(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-22
(45)【発行日】2024-10-30
(54)【発明の名称】カーボンナノチューブの連続合成方法
(51)【国際特許分類】
C01B 32/162 20170101AFI20241023BHJP
B01J 23/745 20060101ALI20241023BHJP
B01J 35/45 20240101ALI20241023BHJP
B01J 37/16 20060101ALI20241023BHJP
B01J 37/18 20060101ALI20241023BHJP
B01J 37/34 20060101ALI20241023BHJP
C01B 32/164 20170101ALI20241023BHJP
【FI】
C01B32/162
B01J23/745 M
B01J35/45
B01J37/16
B01J37/18
B01J37/34
C01B32/164
(21)【出願番号】P 2023551943
(86)(22)【出願日】2021-10-14
(86)【国際出願番号】 KR2021014229
(87)【国際公開番号】W WO2022097949
(87)【国際公開日】2022-05-12
【審査請求日】2023-05-02
(31)【優先権主張番号】10-2020-0148694
(32)【優先日】2020-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0148695
(32)【優先日】2020-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0148693
(32)【優先日】2020-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】523164115
【氏名又は名称】コルボン カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100087491
【氏名又は名称】久門 享
(74)【代理人】
【識別番号】100104271
【氏名又は名称】久門 保子
(72)【発明者】
【氏名】ファン ヒチョン
【審査官】佐藤 慶明
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2020-0084572(KR,A)
【文献】特開2013-027843(JP,A)
【文献】特開2010-163331(JP,A)
【文献】特表2004-534715(JP,A)
【文献】特表2007-528339(JP,A)
【文献】国際公開第2015/082936(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 32/00 - 32/991
B01J 21/00 - 38/74
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
H
2またはNH
3雰囲気中で金属塩をプラズマ処理して金属ナノ粒子を製造するプラズマ処理ステップと、
溶媒及び界面活性剤を混合してエマルジョン混合物を製造する第1混合物製造ステップと、
前記エマルジョン混合物をキャリアガスと混合して第2混合物を製造する第2混合物製造ステップと、
前記第2混合物と金属ナノ粒子を加熱された反応器内に導入してカーボンナノチューブを形成する反応ステップと、を含
み、
前記金属塩は、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、モリブデン(Mo)及びバナジウム(V)よりなる群から選択される1種以上の金属の酸化物、窒化物、ホウ素化物、フッ化物、臭化物、硫化物、塩化物及びカーボネート塩のうちの少なくとも1種の金属塩である、
カーボンナノチューブの連続合成方法。
【請求項2】
前記プラズマ処理ステップで、プラズマ処理は、H
2またはNH
3雰囲気に窒素ガス及び18族の不活性ガスがさらに含まれている気体雰囲気中で行われることを特徴とする、請求項1に記載のカーボンナノチューブの連続合成方法。
【請求項3】
H
2またはNH
3、窒素ガス及び18族の不活性ガスは、1~5:5:0.01~1.0の体積比で混合されることを特徴とする、請求項2に記載のカーボンナノチューブの連続合成方法。
【請求項4】
前記プラズマ処理ステップの後、
酸素雰囲気中でプラズマ処理される酸素プラズマ処理ステップがさらに含まれることを特徴とする、請求項1又は2に記載のカーボンナノチューブの連続合成方法。
【請求項5】
前記プラズマ処理ステップが0.2~2.5Torrの圧力で行われることを特徴とする、請求項1に記載のカーボンナノチューブの連続合成方法。
【請求項6】
前記プラズマ処理ステップが15~30kHzの周波数範囲で、50~300℃の温度で行われることを特徴とする、請求項1に記載のカーボンナノチューブの連続合成方法。
【請求項7】
前記第1混合物製造ステップで、前記溶媒は、炭素を含む溶媒、または炭素を含んでいない溶媒が使用され、
前記第1混合物製造ステップで炭素を含んでいない溶媒が使用されると、前記第2混合物製造ステップで炭素源ガスがさらに含まれることを特徴とする、請求項1に記載のカーボンナノチューブの連続合成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ処理された触媒を用いたカーボンナノチューブの連続合成方法に係り、より詳細には、金属塩をプラズマ処理して金属ナノ粒子を製造し、気相で炭素源と反応させてカーボンナノチューブを連続的に合成するか、或いはカーボンナノチューブの合成に用いられる担持触媒に担持された触媒金属の粒子サイズを制御して均一な大きさ及び性能のカーボンナノチューブを製造することができ、触媒の反応性を向上させたカーボンナノチューブの連続合成方法に関する。
【0002】
また、前処理されたカーボンナノチューブを担体とする触媒を用いて分岐型のカーボンナノチューブを製造することにより、親水性及び比表面積が向上した分岐型カーボンナノチューブを製造する方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
熱可塑性樹脂、特に機械的特性、耐熱性に優れた高性能プラスチックは、様々な用途で使用されている。このような高性能プラスチックは、適用される分野によっては部品の誤作動及び汚染の防止のために静電気防止、塵埃汚染防止などの帯電防止性能が必要であり、既存の物性に加えて電気伝導性(Electrical Conductivity)が追加的に求められている。
【0004】
高性能プラスチックにこのような電気伝導性を付与するために、従来は、界面活性剤、金属粉末、金属繊維などを添加したが、これらの成分は、低い導電性を有するか、或いは、例えば機械的強度を弱めるなど、物性を低下させる問題がある。このため、電気伝導性を有する炭素素材への関心が増大しつつある。
【0005】
電気伝導性を有する炭素素材として一般的に導電性カーボンブラックが用いられるが、導電性カーボンブラックを用いて高い電気伝導度を達成するためには、多量のカーボンブラックが添加される必要があり、溶融混合過程でカーボンブラックの構造が分解する場合も発生するから、結果的に樹脂の加工性が悪化し、熱安定性及び物性が著しく低下する問題を引き起こすおそれがあり、導電性充填材の添加量を低減させながら電気伝導性を向上させるために導電性カーボンブラックの代わりにカーボンナノチューブを添加したカーボンナノチューブ-樹脂複合材に関する研究が盛んに進められている。
【0006】
カーボンナノチューブは、1991年に日本で発見された物質であって、1つの炭素原子に隣接の3つの炭素原子が結合しており、これらの炭素原子間の結合によって六角形の環が形成され、これらがハニカム状に繰り返された平面が巻かれて円筒形チューブの形状を有する物質である。
【0007】
カーボンナノチューブは、単層からなる直径約1nmのシングルウォールカーボンナノチューブ(Single-Walled carbon nanotube、SWカーボンナノチューブ)、二層からなるダブルウォールカーボンナノチューブ(double-walled carbon nanotube、DWカーボンナノチューブ)、及び3層以上の多層からなる直径約5~100nmのマルチウォールカーボンナノチューブ(Multiwalled carbon nanotube、MWカーボンナノチューブ)に区分される。
【0008】
このようなカーボンナノチューブは、アーク放電法(arc discharge)、レーザー気化法(laser evaporation)、CVD(thermal chemical vapor deposition)法、触媒的合成法、プラズマ(Plasma)合成法などの様々な方法によって合成でき、これらの方法は、数百~数千度の高温範囲条件でカーボンナノチューブを合成するか或いは真空の下で行われる。
【0009】
しかし、従来の方法は、均一な大きさの触媒を形成し難く、これにより生成されたカーボンナノチューブの直径を均一に制御することが困難であるうえ、還元剤を別途必要として工程過程の経済性の面で不利であるという問題点がある。
【0010】
また、このとき、使用される触媒の耐久性が高く、触媒活性を有する粒子のサイズが一定であるほど均一な大きさを有し、優れた性能のカーボンナノチューブを製造することができるだけでなく、カーボンナノチューブの合成収率が向上できるので、このような機能性触媒の開発が持続的に行われている。
【0011】
また、既存の従来の合成方法は、チューブ(tube)状または棒(rod)状の一次元的なカーボンナノチューブの合成のみが可能である。現在、カーボンナノチューブを利用した多様な応用分野が提示されており、それぞれの応用分野は、特性化されたカーボンナノチューブを要求している。
【0012】
例えば、カーボンナノチューブが電極の材料、高分子の強化材、トランジスタ或いは電気化学材料として用いられる場合には、チューブまたはワイヤ形状の一直線状の一次元的な構造よりは、二次元もしくは三次元の構造を有する枝状のカーボンナノチューブがさらに有利であり得る。
【0013】
