IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 山東科技大学の特許一覧

特許7575812数値制御工作機械の隣接する切削活動間の無負荷過程における主軸減速による省エネルギー方法
<>
  • 特許-数値制御工作機械の隣接する切削活動間の無負荷過程における主軸減速による省エネルギー方法 図1
  • 特許-数値制御工作機械の隣接する切削活動間の無負荷過程における主軸減速による省エネルギー方法 図2
  • 特許-数値制御工作機械の隣接する切削活動間の無負荷過程における主軸減速による省エネルギー方法 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-22
(45)【発行日】2024-10-30
(54)【発明の名称】数値制御工作機械の隣接する切削活動間の無負荷過程における主軸減速による省エネルギー方法
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/416 20060101AFI20241023BHJP
   B23Q 15/00 20060101ALI20241023BHJP
【FI】
G05B19/416 F
B23Q15/00 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023003664
(22)【出願日】2023-01-13
(65)【公開番号】P2024038969
(43)【公開日】2024-03-21
【審査請求日】2023-01-13
(31)【優先権主張番号】202211097713.5
(32)【優先日】2022-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】518411338
【氏名又は名称】山東科技大学
(74)【代理人】
【識別番号】100145470
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 健一
(72)【発明者】
【氏名】賈順
(72)【発明者】
【氏名】王尚
(72)【発明者】
【氏名】楊揚
(72)【発明者】
【氏名】呂景祥
(72)【発明者】
【氏名】劉陽
(72)【発明者】
【氏名】隋楊
(72)【発明者】
【氏名】閔祥鵬
(72)【発明者】
【氏名】陳洪
(72)【発明者】
【氏名】侯畋有
(72)【発明者】
【氏名】周広鋒
【審査官】増山 慎也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-199061(JP,A)
【文献】特開2015-135649(JP,A)
【文献】特開2014-219911(JP,A)
【文献】特開2019-169067(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/416
B23Q 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
時間的に隣接する切削活動の時間的な間における切削活動が行われていない時間の主軸回転数及び切削活動が行われていない無負荷時間を収集するステップと、
数値制御工作機械の各運転時におけるエネルギー消費を取得するステップと、
前記主軸回転数及び前記数値制御工作機械の各運転時におけるエネルギー消費に基づいて、主軸減速手段が実施されない時の工作機械の無負荷時間におけるエネルギー消費及び主軸減速手段の実施時の工作機械の無負荷時間におけるエネルギー消費を取得するステップと、
省エネルギー前提条件を予め設定し、前記主軸減速手段が実施されない時の工作機械の無負荷時間におけるエネルギー消費、主軸減速手段の実施時の工作機械の無負荷時間におけるエネルギー消費及び前記無負荷時間が前記省エネルギー前提条件を満たすと、主軸減速による省エネルギーの臨界時間を求め、前記無負荷時間が前記主軸減速による省エネルギーの臨界時間よりも大きい場合、無負荷時間で主軸減速を行うステップと、を含み、
