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特許7575824哺乳動物の歯に含まれるコラーゲンの所定の定量値を用いる方法
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  • 特許-哺乳動物の歯に含まれるコラーゲンの所定の定量値を用いる方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-22
(45)【発行日】2024-10-30
(54)【発明の名称】哺乳動物の歯に含まれるコラーゲンの所定の定量値を用いる方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/68 20060101AFI20241023BHJP
【FI】
G01N33/68
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023213847
(22)【出願日】2023-12-19
【審査請求日】2024-07-18
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520028302
【氏名又は名称】株式会社DeVine
(74)【代理人】
【識別番号】100145126
【弁理士】
【氏名又は名称】金丸 清隆
(72)【発明者】
【氏名】大久保 直登
(72)【発明者】
【氏名】細野 秀崇
【審査官】海野 佳子
(56)【参考文献】
【文献】特表平09-509486(JP,A)
【文献】特開平10-045800(JP,A)
【文献】特開平07-020126(JP,A)
【文献】三浦治郎 ,歯における老化と糖化 ―老化に関連する創薬の可能性― ,歯科薬物療法,2021年12月01日,Vol.40,No.3 ,Page.59-64
【文献】荒川翔太郎 ほか,質量分析法が拓く骨粗鬆症診療の新潮流,日本臨床検査医学会誌,2023年03月25日,Vol.71,No.3 ,Page.139-143
【文献】TSUCHIKURA Osamu et al.,Changes in pyridinoline content of collagen during the development of the bovine tooth. ,歯科基礎医学会雑誌,1982年03月,Vol.24,No.1 ,Page.222-223
【文献】斎藤充 ,新しい骨質マーカーとしてのペントシジンおよびホモシステイン測定の有用性,臨床病理,2009年09月25日,Vol.57, No.9,Page.876-883
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48-33/98
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物における疾患の潜在的罹患リスク及び/または哺乳動物が潜在的に健康であるか否かを評価するための指標として、哺乳動物の歯に含まれるコラーゲンの含有ピリジノリン量の定量値を用いる方法であって、
疾患の潜在的罹患リスク及び/または哺乳動物が潜在的に健康であるか否かの評価の対象となる哺乳動物の、歯に含まれるコラーゲンの含有ピリジノリン量(ng/mg)を定量して、定量値であるPYDを得る工程と、
疾患に罹患していない哺乳動物、疾患に罹患している哺乳動物、健康である哺乳動物及び健康でない哺乳動物から選択される1または2以上の哺乳動物の、歯に含まれるコラーゲンの含有ピリジノリン量(ng/mg)を定量して、リファレンス定量値であるR-PYDを得る工程と、
前記PYD及び前記R-PYDを比較する工程と
を含む方法。
【請求項2】
哺乳動物における疾患の潜在的罹患リスク及び/または哺乳動物が潜在的に健康であるか否かを評価するための指標として、哺乳動物の歯に含まれるコラーゲンの含有ペントシジン量の定量値を用いる方法であって、
疾患の潜在的罹患リスク及び/または哺乳動物が潜在的に健康であるか否かの評価の対象となる哺乳動物の、歯に含まれるコラーゲンの含有ペントシジン量(ng/mg)を定量して、定量値であるPENを得る工程と、
疾患に罹患していない哺乳動物、疾患に罹患している哺乳動物、健康である哺乳動物及び健康でない哺乳動物から選択される1または2以上の哺乳動物の、歯に含まれるコラーゲンの含有ペントシジン量(ng/mg)を定量して、リファレンス定量値であるR-PENを得る工程と、
前記PEN及び前記R-PENを比較する工程と
を含む方法。
【請求項3】
哺乳動物における疾患の潜在的罹患リスク及び/または哺乳動物が潜在的に健康であるか否かを評価するための指標として、哺乳動物の歯に含まれるコラーゲンの含有総糖化産物量の定量値を用いる方法であって、
疾患の潜在的罹患リスク及び/または哺乳動物が潜在的に健康であるか否かの評価の対象となる哺乳動物の、歯に含まれるコラーゲンの含有総糖化産物量(ng/mg:含有ペントシジン量換算)を定量して、定量値であるT-GLYCを得る工程と、
疾患に罹患していない哺乳動物、疾患に罹患している哺乳動物、健康である哺乳動物及び健康でない哺乳動物から選択される1または2以上の哺乳動物の、歯に含まれるコラーゲンの含有総糖化産物量(ng/mg:含有ペントシジン量換算)を定量して、リファレンス定量値であるR-T-GLYCを得る工程と、
前記T-GLYC及び前記R-T-GLYCを比較する工程と
を含む方法。
【請求項4】
哺乳動物における疾患の潜在的罹患リスク及び/または哺乳動物が潜在的に健康であるか否かを評価するための指標として、哺乳動物の歯に含まれるコラーゲンの含有ピリジノリン量の定量値及び含有ペントシジン量の定量値から算出される重量比の値を用いる方法であって、
疾患の潜在的罹患リスク及び/または哺乳動物が潜在的に健康であるか否かの評価の対象となる哺乳動物の、歯に含まれるコラーゲンの含有ピリジノリン量(ng/mg)を定量して定量値であるPYDを得る工程と、
前記評価の対象となる哺乳動物の歯に含まれるコラーゲンの含有ペントシジン量(ng/mg)を定量して、定量値であるPENを得る工程と、
前記得られたPYDと前記得られたPENとから、重量比の値であるPpP(含有ピリジノリン量(ng/mg)/含有ペントシジン量(ng/mg))を算出する工程と、
疾患に罹患していない哺乳動物、疾患に罹患している哺乳動物、健康である哺乳動物及び健康でない哺乳動物から選択される1または2以上の哺乳動物の、歯に含まれるコラーゲンの含有ピリジノリン量(ng/mg)を定量して、リファレンス定量値であるR-PYDを得る工程と、
前記1または2以上の哺乳動物の歯に含まれるコラーゲンの含有ペントシジン量(ng/mg)を定量して、リファレンス定量値であるR-PENを得る工程と、
前記得られたR-PYDと、前記得られたR-PENとから、重量比のリファレンス値であるR-PpP(含有ピリジノリン量(ng/mg)/含有ペントシジン量(ng/mg))を算出する工程と、
前記PpP及び前記R-PpPを比較する工程と
を含む方法。
【請求項5】
哺乳動物における疾患の潜在的罹患リスク及び/または哺乳動物が潜在的に健康であるか否かを評価するための指標として、哺乳動物の歯に含まれるコラーゲンの含有ピリジノリン量の定量値及び含有総糖化産物量の定量値から算出される重量比の値を用いる方法であって、
疾患の潜在的罹患リスク及び/または哺乳動物が潜在的に健康であるか否かの評価の対象となる哺乳動物の、歯に含まれるコラーゲンの含有ピリジノリン量(ng/mg)を定量して定量値であるPYDを得る工程と、
前記評価の対象となる哺乳動物の歯に含まれるコラーゲンの含有総糖化産物量(ng/mg:含有ペントシジン量換算)を定量して、定量値であるT-GLYCを得る工程と、
前記得られたPYDと前記得られたT-GLYCとから、重量比の値であるPpG(含有ピリジノリン量(ng/mg)/含有総糖化産物量(ng/mg:含有ペントシジン量換算))を算出する工程と、
疾患に罹患していない哺乳動物、疾患に罹患している哺乳動物、健康である哺乳動物及び健康でない哺乳動物から選択される1または2以上の哺乳動物の、歯に含まれるコラーゲンの含有ピリジノリン量(ng/mg)を定量して、リファレンス定量値であるR-PYDを得る工程と、
前記1または2以上の哺乳動物の歯に含まれるコラーゲンの含有総糖化産物量(ng/mg:含有ペントシジン量換算)を定量して、リファレンス定量値であるR-T-GLYCを得る工程と、
前記得られたR-PYDと、前記得られたR-T-GLYCとから、重量比のリファレンス値であるR-PpG(含有ピリジノリン量(ng/mg)/含有総糖化産物量(ng/mg:含有ペントシジン量換算))を算出する工程と、
前記PpG及び前記R-PpGを比較する工程と
を含む方法。
【請求項6】
定量する工程が、ヘプタフルオロ酪酸とギ酸をイオン対試薬として用いた蛍光検出器付き高速液体クロマトグラフ(HPLC-Flu)を利用して定量する工程である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記哺乳動物が、ヒト、ウシ、ウマ、ブタ、イノシシ、ヒツジ、シカ、イヌ及びネコからなる群から選択される1または2以上の哺乳動物である、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、哺乳動物における疾患の潜在的罹患リスク及び/または哺乳動物が潜在的に健康であるか否かを評価するための指標として、哺乳動物の歯に含まれるコラーゲンの含有ピリジノリン量(ng/mg)の定量値を用いる方法、哺乳動物の歯に含まれるコラーゲンの含有ペントシジン量(ng/mg)の定量値を用いる方法、哺乳動物の歯に含まれるコラーゲンの含有総糖化産物量(ng/mg:含有ペントシジン量換算)の定量値を用いる方法、哺乳動物の歯に含まれるコラーゲンの含有ピリジノリン量(ng/mg)の定量値及び含有ペントシジン量(ng/mg)の定量値から算出される重量比(含有ピリジノリン量(ng/mg)/含有ペントシジン量(ng/mg))の値を用いる方法、ならびに、哺乳動物の歯に含まれるコラーゲンの含有ピリジノリン量(ng/mg)の定量値及び含有総糖化産物量(ng/mg:含有ペントシジン量換算)の定量値から算出される重量比(含有ピリジノリン量(ng/mg)/含有総糖化産物量(ng/mg:含有ペントシジン量換算))の値を用いる方法の、少なくともいずれかの方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、様々なコラーゲン(実際には、「コラーゲン高含有有機組成物」が正確であるが、一般には、単に「コラーゲン」と称されることが多い。)が開発されている。そのほとんどは、生体中の軟組織から、酵素処理法を用いて抽出されることにより製造されたアテロコラーゲンであり、コラーゲンのアミノ酸配列中のN末端とC末端にそれぞれ存在するテロペプチドが切断され、かつ、精製過程により難溶性のコラーゲン線維が排除されたコラーゲンである。また、脱灰凍結乾燥骨(Demineralized Freeze-Dried Bone Allograft;DFDBA)や脱灰象牙質基質(Demineralized Dentin Matrix;DDM)など、骨や歯などの硬組織から抽出されて製造されるコラーゲンも開発されており、脱灰処理によりコラーゲンが製造され、主に生体材料用として用いられている。
【0003】
アテロコラーゲンについては、抗原性を有するといわれているテロペプチドが酵素処理により切断されていることなどを理由として、コラーゲンの品質が評価されており、軟組織由来の非変性コラーゲン(テロペプチドが保持されていることで三重らせん構造を有したコラーゲン)については、pHなどの精製処理の条件設定により、いかに純度の高いコラーゲンを製造したかということで、コラーゲンの品質が評価されている。ところで、硬組織からコラーゲンを製造する場合、脱灰処理すなわち酸処理によりミネラルを排除してコラーゲンを抽出する必要があり、コラーゲンの収量が限られるうえ、抽出に手間が掛かってしまう。それ故、開発されているコラーゲン製品のほぼすべてが、軟組織由来のアテロコラーゲン、非変性コラーゲンまたはそれを利用した製品となっている。
【0004】
生体組織に含まれるコラーゲンのほとんどは、タイプIコラーゲン(I型コラーゲン)である。タイプIコラーゲンには、生理的架橋と非生理的架橋が存在し、生理的架橋分子としてピリジノリン(Pyridinoline)架橋分子が、非生理的架橋分子としてペントシジン(Pentosidine)を代表とする最終糖化産物(AGEs)による架橋分子がそれぞれ知られている(非特許文献1)。ピリジノリン架橋は、リジルオキシダーゼの作用による、生理的・酵素的架橋であり、コラーゲンのアミノ酸配列中の特定の部位における規則的な架橋分子であることから、コラーゲン線維の弾性や強度の向上に寄与している。一方、ペントシジン架橋は、血糖が関与する非生理的・非酵素的架橋(老化架橋(AGEs架橋))であり、血糖が体温によって温められることによって、コラーゲンのアミノ酸配列中に点在するアルギニンとリジン間に形成される架橋分子であることから、コラーゲンのアミノ酸配列中の近接するアルギニンとリジンにおいてランダムに形成される架橋分子であり、コラーゲンの生理的な立体構造を乱れさせる要因となって、コラーゲン線維の弾性や強度の低下に寄与している。なお、アテロコラーゲンは、上述の通り、酵素処理によってテロペプチドが切断されていることから、ピリジノリン架橋分子をほとんど含まないばかりか、精製過程によりペントシジン架橋に起因する難溶性のコラーゲン線維が排除されるため、ペントシジン架橋分子もほとんど含まないコラーゲンである。
【0005】
従来、コラーゲン中のピリジノリン架橋分子が増加することにより、そのコラーゲンの強度や弾性が増すことが知られている他(非特許文献2)、ペントシジン架橋が病的架橋(老化架橋(AGEs架橋))であることが知られている(非特許文献3)。また、ヒト関節軟骨の単位コラーゲン当たりのペントシジンの量が、年齢とともに直線的に増加するとともに、当該単位コラーゲン当たりのペントシジン量とピリジノリン量の比率(含有ペントシジン量/含有ピリジノリン量)の増加が、年齢とともに加速するとの報告があり(非特許文献4及び5)、大動脈のジストロフィー性石灰化の非石灰化病変において、当該単位コラーゲン当たりの含有ペントシジン量と含有ピリジノリン量の比率(含有ペントシジン量/含有ピリジノリン量)が有意に増加するとの報告がある(非特許文献6)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】M.Saito,CLINICIAN Vol.554,1141-1146,2006
【文献】M.Saito,THE BONE Vol.21,No.1,53-58,2007
【文献】Sell,D.R.et al.,V.M.,J.Biol.Chem.Vol.284,21597-21602,1989
【文献】A.Uchiyama et al.,J.Biochem.Vol.110,714-718,1991
【文献】M.TAKAHASHI et al.,Arthritis Rheum.Vol.37,No.5,724-728,May 1994.