特に電極の材料として使用される場合、カーボンナノチューブとカーボンナノチューブとの接合、或いはカーボンナノチューブと集電装置(current collector)との接合において一つの木のような構造を有する二次元もしくは三次元的な分岐型カーボンナノチューブは、電極の効率性と安定性に非常に優れると予想される。
【0014】
一般に、カーボンナノチューブの場合は、カーボンナノチューブ間の強いファンデルワールス力のため、カーボンナノチューブを使用するときに溶解又は分散させることが困難であるという問題があり、分岐型カーボンナノチューブの場合は、分岐領域でカーボンナノチューブ同士が互いに絡み合って凝集するため、分散がより困難であるという問題があった。そのため、分岐型カーボンナノチューブの親水性を高めて使用時の分散性を向上させることができる、カーボンナノチューブの製造方法が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の一実施形態は、プラズマ処理された触媒を用いたカーボンナノチューブの連続合成方法に関し、還元剤を別途添加せず、金属塩をプラズマ処理して金属ナノ粒子を製造し、気相で炭素源と反応させてカーボンナノチューブを連続的に製造するカーボンナノチューブの連続合成方法に関する。
【0016】
本発明の他の実施形態によるカーボンナノチューブの製造方法は、カーボンナノチューブの合成に用いられる担持触媒に担持された触媒金属の粒子サイズを制御して均一な大きさ及び性能のカーボンナノチューブを製造することができ、触媒の反応性を向上させることができる。
【0017】
本発明の別の実施形態は、前処理されたカーボンナノチューブを担体とする触媒を用いて分岐型のカーボンナノチューブを製造することにより、親水性及び比表面積が向上した、分岐型カーボンナノチューブの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記の目的を達成するための本発明の一実施形態は、H2またはNH3の雰囲気中で金属塩をプラズマ処理して金属ナノ粒子を製造するプラズマ処理ステップと、溶媒及び界面活性剤を混合してエマルジョン混合物を製造する第1混合物製造ステップと、前記エマルジョン混合物をキャリアガスと混合して第2混合物を製造する第2混合物製造ステップと、前記第2混合物と金属ナノ粒子を加熱された反応器内に導入してカーボンナノチューブを形成する反応ステップと、を含む。
【0019】
前記プラズマ処理ステップで、プラズマ処理は、H2またはNH3雰囲気に窒素ガス及び18族の不活性ガスがさらに含まれている気体雰囲気中で行われてもよい。このとき、H2またはNH3、窒素ガス及び18族の不活性ガスは、約1~5:5:0.01~1.0の体積比で混合されることが好ましい。
【0020】
前記プラズマ処理ステップの後、酸素雰囲気中でプラズマ処理される酸素プラズマ処理ステップがさらに含まれてもよい。
【0021】
前記プラズマ処理ステップは、約0.2~2.5Torrの圧力で、約15~30kHzの周波数範囲で、約50~300℃の温度で行われてもよい。
【0022】
前記第1混合物製造ステップで、前記溶媒は、炭素を含む溶媒または炭素を含んでいない溶媒が使用でき、このとき、前記第1混合物製造ステップで炭素を含んでいない溶媒が使用される場合には、前記第2混合物製造ステップで炭素源ガスがさらに含まれてもよい。
【0023】
本発明の他の実施形態は、溶媒、金属前駆体及び支持体を混合して混合液を製造する混合ステップと、前記混合液を振動下で加熱して触媒担体を製造する第1加熱ステップと、前記触媒担体を還元溶液に分散させて触媒分散液を製造する分散ステップと、前記触媒分散液に電子ビームを照射する電子ビーム照射ステップと、前記電子ビーム照射ステップで得られた混合物を濾過した後、加熱して機能性触媒担体を製造する第2加熱ステップと、前記機能性触媒担体と炭素源とを反応させてカーボンナノチューブを製造する合成ステップと、を含む、カーボンナノチューブの製造方法に関する。
【0024】
前記混合ステップは、溶媒100重量部に金属前駆体0.1~2.0重量部を混合して溶解させた後、支持体0.5~5.0重量部を混合することにより行われてもよい。
【0025】
前記第1加熱ステップは、前記混合液に振動を加え、60~120℃の温度範囲で加熱した後、振動を止めて150~250℃で加熱する多段加熱方式で行われることができる。
【0026】
前記還元溶液は、炭素数1~3のアルコール及び還元剤を含む水溶液であってもよい。
前記還元剤は、ヒドラジン、LiBH4、NaBH4、エチレンオキシド、ホルムアルデヒド、ギ酸及びポリオールのうちの少なくとも1種を含んでもよい。
【0027】
前記電子ビームは、密度電流量が100~500A/cm2であり、加速電圧が300~600keVであってもよく、前記電子ビームは、照射時間が3~10分であってもよい。
【0028】
前記第2加熱ステップにおける加熱温度は、500~1000℃であってもよい。
【0029】
前記第2加熱ステップと合成ステップとの間に、機能性触媒担体をプラズマ処理するプラズマ処理ステップがさらに行われてもよい。
【0030】
本発明の別の実施形態は、カーボンナノチューブが混合された酸性溶液を水中放電させる前処理ステップと、前記前処理ステップで得られたカーボンナノチューブを熱処理して担体を製造する熱処理ステップと、前記担体、溶媒及び触媒前駆体を混合した後、前記触媒前駆体を還元させることにより、触媒が担体に担持された触媒構造体を製造する触媒構造体製造ステップと、前記触媒構造体を炭素源と反応させて分岐型カーボンナノチューブを製造するカーボンナノチューブ合成ステップと、を含む、親水性が向上した分岐型カーボンナノチューブの製造方法に関する。
【0031】
前記前処理ステップは、酸性溶液にカーボンナノチューブを混合した後、超音波処理する第1前処理ステップと、前記第1前処理ステップを経た混合物を水中プラズマ放電させる第2前処理ステップと、を含んでもよい。
【0032】
前記熱処理ステップは、前処理されたカーボンナノチューブを280~550℃の温度範囲で20~80分間酸素雰囲気中で熱処理するステップであってもよい。
【0033】
前記触媒構造体製造ステップは、前記担体、溶媒及び触媒前駆体を混合して前駆体混合物を製造する第1ステップと、前記前駆体混合物を90~120℃の温度で乾燥させて担持触媒を製造する第2ステップと、前記担持触媒を還元液と混合した後、撹拌して触媒構造体を製造する第3ステップと、前記触媒構造体を濾過し、洗浄する第4ステップと、を含んでもよい。
【0034】
前記第3ステップは、20~200℃の温度で行われてもよい。
【0035】
前記還元液は、ヒドラジン、LiBH4、NaBH4、エチレンオキシド、ホルムアルデヒド、ギ酸及びポリオールよりなる群から選択される少なくとも1種を含んでもよい。
【発明の効果】
【0036】
本発明のカーボンナノチューブの連続合成方法は、相対的に低い温度でより短時間内に金属塩を還元させて触媒を製造することができ、カーボンナノチューブの収率を増加させることができ、カーボンナノチューブの直径を均一に制御して大量のカーボンナノチューブを経済的に生産することができる。
【0037】
本発明の他の実施形態によるカーボンナノチューブの製造方法によれば、カーボンナノチューブの合成に用いられる担持触媒に担持された触媒金属の粒子サイズを制御して均一な大きさ及び性能のカーボンナノチューブを製造することができ、触媒の反応性が向上してカーボンナノチューブの合成収率が向上することができる。
【0038】
本発明の別の実施形態による分岐型カーボンナノチューブの製造方法によれば、一直線状のカーボンナノチューブ上に多数のY接合が形成されて木の形態を有するカーボンナノチューブを合成することができ、このような方法で合成されたカーボンナノチューブは、親水性及び比表面積が向上して分散性に優れるうえ、電気化学的材料として使用される場合には安定性及び電気化学的効率性に優れるという利点がある。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の好適な実施形態によって詳細に説明する前に、本明細書の請求の範囲で使用された用語または単語は、通常的または辞典的な意味に限定されて解釈されてはならず、本発明の技術的思想に合致する意味と概念で解釈されるべきであることを明らかにする。
【0040】
本明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」とする場合、これは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0041】
本明細書全体において、特定の物質の濃度を示すために使用される「%」は、特に言及がない限り、固体/固体の場合には(重量/重量)%、固体/液体の場合には(重量/体積)%、及び液体/液体と気体/気体の場合には(体積/体積)%をそれぞれ意味する。
【0042】
一般に、コロイドとは、粒子のサイズが0.45μm(あるいは0.2μm)よりも小さく、1000Da(Dalton、1分子の質量)よりは大きいあらゆるものを意味するが、本発明の明細書において、「コロイド」とは、含まれた粒子のサイズが数~数百ナノメートルである粒子を含む溶液を意味し、時にはその前駆体までも含む意味で使用される。
【0043】
以下では、本発明の実施形態について説明する。しかし、本発明の範疇が以下の好適な実施形態に限定されるものではなく、当業者であれば、本発明の権利範囲内で、本明細書に記載されている内容の様々な変形例を実施することができる。
【0044】
本発明の一実施形態によるカーボンナノチューブの連続合成方法は、H2またはNH3雰囲気中で金属塩をプラズマ処理して金属ナノ粒子を製造するプラズマ処理ステップと、溶媒及び界面活性剤を混合してエマルジョン混合物を製造する第1混合物製造ステップと、前記エマルジョン混合物をキャリアガスと混合して第2混合物を製造する第2混合物製造ステップと、前記第2混合物と金属ナノ粒子を加熱された反応器内に導入してカーボンナノチューブを形成する反応ステップと、を含む、カーボンナノチューブの連続合成方法に関する。
【0045】
