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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-22
(45)【発行日】2024-10-30
(54)【発明の名称】管体成形装置
(51)【国際特許分類】
   B21D 5/01 20060101AFI20241023BHJP
   B21C 37/06 20060101ALI20241023BHJP
【FI】
B21D5/01 S
B21C37/06 C
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2024083043
(22)【出願日】2024-05-22
【審査請求日】2024-06-24
(73)【特許権者】
【識別番号】391040135
【氏名又は名称】株式会社富士機械工作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷口 英史
【審査官】石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/187499(WO,A1)
【文献】特許第7276758(JP,B2)
【文献】特許第7381010(JP,B2)
【文献】特許第7341424(JP,B2)
【文献】特公昭60-55204(JP,B2)
【文献】特公平5-36130(JP,B2)
【文献】特開昭59-45031(JP,A)
【文献】特公昭58-32008(JP,B2)
【文献】特公昭55-41847(JP,B2)
【文献】国際公開第2012/136187(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/91530(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 5/01
B21C 37/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に沿って均一の断面形状を呈し、軸回りの回転を規制された柱状体の芯材と、
前記芯材の特定の半径方向である基準方向に沿って前記芯材と相対的に接離自在にされるとともに前記芯材の軸方向の全域に対向する当接面であって前記芯材との間に板状のワークを前記基準方向に沿って挟持する当接面を備えた当接体と、
軸方向に沿って均一の断面形状であって外周に直線部及び円弧部を含む断面形状を呈する柱状体であって、前記基準方向に直交する基準面内で前記基準方向を挟んで互いに接近及び離間自在にして前記芯材に平行に配置された第1押圧材及び第2押圧材と、
前記第1押圧材及び前記第2押圧材における前記直線部又は前記円弧部を前記芯材に選択的に対向させる第1回転機構及び第2回転機構と、
前記芯材を挟んで前記当接体の反対側で前記芯材に軸方向の全域にわたって対向する矯正面であって前記当接面と前記芯材との間に挟持された前記ワークの周面に倣う矯正面を備え、前記基準方向に沿って前記芯材に相対的に移動自在に支持された矯正体と、
前記芯材と前記当接面との間に前記ワークを挟持させる押圧機構と、
前記芯材と前記当接面との間に挟持された前記ワークと前記基準面との前記基準方向における相対位置を変位させる変位機構と、
前記相対位置の変位によって前記芯材と前記当接面との間に挟持された前記ワークが前記基準面を挟む初期位置から完了位置に向かって移動する間に前記第1押圧材及び前記第2押圧材を互いに接近する方向に付勢する第1付勢機構及び第2付勢機構と、
前記ワークが前記完了位置に達した後に互いに離間した前記第1押圧材及び前記第2押圧材の間でワークの両端部を挟んで前記矯正面と前記芯材の周面とを圧接させる第3付勢機構と、
を備えた管体成形装置。
【請求項2】
前記芯材を挟んで前記当接体の反対側で前記芯材に軸方向の全域にわたって対向する保持面を備えるとともに前記基準方向に沿って前記芯材に相対的に移動自在に支持された保持体と、前記相対位置の変位によって前記芯材と前記当接面との間に挟持された前記ワークが前記基準面を挟む初期位置から少なくとも前記基準面を通過するまでの間に前記保持面と前記芯材の周面とを圧接させる第4付勢機構と、を備えた請求項1に記載の管体成形装置。
【請求項3】
前記矯正体及び前記保持体を前記基準方向に沿って移動自在にして一体的に支持するとともに前記矯正面又は前記保持面の何れかを選択的に前記芯材に対向させる選択部材を備え、前記第3付勢機構が前記第4付勢機構を兼ねる請求項2に記載の管体成形装置。