前記数値制御工作機械の各運転時におけるエネルギー消費は、工作機械の基本モジュールによるエネルギー消費と、工作機械の主軸の定速回転運転によるエネルギー消費と、工作機械の主軸加速運転におけるエネルギー消費と、を含み、
前記工作機械の基本モジュールによるエネルギー消費は、以下の式に示され、
【数19】
そのうち、Estandbyは、工作機械の基本モジュールによるエネルギー消費であり、Pstandbyは、工作機械の基本モジュールの動作を維持するときの電力であり、Pstandby_iは、実験装置の第i番目に収集した工作機械の基本モジュールの電力値であり、Nは、データ収集の回数であり、Tstandbyは、工作機械の基本モジュールの動作を維持する時間であり、
前記工作機械の主軸の定速回転運転によるエネルギー消費は、以下の式に示され、
【数20】
そのうち、Espindleは、工作機械の主軸の定速回転運転によるエネルギー消費であり、Pspindleは、工作機械の主軸の定速回転運転時の電力であり、nは、主軸回転数であり、Asp及びBspは、式の係数であり、Tspindleは、主軸の定速回転運転を維持する時間であり、
前記工作機械の主軸加速運転によるエネルギー消費は、以下の式に示され、
【数21】
そのうち、ESRAは、工作機械の主軸加速運転によるエネルギー消費であり、Tsは、主軸の加速トルクであり、αは、主軸角加速度であり、n1は、主軸初期回転数であり、n2は、主軸目標回転数であり、TSRA1は、主軸加速開始から電力ピーク時間帯までの時間であり、TSRA2は、電力ピークから定常電力時間帯までの移行時間であり、
主軸減速手段が実施されない時の工作機械の無負荷時間におけるエネルギー消費及び主軸減速手段の実施時の工作機械の無負荷時間におけるエネルギー消費を取得することは、
主軸回転加速過程の時間を取得するステップと、
前記主軸初期回転数、前記主軸目標回転数、前記数値制御工作機械の各運転におけるエネルギー消費、及び前記主軸回転加速過程の時間に基づいて、前記主軸減速手段が実施されない時の工作機械の無負荷時間におけるエネルギー消費を取得するステップと、
前記主軸減速後の回転数、前記主軸目標回転数、前記数値制御工作機械の各運転におけるエネルギー消費及び前記主軸回転加速過程の時間に基づいて、前記主軸減速手段の実施時の工作機械の無負荷時間におけるエネルギー消費を取得するステップと、を含み、
前記省エネルギー前提条件は、
前記主軸減速手段の実施時の工作機械の無負荷時間におけるエネルギー消費は、前記主軸減速手段が実施されない時の工作機械の無負荷時間におけるエネルギー消費よりも小さく、前記主軸回転加速過程の時間は、前記無負荷時間よりも小さいことであり、
前記主軸減速による省エネルギーの臨界時間は、工作機械が加工動作状態のまま動作したときのエネルギー需要と、主軸が減速した後に前記主軸目標回転数まで再加速するときのエネルギー需要とが等しくなるときに要する時間であることを特徴とする数値制御工作機械の時間的に隣接する切削活動の時間的な間の切削活動が行われていない無負荷時間における主軸減速による省エネルギー方法。
【請求項2】
前記主軸回転数は、前記主軸初期回転数と、前記無負荷時間後の切削開始後の主軸回転数である前記主軸目標回転数と、前記主軸減速後の回転数と、を含むことを特徴とする請求項1に記載の数値制御工作機械の時間的に隣接する切削活動の時間的な間の切削活動が行われていない無負荷時間における主軸減速による省エネルギー方法。
【請求項3】
前記主軸加速開始から電力ピーク時間帯までの時間、及び前記電力ピークから定常電力時間帯までの移行時間に基づいて、前記主軸回転加速過程の時間を求めることを特徴とする請求項1に記載の数値制御工作機械の時間的に隣接する切削活動の時間的な間の切削活動が行われていない無負荷時間における主軸減速による省エネルギー方法。
【請求項4】
前記主軸減速手段が実施されない時の工作機械の無負荷時間におけるエネルギー消費は、以下の式に示され、
【数22】
そのうち、Eno_loadは、主軸減速手段が実施されない時の工作機械の無負荷時間におけるエネルギー消費であり、Toは、無負荷時間であることを特徴とする請求項1に記載の数値制御工作機械の時間的に隣接する切削活動の時間的な間の切削活動が行われていない無負荷時間における主軸減速による省エネルギー方法。