前記プラズマ処理ステップは、H2またはNH3雰囲気中で金属塩をプラズマ処理して金属ナノ粒子を製造するステップである。
【0046】
プラズマ状態は、固体、液体、気体以外の物質である第4の状態と呼ばれ、分子、原子、イオン、電子、量子からなり、全体として準中性(quasi-neutral)として知られている電気的中性状態にある。プラズマは、高温プラズマ(平衡プラズマ)と低温プラズマ(非平衡プラズマ)に分類され、高温プラズマは、1000℃以上の高温を誘導するプラズマとしてアーク溶接などの分野で主に使用される。
【0047】
前記プラズマを発生させるための電力には特に制限がないが、高周波交流、高周波パルス発生器が使用でき、好ましくは、高周波陽極直流パルス発生器が使用できる。
【0048】
プラズマ処理は、H2またはNH3雰囲気中で行われることが好ましく、さらに好ましくは、H2またはNH3雰囲気に窒素ガス及び18族の不活性ガスがさらに含まれている気体雰囲気中で行われることができる。
【0049】
このとき、H2またはNH3、窒素ガス及び18族の不活性ガスは、約1~5:5:0.01~1.0の体積比で混合されることが好ましく、さらに好ましくは、約2:5:0.5の体積比で混合されることができる。H2またはNH3が1v/vよりも少なく含まれる場合、プラズマ処理で生成される水素ラジカルの比率が減少して生成される金属ナノ粒子のサイズが小さく、カーボンナノチューブの収率が減少するおそれがある。
【0050】
これに対し、H2またはNH3が5v/vを超えて混合される場合、水素ラジカルの比率が高くなって気相雰囲気が不安定であって、触媒として使用される金属ナノ粒子のサイズを制御することが難しく、製造されるカーボンナノチューブの直径も均一でないという問題点が発生するおそれがある。
【0051】
このとき、NH3は、プラズマを通過しながら水素と窒素に分解し、生成された水素ラジカルは、金属塩を還元させて金属ナノ粒子を製造し、窒素は、安定的な反応環境を提供して金属ナノ粒子の生成率を増加させる役目をする。
【0052】
前記H2またはNH3雰囲気における窒素ガス及び18族の不活性ガスは、プラズマ処理で生成される水素ラジカルの高い反応性により不純物が生じることを防止し、水素ラジカル同士の反応で再び水素ガスが生成されることを防止して金属ナノ粒子の生成率を増加させ、プラズマ処理前、後の圧力を安定的に維持する役目をする。
【0053】
また、18族の不活性ガスは、プラズマ生成を容易にし、ヘリウム(He)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)などが使用されることが好ましく、アルゴン(Ar)が使用されることが最も好ましいが、特にこれに限定されない。
【0054】
一方、前記H2またはNH3雰囲気中でのプラズマ処理ステップの後、さらに酸素雰囲気中でプラズマ処理される酸素プラズマ処理ステップがさらに含まれることができる。このとき、O2、H2O、O3、N2OまたはNO、NO2などの窒素酸化物が酸素雰囲気プラズマ形成ガスとして供給でき、O2またはH2Oが使用されることが好ましいが、これに限定されるものではない。プラズマ処理によって水素、窒素、酸素以外に他の元素が発生しないようにすることにより不純物の発生を防止し、プラズマ処理の反応性を維持することができる。
【0055】
前記プラズマ形成ガスは、プラズマの生成、維持を助けるだけでなく、酸素ガスから生成された酸素ラジカルがプラズマ処理ステップで反応しなかった金属塩をさらに金属ナノ粒子として生成させることにより、金属ナノ粒子の生成率が増加することができる。
【0056】
また、H2またはNH3雰囲気におけるプラズマ処理ステップで形成された金属ナノ粒子の表面の一定部分に酸化膜を形成することにより、金属ナノ粒子同士が凝集することを防止することができる。
【0057】
このような酸素ガスは、約50~300sccm(standual Cubic Centimeter per Minute)の流量で供給されることが好ましく、さらに好ましくは、約100~150sccmの流量で混合できる。酸素ガスが50sccmよりも低い流量で混合されると、金属ナノ粒子の表面に酸化膜を十分に形成することができないため、金属ナノ粒子同士の凝集率が増加するおそれがある。
【0058】
これに対し、300sccmよりも高い流量で混合されると、過剰に生成された酸素ラジカルの酸化反応によって、金属ナノ粒子の表面に酸化膜が広く形成されることにより、金属ナノ粒子がカーボンナノチューブを製造する上での触媒としての反応性が減少するおそれがある。
【0059】
前記プラズマ処理ステップは、約0.2~2.5Torrの圧力で行われることが好ましく、さらに好ましくは、約0.5~1.5Torrの圧力で行われることができる。0.2Torrより低い圧力では、プラズマ周辺に気体が密集しないから金属ナノ粒子を形成するためのラジカルが不足し、2.5Torrよりも高い圧力では、気体分子の運動エネルギーが高くなって過剰に生成された水素又は酸素ラジカルによって水や水素ガスなどが形成されて金属塩の還元可能性が減少し、カーボンナノチューブの収率が低くなるおそれがある。
【0060】
一方、プラズマ生成は、約15~30kHzの周波数範囲で、約50~300℃の温度で行われることが好ましく、さらに好ましくは、約20~30kHzの周波数範囲で約70~150℃の温度で行われることができる。周波数が15kHz未満である場合には、プラズマが生成されないか、或いは生成されたプラズマが長く維持されず容易に消えてしまうおそれがあり、周波数が30kHzを超える場合には、アークプラズマに転移するおそれがある。
【0061】
また、50℃未満の場合には、ラジカルが生成されないため金属塩が還元されないという問題が生じるおそれがあり、300℃を超える場合には、アークプラズマに転移するおそれがある。
【0062】
前記金属塩は、カーボンナノチューブを形成するための触媒である金属ナノ粒子の前駆体であって、プラズマ処理ステップを介して金属の粒子サイズが300nm以下である微粒子に形成され、粒子のサイズが大きい場合とは粒子の物性及び性能などが異なる可能性がある。特に、単位質量当たりの表面積が著しく増加して機能が向上し、粒子の融点減少や変色などの物性変化が現れる。このようなナノメートルサイズの微細金属粒子は、反応性が高く、気相で浮遊状態として存在することができ、気相でのカーボンナノチューブ合成用触媒として使用できる。
【0063】
前記金属塩は、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、モリブデン(Mo)及びバナジウム(V)よりなる群から選択される1種以上の金属の酸化物、窒化物、ホウ素化物、フッ化物、臭化物、硫化物、塩化物及びカーボネート塩のうちの少なくとも1種の金属塩が使用できる。
【0064】
このような金属塩は、そのまま或いは金属酸化物の形態で、プラズマ処理によって形成されたラジカルと接触して還元されることにより、金属ナノ粒子が生成されることができる。前記金属ナノ粒子は、そのサイズが小さいため、それ自体で或いは他の気体と混合されて気相に形成された後、コロイド状に反応器の内部へ噴射されることができる。このとき、キャリアガスとしては、アルゴン、ネオン、ヘリウム、窒素などの不活性ガスまたは炭化水素などが使用でき、流量は約30~450sccmであることが好ましい。
【0065】
上記の流量範囲から外れる場合、金属ナノ粒子が気相で均一に分散または拡散せず、カーボンナノチューブの収率が低下するおそれがあり、反応に参加しない触媒の量が増加して経済性又は工程効率の低下などの問題が発生するおそれがある。
【0066】
一方、前記第1混合物製造ステップは、溶媒及び界面活性剤を混合してエマルジョン混合物を製造するステップである。
【0067】
前記界面活性剤は、以後の反応段階でコロイド状に噴射される金属ナノ粒子同士の凝集を防止し、酸素ガスがさらに含まれているプラズマ処理ステップを経た金属ナノ粒子の表面の酸化膜にくっ付いて触媒として金属ナノ粒子の反応性を向上させることができる。
【0068】
このような界面活性剤としては、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤及び両性界面活性剤のうちの少なくとも一つが使用でき、好ましくは、ノニオン性界面活性剤またはアニオン性界面活性剤が使用できる。
【0069】
前記ノニオン性界面活性剤として、ポリオキシエチレン、アルキルグルコシド、アルキルポリグルコシド、ポリヒドロキシ脂肪酸アミド、アルコキシル化脂肪酸エステル、スクロースエステル、アミンオキシド、アルコールエトキシレート、アミドエトキシレート、アミンオキシド及びアルキルグルコシドなどが使用でき、例えば、コカミドメチル、C8~C14のグルコースアミド、C8~C14のアルキルポリグルコシド、スクロースココエート、スクロースラウレート、ラウラミンオキシド、ココアミンオキシドなどが通常の技術者によって必要に応じて適宜使用できるが、これに限定されるものではない。
【0070】
前記アニオン性界面活性剤として、アルキルサルフェート系、エトキシル化アルキルサルフェート系、アルキルエトキシカルボキシレート系、アルキルグリセリルエーテルスルホネート系、エトキシエーテルスルホネート系、メチルアシルタウレート系、アルキルスルホサクシネート系、アルキルエトキシスルホサクシネート系、アルファ-スルホネート化脂肪酸系、アルキルホスフェートエステル系、エトキシル化アルキルホスフェートエステル系、直鎖アルキルベンゼンスルホネート系、パラフィンスルホネート系、アルファ-オレフィンスルホネート系、アルキルアルコキシサルフェート系などが使用でき、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウレス硫酸ナトリウム、ココ硫酸ナトリウムなどが使用できるが、特にこれに限定されるものではない。
【0071】