【文献】H.HOSHINO et al.,Atherosclerosis Vol.112,39-46,1995
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したコラーゲン(コラーゲン高含有有機組成物)の品質についての評価は、概ね、コラーゲン高含有有機組成物におけるコラーゲンの純度の高低や素性でもって評価されているのであり、何らかのコラーゲンの分子レベルの指標、すなわち何らかのコラーゲンのアミノ酸配列レベルの指標に基づいて評価されているものではないため、コラーゲン自体の品質について正しく評価されているとは言い難いうえに、コラーゲン線維の弾性や強度の向上といった、コラーゲンの品質の向上に寄与する含有ピリジノリン量、コラーゲンの生理的な立体構造を乱れさせる要因となって、コラーゲン線維の弾性や強度の低下を引き起こし、ひいてはコラーゲンの品質の低下に寄与する含有ペントシジン量及び含有総糖化産物量、含有ピリジノリン量及び含有ペントシジン量の重量比、ならびに、含有ピリジノリン量及び含有総糖化産物量の重量比に基づいて、コラーゲンの品質の評価がなされていなかった。
【0008】
また、上述した非特許文献1~6においては、確かにコラーゲン中のピリジノリン架橋分子やペントシジン架橋分子について様々な言及がされている他、疾患における単位コラーゲン当たりの含有ペントシジン量と含有ピリジノリン量の比率(含有ペントシジン量/含有ピリジノリン量)が考察されているが、いずれの文献も、特にコラーゲンの抽出が容易でない歯由来のコラーゲンについてではない。また、骨や軟骨といった硬組織や腱、靱帯といった軟組織のような生理的に強度を必要とする組織では、含有コラーゲンに含まれるピリジノリン架橋分子の量と、それに伴いペントシジン架橋分子または総糖化産物の架橋分子の量が多量となる傾向にある(M.TAKAHASHI et al.,Anal Biochem Vol.232,158-62,1995)が、それらの組織は代謝を受ける組織であるため、そこに含まれるピリジノリン架橋分子やペントシジン架橋分子、総糖化産物の架橋分子も代謝されるため、哺乳動物である宿主にこれまでに蓄積されたピリジノリン架橋分子やペントシジン架橋分子、総糖化産物の架橋分子の総蓄積量を反映するわけではない。これに対して、硬組織である歯は、硬組織の中でも、唯一、代謝サイクルに組み込まれていない組織であるがゆえに、その含有コラーゲン中に含まれるピリジノリン架橋分子やペントシジン架橋分子、総糖化産物の架橋分子は代謝されないため、哺乳動物である宿主にこれまでに蓄積されたピリジノリン架橋分子やペントシジン架橋分子、総糖化産物の架橋分子の総蓄積量が反映されることになる。従って、哺乳動物における疾患の潜在的罹患リスクや哺乳動物が潜在的に健康であるか否かを正確に評価するためには、哺乳動物である宿主にこれまでに蓄積されたピリジノリン架橋分子やペントシジン架橋分子、総糖化産物の架橋分子の総蓄積が反映されている歯由来のコラーゲン(コラーゲン高含有有機組成物)を指標とすべきことは明らかであるが、上述した非特許文献1~6においては、そのような記載はおろか、示唆すらない。
【0009】
本発明は、哺乳動物における疾患の潜在的罹患リスク及び/または哺乳動物が潜在的に健康であるか否かを評価するための指標として、哺乳動物の歯に含まれるコラーゲンの含有ピリジノリン量の定量値を用いる方法であって、疾患の潜在的罹患リスク及び/または哺乳動物が潜在的に健康であるか否かの評価の対象となる哺乳動物の、歯に含まれるコラーゲンの含有ピリジノリン量(ng/mg)を定量して、定量値であるPYDを得る工程と、疾患に罹患していない哺乳動物、疾患に罹患している哺乳動物、健康である哺乳動物及び健康でない哺乳動物から選択される1または2以上の哺乳動物の、歯に含まれるコラーゲンの含有ピリジノリン量(ng/mg)を定量して、リファレンス定量値であるR-PYDを得る工程と、前記PYD及び前記R-PYDを比較する工程とを含む方法、哺乳動物における疾患の潜在的罹患リスク及び/または哺乳動物が潜在的に健康であるか否かを評価するための指標として、哺乳動物の歯に含まれるコラーゲンの含有ペントシジン量の定量値を用いる方法であって、疾患の潜在的罹患リスク及び/または哺乳動物が潜在的に健康であるか否かの評価の対象となる哺乳動物の、歯に含まれるコラーゲンの含有ペントシジン量(ng/mg)を定量して、定量値であるPENを得る工程と、疾患に罹患していない哺乳動物、疾患に罹患している哺乳動物、健康である哺乳動物及び健康でない哺乳動物から選択される1または2以上の哺乳動物の、歯に含まれるコラーゲンの含有ペントシジン量(ng/mg)を定量して、リファレンス定量値であるR-PENを得る工程と、前記PEN及び前記R-PENを比較する工程とを含む方法、哺乳動物における疾患の潜在的罹患リスク及び/または哺乳動物が潜在的に健康であるか否かを評価するための指標として、哺乳動物の歯に含まれるコラーゲンの含有総糖化産物量の定量値を用いる方法であって、疾患の潜在的罹患リスク及び/または哺乳動物が潜在的に健康であるか否かの評価の対象となる哺乳動物の、歯に含まれるコラーゲンの含有総糖化産物量(ng/mg:含有ペントシジン量換算)を定量して、定量値であるT-GLYCを得る工程と、疾患に罹患していない哺乳動物、疾患に罹患している哺乳動物、健康である哺乳動物及び健康でない哺乳動物から選択される1または2以上の哺乳動物の、歯に含まれるコラーゲンの含有総糖化産物量(ng/mg:含有ペントシジン量換算)を定量して、リファレンス定量値であるR-T-GLYCを得る工程と、前記T-GLYC及び前記R-T-GLYCを比較する工程とを含む方法、哺乳動物における疾患の潜在的罹患リスク及び/または哺乳動物が潜在的に健康であるか否かを評価するための指標として、哺乳動物の歯に含まれるコラーゲンの含有ピリジノリン量の定量値及び含有ペントシジン量の定量値から算出される重量比の値を用いる方法であって、疾患の潜在的罹患リスク及び/または哺乳動物が潜在的に健康であるか否かの評価の対象となる哺乳動物の、歯に含まれるコラーゲンの含有ピリジノリン量(ng/mg)を定量して定量値であるPYDを得る工程と、前記評価の対象となる哺乳動物の歯に含まれるコラーゲンの含有ペントシジン量(ng/mg)を定量して、定量値であるPENを得る工程と、前記得られたPYDと前記得られたPENとから、重量比の値であるPpP(含有ピリジノリン量(ng/mg)/含有ペントシジン量(ng/mg))を算出する工程と、疾患に罹患していない哺乳動物、疾患に罹患している哺乳動物、健康である哺乳動物及び健康でない哺乳動物から選択される1または2以上の哺乳動物の、歯に含まれるコラーゲンの含有ピリジノリン量(ng/mg)を定量して、リファレンス定量値であるR-PYDを得る工程と、前記1または2以上の哺乳動物の歯に含まれるコラーゲンの含有ペントシジン量(ng/mg)を定量して、リファレンス定量値であるR-PENを得る工程と、前記得られたR-PYDと、前記得られたR-PENとから、重量比のリファレンス値であるR-PpP(含有ピリジノリン量(ng/mg)/含有ペントシジン量(ng/mg))を算出する工程と、前記PpP及び前記R-PpPを比較する工程とを含む方法、ならびに、哺乳動物における疾患の潜在的罹患リスク及び/または哺乳動物が潜在的に健康であるか否かを評価するための指標として、哺乳動物の歯に含まれるコラーゲンの含有ピリジノリン量の定量値及び含有総糖化産物量の定量値から算出される重量比の値を用いる方法であって、疾患の潜在的罹患リスク及び/または哺乳動物が潜在的に健康であるか否かの評価の対象となる哺乳動物の、歯に含まれるコラーゲンの含有ピリジノリン量(ng/mg)を定量して定量値であるPYDを得る工程と、前記評価の対象となる哺乳動物の歯に含まれるコラーゲンの含有総糖化産物量(ng/mg:含有ペントシジン量換算)を定量して、定量値であるT-GLYCを得る工程と、前記得られたPYDと前記得られたT-GLYCとから、重量比の値であるPpG(含有ピリジノリン量(ng/mg)/含有総糖化産物量(ng/mg:含有ペントシジン量換算))を算出する工程と、疾患に罹患していない哺乳動物、疾患に罹患している哺乳動物、健康である哺乳動物及び健康でない哺乳動物から選択される1または2以上の哺乳動物の、歯に含まれるコラーゲンの含有ピリジノリン量(ng/mg)を定量して、リファレンス定量値であるR-PYDを得る工程と、前記1または2以上の哺乳動物の歯に含まれるコラーゲンの含有総糖化産物量(ng/mg:含有ペントシジン量換算)を定量して、リファレンス定量値であるR-T-GLYCを得る工程と、前記得られたR-PYDと、前記得られたR-T-GLYCとから、重量比のリファレンス値であるR-PpG(含有ピリジノリン量(ng/mg)/含有総糖化産物量(ng/mg:含有ペントシジン量換算))を算出する工程と、前記PpG及び前記R-PpGを比較する工程とを含む方法の、少なくともいずれかの方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、疾患の潜在的罹患リスク及び/または哺乳動物が潜在的に健康であるか否かの評価の対象となる哺乳動物の歯に含まれるコラーゲンと、疾患に罹患していない哺乳動物、疾患に罹患している哺乳動物、健康である哺乳動物及び健康でない哺乳動物から選択される1または2以上の哺乳動物の歯に含まれるコラーゲンの、それぞれについての上述したPYD、PEN、T-GLYC、PpP及びPpGの少なくともいずれかの値と、それぞれのリファレンス値とを比較することにより、哺乳動物における疾患の潜在的罹患リスク及び/または哺乳動物が潜在的に健康であるか否かを評価することができることを見出し、下記の各発明を完成した。
【0011】
(1)哺乳動物における疾患の潜在的罹患リスク及び/または哺乳動物が潜在的に健康であるか否かを評価するための指標として、哺乳動物の歯に含まれるコラーゲンの含有ピリジノリン量の定量値を用いる方法であって、疾患の潜在的罹患リスク及び/または哺乳動物が潜在的に健康であるか否かの評価の対象となる哺乳動物の、歯に含まれるコラーゲンの含有ピリジノリン量(ng/mg)を定量して、定量値であるPYDを得る工程と、疾患に罹患していない哺乳動物、疾患に罹患している哺乳動物、健康である哺乳動物及び健康でない哺乳動物から選択される1または2以上の哺乳動物の、歯に含まれるコラーゲンの含有ピリジノリン量(ng/mg)を定量して、リファレンス定量値であるR-PYDを得る工程と、前記PYD及び前記R-PYDを比較する工程とを含む方法。
【0012】
(2)哺乳動物における疾患の潜在的罹患リスク及び/または哺乳動物が潜在的に健康であるか否かを評価するための指標として、哺乳動物の歯に含まれるコラーゲンの含有ペントシジン量の定量値を用いる方法であって、疾患の潜在的罹患リスク及び/または哺乳動物が潜在的に健康であるか否かの評価の対象となる哺乳動物の、歯に含まれるコラーゲンの含有ペントシジン量(ng/mg)を定量して、定量値であるPENを得る工程と、疾患に罹患していない哺乳動物、疾患に罹患している哺乳動物、健康である哺乳動物及び健康でない哺乳動物から選択される1または2以上の哺乳動物の、歯に含まれるコラーゲンの含有ペントシジン量(ng/mg)を定量して、リファレンス定量値であるR-PENを得る工程と、前記PEN及び前記R-PENを比較する工程とを含む方法。