【請求項4】
前記変位機構は、前記基準方向に沿って前記芯材を前記ワークの前記初期位置と前記完了位置との間に移動させる請求項1乃至3の何れかに記載の管体成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、金属製矩形平板のワークを、複数本のロール間に挟んで曲げ加工することで、管状に成形する管体成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
金属製の管体の製造方法として、ロール成形装置によってワークである金属製矩形平板を筒状に曲げ加工した後、互いに平行な2端部を溶接装置等によって接合する方法が知られている。ロール成形装置は、1本の主ロールと1本以上の副ロールとを含む複数本のロールを、各軸方向を互いに平行にして備えている。ワークは、主ロールと副ロールとの間を通過する際に、曲げ加工による塑性変形を受けて筒状に成形される。
【0003】
従来の一般的なロール成形装置として、主ロールと同等の硬度の材料からなる2本の副ロールを備えた3本ロール成形装置がある(例えば、特許文献1参照。)。3本ロール成形装置は、比較的小径の曲げ加工に適しており、副ロールの周面はワークを挟んで主ロールの周面に圧接しないため、主ロールに対する副ロールの位置を調整することで曲げ径を容易に変更できる。
【0004】
ところが、従来の3本ロール成形装置では、板厚1mmのSUS304等の比較的硬度の高い金属性のワークを外径22mm程度の小径の筒状に成形することが難しい。これは、曲げ加工時にワークに大きな曲げ応力が作用し、ワークをロールの間から解放した際に、弾性力によってワークの端部が外側に復元するスプリングバック現象を生じるためである。このスプリングバック現象により、ワークの両端部の間隙が大きくなり、後の接合工程を円滑に行うために縮管工程が必要になる。
【0005】
そこで、出願人は、先に、メインロール、ピンチロール、2本のサイドロール、端曲げプレート、第1移動機構、付勢機構、第2移動機構、第3移動機構及び制御部を備えたロール成形装置を提案した(特許文献2参照。)。
【0006】
メインロール及びピンチロールは、互いの中心軸を平行にして配置され、互いの中心を結ぶ主線に沿って個別に移動自在に軸支されている。2本のサイドロールは、それぞれが主線を挟む両側でメインロールと中心軸を平行にして互いに接離自在に軸支されている。端曲げプレートは、メインロールを挟んでピンチロールの反対側で主線に沿って移動自在に支持され、メインロールの周面に対向する端面がメインロールの周面に沿う形状にされている。第1移動機構は、メインロールをピンチロール側に移動させる。付勢機構は、ピンチロールをメインロールに圧接する方向に選択的に付勢する。第2移動機構は、2本のサイドロールを互いに接離する方向に沿って同一速度で移動させる。第3移動機構は、端曲げプレートを主線に沿って往復移動させる。
【0007】
制御部は、付勢機構及び第1移動機構を動作させてメインロールとピンチロールとで金属製板材のワークにおける周方向の中央部を厚さ方向に挟持した状態で、第2移動機構を動作させて2本のサイドロールを互いに近接する方向に移動させつつメインロールを主線に沿ってピンチロール側に移動させる曲げ工程と、第2移動機構を動作させて2本のサイドロールを互いに離間させるとともに第3移動機構を動作させて端曲げプレートの端面を主線に沿ってメインロールに向かって移動させる端曲げ工程と、をこの順に行うように構成されている。
【0008】
この構成により、周方向の中央部をメインロールとピンチロールとの間に挟持された金属性板材のワークの周面に対して曲げ工程時に2本のサイドロールからメインロールの周方向に沿って十分な押圧力が作用するとともに、ワークの両端部に対して端曲げ工程時に端曲げプレートからメインロールの周面に向かう十分な押圧力が作用する。これによってワークは、確実に円筒状に成形される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2013-252546号公報
【文献】特開2019-252546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、特許文献2に記載されたロール成形装置では、比較的硬度の高いワークを、小径の円形断面の管体に成形することはできるが、断面の少なくとも一部に直線部分を含む矩形断面やD字形断面等の非円形断面の管体に成形することができない。