前記カチオン性界面活性剤として、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、デシルトリメチルアンモニウムブロミド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド、ジデシルジメチルアンモニウムブロミド、セチルジメチルアンモニウムクロリド、ラウリルジメチルアンモニウムクロリド、ステアリルジメチルアンモニウムクロリド、牛脂ジメチルアンモニウムクロリド、ジ牛脂ジメチルアンモニウムメチルサルフェート、ココナッツアンモニウムクロリド、ステアラミドプロピルPG-ジモニウムクロリドホスフェート、及びステアラミドプロピルエチルジモニウムエトサルフェートよりなる群から選択される少なくとも1種が使用できるが、これに限定されるものではない。
【0072】
前記両性界面活性剤として、アルキルベタイン系、アミドベタイン系、スルホベタイン系、ヒドロキシスルホベタイン系、アミドスルホベタイン系、ホスホベタイン系、イミダゾリニウムベタイン系、アミノプロピオン酸系及びアミノ酸系界面活性剤などが使用できるが、これらに限定されるものではない。
【0073】
前記界面活性剤は、溶媒100重量部に対して5~13重量部で使用でき、界面活性剤の含有量が5重量部未満の場合には、金属ナノ粒子同士が互いに凝集して均一な大きさのカーボンナノチューブを合成し易くないという問題が生じるおそれがある。これに対し、界面活性剤の含有量が13重量部を超える場合には、むしろ過剰な界面活性剤によって触媒として金属ナノ粒子の機能が低下してカーボンナノチューブの収率が低下するという問題が生じるおそれがある。
【0074】
前記溶媒としては、炭素を含まない溶媒が使用されるか、或いは芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、及びアルコール化合物など、炭素を含む溶媒が使用できる。好ましくは、溶媒として水が使用されるか、或いはエタノール(C2H6O)、ベンゼン(C6H6)、トルエン(C7H8)またはキシレン(C8H10)のうちの少なくとも1種が使用できるが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0075】
前記第2混合物製造ステップは、前記エマルジョン混合物をキャリアガスと混合して第2混合物を製造するステップである。このとき、キャリアガスとしては、アルゴン、ネオン、ヘリウム、窒素などの不活性ガスや炭化水素などが使用でき、流量は約30~450sccmであることが好ましい。流量が30sccm未満の場合には、第2混合物中のキャリアガスの含有量があまり低いため、以後、第2混合物が反応器内に導入され易くないおそれがあり、流量が450sccmを超える場合には、キャリアガスの使用量があまり増加して工程過程が経済的ではないという欠点がある。
【0076】
このとき、溶媒として水が使用される場合には、第2混合物製造ステップに炭素源ガスがさらに含まれることができ、カーボンナノチューブの収率、未反応物質の最小化、経済性及び生産性の向上などを考慮して、炭素源ガスの供給流量は約35~280sccmであることが好ましい。
【0077】
前記炭素源ガスとして、一酸化炭素、炭素数1~6の飽和または不飽和の脂肪族炭化水素、または炭素原子数6~10の芳香族炭化水素よりなる群から選択される有機化合物が使用できる。このような炭素源ガスには、酸素、窒素、塩素、フッ素及び硫黄よりなる群から選択されるヘテロ原子が約1~3個含まれてもよい。このとき、炭素源ガスと共に、H2、H2S、NH3などのように特性化されたガスが供給されてもよい。
【0078】
一方、前記反応ステップは、前記第2混合物と金属ナノ粒子を加熱された反応器内に導入してカーボンナノチューブを形成するステップである。
【0079】
前記第2混合物及び金属ナノ粒子は、噴霧または噴射などの方式によって気相に形成されて反応器内に導入でき、コロイド状に噴射されることが好ましい。
【0080】
一方、反応器の温度に応じて、シングルウォールカーボンナノチューブ(Single-Walled Carbon NanoTube、SWNT)またはマルチウォールカーボンナノチューブ(Multi-Walled Carbon NanoTube、MWNT)が主に生成できる。前記反応器の温度は、約600~1500℃に維持されることが好ましいが、製造しようとするカーボンナノチューブの特性に応じて、反応器の温度は適切に調節できる。このとき、マルチウォールカーボンナノチューブ(MWNT)を製造する工程は、約600℃以上1000℃未満の温度で、さらに好ましくは約800℃以上1000℃未満の温度範囲で行われることができる。600℃よりも低い温度では、反応に参加しない反応物の量が増加し、カーボンナノチューブの成長が低調であって収率が減少するおそれがある。
【0081】
シングルウォールカーボンナノチューブ(SWNT)は、約1000℃以上1500℃以下の温度範囲で製造されることが好ましく、さらに好ましくは、約1000℃以上1200℃以下の温度で製造できる。上記の温度範囲から外れる場合には、シングルウォールカーボンナノチューブの成長が低調であって収率が減少するか、カーボンナノチューブの選択度が低下するか、或いはカーボンナノチューブの直径の調節が容易でないなどの問題が生じるおそれがある。
【0082】
以下では、本発明の具体的な実施例を中心に説明する。しかしながら、本発明の範囲は、以下の実施例のみに限定されるものではなく、これらの実施例は、本発明をより具体的に説明するために例示的に提示されたものに過ぎない。通常の技術者であれば、本発明の権利範囲内で本明細書に記載された内容の様々な変形形態を実施し得ることを明らかにする。
【0083】
[実験例1]
水素ガス、窒素ガスまたはアルゴンガスが下記表1の条件で含有された気体雰囲気中で圧力を約1.0Torrに維持し、22kHzの周波数で高周波陽極直流パルス発生器を用いて温度100℃のプラズマを生成することにより、FeCl3を還元させて金属ナノ粒子を製造した。周波数、温度、圧力などはそのまま維持したまま、O2を110sccmの流量で約10分間供給した酸素雰囲気中で酸素プラズマ処理ステップを行った。携帯用CPC(Condensation Particle Counter、Kanomax Model 3800)を用いて約15~100nmサイズの金属ナノ粒子の数濃度(個数/cm3)を約20分間測定した後、金属ナノ粒子の生成率(%)を下記式1によって計算した。
【0084】
金属ナノ粒子の生成率(%)={(R2-R1)/R1}×100 (式1)
(式中、R2は反応後の金属ナノ粒子の数濃度であり、R1は反応前の金属ナノ粒子の数濃度である。)
【0085】
【0086】
前記表1から確認されるように、金属ナノ粒子の生成率が90%を超える場合は、水素ガス、窒素ガス及びアルゴンガスが約2:5:0.01~1.0の体積比(v/v)で混合された実施例1~9の条件であったことが分かる。
【0087】
これに対し、水素ガスのみ含まれている比較例1と、水素、窒素ガスが含まれている比較例2では、金属ナノ粒子の生成率が80%に達せず、水素、窒素及びアルゴンガスの含有量が上記の範囲外である比較例3~6では、金属ナノ粒子の生成率が90%未満であった。
【0088】
したがって、水素ガス、窒素ガス及びアルゴンガスが約2:5:0.01~1.0の体積比(v/v)で混合される場合には、金属ナノ粒子の生成率に優れており、約2:5:0.5の体積比(v/v)で混合される場合には、金属ナノ粒子の生成率に最も優れていることを確認した。
【0089】
[実験例2]
実験例1の実施例1~9及び比較例1~6によって製造された金属ナノ粒子を触媒として用いてカーボンナノチューブを製造した結果は、下記表2に示した。
【0090】
金属ナノ粒子は、キャリアガスとしてのアルゴンを100sccmの流量にして反応器内に噴射することにより供給した。また、溶媒としてベンゼン100重量部に対してアルキルグルコシド6重量部を混合した後、キャリアガスとしてのアルゴンを100sccmの流量で噴射して反応器内に供給した。このとき、反応器の温度は800℃に維持した。
製造されたカーボンナノチューブを走査電子顕微鏡(SEM)で観察して直径を測定し、カーボンナノチューブの収率(%)は下記式2によって計算した。
【0091】
収率(%)={生成されたカーボンナノチューブの量(g)/供給された金属塩の量(g)}×100 (式2)
【0092】
【0093】
前記表2から確認されるように、実施例1~9の場合は、カーボンナノチューブの収率が2,000%を超過し、製造されたカーボンナノチューブの直径も約70nmと一定であり、標準偏差も約74~90の間に維持された。これに対し、比較例1~6の場合は、カーボンナノチューブの収率が2,000%未満であり、カーボンナノチューブの直径が約62~69nmの範囲に製造され、標準偏差も約11~22と計算されたので、製造されるカーボンナノチューブを一定に調節し難いことを確認した。
【0094】
比較例1及び比較例2から、窒素ガスが追加されると、カーボンナノチューブの収率が約2倍以上増加することが分かり、比較例2及び比較例3から、アルゴンガスまで追加されると、カーボンナノチューブの収率とカーボンナノチューブの直径が同時に増加することが分かった。
【0095】
また、比較例3~6及び実施例1~9から、水素ガスと窒素ガスが2:5の体積比であるとき、アルゴンガスの含有量を増加させてカーボンナノチューブの収率と直径を同時に調節することができるアルゴンガスの含有量の範囲は0.01~1.0v/vであることを確認し、最も優れたアルゴンガスの含有量は0.5v/vであることが分かった。
【0096】
[実験例3]
下記表3の条件で実験例1及び実験例2と同様の方式で金属ナノ粒子及びカーボンナノチューブを製造し、式1~式2によって金属ナノ粒子の生成率及びカーボンナノチューブの収率を計算し、製造されたカーボンナノチューブを走査電子顕微鏡(SEM)で観察して直径を測定した。
【0097】
【0098】
前記表3から確認されるように、水素ガスの含有量が1v/v未満である比較例7によって製造されたカーボンナノチューブの収率が2000%未満であり、カーボンナノチューブの直径が制御されないことが分かった。
【0099】
これに対し、水素ガスの含有量が5v/vを超える比較例8及び9の場合は、金属ナノ粒子の生成率が約995%以上とかなり高かったが、カーボンナノチューブの収率が2000%未満であり、製造されたカーボンナノチューブの直径が円滑に制御されないことを確認した。