【請求項5】
前記主軸減速手段の実施時の工作機械の無負荷時間におけるエネルギー消費は、以下の式に示され、
【数23】
そのうち、Edecelerationは、主軸減速手段の実施時の工作機械の無負荷時間におけるエネルギー消費であり、nは、主軸減速後の回転数であることを特徴とする請求項1に記載の数値制御工作機械の時間的に隣接する切削活動の時間的な間の切削活動が行われていない無負荷時間における主軸減速による省エネルギー方法。
【請求項6】
無負荷時間において前記主軸減速を行うための省エネルギー量は、以下の式に示され、
【数24】
そのうち、Esavingは、省エネルギー量であり、Eno_loadは、主軸減速手段が実施されない時の工作機械の無負荷時間のエネルギー消費であり、Edecelerationは、主軸減速手段の実施時の工作機械の無負荷時間におけるエネルギー消費であることを特徴とする請求項1に記載の数値制御工作機械の時間的に隣接する切削活動の時間的な間の切削活動が行われていない無負荷時間における主軸減速による省エネルギー方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械製造技術の分野に属し、特に数値制御工作機械の隣接する切削活動間の無負荷過程における主軸減速による省エネルギー方法に関する。
【背景技術】
【0002】
数値制御工作機械は、機械製造業におけるエネルギー消費及び炭素排出の主要な行業として、省エネルギー・排出削減において、重要な役割を果たす。一方、多くの検討の結果から、工作機械設備のエネルギー平均利用率は、低くて、平均30%を下回ることが分かった。これにより、工作機械設備の省エネルギー問題を探究することは、極めて重要な理論指導意義と実際の応用価値を有し、機械製造業の省エネルギー・排出削減の円滑な推進に寄与する。
【0003】
数値制御工作機械は、ワークの加工過程に、切込み、逃げ、工具交換などの無負荷の運動中、主駆動システムが加工状態になく、完全にエネルギーを浪費するプロセスであり、工作機械設備のエネルギーの利用率を低下させる要因の1つである。このため、CN200810070302.0にて開示される「数値制御工作機械の隣接する作業ステップ
間の無負荷動作時における機械停止による省エネルギーの実施方法」と題された発明特許は、機械を停止させて再起動し、機械の製造過程における工作機械の無負荷動作中の時間とエネルギー消費を減少させることにより、省エネルギーを図る数値制御工作機械の無負荷動作時における機械停止による省エネルギー方法を開示する。CN202011128991.3にて開示される「数値制御工作機械の主軸動作停止による省エネルギーの臨界時間決定及び省エネルギー方法」と題された発明特許は、数値制御工作機械の無負荷動作時における主軸動作停止による省エネルギー方法」を提供し、主軸初期回転数と目標回転数に基づいて、主軸動作停止による省エネルギーの臨界時間と省エネルギー効果を算出することができる。
【0004】
上記数値制御工作機械の無負荷動作過程の省エネルギー方法は、工作機械停止による省エネルギーか、又は主軸動作停止による省エネルギーかが、いずれも省エネルギー効果を達成することができるが、実際の現場作業において、工作機械の頻繁な起動停止は、工作機械の主駆動システム及び工作機械モータに一定の衝撃を与え、ひいては工作機械の耐用年数に影響を及ぼす。工作機械の耐用年数を犠牲にした省エネルギー効果は、得より損の方が大きい。したがって、数値制御工作機械の無負荷動作過程におけるエネルギー浪費の問題に対して、効果的な省エネルギー解決策が現在のところ存在しない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記技術的問題を解決するために、数値制御工作機械の無負荷動作時における主軸回転数を低下させて、工作機械の無負荷過程におけるエネルギー消費を減少させることにより、工作機械のエネルギー利用率を向上させ、さらに工作機械の頻繁な起動停止による主駆動システム及びモータに与える損失を回避する、数値制御工作機械の隣接する切削活動間の無負荷過程における主軸減速による省エネルギー方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明にて提供される数値制御工作機械の隣接する切削活動間の無負荷過程における主軸減速による省エネルギー方法は、