【0011】
この発明の目的は、金属製矩形平板のワークを小径の円形断面の管体だけでなく断面の少なくとも一部に直線部分を含む非円形断面の管体をも容易に成形することができる管体成形装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明の管体成形装置は、芯材、当接体、第1押圧材及び第2押圧材、第1回転機構及び第2回転機構、矯正体、押圧機構、変位機構、第1付勢機構、第2付勢機構及び第3付勢機構を備えている。
【0013】
芯材は、軸方向に沿って均一の断面形状を呈し、軸回りの回転を規制された柱状体である。当接体は、前記芯材の特定の半径方向である基準方向に沿って前記芯材と相対的に接離自在にされるとともに前記芯材の軸方向の全域に対向する当接面であって前記芯材との間に板状のワークを前記基準方向に沿って挟持する当接面を備えている。第1押圧材及び第2押圧材は、何れも軸方向に沿って均一の断面形状であって外周に直線部及び円弧部を含む断面形状を呈する柱状体であって、前記基準方向に直交する基準面内で前記基準方向を挟んで互いに接近及び離間自在にして前記芯材に平行に配置されている。第1回転機構及び第2回転機構は、前記第1押圧材及び前記第2押圧材における前記直線部又は前記円弧部を前記芯材に選択的に対向させる。矯正体は、前記芯材を挟んで前記当接体の反対側で前記芯材に軸方向の全域にわたって対向する矯正面であって前記当接面と前記芯材との間に挟持された前記ワークの周面に倣う矯正面を備え、前記基準方向に沿って前記芯材に相対的に移動自在に支持されている。
【0014】
押圧機構は、前記芯材と前記当接面との間に前記ワークを挟持させる。変位機構は、前記芯材と前記当接面との間に挟持された前記ワークと前記基準面との前記基準方向における相対位置を変位させる。第1付勢機構及び第2付勢機構は、前記相対位置の変位によって前記芯材と前記当接面との間に挟持された前記ワークが前記基準面を挟む初期位置から完了位置に向かって移動する間に前記第1押圧材及び前記第2押圧材を互いに接近する方向に付勢する。第3付勢機構は、前記ワークが前記完了位置に達した後に互いに離間した前記第1押圧材及び前記第2押圧材の間でワークの両端部を挟んで前記矯正面と前記芯材の周面とを圧接させる。
【0015】
押圧機構によって金属製矩形平板のワークの一部を芯材と当接面とで挟み、変位機構によってワークが初期位置から完了位置に向かって移動する間に、第1回転機構及び第2回転機構によって直線部又は円弧部を芯材に選択的に対向させた第1押圧材及び第2押圧材を第1付勢機構及び第2付勢機構によって互いに接近させる。
【0016】
ワークが完了位置に達するまで、押圧機構、変位機構、並びに第1付勢機構及び第2付勢機構の動作を継続すると、第1押圧材及び第2押圧材の直線部又は円弧部がワークを厚さ方向に挟んで芯材の周面に圧接し、ワークは芯材の周面形状に倣うように変形する。
【0017】
第1押圧材及び第2押圧材の直線部又は円弧部が互いに最接近してワークが完了位置に達し、ワークの両端部が互いに最接近すると、第1接離機構及び第2接離機構によって第1押圧材及び第2押圧材を互いに離間させる。第1押圧材及び第2押圧材の間で第3付勢機構によって矯正面と芯材の周面と圧接をワークの両端部を挟んで圧接させると、芯材の周面から離間したワークの両端部が芯材の周面と矯正面との間で押圧され、芯材の周面に沿って変形する。ワークは、内周面が全周にわたって芯材の周面に倣う形状の管体に成形される。
【0018】
この構成において、保持体及び第4付勢機構を備えることもできる。保持体は、前記芯材を挟んで前記当接体の反対側で前記芯材に軸方向の全域にわたって対向する保持面を備え、前記基準方向に沿って前記芯材に相対的に移動自在に支持されている。第4付勢機構は、前記相対位置の変位によって前記芯材と前記当接面との間に挟持された前記ワークが前記基準面を挟む初期位置から少なくとも前記基準面を通過するまでの間に前記保持面と前記芯材の周面とを圧接させる。当接体との間にワークの一部を挟んだ状態の芯材における軸方向の全域の周面と保持面とが直接圧接することで、芯材の軸方向の撓みを防止でき、長尺の管体を正確に成形できる。
【0019】
この場合に、前記矯正体及び前記保持体を前記基準方向に沿って移動自在にして一体的に支持するとともに前記矯正面又は前記保持面の何れかを選択的に前記芯材に対向させる選択機構を備え、前記第3付勢機構が前記第4付勢機構を兼ねるものとして、構成を簡略化することもできる。