【0100】
したがって、金属ナノ粒子の生成率、カーボンナノチューブの収率及びカーボンナノチューブの直径の制御面を全て考慮すると、実施例5及び実施例10~12の場合のように水素ガスの含有量が約1~5v/vであるときに測定結果が優れることが分かり、実施例5の場合のように水素ガス、窒素ガス及びアルゴンガスの体積比(v/v)が約2:5:0.5であるときに測定結果が最も優れることを確認した。
【0101】
本発明の他の実施例によるカーボンナノチューブの製造方法は、溶媒、金属前駆体及び支持体を混合して混合液を製造する混合ステップと、前記混合液を振動下で加熱して触媒担体を製造する第1加熱ステップと、前記触媒担体を還元溶液に分散させて触媒分散液を製造する分散ステップと、前記触媒分散液に電子ビームを照射する電子ビーム照射ステップと、前記電子ビーム照射ステップで得られた混合物を濾過した後、加熱して機能性触媒担体を製造する第2加熱ステップと、前記機能性触媒担体と炭素源とを反応させてカーボンナノチューブを製造する合成ステップと、を含む。
【0102】
まず、前記混合ステップは、溶媒、金属前駆体及び支持体を混合して金属前駆体を支持体に吸着させるステップである。このステップで、混合液は溶媒100重量部に金属前駆体0.1~2.0重量部を混合して金属前駆体を均一に分散させた後、支持体0.5~5.0重量部を混合して得られるが、このような手順で行われる場合、金属前駆体が支持体に一層均一に分散して吸着できる。
【0103】
このとき、支持体を一緒に混合した後、300~600rpmの撹拌速度で30分~2時間撹拌が行われることができる。
【0104】
前記溶媒は、支持体と金属前駆体を均一に分散させて金属前駆体を支持体に吸着及び担持させるための分散媒として使用されるものであり、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、アルコール化合物及び水よりなる群から選択される少なくとも1種であり得る。例えば、芳香族炭化水素としてベンゼン、トルエン、キシレンなどが使用でき、脂肪族炭化水素としてヘキサン、ヘプタン、オクタンなどが使用でき、アルコール化合物としてエタノール、プロピルアルコール、ポリエチレングリコールなどが使用できる。
【0105】
特に、溶媒としてアルコール化合物が使用されることが好ましく、さらに好ましくはポリエチレングリコールが使用できる。この場合には、別途の界面活性剤を使用しなくても、金属前駆体が溶媒中に均一に分散する効果を得ることができ、これにより、界面活性剤による金属前駆体と支持体との接近性の低下が予防され、界面活性剤を除去するための後工程が要求されないため、反応効率及び工程効率の面においてより効果的である。
【0106】
前記金属前駆体は、カーボンナノチューブを形成するための触媒の前駆体である金属塩であって、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、モリブデン(Mo)及びバナジウム(V)よりなる群から選択される少なくとも1種の金属の酸化物、窒化物、ホウ素化物、フッ化物、臭化物、硫化物、塩化物及びカーボネート塩のうちの少なくとも1種の金属塩が使用できる。
【0107】
このような金属前駆体は、溶媒100重量部に対して0.1~2.0重量部で混合でき、金属前駆体の含有量が0.1重量部未満の場合には、支持体に担持される金属塩の量が少なく、2.0重量部を超える場合には、追加の担持量増加がないため担持効率が低下するので、混合ステップで、金属前駆体は上記の含有量で混合されることが好ましい。
【0108】
前記支持体は、金属前駆体が吸着される担体であって、その種類は特に限定されないが、炭素系の支持体であってもよく、例えば、カーボンブラック、活性炭素粉末、カーボンナノチューブ、カーボンナノワイヤー及びフラーレンよりなる群から選択される少なくとも1種であってもよい。
【0109】
このような支持体は、多孔性であってもよく、金属前駆体の担持効率及びカーボンナノチューブの合成効率を高めるために、好ましくは比表面積200~600m2/gの多孔性の支持体であり得る。
【0110】
前記多孔性の支持体は、好ましくは、オゾン処理によって比表面積が増加した炭素系の支持体であってもよく、このように炭素系の支持体にオゾン処理を施す場合には、オゾンによって比表面積が増加するだけでなく、酸素系官能基の導入により、以後、金属触媒を担持させるときに担持効率がより向上するという利点がある。
【0111】
具体的には、上述した炭素系の支持体に250~380℃の温度下で80~250mg/minの流量速度でオゾンを供給して1~4時間オゾン処理することが好ましく、このとき、オゾンの流量速度が80mg/min未満である場合には、処理時間が過度に増加して作業性が低下し、250mg/minを超える場合には、反応器の圧力が急激に増加して多孔性支持体粉末の保存が困難であるという問題がある。
【0112】
また、オゾン処理時間が1時間未満の場合には、オゾンによる比表面積の増加、官能基の導入効果が微々たるものであり、オゾン処理時間が4時間を超える場合には、むしろ炭素系支持体の表面の微細気孔が閉鎖されて比表面積が減少するおそれがあるので、上述した条件下でオゾン処理が行われることが好ましい。
【0113】
次に、前記第1加熱ステップは、先に混合ステップで得られた混合液に振動を加えて加熱することにより、触媒担体を製造するステップである。
【0114】
このステップで振動下に加熱が行われることにより、金属前駆体が支持体に吸着する過程で金属前駆体と支持体との凝集或いは支持体と支持体との凝集が防止されるので、支持体上に金属前駆体が均一に分散して吸着され、より一定の大きさの触媒担体の形成が可能であって、以後、カーボンナノチューブの合成時に一定のサイズ及び一定の物性を有するカーボンナノチューブが合成されるので、カーボンナノチューブの信頼性を向上させることができるという利点がある。
【0115】
このステップは、多段加熱方式で行われることができ、具体的には、混合液に振動を加え、60~120℃の温度範囲で10~80分間加熱した後、振動を止めて150~250℃で1~30時間加熱する多段加熱方式で行われることができる。
【0116】
このように一次的に振動を加え、相対的に低い温度で加熱することにより、支持体に金属前駆体が均一に分散及び吸着できる。また、上述した温度範囲に加熱されることにより、溶媒損失が最小限に抑えられるとともに、熱による金属前駆体の支持体への吸着効率が向上することができる。
【0117】
以後、二次的に振動を除去した状態で相対的に高温に加熱することにより溶媒を完全に除去して粒子状の触媒担体を形成することができ、振動がないため、支持体間の衝突による支持体の損傷や金属前駆体の脱落などを防ぐことができる。
【0118】
このとき、振動は、前記混合液の収容された反応器を垂直または水平方向に振動させることにより加えられることができ、振動は、0.5~5mmの振幅及び0.5~5kHzの振動数で印加されることが好ましい。振動の強さが小さい場合には、振動を加えることにより得られる分散効果が微々たるものであり、特に振動数が5kHzを超える場合には、混合液内で支持体が互いに衝突して生じる衝突エネルギーによって支持体の損傷が発生するので、支持体の大きさが不均一になるという問題があるため、上述した条件の振動を加えることが好ましい。
【0119】
次に、前記第1加熱ステップで得られた触媒担体を還元溶液に分散させて触媒分散液を製造する分散ステップが行われる。このステップによって、金属前駆体が金属に還元され且つ触媒活性が向上することができる。
【0120】
前記還元溶液は、炭素数1~3のアルコール及び還元剤を含む水溶液であり、炭素数1~3のアルコールは、メタノール、エタノール又はプロパノールよりなる群から選択される少なくとも1種であってよく、還元剤は、ヒドラジン、LiBH4、NaBH4、エチレンオキシド、ホルムアルデヒド、ギ酸及びポリオールのうちの少なくとも1種であり得る。
【0121】
前記還元溶液は、水100重量部に対してアルコール1~30重量部及び還元剤0.01~1重量部を含むことができる。還元溶液の溶媒として、水ではなく、アルコール水溶液が使用されることにより、別途の界面活性剤なしでも触媒担体が還元溶液に均一に分散できる。それだけでなく、アルコールによって、以後電子ビーム照射ステップで発生する活性種が制御されることにより、触媒担体の損傷を防止することができ、別途の不純物が生成されないため、より純度の高い触媒担体を製造することができるという利点がある。
【0122】
次に、前記触媒分散液に電子ビームを照射する電子ビーム照射ステップが行われる。このステップは、以後、カーボンナノチューブ合成ステップで一定かつ均一な大きさ及び物性のカーボンナノチューブを形成するために、触媒分散液に電子ビームを照射して、還元された金属の粒径及び支持体の粒径を調節するためのステップである。また、電子ビームの照射によって、弱い結合で連結されている支持体の分子結合を強化させることにより、支持体自体の強度を向上させることができる。
【0123】
このステップで触媒分散液に照射される電子ビームは、密度電流量が100~500A/cm2であってもよく、加速電圧は300~600keVであってもよく、照射時間は3~10分であってもよい。
【0124】
電子ビームの密度電流量、加速電圧及び照射時間が上記の範囲未満の場合には、電子ビームの照射による上述の効果を得ることが困難であり、上記の範囲を超える場合には、過剰な電子ビームの照射によってむしろ金属と支持体との結合が切れたり、支持体が損傷したりするなどの問題が発生するおそれがあるので、上述した範囲内の条件で電子ビームが照射されることが好ましい。
【0125】
次に、電子ビーム照射ステップで得られた混合物を濾過した後、加熱して機能性触媒担体を製造する第2加熱ステップが行われる。
【0126】
第2加熱ステップは、電子ビーム照射ステップで得られた混合物を濾過して得られた触媒担体粒子を加熱することにより、支持体の表面と空隙に触媒である金属粒子がコーティングされた形態の機能性触媒担体を製造するステップである。
【0127】