隣接する切削活動間の主軸状態回転数及び無負荷間隔時間を収集するステップと、
数値制御工作機械の各運動状態におけるエネルギー消費を取得するステップと、
前記主軸状態回転数及び前記数値制御工作機械の各運動状態におけるエネルギー消費に基づいて、工作機械の無負荷運動過程におけるエネルギー消費及び主軸減速手段の実施時におけるエネルギー消費を取得するステップと、
省エネルギー前提条件を予め設定し、前記工作機械の無負荷運動過程におけるエネルギー消費、主軸減速手段の実施時におけるエネルギー消費及び前記無負荷間隔時間が前記省エネルギー前提条件を満たすと、主軸減速による省エネルギーの臨界時間を求め、前記無負荷間隔時間が前記主軸減速による省エネルギーの臨界時間よりも大きい場合、無負荷間隔で主軸減速を行うステップと、を含む。
【0007】
さらに、前記主軸状態回転数は、主軸初期回転数と、主軸目標回転数と、主軸減速後の回転数と、を含む。
【0008】
さらに、前記数値制御工作機械の各運動状態におけるエネルギー消費は、工作機械の基本モジュールによるエネルギー消費と、工作機械の主軸の定速回転運動によるエネルギー消費と、工作機械の主軸加速運動におけるエネルギー消費と、を含み、
前記工作機械の基本モジュールによるエネルギー消費は、以下の式に示され、
【0009】
【数1】
【0010】
そのうち、Estandbyは、工作機械の基本モジュールによるエネルギー消費であり、Pstandbyは、工作機械の基本モジュールの動作を維持するときの電力であり、Pstandby_i実験装置の第i番目に収集した工作機械の基本モジュールの電力値であり、Nは、データ収集の回数であり、Ttandbyは、工作機械の基本モジュールの動作を維持する時間であり、
前記工作機械の主軸の定速回転運動によるエネルギー消費は、以下の式に示され、
【0011】
【数2】
【0012】
そのうち、Espindle軸の定速回転運動によるエネルギー消費であり、Ppindleは、工作機械の主軸の定速回転運動時の電力であり、nは、主軸回転数であり、Asp及びBspは、式の係数であり、Tpindleは、主軸の定速回転運動を維持する時間であり、
前記工作機械の主軸加速運動によるエネルギー消費は、以下の式に示され、
【0013】
【数3】
【0014】
そのうち、ESRA機械の主軸加速運動によるエネルギー消費であり、Ts主軸システムが主軸に相当する加速トルクであり、α主軸角加速度であり、n1軸初期回転数であり、n2、主軸目標回転数であり、TSRA1、主軸加速開始から電力ピーク時間帯までの時間であり、TSRA2は、電力ピークから定常電力時間帯までの移行時間である。
【0015】
さらに、工作機械の無負荷運動過程におけるエネルギー消費及び主軸減速手段の実施時におけるエネルギー消費を取得することは、
主軸回転加速過程の時間を取得するステップと、
前記主軸初期回転数、前記主軸目標回転数、前記数値制御工作機械の各運動状態におけるエネルギー消費、及び前記主軸回転加速過程の時間に基づいて、前記工作機械の無負荷運動過程におけるエネルギー消費を取得するステップと、
前記主軸減速後の回転数、前記主軸目標回転数、前記数値制御工作機械の各運動状態におけるエネルギー消費及び前記主軸回転加速過程の時間に基づいて、前記主軸減速手段の実施時におけるエネルギー消費を取得するステップと、を含む。
【0016】
さらに、前記主軸加速開始から電力ピーク時間帯までの時間、及び前記電力ピークから定常電力時間帯までの移行時間に基づいて、前記主軸回転加速過程の時間を求める。
【0017】
さらに、前記工作機械の無負荷運動過程におけるエネルギー消費は、以下の式に示され、
【0018】
【数4】
【0019】