【0020】
また、前記基準方向において前記芯材を移動自在に支持するとともに、前記変位機構は前記芯材を前記初期位置と前記完了位置との間に移動させるものとし、第1押圧材、第2押圧材、第1回転機構及び第2回転機構を前記基準方向について固定することで、構造を簡略化できる。
【発明の効果】
【0021】
この発明によれば、金属製矩形平板のワークを小径の円形断面の管体だけでなく断面の少なくとも一部に直線部分を含む非円形断面の管体をも容易に成形することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】この発明の第1の実施形態に係る管体成形装置の断面図である。
図2】(A)~(H)は、同管体成形装置による円形管体の成形時の動作を示す側面の概略図である。
図3】(A)~(H)は、同管体成形装置による四角形管体の成形時の動作を示す側面の概略図である。
図4】(A)~(H)は、同管体成形装置によるD字形管体の成形時の動作を示す側面の概略図である。
図5】この発明の第2の実施形態に係る管体成形装置の断面図である。
図6】(A)~(H)は、同管体成形装置による円形管体の成形時の動作を示す側面の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、この発明の実施形態に係る管体成形装置について、図面を参照しつつ説明する。
【0024】
図1に示すように、この発明の第1の実施形態に係る管体成形装置100は、芯材1、当接体2、第1押圧材3A、第2押圧材3B、第1回転機構4A,第2回転機構4B、矯正体5、保持体6、押圧機構7、変位機構8、第1付勢機構9A、第2付勢機構9B、第3付勢機構10、選択機構11を備えている。
【0025】
芯材1は、軸方向に沿って均一の断面形状を呈する柱状体であり、軸方向の両端部がチャック111を介して回転を規制されてスライダ112に固定されている。スライダ112は、図示しないフレームに配置された一対のスライダガイド113に沿って移動自在にされている。スライダガイド113の長手方向は、芯材1の特定の半径方向である基準方向L1に一致する。芯材1は、スライダ112とともに基準方向L1に沿って移動する。なお、この実施形態において、垂直方向を基準方向L1としている。
【0026】
管体成形装置100は、金属製矩形平板のワークを芯材1の周面に巻き付けて管体を成形する。したがって、芯材1の断面形状は、成形すべき管体の内部形状に一致する。成形すべき管体の内部形状に応じた断面形状の芯材1が、スライダ112に固定される。
【0027】
当接体2は、基準方向L1を法線方向とする水平面で構成された当接面21を備えている。当接面21は、芯材1の軸方向の全域にわたって、芯材1の周面に対向する。当接面21は、芯材1の周面に向かって凸となる円弧状に形成することもできる。管体成形装置100の管体成形時には、当接面21は、ワークの一部を厚さ方向に挟んで芯材1の周面に基準方向L1に沿って圧接する。当接体2は、当接体台22に固定されている。当接体台22は、一対の当接体ガイド23を介して基準方向L1に沿って昇降自在にされている。
【0028】
第1押圧材3A及び第2押圧材3Bは、基準方向L1に直交する基準面P1内で基準方向L1を挟んで芯材1に平行に配置されている。第1押圧材3A及び第2押圧材3Bは、それぞれ支持台33A及び31B支持台に軸支されている。第1押圧材3A及び第2押圧材3Bは、一例として直線部31A及び直線部31Bと円弧部32A及び円弧部32Bとを含む軸方向に沿って均一の断面形状を呈する柱状体である。
【0029】
第1押圧材3A及び第2押圧材3Bの断面形状は、成形すべき管体の形状に応じて、円弧部32A及び円弧部32Bの曲率を部分的に変更することもでき、一部に凹状の円弧部を有するものとすることもできる。管体成形装置100の管体成形時には、直線部31A又は直線部31Bと円弧部32A又は円弧部32Bとが、ワークの他の一部を厚さ方向に挟んで芯材1の周面に基準面P1内で圧接する。
【0030】
第1回転機構4A及び第2回転機構4Bは、それぞれ支持台33A及び支持台33Bに取り付けられている。第1回転機構4A及び第2回転機構4Bは、一例として油圧シリンダで構成され、そのシャフト41A及びシャフト41Bが第1押圧材3Aの回転軸34A及び第2押圧材3Bの回転軸34Bにリンク35A及びリンク35Bを介して接続されている。
【0031】