【0013】
(3)哺乳動物における疾患の潜在的罹患リスク及び/または哺乳動物が潜在的に健康であるか否かを評価するための指標として、哺乳動物の歯に含まれるコラーゲンの含有総糖化産物量の定量値を用いる方法であって、疾患の潜在的罹患リスク及び/または哺乳動物が潜在的に健康であるか否かの評価の対象となる哺乳動物の、歯に含まれるコラーゲンの含有総糖化産物量(ng/mg:含有ペントシジン量換算)を定量して、定量値であるT-GLYCを得る工程と、疾患に罹患していない哺乳動物、疾患に罹患している哺乳動物、健康である哺乳動物及び健康でない哺乳動物から選択される1または2以上の哺乳動物の、歯に含まれるコラーゲンの含有総糖化産物量(ng/mg:含有ペントシジン量換算)を定量して、リファレンス定量値であるR-T-GLYCを得る工程と、前記T-GLYC及び前記R-T-GLYCを比較する工程とを含む方法。
【0014】
(4)哺乳動物における疾患の潜在的罹患リスク及び/または哺乳動物が潜在的に健康であるか否かを評価するための指標として、哺乳動物の歯に含まれるコラーゲンの含有ピリジノリン量の定量値及び含有ペントシジン量の定量値から算出される重量比の値を用いる方法であって、疾患の潜在的罹患リスク及び/または哺乳動物が潜在的に健康であるか否かの評価の対象となる哺乳動物の、歯に含まれるコラーゲンの含有ピリジノリン量(ng/mg)を定量して定量値であるPYDを得る工程と、前記評価の対象となる哺乳動物の歯に含まれるコラーゲンの含有ペントシジン量(ng/mg)を定量して、定量値であるPENを得る工程と、前記得られたPYDと前記得られたPENとから、重量比の値であるPpP(含有ピリジノリン量(ng/mg)/含有ペントシジン量(ng/mg))を算出する工程と、疾患に罹患していない哺乳動物、疾患に罹患している哺乳動物、健康である哺乳動物及び健康でない哺乳動物から選択される1または2以上の哺乳動物の、歯に含まれるコラーゲンの含有ピリジノリン量(ng/mg)を定量して、リファレンス定量値であるR-PYDを得る工程と、前記1または2以上の哺乳動物の歯に含まれるコラーゲンの含有ペントシジン量(ng/mg)を定量して、リファレンス定量値であるR-PENを得る工程と、前記得られたR-PYDと、前記得られたR-PENとから、重量比のリファレンス値であるR-PpP(含有ピリジノリン量(ng/mg)/含有ペントシジン量(ng/mg))を算出する工程と、前記PpP及び前記R-PpPを比較する工程とを含む方法。
【0015】
(5)哺乳動物における疾患の潜在的罹患リスク及び/または哺乳動物が潜在的に健康であるか否かを評価するための指標として、哺乳動物の歯に含まれるコラーゲンの含有ピリジノリン量の定量値及び含有総糖化産物量の定量値から算出される重量比の値を用いる方法であって、疾患の潜在的罹患リスク及び/または哺乳動物が潜在的に健康であるか否かの評価の対象となる哺乳動物の、歯に含まれるコラーゲンの含有ピリジノリン量(ng/mg)を定量して定量値であるPYDを得る工程と、前記評価の対象となる哺乳動物の歯に含まれるコラーゲンの含有総糖化産物量(ng/mg:含有ペントシジン量換算)を定量して、定量値であるT-GLYCを得る工程と、前記得られたPYDと前記得られたT-GLYCとから、重量比の値であるPpG(含有ピリジノリン量(ng/mg)/含有総糖化産物量(ng/mg:含有ペントシジン量換算))を算出する工程と、疾患に罹患していない哺乳動物、疾患に罹患している哺乳動物、健康である哺乳動物及び健康でない哺乳動物から選択される1または2以上の哺乳動物の、歯に含まれるコラーゲンの含有ピリジノリン量(ng/mg)を定量して、リファレンス定量値であるR-PYDを得る工程と、前記1または2以上の哺乳動物の歯に含まれるコラーゲンの含有総糖化産物量(ng/mg:含有ペントシジン量換算)を定量して、リファレンス定量値であるR-T-GLYCを得る工程と、前記得られたR-PYDと、前記得られたR-T-GLYCとから、重量比のリファレンス値であるR-PpG(含有ピリジノリン量(ng/mg)/含有総糖化産物量(ng/mg:含有ペントシジン量換算))を算出する工程と、前記PpG及び前記R-PpGを比較する工程とを含む方法。
【0016】
(6)定量する工程が、ヘプタフルオロ酪酸とギ酸をイオン対試薬として用いた蛍光検出器付き高速液体クロマトグラフ(HPLC-Flu)を利用して定量する工程である、(1)に記載の方法。
【0017】
(7)前記哺乳動物が、ヒト、ウシ、ウマ、ブタ、イノシシ、ヒツジ、シカ、イヌ及びネコからなる群から選択される1または2以上の哺乳動物である、(1)から(6)のいずれか一つに記載の方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、疾患の潜在的罹患リスク及び/または哺乳動物が潜在的に健康であるか否かの評価の対象となる哺乳動物の歯に含まれるコラーゲンと、疾患に罹患していない哺乳動物、疾患に罹患している哺乳動物、健康である哺乳動物及び健康でない哺乳動物から選択される1または2以上の哺乳動物の歯に含まれるコラーゲンの、それぞれについての上述したPYD、PEN、T-GLYC、PpP及びPpGの少なくともいずれかの値と、それぞれのリファレンス値とを比較することにより、哺乳動物における疾患の潜在的罹患リスク及び/または哺乳動物が潜在的に健康であるか否かを評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】ヒト非糖尿病患者14例(●)、ヒト糖尿病患者4例(▲)及びウシ(ウシ特定危険部位(Specified Risk Materials;SRM))19例(◆)の歯(計37例)に含まれるコラーゲンの加水分解産物の、ヘプタフルオロ酪酸とギ酸をイオン対試薬として用いた蛍光検出器付き高速液体クロマトグラフ(HPLC-Flu)により定量した含有ピリジノリン量(ng/mg)の定量値であるPYDの、歯の月齢に伴う分布図である。図中、破線は、R-PYDに相当する、ヒトの非糖尿病患者14例のPYDに基づいた近似曲線(線形近似)を示す。
図2】ヒト非糖尿病患者14例(●)、ヒト糖尿病患者4例(▲)及びウシ(ウシ特定危険部位(Specified Risk Materials;SRM))19例(◆)の歯(計37例)に含まれるコラーゲンの加水分解産物の、ヘプタフルオロ酪酸とギ酸をイオン対試薬として用いた蛍光検出器付き高速液体クロマトグラフ(HPLC-Flu)により定量した含有ペントシジン量(ng/mg)の定量値であるPENの、歯の月齢に伴う分布図である。図中、破線は、R-PENに相当する、ヒトの非糖尿病患者14例のPENに基づいた近似曲線(線形近似)を示す。
図3】ヒト非糖尿病患者14例(●)、ヒト糖尿病患者4例(▲)及びウシ(ウシ特定危険部位(Specified Risk Materials;SRM))19例(◆)の歯(計37例)に含まれるコラーゲンの加水分解産物の、ヘプタフルオロ酪酸とギ酸をイオン対試薬として用いた蛍光検出器付き高速液体クロマトグラフ(HPLC-Flu)により定量した含有総糖化産物量(ng/mg:含有ペントシジン量換算)の定量値であるT-GLYCの、歯の月齢に伴う分布図である。図中、破線は、R-T-GLYCに相当する、ヒトの非糖尿病患者14例のT-GLYCに基づいた近似曲線(線形近似)を示す。
図4】ヒト非糖尿病患者14例(●)、ヒト糖尿病患者4例(▲)及びウシ(ウシ特定危険部位(Specified Risk Materials;SRM))19例(◆)の歯(計37例)に含まれるコラーゲンの加水分解産物の、ヘプタフルオロ酪酸とギ酸をイオン対試薬として用いた蛍光検出器付き高速液体クロマトグラフ(HPLC-Flu)により定量した含有ピリジノリン量(ng/mg)の定量値であるPYDと含有ペントシジン量(ng/mg)の定量値であるPENとから算出される、重量比の値であるPpP(含有ピリジノリン量(ng/mg)/含有ペントシジン量(ng/mg))の、歯の月齢に伴う分布図である。図中、破線は、R-PpPに相当する、ヒトの非糖尿病患者14例のPpPに基づいた近似曲線(線形近似)を示す。
図5】ヒト非糖尿病患者14例(●)、ヒト糖尿病患者4例(▲)及びウシ(ウシ特定危険部位(Specified Risk Materials;SRM))19例(◆)の歯(計37例)に含まれるコラーゲンの加水分解産物の、ヘプタフルオロ酪酸とギ酸をイオン対試薬として用いた蛍光検出器付き高速液体クロマトグラフ(HPLC-Flu)により定量した含有ピリジノリン量(ng/mg)の定量値であるPYDと含有総糖化産物量(ng/mg:含有ペントシジン量換算)の定量値であるT-GLYCとから算出される、重量比の値であるPpG(含有ピリジノリン量(ng/mg)/含有総糖化産物量(ng/mg:含有ペントシジン量換算))の、歯の月齢に伴う分布図である。図中、破線は、R-PpGに相当する、ヒトの非糖尿病患者14例のPpGに基づいた近似曲線(線形近似)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る哺乳動物における疾患の潜在的罹患リスク及び/または哺乳動物が潜在的に健康であるか否かを評価するための指標として、哺乳動物の歯に含まれるコラーゲンの含有ピリジノリン量(ng/mg)の定量値を用いる方法、本発明に係る哺乳動物における疾患の潜在的罹患リスク及び/または哺乳動物が潜在的に健康であるか否かを評価するための指標として、哺乳動物の歯に含まれるコラーゲンの含有ペントシジン量(ng/mg)の定量値を用いる方法、本発明に係る哺乳動物における疾患の潜在的罹患リスク及び/または哺乳動物が潜在的に健康であるか否かを評価するための指標として、哺乳動物の歯に含まれるコラーゲンの含有総糖化産物量(ng/mg:含有ペントシジン量換算)の定量値を用いる方法、本発明に係る哺乳動物における疾患の潜在的罹患リスク及び/または哺乳動物が潜在的に健康であるか否かを評価するための指標として、哺乳動物の歯に含まれるコラーゲンの含有ピリジノリン量(ng/mg)の定量値及び含有ペントシジン量(ng/mg)の定量値から算出される重量比(含有ピリジノリン量(ng/mg)/含有ペントシジン量(ng/mg))の値を用いる方法、ならびに、本発明に係る哺乳動物における疾患の潜在的罹患リスク及び/または哺乳動物が潜在的に健康であるか否かを評価するための指標として、哺乳動物の歯に含まれるコラーゲンの含有ピリジノリン量(ng/mg)の定量値及び含有総糖化産物量(ng/mg:含有ペントシジン量換算)の定量値から算出される重量比(含有ピリジノリン量(ng/mg)/含有総糖化産物量(ng/mg:含有ペントシジン量換算))の値を用いる方法について、詳細に説明する。なお、本明細書において「~」または「から」を用いて表される数値範囲は「~」または「から」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0021】