このステップで、加熱温度は500~1000℃、好ましくは800~1000℃であり得る。このような温度範囲で加熱することにより、支持体自体の結晶性が高くなって支持体の強度が向上するとともに、上述した形態の機能性触媒担体が得られるという利点がある。このとき、加熱温度が1000℃を超える場合には、過剰な結晶化によってむしろ空隙が閉鎖され、支持体の比表面積が減少するおそれがあるので、上述した温度範囲で熱処理されることが好ましい。
【0128】
第2加熱ステップで、加熱は1~18時間、好ましくは2~10時間行われ得る。
【0129】
以後、第2加熱ステップを経て得られた機能性触媒担体と炭素源とを反応させてカーボンナノチューブを合成する合成ステップが行われ得るが、このとき、第2加熱ステップと合成ステップとの間に、機能性触媒担体をプラズマ処理するプラズマ処理ステップがさらに行われることができ、このようにプラズマ処理される場合には、支持体自体の強度が向上することができ、金属と支持体との結合力が向上することができる。
【0130】
このとき、プラズマ処理は、窒素または不活性ガス雰囲気中で1~100Torrの真空及び200~500℃の温度下で行われることが好ましく、このような条件で行われるとき、支持体や金属の損傷なしに性能向上効果を得ることができる。
【0131】
最後に、前記合成ステップは、上述した過程で得られた機能性触媒担体と炭素源とを反応させ、機能性触媒担体に担持された金属を触媒にしてカーボンナノチューブを合成するステップであり、この合成ステップを介して、均一な粒径及び物性を有するカーボンナノチューブが合成できる。
【0132】
このステップでカーボンナノチューブを合成する方法は、特に限定されず、例えばアーク放電法、レーザー気化法、CVD法、触媒的合成法、プラズマ合成法、連続気相合成法などに適用できるが、これに限定されるものではない。
【0133】
一例として、前記機能性触媒担体を石英ボート(quartz boat)に入れて反応器の内部に位置させてカーボンナノチューブを製造することができる。
【0134】
一例として、前記機能性触媒担体を溶媒に分散させて反応器内に連続的に供給しながらカーボンナノチューブ合成反応を進行させることにより、カーボンナノチューブを連続的に製造することができる。
【0135】
この場合、前記機能性触媒担体は、水又は有機溶媒などの溶媒中のコロイド溶液の形態で作られ、反応器の内部に微分散または噴霧されてコロイド溶液の粒子滴を気体中に浮遊させると、これらは一定時間気相コロイドとして存在し、これにより二次元または三次元のカーボンナノチューブが気相で連続的に合成できる。
【0136】
機能性触媒担体を溶媒に分散させて得られた分散液またはコロイド溶液を気相にする方法または気体中に浮遊させる方法は、特に限定されず、当業分野における通常の方法、例えば直接噴霧、サイフォン噴霧、アトマイゼーション(atomization)などで行われてもよい。
【0137】
一方、機能性触媒担体を水や有機溶媒などの溶媒に分散させる際には、機能性触媒担体の凝集防止及び均一な分散のためにカーボンナノチューブ合成反応に逆効果を与えない程度の量で界面活性剤が添加できる。このとき、使用される界面活性剤の種類は特に限定されない。
【0138】
カーボンナノチューブ合成ステップにおける炭素源としては、例えば、一酸化炭素、炭素原子数1~6の飽和または不飽和の脂肪族炭化水素または炭素原子数6~10の芳香族炭化水素よりなる群から選択される有機化合物が使用でき、このような炭素源は、酸素、窒素、塩素、フッ素、硫黄よりなる群から選択されるヘテロ原子を1~3個有してもよい。このような炭素源は、コロイド溶液の溶媒を部分的に又は全体的に置換するか或いは追加的に混合することができ、追加的に混合する場合には、反応器にコロイド溶液が噴霧されるとき、炭素源が反応器に一緒に導入されて反応が行われ得る。
【0139】
特に、コロイド溶液の溶媒として水が使用される場合には、反応時に必ず別途の炭素源が供給されなければならない。
【0140】
[製造例1]
機能性触媒担体の製造
【0141】
ポリエチレングリコール100重量部と金属前駆体としてのFeCl30.5重量部とを混合し、これに支持体1.0重量部を混合して380rpmの速度で90分間撹拌を行うことにより、金属前駆体を支持体に吸着させた。このとき、支持体としては、280℃で100mg/minの流量速度で200分間オゾン処理されたBET比表面積370m2/gのカーボンナノチューブを使用した。
【0142】
次に、前記ポリエチレングリコール、金属前駆体及び支持体が混合された混合液を78℃に加熱し、2mmの振幅及び2.3kHzの振動数を有する振動を30分間加えて均一に分散させた後、振動を止めて180℃まで昇温し、8時間加熱することにより、金属前駆体が支持体に均一に吸着された触媒担体を得た。
【0143】
その後、水100重量部、メタノール5重量部及び還元剤としてのLiBH40.05重量部が混合された還元溶液に前記触媒担体を100:5の重量比で混合し、密度電流量230A/cm2、加速電圧400keVの電子ビームを7分間照射した。
【0144】
次に、前記混合物を濾過して粉末成分を850℃で4時間加熱することにより、機能性触媒担体を製造した。
【0145】
カーボンナノチューブの合成
【0146】
先に製造された触媒構造体0.25gを石英ボート(quartz boat)に入れ、電気炉に位置した直径27mmの石英管の中央部に配置した後、100ml/分の流量でアルゴン(Ar)ガスを供給し、電気炉の温度を800℃まで上昇させた。
その後、気化したベンゼン2vol%を含むアルゴン(Ar)ガスを反応器内に注入しながら30分間カーボンナノチューブを合成した。
【0147】
[実験例4]
前記製造例1と同様の方法を用いてカーボンナノチューブを合成するが、機能性触媒担体製造の際に電子ビーム照射条件を下記表4のように変化させて製造し、各機能性触媒担体を用いて製造例と同様の方法でカーボンナノチューブを合成した後、各カーボンナノチューブの直径分布図とBET比表面積を測定して合成収率を計算し、その結果を表4に記載した。このとき、表4における比較例11は、電子ビーム照射ステップを省略し、製造された機能性触媒担体を用いた場合である。
【0148】
直径分布図は、合成された各カーボンナノチューブの走査電子顕微鏡(SEM)写真を撮影し、撮影された写真内のカーボンナノチューブストランドのうち最も薄いものと最も厚いものを含めてランダム10ストランドの直径を測定し、その平均値及び標準偏差を計算して表4に記載した。
【0149】
合成収率(%)=[生成されたカーボンナノチューブの量(g)/供給された触媒構造体の量(g)]×100 (式3)
【0150】
【0151】
前記表4の実験結果を参照すると、実施例11~実施例13の場合は、比表面積が高く、直径分布図が均一なカーボンナノチューブが得られることが分かる。
【0152】
一方、比較例11~比較例15の場合は、直径分布図が不均一であり、合成収率が低く、比較例11、比較例13及び比較例15の場合は、他の試料に比べて比表面積が著しく低いことが分かる。
【0153】
特に、実施例12と比較例15を併せてみると、密度電流量が同一であり、照射時間が10分を超える場合、比表面積が急激に減少し、直径分布図の均一度が低下し、合成収率が著しく低下することが分かるが、これは、電子ビーム照射時間が過度に長いため、支持体の損傷や触媒金属の結合構造の変化などの問題が発生して現れた結果と判断される。
【0154】
また、実施例13と比較例14を併せてみると、照射時間が3分未満である場合でも、直径分布図及び合成収率が著しく低下することが分かるが、これは、電子ビーム照射時間が過度に短いため、電子ビーム照射による還元金属の粒径が調節されていないので現れた結果と判断される。
【0155】
したがって、本実験結果から、カーボンナノチューブ合成の際にカーボンナノチューブの比表面積を向上させ、直径分布図を均一化し、合成収率を向上させるために、本発明の一実施例によるカーボンナノチューブの製造方法中の電子ビーム照射ステップで、電子ビームは、密度電流量100~500A/cm2及び加速電圧300~600keVの条件で3~10分間照射されることが好ましいことを確認することができる。
【0156】
本発明による別の実施形態としては、親水性が向上した分岐型カーボンナノチューブの製造方法が挙げられるが、これによる製造方法によって一直線状の中心カーボンナノチューブ上に多数のY接合が形成され、このようなY接合部では、中心カーボンナノチューブから延びる分岐カーボンナノチューブが形成され、全体として木の形態を有する分岐型カーボンナノチューブを形成することができる。
【0157】
このような分岐型カーボンナノチューブは、複数のY接合部を有するため、電気化学材料として使用される場合、安定性及び電気化学効率性に非常に優れるという利点がある。
【0158】
本発明の一実施形態による分岐型カーボンナノチューブの製造方法は、酸性溶液にカーボンナノチューブを浸漬させる前処理ステップと、前記前処理ステップで得られたカーボンナノチューブを熱処理して担体を製造する熱処理ステップと、前記担体、溶媒及び触媒前駆体を混合し、触媒前駆体を還元させて、担体に触媒が結合した触媒構造体を製造する触媒構造体製造ステップと、前記触媒構造体と炭素源とを反応させて分岐型カーボンナノチューブを製造するカーボンナノチューブ合成ステップと、を含む。
【0159】
まず、前記前処理ステップは、酸性溶液にカーボンナノチューブを浸漬させることにより、触媒の担体として使用されるカーボンナノチューブの表面に物理的な欠陥を発生させ、以後のステップで当該欠陥発生部位に金属触媒粒子を吸着させ、分岐カーボンナノチューブの成長を誘導するために行われるステップである。
【0160】
このステップは、具体的には、カーボンナノチューブを酸性溶液に浸漬させ、超音波処理する第1前処理ステップと、第1前処理ステップを経た混合物を水中プラズマ放電させる第2前処理ステップと、を含む。
【0161】