第1回転機構4A及び第2回転機構4Bが、シャフト41A及びシャフト41Bを軸方向に進退移動させると、リンク35A及びリンク35Bを介して回転軸34A及び回転軸34Bが回転する。シャフト41A及びシャフト41Bの移動量に応じて、第1押圧材3Aの直線部31A又は円弧部32Aと第2押圧材3Bの直線部31B又は円弧部32Bとが芯材1の周面に選択的に対向する。
【0032】
第1付勢機構9A及び第2付勢機構9Bは、一例として図外のフレームに固定された油圧シリンダであり、第1押圧材3A及び第2押圧材3Bをそれぞれ軸支した支持台33A及び支持台33Bを第1押圧材ガイド36A及び第2押圧材ガイド36Bに沿って往復移動させるとともに、芯材1に向けて付勢する。第1押圧材3A及び第2押圧材3Bは、支持台33A及び支持台33Bとともに互いに接近又は離間する。
【0033】
第1付勢機構9A及び第2付勢機構9Bは、例えば支持台33A及び支持台33Bに固定されたラックギアに噛合するピニオンギアを回転軸に固定したモータで構成し、第1押圧材3A及び第2押圧材3Bを芯材1に対して往復移動させる機能のみを有するものとすることができる。この場合に、第1押圧材3A及び第2押圧材3Bを芯材1に向けて付勢する油圧シリンダ等を別途備えることになる。
【0034】
矯正体5は、芯材1に選択的に対向する矯正面51を備えている。矯正面51は、管体成形時に当接面21と芯材1との間に挟持されたワークの両端部に圧接する。矯正面51は、管体成形時に当接面21と芯材1との間に挟持されたワークの外周面に倣う形状で構成される。例えば、芯材1の周面における矯正面51の対向部分が外側に凸となる円弧である場合は、矯正面51の断面は芯材1の半径にワークの厚みを加えた成形後のワークの外周面の半径と等しい半径の凹状の円弧で構成される。
【0035】
管体成形装置100の管体成形時には、矯正体5は、矯正面51が芯材1を挟んで基準方向L1に沿う当接体2の反対側で芯材1の軸方向の全域にわたって芯材1の周面に対向する位置に移動する。この状態から、矯正体5が基準方向L1に沿って芯材1に相対的に接近し、矯正面51がワークの両端部を厚さ方向に挟んで芯材1の両端部に基準方向L1に沿って圧接する。
【0036】
保持体6は、芯材1の周面に軸方向の全域にわたって選択的に対向する保持面61を備えている。保持面61は、管体成形装置100の管体成形時に芯材1の周面に圧接する。保持面61は、成形すべき管体の断面形状に応じて芯材1の断面形状が変化することを考慮して水平面で構成することができ、より好ましくは芯材1の周面に向かって凸となる円弧で構成することができる。
【0037】
管体成形装置100の管体成形時には、保持体6は、矯正面51が芯材1を挟んで基準方向L1に沿う当接体2の反対側で芯材1の軸方向の全域にわたって芯材1の周面に対向する位置に移動する。この状態から、矯正体5が基準方向L1に沿って芯材1に相対的に接近し、矯正面51がワークの両端部を厚さ方向に挟んで芯材1の両端部に基準方向L1に沿って圧接する。
【0038】
押圧機構7は、一例として図外のフレームに固定された油圧シリンダである。押圧機構7は、当接体2が固定された当接体台22を一対の当接体ガイド23の間で基準方向L1に沿って往復移動させるとともに、管体成形時には当接体2を芯材1に向けて付勢して当接面21と芯材1の周面との間にワークの一部を挟持させる。押圧機構7の付勢力による当接面21の最上方の位置は、基準面P1より上方の開始位置として予め規定されている。
【0039】
変位機構8は、スライダ112をスライダガイド113に沿って往復移動させる。ワークは、管体成形の開始前に基準面P1より上方で芯材1と当接体2との間に搬入され、管体成形時には芯材1の周面と当接面21との間に挟持された状態で基準面P1より上方から下方に移動する。管体成形の開始前には芯材1と当接面21との間にワークを搬入するための十分な間隔を設ける必要がある一方、管体成形の開始後には芯材1の周面と当接面21との間にワークを挟持する必要がある。変位機構8は、スライダ112に保持された芯材1を基準方向L1に沿って基準面P1を上下に通過する範囲で、当接体2とは独立して移動させる。
【0040】
選択機構11は、一例として矯正体シリンダ12、保持体シリンダ13、選択機構支持部材14を備えている。選択機構支持部材14は、一対の選択機構ガイド143の間で基準方向L1に沿って移動自在にされている。矯正体シリンダ12及び保持体シリンダ13は、選択機構支持部材14の上部の固定部141に固定されている。選択機構支持部材14は、芯材1の軸方向の全長にわたる押圧部142を備えている。