本発明において、「哺乳動物」とは、基本的に有性生殖を行い、現存する多くの種が胎生で、乳で子を育てる動物をいい、そのような動物であれば特に限定されないが、そのような動物としては、例えば、ヒト;オランウータン、ゴリラ、チンパンジー、ボノボ、テナガザル科に属するサルなどの類人猿;テナガザル科に属するサルを除くサルの他、ウシ、ウマ、ブタ、イノシシ、ヒツジ、ヤギ、シカ、カモシカ、クマ、アシカ、アザラシ、セイウチ、トド、オットセイ、クジラなどの大型の哺乳動物;イヌ、ネコ、ウサギ、ネズミ、リス、イタチ、アライグマ、マングースなどの小型の哺乳動物を挙げることができ、ヒト、ウシ、ウマ、ブタ、イノシシ、ヒツジ、シカ、イヌ及びネコを好適な哺乳動物として挙げることができ、ヒト、ウシ、ウマ、ブタ、イヌ及びネコをより好適な哺乳動物として挙げることができ、ヒト、ウシ、イヌ及びネコを最も好適な哺乳動物として挙げることができる。
【0022】
本発明において、「潜在的罹患リスク」とは、疾患に罹患している状態を指しているものではなく、疾患に対して宿主側の防御反応が最大限に働き、かろうじて罹患に至っていないようなリスクのある状態をいい、自覚、他覚所見、従来の一般的検査所見においても疾患に罹患していることがほとんど確認できない状態を意味する。
【0023】
また、本発明において、「潜在的に健康である」とは、健康でない状態には至らないような状態をいい、自覚、他覚所見、従来の一般的検査所見においても不健康であることがほとんど確認できない状態を意味し、本発明において、「潜在的に健康でない」とは、健康である状態には至らないような状態をいい、自覚、他覚所見、従来の一般的検査所見においても健康であることがほとんど確認できない状態を意味する。
【0024】
コラーゲンとは、主に脊椎動物の各種臓器、血管、神経、皮膚、靱帯、腱、骨、軟骨、歯の象牙質などを構成する、生体における様々な組織の骨組みとなるタンパク質のひとつであり、多細胞動物の細胞外基質の主成分である。本発明において、「コラーゲン」とは、主にタイプIコラーゲンをいう。また、本発明の「コラーゲン」は歯のコラーゲンであり、歯は咬合力という強い負荷の掛かる組織であることから、軟組織とは異なり、歯のコラーゲンには、咬合力に耐えなければならないという著しく高い強度が要求される。
【0025】
硬組織コラーゲンは、例えば、BMP-2,BMP-4,BMP-7,オステオカルシンの検出により、硬組織由来であることが判別でき、象牙質シアロタンパク質(Dentin Sialoprotein;DSP)、象牙質糖タンパク質(Dentin Glycoprotein;DGP)、象牙質リンタンパク質(Dentin Phosphoprotein;DPP)の検出により、歯由来であることが判別できる。
【0026】
本発明において、コラーゲンの含有ピリジノリン、含有ペントシジン及び含有総糖化産物は、それぞれ、コラーゲン中の生理的架橋分子であるピリジノリン架橋分子を構成するピリジノリン、コラーゲン中の非生理的架橋分子であるペントシジン架橋分子を構成するペントシジン及びコラーゲン中の非生理的架橋分子である総糖化産物の架橋分子を構成する総糖化産物である。本発明においては、コラーゲンの含有ピリジノリン量(ng/mg)、コラーゲンの含有ペントシジン量(ng/mg)及びコラーゲンの含有総糖化産物量(ng/mg:含有ペントシジン量換算)を各々定量して、定量値であるPYD、PEN及びT-GLYCを得、また、当該PYDを当該PENで除すことで、当該PYDと当該PENとの重量比の値であるPpP(含有ピリジノリン量(ng/mg)/含有ペントシジン量(ng/mg))を、当該PYDを当該T-GLYCで除すことで、当該PYDと当該T-GLYCとの重量比の値であるPpG(含有ピリジノリン量(ng/mg)/含有総糖化産物量(ng/mg:含有ペントシジン量換算))を、それぞれ算出している。
【0027】
生理的・酵素的架橋分子であるピリジノリン架橋は、主に硬組織の根源的な強度を向上させることを目的としてプログラムされたといっても過言ではなく、上述の通り、リジルオキシダーゼの酵素の作用により、コラーゲンのアミノ酸配列中のN末端とC末端にそれぞれ存在するテロペプチド内の2つのリジン残基と、コラーゲンの両末端を除くアミノ酸配列中の1つのリジン残基に形成される架橋分子であるといわれている。コラーゲンのアミノ酸配列中のN末端とC末端にそれぞれ存在するテロペプチド内の2つのリジン残基に形成されるピリジノリン架橋分子は、コラーゲン線維同士の架橋分子であることから、三重らせん構造であるトロポコラーゲン(コラーゲン配列全体)の立体構造性の維持に大きく寄与しているといえる。
【0028】
それ故、生体組織に含まれるコラーゲン中にピリジノリン架橋分子が増加すると、その生体組織に含まれるコラーゲンの質がしなやかで粘り強くなり、そのコラーゲンの強度や石灰化度が高まるうえ、その生体組織を構成する細胞の活性を向上する要素、すなわち、組織修復に関わる組織幹細胞の活性が上昇することによって個体のホメオスタシスが維持されやすい要素になり得るのである。それ故、含有ピリジノリン量は、皮膚を代表とする軟組織コラーゲンと比較して、歯や骨由来のコラーゲンの方が多くなり、歯や骨由来のコラーゲンはしなやかで高強度、高弾性となる。
【0029】
一方、非生理的架橋分子であるペントシジン架橋分子及びペントシジン架橋分子を含む総糖化産物の架橋分子を代表とする最終糖化産物(AGEs)による架橋は、血糖に起因する病的架橋(老化架橋(AGEs架橋))であり、上述の通り、血糖が体温によって加熱されることによって、コラーゲンのアミノ酸配列中に点在するアルギニンとリジンにおいて各種組み合わせによって形成される架橋分子である。コラーゲンのアミノ酸配列中のアルギニンとアルギニン、リジンとリジン及びアルギニンとリジンが近接している場合、ペントシジン架橋分子及びペントシジン架橋分子を含む総糖化産物の架橋分子が非特異的(ランダム)に形成されるため、コラーゲン線維が絡み合った状態になりかねず、コラーゲン線維の配列規則性を失わせて、トロポコラーゲンの立体構造を乱れさせる要因となることから、コラーゲンのアミノ酸配列中にペントシジン架橋分子及びペントシジン架橋分子を含む総糖化産物の架橋分子が増加することは、コラーゲン線維のしなやかさや強度、弾性を減弱させることに繋がる。この病的架橋分子の形成は、血糖に起因するため、宿主の食生活習慣(炭水化物摂取習慣)に依存して、その蓄積量が増加するといわれている。また、経血管的にペントシジン架橋分子及びペントシジン架橋分子を含む総糖化産物の架橋分子の原料である糖質が供給されるため、全身の組織の支持基盤であるコラーゲンは、組織の場所を問わず、循環血流量に応じて架橋される。すなわち、糖の過剰摂取は、硬組織・軟組織を問わず、体の支持基盤となるコラーゲンの質を一様に低下させることに繋がるといえる。
【0030】
また、コラーゲン中にペントシジン架橋分子及びペントシジン架橋分子を含む総糖化産物の架橋分子が増加すると、ペントシジン架橋分子及びペントシジン架橋分子を含む総糖化産物の架橋分子が糖を介在するメイラード反応による糖化架橋分子であるが故に、その生体組織に含まれるコラーゲンが脆いチョーク様を呈し、その生体組織に含まれるコラーゲンの強度や石灰化度が低下する。糖を介在するメイラード反応による生成物が成熟したものが最終糖化産物(AGEs)といわれているが、ペントシジン架橋分子及びペントシジン架橋分子を含む総糖化産物の架橋分子はAGEsであり、炭水化物摂取頻度の高い食習慣によって血中の糖レベルが定常的に高い状態で維持されている哺乳動物のコラーゲンには、同じ年齢(月齢)のバランスの良い食習慣の哺乳動物のコラーゲンと比較して、ペントシジン架橋分子及びペントシジン架橋分子を含む総糖化産物の架橋分子が多く含まれているため、血中の糖レベルが定常的に高い哺乳動物のコラーゲンにおいては、病的架橋(老化架橋(AGEs架橋))が進行しているといえる。生成したペントシジン架橋分子及びペントシジン架橋分子を含む総糖化産物の架橋分子は、コラーゲン線維の規則的な配列秩序を乱してコラーゲンの柔軟性を損なわせ、硬くもろいものに変化させるとともに、コラーゲンの代謝を阻害し、その結果、全身を構成するコラーゲンの質を劣化させ、組織のしなやかさの低下を引き起こす。コラーゲンが、骨や歯といったすべての硬組織のみならず、神経や血管を含めたすべての軟組織を支える支持組織の主要成分であることから、このコラーゲンの質の低下は、体中の硬組織・軟組織の品質を劣化させる要因となり得る。例えば、骨の糖化によって骨質が低下すると、骨がもろくなって骨粗鬆症が生じる他、血管壁の糖化によって血管の質が低下すると、動脈が固くなる、いわゆる動脈硬化が発生し、これにより、血圧上昇が生じるなどの組織障害を引き起こす。糖尿病の三大合併症といわれる「(1)糖尿病性網膜症(増悪すると失明)」、「(2)糖尿病性腎症(増悪すると人工透析移行)」及び「(3)糖尿病性神経障害(増悪すると、例えば血行障害による手足の指の壊死)」においても同様であり、その原因はそれぞれ、「(1)網膜の血行障害」、「(2)血液のろ過装置である腎臓の糸球体の毛細血管障害」及び「(3)毛細血管の神経障害や動脈硬化による四肢末端の血流障害」といわれており、これらはいずれも血管を構成するコラーゲンの糖化による血管の品質低下が大きな要因になっているといえるものである。
【0031】
加えて、ペントシジン架橋分子及びペントシジン架橋分子を含む総糖化産物の架橋分子を代表とするAGEsが増加すると、血管内皮細胞を代表とする血管系細胞や免疫細胞であるマクロファージなどの広範な組織でその発現が認められているRAGE(Recptor of age:AGEsの受容体)に対してAGEsが結合し、その結果、そのシグナルが活性化しやすい生体内環境が成立する。これにより、炎症に関連するNF-κBシグナルなどが促進され、過度に糖化した組織に対し、ペントシジン架橋分子及びペントシジン架橋分子を含む総糖化産物の架橋分子を代表とするAGEsが慢性炎症トリガー因子として機能することにより、広範な組織において慢性炎症を惹起する。このメカニズムによって、炎症性腸疾患(IBD)や膠原病などを代表とする慢性炎症性疾患を増悪させる要因になると考えられている。以上、記載したように、コラーゲンの糖化は、多様な方向から生体を徐々にむしばむ要因となり、知らず知らずのうちに生活の質(QOL)を低下させ、生物を健康長寿から遠のかせる大きな要因となり得るのである。なお、ヒトの生体組織に含まれるコラーゲン中のピリジノリン架橋分子とペントシジン架橋分子は、いずれも加齢によって増加することが報告されている(清水、「加齢に関連した象牙質コラーゲン蛋白質の非酵素的糖化修飾」、Osaka University Knowledge Archive.2015;Walters C.et al.,Calcif.Tissue.Int.Vol.35,401-405,1983)。
【0032】
本発明に係る哺乳動物における疾患の潜在的罹患リスク及び/または哺乳動物が潜在的に健康であるか否かを評価するための指標として、哺乳動物の歯に含まれるコラーゲンの含有ピリジノリン量(ng/mg)の定量値を用いる方法は、
(i)疾患の潜在的罹患リスク及び/または哺乳動物が潜在的に健康であるか否かの評価の対象となる哺乳動物の、歯に含まれるコラーゲンの含有ピリジノリン量(ng/mg)を定量して、定量値であるPYDを得る工程(評価対象含有ピリジノリン量定量工程)、