そのうち、Eno_loadは、工作機械の無負荷運動過程におけるエネルギー消費であり、TOは、無負荷間隔時間である。
【0020】
さらに、前記主軸減速手段の実施時におけるエネルギー消費は、以下の式に示され、
【0021】
【数5】
【0022】
そのうち、Edecelerationは、主軸減速手段の実施時におけるエネルギー消費であり、nは、主軸減速後の回転数である。
【0023】
さらに、前記省エネルギー前提条件は、
前記主軸減速手段の実施時におけるエネルギー消費は、前記工作機械の無負荷運動過程におけるエネルギー消費よりも小さく、前記主軸回転加速過程の時間は、前記無負荷間隔時間よりも小さいことである。
【0024】
さらに、前記主軸減速による省エネルギーの臨界時間は、工作機械が加工動作状態のまま動作したときのエネルギー需要と、主軸が減速した後に目標回転数まで再加速するときのエネルギー需要とが等しくなるときに要する時間である。
【0025】
さらに、無負荷間隔において前記主軸減速を行うための省エネルギー量は、以下の式に示され、
【0026】
【数6】
【0027】
そのうち、Esavingは、省エネルギー量であり、Eno_loadは、工作機械の無負荷運動過程のエネルギー消費であり、Edecelerationは、主軸減速手段の実施時のエネルギー消費である。
【発明の効果】
【0028】
本発明は、従来技術と比較して、以下の利点及び技術的効果を有する。
【0029】
本発明は、数値制御工作機械の無負荷過程におけるエネルギー浪費の問題に着目し、工作機械の無負荷動作中の主軸回転数を低下させて工作機械の無負荷過程のエネルギー消費を減少させることで、工作機械のエネルギー利用率を向上させ、さらに従来の主軸の動作停止による省エネルギー方法が工作機械の主駆動システム及びモータに与える損失を回避する。
【0030】
本発明の方法は、省エネルギー予測算出が正確で、普及して応用しやすいなどの特徴を有し、技術者と管理者が工作機械設備に対してよりよく省エネルギー管理を行うことに役立ち、さらに企業の省エネルギー・排出削減と効果や利益の向上のための理論指導を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
本願の一部を構成する図面は、本願のさらなる理解を提供するためのものであり、本願の例示的な実施例及びその説明は、本願を解釈するためのものであり、本願を不当に限定するものではない。図面において、
図1】本発明の実施例の省エネルギー方法のフローチャートを示す図である。
図2】本発明の実施例の主軸減速を示す図である。
図3】本発明の実施例の省エネルギー効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
なお、本願における実施例及び実施例における特徴は、矛盾しない限り、互いに組み合わせることができる。以下、図面を参照して実施例と結合して本願を詳細に説明する。
【0033】
なお、図面のフローチャートに示されるステップは、コンピュータ実行可能命令のセットなどのコンピュータシステムにおいて実行されてもよく、また、フローチャートには論理的順序が示されるが、場合によっては、示され又は説明されたステップは、本明細書で記載されたものとは異なる順序で実行されてもよい。
【0034】
(実施例)
本実施例にて提供される数値制御工作機械の隣接する切削活動間の無負荷過程における主軸減速による省エネルギー方法は、
隣接する切削活動間の主軸状態回転数及び無負荷間隔時間を収集するステップと、
数値制御工作機械の各運動状態におけるエネルギー消費を取得するステップと、
前記主軸状態回転数及び前記数値制御工作機械の各運動状態におけるエネルギー消費に基づいて、工作機械の無負荷運動過程におけるエネルギー消費及び主軸減速手段の実施時におけるエネルギー消費を取得するステップと、
省エネルギー前提条件を予め設定し、前記工作機械の無負荷運動過程におけるエネルギー消費、主軸減速手段の実施時におけるエネルギー消費及び前記無負荷間隔時間が前記省エネルギー前提条件を満たすと、主軸減速による省エネルギーの臨界時間を求め、前記無負荷間隔時間が前記主軸減速による省エネルギーの臨界時間よりも大きい場合、無負荷間隔で主軸減速を行うステップと、を含む。