【0041】
選択機構支持部材14の下部には、矯正体リンク15の回転軸151及び保持体リンク16の回転軸161が軸支されている。矯正体リンク15の一端部には矯正体シリンダ12のピストンロッド121の下端が軸支されており、矯正体リンク15の他端部には矯正体5が固定されている。保持体リンク16の一端部には保持体シリンダ13のピストンロッド131の下端が軸支されており、保持体リンク16の他端部には保持体6が固定されている。
【0042】
矯正体シリンダ12のピストンロッド121又は保持体シリンダ13のピストンロッド131を下降させると、矯正体リンク15又は保持体リンク16が矯正体5の上面又は保持体6の上面が押圧部142の下面に当接する位置に回転する。矯正体シリンダ12のピストンロッド121又は保持体シリンダ13のピストンロッド131を上昇させると、矯正体リンク15又は保持体リンク16が矯正体5の上面又は保持体6の上面が押圧部142の下面から離間する位置に回転する。
【0043】
選択機構11の矯正体シリンダ12又は保持体シリンダ13に流体を選択的に供給することで、矯正体5の上面又は保持体6の上面の何れか一方が押圧部142の下面に当接し、矯正面51又は保持面61の何れか一方が芯材1の周面に対向する。管体成形装置100は、選択機構11を介して、管体成形時に矯正面51又は保持面61の何れか一方を選択的に芯材1の周面に対向させる。
【0044】
第3付勢機構10は、一例として油圧シリンダで構成され、ロッド110の下端部に押圧部142の上端部が係止されている。第3付勢機構10は、ロッド110の進退により、押圧部142の上端部を昇降させ、一対の選択機構ガイド143の間で選択機構支持部材14を基準方向L1に沿って往復移動させる。芯材1の周面と矯正面51又は保持面61との相対位置が変化する。第3付勢機構10から矯正体5又は保持体6に作用する下方向の押圧力は、押圧機構7から当接体2に作用する上方向の押圧力より大きい。
【0045】
管体成形装置100は、複数対の位置決めロール17を備えている。位置決めロール17は、芯材1の軸方向に沿って備えられ、管体成形装置100内に搬入されたワークの両端面に当接し、管体成形開始前におけるワークの位置を規定する。位置決めロール17は、支持台33A及び支持台33Bに取り付けられた移動機構171の可動部172に、水平方向における第1押圧材3A及び第2押圧材3Bの外側で、周面を第1押圧材3A及び第2押圧材3Bの最上面に対向させて軸支されている。可動部172の進退により、位置決めロール17がワークの両端面に接離する。
【0046】
図2に示すように、管体成形装置100によって金属製矩形平板のワークWを円形断面の管体に成形する場合、成形すべき管体の内径を外径とする芯材1、成形すべき管体の外径に等しい径の円弧状の矯正面51を有する矯正体5を用いる。第1押圧材3A及び第2押圧材3Bを、直線部31A及び直線部31Bが上向きに水平となる回転位置で、芯材1との接線距離S1がワークWの厚さとなる位置に固定する。また、当接体2の当接面21を位置決めロール17と同じ高さに位置させるとともに、芯材1を当接面21に対して上方に離間させておく。
【0047】
この状態で、位置決めロール17を介してワークWの中心が基準方向L1に一致するように当接体2上に載置し(図2(A)参照。)、変位機構8を介して芯材1を下降させてワークWの中央部を芯材1と当接体2とで挟持する(図2(B)参照。)。このとき、変位機構8によって芯材1の上下位置を固定し、押圧機構7から当接体2に対して当接面21が芯材1に向かう付勢力を作用させる。
【0048】
次いで、選択機構11によって保持体6の保持面61を芯材1の周面に対向させ(図2(C)参照。)、第3付勢機構10によって保持体6を選択機構11とともに下降させる。保持面61が芯材1の周面に当接すると同時に、変位機構8による芯材1の上下位置の固定を解除する。
【0049】
第3付勢機構10から保持体6に作用する下方向の押圧力は、押圧機構7から当接体2に作用する上方向の押圧力とより大きい。第3付勢機構10からの保持体6に下方向の押圧力を継続して作用させると、芯材1は、押圧機構7からの上方への付勢力が作用している当接面21との間にワークWの中央部を挟持した状態で、ワークW及び当接体2と一体的に下降する。芯材1の中心が基準面P1に達すると、ワークWの中央部から両端部側が第1押圧材3Aの円弧部32A及び第2押圧材3Bの円弧部32Bに当接しつつ芯材1の周面に沿って半円形に変形する(図2(D)参照。)。