第1前処理ステップは、酸性溶液にカーボンナノチューブを浸漬させ、超音波処理することにより、酸性溶液中にカーボンナノチューブを均一に分散させるためのステップであり、この時、酸性溶液として、酢酸、ギ酸、乳酸、安息香酸、プロピオン酸、クエン酸、マロン酸、アジピン酸及び酒石酸よりなる群から選択される少なくとも1種の弱酸を含む弱酸水溶液が使用できる。
【0162】
第1前処理ステップで使用される酸性溶液が、硫酸、塩酸、硝酸またはリン酸などを含む強酸水溶液である場合には、第1前処理ステップのみでカーボンナノチューブの物理的な欠陥が誘導できるが、強い酸性により物理的な欠陥の発生量が過度に増加して分岐型のカーボンナノチューブではなく、中心カーボンナノチューブを中心としたブラシ状のカーボンナノチューブが形成されるという問題があるので、このとき、酸性溶液として上述の弱酸水溶液が使用されることが好ましい。
【0163】
第1前処理ステップは、80~130℃で1~5時間行われることができ、このステップを経てカーボンナノチューブの均一な分散が行われ、且つ熱及び弱酸の同時作用によってカーボンナノチューブに親水性官能基が結合してカーボンナノチューブに親水性が付与される。
【0164】
前記第2前処理ステップは、カーボンナノチューブが浸漬された弱酸水溶液にパルス波の水中プラズマ放電を起こしてラジカルを発生させ、このように発生したラジカルによってカーボンナノチューブにさらに多くの物理的欠陥を発生させるステップである。同時に、プラズマ放電によって発生したラジカルが、カーボンナノチューブの物理的欠陥が発生した部位に結合して、担体として使用されるカーボンナノチューブを親水化させることにより、最終的に得られる分岐型カーボンナノチューブの親水性を向上させて各種溶媒での分酸性を向上させることができる。
【0165】
また、プラズマ放電を介して、反応に用いられる混合物に含まれている各種汚染物質が除去されるので、より純度高く安定した担体の製造が可能であるという利点がある。
【0166】
このステップで、水中プラズマ放電は周波数3~6kHz、パルス幅(pulse width)3~5秒、600~1200Wの電力で印加できるが、このようなプラズマ放電条件は、プラズマの発生を誘導しながら、プラズマ放電によるカーボンナノチューブの物理的欠陥を形成させ、かつ、最終的に形成される分岐型カーボンナノチューブの形態をブラシ型或いは一体型ではなく、複数のY接合が形成された分岐型に形成させるための条件なので、水中プラズマ放電の際に前記放電条件を維持することが好ましい。
【0167】
第2前処理ステップは、10~60℃の温度範囲で30分~2時間行われることができ、前記温度条件よりも低い温度条件または短時間の間に行われる場合には、物理的欠陥形成率が低く、上記の温度条件よりも高い温度或いは上記の時間よりも長い時間の間に工程が行われる場合には、過度の欠陥発生により分岐型構造が形成されないため、むしろ最終的に得られるカーボンナノチューブの物理的、電気的性質の低下が引き起こされるので、上述した工程時間の間にプラズマ処理が行われることが好ましい。
【0168】
次に、前記前処理ステップで得られたカーボンナノチューブを熱処理して担体を製造する熱処理ステップが行われる。先に前処理ステップで得られたカーボンナノチューブは、濾過及び洗浄を行った後、熱処理ステップに使用でき、熱処理ステップを介して、カーボンナノチューブの表面に存在する汚染物質やアモルファスカーボンなどが除去され、より純度の高いカーボンナノチューブが得られる。ここで得られたカーボンナノチューブは、以後のステップで触媒を担持するための担体として使用される。
【0169】
このステップは、酸素雰囲気下で前処理されたカーボンナノチューブを280~550℃の温度範囲で20~80分間熱処理するステップであり、ここで、酸素雰囲気とは、酸素単独あるいは酸素が含まれている気体、例えば空気を意味する。酸素雰囲気下で熱処理されるので、カーボンナノチューブの表面の親水性を付与する官能基がそのまま維持されて以後のステップでも、担体として使用されるカーボンナノチューブの親水性が維持され得る。
【0170】
このステップで熱処理温度や時間が上記の範囲未満の場合には、精製効果が微々たるものであり、上記の温度や時間範囲を超える場合には、過度の熱処理により、むしろ担体として使用されるカーボンナノチューブの物性や親水性が低下するという問題があるので、上述した工程条件内で熱処理が行われることが好ましい。
【0171】
前記触媒構造体製造ステップは、前記熱処理ステップを経て得られたカーボンナノチューブ、すなわち担体を溶媒及び触媒前駆体と共に混合して、担体に触媒が結合した触媒構造体を形成するステップである。このステップを介して、カーボンナノチューブの物理的欠陥が発生した領域に触媒前駆体が結合して還元され、この領域がY接合形成領域として作用し、分岐型カーボンナノチューブの製造を可能にする。
【0172】
このステップは、多段階方式で行われ、具体的には、前記担体、溶媒及び触媒前駆体を混合して前駆体混合物を製造する第1ステップと、前記前駆体混合物を90~120℃の温度範囲で乾燥させて担持触媒を製造する第2ステップと、前記担持触媒を還元液と混合し、撹拌して触媒構造体を製造する第3ステップと、前記触媒構造体を濾過し、洗浄する第4ステップと、を含む。
【0173】
まず、第1ステップは、前記担体、溶媒及び触媒前駆体を混合して前駆体混合物を製造するステップである。担体は、先の熱処理ステップによって得られたカーボンナノチューブである。
【0174】
前記溶媒は、担体と触媒前駆体を均一に分散させて触媒前駆体を担体に吸着及び担持させるための分散媒として用いられるものであり、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、アルコール化合物及び水よりなる群から選択される少なくとも1種であり得る。例えば、芳香族炭化水素としてベンゼン、トルエン、キシレンなどが使用でき、脂肪族炭化水素としてヘキサン、ヘプタン、オクタンなどが使用でき、アルコール化合物としてエタノール、プロピルアルコール、ポリエチレングリコールなどが使用できる。
【0175】
特に、溶媒としてアルコール化合物、特にポリエチレングリコールを使用することが好ましい。この場合、別途の界面活性剤を使用しなくても、触媒前駆体が溶媒中に均一に分散できる。これにより、界面活性剤による触媒前駆体と担体間の接近性の低下を予防することができ、界面活性剤を除去するための後工程が要求されないため、反応効率及び工程効率の面でより効果的である。
【0176】
前記触媒前駆体は、カーボンナノチューブを形成するための触媒の前駆体である金属塩であり、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、モリブデン(Mo)及びバナジウム(V)よりなる群から選択される少なくとも1種の金属の酸化物、窒化物、ホウ素化物、フッ化物、臭化物、硫化物、塩化物及びカーボネート塩のうちの少なくとも1種の金属塩が使用できる。
【0177】
このステップで、前駆体混合物は、溶媒100重量部に対して担体0.1~10重量部及び触媒前駆体0.1~1.2重量部を含むことができる。前駆体混合物中で担体の含有量が0.1重量部未満の場合には、担持触媒の生産性が低下し、10重量部を超える場合には、触媒前駆体の含有量を増加させても、担体への触媒吸着効率が低下するので、上述した重量範囲内で含まれることが好ましい。このとき、このような効果を最大化するために、さらに好ましくは、担体が0.5~3重量部で含まれ得る。
【0178】
前記触媒前駆体の含有量も、担体に対する担持効率を最大化するための範囲であるので、前駆体混合物は、上述した含有量範囲の成分を含むことが好ましい。
【0179】
このステップは、まず、溶媒と触媒前駆体を混合した後、この混合液に担体を混合し、300~600rpmの撹拌速度で2~4時間撹拌することにより行われることができる。このステップを介して水中プラズマ放電によって物理的欠陥が引き起こされ、物理的欠陥部位に形成されたラジカルに前記触媒前駆体としての金属塩が吸着されて後続の還元工程で触媒金属が物理的欠陥領域に結合することができる。
【0180】
このステップで前駆体混合物に触媒機能向上剤がさらに含まれ得るが、このような触媒機能向上剤は、別途の界面活性剤がない溶媒環境で金属前駆体が均一且つ一定の大きさで担体に吸着できるように助け、還元過程における金属粒子同士の過剰な凝集を防止する。したがって、触媒機能向上剤が添加される場合、均一な物性のカーボンナノチューブ成長が行われることができ、分岐型カーボンナノチューブの収率を高めることができる。
【0181】
このような触媒機能向上剤としては、インドール、イミダゾール及びヘクトライト化合物のうちの少なくとも1種が挙げられ、ヘクトライト化合物としては、二水素添加牛脂ベンジルモニウムヘクトライト、ジステアルジモニウムヘクトライト、クオタニウム-18ヘクトライトまたはステアラルコニウムヘクトライトが使用できる。
【0182】
このような触媒機能向上剤は、溶媒と触媒前駆体との混合ステップで一緒に混合でき、触媒前駆体100重量部に対して17~58重量部で含まれることができる。
【0183】
好ましくは、インドールとイミダゾールよりなる群から選択される少なくとも1種の第1化合物とヘクトライト化合物である第2化合物とが一緒に使用できるが、このように一緒に使用される場合、第1化合物と第2化合物がそれぞれ単独で使用される場合よりも、上述した効果がさらに優れるためである。
【0184】
この場合、第1化合物と第2化合物は、1:0.3~0.7の重量比で混合されて使用でき、この混合比から外れる範囲で使用される場合、安定性低下などの要因によって触媒機能向上効果がむしろ不良になってカーボンナノチューブの収率向上効果が得られ難いので、上述した重量範囲内で一緒に使用されることが好ましい。
【0185】
次に、第2ステップは、第1ステップを経て得られた混合物を濾過し、乾燥させて担持触媒を得るステップである。このステップでの乾燥は、90~120℃の温度範囲で2~10時間行われることができ、このステップを経ることにより、担体に物理的欠陥が発生していない領域への触媒前駆体の吸着が最小化され、以後に物理的欠陥が発生した領域でのみ分岐型のカーボンナノチューブが成長できるようにし、このステップを経ると、乾燥粉末状の担持触媒が取得できる。
【0186】