【0035】
さらに、前記主軸状態回転数は、主軸初期回転数と、主軸目標回転数と、主軸減速後の回転数と、を含む。
【0036】
さらに、前記数値制御工作機械の各運動状態におけるエネルギー消費は、工作機械の基本モジュールによるエネルギー消費と、工作機械の主軸の定速回転運動によるエネルギー消費と、工作機械の主軸加速運動におけるエネルギー消費と、を含み、
前記工作機械の基本モジュールによるエネルギー消費は、以下の式に示され、
【0037】
【数7】
【0038】
そのうち、Estandbyは、工作機械の基本モジュールによるエネルギー消費であり、Pstandbyは、工作機械の基本モジュールの動作を維持するときの電力であり、Pstandby_iは、実験装置の第i番目に収集した工作機械の基本モジュールの電力値であり、Nは、データ収集の回数であり、Tstandbyは、工作機械の基本モジュールの動作を維持する時間であり、
前記工作機械の主軸の定速回転運動によるエネルギー消費は、以下の式に示され、
【0039】
【数8】
【0040】
そのうち、Espindleは、工作機械の主軸の定速回転運動によるエネルギー消費であり、Pspindleは、工作機械の主軸の定速回転運動時の電力であり、nは、主軸回転数であり、Asp及びBspは、式の係数であり、Tspindleは、主軸の定速回転運動を維持する時間であり、
前記工作機械の主軸加速運動によるエネルギー消費は、以下の式に示され、
【0041】
【数9】
【0042】
そのうち、ESRAは、工作機械の主軸加速運動によるエネルギー消費であり、Tsは、主軸システムが主軸に相当する加速トルクであり、αは、主軸角加速度であり、n1は、主軸初期回転数であり、n2は、主軸目標回転数であり、TSRA1は、主軸加速開始から電力ピーク時間帯までの時間であり、TSRA2は、電力ピークから定常電力時間帯までの移行時間である。
【0043】
さらに、工作機械の無負荷運動過程におけるエネルギー消費及び主軸減速手段の実施時におけるエネルギー消費を取得することは、
主軸回転加速過程の時間を取得するステップと、
前記主軸初期回転数、前記主軸目標回転数、前記数値制御工作機械の各運動状態におけるエネルギー消費、及び前記主軸回転加速過程の時間に基づいて、前記工作機械の無負荷運動過程におけるエネルギー消費を取得するステップと、
前記主軸減速後の回転数、前記主軸目標回転数、前記数値制御工作機械の各運動状態におけるエネルギー消費及び前記主軸回転加速過程の時間に基づいて、前記主軸減速手段の実施時におけるエネルギー消費を取得するステップと、を含む。
【0044】
さらに、前記主軸加速開始から電力ピーク時間帯までの時間、及び前記電力ピークから定常電力時間帯までの移行時間に基づいて、前記主軸回転加速過程の時間を求める。
【0045】
さらに、前記省エネルギー前提条件は、
前記主軸減速手段の実施時におけるエネルギー消費は、前記工作機械の無負荷運動過程におけるエネルギー消費よりも小さく、前記主軸回転加速過程の時間は、前記無負荷間隔時間よりも小さいことである。
【0046】
さらに、前記主軸減速による省エネルギーの臨界時間は、工作機械が加工動作状態のまま動作したときのエネルギー需要と、主軸が減速した後に目標回転数まで再加速するときのエネルギー需要とが等しくなるときに要する時間である。
【0047】
さらに、無負荷間隔において前記主軸減速を行うための省エネルギー量は、以下の式に示され、
【0048】
【数10】
【0049】
そのうち、Esavingは、省エネルギー量であり、Eno_loadは、工作機械の無負荷運動過程のエネルギー消費であり、Edecelerationは、主軸減速手段の実施時におけるエネルギー消費である。
【0050】