【0050】
芯材1の中心が基準面P1に達した時点で、第1付勢機構9A及び第2付勢機構9Bから第1押圧材3A及び第2押圧材3Bに互いに接近する方向の押圧力を作用させる。芯材1には、保持面61、当接面21、第1押圧材3Aの円弧部32A及び第2押圧材3Bの円弧部32Bから合計4方向の押圧力が作用する。保持面61からの押圧力と当接面21からの押圧力とは、基準方向L1に沿って対向する。円弧部32Aからの押圧力と円弧部32Bからの押圧力とは、基準方向L1を挟んで対向する。
【0051】
押圧機構7、第1付勢機構9A、第2付勢機構9B及び第3付勢機構10からの押圧力の供給を継続すると、ワークWの半円形に変形した部分よりも両端部側が、円弧部32A及び円弧部32Bに当接しつつ芯材1の周面に沿って円弧状に変形する。円弧部32A及び円弧部32Bが保持体6に当接する直前に、押圧機構7からの押圧力の供給を継続しつつ、第1付勢機構9A、第2付勢機構9B及び第3付勢機構10からの押圧力の供給を停止する。第1押圧材3C及び第2押圧材3Bは、基準方向L1について位置を固定されており、芯材1の下降が停止する(図2(E)参照。)。
【0052】
次いで、第3付勢機構10によって保持体6を上方に移動させ、選択機構11によって保持面61が芯材1に対向しない位置に退避させ、第1付勢機構9A及び第2付勢機構9Bからの押圧力の供給を再開する。芯材1が下降を再開するとともに、第1押圧材3A及び第2押圧材3Bが互いに最接近する(図2(F)参照。)。
【0053】
第1押圧材3A及び第2押圧材3Bが最接近した際に、ワークWにおいて円弧部32A及び円弧部32Bが当接する位置よりも両端側は、円弧部32A及び円弧部32Bによる押圧を受けず、接線方向に沿って芯材1の周面から離間している。また、変形によってワークW内に生じた応力が、ワークWの両端部において円弧部32A及び円弧部32Bが当接した部分に芯材1の周面から離間する方向に作用し、ワークWの両端部を芯材1の周面からさらに離間させる。
【0054】
そこで、第1押圧材3A及び第2押圧材3Bを互いに離間させるとともに、選択機構11によって矯正体5の矯正面51を芯材1に対向させ(図2(G)参照。)、第3付勢機構10によって矯正体5を芯材1に向かって下降させる(図2(H)参照。)。ワークWの両端部が矯正面51で押圧されて芯材1の周面に沿って変形し、ワークWは内周面が全集にわたって芯材1の周面に倣う形状の円筒管に成形される。
【0055】
この後、変位機構8によって芯材1の上下位置を固定し、第1付勢機構9A及び第2付勢機構9Bを介して第1押圧材3A及び第2押圧材3Bを互いに離間させるとともに、押圧機構7を介して当接体2を芯材1から離間させる。円筒管に成形されたワークWは、芯材1の軸方向に沿って芯材1の一端側から引き出すことができる。
【0056】
図3に示すように、管体成形装置100によって金属製矩形平板のワークWを矩形断面の角管に成形する場合、成形すべき角管の内法を外寸とする芯材101を変位機構8に保持させ、平面状の矯正面1051を有する矯正体105を選択機構11に取り付ける。この状態で、図2(A)~(F)と同様の処理を行うことにより、ワークWの内周面が、芯材101の周面の3面に沿う形状に変形する。この時、ワークWの両端部付近が、芯材101の上面に接近する(図3(A)~(F)参照。)。
【0057】
ワークWには変形によって内部応力を生じるため、ワークWの両端部は第1押圧材3A及び第2押圧材3Bの離間に伴って芯材101の上面から離間する。そこで、押圧機構7を介して芯材101の上面が基準面P1の上方に達するまで当接体2を上昇させ、直線部31A及び直線部31BがワークWを挟んで芯材101に対向するように第1押圧材3A及び第2押圧材3Bを回転させる。さらに、第1押圧材3A及び第2押圧材3Bを互いに接近するように付勢し、選択機構11によって矯正体105の矯正面1051を芯材101に対向させる(図3(G)参照。)。
【0058】
この状態から、第3付勢機構10によって矯正体105を芯材101に向かって下降させることにより、ワークWの両端部が矯正面1051で押圧されて芯材101の上面に密着するように変形する。芯材101の両側面におけるワークWの密着状態が第1押圧材3A及び第2押圧材3Bの直線部31A及び直線部31Bの押圧力によって維持されており、ワークWは内寸が芯材101の外寸に倣う形状の角管に成形される(図3(H)参照。)。
【0059】