(ii)疾患に罹患していない哺乳動物、疾患に罹患している哺乳動物、健康である哺乳動物及び健康でない哺乳動物から選択される1または2以上の哺乳動物の、歯に含まれるコラーゲンの含有ピリジノリン量(ng/mg)を定量して、リファレンス定量値であるR-PYDを得る工程(リファレンス含有ピリジノリン量定量工程)、
(iii)評価対象含有ピリジノリン量定量工程(i)において得られたPYD及びリファレンス含有ピリジノリン量定量工程(ii)において得られたR-PYDを比較する工程(PYD・R-PYD比較工程)、
以上、(i)~(iii)の工程を有する。
【0033】
また、本発明に係る哺乳動物における疾患の潜在的罹患リスク及び/または哺乳動物が潜在的に健康であるか否かを評価するための指標として、哺乳動物の歯に含まれるコラーゲンの含有ペントシジン量(ng/mg)の定量値を用いる方法は、
(iv)疾患の潜在的罹患リスク及び/または哺乳動物が潜在的に健康であるか否かの評価の対象となる哺乳動物の、歯に含まれるコラーゲンの含有ペントシジン量(ng/mg)を定量して、定量値であるPENを得る工程(評価対象含有ペントシジン量定量工程)、
(v)疾患に罹患していない哺乳動物、疾患に罹患している哺乳動物、健康である哺乳動物及び健康でない哺乳動物から選択される1または2以上の哺乳動物の、歯に含まれるコラーゲンの含有ペントシジン量(ng/mg)を定量して、リファレンス定量値であるR-PENを得る工程(リファレンス含有ペントシジン量定量工程)、
(vi)評価対象含有ペントシジン量定量工程(iv)において得られたPEN及びリファレンス含有ペントシジン量定量工程(v)において得られたR-PENを比較する工程(PEN・R-PEN比較工程)、
以上、(iv)~(vi)の工程を有する。
【0034】
また、本発明に係る哺乳動物における疾患の潜在的罹患リスク及び/または哺乳動物が潜在的に健康であるか否かを評価するための指標として、哺乳動物の歯に含まれるコラーゲンの含有総糖化産物量(ng/mg:含有ペントシジン量換算)の定量値を用いる方法は、
(vii)疾患の潜在的罹患リスク及び/または哺乳動物が潜在的に健康であるか否かの評価の対象となる哺乳動物の、歯に含まれるコラーゲンの含有総糖化産物量(ng/mg:含有ペントシジン量換算)を定量して、定量値であるT-GLYCを得る工程(評価対象含有総糖化産物量定量工程)、
(viii)疾患に罹患していない哺乳動物、疾患に罹患している哺乳動物、健康である哺乳動物及び健康でない哺乳動物から選択される1または2以上の哺乳動物の、歯に含まれるコラーゲンの含有総糖化産物量(ng/mg:含有ペントシジン量換算)を定量して、リファレンス定量値であるR-T-GLYCを得る工程(リファレンス含有総糖化産物量定量工程)、
(ix)評価対象含有総糖化産物量定量工程(vii)において得られたT-GLYC及びリファレンス含有総糖化産物量定量工程(viii)において得られたR-T-GLYCを比較する工程(T-GLYC・R-T-GLYC比較工程)、
以上、(vii)~(ix)の工程を有する。
【0035】
また、本発明に係る哺乳動物における疾患の潜在的罹患リスク及び/または哺乳動物が潜在的に健康であるか否かを評価するための指標として、哺乳動物の歯に含まれるコラーゲンの含有ピリジノリン量の定量値及び含有ペントシジン量の定量値から算出される重量比の値を用いる方法は、
(x)疾患の潜在的罹患リスク及び/または哺乳動物が潜在的に健康であるか否かの評価の対象となる哺乳動物の、歯に含まれるコラーゲンの含有ピリジノリン量(ng/mg)を定量して定量値であるPYDを得る工程(評価対象含有ピリジノリン量定量工程)、
(xi)前記評価の対象となる哺乳動物の歯に含まれるコラーゲンの含有ペントシジン量(ng/mg)を定量して、定量値であるPENを得る工程(評価対象含有ペントシジン量定量工程)、
(xii)評価対象含有ピリジノリン量定量工程(x)において得られたPYDと、評価対象含有ペントシジン量定量工程(xi)において得られたPENとから、重量比の値であるPpP(含有ピリジノリン量(ng/mg)/含有ペントシジン量(ng/mg))を算出する工程(評価対象重量比PpP算出工程)、
(xiii)疾患に罹患していない哺乳動物、疾患に罹患している哺乳動物、健康である哺乳動物及び健康でない哺乳動物から選択される1または2以上の哺乳動物の、歯に含まれるコラーゲンの含有ピリジノリン量(ng/mg)を定量して、リファレンス定量値であるR-PYDを得る工程(リファレンス含有ピリジノリン量定量工程)、
(xiv)前記1または2以上の哺乳動物の歯に含まれるコラーゲンの含有ペントシジン量(ng/mg)を定量して、リファレンス定量値であるR-PENを得る工程(リファレンス含有ペントシジン量定量工程)、
(xv)リファレンス含有ピリジノリン量定量工程(xiii)において得られたR-PYDと、リファレンス含有ペントシジン量定量工程(xiv)において得られたR-PENとから、重量比のリファレンス値であるR-PpP(含有ピリジノリン量(ng/mg)/含有ペントシジン量(ng/mg))を算出する工程(リファレンス重量比R-PpP算出工程)、
(xvi)評価対象重量比PpP算出工程(xii)において算出されたPpP及びリファレンス重量比R-PpP算出工程(xv)において算出されたR-PpPを比較する工程(重量比PpP・R-PpP比較工程)、
以上、(x)~(xvi)の工程を有する。
【0036】
また、本発明に係る哺乳動物における疾患の潜在的罹患リスク及び/または哺乳動物が潜在的に健康であるか否かを評価するための指標として、哺乳動物の歯に含まれるコラーゲンの含有ピリジノリン量の定量値及び含有総糖化産物量の定量値から算出される重量比の値を用いる方法は、
(xvii)疾患の潜在的罹患リスク及び/または哺乳動物が潜在的に健康であるか否かの評価の対象となる哺乳動物の、歯に含まれるコラーゲンの含有ピリジノリン量(ng/mg)を定量して定量値であるPYDを得る工程(評価対象含有ピリジノリン量定量工程)、
(xviii)前記評価の対象となる哺乳動物の歯に含まれるコラーゲンの含有総糖化産物量(ng/mg:含有ペントシジン量換算)を定量して、定量値であるT-GLYCを得る工程(評価対象含有総糖化産物量定量工程)、
(xix)評価対象含有ピリジノリン量定量工程(xvii)において得られたPYDと、評価対象含有総糖化産物量定量工程(xviii)において得られたT-GLYCとから、重量比の値であるPpG(含有ピリジノリン量(ng/mg)/含有総糖化産物量(ng/mg:含有ペントシジン量換算))を算出する工程(評価対象重量比PpG算出工程)、
(xx)疾患に罹患していない哺乳動物、疾患に罹患している哺乳動物、健康である哺乳動物及び健康でない哺乳動物から選択される1または2以上の哺乳動物の、歯に含まれるコラーゲンの含有ピリジノリン量(ng/mg)を定量して、リファレンス定量値であるR-PYDを得る工程(リファレンス含有ピリジノリン量定量工程)、
(xxi)前記1または2以上の哺乳動物の歯に含まれるコラーゲンの含有総糖化産物量(ng/mg:含有ペントシジン量換算)を定量して、リファレンス定量値であるR-T-GLYCを得る工程(リファレンス含有総糖化産物量定量工程)、
(xxii)リファレンス含有ピリジノリン量定量工程(xx)において得られたR-PYDと、リファレンス含有総糖化産物量定量工程(xxi)において得られたR-T-GLYCとから、重量比のリファレンス値であるR-PpG(含有ピリジノリン量(ng/mg)/含有総糖化産物量(ng/mg:含有ペントシジン量換算))を算出する工程(リファレンス重量比R-PpG算出工程)、
(xxiii)評価対象重量比PpG算出工程(xix)において算出されたPpG及びリファレンス重量比R-PpG算出工程(xxii)において算出されたR-PpGを比較する工程(重量比PpG・R-PpG比較工程)、
以上、(xvii)~(xxiii)の工程を有する。
【0037】
本発明に係る哺乳動物における疾患の潜在的罹患リスク及び/または哺乳動物が潜在的に健康であるか否かを評価するための指標として、哺乳動物の歯に含まれるコラーゲンの含有ピリジノリン量(ng/mg)の定量値を用いる方法における「評価対象含有ピリジノリン量定量工程(i)」と、本発明に係る哺乳動物における疾患の潜在的罹患リスク及び/または哺乳動物が潜在的に健康であるか否かを評価するための指標として、哺乳動物の歯に含まれるコラーゲンの含有ピリジノリン量の定量値及び含有ペントシジン量の定量値から算出される重量比の値を用いる方法における「評価対象含有ピリジノリン量定量工程(x)」と、本発明に係る哺乳動物における疾患の潜在的罹患リスク及び/または哺乳動物が潜在的に健康であるか否かを評価するための指標として、哺乳動物の歯に含まれるコラーゲンの含有ピリジノリン量の定量値及び含有総糖化産物量の定量値から算出される重量比の値を用いる方法における「評価対象含有ピリジノリン量定量工程(xvii)」とは、同一の工程である。
【0038】
また、本発明に係る哺乳動物における疾患の潜在的罹患リスク及び/または哺乳動物が潜在的に健康であるか否かを評価するための指標として、哺乳動物の歯に含まれるコラーゲンの含有ピリジノリン量(ng/mg)の定量値を用いる方法における「リファレンス含有ピリジノリン量定量工程(ii)」と、本発明に係る哺乳動物における疾患の潜在的罹患リスク及び/または哺乳動物が潜在的に健康であるか否かを評価するための指標として、哺乳動物の歯に含まれるコラーゲンの含有ピリジノリン量の定量値及び含有ペントシジン量の定量値から算出される重量比の値を用いる方法における「リファレンス含有ピリジノリン量定量工程(xiii)」と、本発明に係る哺乳動物における疾患の潜在的罹患リスク及び/または哺乳動物が潜在的に健康であるか否かを評価するための指標として、哺乳動物の歯に含まれるコラーゲンの含有ピリジノリン量の定量値及び含有総糖化産物量の定量値から算出される重量比の値を用いる方法における「リファレンス含有ピリジノリン量定量工程(xx)」とは、同一の工程である。
【0039】
また、本発明に係る哺乳動物における疾患の潜在的罹患リスク及び/または哺乳動物が潜在的に健康であるか否かを評価するための指標として、哺乳動物の歯に含まれるコラーゲンの含有ペントシジン量(ng/mg)の定量値を用いる方法における「評価対象含有ペントシジン量定量工程(iv)」と、本発明に係る哺乳動物における疾患の潜在的罹患リスク及び/または哺乳動物が潜在的に健康であるか否かを評価するための指標として、哺乳動物の歯に含まれるコラーゲンの含有ピリジノリン量の定量値及び含有ペントシジン量の定量値から算出される重量比の値を用いる方法における「評価対象含有ペントシジン量定量工程(xi)」とは、同一の工程である。
【0040】
また、本発明に係る哺乳動物における疾患の潜在的罹患リスク及び/または哺乳動物が潜在的に健康であるか否かを評価するための指標として、哺乳動物の歯に含まれるコラーゲンの含有ペントシジン量(ng/mg)の定量値を用いる方法における「リファレンス含有ペントシジン量定量工程(v)」と、本発明に係る哺乳動物における疾患の潜在的罹患リスク及び/または哺乳動物が潜在的に健康であるか否かを評価するための指標として、哺乳動物の歯に含まれるコラーゲンの含有ピリジノリン量の定量値及び含有ペントシジン量の定量値から算出される重量比の値を用いる方法における「リファレンス含有ペントシジン量定量工程(xiv)」とは、同一の工程である。