本発明にて提供される数値制御工作機械の隣接する切削活動間の無負荷過程における主軸減速による省エネルギー方法は、隣接する切削活動間の主軸状態の回転数及び無負荷間隔時間を収集するステップと、数値制御工作機械の各運動状態におけるエネルギー消費を取得するステップと、主軸状態回転数及び数値制御工作機械の各運動状態におけるエネルギー消費に基づいて、工作機械の無負荷運動過程におけるエネルギー消費及び主軸減速手段の実施時におけるエネルギー消費を取得するステップと、省エネルギー前提条件を予め設定し、工作機械の無負荷運動過程におけるエネルギー消費、主軸減速手段の実施時におけるエネルギー消費及び無負荷間隔時間が省エネルギー前提条件を満たすと、主軸減速による省エネルギーの臨界時間を求め、無負荷間隔時間が主軸減速による省エネルギーの臨界時間よりも大きい場合、無負荷間隔で主軸減速を行うステップと、を含むことを特徴とする。フローチャートを図1に示す。
【0051】
以下、上記主軸減速による省エネルギー方法を、一台の型番がCK6153iである数値制御工作機械を例にして詳細に説明するが、具体的なプロセスは、以下のとおりである。
1.数値制御工作機械の各運転状態におけるエネルギー消費を取得する
(1)工作機械の基本モジュール(ファン、照明装置、ディスプレイ、コントロールパネルなど)のエネルギー消費の式
数値制御工作機械の電源投入後、数値制御工作機械の基本モジュールの動作電力値を基本的に一定に維持し、したがって、数値制御工作機械の基礎エネルギー需要を、N個の実測電力値の平均値を用いて算出することができ、さらに、電力収集実験装置により収集された実験データ(表1の工作機械の基礎モジュールの動作電力の測定値)から、CK6153i数値制御工作機械の基礎モジュールのエネルギー消費を求め、
【0052】
【数11】
【0053】
式中、Pstandbyは、工作機械の基本モジュールの動作を維持するときの電力であり、単位がWであり、Pstandby_iは、実験装置の第i番目に収集した工作機械の基本モジュールの電力値であり、単位がWであり、Nは、データ収集の回数であり、Tstandbyは、工作機械の基本モジュールの動作を維持するための時間であり、単位がsであり、数値制御プログラムにより求められ、
【0054】
【表1】
【0055】
(2)工作機械の主軸の定速回転運動によるエネルギー消費
主軸回転電力は、数値制御工作機械の基本モジュールの動作を維持する電力を差し引いて、異なる回転数でのCK6153i数値制御工作機械の主軸回転総電力を収集することにより求めることができ、実験データ(表2の異なる回転数での主軸回転電力測定値)から、結果をフィッティングしてAsp=41.12、Bsp=1.09を求め、したがって、さらに主軸定速回転運動エネルギー消費を求め、
【0056】
【数12】
【0057】
式中、Pspindleは、工作機械の主軸の定速回転運動時の電力であり、単位がWであり、nは、主軸回転数であり、単位がr/minであり、Asp及びBspは、式の係数であり、実験データ線形フィッティングにより求められ、Tspindleは、主軸の定速回転運動を維持する時間であり、単位がsであり、数値制御プログラムにより求められ、
【0058】
【表2】
【0059】
(3)工作機械の主軸加速運動によるエネルギー消費の式
CK6153i数値制御工作機械は、4本の動力伝達チェーンに対応して、高速側から低速側へ順にAH、BH、AL及びBLの4段の変速段があり、AH段の加工範囲が最も広く、通常使用されるものであり、本実施例では、AH段を例にして主軸加速実験を行った。主軸起動実験に基づいて統計解析手法と結合してAH段の伝達チェーンの係数Ts=28.42N/m、α=39.78rad/s2を求めた。したがって、主軸回転加速過程の時間は、以下の式に示され、
【0060】
【数13】
【0061】
そのうち、TSRAは、主軸回転加速過程の時間であり、単位がsであり、TSRA1は、主軸加速開始から電力ピーク時間帯までの時間であり、単位がsであり、TSRA2は、電力ピークから定常電力時間帯までの移行時間であり、単位がsである。
【0062】
同様に、さらに、工作機械の主軸加速運動によるエネルギー消費式が求められ、
【0063】
【数14】
【0064】