図4に示すように、管体成形装置100によって金属製矩形平板のワークWをD字形断面の異形管に成形する場合、成形すべき角管の内法を外寸とする芯材201を変位機構8に保持させ、平面状の矯正面2051を有する矯正体205を選択機構11に取り付ける。この状態で、図2(A)~(F)と同様の処理を行うことにより、ワークWの内周面の一部が、芯材201の周面の連続する2平面及び曲面の一部に沿う形状に変形する。この時、ワークWの両端部付近が、芯材101の上面側に接近する(図4(A)~(F)参照。)。
【0060】
ワークWには変形によって内部応力を生じるため、ワークWの両端部は第1押圧材3A及び第2押圧材3Bの離間に伴って芯材201の上面から離間する。そこで、押圧機構7を介して芯材201の上面が基準面P1の上方に達するまで当接体2を上昇させ、直線部31A及び円弧部32BがワークWを挟んで芯材201に対向するように第1押圧材3A及び第2押圧材3Bを回転させる。さらに、第1押圧材3A及び第2押圧材3Bを互いに接近するように付勢し、選択機構11によって矯正体205の矯正面2051を芯材201に対向させる(図4(G)参照。)。
【0061】
この状態から、第3付勢機構10によって矯正体205を芯材201に向かって下降させることにより、ワークWの両端部が矯正面2051で押圧されて芯材201の上面側に密着するように変形する。芯材201の両側面におけるワークWの密着状態が第1押圧材3A及び第2押圧材3Bの直線部31A及び円弧部32Bの押圧力によって維持されており、ワークWは内寸が芯材201の外寸に倣う形状の異形管に成形される(図4(H)参照。)。
【0062】
上述のように、管体成形装置100によれば、成形すべき管体の断面形状に応じた芯材1を用いることで、円形、矩形又はD字形に限らず、任意の非円形断面形状の管体を成形することができる。また、成形すべき管体の軸長に一致する長さの保持体6を用いることで、ワークの硬度の高いワークWについても芯材1の撓みを防止でき、任意の非円形断面形状の長尺の管体を確実に成形することができる。
【0063】
図5に示すように、この発明の第2の実施形態に係る管体成形装置200は、管体成形装置100の選択機構11に変えて選択機構211を備え、管体成形装置100の保持体6を削除したものであり、その他の構成は管体成形装置100と同様である。選択機構211は、保持体6の削除にともなって、選択機構11から保持体シリンダ13及び保持体リンク16を省略支している。管体成形装置200は、硬度の低い金属製矩形平板のワークWを短尺の円形断面の管体に成形する。
【0064】
選択機構11において、矯正体シリンダ12に流体を選択的に供給することで、矯正体5の上面が押圧部142の下面に当接し、矯正面51が芯材1の周面に対向する。管体成形装置200は、選択機構211を介して、管体成形時に矯正面51を選択的に芯材1の周面に対向させる。
【0065】
管体成形装置200によって硬度の低い金属製矩形平板のワークWを短尺の円形断面の管体に成形する場合、芯材1に撓みを生じることがない。そこで、管体成形装置200による管体成形時には、図6に示すように、図2(C)~(E)における保持体6による芯材1の押圧を省略している。硬度の低い金属製矩形平板のワークWを短尺の角管及び短尺のD字形断面の異形管に成形する場合にも、図3(C)~(E)並びに図4(C)~(E)における保持体6による芯材1の押圧を省略できる。
【符号の説明】
【0066】
1-芯材
2-当接体
3A-第1押圧材
3B-第2押圧材
4A-第1回転機構
4B-第2回転機構
5-矯正体
6-保持体
7-押圧機構
8-変位機構
9A-第1付勢機構
9B-第2付勢機構
10-第3付勢機構
11-選択機構
【要約】
【課題】金属製矩形平板のワークを小径の円形断面の管体だけでなく断面の少なくとも一部に直線部分を含む非円形断面の管体をも容易に成形することができるようにする。
【解決手段】管体成形装置10に、軸回りの回転を規制した芯材1、芯材1との間にワークWの中央部を挟持する当接体2、ワークWを挟んで芯材1に水平方向の両側から圧接する第1押圧材3A及び第2押圧材3B、ワークWの両端部を挟んで芯材1に当接体2の反対側から圧接する矯正体5、芯材1の周面に当接体2の反対側から圧接する保持体6を備えた。ワークWを芯材1の互いに直交する4方向から押圧することで、ワークWは芯材1の外寸に一致する内寸の管体に成形される。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6