次に、第3ステップは、第2ステップを経て得られた担持触媒を還元液と混合し、攪拌して触媒前駆体を触媒金属に還元させることにより、触媒構造体を製造するステップである。
【0187】
このステップで、前記還元液に担持触媒を混合し、20~200℃の温度範囲で300~600rpmの撹拌速度で1~4時間加熱及び攪拌することにより行われる。
【0188】
このステップで、前記還元液は、溶媒と還元剤を含み、還元剤としては、ヒドラジン、LiBH4、NaBH4、エチレンオキシド、ホルムアルデヒド、ギ酸及びポリオールのうちの少なくとも1種が含まれ得る。
【0189】
前記還元液は、溶媒100重量部に対して還元剤0.01~0.5重量部を含むことができ、還元剤の含有量が上記の重量範囲から外れる場合、金属塩の十分な還元が起こらないか、或いは経済性が低下するという問題があるので、上述した重量範囲内で含まれることが好ましい。
【0190】
前記第4ステップは、第3ステップで得られた混合物で触媒構造体を濾過し、溶媒を用いて洗浄することにより、未反応還元剤を除去するステップである。このとき、洗浄に用いられる溶媒としては、還元液に使用されていた溶媒が使用できる
【0191】
一方、前記カーボンナノチューブ合成ステップは、先に得られた触媒構造体と炭素源とを反応させて触媒構造体の物理的欠陥領域からカーボンナノチューブの分岐を合成するステップであり、このステップを介して、複数のY接合を有する分岐型のカーボンナノチューブが合成できる。
【0192】
このステップでカーボンナノチューブを合成する方法は、特に限定されず、例えば、アーク放電法、レーザー気化法、CVD法、触媒的合成法、プラズマ合成法、連続気相合成法などに適用できるが、これに限定されるものではない。
【0193】
一例として、前記触媒構造体を石英ボートに入れて反応器の内部に位置させてカーボンナノチューブを製造することができる。
【0194】
一例として、前記触媒構造体を溶媒に分散させて反応器内に連続的に供給しながら、カーボンナノチューブ合成反応を進行させることにより、二次元または三次元のY分岐型カーボンナノチューブを連続的に製造することができる。
【0195】
この場合、前記触媒構造体は、水または有機溶媒などの溶媒中のコロイド溶液の形態で作られ、反応器の内部に微分散または噴霧されてコロイド溶液の粒子滴を気体中に浮遊させると、これらは、一定時間気相コロイドとして存在し、これにより二次元または三次元のカーボンナノチューブが気相で連続的に合成できる。
【0196】
触媒構造体を溶媒に分散させて得られた分散液またはコロイド溶液を気相にする方法、または気体中に浮遊させる方法は、特に限定されず、当業分野における通常の方法、例えば、直接噴霧、サイフォン噴霧、アトマイゼーション(atomization)などで行われ得る。
【0197】
一方、触媒構造体を水または有機溶媒などの溶媒に分散させる際には、触媒構造体の凝集防止及び均一な分散のためにカーボンナノチューブ合成反応に逆効果を与えない程度の量で界面活性剤が添加できる。このとき、使用される界面活性剤の種類は、特に限定されない。
【0198】
カーボンナノチューブ合成ステップにおける炭素源としては、例えば、一酸化炭素、炭素原子数1~6の飽和または不飽和の脂肪族炭化水素または炭素原子数6~10の芳香族炭化水素よりなる群から選択される有機化合物が使用でき、このような炭素源は、酸素、窒素、塩素、フッ素、硫黄よりなる群から選択されるヘテロ原子を1~3個有してもよい。このような炭素源は、コロイド溶液の溶媒を部分的にまたは全体的に置換するか或いは追加的に混合することができ、追加的に混合する場合には、反応器にコロイド溶液が噴霧されるとき、炭素源が反応器に一緒に導入されて反応が行われることができる。特に、コロイド溶液の溶媒として水が使用される場合には、反応時に必ず別途の炭素源が供給されなければならない。
【0199】
[製造例2]
触媒構造体の製造
【0200】
まず、カーボンナノチューブをプロピオン酸水溶液に浸漬させ、90℃に昇温して2時間超音波処理した。以後、温度を35℃に下げ、合計50分間、周波数5kHz、パルス幅4秒、電力800Wで水中プラズマを発生させてカーボンナノチューブの物理的欠陥を誘導した後、濾過し、水で洗浄して物理的欠陥が誘導されたカーボンナノチューブを製造した後、これを450℃の酸素雰囲気中で60分間熱処理することにより、担体を製造した。
【0201】
次に、溶媒であるポリエチレングリコール100重量部に対して触媒前駆体としてのFeCl30.5重量部を混合し、前記担体4.5重量部を混合した後、400rpmの撹拌速度で3時間撹拌して前駆体混合物を製造した。
【0202】
次に、前記前駆体混合物を濾過し、105℃で4時間乾燥させて担持触媒を得た。これを還元液と混合し、120℃で400rpmの撹拌速度で2時間撹拌して触媒前駆体を還元させることにより、触媒構造体を製造した。このとき、還元液としては、ポリエチレングリコール100重量部に対して、還元剤としてのLiBH40.2重量部が含まれた還元液を使用した。
【0203】
次に、前記混合物から触媒構造体を濾過し、ポリエチレングリコールを用いて洗浄して最終的に触媒構造体を製造した。
【0204】
カーボンナノチューブの合成
【0205】
先に製造された触媒構造体0.25gを石英ボート(quartz boat)に入れ、電気炉に位置した直径27mmの石英管の中央部に配置した後、100ml/分の流量でヘリウムガスを供給して電気炉の温度を1000℃まで上昇させた。
【0206】
その後、気化したベンゼン2vol%を含む水素ガスを反応器内に注入しながら、30分間カーボンナノチューブを合成した。
【0207】
[実験例5]
製造例2と同様の方法を用いて触媒構造体を製造するが、触媒構造体製造ステップで水中プラズマ印加条件を下記表5のように変化させて触媒構造体を製造した。以後、各実施例及び比較例の触媒構造体を触媒とし、製造例2と同様の方法を用いてカーボンナノチューブを合成した後、カーボンナノチューブの合成収率、表面抵抗、BET比表面積及び水分散性を測定し、その結果を表5に示した。
【0208】
合成収率は、下記式4に従って計算して確認した。
合成収率(%)=[生成されたカーボンナノチューブの量(g)/供給された触媒構造体の量(g)]×100 (式4)
【0209】
表面抵抗は、製造されたカーボンナノチューブ27重量%と、ポリカーボネート高分子96.5重量%と、安定剤、滑剤及び酸化防止剤を含む添加剤0.8重量%とを混合し、これを加熱及び成形して厚さ3.0mm、長さ11.4mmの試験片を製造した後、各試験片の表面抵抗をSRM-110(Pinion)を用いて測定した。
【0210】
水分散性は、各カーボンナノチューブを水に0.1wt%の濃度で混合し、20KHzの110Wの出力を有する超音波で1分間分散させた後、沈殿物の発生有無によって判断した。沈殿物が発生した場合はX、沈殿物が発生しない場合はOと評価した。
【0211】
【0212】
前記表5の実験結果を見ると、実施例21と実施例22の場合は、比較例に比べて表面抵抗が著しく低く、合成収率及び比表面積も優れた値を有することが確認された。
【0213】
特に、実施例21、実施例22、比較例21及び比較例22の実験結果をそれぞれ考察すると、比較例21及び比較例22の結果値が実施例に比べて著しく低いが、これは、比較例のカーボンナノチューブを合成するための触媒構造体を製造するときに印加されたプラズマの周波数が過度に低いか高いため、プラズマによる触媒構造体の物理的欠陥形成が不足して金属触媒前駆体の吸着効率が低下するか、或いは物理的欠陥形成が過度であって分岐型カーボンナノチューブの中心柱の形状が損傷することによる問題と判断される。
【0214】
また、比較例21の場合は、水分散時に沈殿が発生して他のカーボンナノチューブよりも水分散性が低下することが確認された。
【0215】
一方、実施例21、比較例23及び比較例24の結果を併せて参照しても、同様に、実施例21の場合に著しく優れた結果値を示すことを確認することができるが、これは、上記の理由と同様に、プラズマのパルス幅があまり短くまたは長く形成されることによる問題と判断される。
【0216】
したがって、本実験結果から、触媒構造体の製造の際に、プラズマは周波数3~6kHz及びパルス幅(pulse width)3~5秒の条件で印加されることが好ましいことを確認することができる。
【0217】
[実験例6]
製造例2と同様の方法を用いて触媒構造体及びカーボンナノチューブを製造するが、触媒構造体製造ステップ中に前駆体混合物を製造するときに触媒機能向上剤をさらに添加して製造した。
【0218】
このとき、触媒機能向上剤は、表2に記載の重量で添加した。このとき、表6に記載の重量は、触媒前駆体100重量部に対する重量であり、各実施例によって製造されたカーボンナノチューブの合成収率を実験例5と同様の方法を用いて計算し、その結果を表6に一緒に記載した。
【0219】
【0220】
前記表6の実験結果より、前駆体混合物の製造時に触媒機能向上剤が添加された場合、合成収率が増加することが分かる。
【0221】
前記表6における実施例23~実施例29の結果を見ると、触媒機能向上剤としてインドール又はヘクトライト化合物が単独で使用される場合よりも、一緒に使用される場合に合成収率がさらに増加することが分かり、実施例26実施例28の場合に特にさらに著しい増加を示すことが確認された。
【0222】
このような結果から、前駆体混合物の製造時に触媒機能向上剤を使用する場合、カーボンナノチューブの合成収率が増加することを確認することができ、特に、触媒機能向上剤としてインドールとヘクトライト化合物が1:0.3~0.7の重量比で使用される場合に、前駆体混合物の安定性を高め、触媒の機能を向上させることで、より顕著な収率向上効果が得られることを確認することができる。
【産業上の利用可能性】
【0223】
本発明は、プラズマ処理された触媒を用いたカーボンナノチューブの連続合成方法に関し、別途に還元剤を添加せず、金属塩をプラズマ処理して金属ナノ粒子を製造し、気相で炭素源と反応させてカーボンナノチューブを連続的に製造するカーボンナノチューブの連続合成方法に関するものであるので、産業上の利用可能性が存在する。