【0041】
また、本発明に係る哺乳動物における疾患の潜在的罹患リスク及び/または哺乳動物が潜在的に健康であるか否かを評価するための指標として、哺乳動物の歯に含まれるコラーゲンの含有総糖化産物量(ng/mg:含有ペントシジン量換算)の定量値を用いる方法における「評価対象含有総糖化産物量定量工程(vii)」と、本発明に係る哺乳動物における疾患の潜在的罹患リスク及び/または哺乳動物が潜在的に健康であるか否かを評価するための指標として、哺乳動物の歯に含まれるコラーゲンの含有ピリジノリン量の定量値及び含有総糖化産物量の定量値から算出される重量比の値を用いる方法における「評価対象含有総糖化産物量定量工程(xviii)」とは、同一の工程である。
【0042】
また、本発明に係る哺乳動物における疾患の潜在的罹患リスク及び/または哺乳動物が潜在的に健康であるか否かを評価するための指標として、哺乳動物の歯に含まれるコラーゲンの含有総糖化産物量(ng/mg:含有ペントシジン量換算)の定量値を用いる方法における「リファレンス含有総糖化産物量定量工程(viii)」と、本発明に係る哺乳動物における疾患の潜在的罹患リスク及び/または哺乳動物が潜在的に健康であるか否かを評価するための指標として、哺乳動物の歯に含まれるコラーゲンの含有ピリジノリン量の定量値及び含有総糖化産物量の定量値から算出される重量比の値を用いる方法における「リファレンス含有総糖化産物量定量工程(xxi)」とは、同一の工程である。
【0043】
「評価対象含有ピリジノリン量定量工程」及び「リファレンス含有ピリジノリン量定量工程」における含有ピリジノリン量(ng/mg)の定量、「評価対象含有ペントシジン量定量工程」及び「リファレンス含有ペントシジン量定量工程」における含有ペントシジン量(ng/mg)の定量、ならびに、「評価対象含有総糖化産物量定量工程」及び「リファレンス含有総糖化産物量定量工程」における含有総糖化産物量(ng/mg:含有ペントシジン量換算)の定量に供する、ピリジノリン、ペントシジン及び総糖化産物それぞれのサンプルの調製は、当該分野で公知の慣用的な調製手段を用いてすることができるが、例えば、概ね次のようにして行うことができる。
【0044】
(1)本発明に係るコラーゲン高含有有機組成物を製造する方法により製造された乾燥コラーゲン粉末を試験管に量り取り、脱気下、少量の6N塩酸にて膨潤する。
(2)前記乾燥コラーゲンに6N塩酸を加えて脱気した後、密封する。
(3)一昼夜、110℃にて加熱処理することにより、加水分解を行う。
(4)サンプルを室温まで冷却する。
(5)加温しながらの減圧乾燥により余剰な塩酸を除去することにより、コラーゲンの加水分解物を得る。
(6)得られたコラーゲンの加水分解物を、10%メタノール水溶液にて可溶化する。
(7)室温下、12000rpmにて5分間遠心し、上清をサンプルとする。
(8)サンプルに既知の量の標準物質を加えることにより、抽出率及び検量線を求め、適宜、コラーゲン含有量を補正することができる。
【0045】
また、「評価対象含有ピリジノリン量定量工程」及び「リファレンス含有ピリジノリン量定量工程」における含有ピリジノリン量(ng/mg)の定量方法、「評価対象含有ペントシジン量定量工程」及び「リファレンス含有ペントシジン量定量工程」における含有ペントシジン量(ng/mg)の定量方法、ならびに、「評価対象含有総糖化産物量定量工程」及び「リファレンス含有総糖化産物量定量工程」における含有総糖化産物量(ng/mg:含有ペントシジン量換算)の定量方法は、それらの定量が可能な限りにおいて、特に限定されないが、そのような定量方法としては、例えば、ヘプタフルオロ酪酸とギ酸をイオン対試薬として用いた蛍光検出器付き高速液体クロマトグラフ(HPLC-Flu)を採用することができる。
【0046】
当該ヘプタフルオロ酪酸とギ酸をイオン対試薬として用いた蛍光検出器付き高速液体クロマトグラフ(HPLC-Flu)を用いた定量方法は、当該分野で公知の慣用的な定量手段を用いてすることができるが、例えば、概ね次のようにして行うことができる。
【0047】
(1)移動相として0.05%ヘプタフルオロ酪酸を含む超純水(移動相A)と0.05%ギ酸を含むメタノール・エタノール1:1混合液(移動相B)を用いて、グラジエント設定で送液し、検出を行う。
(2)具体的な送液条件としては、検出カラム温度40℃、0.5mL/分の流速にて、移動相A90%移動相B10%の割合で開始し、0.5分間送液する。
(3)その後、1分かけて移動相Bを22%まで上昇させて濃度勾配をかけた後、そのまま7.5分間送液する。
(4)続いて、1分かけて移動相Bを80%まで上昇させた後、さらに1分間送液する。
(5)最後に、移動相A10%移動相B90%の割合で送液後、移動相A90%移動相B10%の割合で4分間平衡化する。
(6)以上、(1)~(5)を、1サンプルにつき計15分間かけて行う。なお、分離カラムにはCadenzaCD-C18、長さ150mm、内径3mmを用い、検出には蛍光検出器を用いる。前半の8分間、励起波長295nm、蛍光波長395nmにてモニターし、後半の7分間、励起波長325nm、蛍光波長385nmにてモニターする。それらモニターにより、含有ピリジノリンはリテンションタイム約6.5分付近、含有ペントシジンはリテンションタイム約9.1分付近に検出される。
【0048】
「評価対象含有ピリジノリン量定量工程」及び「リファレンス含有ピリジノリン量定量工程」における含有ピリジノリン量(ng/mg)の定量、「評価対象含有ペントシジン量定量工程」及び「リファレンス含有ペントシジン量定量工程」における含有ペントシジン量(ng/mg)の定量、ならびに、「評価対象含有総糖化産物量定量工程」及び「リファレンス含有総糖化産物量定量工程」における含有総糖化産物量(ng/mg:含有ペントシジン量換算)の定量は、疾患の潜在的罹患リスク及び/または哺乳動物が潜在的に健康であるか否かの評価の対象となる哺乳動物、疾患に罹患していない哺乳動物、疾患に罹患している哺乳動物、健康である哺乳動物、ならびに、健康でない哺乳動物の摘出した歯について行うことができる他、例えば、切削、接触、非接触といった態様でも行うことができる。
【0049】
また、疾患の潜在的罹患リスク及び/または哺乳動物が潜在的に健康であるか否かの評価の対象となる哺乳動物、疾患に罹患していない哺乳動物、疾患に罹患している哺乳動物、健康である哺乳動物、ならびに、健康でない哺乳動物はいずれも、同じ個体であってもよい。
【0050】
なお、本発明に係る哺乳動物における疾患の潜在的罹患リスク及び/または哺乳動物が潜在的に健康であるか否かを評価するための指標として、哺乳動物の歯に含まれるコラーゲンの含有ピリジノリン量(ng/mg)の定量値を用いる方法は、上述した「評価対象含有ピリジノリン量定量工程(i)」、「リファレンス含有ピリジノリン量定量工程(ii)」及び「PYD・R-PYD比較工程(iii)」のみならず、本発明の特徴を損なわない範囲において、他の工程を有してもよい。
【0051】
また、本発明に係る哺乳動物における疾患の潜在的罹患リスク及び/または哺乳動物が潜在的に健康であるか否かを評価するための指標として、哺乳動物の歯に含まれるコラーゲンの含有ペントシジン量(ng/mg)の定量値を用いる方法は、上述した「評価対象含有ペントシジン量定量工程(iv)」、「リファレンス含有ペントシジン量定量工程(v)」及び「PEN・R-PEN比較工程(vi)」のみならず、本発明の特徴を損なわない範囲において、他の工程を有してもよい。
【0052】
また、本発明に係る哺乳動物における疾患の潜在的罹患リスク及び/または哺乳動物が潜在的に健康であるか否かを評価するための指標として、哺乳動物の歯に含まれるコラーゲンの含有総糖化産物量(ng/mg:含有ペントシジン量換算)の定量値を用いる方法は、上述した「評価対象含有総糖化産物量定量工程(vii)」、「リファレンス含有総糖化産物量定量工程(viii)」及び「T-GLYC・R-T-GLYC比較工程(ix)」のみならず、本発明の特徴を損なわない範囲において、他の工程を有してもよい。
【0053】
また、本発明に係る哺乳動物における疾患の潜在的罹患リスク及び/または哺乳動物が潜在的に健康であるか否かを評価するための指標として、哺乳動物の歯に含まれるコラーゲンの含有ピリジノリン量の定量値及び含有ペントシジン量の定量値から算出される重量比の値を用いる方法は、上述した「評価対象含有ピリジノリン量定量工程(x)」、「評価対象含有ペントシジン量定量工程(xi)」、「評価対象重量比PpP算出工程(xii)」、「リファレンス含有ピリジノリン量定量工程(xiii)」、「リファレンス含有ペントシジン量定量工程(xiv)」、「リファレンス重量比R-PpP算出工程(xv)」及び「重量比PpP・R-PpP比較工程(xvi)」のみならず、本発明の特徴を損なわない範囲において、他の工程を有してもよい。
【0054】
また、本発明に係る哺乳動物における疾患の潜在的罹患リスク及び/または哺乳動物が潜在的に健康であるか否かを評価するための指標として、哺乳動物の歯に含まれるコラーゲンの含有ピリジノリン量の定量値及び含有総糖化産物量の定量値から算出される重量比の値を用いる方法は、上述した「評価対象含有ピリジノリン量定量工程(xvii)」、「評価対象含有総糖化産物量定量工程(xviii)」、「評価対象重量比PpG算出工程(xix)」、「リファレンス含有ピリジノリン量定量工程(xx)」、「リファレンス含有総糖化産物量定量工程(xxi)」、「リファレンス重量比R-PpG算出工程(xxii)」及び「重量比PpG・R-PpG比較工程(xxiii)」のみならず、本発明の特徴を損なわない範囲において、他の工程を有してもよい。
【0055】
本発明に係る哺乳動物における疾患の潜在的罹患リスク及び/または哺乳動物が潜在的に健康であるか否かを評価するための指標として、哺乳動物の歯に含まれるコラーゲンの含有ピリジノリン量(ng/mg)の定量値を用いる方法、本発明に係る哺乳動物における疾患の潜在的罹患リスク及び/または哺乳動物が潜在的に健康であるか否かを評価するための指標として、哺乳動物の歯に含まれるコラーゲンの含有ペントシジン量(ng/mg)の定量値を用いる方法、本発明に係る哺乳動物における疾患の潜在的罹患リスク及び/または哺乳動物が潜在的に健康であるか否かを評価するための指標として、哺乳動物の歯に含まれるコラーゲンの含有総糖化産物量(ng/mg:含有ペントシジン量換算)の定量値を用いる方法、本発明に係る哺乳動物における疾患の潜在的罹患リスク及び/または哺乳動物が潜在的に健康であるか否かを評価するための指標として、哺乳動物の歯に含まれるコラーゲンの含有ピリジノリン量の定量値及び含有ペントシジン量の定量値から算出される重量比の値を用いる方法、ならびに、本発明に係る哺乳動物における疾患の潜在的罹患リスク及び/または哺乳動物が潜在的に健康であるか否かを評価するための指標として、哺乳動物の歯に含まれるコラーゲンの含有ピリジノリン量の定量値及び含有総糖化産物量の定量値から算出される重量比の値を用いる方法において、「歯」に限定している理由は、タイプIコラーゲンにおけるピリジノリン架橋、ペントシジン架橋及び総糖化産物の架橋が、いずれも体温による体内熱と経血管的に供給される糖などの因子により加速する架橋反応であり、局所的ではなく、循環血流量に応じて引き起こされる架橋反応であり、その中でも、ピリジノリン架橋分子、ペントシジン架橋分子及びペントシジン架橋分子を含む総糖化産物の架橋分子の蓄積を最も正確に反映すると考えられるのが歯(特に象牙質)に含有されるコラーゲンだからである。歯は、生体の中で唯一代謝サイクルに組み込まれていない組織であり、一度形成されると吸収分解されることがないことから、ピリジノリン架橋分子、ペントシジン架橋分子及びペントシジン架橋分子を含む総糖化産物の架橋分子が歯(特に象牙質)含有コラーゲンに蓄積されるためである。
