2つのプロセスの実際の操作過程が複雑すぎるため、太陽電池の生産量が制限され、太陽電池が限られた分野でしか使用できないことをもたらす。
【0021】
上記従来の技術的課題を改善するために、本発明の実施例は、上部電極の製造ステップの削減を可能にする太陽電池の製造方法を提供し、太陽電池の製造過程を簡略化し、太陽電池の生産能力を向上させる。
【0022】
以下、本発明の実施例に係る太陽電池の製造方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【実施例1】
【0023】
本実施例に係る太陽電池の製造方法は、
図1及び
図2a~
図2dに示すように、ステップS1~S4を含む。
【0024】
ステップS1では、基板1に発電層2を形成する。具体的には、上記基板1に裏面電界層21、光起電力層22及び窓層23を順に形成する。上記裏面電界層21は上記光起電力層22に接続されてから高い障壁を形成し、上記裏面電界層21に流れる少数のキャリアに対して反射作用を果たし、上記光起電力層22の表面準位を低下させ、光生成キャリアの複合速度を低下させ、光生成キャリアの収集効率を向上させることができ、上記光起電力層22は、太陽光照射の環境下で光生成キャリアを生成することができ、上記窓層23は、上記裏面電界層21と同じであり、上記光起電力層22に接続されてから高い障壁を形成し、上記窓層23に流れる少数のキャリアに対して反射作用を果たして、光生成キャリアの複合速度を低下させ、光生成キャリアの収集効率を向上させる。好ましくは、上記発電層2は、III-V族半導体材料で製造される。
【0025】
ステップS2では、上記発電層2の上記基板1に背向する表面にオーミックコンタクト層3を形成する。上記オーミックコンタクト層3は、金属材料とオーミック接触を形成して、直列抵抗による電気エネルギー損失を低減することができる。好ましくは、上記オーミックコンタクト層3は、III-V族半導体材料で製造される。
【0026】
ステップS3では、上記基板1の上記発電層2に背向する表面に裏面電極4を形成する。具体的には、上記基板1の上記発電層2に背向する表面にTi層、Pt層及びAu層を順に積層形成する。その後にArガス雰囲気中で上記積層されたTi層、Pt層及びAu層を焼鈍して、上記裏面電極4を形成する。
【0027】
ステップS4では、印刷プロセスにより上記オーミックコンタクト層3の上記発電層2に背向する表面に上部電極5を形成する。具体的には、上記オーミックコンタクト層3にスクリーン印刷版を設けてから、130mm/s~160mm/sの印刷速度でナノ銀ペースト層を印刷する。上記ナノ銀ペースト層に対して焼鈍硬化を行うことにより、上記上部電極5を形成する。上記スクリーン印刷版のスクリーンのメッシュ数は、300メッシュ~500メッシュである。
【0028】
上記のように、本実施例の太陽電池の製造方法を用いて太陽電池を製造する場合、上部電極5の製造過程は、印刷及び硬化過程のみを含むため、上部電極5の製造過程を効果的に簡略化し、太陽電池の生産能力をさらに向上させることができる。
【0029】
具体的には、本実施例において、上記上部電極5は、グリッド状電極であり、上記グリッド電極は、平行に配列された複数の金属ストリップを含み、隣接する金属ストリップ同士の間に接続部が設けられる。隣接する金属ストリップ同士の間は上記接続部を介して互いの導通接続を実現する。別の例として、上記上部電極5は、格子状電極であってもよい。
【0030】
好ましくは、本実施例において、発電層2のエピタキシャル成長を保障するために、上記基板1は、InP材料で製造される。
【0031】
好ましくは、上記上部電極5と上記オーミックコンタクト層3との間の良好なオーミック接触のために、上記上部電極5を形成する前に、上記製造方法は、上記オーミックコンタクト層3の表面を洗浄液で洗浄するステップをさらに含む。上記洗浄液は、酸性溶液であり、上記オーミックコンタクト層3の表面に形成された酸化膜を洗浄することにより、上記オーミックコンタクト層3の表面のダングリングボンドを露出させて、上記上部電極5と上記オーミックコンタクト層3との間のオーミック接触を向上させる。
【実施例2】
【0032】
太陽電池の光起電力効率を向上させるために、本実施例における製造方法が、反射防止膜6を形成するステップをさらに含むことは、実施例1と異なる。具体的には、
図3a及び
図3bに示すように、上記ステップは、ステップS5及びS6を含む。
【0033】
ステップS5では、上記上部電極5をマスクとして上記オーミックコンタクト層3をエッチングすることにより、上記発電層2の一部領域を露出させる。
【0034】
ステップS6では、上記部分領域に反射防止膜6を形成する。具体的には、上記反射防止膜6を形成する方法は、上記一部領域にTi3O5層及びSiO2層を順に積層形成するステップを含む。
【実施例3】
【0035】
本実施例に係る太陽電池は、
図2d又は
図3bに示すように、実施例1又は実施例2に記載の製造方法により製造される。
【0036】
なお、本明細書において、第1及び第2などの関係用語は、1つの実体または操作を別の実体または操作と区別するためのものにすぎず、必ずしもこれらの実体または操作の間にいかなるこのような実際の関係または順序が存在することを要求または示唆するものではない。また、用語「含む」、「備える」またはそれらの任意の他の変形は、非排他的な包含をカバーすることを意図することにより、一連の要素を含む過程、方法、物品または装置がそれらの要素を含むだけでなく、明確に列挙されていない他の要素をさらに含み、またはこのようなプロセス、方法、物品または装置に固有の要素をさらに含む。更なる限定がない場合、語句「...含む」で限定された要素について、上記要素を含むプロセス、方法、物品又は装置に他の同じ要素がさらに存在するすることは排除されない。
【0037】
本願の実施例を例示し説明したが、当業者にとって、本発明の原理及び精神から逸脱することなくこれらの実施例に対して様々な変更、修正、置換及び変形を行うことができ、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲及びその均等物によって限定される。