式(1)、式(2)、式(3)及び式(4)、及び数値制御工作機械の主軸初期回転数n1、主軸目標回転数n1から、任意の回転数における工作機械の無負荷運動過程のエネルギー消費を算出することができ、本実施例では、主軸初期回転数が目標回転数よりも小さい場合を例にし、その無負荷過程のエネルギー消費Eno_loadの表現式は、以下の式に示され、
【0065】
【数15】
【0066】
同様に、式(1)、式(2)、式(3)及び式(4)、及び数値制御工作機械の主軸減速後の回転数n1、主軸目標回転数n1から、主軸減速手段の実施時におけるエネルギー消費Edecelerationを算出することができ、その表現式は、以下の式に示され、
【0067】
【数16】
【0068】
式(5)及び式(6)から、さらに、数値制御工作機械の隣接する切削活動間の無負荷過程における主軸減速手段の実施による省エネルギー臨界時間Tsavingを算出し、その表現式は、以下の式に示され、
【0069】
【数17】
【0070】
同様に、さらに、式(5)及び式(6)から、数値制御工作機械の隣接する切削活動間の無負荷過程における主軸減速手段の実施による省エネルギー効果Esavingを算出し、その表現式は、以下の式に示され、
【0071】
【数18】
【0072】
また、上記式は、所与の工作機械の型番に、常に一定の値をとり、かつ、常に利用可能である。
【0073】
2.工作機械の主軸減速による省エネルギーの意思決定
上記CK6153i数値制御工作機械で部品を加工する場合、加工プロセスの要求により、500r/minの回転数で端面を削る必要があり、1000r/minの回転数で外周を削る必要がある。当該隣接する切削活動間には、逃げ、切込みなどの無負荷運動段階があり、合計の長さは、10秒、即ちTo=10sである。具体的な意思決定ステップは、以下のとおりである。
【0074】
(1)n1=500r/min、n2=1000r/minを式(5)に代入して、当該隣接する切削活動間の工作機械の無負荷過程におけるエネルギー消費Eno_loadが12185.79Jであることを算出し、
(2)減速後の主軸回転数ni=200r/minを仮定して、式(6)に代入して、当該隣接する切削活動間の主軸減速手段の実施時におけるエネルギー消費Edecelerationが10359.14Jであることを算出し、
(3)減速後の主軸回転数ni=200r/min、目標回転数n2=1000r/minを式(3)に代入し、主軸が減速した後に目標回転数まで再加速するときに要する時間TSRAが1.50sであることを算出し、
(4)Eno_load > EdecelerationかつTo > TSRAであれば、この状況で工作機械の主軸減速手段の実施により省エネルギー効果を達成可能な前提条件を満たすことを示し、本実施例では、Eno_load = 12185.79J> Edeceleration = 10359.14JかつTo = 10S > TSRA = 1.50s、即ち、前提条件が満たされ、
(5) n1=500r/min、n2=1000r/min及びni=200r/minを式(7)に代入し、当該隣接する切削活動間の主軸減速手段の実施時における省エネルギー臨界時間Tsavingが4.41sであることを算出し、図2に示すように、隣接する2回の切削活動間の無負荷間隔時間が4.41sよりも大きければ、主軸減速手段は、省エネルギーの目的のために、無負荷間隔で実行され得ることを示し、そのうち、本実施例では、To = 10Sであり、
(6)図3に示すように、n1=500r/min、n2=1000r/min、ni=200r/min及びTo = 10Sを式(8)に代入し、当該隣接する切削活動間の無負荷過程における主軸減速手段の実施時における省エネルギー効果Esavingが1826.65Jであることを算出した。
【0075】
以上、本願の好ましい具体的な実施形態だけであるが、本願の保護範囲は、これに限定されるものではなく、当業者であれば、本願に開示された技術的範囲内で、容易に想到できる変更又は置換は、いずれも本願の保護範囲内に含まれるべきである。したがって、本願の保護範囲は、特許請求の範囲の保護範囲を基準とすべきである。
図1
図2
図3