【0056】
さらに、歯(特に象牙質)のコラーゲンは、骨と比較して不溶性である。0.01N塩酸、4℃、72時間の処理時間という条件下におけるペプシン消化では、成牛骨については約35%のコラーゲンが可溶化されるが、成牛の歯の象牙質については5.6%のコラーゲンしか可溶化されない。また、pH2の条件下、皮膚やアキレス腱などの不溶性コラーゲンが4~8倍の体積に膨潤し、成牛骨の不溶性コラーゲンが1.2倍の体積に膨潤するのに対し、成牛の象牙質の不溶性コラーゲンは全く膨潤しない(永井裕・藤本大三郎編、コラーゲン実験法、講談社サイエンティフィック、p.21-22)。また、歯の象牙質コラーゲンは、ピリジノリン架橋分子の含有率が生体で最も高い。従って、哺乳動物の歯に含まれるコラーゲンの含有ピリジノリン量の定量値であるPYD(ng/mg)、哺乳動物の歯に含まれるコラーゲンの含有ペントシジン量の定量値であるPEN(ng/mg)、哺乳動物の歯に含まれるコラーゲンの含有総糖化産物量の定量値であるT-GLYC(ng/mg:含有ペントシジン量換算)、哺乳動物の歯に含まれるコラーゲンの含有ピリジノリン量の定量値であるPYD(ng/mg)及び含有ペントシジン量の定量値であるPEN(ng/mg)から算出される重量比の値であるPpP(含有ピリジノリン量(ng/mg)/含有ペントシジン量(ng/mg))、ならびに、哺乳動物の歯に含まれるコラーゲンの含有ピリジノリン量の定量値であるPYD(ng/mg)及び含有総糖化産物量の定量値であるT-GLYC(ng/mg:含有ペントシジン量換算)から算出される重量比の値であるPpG(含有ピリジノリン量(ng/mg)/含有総糖化産物量(ng/mg:含有ペントシジン量換算))を指標として、哺乳動物における疾患の潜在的罹患リスク及び/または哺乳動物が潜在的に健康であるか否かを評価することは、理に適うのである。
【0057】
一方、骨を除外した根拠について説明する。骨粗鬆症の指標として、血液(血清)中のタイプIコラーゲンC末端テロペプチド(ICTP)や尿中のNTx(タイプIコラーゲン架橋N-テロペプチド)の数値が広く利用されているが、これらは、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMPs)活性によるコラーゲン分解産物として血中・尿中に放出される物質であり、ピリジノリン架橋分子を含んだ物質である。このことから、骨含有コラーゲンに含まれるピリジノリン架橋分子、ペントシジン架橋分子及びペントシジン架橋分子を含む総糖化産物の架橋分子は、代謝によって一部クリアランスされていることが分かるということに加えて、摘出された骨を用いる場合、骨は黄色骨髄に起因する大量の脂質を含んだ器官であることから、脱脂作用が容易ではなく、純度の高いコラーゲンを精製するのが非常に困難となるからである。
【0058】
なお、本発明に係る哺乳動物における疾患の潜在的罹患リスクを評価するための指標として、哺乳動物の歯に含まれるコラーゲンの含有ピリジノリン量の定量値であるPYDを用いる方法、本発明に係る哺乳動物における疾患の潜在的罹患リスクを評価するための指標として、哺乳動物の歯に含まれるコラーゲンの含有ペントシジン量の定量値であるPENを用いる方法、本発明に係る哺乳動物における疾患の潜在的罹患リスクを評価するための指標として、哺乳動物の歯に含まれるコラーゲンの含有総糖化産物量の定量値であるT-GLYCを用いる方法、本発明に係る哺乳動物における疾患の潜在的罹患リスクを評価するための指標として、哺乳動物の歯に含まれるコラーゲンの含有ピリジノリン量の定量値であるPYD及び含有ペントシジン量の定量値であるPENから算出される重量比の値であるPpP(含有ピリジノリン量/含有ペントシジン量)の値を用いる方法、本発明に係る哺乳動物における疾患の潜在的罹患リスクを評価するための指標として、哺乳動物の歯に含まれるコラーゲンの含有ピリジノリン量の定量値であるPYD及び含有総糖化産物量の定量値であるT-GLYCから算出される重量比の値であるPpG(含有ピリジノリン量/含有総糖化産物量)の値を用いる方法、本発明に係る哺乳動物が潜在的に健康であるか否かを評価するための指標として、哺乳動物の歯に含まれるコラーゲンの含有ピリジノリン量の定量値であるPYDを用いる方法、本発明に係る哺乳動物が潜在的に健康であるか否かを評価するための指標として、哺乳動物の歯に含まれるコラーゲンの含有ペントシジン量の定量値であるPENを用いる方法、本発明に係る哺乳動物が潜在的に健康であるか否かを評価するための指標として、哺乳動物の歯に含まれるコラーゲンの含有総糖化産物量の定量値であるT-GLYCを用いる方法、本発明に係る哺乳動物が潜在的に健康であるか否かを評価するための指標として、哺乳動物の歯に含まれるコラーゲンの含有ピリジノリン量の定量値であるPYD及び含有ペントシジン量の定量値であるPENから算出される重量比の値であるPpP(含有ピリジノリン量/含有ペントシジン量)の値を用いる方法、ならびに、本発明に係る哺乳動物が潜在的に健康であるか否かを評価するための指標として、哺乳動物の歯に含まれるコラーゲンの含有ピリジノリン量の定量値であるPYD及び含有総糖化産物量の定量値であるT-GLYCから算出される重量比の値であるPpG(含有ピリジノリン量/含有総糖化産物量)の値を用いる方法は、各々、独立であってもよく、関連してもよい。
【0059】
以下、本発明に係る哺乳動物における疾患の潜在的罹患リスク及び/または哺乳動物が潜在的に健康であるか否かを評価するための指標として、哺乳動物の歯に含まれるコラーゲンの含有ピリジノリン量(ng/mg)の定量値を用いる方法、本発明に係る哺乳動物における疾患の潜在的罹患リスク及び/または哺乳動物が潜在的に健康であるか否かを評価するための指標として、哺乳動物の歯に含まれるコラーゲンの含有ペントシジン量(ng/mg)の定量値を用いる方法、本発明に係る哺乳動物における疾患の潜在的罹患リスク及び/または哺乳動物が潜在的に健康であるか否かを評価するための指標として、哺乳動物の歯に含まれるコラーゲンの含有総糖化産物量の定量値を用いる方法、本発明に係る哺乳動物における疾患の潜在的罹患リスク及び/または哺乳動物が潜在的に健康であるか否かを評価するための指標として、哺乳動物の歯に含まれるコラーゲンの含有ピリジノリン量(ng/mg)の定量値及び含有ペントシジン量(ng/mg)の定量値から算出される重量比(含有ピリジノリン量(ng/mg)/含有ペントシジン量(ng/mg))の値を用いる方法、ならびに、本発明に係る哺乳動物における疾患の潜在的罹患リスク及び/または哺乳動物が潜在的に健康であるか否かを評価するための指標として、哺乳動物の歯に含まれるコラーゲンの含有ピリジノリン量の定量値及び含有総糖化産物量の定量値から算出される重量比(含有ピリジノリン量(ng/mg)/含有総糖化産物量(ng/mg:含有ペントシジン量換算))の値を用いる方法について、実施例に基づいて説明する。なお、本発明の技術的範囲は、これらの実施例によって示される実施態様に限定されない。
【実施例
【0060】
《実施例1》ヒト非糖尿病患者、ヒト糖尿病患者及びウシの歯(主に象牙質)由来コラーゲン中のピリジノリン量、ペントシジン量及び総糖化産物量の測定
下記の手順により、ヒト非糖尿病患者14例、ヒト糖尿病患者4例及びウシ(ウシ特定危険部位(Specified Risk Materials;SRM))19例の歯(主に象牙質)由来コラーゲン中のピリジノリン量(ng/mg)、ペントシジン量(ng/mg)及び総糖化産物量(ng/mg:含有ペントシジン量換算)を測定した。
【0061】
1.コラーゲン粉末の調整
[1-1]粉砕機にて、硬組織を粒子径1mm程度にまで粉砕した。
[1-2]1%炭酸ナトリウム水溶液中にて、70℃条件下で数時間攪拌処理をして、付着している軟組織を除去した。
[1-3]脱灰処理を行った。詳細には、1Mリン酸とエタノールとを含有する脱灰液を用いて、減圧をしながら数時間脱灰処理をした後、数倍に希釈した前記脱灰液に置換して、減圧をしながら数時間脱灰処理を行った。続いて、5倍に希釈した上述脱灰液を用いて室温条件下、一昼夜程度の間、振盪して完全に脱灰した。その後、5%エタノールを用いて室温条件下、数回、洗浄を行った。
[1-4]脱灰後の硬組織を乳鉢に移し、70%エタノール中にて擦り潰すことで微粉末化した。
[1-5]100%エタノールにて攪拌し、洗浄及び脱脂、脱水を行った。
[1-6]コラーゲン中に残留したエタノールを乾燥により完全に除去し、乾燥コラーゲン粉末を得た。
【0062】
2.分析用サンプルの調整
[2-1][1-6]で得られた乾燥コラーゲン粉末を加水分解した。詳細には、得られた乾燥コラーゲン粉末を試験管に量り取り、脱気下、少量の6N塩酸で充分に膨潤させた後、乾燥コラーゲンに6N塩酸を適量追加し、脱気下で試験管を溶接して密封した。密封した試験管を、一昼夜、110℃の条件下で一晩の加熱処理をすることにより加水分解を行った後、室温まで冷却して試験管を切断し、加温しながら減圧乾燥により余剰な塩酸を除去し、コラーゲンの加水分解物を得た。
[2-2]得られたコラーゲンの加水分解物を、10%メタノール水溶液にて可溶化し、室温下、12000rpmにて5分間遠心し、上清をサンプルとした。
[2-3]サンプルに既知の量の標準物質を加えることにより、抽出率及び検量線を求め、適宜、コラーゲン含有量を補正した。
【0063】
3.ヘプタフルオロ酪酸とギ酸をイオン対試薬として用いた蛍光検出器付き高速液体クロマトグラフ(HPLC-Flu)による、含有ピリジノリン量、含有ペントシジン量及び含有総糖化産物量の定量とそれらの重量比の算出
移動相として0.05%ヘプタフルオロ酪酸を含む超純水(移動相A)と0.05%ギ酸を含むメタノール・エタノール1:1混合液(移動相B)を用いて、グラジエント設定で送液し、検出した。具体的には、検出カラム温度40℃、0.5mL/分の流速にて、移動相A90%移動相B10%の割合で開始し、0.5分間送液した。その後、1分かけて移動相Bを22%まで上昇させて濃度勾配をかけた後、そのまま7.5分間送液した。続いて、1分かけて移動相Bを80%まで上昇させた後、さらに1分間送液した。最後に、移動相A10%移動相B90%の割合で送液後、続いて移動相Bを10%まで下げ、移動相A90%移動相B10%の割合で4分間平衡化した。続いて、1サンプルにつき計15分間かけて検出した。分離カラムにはCadenzaCD-C18、長さ150mm、内径3mmを用い、検出には蛍光検出器を用いた。前半の8分間、励起波長295nm、蛍光波長395nmにてモニターし、後半の7分間、励起波長325nm、蛍光波長385nmにてモニターした。当該モニターにより、含有ピリジノリン量はリテンションタイム約6.5分付近、含有ペントシジン量及び含有総糖化産物量はリテンションタイム約9.1分付近に検出された。得られた含有ピリジノリン量と含有総糖化産物量とから、それらの重量比(含有ピリジノリン量(ng/mg)/含有総糖化産物量(ng/mg:含有ペントシジン量換算))を求めた。
【0064】
上述した、ヒト非糖尿病患者14例、ヒト糖尿病患者4例及びウシ19例の歯に含まれるコラーゲンの含有ピリジノリン量(ng/mg)の定量値であるPYDの、歯の月齢に伴う分布図を図1に、ヒト非糖尿病患者14例、ヒト糖尿病患者4例及びウシ19例の歯に含まれるコラーゲンの含有ペントシジン量(ng/mg)の定量値であるPENの、歯の月齢に伴う分布図を図2に、ヒト非糖尿病患者14例、ヒト糖尿病患者4例及びウシ19例の歯に含まれるコラーゲンの含有総糖化産物量(ng/mg:含有ペントシジン量換算)の定量値であるT-GLYCの、歯の月齢に伴う分布図を図3に、ヒト非糖尿病患者14例、ヒト糖尿病患者4例及びウシ19例の歯に含まれるコラーゲンの含有ピリジノリン量(ng/mg)の定量値であるPYD及び含有ペントシジン量(ng/mg)の定量値であるPENから算出される、重量比の値であるPpP(含有ピリジノリン量(ng/mg)/含有ペントシジン量(ng/mg))の、歯の月齢に伴う分布図を図4に、ヒト非糖尿病患者14例、ヒト糖尿病患者4例及びウシ19例の歯に含まれるコラーゲンの含有ピリジノリン量(ng/mg)の定量値であるPYD及び含有総糖化産物量(ng/mg:含有ペントシジン量換算)の定量値であるT-GLYCから算出される、重量比の値であるPpG(含有ピリジノリン量(ng/mg)/含有総糖化産物量(ng/mg:含有ペントシジン量換算))の、歯の月齢に伴う分布図を図5に、それぞれ示す。なお、図1中、破線は、R-PYDに相当する、ヒトの非糖尿病患者14例のPYDに基づいた近似曲線(線形近似)を示し、図2中、破線は、R-PENに相当する、ヒトの非糖尿病患者14例のPENに基づいた近似曲線(線形近似)を示し、図3中、破線は、R-T-GLYCに相当する、ヒトの非糖尿病患者14例のT-GLYCに基づいた近似曲線(線形近似)を示し、図4中、破線は、R-PpPに相当する、ヒトの非糖尿病患者14例のPpPに基づいた近似曲線(線形近似)を示し、図5中、破線は、R-PpGに相当する、ヒトの非糖尿病患者14例のPpGに基づいた近似曲線(線形近似)を示す。
【0065】
なお、ヒトの歯については永久歯を測定の対象としているが、永久歯象牙質の形成時期を加味すると、平均で10歳頃から顎骨内の歯胚中で象牙質形成が開始され、これに伴い糖化架橋の形成も開始されていると考えることができる(日本人小児における乳歯・永久歯の萌出時期に関する調査研究II,小児歯科学会誌,57(3),363-373,2019,363)。一方、ウシSRMの下顎の歯についても、平均で生後18ヶ月後から同様のことがいえることから、ヒトとウシSRMの所定の歯については、年齢から月齢への変換に下掲の表1を用いている。
【0066】
[表1]
【0067】
また、ヘプタフルオロ酪酸とギ酸をイオン対試薬として用いた蛍光検出器付き高速液体クロマトグラフ(HPLC-Flu)により定量した、ヒト非糖尿病患者14例の歯に含まれるコラーゲンの、含有ピリジノリン量(ng/mg)の定量値であるPYD、含有ペントシジン量(ng/mg)の定量値であるPEN、含有総糖化産物量(ng/mg:含有ペントシジン量換算)の定量値であるT-GLYC、含有ピリジノリン量(ng/mg)の定量値であるPYD及び含有ペントシジン量(ng/mg)の定量値であるPENから算出された重量比の値であるPpP(含有ピリジノリン量(ng/mg)/含有ペントシジン量(ng/mg))、ならびに、含有ピリジノリン量(ng/mg)の定量値であるPYD及び含有総糖化産物量(ng/mg:含有ペントシジン量換算)の定量値であるT-GLYCから算出された重量比の値であるPpG(含有ピリジノリン量(ng/mg)/含有総糖化産物量(ng/mg:含有ペントシジン量換算))を、下掲の表2に示す。
【0068】
[表2]
【0069】
次に、ヘプタフルオロ酪酸とギ酸をイオン対試薬として用いた蛍光検出器付き高速液体クロマトグラフ(HPLC-Flu)により定量した、ヒト糖尿病患者4例の歯に含まれるコラーゲンの、含有ピリジノリン量(ng/mg)の定量値であるPYD、含有ペントシジン量(ng/mg)の定量値であるPEN、含有総糖化産物量(ng/mg:含有ペントシジン量換算)の定量値であるT-GLYC、含有ピリジノリン量(ng/mg)の定量値であるPYD及び含有ペントシジン量(ng/mg)の定量値であるPENから算出された重量比の値であるPpP(含有ピリジノリン量(ng/mg)/含有ペントシジン量(ng/mg))、ならびに、含有ピリジノリン量(ng/mg)の定量値であるPYD及び含有総糖化産物量(ng/mg:含有ペントシジン量換算)の定量値であるT-GLYCから算出された重量比の値であるPpG(含有ピリジノリン量(ng/mg)/含有総糖化産物量(ng/mg:含有ペントシジン量換算))を、下掲の表3に示す。
【0070】
[表3]
【0071】
次に、ヘプタフルオロ酪酸とギ酸をイオン対試薬として用いた蛍光検出器付き高速液体クロマトグラフ(HPLC-Flu)により定量した、ウシ19例の歯に含まれるコラーゲンの含有ピリジノリン量(ng/mg)の定量値であるPYD、含有ペントシジン量(ng/mg)の定量値であるPEN、含有総糖化産物量(ng/mg:含有ペントシジン量換算)の定量値であるT-GLYC、含有ピリジノリン量(ng/mg)の定量値であるPYD及び含有ペントシジン量(ng/mg)の定量値であるPENから算出された重量比の値であるPpP(含有ピリジノリン量(ng/mg)/含有ペントシジン量(ng/mg))、ならびに、含有ピリジノリン量(ng/mg)の定量値であるPYD及び含有総糖化産物量(ng/mg:含有ペントシジン量換算)の定量値であるT-GLYCから算出された重量比の値であるPpG(含有ピリジノリン量(ng/mg)/含有総糖化産物量(ng/mg:含有ペントシジン量換算))を下掲の表4に示す。
【0072】
[表4]
【0073】
図1に示すように、ヒト非糖尿病患者及びウシの歯に含まれるコラーゲンの含有ピリジノリン量(ng/mg)と比較して、ヒト糖尿病患者の歯に含まれるコラーゲンの含有ピリジノリン量(ng/mg)の方が、月齢に伴ってやや増加していることが明らかとなった。
【0074】
また、図2に示すように、ヒト非糖尿病患者及びウシの歯に含まれるコラーゲンの含有ペントシジン量(ng/mg)と比較して、ヒト糖尿病患者の歯に含まれるコラーゲンの含有ペントシジン量(ng/mg)の方が、月齢に伴って増加していることが明らかとなった。
【0075】
また、図3に示すように、ヒト非糖尿病患者及びウシの歯に含まれるコラーゲンの含有総糖化産物量(ng/mg:含有ペントシジン量換算)と比較して、ヒト糖尿病患者の歯に含まれるコラーゲンの含有総糖化産物量(ng/mg:含有ペントシジン量換算)の方が、月齢に伴って増加していることが明らかとなった。
【0076】
また、図4に示すように、ヒト非糖尿病患者及びウシの歯に含まれるコラーゲンの含有ピリジノリン量(ng/mg)の定量値であるPYD及び含有ペントシジン量(ng/mg)の定量値であるPENから算出される、重量比の値であるPpP(含有ピリジノリン量(ng/mg)/含有ペントシジン量(ng/mg))と比較して、ヒト糖尿病患者の歯に含まれるコラーゲンの含有ピリジノリン量(ng/mg)の定量値であるPYD及び含有ペントシジン量(ng/mg)の定量値であるPENから算出される、重量比の値であるPpP(含有ピリジノリン量(ng/mg)/含有ペントシジン量(ng/mg))の方が、月齢に伴って減少していることが明らかとなった。
【0077】
さらに、図5に示すように、ヒト非糖尿病患者及びウシの歯に含まれるコラーゲンの含有ピリジノリン量(ng/mg)の定量値であるPYD及び含有総糖化産物量(ng/mg:含有ペントシジン量換算)の定量値であるT-GLYCから算出される、重量比の値であるPpG(含有ピリジノリン量(ng/mg)/含有総糖化産物量(ng/mg:含有ペントシジン量換算))と比較して、ヒト糖尿病患者の歯に含まれるコラーゲンの含有ピリジノリン量(ng/mg)の定量値であるPYD及び含有総糖化産物量(ng/mg:含有ペントシジン量換算)の定量値であるT-GLYCから算出される、重量比の値であるPpG(含有ピリジノリン量(ng/mg)/含有総糖化産物量(ng/mg:含有ペントシジン量換算))の方が、月齢に伴って減少していることが明らかとなった。
【0078】
以上より、これらのことは、哺乳動物における疾患の潜在的罹患リスク及び/または哺乳動物が潜在的に健康であるか否かを評価するための指標として用いることができることが明らかであることから、哺乳動物における疾患の潜在的罹患リスク及び/または哺乳動物が潜在的に健康であるか否かを評価するための指標として、本発明に係る方法のような、哺乳動物の歯に含まれるコラーゲンの含有ピリジノリン量の定量値を用いる方法が有効であること、哺乳動物における疾患の潜在的罹患リスク及び/または哺乳動物が潜在的に健康であるか否かを評価するための指標として、本発明に係る方法のような、哺乳動物の歯に含まれるコラーゲンの含有ペントシジン量の定量値を用いる方法が有効であること、哺乳動物における疾患の潜在的罹患リスク及び/または哺乳動物が潜在的に健康であるか否かを評価するための指標として、本発明に係る方法のような、哺乳動物の歯に含まれるコラーゲンの含有総糖化産物量の定量値を用いる方法が有効であること、哺乳動物における疾患の潜在的罹患リスク及び/または哺乳動物が潜在的に健康であるか否かを評価するための指標として、本発明に係る方法のような、哺乳動物の歯に含まれるコラーゲンの含有ピリジノリン量の定量値及び含有ペントシジン量の定量値から算出される重量比の値を用いる方法が有効であること、ならびに、哺乳動物における疾患の潜在的罹患リスク及び/または哺乳動物が潜在的に健康であるか否かを評価するための指標として、本発明に係る方法のような、哺乳動物の歯に含まれるコラーゲンの含有ピリジノリン量の定量値及び含有総糖化産物量の定量値から算出される重量比の値を用いる方法が有効であることが示された。
【要約】
【課題】 哺乳動物における疾患の潜在的罹患リスク及び/または哺乳動物が潜在的に健康であるか否かを評価するための指標として、哺乳動物の歯に含まれるコラーゲンの所定の定量値及び/または重量比の値を用いる方法を提供する。
【解決手段】 疾患の潜在的罹患リスク及び/または哺乳動物が潜在的に健康であるか否かの評価の対象となる哺乳動物の歯に含まれるコラーゲンと、疾患に罹患していない哺乳動物、疾患に罹患している哺乳動物、健康である哺乳動物及び健康でない哺乳動物から選択される1または2以上の哺乳動物の歯に含まれるコラーゲンの、それぞれについての上述したPYD、PEN、T-GLYC、PpP及びPpGの少なくともいずれかと、それぞれのリファレンス値とを比較する。
【選択図】 図1
図1
図2
図3
図4
図5